(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】菌類を栽培する方法及びその方法に従って菌類を栽培するための生産現場
(51)【国際特許分類】
A01G 18/62 20180101AFI20241129BHJP
A01G 18/40 20180101ALI20241129BHJP
A01G 18/50 20180101ALI20241129BHJP
A01G 18/70 20180101ALI20241129BHJP
【FI】
A01G18/62
A01G18/40
A01G18/50
A01G18/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529477
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2022084058
(87)【国際公開番号】W WO2023099660
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524183979
【氏名又は名称】ティーエルティー オートメーション ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラピエール,ステファン
【テーマコード(参考)】
2B011
【Fターム(参考)】
2B011BA05
2B011CA03
2B011DA01
2B011GA12
(57)【要約】
キノコを栽培する方法であって、(a)芽が形成されるまで生育セルにおいて培養基上でキノコを生育すること、(b)芽が形成された培養基を生育セルから収穫セルに移すこと、(c)収穫セル内における一番摘みの間に培養基からキノコを採取すること、(d)収穫セル内における二番摘みの間に培養基からキノコを採取すること、(e)培養基を廃棄すること、を含み、生育セルにおいて培養基は、第1のラックの積み重ねられた長手方向の床の異なる層上に提供され、収穫セルにおいて培養基は、第2のラックの積み重ねられた長手方向の床の異なる層上に提供される、方法において、第1のラックの床のそれぞれは、第2のラック上に対応する床を有し、対応する床は、生育セル内の地面レベルから見て実質的に同じレベルに延び、関連する床の長手方向に延びる同じ直線に沿って延びることを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコを栽培する方法であって、
(a)芽が形成されるまで生育セルにおいて培養基上でキノコを生育すること、
(b)芽が形成された前記培養基を前記生育セルから収穫セルに移すこと、
(c)前記収穫セル内における一番摘みの間に前記培養基からキノコを採取すること、
(d)前記収穫セル内における二番摘みの間に前記培養基からキノコを採取すること、
(e)前記培養基を廃棄すること、を含み、
前記生育セルにおいて前記培養基は、第1のラックの積み重ねられた長手方向の床の異なる層上に提供され、前記収穫セルにおいて前記培養基は、第2のラックの積み重ねられた長手方向の床の異なる層上に提供される、方法において、
前記第1のラックの前記床のそれぞれは、前記第2のラック上に対応する床を有し、対応する床は、前記生育セル内の地面レベルから見て実質的に同じレベルに延び、関連する床の長手方向に延びる同じ直線に沿って延びることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記一番摘みの間の前記キノコの採取が好ましくは手作業で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二番摘みの間の前記キノコの採取が好ましくは手作業で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生育セルの地面レベルが、前記収穫セルの地面レベルと少なくとも40cm、好ましくは少なくとも50cm、より好ましくは少なくとも60cm異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2のラックの前記床を、前記床が実質的に水平に位置決めされる第1の位置と、前記床が水平から見て傾斜している第2の位置との間で、前記床の長手方向に延びる軸X上で傾けることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
キノコを栽培するための生産現場であって、
