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特表2024-545401先端の成形性と変形可能なシャフトの柔軟性を可能にする拡張器シャフトの設計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】先端の成形性と変形可能なシャフトの柔軟性を可能にする拡張器シャフトの設計
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20241129BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20241129BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20241129BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61B17/3207
A61M25/10
A61M25/09
A61M25/06 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528511
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2022083835
(87)【国際公開番号】W WO2023099556
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211223.9
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512238276
【氏名又は名称】バイオトロニック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアノッティ、マルク
(72)【発明者】
【氏名】ジェッター、マイケル
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160MM36
4C267AA05
4C267AA07
4C267AA14
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB05
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB28
4C267BB40
4C267CC08
4C267DD01
4C267GG01
4C267GG22
4C267GG24
(57)【要約】
患者の体内の病変の血管内治療用のための拡張器(3)は長手軸(L)に沿って延在する拡張器シャフト(33)を備え、拡張器シャフト(33)は、編組(31)を形成するために編まれた編組糸(310、311)の配置を備える編組(31)を有する。第1のグループの編組糸(310)と第2のグループの編組糸(311)は互いに編み込まれ、それらの間で、角度(α、β、γ)で互いに交差するように配置される。ここで、拡張器シャフト(33)の第1軸方向位置では、第1のグループの編組糸(310)と第2のグループの編組糸(311)は、それらの間で第1の角度で互いに交差するように配置され、拡張器シャフト(33)の第2軸方向位置では、第1のグループの編組糸(310)と第2のグループの編組糸(311)は、それらの間で第1の角度と異なった第2の角度で互いに交差するように配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の病変の血管内治療のための拡張器(3)であって、前記拡張器は遠位の拡張器シャフト端と近位の拡張器シャフト端を有し、長手軸(L)に沿って延在する拡張器シャフト(33)を備え、前記拡張器シャフト(33)は、編組(31)を形成するために編まれた編組糸(310、311)の配置と、互いに編み込まれ、それらの間で互いにある角度(α、β、γ)で交差するよう配置される第1のグループの編組糸(310)と第2のグループの編組糸(311)と、を備える少なくとも1つの編組セクション(31)と、任意選択として、どんな編組糸も含まない少なくとも1つの非編組セクションと、を有し、前記角度は、前記遠位の拡張器シャフト端と前記近位の拡張器シャフト端との間で変化し、前記拡張器シャフト(33)が、前記拡張器シャフト(33)に沿って長手方向に延在し、好ましくは前記遠位の拡張器シャフト端から前記近位の拡張器シャフト端まで延在する少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)をさらに備え、前記少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)が、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)とで織り交ぜられている、拡張器(3)。
【請求項2】
前記遠位の拡張器シャフト端で前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、第1の角度(α)で互いに交差するように配置され、前記近位の拡張器シャフト端で前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、第2の角度(β)で互いに交差するように配置され、前記第1の角度(α)が前記第2の角度(β)よりも大きい、請求項1に記載の拡張器(3)。
【請求項3】
前記拡張器シャフト(33)が、第1の軸長(L1)を有する少なくとも1つの第1のセクション(330)と、第2の軸長(L2)を有する少なくとも1つの第2のセクション(331)と、を備え、前記第1のセクション(330)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で前記第1の角度(α)で互いに交差するように配置され、前記第2のセクション(331)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2グループの編組糸(311)が、それらの間で前記第2の角度(β)で互いに交差するように配置される、請求項1又は2に記載の拡張器(3)。
【請求項4】
前記長手軸(L)に沿って見たときに、前記第2のセクション(331)が、前記第1のセクション(330)に隣接する、請求項3に記載の拡張器(3)。
【請求項5】
前記拡張器シャフト(33)が、第3の軸長(L3)を有する第3のセクション(332)を備え、前記第3のセクション(332)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、互いに第3の角度(γ)で互いに交差するよう配置され、前記第3の角度(γ)が前記第1の角度(α)及び前記第2の角度(β)とは異なる、請求項3又は4に記載の拡張器(3)。
