(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】腹膜透析患者における限外濾過量の予測
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
A61M1/28 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532401
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022051326
(87)【国際公開番号】W WO2023102003
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508180910
【氏名又は名称】フレセニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】コタンコ、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ロサレス、ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー、ファンサン
(72)【発明者】
【氏名】イー、ジン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB01
4C077CC08
4C077EE03
4C077HH02
4C077HH13
4C077JJ02
4C077JJ13
4C077KK25
4C077KK27
(57)【要約】
腹膜透析患者の滞留期間中の腹腔内体積(IPV)を監視するための技法は、圧力センサを使用して滞留期間中の腹腔内圧(IPP)を監視することと、滞留期間中の透析液の密度を監視することと、滞留期間中のIPPの変化および透析液の密度の変化に少なくとも基づいてIPVの変化を決定することと、を含む。
【選択図】
図8B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析処置の滞留期間中の流体の腹腔内体積(IPV)を監視するための方法であって、
圧力センサを使用して前記滞留期間中の前記流体の腹腔内圧(IPP)を監視することと、
前記滞留期間中の前記流体の少なくとも1つのサンプルの体積および重量を測定することと、
前記少なくとも1つのサンプルの前記体積および前記重量に基づいて、前記滞留期間中の前記流体の密度を決定することと、
前記滞留期間中のIPPの変化および前記密度の変化に少なくとも基づいてIPVを決定することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記IPVは、
【数1】
を備える式に少なくとも部分的に基づいて決定され、ここで、V
0は、前記滞留期間の開始時の前記流体の体積であり、IPP
0は、前記滞留期間の開始時の腹腔内圧であり、ρ
0は、前記滞留期間の開始時の前記流体の既知の密度であり、ρは、前記滞留期間中の前記流体の密度である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記滞留期間中の前記流体の前記密度を決定することは、患者の腹膜腔から前記流体の少なくとも1つのサンプルを抽出することと、前記少なくとも1つのサンプルの前記体積および前記少なくとも1つのサンプルの質量を決定することと、前記少なくとも1つのサンプルを前記腹膜腔に戻すこととを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記流体の前記少なくとも1つのサンプルを抽出することは自動的に行われ、前記滞留期間は、限外濾過量(UFV)がターゲットUFVに到達すると終了し、前記UFVは、前記IPVから前記流体の初期充填量を減算することによって計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記密度は周期的に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記密度を周期的に決定することは、前記密度を30分ごとに決定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記IPPは、腹膜透析カテーテル内の前記流体の圧力を測定することによって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記流体の温度の変動についてIPPおよび前記密度を補償することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
流体の腹腔内圧(IPP)を測定するように構成された圧力センサと、
コントローラと、
を備え、前記コントローラは、
患者の滞留期間中の前記流体の腹腔内体積(IPV)を、前記圧力センサを使用して前記滞留期間中の前記IPPを少なくとも監視することによって監視することと、
前記流体の少なくとも1つのサンプルの体積および重量に基づいて、前記滞留期間中の前記流体の密度を決定することと、
前記滞留期間中の前記IPPの変化および前記流体の前記密度の変化に少なくとも基づいて前記IPVの変化を決定することと、
を行うように構成されている、腹膜透析サイクラー。
【請求項10】
前記コントローラは、
【数2】
を備える式を使用して前記IPVを決定するようにプログラムされており、ここで、V
0は、前記滞留期間の開始時の前記流体の体積であり、IPP
0は、前記滞留期間の開始時のIPPであり、ρ
0は、前記滞留期間の開始時の前記流体の既知の密度であり、ρは、前記滞留期間中の前記流体の密度である、
請求項9に記載の腹膜透析サイクラー。
【請求項11】
前記滞留期間中の前記流体の前記密度を決定することは、患者の腹膜腔から前記少なくとも1つのサンプルを抽出することと、前記少なくとも1つのサンプルの前記体積および前記少なくとも1つのサンプルの質量を決定することと、次いで、前記少なくとも1つのサンプルを前記腹膜腔に戻すこととを含む、請求項9に記載の腹膜透析サイクラー。
【請求項12】
前記流体の前記少なくとも1つのサンプルを抽出することは自動的に行われ、前記滞留は、限外濾過量(UFV)がターゲットUFVに到達すると終了し、前記UFVは、前記IPVから前記流体の初期充填量を減算することによって計算される、請求項11に記載の腹膜透析サイクラー。
【請求項13】
前記少なくとも1つのサンプルの前記体積は、前記腹膜腔から抽出された前記流体の流量センサ測定値に基づいて計算され、前記流体の質量は、前記少なくとも1つのサンプルの前記重量を測定するスケールを使用して決定される、請求項11に記載の腹膜透析サイクラー。
【請求項14】
前記流体の温度を測定するように構成された温度センサをさらに備える、請求項9に記載の腹膜透析サイクラー。
【請求項15】
前記コントローラは、前記流体の温度に基づいて前記圧力および前記密度を補償する、請求項14に記載の腹膜透析サイクラー。
【請求項16】
前記コントローラは、前記密度を周期的に決定するように構成されている、請求項9に記載の腹膜透析サイクラー。
【請求項17】
命令を記憶した1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記1つまたは複数のプロセッサに、
圧力センサを使用して滞留期間中の流体の腹腔内圧(IPP)を決定することと、
前記滞留期間中の前記流体の前記IPPの変化に少なくとも基づいて前記IPVの変化を決定することと、
前記流体の少なくとも1つのサンプルの体積および重量に基づいて、前記滞留期間中の前記流体の密度を決定することと、
前記滞留期間中の前記IPPの変化および前記密度の変化に少なくとも基づいて前記流体の腹腔内体積(IPV)を決定することと、
を備える動作を行わせる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記命令は、前記1つまたは複数のプロセッサに、
【数3】
を備える式を使用して前記IPVを決定するようにさらに命令し、ここで、V
0は、前記滞留期間の開始時の前記流体の体積であり、IPP
0は、前記滞留期間の開始時のIPPであり、ρ
0は、前記滞留期間の開始時の前記流体の既知の密度であり、ρは、前記滞留期間中の前記流体の密度である、
請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記命令は、前記1つまたは複数のプロセッサに、
患者の腹膜腔から前記流体の少なくとも1つのサンプルを抽出することと、
前記少なくとも1つのサンプルの前記体積を決定することと、
前記少なくとも1つのサンプルの質量を決定することと、
前記少なくとも1つのサンプルを前記腹膜腔に戻すことと、
を行うようにさらに命令する、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記命令は、前記1つまたは複数のプロセッサに、前記流体の温度に基づいて前記密度および前記IPPを補償するようにさらに命令する、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2021年11月30日に出願された PREDICTING ULTRAFILTRATION VOLUME IN PERITONEAL DIALYSIS PATIENTS と題する仮出願番号第63/284,131号の優先権を主張するものであり、該出願は、その全体があらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
腎機能障害または腎不全、および特に末期腎疾患は、身体が、水分およびミネラルを除去し、有害な代謝産物を排泄し、酸塩基平衡を維持し、電解質およびミネラル濃度を生理学的範囲内に制御する能力を失う原因となる。尿素、クレアチニン、尿酸、およびリンを含む有毒性の尿毒症性代謝老廃物が、体内組織に蓄積し、これは、腎臓の濾過機能が代行されない場合、人の死につながる可能性がある。
【0003】
