(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】脂肪肝の予防、及び治療
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20241129BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20241129BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241129BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20241129BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241129BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241129BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241129BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20241129BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20241129BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P3/06
A61P1/16
A61K35/745
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533245
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2022083885
(87)【国際公開番号】W WO2023099579
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524210080
【氏名又は名称】カイルス・ファーマシューティカルズ・ベー・フェー
(71)【出願人】
【識別番号】515134151
【氏名又は名称】シュティッヒティング・アムステルダム・ウーエムセー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アー・ヘー・ホレボーム
(72)【発明者】
【氏名】マックス・ニウドルプ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレム・メインデルト・デ・フォス
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB07
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
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4C087MA02
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA43
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA75
4C087ZC33
(57)【要約】
本発明は、脂肪肝(hepatic steatosis)、特に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び/又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の予防、及び/又は治療に使用するためのAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種に関し、その使用は、肝炎を軽減するため、及び/又は肝壊死炎症活性スコアを軽減するために胆汁酸血漿レベルを増加させるためのものである。前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種は、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、好ましくはBifidobacterium animalis subsp. lactis、若しくはその近縁種、及び/又はBifidobacterium breve、若しくはその近縁種と組み合わせてもよい。
追加的、又は代替的に、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種は、少なくとも一種のAkkermansia属菌、好ましくはAkkermansia muciniphila、又はその近縁種と組み合わせてもよい。追加的、又は代替的に、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種は、少なくとも一種のLactobacillus属菌、好ましくはLactobacillus acidophilus、若しくはその近縁種、Lactobacillus casei、若しくはその近縁種、及び/又は
Lactobacillus reuteri、若しくはその近縁種である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、又は配列番号2と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子配列を有する、脂肪肝の予防、及び/又は治療における使用のためのAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種であって、少なくとも一種のBifidobacterium属菌と組み合わせられる前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項2】
前記少なくとも一種のBifidobacterium属菌は、
- 配列番号3と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子配列を有する、Bifidobacterium animalis subspecies lactis、若しくはその近縁種、及び/又は
- 配列番号6と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子配列を有する、Bifidobacterium breve、若しくはその近縁種
から選択される、請求項1に記載の使用のためのAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項3】
前記使用は、さらに肝壊死炎症活性スコアを低下させるための使用である、請求項1又は2に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項4】
前記脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及び/又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項5】
前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種は、少なくとも一種のAkkermansia属菌と組み合わせられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項6】