【請求項6】
前記編組糸(310、311)がワイヤ又はストライプによって形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項7】
前記編組糸(310、311)及び/又は前記少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)が、金属、金属合金、又は高分子で作られている、請求項1~6のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項8】
前記拡張器シャフト(33)が、前記編組(31)を埋め込むマトリックス材料(39)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項9】
前記マトリックス材料(39)が高分子材料である、請求項8に記載の拡張器(3)。
【請求項10】
前記拡張器シャフト(33)が、前記拡張器シャフト(33)に沿って長手方向に延在する内部の拡張器管腔(38)を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項11】
前記内部の拡張器管腔(38)が前記編組(31)内で半径方向に配置される、請求項10に記載の拡張器(3)。
【請求項12】
前記拡張器シャフト(33)が、前記拡張器シャフト(33)に沿って長手方向に延在し、好ましくは前記遠位の拡張器シャフト端から前記近位の拡張器シャフト端まで延在する複数の対の長手方向のワイヤ(37)を備え、前記対の長手方向のワイヤ(37)が、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)とで織り交ぜられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項13】
前記拡張器シャフト(33)が、どんな編組糸も含まない少なくとも1つの非編組セクションを有する、請求項12に記載の拡張器(3)。
【請求項14】
前記編組糸(310、311)がステンレス鋼又はニッケルチタン合金で作られ、及び/又は、前記少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)がステンレス鋼又はニッケルチタン合金で作られている、請求項1~13のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項15】
患者の体内の病変の血管内治療のための拡張器(3)であって、前記拡張器は遠位の拡張器シャフト端と近位の拡張器シャフト端を有し、長手軸(L)に沿って延在する拡張器シャフト(33)を備え、前記拡張器シャフト(33)は、編組(31)を形成するために編まれた編組糸(310、311)の配置と、互いに編み込まれ、それらの間で互いにある角度(α、β、γ)で交差するよう配置される第1のグループの編組糸(310)と第2のグループの編組糸(311)と、を備える少なくとも1つの編組セクション(31)と、どんな編組糸も含まない少なくとも1つの非編組セクションと、を有し、前記角度は、前記遠位の拡張器シャフト端と前記近位の拡張器シャフト端との間で変化する、拡張器(3)。
【請求項16】
前記遠位の拡張器シャフト端で前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、第1の角度(α)で互いに交差するように配置され、前記近位の拡張器シャフト端で前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、第2の角度(β)で互いに交差するように配置され、前記第1の角度(α)が前記第2の角度(β)よりも大きい、請求項15に記載の拡張器(3)。
【請求項17】
前記拡張器シャフト(33)が、第1の軸長(L1)を有する少なくとも1つの第1のセクション(330)と、第2の軸長(L2)を有する少なくとも1つの第2のセクション(331)と、を備え、前記第1のセクション(330)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で前記第1の角度(α)で互いに交差するように配置され、前記第2のセクション(331)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2グループの編組糸(311)が、それらの間で前記第2の角度(β)で互いに交差するように配置される、請求項15又は16に記載の拡張器(3)。
【請求項18】
前記長手軸(L)に沿って見たときに、前記第2のセクション(331)が、前記第1のセクション(330)に隣接する、請求項17に記載の拡張器(3)。
【請求項19】
前記拡張器シャフト(33)が、第3の軸長(L3)を有する第3のセクション(332)を備え、前記第3のセクション(332)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、互いに第3の角度(γ)で互いに交差するよう配置され、前記第3の角度(γ)が前記第1の角度(α)及び前記第2の角度(β)とは異なる、請求項16~18いずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項20】
前記編組糸(310、311)がワイヤ又はストライプによって形成されている、請求項16~19のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項21】
前記拡張器シャフト(33)が、前記拡張器シャフト(33)に沿って長手方向に延在し、好ましくは前記遠位の拡張器シャフト端から前記近位の拡張器シャフト端まで延在する少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)をさらに備える、請求項16~20のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項22】
前記少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)が、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)とで織り交ぜられる複数の対の長手方向のワイヤ(37)である、請求項21に記載の拡張器(3)。
【請求項23】
