(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】抗体ベースの薬剤に対する新規な効力アッセイ及びそのための有用な手段
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20241129BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20241129BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20241129BHJP
C07K 14/735 20060101ALN20241129BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20241129BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20241129BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241129BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20241129BHJP
C40B 50/06 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/66
C12N5/10
C07K14/735
C12N5/0783
C07K16/18
C07K16/46
C07K14/47
C40B50/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532767
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2022084451
(87)【国際公開番号】W WO2023099788
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417942
【氏名又は名称】ニューリミューン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャロン, オーバン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ08
4B063QQ13
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4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA19
4H045BA35
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA50
(57)【要約】
提供されるのは、抗体の効力を測定するための新規な方法である。さらに、抗体ベースの薬剤を含む医薬組成物の産生、品質制御、及びバッチリリースのための方法及びキットが提供される。さらに、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質からのエピトープを含むペプチドベースの環状化合物が記載され、それは、一般に抗体効力及び抗体結合アッセイ、並びに目的の抗体のスクリーニング及び取得において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fcドメインを含む標的抗原結合分子の効力を測定するための方法であって、
(a)標的抗原を前記結合分子と結合分子-抗原複合体の形成を可能にする条件下で接触させるステップと;
(b)前記結合分子-抗原複合体を、Fc受容体を発現し、且つ前記Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿すように改変されているエフェクター細胞の集団と、細胞内シグナル伝達をもたらし、且つ定量化可能なレポーター遺伝子活性を媒介する、前記Fc受容体への前記Fcドメインの結合を可能にする条件下で接触させるステップと;
(c)前記レポーター遺伝子活性を検出するステップと、
を含み、前記結合分子の前記Fcドメインの少なくとも1つの作用機構は、前記FcドメインのFc受容体への結合を通じて媒介され、且つ前記レポーター遺伝子活性は、前記結合分子の効力を示唆する、方法。
【請求項2】
Fcドメインを含む標的抗原結合分子の医薬組成物を作製する方法であって、
(a)前記結合分子を準備する、任意選択的に作製するステップと;
(b)前記結合分子の効力を測定するため、前記結合分子に請求項1に記載の方法を施すステップと;
(c)ステップ(b)において得られた情報を、前記結合分子が医薬組成物として使用できるか否かの評価の一部として使用するステップと;任意選択的に、
(d)ステップ(c)における医薬組成物として有用であることが見出されている前記結合分子を薬学的に許容される担体とともに製剤化するステップと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記標的抗原が、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質又はその凝集体から選択又は誘導される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記Fcドメインの作用機構が、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)を誘導することである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
バッチリリースに対する効力アッセイとして使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記Fc受容体が、ヒトFc受容体FcγRI(CD64)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、FcγRIIa(CD32a)を過剰発現しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、FcγRIII(CD16)を過剰発現しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エフェクター細胞が、Jurkat細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記応答エレメントが、NFAT(活性化T細胞核内因子)応答エレメントである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レポーター遺伝子が、生物発光タンパク質、好ましくはルシフェラーゼをコードする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記結合分子が、モノクローナル抗体などの抗体又はその抗原結合断片から選択又は誘導され、好ましくは、前記抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、IgG1抗体、例えば、IgG1、λ抗体又はIgG1、κ抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記標的抗原が、トランスサイレチン(TTR)又はその凝集体若しくは誘導体を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記結合分子が、抗TTR抗体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記標的抗原が、前記標的抗原結合分子のエピトープを含むタンパク質断片又はペプチドを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質断片又はペプチドが、環状化合物を形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質断片又はペプチドが、前記環状化合物を形成することが可能であるリンカーを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記リンカーが、前記ペプチドのN末端残基及び前記ペプチド断片のC末端残基で又はその近傍で共有結合的にカップリングされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記標的抗原が、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質又はその凝集体の(ネオ)エピトープを含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記環状化合物における前記タンパク質断片又はペプチドが、アミロイド原性タンパク質の少なくとも5、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも20、21、22、23、24、又は25アミノ酸残基を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記アミロイド原性タンパク質が、トランスサイレチン(TTR)、免疫グロブリン軽鎖(LC)、免疫グロブリン重鎖(LH)、血清アミロイドA(SAA)、白血球走化性因子2(LECT2)、ゲルゾリン、アポリポタンパク質AI(ApoAI)、アポリポタンパク質AII(ApoAII)、アポリポタンパク質AIV(ApoAIV)、アポリポタンパク質CII(ApoCII)、アポリポタンパク質CIII(ApoCIII)、フィブリノーゲン、β2ミクログロブリン、シスタチンC、ABriPP、プリオンタンパク質、及びリゾチームからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アミロイド原性タンパク質がTTRであり、且つ前記標的抗原がTTRペプチドを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記TTRペプチドが、WEPFA(配列番号1)、EEFXEGIY(配列番号2)、ELXGLTXE(配列番号3)、WEPFASG(配列番号4)、TTAVVTNPKE(配列番号5)、KCPLMVK及びVFRK(配列番号6及び7)、EHAEVVFTA(配列番号8)、GPRRYTIAA(配列番号9)、VHVFRKAADDTWEPFASGKTSESGELHGLTTEEEFVE(配列番号10)、ALLSPYSYSTTAV(配列番号11)、WKALGISPFHE(配列番号12)、SYSTTAVVTN(配列番号13)、及びLLSPYSYSTTAVVTNPKE(配列番号14)(ここで、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であり得る)から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも4アミノ酸残基を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記TTRペプチドが、アミノ酸配列WEPFA(配列番号1)を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記リンカーが、1~8アミノ酸及び/又は1つ以上の官能化可能な部分を含むか又はそれからなる、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記リンカーアミノ酸が、アラニン(A)、グリシン(G)、及び/若しくはセリン(S)から選択され、且つ/又は前記官能化可能な部分が、システイン(C)、リジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、若しくはグルタミン酸(E)である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記官能化可能な部分が、システイン(C)であり、且つ前記化合物が、ジスルフィド架橋を介して環化される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記環状化合物における前記リンカーが、GCGGG(配列番号15)又はGGGCG(配列番号16)を含むか又はそれからなる、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記環状化合物が、アミノ酸配列H-GCGGGRKAADDTWEPFASGKTSESGEGGGCG-OH(TTR34-54cyc;配列番号17)を含むか又はそれからなる、請求項17~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記結合分子が、NI-301.37F1であり、且つその可変領域内又は結合ドメイン内に、配列番号19及び配列番号21又は配列番号23及び配列番号21のVH及びVL鎖のアミノ酸配列を含む抗TTR抗体である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記標的抗原が、固体支持体上、好ましくはマイクロタイタープレート上で結合される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の少なくともステップ(b)が、垂直なプレートレイアウトで実施される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載の方法における、標的抗原結合分子及び/又はヒトFc受容体FcγRI(CD64)を発現するように改変されており、且つ前記Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿すエフェクター細胞の使用。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に定義される、標的抗原結合分子の医薬組成物の少なくとも1つのバッチを分析及び選択するための方法であって、
(a)前記バッチのサンプルに、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法を施すステップと:
(b)前記サンプルの前記レポーター遺伝子活性を対照のレポーター遺伝子活性と比較するステップと;
(c)前記サンプルが、前記対照と比較して、より大きい、等しい、又は80%以上のレポーター遺伝子活性を示す場合の前記バッチを選択するステップと、
を含み、好ましくは、前記対照は、参照標準であり、且つ/又は分析対象の前記バッチは、貯蔵されており、且つ/若しくはストレス条件を受け、且つ前記対照は、前記バッチ又は貯蔵前及び/若しくは前記ストレス条件を受ける前の対応するバッチから採取されたサンプルのレポーター遺伝子活性の値である、方法。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載の方法において有用なキットであって、
(i)ヒトFc受容体FcγRI(CD64)を発現するように改変されており、且つ前記Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿すエフェクター細胞の集団;
(ii)前記レポーターの対応する基質を含み、好ましくは、以下の1つ以上をさらに含み:
(iii)前記標的抗原であって、好ましくは、凝集タンパク質若しくは凝集を受けやすいタンパク質、及び/若しくは標的結合分子の前記エピトープを含む環状化合物、若しくは前記環状化合物の線状前駆体である、前記標的抗原;
(iv)マイクロタイタープレート、好ましくは、蓋を含む96ウェルプレート;
(v)緩衝液、希釈剤、基質及び/又は溶液;
(vi)洗浄、ブロッキング及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液;
(vii)前記標的抗原の単量体対照及び/若しくは陽性対照の抗標的抗原抗体;並びに/又は
(viii)使用説明書
好ましくは、エフェクター細胞の前記集団は、Jurkat細胞の集団であり、且つ前記レポーター遺伝子は、NFAT応答エレメントの制御下で発光タンパク質、好ましくはルシフェラーゼをコードする、キット。
【請求項37】
(i)のエフェクター細胞の前記集団、(ii)の前記対応する基質、及び(iii)の前記標的抗原を含み、前記標的抗原は、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質であり、好ましくは、(iv)~(viii)の1つ以上をさらに含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質からのエピトープを含むペプチドを含む環状化合物。
【請求項39】
リンカーを含み、好ましくは、前記リンカーが、アミノ酸リンカー又は非アミノ酸リンカーである、請求項38に記載の環状化合物。
【請求項40】
前記リンカーが、前記ペプチドのN末端残基及び前記ペプチドのC末端残基で又はその近傍で共有結合的にカップリングされる、請求項39に記載の環状化合物。
【請求項41】
前記環状化合物における前記ペプチドが、前記アミロイド原性タンパク質の少なくとも5、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも20、21、22、23、24、又は25アミノ酸残基を含む、請求項38~40のいずれか一項に記載の環状化合物。
【請求項42】
前記アミロイド原性タンパク質が、トランスサイレチン(TTR)、免疫グロブリン軽鎖(LC)、及び血清アミロイドA(SAA)から選択される、請求項38~41のいずれか一項に記載の環状化合物。
【請求項43】
前記アミロイド原性タンパク質がTTRであり、且つ前記ペプチドがTTRペプチドである、請求項42に記載の環状化合物。
【請求項44】
前記TTRペプチドが、WEPFA(配列番号1)、EEFXEGIY(配列番号2)、ELXGLTXE(配列番号3)、WEPFASG(配列番号4)、TTAVVTNPKE(配列番号5)、KCPLMVK及びVFRK(配列番号6及び7)、EHAEVVFTA(配列番号8)、GPRRYTIAA(配列番号9)、VHVFRKAADDTWEPFASGKTSESGELHGLTTEEEFVE(配列番号10)、ALLSPYSYSTTAV(配列番号11)、WKALGISPFHE(配列番号12)、SYSTTAVVTN(配列番号13)、及びLLSPYSYSTTAVVTNPKE(配列番号14)(ここで、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であり得る)から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも4アミノ酸残基を含む、請求項43に記載の環状化合物。
【請求項45】
前記TTRペプチドが、アミノ酸配列WEPFA(配列番号1)を含む、請求項43又は44に記載の環状化合物。
【請求項46】
前記リンカーが、1~8アミノ酸及び/又は1つ以上の官能化可能な部分を含むか又はそれからなる、請求項38~45のいずれか一項に記載の環状化合物。
【請求項47】
前記リンカーアミノ酸が、アラニン(A)、グリシン(G)、及び/若しくはセリン(S)から選択され、且つ/又は前記官能化可能な部分が、システイン(C)、リジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、若しくはグルタミン酸(E)である、請求項46に記載の環状化合物。
【請求項48】
ジスルフィド架橋を介して環化される、請求項47に記載の環状化合物。
【請求項49】
前記環状化合物における前記リンカーが、アミノ酸配列GCGGG(配列番号15)又はGGGCG(配列番号16)を含むか又はそれからなる、請求項37~48のいずれか一項に記載の環状化合物。
【請求項50】
アミノ酸配列H-GCGGGRKAADDTWEPFASGKTSESGEGGGCG-OH(TTR34-54cyc;配列番号17)を含むか又はそれからなる、請求項37~49のいずれか一項に記載の環状化合物。
【請求項51】
前記ペプチドが、さらに誘導体化される、請求項37~50のいずれか一項に記載の環状化合物。
【請求項52】
前記化合物が線状形態である、請求項37~51のいずれか一項に記載の環状化合物の前駆体。
【請求項53】
請求項37~51のいずれか一項に記載の環状化合物、及び任意選択的に1つ以上の賦形剤を含む組成物。
【請求項54】
少なくとも請求項37~51のいずれか一項に記載の環状化合物又は請求項52に記載の前駆体を、任意選択的に試薬及び/又は使用説明書とともに含むキット。
【請求項55】
(i)Fc受容体、好ましくはヒトFc受容体FcγR、を発現するように改変されており、且つ前記Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿す、エフェクター細胞の集団;
(ii)前記レポーターの対応する基質をさらに含み;好ましくは、以下の1つ以上をさらに含み:
(iii)固体支持体、好ましくはマイクロタイタープレート、好ましくは蓋を含む96ウェルプレート;
(iv)洗浄、ブロッキング及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液;並びに/又は
(v)前記標的抗原の単量体対照及び/若しくは陽性対照の抗標的抗原抗体
好ましくは、エフェクター細胞の前記集団は、Jurkat細胞の集団であり、且つ前記レポーター遺伝子は、NFAT応答エレメントの制御下で発光タンパク質、好ましくはルシフェラーゼをコードする、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
抗原結合分子を検出する、好ましくはFcドメインを含む抗原結合分子の効力を測定するための、請求項36~51のいずれか一項に記載の環状化合物、又は請求項48に記載の組成物、又は請求項54若しくは55に記載のキットの使用。
【請求項57】
前記抗原結合分子の効力の測定が、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法に従って実施される、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質に結合する抗体を特定する、及び任意選択的に取得するための方法であって、
(a)1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源を提供する、任意選択的に産生するステップと;
(b)前記1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源に、請求項36~51のいずれか一項に記載の環状化合物を含む結合アッセイを施すステップと;
(c)前記環状化合物に結合することが判定されている抗体(対象抗体)を特定する、及び任意選択的に取得するステップと、
を含む方法。
【請求項59】
アミロイド原性タンパク質に結合する抗体を含む医薬組成物を作製する方法であって、
(a)1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源を提供する、任意選択的に産生するステップと;
(b)前記1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源に、請求項36~51のいずれか一項に記載の環状化合物を含む結合アッセイを施すステップと;
(c)前記環状化合物に結合する抗体(対象抗体)を特定する、及び任意選択的に取得するステップと;
(d)ステップ(c)において特定され、任意選択的に取得されている前記抗体又はその誘導体を、薬学的に許容される担体とともに製剤化するステップと、
を含む方法。
【請求項60】
抗体の前記供給源が、齧歯類、好ましくはマウス、最も好ましくはIgヒト化マウスなどの免疫実験動物;好ましくはメモリーB細胞を含むヒト血液若しくはその画分;ファージ、酵母、及びリボソーム系若しくは哺乳動物細胞系、例えばCHO及びHEKなどの組換え抗体ライブラリーからなる群から選択される、請求項58又は59に記載の方法。
【請求項61】
前記結合アッセイが、ELISAを含む、請求項58~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
ステップ(c)において特定され、任意選択的に取得されている前記抗体が、前記アミロイド原性タンパク質への結合に対して参照抗体と競合し、好ましくは、前記対象抗体は、前記アミロイド原性タンパク質に対して前記参照抗体より低いEC
50を有する、請求項58~61のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、抗体Fc媒介性活性が作用機構における決定的役割を果たす、治療的に有用な抗体及び同等な結合分子を特徴づける新規な方法であって、具体的には、臨床試験を実施し、市販承認及び承認薬剤の品質対照に適用するとき、効力アッセイとして好適であり、抗体又は類する結合分子を含む医薬組成物のバッチリリースに特に有用である方法に関する。さらなる態様では、本発明は、こうした効力アッセイにおいて使用可能である、全身性アミロイド原性タンパク質(systemic amyloidogenic protein)のエピトープを含有するペプチドを含む環状化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体薬は、過去30年にわたり、研究標的から改善された技術、臨床研究から商業化に至るまで成熟してきている。近年では、市販が承認されているモノクローナル抗体薬の数が急速に増加しており、2021年に、画期的な100番目のモノクローナル抗体製品として、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)(FDA)によって承認されている。2019年、最も売れている薬剤として20のうちの9つがモノクローナル抗体薬であった(Mullard,Nature Reviews Drug Discovery 20,491-495(2021),DOI:10.1038/d41573-021-00079-7)。
【0003】
治療抗体の一つの有望な適用が、有毒なアミロイド凝集体に起因して生じるアミロイドーシスの治療である。アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンチントン病を含む神経変性疾患は、アミロイド沈着が、特定の神経細胞型の死滅を誘導する場合の神経系において形成する、致死性の限局性アミロイドーシスの非常に流行したクラスを表す。全身性アミロイドーシス、例えば、免疫グロブリン軽鎖、トランスサイレチン及び透析関連アミロイドーシスでは、アミロイド原性タンパク質が、合成部位から移動するにつれて、身体の異なる部位に分布されるとき、いくつかの臓器が冒される。抗体及び抗体断片は、有効な抗アミロイド分子であることが既に判明している。例えば、アデュカヌマブは、アルツハイマー病患者におけるアミロイド沈着物の用量依存的なクリアランスを示し、最近、アルツハイマー病の治療における使用がFDAによって承認されている。