前記少なくとも一種のAkkermansia属菌が殺菌の対象となる、請求項5に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項7】
前記少なくとも一種のAkkermansia属菌は、配列番号12と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するAkkermansia muciniphila 、又はその近縁種である、請求項5又は6に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項8】
前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種は、少なくとも一種のLactobacillus属菌と組み合わされる、請求項1~7のいずれか一項に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項9】
前記少なくとも一種のLactobacillus属菌は、
- 配列番号14と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するLactobacillus acidophilus 、若しくはその近縁種、
- 配列番号15と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するLactobacillus casei、若しくはその近縁種、
- 配列番号16と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するLactobacillus reuteri、若しくはその近縁種、及び/又は
- 配列番号17と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するLactobacillus rhamnosus、若しくはその近縁種
から選択される、請求項8に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項10】
好ましくは、健康なドナーから得られる、糞便物質に含まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項11】
前記糞便物質は、ヴィーガン食に従ったドナーから得られる、請求項10に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項12】
前記糞便物質中に少なくとも10
8細胞の前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種を含む、請求項10又は11に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項13】
マイクロカプセル化、又は凍結乾燥された形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項14】
好ましくは生理学的に許容される担体を含む組成物に含まれる、請求項1~13のいずれか一項に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項15】
前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種は、10
14~10
15コロニー形成単位(CFU)の範囲の量で組成物中に存在する、請求項14に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【請求項16】
前記組成物は、
- 好ましくは例えばカプセル、錠剤、若しくは粉末などの固形投与形態である、医薬組成物、及び/又は
- 好ましくは乳製品、より好ましくは発酵乳製品、最も好ましくはヨーグルト、又はヨーグルト飲料である、食品組成物
である、請求項14又は15に記載のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪肝(hepatic steatosis)の予防、及び治療の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、世界で最も流行している慢性肝疾患として認識されており、その範囲は、単純性脂肪症(非アルコール性脂肪肝)から、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、NASH-線維症、肝硬変、肝細胞癌に及ぶ。現在推定されているNAFLDの世界的有病率は、一般集団で25%~30%、メタボリックシンドロームやII型糖尿病を有する人では80%に達する。定義上、過剰なアルコール摂取はNAFLDの診断から除外する。
【0003】
NAFLDとは、アルコールをほとんど、又は全く飲まない患者において、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する一連の疾患を指す。NAFLDの最も一般的な病型は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と呼ばれる。NAFLDの発症と進行はインスリン抵抗性によって強く誘導されるため、NAFLDの臨床開発では複数の治療戦略が、インスリン抵抗性を低下させることを目的としている。
【0004】
NASHとは、脂肪肝に伴う脂質毒性によって引き起こされる肝炎のことを指す。NASHは肝硬変や肝細胞癌(HCC)の発症リスクを著しく増加させ、動脈硬化性心血管系疾患の増加と関連している。NAFLD/NASHとインスリン抵抗性との関連は周知であることから、インスリン抵抗性を低下させる戦略はNAFLD/NASHの疾患の進行を遅く、又は症状を軽減させる可能性がある。
【0005】
腸内細菌叢はNAFLD、並びにNASHの発症、及び有病率に関連している。植物ベースで動物性タンパク質の少ない食事を摂っている人では、疾患の発生が有意に低く、これは腸内細菌叢が介在していると考えられている。それゆえ、Witjesら(Hepatology Communications,4巻,11号, 2020)は、痩せたヴィーガンドナーからの糞便微生物叢の移植を潜在的治療法として提案している。
【0006】
しかしながら、NAFLD、及びNASHの予防、及び治療における新規かつ改良された治療に対する必要性が当技術分野において存在する。
【0007】
本開示の目的は、他の目的の中でも特に、当該技術分野における上記の必要性に対処して、NAFLD、並びにNASHを予防、及び/又は治療するための新規、及び/又は改善された戦略を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】WitjesらHepatology Communications,4巻,11号, 2020
【非特許文献2】Kleinerら 41巻6号(2005年6月)
【非特許文献3】ShettyらInt J Syst Evol Microbiol. 2018 Dec;68(12):3741-3746
【非特許文献4】Colladoら Appl Environ Microbiol 2007 Dec;73(23):7767-70
