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特表2024-545421サイフォン放熱器及びその放熱フィン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】サイフォン放熱器及びその放熱フィン
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241129BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20241129BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 B
H05K7/20 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532710
(86)(22)【出願日】2023-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2023096210
(87)【国際公開番号】W WO2024103670
(87)【国際公開日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】202211429081.8
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524204285
【氏名又は名称】グアンドン エンヴィクール テクノロジー カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ドン
(72)【発明者】
【氏名】ション、ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジン
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322BA03
5E322BA05
5E322BC05
5E322EA11
5F136BA07
5F136BA14
5F136CC12
5F136FA02
5F136GA02
(57)【要約】
本出願は、サイフォン放熱器及びその放熱フィンを開示し、実際の設計要求に応じて、サイフォン放熱器は放熱フィンのみを含み、又は、サイフォン放熱器は、同時に放熱フィンと放熱ヒレを含むことが可能である。放熱フィンのフィン室の内部に、テスラバルブ構造である補償室を設け、放熱基板と放熱フィンのチャンバー内に、1つ又は複数の流体回路を形成することにより、液体作動媒体と気体作動媒体は流体回路をスムーズに作動し、熱交換効率を大幅に向上させることで、放熱器のチャンバー内の気体作動媒体が多くなり、液体作動媒体が減少し、内圧が大きくなり、気体作動媒体により液体作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体作動媒体が気体作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体作動媒体の回流に不利であり、伝熱・放熱効果に影響するという問題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱フィンであって、
フィン室と、前記フィン室と連通する流体ポートとを含み、
前記流体ポートは流体入口と流体出口を含み、
前記フィン室は、導流室と、少なくとも1つの一方向流れ構造で形成された補償室とを含み、前記導流室は導流入口と導流出口を有し、前記補償室は補償室入口と補償室出口を有し、前記導流入口は前記流体入口と連通し、前記導流出口は前記補償室入口と連通し、前記補償室出口は前記流体出口と連通することを特徴とする放熱フィン。
【請求項2】
前記フィン室内には、さらに実体部が設けられ、前記流体入口、前記導流室、前記補償室及び前記流体出口は順次に連通して流体回路を形成し、前記流体回路は前記実体部を取り囲んで設けられることを特徴とする請求項1に記載の放熱フィン。
【請求項3】
前記流体入口と前記流体出口は縦方向に沿って配置され、かつ前記流体入口は前記流体出口の上方に位置し、前記一方向流れ構造は前記フィン室の底部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の放熱フィン。
【請求項4】
前記流体入口と前記流体出口は、水平方向に沿って配置され、前記一方向流れ構造は複数設けられ、複数の前記一方向流れ構造は、水平方向に沿って間隔をおいて分布され、前記導流室は、複数の前記一方向流れ構造の間から上方へ延びてから、水平方向に沿って異なる向きに延べることを特徴とする請求項1に記載の放熱フィン。
【請求項5】
隣接する2つの前記一方向流れ構造の間のピッチは、前記流体ポートから離れた方向に沿って徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項4に記載の放熱フィン。
【請求項6】
前記一方向流れ構造はテスラバルブであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の放熱フィン。
【請求項7】
サイフォン放熱器であって、放熱基板と、少なくとも1つの請求項1~6のいずれか1項に記載の放熱フィンとを含み、前記放熱基板は、放熱媒体を貯蔵する基板室を含み、前記放熱基板は、熱源に接続する熱端面と、前記放熱フィンに接続する接続面とを有し、前記接続面には、前記基板室と連通する接続溝が設けられ、前記流体ポートは前記接続溝に接続されることで前記基板室は前記フィン室と連通することを特徴とするサイフォン放熱器。
【請求項8】
前記サイフォン放熱器は、さらに、少なくとも1つの放熱ヒレを含み、前記放熱ヒレは前記放熱フィンと間隔をおいて設置されることを特徴とする請求項7に記載のサイフォン放熱器。
【請求項9】
前記放熱ヒレは、いくつかの凹凸構造が設けられたヒレ基板を含むことを特徴とする請求項8に記載のサイフォン放熱器。
【請求項10】
前記ヒレ基板の対向する両端から同一側に延びて係止縁を形成することを特徴とする請求項9に記載のサイフォン放熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2022年11月15日にて、中国特許庁に提出され、出願番号が202211429081.8であり、発明の名称が「サイフォン放熱器及びその放熱フィン」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は援用されることで、本出願に結合される。
【0002】
本出願は放熱技術分野に関し、特にサイフォン放熱器及びその放熱フィンに関する。
【背景技術】
【0003】
