(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】回折オプティクスの複数の層を有する色消しIOL
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529543
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 IB2022061000
(87)【国際公開番号】W WO2023100009
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】シンウク リー
(72)【発明者】
【氏名】シン ホン
(72)【発明者】
【氏名】ミョン-テク チェ
(72)【発明者】
【氏名】チーコアン シュイ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097SA02
4C097SA05
(57)【要約】
マルチ層眼内レンズ(IOL)は、第1生体適合性材料を有する前部回折オプティクス層と、第1生体適合性材料とは異なる第2生体適合性材料を有する後部回折オプティクス層と、を含むレンズボディを含む。前部回折オプティクス層及び後部回折オプティクス層は、前部回折オプティクス層と後部回折オプティクス層との間においてギャップを有する状態において、レンズボディの周辺非光学部分内において封止されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ層眼内レンズ(IOL)であって、
レンズボディを有し、
前記レンズボディは、
第1生体適合性材料を有する前部回折オプティクス層と、
前記第1生体適合性材料とは異なる第2生体適合性材料を有する後部回折オプティクス層と、
を有し、
前記前部回折オプティクス層及び前記後部回折オプティクス層は、前記前部回折オプティクス層と前記後部回折オプティクス層との間においてギャップを有する状態において、前記レンズボディの周辺非光学部分内において封止されている、マルチ層IOL。
【請求項2】
前記第1生体適合性材料は、0~15%の膨張係数を有し、
前記第2生体適合性材料は、0~15%の膨張係数を有し、且つ、
前記第1及び第2生体適合性材料の前記膨張係数の間の差は5%未満である、請求項1に記載のマルチ層IOL。
【請求項3】
前記第1生体適合性材料は、5~60のAbbe数を有し、且つ、
前記第2生体適合性材料は、5~60のAbbe数を有する、請求項1に記載のマルチ層IOL。
【請求項4】
前記前部回折オプティクス層は、前記前部回折オプティクス層の後部表面上において環状エシェレットの第1の組を含み、且つ、
前記後部回折オプティクス層は、前記後部回折オプティクス層の前部表面上において環状エシェレットの第2の組を含む、請求項3に記載のマルチ層IOL。
【請求項5】
前記環状エシェレットの第1の組のステップ高さは、1μm~300μmであり、且つ、
前記環状エシェレットの第2の組のステップ高さは、1μm~300μmである、請求項4に記載のマルチ層IOL。
【請求項6】
前記環状エシェレットの第1の組の半径方向間隔は、10μm~2000μmであり、且つ、
前記環状エシェレットの第2の組の半径方向間隔は、10μm~2000μmである、請求項4に記載のマルチ層IOL。
【請求項7】
前記ギャップは、1μm~1000μmの厚さを有する、請求項1に記載のマルチ層IOL。
【請求項8】
前記レンズボディに結合された触覚部分を更に有し、前記触覚部分は、第3生体適合性材料を有する、請求項1に記載のマルチ層IOL。
【請求項9】
マルチ層眼内レンズ(IOL)であって、
レンズボディを有し、
前記レンズボディは、
前部回折オプティクス層と、
前記レンズボディの周辺非光学部分内において前記前部回折オプティクス層に接合された後部回折オプティクス層と、
を有し、
前記レンズボディは、可視光スペクトルにおいて80%~100%の回折効率を有する、マルチ層IOL。
【請求項10】
前記前部回折オプティクス層は、第1生体適合性材料を有し、且つ、
前記後部回折オプティクス層は、前記第1生体適合性材料とは異なる第2生体適合性材料を有する、請求項9に記載のマルチ層IOL。
【請求項11】
前記第1生体適合性材料は、0~15%の膨張係数を有し、
前記第2生体適合性材料は、0~15%の膨張係数を有し、且つ、
前記第1及び第2生体適合性材料の前記膨張係数の間の差は5%未満である、請求項10に記載のマルチ層IOL。
【請求項12】
前記第1生体適合性材料は、5~60のAbbe数を有し、且つ、
前記第2生体適合性材料は、5~60のAbbe数を有する、請求項10に記載のマルチ層IOL。
【請求項13】
前記前部回折オプティクス層は、前記前部回折オプティクス層の後部表面上において環状エシェレットの第1の組を含み、且つ、
前記後部回折オプティクス層は、前記後部回折オプティクス層の前部表面上において環状エシェレットの第2の組を含む、請求項12に記載のマルチ層IOL。
【請求項14】
前記環状エシェレットの第1の組のステップ高さは、1μm~300μmであり、且つ、