【非特許文献5】Devereux,Jら Nucleic Acids Research (1984) 12(1):387
【非特許文献6】Atschul,S.F.ら J. Molec. Biol. (1990) 215:403
【非特許文献7】Bottacini ら 2011, J Bacteriol 193: 6387-6388
【非特許文献8】Kankainen ら 2009 106:17193-8
【非特許文献9】Chiang Liver Res. 2017 Jun; 1(1): 3-9
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、脂肪肝を有する対象にAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種を投与すると、肝炎を軽減させる胆汁酸血漿レベルが上昇することを見出した。従って、Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種の投与は、脂肪肝(hepatic steatosis)の予防、及び/又は治療のための戦略において適用され得る。
【0010】
さらに、Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種を、Bifdobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌と組み合わせることにより、脂肪肝、特に非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、及び/又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の予防、若しくは治療において相乗的な治療効果が得られることが見出された。
【0011】
本開示は、脂肪肝、NAFLD、及び/又はNASHを予防、並びに/又は治療するための新規かつ改良された戦略を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、配列番号1、及び/又は配列番号2と少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子配列を有するAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種に関し、特に脂肪肝の予防、及び/又は治療に使用するため、並びに/又は腸におけるプロピオン酸/プロピオン酸塩、及び/又は酪酸/酪酸塩、又はそれらの誘導体の産生を増加させるためのAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種に関する。
【0013】
上記に従って、本開示は、例えば、それを必要とする対象において、脂肪肝を予防、及び/又は治療するための方法であって、例えば、前記対象への、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種の投与を含む、方法に関する。
【0014】
脂肪肝は、肝臓に余分な脂肪が蓄積した状態である。脂肪肝の疾患には、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)とアルコール性肝疾患の二つの病期がある。NAFLDは、単純性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からなる。
【0015】
本開示において、脂肪肝は、特に、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、及び/又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から選択され得る。
【0016】
用語「非アルコール性脂肪肝疾患」(NAFLD)とは、アルコールをほとんど飲まない人の肝臓に余分な脂肪が蓄積した状態の一群を指す。NAFLDの最も一般的な病期は脂肪肝(fatty liver)と呼ばれる。NAFLDはインスリン抵抗性、及びII型糖尿病と強く関連しているため、NAFLDの治療はインスリン抵抗性を低下させることを目的とする。
【0017】
用語「非アルコール性脂肪肝炎」(NASH)は、肝臓に脂肪が蓄積することによって引き起こされる肝臓の炎症と損傷(damage)を指す。NASHは、肝硬変や肝細胞癌の発症リスクを著しく高めるだけでなく、心血管疾患のリスク上昇など、肝臓の損傷とは直接関係のない他の疾患とも関連している。インスリン抵抗性とNASH(/NAFLD)の発症との関連はよく知られており、インスリン抵抗性を低下させる戦略はNASH(/NAFLD)の疾患の進行や症状を減少させる可能性がある。
【0018】
本開示による使用は、胆汁酸、特に一次胆汁酸(コール酸、及びケノデオキシコール酸)、及び/又は二次胆汁酸(デオキシコール酸、及びリトコール酸)の血漿レベルを増加させ得る。これは、次いで、肝炎(例えば、以下に示すように、小葉炎症スコア0~3、微小肉芽腫スコア0~1、大型脂肪肉芽腫スコア0~1、及び/若しくは門脈炎症スコア0~1(の合計)により決定される;又は壊死炎症活性スコア(NAS)により決定される)を減少させる。したがって、本開示による使用は、肝炎(例えば、以下に示すように、小葉炎症スコア0~3、微小肉芽腫スコア0~1、大型脂肪肉芽腫スコア0~1、及び/若しくは門脈性炎症スコア0~1(の合計)によって決定される;又は壊死性炎症活性スコアによって決定される)を低減し得る。
【0019】
本開示の一部としての胆汁酸血漿レベルの増加は、好ましくは、以下の方法の一つ以上によって示される:薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)超臨界流体クロマトグラフィー、及びキャピラリー電気泳動、イムノアッセイ、及び生物発光アッセイ。
【0020】
特に好ましい実施形態において、本開示による使用は、肝壊死炎症活性スコアを低下させるためのものである。
【0021】
用語、肝壊死炎症活性スコアは、NAFLDスコア、及び/又はNASHスコアという用語と互換性がある。
【0022】
肝壊死炎症活性スコアを決定するには、Kleiner ら 41巻6号(2005年6月)に記載されているように、NASH Clinical Research Network(NASH-CRN)分類を使用することができる(例えば、脂肪症、炎症、バルーニングにはヘマトキシリン・エオジン染色スライドを使用し、線維症の評価にはシリウスレッド染色スライドを使用する)。スコアは好ましくは、脂肪沈着度(0~3)、小葉性炎症度(0~3)、肝細胞バルーン化度(0~2)の加重なし合計である。以下を参照:
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0023】
本開示による使用はまた:
- 特に上記で定義されるような脂肪症グレードスコア(スコア1、2、3);及び/又は
- 特に上記で定義されるような線維症病期スコア(スコア1、1A、1B、1C、2、3、又は4)
を減少させ得る。
【0024】