前記編組糸(310、311)及び/又は前記少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)が、金属、金属合金、又は高分子で作られている、請求項16~22のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項24】
前記編組糸(310、311)がステンレス鋼又はニッケルチタン合金で作られ、及び/又は、前記少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)がステンレス鋼又はニッケルチタン合金で作られている、請求項16~23のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項25】
前記拡張器シャフト(33)が、前記編組(31)を埋め込むマトリックス材料(39)を備える、請求項16~24のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項26】
前記マトリックス材料(39)が高分子材料である、請求項16~25のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項27】
前記拡張器シャフト(33)が、前記拡張器シャフト(33)に沿って長手方向に延在する内部の拡張器管腔(38)を備える、請求項16~26のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項28】
前記内部の拡張器管腔(38)が前記編組(31)内で半径方向に配置される、請求項27に記載の拡張器(3)。
【請求項29】
患者の体内の病変の血管内治療のための拡張器(3)であって、前記拡張器は遠位の拡張器シャフト端と近位の拡張器シャフト端を有し、長手軸(L)に沿って延在する拡張器シャフト(33)を備え、前記拡張器シャフト(33)が、前記拡張器シャフト(33)に沿って長手方向に延在し、好ましくは前記遠位の拡張器シャフト端から前記近位の拡張器シャフト端まで延在する複数の対の長手方向のワイヤ(37)を備える、拡張器(3)。
【請求項30】
前記拡張器シャフト(33)は、編組(31)を形成するために編まれた編組糸(310、311)の配置と、互いに編み込まれ、それらの間で互いにある角度(α、β、γ)で交差するよう配置される第1のグループの編組糸(310)と第2のグループの編組糸(311)と、を備える少なくとも1つの編組セクション(31)と、任意選択として、どんな編組糸も含まない少なくとも1つの非編組セクションと、を有し、前記角度は、前記遠位の拡張器シャフト端と前記近位の拡張器シャフト端との間で変化する、請求項29に記載の拡張器(3)。
【請求項31】
前記遠位の拡張器シャフト端で前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、第1の角度(α)で互いに交差するように配置され、前記近位の拡張器シャフト端で前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、第2の角度(β)で互いに交差するように配置され、前記第1の角度(α)が前記第2の角度(β)よりも大きい、請求項29又は30に記載の拡張器(3)。
【請求項32】
前記拡張器シャフト(33)が、第1の軸長(L1)を有する少なくとも1つの第1のセクション(330)と、第2の軸長(L2)を有する少なくとも1つの第2のセクション(331)と、を備え、前記第1のセクション(330)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で前記第1の角度(α)で互いに交差するように配置され、前記第2のセクション(331)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2グループの編組糸(311)が、それらの間で前記第2の角度(β)で互いに交差するように配置される、請求項29~31のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項33】
前記長手軸(L)に沿って見たときに、前記第2のセクション(331)が、前記第1のセクション(330)に隣接する、請求項32に記載の拡張器(3)。
【請求項34】
前記拡張器シャフト(33)が、第3の軸長(L3)を有する第3のセクション(332)を備え、前記第3のセクション(332)において、前記第1のグループの編組糸(310)と前記第2のグループの編組糸(311)が、それらの間で、互いに第3の角度(γ)で互いに交差するよう配置され、前記第3の角度(γ)が前記第1の角度(α)及び前記第2の角度(β)とは異なる、請求項29~33のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項35】
前記編組糸(310、311)がワイヤ又はストライプによって形成されている、請求項29~34のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項36】
前記編組糸(310、311)及び/又は前記少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)が、金属、金属合金、又は高分子で作られている、請求項29~35のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項37】
前記編組糸(310、311)がステンレス鋼又はニッケルチタン合金で作られ、及び/又は、前記少なくとも1つの長手方向のワイヤ(37)がステンレス鋼又はニッケルチタン合金で作られている、請求項29~36のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項38】
前記拡張器シャフト(33)が、前記編組(31)を埋め込むマトリックス材料(39)を備える、請求項29~37のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項39】
前記マトリックス材料(39)が高分子材料である、請求項29~38のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項40】
前記拡張器シャフト(33)が、前記拡張器シャフト(33)に沿って長手方向に延在する内部の拡張器管腔(38)を備える、請求項29~39のいずれか一項に記載の拡張器(3)。
【請求項41】
前記内部の拡張器管腔(38)が前記編組(31)内で半径方向に配置される、請求項40に記載の拡張器(3)。
【請求項42】