(a)垂直に積み重ねられた長手方向の床の異なる層を含む第1のラックが設けられた生育セル、
(b)垂直に積み重ねられた長手方向の床の異なる層を含む第2のラックが設けられた収穫セル、
を備える生産現場において、
前記第1のラックの前記床のそれぞれは、前記第2のラック上に対応する床を有し、対応する床は、前記生育セル内の地面レベルから見て実質的に同じレベルに延び、関連する床の長手方向に延びる同じ直線に沿って延びることを特徴とする、生産現場。
【請求項7】
前記第1のラックの最も下の床が、前記第2のラックの最も下の床が前記収穫セル内でフロアレベルから位置決めされるのに比べて、前記生育セル内でフロアレベルにさらに近づいて位置決めされる、請求項6に記載の生産現場。
【請求項8】
前記生育セルと前記収穫セルとが互いに距離を置いて位置決めされ、両方のセルの間に廊下が設けられ、前記廊下にブリッジユニットが移動可能に配置され、前記ブリッジユニットは、複数の床を有するラックとして構成され、前記ブリッジの各床は、前記第1のラック上の対応する床を有し、これにより、前記生育セルと前記収穫セルとの間に前記ブリッジを位置決めすると、前記ブリッジの各床は、前記培養基を前記第1のラック上の床から前記第2のラック上の対応する床に移送する際に、前記培養基の支持体を提供する、請求項6又は7に記載の生産現場。
【請求項9】
前記生育セルの地面レベルが、前記収穫セルの地面レベルと少なくとも40cm、好ましくは少なくとも50cm、より好ましくは少なくとも60cm異なる、請求項6~8のいずれか一項に記載の生産現場。
【請求項10】
第2のラックの前記床が、前記床が実質的に水平に位置決めされる第1の位置と、前記床が水平から見て傾斜している第2の位置との間で、前記床の長手方向に延びる軸X上で回転するように構成される、請求項6~9のいずれか一項に記載の生産現場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、菌類、特にキノコを栽培するための方法、及びその方法に従って菌類を栽培するための生産現場に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
キノコ、特に食用キノコの栽培は、格納庫に設置されたラック内の棚で行うのが一般的である。工業化された農場においては、ラックは、通常、垂直方向に積み重ねられた5~6個の水平棚を1列又は2列保持し、各棚は約80m~120mの長さを有する。垂直方向に積み重ねられた棚を1列保持するラックの場合、棚の幅は通常1.20~1.50メートルであり、垂直方向に積み重ねられた棚を2列保持するラックの場合、棚の幅は通常0.60~0.75メートルである。
【0003】
手短に言えば、キノコの栽培は、通常2週間かかる1つ以上の生育フェーズと、それに続く1つ以上の収穫フェーズとを有する栽培サイクルに従う。
【0004】
工業化されたキノコ農場においては、栽培サイクルは通常、被覆土壌で覆われたコロニー形成された培養基から始まる。コロニー形成された培養基とは、真菌の菌糸体(例えば、キノコの種菌)が接種された培養基であり、菌糸体が少なくとも部分的に培養基にコロニーを形成したものである。生育フェーズの開始時に、コロニー形成された培養基は培養セル内に配置され、被覆土壌の層で覆われる。この場合、生育フェーズは菌糸体生育フェーズと出芽フェーズとを含む。菌糸体生育フェーズの間、菌糸体は培養基から被覆土壌を貫いて成長する。その後、菌糸体によって芽が形成される。これが出芽フェーズである。菌糸体生育フェーズと出芽フェーズとを含む生育フェーズ全体は約14日間である。
【0005】
出芽フェーズの後、収穫フェーズが始まる。収穫フェーズとは、キノコを収穫する、つまり「採取する」期間である。収穫は好ましくは手作業で行われる。収穫フェーズは「一番摘み(first flush)」とも呼ばれる最初の収穫フェーズから始まる。一番摘みの間、採取は3~6日間行われ、その後採取は数日間中止される。その後、第2の収穫フェーズ、別名二番摘みが始まり、採取は約2~5日間行われる。一番摘みと二番摘みは合わせて約14日間続く。所望なら、三番摘みを収穫フェーズの間に行うことができるが、キノコの収量と品質は摘みごとに低下するため、三番摘みは経済的に望ましくないと考えられることが多い。
【0006】
効率的な生育フェーズに重要なのは、温度、光、圧力、水分、空気循環などの環境条件をうまく調節することであるが、これは労働者にとっての良好な収穫条件と両立しない。
【0007】