本開示によるAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種は、好ましくは、Anaerobutyricum 属菌、又はEubacterium 属菌から選択され、好ましくは、Anaerobutyricum soehngenii (例えば、DSM17630/KCTC15707)、及び/又はAnaerobutyricum hallii(DSM3353/ATCC27751)である。
【0025】
Shettyらの研究(Int J Syst Evol Microbiol. 2018 Dec;68(12):3741-3746)では、以前はEubacterium halliiとして知られていた細菌種が二つのグループに再分類された: Anaerobutyricum hallii、及びAnaerobutyricum soehngenii である。Anaerobutyricum soehngenii、及び/又はAnaerobutyricum halliiの両細菌種は、ファーミキューテス門のClostridial cluster XIVa(Lachnospiracaeaとしても知られる)に属する嫌気性グラム陽性カタラーゼ陰性細菌と考えられている。
【0026】
最も好ましくは、本開示による少なくとも一種のAnaerobutyricum 属菌は、Anaerobutyricum soehngenii (例えば、DSM17630/KCTC15707)、又はAnaerobutyricum soehngenii の16S rDNA配列(配列番号1)と少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子配列を有するその近縁種である。16S rDNAの類似性に基づくこのようなカットオフ値は、類似の特性、及び/又は機能性を有する細菌種を定義することができる。
【0027】
追加的、又は代替的に、本開示によるAnaerobutyricum 属菌は、Anaerobutyricum hallii(DSM3353/ATCC27751 など)、又はAnaerobutyricum halliiの16S rDNA配列(配列番号2)と少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子配列を有するその近縁種である。16S rDNA類似性に基づくこのようなカットオフ値は、類似の特性、及び/又は機能性を有する菌種を定義することができる。
【表2A】
【表2B】
【0028】
好ましい実施形態において、本開示によるAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種は、少なくとも一種のBifdobacterium 属菌と組み合わされる。これは相乗的な組み合わせであり、肝壊死炎症活性スコアの予想外の減少をもたらすことが見出された。
【0029】
前記Bifdobacterium 属菌は、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種と別個に、順次、又は同時に投与することができる。従って、前記Bifdobacterium 属菌は、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種に関して、同一組成物、又は別組成物で含まれ得る。
【0030】
Bifdobacterium属はグラム陽性で、通常は非運動性、しばしば分岐を有する嫌気性細菌の属である。ビフィズス菌(Bifidobacteria)は、ヒトを含む哺乳類の消化管、膣、口腔内に広く生息している。ビフィズス菌は、哺乳類の消化管微生物叢を構築する主要な細菌属の一つである。本開示による少なくとも一種のBifidobacterium 属菌は、好ましくは、ヒトミルクオリゴ糖(HMOs)を同化することができる。
【0031】
本開示の少なくとも一種のBifdobacterium 属菌は、好ましくは:
- Bifidobacterium animalis sub. lactis のタイプ株の16S rRNA遺伝子配列(NCBIアクセッションコードNR_040867、配列番号3)と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifidobacterium animalis sub. lactis、又はその近縁種;
- Bifdobacterium infantis のタイプ株の16S rRNA遺伝子配列(NCBIアクセッションコードD86184、配列番号4)と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifdobacterium infantis(HMOを同化することができる)、又はその近縁種;
- Bifdobacterium longum のタイプ株の16S rRNA遺伝子配列(NCBIアクセッションコードM58739、配列番号5)と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifdobacterium longum(HMOを同化することができる)、又はその近縁種;
- Bifdobacterium breve のタイプ株の16S rRNA遺伝子配列(NCBIアクセッションコードAB006658、配列番号6)と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifdobacterium breve(HMOを同化できる)、又はその近縁種;
- Bifidobacterium thermophilum のタイプ株(NCBIアクセッションコードAB016246、配列番号7)の16S rRNA遺伝子配列と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifidobacterium thermophilum、又はその近縁種;
- Bifdobacterium bifidum のタイプ株(NCBIアクセッションコードM38018、配列番号8)の16S rRNA遺伝子配列と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifdobacterium bifidum、又はその近縁種;
- Bifidobacterium adolescentis のタイプ株(NCBIアクセッションコードM58729、配列番号9)の16S rRNA遺伝子配列と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifidobacterium adolescentis、又はその近縁種;
- Bifidbacterium catenulatum のタイプ株(NCBIアクセッションコードM58732、配列番号10)の16S rRNA遺伝子配列と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifidbacterium catenulatum、又はその近縁体;
- Bifidobacterium pseudocatenulatum のタイプ株の16S rRNA遺伝子配列(NCBIアクセッションコードD86187、配列番号11)と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するBifidobacterium pseudocatenulatum、又はその近縁種
の一つ以上を含む。
【0032】
特に好ましい実施形態において、Bifdobacterium 属菌は:
