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特表2024-545429電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/36 20060101AFI20241129BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H02J3/36
H02J3/00 160
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532764
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2022130538
(87)【国際公開番号】W WO2023093520
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111429669.9
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524204654
【氏名又は名称】南京赫曦電気有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】524204665
【氏名又は名称】曦景智慧能源科技(南京)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】524204676
【氏名又は名称】江蘇乾海智源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄曉輝
(72)【発明者】
【氏名】劉承錫
(72)【発明者】
【氏名】顧維菱
(72)【発明者】
【氏名】李偉
(72)【発明者】
【氏名】李志国
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066AB01
5G066CA04
(57)【要約】
【課題】 電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置及びその制御方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、電力網のフレキシブル直流ループ閉結制御装置及びその制御方法を開示する。前記装置は、直列結合ユニットと、並列結合ユニットと、他のバイパススイッチ回路と、ループ閉結メインコントローラとを備える直並列装置である。各組の直並列装置が各区間の配電線と負荷との間に直列に接続されるよう構成され、ループ閉結指令を受信した後、ループ閉結制御装置が電圧制御モードで動作するよう設定され、2組のループ閉結装置の直流母線電圧が一致した後、系統がループ閉結状態に入る。ループ閉結を終了する前、前記装置はPQ制御モードに設定され、PとQを徐々にゼロに下げ、導入スイッチを順次オフにし、ループ閉結の流れが終了する。前記装置は、構造が単純で、コストが低く、ループ閉結監視量が交流ループ閉結より少なく、効率が高いという利点を有する。柔軟な電力相互応援と故障の際、迅速な終了を実現でき、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の力率を最適に調整するだけでなく、配電網の電力供給方式を柔軟に変更して、新エネルギー消費レベル及び直流負荷の受入能力を向上させることもできる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置であって、2つのACポートと、1つのDCポートとを備えた直並列装置であり、かつ3ポート直列結合ユニットと、2ポート並列結合ユニットと、バイパススイッチと、直流ループ閉結メインコントローラとをさらに備え、
前記3ポート直列結合ユニットの2つのACポートは、線路に直列に接続され、前記DCポートは並列結合ユニットの直流側と接続し、
前記2ポート並列結合ユニットの交流側は、配電網線路に並列に接続され、前記DCポートは直列結合ユニットの直流側と接続することで、前記直並列装置のDC出力ポートを形成し、
前記バイパススイッチは、前記直列結合ユニットの2つのACポートに並列に接続され、ループ閉結コントローラはループ閉結の論理制御及びリモート制御の受け入れに用いられる
ことを特徴とする、電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置。
【請求項2】
前記直列結合ユニットは、直列結合変圧器と、双方向に電力を調整できるインバータとを備え、前記直列結合変圧器の一次側は交流線路に直列に接続され、二次側はインバータの交流側と接続し、前記並列結合ユニットは、双方向に電力を調整できるインバータから成り、前記インバータの交流側は交流配電網線路に並列に接続され、直流側は前記直列結合ユニットの直流側と接続し、これにより直並列ループ閉結装置の基本トポロジーを形成することを特徴とする、請求項1に記載の電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置。
【請求項3】
前記直流ループ閉結方法は、ループ閉結が必要な変圧器1台当たりの供給区域の線路と負荷との間にフレキシブルループ閉結装置をそれぞれ直列に接続し、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の前記フレキシブルループ閉結装置のDCポートをそれぞれ接続し、前記DCポートを通じてループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域間の有効電力潮流を相互に伝送することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置。