【0004】
抗体の特にアミロイドーシスの治療にとって有効な薬剤としての治療的有用性は、抗体が凝集体に結合する能力だけでなく、作用機構における決定的役割を果たす、抗体Fc媒介性活性にも依存している。抗体の細胞表面上のFc受容体への結合は、抗体被覆粒子の貪食及び破壊(抗体依存性細胞性食作用、又はADCPと呼ばれる)、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体被覆標的細胞の溶解(抗体依存性細胞傷害、又はADCCと呼ばれる)、炎症性メディエーターの放出、胎盤導入及び免疫グロブリン産生の制御を含む、いくつかの重要且つ多様な生物学的応答を誘発する。
【0005】
アミロイドβ(Aβ)のような抗体標的凝集タンパク質に対する1つの重要な作用機構(MoA)は、ADCPである。標的タンパク質に結合する抗体は、マクロファージなどのパトロールする免疫細胞上の高親和性及び低親和性Fcγ受容体に結合し得る多価Fcドメインの提示をもたらし、それらを特定領域に動員する。Fc受容体のクラスタリングは、標的抗原周囲の膜変形、細胞内シグナル伝達の活性化、及び最終的に食細胞による標的抗原の貪食を引き起こすアクチン細胞骨格動力学の変化をもたらす。
【0006】
したがって、抗体及び対応する結合分子は、タンパク質凝集疾患の予防及び治療にとって有望な薬剤である。しかし、医薬組成物を作製する場合、原体を製剤に製剤化することでは十分ではなく、得られた製剤が、医薬組成物が使用される国内の規制機関によって承認されることも必須である。米国では、責任を担う規制機関は、FDA(http://www.fda.gov/)であり、欧州では、それは例えば、欧州医薬品審査局(European Agency for the Evaluation of Medical Products)(EMEA)(http://www.emea.eu.int/)である。
【0007】
承認プロセスは、徹底的に規制され、薬剤開発者は、製剤候補に関する多くの情報を規制当局に提出し、承認を得ることが求められる。これは、製剤候補の効力及び効力を測定するための対応するアッセイについての情報を含んでもよい。こうした効力アッセイは、製品を特徴づけ、ロット間の一貫性を監視し、製品の安定性を保証することに寄与する。
【0008】
FcのFc受容体への結合が作用機構についての決定的役割を果たす場合の抗体の効力は、伝統的に、評価される効果がFc-Fc受容体結合に依存する場合での生物検定の使用によって測定される。こうしたアッセイは、ADCC、ADCP、又は抗体架橋を必要とするT細胞活性化の誘導若しくは阻害を含んでもよい。しかし、これまで開発されたアッセイは、高負荷であり、高価な装置(例えば、フローサイトメーター)を必要とし、かなり複雑であることが多い。例えば、ADCPアッセイは、通常、抗体が標的に結合する必要があり、マクロファージが標的に結合した抗体を認識し、それに結合し、食作用を引き起こす必要があるといった2ステッププロセスである。国際出願の国際公開第2017/157961Al号パンフレットは、Aβで例示される凝集タンパク質の取り込みを測定することによってADCPをアッセイするような方法について記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Mullard,Nature Reviews Drug Discovery 20,491-495(2021),DOI:10.1038/d41573-021-00079-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、製品を特徴づけ、ロット間の一貫性を監視し、製品の安定性を保証するためのアッセイは、臨床的重要性があり、処理が比較的容易であるとともに、製品の作用機構及び機能に影響し得る差異を検出するのに十分に高感度である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一般に、抗体Fc媒介性活性が作用機構における決定的役割を果たす、治療的に有用な抗体及び同等の結合分子を特徴づける新規な方法であって、具体的に、臨床試験を実施し、市販承認及び承認薬の品質対照に適用するとき、抗体又は類する結合分子を含む医薬組成物のバッチリリースに特に有用である、効力アッセイとして好適である方法に関する。本発明は、さらに、抗体又は同等の結合分子のエピトープを含むペプチド又はタンパク質断片を含む環状化合物、並びに抗体又は結合分子の効力を測定する方法とともに、一般に創薬及び診断分野における、そのような環状化合物の使用に関する。
【0012】
より詳細には、本発明は、Fcドメインを含む標的抗原結合分子の食作用に関連する効力を測定するための新規な方法、並びにそのような分子を含む医薬組成物の作製及び品質制御における本方法の使用に関し、ここで好ましい実施形態では、標的抗原は、好ましくは、凝集、ミスフォールド、及び非生理学的形態でのアミロイド原性タンパク質である。実施例3及び4と対応する図面に例示されるとおり、抗体の効力を測定するのに好適であり、且つFcドメイン変更に関連する効力低下を検出する能力を有する、安定な高感度のレポーター遺伝子アッセイが開発されている。実施例6と対応する図面においてさらに例示されるとおり、レポーター遺伝子アッセイの性能は、アミロイド原性タンパク質のエピトープを含む、標的抗原としての環状ペプチドを使用することによって、さらに改善されている。
【0013】
本発明に従い、全身性アミロイド原性タンパク質のトランスサイレチン(TTR)に対してAβで例示されている国際公開第2017/157961Al号パンフレットのADCPアッセイを適用するため、いくつかの実験が実施されている。実験の第1セットでは、ヒト由来マクロファージ、蛍光標識L55P-TTRタンパク質、及び凝集されたTTR選択的抗体を含むインビトロアッセイが開発されたが;実施例1を参照されたい。しかし、異なる血液ドナーから得られたマクロファージ間の食作用活性において、いくらかの変動性が認められた。したがって、この変動性の源を排除するため、新たなPBMCの代わりにヒト単球THP1細胞株を用いて、インビトロ食作用アッセイが再び開発されたが(実施例2を参照されたい)、再び複製物間でいくらかの変動性が認められた。
【0014】
本発明は、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性TTR又は他のアミロイド原性タンパク質に結合する抗体及びFcドメインを含有する結合分子の効力の判定に特に適する、改善されたアッセイを提供する。したがって、本発明の範囲内で実施される実験の別のセットでは、異なるタイプの細胞アッセイが評価されて、異なる成功をもたらしている。最終的に、実施例3及び4に例示されるとおり、エフェクター細胞として、ヒトFc受容体、特にFc受容体FcγRI(CD64)を発現するように遺伝子改変されている哺乳動物細胞、特にJurkat細胞を利用するアッセイが、特に標的抗原としてのTTRなどの全身性アミロイド原性タンパク質について非常に信頼できる結果をもたらし、このセットアップが凝集体として存在する標的抗原に対する効力アッセイにおいて特に好適であることが判明した。
【0015】
実験の別のセットでは、TTRエピトープを含む環状ペプチド(環状TTRペプチド)が、TTR凝集体の代わりに標的抗原として使用されている。意外にも、このアッセイは、感度及び信頼度の顕著な改善を示した。理論によって拘束されることを意図しない限り、環状ペプチドによるアッセイの異常な性能は、それが共に接続されている2つの末端を有することによって制約を受け、ひいてはタンパク質凝集体の安定性を再現することから、環状ペプチドによってとられている非常に安定な立体構造に起因し得る。しかし、実施例6で示されるとおり、こうした理論的考察を考慮に入れるとしても、標的抗原として環状ペプチドを用いるアッセイは、タンパク質凝集体として存在する標的抗原を用いるアッセイよりも桁違いに正確且つ高感度である。さらに、理論によって拘束されることを意図しない限り、これは、タンパク質と比較してより小さいサイズのペプチドや、より高い結合能力及びより高いアビディティー効果の両者を説明するより高いエピトープ密度が得られることに起因し得る。さらに、環状ペプチド中のエピトープであれば、全長タンパク質と比較して、接近性がより優れている可能性がある。にもかかわらず、全部で31アミノ酸を有するリンカーアミノ酸を含む環状TTRペプチドが全長TTRタンパク質よりも4倍小さいに過ぎないことから、環状ペプチドのサイズは、観察された効果を先験的に(a priory)説明することができない。さらなる理由は、組換えタンパク質と比較される合成ペプチドの立体構造のより優れた制御であり得る。特に、95%を超えるペプチドが環化される一方で、ミスフォールド凝集TTRタンパク質の画分がアミロイド立体構造をとることは未知である。mis.WT-TTRが立体構造の異質混合物であることから、タンパク質の有意な画分は、アミロイドの代わりに非晶質凝集体を形成し得る。要するに、添付の実施例5~8に記載される実験の結果とともに、ここで優れた説明的手法及び理論を築き、アミロイド原性、特に全身性アミロイド原性タンパク質に対して強力な抗体の検出及び同定に適したエピトープを有するさらなる環状ペプチドを予想することができるが、これは本発明のこの結果及び教示に関する知見なしに予見可能でなかった。これに関連して、そして再びいかなる理論にも拘束されることを望まないが、免疫グロブリン軽鎖(LC)のミスフォールディングに起因するATTR及びALアミロイドーシスなどの全身性アミロイド原性タンパク質のアミロイド構造が、タウなどの限局性アミロイド原性タンパク質(local amyloidogenic proteins)の場合と、一方では類似するが、他方では実質的に異なることがクライオEM試験によって最近示されていることは注目すべきであり;Schmidt et al.,Nat.Commun.10(2019),5008,https://doi.org/10.1038/s41467-019-13038中の
図5を参照されたい。したがって、TTR由来の環状ペプチドについてのこの結果が、他の全身性アミロイド原性タンパク質にも適用できると仮定することは合理的である。
【0016】
したがって、さらなる態様では、本発明は、具体的に、全身性アミロイド原性タンパク質のエピトープを含有するペプチドを含む環状化合物の提示に関し、エピトープは、ネオエピトープなどの場合、好ましくはタンパク質のミスフォールド及び/又は凝集形態に限った抗体による結合に接近可能であり、且つ/又はエピトープは、例えば、TTRタンパク質の単量体において接近可能であるエピトープの場合、生理活性四量体中に隠されていて、抗体結合への接近がもはや可能でなく、生理活性型のタンパク質中に少なくとも存在しない。実施例6に例示されるとおり、本発明の環状化合物は、本発明の効力アッセイにおいて特に有用である。
【0017】
標的抗原としての環状化合物の顕著な性能は、実施例5に記載のELISAアッセイにおいて示されている。環状ペプチドに結合する抗体についてのEC50値が、タンパク質凝集体及び環状ペプチドと同じエピトープを含む線状ペプチドに結合する抗体についてのEC50値と比較された。再び、環状ペプチドは、抗体に対する最高の結合親和性、即ち最低のEC50値を示したという点で最も優れた性能を示した。上述のとおり、タンパク質凝集体と比較する場合の抗体と環状ペプチドとの間の最高の結合親和性は、より十分な見かけ上の結合親和性をもたらす、より高いエピトープ密度に起因し、より高い結合能力及びより高い結合活性効果に起因し、環状ペプチドにおけるエピトープの、全長タンパク質に対するより十分な接近性に起因し、且つ/又は合成ペプチドの立体構造の、組換えタンパク質と比較する場合のより十分な制御に起因する可能性がある。したがって、一実施形態では、本発明の環状化合物及び環状ペプチドはそれぞれ、例えば添付の実施例5に記載されるELISAアッセイにおいて、抗体と、標的タンパク質(対応する線状ペプチドに由来し、それより高い)よりも高い結合親和性、全長標的タンパク質及び/又は線状ペプチドと比較して、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、4倍、若しくは5倍、及び最も好ましくは、少なくとも6倍、7倍、8倍、9倍若しくは10倍より高い結合親和性を提供する。
【0018】
環状ペプチドの、配列が類似する線状ペプチドに対する優位性は、理論によって拘束されない限り、一緒に接続されている2つの末端を有することによって制約を受ける、ひいてははるかに低い柔軟性を有し、より安定な立体構造をとる環状ペプチドと対照的に、線状ペプチドが極端な柔軟性故に実質的に無限数の立体構造をとり得ることによって説明することができる。換言すれば、環状ペプチドは、線状形態における同じアミノ酸配列よりも低いエントロピーを有する。
【0019】
したがって、本発明に従う環状化合物の提示は、例えば、高感度を必要とするアッセイにおける標的抗原と対応する標的抗原結合分子との間の結合について試験するための好適な標的としてのその顕著な有用性を仮定すれば、当該技術への重要な寄与を表す。にもかかわらず、本発明はまた、例えば、環状化合物を調製するための前駆体として又は実験における対照として使用するための、環状化合物及び環状ペプチドそれぞれの線状形態に関する。
【0020】
実施例3でさらに説明されるとおり、本発明のアッセイにおいて使用されるエフェクター細胞は、Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を含有する。レポーター遺伝子活性が標準光度計を介して測定可能であることから、高価で複雑な機器は不要である。
【0021】
要するに、標的抗原に結合し、Fcドメインを含む分子の効力を測定するための方法であって、
(a)標的抗原を結合分子と結合分子-標的抗原複合体の形成を可能にする条件下で接触させるステップと;
(b)結合分子-標的抗原複合体を、Fc受容体を発現し、且つFc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿すエフェクター細胞の集団と、細胞内シグナル伝達をもたらし、且つ定量化可能なレポーター遺伝子活性を媒介する、結合分子のFcドメインへのFc受容体の結合を可能にする条件下で接触させるステップと;
(c)レポーター遺伝子活性によって誘導されるシグナルを検出するステップと、
を含み、ここで結合分子のFcドメインの少なくとも1つのMoAは、FcドメインのFc受容体への結合を通じて媒介され、且つレポーター遺伝子活性は、結合分子の効力を示唆する、方法が開発されている。
【0022】
こうしたアッセイは、標的抗原結合分子を含む医薬組成物を作製する方法において適用することができ、ここで前記結合分子の効力は、作製後最初に分析される。その結果に基づき、結合分子が医薬組成物中で使用可能か否かが評価される。特に、アッセイに基づいて強力であるとみなされている結合分子のみが、さらなる使用のために選択され、薬学的に許容される担体を伴う医薬組成物として製剤化される。
【0023】
本発明の効力アッセイはまた、標的抗原結合分子の医薬組成物のバッチを分析及び選択するための方法において使用することができ、ここで分析対象のバッチのサンプル及び対照サンプルには前記効力アッセイが施され、サンプルのレポーター遺伝子活性が対照の場合と比較される。サンプルが、対照と比較してより大きいか、同等か又は実質的でないがより低いレポーター遺伝子活性を示す場合のバッチが、さらなる使用のため、最終的に選択される。したがって、本発明の方法は、ロット間の一貫性を検証するために使用することができる。
【0024】
本発明は、好ましくは、本発明の方法を実施し、特に、ADCPを誘導するためのFcドメインを含む結合分子の効力をアッセイするように設計されているキットであって、少なくとも、
(i)Fc受容体を発現し、Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーターをコードする遺伝子を宿すように遺伝子改変されているエフェクター細胞の集団;
(ii)レポーターの対応する基質;及び任意選択的に
(iii)標的抗原;
(iv)マイクロタイタープレート、好ましくは、蓋を含む96若しくは384ウェルプレート;
(v)緩衝液、希釈剤、基質及び/若しくは溶液についての推奨、及び使用説明書、特に本発明のアッセイの実施方法についての説明書;
(vi)洗浄、ブロッキング及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液;並びに/又は
(vii)陽性対照の標的抗原結合分子、好ましくは抗体
を含むキットにさらに関する。
【0025】
一実施形態では、本発明のキットは、少なくとも、
(i)Fc受容体を発現するように遺伝子改変されており、且つFc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーターをコードする遺伝子を宿すエフェクター細胞の集団;
(ii)レポーターの対応する基質;及び
(iii)標的抗原を含み、キットは、任意選択的に、
(iv)マイクロタイタープレート、好ましくは、蓋を含む96若しくは384ウェルプレート;
(v)緩衝液、希釈剤、基質及び/若しくは溶液についての推奨、及び使用説明書、特に本発明のアッセイの実施方法についての使用説明書;
(vi)洗浄、ブロッキング及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液;並びに/又は
(vii)陽性対照の標的抗原結合分子、好ましくは抗体
をさらに含む。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明のキットは、標的抗原の代わりに若しくはそれに加えて、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質からのエピトープを含むペプチドを含む環状化合物を含み、且つ/又は環状化合物の前駆体を含み、ここで該化合物は、線状形態であり、その場合、実施例におけるTTRペプチドについて示される場合と類似する対照としても役立ち得る。
【0027】
該方法、即ち、本発明の効力アッセイでは、標的抗原としてのアミロイド原性タンパク質TTR及びその凝集体及びTTRエピトープを含む環状ペプチドのそれぞれ、及び国際出願の国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されており、且つ動物モデルにおけるTTR原線維の除去のために免疫系を活性化する能力があることが記載されている抗TTR抗体、例えば、NI-301.37F1などが例示されており;国際出願の国際公開第2020/094883A1号パンフレットを参照されたい。TTRは、その生理学的形態において、それが単量体に解離し、全身性アミロイドーシスであるトランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)を形成するとき、アミロイド原性特性を発現する四量体タンパク質である。全身性アミロイドーシスは、臓器不全を引き起こすアミロイドの細胞外沈着に起因するタンパク質ミスフォールディング障害である一方で、局所アミロイドーシスは、アルツハイマー病における細胞内タウタンパク質原線維及び細胞外アミロイドβ原線維及びプラークなどの、前駆体タンパク質合成の臓器又は組織に限って生じる細胞内及び/又は細胞外アミロイド沈着を指す。原則として、本発明の方法は、任意の標的抗原、特に、その病原性変異体中で、ネオエピトープ、例えば、ミスフォールド変異体に限って曝露されるエピトープ、凝集体、原線維及び/若しくはオリゴマー上の配座エピトープ、細胞内に位置するそれ以外の生理学的タンパク質の細胞外変異体上のエピトープ、又は真菌、細菌、及びウイルスなどの外因性病原体に特異的なエピトープを形成する任意のタンパク質に適用可能である。さらに、本発明の方法は、原則として、凝集体、原線維、オリゴマー、(ミスフォールド)単量体、並びに試験対象の標的抗原結合分子のエピトープを含有及び提示するタンパク質断片及びペプチドを含む、あらゆる種類の抗原を用いて実施することができ、ここで好ましくは、ペプチドは、環状形態で提供される。同様に、本発明の環状化合物は、原則として、環状化合物を形成する能力がある任意のペプチド又はタンパク質断片、特に上述されるネオエピトープを含むペプチド又はタンパク質断片を含み得る。特に好ましい実施形態では、(ネオ)エピトープは、例えば、成熟TTRタンパク質の41~45位に位置する、抗体NI-301.37F1の線形エピトープWEPFAのように、標的抗原の天然に折り畳まれた立体構造に隠れるが、アンフォールディング及び凝集後、抗体結合に接近可能である。
【0028】
にもかかわらず、本実施例に従い、本発明の方法は、アミロイド原性タンパク質からの、好ましくはトランスサイレチンなどのタンパク質のミスフォールドした非生理学的形態で曝露されるエピトープからの、エピトープを含む、アミロイド原性タンパク質に対して、好ましくは、トランスサイレチンなどのタンパク質のミスフォールドした非生理学的形態及びそのアミロイド原性形態の凝集体に対して、そして好ましくは環状形態のタンパク質の断片及びペプチドに対して標的化される抗体の効力を測定するのに特に適合することから、好ましい。
【0029】
本発明の方法は、ADCPを活性化するための抗体効力を測定するのに特に有用である。
【0030】
さらに、本発明の環状化合物、及びその線状前駆体は、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質に結合する抗体を特定する、任意選択的に取得するための方法であって、典型的に、
(a)1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源を提供する、任意選択的に産生するステップと;
(b)1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源に、本発明の環状化合物を含む結合アッセイを施すステップと;
(c)環状化合物に結合することが判定されている抗体(対象抗体)を特定する、任意選択的に取得するステップと、
を含む方法において特に有用である。
【0031】
本方法は、本発明の効力アッセイ、及び/又は対象抗体の診断的若しくは好ましくは治療的な有用性をさらに判定するための任意の他の好適な方法と組み合わせることができる。
【0032】
それ故、本発明のさらなる実施形態は、アミロイド原性タンパク質に結合する抗体を含む医薬組成物を作製する方法であって、少なくとも、
(a)1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源を提供する、任意選択的に産生するステップと;
(b)前記1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源に、本発明の環状化合物を含む結合アッセイを施すステップと;
(c)環状化合物に結合する抗体(対象抗体)を特定する、任意選択的に取得するステップと;
(d)ステップ(c)において特定され、任意選択的に取得されている抗体又はその誘導体を、薬学的に許容される担体とともに製剤化するステップと、
を含む方法で構成される。
【0033】
抗体の供給源は、限定されないが、例えば、齧歯類、好ましくはマウス、最も好ましくはIgヒト化マウスなどの免疫実験動物;好ましくはメモリーB細胞を含むヒト血液若しくはその画分;ファージ、酵母、及びリボソーム系若しくは哺乳動物細胞系、例えばCHO及びHEKなどの組換え抗体ライブラリーから得られる天然及び合成抗体を含み;抗体及び他の標的結合分子のさらなる供給源については、「発明の詳細な説明」も参照されたい。
【0034】
上述される方法において使用される結合アッセイは、好ましくは、例えば実施例5及び7において実施されるELISAを含む。
【0035】
対象抗体の特定及び取得、並びに医薬組成物及び創薬において製剤化される場合のそのさらなる使用それぞれのための本発明の方法の好ましい実施形態では、ステップ(c)において特定され、任意選択的に取得されている抗体は、アミロイド原性タンパク質への結合に対して参照抗体と競合し、ここで好ましくは、対象抗体は、アミロイド原性タンパク質に対して参照抗体より低いEC50を有する。
【0036】
本願中で特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されている場合と同じ意味を有する。本明細書に記載される場合と類似又は同等の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、例示的な方法及び材料が以下に記載される。本明細書中で言及される全ての出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それら全体が参照により援用される。材料、方法、及び例は、あくまで例示的なものであり、限定することは意図されていない。
【0037】
本発明のさらなる実施形態は、以下の説明、実施例及び請求項から明らかであろう。当業者は、以下の一般的な実施形態の一般的特徴のあらゆる特徴づけが、そのような一般的な実施形態の他の特徴の1つ以上の特徴づけと組み合わせ可能であり、好ましくは組み合わせが意図されることを理解するであろう。さらに、特に具体的に指示されない限り、実施例を含む、抗体についての本明細書に記載の実施形態は、好ましい実施形態でなくても、例示が意図され、ここでは任意の標的結合分子に外挿される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1-1】ヒト由来マクロファージを用いるNI-301.37F1_3インビトロ食作用アッセイ。NI-301.37F1_3は、濃度依存性及びFcR依存性にTTR食作用を誘発する。説明及び図面の全体を通じて、「NI-301.37F1」は、「37F1」とも称することもできる。抗体濃度依存性TTR取り込みは、NI-301.37F1_3によって特異的に媒介され、Fc受容体への結合及び標準の蛍光プレートリーダーで測定する場合での低い抗体濃度が必要であった(A)。二重陽性細胞(TTR及びNI-301.37F1_3の両方について陽性である細胞)のFACSによる定量化によると、二重陽性細胞の頻度が、10nM NI-301.37F1_3の存在下で、3%のバックグラウンドレベルから6%に増加し、80nM NI-301.37F1_3の存在下で、16%までさらに増加することが示された(B)。酸性小胞に内部移行したTTR及び抗体について二重陽性である細胞の定量化によると、二重陽性細胞の頻度が、10nM NI-301.37F1_3の存在下で、3.5%の基本レベルから5.5%に増加し、80nM NI-301.37F1_3の存在下で、8.8%までさらに増加することが示され、ここでTTRの抗体依存性食作用は、NI-301.37F1_3によって特異的に誘発され、アイソタイプ対照抗体によって特異的に誘発されず、10nM及び80nMでは、バックグラウンドレベルを超えて食作用が誘導されなかった(C)。