従来のサイフォン放熱器の放熱フィンのチャンバーの内部は、主に正方形、菱形、正六角形等のハニカム状構造を採用してチャンバーの内部の作動媒体の循環流れを促進するが、本出願を実現する過程において、発明者は、従来技術には少なくとも、熱源消費電力の増加に伴い、上記のハニカム状構造を採用し、作動媒体の相変化によりフィンチャンバー内の気体と液体が複数の方向に乱れて流れ、気体作動媒体は液体作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体作動媒体は気体作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体作動媒体の回流に不利であり、ひいては、放熱効果に影響するという問題が存在することを発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に鑑みて、本出願は、フィン室内に一方向流れ構造を設置することにより、気、液作動媒体の間の妨害を減少させ、秩序正しく流れて熱交換効率を大幅に向上させるサイフォン放熱器及びその放熱フィンを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は放熱フィンを提供し、フィン室と、前記フィン室と連通する流体ポートとを含み、前記流体ポートは流体入口と流体出口を含み、前記フィン室は、導流室と、少なくとも1つの一方向流れ構造で形成された補償室とを含み、前記導流室は導流入口と導流出口を有し、前記補償室は補償室入口と補償室出口を有し、前記導流入口は前記流体入口と連通し、前記導流出口は前記補償室入口と連通し、前記補償室出口は前記流体出口と連通する。
【0006】
好ましい実施形態において、前記フィン室内には、さらに実体部が設けられ、前記流体入口、前記導流室、前記補償室及び前記流体出口は順次に連通して流体回路を形成し、前記流体回路は前記実体部を取り囲んで設けられる。
【0007】
好ましい実施形態において、前記流体入口と前記流体出口は縦方向に沿って配置され、かつ前記流体入口は前記流体出口の上方に位置し、前記一方向流れ構造は前記フィン室の底部に設けられる。
【0008】
好ましい実施形態において、前記流体入口と前記流体出口は、水平方向に沿って配置され、前記一方向流れ構造は複数設けられ、複数の前記一方向流れ構造は、水平方向に沿って間隔をおいて分布され、前記導流室は、複数の前記一方向流れ構造の間から上方へ延びてから、水平方向に沿って異なる向きに延びる。
【0009】
好ましい実施形態において、隣接する2つの前記一方向流れ構造の間のピッチは、前記流体ポートから離れた方向に沿って徐々に小さくなっている。
【0010】
好ましい実施形態において、前記一方向流れ構造はテスラバルブである。
【0011】
本出願は、さらにサイフォン放熱器を提供し、放熱基板と、少なくとも1つの上記のような放熱フィンとを含み、前記放熱基板は、放熱媒体を貯蔵する基板室を含み、前記放熱基板は、熱源に接続する熱端面と、前記放熱フィンに接続する接続面とを有し、前記接続面には、前記基板室と連通する接続溝が設けられ、前記流体ポートは前記接続溝に接続されることで前記基板室は前記フィン室と連通する。
【0012】
好ましい実施形態において、前記サイフォン放熱器は、さらに、少なくとも1つの放熱ヒレを含み、前記放熱ヒレは前記放熱フィンと間隔をおいて設置される。
【0013】
好ましい実施形態において、前記放熱ヒレは、いくつかの凹凸構造が設けられたヒレ基板を含む。
【0014】
好ましい実施形態において、前記ヒレ基板の対向する両端から同一側に延びて係止縁を形成する。
【0015】
以上のように、本出願は、サイフォン放熱器及びその放熱フィンを提供し、放熱フィンのフィン室の内部に、一方向流れ構造で形成された補償室を設け、放熱基板と放熱フィンのチャンバー内に、1つ又は複数の流体回路を形成することにより、液体作動媒体と気体作動媒体は流体回路をスムーズに作動し、熱交換効率を大幅に向上させることで、以下の問題を解決する、即ち、放熱器のチャンバー内の気体作動媒体は液体作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体作動媒体は気体作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体作動媒体の回流に不利であり、伝熱・放熱効果に影響するという問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本出願の第1の実施例におけるサイフォン放熱器の正面図である。
図2図1におけるサイフォン放熱器の平面図である。
図3図1におけるサイフォン放熱器の内部構成概略図である。
図4図1におけるサイフォン放熱器の分解構成概略図である。
図5図1における放熱フィンの分解概略図である。
図6図1における放熱フィンの内部構成概略図である。
図7図1における放熱ヒレユニットの部分分解概略図である。
図8図1における放熱ヒレユニットの側面図である。
図9】本出願の第2の実施例におけるサイフォン放熱器の内部構成概略図である。
図10図9における放熱フィンの分解概略図である。
図11図9における放熱フィンの内部構成概略図である。
図12】本出願の放熱ヒレと従来の放熱ヒレの表面流層を比較した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例を詳細に説明する前に、本出願は、本出願における後述又は図面に記載される詳細な構造又は素子配置に限定されないことが理解されるべきである。本出願は、他の形態で実現される実施例であってもよい。そして、本文で使用される文言及び用語は、単に説明のために使用されるものであり、限定的に解釈されるべきではないことが理解されるべきである。本文で使用される「備える」、「含む」、「有する」等の類似な表現とは、その後に列挙された事項、それらの同等物、及び他の追加的な事項を含むことを意味する。特に、「1つのある素子」を説明する場合に、本出願は当該素子の数を1つに限定せず、複数の素子を含むことも可能である。
【0018】
本出願の実施例における全ての方向性指示(例えば、上、下、左、右、前、後、等・・・・・・)は、ある特定の姿勢(添付図面に示すように)における各部品間の相対的位置関係、運動状況等への解釈にのみ使用され、当該特定の姿勢が変化すると、当該方向性指示もそれに応じて変化する。
【0019】
指摘すべきことは、本出願で使用される水平方向と縦方向は、サイフォン放熱器及び放熱フィンの配置方向を参照にしたものであり、言い換えれば、本出願で使用される水平方向と縦方向は地面を参照として定義されるものであり、縦方向は重力方向であり、水平方向は縦方向と垂直な方向である。
【0020】