透析は、腎機能が不十分な患者を支援するために使用される処置である。主要な2つの透析方法として、血液透析と腹膜透析がある。血液透析(「HD」)中、患者の血液は、透析装置の透析器を通り、同時に、透析溶液、すなわち透析液も透析器を通る。腹膜透析(「PD」)中、患者の腹膜腔には、透析液が周期的に注入される。患者の腹膜の膜裏が、溶液および血流間の拡散および浸透交換を生じさせる天然の半透膜として作用する。患者の腹膜を介したこれらの交換により、尿素およびクレアチニンのような溶質を含む老廃物が血液から除去されることになり、血液中のナトリウムおよび水分などの他の物質の濃度が調節される。PDサイクラーと呼ばれる自動PD装置は、PDプロセス全体を、付き添う臨床スタッフなしに通常一晩中自宅で行うことができるように制御するように設計されている。このプロセスは、持続サイクラー補助PD(「CCPD」:continuous cycler-assisted PD)と称される。PDサイクラーの多くが、透析液を患者の腹膜腔に自動的に注入し、滞留させ、そこから排出するように設計されている。処置は、典型的には、数時間続き、多くの場合、使用後または使用済みの透析液を腹膜腔から抜くための初期排出サイクルで始まる。次いでシーケンスは、順に続く充填段階、滞留段階、および排出段階の連続を経る。各段階はサイクルと呼ばれる。腹膜透析(PD)処置は、患者の自宅および/または別の非臨床環境で行うことができるので、末期腎臓病(ESKD)の患者においてますます使用されてきている。
【0004】
健康な対象において、正常な腎機能は、バランスのとれた体液状態を維持する役割をし、水分過剰および脱水の両方を回避する。水分過剰または脱水の期間が長くなると、心血管リスクが増加する可能性がある。PD患者の体液状態を最適に維持するためには、水分過剰または脱水を回避または最小限にするための限外濾過の厳密な制御能力を有することが有利である。HDとは対照的に、PDでは、患者の体内組織から過剰な体液を機械的に引き出すことができる限外濾過ポンプがない。その代わりに、PD透析液溶液中のグルコースが、限外濾過を促すのに必要な浸透圧を提供する。しかしながら、PDは、限外濾過量(UFV)を調整し過剰な水分を適切に除去するように限外濾過率(UFR)を制御することがHDよりも厳密ではない。このPDの欠点は、(1)効率的な測定ツールの欠如、および(2)腹膜の個々の特性の変動性の十分な理解の欠如に少なくとも部分的に起因する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の少なくとも1つの態様によれば、滞留期間中の腹腔内体積(IPV:intraperitoneal volume)を監視するための方法が提供される。滞留中のIPVを監視するための方法は、圧力センサを使用して滞留期間中の腹腔内圧(IPP:intraperitoneal pressure)を監視することと、滞留期間中のIPPの変化に少なくとも基づいてIPVの変化を決定することとを含む。IPVの変化は、
【数1】
を含む式を使用して少なくとも部分的に決定されてよく、ここで、gは重力加速度を表し、hは圧力センサと腹腔内流体体積との間の垂直距離を表し、kは係数である。IPVの変化は、dIPP=g[ρ・Δh-h・Δρ]を含む式を使用して少なくとも部分的に決定されてよく、ここで、gは重力加速度を表し、ρは透析液溶液の密度を表し、hは圧力センサと腹腔内流体体積との間の垂直距離を表し、IPVの変化はIPPの変化に逆に関連する。
【0006】
一般に、1つの態様では、腹膜透析サイクラーは、腹腔内圧(IPP)を測定するように構成された圧力センサと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のハードウェアプロセッサに動作を行わせる命令を記憶した1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体とを含む。動作は、腹膜透析患者の滞留期間中の腹腔内体積(IPV)を、少なくとも、圧力センサを使用して滞留期間中のIPPを監視することによって監視することとと、滞留期間中のIPPの変化に少なくとも基づいてIPVの変化を決定することとを含む。IPVの変化は、
【数2】
を含む式を使用して少なくとも部分的に決定されてよく、ここで、gは重力加速度を表し、hは圧力センサと腹腔内流体体積との間の垂直距離を表し、kは係数である。IPVの変化は、dIPP=g[ρ・Δh-h・Δρ]を含む式を使用して少なくとも部分的に決定されてよく、ここで、gは重力加速度を表し、ρは透析液溶液の密度を表し、hは圧力センサと腹腔内流体体積との間の垂直距離を表し、IPVの変化はIPPの変化に逆に関連する。
【0007】
一般に、1つの態様では、システムは、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを含む少なくとも1つのデバイスと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のハードウェアプロセッサに動作を行わせる命令を記憶した1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体と、を含む。動作は、腹膜透析患者の滞留期間中の腹腔内体積(IPV)を、少なくとも、圧力センサを使用して滞留期間中の腹腔内圧(IPP)を監視することによって監視することとと、滞留期間中のIPPの変化に少なくとも基づいてIPVの変化を決定することとを含む。IPVの変化は、
【数3】
を含む式を使用して少なくとも部分的に決定されてよく、ここで、gは重力加速度を表し、hは圧力センサと腹腔内流体体積との間の垂直距離を表し、kは係数である。IPVの変化は、dIPP=g[ρ・Δh-h・Δρ]を含む式を使用して少なくとも部分的に決定されてよく、ここで、gは重力加速度を表し、ρは透析液溶液の密度を表し、hは圧力センサと腹腔内流体体積との間の垂直距離を表し、IPVの変化はIPPの変化に逆に関連する。
【0008】
一般に、1つの態様では、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のハードウェアプロセッサに、腹膜透析患者の滞留期間中の腹腔内体積(IPV)を、少なくとも、圧力センサを使用して滞留期間中の腹腔内圧(IPP)を監視することによって監視することと、滞留期間中のIPPの変化に少なくとも基づいてIPVの変化を決定することとを含む動作を行わせる命令を記憶する。IPVの変化は、
【数4】
を含む式を使用して少なくとも部分的に決定されてよく、ここで、gは重力加速度を表し、hは圧力センサと腹腔内流体体積との間の垂直距離を表し、kは係数である。IPVの変化は、dIPP=g[ρ・Δh-h・Δρ]を含む式を使用して少なくとも部分的に決定されてよく、ここで、gは重力加速度を表し、ρは透析液溶液の密度を表し、hは圧力センサと腹腔内流体体積との間の垂直距離を表し、IPVの変化はIPPの変化に逆に関連する。
【0009】
本開示の少なくとも1つの態様によれば、腹膜透析処置の滞留段階中の流体の腹腔内体積(IPV)を監視するための方法が提供される。いくつかの例では、本方法は、圧力センサを使用して滞留期間中の流体の腹腔内圧(IPP)を監視することと、滞留期間中の流体の少なくとも1つのサンプルの体積および重量を測定することと、少なくとも1つのサンプルの体積および重量に基づいて、滞留期間中の流体の密度を決定することと、滞留期間中のIPPの変化および密度の変化に少なくとも基づいてIPVを決定することと、を備える。
【0010】
様々な例では、IPVは、
【数5】
を備える式に少なくとも部分的に基づいて決定され、ここで、V
0は、滞留期間の開始時の流体の体積であり、IPP
0は、滞留期間の開始時の腹腔内圧であり、ρ
0は、滞留期間の開始時の流体の既知の密度であり、ρは、滞留期間中の流体の密度である。いくつかの例では、滞留期間中の流体の密度を決定することは、患者の腹膜腔から流体の少なくとも1つのサンプルを抽出することと、少なくとも1つのサンプルの体積および少なくとも1つのサンプルの質量を決定することと、少なくとも1つのサンプルを腹膜腔に戻すこととを含む。多くの例では、流体の少なくとも1つのサンプルを抽出することは自動的に行われ、滞留期間は、限外濾過量(UFV)がターゲットUFVに到達すると終了し、UFVは、IPVから流体の初期充填量を減算することによって計算される。様々な例では、密度は周期的に決定される。多くの例では、密度を周期的に決定することは、密度を30分ごとに決定することを含む。様々な例では、IPPは、腹膜透析カテーテル内の流体の圧力を測定することによって測定される。いくつかの例では、本方法は、流体の温度の変動についてIPPおよび密度を補償することをさらに備える。
【0011】
本開示の少なくとも1つの態様によれば、腹膜透析サイクラーが提供される。腹膜透析サイクラーは、流体の腹腔内圧(IPP)を測定するように構成された圧力センサと、コントローラと、を備えてよく、コントローラは、患者の滞留期間中の流体の腹腔内体積(IPV)を、圧力センサを使用して滞留期間中のIPPを少なくとも監視することによって監視することと、流体の少なくとも1つのサンプルの体積および重量に基づいて、滞留期間中の流体の密度を決定することと、滞留期間中のIPPの変化および流体の密度の変化に少なくとも基づいてIPVの変化を決定することと、を行うように構成されている。
【0012】
いくつかの例では、コントローラは、
【数6】
を備える式を使用してIPVを決定するようにプログラムされており、ここで、V
0は、滞留期間の開始時の流体の体積であり、IPP
0は、滞留期間の開始時のIPPであり、ρ
0は、滞留期間の開始時の流体の既知の密度であり、ρは、滞留期間中の流体の密度である。様々な例では、滞留期間中の流体の密度を決定することは、患者の腹膜腔から少なくとも1つのサンプルを抽出することと、少なくとも1つのサンプルの体積および少なくとも1つのサンプルの質量を決定することと、次いで、少なくとも1つのサンプルを腹膜腔に戻すこととを含む。多くの例では、流体の少なくとも1つのサンプルを抽出することは自動的に行われ、滞留は、限外濾過量(UFV)がターゲットUFVに到達すると終了し、UFVは、IPVから流体の初期充填量を減算することによって計算される。いくつかの例では、少なくとも1つのサンプルの体積は、腹膜腔から抽出された流体の流量センサ測定値に基づいて計算され、流体の質量は、少なくとも1つのサンプルの重量を測定するスケールを使用して決定される。多くの例では、本腹膜透析サイクラーは、流体の温度を測定するように構成された温度センサをさらに備える。いくつかの例では、コントローラは、流体の温度に基づいて圧力および密度を補償する。多くの例では、コントローラは、密度を周期的に決定するように構成される。