サポートカテーテル管腔(26)を形成するサポートカテーテル(2)と、前記サポートカテーテル管腔(26)に受容され、前記サポートカテーテル管腔(26)内で移動可能な請求項1~41のいずれか一項に記載の拡張器(3)と、を備える、カテーテルシステム(1)。
【請求項43】
サポートカテーテル(2)と少なくとも1つ、好ましくは1つのサポートカテーテル管腔(26)と、を備え、前記サポートカテーテル(2)が少なくとも1つのサポートカテーテル管腔(26)内に少なくとも2つの内部部材を同時に又は連続して収容するよう構成され、前記少なくとも2つの内部部材のうちの1つが請求項1~41のいずれか一項に記載の拡張器(3)である、多目的カテーテルシステム。
【請求項44】
前記少なくとも2つの内部部材のうちのもう一方がガイドワイヤ又はバルーンカテーテル、好ましくは経皮経管的血管形成用バルーンカテーテル又は経皮的冠状動脈形成用バルーンカテーテルである、請求項43に記載の多目的カテーテルシステム。
【請求項45】
前記サポートカテーテルが、前記拡張器(3)が前記サポートカテーテル(2)に対して移動可能となるよう、前記サポートカテーテル(2)に対して前記拡張器(3)の軸方向の移動を制止するための制限移動状態と、前記サポートカテーテル(2)から前記拡張器(3)の軸方向に移動できるようにするための非制限移動状態と、で構成されたロッキングハンドル(4)を備える、請求項43又は44に記載の多目的カテーテルシステム。
【請求項46】
前記ロッキングハンドル(4)は、作動機構とロック機構とを有する軸方向移動制限要素を備えていてもよく、前記軸方向移動制限要素は、前記非制限移動状態での軸方向の移動と比較して、制限移動状態での前記拡張器の軸方向の移動を制限することができる、請求項43~45のいずれか一項に記載の多目的カテーテルシステム。
【請求項47】
前記ロッキングハンドル(4)が、サポートカテーテル近位端又はサポートカテーテルシャフトに配置されてもよい、請求項45又は46に記載の多目的カテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内の病変の血管内治療のための拡張器、カテーテルシステム、及び患者の体内の病変の血管内治療のための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
しばしば、拡張器は拡張を誘発するため、すなわち子宮頸部、尿道、食道、膣入口のような人体や動物の体の開口部や管を拡張するために使用される医療機器として理解されている。しかしながら、本発明に係る拡張器は膨張目的のためには使用されず、従って拡張を誘発するようには構成されていない。
【0003】
本発明に係る拡張器は、長手軸に沿って延在する拡張器シャフトを備え、拡張器シャフトは、編組を形成するために編まれた編組糸の配置を備える編組を有し、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は、互いに編み込まれ、それらの間で、ある角度で互いに交差するよう配置されている。過去20年間で、病変部分の除去や正確な管腔へのリエントリー用の補助機器としてだけでなくバルーン、ステント、ステントグラフトを含む血管内用機器の数は、産業界がその設計と開発に多大なリソースを投資したことにより、爆発的に増加している。さらに、以前の世代と比較すると、これらのより新しい機器は、変形するガイドワイヤプラットフォームと送達システムだけでなく、小型で異なる送達シャフト長でもって作られている。選択可能な機器の増加により、血管内治療の成長が促進されている。しかしながら病変の治療において、解剖学的制約は絶えず存在する。言い換えれば、病変に到達できなければ、その病変を治療することができない。ガイドワイヤ、カテーテル、シースも同様に驚くべき成長を遂げており、以前は治療できなかった病変への到達も可能となっている。
【0004】
特許文献1は、強化されたシャフト及び拡張器を有する機能的に統合可能なカテーテルシステムCTO拡張器を開示している。
【0005】
病変に向け拡張器を前進させることで、例えば血管内の管を自由に通過できるようにするため閉塞を貫通することで、病変を治療できるよう、血管内病変を治療するために、拡張器が移動可能に受容されサポートカテーテルを備えるカテーテルシステムを使用することが想定されている。基本原理として、本願では、血管内治療装置が到達できる病変のみを治療することができ、解剖学的制約が拡張器などの治療装置の進歩を妨げる可能性があると理解されている。
【0006】
編組強化された拡張器シャフト、すなわち、編組を形成するために編まれた編組糸の配置から成る編組を有する拡張器シャフトを有する拡張器を使用することによって、拡張器シャフトは、慢性完全閉塞(CTO)などの病変の貫通を可能にする十分な剛性を有するように設計され得る。病変に向かって押され、拡張器シャフトを介した力の伝達によって病変を貫通するために使用され得るシャフトが形成されるよう、本願における編組糸は編まれ、例えば周囲のマトリックス材料に埋め込まれる。
【0007】
慢性完全閉塞 (CTO) は、冠動脈の完全な閉塞である。 初期に柔らかいCTOキャップを有するCTOは老化が始まり、時間の経過とともに硬くて繊維状のCTOキャップになり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第3322470号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解剖学的制約を考慮しながら、病変に向かって確実に前進させられる強化された拡張器シャフトを設計することが好ましい。
【0010】
本発明の目的は、拡張器、カテーテルシステム及び患者の体内における病変の血管内治療に対する方法であって、病変の治療を提供するため患者の体内の病変に向けた拡張器の操作性及び押しやすさの改良を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1、15又は29の特徴を備える拡張器を用いて達成される。拡張器は、遠位の拡張器シャフト端及び近位の拡張器シャフト端を有する拡張器シャフトを有する。拡張器シャフトは長手軸に沿って延在する。
【0012】
1つの実施例では、拡張器シャフトは、編組を形成するために編まれた編組糸の配置と、互いに編み込まれ、それらの間で互いにある角度で交差するよう配置される第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸と、を備える少なくとも1つの編組セクションを有し、角度が遠位の拡張器シャフト端と近位の拡張器シャフト端の間で変化する、拡張器シャフトである。任意選択として、拡張器シャフトは、どんな編組糸も含まない少なくとも1つの非編組セクションをさらに有していてもよい。非編組セクションは、2つの編組セクションの間に配置されてもよい。