同時に図1から図12を参照し、本出願は、サイフォン放熱器10を提供し、このサイフォン放熱器10は、放熱基板12、いくつかの放熱フィン14からなる放熱フィン群16、及びいくつかの放熱ヒレ18からなる放熱ヒレ群20を含み、放熱ヒレ群20は、ファンにより空気を強制的に対流させることで環境に放熱し、放熱効率を向上させることができる。別の実施例では、実際の放熱要求に応じて、このサイフォン放熱器10は、放熱基板12と、いくつかの放熱フィン14からなる放熱フィン群16のみを含むことも可能であり、これにより、サイフォン放熱器10は自然対流の場合に使用可能であることが理解されるべきである。
【0021】
さらに、放熱基板12は、放熱媒体を貯蔵するための基板室22を含み、放熱媒体は、例えば熱交換効率の高いR134a、R1233zd等の2相の相変化材料を採用することができるので、製品の消費電力が大きすぎて熱流密度が高すぎることに起因する不完全な解熱、製品の焼失等の問題をよく解決した。本実施例では、放熱基板12は四角形構造であり、対向する熱端面24と接続面26を含む。熱端面24は熱源に接続するために使用され、熱源は例えばCPUであり、熱端面24には、いくつかのCPU熱源面28が設けられることができ、例えば3つのCPU熱源面28が設けられ、3つのCPU熱源面28は、放熱基板12の長手方向に沿って間隔をおいて配置される。放熱フィン群16は、接続面26に接続され、具体的には、接続面26には、いくつかの基板室22と連通する接続溝30が設けられ、いくつかの接続溝30は、いずれも放熱基板12の幅方向に延び、かつ、いくつかの接続溝30は、放熱基板12の長手方向に沿って均等に間隔をおいて設置されかつ互いに平行である。
【0022】
一つの選択として、放熱基板12は、突き合わせて接続されたベース32と蓋板34を含み、蓋板34とベース32とは、例えばアルミロウ付けにより溶接され、接続溝30は蓋板34に設けられ、ベース32と蓋板34との間に基板室22が形成される。
【0023】
放熱フィン14は、フィン室36及びフィン室36と連通する流体ポート38を含む。例示された実施例では、放熱フィン14は四角形構造であり、フィン室36内には、厚さ方向に延びるいくつかの支柱が設けられ、支柱は、複数の形状とすることができ、フィン室36内のチャンバー構造はいくつかの支柱の間に形成される。さらに、流体ポート38は、流体入口42と流体出口44を含み、フィン室36内には、流体入口42と流体出口44との間を連通する流体回路が形成される。より具体的には、フィン室36は、導流室46と、少なくとも1つの一方向流れ構造で形成された補償室48とを含み、導流室46は導流入口50と導流出口52を有し、補償室48は補償室入口54と補償室出口56を有する。導流入口50は流体入口42と連通し、導流出口52は補償室入口54と連通し、補償室出口56は流体出口44と連通するため、フィン室36内にスムーズな流体回路が形成される。
【0024】
例示された実施例では、一方向流れ構造はテスラバルブ40として実施される。他の実施例では、一方向流れ構造は、テスラバルブ40の特性に類似した、流体一方向流れを可能にする他の構造として実施されることもできる。
【0025】
好ましくは、放熱基板12における流体ポート38の両端にある位置には切り欠きが設けられて、放熱フィン14の放熱基板12への接続を容易にする。
【0026】
放熱フィン14における流体ポート38にある一端は接続溝30に接続されることで、基板室22とフィン室36とを連通させる。基板室22内の液放熱媒体は熱を吸収した後に蒸発して流体ポート38からフィン室36に入っており、テスラバルブ40は一方向導流の特性を有するため、蒸発した気体放熱媒体が流体ポート38におけるテスラバルブ40に対応する部分から補償室48に入って導流室46へ流す抵抗は非常に大きく、実現できないため、蒸発した気体放熱媒体は、流体ポート38における導流室46に対応する部分からフィン室36に入って補償室48へ流してから流体ポート38を流れて基板室22に回流することのみが可能である。従って、本出願は、流体ポート38を導流室46に対応する流体入口42と補償室48に対応する流体出口44とに区画する。補償室48は、テスラバルブ40の一方向の導流性を採用し、回流の速度を大幅に向上させ、さらに、熱交換効率を高める。従来の放熱フィンの内部は、単純に正方形、菱形、正六角形構造を採用するだけでは、この特性を備えず、内部の気体と液体は乱れやすくなり、フィンの放熱性能に影響を与える。
【0027】
本出願は、放熱フィン14のチャンバー構造を設計して、放熱媒体の流体回路を非常にスムーズにし、放熱性能を向上させることで、相変化により放熱器のチャンバー内の気体放熱作動媒体が多くなり、液体放熱作動媒体が減少し、内圧が大きくなり、気体放熱作動媒体は液体放熱作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体放熱作動媒体は気体放熱作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体放熱作動媒体の回流に不利であるという問題を解決した。
【0028】
一つの選択として、放熱フィン14は、突き合わせて接続されたフィン底板58とフィン蓋板60を含み、フィン底板58とフィン蓋板60とは、例えばアルミロウ付けプロセスにより溶接され、フィン底板58とフィン蓋板60との間にフィン室36が形成される。
【0029】
一つの選択として、放熱フィン14における流体ポート38にある一端と接続溝30の溝壁との間はアルミロウ付けプロセスにより溶接されることで、基板室22はフィン室36と連通して全体的に閉鎖されたチャンバーを形成する。
【0030】
放熱フィン群16は、放熱基板12の接続面26に溶接される。具体的には、放熱フィン14の数を接続溝30の数と同数に設定し、それぞれの放熱フィン14を対応する接続溝30に溶接接続する。
【0031】
例示された実施例では、基板室22内には、さらに、回流した液体放熱作動媒体を吸収するために使用可能な毛細構造62が設けられ、毛細構造62は、例えば、ベース32の内壁に貼り付けられている。毛細構造62は、熱伝導性金属粒子を採用することができ、これにより、放熱作動媒体の沸騰及び放熱作動媒体回流の作用を強化する作用が得られ、さらに放熱効率を向上させる。
【0032】
本出願では、サイフォン放熱器10は、少なくとも1つの放熱ヒレユニット64を含み、放熱ヒレユニット64は放熱フィン14と間隔をおいて設置される。例示された実施例では、サイフォン放熱器10は、上記の放熱ヒレ群20を構成する複数の放熱ヒレユニット64を含む。
【0033】
より具体的には、放熱ヒレ群20は、複数の放熱ヒレユニット64を含み、それぞれの放熱ヒレユニット64は、隣接する2つの放熱フィン14の間に接続され、それぞれの放熱ヒレユニット64は、複数の放熱ヒレ18が係合して形成されてなる。