【0013】
本開示の少なくとも1つの態様によれば、命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体が提供され、命令は、1つまたは複数のプロセッサに、圧力センサを使用して滞留期間中の流体の腹腔内圧(IPP)を決定することと、滞留期間中の流体のIPPの変化に少なくとも基づいてIPVの変化を決定することと、流体の少なくとも1つのサンプルの体積および重量に基づいて、滞留期間中の流体の密度を決定することと、滞留期間中のIPPの変化および密度の変化に少なくとも基づいて流体の腹腔内体積(IPV)を決定することと、を備える動作を行うように命令する。
【0014】
いくつかの例では、命令は、1つまたは複数のプロセッサに、
【数7】
を備える式を使用してIPVを決定するようにさらに命令し、ここで、V
0は、滞留期間の開始時の流体の体積であり、IPP
0は、滞留期間の開始時のIPPであり、ρ
0は、滞留期間の開始時の流体の既知の密度であり、ρは、滞留期間中の流体の密度である。様々な例では、命令は、1つまたは複数のプロセッサに、患者の腹膜腔から流体の少なくとも1つのサンプルを抽出することと、少なくとも1つのサンプルの体積を決定することと、少なくとも1つのサンプルの質量を決定することと、少なくとも1つのサンプルを腹膜腔に戻すこととを行うようにさらに命令する。多くの例では、命令は、1つまたは複数のプロセッサに、流体の温度に基づいて密度およびIPPを補償するようにさらに命令する。
【0015】
本開示の少なくとも1つの態様は、滞留期間中の流体のIPVを監視するための方法を提供する。いくつかの例では、本方法は、圧力センサを使用して滞留期間中の流体のIPPを決定することと、滞留期間中の流体のIPPの変化に少なくとも基づいてIPVの変化を決定することと、腹膜腔内の流体の高さおよび流体の体積に基づいて滞留期間中の流体の密度を決定することと、高さに基づいて滞留期間中の流体の限外濾過量(UFV)を決定することと、を備える。いくつかの例では、高さは、密度および/または体積に基づいて決定される。
【0016】
本明細書に記載のデバイス、システム、および方法の上記および他の目的、特徴、および利点が、添付の図面に例示される、その特定の実施形態の以下の説明から明らかになる。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本明細書に記載のデバイス、システム、および方法の原理を例示することに重点を置いている。図面において、同様の参照番号は、概して、対応する要素を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る腹腔内体積を監視するための部位別生体インピーダンス分析システムの一例を例示する。
【
図2】一実施形態に係るベンチ実験の概略図を例示する。
【
図3A】一実施形態に係るベンチ実験中の圧力対高さのプロットを例示する。
【
図3B】一実施形態に係るベンチ実験中の圧力対高さのプロットを例示する。
【
図4A】一実施形態に係る滞留中の患者における腹腔内体積(IPV)対時間のプロットを例示する。
【
図4B】一実施形態に係る滞留中の患者における腹腔内圧(IPP)対時間のプロットを例示する。
【
図5A】一実施形態に係る滞留の開始から滞留の終了までのIPPの変化のプロットを例示する。
【
図5B】一実施形態に係る、12人の個々の患者についての14回の測定における、コントローラ(例えば、Libertyサイクラー)によって測定されたUFV対透析液密度のプロットを例示する。
【
図6A】一実施形態に係る滞留中の8人の患者におけるIPPおよびIPV対時間のプロットを例示する。
【
図6B】一実施形態に係る8人の患者における平均IPP対平均IPVのプロットを例示する。
【
図7A】一実施形態に係る滞留の開始時のIPP対Libertyサイクラーによって測定されたUFV(UFV
Liberty)のプロットを例示する。
【
図7B】一実施形態に係る部位別生体インピーダンス分析(UFV
SBIAまたはUFV
BIA)によって測定された滞留の開始時のIPP対UFVのプロットを例示する。
【
図8A】一実施形態に係るUFV対滞留時間のプロットを例示する。
【
図8B】一実施形態に係るPDシステムの概略図を例示する。
【
図8C】一実施形態に係る滞留前と滞留後の透析液密度のプロットを例示する。
【
図9】一実施形態に係るコンピュータシステムの一例のブロック図を例示する。
【
図10】一実施形態に係るコネクテッドヘルスサービス(「CHS」)システムの概略図を例示する。
【
図11】一実施形態に係る別のベンチ実験の概略図を例示する。
【
図12】一実施形態に係る
図11のベンチ実験の結果のプロットを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従来、PD処置の臨床現場において、総限外濾過量(UFV)は、PD処置の終了時の総充填量と総排出量との重量差から決定される。しかしながら、限外濾過量は、滞留サイクル全体を通して変化する。限外濾過量を滞留サイクル中に監視することができれば、限外濾過量のより厳密な制御を達成することができる。例えば、ターゲット限外濾過量を達成するために、滞留サイクルを早く終了させるか、または延長することができる。
【0019】
本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態は、腹膜透析患者における限外濾過量(UFV)を予測するための構成要素および技法を含む。明確にいえば、本明細書では、滞留サイクル中の腹腔内体積(IPV)、腹腔内圧(IPP)、および/または透析液密度を監視することによってUFVを予測するための技法について説明する。滞留中のUFVは、滞留中のIPVと透析液の初期充填量との差によって計算され得る。
【0020】
IPPは、透析液を腹膜腔に充填する間はIPVと正に相関する。しかしながら、以前の研究からの情報がないこと、および滞留中に連続的なIPVおよびIPP監視を行うことが困難であることに起因して、滞留サイクル中のIPPとUFVとの関係は明らかではなかった。以下で説明する最近の研究において、腹腔内体積(IPV)が、腹膜滞留サイクル中の腹腔内圧(IPP)に関連付けられることがわかった。IPVを監視するためにIPPを使用することの利点は、IPP測定を、患者の活動なしに滞留サイクルを通して自動的かつ非侵襲的に監視することができることである。
【0021】
研究のために、腹膜透析(PD)処置の滞留サイクル中のUFV動態についての洞察を提供する部位別生体インピーダンス分析(SBIA)を使用して、滞留中の腹腔内体積(IPV)を監視した。PDサイクラーに一体化されたセンサを用いてIPPが監視されている間に、SBIAは連続的なIPVデータを得た。この研究のために、複数の生体インピーダンスデバイス(例えば、Hydra4200)を使用した。
図1は、患者の胴100に置かれた8点電極を使用して腹膜腔内の流体の測定がどのように行われたかの概略図を例示する。胴100の測定は、複数の電流電極102、複数の測定電極104、右抵抗またはインピーダンス(R
PR)106、左抵抗またはインピーダンス(R
PL)108を使用して行われた。
図1には、患者の腹膜110およびコントローラ112も例示されている。
【0022】
コントローラ112は、電流電極102および測定電極104に結合され得る。測定電極104は、RPR106および/またはRPL108に結合され得る。胴100の右側に位置付けられた測定電極104は、RPR106に結合されてよく、胴100の左側に位置付けられた測定電極104は、RPL108に結合されてよい。
【0023】
コントローラ112は、例えば、Hydra4200または同様のデバイスであってもよいし、またはそれを含んでもよく、電極102、104および抵抗106、108を監視し、該電極102、104および抵抗106、108に関係する電流および抵抗に関する情報を受信するように構成され得る。コントローラ112は、抵抗106、108、または腹膜腔内のもしくは腹膜110に関連する流体圧力および/または流体体積を計算するように構成され得る。図示されるように、コントローラ112はベルトを介して胴100に結合されているが、コントローラ112は胴100に結合される必要はない。いくつかの例では、コントローラ112は、単独で動作することができる別個のデバイスであり得る。
【0024】
この例では、I
1、I
3およびI
2、I
4は電流電極102であり、S
1、S
3およびS
2、S
4は、それぞれ右側および左側に置かれた測定電極104である。R
PR106およびR
PL108は、それぞれ腹部領域の右側および左側の、5kHzの電流周波数における抵抗である。測定電極104は、透析液の充填、滞留、および排出段階中に、ある頻度で、例えば2秒毎にサンプリングし得る。腹膜腔内の流体体積を、式1を使用して計算した。
【数8】
ここで、V
0は、腹膜腔への初期透析液充填量であり、R
Eは、腹膜腔が空であるときの初めの抵抗であり、R
Fは、透析液充填が完了したときの抵抗であり、R
PCは、充填段階後かつ滞留中に測定された抵抗である。R
PRおよび/またはR
PLを含む、腹膜腔の抵抗は、1つまたは複数の抵抗器によって測定された。式1を使用して、滞留サイクル中にIPVを連続的に測定し、計算した。滞留サイクル中の最大IPVと初期透析液充填量との差によって限外濾過量を計算した。滞留サイクル全体を通して、PDサイクラーに一体化されたセンサを用いてIPPを監視した。
【0025】