前記環状エシェレットの第2の組のステップ高さは、1μm~300μmである、請求項13に記載のマルチ層IOL。
【請求項15】
前記環状エシェレットの第1の組の半径方向間隔は、10μm~2000μmであり、且つ、
前記環状エシェレットの第2の組の半径方向間隔は、10μm~2000μmである、請求項13に記載のマルチ層IOL。
【請求項16】
マルチ層眼内レンズ(IOL)を構成する方法であって、
入力パラメータに基づいて、IOLの前部回折オプティクス層の後部表面上における環状エシェレットの第1の組の半径方向間隔及びステップ高さ及び前記IOLの後部回折オプティクス層の前部表面上における環状エシェレットの第2の組の半径方向間隔及びステップ高さを演算するステップと、
前記環状エシェレットの第1の組の前記演算された半径方向間隔及び前記演算されたステップ高さ及び前記環状エシェレットの第2の組の前記演算された半径方向間隔及び前記演算されたステップ高さに基づいて前記IOLを形成する又は前記IOLが形成されるようにするステップと、
を有し、
前記入力パラメータは、前記前部回折オプティクス層と関連する第1生体適合性材料の第1屈折率及び前記後部回折オプティクス層と関連する第2生体適合性材料の第2屈折率を有する、方法。
【請求項17】
前記IOLを形成する又は前記IOLが形成されるようにする前記ステップは、
前記前部回折オプティクス層及び前記後部回折オプティクス層の周辺非光学部分内において前記前部回折オプティクス層及び前記後部回折オプティクス層を接合するステップと、
前記接合ステップの後に、前記前部回折オプティクス層の前記後部表面上における前記環状エシェレットの第1の組及び前記後部回折オプティカル層の前記前部表面上における前記環状エシェレットの第2の組を形成するステップと、
を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記IOLを形成する又は前記IOLが形成されるようにする前記ステップは、
前記前部回折オプティクス層の前記後部表面上における前記環状エシェレットの第1の組及び前記後部回折オプティカル層の前記前部表面上における前記環状エシェレットの第2の組を形成するステップと、
前記形成ステップの後に、前記前部回折オプティクス層及び前記後部回折オプティクス層の周辺非光学部分内において前記前部回折オプティクス層及び前記後部回折オプティクス層を接合するステップと、
を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記前部回折オプティクス層及び前記後部回折オプティクス層の周辺非光学部分に触覚部分を装着するステップを更に有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1生体適合性材料は、25~50のAbbe数を有し、且つ、
前記第2生体適合性材料は、25~50のAbbe数を有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、その発明者がMyoung-Taek Choi、Xin Hong、Shinwook Lee、及びZhiguang Xuである2021年11月30日付けで出願された「ACHROMATIC IOL WITH MULTIPLE LAYERS OF DIFFRACTIVE OPTICS」という名称の米国仮特許出願第63/284,318号の優先権の利益を主張するものであり、この特許文献の内容は、十分且つ完全に本明細書において記述されているかのように、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【背景技術】
【0002】
回折オプティクスの1つの層を使用する従来技術の眼内レンズ(IOL)は、多くの場合に、その設計波長において又はその近傍においてのみ高い回折効率を提供している。更に詳しくは、従来技術のIOLの場合、回折効率は、多くの場合に、光の波長が設計波長から逸脱するのに伴って減少している。屈折表面及び回折表面を有する既存のハイブリッドIOLは、焦点距離の波長依存性について補償することが可能であり、これは、無色化とも呼称されている。但し、無色化は、広帯域スペクトルにおける低い回折効率に起因して制限されている。このような低い回折効率は、望ましくないレベルの回折への光漏洩を生成し、且つ、従って、画像品質を低減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、全可視光スペクトルの全体を通じて回折効率の変動について補償するIOLに対するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様は、マルチ層眼内レンズ(IOL)を提供する。マルチ層IOLは、第1生体適合性材料を有する前部回折オプティクス層と、第1生体適合性材料とは異なる第2生体適合性材料を有する後部回折オプティクス層と、を含むレンズボディを含む。前部回折オプティクス層及び後部回折オプティクス層は、前部回折オプティクス層と後部回折オプティクス層との間にギャップを有する状態において、レンズボディの周辺非光学部分内において封止されている。