キノコの収穫又は採取は、労働集約的であり、労働者に反復的な動作を要求し、長時間にわたって負担のかかる作業姿勢を保つことを要求する負担のかかる仕事であるが、それは特に、棚が互いに上下に密接に重ねられているラックからキノコを収穫する場合に顕著である。
【0008】
収穫時の労働者の作業を容易にするために、NL9001797号は、キノコがラックの重ねられた棚の上に設けられた長手方向の箱の中で育てられる設備を開示している。箱は、それぞれ長さ10m、幅1.5mの寸法であり、棚の長手方向に個別に移動可能である。ラックの隣のスペースには、作業者がキノコを収穫するのに都合のよい高さに位置決めされた1つの棚を備える収穫ユニットが設けられている。
【0009】
作業時、一度に1つの箱がラックの1つの棚から収穫ユニットの棚にスライドされ、キノコを収穫する。収穫されると、箱はラック内の元々それが保管されていた棚にスライドして戻され、別の箱が収穫棚に置かれる。
【0010】
NL‘797号は労働者の作業快適性を向上させるが、経済的に実行可能な解決策を提供できていない。第1に、それは一度に1つの箱しか収穫できないからであり、第2に、開示されたワークフローは、箱をラックから収穫棚に出し入れするために多くのダウンタイムを伴うからである。収穫が行われないダウンタイムは、特に、各箱が収穫フェーズの間に10回を超えて容易に収穫される可能性があることを考慮すると、生産効率を低下させる。
【0011】
さらに、NL‘797号は、10mという非常に限定された長さの箱から開始しており、これは、NL‘797号に開示された箱のように容易に移動するものではない最大120mの長さと4トン/ネット超の重量とを有する堆肥と被覆材で覆われた現在のネットとは矛盾する。
【0012】
国際公開第2018/185644号は、複数の栽培セルを備える工業化された現場を開示しており、第1の栽培セルはキノコの生育フェーズに指定され、第2の栽培セルは手によるキノコの収穫フェーズに指定され、第3の栽培セルは三番以降の摘みの間のキノコの機械採取に指定されている。
【0013】
第1の栽培セルにおいて、キノコはラックに配置された床で育てられ、各ラックには4層の床が積み重ねられている。手摘みを可能にするため、第2の栽培セルは第1の栽培セルよりも表面積が大きく、これによりキノコの生えた床をより離して最大2段重ねに配置することが可能になり、その結果、かなり大きな地域表面が得られる。1つの栽培セルから別の栽培セルへキノコを移すために、国際公開第‘644号は、床上に配置されたマット上にコロニー形成された培養基と被覆土壌を提供することに言及している。第1のマットを巻き上げることによって、その上に提供された培養基及び被覆土壌は、第1のマットの隣に広げられた第2のマットに移すことができる。このような取り扱いは面倒であり、培養基と被覆土壌層に亀裂や割れを生じさせる可能性がある。
【0014】
以上のことから、キノコ栽培のための容易に管理可能であり且つ効率的なワークフローに対するニーズが残っていることは明らかである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明は、上記の必要性に対処するものであり、キノコを栽培する方法であって、
(a)芽が形成されるまで生育セルにおいて培養基上でキノコを生育すること、
(b)芽が形成された培養基を生育セルから収穫セルに移すこと、
(c)収穫セル内における一番摘みの間に培養基からキノコを採取すること、
(d)収穫セル内における二番摘みの間に培養基からキノコを採取すること、
(e)培養基を廃棄すること、を含み、
生育セルにおいて培養基は、第1のラックの積み重ねられた長手方向の床の異なる層上に提供され、収穫セルにおいて培養基は、第2のラックの積み重ねられた長手方向の床の異なる層上に提供される、方法において、
第1のラックの床のそれぞれは、第2のラック上に対応する床を有し、対応する床は、生育セル内の地面レベルから見て実質的に同じレベルに延び、関連する床の長手方向に延びる同じ直線に沿って延びることを特徴とする方法に関する。
【0016】
一番摘みの間のキノコの採取は、好ましくは手作業で行われる。二番摘みの間のキノコの採取は、好ましくは手作業で行われる。
【0017】
好ましくは、生育セルの地面レベルは、収穫セルの地面レベルと少なくとも50cm、好ましくは少なくとも60cm異なる。
【0018】