ソフトウェアバージョンが2.9.1CのLibertyサイクラーに一体化されたセンサからのIPP測定値を検証するために、ベンチ研究も実施した。
図2は、圧力変化と高さレベルとの関係を試験するために実施されたベンチ研究200のための概略的な設定を例示する。ベンチ研究200は、PDシミュレータ202と、第1の高さH1および第2の高さH2を少なくとも有する調整可能なテーブル204と、コントローラ206(本研究では、ソフトウェアバージョンが2.9.1CのLibertyサイクラーである)とを含むものであった。左側には、H1がH2よりも大きい第1の状態201aが例示され、右側には、H2がH1よりも小さい第2の状態201bが例示されている。矢印208は、PDシミュレータ202の高さH1での第1の状態201aから、PDシミュレータ202の高さH2での第2の状態201bへの変化を示す。
【0026】
PDシミュレータ202は、調整可能なテーブル204上に置かれた。調整可能なテーブル204は、高さH1およびH2を含む様々な高さを移行することができる。コントローラ206は、PDシミュレータ202に結合され、PDシミュレータ202を監視および/または制御し、IPP圧力測定値を収集した。PDシミュレータ202は、人体の腹膜腔、膜、壁側腹膜、臓側腹膜、関連する毛細血管、静脈、および/または動脈等をシミュレートおよび/またはエミュレートするように構成され得る。
【0027】
流体体積の圧力、例えばPDシミュレータ202内の流体体積の圧力と、流体の垂直レベルでの位置との関係の原理を、概して、以下のように説明することができる。
P=ρ・g・h 式2
ここで、Pは、垂直方向における流体体積からの圧力であり、ρは、流体の密度であり、gは、重力加速度(g≒9.8m/s2)であり、hは、高さ(すなわち、センサと流体体積との間の垂直距離)である。したがって、流体体積の高さが垂直方向に変化するとき、Pはhと線形的に相関するはずである。
【0028】
いくつかの例では、gおよびhは、PD処置の滞留段階中は定数である。gおよびhが定数であるとき、腹腔内圧の変化は、主に透析液密度ρの変化に関連付けられ得る。腹膜腔内のIPVの増加は、PDシミュレータ202の腹膜腔内の流体体積の密度の減少と関連付けられることがわかった。IPVの変化(dIPV)と透析液密度の変化の関係は、概して、以下の式によって表すことができる。
dIPV=-k・dρ 式3
ここで、kは、個々の患者における水和度および腹膜の特性に関連し得る係数であり、dρは、滞留中の腹膜腔内の透析液密度の変化である。式2および式3から、個々のIPVと圧力IPPとの関係を、以下のように説明することができる。
dIPP=g・h・dρ 式4
【0029】
式3と式4の組合せが、以下のように圧力の変化とIPVとの関係に適用される。
【数9】
【数10】
【0030】
式6は、腹膜体積の変化が、滞留中の腹腔内圧の変化と逆相関することを示す。PD処置のUFVは滞留中のIPVの変化として定義されるので、式6に示す滞留中のΔUFVとΔIPPとの同じ関係が適用される。
【0031】
一般に、PDシミュレータ202の空の腹膜腔などの、流体のない空の腹膜腔などの閉鎖空間では、圧力はP0で表現される。密度(ρ)の透析液溶液が腹膜腔に充填されるとき、全圧を以下のように表すことができる。
Ptotal=P0+(ρ・g・h) 式7
ここで、P0は、新しい透析液が腹膜腔に充填される前の初期圧力を表す。P0は、経毛細血管静水圧の程度および腹膜(例えば、腹膜110)の特性に依存し得る。この場合、ρは充填段階中は定数であるので、Ptotalは2つの要因、すなわち初期圧力(P0)および透析液高さ(h)によって決定される。充填段階中、2リットル(L)を超える新しい透析液溶液が腹膜腔に充填されて、透析液高さが増加する。したがって、Ptotalは、腹膜腔内の透析液高さの増加とともに増加し得る。透析液高さによるPtotalの変動性は、個々の患者における腹膜腔の初期圧力(P0)の差に基づいてもよいし、またはそれに関連してもよい。さらに、充填段階後かつ滞留段階の開始時に、過剰な体液が、毛細血管から腹膜腔に、静水圧の高勾配によって、腹膜腔内の透析液の表面積を介して移り始め得る。過剰な体液の一部が滞留中に限外濾過(UF)によって腹膜腔に移り得るので、透析液は希釈され、その密度は減少し、それにより、IPPはUFVと逆相関する(式6)。
【0032】
ベンチ研究の目標は、圧力と透析液の高さとの関係(式2)を評価することであった。ベンチ研究のために、PDシミュレータ202に2.5%のグルコースの透析液を2L充填した。シミュレータの高さを、最高点(36インチ)に到達するまで、2.5インチのステップで徐々に増加させた。最高高さは、いくつかの例では、第1の状態201aに対応し得る。次いで、高さを、2時間にわたって、最高点からベースライン高さまで減少させて戻した。ベースライン高さは、いくつかの例では、第2の状態201bに対応し得る。圧力は、コントローラ206によって自動的に測定された。
【0033】
ベンチ研究200は、高さがベースラインから最高点まで(例えば、第2の状態201bから第1の状態201aまで)増加した段階(a)と、高さが最高点からベースラインまで(例えば、第1の状態201aから第2の状態201bまで)減少した段階(b)という、2つの段階の高さの変化を含むものであった。
図3Aおよび
図3Bは、調整可能なテーブル204上のPDシミュレータ202の高さの変化と、それぞれの段階(a)および(b)についてコントローラ206によって測定された圧力の変化との関係を例示する。
図3Aおよび
図3Bに示すように、コントローラ206によって測定された圧力は、段階(a)および(b)の両方で高さと非常に相関していた。ベンチ研究200は、PDカテーテルの圧力の変化を、圧力センサ、例えば、コントローラ206に結合された圧力センサを用いて厳密に測定することができることを実証している。
【0034】
ソフトウェアバージョンが2.9.1CのLibertyサイクラーに一体化されたセンサを使用したIPP測定の検証で、2時間の滞留(2Lの透析液、2.5%のデキストロース)中に研究された12人のPD患者(年齢59.4±14.3歳、女性4人、前体重83±28kg、BMI28.6±7.8kg/m2、PD歴13.3±7か月)における14回の測定による臨床パイロット研究を実施した。コントローラ206(ソフトウェアバージョンが2.9.1CのLibertyサイクラー)に一体化された圧力センサを使用して、IPPを15秒毎に測定した。UFVを量子化するために、3つの技法、すなわち、(1)排出流体の計量(UFVDrain)、(2)Libertyサイクラーによるもの(UFVLiberty、ml単位)、および(3)SBIAによるもの(UFVSBIA、ml単位)を使用した。全患者の平均UFVは、UFVSBIA、UFVLiberty、およびUFVDrainで、それぞれ、199.1±193.2ml、218.8±136.4ml、および266.9±136.4gであった。グループ全体において、UFVLiberty(218.6±156.6ml)およびUFVSBIA(198.1±215.6ml)が、UFVDrain(265.6±150.3g)よりも低かった。10分ごとにIPVとIPPを比較すると、UFV>200mlである8人の患者においてIPVとIPPの相関があった。
【0035】
図4A~
図8Cは、ベンチ研究200および臨床パイロット研究からの結果を例示する。
図4Aに示すように、IPVは、滞留中に0.499L(UFV)増加した。
図4Bに示すように、IPPは、同じ時間期間に24.1ミリバールから18.6ミリバールに減少した。
図5Aは、臨床研究の患者において、IPPが滞留の開始から滞留の終了までにどのように減少したかを例示する。
図5Bは、臨床パイロット研究の患者において、透析液密度の変化がUFVとどのように相関するかを例示する。
【0036】
図6Aは、滞留中の8人の患者における平均IPVおよびIPPを例示し、IPVの増加(丸)とIPPの減少(四角)を示す。
図6Bは、8人の患者における滞留中のIPVとIPPとの関係を例示する。この例では、各丸は、同じ患者の異なる滞留時間におけるIPPの変化とIPVの変化との関係を表す。破線は、2つの連続する点を時間順に接続している。
図6Bに示すように、IPPは、IPVが増加するにつれて経時的に低下する傾向があり、経時的な変化は、線形である傾向がある。
【0037】
図7Aおよび
図7Bは、滞留の開始時のIPP(IPP
Start)がUFV
LibertyおよびUFV
SBIA(
図7BではUFV
BIAとして示されている)と関連付けられたものを例示する。これらの結果は、滞留の開始時のIPP値を使用してUFVを予測することができることを示している。全患者に対して同じ滞留時間を提供するように設計された研究では、IPP
StartとUFVとの相関は、IPP
Startと限外濾過率(UFR)との相関とほぼ同等である。PDのUFRが腹膜を介した流体輸送に関連し得ると仮定すると、IPP
Startは、個々の患者における腹膜の特性を理解するための有益なパラメータであり得る(式7)。
図7Aは、滞留の開始時に測定されたIPP(IPP
Start)とLibertyサイクラーによるUFVとの関係を示す。処置時間は、全患者で同じであり、その結果、異なるUFVは、各患者のそれぞれの膜の個々の膜特性を反映し得る個々の各UFRに対応する。
【0038】
IPVが増加すると、透析液の密度は、膜を通して移ってきた水分量に依存して減少し、これにより、腹膜腔内の透析液は希釈される。上式2により、
P=ρ・g・h 式2(再記載)
であり、ここで、Pは特定の流体の圧力であり、ρは流体密度であり、gは重力加速度であり、hは流体の高さである。gおよびhが一定である場合、密度が減少すると圧力が減少し得る。上述のベンチ研究200は、この関係を確認する。しかしながら、高さ(h)が一定でない場合、少なくとも2つの変数(例えば、hおよびρ)を使用して圧力を計算しなければならない。以下の説明は、少なくとも2つの変数を使用して圧力を決定するための技法を実証するものであり、圧力、高さ、および体積の関係を裏付けるベンチ研究の結果を説明している。
【0039】
式1から、次の導関数方程式を得ることができる。