【
図2】THP1細胞を用いるインビトロ食作用アッセイ。NI-301.37F1_3は、THP1細胞によるmis.TTR488の食作用を濃度依存性に誘発した。1×又は0.7×_NI-301.37F1_3希釈系列とともにインキュベートされたTHP1細胞における細胞内mis.TTR-488蛍光の定量化(3連の平均値±SD)(A)。NI-301.37F1_W1非GMP DP及びNI-301.37F1_W1 GMP DSの両方が、同じ濃度範囲内で、THP1細胞によるmis.TTR-488の食作用を誘発した。NI-301.37F1_W1非GMP DP及びNI-301.37F1_W1 GMP DS希釈系列とともにインキュベートされたTHP1細胞における細胞内mis.TTR-488蛍光の定量化(3連の平均値±SD)(B)。
【
図3】抗体NI-301.37F1バッチ3(37F1_3)(A)及びNI-301.37F1バッチW1(37F1_W1)(B)のmis.WT-TTRバッチ5及びmis.WT-TTRバッチ6への結合のELISAを用いる比較によると、37F1_3及び37F1_W1のmis.WT-TTR_b6への結合がmis.WT-TTR_b5の場合と実質的に同一であることが示された。
【
図4】標的抗原としてmis.WT-TTRを使用する本発明のADCPアッセイの、NI-301.37F1バッチW1参照サンプル(NI-301.37F1_W1 RS)及び半分濃縮された試験サンプル(NI-301.37F1_W1 50%)の比較による、抗体活性の変化を検出するその能力についての評価によると、アッセイが抗体活性の50%低下を検出する能力を有することが示された。3連の平均値±SD。
【
図5】標的抗原としてmis.WT-TTRを使用する本発明のADCPアッセイの、NI-301.37F1_W1参照サンプル(NI-301.37F1_W1 RS)の、より低い濃度を有するサンプル(NI-301.37F1_W1 65%、プレート1)(A)及びより高い濃度を有するサンプル(NI-301.37F1_W1 135%、プレート2)(B)との比較による、抗体活性の変化を検出するその能力についての評価によると、水平なプレートレイアウトを用いるアッセイが、抗体活性の35%低下及び抗体活性の35%増加をそれぞれ検出する能力を有することが示された。
【
図6】標的抗原としてmis.WT-TTRを使用する本発明のADCPアッセイの、垂直なアッセイレイアウトを用いるNI-301.37F1_W1 RS,65%及び135%の比較による、抗体活性の変化を検出するその能力についての評価によると、垂直なフォーマットを用いるアッセイが抗体活性の±35%の変化を検出する能力を有することが示された。3連の平均値±SD。
【
図7】ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプル((A)参照サンプル、PBCA pH3.4、トリス pH10、H
2O
2;(B)参照サンプル、Form°緩衝液 pH5.8、PBS pH7.4)のmis.WT-TTRへの結合がELISAによって分析され、結果によると、ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルが、参照NI-301.37F1_W1サンプルと高度に同等であり、且つサブナノモル範囲内のEC
50によって特徴づけられる、mis.WT-TTRに対する結合親和性を示すことが示された。(C)結果の表形式の概要。
【
図8】ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルのmis.WT-TTRへの結合がBLIによって分析され、表形式の概要によると、ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルが、参照NI-301.37F1_W1サンプルと同等であり、低ナノモル範囲内のKDによって特徴づけられる、mis.WT-TTRに対する結合親和性を示すことが示された。
【
図9】本発明のADCPアッセイの、NI-301.37F1_W1 RSのPBCA緩衝液及びトリス緩衝液でストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプル(A)並びに調製用緩衝液及びH
2O
2緩衝液でストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプル(B)との比較による、効力低下を検出するその能力についての評価によると、アッセイがFcドメイン変更に関連する効力低下を検出する能力を有することが示された。
【
図10】ELISAアッセイの改善された感度。抗体NI-301.37F1の(A)ペプチドTTR34-54cyc、TTR40-49、ビオチン.TTR40-49、及びmis-WT-TTR、並びに(B)ペプチドTTR34-54cyc、ビオチン.TTR34-54cyc、TTR40-49、ビオチン.TTR40-49、及びmis-WT-TTRへの結合特異性のELISAアッセイを用いる比較によると、NI-301.37F1のmis.WT-TTRへの特異的結合が示され、NI-301.37F1の環状TTR34-54cycペプチドへの結合がmis.WT-TTRへの結合よりも約10倍強力であることが示された。ペプチドTTR40-49についての曲線は、ビオチン.TTR40-49の1つと一致する。
【
図11】標的抗原としての環状ペプチド化合物の使用による改善されたADCPアッセイ。環状TTRペプチド(TTR34-54cyc)を用いるADCPアッセイにおける抗体NI-301.37F1の効力の測定によると、抗体NI-301.37F1 RSの、用量応答において、即ち用量依存的様式で食作用を活性化する能力が19.8ng/mlのEC
50によって特徴づけられることが示される。
【
図12-1】NI-301.37F1参照サンプル(NI-301.37F1 RS)の、より低い濃度を有するサンプル(NI-301.37F1 50%(A)及び70%(B))、及びより高い濃度を有するサンプル(NI-301.37F1 130%(C)及び150%(D))との比較によって抗体活性の変化を検出するため、標的抗原としてTTR34-54cycを使用するADCPアッセイによると、アッセイが抗体活性の50%低下及び抗体活性の50%増加をそれぞれ検出する能力を有することが示された。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、Fcドメインを含む標的抗原結合分子の効力、特に抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)を活性化する効力を測定するための新規な方法、並びにそのような分子を含む医薬組成物の作製及び品質制御における、及び前記組成物のバッチの検証におけるこの方法の使用に関する。さらに、本発明は、好ましくは、本発明の方法のために設計され、且つ本発明の方法において使用可能であるキットに関する。さらなる態様では、本発明は、抗体又は同等の結合分子によって認識されるタンパク質のエピトープを含み、且つ本発明に従う方法における標的抗原として使用可能である環状化合物に関する。
【0040】
特に指定されない限り、本明細書で使用される用語は、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Oxford University Press,1997,revised 2000 and reprinted 2003,ISBN0-19-850673-2;Second edition published 2006,ISBN0-19-852917-1 978-0-19852917-0に提供されている定義が与えられる。
【0041】
「タンパク質」という用語は、説明全体を通して使用する場合、試験対象の標的抗原結合分子、例えば抗体のエピトープを含有及び曝露する(全長)タンパク質の断片及びペプチドを含む。
【0042】
本明細書中の「環状ペプチド」については、完全にタンパク質性である化合物を指し得るが、例えば、リンカーは、2、3、4、5、6、7若しくは8アミノ酸であり、又はリンカーは不在である。例えば、抗体のエピトープを含む天然タンパク質配列、即ちアミノ酸ストレッチが、例えば、適切な距離内での2つのシステインの存在に起因し、余分なアミノ酸を付加することなく、環化を可能にすることは考えられる。実施例において判定される環状ペプチドについて記載の特性が、他の化合物、例えば、非アミノ酸リンカー分子を含む環状化合物に組み入れ可能であることは理解されている。「環状ペプチド」及び「環状化合物」は、環状化合物がアミノ酸で構成される場合、互換可能に使用可能である。
【0043】
「リンカー」という用語は、本明細書で使用する場合、本明細書で定義されるタンパク質断片又はペプチドに直接的又は間接的に共有結合され得る化学的部分を意味する。リンカー末端は、例えば、環状化合物を生成するために連結され得る。リンカーは、N末端及びC末端の位置に存在し得る。或いは、リンカーは、末端から「いくらかの距離」にある内部位置に存在し得る。リンカーは、1つ以上のシステイン(C)残基などの1つ以上の官能化可能な部分を含み得る。リンカーはまた、官能化可能な部分を介して他のタンパク質又は成分に連結され得る。リンカーを含む環状化合物は、長さがペプチド又はタンパク質断片自体よりも長い。
【0044】
「官能化可能な部分」という用語は、本明細書で使用する場合、「官能基」を有する化学的実体を指し、本明細書で使用する場合、原子の別の基又は単一原子(いわゆる「相補的官能基」)と反応し、2つの基又は原子間で化学的相互作用を形成することになる原子の基又は単一原子を指す。システイン(C)の場合、官能基は、反応を受け、ジスルフィド結合を形成し得る-SHであり得る。原子の別の基との反応は、共有結合又は強力な非共有結合、例えば、約1e-14の解離定数(Kd)を有し得る、ビオチン-ストレプトアビジン結合などの場合であり得る。強力な非共有結合は、本明細書で使用する場合、少なくとも1e-9、少なくとも1e-10、少なくとも1e-11、少なくとも1e-12、少なくとも1e-13又は少なくとも1e-14のKdでの相互作用を意味する。
【0045】
効力試験は、製品適合試験、比較性試験及び安定性試験の一部として実施される。これらの試験を用いて、製品品質及び製造制御に関連する製品属性が測定され、それを実施して、臨床試験の全ての相の間に使用される製品の同一性、純度、強度(効力)、及び安定性が保証される。同様に、効力測定を用いて、定義された仕様又は許容基準を満たす製品ロット、即ち、バッチのみが臨床的検討の全ての相の間及び市場承認後に投与されることが実証される。効力は、「所与の結果を得るため、意図される様式における製品の投与を通じて得られる、適切な臨床検査又は十分に制御された臨床データによって示される、製品の特定の性能又は能力」と定義される。理想的に、効力アッセイは、製品の作用機構(即ち、関連する治療的活性又は意図される生物学的効果)を表すことになり;Guidance for Industry-Potency Tests for Cellular and Gene Therapy Products,U.S.Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration,Center for Biologics Evaluation and Research,January 2011を参照されたい。それ故、本発明のアッセイの観点では、標的抗原結合分子、具体的には製剤としての抗体の「効力」は、ADCPアッセイにおける活性及び活性のレベルのそれぞれが評価されているか又は既知である場合の、(製剤の)参照標準の活性に対するADCPアッセイにおけるその活性の尺度である。したがって、抗体/製剤の参照と比較してより高い効力は、ADCPアッセイにおいて、抗体/製剤がより高い結合活性、即ちより低いEC50値を示すことを意味し、抗体/製剤の参照と比較してより低い効力は、ADCPアッセイにおいて、抗体/製剤がより低い結合活性、即ちより高いEC50値を示すことを意味する。例えば、NI-301.37F1 150%は、より高い効力を有する抗体を再現し、参照サンプルNI-301.37F1 RS(100%)より0.7倍高いEC50値を示した。それに対し、抗体NI-301.37F1 50%は、より低い効力(活性の低下)を有する抗体を再現し、参照サンプルNI-301.37F1 RS(100%)より2倍高いEC50値を示したが;実施例6を参照されたい。したがって、効力の増加を示す標的抗原結合分子(例えば、抗体)は、例えば、本明細書に記載のADCPアッセイにおける判定として、例えば、参照サンプルに対して、少なくとも1%、例えば、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、又はそれ以上(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上)のより低いEC50値を有すると判定されているものである。或いは、効力の低下を示す標的抗原結合分子(例えば、抗体)は、例えば、本明細書に記載のADCPアッセイにおける判定として、例えば、参照サンプルに対して、少なくとも1%、例えば、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、又はそれ以上(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上)のより高いEC50値を有すると判定されているものである。しかし、GLP及びGMPに従い、効力測定について許容される変動性(即ち、不正確性)は、試験された標的抗原結合分子についての好ましい限界である+/-20%である。
【0046】
上述のとおり、薬剤の効力を測定することは、疾患治療のための新たな治療薬の評価を含む、開発における重要なステップである。本発明と関連して、こうした方法は、標的タンパク質に関連する疾患、特に、全身性及び限局性アミロイドーシスなどのタンパク質凝集障害の治療のため、Fcドメインのエフェクター機能を利用する、抗体ベースの薬剤及び他の標的抗原結合分子の開発、評価及びバッチリリースに使用される。
【0047】
タンパク質の生理学的機能は、その正確な三次元立体構造に高度に依存している。新規に合成された、又は既存のタンパク質の適切なフォールディング、並びにリフォールディングに関与する経路(分子シャペロン)又はミスフォールドタンパク質の分解に関与する経路(ユビキチン・プロテアソーム系及びオートファジー系)における障害は、細胞内及び/又は細胞外タンパク質凝集を引き起こすことがある。ミスフォールドタンパク質のこれらの沈殿物は、高濃度の洗剤又は変性緩衝液の存在下に限って解離する、規則正しい(例えば、アミロイド線維)タンパク質凝集体又は無秩序な(例えば、封入体)タンパク質凝集体のいずれかを形成する(Schroeder,Acta Neuropathol 125(2013),1-2)。
【0048】
アミロイド疾患は、ミスフォールド及び/又はミスアセンブルしたタンパク質からなる交差βシートアミロイド線維の沈着によって特徴づけられる。これら障害の病理学的特徴であるアミロイド線維は、全身性に沈着されるか又は特定の臓器に限局されるのいずれかであり得る。アミロイドーシスの発現は、加齢に関連づけられることが多く、患者及び彼らの家族の両者にとって生活の質の低下及び相当な苦しみを伴う。アルツハイマー病は、限局性の脳アミロイドーシスの例であり、2型糖尿病は、限局性の脳外アミロイドーシス(extracerebral amyloidosis)の例であり;両疾患は、加齢に関連する。加齢に関連づけられることも多い、アミロイド疾患の全身性形態は、大して一般的でなく、TTRアミロイドーシスを含む。アミロイドーシスの起源は、孤発性(即ち、正常なタンパク質配列から)、又は遺伝性(家族性)(即ち、1つ以上の点突然変異を宿すタンパク質から)のいずれかである。さらに、アミロイドーシスの感染性形態、例えば、プリオンタンパク質の凝集に起因する伝達性海綿状脳症が存在する(Ankarcrona et al.,J Intern Med.280(2016),177-202)。
【0049】
本発明は、抗体及び抗体ベースの薬剤の効力を、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)などのFcドメイン/受容体媒介性エフェクター機能を活性化するそれらの能力の観点で判定するための信頼できる方法を提供し、ここで抗体は、好ましくは、病理学的タンパク質凝集体上のエピトープ又は環状ペプチドのエピトープであって、好ましくは、通常は病理学的タンパク質凝集体に曝露されているエピトープを標的にする。
【0050】
しかし、前記のとおり、原則として、本発明の方法は、あらゆる種類の標的抗原、特にその病原性変異体においてネオエピトープを形成する任意のタンパク質、及びそのようなネオエピトープを含む、好ましくは環状形態の任意のタンパク質断片又はペプチドにそれぞれ適用可能であり;上記を参照されたい。
【0051】
したがって、その最も広範な態様では、本発明は、Fcドメインを含む標的抗原結合分子の効力を測定するための方法であって、
(a)標的抗原を結合分子と、結合分子-標的抗原複合体の形成を可能にする条件下で接触させるステップと;
(b)結合分子-標的抗原複合体を、Fc受容体を発現し、且つFc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿すように改変されているエフェクター細胞の集団と、細胞内シグナル伝達もたらし、且つ定量化可能なレポーター遺伝子活性を媒介する、Fc受容体へのFcドメインの結合を可能にする条件下で接触させるステップと;
(c)レポーター遺伝子活性によって誘導されるシグナルを検出するステップと、
を含み、ここで結合分子のFcドメインの少なくとも1つの作用機構は、FcドメインのFc受容体への結合を通じて媒介され、且つレポーター遺伝子活性は、結合分子の効力を示唆する、方法に関する。
【0052】
上述のとおり、本発明の方法は、任意の標的抗原、特に、その病原性変異体におけるネオエピトープ、例えば、ミスフォールド変異体に限って曝露されるエピトープ、凝集体、原線維及び/若しくはオリゴマー上の配座エピトープ、細胞内に位置するそれ以外の生理学的タンパク質の細胞外変異体上のエピトープ、又は真菌、細菌、及びウイルスなどの外因性病原体に特異的なエピトープを形成する任意のタンパク質に適用可能である。さらに、本発明の方法は、原則として、凝集体、原線維、オリゴマー、(ミスフォールド)単量体、並びに試験対象の標的抗原結合分子のエピトープを含有及び提示するタンパク質断片及びペプチドを含む、あらゆる種類の抗原を用いて実施することができる。したがって、本発明の方法に従い、標的抗原は、好ましくは、タンパク質、より好ましくは、細胞外タンパク質、さらにより好ましくは、タンパク質凝集体及び原線維のそれぞれ、又は(ミスフォールド)オリゴマー、プロトフィブリル、若しくは(ミスフォールド)単量体、さらにより好ましくは、アミロイド原性タンパク質、好ましくは、全身性アミロイドーシスにおけるアミロイド原性タンパク質、及び最も好ましくは、TTR及びその凝集体である。上述のとおり、タンパク質は、標的抗原結合分子の(ネオ)エピトープを含有する、対応する断片及びペプチドも含む。したがって、本発明の方法の別の好ましい実施形態では、標的抗原は、標的抗原結合分子によって認識されるエピトープを含むタンパク質断片又はペプチドである。換言すれば、本発明の方法に従って使用される標的抗原は、タンパク質に由来する、より好ましくは、細胞外タンパク質に由来する、さらにより好ましくは、凝集体及び原線維をそれぞれ形成する能力があるタンパク質に由来する、又は(ミスフォールド)オリゴマー、プロトフィブリル、若しくは(ミスフォールド)単量体に由来する、さらにより好ましくは、アミロイド原性タンパク質、好ましくは、全身性アミロイドーシスにおけるアミロイド原性タンパク質に由来する、及び最も好ましくは、TTR及びその凝集体に由来するタンパク質断片又はペプチドであり、ここでタンパク質断片又はペプチドは、標的抗原結合分子によって認識されるようなタンパク質のエピトープを含む。
【0053】
本発明の方法の一実施形態では、標的抗原は、標的抗原結合分子の(ネオ)エピトープを含有するタンパク質断片又はペプチドを含むか又はそれからなる。実施例6と
図11及び12に例示されるとおり、本発明の効力アッセイ、即ちここでのADCPアッセイは、ここでの抗TTR抗体の、標的抗原結合分子の(ネオ)エピトープを含有するペプチドを含む環状化合物を使用することによって実質的に改善され得る。したがって、本発明の方法の好ましい実施形態では、タンパク質断片又はペプチドはそれぞれ、環化され、環状化合物を形成するが;上記も参照されたい。環状化合物は、前の先行するセクション「発明の概要」及び本質的に環状化合物に言及しているさらに後のセクションに記載されるとおりに特徴づけられる。
【0054】
本明細書に提供され、本発明に従って使用される環状化合物は、標的抗原結合分子によって認識されるエピトープから構成される、又は標的抗原結合分子によって認識されるエピトープを含むタンパク質断片又はペプチドを含むか又はそれからなるのいずれかであり得て、それは、例えば、さらに後述されるペプチド又はタンパク質断片の環化に使用される追加的なアミノ酸又は他の化学的実体が、環状化合物を形成するタンパク質断片又はペプチド中に存在し得ることを意味する。
【0055】
追加的なアミノ酸は、エピトープ配列に隣接して天然に位置するアミノ酸、即ち、エピトープ配列にフランキングしており、且つタンパク質断片又はペプチドが由来するタンパク質配列中に存在するアミノ酸であり得て、即ち、環状化合物を形成するタンパク質断片又はペプチドは、標的抗原結合分子のエピトープ、及びエピトープに隣接しており、且つエピトープにフランキングしているさらなるアミノ酸をそれぞれ含む。それらの隣接/フランキングアミノ酸の数は、変動する可能性があり、例えば、1、2、若しくは3アミノ酸~50アミノ酸、好ましくは1、2、若しくは3アミノ酸~40アミノ酸、より好ましくは1、2、若しくは3~30アミノ酸、より好ましくは1、2、若しくは3~20アミノ酸、より好ましくは10~20アミノ酸であり得て、ここでアミノ酸は、エピトープ配列のN末端側及びC末端側に均等又は不均等のいずれかで、例えば、追加的な7アミノ酸がエピトープのN末端側、また9アミノ酸がC末端側に分布している。
【0056】
追加的に、又は代替的に、タンパク質断片又はペプチドは、一実施形態では、リンカーを含む、即ち、タンパク質断片又はペプチドは、隣接アミノ酸を全く伴わない、標的抗原結合分子によって認識されるエピトープ、及びリンカーを含み得るか、又は上で定義されるようなエピトープ及び隣接アミノ酸、並びにリンカーを含み得る。好ましい実施形態では、本発明に従って使用される、環状化合物を形成するタンパク質断片又はペプチドは、標的抗原結合分子によって認識されるエピトープ及びエピトープに隣接しているアミノ酸、並びにリンカーを含む。好ましくは、リンカーは、タンパク質断片又はペプチドのN末端残基、及びタンパク質断片又はペプチドのC末端残基に、直接的又は間接的に共有結合的にカップリングされる。
【0057】
ペプチドの環化のための方法は、一般に当該技術分野で公知である。例えば、環化は、特に化学的スキャフォールドを用いる化学架橋によって実施することができる。架橋は、官能基を必要とし、ごくわずかなタンパク質化学的標的は、架橋技術の大多数を占め、例えば、第一級アミン(-NH2)では、この基は各ポリペプチド鎖のN末端に、そしてリジン残基の側鎖に存在し;カルボキシル(-COOH)では、この基は各ポリペプチド鎖のC末端に、そしてアスパラギン酸及びグルタミン酸の側鎖に存在し;スルフヒドリル(-SH)では、この基はシステインの側鎖に存在する。
【0058】
スキャフォールドベースの環化は、それが化学的又は生物学的に合成されたペプチドに適用可能であることから、最も頻繁に使用される方法の1つである。一般に、有機ハロゲン化物(最も多くは有機臭化物(organobromide))などのスキャフォールド化合物は、システインの水硫基と選択的に反応する。また、非水硫基、例えば、リジンの第一級アミン又はペプチド中のN末端アミノ基は、例えば、N-ヒドロキシサクシンイミド(NHS)を含有する化学物質による環化に使用することができる。また、特別に設計された非天然アミノ酸は、生体直交反応を介するペプチド中の環化に使用することができる。例えば、アジドホモアラニン又はアジドフェニルアラニンなどのアジド含有アミノ酸がペプチド中に存在する場合、アルキンを有するスキャフォールドによる銅媒介性クリック反応が環化を引き起こし得る。
【0059】
さらに、システインをそれらの側鎖間でジスルフィド結合(-S-S-)を介して一緒に連結することができる、又はアミド環化をスキャフォールド(ヘッドトゥーテール、又は骨格環化)を全く伴わずに実施することができる。
【0060】
例えば、N末端及びC末端に「C」残基を有するペプチド、例えば、実施例5~8において使用される環状TTR化合物GCGGGRKAADDTWEPFASGKTSESGEGGGCG(配列番号17)を、S-S-環化によって反応させ、環状ペプチドを生成することができる。環状化合物は、TTRペプチドを含むペプチドのN末端若しくはC末端で若しくはその近傍で共有結合されているリンカーを伴う線状分子、又は環化に先立ち本明細書で言及されており、本発明の対象でもある前駆体として提供される関連エピトープとして合成することができる。或いは、環化前、リンカーの一部は、N末端で若しくはその近傍で共有結合されており、一部は、C末端で若しくはその近傍で共有結合されている。いずれの場合でも、線状化合物は、例えば、S-S結合環化によって環化される。したがって、化合物は、1)ペプチド結合を形成する(例えば、骨格を環化する)ためのペプチド+リンカーのN末端及びC末端若しくはその近傍、2)ペプチド+リンカーにおける側鎖を有するN末端若しくはC末端若しくはその近傍、又は3)ペプチド+リンカーにおける2つの側鎖で、共有結合によって環化され得る。これに関連して、「近傍」は、N末端又はC末端の1、2、又は3アミノ酸残基以内であることと定義される。好ましくは、リンカーは、N末端又はC末端にカップリングされる。
【0061】
上述のとおり、ペプチドは、N末端若しくはC末端で若しくはその近傍で、又は例えばシステイン及びホモシステインを含むペプチドの内側でのチオール又はメルカプタン含有残基の酸化によって環化され得る。例えば、ペプチドにフランキングする2つのシステイン残基は、酸化されて、ジスルフィド結合を形成し得る。使用可能な酸化試薬としては、例えば、酸素(空気)、ジメチルスルホキシド、酸化グルタチオン、シスチン、塩化銅(II)、フェリシアン化カリウム、タリウム(III)トリフルオロ(trifluro)酢酸塩、又は例えば、当業者に公知であり得て、そして当業者に公知であるような方法で使用され得る他の酸化試薬が挙げられる。架橋剤も当該技術分野で公知であり、例えば、架橋のために使用されるべき官能基に基づいて選択することができ、例えば、Thermo Fisher Scientificによって提供されている架橋剤選択ツールを参照されたい。