【0034】
例示された実施例では、放熱ヒレ18は四角形構造であり、ヒレ基板66及びヒレ基板66の対向する両端から同一側に延びて形成された係止縁68を含み、係止縁68は例えばヒレ基板66と垂直である。複数の放熱ヒレ18は、互いに重ね合わされ、係止縁68により係合して放熱ヒレユニット64を形成し、複数の放熱ヒレユニット64は放熱ヒレ群20を構成する。実際の設計要求に応じて、隣接する2つの放熱ヒレ18の間のピッチ、即ち、係止縁68の長さは調整可能である。放熱ヒレ18はプレスにより成型可能である。
【0035】
好ましくは、ヒレ基板66には、いくつかの凹凸構造70が設けられており、凹凸構造70は、1つの面が凸となり1つの面が凹となる構造であり、凹凸構造70はヒレ基板66の全体に亘って設けられることができる。例示された実施例では、全ての凹凸構造70はいずれも円形であり、全ての凹凸構造70はいずれも放熱基板12の側に向かって凸となっている。本出願は、放熱ヒレ18のヒレ基板66に凹凸構造70が設けられ、凹凸構造70はスポイラーとして作用して乱流を形成し、放熱効率を向上させることができる。
【0036】
さらに、凹凸構造70の直径は5mmであり、凹凸構造70で形成された窪みの深さは0.25mmである。別の実施例では、凹凸構造70のサイズは、他の選択肢を有してもよいが、本出願ではこれを限定しない。
【0037】
図12に示すように、ヒレ基板66に凹凸構造70を設けることで放熱ヒレ18の放熱面積を増加させることができ、かつ凹凸構造70の設計によりヒレ基板66の表面にスポイラーの効果を形成することができ、ファンにより強制的に放熱ヒレ群20の領域の空気を対流させると、気流はヒレ基板66の表面に乱流を形成する。通常の両面が平面である放熱ヒレよりも、気流はその表面に層流を形成し、層流は分子間の相互作用によるものであり、乱流は主に質点間の混合によるものであり、乱流の熱伝達速度は層流よりもはるかに大きく、放熱効率がより高いので、凹凸構造70の設計により熱交換効率を大幅に向上させることができる。
【0038】
放熱ヒレユニット64は、それぞれの放熱ヒレ18の係止縁68により隣接する2つの放熱フィン14の間に接続され、例えば、係止縁68はアルミロウ付けプロセスにより放熱フィン14に溶接される。例えば、ヒレ基板66は放熱フィン14と垂直である。
【0039】
図1~8に示すような実施例では、放熱基板12は、流体ポート38の導流方向が水平方向に沿って、流体入口42と流体出口44が縦方向に沿って配置されるように縦置きされる。フィン室36内には、さらに実体部72が設けられ、実体部72を設けることでフィン室36内に環状のチャンバーを形成し、流体回路は実体部72を取り囲んで設けられる。流体入口42は流体出口44の上方に位置し、テスラバルブ40はフィン室36の底部領域に設けられる。
【0040】
本実施例では、毛細構造62は、基板室22内のテスラバルブ40の領域に対応する内壁に設けられる。
【0041】
CPU熱源面28が加熱された後、基板室22内の液体放熱作動媒体は熱を吸収して気化し、フィン室36内に入って熱交換を行う同時に、熱量を放熱ヒレ18に伝達し、放熱ヒレ18での熱量は、ファンにより強制的に対流させる場合に、垂直方向に外部へ放熱され、水平方向も同時に熱交換され、液体放熱作動媒体は、重力及び補償室48の作用により基板室22内に流入し、循環を繰り返し、効率的に放熱する。
【0042】
図9~11に示すような実施例では、放熱基板12は、流体ポート38の導流方向が縦方向に沿って、流体入口42と流体出口44が水平方向に沿って配置されるように水平に平置きされる。放熱すべきデバイスの電力が増加しかつ熱源位置が増加する場合に、放熱フィン14の長さを長くすることができ、テスラバルブ40は複数設けられてもよく、複数のテスラバルブ40は、水平方向に沿って間隔をおいて分布され、導流室46は、複数のテスラバルブ40の間から上方へ延びてから、水平方向に沿って異なる向きに延びることで多重循環構造を形成する。
【0043】
本実施例では、テスラバルブ40は2つ設けられており、2つのテスラバルブ40は、それぞれ、フィン室36内の両側の底部に設けられている。蒸発した気体放熱作動媒体は、2つのテスラバルブ40の間の導流室46に沿って上方へ流れてから、両辺へ分流して下方に向かって両側の補償室48に入り、最後に基板室22内に回流することで、二重循環構造を形成する。
【0044】
好ましくは、2つのテスラバルブ40の間のピッチは、流体ポート38から離れる方向に沿って徐々に小さくなり、例えば、2つのテスラバルブ40の対向する側壁は、いずれも斜面構造とされ、蒸発した気体放熱作動媒体は導流室46から補償室48にスムーズに入ることができるようになる。
【0045】
本実施例では、毛細構造62は、基板室22内の2つのテスラバルブ40の間の領域に対応する内壁に設けられる。
【0046】
CPU熱源面28が加熱された後、基板室22内の液体放熱作動媒体は熱を吸収して気化し、フィン室36内に入って熱交換を行う同時に、熱量を放熱ヒレ18に伝達し、補償室48が傾斜構造を採用することで蒸発した気体放熱作動媒体が導流室46から補償室48にスムーズに入っており、放熱ヒレ18での熱量は、ファンにより強制的に対流させる場合に、水平方向に外部へ放熱され、垂直方向も同時に熱交換される。液体放熱作動媒体は、重力及び補償室48の作用により基板室22内に流入し、循環を繰り返し、効率的に放熱する。
【0047】
本出願のサイフォン放熱器10の具体的な作動原理は、サイフォン放熱器10は運行を開始すると、放熱基板12の基板室22内の液体放熱作動媒体は蒸発し始め、流体ポート38を介してフィン室36内に入っており、テスラバルブ40が一方向導流構造であるため、蒸発した気体放熱作動媒体はいずれも流体入口42から導流入口50を介して導流室46内に入っており、重力方向が下向きであること並びに実体部72と補償室48が存在することにより、蒸発した気体放熱作動媒体は導流出口52から補償室入口54を介して補償室48スムーズに入っており、気体放熱作動媒体は液体状態に液化冷却された後、補償室出口56から流体出口44を介して基板室22内に回流して、このように循環的に流れることである。
【0048】
本出願のサイフォン放熱器10は、デバイス空間が限られ、デバイスの電力が増加する場合に、伝統的なモジュール放熱器よりも優位性があり、伝統的なモジュール放熱器が発生した焼失等の問題を効果的に解決することができる。さらに、放熱フィン14の内部にテスラバルブ40で形成された補償室48が設けられることで、放熱器のチャンバー内の気体作動媒体が多くなり、液体作動媒体が減少し、内圧が大きくなり、気体作動媒体は液体作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体作動媒体は気体作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体作動媒体の回流に不利であり、伝熱・放熱効果に影響するという問題を解決する。放熱ヒレ18の表面に凹凸構造70が設けられることで、スポイラーとして作用して乱流を形成し、放熱効率を向上させることができる。