【数11】
ここで、∂P/∂tは、時間の関数としての圧力変化を表し、∂ρ/∂tおよび∂h/∂tは、それぞれ透析液溶液の密度および高さの変化を表す。この例では、透析液の密度の変化(ポスト透析液密度とプレ透析液密度との差、すなわち、Δρ=ポスト透析液ρ-プレ透析液ρ)が≦0であると仮定するが、これは、ポスト透析液密度は、通常、限外濾過量(UFV)が増加するにつれて減少するからである。UFVが0に等しい場合、ポスト透析液ρはプレ透析液ρに等しい。したがって、式8は、以下のように書き直すことができる。
ΔP=g[ρ・Δh-h・Δρ] 式9
ここで、ΔP、Δh、およびΔρは、それぞれ、圧力の変化、高さの変化、および密度の変化を表す。式9から、密度が一定(Δρ=0)である場合、圧力変化(増加および/または減少)は溶液の高さに関連付けられ、高さが一定である場合、圧力の変化は密度の変化Δρに依存すると結論付けることができる。ΔρはUFVと逆相関するので、圧力の変化はUFVと負に相関する。また、ρ・Δh=h・Δρである場合、圧力は一定のままであるということにもなる。
【0040】
図11は、実施された別のベンチ研究300を例示する。ベンチ研究300は、IPPの変化がIPVの変化に依存することを実証した。ベンチ研究300は、PDシミュレータ302と、調整可能なテーブル304と、コントローラ306とを含む。コントローラ306は、ソフトウェアバージョンが2.9.3のLibertyサイクラーを含むものであった。調整可能なテーブル304の高さは、実験の継続時間中不変のままであり、それにより、任意の2つの状態301a、301bについて、各状態の高さH1、H2は等しい。矢印308は、第1の状態301aから第2の状態301bへの変化を表す。
【0041】
コントローラ306は、センサ(例えば、圧力センサおよび/または電極102、104などの電極)を使用してIPPを測定した。PDシミュレータ302を使用して、既知の透析液溶液(2000mL)を充填した。実験は、(1)充填段階(2Lの透析液を10分以内にシミュレータに充填した)、(2)25分間の滞留段階、および(3)約10分間の排出段階、という3つの段階を含むものであった。
【0042】
図12は、ベンチ研究300の結果のプロットである。
図12は、ベンチ研究300中のPDシミュレータ302の充填および排出中の圧力の変化を例示する。
図12は、IPPの増加および減少が、PDシミュレータ302に充填された(充填)量、およびそれから除去された(排出)量に起因するものであることを示す。滞留中、PDシミュレータ302の容積または高さに変化はなく、したがって、PDシミュレータ302内の流体の圧力が、そうでなければ一定のままのはずであることが理解されよう。したがって、ベンチ研究300は、IPVとIPPとの関係を、少なくとも2つの独立変数、すなわち溶液の密度および高さに依存する区分写像を使用して表現することができるという証拠を提供する。
【0043】
上記の説明は、滞留時間中のIPVとIPPとの関係を説明している。上記の説明は、限外濾過量が腹膜透析処置中にIPP測定により監視できることを示す。IPP測定は、PD装置(コントローラ112、206、306、またはLibertyサイクラーなどのデバイスもしくは同様のデバイスなど)内の一体化されたセンサを用いて自動的に行うことができるので、生体インピーダンスを使用する方法と比較して、追加のコストも時間もほとんどまたは全くない。さらに、IPPStartとUFVとの相関は、滞留の開始時に測定されたIPPが腹膜の特性と関連付けられ得ることを含意する。この知見により、腹膜の輸送特性についての客観的かつ定量的な情報を得ることが可能になり得る。さらに、滞留中の透析液密度の変化とUFVとの関係の発見により、膜を介した化学物質輸送の動態を理解するためのさらなる機会が提供される。さらに、SBIA法の多くの電極を、圧力センサ法では使用する必要がなく、したがって、既存の方法と比較して、本方法が自宅で行い易くなることが理解されよう。
【0044】
上記から、IPVが、充填、滞留、および排出段階中のIPPに基づいて予測され得ることが理解されよう。いくつかの例では、IPVはIPPに線形的に関連するので、IPVは、IPPに基づいて予測され得る。その結果、透析および透析関連の処置は、充填、滞留、および排出段階を通して経時的にIPPを使用してIPVを予測することができ、得られた予測および圧力値に基づいて処置を調整することができる。IPPに基づいてIPVを予測することにより、SBIAで使用されるまたは他の方法を使用するものなどの電極の必要がなくなる。
【0045】
IPPは、PDサイクラー内のまたはPDカテーテル上に置かれた圧力センサなどの圧力センサによって準連続的かつ非侵襲的に測定することができるが、IPPを使用してIPVを計算およびUFVを予測することの精度は、IPVの変化を生じさせる透析液密度の変化によって影響を受ける場合がある。上式2により、
IPP=ρ・g・h 式2(再記載)
であり、ここで、ρは透析液密度であり、gは重力加速度であり、hは、測定点より上の腹膜腔内のPD透析液の高さである。重力加速度gは全体的に同じであり、したがって、hおよびρの変化が、IPP変化を促す要因である。上述の臨床研究において、密度ρの減少は、水分の腹膜腔への移動および腹膜腔から患者へのグルコースの取り込みに起因するものであることが実証された。滞留中の密度ρおよびIPPを知ることにより、h(IPVに関連するメトリック)の計算が、以下のように、hについて式2を解くことによって可能になり得る。
【数12】
【0046】
体積(V)は、断面積(A)に高さhを乗じることにより計算することができるので、式2を、次のように表すことができる。
【数13】
ここで、Vは腹腔内体積IPVを表し、Aは腹膜腔内の透析液の断面積を表す。Aが一定値A
0であると仮定すると、式11を、以下のように書き直すことができる。
【数14】
ここで、A
0は、新しい透析液の初期注入量(V
0)および密度(ρ
0)、ならびに透析液が充填されたときの初期圧力(IPP
0)に基づいて計算することができる。
【数15】
これにより、式12は、次のように表すことができるようになる。
【数16】
ここで、V
0は、腹膜腔に最初に充填された新しい透析液の体積であり、IPP
0は、例えば、Liberty PDサイクラーを用いて、充填手順の終了時に測定されることができ、ρ
0は、新しい透析液の既知の密度である。式14によれば、IPPおよび透析液の密度が既知である場合、IPVは、滞留時間中の任意の時間に計算され得る。本明細書で説明するように、IPPは、Libertyサイクラーによって連続的に測定され得る。したがって、滞留中の透析液密度を測定することができれば、滞留中の透析液の密度の変化を考慮することによって、PD患者における滞留中に式14にしたがって、IPVをより正確に計算することができる。
【0047】
別の実施形態によれば、PD処置の方法は、PD処置の滞留中のIPPおよび透析液密度を(周期的に)監視することを含み得る。例えば、PDサイクラーまたはPD処置システムは、滞留サイクル中に、腹膜腔から透析液のサンプルを密度測定のために周期的に圧送し、次いで透析液サンプルを腹膜腔に戻すように構成され得る。例えば、PDサイクラーは、滞留中に30分毎に透析液サンプルを密度測定のために除去および戻すようにプログラムされ得る。
図8Aは、滞留中のUF量対時間のチャートであり、
図8Aでは、透析液流体の周期的サンプリングおよび密度測定がPDサイクラーまたはPDシステムによって自動的に行われ得る例示的な時点が識別されている。
図8Aは、UFVが最初にかなり速い速度で増加し(例えば、120分にわたって0mLから約450mLに増加し)、次いでUFVがより遅い一定の速度で(例えば、150分にわたって450mLから約350mLに)減少することを示す。
【0048】
図8Bは、別の実施形態に係るPDシステム800の概略図を示す。PDシステム800は、PD処置を行うことができてよく、PDシステム800は、滞留段階中に周期的に透析液流体の密度を自動的にサンプリングおよび測定することができる。PDシステム800は、PD患者カテーテル812に流体接続されたPDサイクラー810と、一連の弁814、816、818とを含む。弁814、816、818は、カテーテル812に流入および流出する透析液流、ならびに新しい透析液のバッグ820の開放および/または閉鎖と、排出バッグ822の開放および/または閉鎖とを制御するように構成される。PDサイクラー810は、カテーテル812内の流体の圧力を測定するように構成された圧力センサ(図示せず)を含み得る。PDシステム800はさらに、患者の腹膜腔に流入または流出する透析液の流量および体積を測定するように構成および位置付けされた流量センサ824を含む。いくつかの実施形態では、PDシステム800は、透析液温度および周囲温度を測定するように構成された温度センサ826を含む。いくつかの例では、PDサイクラー810は、腹膜腔に流入または流出する透析液流の方向および時間を制御する。PDシステム800は、滞留サイクル中に透析液サンプルを一時的に収容するために、新しい透析液のバッグ820を使用する。PDシステム800はさらに、透析液密度測定機構を含み得る。例えば、
図8Bに示すように、PDシステム800は、新しい透析液のバッグ820に一時的に貯蔵されたときに透析液サンプルの重量を測定するように構成されたスケール828を含み得る。いくつかの実施形態では、PDシステム800の構成要素のうちの1つまたは複数が、PDサイクラー810に一体化され得る。例えば、いくつかの実施形態では、弁814、816、818、流量センサ824、温度センサ826、および/またはスケール828は、PDサイクラー810に一体化される。
【0049】