【0062】
したがって、一実施形態では、リンカーは、官能化可能な部分、例えば、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、若しくはシステインなどの上記官能基の1つを有するアミノ酸、アジドホモアラニン若しくはアジドフェニルアラニンなどの非天然に存在するアミノ酸、又はポリエチレングリコール(PEG)などの等しく官能化する分子を含む。
【0063】
官能化可能な部分が、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、又はシステインなどの天然に存在するアミノ酸である場合、官能化可能な部分は、必ずしもリンカー中に存在する必要はなく、環状ペプチドを形成するタンパク質断片又はペプチド中に存在するエピトープ中又は隣接アミノ酸内部にも存在し得る。したがって、ペプチド及びタンパク質断片それぞれの環化は、リンカーを用いずに実施することもできる。したがって、一実施形態では、タンパク質断片又はペプチドは、リンカーを用いずに本発明に従って使用される場合に環状化合物を形成する。結合は、システイン残基のスルフヒドリル部分、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸残基のカルボン酸部分、セリン若しくはトレオニン残基のヒドロキシル、又はリジン若しくはアルギニン残基のアミンなどの1つ以上のアミノ酸の側鎖を介して生じ得る。
【0064】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの官能化可能な部分は、リンカー中に存在する、即ち、リンカーは、1つ以上の官能化可能な部分を含む。リンカーは、非天然アミノ酸を含む任意のアミノ酸を含み得るか又はそれから構成され得るが、好ましくは、上述の官能化可能な部分、即ち、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、若しくはシステイン、アジドホモアラニン若しくはアジドフェニルアラニンなどの非天然に存在するアミノ酸、又はポリエチレングリコール(PEG)などの等しく官能化する分子、の少なくともいずれか1つを含む。好ましい実施形態では、リンカーは、官能化可能な部分として、システインを含む。
【0065】
したがって、好ましい実施形態では、任意の長さ及び配列のリンカーは、以下の配列-nX-1FX1-Xn(ここで、Fは、任意の官能化可能な部分、好ましくはC(システイン)であり、Xは、非天然アミノ酸を含む任意のアミノ酸である)で記述することができる。さらなる好ましい実施形態では、リンカーアミノ酸は、アラニン(A)、若しくはグリシン(G)、若しくはセリン(S)から、又はアラニン(A)及びグリシン(G)から、又はグリシン(G)及びセリン(S)から選択されるが、好ましくはグリシン(G)である。
【0066】
さらにより好ましくは、リンカーアミノ酸は、アラニン(A)、若しくはグリシン(G)、若しくはセリン(S)から、又はアラニン(A)及びグリシン(G)から、又はグリシン(G)及びセリン(S)からから選択されるが、好ましくはグリシン(G)であり、官能化可能な部分は、システイン(C)である。したがって、好ましくは、環化は、システインの水硫基と選択的に反応する、有機ハロゲン化物、好ましくは有機臭化物などのスキャフォールド化合物によって、又はジスルフィド架橋を介して実施される。最も好ましくは、環化は、ジスルフィド架橋を介して実施される。
【0067】
好ましい実施形態では、リンカーは、1~40アミノ酸、好ましくは1~35アミノ酸、より好ましくは1~30アミノ酸、より好ましくは1~25アミノ酸、より好ましくは1~20アミノ酸、より好ましくは1~10アミノ酸、より好ましくは1~9アミノ酸、及び最も好ましくは1~8アミノ、特に、1、2、3、4、5、6、7、又は8アミノ酸及び/若しくは同等に機能する分子、及び/又はその組み合わせを含み、ここでリンカーがアミノ酸のみを含む場合、好ましくは、アミノ酸の中に、上記官能基のいずれか、好ましくはシステインを有する少なくとも1つのアミノ酸が存在する。リンカー中に含まれる他のアミノ酸は、非天然アミノ酸を含む任意の既知のアミノ酸から選択することができるが、好ましくはアラニン(A)及び/又はグリシン(G)、好ましくはグリシン(G)である。
【0068】
上述のとおり、リンカーの長さは、変動する可能性があり、例えば、9アミノ酸、例えば、GGGGCGGGG(配列番号148)、又は8アミノ酸、例えば、GGGCGGGG(配列番号149)、GGCGGGGG(配列番号150)若しくはGCGGGGGG(配列番号151)、又は7アミノ酸、例えば、GGGGCGG(配列番号152)、GGGCGGG(配列番号153)、GGCGGGG(配列番号154)若しくはGCGGGGG(配列番号155)、6アミノ酸、例えば、GGGCGG(配列番号156)、GGCGGG(配列番号157)若しくはGCGGGG(配列番号158)、5アミノ酸、例えば、GCGGG(配列番号15)若しくはGGGCG(配列番号16)、4アミノ酸、例えば、GCGG(配列番号159)若しくはGGCG(配列番号160)、又は3アミノ酸、例えば、GCGであり得る。
【0069】
最も好ましくは、環状化合物におけるリンカーは、GCGGG(配列番号15)又はGGGCG(配列番号16)を含むか又はそれからなる。
【0070】
本発明の方法の第1のステップでは、標的抗原が準備され、結合分子と、結合分子-標的抗原複合体の形成を可能にする条件下で接触される。結合分子の標的抗原への結合が生じる限り、異なるインキュベーション時間を選択することができる。したがって、インキュベーション条件は、変動する可能性があり、最適な条件が試験され得る。例えば、結合分子のその対応する抗原への結合を可能にするインキュベーション条件であれば、当該技術分野で公知の方法によって、例えば、ELISA又はBLIを介して試験することができる。好ましくは、インキュベーション時間は、30分であり、好ましくは37℃で実施される。
【0071】
標的抗原の結合分子との接触は、溶液中で、又は標的抗原を、結合分子が加えられる固体支持体、例えばマイクロプレートに固定化することによって実施することができる。
【0072】
本発明の方法の一実施形態では、標的抗原、例えば、タンパク質凝集体、オリゴマー、プロトフィブリル、原線維、ミスフォールド単量体、又は代替的に、対象抗体及び抗体ベースの薬剤の(ネオ)エピトープを提示するタンパク質断片若しくはペプチド、好ましくは本発明の環状化合物が、溶液中の結合分子と接触される。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、標的抗原、例えば、タンパク質凝集体、オリゴマー、プロトフィブリル、原線維、ミスフォールド単量体、又は代替的に、対象抗体及び抗体ベースの薬剤の(ネオ)エピトープを提示するタンパク質断片若しくはペプチドは、好ましくは環状化合物の形態で、固体支持体上、好ましくはマイクロタイタープレート上に固定化される。これに関連して、標的抗原が、例えば、固体支持体上に標的抗原を固定化することを目的に、例えば、そのC末端若しくはN末端で又はその近傍で修飾され得ることは理解される。追加的に、又は代替的に、標的抗原を安定化するため、例えば、結合にとって決定的でない、酸化又はそうでなければ分解を阻止するため、修飾を設けることができる。
【0074】
標的抗原は、当該技術分野で公知の一般的手段によって、固体支持体上に固定化し、例えば、ビオチン-ストレプトアビジン系などの異種官能基の必要性を伴わず、疎水性相互作用によって直接的にコーティングすることができる。しかし、ビオチン-ストレプトアビジン系は、固定化のために使用することもできる。
【0075】
結合分子の標的抗原とのインキュベーション後、Fc受容体を発現し、Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿す、改変されたエフェクター細胞の集団が添加される。結合分子-標的抗原複合体は、エフェクター細胞と、標的抗原結合分子のFcドメインの、エフェクター細胞のFc受容体への結合を可能にする条件下で接触される。上述のとおり、異なるインキュベーション時間は、標的抗原に結合されている結合分子のエフェクター細胞への結合が保証される限りにおいて、選択することができる。好ましい実施形態では、エフェクター細胞及び結合分子-標的抗原複合体は、37℃で約6時間インキュベートされる。
【0076】
或いは、全ての成分、即ち、標的抗原、結合分子及びエフェクター細胞は、同時に添加することができ、共培養は、結合分子の標的抗原へ、そしてエフェクター細胞の表面上のFc受容体への結合をもたらす。
【0077】
結合分子のFc受容体への結合は、適切な基質が添加されるとき、定量化可能なシグナルをもたらすレポーター遺伝子の発現を媒介する細胞内シグナル伝達をもたらす。レポーター遺伝子活性は、結合分子の効力を示唆し、それは、強力なシグナルをもたらす高いレポーター遺伝子活性が結合分子の高い効力を示唆し、弱いシグナルをもたらす低いレポーター遺伝子活性が結合分子の低い効力を示唆することを意味する。
【0078】
したがって、Fc受容体を発現する細胞の動員に対するその作用機構に依存している抗体ベースの製剤がFc受容体に結合する能力と、製剤のそれを必要とする患者に投与されるときの治療効果との間に強い相関が認められる。
【0079】
製剤の効力は、特定のアッセイにおける活性の、治療効果が評価されている可能性がある製剤の参照標準の活性に対する尺度である。特にFc受容体に結合することによって作用する、抗体などの結合分子の場合、本発明に従う方法は、結合分子のFc受容体への結合が結合分子の作用機構の直接的指標であることから、製剤の効力の判定における使用に適する。
【0080】
原則として、任意のレポーター遺伝子は、検出可能なシグナルを与える限り、使用可能である。例えば、発色基質、蛍光発生基質、又は化学発光基質の転換を触媒することが可能な任意のレポーター遺伝子が使用可能である。そのような酵素は、当業者にとって公知であり、例えば、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、及びルシフェラーゼ酵素を含む。本発明の好ましい実施形態では、生物発光タンパク質、好ましくはルシフェラーゼをコードする遺伝子が使用される。
【0081】
結合分子のFcドメインの、エフェクター細胞のFc受容体への結合は、少なくとも1つのエフェクター機能、即ち、補体依存性細胞傷害性(CDC)、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)などのFcドメインの1つの作用機構(MoA)を媒介する。
【0082】
本発明の一実施形態では、MoAは、ADCPである。それは、抗体がそのFcドメインを食細胞上の特定の受容体に接続し、食作用を誘発することを介して標的を除去する、高度に調節されたプロセスと定義される。本発明と関連して、ADCPは、食細胞のFc受容体が、結合分子、例えば、目的のタンパク質のエピトープを含む凝集タンパク質又は環状化合物などの標的抗原に結合されている抗体に結合し、食細胞を刺激し、タンパク質及び環状化合物をそれぞれ内部移行させる機構を指す。しかし、本発明のアッセイの場合、ADCPを誘導するシグナルが誘発され、レポーター遺伝子発現を引き起こすことで十分である。
【0083】
本発明の方法において使用されるレポーター遺伝子は、Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下にある。刺激に応答した遺伝子転写及び翻訳の制御は、細胞増殖、分化、生存及び免疫応答などの生物学的応答の大半を誘発するために必要とされる。応答エレメントと呼ばれる、DNAのこれらの非コード領域は、遺伝子転写の効率、ひいては刺激に応答して細胞によって生成されるタンパク質の量及びタイプを調節する転写因子の認識エレメントである特定の配列を含有する。レポーターアッセイでは、刺激に応答性である応答エレメントを改変することで、レポーター遺伝子の発現が標準の分子生物学的方法を用いて駆動される。次に、DNAは、刺激に対して特異的に応答する全ての機構を含む細胞にトランスフェクト又は形質導入され、レポーター遺伝子の転写、翻訳、又は活性のレベルは、生物学的応答の代替尺度として測定される。
【0084】
一実施形態では、本発明の方法において使用される応答エレメントは、NFAT(活性化T細胞核内因子)応答エレメント、AP-1(Fos/Jun)応答エレメント、NF AT/API応答エレメント、NFKB応答エレメント、FOXO応答エレメント、STAT3応答エレメント、STAT5応答エレメント又はIRF応答エレメントを含む。いくつかの実施形態では、Fc受容体活性化応答エレメントは、縦列反復(概ね2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上の縦列反復のいずれかなど)として配列される。Fc受容体活性化応答エレメントは、レポーターコード配列の5’側又は3’側に配置され得る。
【0085】
好ましくは、本発明のアッセイでは、食作用中に天然に生じる場合と同じADCPシグナル伝達経路が使用される。特に、マクロファージと同様、標的抗原に結合されている結合分子がFc受容体に結合するとき、ADCPと同じシグナル伝達が活性化され、それは、本発明のアッセイが、マクロファージを介するFc受容体媒介性食作用のためのインビボでの分子経路を反映することを意味する。したがって、本発明の好ましい実施形態では、レポーター遺伝子は、活性化T細胞核内因子(NFAT)転写因子の制御下にある。
【0086】
エフェクター細胞は、Fc受容体を発現する。Fc受容体は、免疫グロブリンの定常領域内の特定のアミノ酸に特異的な受容体のファミリーに属する。個別の細胞上でのそれらの発現は、受容体のタイプに依存する。ほぼ全ての免疫グロブリンクラスの受容体については、記載がなされている。それらは、(IgGクラスの)FcγR、(IgAクラスの)FcαR及び(IgEクラスの)FcεRと称される。したがって、本発明の一実施形態では、FcRは、FcγR、FcαR、又はFcεRファミリーメンバーである。好ましくは、本発明において使用されるエフェクター細胞は、FcγRを発現する。
【0087】
複数のFcγRは、IgGに結合するそれらの親和性及びIgGアイソタイプに結合する相対的親和性が異なることが特定されている。本発明において使用されるFc受容体は、全長Fc受容体又はその断片であってもよく、ここで断片は、Fcドメイン、例えば細胞外ドメインに結合する能力を保持する。また、本発明において使用されるFc受容体は、任意のアロタイプの野生型Fc受容体又はその突然変異体であってもよく、その機能は、Fc受容体の機能と相関し、それに対し、FcR結合分子はインビボで結合する。本発明において使用されるFc受容体はまた、天然に存在するFc受容体(又はその断片若しくは誘導体)でないペプチドであってもよく、ここでペプチドは、抗体のFc部分のFcR結合領域に結合する能力があり、FcR結合分子のFc結合ペプチドへの結合は、Fc受容体の機能と相関し、それに対し、FcR結合分子はインビボで結合する。
【0088】
任意のFc受容体は、ADCPを媒介するのに好適であるように選択することができ、例えば、FcγRIIa(CD32a)、FcγRI(CD64)、及びFcγRIIIa(CD16a)が挙げられる。好ましい実施形態では、Fc受容体は、FcγR、より好ましくはFcγRIである。任意選択的に、エフェクター細胞は、FcγRIIa(CD32a)及び/又はFcγRIIIa(CD16a)を発現又は過剰発現しない。
【0089】
一実施形態では、エフェクター細胞は、Fc受容体を内因性に発現する、即ち、細胞は、Fc受容体をコードする内因性配列を含み、ここで細胞は、例えば、マクロファージ、マスト細胞、単球、好中球又は樹状細胞である。
【0090】
別の好ましい実施形態では、エフェクター細胞は、Fc受容体を発現するように修飾されており、即ち、細胞は、Fc受容体をコードする異種配列を含むように改変される。原則として、Fc受容体を発現するのに好適である、任意の細胞が使用可能である。例えば、細胞は、8V-2、THP-1、CHO、293-T、3T3、4Tl、721、9L、A2780、A172、A20、A253、A431、A-549、ALC、816、835、8CP-1、8EAS-28、bEnd.3、8HK-21、8R293、8xPC3、C3H-10Tl/2、C6、Cal-27、COR-L23、COS-7、CML Tl、CMT、CT26、017、OH82、OU145、OuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、FM3、H1299、H69、H854、H855、HCA2、HEK-293、Hela、Hepalele7、HL-60、HMEC、HT-29、HUVEC、Jurkat、J558L、JY、K562、Ku812、KCL22、KGl、KYOl、MCF-7、R8L、Saos-2、SK8R3、SKOV-3、T2、T-470、T84、U373、U937、Vero、及びJ774からなる群から選択される細胞であり得る。好ましい実施形態では、細胞は、Jurkat細胞である。
【0091】
本発明の方法では、Fcドメインを含む標的抗原結合分子の効力が判定される。こうした分子は、その病原性変異体においてネオエピトープを形成する任意のタンパク質に結合するが;上記を参照されたい。
【0092】
効力が本発明の方法によって評価される分子は、標的抗原に結合することが可能な任意の分子であり得る。一実施形態では、こうした分子は、Fcドメインを含む。好ましくは、標的抗原結合分子は、Fcドメインを含む、抗体又はその任意の断片、誘導体若しくは模倣物である。標的抗原は、それが機能性を維持する限りにおいて、全長Fcドメイン又はFcドメインのFcR結合断片を含む。
【0093】
本明細書で使用する場合、「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続されている少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、CLの1つのドメインを含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存されている領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域にさらに細分化することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて配列されている3つのCDR及び4つのFRを以下の順序で含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、標的抗原、例えば標的タンパク質と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。「抗体」という用語はまた、例えばIgG抗体の全結合ドメインを含まなくても、やはり標的抗原に結合する抗体フォーマットを含む。こうした抗体断片は、例えば、単一可変ドメイン抗体、例えば、Fcドメインに連結されているナノボディ、特に、従来の抗体のサイズの約半分であるナノボディ及びFcドメインの有利な特徴を組み合わせているキメラナノボディ-重鎖抗体を含む(例えば、Bannas et al.,Front.Immunol.(2017),DOI:10.3389/fimmu.2017.01603を参照されたい)。一般に、「抗体」という用語は、Fcドメインを含む任意の抗体断片を包含する。
【0094】
抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってもよい。「モノクローナル抗体」は、単一分子組成物の、及び/又は実質的に均質の抗体の集団から得られる抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。「ポリクローナル抗体」は、いくつかの異なるBリンパ球によって産生される抗体の不均一なプールを指す。プール中の異なる抗体は、異なるエピトープを認識し、それに特異的に結合する。「エピトープ」は、それ自体により、又はより大きい配列の一部として、配列に応答して産生されている抗体に結合するポリペプチド配列を指す。標的タンパク質、例えば、TTRは、線状の、不連続エピトープ、及び/又は配座エピトープを含有してもよい。
【0095】
抗体は、ヒト化抗体であり得る。「ヒト化抗体」は、ヒトフレームワークに関連する親抗体からのタンパク質結合CDRのみを保持する抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来又はヒト対象由来の可変及び定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異原性又はインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含み得る。「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列上に移植されている場合の抗体(本明細書中で「ヒト化抗体」と称される)を含まない。ヒト抗体は、例えば、国際公開第2008/081008A1号パンフレットに記載のように得ることができる。多様な標的に対するヒト抗体のための顕著な供給源となっているヒト化マウスは、免疫及びメモリーB細胞応答を誘発しないか又はわずかにしか誘発しない。いくつかのトランスジェニック動物プラットフォームとして、例えば、米国のLigand製のOmniAb(登録商標)、米国のAlloy ATX-GKTMマウス及び中国のCAMAB製のCAMouseTMが利用可能である。例えば、重鎖及びカッパ鎖の全ヒト可変領域セグメントを有するRenMab(商標)マウスが最近開発された。モノクローナル抗体のヒト化、ファージディスプレイ、ヒト抗体マウス、単一B細胞抗体技術、及び親和性成熟など、治療抗体薬の開発において使用される最有力な抗体改変技術のレビューとしては、例えば、Lu et al.,J.Biomed.Sci.27(2020),doi.org/10.1186/s12929-019-0592-z、及びその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0096】
抗体は、キメラ抗体、例えば、マウス-ヒト、マウス化、二重特異性若しくは多重特異性抗体又はIgGであり得る。
【0097】
抗体は、組換え抗体であり得る。「組換え抗体」は、一般に組換え手段によって調製、発現、作出、及び/又は単離されている抗体を指す。現行の抗体産生システムに関するレビューは、Frenzel et al.,Front Immunol.4(2013),217,DOI:10.3389/fimmu.2013.00217に示されており、哺乳動物細胞におけるヒト抗体の一過性発現は、Vazquez-Lombardi et al.,Nature protocols 13(2018),99-117;及びHunter et al.,Current Protocols in Protein Science 95(2019),e77.DOI:10.1002/cpps.77によって記載されている。抗体は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラスを指す特定のアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、又はIgMであり得る。各アイソタイプは、固有のアミノ酸配列を有し、互いに区別されるアイソタイプ・エピトープの固有セットを保有する。しかし、好ましくは、IgG、特にIgG1、λ抗体又はIgG1、κ抗体などのIgG1抗体の効力は、本発明の方法によって評価される。
【0098】
上記のとおり、本明細書中の抗体という用語は、特に指定されない限り、又は文脈上明らかに矛盾のない限り、抗原に又はFc受容体に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片、誘導体、変異体(欠失変異体を含む)、及び抗体模倣物を含む。
【0099】
Fcドメインに融合されているさらなる分子、例えば抗体模倣物は、本発明の方法によって分析することができ、例えば、Fcドメインと融合されている設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)を含む。さらに含まれるのは、例えば、CDRが移植されており、且つ/又はループ領域がFcのCH3ドメインのC末端に組み込まれ、新たな抗原結合部位を形成するように改変されている、改変されたFcに基づく抗体ドメイン及び断片、例えば、二量体Fc、mFc、CH2及びmCH3スキャフォールド(Ying et al.,Biochim Biophys Acta.1844(2014),1977-1982,DOI:10.1016/j.bbapap.2014.04.018 Wozniak-Knopp et al.Protein Eng Des Sel.23(2010),289-297,DOI:10.1093/protein/gzq005)、並びに別のペプチド、タンパク質、又はタンパク質ドメインに直接的に連結されている免疫グロブリン(Ig)Fcドメインから構成されるFc融合タンパク質である。治療目的として、CD4-Fc融合タンパク質の最初の記載によると、1989年のHIV-1感染中、合胞体の形成に対する阻害活性が示され、HIV-1感染の治療のための治療用Fc融合タンパク質の使用の概念実証が示された(Yang et al.Front Immunol 8(2018),1860,DOI:10.3389/fimmu.2017.01860。
【0100】
実施例3及び4から導くことができるように、アッセイは、標的抗原として、アミロイド原性タンパク質TTR及びその凝集体のそれぞれ、そして抗TTR抗体として、国際出願の国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されているNI-301.37F1によって例示されているが、原則として、本発明の方法は、任意の標的抗原、特に、その病原性変異体におけるネオエピトープ、例えば、ミスフォールド変異体に限って曝露されるエピトープ、凝集体、原線維及び/若しくはオリゴマー上の配座エピトープ、細胞内に位置するそれ以外の生理学的タンパク質の細胞外変異体上のエピトープ、又は真菌、細菌、及びウイルスなどの外因性病原体に特異的なエピトープを形成する任意のタンパク質の分析に用いることができる。
【0101】