【0049】
本出願のサイフォン放熱器10、放熱フィン14及び放熱ヒレ18は、製品全体の材質がアルミニウムであり、全ての部品を組み立てた後に専用のロウ付け治具でロウ付けして成型する。製品は異なる場面での放熱器の基板、チャンバー構造と、ロウ付けしてから正常に作動することができ、CPU熱源面28が加熱された後、液体放熱作動媒体は、基板室22内で気化してフィン室36内に入ってから熱量を放熱ヒレ18に伝達し、強制的な対流によって環境に放熱する。かつ成熟したロウ付け技術を採用して、信頼性が高くなり、製品構造が安定し、密閉性が良い。
【0050】
いくつかの実施例では、実際の設計要求に応じて、フィン室36の高さを増加させる及び/又は基板室22の高さを増加させることで、より多くのチャンバー体積を得て、放熱作動媒体の流れを容易にすることができる。
【0051】
いくつかの実施例では、実際の設計要求に応じて、補償室48、即ちテスラバルブ40の上下位置を変更して、熱源位置の変化に対応することができる。
【0052】
いくつかの実施例では、実際の設計要求に応じて、放熱ヒレ18の長さ、幅、厚さ、及び放熱ヒレ18の間のピッチを変更して、サイフォン放熱器10の放熱システムのインピーダンスを調整することができる。
【0053】
以上のように、本出願は、サイフォン放熱器及びその放熱フィンを提供し、放熱フィンのフィン室の内部に、一方向流れ構造で形成された補償室を設け、放熱基板と放熱フィンのチャンバー内に、1つ又は複数の流体回路を形成することにより、液体作動媒体と気体作動媒体は流体回路をスムーズに作動し、熱交換効率を大幅に向上させることで、放熱器のチャンバー内の気体作動媒体が多くなり、液体作動媒体が減少し、内圧が大きくなり、気体作動媒体は液体作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体作動媒体が気体作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体作動媒体の回流に不利であり、伝熱・放熱効果に影響するという問題を解決する。
【0054】
本文に記載された概念は、その精神及び特性から逸脱しない場合に他の形態で実施されることができる。開示された具体的な実施例は、限定的なものではなく、例示的なものとみなされるべきである。従って、本出願の範囲は、これらの前述の説明に基づいて決定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって決定されるものである。請求項の文字どおりの意味及びその同等の範囲内の如何なる変更もこれらの特許請求の範囲に属するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱フィンであって、
フィン室と、前記フィン室と連通する流体ポートとを含み、
前記流体ポートは流体入口と流体出口を含み、
前記フィン室は、導流室と、少なくとも1つの一方向流れ構造で形成された補償室とを含み、前記導流室は導流入口と導流出口を有し、前記補償室は補償室入口と補償室出口を有し、前記導流入口は前記流体入口と連通し、前記導流出口は前記補償室入口と連通し、前記補償室出口は前記流体出口と連通することを特徴とする放熱フィン。
【請求項2】
前記フィン室内には、さらに実体部が設けられ、前記流体入口、前記導流室、前記補償室及び前記流体出口は順次に連通して流体回路を形成し、前記流体回路は前記実体部を取り囲んで設けられることを特徴とする請求項1に記載の放熱フィン。
【請求項3】
前記流体入口と前記流体出口は縦方向に沿って配置され、かつ前記流体入口は前記流体出口の上方に位置し、前記一方向流れ構造は前記フィン室の底部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の放熱フィン。
【請求項4】
前記流体入口と前記流体出口は、水平方向に沿って配置され、前記一方向流れ構造は複数設けられ、複数の前記一方向流れ構造は、水平方向に沿って間隔をおいて分布され、前記導流室は、複数の前記一方向流れ構造の間から上方へ延びてから、水平方向に沿って異なる向きに延べることを特徴とする請求項1に記載の放熱フィン。
【請求項5】
隣接する2つの前記一方向流れ構造の間のピッチは、前記流体ポートから離れた方向に沿って徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項4に記載の放熱フィン。
【請求項6】
前記一方向流れ構造はテスラバルブであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の放熱フィン。
【請求項7】
サイフォン放熱器であって、放熱基板と、少なくとも1つの請求項1~のいずれか1項に記載の放熱フィンとを含み、前記放熱基板は、放熱媒体を貯蔵する基板室を含み、前記放熱基板は、熱源に接続する熱端面と、前記放熱フィンに接続する接続面とを有し、前記接続面には、前記基板室と連通する接続溝が設けられ、前記流体ポートは前記接続溝に接続されることで前記基板室は前記フィン室と連通することを特徴とするサイフォン放熱器。
【請求項8】
前記サイフォン放熱器は、さらに、少なくとも1つの放熱ヒレを含み、前記放熱ヒレは前記放熱フィンと間隔をおいて設置されることを特徴とする請求項7に記載のサイフォン放熱器。
【請求項9】
前記放熱ヒレは、いくつかの凹凸構造が設けられたヒレ基板を含むことを特徴とする請求項8に記載のサイフォン放熱器。
【請求項10】
前記ヒレ基板の対向する両端から同一側に延びて係止縁を形成することを特徴とする請求項9に記載のサイフォン放熱器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2022年11月15日にて、中国特許庁に提出され、出願番号が202211429081.8であり、発明の名称が「サイフォン放熱器及びその放熱フィン」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は援用されることで、本出願に結合される。
【0002】
本出願は放熱技術分野に関し、特にサイフォン放熱器及びその放熱フィンに関する。
【背景技術】
【0003】