好ましい方法によれば、第2のラックの床は、床が実質的に水平に位置決めされる第1の位置と、床が水平から見て傾斜している第2の位置との間で、床の長手方向に延びる軸X上を回転するように構成される。
【0019】
本発明はまた、キノコを栽培するための生産現場であって、
(a)垂直に積み重ねられた長手方向の床の異なる層を含む第1のラックが設けられた生育セル、
(b)垂直に積み重ねられた長手方向の床の異なる層を含む第2のラックが設けられた収穫セル、を備える生産現場において、
第1のラックの床のそれぞれは、第2のラック上に対応する床を有し、対応する床は、生育セル内の地面レベルから見て実質的に同じレベルに延び、関連する床の長手方向に延びる同じ直線に沿って延びることを特徴とする生産現場に関する。
【0020】
好ましくは、第1のラックの最も下の床は、第2のラックの最も下の床が収穫セル内でフロアレベルから位置決めされるのに比べて、生育セル内でフロアレベルにさらに近づいて位置決めされる。
【0021】
本発明の好ましい生産現場では、生育セルと収穫セルとが互いに距離を置いて位置決めされ、両方のセルの間に廊下が設けられ、廊下にブリッジユニットが移動可能に配置され、ブリッジユニットは、複数の床を有するラックとして構成され、ブリッジの各床は、第1のラック上の対応する床を有し、これにより、生育セルと収穫セルとの間にブリッジを位置決めすると、ブリッジの各床は、培養基を第1のラック上の床から第2のラック上の対応する床に移送する際に、培養基の支持体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な記載
図1に示すように、本発明による生産現場は、この場合、3つの生育セル(1)、3つの収穫セル(2)、及び生育セルと収穫セル(1、2)の間の廊下(3)を備えている。
【0024】
生育セルと収穫セルの両方は、好ましくは、密閉的に遮断できるように作られ、各セル内の環境条件を独立して良好に制御できるように、わずかな過圧下に置かれる。
【0025】
各生育セル(1)は、横断方向の側(4)と長手方向の側(5)とを備える長手方向の部屋として作られる。両方の横断方向の側(4)にはアクセスドア(6)が設けられている。示された生産現場の生育セル(1)は、隣接する2つの生育セル(1)の間に共通の長手方向の壁(5a)を有するように、互いに隣接して配置されている。各生育セルの第1の横断方向の側(4a)にあるドア(6a)は、現場入口(7)へのアクセスを提供し、一方、各生育セルの第2の横断方向の側(4b)にあるドア(6b)は、廊下(3)へのアクセスを提供する。各生育セル(1)は、長さが約82m~122m、幅が4.5mであり、レベル0とさらに表示されているフロアレベルを有する。
【0026】
収穫セル(2)もまた、生育セル(1)から見て廊下(3)の反対側に隣接して配置されている。各収穫セルは、横断方向の側(8)と長手方向の側(9)とを備える長手方向の部屋として作られている。両方の横断方向の側(8)にはアクセスドア(10)が設けられている。示された生産現場の収穫セル(2)は、隣接する2つの収穫セル(2)の間に共通の長手方向の壁(9a)を有するように、互いに隣接して配置されている。各収穫セルの第1の横断方向の側(8a)にあるドア(10a)は、廊下(3)へのアクセスを提供し、一方、各収穫セルの第2の横断方向の側(8b)にあるドア(10b)は、労働者区域(11)又は包装室へのアクセスを提供する。
【0027】
各収穫セル(3)は、長さが約85m~125m、幅が約4.5mであり、好ましくは、レベル0より40cm、好ましくは50cm~120cm、好ましくは60cm~90cm低いフロアレベルを有する。
【0028】
図1及び2に示すように、各生育セルには2つのラック(12)が設けられている。各ラックは、長手方向の中央フレーム(13)を備え、その両側に、約40cm~60cmの垂直距離で上下に位置決めされた、垂直に積み重ねられた5つの床(14)の列がある。両列の床は同じ高さに一対ずつ位置決めされている。
【0029】
各列の最も下の床は、レベル0より約10cm~20cm上に位置する。
【0030】
各床は、好ましくは、80m~120mの長さ、及び60cm~75cmの間の幅(長手方向に垂直な水平面で測定)を有し、主に水平に延びる支持面を有する。好ましくは、生育セルの床は固定されており、対応するラックから見て傾くことができない。
【0031】
本発明によれば、生育セルの各床は、収穫セルに(単一の)対応する床を有する(逆も同様である)。
【0032】