【0013】
拡張器シャフトの第1の軸方向位置では、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は、それらの間である第1の角度で互いに交差するように配置され、拡張器シャフトの第2の軸方向位置では、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は、それらの間で第1の角度と異なったある第2の角度で互いに交差するように配置される。
【0014】
拡張器シャフトは、編組を形成するために編まれた編組糸の配置によって形成された編組によって強化される。編組を形成するため、ここでは、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸が互いにある角度で配置されるように、第1のグループの編組糸は第2のグループの編組糸とともに編み込まれる。従って、第1のグループの編組糸の糸と第2のグループの編組糸は、編まれた編組を形成するため、織り交ぜられる。特に、編組糸はそれぞれ長手軸の周りで周方向に延在してよく、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸が互いに交差し、織り交ぜられることで、編組メッシュを形成するように、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は対頂傾斜角で配置される。
【0015】
編組は、特に、拡張器シャフトに沿って長手方向に延在し、すなわち周方向には広がらずに管状構造を形成していてもよく、編組は所定の傾斜角で長手軸の周りに周方向に延在した編組糸によって形成され、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は、編まれた編組を形成するために織り交ぜられた形状で互いに交差するように、対頂傾斜角を持つ。ここで、編組糸は、拡張器シャフトの長手軸に沿って見たときに、一定の角度で交差していない。むしろ、異なる軸方向位置で、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は、互いに異なる角度で配置される。特に、第1の軸方向位置では、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は、それらの間である第1の角度で互いに交差するように配置され、第2の軸方向位置では、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は、それらの間で第1の角度とは異なった第2の角度で互いに交差するように配置される。
【0016】
したがって、1つの実施例は、患者体内の病変の血管内治療に対する拡張器に関するもので、遠位の拡張器シャフト端と近位の拡張器シャフト端を有する拡張器シャフトと、長手軸に沿って延在する拡張器シャフトを備え、拡張器シャフトは、編組を形成するために編まれた編組糸の配置と、互いに編み込まれ、それらの間で互いにある角度で交差するよう配置される第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸と、を備える編組糸を有し、拡張器シャフトの第1の軸方向位置で、 第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸が、それらの間で互いにある第1の角度で交差するように配置され、拡張器シャフトの第2の軸方向位置で、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸が、それらの間で互いにある第2の角度で交差するように配置されている。拡張器シャフトの第1の軸方向位置、例えば、遠位の拡張器シャフト端では、第1の角度は、拡張器シャフトの第2の軸方向位置、例えば、近位の拡張器シャフト端での第2の角度よりも大きくてよい。
【0017】
編組糸の交差するグループ間において、角度が、拡張器シャフトの長手軸に沿って変化するにつれて、拡張器シャフトの柔軟性、押しやすさと言った特性が長手軸に沿って変化する。交差する編組糸の間の角度を調整することによって、ある領域では拡張器シャフトの柔軟性が増加する一方で、別の領域では拡張器シャフトの軸方向の剛性が増加、従って押しやすさが改善されるように、拡張器シャフトは規定されてもよい。編組糸のピッチ角が大きいほど柔軟性が高く、小さいほど押し込みやすくなる。拡張器による力の伝達を容易にするために、例えば、遠位端に近い拡張器は柔軟性を高め、遠位端から遠く離れた拡張器は軸方向の剛性を高める。遠位の拡張器シャフト端での第1の(ピッチ)角(以下αと呼ぶ)は、近位の拡張器シャフト端での第2の(ピッチ)角(以下βと呼ぶ)よりも大きい。例えば、第1のピッチ角は100°、第2のピッチ角は90°である。ピッチ角とは、第1の編組糸と、第1の編組糸と交差する第2の編組糸との間の角度である。このような拡張器は、最適な押し込みと力の伝達を可能にする。さらに、拡張器シャフトの操作性及び柔軟性が高められ、これにより、病変へのアクセス中、内科医が個々にガイドワイヤを支持できるようになる。
【0018】
1つの実施例では、編組糸のグループが互いに交差する角度は、第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間で変化してもよい。また角度は連続的に又は徐々に変化してもよく、第1の軸方向位置、例えば遠位の拡張器シャフト端と、第2の軸方向位置、例えば近位の拡張器シャフト端との間で、例えば、連続的に増減、又は徐々に増減する。
【0019】
別の実施例では、拡張器シャフトは異なるセクションを備えてもよく、各セクション内で、異なるグループの編組糸が、ある特定の角度で互いに交差するよう配置されている。
【0020】
例えば、1つの実施例では、拡張器シャフトは、第1の軸長を有する第1のセクションと、第2の軸長を有する第2のセクションと、を備え、第1のセクションでは、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸が、その間で第1の角度で互いに交差するよう配置され、第2のセクションでは、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸とが、その間で第2の角度で互いに交差するように配置される。したがって、異なるセクションで異なる柔軟性及び剛性(押しやすさ)の特性が出るように、異なるセクションでは、編組の編組糸は互いに異なる角度で配置される。