従来のサイフォン放熱器の放熱フィンのチャンバーの内部は、主に正方形、菱形、正六角形等のハニカム状構造を採用してチャンバーの内部の作動媒体の循環流れを促進するが、本出願を実現する過程において、発明者は、従来技術には少なくとも、熱源消費電力の増加に伴い、上記のハニカム状構造を採用し、作動媒体の相変化によりフィンチャンバー内の気体と液体が複数の方向に乱れて流れ、気体作動媒体は液体作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体作動媒体は気体作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体作動媒体の回流に不利であり、ひいては、放熱効果に影響するという問題が存在することを発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に鑑みて、本出願は、フィン室内に一方向流れ構造を設置することにより、気、液作動媒体の間の妨害を減少させ、秩序正しく流れて熱交換効率を大幅に向上させるサイフォン放熱器及びその放熱フィンを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は放熱フィンを提供し、フィン室と、前記フィン室と連通する流体ポートとを含み、前記流体ポートは流体入口と流体出口を含み、前記フィン室は、導流室と、少なくとも1つの一方向流れ構造で形成された補償室とを含み、前記導流室は導流入口と導流出口を有し、前記補償室は補償室入口と補償室出口を有し、前記導流入口は前記流体入口と連通し、前記導流出口は前記補償室入口と連通し、前記補償室出口は前記流体出口と連通する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本出願の実施例におけるサイフォン放熱器の正面図である。
図2図1におけるサイフォン放熱器の平面図である。
図3図1におけるサイフォン放熱器の内部構成概略図である。
図4図1におけるサイフォン放熱器の分解構成概略図である。
図5図1における放熱フィンの分解概略図である。
図6図1における放熱フィンの内部構成概略図である。
図7図1における放熱ヒレユニットの部分分解概略図である。
図8図1における放熱ヒレユニットの側面図である。
図9】本出願のの実施例におけるサイフォン放熱器の内部構成概略図である。
図10図9における放熱フィンの分解概略図である。
図11図9における放熱フィンの内部構成概略図である。
図12】本出願の放熱ヒレと従来の放熱ヒレの表面流層を比較した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施例を詳細に説明する前に、本出願は、本出願における後述又は図面に記載される詳細な構造又は素子配置に限定されないことが理解されるべきである。本出願は、他の形態で実現される実施例であってもよい。そして、本文で使用される文言及び用語は、単に説明のために使用されるものであり、限定的に解釈されるべきではないことが理解されるべきである。本文で使用される「備える」、「含む」、「有する」等の類似な表現とは、その後に列挙された事項、それらの同等物、及び他の追加的な事項を含むことを意味する。特に、「1つのある素子」を説明する場合に、本出願は当該素子の数を1つに限定せず、複数の素子を含むことも可能である。
【0008】
本出願の実施例における全ての方向性指示(例えば、上、下、左、右、前、後、等・・・・・・)は、ある特定の姿勢(添付図面に示すように)における各部品間の相対的位置関係、運動状況等への解釈にのみ使用され、当該特定の姿勢が変化すると、当該方向性指示もそれに応じて変化する。
【0009】
指摘すべきことは、本出願で使用される水平方向と縦方向は、サイフォン放熱器及び放熱フィンの配置方向を参照にしたものであり、言い換えれば、本出願で使用される水平方向と縦方向は地面を参照として定義されるものであり、縦方向は重力方向であり、水平方向は縦方向と垂直な方向である。
【0010】
同時に図1から図12を参照し、本出願は、サイフォン放熱器10を提供し、このサイフォン放熱器10は、放熱基板12、いくつかの放熱フィン14からなる放熱フィン群16、及びいくつかの放熱ヒレ18からなる放熱ヒレ群20を含み、放熱ヒレ群20は、ファンにより空気を強制的に対流させることで環境に放熱し、放熱効率を向上させることができる。別の実施例では、実際の放熱要求に応じて、このサイフォン放熱器10は、放熱基板12と、いくつかの放熱フィン14からなる放熱フィン群16のみを含むことも可能であり、これにより、サイフォン放熱器10は自然対流の場合に使用可能であることが理解されるべきである。
【0011】
さらに、放熱基板12は、放熱媒体を貯蔵するための基板室22を含み、放熱媒体は、例えば熱交換効率の高いR134a、R1233zd等の2相の相変化材料を採用することができるので、製品の消費電力が大きすぎて熱流密度が高すぎることに起因する不完全な解熱、製品の焼失等の問題をよく解決した。本実施例では、放熱基板12は四角形構造であり、対向する熱端面24と接続面26を含む。熱端面24は熱源に接続するために使用され、熱源は例えばCPUであり、熱端面24には、いくつかのCPU熱源面28が設けられることができ、例えば3つのCPU熱源面28が設けられ、3つのCPU熱源面28は、放熱基板12の長手方向に沿って間隔をおいて配置される。放熱フィン群16は、接続面26に接続され、具体的には、接続面26には、いくつかの基板室22と連通する接続溝30が設けられ、いくつかの接続溝30は、いずれも放熱基板12の幅方向に延び、かつ、いくつかの接続溝30は、放熱基板12の長手方向に沿って均等に間隔をおいて設置されかつ互いに平行である。
【0012】
一つの選択として、放熱基板12は、突き合わせて接続されたベース32と蓋板34を含み、蓋板34とベース32とは、例えばアルミロウ付けにより溶接され、接続溝30は蓋板34に設けられ、ベース32と蓋板34との間に基板室22が形成される。
【0013】
放熱フィン14は、フィン室36及びフィン室36と連通する流体ポート38を含む。例示された実施例では、放熱フィン14は四角形構造であり、フィン室36内には、厚さ方向に延びるいくつかの支柱が設けられ、支柱は、複数の形状とすることができ、フィン室36内のチャンバー構造はいくつかの支柱の間に形成される。さらに、流体ポート38は、流体入口42と流体出口44を含み、フィン室36内には、流体入口42と流体出口44との間を連通する流体回路が形成される。より具体的には、フィン室36は、導流室46と、少なくとも1つの一方向流れ構造で形成された補償室48とを含み、導流室46は導流入口50と導流出口52を有し、補償室48は補償室入口54と補償室出口56を有する。導流入口50は流体入口42と連通し、導流出口52は補償室入口54と連通し、補償室出口56は流体出口44と連通するため、フィン室36内にスムーズな流体回路が形成される。
【0014】