【請求項4】
前記直並列ループ閉結装置のトポロジー構造を簡素化し、製造コストをさらに削減するため、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域が必要な線路と負荷との間に前記フレキシブルループ閉結装置をそれぞれ直列に接続し、1区間の変圧器1台当たりの供給区域の前記フレキシブルループ閉結装置内に前記直列結合ユニットのみを留保し、前記直列結合ユニットの前記DCポートを他区間のループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の前記直並列ループ閉結装置の直流母線と接続することで、同様に2区間の変圧器1台当たりの供給区域間のフレキシブルループ閉結も実現できることを特徴とする、請求項3に記載の電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置。
【請求項5】
電力供給の柔軟性と有効電力潮流のサポート能力を高め、電力供給容量の圧力を軽減するため、装置の直流母線に接続するDC/DCコンバータを備えたエネルギー貯蔵装置を設けることができ、前記エネルギー貯蔵装置の充放電能力により、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の電力供給制御の柔軟性がさらに向上し、同時に前記トポロジー構造は新エネルギーの受入能力の向上に役立ち、新エネルギーとエネルギー貯蔵の継続的な併給を実現し、直流負荷に電力を供給することもできることを特徴とする、請求項4に記載の電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置。
【請求項6】
電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御方法であって、
電力網のフレキシブル直流ループ閉結装置の系統モデルを構築し、ループ閉結ニーズがある2区間の送電線路の各々電力を長期間にわたって監視し、リアルタイムでループ閉結の準備をするステップ1と、
ループ閉結前のバスタイスイッチ及び導入スイッチは、全て開状態にあり、2組のループ閉結制御装置がいずれも電圧制御モードで動作するステップ2と、
ループ閉結指令を受信した後、2組のループ閉結装置の直流母線電圧が一致しているかどうかを判断し、不一致の場合、並列結合ユニットの定直流電圧制御モードを用いて前記直流母線電圧を調整し、一致が確認された後、直流導入スイッチKを閉じると、系統がループ閉結状態に入り、ループ閉結後、直列結合変圧器の追加電圧の振幅と位相を動的に調整することにより、2区間のループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の柔軟な電力相互応援を実現するステップ3と、
前記ループ閉結を終了する前、2組のフレキシブルループ閉結制御装置をPQ制御モードで動作するように設定し、2組の前記フレキシブルループ閉結制御装置はそれぞれPとQをゼロに下げ後、前記導入スイッチKをオフにすると、フレキシブル直流ループ閉結のプロセスが終了するステップ4と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記ステップ1において電力網のフレキシブル直流ループ閉結装置の系統モデルを構築することは、前記方法の装置は2組の直並列装置と、1組の導入スイッチとを備え、各組の前記直並列装置は各区間の配電線と負荷との間に直列に接続され、2組のフレキシブルループ閉結装置のDCポートを接続することで直流ループ閉結を実現し、各組の前記直並列装置は、3ポート直列結合ユニット、2ポート並列結合ユニット、バイパススイッチ及び直流ループ閉結メインコントローラから構成され、前記3ポート直列結合ユニットの2つのACポートは線路に直列に接続され、DCポートは並列結合ユニットの直流側と接続し、
前記2ポート並列結合ユニットの交流側は、配電網線路に並列に接続され、DCポートは直列結合ユニットの直流側と接続することで、前記直並列装置のDC出力ポートを形成し、
バイパススイッチは、前記直列結合ユニットの2つのACポートと並列に接続する
ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電力供給の柔軟性と有効電力潮流のサポート能力を高めため、装置の直流母線に接続するエネルギー貯蔵装置を設けることができ、前記エネルギー貯蔵装置の充放電能力により、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の電力供給制御の柔軟性がさらに向上し、同時に前記装置の直流母線は太陽光発電、風力発電、直流負荷を備えた直流配電網と接続でき、系統の新エネルギー消費レベルがアップし、配電網の電力供給方式が柔軟に変更することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