この場合、各収穫セルには2つのラック(15)が設けられる。各ラック(15)は、長手方向の中央フレーム(16)を備え、その両側に、約40cm~60cmの垂直距離で互いに上下に位置決めされた、垂直に積み重ねられた5つの床(17)の列がある。両列の床は同じ高さに一対ずつ位置決めされている。
【0033】
収穫セル内のラックは、その各床が、生育セル内の対応する床と同じ長手方向に延び、レベル0から見て実質的に同じ高さになるように位置決めされる。したがって、収穫セルの床の数は、生育セルの床の数と同じである。収穫セル内の床は、好ましくは、生育セル内の床とほぼ同じ寸法を有する。
【0034】
好ましくは、収穫セル内のラックの床(17)は、床が実質的に水平に位置決めされる第1の位置と、床が収穫セル内の床に隣接する長手方向の通路に向かって水平から見て傾斜する第2の位置との間で、床の長手方向に延びる軸X上を回転するように構成される。
【0035】
図2に示すように、収穫セルは、好ましくは、生育セルの地面レベル(レベル0)より少なくとも40cm、好ましくは少なくとも50cm、最も好ましくは少なくとも60cm低い地面レベルを有し、その結果、収穫セル内のラックの最も下の床は、収穫セルの地面レベルより約40cm、好ましくは50cm~70cm上に位置決めされる。
【0036】
さらに、収穫セル内の床の各列の隣に専用の経路が設けられ、この経路は、収穫セル内の床の全長に沿って長手方向に延び、またこの経路は、労働者が経路を垂直に移動させることにより、前記経路を介して1つのラック内の全ての床にアクセスできるように、経路を垂直に移動させることを可能にする構造に取り付けられている。経路の移動は、好ましくは、収穫セル内の床の水平位置と、各床上のキノコの採取を容易にするために床が経路に向かって傾けられる位置との間の傾斜と同様に、電動化され、電子的に駆動される。
【0037】
労働者区域又は包装室に面するラックの側に、収穫室のフロアに設けられたハッチからアクセス可能で、廃棄された培養基を収穫室から搬出する役割を果たすフロア下コンベヤを設けることができる。
【0038】
廊下にはブリッジが設けられ、このブリッジは、生育セル内のラックと同じ数及び構成の床を有するラックを備える。ブリッジは、生育セル内のラックの横断方向に移動可能であり、好ましくは固定レール上で案内される。ブリッジの移動により、ラック及びその床は、一方では生育セル、他方では収穫セルにおける2つの対応するラックの対向する端部の間に位置決めすることができ、その結果、ラックの生育床上のマット上に提供された培養基を、ブリッジを越えてマットと共に収穫セルの対応する床まで引っ張ることができる。
【0039】
マットを引っ張るための装置は当該技術分野において周知であり、現在、キノコ栽培ラックから培養基を載せたマットを装填・取り出しするために使用されている。これらの装置の詳細についてはここでは開示しない。
【0040】
使用時、この生産現場は、菌糸体によってコロニー形成された培養基が装填され且つ被覆土壌で覆われたマットが生育セル内の床上に引かれる栽培サイクルによく適しており、生育セルでは、菌糸体生育フェーズと出芽フェーズとを含む生育フェーズが、十分に制御された環境条件下で起こる。約14日後、キノコは収穫の準備が整うと、ブリッジを経由して収穫セルに移され、そこで労働者は一番摘みにおいて3~6日間キノコを手で採取し、その数日後に二番摘みが行われる。一番摘みと二番摘みを合わせて約14日間かかる。キノコを生育セルから収穫セルに移すと、新しい培養基を備えるマットを生育セルに装填することができ、その結果、収穫セルで二番摘みが終了する約14日後に、培養基を廃棄し、新たに出芽したキノコを収穫セルに装填することができる。
【0041】
本発明の生産現場及び関連する方法により、互いに独立して(さらにはセルごとに独立して)制御できる理想的な生育及び収穫条件が可能になる。さらに、本発明の生産現場及び方法は、培養基を備えるマットは一度だけ移される必要があり、常に(装填から廃棄まで)同一方向及び同一レベルの直線に沿って移されるため、移送装置の操作が直線的で、簡単で、信頼できるため、ダウンタイムが最小で、収量が最大となる栽培サイクルを可能にする。さらに、生育セルと収穫セルとで地面レベルが異なるため、収穫セルでの良好な採取条件を損なうことなく、生育セルで最適な空気の流れを維持することができる。収穫セル内に傾斜棚を備えたラックを設置することで、採取時の困難な作業姿勢を最小限に抑えること、さらには排除することがさらに改善される。
【国際調査報告】