例示された実施例では、一方向流れ構造はテスラバルブ40として実施される。他の実施例では、一方向流れ構造は、テスラバルブ40の特性に類似した、流体一方向流れを可能にする他の構造として実施されることもできる。
【0015】
好ましくは、放熱基板12における流体ポート38の両端にある位置には切り欠きが設けられて、放熱フィン14の放熱基板12への接続を容易にする。
【0016】
放熱フィン14における流体ポート38にある一端は接続溝30に接続されることで、基板室22とフィン室36とを連通させる。基板室22内の液放熱媒体は熱を吸収した後に蒸発して流体ポート38からフィン室36に入っており、テスラバルブ40は一方向導流の特性を有するため、蒸発した気体放熱媒体が流体ポート38におけるテスラバルブ40に対応する部分から補償室48に入って導流室46へ流す抵抗は非常に大きく、実現できないため、蒸発した気体放熱媒体は、流体ポート38における導流室46に対応する部分からフィン室36に入って補償室48へ流してから流体ポート38を流れて基板室22に回流することのみが可能である。従って、本出願は、流体ポート38を導流室46に対応する流体入口42と補償室48に対応する流体出口44とに区画する。補償室48は、テスラバルブ40の一方向の導流性を採用し、回流の速度を大幅に向上させ、さらに、熱交換効率を高める。従来の放熱フィンの内部は、単純に正方形、菱形、正六角形構造を採用するだけでは、この特性を備えず、内部の気体と液体は乱れやすくなり、フィンの放熱性能に影響を与える。
【0017】
本出願は、放熱フィン14のチャンバー構造を設計して、放熱媒体の流体回路を非常にスムーズにし、放熱性能を向上させることで、相変化により放熱器のチャンバー内の気体放熱作動媒体が多くなり、液体放熱作動媒体が減少し、内圧が大きくなり、気体放熱作動媒体は液体放熱作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体放熱作動媒体は気体放熱作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体放熱作動媒体の回流に不利であるという問題を解決した。
【0018】
一つの選択として、放熱フィン14は、突き合わせて接続されたフィン底板58とフィン蓋板60を含み、フィン底板58とフィン蓋板60とは、例えばアルミロウ付けプロセスにより溶接され、フィン底板58とフィン蓋板60との間にフィン室36が形成される。
【0019】
一つの選択として、放熱フィン14における流体ポート38にある一端と接続溝30の溝壁との間はアルミロウ付けプロセスにより溶接されることで、基板室22はフィン室36と連通して全体的に閉鎖されたチャンバーを形成する。
【0020】
放熱フィン群16は、放熱基板12の接続面26に溶接される。具体的には、放熱フィン14の数を接続溝30の数と同数に設定し、それぞれの放熱フィン14を対応する接続溝30に溶接接続する。
【0021】
例示された実施例では、基板室22内には、さらに、回流した液体放熱作動媒体を吸収するために使用可能な毛細構造62が設けられ、毛細構造62は、例えば、ベース32の内壁に貼り付けられている。毛細構造62は、熱伝導性金属粒子を採用することができ、これにより、放熱作動媒体の沸騰及び放熱作動媒体回流の作用を強化する作用が得られ、さらに放熱効率を向上させる。
【0022】
本出願では、サイフォン放熱器10は、少なくとも1つの放熱ヒレユニット64を含み、放熱ヒレユニット64は放熱フィン14と間隔をおいて設置される。例示された実施例では、サイフォン放熱器10は、上記の放熱ヒレ群20を構成する複数の放熱ヒレユニット64を含む。
【0023】
より具体的には、放熱ヒレ群20は、複数の放熱ヒレユニット64を含み、それぞれの放熱ヒレユニット64は、隣接する2つの放熱フィン14の間に接続され、それぞれの放熱ヒレユニット64は、複数の放熱ヒレ18が係合して形成されてなる。
【0024】
例示された実施例では、放熱ヒレ18は四角形構造であり、ヒレ基板66及びヒレ基板66の対向する両端から同一側に延びて形成された係止縁68を含み、係止縁68は例えばヒレ基板66と垂直である。複数の放熱ヒレ18は、互いに重ね合わされ、係止縁68により係合して放熱ヒレユニット64を形成し、複数の放熱ヒレユニット64は放熱ヒレ群20を構成する。実際の設計要求に応じて、隣接する2つの放熱ヒレ18の間のピッチ、即ち、係止縁68の長さは調整可能である。放熱ヒレ18はプレスにより成型可能である。
【0025】
好ましくは、ヒレ基板66には、いくつかの凹凸構造70が設けられており、凹凸構造70は、1つの面が凸となり1つの面が凹となる構造であり、凹凸構造70はヒレ基板66の全体に亘って設けられることができる。例示された実施例では、全ての凹凸構造70はいずれも円形であり、全ての凹凸構造70はいずれも放熱基板12の側に向かって凸となっている。本出願は、放熱ヒレ18のヒレ基板66に凹凸構造70が設けられ、凹凸構造70はスポイラーとして作用して乱流を形成し、放熱効率を向上させることができる。
【0026】
さらに、凹凸構造70の直径は5mmであり、凹凸構造70で形成された窪みの深さは0.25mmである。別の実施例では、凹凸構造70のサイズは、他の選択肢を有してもよいが、本出願ではこれを限定しない。
【0027】
図12に示すように、ヒレ基板66に凹凸構造70を設けることで放熱ヒレ18の放熱面積を増加させることができ、かつ凹凸構造70の設計によりヒレ基板66の表面にスポイラーの効果を形成することができ、ファンにより強制的に放熱ヒレ群20の領域の空気を対流させると、気流はヒレ基板66の表面に乱流を形成する。通常の両面が平面である放熱ヒレよりも、気流はその表面に層流を形成し、層流は分子間の相互作用によるものであり、乱流は主に質点間の混合によるものであり、乱流の熱伝達速度は層流よりもはるかに大きく、放熱効率がより高いので、凹凸構造70の設計により熱交換効率を大幅に向上させることができる。
【0028】
放熱ヒレユニット64は、それぞれの放熱ヒレ18の係止縁68により隣接する2つの放熱フィン14の間に接続され、例えば、係止縁68はアルミロウ付けプロセスにより放熱フィン14に溶接される。例えば、ヒレ基板66は放熱フィン14と垂直である。
【0029】
図1~8に示すような実施例では、放熱基板12は、流体ポート38の導流方向が水平方向に沿って、流体入口42と流体出口44が縦方向に沿って配置されるように縦置きされる。フィン室36内には、さらに実体部72が設けられ、実体部72を設けることでフィン室36内に環状のチャンバーを形成し、流体回路は実体部72を取り囲んで設けられる。流体入口42は流体出口44の上方に位置し、テスラバルブ40はフィン室36の底部領域に設けられる。
【0030】