そのようなタンパク質は、原則として、任意のタンパク質、好ましくは、凝集が疾患表現型を引き起こす任意のタンパク質であり得る。典型的に、タンパク質としては、限定はされないが、トランスサイレチン(TTR)が挙げられ、ここでTTRは、野生型又は突然変異TTR、好ましくは野生型TTR、α-シヌクレイン(α-syn)、タウ、プリオンタンパク質(PrP)、アミロイドベータ(Aβ)、β2-ミクログロブリン(β2-m)、免疫グロブリン軽鎖(LC)、免疫グロブリン重鎖(HC)、血清アミロイドA(SAA)、アミリン(IAPP)、染色体9オープンリーディングフレーム72(C9orf72)、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、肉腫で融合したRNA結合タンパク質(FUS)、ハンチンチン(htt)、オプチニューリン(OPTN)、ニューロセルピン、ABri、Adan、ユビキリン、オプチニューリン、白血球走化性因子2(LECT2)、ゲルゾリン、アポリポタンパク質AI(ApoAI)、アポリポタンパク質AII(ApoAII)、アポリポタンパク質AIV(ApoAIV)、アポリポタンパク質CII(ApoCII)、アポリポタンパク質CIII(ApoCIII)、フィブリノーゲン、シスタチンC、及びリゾチームである。さらに、アミロイド線維形成タンパク質は、アミロイド線維形成タンパク質の収集物を提供するオープンアクセスデータベースであるAmyProから得ることができ(Varadi et al.,Nucleic Acids Research 46(2018),D387-D392,DOI:10.1093/nar/gkx950)、且つ/又はBenson et al.,Amyloid 25(2018),215-219の表1に列記されるものであり得る。
【0102】
好ましい実施形態では、アミロイド原性タンパク質は、全身性アミロイドーシスに関与し、より好ましくは、以下のリストから選択される:トランスサイレチン(TTR)、特に野生型TTR及び変異体TTR、好ましくは野生型TTR、免疫グロブリン軽鎖(LC)、免疫グロブリン重鎖(LH)、血清アミロイドA(SAA)、白血球走化性因子2(LECT2)、ゲルゾリン、アポリポタンパク質AI(ApoAI)、アポリポタンパク質AII(ApoAII)、アポリポタンパク質AIV(ApoAIV)、アポリポタンパク質CII(ApoCII)、アポリポタンパク質CIII(ApoCIII)、フィブリノーゲン、β2ミクログロブリン、特に野生型及び変異体β2ミクログロブリン、シスタチンC、ABriPP、プリオンタンパク質、及びリゾチーム;例えば、Benson et al.,Amyloid 25(2018),215-219及びMuchtar et al.,Journal of Internal Medicine 289(2021),268-292を参照されたい。
【0103】
実施例6に例示されるとおり、アッセイは、TTRタンパク質の天然に折り畳まれた立体構造に隠れているが、アンフォールディング及び凝集後に、標的抗原及び標的抗原結合分子としての抗TTR抗体NI-301.37F1としての抗体結合に接近可能である、成熟TTRタンパク質の41~45位に位置するという意味でネオエピトープである、国際出願の国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されている抗体NI-301.37F1のエピトープWEPFAを含む環状ペプチド化合物を用いて巧みに実施されている。
【0104】
したがって、1つの好ましい実施形態では、標的抗原、即ち、好ましくは環状化合物の形態でのタンパク質断片又はペプチドは、好ましくは、凝集が疾患表現型を引き起こすような任意のタンパク質からの(ネオ)エピトープを含む。好ましくは、(ネオ)エピトープは、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質又はその凝集体に由来する。
【0105】
本発明の環状化合物の、効力アッセイにおいて使用されるタンパク質断片又はペプチドは、アミロイド原性タンパク質の少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも20、21、22、23、24、又は25アミノ酸残基を含む。より具体的に、当業者にとって公知であるとおり、存在が必要とされるわずか4アミノ酸から構成され得る、少なくとも標的抗原結合分子のエピトープは、環化にとって十分且つ必要である、適切な数のアミノ酸及び/又は他のリンカー部分が付加され得る。
【0106】
しかし、原則として、ペプチドの長さについては、それを環化することができ、それが標的結合分子によって認識される限り、制限はない。したがって、本発明の、本明細書で使用される環状化合物は、アミロイド原性タンパク質の4アミノ酸~全アミノ酸を含有する、タンパク質又はその断片若しくはペプチドを含んでもよい。好ましくは、環状化合物におけるタンパク質断片又はペプチドは、4アミノ酸~100アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~90アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~80アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~70アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~60アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~50アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~45アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~40アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~35アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~30アミノ酸、より好ましくは4アミノ酸~25アミノ酸、又は4アミノ酸~24アミノ酸、又は4アミノ酸~23アミノ酸、又は4アミノ酸~22アミノ酸、又は4アミノ酸~21アミノ酸、又は4アミノ酸~20アミノ酸、好ましくは5アミノ酸~25アミノ酸、又は5アミノ酸~24アミノ酸、又は5アミノ酸~23アミノ酸、又は5アミノ酸~22アミノ酸、又は5アミノ酸~21アミノ酸、又は5アミノ酸~20アミノ酸を含む。
【0107】
アミノ酸は、標的抗原結合分子によって認識されるエピトープのみ又はアミロイド原性タンパク質中に存在するエピトープ及び隣接アミノ酸のいずれかを表す。好ましい実施形態では、ペプチドのタンパク質断片は、アミロイド原性タンパク質のアミノ酸残基を含み、これらのアミノ酸残基は、エピトープ及び隣接アミノ酸を含む。
【0108】
実施例5及び6において使用される環状TTRペプチドは、全部で31アミノ酸を有するアミノ酸配列H-GCGGGRKAADDTWEPFASGKTSESGEGGGCG-OH(TTR34-54cyc;配列番号17)からなり、5アミノ酸エピトープWEPFA、及びTTRからの21アミノ酸ストレッチのN末端及びC末端に5アミノ酸ずつの10アミノ酸のリンカー配列を含む、アミロイド原性タンパク質TTRの21アミノ酸を含む。したがって、好ましい実施形態では、環状化合物は、全部で20~40アミノ酸、より好ましくは25~35アミノ酸、最も好ましくは30±1、2、3若しくは4アミノ酸から構成され、又は非アミノ酸残基が例えばリンカーとして組み込まれる場合、その構造が対応するペプチドに類似するように設計される。この実施形態では、環状化合物中に存在するアミロイド原性タンパク質に由来するアミノ酸配列は、10~40アミノ酸、好ましくは15~25アミノ酸、最も好ましくは20±1、2、3若しくは4アミノ酸、任意選択的にリンカーが付加されると、両方の末端、N末端及びC末端又は一方の末端のみのいずれかに分布される、好ましくは5~20アミノ酸の長さ、より好ましくは5~15アミノ酸、最も好ましくは10±1、2、3若しくは4アミノ酸から構成されてもよい。例えば、標的結合分子のエピトープが配座エピトープ又は不連続エピトープである場合、リンカー配列又は「充填」配列がアミロイド原性タンパク質に由来するアミノ酸配列内に位置すると考えることもできる。
【0109】
上述のとおり、方法は、一般に、任意の標的抗原に適用可能であるが、好ましくは、タンパク質断片又はペプチドは、アミロイド原性タンパク質に由来し、標的抗原結合分子の(ネオ)ピトープを含む。アミロイド原性タンパク質は、原則として、例えば、Benson et al.,Amyloid 25(2018),215-219の表1に列記されている、また上述されている、任意のアミロイド原性タンパク質であり得る。好ましい実施形態では、アミロイド原性タンパク質は、全身性アミロイドーシスに関与し、より好ましくは、以下のリスト:トランスサイレチン(TTR)、特に野生型TTR及び変異体TTR、免疫グロブリン軽鎖(LC)、免疫グロブリン重鎖(LH)、血清アミロイドA(SAA)、白血球走化性因子2(LECT2)、ゲルゾリン、アポリポタンパク質AI(ApoAI)、アポリポタンパク質AII(ApoAII)、アポリポタンパク質AIV(ApoAIV)、アポリポタンパク質CII(ApoCII)、アポリポタンパク質CIII(ApoCIII)、フィブリノーゲン、β2ミクログロブリン、特に野生型及び変異体β2ミクログロブリン、シスタチンC、ABriPP、プリオンタンパク質、及びリゾチームから選択され、それ故、標的抗原は、列記されたタンパク質のいずれか1つに由来するペプチドを含み、好ましくは、ペプチドは、タンパク質からの少なくとも4アミノ酸を含む。
【0110】
好ましい実施形態では、アミロイド原性タンパク質は、TTRであり、それ故、標的抗原は、TTRのタンパク質断片又はTTR由来のペプチドを含む。
【0111】
一般に、TTRのタンパク質断片又はペプチドは、TTRタンパク質に由来する任意の断片又はペプチドであり得る。好ましい実施形態では、本発明の方法に従って使用される環状化合物におけるTTR断片又はペプチドは、TTRタンパク質からの少なくとも4アミノ酸を含み、ここで4アミノ酸は、例えば、下の表1に列記されているもののいずれか1つであり得る。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
好ましい実施形態では、TTRペプチドは、少なくとも4アミノ酸残基、及び好ましくは、ミスフォールド変異体において、且つ凝集体、原線維及び/又はオリゴマーに対してそれぞれ曝露されているアミノ酸配列の全てのアミノ酸、例えば、国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されている抗体NI-301.37F1又は抗体NI-301.28B3によって認識されるペプチドであるWEPFA(配列番号1);例えば、国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されている抗体NI-301.59F1によって認識されるペプチドであるEEFXEGIY(配列番号2);例えば、国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されている抗体NI-301.35G11によって認識されるペプチドであるELXGLTXE(配列番号3)(ここで、Xは任意のアミノ酸であり得る);例えば、国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されている抗体NI-301.12D3によって認識されるペプチドであるWEPFASG(配列番号4);例えば、国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されている抗体NI-301.18C4によって認識されるペプチドであるTTAVVTNPKE(配列番号5);少なくとも第1の配列のC並びに第2の配列のV及びFを必要とする配座エピトープを含むペプチドを表し、且つ国際公開第2015/092077A1号パンフレットの抗体NI-301.44E4によって認識されるエピトープであるKCPLMVK及びVFRK(配列番号6及び7);例えば、特に、Higaki et al.,Amyloid 23(2016),86-97に開示されている抗体14G8/PRX004によって認識されるペプチドであるEHAEVVFTA(配列番号8);例えば、国際公開第2019/071205A1号パンフレットに記載されている抗体18C5によって認識されるペプチドであるGPRRYTIAA(配列番号9);例えば、TTR30-66に結合する、国際公開第2014/124334A2号パンフレットに記載されている抗体によって認識されるペプチドであるVHVFRKAADDTWEPFASGKTSESGELHGLTTEEEFVE(配列番号10);例えば、TTR109-121に結合する、国際公開第2014/124334A2号パンフレットに記載されている抗体によって認識されるペプチドであるALLSPYSYSTTAV(配列番号11);例えば、国際公開第2015/115332A1号パンフレットに記載されている抗体371Mによって認識されるペプチドであるWKALGISPFHE(配列番号12);例えば、国際公開第2015/115331A1号パンフレットに記載されている抗体313M(RT24)によって認識されるペプチドであるSYSTTAVVTN(配列番号13);又は例えば、TTR100-127に結合する、国際公開第2014/124334A2号パンフレットに記載されている抗体によって認識されるペプチドであるLLSPYSYSTTAVVTNPKE(配列番号14)を含む。
【0116】
最も好ましくは、本発明の方法に従うTTRペプチドは、アミノ酸配列WEPFA(配列番号1)を含む。
【0117】
上述のとおり、本発明の方法に従って使用される環状化合物は、好ましくは、アミロイド原性タンパク質のエピトープ、好ましくはTTRエピトープ、及び最も好ましくは、アミノ酸配列WEPFA(配列番号1)を含むエピトープを含むタンパク質断片又はペプチド、並びに隣接アミノ酸及びペプチドのN末端及びC末端にリンカーを含み、ここでリンカーは、原則として、上記のリンカー配列のいずれかを含み得て、好ましくは、アミノ酸配列GCGGG(配列番号15)又はGGGCG(配列番号16)を含む。したがって、本発明の方法の好ましい実施形態として、環状化合物は、実施例5及び6において好適な標的抗原として示されている、アミノ酸配列H-GCGGGRKAADDTWEPFASGKTSESGEGGGCG-OH(TTR34-54cyc;配列番号17)を含むか又はそれからなる。
【0118】
したがって、効力、特にADCPを誘導するその効力が本発明の方法によって測定される結合分子は、前記標的抗原、好ましくは、その病原性変異体において、疾患表現型及び対応するタンパク質断片又はそのペプチドを誘導する任意のタンパク質に結合する任意の結合分子であり得る。例示的に、抗体として、限定はされないが、抗TTR抗体、抗α-syn抗体、抗タウ抗体、抗PrP抗体、抗Aβ抗体、抗β2-m抗体、抗LC抗体、抗HC抗体、抗SAA抗体、抗IAPP抗体、抗C9orf72抗体、抗TDP-43抗体、抗SOD1抗体、抗FUS抗体、抗htt抗体、抗OPTN抗体、抗ニューロセルピン抗体、抗ABri抗体、抗ADan抗体、抗ユビキリン抗体、抗オプチニューリン抗体、抗LECT2抗体、抗ゲルゾリン抗体、抗ApoAI抗体、抗ApoAII抗体、抗ApoAVI抗体、抗ApoCII抗体、抗ApoCIII抗体、抗フィブリノーゲン抗体、抗シスタチンC抗体、抗ABriPP抗体、抗プリオン抗体、及び抗リゾチーム抗体が挙げられる。
【0119】
好ましい実施形態では、結合分子は、全身性アミロイドーシスに関与する標的に結合する結合分子であり、それ故、抗体は、好ましくは、抗TTR抗体、抗LC抗体、抗HC抗体、抗SAA抗体、抗LECT2抗体、抗ゲルゾリン抗体、抗ApoAI抗体、抗ApoAII抗体、抗ApoAVI抗体、抗ApoCII抗体、抗ApoCIII抗体、抗フィブリノーゲン抗体、抗β2ミクログロブリン抗体、抗シスタチンC抗体、抗ABriPP抗体、抗プリオン抗体、及び抗リゾチーム抗体からなる群から選択される。
【0120】
したがって、本発明のアッセイを用いて、任意の好適な結合分子の活性/効力を測定することができる。好適な抗体は、当該技術分野で公知であるが、以下に代表的(exemplarily)抗体が列記されている。
【0121】
抗TTR抗体は、本発明の方法によって分析されるべき好ましいものであり、国際公開第2015/092077A1号パンフレットに開示されているもの、特に、アミノ酸配列TTR41-45(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号51)を含むか又はそれからなるヒトTTRエピトープに結合することによって特徴づけられる抗体、特に、NI-301.37F1、NI-301.28B3、及びNI-301.12D3を含んでもよい。さらに、現在、ATTRを有する患者における第1相試験(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT03336580)中であるPRX004は、好適な抗体であり得る。抗体PRX004は、Higaki et al.,Amyloid 23(2016)86-97に記載され(国際公開第2019/071206A1号パンフレットの91頁の表4を参照されたい)、そして国際公開第2016/120810A1号パンフレット及び国際公開第2018/007922A2号パンフレットに、より具体的に、国際公開第2019/108689A1号パンフレットに記載されているマウスモノクローナル抗体14G8のヒト化バージョンに対応し、それに一致する。さらなる好適な抗体は、抗体PRX004と同じエピトープ、即ちアミノ酸TTR89-97、又はアミノ酸TTR101-109を含むエピトープを認識する抗体であり、且つ国際公開第2016/120810A1号パンフレット、国際公開第2018/007924A2号パンフレット、国際公開第2018/007924A2号パンフレット及び国際公開第2018/007923A1号パンフレットに記載されている、最初にクローン化されたマウスモノクローナル抗体14G8、9D5、5A1、6C1のヒト化バージョンである。さらなる好適な抗体は、国際公開第2019/071205A1号パンフレットに記載されている抗体18C5、国際公開第2015/115332A1号パンフレットに記載されているヒトTTRの79~89位にエピトープを有する抗体371M、国際公開第2015/115331A1号パンフレットに記載されているヒトTTRのTTR115~124位の中にエピトープを有する抗体313M(RT24)のヒト化バージョンである。これらの抗体は、本発明の方法における対照抗体として使用することもできる。
【0122】
好ましい実施形態では、結合分子は、その可変領域内、即ち結合ドメイン内に、国際公開第2015/092077A1号パンフレットの
図1C中に表され、本明細書の表2に示されるアミノ酸配列を有する可変重(V
H)鎖及び可変軽(V
L)鎖の相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられる、抗TTR抗体NI-301.37F1であり、又はCDRの1つ以上は、CDR2及びCDR3の場合、それらアミノ酸配列において、国際公開第2015/092077A1号パンフレットの
図1C及び本明細書の表2に記載されているものと、1つ、2つ、3つ又はさらにそれ以上のアミノ酸だけ異なる可能性があり、抗体は、国際公開第2015/092077A1号パンフレットの実施例において例示されている抗TTR抗体NI-301.37F1の実質的に同じ又は同一の特徴を示す。CDRの位置は、
図1Cに示され、国際公開第2015/092077A1号パンフレット中の
図1の説明分で説明され、本明細書の表2において下線が引かれている。追加的に、又は代替的に、フレームワーク領域又は完全なVH及び/若しくはVL鎖は、国際公開第2015/092077A1号パンフレットの
図1C又は
図1Mに表され、本明細書の表2に示されるフレームワーク領域と80%同一であり、好ましくは、国際公開第2015/092077A1号パンフレットの
図1C又は
図1Mに表され、本明細書の表2に示される、フレームワーク領域並びにVH及び/又はVL鎖のそれぞれと85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である。さらに、抗体NI-301.37F1のクローニング及び発現は、方法が参照により本明細書に援用される、国際公開第2015/092077A1号パンフレットの実施例1及び2の110~112頁に記載のように実施されている。
【0123】
したがって、本発明の方法の一実施形態に従い、抗TTR抗体は、国際公開第2015/092077A1号パンフレットの
図1C及び
図1Mに表され、本明細書の表2に示される、V
H及びV
L鎖のCDR、並びにV
H及びV
L鎖全体によってそれぞれ特徴づけられる。したがって、抗体は、好ましくは以下を含む。
(i)以下のVH相補性決定領域(CDR)1、2、及び3を含む可変重(VH)鎖、及び/又は以下のVLCDR1、2、及び3を含む可変軽(VL)鎖:
(a)VH-CDR1:(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号10に対応する)配列番号19又は1若しくは2つのアミノ酸置換を含むその変異体の31~35位、
(b)VH-CDR2:(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号10に対応する)配列番号19又は1若しくは2つのアミノ酸置換を含むその変異体の52~67位、
(c)VH-CDR3:(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号10に対応する)配列番号19又は1若しくは2つのアミノ酸置換を含むその変異体の100~109位、
(d)VL-CDR1:(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号12に対応する)配列番号21又は1若しくは2つのアミノ酸置換を含むその変異体の24~34位、
(e)VL-CDR2:(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号12に対応する)配列番号21又は1若しくは2つのアミノ酸置換を含むその変異体の50~56位、及び
(f)VL-CDR3:(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号12に対応する)配列番号21又は1若しくは2つのアミノ酸置換を含むその変異体の89~97位;並びに/又は
(ii)(a)VH鎖は、(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号10及び配列番号53に対応する)配列番号19若しくは配列番号23で表されるアミノ酸配列、若しくは1つ以上のアミノ酸置換を含むその変異体を含み;且つ
(b)VL鎖は、(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号12に対応する)配列番号21で表されるアミノ酸配列、若しくは1つ以上のアミノ酸置換を含むその変異体を含み;
好ましくは、VH及びVL鎖アミノ酸配列は、それぞれ、(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号10及び配列番号53に対応する)配列番号19若しくは23、及び(国際公開第2015/092077A1号パンフレットの配列番号12に対応する)配列番号21と少なくとも90%同一である、VH鎖及び/又はVL鎖。
【0124】
本発明の方法の好ましい実施形態に従い、抗TTRは、NI-301.37F1であり、その可変領域内又は結合ドメイン内に、配列番号19及び配列番号21又は配列番号23及び配列番号21のVH及びVL鎖のアミノ酸配列を含む。
【0125】
【0126】
抗Aβ抗体は、アデュカヌマブ(Sevigny et al.Nature 537(2016),50-56)、バピネオズマブ(Kerchner and Boxer,Expert Opin Biol Ther.10(2010),1121-1130,DOI:10.1517/14712598.2010.493872(その中に引用される主要文献を含む)によるレビューを参照されたい)、ガンテネルマブ(Bohrmann et al.,Journal of Alzheimer’s Disease 28(2012),49-69)、クレネズマブ(Guthrie et al.,J Alzheimers Dis.76(2020),967-979,DOI:10.3233/JAD-200134)、BAN2401(Lannfelt et al.,Alzheimers Res Ther 6(2014),16,DOI:10.1186/alzrt246;国際公開第2007/108756A1号パンフレット)、ポネズマブ(Burstein et al.,Clin Neuropharmacol.36(2013),8-13)、及びソラネズマブ(Honing et al.,N Engl J Med 378(2018),321-330,DOI:10.1056/NEJMoa1705971)を含んでもよい。
【0127】
抗タウ抗体は、Yanamandra et al.,Ann Clin Transl Neurol 2(2015),278-288,DOI:10.1002/acn3.176、国際公開第2012/049570A1号パンフレット、及び国際公開第2014/100600A1号パンフレット)に記載されているもの、並びに特に、抗体BIIB076(6C5)、BIIB092(ゴスラネマブ)、ベプラネマブ(UCB0107)、C2N-8E12、及びRG6100(Medina,Int J Mol Sci.19(2018),1160にも記載されている)を含んでもよい。
【0128】
抗α-syn抗体は、国際公開第2012/177972A1号パンフレット及び国際公開第2010/069603A1号パンフレットに記載されているもの、並びに特に、プラシネズマブ(PRX002)、シンパネマブ(BIIB054)、ABBV-0805及びMEDI1341を含んでもよい。
【0129】
抗TDP-43抗体、抗SOD1抗体、及び抗IAPP抗体は、国際公開第2013/061163A2号パンフレット、国際公開第2012/080518A1号パンフレットに記載されているもの、特に抗体NI-204.12G7、及び国際公開第2014/041069A1号パンフレットに記載されているもの、特に抗体NI-203.26C11及びNI-203.11B12を含んでもよい。
【0130】
抗C9orf72抗体は、国際公開第2016/050822A2号パンフレット及び国際公開第2019/210054A1号パンフレットに記載されているものを含んでもよく、抗LC抗体は、抗体11-1F4及びNEOD00(Muchtar and Gertz,Expert Opinion on Orphan Drugs 5(2017),655-663を含んでもよく、抗PrP抗体は、抗体PRN100を含んでもよい。