【0021】
上記セクションは、0より大きい有限の長さを有する。ここで、セクション同士は、例えば拡張器シャフトの遠位端に形成される第1のセクションと第1のセクションに近位に隣接する第2のセクションは、長手軸に沿って互いに有利に結合している。1つの実施例では、拡張器シャフトは、第3の軸長を有する第3のセクションを備え、第3のセクションにおいて、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸は、その間で第1と第2の角度とは異なる第3の角度で互いに交差するように配置される。したがって、第3のセクションでは、第1のセクションと第2のセクションと比較して異なる柔軟性及び押しやすさの特性が出るように、異なる編組糸が互いに対して別の第3の角度で配置されてもよい。
【0022】
編組糸は、例えば、ステンレス鋼ワイヤ又はニチノールワイヤなどの金属ワイヤ又は金属合金ワイヤなどの、ワイヤによって形成されてもよい。
【0023】
1つの実施例では、拡張器シャフトは、編組が埋め込まれたマトリックス材料から成る。マトリックス材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、FEP、又はETFEなどの高分子材料であってもよい。
【0024】
1つの実施例では、拡張器シャフトは、拡張器シャフトに沿って長手方向に延在する内部の拡張器管腔を備える。本願においては、1つ又は複数の管腔が拡張器シャフト内に設けられてもよく、拡張器管腔は、例えば造影剤又は別の流体を、拡張器を通して病変に向けて流し込むため、又はガイドワイヤに沿って拡張器を導くために使用されてもよい。拡張器管腔が効果的になるよう、編組が管腔を円周方向に取り囲むように、編組内で半径方向に配置される。
【0025】
1つの実施例では、拡張器シャフトは、拡張器シャフトに沿って長手方向に延在する、より好ましくは遠位の拡張器シャフト端から近位の拡張器シャフト端まで延在する、1つ又は複数の長手方向のワイヤを備える。例えば、多数の対になる長手方向のワイヤが設けられてもよく、更に、拡張器シャフトに沿って長手方向に延びていてもよく、効果的には、長手方向のワイヤが第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸によって形成される糸の中に編み込まれるように、長手方向のワイヤは、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸と共に織り交ぜられる。
【0026】
複数の対の長手方向のワイヤが設けられている場合、一対の長手方向のワイヤのうちの一のワイヤは、その対となっている長手方向のワイヤのすぐ近くで、所定の周方向位置に配置されてもよい。そして、異なる対の長手方向のワイヤは、周方向に沿って互いに等距離に配置される。一対の長手方向のワイヤ内では、一対のワイヤを形成する2本のワイヤ間の距離は50um未満、好ましくは30um未満である。n対の長手方向のワイヤ(nは1~10、好ましくは2~4)を追加すると、拡張器シャフトの成形性を改善できる。拡張器シャフトは、直径1mm未満、好ましくは0.5mmと1mmの間の直径を有してもよい。拡張器シャフトの直径は、1mm未満、好ましくは0.5mmから1mm未満である。
【0027】
長手方向のワイヤは、例えば、ステンレス鋼ワイヤ又はニチノールワイヤなどの金属ワイヤ又は合金ワイヤによって形成されてもよい。また高分子ワイヤにも代替し得る。したがって、患者の体内の病変の血管内治療のための開示された拡張器は、遠位の拡張器シャフト端と近位の拡張器シャフト端を有する拡張器シャフトを備え、拡張器シャフトは、編組セクションを有し、若しくは編組セクションを有さずに、長手軸に沿って延在し、拡張器シャフトが、少なくとも1つの長手方向のワイヤ、好ましくは多数の対の長手方向のワイヤを備え、ワイヤが拡張器シャフトに沿って長手方向に延在し、好ましくは遠位の拡張器シャフト端から近位の拡張器シャフト端まで延在するよう構成されている。
【0028】
別の態様では、カテーテルシステムは、サポートカテーテル管腔を形成するサポートカテーテルと、上記で説明された種類の拡張器とを備え、拡張器はサポートカテーテル管腔内に受容され、その中で移動可能である。
【0029】
病変を治療するため、拡張器がサポートカテーテル管腔の中に挿入され、例えば慢性完全閉塞を貫くために病変に向かって進んでもよく、慢性完全閉塞を貫くために、拡張器は延在し、サポートカテーテル遠位端から突き出るようにして、サポートカテーテル管腔の中を移動してもよく、あるいは、サポートカテーテルと共に拡張器が慢性完全閉塞を貫くために使用されるように、サポートカテーテルと一緒に前進してもよい。
【0030】
拡張器は、治療される人体又は動物の体内の病変に到達、又はアクセスするために使用することができる。
【0031】
拡張器はカテーテルシステムで使用されてもよい。カテーテルシステムは、多目的カテーテルシステム又はインターベンションカテーテルシステムであってもよい。多目的カテーテル システムとは、サポートカテーテルが、拡張器とガイドワイヤ、及び/又はバルーンカテーテル(例えば、経皮経管的血管形成(PTA)用バルーンカテーテルや経皮的冠状動脈形成(PTCA)用バルーンカテーテルなど)などのさまざまな内部部材と同時に又は連続して収容されるものである。多目的カテーテルシステムは、サポートカテーテルと、少なくとも1つの、好ましくは1つのサポートカテーテル管腔とを備える。
【0032】
サポートカテーテルは、拡張器がサポートカテーテルに対して移動可能となるように、サポートカテーテルに対して拡張器の軸方向の移動を制止するための制限移動状態と、サポートカテーテルから拡張器の軸方向に移動できるようにするための非制限移動状態と、で構成されたロッキングハンドルを備える。ロッキングハンドルは、作動機構とロック機構とを有する軸方向移動制限要素を備えていてもよく、軸方向移動制限要素は、非制限移動状態での軸方向の移動と比較して、制限移動状態での拡張器の軸方向の移動を制限することができる。ロッキングハンドルは、サポートカテーテル近位端又はサポートカテーテルシャフトに配置されてもよい。
【0033】