本実施例では、毛細構造62は、基板室22内のテスラバルブ40の領域に対応する内壁に設けられる。
【0031】
CPU熱源面28が加熱された後、基板室22内の液体放熱作動媒体は熱を吸収して気化し、フィン室36内に入って熱交換を行う同時に、熱量を放熱ヒレ18に伝達し、放熱ヒレ18での熱量は、ファンにより強制的に対流させる場合に、垂直方向に外部へ放熱され、水平方向も同時に熱交換され、液体放熱作動媒体は、重力及び補償室48の作用により基板室22内に流入し、循環を繰り返し、効率的に放熱する。
【0032】
図9~11に示すような実施例では、放熱基板12は、流体ポート38の導流方向が縦方向に沿って、流体入口42と流体出口44が水平方向に沿って配置されるように水平に平置きされる。放熱すべきデバイスの電力が増加しかつ熱源位置が増加する場合に、放熱フィン14の長さを長くすることができ、テスラバルブ40は複数設けられてもよく、複数のテスラバルブ40は、水平方向に沿って間隔をおいて分布され、導流室46は、複数のテスラバルブ40の間から上方へ延びてから、水平方向に沿って異なる向きに延びることで多重循環構造を形成する。
【0033】
本実施例では、テスラバルブ40は2つ設けられており、2つのテスラバルブ40は、それぞれ、フィン室36内の両側の底部に設けられている。蒸発した気体放熱作動媒体は、2つのテスラバルブ40の間の導流室46に沿って上方へ流れてから、両辺へ分流して下方に向かって両側の補償室48に入り、最後に基板室22内に回流することで、二重循環構造を形成する。
【0034】
好ましくは、2つのテスラバルブ40の間のピッチは、流体ポート38から離れる方向に沿って徐々に小さくなり、例えば、2つのテスラバルブ40の対向する側壁は、いずれも斜面構造とされ、蒸発した気体放熱作動媒体は導流室46から補償室48にスムーズに入ることができるようになる。
【0035】
本実施例では、毛細構造62は、基板室22内の2つのテスラバルブ40の間の領域に対応する内壁に設けられる。
【0036】
CPU熱源面28が加熱された後、基板室22内の液体放熱作動媒体は熱を吸収して気化し、フィン室36内に入って熱交換を行う同時に、熱量を放熱ヒレ18に伝達し、補償室48が傾斜構造を採用することで蒸発した気体放熱作動媒体が導流室46から補償室48にスムーズに入っており、放熱ヒレ18での熱量は、ファンにより強制的に対流させる場合に、水平方向に外部へ放熱され、垂直方向も同時に熱交換される。液体放熱作動媒体は、重力及び補償室48の作用により基板室22内に流入し、循環を繰り返し、効率的に放熱する。
【0037】
本出願のサイフォン放熱器10の具体的な作動原理は、サイフォン放熱器10は運行を開始すると、放熱基板12の基板室22内の液体放熱作動媒体は蒸発し始め、流体ポート38を介してフィン室36内に入っており、テスラバルブ40が一方向導流構造であるため、蒸発した気体放熱作動媒体はいずれも流体入口42から導流入口50を介して導流室46内に入っており、重力方向が下向きであること並びに実体部72と補償室48が存在することにより、蒸発した気体放熱作動媒体は導流出口52から補償室入口54を介して補償室48スムーズに入っており、気体放熱作動媒体は液体状態に液化冷却された後、補償室出口56から流体出口44を介して基板室22内に回流して、このように循環的に流れることである。
【0038】
本出願のサイフォン放熱器10は、デバイス空間が限られ、デバイスの電力が増加する場合に、伝統的なモジュール放熱器よりも優位性があり、伝統的なモジュール放熱器が発生した焼失等の問題を効果的に解決することができる。さらに、放熱フィン14の内部にテスラバルブ40で形成された補償室48が設けられることで、放熱器のチャンバー内の気体作動媒体が多くなり、液体作動媒体が減少し、内圧が大きくなり、気体作動媒体は液体作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体作動媒体は気体作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体作動媒体の回流に不利であり、伝熱・放熱効果に影響するという問題を解決する。放熱ヒレ18の表面に凹凸構造70が設けられることで、スポイラーとして作用して乱流を形成し、放熱効率を向上させることができる。
【0039】
本出願のサイフォン放熱器10、放熱フィン14及び放熱ヒレ18は、製品全体の材質がアルミニウムであり、全ての部品を組み立てた後に専用のロウ付け治具でロウ付けして成型する。製品は異なる場面での放熱器の基板、チャンバー構造と、ロウ付けしてから正常に作動することができ、CPU熱源面28が加熱された後、液体放熱作動媒体は、基板室22内で気化してフィン室36内に入ってから熱量を放熱ヒレ18に伝達し、強制的な対流によって環境に放熱する。かつ成熟したロウ付け技術を採用して、信頼性が高くなり、製品構造が安定し、密閉性が良い。
【0040】
いくつかの実施例では、実際の設計要求に応じて、フィン室36の高さを増加させる及び/又は基板室22の高さを増加させることで、より多くのチャンバー体積を得て、放熱作動媒体の流れを容易にすることができる。
【0041】
いくつかの実施例では、実際の設計要求に応じて、補償室48、即ちテスラバルブ40の上下位置を変更して、熱源位置の変化に対応することができる。
【0042】
いくつかの実施例では、実際の設計要求に応じて、放熱ヒレ18の長さ、幅、厚さ、及び放熱ヒレ18の間のピッチを変更して、サイフォン放熱器10の放熱システムのインピーダンスを調整することができる。
【0043】
以上のように、本出願は、サイフォン放熱器及びその放熱フィンを提供し、放熱フィンのフィン室の内部に、一方向流れ構造で形成された補償室を設け、放熱基板と放熱フィンのチャンバー内に、1つ又は複数の流体回路を形成することにより、液体作動媒体と気体作動媒体は流体回路をスムーズに作動し、熱交換効率を大幅に向上させることで、放熱器のチャンバー内の気体作動媒体が多くなり、液体作動媒体が減少し、内圧が大きくなり、気体作動媒体は液体作動媒体が回流する空間を妨害して占有し、液体作動媒体が気体作動媒体及び回流抵抗の影響を受け、液体作動媒体の回流に不利であり、伝熱・放熱効果に影響するという問題を解決する。
【0044】
本文に記載された概念は、その精神及び特性から逸脱しない場合に他の形態で実施されることができる。開示された具体的な実施例は、限定的なものではなく、例示的なものとみなされるべきである。従って、本出願の範囲は、これらの前述の説明に基づいて決定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって決定されるものである。請求項の文字どおりの意味及びその同等の範囲内の如何なる変更もこれらの特許請求の範囲に属するべきである。
【国際調査報告】