経済的な建設ニーズを満たすため、前記直流ループ閉結装置の系統モデルを、1組の直並列装置と、1組の直列結合装置と、1組の導入スイッチとを備え、前記直列結合装置は、製造コストを削減するため、前記直並列装置の直列結合モジュール部分のみを留保し、同様に前記直並列装置及び前記直列結合装置はそれぞれ、ループ閉結が必要な各区間の配電線と負荷との間に直列に接続され、前記直並列装置の直流母線及び前記直列結合装置のDCポートを接続することで、直流ループ閉結を実現する、ように改良可能であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ2において、2組のループ閉結制御装置がいずれも電圧制御モードで動作することは、2組の前記装置により実現され、前記装置の並列結合ユニットを介して定直流電圧制御を実施し、2区間の変圧器1台当たりの供給区域の装置の直流母線電圧が一致すると、前記直流ループ閉結が実現されることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ3において、並列結合ユニットの定直流電圧制御モードを用いて直流母線電圧を調整することは、並列装置の直流側電圧を検出し、直流電圧の与えられた値と比較し、得られた差分値はPIコントローラにより電流インナーループ制御を経て、並列コンバータPWM電圧制御信号を出力し、コントローラはPI制御を用いることができ、その他のタイプのコントローラを用いることもできることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ3において、直列結合変圧器の追加電圧の振幅と位相を動的に調整することにより、2区間のループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の柔軟な電力相互応援を実現することは、給電が必要な変圧器1台当たりの供給区域の前記直列結合変圧器の出力電圧を調整し、振幅と位相角を一定の調整範囲内で調整することで、給電待ち線路の有効電流、無効電流を変化して、2区間の送電線間で転送される有効電力及び無効電力を柔軟に調整することができることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記2区間の送電線間で転送される有効電力及び無効電力の柔軟な調整において、有効電力制御は直列結合ユニットの電圧ループを用いて前記直列結合変圧器の追加電圧の振幅及び位相角を制御して有効電力潮流制御の問題を解決し、具体的には
(1)フェーズロックループ(PLL)を介して直列装置に接続された電力供給の母線電圧位相を収集するステップと、
(2)直列側のインバータ端の電力供給側の交流電圧Uを収集し、収集した交流母線電圧の位相を用いてdq変換を行ってU、Uを求め、与えられた電圧基準値と比較し、PIコントローラを介して得られた差分値により出力電流基準値を得るステップ(コントローラはPI制御又は他のタイプのコントローラを用いることができる)と、
(3)得られた電流基準値は、電流インナーループ制御を経て電圧制御信号をPWM直列側コンバータに出力して、直列結合変圧器の追加電圧ΔVの振幅と位相角を制御するステップと
を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記2区間の送電線間で転送される有効電力及び無効電力の柔軟な調整において、無効電力制御は、閉ループ制御を通じて無効電力潮流制御の問題を解決するため、並列結合ユニットを用い、具体的には、
(1)前記フェーズロックループ(PLL)を介して並列装置に接続された交流母線電圧位相を収集するステップと、
(2)並列結合装置のインバータに接続された交流系統の無効電流を収集し、dq変換を経た後電流指令とし、与えられた値との差分がPIコントローラを介してPWM電圧制御信号を出力し、並列コンバータが系統に必要な無効電力を出力し、無効補償を実現するステップ(コントローラはPI制御又は他のタイプのコントローラを用いることができる)と
を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電網の最適化運転制御の技術分野に関し、特に、電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配電系統は、電力供給容量の不足、電力品質の確保の難しさ、電力供給信頼度の低さなどの課題に直面している。グリッド構造の最適化を達成するため、従来の配電網は閉ループに切断スイッチ及びバスタイスイッチを用いるが、電力の柔軟な相互支援が実現できず、かつ実現できず、ループ閉結点の電圧差、位相差が大きな突入電流が発生しやすく、電力網の安全で安定した運転に影響を与える。現在、電力供給の信頼性を向上させるため、関連研究及び実証工事、例えば花びら型配電網、ハニカム型配電網、マルチポートフレキシブル直流ループ閉結などの配電技術がある。地域を横断せずに電力を供給する花びら型電力網を例にした場合、この電力供給モードは、構造が単純で、負荷移行が柔軟で、故障隔離にかかる時間が短く、信頼性が高く、拡張性が強いという特徴を備えている。ただし、次の問題もある。基本的に単一電源のループ閉結を用い、この方法は、開ループ運転に比べて信頼性が向上するが、上位電力網の故障が発生した場合、信頼性の高い電力供給を保証することはできない。故障が発生した場合、ループ全体の負荷が1本のフィーダに移行されるため、フィーダ線の冗長設計を考慮する必要がある。
【0003】