- 配列番号3と少なくとも90、95、97、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子配列を有するBifdobacterium animalis sub. lactis、又はその近縁種;及び/又は
- 配列番号6と少なくとも90、95、97、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子配列を有するBifdobacterium breve、又はその近縁種
から選択される。
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【表3D】
【表3E】
【表3F】
【表3G】
【表3H】
【0033】
別の特に好ましい実施形態において、本開示によるAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、及び/又は少なくとも一種のBifdobacterium 属菌は、少なくとも一種のAkkermansia 属菌と組み合わされ、好ましくは、前記少なくとも一種のAkkermansia 属菌は殺菌(すなわち、55~99 ℃、好ましくは65~80 ℃で5~60秒間、又は1~60分間、好ましくは60~80 ℃で20~40分間、より好ましくは65~75 ℃で25~35分間加熱する)されている。これはさらに相乗的な組み合わせであり、肝壊死炎症活性スコアの予想外の低下をもたらすことがわかった。
【0034】
前記少なくとも一種のAkkermansia 属菌は、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、及び/又は前記少なくとも一種のBifidobacterium 属菌と別個に、順次に、又は同時に投与することができる。従って、前記Akkermansia 属菌は、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、及び/又は前記少なくとも一種のBifidobacterium 属菌に関して、同一組成物中、又は別組成物中に含まれ得る。
【0035】
好ましくは、本開示による少なくとも一種のAkkermansia 属菌は、配列番号12と少なくとも90、95、97、99、又は100%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するAkkermansia muciniphila、又はその近縁種である。
【0036】
Akkermansia属はVerrucomicrobia門の一属である。Akkermansia属は、栄養素の吸収能力を維持しながら、腸管内の望ましくない管腔内容物を適切に封じ込める腸粘膜の性質を指す、腸粘膜バリア機能、又は腸管バリア機能を改善することが判明した。微生物、毒素、抗原などの炎症性分子への暴露から粘膜組織と循環系を保護するその役割は、健康と幸福の維持に不可欠である。したがって、Akkermansia 属菌は、食物アレルギー、微生物感染、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、セリアック病、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝疾患、糖尿病、敗血症性ショックなど、数多くの健康状態に関与している腸粘膜バリア機能不全を予防したり、治療に使用したりすることができる。Collado ら 2007(Appl Environ Microbiol 2007 Dec;73(23):7767-70)を参照。又はAppl Environ Microbiol. 2020 Mar 18;86(7):e03004-19を参照。
【0037】
本開示の少なくとも一種のAkkermansia 属菌は、好ましくは:
- Akkermansia muciniphila のタイプ株の16S rRNA遺伝子配列(NCBIアクセッションコードAY271254、配列番号12)と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するAkkermansia muciniphila(HMOを同化できる)、又はその近縁種
- Akkermansia glycanipila のタイプ株の16S rRNA遺伝子配列(NCBIアクセッションコードNR152695、配列番号13)と少なくとも90、95、97、98、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するAkkermansia glycanipila、又はその近縁種
の一つ以上を含む。
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【0038】
別の特に好ましい実施形態において、本開示によるAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、及び/又は少なくとも一種のBifdobacterium 属菌、及び/又は少なくとも一種のAkkermansia 属菌は、少なくとも一種のLactobacillus 属菌と組み合わされる。これはさらに相乗的な組み合わせであり、肝壊死炎症活性スコアの予想外の減少をもたらすことが見出された。
【0039】
前記少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、及び/又は前記少なくとも一種のBifdobacterium 属菌、及び/又は前記少なくとも一種のAkkermansia 属菌と別々に、順次に、又は同時に投与することができる。従って、前記Lactobacillus 属菌は、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、及び/又は前記少なくとも一種のBifdobacterium 属菌、及び/又は前記少なくとも一種のAkkermansia 属菌に関して、同一組成物中、又は別組成物中に含まれ得る。
【0040】
前記Lactobacillus 属菌は、好ましくは以下から選択される
- 配列番号14と少なくとも90、95、97、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するLactobacillus acidophilus、又はその近縁種;
- 配列番号15と少なくとも90、95、97、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するLactobacillus casei、又はその近縁種;
- 配列番号16と少なくとも90、95、97、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するLactobacillus reuteri、又はその近縁種;及び/又は
- 配列番号17と少なくとも90、95、97、99、100%の配列同一性を有する16S rRNA配列を有するLactobacillus rhamnosus、又はその近縁種。
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【表5D】
【0041】