【0005】
また、本開示の態様は、マルチ層眼内レンズ(IOL)を提供している。マルチ層IOLは、前部回折オプティクス層と、レンズボディの周辺非光学部分内において前部回折オプティクス層に接合された後部回折オプティクス層と、を含むレンズボディを含む。レンズボディは、可視光スペクトルにおいて80%~100%の回折効率を有する。
【0006】
本開示の態様は、マルチ層眼内レンズ(IOL)を構成する方法を更に提供している。方法は、入力パラメータに基づいてIOLの前部回折オプティクス層の後部表面上の環状エシェレットの第1の組の半径方向間隔及びステップ高さ及びIOLの後部回折オプティクス層の前部表面上の環状エシェレットの第2の組の半径方向間隔及びステップ高さを演算するステップと、環状エシェレットの第1の組の演算された半径方向間隔及び演算されたステップ高さ及び環状エシェレットの第2の組の演算された半径方向間隔及び演算されたステップ高さに基づいてIOLを形成する又はIOLが形成されるようにするステップと、を含む。入力パラメータは、前部回折オプティクス層と関連する第1生体適合性材料の第1屈折率及び後部回折オプティクス層と関連する第2生体適合性材料の第2屈折率を有する。
【0007】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上で簡潔に要約した本開示のより具体的な説明を、実施形態を参照することによって得ることができ、その幾つかを添付の図面に示す。しかし、添付図面は本開示の幾つかの態様のみを示しており、本開示は他の等しく有効な実施形態を許容し得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】特定の実施形態によるマルチ層眼内レンズ(IOL)の平面図を示す。
【
図1B】特定の実施形態による
図1AのIOLのレンズボディの側面図を示す。
【
図1C】特定の実施形態による従来の単一層IOLを示す。
【
図2】特定の実施形態による単焦点マルチ層IOL及び単焦点単一層IOLの回折効率を示す。
【
図3】特定の実施形態による単焦点マルチ層IOL及び単焦点単一層IOLの変調伝達関数(MTF)を描く。
【
図4】特定の実施形態による単焦点マルチ層IOL及び単焦点単一層IOLの変調伝達関数(MTF)を描く。
【
図5】特定の実施形態による単焦点マルチ層IOL及び単焦点単一層IOLの視力を描く。
【
図6】特定の実施形態によるEDOF(Enhanced Depth Of Focus)マルチ層IOL及びEDOF単一層IOLのMTFを描く。
【
図7】特定の実施形態によるEDOF(Enhanced Depth Of Focus)マルチ層IOL及びEDOF単一層IOLのMTFを描く。
【
図8】特定の実施形態によるEDOFマルチ層IOL及びEDOF単一層IOLの視力を描く。
【
図9】特定の実施形態による三焦点マルチ層IOL及び三焦点単一層IOLのMTFを描く。
【
図10】特定の実施形態による三焦点マルチ層IOL及び三焦点単一層IOLのMTFを描く。
【
図11】特定の実施形態による三焦点マルチ層IOL及び三焦点単一層IOLの視力を描く。
【
図12】特定の実施形態によるマルチ層IOLを設計、構成、及び/又は形成する例示用のシステムを描く。
【
図13】特定の実施形態によるマルチ層IOLを形成する例示用の動作を描く。
【発明を実施するための形態】
【0009】
理解を容易にすべく、可能であれば同一の参照符号を用いて各図に共通する同一要素を指定する。一実施形態の要素及び特徴が、更に言及することなく他の実施形態に有利に組み込まれる場合も考えられる。
【0010】
本明細書において記述されている実施形態は、マルチ層眼内レンズ(IOL)を提供している。マルチ層IOLは、回折オプティクスの2つ以上の層を含み、且つ、従来の単一層IOLとの比較において、無色化(即ち、焦点距離の波長依存性の低減又は除去)及び全可視光スペクトルの全体を通じた回折効率の改善の両方を実現することができる。マルチ層IOLは、従来の単一層IOLとの比較において、変調伝達関数(MTF)及び視力を更に改善することができる。
【0011】
マルチ層IOL
図1Aは、特定の実施形態によるマルチ層眼内レンズ(IOL)100の平面図を示している。マルチ層IOL100は、レンズボディ102と、レンズボディ102の周辺非光学部分に結合された触覚部分104と、を含む。
図1Bは、レンズボディ102の側面図を示している。レンズボディ102の形状及び曲率は、例示を目的としてのみ示されており、且つ、その他の形状及び曲率も、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、
図1Aに示されているレンズボディ102は、両凸形状を有する。その他の例においては、レンズボディ102は、平凸形状、凸凹形状、又は平凹形状を有することができる。
【0012】
レンズボディ102は、例えば、約6mmなどのように、約4.5mm~約7.5mmの直径φを有する。レンズボディ102は、曲率半径R
1を有する前部外側表面106Aを有する前部回折オプティクス層102Aと、曲率半径R