PDシステム800は、患者の腹膜腔から流量センサ824を通して新しい透析液のバッグ820内に少量の透析液サンプルを圧送することによって、透析液密度を周期的に測定することができる。流量センサ824からの流量測定値は、透析液サンプルの総体積を計算するために使用されることができ、スケール828からの出力は、透析液サンプルの質量を計算するために使用されることができる。次いで、透析液サンプルの密度ρを、透析液サンプルの質量を透析液サンプルの体積で割ることによって計算することができる。サンプリング頻度および透析液密度測定は、調整可能なパラメータである。例えば、透析液サンプルの密度を決定するために透析液サンプルを採取することは、連続的に、または10分、15分、20分、25分、30分、またはそれ以上ごとなどの間隔をあけて行われ得る。いくつかの実施形態では、PDシステム800は、温度変動について密度および/または圧力測定値を補償するようにプログラムされる。温度変動は、温度センサ826によって監視され得る。いくつかの実施形態では、PDシステム800は、各透析液サンプリング密度計算後に、式13にしたがってIPVを計算し、滞留サイクル全体を通してIPVを監視するようにプログラムされる。ターゲット限外濾過量が達成されると、滞留サイクルは終了する。
【0050】
図8Cは、13人の患者についての滞留の開始時および滞留の終了時の透析液密度の変化を示すチャートである。密度は、2.5%のグルコースの新しい透析液で、1.018(g/ml)から平均0.9256±0.0106(g/ml)に減少した(p<0.0001)。
【0051】
いくつかの例では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、透析液の密度の変化に基づいてIPVおよび/またはIPPの変化を監視することを提供する。いくつかの例では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、IPPおよび/または透析液の密度に基づいて限外濾過率(UFR)または限外濾過量(UFV)を予測することを提供する。本明細書に記載のシステムおよび方法は、在宅PD患者にとって非実用的である追加の機器を必要とせずに、IPV、IPP、UFR、および/またはUFVの計算に基づくより効果的なPD処置を提供するために使用され得る。
【0052】
一実施形態では、システムは、本明細書に記載および/または請求項のいずれかに記載の動作のいずれかを行うように構成された、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを含む、1つまたは複数のデバイスを含む。
【0053】
一実施形態では、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されると、本明細書に記載および/または請求項のいずれかに記載の動作のいずれかを行わせる命令を記憶する。
【0054】
本明細書に記載の特徴および機能の任意の組合せが、一実施形態にしたがって使用され得る。前述の明細書において、実施形態について、実装形態ごとに異なり得る多数の特定の詳細を参照して説明した。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で考慮されるべきである。本発明の範囲の唯一かつ排他的な指標、および本出願人が本発明の範囲であると意図するものは、本出願から発行される請求項のセットの文字通りかつ等価な範囲であり、そのような請求項が発行される特定の形態であり、任意の後続の補正を含む。
【0055】
一実施形態では、本明細書に記載の技法は、1つまたは複数の専用コンピューティングデバイス(すなわち、特定の機能を行うように特別に構成されたコンピューティングデバイス)によって実装される。専用コンピューティングデバイス(単数または複数)は、技法を実行するようにハードワイヤードされ得、および/または技法を実行するように永続的にプログラムされた1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/またはネットワーク処理ユニット(NPU)などのデジタル電子デバイスを含み得る。代替的または追加的に、コンピューティングデバイスは、ファームウェア、メモリ、および/または他のストレージ内のプログラム命令にしたがって本技法を実行するようにプログラムされた1つまたは複数の汎用ハードウェアプロセッサを含み得る。代替的または追加的に、専用コンピューティングデバイスは、カスタムハードワイヤード論理、ASIC、FPGA、またはNPUをカスタムプログラミングと組み合わせて技法を達成し得る。専用コンピューティングデバイスは、デスクトップコンピュータシステム、ポータブルコンピュータシステム、ハンドヘルドデバイス、ネットワーキングデバイス、および/または技法を実装するためにハードワイヤード論理および/またはプログラム論理を組み込んだ任意の他のデバイス(単数または複数)を含み得る。
【0056】
例えば、
図9は、一実施形態に係るコンピュータシステム900の一例のブロック図である。コンピュータシステム900は、情報を通信するためのバス902または他の通信機構と、バス902に結合され、情報を処理するためのハードウェアプロセッサ904とを含む。ハードウェアプロセッサ904は、汎用マイクロプロセッサであり得る。
【0057】
コンピュータシステム900はまた、バス902に結合された、情報とプロセッサ904によって実行される命令とを記憶するための、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他のダイナミック記憶デバイスなどのメインメモリ906を含む。メインメモリ906はまた、プロセッサ904によって実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を記憶するためにも使用され得る。そのような命令は、プロセッサ904にとってアクセス可能な1つまたは複数の非一時的記憶媒体に記憶されると、コンピュータシステム900を、命令内に指定された動作を行うようにカスタマイズされた専用マシンにする。
【0058】
コンピュータシステム900は、バス902に結合された、プロセッサ904のための静的情報および命令を記憶するための読取り専用メモリ(ROM)908または他の静的記憶デバイスをさらに含む。情報および命令を記憶するための、磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶デバイス910が設けられ、バス902に結合される。
【0059】
コンピュータシステム900は、バス902を介して、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、電子インクディスプレイ、ブラウン管(CRT)モニタ、またはコンピュータユーザに情報を表示するための任意の他の種類のデバイスなどのディスプレイ912に結合され得る。英数字および他のキーを含む入力デバイス914が、情報およびコマンド選択をプロセッサ904に通信するためにバス902に結合され得る。代替的または追加的に、コンピュータシステム900は、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ904に通信し、ディスプレイ912上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、トラックパッド、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御916を介してユーザ入力を受信し得る。この入力デバイスは、典型的には、デバイスが平面での位置を指定することを可能にする、第1の軸(例えばx)および第2の軸(例えばy)の2軸における2つの自由度を有する。代替的または追加的に、コンピュータシステム900はタッチスクリーンを含み得る。ディスプレイ912は、1つまたは複数の感圧センサ、マルチタッチセンサ、および/またはジェスチャセンサを介してユーザ入力を受信するように構成され得る。代替的または追加的に、コンピュータシステム900は、マイクロフォン、ビデオカメラ、および/または他の何らかの種類のユーザ入力デバイス(図示せず)を介してユーザ入力を受信し得る。
【0060】
コンピュータシステム900は、カスタマイズされたハードワイヤード論理、1つまたは複数のASICもしくはFPGA、ファームウェア、および/またはプログラム論理を使用して本明細書に記載の技法を実装し得、これらは、コンピュータシステム900の他の構成要素と組み合わせて、コンピュータシステム900を専用マシンにさせるかまたは専用マシンになるようにプログラムする。1つの実施形態によれば、本明細書の技法は、プロセッサ904がメインメモリ906に含まれる1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行するのに応答して、コンピュータシステム900によって実行される。そのような命令は、記憶デバイス910などの別の記憶媒体からメインメモリ906に読み込まれ得る。メインメモリ906に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ904に、本明細書に記載のプロセスステップを行わせる。代替的または追加的に、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路が使用され得る。
【0061】
本明細書で使用される「記憶媒体」という用語は、マシンを特定の方式で動作させるデータおよび/または命令を記憶する1つまたは複数の非一時的媒体を指す。そのような記憶媒体は、不揮発性媒体および/または揮発性媒体を備え得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス910などの、光ディスクまたは磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ906などのダイナミックメモリを含む。記憶媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープまたは他の磁気データ記憶媒体、CD-ROMまたは任意の他の光データ記憶媒体、穴のパターン(patterns of holes)を有する任意の物理媒体、RAM、プログラマブル読取り専用メモリ(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、FLASH(登録商標)-EPROM、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、連想メモリ(CAM)、および三値連想メモリ(TCAM)が含まれる。