再生可能エネルギー大量導入、負荷設備の多様化、直流負荷の割合の増加は、従来の配電網の構成形態及び運用方法に大きな課題をもたらしている。パワーエレクトロニクスデバイスの発展に伴い、国内外の学者は、電力を使用するスマートなソフトオープンポイント(フレキシブルマルチ状態スイッチ)、ユニファイドパワーフローコントローラ、ループバランスコントローラなどのフレキシブル相互接続装置の概念を提案し、パワーエレクトロニクスデバイスの高速かつ効率的な制御能力を利用して、配電網のフレキシブル相互接続を実現することで、電圧周波数、振幅、位相が異なる複数の配電網に対して柔軟な制御及び電力相互応援を実現し、新エネルギーの消費を促進し、高品質の電力供給の需要に応えることで、配電網の信頼性、柔軟性、及び制御性を向上させる。フレキシブル相互接続装置は2種類に大別され、1つはパワーエレクトロニクスデバイスをベースとした交流ループ閉結装置で、典型的な特徴は、強力な潮流制御能力を持ち、地域を越えた配電網のフレキシブル相互接続を実現できるバックツーバック双方向コンバータの使用である。ただし、装置容量体積が大きすぎる、コストが高い、かつ直流ループ閉結に比べて位相角ループ閉結条件を考慮する必要がある、操作に時間がかかるという欠点がある。もう1つは直流ループ閉結方法で、振替供給系統は通常、AC・DCハイブリッド電力供給方式として設計され、異なる地域の直流バスループ閉結ソリューションを用いる。交流ループ閉結と比較して、ループ閉結は位相角の検出を不要とし、コンバータは直流電圧を制御してループ閉結条件に達することが速いため、ループ閉結効率がより高く、直流負荷が多い地域及びしいエネルギーが集まる地域でのループ閉結により適している。マルチポート直流ループ閉結の採用は、エネルギー貯蔵及び直流負荷のローカル導入、配電網の電力供給方式の柔軟な変更、新しいエネルギー消費レベルの向上に役立つだけでなく、複数のフィーダが互いにサポートするため、調整能力及び運転の信頼性の点でより多くのメリットがある。 故障が発生した場合、複数組のコンバータの運転モードを迅速かつシームレスに切り替えることができ、重要な負荷を迅速に移行できることが確保される。しかし、現在のフレキシブル相互接続装置はバックツーバック/マルチポートのパワーエレクトロニクスコンバータで構成されており、同様に設備の容量・体積や運転損失が大きすぎる、運用保守コストが高すぎるという問題も抱えている。このことから、この種のフレキシブルループ閉結装置の設備利用率は、低く、全体的なコストも高いため、応用と普及は大きく制限されることが分かる。
【0004】
これ故に、配電網地域間のフレキシブル相互接続及び電力相互応援を実現し、電力供給の信頼性を向上させるため、構造が単純で、効率がより高く、コストがより低いフレキシブルループ閉結装置及びその制御方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するため、電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御装置を提供する。前記装置は、直並列装置であり、2つのACポートと、1つのDCポートとを備え、かつ前記装置は3ポート直列結合ユニットと、2ポート並列結合ユニットと、バイパススイッチと、直流ループ閉結メインコントローラとをさらに備え、
3ポート直列結合ユニットの2つのACポートは線路に直列に接続され、DCポートは並列結合ユニットの直流側と接続し、
2ポート並列結合ユニットの交流側は、配電網線路に並列に接続され、DCポートは直列結合ユニットの直流側と接続することで、前記直並列装置のDC出力ポートを形成し、
バイパススイッチは、直列結合ユニットの2つのACポートに並列に接続され、ループ閉結コントローラはループ閉結の論理制御及びリモート制御の受け入れに用いられることを特徴とする。
【0006】
前記装置は、直流側でのループ閉結が可能で、配電網間の柔軟な振替供給と故障の際、迅速な終了を実現できるだけでなく、配電網の電力供給の信頼性を99.99%以上に向上させ、重負荷変圧器1台当たりの供給区域の線路と軽負荷変圧器1台当たりの供給区域の線路の負荷バランスを実現し、電力供給品質を保証し、ループ閉結の監視量は直流電圧の振幅のみであり、交流ループ閉結と比較してループ閉結の電圧位相角の監視を無視できるため、変圧器1台当たりの供給区域の配電網の電力供給の経済性、安全性、効率が向上する。
【0007】
好ましくは、前記直列結合ユニットは、直列結合変圧器と、双方向に電力を調整できるインバータとを備え、前記直列結合変圧器の一次側は交流線路に直列に接続され、二次側はインバータの交流側と接続する。前記並列結合ユニットは、双方向に電力を調整できるインバータから成り、インバータの交流側は交流配電網線路に並列に接続され、直流側は直列結合ユニットの直流側と接続し、これにより直並列ループ閉結装置の基本トポロジーを形成する。
【0008】
好ましくは、前記直流ループ閉結方法は、ループ閉結が必要な変圧器1台当たりの供給区域の線路と負荷との間にフレキシブルループ閉結装置をそれぞれ直列に接続し、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域のフレキシブルループ閉結装置のDCポートをそれぞれ接続し、DCポートを通じてループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域間の有効電力潮流を相互に伝送する。
【0009】
好ましくは、上記直並列ループ閉結装置のトポロジー構造を簡素化し、製造コストをさらに削減するため、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域が必要な線路と負荷との間にフレキシブルループ閉結装置をそれぞれ直列に接続し、1区間の変圧器1台当たりの供給区域のフレキシブルループ閉結装置内に直列結合ユニットのみを留保し、直列結合ユニットのDCポートを他区間のループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の直並列ループ閉結装置の直流母線と接続することで、同様に2区間の変圧器1台当たりの供給区域間のフレキシブルループ閉結も実現できる。1区間の変圧器1台当たりの供給区域の並列結合ユニットが省略されているため、フレキシブルループ閉結に応えながら経費を節約できる。