【0131】
抗SAA抗体は、デザミズマブ(GSK2398852)を含んでもよく、抗HTT抗体は、国際公開第2016/016278A2号パンフレットに開示されているもの、特に抗体NI-302.35C1及びNI-302.31F11を含んでもよい。
【0132】
さらなる例示的な抗体及び上述される凝集タンパク質などの標的抗原に結合する同等の結合分子は、当該技術分野で公知であり、又は標準技術を用いて特定することができる。本発明のアッセイは、こうした抗体の、ADCPを誘導するその能力を確認するための迅速且つ正確な試験を可能にする。
【0133】
これに関連して、好ましくは、タンパク質凝集体、オリゴマー、原線維又はプロトフィブリル、タンパク質単量体として特にミスフォールド構造で存在している、アミロイド原性タンパク質、特に全身性アミロイド原性タンパク質、特にトランスサイレチン(TTR)、並びにその断片及びそれに由来する合成ペプチドなどの凝集しやすいタンパク質であって、標的抗原結合分子を含有する抗体又は類するFcドメインのエピトープ、好ましくは上で定義される環状化合物を含有するタンパク質は、標的抗原として使用することができる。好ましい実施形態では、タンパク質断片又はペプチドは、本明細書中で上述されている抗体のいずれか1つのエピトープ、最も好ましくは、本明細書中の上で参照される抗TTR抗体のいずれか1つのエピトープを含有する。
【0134】
本発明の好ましい実施形態では、抗TTR抗体は、好ましい標的抗原としての凝集されたタンパク質TTRに対して、またTTRのエピトープを含む環状化合物に対してADCPを誘導するその効力について評価されている。
【0135】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも、
i)凝集タンパク質又は環状化合物などの標的抗原をマイクロプレートのウェルにスポットするステップと(即ち、マイクロプレート(96ウェルプレート)は、好ましくは37℃で1時間(タンパク質凝集体)又は4℃で一晩(環状化合物)かけて標的抗原でコーティングされ、好ましくは、タンパク質凝集体は、pH7.4のPBS緩衝液中、10μg/mlの濃度に希釈され、且つ環状化合物は、pH7.4のPBS緩衝液中、3μg/mlに希釈された);
ii)標的抗原を標的抗原結合分子と、結合分子-標的抗原複合体の形成を可能にする条件下で、好ましくは37℃で30分間接触させるステップと;
iii)結合分子及び標的抗原を含む複合体をエフェクター細胞と接触させるステップと(即ち、レポーター細胞とも呼ばれるエフェクター細胞が複合体に添加され、ここでエフェクター細胞は、Fc受容体及びレポーター遺伝子を、Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下で発現し、好ましくは、エフェクター細胞は、改変された細胞、より好ましくは、FcγRI受容体及びルシフェラーゼ遺伝子をNFAT転写因子の制御下で発現するJurkat細胞であり、且つ複合体は、37℃で6時間インキュベートされる);
iv)基質溶液、好ましくは発光基質溶液を添加するステップと;
v)シグナル、好ましくは発光シグナルをルミノメーターで検出するステップと、
を含む。
【0136】
環状化合物によるプレートのコーティングは、好ましくは、主に疎水性相互作用によるプラスチック表面上での固定化によって実施されるが、ビオチン-ストレプトアビジン系を使用することによって実施することもできる。しかし、上述のとおり、標的抗原をマイクロプレートのウェルにスポットする代わりに、標的抗原と標的抗原結合分子との接触は、標的抗原がマイクロプレートなどの固体支持体のウェルにスポットされることなく、溶液中で実施することもできる。
【0137】
好ましい実施形態では、非特異的結合部位をブロックするステップは、ステップ(ii)前に実施され、好ましくは、ブロッキングは、PBS緩衝液中、2%ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.1%tween(登録商標)-20を含有するブロッキング緩衝液を用いて室温で1時間実施された。
【0138】
一実施形態では、本発明の方法は、標的抗原を、マイクロプレート又は他の固体支持体にスポットする前に調製するステップをさらに含む。タンパク質凝集体については、タンパク質凝集体を調製するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、実施例3に記載される凝集緩衝液を使用してもよい。Ab原線維の調製は、例えば、国際公開第2017/157961A1号パンフレットに記載されている。タンパク質凝集体の調製は、凝集を可能にする条件を施す前の各タンパク質の精製をさらに含んでもよい。タンパク質クロマトグラフィーとその後のレクチンカラムを介して精製を実施することで、残留する免疫グロブリンを除去することができる。また、環状化合物を調製するための方法は、上で説明したとおり、当該技術分野で公知である。好ましい実施形態では、ペプチドは、リンカー中のシステイン残基間のジスルフィド架橋を介して環化されるが;上記を参照されたい。環状化合物は、溶液で調製され、使用前に任意の特定の手順が施されることなく、それ故、天然の単量体形態である。
【0139】
本発明の方法は、タンパク質凝集体又は環状化合物の品質を制御/検証するステップをさらに含んでもよい。これは、様々な方法によって、例えば、凝集タンパク質又は環状化合物に結合することが知られている抗体を使用する従来のELISA及び/又はバイオレイヤー干渉法(BLI)によって実施することができる。こうした方法は、添付の実施例3及び5に記載されている。
【0140】
プレートレイアウトの観点における可変性について、異なるアッセイセットアップが試験されている。原則として、標的抗原結合分子、例えば抗体の希釈系列は、水平方向(例えば、ウェルA1~A12)又は垂直方向(例えば、ウェルA1~H1)のいずれかで配置することができる。希釈ポイントの数(例えば、8ポイント、12ポイント、16ポイントなど)及び方向性(即ち、第1のウェルは最低又は最高のいずれかのリガンド濃度を有し得る)は、自由に選択することができる。単回投与アッセイでは、参照及び陽性対照の位置は、ユーザによって自由に選択することができる。しかし、それを実施する本発明に従って実施されている実験の経過において、意外にも、両方の方向性が十分に良く機能する一方で、3つのサンプルを同じプレート上で同時に、及び3通りに測定可能にする垂直なプレートレイアウトが最も信頼できる結果をもたらすことが判明した。したがって、1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、垂直なプレートレイアウトを用いて実施される。さらに、96ウェルマイクロプレートの場合、24の外側ウェルが、60の内側ウェルで認められた場合より24%大きい変動性を示し、それ故、好ましくは、本発明の方法を実施する際、内側ウェルが使用される。
【0141】
抗TTR抗体が本発明の方法によって分析される場合、上で特徴づけられている抗体NI-301.37F1は、対照として、凝集TTRバッチの品質対照又は効力アッセイのための陽性対照のいずれかとして使用することができる。
【0142】
実施例3、4及び6から導出できるように、本発明の方法は、抗体活性の変化を検出し、且つFcドメイン変更に関する抗体の効力低下を検出する能力を有する。後者は、抗体に、抗体効力の低下を再現するストレス条件を施すことを介して試験されている。したがって、本発明の方法は、結合分子活性の、およそ少なくとも±35%~±50%の変化を検出する能力を有する。
【0143】
本発明は、さらに、上で定義される標的抗原結合分子、即ち、Fcドメインを含み、好ましくは、抗体又はその任意の断片若しくは誘導体又は抗体模倣物である結合分子の医薬組成物を作製する方法に関する。
【0144】
第1のステップでは、結合分子及び製剤はそれぞれ、提供され、好ましくは作製される。抗体、対応する結合分子、その断片、誘導体及び模倣物の組換え産生のための手段及び方法は、当該技術分野で公知である。特に、宿主細胞内でのそれらの組換え産生、精製、修飾、医薬組成物における製剤化及び治療使用、並びに当該技術分野で一般的な期間及び特徴は、本発明を特許請求されるとおりに実施する際、当業者に依存することができ(例えば、Antibodies A Laboratory Manual 2nd edition,2014 by Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,USA;Frenzel et al.,Front Immunol.4(2013),217,doi:10.3389/fimmu.2013.00217;Lalonde and Durocher,Journal of Biotechnology 251(2017),128-140,DOI:10.1016/j.jbiotec.2017.04.028;Tripathi and Shrivastava,Front.Bioeng.Biotechnol.7(2019),420,DOI:10.3389/fbioe.2019.00420を参照されたい)、ここで、抗体の精製及び貯蔵;抗体の改変、例えば、縮重オリゴヌクレオチドの使用、5’-RACE、ファージディスプレイ、及び変異原性、免疫ブロットプロトコル及び最新のスクリーニング及び標識技術についても記載されている。DARPinの作製は、例えば、Stumpp et al.,Drug Discovery Today 13(2008),695-701並びにそこで引用されている参考文献及びHanenberg et al.,J Biol Chem 289(2014),27080-27089,DOI:10.1074/jbc.M114.564013において説明されている。さらに、製剤の作製は、問題の製剤にとって望ましい、及び/又は好適であるような任意の様式で実施することができる。
【0145】
次のステップでは、結合分子には、本発明の方法が施される。特に、結合分子には、結合分子の効力、特にADCPを誘導するための効力を測定するための方法が施される。アッセイから得られている情報は、結合分子を医薬組成物として使用してもよいか否か、即ち、結合分子を含む製剤が、製剤の注射を行ってもよい場合、国内の規制当局との合意として患者に注射されるべき基準を満たすか否かの評価の一部として使用される。さらに、情報を用いて、医薬組成物における使用のための結合分子が特定される。
【0146】
本発明の方法の前記実施形態のいずれかのさらに好ましい実施形態では、標的抗原結合分子、特に本発明の方法によって有用であることが見出されている標的抗原結合分子は、薬学的に許容される担体を有する医薬組成物として製剤化される。有用な結合分子は、例えば、本発明の方法によって評価される際の(サブ)-ナノモル範囲内のEC50値を示す、又は例えば、陽性対照の効力と比較して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%といった参照標準と類似する効力を示すような結合分子である。薬学的に許容される担体及び投与経路は、当業者に公知である対応する文献から得ることができる。医薬組成物は、当該技術分野で周知の方法に従って製剤化することができ;例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)by the University of Sciences in Philadelphia,ISBN0-683-306472,Vaccine Protocols 2nd Edition by Robinson et al.,Humana Press,Totowa,New Jersey,USA,2003;Banga,Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems.2nd Edition by Taylor and Francis.(2006),ISBN:0-8493-1630-8を参照されたい。好適な薬学的担体の例は、当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝食塩水溶液、水、乳濁液、例えば、油/水乳濁液、様々なタイプの湿潤剤、無菌溶液などを含む。そのような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化することができる。これらの医薬組成物は、好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与は、異なる方法で行ってもよい。例としては、薬学的に許容される担体を含有する組成物を、経口、鼻腔内、直腸、局所、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、真皮下、経皮、髄腔内、及び頭蓋内方法を介して投与することが挙げられる。
【0147】
本発明はまた、標的抗原結合分子を含む医薬品又は診断薬を調製するための方法を提供し、ここでADCPを活性化するため、結合分子の効力は、陽性対照の効力と比較して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。方法は、上で説明されている結合分子の作製を含み、前記結合分子のバッチが得られる。その後、バッチの効力、特にADCPを活性化するためのバッチの効力は、本発明の方法によって分析される。方法は、バッチからの医薬品又は診断薬の調製をさらに含むが、それは、バッチが、特にADCPを活性化するため、陽性対照の効力と比較して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%の効力を有することが判定される場合に限られる。
【0148】
対照は、参照標準、ADCPを活性化する効力を有することが知られている抗体、例えば、規制当局によって承認されている抗体、及び/又は貯蔵されている、且つ/若しくはストレス条件を受けた分析対象のバッチのいずれかであり、対照は、そのバッチ又は貯蔵前及び/若しくは前記ストレス条件が施される前の対応するバッチから採取されたサンプルのレポーター遺伝子活性の値である。
【0149】
本発明はまた、上記のような方法を提供し、前記方法は、医薬組成物としての前記製剤を販売するための市販承認申請の一部である。本発明はまた、結合分子を含む製剤の市販承認を申請するための方法であって、製剤の結合分子の効力を測定することについて本発明の方法を説明することを含む方法を提供する。
【0150】
上述のとおり、本発明の方法は、バッチリリースについての効力アッセイとして使用される、即ち、本発明の方法は、異なるバッチを、例えば、所与の標的抗原結合分子の作製から分析するのに有用である。
【0151】
製剤のあらゆる連続生産は、医薬品としてリリースされるべき製品の異なるバッチの生産をもたらすことになる。生産における主要な特徴は、異なるバッチが同じ標準に従うことを保証することである。この標準は、典型的に、規制機関と連携して設定される。典型的に、各バッチをいくつかの異なるアッセイによって検査及び試験することで、バッチが市場において承認されるための十分な品質があることを保証することになる。これは、本発明の方法によって実施することができる。
【0152】
したがって、本発明はまた、上で定義されている標的抗原結合分子の医薬組成物の少なくとも1つのバッチを分析及び選択するための方法であって、第1のステップにおける、本発明の方法による、バッチのサンプルの効力、特にADCPを活性化するためのその効力の評価を含む方法に関する。上述のとおり、レポーター遺伝子活性は、結合分子の効力についての尺度であり、それ故、サンプルのレポーター遺伝子活性が、対照のレポーター遺伝子活性と比較され、そしてバッチが選択され、そこでサンプルは、対照と比較して、より大きい、等しい、又は実質的でないがより低いレポーター遺伝子活性を示す。一実施形態では、バッチが選択され、そこでサンプルは、対照と比較して、80%、好ましくは90%、好ましくは95%、好ましくは98%、好ましくは99%、より好ましくは100%より大きい、それと等しい、又はそれ以上のレポーター遺伝子活性を示す。選択されたバッチは、さらに、例えばキットに充填し、消費者(costumer)に配布することができる。
【0153】
したがって、本発明は、標的結合分子のバッチを検証する、即ち、配布のため、標的抗原(例えば、凝集タンパク質)結合分子の品質を判定するための方法に関し、ここでバッチのサンプルは、ADCPを活性化するためのその効力について本発明の方法によって試験され、そしてバッチは、ADCPを活性化するためのバッチのサンプルの効力が、ADCPを活性化するための陽性対照の効力と比較して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である場合に限り、配布に対して検証される。
【0154】
好ましい実施形態では、方法は、抗TTR抗体を含む医薬組成物のバッチを分析及び選択し、且つ抗TTR抗体のバッチを配布に対して検証することが、それぞれ特に有用である。対照は、参照標準であり得て、且つ/又は分析対象のバッチが貯蔵されており、且つ/若しくはストレス条件が施された場合、対照は、バッチ若しくは貯蔵前及び/若しくは前記ストレス条件が施される前の対応するバッチから採取されているサンプルのレポーター遺伝子活性の値であり得る。
【0155】
製剤の結合分子のFc受容体への結合は、参照標準のFc受容体への結合と比較され、製剤の結合分子の治療効果は、Fc受容体に参照標準と同じ又は実質的に同じ程度で結合するその能力から評価される。
【0156】
上述のとおり、バッチのサンプルの効力は、参照標準の効力と比較して、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である必要がある。しかし、製剤の結合分子のFcR結合プロファイル及び参照標準のFcR結合プロファイルが異なり得る特定の程度は、個別のケースに基づいて確立することができ、例えば、適切な規制機関と連携して決定することができる。
【0157】
FcR結合を信頼できる一貫した様式で判定できるように、製剤の結合分子及び参照標準のFcR結合は、同じアッセイを用いて、好ましくは本発明のアッセイを用いて実施される必要がある。典型的に、参照標準の結合の判定を最初に実施することで、結合分子の任意の以下のバッチが比較可能であるという標準が確立される。しかし、参照標準の結合の判定はまた、製剤の結合分子のFcR結合の判定と同時に又はその後に実施されてもよい。
【0158】
本発明は、さらに、本発明に従う方法における、上で定義される標的抗原結合分子、上で定義される環状化合物、及び/又は上で定義されるエフェクター細胞の使用に関する。特に、エフェクター細胞は、ヒトFc受容体FcγRI(CD64)を発現し、Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿すように改変される。
【0159】
さらに、本発明は、少なくとも、
(i)Fc受容体を発現し、Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーターをコードする遺伝子を宿すように遺伝子改変されているエフェクター細胞の集団;
(ii)レポーターの対応する基質;及び任意選択的に
(iii)標的抗原;
(iv)マイクロタイタープレート、好ましくは、蓋を含む96若しくは384ウェルプレート;
(v)緩衝液、希釈剤、基質及び/若しくは溶液についての推奨、及び使用説明書;
(vi)洗浄、ブロッキング及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液;並びに/又は
(vii)陽性対照の標的抗原結合分子、好ましくは抗体
を含むキットに関する。
【0160】
好ましくは、このキットは、本発明の方法を実施する、特に、ADCPを誘導する、Fcドメインを含む結合分子の効力をアッセイすることに適応する。したがって、使用説明書は、好ましい実施形態において、Fcドメインを含む標的抗原結合分子の効力を測定する方法におけるキットの使用説明書、及び好ましくは、本発明のアッセイの実施方法についての使用説明書に関する。
【0161】
好ましい実施形態では、エフェクター細胞の集団は、FcγR、好ましくはFcγRI及びNFAT転写因子の制御下で発光タンパク質、好ましくはルシフェラーゼをコードする遺伝子を発現するJurkat細胞の集団であり、ここでキットは、発光基質溶液を含む。さらに、標的抗原は、標的結合分子のエピトープ、より好ましくは、抗TTR抗体のエピトープ及びTTRのエピトープをそれぞれ含む、好ましくは凝集タンパク質、より好ましくは凝集TTR、又は環状化合物であり、且つ結合分子は、抗TTR抗体である。
【0162】
方法は、マイクロタイタープレート上で実施されることを必ずしも必要でなく、標的抗原をスポット可能である任意の固体支持体又はアッセイ成分をインキュベートできる任意のバイアルであれば好適となる。
【0163】
本発明は、さらに、本発明に従って分析、検証及び選択されている本発明の標的抗原結合分子を含む組成物であって、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物に関する。
【0164】
分析された結合分子が食作用を確かに誘発し、標的抗原、例えば、タンパク質凝集体又は環状化合物の貪食を引き起こすことを検証するため、インビトロ食作用アッセイが実施例1及び2に記載のように実施されている。これらのアッセイは、抗体NI-301.37F1_W1がTTR凝集体の食作用を確かに誘発することを示す。したがって、結合分子の効力をアッセイするための本発明の方法は、インビトロ食作用アッセイと組み合わせてもよい。
【0165】
さらに、分析された結合分子のその対応する抗原への結合であれば、当該技術分野で公知の方法によって、例えば、実施例3及び5に示されるELISA又はBLIを介して検証してもよい。したがって、結合分子の効力をアッセイするための本発明の方法は、結合分子のその抗原への結合を判定するための方法と組み合わせてもよい。
【0166】
上に記載され、且つ/又は特許請求の範囲において特徴づけられている本発明の方法及びキットのいずれか1つの特定の好ましい実施形態では、(1)効力、即ち、決定されるべきエフェクター機能は、抗体依存性細胞食作用(ADCP)であり、(2)標的抗原は、アミロイド原性タンパク質、最も好ましくはTTRのエピトープを含む、好ましくは環状形態の、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質凝集体、最も好ましくはTTR、又はそれに由来するタンパク質断片若しくはペプチドであり、(3)Fc受容体は、ヒトFc受容体FcγRI(CD64)であり、エフェクター細胞は、Jurkat細胞であり、好ましくは、該細胞は、FcγRIIa(CD32a)及びFcγRIII(CD16)を過剰発現せず、応答エレメントは、NFAT(活性化T細胞核内因子)応答エレメントであり、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼをコードし、標的結合分子は、IgG1抗体、例えば、IgG1、λ抗体又はIgG1、κ抗体である。
【0167】
「発明の概要」に言及され、上に記載されているとおり、さらなる態様では、本発明は、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質からのエピトープを含むペプチドを含む環状化合物に関する。
【0168】
特に、本発明に従って実施される実験の過程において、意外にも、TTRのエピトープ、特に、国際公開第2015/092077A1号パンフレットに記載される、野生型又は変異体TTRのいずれかのTTR凝集体に高い親和性で選択的に結合する抗TTR抗体NI-301.37F1(WEPFA(配列番号1)によって認識されるエピトープを含む環状ペプチドが、ELISA及びADCPアッセイにおける優れた標的抗原であることが見出された。実施例5に記載され、
図10に図示されるとおり、抗体は、前記環状化合物に対する高度に特異的な結合を呈し、ここで抗体の環状ペプチドに対する結合親和性は、その天然標的抗原、即ち、抗体が最初にスクリーニング及び特定されていた対象のミスフォールドTTRよりさらに1桁高い。この顕著な効果は、そのような環状が、変動しがちであり、環状ペプチドの調製より時間がかかる、全長アミロイド原性タンパク質及びその凝集体/原線維の調製の代わりとなり得るだけでなく、実施例5及び6に例示され、
図10~12に示されるとおり、環状化合物が、高い感受性及び再現性を必要とする、ELISAのような結合アッセイ及びADCPのような機能アッセイにおける優れた標的抗原を表すことから、想定外で且つ有利であった。
【0169】
最初に、環状TTRペプチドを、抗体NI-301.37F1のFab断片の結晶構造をそのTTR抗原と複合させて解明するように設計し、抗体-抗原複合体の三次元構造についての情報を得て、その作用機構を理解した。抗体NI-301.37F1、即ちIgG抗体の判定のためのELISAアッセイにおいて、環状TTRペプチドを使用して、全長組換えTTRタンパク質が置換されることは偶然の一致であり、意外にも、ELISAアッセイが、組換えTTRタンパク質の使用と比較して、感受性及び信頼度がはるかにより高くなることが示されたが;実施例5及び
図10を参照されたい。後続実験は、さらにより意外なことに、環状TTRペプチドの使用により、本発明の効力アッセイの感受性及び信頼度が実質的に改善されることを実証している。
【0170】
以下において、クライオ電子顕微鏡(クライオEM)構造の分析によると、未解明のループの2つの末端が互いに接触状態にあることが示されたが、これに基づき、環状ペプチド及び環状化合物それぞれにおけるエピトープ及びペプチド配列が同様に選択されている可能性があったことが示唆される。したがって、クライオEM構造の使用については、Fab-ペプチド抗原の結晶学的構造におけるペプチド設計に加えて、又は代替的に、ELISA及びADCPアッセイにおいてそのように有効且つ信頼できるツールであることが実験的に判明している環状TTTRペプチドと同じ有利な特性を示す、本発明の環状ペプチドの設計の場合と同じものを含有する適切なエピトープ及びアミノ酸配列を選択するために用いてもよい。上で言及したとおり、免疫グロブリン軽鎖(LC)のミスフォールディングに起因するATTR及びALアミロイドーシスなどの全身性アミロイド原性タンパク質のアミロイド構造が、タウなどの局所性のアミロイド原性タンパク質の場合と一方では類似するが、他方では実質的に異なることがクライオEM試験によって示されていることは注目すべきであり;Schmidt et al.,Nat.Commun.10(2019),5008,https://doi.org/10.1038/s41467-019-13038における
図5を参照されたい。したがって、TTR由来の環状ペプチドについての本結果を、少なくとも他の全身性アミロイド原性タンパク質に適用することもできると予想することは賢明である。
【0171】