拡張器シャフトは、遠位の拡張器端と近位の拡張器端との間に延在し、遠位の拡張器端は、近位セグメント、遠位セグメント、及び任意選択として、近位セグメントと遠位セグメントとの間に配置される1つ以上の中間セグメントを有する。遠位の拡張器端は、拡張器シャフトに接続されていてもよく、又は接続可能であってもよい。近位セグメントは、拡張器シャフトに接続されていてもよく、又は拡張器シャフトに接続可能であってもよい。遠位セグメントは一様な半径方向円周を有し、近位セグメントは一様な半径方向円周を有し、遠位セグメントの半径方向円周は近位セグメントの半径方向円周より小さくてもよい。さらに別の態様では、患者の体内の病変の血管内治療のための方法が提供され、方法は、カテーテルシステムのサポートカテーテルを提供すること、サポートカテーテルはサポートカテーテル管腔を形成し、カテーテルシステムの拡張器をサポートカテーテル管腔に挿入すること、拡張器は、長手軸に沿って延材する拡張器シャフトを備えること、拡張器シャフトは、編組を形成するために編まれた編組糸の配置と、互いに編み込まれ、それらの間で互いにある角度で交差するよう配置される第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸と、を備える少なくとも1つの編組セクションを有し、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸が、拡張器シャフトの第1の軸方向位置で、ある第1の角度で交差するよう配置され、第1のグループの編組糸と第2のグループの編組糸が、拡張器シャフトの第2の軸方向位置で、第1の角度とは異なる、ある第2の角度で交差するよう配置されている、方法である。
【0034】
拡張器及びカテーテルシステムについて上述した利点及び有利な実施例は、この点において上記で参照されているように、上記方法にも同様に適用される。
【0035】
サポートカテーテルとサポートカテーテル管腔内に配置された拡張器は、クロスカテーテルシステムとして使用される。特に、拡張器を備えるカテーテルシステムは、交差のための拡張器のみを使用する柔らかいCTOキャップを有するCTOの交差を可能にするだけでなく、CTOを交差するための拡張器とともにサポートカテーテルを使用する、硬質の繊維性CTOキャップの交差も可能にする。サポートカテーテルは拡張器と連携して機能し、カラムの強度を高め、閉塞部を通過するカテーテルシステムの剛性 (押しやすさ) を高める。
【図面の簡単な説明】
【0036】
次に、本発明の思想が、図に示された実施例に関して、より詳細に説明される。
図1】多目的カテーテルシステムの1つの実施例を示す。
図2】サポートカテーテルの1つの実施例を示す。
図3】拡張器の1つの実施例を示す。
図4A】拡張器の1つの実施例を示す。
図4B】拡張器のセクションの拡大図を示す。
図5A】拡張器のさらに別の実施例の図を示す。
図5B】拡張器のセクションの拡大図を示す。
図6図5A図5Bの拡張器の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、サポートカテーテル2と遠位の拡張器端32を有する拡張器3とを備えるカテーテルシステム1、それはまた多目的カテーテルシステムと呼ばれるものを示す。サポートカテーテルシャフト23は、拡張器3を受容できるサポートカテーテル管腔26を明示する。従って拡張器3はサポートカテーテル2のサポートカテーテル管腔26内に配置される。拡張器は、ロッキングハンドル4を備え得る。
【0038】
ここで図2を参照すると、サポートカテーテル2は、サポートカテーテル遠位端21、サポートカテーテル近位端24そして、サポートカテーテル遠位端21とサポートカテーテル近位端24との間に延在するサポートカテーテルシャフト23とを備える。サポートカテーテル近位端24では、ロッキングハンドル4が配置されている。ロッキングハンドル4は、使用者よって動作できるものであってもよく、ロック位置では、サポートカテーテル2に対して拡張器3をロックするように働き、また解除位置では、拡張器3がサポートカテーテル2に対して動けるように、拡張器3をサポートカテーテル2に対してロック解除するように働く。
【0039】
サポートカテーテル2は、1つ以上のサポートカテーテルポート27、好ましくは流体を注入又は、排出するための1つ以上のポート、例えば、フラッシュポート、膨張ポート、及び/又は収縮ポートを備える。
【0040】
サポートカテーテル遠位端21は、血管内治療を行うために人体又は動物の体内に挿入できるよう設計されている。外側のカテーテル近位端24は、治療中に患者の体外に留まるように設計されており、患者の体外からカテーテルシステム1を操作できる。
【0041】
ここで図3を参照すると、拡張器3は、ここでは遠位の拡張器端32を形成する拡張器シャフト33を備え、例えば、病変部位でのCTOの貫通を可能にするテーパ形状を有してもよい。近位の拡張器端34では、拡張器マニホールド35が配置されており、拡張器マニホールド35は、1つ又は複数の拡張器管腔へのアクセスを提供する。
【0042】
例えば、1つの実施例では、拡張器3は、ガイドワイヤを受容するための第1の管腔と、例えば造影剤などの流体媒体を注入するための第2の管腔を備える。別の実施例では、拡張器3は、造影剤の注入だけでなくガイドワイヤの誘導もまたを可能にするただ1つの管腔を有してもよい。 拡張器マニホールド35は、例えば流体媒体(例えば、造影剤)を1つ又は複数の拡張器管腔に注入するための1つ又は複数の拡張器ポート36を備えることができる。
【0043】
図4A及び4Bに示すように、拡張器シャフト33は編組31によって補強されてもよく編組31は、拡張器シャフト33が延在する長手軸Lに沿って円周方向に延在する編まれた編組糸310、311によって形成されてもよい。編組31は、マトリックス材料39内に埋め込まれており(図6の概略図を参照)、マトリックス材料39は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、FEP、又はETFEなどの高分子材料によって形成される。
【0044】
編組31は、編まれた編組糸310、311によって形成される。ここで、2つのグループの編組糸が備えられ、第1のグループの編組糸である310は、ある第1の傾斜角で長手軸の周りに円周方向に延在し、第2のグループの編組糸である311は、第1のグループの編組糸310の第1の傾斜角とは反対のある第2の傾斜角で長手軸Lの周りに円周方向に延在する。異なるグループの編組糸310、311は、編まれた編組31が形成されるように織り交ぜられ、編組31は、管状で周方向に閉じた構造を有し、拡張器シャフト33の長手軸Lに沿って長手方向に延在する。
【0045】
第1のグループの編組糸310は、単一のワイヤ、又は長手軸Lの周りに巻かれた複数のワイヤによって形成され得る。同様に、第2のグループの編組糸311は、単一のワイヤ、又は長手軸Lの周りに巻かれた複数のワイヤによって形成され得る。ここで編組310、311は、編まれた編組31を形成するよう織り交ぜられる。