【0010】
好ましくは、電力供給の柔軟性と有効電力潮流のサポート能力を高め、電力供給容量の圧力を軽減するため、装置の直流母線に接続するDC/DCコンバータを備えたエネルギー貯蔵装置を設けることができ、エネルギー貯蔵装置の充放電能力により、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の電力供給制御の柔軟性がさらに向上する。同時に、前記トポロジー構造は新エネルギーの受入能力の向上に役立ち、新エネルギーとエネルギー貯蔵の継続的な併給を実現し、直流負荷に電力を供給することもできる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するため、電力網用のフレキシブル直流ループ閉結制御方法を提供する。前記方法は、
電力網のフレキシブル直流ループ閉結装置の系統モデルを構築し、ループ閉結ニーズがある2区間の送電線路の各々電力を長期間にわたって監視し、リアルタイムでループ閉結の準備をするステップ1と、
ループ閉結前のバスタイスイッチ及び導入スイッチは、全て開状態にあり、2組のループ閉結制御装置がいずれも電圧制御モードで動作するステップ2と、
ループ閉結指令を受信した後、2組のループ閉結装置の直流母線電圧が一致しているかどうかを判断し、不一致の場合、並列結合ユニットの定直流電圧制御モードを用いて直流母線電圧を調整し、一致が確認された後、直流導入スイッチKを閉じることで、系統がループ閉結状態に入り、ループ閉結後、直列結合変圧器の追加電圧の振幅と位相を動的に調整することにより、2区間のループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の柔軟な電力相互応援を実現するステップ3と、
ループ閉結を終了する前、2組のフレキシブルループ閉結制御装置をPQ制御モードで動作するように設定し、2組のフレキシブルループ閉結制御装置はそれぞれPとQをゼロに下げ後、導入スイッチKをオフにすると、フレキシブル直流ループ閉結のプロセスが終了するステップ4と
を含むことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記ステップ1において電力網のフレキシブル直流ループ閉結装置の系統モデルを構築することは、前記方法の装置は2組の直並列装置と、1組の導入スイッチとを備え、各組の直並列装置は各区間の配電線と負荷との間に直列に接続され、2組のフレキシブルループ閉結装置のDCポートを接続することで直流ループ閉結を実現し、各組の直並列装置は、3ポート直列結合ユニット、2ポート並列結合ユニット、バイパススイッチ及び直流ループ閉結メインコントローラから構成され、3ポート直列結合ユニットの2つのACポートは線路に直列に接続され、DCポートは並列結合ユニットの直流側と接続し、
2ポート並列結合ユニットの交流側は、配電網線路に並列に接続され、DCポートは直列結合ユニットの直流側と接続することで、直並列装置のDC出力ポートを形成し、
バイパススイッチは、直列結合ユニットの2つのACポートと並列に接続することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、電力供給の柔軟性と有効電力潮流のサポート能力を高めため、装置の直流母線に接続するエネルギー貯蔵装置を設けることができ、エネルギー貯蔵装置の充放電能力により、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の電力供給制御の柔軟性がさらに向上する。同時に装置の直流母線は太陽光発電、風力発電、直流負荷を備えた直流配電網と接続でき、系統の新エネルギー消費レベルがアップし、配電網の電力供給方式が柔軟に変更する。
【0014】
好ましくは、経済的な建設ニーズを満たすため、直流ループ閉結装置の系統モデルを次のように改良可能である。すなわち、1組の直並列装置と、1組の直列結合装置と、1組の導入スイッチとを備え、直列結合装置は、製造コストを削減するため、直並列装置の直列結合モジュール部分のみを留保し、同様に直並列装置及び直列結合装置はそれぞれ、ループ閉結が必要な各区間の配電線と負荷との間に直列に接続され、直並列装置の直流母線及び直列結合装置のDCポートを接続することで、直流ループ閉結を実現する。
【0015】
好ましくは、前記ステップ2において、2組のループ閉結制御装置がいずれも電圧制御モードで動作することは、2組の上記装置により実現され、装置の並列結合ユニットを介して定直流電圧制御を実施し、2区間の変圧器1台当たりの供給区域の装置の直流母線電圧が一致することで、直流ループ閉結が実現されることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記ステップ3において、並列結合ユニットの定直流電圧制御モードを用いて直流母線電圧を調整することは、並列装置の直流側電圧を検出し、直流電圧の与えられた値と比較し、得られた差分値はPIコントローラにより電流インナーループ制御を経て、並列コンバータPWM電圧制御信号を出力し、コントローラはPI制御を用いることができ、その他のタイプのコントローラを用いることもできることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記ステップ3において、直列結合変圧器の追加電圧の振幅と位相を動的に調整することにより、2区間のループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の柔軟な電力相互応援を実現することは、給電が必要な変圧器1台当たりの供給区域の直列結合変圧器の出力電圧を調整し、振幅と位相角を一定の調整範囲内で調整することで、給電待ち線路の有効電流、無効電流を変化して、2区間の送電線間で転送される有効電力及び無効電力を柔軟に調整することができる。