抗体及びそのFab断片の結晶構造を、それぞれペプチド及びペプチド抗原とのその複合体に対して作製するための方法は、当業者に周知であり;例えば、Amit et al.,Science 233(1986),747-753を参照されたい。同様に、クライオ電子顕微鏡に適用されるが;例えば、Schmidt et al.(2019)、上記を参照されたい。
【0172】
ここで、この知見により、他のアミロイド原性タンパク質のエピトープを含むさらなる環状化合物を作製する機会が拡張される。例えば、一旦エピトープが選択されており、そしてアミロイド原性タンパク質の断片又はペプチド配列が選択されていると、アミノ酸配列からペプチド構造を予測することができ、TTR環状ペプチドに適用されると、エピトープの提示を合理的に予測するように思われるプログラムPEP-FOLDを使用すれば、例えば、アミロイド原性タンパク質の抗体結合エピトープを再現する、例えば本明細書に記載される、さらなる環状ペプチドを設計することができる。
【0173】
したがって、本発明の範囲内で実施される実験において得られている知見では、例えば本明細書に記載される、アミロイド原性タンパク質のあらゆる種類からのエピトープの環状化合物の作製が、特に全身性アミロイド原性タンパク質に由来する場合に可能になる。
【0174】
したがって、さらなる態様では、本発明は、全身性アミロイド原性タンパク質のエピトープであって、好ましくは、ネオエピトープの場合など、専らタンパク質のミスフォールド及び/又は凝集形態における抗体による結合に接近可能であるエピトープ、及び/又は例えば、生理活性四量体中に隠れており、且つ結合する抗体にもはや接近可能でない、TTRタンパク質の単量体において接近可能なエピトープの場合の、タンパク質の生理活性型において少なくとも存在していないエピトープを含有するペプチドを含む、上に記載されている環状化合物及びその線状前駆体に関する。実施例6で例示されるとおり、本発明の環状化合物は、本発明の効力アッセイにおいて特に有用である。
【0175】
最も好ましくは、本発明の環状化合物は、アミノ酸配列WEPFA(配列番号1)を含む。
【0176】
一実施形態では、環状化合物及びその前駆体のそれぞれ、又は本発明の環状化合物内部のタンパク質断片若しくはペプチドは、さらに誘導体化又は修飾される。例えば、タンパク質及び/又は他の薬剤は、例えば、インビトロ試験におけるプローブとして作用し得る、環状化合物にカップリングされ得る。この目的として、反応する(例えば、共有結合である、又は非共有結合であるが強力な結合を作る)能力がある任意の官能化可能な部分が使用可能である。それらのタンパク質及び/又は他の薬剤は、例えば、イムノブロット又は免疫組織化学的アッセイに使用されるウシ血清アルブミン(BSA)などの担体タンパク質であり得る。
【0177】
本発明は、さらに、本発明の環状化合物又はその線状前駆体を含む組成物に関する。組成物は、緩衝液、安定化剤、及び/又は希釈剤などのさらなる賦形剤を有し得る。
【0178】
実施例5に示されるとおり、抗原結合分子、ここでは抗TTR抗体は、ELISAアッセイにおいて、環状ペプチドに対して強い結合親和性を示した。したがって、環状化合物は、抗体などの抗原結合分子を検出及び定量するために使用されるアッセイにおける好適な標的抗原である。
【0179】
それ故、本発明は、さらに、標的抗原結合分子の定量化も含み得る、標的抗原結合分子と標的抗原との間の相互作用の分析、例えば検出に関係するあらゆる種類のアッセイにおける本発明の環状化合物又は本発明の組成物の使用に関する。好ましい実施形態では、こうしたアッセイは、ELISAアッセイである。さらなる好ましい実施形態では、本発明は、抗原結合分子、例えば、Fcドメインを含む抗体又は任意の他の結合分子、好ましくは上で定義されている抗体の効力を測定するための、本発明の環状化合物又は本発明の組成物の使用に関する。効力の判定は、好ましくは本発明のアッセイによって実施される。
【0180】
さらに、本発明の環状化合物又はそれを含む組成物は、アミロイド原性タンパク質又はその断片、オリゴマー若しくは凝集体に対する自己抗体の検出のために使用することができる。本発明の環状化合物は、特に、TTRに対する自己抗体の検出、及び例えばNI-301.37F1と同等の抗体の特定(identify)に適する。同様に、本発明の環状ペプチドは、一般に例えばファージディスプレイによる、アミロイド原性タンパク質に対する抗体、特に抗TTR抗体のスクリーニングのために使用することができる。
【0181】
さらに、本発明の環状ペプチドは、薬物動態プロファイル、即ち、インビボ非ヒト動物試験及びヒトにおける臨床試験での血漿中の、例えば、抗体NI-307.37F11(NI006)、又はNNC6019-0001(PRX004)の場合の抗体の半減期を試験するために使用することができる。さらに、環状化合物を、例えば抗体治療の過程において使用して、抗体の血漿濃度を測定し、抗体の持続的レベルを維持するため、投与を支持することができる。また、環状ペプチドを使用して、既知の抗体と同等である、特に、上記の抗TTR抗体、特に抗体NI-307.37F11と同等である抗体を、例えば一般に当該技術分野で公知である競合アッセイによって特定することができる。したがって、全ての使用は、本発明の一部でもある。
【0182】
さらに、本発明は、少なくとも本発明の環状化合物又はその線状前駆体を、任意選択的に試薬及び使用説明書とともに含むキットに関する。キットは、好ましくは、標的抗原結合分子と標的抗原との間の相互作用を検出するのに有用であり、例えば、検出は、最も好ましくは、Fcドメインを含む抗原結合分子、例えば抗体の効力を測定するための、標的抗原結合分子の定量化も含み得る。好ましい実施形態では、効力の判定は、好ましくは本発明のアッセイによって実施される。さらなる好ましい実施形態では、抗原結合分子は、上で定義されている抗原結合分子、好ましくは、Fcドメインを含む抗原結合分子、例えば抗体、最も好ましくは、抗TTR抗体である。したがって、キットは、上に列記される目的のために使用することができる。
【0183】
一実施形態では、環状化合物を含む本発明のキットは、
(i)ヒトFc受容体FcγRを発現し、Fc受容体による活性化に応答性である応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子を宿すように改変されているエフェクター細胞の集団、
(ii)レポーターの対応する基質;及び任意選択的に
(iii)固体支持体、好ましくはマイクロタイタープレート、好ましくは蓋を含む96ウェルプレート;
(iv)洗浄、ブロッキング及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液、並びに/又は
(v)標的抗原の単量体対照及び/若しくは陽性対照の抗標的抗原抗体
をさらに含む。
【0184】
好ましい実施形態では、エフェクター細胞の集団は、FcγR、好ましくはFcγRI及びNFAT転写因子の制御下で発光タンパク質、好ましくはルシフェラーゼをコードする遺伝子を発現するJurkat細胞の集団であり、ここでキットは、発光基質溶液を含む。
【0185】
さらに、本発明の環状化合物、及びその線状前駆体は、全身性アミロイドーシスに関与するアミロイド原性タンパク質に結合する、例えば上に記載されているタイプの抗体及び同等の結合分子を特定する、任意選択的に取得するための方法であって、典型的に、
(a)1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源を準備する、任意選択的に産生するステップと;
(b)1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源に、本発明の環状化合物を含む結合アッセイを施すステップと;
(c)環状化合物に結合することが判定されている抗体(対象抗体)を特定する、任意選択的に取得するステップと、
を含む方法において特に有用である。
【0186】
本方法は、本発明の効力アッセイ、及び/又は対象抗体の診断的若しくは好ましくは治療的な有用性をさらに判定するための任意の他の好適な方法と組み合わせることができる。言及したとおり、対象抗体はまた、抗原結合分子の異なる種類であってもよい。
【0187】
それ故、本発明のさらなる実施形態は、全身性アミロイド原性タンパク質に結合する抗体を含む医薬組成物を作製する方法であって、少なくとも、
(a)1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源を準備する、任意選択的に産生するステップと;
(b)前記1つ以上の潜在的にアミロイド原性タンパク質に結合する抗体又はその供給源に、本発明の環状化合物を含む結合アッセイを施すステップと;
(c)環状化合物に結合する抗体(対象抗体)を特定する、任意選択的に取得するステップと;
(d)ステップ(c)において特定され、任意選択的に取得されている抗体又はその誘導体を薬学的に許容される担体とともに製剤化するステップと、
を含む方法からなる。
【0188】
抗体の供給源は、限定はされないが、例えば、齧歯類、好ましくはマウスなどの免疫実験動物、最も好ましくは、Igヒト化マウス;好ましくはメモリーB細胞を含むヒト血液若しくはその画分;組換え抗体ライブラリー、例えば、ファージ、酵母、及びリボソーム系若しくはCHO及びHEKなどの哺乳動物細胞系などから得られる天然及び合成抗体を含み;抗体及び他の標的結合分子のさらなる供給源については、「発明の詳細な説明」も参照されたい。一実施形態では、ラクダ科(Camelidae)の血清が起源である、VHHとしても公知であるナノボディは、本発明の環状化合物によってスクリーニングすることができ;例えば、Lyu et al.,Anal.Chem.94(2022),7970-7980;Muyldermans,The FEBS Journal 288(2021)2084-210を参照されたい。これに関連して、アミロイド原性タンパク質に結合することが公知であるIgG抗体のその結合断片は、ナノボディを特定及び調製するための参照抗体又は供給源としてそれぞれ(a)使用することができる。同様に、計算モデリングの設計が可能である抗体に対する合成代替物、例えば、設計されたアルマジロリピートタンパク質(dArmRP)などのモジュラーペプチド結合剤は、スクリーニング可能であり;例えば、Gisdon et al.,Biological Chemistry 403(2022),535-543を参照されたい。
【0189】
上述される方法において用いられる結合アッセイは、好ましくは、例えば実施例5及び7において実施されるELISAを含む。
【0190】
対象抗体の特定及び取得並びに医薬組成物及び創薬において製剤化される場合のそれらのさらなる使用のそれぞれについての本発明の方法の好ましい実施形態では、ステップ(c)において特定され、任意選択的に取得されている抗体は、アミロイド原性タンパク質への結合に対して参照抗体と競合し、好ましくは、対象抗体は、アミロイド原性タンパク質に対して参照抗体より低いEC50を有する。本発明の方法によって得られている対象抗体及び類似の標的結合分子の調製及び製剤化は、上記の標的抗原結合分子についての記載のとおりに実施することができる。
【0191】
いくつかの文書が、本明細書の文章全体を通じて引用されている。(背景セクション及び製造業者の仕様、説明書などを含む、本願全体を通じて引用される参考文献、交付済み特許、特許出願公開を含む)全ての引用された参考文献の内容は、ここで参照により明示的に援用されるが;引用されているあらゆる文書が確かに本発明に関する先行技術であるという承認ではない。
【0192】
あくまで例示を目的として本明細書に提供され、本発明の範囲を限定することが意図されていない、以下の具体的な実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができる。
【実施例】
【0193】
実施例1:ヒト由来マクロファージを使用するインビトロ食作用アッセイ
抗体NI-301.37F1_3によって誘発されるミスフォールドTTRの食作用は、ヒト由来マクロファージ、蛍光標識L55P-TTRタンパク質、及びATTRに選択的なNI-301.37F1_3抗体を含むインビトロアッセイにおいて判定した。
【0194】
ヒト由来マクロファージを、インビトロで新しいヒト単球から分化させた。要するに、新しい献血を受け、PBMCを調製し、磁気カラム(Miltenyi,単球単離キットII)上での陰性枯渇によって単球を抽出した。次に、単球を、100ng/mlのマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF,Miltenyi)を添加したマクロファージ血清不含培地(M-SFM,Life technologies)中で最低10日間培養することによって、M2マクロファージに分化させた。分化開始後10日~15日の間で、マクロファージをトリプシンで剥離し、96ウェルプレート又は24ウェルプレートに500,000細胞/mlの密度で分布させた。食作用実験は、翌日実施した。
【0195】
インビトロ食作用実験のため、L55P-TTR突然変異体(和光、大阪、日本)を、この突然変異がTTR四量体を強力に不安定化し、生理学的条件下でミスフォールドTTRタンパク質の生成を引き起こすことから選択した。L55P-TTRタンパク質を蛍光色素とカップリングさせ、マクロファージにおけるTTRの直接検出を可能にした(Sigma製のAtto 488タンパク質標識キット、又はThermoFischer製のpHrodo Green標識キット)。
【0196】
抗体NI-301.37F1_3及びアイソタイプ対照を、蛍光色素(Sigma製のAtto 550タンパク質標識キット、又はThermoFischer製のpHrodo Red標識キット)と標準的手順に従ってカップリングさせ、マクロファージにおける直接検出を可能にした。
【0197】
食作用アッセイの場合、マクロファージを、フコイダン(Sigma)とともに30分間プレインキュベートし、スカベンジャー受容体、及び陰性対照条件としてのFc受容体阻害剤(Miltenyi)によって媒介される非特異的食作用を阻止した。L55P-TTR-488及びNI-301.37F1_3-550又はアイソタイプ-550を、マクロファージへの添加前に室温で少なくとも15分間かけて共インキュベートした。0.5mg/mlでのフコイダン、7μg/mlでのL55P-TTR-488、0~80nMの濃度でのNI-301.37F1_3-550又はアイソタイプ-550抗体の存在下、37℃で2時間のインキュベーション、及び1:100の希釈でのFcRのブロッキングにより、食作用が3通りになされた。細胞をPBSで2回洗浄し、測定までプレートを氷上で保持することにより、反応を停止させた。FACS分析の場合、マクロファージをPBS/EDTAで洗浄し、トリプシン処理し、剥離し、定量まで氷上で貯蔵した。
【0198】
標準蛍光プレートリーダーを使用して、マクロファージによって組み込まれたL55P-TTR-488の総レベルを定量した。類似実験をFACSによって定量化し、L55P-TTR及びNI-301.37F1_3の両方を組み込んでいるマクロファージの数を計数した。また、実験を、洗浄、固定、及びマウント後、共焦点顕微鏡に使用する、カバーガラス上にコーティングしたマクロファージを用いて反復した。
【0199】
抗体媒介性のTTR取り込みは、濃度依存性であり、低い抗体濃度を必要とした(
図1A)。取り込みは、既に1nMの濃度であったNI-301.37F1_3によって強力に増加し、使用するアッセイ条件下、10nMで飽和に達した。食作用は、1%FcRブロッキングの存在下での完全阻害によって示されるとおり、Fc受容体によって媒介され、アイソタイプ対照抗体の存在下でのTTR取り込みの不在によって示されるとおり、特異的な抗体-標的相互作用を必要とした。並行実験では、FACSによる分析により、具体的にTTR及びNI-301.37F1_3の両方について陽性である細胞を定量した。二重陽性細胞の頻度は、10nMのNI-301.37F1_3の存在下で3%~6%のバックグラウンドレベルから増加し、80nMのNI-301.37F1_3の存在下でさらに16%まで増加した(
図1B)。
【0200】
分析をさらに精査するため、pH感受性蛍光色素pHrodo Green及びpHrodo Redでそれぞれ標識したL55P-TTR及びNI-301.37F1_3タンパク質を用いて実験を反復した。これらの色素は、酸性pHで蛍光の強力な増加を呈することから、ファゴリソソーム小胞内のTTR及びNI-301.37F1_3を内部移行させている細胞に対する分析を特定することが可能である。以前の実験に一致して、二重陽性細胞の頻度は、10nMのNI-301.37F1_3の存在下で3.5%~5.5%の基礎レベルから増加し、80nMのNI-301.37F1_3の存在下で8.8%までさらに増加した(
図1C)。TTRのこの抗体依存性食作用は、NI-301.37F1_3によって特異的に誘発され、アイソタイプ対照抗体によってされず、10nM及び80nMのバックグラウンドレベルを超える食作用は誘導されなかった。共焦点顕微鏡によるマクロファージの検査は、これらの結果を支持し、多数の小胞を提示する活性マクロファージは、TTR及びNI-301.37F1_3の両方について陽性であった。要するに、結果は、NI-301.37F1_3がヒトマクロファージによるL55P-TTRの食作用を濃度依存性に誘導することを示す。食作用は、Fc受容体によって媒介され、抗体とその標的タンパク質との特異的相互作用を必要とした。食作用時、抗体-標的複合体は、標的分解のためのファゴリソソーム系である可能性が高い、酸性区画に標的化された。
【0201】
実施例2:THP1細胞を使用するインビトロ食作用アッセイ
実施例1に示す食作用アッセイは、原則として、NI-301.37F1_3がATTR食作用を活性化する能力を有するが、この手法が異なる血液ドナーから得られたマクロファージ間の食作用活性における変動性を被ることを示した。変動性のこの原因を取り除くため、インビトロ食作用アッセイを、新しいPBMCの代わりにヒト単球性THP1細胞株を使用して改めて開発した。一旦確立されると、THP1細胞を使用するATTR食作用アッセイを、抗体濃度の30%低下によって再現された、抗体効力の低下を検出するその能力について評価した。
【0202】
THP1細胞(Sigma;88081201)を、細胞増殖中、20%ウシ胎仔血清(FBS)、1×ペニシリン/ストレプトアビジン及び0.05mMの2-メルカプトエタノールを添加した細胞培地RPMI1640(ATCC,Manassas,Virginia,USA;ATCC1640 30-2001)を使用して、スピナーフラスコ内で培養した。細胞を、最適な分裂速度のため、105~106細胞/mlの密度で保持した。食作用アッセイの場合、THP1細胞を96ウェルプレートに200,000~400,000細胞/mlの密度で分布させ、12-ミリスチン酸ホルボール13-酢酸塩(PMA;Sigma)を25ng/mlで用いて48時間、次いでPMA+ヒトインターフェロンガンマ(IFNγ;Sigma)を20ng/mlで用いてさらに48時間かけて分化させた。
【0203】
単量体F87M/L110M-TTR突然変異体(AlexoTech AB,Umea,Sweden;T-509-10)を、この二重変異がTTR二量体及び四量体の形成を阻止し、それ故、ATTR凝集体のタンパク質標識及び形成を促進することから選択した。キットの使用説明書(Sigma,38371)に従い、F87M/L110M-TTRタンパク質をAtto-488蛍光色素と共役させ、次に37℃で4時間かけて凝集緩衝液(50mMの酢酸-HCl、100mMのKCl、1mMのEDTA、pH3.0)中、1mg/mlで凝集させ、蛍光標識ミスフォールドTTR凝集体(mis.TTR-488)の生成をもたらした。
【0204】
食作用アッセイの場合、抗体希釈系列を、150μg/mlで蛍光標識ミスフォールドTTRを添加したLife Cell Imaging Solution(LCIS,ThermoFischer A14291DJ)で調製し、RTで2時間プレインキュベートした。並行して、細胞培地を、0.1mg/mlの最終濃度でフコイダンを添加したLCISと交換し、37℃で30分間プレインキュベートした。食作用アッセイは、100μLのmis.TTR-488/抗体溶液をTHP1細胞に添加することによって開始させ、次いで37℃で90分間インキュベートした。細胞を氷冷PBSで洗浄することによってアッセイを停止させ、最終洗浄ステップにおいて、バックグラウンドサプレッサーを添加したLCISでウェルを満たした。細胞内mis.TTR-488の蛍光を、全ての読み取り部位/ウェルを用いて、498±5nmに設定した励起、520±5nmの放射、100msの持続時間、底の読み取りを伴うプレートリーダーを用いて測定した。食作用アッセイを、参照としての0.02~5nMの範囲の濃度のNI-301.37F1_3(1×NI301A)を使用して実施し、類似する希釈系列を、参照濃度の0.7倍のNI-301.37F1_3(0.7×_NI-301.37F1_3)によって調製した。この第2の条件を用いて、アッセイが、この実験においてNI-301.37F1_3濃度の30%低下によって再現された、抗体活性の潜在的低下を検出する能力を有するか否かを評価した。
【0205】
結果は、1×及び0.7×_NI-301.37F1_3の両方が、濃度依存性にTHP1細胞によるmis.TTR-488の食作用を誘発することを示した。1×_NI-301.37F1_3の用量応答は、1.2nMのEC
50によって、また0.7×_NI-301.37F1_3の用量応答は、1.5nMのEC
50によって特徴づけられた(
図2A、3連の平均値±SD)。0.7×_NI-301.37F1_3で認められた25%より低い効力は、このサンプルにおける30%より低い抗体濃度と十分に一致した。3連の平均値±SD。
【0206】
インビトロ食作用アッセイは、NI-301.37F1_W1非GMP製剤及びNI-301.37F1_W1 GMP原体を用いてさらに評価した。NI-301.37F1_3及びNI-301.37F1_W1抗体は、同じ配列を有し、それらの産生及び精製方法のみが異なる。両方の化合物は、0.09~20nMの範囲の希釈系列として調製した。結果は、NI-301.37F1_W1非GMP DP及びNI-301.37F1_W1 GMP DSの両方が、濃度依存性にTHP1細胞によるmis.TTR-488の食作用を誘発することを示した。NI-301.37F1_W1非GMP DP用量応答は、0.92nMのEC
50によって特徴づけられ、NI-301.37F1_W1 GMP DS用量応答は、0.54nMのEC
50によって特徴づけられた(
図2B)。しかし、このアッセイでは、3連が大きい変動性を示し、EC
50の信頼区間の計算の妨げとなった。
【0207】
実施例3:抗原結合分子が標的タンパク質の食作用を活性化する効力を測定するためのFcγR1レポーター細胞株を使用するADCPアッセイ
タンパク質凝集体結合分子の効力を測定するためのADCPアッセイを開発した。アッセイでは、ヒトFcγ受容体1(FcγR1)を発現するレポーター細胞株を使用し、例示的に(exemplary)、抗体NI-301.37F1_W1の、インビトロでミスフォールド野生型TTR(mis.WT-TTR)の食作用を活性化する効力を測定するその能力について評価している。抗体NI-301.37F1_W1及びNI-301.37F1_3の両方は、国際出願の国際公開第2015/092077A1号パンフレットに記載されている抗体NI-301.37F1を指し、それらの組換え産生及び精製方法のみが異なる。
【0208】
mis.WT-TTRの調製及び特徴づけ
ヒト血漿から精製した野生型TTRタンパク質は、Bio-Rad Laboratories,Inc.(California,USA;7600-0604)から入手し、プロテインA/Gクロマトグラフィー、次いでレクチンカラムを通じてカスタム精製を施し、残留した免疫グロブリンを除去した。血漿精製WT-TTRを、PBS緩衝液中、1mg/mlの濃度の溶液として準備した。ミスフォールドWT-TTR凝集体(mis.WT-TTR)を、WT-TTR保存液を凝集緩衝液(50mMの酢酸-HCl、100mMのKCl、1mMのEDTA、pH3.0)中、200μg/mlの濃度まで希釈し、次いで1000rpmで振盪しながら37℃で4時間インキュベートすることによって、インビトロで調製した。mis.WT-TTRを、アリコートし、使用するまで-20℃で貯蔵した。mis.WT-TTRの品質を、ELISA及びバイオレイヤー干渉法(BLI)によって確認した。
【0209】
ELISAの場合、96ウェルマイクロプレートを、pH7.4のPBS緩衝液中、10μg/mlの濃度に希釈したmis.WT-TTRで、37℃で1時間かけてコーティングした。非特異的結合部位を、PBS緩衝液中、2%ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.1%tween-20を含有するブロッキング緩衝液で、室温(RT)で1時間ブロッキングした。NI-301.37F1_3抗体(Neurimmune AG,Zurich,Switzerland;NI-301.37F1)を、2通りにPBS中の指定濃度まで希釈し、4℃で一晩インキュベートした。西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体を用いて結合を判定し、次いでHRP活性を標準比色分析(ThermoFisher Scientific Inc.,Waltham,Massachusetts,USA)で測定した。データを、GraphPad製のPrismソフトウェアで分析した。可変勾配による応答モデルに対する対数(アゴニスト)を用いる、個別のデータ点の非線形回帰を用いて、EC50値を評価した。データフィッティングを、最小二乗回帰法によって実施した。
【0210】
BLIは、抗ヒト捕捉センサーを備えたOctet RED96装置(Molecular Devices,LLC,San Jose,California,USA)上で実施した。結合動力学を、1×動力学的緩衝液(アッセイ緩衝液)中、25℃で測定した。NI-301.37F1_3抗体又はNI-301.37F1_W1抗体を、アッセイ緩衝液中、5μg/mlで希釈し、センサーに300秒間負荷した。Mis.WT-TTR凝集体を、アッセイ緩衝液で、6つの異なる濃度で希釈し、緩衝液のみの条件を、第7のセンサー及び第8のセンサーで同時に実行し、後者を参照として使用した。会合及び解離をそれぞれ、600秒間測定した。データは、データ分析8.2において、参照サブトラクション(緩衝液のみの条件)を用いて分析した。動態解析の場合、単純な1:1結合モデルを用いた。
【0211】
Mis.WT-TTRバッチ6(mis.WT-TTR_b6)を、それをmis.WT-TTRの先行バッチ(mis.WT-TTR_b5)と比較することによって品質制御を行った。分析は、NI-301.37F1_3及びNI-301.37F1_W1の結合をELISA及びBLIを用いて測定することによって実施した。ELISA結果は、mis.WT-TTR_b6に対するNI-301.37F1_3(