【0046】
図4B図4Aからも分かるように、拡張器シャフト33は、異なるセクション330、331、332、333を備え、セクション330、331、332、333は長手軸Lに沿って互いに隣接している。ここで、第1のセクション330は、拡張器シャフト33の遠位端32に、又はその近くに配置され、軸長L1を有し得る。第2のセクション331は、第1のセクション330に隣接し、軸長L2を有し得る。第3のセクション332は、第2のセクション331に隣接し、軸長L3を有し得る。第4のセクション333は、第3のセクション332に隣接し、軸長L4を有し得る。
【0047】
ここで、異なるセクション332、333は、編組31の構造が異なる。
【0048】
すなわち、図4Bから分かるように、第1のセクション330において、編組糸310、311は、角度αで互いに交差するように配置され得る。したがって、編組糸310、311は、長手軸Lに対して±α/2のピッチ角を有し、ピッチ角は、長手軸Lに対する編組糸310、311それぞれの傾きを示す。
【0049】
図4Bからさらに分かるように、第2のセクション331において、編組糸310、311は異なる角度βで互いに交差し、図示の例における角度βは、第1のセクション330の角度αよりも小さい。したがって、編組糸310、311は、長手軸Lに対してピッチ角±β/2を有し、ピッチ角は、第2のセクション331における長手軸Lに対する編組糸310、311、それぞれの傾きを示す。
【0050】
一般に、セクション330におけるように、交差する編組糸310、311間の大きな角度は、特定のセクション330の柔軟性を増大させることができる。柔軟性を上げることで、操作性が向上し、拡張器3が移送経路へ柔軟に調整され、拡張器3をサポートカテーテル2内へ挿入する前に、例えば、セクション330を望ましい形状に曲げることで、オペレータにより形成できる。
【0051】
セクション331におけるように、角度がより小さくなると、特定のセクション331における軸方向の剛性が増大し、したがって、そのセクション331における拡張器3の押しやすさが改善され得る。
【0052】
隣接する第3セクション332では、角度は再び異なってもよく、例えば、第2のセクション331の角度βより小さくてもよい。
【0053】
例えば、第3セクション332に隣接する第4セクション333には、第4セクション333の拡張器シャフト33は編組で強化されないように、編組31が設けられていない。
【0054】
図示の例における編組31は、編組メッシュを形成するために互いに編まれたワイヤ、例えばステンレス鋼ワイヤ又はニチノールワイヤなどの金属又は合金のワイヤによって形成される。ここで、第1のグループの編組糸310と第2のグループの編組糸311は、異なる傾斜角で配置され、拡張器シャフト33が、管状の周方向に閉じたワイヤメッシュによって補強されるよう互いに交差して絡み合ったメッシュを形成する。
【0055】
図5A及び図5Bを参照すると、別の実施例では、編組31による補強に加えて、(対の)長手方向のワイヤ37の配置がされていてもよい。長手方向のワイヤ37は、長手軸Lに沿って長手方向に(ただし、長手軸Lに対して偏心して)延在し、更に、編組31の編組糸310、311と絡み合っている。
【0056】
特に、図5Bから分かるよう、図5Bの上部に示される長手方向のワイヤ37、あるいは逆に、図5Bの下部に示される長手方向のワイヤ37に関し、例えば、特定の長手方向のワイヤ37が、編組糸310の半径方向外側及び編組糸311の半径方向内側に配置されるように、長手方向のワイヤ37は、編組糸310、311と交差してもよい。
【0057】
ここで図6に示されるよう、特定の対のワイヤ37は、関連する円周方向の位置に配置され、他の対の長手方向のワイヤ37に対し、周方向に、好ましくは等間隔でずれて配置されているように、長手方向のワイヤ37は、例えば対になって配置される。ここで、長手方向のワイヤ37が、編組31の層内で織り交ぜられた形状で配置されるように、編組31を形成する編組糸310、311と織り交ぜられる。
【0058】
1つ又は複数の(対)長手方向のワイヤ37を設けることによって、拡張器シャフト33の軸方向の剛性を高めることができる。さらに、拡張器シャフト33が、例えばその遠位端32又はその近くで、湾曲した形状をとるよう成形され得るという点で、成形性がさらに改善され得る。
【0059】
また、図6に概略的に示されるように、拡張器管腔38は、拡張器シャフト33内で長手方向に延在してもよく、好ましくは、拡張器管腔38は、編組31内で半径方向に形成される。1つ又は複数の管腔38が、例えば、ガイドワイヤを受容するため、又は造影剤などの液体を注入するため、拡張器シャフト33内に形成されてもよく、拡張器シャフト33に沿って長手方向に延在してもよい。
【0060】
本願発明は、上述で記述される実施例には限定されず、全く異なる方法で実施されてもよい。
【0061】
編まれた編組糸間で角度が変化する編組補強材を有する拡張器シャフトを備えることで、柔軟性と剛性を拡張器シャフトに沿って変化させられる。ここで、編組糸間の角度は、拡張器シャフトの異なるセクションで離散的に異なっていてもよい。あるいは、別の実施例では、上記角度は、拡張器シャフトの異なる軸方向の位置間で連続的に変化してもよい。連続的な変化と離散的、段階的変化を組み合わせて、あるセクション内で、交差する編組糸間の角度が一定であり、他のセクションで、角度が連続的に変化するようにしてもよい。編組の編組糸間の角度を適切に変えることで、ある領域では拡張器シャフトの柔軟性が増大し、また他の領域では、伝達力の改善のため、拡張器シャフトの剛性が増大できるよう、拡張器シャフトの柔軟性対剛性が最適化されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 カテーテルシステム
2 サポートカテーテル
21 サポートカテーテル遠位端
23 サポートカテーテルシャフト
24 サポートカテーテル近位端
26 サポートカテーテル管腔
27 サポートカテーテルポート
3 拡張器
31 編組
310 第1のグループの編組糸
311 第2のグループの編組糸
32 遠位の拡張器端
33 拡張器シャフト
330-333 シャフトセクション
34 近位の拡張器端
35 拡張器マニホールド
36 拡張器ポート
37 長手方向のワイヤ
38 拡張器管腔
39 マトリックス材料
4 ハンドル
α、β 角度
L 長手軸
L1-L4 軸長
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
【国際調査報告】