2を有する後部外側表面106Pを有する後部回折オプティクス層102Pと、を含む。特定の実施形態においては、
図1Bに示されているように、マルチ層IOL100は、前部回折オプティクス層102Aの後部表面(即ち、前部外側表面106Aとは反対の表面)上の環状エシェレットの第1の組108Aと、後部回折オプティクス層102Pの前部表面(即ち、後部外側表面106Pとは反対の表面)上の環状エシェレットの第2の組108Bと、を有する(例えば、二焦点及び三焦点などのように、複数の焦点を有する)多焦点IOLである。
【0013】
環状エシェレット108A、108Bは、それぞれ、同心円形格子を形成している。環状エシェレット108Aは、2つの隣接する環状エシェレットの間において間隔d1を有し、且つ、それぞれは、ステップ高さh1を有する。環状エシェレット108Bは、2つの隣接する環状エシェレット108Bの間において間隔d2を有し、且つ、それぞれは、ステップ高さh2を有する。ステップ高さh1は、すべての環状エシェレット108Aについて同一であってもよく、或いは、異なる環状エシェレット108Aについて異なっていてもよく、且つ、例えば、35マイクロメートルなどのように、約1μm~約300マイクロメートルであってよい。
【0014】
ステップ高さh2は、すべての環状エシェレット108Bについて同一であってもよく、或いは、異なる環状エシェレット108Bについて異なっていてもよく、且つ、例えば、約41μmなどのように、約1μm~約300μmであってよい。半径方向間隔d1は、すべての環状エシェレット108Aについて同一であってもよく、或いは、異なる環状エシェレット108Aについて異なっていてもよく、且つ、例えば、約500μmなどのように、約10μm~約2000μmであってよい。環状エシェレット108Bの半径方向間隔d2は、環状エシェレット108Aが環状エシェレット108Bに近接し且つ対向するように、環状エシェレット108Aの半径方向間隔d1と一致することができる。
【0015】
図1Bにおいて、環状エシェレットの第1の組108Aは、前部回折オプティクス層102Aの後部表面上において形成されており、且つ、環状エシェレットの第2の組108Bは、後部回折オプティクス層102Pの前部表面上において形成されているが、
図1Bに示されていない特定のその他の実施形態においては、環状エシェレットの第1の組108Aは、前部外側表面106A上において形成されており、且つ、環状エシェレットの第2の組108Bは、後部外側表面106P上において形成されていることに留意されたい。
【0016】
更には、マルチ層IOL100は、多焦点IOLであるが、いくつかのその他の実施形態(図示されてはいない)においては、マルチ層IOL100は、外側表面(図示されてはいない)上において環状エシェレットを有していない単焦点(1つの焦点を有する)IOLであることに留意されたい。いくつかのその他の実施形態において、マルチ層IOL100は、後部外側表面106P上において環状エシェレットを有するEDOF(Extended Depth Of Focus)IOL(細長い焦点を有するもの)である。
【0017】
回折オプティクス層102A及び102Pは、回折オプティクス層102A及び102Pの間においてギャップ110を有する状態において、化学接合、熱接合、UV接合、又はその他の適切なタイプの接合により、レンズボディ102の周辺非光学部分内において封止を生成するように1つに接合することができる。ギャップ110の厚さは、例えば、20μmなどのように、約1μm~約1000μmであってよい。ギャップ110は、例えば、空気により、或いは、平衡食塩水(BSS)などの房水に類似した水様の流体により、充填することができる。特定の実施形態において、環状エシェレット108A、108Bは、それぞれ、回折オプティクス層102A及び102Pの接合の前に、回折オプティクス102A、102P上において製造されている。特定のその他の実施形態において、環状エシェレット108A、108Bは、環状エシェレットを有していない回折オプティクス層102A及び102Bの接合の後に、レーザー書込み又はその他の適切な技法によって製造されている。
【0018】
回折オプティクス層102A、102Pは、それぞれ、シリコーンポリマー材料、アクリルポリマー材料、ヒドロゲルポリマー材料などの透明な曲がりやすい生体適合性材料から製造することができる。回折オプティクス層102A、102Pが製造されている2つの材料の剛性及び柔軟性を示すヤング率は、乾燥状態の23℃において約10~約300MPaであってよく、且つ、水分供給された状態の35℃において約0.3~約100MPaであってよく、これらは、マルチ層IOL100が人間の眼の内側において実装されることに適している。例えば、第1IOL材料のヤング率は、乾燥状態の18℃において約140MPa~150MPa、乾燥状態の23℃において約56MPa~66MPa、及び水分補給された状態の35℃において約2.3MPa~2.5MPaであってよい。第2IOL材料のヤング率は、乾燥状態の18℃において約130MPa~140MPa、乾燥状態に23℃において約60MPa~70MPa、及び水分補給された状態の35℃において約2.0MPa~2.2MPaであってよい。回折オプティクス層102A、102Pが製造されている2つの材料の膨張係数(即ち、眼内において浸漬された際の材料の膨張又は収縮の指標)は、回折オプティクス層102A及び102Pの間の封止を保証するために、約5%未満の差を有する、例えば、約0.5%及び0.6%などのように、0%~15%で類似し得る。