【0018】
好ましくは、上記2区間の送電線間で転送される有効電力及び無効電力の柔軟な調整において、有効電力制御は直列結合ユニットの電圧ループを用いて直列結合変圧器の追加電圧の振幅及び位相角を制御して有効電力潮流制御の問題を解決し、具体的には、
(1)フェーズロックループ(PLL)を介して直列装置に接続された電力供給の母線電圧位相を収集するステップと、
(2)直列側のインバータ端の電力供給側の交流電圧Uを収集し、収集した交流母線電圧の位相を用いてdq変換を行ってU、Uを求め、与えられた電圧基準値と比較し、PIコントローラを介して得られた差分値により出力電流基準値を得るステップ(コントローラはPI制御又は他のタイプのコントローラを用いることができる)と、
(3)得られた電流基準値は、電流インナーループ制御を経て電圧制御信号をPWM直列側コンバータに出力して、直列結合変圧器の追加電圧ΔVの振幅と位相角を制御するステップと
を含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、上記2区間の送電線間で転送される有効電力及び無効電力の柔軟な調整において、無効電力制御は、閉ループ制御を通じて無効電力潮流制御の問題を解決するため、並列結合ユニットを用い、具体的には、
(1)フェーズロックループ(PLL)を介して並列装置に接続された交流母線電圧位相を収集するステップと、
(2)並列結合装置のインバータに接続された交流系統の無効電流を収集し、dq変換を経た後電流指令とし、与えられた値との差分がPIコントローラを介してPWM電圧制御信号を出力し、並列コンバータが系統に必要な無効電力を出力し、無効補償を実現するステップ(コントローラはPI制御又は他のタイプのコントローラを用いることができる)と
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、次の利点を有する。
【0021】
(1)本発明は、フレキシブル直流ループ閉結装置及びその制御方法を提供し、線路上のループ閉結を実現でき、停電後の逆負荷操作を避け、電力供給の信頼性を向上させる。
【0022】
(2)本発明により提供されるフレキシブル直流ループ閉結装置は、構造が単純であり、直並列装置内のコンバータの設計容量が低く、従来のバックツーバックループ閉結装置よりもコストが低い。
【0023】
(3)本発明のループ閉結方法は、交流と直流のハイブリッド電力供給モードに属し、極端な動作条件下での配電網の動的な再構築、新エネルギー及びエネルギー貯蔵の継続的な併給を実現でき、直流負荷に柔軟な電力供給を提供する。
【0024】
(4)本発明は、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域のリアルタイム電力を監視することにより、ループ閉結指令をリアルタイムで受信する。2区間の線路の直流母線電圧の振幅を制御することにより、フレキシブルループ閉結又はループ閉結終了を実現でき、ループ閉結運転の高効率及び安定性が確保される。
【0025】
(5)本発明のループ閉結装置は、ループ閉結制御の主体としてパワーエレクトロニクスコンバータを用い、スイッチング素子の高速動作を制御することにより、応答速度が速く、制御精度が高く、バスタイスイッチを使用した従来の閉ループ運転方法に比べた場合、機械的磨耗が少なく、設備の寿命が長くなる。
【0026】
(6)本発明は、2つの装置の直流側のループ閉結を通じて、装置が故障した場合、バイパススイッチを用いてバイパス状態に切換えることができるため、元の電力供給線路の動作に影響を与えることなく、信頼性が高い。
【0027】
(7)本発明は、直流ループ閉結方法を用い、直流側電圧の振幅が等しいことを考慮するだけでループ閉結条件を満たすことができ、交流ループ閉結は交流電圧の振幅、位相角の2つのパラメータを調整してループを閉結する必要がないため、ループ閉結の効率がより高い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の電力網のフレキシブル直流ループ閉結を実現する装置の実施形態の構成図である。
図2】本発明のフレキシブル直流ループ閉結装置における直流配電網への導入を示す構成図である。
図3】本発明の電力網のフレキシブル直流ループ閉結を実現する改良装置の実施形態の構成図である。
図4】本発明の電力網のフレキシブル直流ループ閉結制御を実現する制御フローチャートである。
図5】本発明の装置の構成要素における直列結合ユニットの実施形態の構成図である。
図6】本発明の装置の構成要素における並列結合ユニットの実施形態の構成図である。
図7】本発明の直流電圧制御を実現する電圧アウターループ制御戦略のベクトルを示す図である。
図8】本発明の直流電圧制御を実現する電流インナーループ制御戦略のベクトルを示す図である。
図9】本発明の装置が電力網のフレキシブル直流ループ閉結制御を実行する時の簡略化された系統図及びベクトル図である。