図3A)及びNI-301.37F1_W1(
図3B)の結合がmis.WT-TTR_b5に対する場合と実質的に一致することを示した。mis.WT-TTR_b5及びb6に対するNI-301.37F1_3の結合のEC
50はそれぞれ、1.3nM及び2nMであった。mis.WT-TTR_b5及びb6に対するNI-301.37F1_W1の結合のEC
50はそれぞれ、1.0nM及び1.4nMであった。また、BLIを用いて、Mis.WT-TTR_b6をb5と比較した。NI-301.37F1_3及びNI-301.37F1_W1はそれぞれ、0.93nM及び0.66nMの解離定数(KD)で、mis.WT-TTR_b6に結合した。これらの値は、以前の実験において0.66nMのKDと測定された、NI-301.37F1_3のmis.WT-TTR_b5に対する結合親和性と酷似していた。これに基づき、mis.WT-TTR_b6は、mis.WT-TTR_b5と類似し、ADCPレポーターアッセイにおける使用に適切であるとみなされた。
【0212】
ADCPレポーターアッセイ
NI-301.37F1_W1参照サンプル(NI-301.37F1_W1 RS)及び半分に濃縮された試験サンプル(NI-301.37F1_W1 50%)がmis.WT-TTRの食作用を活性化する効力を測定するため、市販のFcγR1 ADCPレポーターバイオアッセイ(Promega,Madison,Wisconsin,USA;早期アクセス(未検証)、CS1781C08)を適用している。この生物発光細胞ベースのアッセイは、ヒトFcγR1をNFAT応答エレメントによって駆動されるルシフェラーゼレポーターと一緒に発現する遺伝子改変JurkatT細胞株に依存する。抗体-標的複合体によるFcγR1活性化は、NFAT経路シグナル伝達の活性化、及び生物発光ルシフェラーゼ基質を用いて検出されるルシフェラーゼ発現を引き起こす。要するに、96ウェルプレートを、pH7.4のPBS緩衝液中、10μg/mlの濃度まで希釈したmis.WT-TTRで、37℃で1時間かけてコーティングした。非特異的結合部位を、PBS緩衝液中、2%ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.1%tween-20を含有するブロッキング緩衝液で、室温(RT)で1時間ブロッキングした。77,000細胞/ウェルの密度でFcγR1レポーター細胞を添加する前、NI-301.37F1_W1抗体を、3通りにPBS中の指定濃度まで希釈し、37℃で30分間インキュベートした。発光基質の添加前、アッセイ物を37℃で6時間インキュベートした。
【0213】
NI-301.37F1_W1 RS対NI-301.37F1_W1 50%
第1の実験では、NI-301.37F1_W1 RSを、3通りに2~10,000ng/mlの10点濃度範囲を用いて試験した。NI-301.37F1_W1 50%は、同じ希釈系列を用いて調製したが、2時点のより低い濃度(即ち、5,000ng/ml)から開始し、効力低下を再現した。
【0214】
NI-301.37F1_W1 RSは、97ng/mlのEC
50(95%信頼区間(CI) 79.4-116.7)によって特徴づけられる用量応答を示した。それに対し、NI-301.37F1_W1 50%は、187ng/mlのEC
50(156.2-223.6)によって特徴づけられる用量応答を示した(
図4)。1.9倍のEC
50の増加は、サンプルNI-301.37F1_W1 50%における2時点のより低い濃度と十分に一致した。NI-301.37F1_W1 RSのEC
50及びNI-301.37F1_W1 50%のEC
50は、統計学的に異なっていた(F(1,52):26.60,p<0.0001)。この結果は、FcγR1 ADCPアッセイが、抗体活性の50%低下を検出する能力を有することを示した。データは、NI-301.37F1_W1 RS用量応答がプラトー相で4つのデータ点を示すことも示した。これは、不必要であり、後続実験のための抗体濃度範囲の調節を誘発した。
【0215】
実験の第2セットを実施して、1)NI-301.37F1_W1 RS濃度範囲を調節し、2)NI-301.37F1_W1 RSを、35%より低い濃度及び35%より高い濃度を有するサンプル(それぞれ、NI-301.37F1_W1 65%及び135%)と比較し、3)水平なプレートレイアウト及び垂直なプレートレイアウトを比較し、且つ4)プレート均一性を試験した。
【0216】
水平レイアウトを使用するNI-301.37F1_W1 RS対NI-301.37F1_W1 65%及び135%
NI-301.37F1_W1 RS用量応答を、4~2000ng/mlの8点濃度範囲(即ち、2000、500、250、125、63、31、16、4ng/ml)に調整し、水平なプレートレイアウトを用いて2通りに試験した。プレート1内のNI-301.37F1_W1 RSは、93.7ng/mlのEC
50(95%CI 67.4-128.5)によって特徴づけられる用量応答を示した。それに対し、NI-301.37F1_W1 65%は、159ng/mlのEC
50(118.3-219.4)によって特徴づけられる用量応答を示した(
図5A)。NI-301.37F1_W1 RSのEC
50及びNI-301.37F1_W1 65%のEC
50は、統計学的に異なっていた(F(1,24):7.14,p=0.013)。この結果は、FcγR1 ADCPアッセイが、抗体活性の35%低下を検出する能力を有することを示した。しかし、1.7倍のEC
50の増加は、NI-301.37F1_W1 65%についての1.35の予想値とやや乖離していた。
【0217】
プレート2内のNI-301.37F1_W1 RSは、131.5ng/mlのEC
50(95%CI 103.2-170.1)によって特徴づけられる用量応答を示した。それに対し、NI-301.37F1_W1 135%は、76.7ng/mlのEC
50(68.1-86.2)によって特徴づけられる用量応答を示した(
図5B)。NI-301.37F1_W1 RSのEC
50及びNI-301.37F1_W1 135%のEC
50は、統計学的に異なっていた(F(1,24):20.97,p=0.0001)。この結果は、FcγR1 ADCPアッセイが、抗体活性の35%増加を検出する能力を有することを示した。しかし、0.6倍のEC
50の減少は、NI-301.37F1_W1 135%についての0.65の予想値と十分に一致した。
【0218】
プレート1及び2におけるNI-301.37F1_W1 RSについての用量応答の比較では、並行的に、同じ日に、そして同じ分析者によってこれらのプレートの実行がなされても生じた最大シグナル強度における特定の差異が示された。この差異は、3つのサンプルを同じプレート上で3通りに並行的に測定できると思われる垂直なプレートレイアウトの使用で生じ得る利益を例示した。
【0219】
垂直なレイアウトを使用するNI-301.37F1_W1 RS対65%及び135%
垂直なアッセイレイアウトを、上の3通りのサンプルと同じ濃度範囲を用いて評価した。垂直なアッセイレイアウトにおいて、NI-301.37F1_W1 RSは、70.0ng/mlのEC
50(95%CI 53.2-91.5)、NI-301.37F1_W1 65%は、99.5ng/mlのEC
50(82.7-119.1)、及びNI-301.37F1_W1 135%は、50.3ng/mlのEC
50(41.1-60.8)によって特徴づけられる用量応答を示した(
図6)。NI-301.37F1_W1 65%についての1.4倍のEC
50の増加、及びNI-301.37F1_W1 135%についての0.7倍のEC
50の低下は、それぞれのサンプル濃度と十分に一致した。NI-301.37F1_W1 RS及びNI-301.37F1_W1 65%は、統計学的に異なるEC
50値を示し(F(1,40):5.199,p=0.028)、且つNI-301.37F1_W1 RS及びNI-301.37F1_W1 135%は、統計学的に異なるEC
50値を示した(F(1,40):4.358,p=0.043)。これは、垂直なフォーマットを用いるFcγR1 ADCPアッセイが、抗体活性の±35%の変化を検出する能力を有することを示した。
【0220】
プレート均一性試験
プレート均一性評価を、プレートの全96ウェル内の12ng/mlのNI-301.37F1_W1を用いて実施した。24の外側ウェルは、60の内側ウェルで測定された場合よりも平均で5%低いシグナル強度を示した。この小さい差異は、統計学的に有意であった。さらに、全てのウェルが十分に信頼できる結果をもたらしたが、24の外側ウェルは、60の内側ウェルで観測された場合よりも大きい変動性を示した。
【0221】
実施例4:ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルを使用するFcγR1 ADCPアッセイの評価
実施例3に示したADCPアッセイをさらに評価するため、抗体NI-301.37F1_W1に、潜在的に抗体効力の低下を引き起こすことが知られているストレス条件を施している。
【0222】
ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルは、25mg/mlのNI-301.37F1_W1を以下に列記する5つの異なる緩衝液に透析することによって調製した。透析は、4℃で一晩実施し、次いで40℃で19時間インキュベートした。次に、ストレスを受けたサンプルを、4℃で一晩、調製用緩衝液に対して再び透析してからアリコートし、-20℃で貯蔵した。ストレスを受けたサンプルを調製するために使用した緩衝液は以下であった:
-酸性緩衝液:20mMリン酸緩衝液-クエン酸(PBCA)緩衝液、pH3.4
-調製用緩衝液:20mMヒスチジン-HCl、7%スクロース、0.02%PS80、pH5.8(Form°緩衝液)
-生理学的緩衝液:PBS、pH7.4
-基本緩衝液:20mMトリス-HCl、pH10.0
-酸化的緩衝液(oxidative buffer):PBS中、1%H2O2
【0223】
ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルを、mis.WT-TTRに対するそれらの結合親和性を上記のELISA及びBLIを用いて測定することによって特徴づけた。さらに、ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルは、還元及び非還元条件下でのSDS-PAGE及び考えられる凝集又は分解産物を特定するための標準技術に従う銀染色を用いて特徴づけた。ELISAでは、ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルは、参照NI-301.37F1_W1サンプルと高度に同等であり、サブナノモル範囲内のEC
50によって特徴づけられる、mis.WT-TTRに対する結合親和性を示した(
図7)。PBS緩衝液、1%過酸化水素、及びより少ない程度に調製用緩衝液でストレスを受けたサンプルは、参照サンプルより低い最大シグナル強度を示した。
【0224】
BLIを用いて類似した結果が得られ、BLIによって得られた結合結果の概要を
図8に表す。ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルは、参照NI-301.37F1_W1サンプルと同等であり、低いナノモル範囲内のKDによって特徴づけられる、mis.WT-TTRに対する結合親和性を示した。ELISAについては、PBS緩衝液又は1%過酸化水素下でストレスを受けたサンプルは、参照サンプルより低い最大シグナル強度を示した。SDS-PAGE及び銀染色を用いて、調製用緩衝液、リン酸緩衝液及びトリス緩衝液下でストレスを受けたサンプルは、還元及び非還元条件下で参照サンプルと類似するパターンを示した。PBCA緩衝液(pH3.4)下でストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルは、還元及び非還元条件下で可視である切断形態を示し、1%H
2O
2下でストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルは、非還元条件下で参照サンプルと明確に異なるパターンを示した。
【0225】
FcγR1 ADCPアッセイは、このアッセイが効力低下を検出する能力を有するか否かを評価することを目標に、ストレスを受けたNI-301.37F1_W1サンプルを用いて、実施例3に記載のとおりに実施した。3通りのサンプルの場合、垂直なアッセイレイアウトを使用した。アッセイプレート1では、NI-301.37F1_W1 RSは、95ng/mlのEC
50(95%CI 67-127)、PBCA緩衝液下でストレスを受けたNI-301.37F1_W1は、235ng/mlのEC
50(191-292)、及びトリス緩衝液下でストレスを受けたNI-301.37F1_W1は、180ng/mlのEC
50(120-385)によって特徴づけられる用量応答を示した(
図9A)。アッセイプレート2では、NI-301.37F1_W1 RSは、83ng/mlのEC
50(95%CI 52-138)、調製用緩衝液下でストレスを受けたNI-301.37F1_W1は、117ng/mlのEC
50(96-144)、及びH
2O
2緩衝液下でストレスを受けたNI-301.37F1_W1は、158ng/mlのEC
50(127-200)によって特徴づけられる用量応答を示した(
図9B)。
【0226】
ストレスを受けたサンプルが、ELISA及びBLIアッセイにおいて、NI-301.37F1_W1 RSと類似する結合親和性を示したことを考慮すると、これらの結果は、FcγR1 ADCPアッセイが、Fcドメイン変更に関する効力低下を検出する能力を有することを示した。
【0227】
実施例5:標的抗原としての環状ペプチドは抗原結合分子に対してより高い感度のELISAアッセイを提供する
抗原結合分子が環状ペプチドに結合する能力は、例示的に、標的抗原として野生型TTRのアミノ酸残基34~54を含む環状ペプチド(ビオチン化及び非ビオチン化形態でのTTR34-54cyc)及び抗原結合分子としての抗TTR抗体NI-301.37F1を用いるELISAアッセイによって評価している。さらに、抗原対照として、TTRペプチドTTR40-49、ビオチン化TTRペプチドTTR40-49、及びミスフォールド野生型TTR(mis.WT-TTR)を使用した。
【0228】
環状ペプチドTTR34-54cyc(1.36mg/mL)は、Schafer-N(Copenhagen,Denmark)によって作製し、-20℃で貯蔵している。特に、アミノ酸配列H-GCGGGRKAADDTWEPFASGKTSESGEGGGCG-OH(配列番号17)を含むペプチドは、固相ペプチド合成によって合成し、ポリグリシンストレッチ内の2つのシステイン残基間のジスルフィド架橋を介して環化している。アミノ酸配列H-TWEPFASGKT-OH(配列番号161)を含むTTRペプチド(TTR40-49,1.25mg/mL)もまた、Schafer-N(Copenhagen,Denmark)によって作製し、-20℃で貯蔵している。ビオチン化ペプチドのビオチン.TTR34-54cyc及びビオチン.TTR40-49はそれぞれ、それらのN末端とビオチン残基との間にアミノヘキサン酸(Ahx)スペーサーを含む、即ち、ビオチン.TTR34-54cyc(ビオチン-(Ahx)GCGGGRKAADDTWEPFASGKTSESGEGGGCG-OH(配列番号17)、680μg/mL)及びビオチン.TTR40-49(ビオチン-(Ahx)TWEPFASGKT-OH、(配列番号161)、700μg/mL)である。ミスフォールド野生型TTRは、実施例3、上記に記載のとおりに調製している。
【0229】
2通りのELISAアッセイを実施しており、ここで第1のELISAアッセイ(ELISA-1)では、ペプチドTTR34-54cyc、TTR40-49、ビオチン.TTR40-449、及びmis-WT-TTRに結合する抗体を分析しており、第2のELISAアッセイ(ELISA-2)では、ペプチドTTR34-54cyc、ビオチン.TTR34-54cyc、TTR40-49、ビオチン.TTR40-449、及びmis-WT-TTRに結合する抗体を分析している。
【0230】
特に、96ウェルマイクロプレートを、TTR34-54cyc、TTR40-49、ビオチン.TTR40-449、及びmis-WT-TTR(ELISA-1)、並びにTTR34-54cyc、ビオチン.TTR34-54cyc、TTR40-49、ビオチン.TTR40-449、及びmis-WT-TTR(ELISA-2)でそれぞれ、37℃で1時間かけてコーティングし、ここで各標的抗原は、pH7.4のPBS緩衝液中、10μg/mlの濃度に希釈している。非特異的結合部位は、PBS緩衝液中、2%ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.1%tween-20を含有するブロッキング緩衝液で、室温(RT)で1時間ブロッキングした。NI-301.37F1抗体(Neurimmune AG,Zurich,Switzerland;NI-301.37F1)を、ブロッキング緩衝液中の指定濃度(400nM~4pM及び0の希釈系列)まで2通りに希釈し、4℃で一晩インキュベートした。西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体を用いて結合を判定し、次いでHRP活性を標準比色分析(ThermoFisher Scientific Inc.,Waltham,Massachusetts,USA)で測定した。データを、GraphPad製のPrismソフトウェアで分析した。可変勾配による応答モデルに対する対数(アゴニスト)を用いる、個別のデータ点の非線形回帰を用いて、EC50値を評価した。データフィッティングを、最小二乗回帰法によって実施した。
【0231】
ELISAの結果では、実施例3、上記でも認められたとおり、NI-301.37F1のmis.WT-TTRへの結合が確認された。さらに、ELISAアッセイは、NI-301.37F1の環状TTR34-54cyc及びビオチン.TTR34-54cycペプチドへの結合が、mis.WT-TTRへの結合よりもはるかに強力である、即ち約10倍強力であることを示した。特に、ELISA-1では、NI-301.37F1の環状TTR34-54cycペプチドに対する結合EC
50は、27pMであり、NI-301.37F1のmis.WT-TTRに対する結合EC
50は、338pMであったが;
図10Aを参照されたい。ELISA-2では、測定されたEC
50値は、より高かったが、NI-301.37F1の環状TTR34-54cycペプチドへの結合とmis.WT-TTRへの結合との間の約10倍の差は維持された。特に、NI-301.37F1の環状TTR34-54cycペプチドに対する結合EC
50は、0.66nMであり、NI-301.37F1のmis.WT-TTRに対する結合EC
50は、8.3nMであったが;
図10Bを参照されたい。NI-301.37F1のTTR40-49及びビオチン.TTR40-49への結合は、両方のELISAアッセイにおいて認められなかった。
【0232】
実施例6:標的抗原としての環状ペプチドの使用による改善されたADCPアッセイ
抗原結合分子の効力を測定するためのADCPアッセイを開発した。アッセイでは、ヒトFcγ受容体1(FcγR1)を発現するレポーター細胞株を使用し、例示的に(exemplary)、抗体NI-301.37F1の、インビトロで環状TTRペプチド(TTR34-54cyc)の食作用を活性化する効力を測定するその能力について評価している。
【0233】
ADCPレポーターアッセイ
NI-301.37F1参照サンプル(NI-301.37F1 RS,100%)、並びに50%より低い濃度(NI-301.37F1 50%)、30%より低い濃度(NI-301.37F1 70%)、30%より高い濃度(NI-301.37F1 130%)、及び50%より高い濃度(NI-301.37F1 150%)を有する試験サンプルの、TTR34-54cycの食作用を活性化する効力を測定するため、市販のFcγR1 ADCPレポーターバイオアッセイ(Promega,Madison,Wisconsin,USA,Cat.#GA1341,GA1345、早期アクセスとして実施例3に記載されているもののCS1781C08と同じである)を、わずかなバリエーションがあるが実施例3に記載のように適用している。要するに、96ウェルプレートを、PBS緩衝液中、3μg/mlの濃度まで希釈したTTR34-54cycで、4℃で一晩かけてコーティングした。非特異的結合部位を、PBS緩衝液中、2%ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.1%tween-20を含有するブロッキング緩衝液で、室温(RT)で1時間ブロッキングした。測定用の希釈プレートを調製し、ここでNI-301.37F1抗体は、ADCP緩衝液(96%RPMI1640培地、4%低IgG血清)中の指定濃度(500ng/mL~0.4ng/mL)まで希釈した。アッセイを、1単位の体積の抗体希釈物を添加することによって実施し、37℃及び5%CO2で30分間かけてインキュベーションを実施してから、1単位の体積のFcγR1レポーター細胞を、ADCP緩衝液中、約1.65×105細胞/ウェルの密度で添加した)。アッセイ物を37℃及び5%CO2で6時間インキュベートしてから、発光基質(Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬)を添加した。室温でインキュベーションの15分後、発光の測定を実施した(取り込み時間:1000ms、定着時間:0ms)。
【0234】
NI-301.37F1 RS対NI-301.37F1 50%、NI-301.37F1 70%、NI-301.37F1 130%、及びNI-301.37F1 150%
第1の実験では、抗体NI-301.37F1 RSが19.8ng/mlのEC
50によって特徴づけられる用量応答を示すことが示された。特に、プレートを3μg/mLの環状ペプチドTTR34-54cycでコーティングし、500~0.4ng/mLの範囲の抗体希釈物を試験している。これらの条件は、安定な勾配、下方及び上方漸近線による合理的な応答曲線をもたらしたが;
図11を参照されたい。
【0235】
さらなる実験を実施しており、ここでは、アッセイの応答を、50%、70%、130%及び150%のNI-301.37F1濃度で試験した。
図12A~D及び下の表3に示すとおり、NI-301.37F1 50%は、39ng/mlのEC
50によって特徴づけられる用量応答を示した。1.97倍のEC
50の増加は、サンプルNI-301.37F 50%における2時点のより低い濃度とほぼ完全に一致した。NI-301.37F1 70%は、30.4ng/mlのEC
50によって特徴づけられる用量応答を示した。1.43倍のEC
50の増加は、1.54倍の予想された差異と非常に良く一致した。NI-301.37F1 130%は、13.6ng/mlのEC
50によって特徴づけられる用量応答を示した。0.77倍のEC
50の増加は、0.77倍の予想された差異と完全に一致した。NI-301.37F1 150%は、13.5ng/mlのEC
50によって特徴づけられる用量応答を示した。0.67倍のEC
50の増加は、0.70倍の予想された差異とほぼ完全に一致した。
【0236】
したがって、アッセイの変動性はほとんど認められず、結果は、アッセイが抗体濃度変化に応答していることを示した。特に、FcγR1 ADCPアッセイが、優れた精度で、抗体活性の最大50%の低下、及び抗体活性の最大50%の増加を検出する能力を有することが示された。
【0237】
【0238】
実施例7:抗原結合分子に対する標的抗原としてのさらなる環状ペプチドの評価
実施例5に示すとおり、ELISAアッセイにおいて、環状ペプチドTTR34-54cycを抗体NI-301.37F1に対する標的抗原として使用することに成功している。したがって、抗TTR抗体の、さらなる環状ペプチドに結合する能力を分析する。特に、抗TTR抗体の、TTRエピトープEHAEVVFTA(配列番号8)又はTTRエピトープGPRRYTIAA(配列番号9)のいずれかを含む2つの環状ペプチド、即ち、上述されているTTR89-97cyc及びTTR101-109cycに結合する能力を、標的抗原として前記環状ペプチド、並びに抗原対照としてTTRペプチドTTR40-49、ビオチン化TTRペプチドTTR40-49及びミスフォールド野生型TTR(mis.WT-TTR)を用いるさらなるELISAアッセイによって評価する。対応するペプチド及びmis.WT-TTRを、実施例5、上記に記載のとおりに調製する。ELISAアッセイの場合、96ウェルマイクロプレートを、TTR89-97cyc及びTTR101-109cyの2つの環状ペプチド並びに抗原対照でコーティングし、アッセイを実施例5、上記に記載のとおりに実施する。
【0239】
実施例8:抗原結合分子の、さらなる環状ペプチドの食作用を活性化する効力を測定するためのFcγR1レポーター細胞株を使用するADCPアッセイ
実施例6に示すとおり、抗TTR抗体NI-301.37F1の、インビトロで環状TTRペプチド(TTR34-54cyc)の食作用を活性化する効力を、ADCPアッセイにおいて測定することに成功している。したがって、抗TTR抗体の、TTR89-97cyc及びTTR101-109cycの2つの環状ペプチドの食作用を活性化する効力を、さらなるADCPアッセイにおいて評価する。
【0240】
抗TTR抗体参照サンプル(抗TTR抗体RS,100%)、並びに50%より低い濃度(抗TTR抗体、50%)、30%より低い濃度(抗TTR抗体、70%)、30%より高い濃度(抗TTR抗体、130%)、及び50%より高い濃度(抗TTR抗体、150%)を有する試験サンプルの、前記2つの環状ペプチドの食作用を活性化する効力を測定するため、実施例6に記載されている市販のFcγR1 ADCPレポーターバイオアッセイ(Promega,Madison,Wisconsin,USA,Cat.#GA1341,GA1345)を適用している。
【0241】
抗TTR抗体がある用量応答を示すことが予想され、ここで抗TTR抗体50%は、抗TTR抗体RSと比較して約2倍増加したEC50値を示すことになり、抗TTR抗体70%は、抗TTR抗体RSと比較して約1.5倍増加したEC50値を示すことになり、抗TTR抗体130%は、抗TTR抗体RSと比較して約0.77倍減少したEC50値を示すことになり、そして抗TTR抗体150%は、抗TTR抗体RSと比較して約0.70倍減少したEC50値を示すことになる。
【配列表】
【国際調査報告】