【0019】
回折オプティクス層102A、102Pは、それぞれ、屈折率nd1及びnd2と、異なるAbbe数vd1及びvd2と、有することができる。特定の実施形態において、屈折率nd1及びnd2の間の差は、約0~0.8である。いくつかの実施形態において、Abbe数vd1及びvd2は、25~50であってよい。いくつかの実施形態において、Abbe数vd1及びvd2の間の差は、5~60.0である。
【0020】
前部回折オプティクス層102Aの前部外側表面106A及び/又は後部回折オプティクス層102Pの後部外側表面106Pは、回折オプティクス層102A及び102Pの残りの部分の材料よりも大きな剛性を有する生体適合性材料(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))から製造することができる。
【0021】
触覚部分104は、半径方向に延在するストラット(「触覚部」とも呼称される)104A及び104Bを含む。触覚部104A及び104Bは、PMMAなどの生体適合性材料から製造することができる。触覚部104A及び104Bは、レンズボディ102の周辺部分に結合されているか(例えば、糊付け又は溶接される)、或いは、レンズボディ102の一部分と共に成形され、且つ、これにより、眼内の望ましい位置においてレンズボディ102を維持するために眼の水晶体嚢の外周壁に係合するようにレンズボディ102から外向きに延在している。触覚部104A及び104Bは、通常、円弧状端子部を定義する半径方向外向きの端部を有する。触覚部104A及び104Bの端子部分は、例えば、約13mmのように、約6mm~約22mmの長さLによって分離されていてもよい。触覚部104A及び104Bは、埋植された後に水晶体嚢の赤道領域と接触状態にある際に端子部分がわずかな係合圧力を生成するように、特定の長さを有する。
図1Aは、触覚部104A及び104Bの例示用の一構成を示しているが、任意のプレート触覚部又はその他のタイプの触覚部を使用することもできる。
【0022】
無色化及び回折効率の改善
以下において詳述するように、従来の単一層IOLは、回折効率の波長依存性を不可避に有している。従って、回折効率は、波長が回折効率が最適化されている設計波長から異なるのに伴なって減少している。更には、回折効率は、原則的に、設計波長とは異なる波長において100%に到達することができない。本明細書において記述されている特定の実施形態によるマルチ層IOL100は、回折オプティクス層102A及び102Pの屈折率が付与された状態において、環状エシェレット108A、108Bのステップ高さh1、h>2などの上述の回折オプティクス層102A及び102Pと関係するパラメータを調節することにより、無色化(即ち、焦点距離の波長依存性の低減又は除去)と、全可視波長における又は少なくとも設計波長のみよりも大きな波長範囲における任意の波長において、例えば、80%~100%などの100%に近い大きな回折効率と、を同時に実現することができる。これに加えて、環状エシェレット108A、108Bの半径方向間隔d1、d2は、ステップ高さh1、h2と共に、マルチ層IOL100の性能を最適化するように調節されており、これは、MTFとも単純に呼称される焦点を通じた変調伝達関数(MTF)、視力、及び収差において計測することができる。回折オプティクス層102A及び102Pの曲率半径R1、R2は、望ましいレンズベース度数に従って判定されている。
【0023】
マルチ層IOL100との比較を目的として、
図1Cは、単一回折オプティクス層122を有する従来の単一層IOL120を描いている。
図1Cに示されているように、単一層IOL120は、回折オプティクス層122の前部表面上において環状エシェレット128を有する多焦点IOLである。環状エシェレット128は、2つの隣接する環状エシェレットの間において半径方向間隔dを有し、且つ、それぞれ、ステップ高さhを有する。その他のケースにおいては、単一層IOL120は、環状エシェレット(図示されてはいない)を有していない単焦点IOLであってよい。更にその他のケースにおいては、単一層IOL120は、後部外側表面126上において環状エシェレット(図示されてはいない)を有するEDOF(Extended Depth Of Focus)IOL(細長い焦点を有するもの)である。
【0024】
波長λにおける屈折率n(λ)を有する単一層IOL120などの単一層IOLの場合に、波長λにおける一次回折効率η
S(λ)は、次式として当技術分野において既知であるスカラー回折理論によって算出することが可能であり、
【数1】
ここで、sinc(x)は、sinc関数であり、
【数2】
且つ、IOLを取り囲む媒体が空気である(即ち、n=1である)際には、Φ