図10】本発明の電力網のフレキシブルループ閉結制御を実現するベクトル制御戦略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の技術的手段をさらに詳細に説明する。
【0030】
ステップ1:
図1に示すように、電力網のフレキシブル直流ループ閉結装置の系統モデルを構築する。この実施形態の装置は、2組の直並列装置と、1組の導入スイッチとを備える。各組の直並列装置は、各区間の配電線と負荷との間に直列に接続され、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域のフレキシブルループ閉結装置のDCポートを接続することで、直流ループ閉結を実現する。各組の直並列装置は、2つのAC出力ポートと、1つのDC出力ポートとを備える。内部は、直列結合ユニット、並列結合ユニット、バイパススイッチ及び直流ループ閉結メインコントローラから構成される。3ポート直列結合ユニットの2つのACポートは線路に直列に接続され、DCポートは並列結合ユニットの直流側と接続する。2ポート並列結合ユニットの交流側は、配電網線路に並列に接続され、DCポートは直列結合ユニットの直流側と接続することで、前記直並列装置のDC出力ポートを形成する。またバイパススイッチは、直列結合ユニットの2つのACポートに並列に接続される。前記系統モデルは、図2に示されている。好ましくは、経済的な建設ニーズを満たすため、直流ループ閉結装置の系統モデルを次のように改良可能である。すなわち、1組の直並列装置と、1組の直列結合装置と、1組の導入スイッチとを備え、直列結合装置は、製造コストを削減するため、直並列装置の直列結合モジュール部分のみを留保し、同様に直並列装置及び直列結合装置はそれぞれ、ループ閉結が必要な各区間の配電線と負荷との間に直列に接続され、直並列装置の直流母線及び直列結合装置のDCポートを接続することで、直流ループ閉結を実現する。前記モデルは、図3に示されている。
【0031】
ステップ1.1:
直列結合ユニットのモデルを構築し、具体的な実施形態を図5に示す。直列結合ユニットは、2つのACポート及び1つのDCポートの合計3つのポートを有する。2つのACポートは、直列結合変圧器の一次側に接続され、直列結合変圧器の二次側は直列側インバータの交流側と接続し、前記インバータの直流端は直列結合ユニットのDCポートを構成する。直列側インバータは、電力が双方向に流れる三相フルブリッジ アーム電力ユニットで構成され、インバータのトポロジーは2レベル或いはカスケードマルチレベル構造であり得る。直列インバータは、PWMを通じてスイッチング動作を高速に制御することで、電圧安定化調整と高調波抑制を実現し、直流母線電圧外乱を隔離することができる。
【0032】
ステップ1.2:
並列結合ユニットのモデルを構築し、具体的な実施形態を図6に示す。並列結合ユニットは、2つのポートを有し、並列インバータで構成される。インバータの交流側の出力ポートは、並列結合ユニットのACポートであり、インバータ直流側の出力ポートは並列結合ユニットのDCポートとなる。前記インバータは、電力が双方向に流れる三相フルブリッジ アーム電力ユニットで構成され、インバータのトポロジーは2レベル或いはカスケードマルチレベル構造であり得る。並列インバータは、パワーエレクトロニクスデバイスをリアルタイムに制御することで、無効補償、高調波抑制、直流母線電圧の安定化などの作用を実現できる。
【0033】
ステップ2:
図4に示すように、電力網のフレキシブル直流ループ閉結の直並列結合ユニットの制御ロジックを構築する。その制御ロジックの具体的な流れは、次の通りである。
【0034】
ステップ2.1:
ループ閉結ニーズがある2区間の送電線路の各々電力を長期間にわたって監視し、リアルタイムでループ閉結の準備をする。ループ閉結前のバスタイスイッチ及び導入スイッチは、全て開状態にあり、2組のループ閉結制御装置がいずれも電圧制御モードで動作する。
【0035】
ステップ2.2:
ループ閉結指令を受信した後、2組のループ閉結装置の直流母線電圧が一致しているかどうかを判断し、不一致の場合、並列結合ユニットの定直流電圧制御モードを用いて直流母線電圧を調整し、一致が確認された後、直流導入スイッチKを閉じることで、系統がループ閉結状態に入り、ループ閉結後、直列結合変圧器の追加電圧の振幅と位相を動的に調整することにより、ループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の柔軟な電力相互応援を実現する。
【0036】
ステップ2.3:
ループ閉結を終了する前、2組のフレキシブルループ閉結制御装置をPQ制御モードで動作するように設定し、2組のフレキシブルループ閉結制御装置はそれぞれPとQをゼロに下げ後、導入スイッチKをオフにすると、フレキシブル直流ループ閉結のプロセスが終了する。
【0037】
ステップ2.2において、図7に示すように、並列結合ユニットの定直流電圧制御モードを用いて直流母線電圧を調整することは、並列装置の直流側電圧を検出し、直流電圧の与えられた値と比較し、得られた差分値はPIコントローラにより電流インナーループ制御(図8)を経て、並列コンバータPWM電圧制御信号を出力し、コントローラはPI制御を用いることができ、その他のタイプのコントローラを用いることもできる。
【0038】
ステップ2.2において、フレキシブル直流ループ閉結制御時の電力相互応援ベクトル図は、図9に示され、区間Iの電源電圧
【数1】
が区間IIの電源電圧
【数2】