【0062】
記憶媒体は、伝送媒体とは別個であるが、伝送媒体と共に使用され得る。伝送媒体は、記憶媒体間での情報の転送に関与する。伝送媒体の例には、バス902を構成するワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバが含まれる。伝送媒体は、電波および赤外線データ通信中に生成されるものなど、音波または光波の形態もとり得る。
【0063】
様々な形態の媒体が、1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行のためにプロセッサ904に搬送することに関わり得る。例えば、命令は、最初に、リモートコンピュータの磁気ディスクまたはソリッドステートドライブ上に搬送され得る。リモートコンピュータは、命令をそのダイナミックメモリにロードし、イーサネット(登録商標)コントローラまたはWi-Fiコントローラなどのネットワークインターフェースコントローラ(NIC)を介して、ネットワーク上で命令を送信し得る。コンピュータシステム900に対してローカルのNICが、ネットワークからデータを受信し、データをバス902上に配置し得る。バス902は、データをメインメモリ906に搬送し、そこからプロセッサ904は、命令を取り出し実行する。メインメモリ906によって受信された命令は、任意選択的に、プロセッサ904による実行の前または後のいずれかに記憶デバイス910上に記憶され得る。
【0064】
コンピュータシステム900はまた、バス902に結合された通信インターフェース918を含む。通信インターフェース918は、ローカルネットワーク922に接続されたネットワークリンク920に結合して二方向データ通信を提供する。例えば、通信インターフェース918は、統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)カード、ケーブルモデム、衛星モデム、または対応するタイプの電話回線へのデータ通信接続を提供するためのモデムであり得る。別の例として、通信インターフェース918は、互換性のあるローカルエリアネットワーク(LAN)へのデータ通信接続を提供するためのLANカードであってもよい。ワイヤレスリンクが実装されてもよい。任意のそのような実装形態では、通信インターフェース918は、様々なタイプの情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を送受信する。
【0065】
ネットワークリンク920は、典型的には、1つまたは複数のネットワークを介して他のデータデバイスにデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンク920は、ローカルネットワーク922を介してホストコンピュータ924へ、またはインターネットサービスプロバイダ(ISP)926によって運用されるデータ機器への接続を提供し得る。次に、ISP926は、現在一般に「インターネット」928と呼ばれているワールドワイドパケットデータ通信ネットワークを介してデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク922およびインターネット928の両方は、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を使用する。コンピュータシステム900との間でデジタルデータを搬送する、様々なネットワークを介した信号およびネットワークリンク920上および通信インターフェース918を介した信号は、伝送媒体の例示的な形態である。
【0066】
コンピュータシステム900は、ネットワーク(単数または複数)、ネットワークリンク920、および通信インターフェース918を介して、メッセージを送信し、プログラムコードを含むデータを受信することができる。インターネットの例では、サーバ930が、インターネット928、ISP926、ローカルネットワーク922、および通信インターフェース918を介して、アプリケーションプログラムのための要求されたコードを送信し得る。
【0067】
受信されたコードは、それが受信されたときにプロセッサ904によって実行され得、および/または後の実行のために記憶デバイス910もしくは他の不揮発性ストレージに記憶され得る。
【0068】
一実施形態では、コンピュータネットワークは、本明細書に記載の技法を利用するソフトウェアを実行するノードのセット間の接続性を提供する。ノードは、互いにローカルおよび/またはリモートであり得る。ノードは、リンクのセットによって接続される。リンクの例には、同軸ケーブル、非シールドツイストケーブル、銅線ケーブル、光ファイバ、および仮想リンクが含まれる。
【0069】
ノードのサブセットは、コンピュータネットワークを実装する。そのようなノードの例には、スイッチ、ルータ、ファイアウォール、およびネットワークアドレス変換器(NAT)が含まれる。別のノードのサブセットは、コンピュータネットワークを使用する。そのようなノード(「ホスト」とも呼ばれる)は、クライアントプロセスおよび/またはサーバプロセスを実行し得る。クライアントプロセスは、コンピューティングサービスを求める要求(例えば、特定のアプリケーションを実行し、および/または特定のデータセットを取り出す要求)を行う。サーバプロセスは、要求されたサービスを実行すること、および/または対応するデータを返すことによって応答する。
【0070】
コンピュータネットワークは、物理リンクによって接続された物理ノードを含む物理ネットワークであり得る。物理ノードは任意のデジタルデバイスである。物理ノードは、特定機能ハードウェアデバイスであり得る。特定機能ハードウェアデバイスの例には、ハードウェアスイッチ、ハードウェアルータ、ハードウェアファイアウォール、およびハードウェアNATが含まれる。代替的または追加的に、物理ノードは、それぞれの機能を実行する様々な仮想マシンおよび/またはアプリケーションを実行するように構成されたものなど、タスクを実行するための計算能力を提供する任意の物理リソースであり得る。物理リンクは、2つ以上の物理ノードを接続する物理媒体である。リンクの例には、同軸ケーブル、非シールドツイストケーブル、銅線ケーブル、および光ファイバが含まれる。
【0071】
コンピュータネットワークは、オーバーレイネットワークであり得る。オーバーレイネットワークは、別のネットワーク(例えば、物理ネットワーク)の上に実装される論理ネットワークである。オーバーレイネットワーク内の各ノードは、下層ネットワーク内のそれぞれのノードに対応する。したがって、オーバーレイネットワーク内の各ノードは、(オーバーレイノードをアドレス指定するための)オーバーレイアドレスと、(オーバーレイノードを実装するアンダーレイノードをアドレス指定するための)アンダーレイアドレスとの両方に関連付けられる。オーバーレイノードは、デジタルデバイスおよび/またはソフトウェアプロセス(例えば、仮想マシン、アプリケーションインスタンス、またはスレッド)であり得る。オーバーレイノードを接続するリンクは、下層ネットワークを通るトンネルとして実装され得る。トンネルの両端にあるオーバーレイノードは、それらの間の下層マルチホップ経路を単一の論理リンクとして扱い得る。トンネリングが、カプセル化およびデカプセル化を通じて行われる。
【0072】
一実施形態では、クライアントは、コンピュータネットワークに対してローカルおよび/またはリモートであり得る。クライアントは、プライベートネットワークまたはインターネットなどの他のコンピュータネットワークを介してコンピュータネットワークにアクセスし得る。クライアントは、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)などの通信プロトコルを使用して、コンピュータネットワークに要求を通信し得る。要求は、クライアントインターフェース(ウェブブラウザなど)、プログラムインターフェース、またはアプリケーションプログラミングインターフェース(API)などのインターフェースを介して通信される。
【0073】
一実施形態では、コンピュータネットワークは、クライアントとネットワークリソースとの間の接続性を提供する。ネットワークリソースは、サーバプロセスを実行するように構成されたハードウェアおよび/またはソフトウェアを含む。ネットワークリソースの例には、プロセッサ、データストレージ、仮想マシン、コンテナ、および/またはソフトウェアアプリケーションが含まれる。ネットワークリソースは、複数のクライアント間で共有され得る。クライアントは、互いに独立してコンピュータネットワークからのコンピューティングサービスを要求する。ネットワークリソースは、オンデマンドベースで要求および/またはクライアントに動的に割り当てられる。各要求および/またはクライアントに割り当てられたネットワークリソースは、例えば、(a)特定のクライアントによって要求されたコンピューティングサービス、(b)特定のテナントによって要求された集約されたコンピューティングサービス、および/または(c)コンピュータネットワークの要求された集約されたコンピューティングサービスに基づいて拡大または縮小され得る。そのようなコンピュータネットワークは、「クラウドネットワーク」と呼ばれ得る。
【0074】
一実施形態では、サービスプロバイダは、1つまたは複数のエンドユーザにクラウドネットワークを提供する。これらに限定されないがSaaS(Software-as-a-Service)、PaaS(Platform-as-a-Service)、およびIaaS(Infrastructure-as-a-Service)を含む様々なサービスモデルがクラウドネットワークによって実装され得る。SaaSでは、サービスプロバイダは、ネットワークリソース上で実行されているサービスプロバイダのアプリケーションを使用する能力をエンドユーザに提供する。PaaSでは、サービスプロバイダは、カスタムアプリケーションをネットワークリソース上に展開する能力をエンドユーザに提供する。カスタムアプリケーションは、サービスプロバイダによってサポートされるプログラミング言語、ライブラリ、サービス、およびツールを使用して作成され得る。IaaSでは、サービスプロバイダは、ネットワークリソースによって提供される処理、ストレージ、ネットワーク、および他の基本的なコンピューティングリソースをプロビジョニングする能力をエンドユーザに提供する。オペレーティングシステムを含む任意のアプリケーションが、ネットワークリソース上に展開され得る。