S(λ)は、次式として定義された位相関数であり、
【数3】
ここで、設計波長は、λ
0である。ステップ高さhは、設計波長λ
0において一次回折効率η
S(λ
0)を最適化するように選択することができる。位相関数Φ
S(λ)は、波長λに依存していることから、回折効率η
S(λ)は、波長λが変化するに伴って変化している。
【0025】
更には、回折効率η
S(λ)は、位相関数Φ
S(λ)が2πに等しい(即ち、sinc関数の引数がゼロである)際にのみ100%に到達することができる。この条件は、等価的に次式のとおりである。
【数4】
【0026】
但し、すべての既知の材料は、波長λが増大するのに伴って単調に減少する屈折率n(λ)を有しており、且つ、従って、上述の条件は、設計波長λ0とは異なる波長λにおいて充足することができない。その結果、回折効率ηS(λ)は、設計波長λ0とは異なる波長λにおいて100%に到達することができない。
【0027】
マルチ層IOL100などのマルチ層IOLの場合には、一次回折効率η
M(λ)は、次式としてスカラー回折理論によって同様に算出することが可能であり、
【数5】
ここで、Φ
>M(λ)は、次式として定義される位相関数Φ
M(λ)であり、
【数6】
ここで、n
1(λ)及びn
2(λ)は、それぞれ、回折オプティクス層102A及び102Pの屈折率であり、且つ、ギャップ110(例えば、空気)の屈折率は1であると仮定されている。位相関数Φ
>M(λ)内の2つの項が反対の符号を有していることから、波長λに対する位相関数Φ
M(λ)の依存性は、屈折率n
1(λ)及びn
2(λ)が付与された場合に、ステップ高さh
1、h
2を適切に調節することにより、単一層IOL120用の位相関数Φ
S(λ)との比較において低減することが可能であり又は除去することができる。従って、全可視光スペクトルの全体を通じた大きな回折効率をマルチ層IOL100によって実現することができる。
【0028】
更には、回折効率η
M>(λ)は、位相関数Φ
>M(λ)が2πに等しい際に100%に到達することができる。この条件は、等価的に次式のとおりであり、
h
1(n
1(λ)-1)-h
2(n
2(λ)-1)=λ,
これは、少なくとも2つの異なる波長λ
S及びλ
bにおいてステップ高さh
1、h
2を次式として適切に調節することにより、充足することが可能であり、
【数7】
これは、分母がゼロとは異なる場合である。分母は、実際の材料の場合には、回折オプティクス層102A、102Pが製造されている2つの材料が異なっている場合には、非ゼロである。
【0029】
ステップ高さh
1、h
2用のこれらの条件は、3つの異なる波長λ
F=486.1nm(水素からの青色フラウンホーファーF線)、λ
D=589.2nm(ナトリウムからのオレンジ色フラウンホーファーD線)、及びλ
C=656.3nm(水素からの赤色フラウンホーファーC線)において屈折率n
1(λ)、n
2(λ)を使用して定義された回折オプティクス層102A及び102PのAbbe数
【数8】
に密接に関係付けられていること留意されたい。
【0030】
一般に、ステップ高さh1、h>2は、Abbe数v1、v2の間の差が相対的に大きい際に相対的に小さなものになり得る。例えば、ステップ高さは、材料A及び材料Bの組合せ(vd1=39.5、vd2=52.8)の場合にh1=35.8μm、h2=40.5μmである。ステップ高さは、材料A及び材料Cの組合せ(vd1=39.5、vd2=37.3)の場合にh1=317.0μm、h2=312.2μmである。
【0031】
図2~
図11は、マルチ層の様々なタイプと単一層IOLの光学性能の間の差の3つの異なる例を示している。
【実施例】
【0032】
実施例1
図2は、回折効率を描き、
図3及び
図4は、MTFを描き、且つ、
図5は、0.55μmの設計波長λ
0における単一層IOL120などの例示用の単焦点単一層IOLとの比較において、特定の実施形態による例示用の単焦点マルチ層IOLの、但し、外側表面における環状エシェレットを有していない、視力を描いている。例示用の単焦点マルチ層IOLにおいては、前部回折オプティクス層は、39.5のAbbe数v
d1を有する材料Aから製造され、且つ、後部回折オプティクス層は、52.8のAbbe数v
d2を有する材料Bから製造される。比較例示用の単焦点単一層IOLにおいては、回折オプティクス層は、材料Aから製造されている。
【0033】
図2において、単焦点マルチ層IOLは、約0.4μm~約0.7μmの波長の全可視光スペクトルにおいて約98%~約100%という大きな回折効率202を提供していることがわかる。但し、単焦点単一層IOLは、その回折効率204が0.55μmの設計波長λ
0において100%になるように設計されているが、回折効率204は、波長λが設計波長λ
0から逸脱するのに伴って迅速に減衰している。
【0034】
図3においては、IOLの焦点の深さ(「デフォーカス」とも呼称されている)を判定するために、3mmの(明所視)アパーチャを使用して50lp/mm(ラインペア/ミリメートル)の空間分解能(「空間周波数」とも呼称されている)において異なる焦点面におけるMTFを評価することにより、MTFマッピングが生成されている。