系統に電力を振替供給するとき、区間Iの変圧器1台当たりの供給区域の装置の並列結合ユニットを調整して定直流電圧制御を実現し、ΔVを導入して2区間の線路の直流電圧を等しくさせ、このとき区間IIの直流母線上の電圧変化量はΔVとなることで、区間IIの直列変圧器に対応する補償電圧変化量
【数3】
が生じ、kは区間IIの直列結合変圧器の変圧比であり、この値は補償する必要がある電圧値に応じて調整できる。ベクトル図において、
【数4】
先行
【数5】
の位相角は、αであり、αが[0,2π]の間の任意の角度であるとき、重ね合わせの原理による場合、ベクトル図に示すように、
【数6】
が発生される線路の電流増加量
【数7】
となり、
【数8】

【数9】
90°遅れ、したがって
【数10】

【数11】
よりγ=90°-αより遅れ、
【数12】

【数13】
となる。区間II電源の有効電力増加量ΔP及び無効電力増加量ΔQは、それぞれ次の通りである。
【0039】
【数14】
電力系統連系点の電圧V、位相角αは変更されず、等価リアクタンスxパラメータは変更されず、区間IIの直列結合変圧器の変圧比kは変更されない場合、調整可能な有効成分と無効成分は
ΔVに比例する線形関係となる。
【0040】
上記の分析から分かるように、区間Iが区間IIに電力を振替供給するとき、区間Iの直列補償電圧の電圧差
【数15】
及び区間IIに対応する直列補償電圧の位相角αを調整して一定範囲内で変化することで、区間Iが区間IIの母線間の出力電力を対応する範囲内で調整でき、母線間のフレキシブルループ閉結に対する電力網の技術要件を満たす。同様に、区間IIが区間Iに電力を振替供給するとき、区間IIの直列補償電圧の電圧差
【数16】
及び区間Iに対応する直列補償電圧の位相角を調整して一定範囲内で変化することで、区間IIが区間Iの母線間の出力電力を対応する範囲内で調整できる。
【0041】
したがって、直列結合ユニットの2つのACポート間の電圧、つまり直列結合変圧器の直列補償電圧を調整することにより、2区間の母線間の出力有効電力を調整でき、電力網のフレキシブルループ閉結制御の要件を実現する。
【0042】
ステップ2.2において、フレキシブル直流ループ閉結制御の制御戦略ブロック図を図10に示す。2区間のループ閉結の変圧器1台当たりの供給区域の電力を測定及び計算し、電力の与えられた値を求め、リアルタイム測定電力との差分値をPID制御により
ΔPが得られ、ΔPに比例する直列補償電圧ΔVの与えられた値を求め、前記与えられた値と元の直列結合ユニットの交流側電圧の和が直列結合ユニットの電圧基準値として入力され、電圧アウターループ及び電流インナーループにより閉ループ制御を実現し、出力値は、直列側インバータの電圧制御信号である。
【0043】
直並列結合ユニットは、どちらも交流母線電圧位相を検出するフェーズロックループ(PLL)、PIコントローラ(必要な制御効果に応じて他のコントローラも使用可能)、座標変換モジュール(abc/dqコンバータ及びdq/abcコンバータ)、及び比較器等の制御モジュールを含むベクトル制御戦略を選択できる。ベクトル制御により複数の電気量を与えられた値、例えば直流母線電圧、系統側電力、系統側電圧d軸q軸成分、負荷側電流d軸q軸成分に達するよう制御できる。
【0044】
直列結合ユニットの閉ループ制御は、系統の有効電力潮流相互応援の容量を調整するために用いられ、圧ループを用いて直列結合変圧器の追加電圧の振幅及び位相角を制御して有効電力潮流制御の問題を解決し、具体的には次のステップを含み、
(1)フェーズロックループ(PLL)を介して直列装置に接続された電力供給の母線電圧位相θを収集するステップ、
(2)直列側のインバータ端の電力供給側の交流電圧Uを収集し、収集した交流母線電圧の位相を用いてdq変換を行ってU、Uを求め、与えられた電圧基準値と比較し、PIコントローラを介して得られた差分値により出力電流基準値を得るステップ(コントローラはPI制御又は他のタイプのコントローラを用いることができる)、及び
(3)得られた電流基準値は、電流インナーループ制御を経て電圧制御信号をPWM直列側コンバータに出力して、2区間線路における直列結合変圧器器ΔV或はΔVの振幅と位相角を調整できるステップ。
【0045】
上記の2区間の送電線間で転送される有効電力及び無効電力の柔軟な調整において、無効電力制御は、閉ループ制御を通じて無効電力潮流制御の問題を解決するため、並列結合ユニットを用い、具体的には、
(1)フェーズロックループ(PLL)を介して並列装置に接続された交流母線電圧位相θを収集するステップと、
(2)並列結合装置のインバータに接続された交流系統の無効電流を収集し、dq変換を経た後電流指令とし、与えられた値との差分がPIコントローラを介してPWM電圧制御信号を出力し、並列コンバータが系統に必要な無効電力を出力し、無効補償を実現するステップ(コントローラはPI制御又は他のタイプのコントローラを用いることができる)と
を含むことを特徴とする。
【0046】
以上は、特定の好ましい実施形態と組み合わせて本発明をさらに詳細に説明するものであり、本発明の具体的な実施をこれらの実施形態に限定されること、特に本発明の装置構造に基づくその他の調整方法が本発明と本質的に一致する。当業者にとって、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの均等範囲での置換又は明白な変形を行うことができるが、同じ性能或いは用途は本発明の範囲内に含まれると見なされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】