【0075】
一実施形態では、これらに限定されないがプライベートクラウド、パブリッククラウド、およびハイブリッドクラウドを含むコンピュータネットワークによって、様々な展開モデルが実装され得る。プライベートクラウドでは、ネットワークリソースは、1つまたは複数のエンティティ(本明細書で使用される「エンティティ」という用語は、会社、組織、人、または他のエンティティを指す)の特定のグループによる排他的使用のためにプロビジョニングされる。ネットワークリソースは、エンティティの特定のグループの構内に対してローカルおよび/またはリモートであり得る。パブリッククラウドでは、クラウドリソースは、互いに独立した複数のエンティティ(「テナント」または「顧客」とも呼ばれる)のためにプロビジョニングされる。ハイブリッドクラウドでは、コンピュータネットワークは、プライベートクラウドおよびパブリッククラウドを含む。プライベートクラウドとパブリッククラウドとの間のインターフェースは、データおよびアプリケーションのポータビリティを可能にする。プライベートクラウドに格納されるデータおよびパブリッククラウドに格納されるデータは、インターフェースを介して交換され得る。プライベートクラウドで実装されるアプリケーションおよびパブリッククラウドで実装されるアプリケーションは、互いに依存関係を有し得る。プライベートクラウドにおけるアプリケーションからパブリッククラウドにおけるアプリケーションへの(およびその逆の)呼び出しは、インターフェースを介して実行され得る。
【0076】
一実施形態では、システムは複数のテナントをサポートする。テナントは、共有されたコンピューティングリソース(例えば、パブリッククラウド内で共有されるコンピューティングリソース)にアクセスする会社、組織、企業、事業単位、従業員、または他のエンティティである。1つのテナントは(オペレーション、テナント特有のプラクティス、従業員、および/または外部世界への識別を通して)別のテナントとは別個であり得る。コンピュータネットワークおよびそのネットワークリソースは、異なるテナントに対応するクライアントによってアクセスされる。そのようなコンピュータネットワークは、「マルチテナントコンピュータネットワーク」と呼ばれ得る。いくつかのテナントは、異なる時間および/または同時に同じ特定のネットワークリソースを使用し得る。ネットワークリソースは、テナントの構内に対してローカルおよび/またはリモートであり得る。異なるテナントは、コンピュータネットワークに対して異なるネットワーク要件を要求し得る。ネットワーク要件の例には、処理速度、データストレージの量、セキュリティ要件、性能要件、スループット要件、レイテンシ要件、レジリエンシ要件、サービス品質(QoS)要件、テナント分離、および/または一貫性が含まれる。同じコンピュータネットワークが、異なるテナントによって要求される異なるネットワーク要件を実装する必要があり得る。
【0077】
一実施形態では、マルチテナントコンピュータネットワークにおいて、テナント分離は、異なるテナントのアプリケーションおよび/またはデータが互いに共有されないことを確実にするために実装される。様々なテナント分離手法が使用され得る。一実施形態では、各テナントはテナントIDに関連付けられる。コンピュータネットワークによって実装されるアプリケーションは、テナントIDでタグ付けされる。追加的または代替的に、コンピュータネットワークによって格納されるデータ構造および/またはデータセットは、テナントIDでタグ付けされる。テナントは、テナントおよび特定のアプリケーション、データ構造、および/またはデータセットが同じテナントIDに関連付けられている場合にのみ、その特定のアプリケーション、データ構造、および/またはデータセットへのアクセスを許可される。一例として、マルチテナントコンピュータネットワークによって実装される各データベースは、テナントIDでタグ付けされ得る。対応するテナントIDに関連付けられたテナントのみが、特定のデータベースのデータにアクセスし得る。別の例として、マルチテナントコンピュータネットワークによって実装されるデータベース内の各エントリは、テナントIDでタグ付けされ得る。対応するテナントIDに関連付けられたテナントのみが、特定のエントリのデータにアクセスし得る。しかしながら、データベースは複数のテナントによって共有され得る。サブスクリプションリストは、どのテナントがどのアプリケーションにアクセスする権限を有するかを示し得る。アプリケーションごとに、アプリケーションにアクセスする権限を付与されたテナントのテナントIDのリストが格納される。テナントは、テナントのテナントIDが特定のアプリケーションに対応するサブスクリプションリストに含まれる場合にのみ、その特定のアプリケーションへのアクセスが許可される。
【0078】
一実施形態では、異なるテナントに対応するネットワークリソース(デジタルデバイス、仮想マシン、アプリケーションインスタンス、およびスレッドなど)は、マルチテナントコンピュータネットワークによって維持されるテナント特有のオーバーレイネットワークに分離される。一例として、テナントオーバーレイネットワーク内の任意のソースデバイスからのパケットが、同じテナントオーバーレイネットワーク内の他のデバイスのみに送信され得る。カプセル化トンネルが、テナントオーバーレイネットワーク上のソースデバイスから他のテナントオーバーレイネットワーク内のデバイスへの任意の送信を禁止するために使用され得る。具体的には、ソースデバイスから受信されたパケットは、外部パケット内にカプセル化される。外部パケットは、(テナントオーバーレイネットワーク内のソースデバイスと通信している)第1のカプセル化トンネルエンドポイントから(テナントオーバーレイネットワーク内の宛先デバイスと通信している)第2のカプセル化トンネルエンドポイントに送信される。第2のカプセル化トンネルエンドポイントは、外部パケットをデカプセル化して、ソースデバイスによって送信された元のパケットを取得する。元のパケットは、第2のカプセル化トンネルエンドポイントから、同じ特定のオーバーレイネットワーク内の宛先デバイスに送信される。
【0079】
図10は、一実施形態に係るコネクテッドヘルス(CH)システム1000の一例のブロック図である。一実施形態では、CHシステム1000は、
図10に例示される構成要素よりも多いまたは少ない構成要素を含み得る。
図10に例示される構成要素は、互いにローカルまたはリモートであり得る。
図10に例示される構成要素は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアで実装され得る。各構成要素は、複数のアプリケーションおよび/またはマシンにわたって分散されていてよい。複数の構成要素が1つのアプリケーションおよび/またはマシンへと組み合わされ得る。1つの構成要素に関して説明された動作は、代わりに別の構成要素によって行われ得る。
【0080】
CHシステム1000は、システム100などのシステムの一部であるように、またはシステムと通信するように構成され得る。CHシステム1000は、とりわけ、本明細書に記載の1つまたは複数のシステムのネットワーク態様と接続して使用され得る、処理システム1005と、CHクラウドサービス1010と、ゲートウェイ(CHゲートウェイ)1020とを含み得る。処理システム1005は、CHシステム1000のデータ送信動作に関連して、クリニックまたは病院の臨床情報システム(CIS)1004で生成された処方情報を含む医療情報を処理し、互換性チェックし、および/またはフォーマットするサーバおよび/またはクラウドベースのシステムを含み得る。CHシステム1000は、適切な暗号化およびデータセキュリティ機構を含み得る。CHクラウドサービス1010は、インターネットなどのネットワークへの接続を介した、CHシステム1000の構成要素間の通信パイプラインとしての役割をする(例えば、データの転送を容易にする)クラウドベースのアプリケーションを含み得る。ゲートウェイ1020は、CHシステム1000の構成要素間の通信を容易にする通信デバイスとしての役割をし得る。様々な実施形態において、ゲートウェイ1020は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、および/または他の適切なタイプのローカルもしくは短距離ワイヤレス接続などのワイヤレス接続1001を介して、透析装置1002(例えば、腹膜透析装置または血液透析装置)およびシステム100と通信し得る。ゲートウェイ1020はまた、セキュアネットワーク(例えば、インターネット)接続を介してCHクラウドサービス1010とも接続し得る。ゲートウェイ1020は、CHクラウドサービス1010に/からデータを送信/受信し、透析装置10010およびシステム100に/からデータを送信/受信するように構成され得る。透析装置1002は、(例えば、ゲートウェイ1020を介して)利用可能なファイルについてCHクラウドサービス1010をポーリングし得、透析装置1002および/またはシステム100は、利用可能なファイルを処理のために一時的に記憶し得る。
【0081】
上記では、LibertyサイクラーおよびHydra4200などの特定のハードウェアを参照していることが理解されよう。上記でLibertyサイクラーまたはHydra4200が必要であるわけではなく、これらのデバイスが、本明細書でそれらに関して説明された能力で使用できるデバイスの例にすぎないことが理解されよう。同等または類似の機能性を有する他のデバイス、デバイスの組合せ、またはシステムが使用されてもよい。
【国際調査報告】