図3において、単焦点マルチ層IOLのMTF302は、単焦点単一層IOLのMTF304よりも焦点の近傍において(即ち、ゼロのデフォーカスにおいて)狭いピークを有していることがわかる。従って、単焦点マルチ層IOLは、単焦点単一層IOLよりも大きな焦点を有する。また、
図4において、単焦点マルチ層IOLは、様々な空間周波数において、単焦点単一層IOLのMTF404との比較において、改善されたMTF402を有することがわかる。
【0035】
図5には、それぞれ、単焦点マルチ層IOL及び単焦点単一層IOLの視力のシミュレーション結果502、504が、LogMAR(分解能の最小角度の対数)スコアの観点において示されている。単焦点マルチ層IOLの視力のシミュレーション結果502は、単焦点単一層IOLの視力のシミュレーション結果504との比較において、遠距離(0ジオプタ)、中間距離(1.5ジオプタ)、及び近距離(2.5ジオプタ)において改善を示している。
【0036】
実施例2
図6及び
図7は、MTFを描いており、且つ、
図8は、単一層IOL120などの例示用のEDOF単一層IOLとの比較において、特定の実施形態よる例示用のEDOFマルチ層IOLの視力を描いている。
【0037】
図6においては、IOLの焦点の深度(「デフォーカス」とも呼称されている)を判定するために、3mmの(明所視)アパーチャを使用して100lp/mm(ラインペア/ミリメートル)の空間周波数において異なるフォーカスプレーンにおけるMTFを評価することにより、MTFマッピングが生成されている。
図6において、EDOFマルチ層IOLのMTF602は、EDOF単一層IOLのMTF604よりも焦点近傍において(即ち、ゼロのデフォーカスにおいて)狭いピークを有していることがわかる。従って、EDOFマルチ層IOLは、EDOF単一層IOLよりも大きな焦点を有する。また、
図7において、EDOFマルチ層IOLは、様々な空間周波数におけるEDOF単一層IOLのMTF704との比較において、遠距離(0ジオプタ)において改善されたMTF702を有していることがわかる。
【0038】
図8には、それぞれ、EDOFマルチ層IOL及びEDOF単一層IOFの視力のシミュレーション結果802、804が、LogMARの観点において示されている。EDOFマルチ層IOLの視力のシミュレーション結果802は、EDOF単一層IOLの視力のシミュレーション結果804との比較において、遠距離(0ジオプタ)、中間距離(1.5ジオプタ)、及び近距離(2.5ジオプタ)において改善を示している。
【0039】
実施例3
図9及び
図10は、MTFを描いており、且つ、
図11は、単一層IOL120などの例示用の三焦点単一層IOLとの比較において、特定の実施形態による例示用の三焦点マルチ層IOLの視力を描いている。
【0040】
図9においては、IOLの焦点の深度(「デフォーカス」とも呼称されている)を判定するために、3mmの(明所視)アパーチャを使用して100lp/mm(ラインペア/ミリメートル)の空間周波数において異なる焦点面におけるMTFを評価することにより、MTFマッピングが生成されている。
図9において、三焦点マルチ層IOLのMTF902は、三焦点単一層IOLのMTF904よりも焦点の近傍において(即ち、ゼロのデフォーカスにおいて)狭いピークを有していることがわかる。従って、三焦点マルチ層IOLは、三焦点単一層IOLよりも大きな焦点を有する。また、
図10において、三焦点マルチ層IOLは、様々な空間周波数における三焦点単一層IOLのMTF1004との比較において、遠い距離(0ジオプタ)において改善されたMTF1002を有することがわかる。
【0041】
図11には、それぞれ、三焦点マルチ層IOL及び三焦点単一層IOLの視力のシミュレーション結果1102、1104が、LogMARの観点において示されている。三焦点マルチ層IOLの視力のシミュレーション結果1102は、三焦点単一層IOLの視力のシミュレーション結果1104との比較において、遠距離(0ジオプタ)、中間距離(1.5ジオプタ)、及び近距離(2.5ジオプタ)において改善を示している。
【0042】
マルチ層IOLを設計するシステム
図12は、マルチ層IOL100を設計、構成、及び/又は形成する例示用のシステム1200を描いている。図示のように、システム1200は、限定を伴うことなしに、制御モジュール1202、ユーザーインターフェイスディスプレイ1204、相互接続1208、出力装置1210、及び少なくとも1つのI/O装置インターフェイス1212を含み、これは、システム1200への様々なI/O装置(例えば、キーボード、ディスプレイ、マウス装置、ペン入力、など)の接続を許容することができる。
【0043】
制御モジュール1202は、中央処理ユニット(CPU)1214、メモリ1216及びストレージ1218を含む。CPU1214は、メモリ1216内に記憶されたプログラミング命令を読み出して実行し得る。同様に、CPU1214は、メモリ1216内にあるアプリケーションデータを読み出して記憶し得る。相互接続1208は、CPU1214、I/O装置インターフェイス1212、ユーザーインターフェイスディスプレイ1204、メモリ1216、ストレージ1218、出力装置1210、などの間においてプログラミング命令及びアプリケーションデータを送信している。CPU1214は、単一CPU、複数CPU、複数の処理コアを有する単一CPU、及びこれらに類似したものを表することができる。これに加えて、特定の実施形態において、メモリ1216は、ランダムアクセスメモリなどの揮発性メモリを表している。更には、特定の実施形態において、ストレージ1218は、ディスクドライブ、半導体ドライブ、又は複数のストレージシステムに跨って分散されたストレージ装置の集合体であってよい。
【0044】
図示のように、ストレージ1218は、入力パラメータ1220を含む。入力パラメータ1220は、回折オプティクス層102A、102Pが製造されている2つの材料のレンズベース度数、非球面度、円環度(toricity)、屈折率nd1及びnd2、並びに、設計波長λ0を含む。メモリ1216は、環状エシェレット108A、108Bの半径方向間隔d1、d2及びステップ高さh1、h2などの制御パラメータを演算するための演算モジュール1222を含む。加えて、メモリ1216は、入力パラメータ1224を含む。
【0045】
特定の実施形態において、入力パラメータ1224は、入力パラメータ1220又は少なくともその一部に対応する。このような実施形態においては、制御パラメータの演算の際に、入力パラメータ1224は、ストレージ1218から取得され、且つ、メモリ1216内において実行されている。このような一例において、演算モジュール1222は、入力パラメータ1224に基づいて制御パラメータを演算するための実行可能命令(例えば、本明細書において記述されている式の1つ又は複数を含む)を有する。他の特定の実施形態において、入力パラメータ1224は、ユーザーインターフェイスディスプレイ1204を通してユーザから受け取ったパラメータに対応する。このような実施形態において、演算モジュール1222は、ユーザーインターフェイスディスプレイ1204から受け取られた情報に基づいて制御パラメータを演算するための実行可能命令を有する。
【0046】
特定の実施形態において、演算された制御パラメータは、制御パラメータを受け取るように且つレンズを相応して形成するように構成されたレンズ製造システムに出力装置1210を介して出力されている。特定のその他の実施形態において、システム1200は、それ自体がレンズ製造システムの少なくとも一部分を表している。このような実施形態において、制御モジュール1202は、その後、システム1200のハードウェアコンポーネント(図示せず)に、制御パラメータに従ってレンズを形成させる。レンズ製造システムの詳細及び動作は、当業者に公知であり、簡潔にするためにここでは省略する。
【0047】
マルチ層IOLを設計する方法
図13は、マルチ層IOLを形成する例示用の動作1300を描いている。いくつかの実施形態において、動作1300のステップ1310は、一システム(例えば、システム1200)によって実行されている一方で、ステップ1320は、レンズ製造システムによって実行されている。他の幾つかの実施形態において、ステップ1310及び1320の両方がレンズ製造システムによって実行される。
【0048】
ステップ1310において、制御パラメータ(例えば、環状エシェレット108A、108Bの半径方向間隔d1、d2及びステップ高さh1、h2)が、入力パラメータ(例えば、レンズベース度数、非球面度、円環度、回折オプティクス層102A、102Pが製造されている2つの材料の屈折率)に基づいて演算されている。ステップ1310で行われる計算は、本明細書に記載の式を含む実施形態の1つ又は複数に基づく。
【0049】
ステップ1320において、演算された制御パラメータ(例えば、環状エシェレット108A、108Bの半径方向間隔d1、d2及びステップ高さh1、h2)に基づいた回折オプティクス層(例えば、回折オプティクス層102A、102P)を有するマルチ層IOL(例えば、マルチ層IOL100)が、当業者には既知のように、レンズを製造するために通常使用されている適切な方法、システム、及び装置を使用して形成されている。
【0050】
本明細書において記述されている実施形態は、従来の単一層IOLとの比較において、格段に大きなMTF及び視力をもたらす無色化及び全可視光スペクトルの全体を通じた大きな拡散効率の両方を実現し得るマルチ層IOLを提供している。性能の改善を単焦点IOL、EDOF(Extended Depth Of Focus)マルチ層IOL、及び三焦点マルチ層IOLに伴って実現することができる。
【0051】
上記は、本開示の実施形態に関するが、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態も本願の基本的範囲から逸脱せずに考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲に記載の請求項によって決定される。
【国際調査報告】