好ましい実施形態において、本開示は、任意のRuminococcus 属菌(例えば、Ruminococcus flavefaciens、R. torques、又はR. faecis)任意のFaecalibacterium 属菌(例えば、Faecalibacterium prausnitzii)、及び/又はPrevotella copriなどの任意のPrevotella 属菌の使用(例えば、共投与による)を除外する。
本開示は、本開示による予防、及び/又は治療において改善された効果を得るために、任意のAnaerostipes 属菌(特に、Anaerostipes rhamnisovorans)、又は任意のFaecalibacterium 属菌(例えば、Faecalibacterium prausnitzii)を含み得る、又は排除し得る。
【0042】
本開示によるAnaerobutyricum soehngenii 、若しくはその近縁種、Bifdobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌が、糞便中に含まれることが想定される。
【0043】
本開示によるAnaerobutyricum soehngenii 、若しくはその近縁種、Bifdobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌は、例えば、一つ、又は複数のドナー対象から得られた糞便物質、又はそれに由来するものであってもよい。本明細書で使用される用語「ドナー」は、糞便を提供する対象を示す。本開示による糞便物質は、このようにドナーに由来し、レシピエントに投与され得る。任意選択で、処理後、糞便物質はレシピエントに投与される。一つ以上のドナー対象は、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒトである。また、レシピエントは好ましくは哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0044】
好ましくは、糞便物質は少なくとも1人の健康な(ヒト)ドナーから得られ、より好ましくは、ベジタリアン食、最も好ましくはヴィーガン食に従っている(、又は従った)少なくとも1人の(ヒト)ドナーから得られる。ベジタリアン食は、肉類、家禽類、又は魚介類を一切含まないか、1ヶ月あたり多くても0.1、0.5、1kgの肉類、家禽類、又は魚介類を含む。ヴィーガン食は、肉類、家禽類、魚介類、又は動物由来の食品を一切含まないか、1ヶ月あたり多くても0.1、0.5、1kgの肉類、家禽類、又は魚介類、又は動物由来の食品を含む。健康なドナーは、例えば、Lise Sofieら(2019, Transfusion and Apheresis Science, Volume 58, Issue 1, P113-116)の表1に記載されているような状態を有していないドナーとみなすことができる。
【0045】
選択されたドナー対象は、好ましくは18~27の間、好ましくは20~25kg/m2の間のBMIを有する。本明細書で使用される用語「ボディマス指数」、又は「BMI」は、人の質量をその人の身長の2乗で割った値を示し、kg/m2で表される。選択されたドナー対象は、好ましくは、30歳未満、又は35歳未満の年齢を有する。例えば、少なくとも1人のドナー対象は、18歳から30歳の間、例えば20歳から25歳の間の年齢を有する。追加的、又は代替的に、選択されたドナーは、例えば、Whole Fiber、WO2021/204719参照(例えば、1ヶ月あたり少なくとも0.1、0.5、1kgのプレバイオティック繊維)などのプレバイオティック繊維(便中の酪酸産生を増加させる)が豊富な食事に従う(又は従ってきた)。
【0046】
加えて、又は代替的に、少なくとも一種のドナー対象は、糞便物質中のBifidobacterides 目細菌の相対的存在量が少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30%(他の属の菌の数と比較して)である。加えて、又は代替的に、少なくとも一種のドナー対象は、糞便物質中のAkkermansia 属菌の相対存在量が少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30%(他の属の細菌の数と比較して)である。
【0047】
好ましい実施形態では、前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種の少なくとも108個、又は108個の細胞が、前記糞便物質中に含まれる。同様に、前記Bifdobacterium 属菌の少なくとも108個、又は108個の細胞が、前記糞便中物質に含まれる。同様に、前記Akkermansia 属菌の少なくとも108個、又は108個の細胞が前記糞便物質中に含まれる。同様に、前記Lactobacillus属の少なくとも108個、又は108個の細胞が前記糞便物質中に含まれる。
【0048】
言い換えると、本開示によるAnaerobutyricum soehngenii、若しくはその近縁種、Bifdobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌は、好ましくは糞便物質中で強化される、すなわち Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌の細胞数が、先行技術の糞便物質よりも多い、 例えば、Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌の細胞が糞便物質に添加されるか、又は糞便が前記Anaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌の増殖に有利な条件に曝露される。本開示によるAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌が糞便中に含まれる場合、好ましくは、少なくとも104、 105、 2×105、 3×105、 4×105、 5×105、 6×105、 7×105、 8×105、 9×105、 106、 2×106、 3×106、 4×106、 5×106、 6×106、 7×106、 8×106、 9×106、 107、 2×107、 3×107、 4×107、 5×107、 6×107、 7×107、 8×107、 9×107、 108、 109、 1010、 1011、 1012、 1013個の細胞が、例えば糞便物質1 ml当たり、又は糞便物質1g当たり、前記糞便物質中に含まれる。好ましくは、Anaerobutyricum soehngenii 、若しくはその近縁種、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌は、糞便物質中の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、及び/又は第10の最も優勢な細菌種、すなわち糞便物質中に含まれる他の細菌種と比較して最も高い細胞数を有するか、又は少なくとも上位10位に入る細胞数を有する。
【0049】
好ましくは、本開示による組成物が糞便物質である場合、糞便物質は、糞便、又はその一部、好ましくはその精製された一部であり得る。糞便物質を精製することにより、糞便物質をより簡便に投与することができる。特定の実施形態において、50~150 mgの糞便物質サンプルは、例えば10%グリセロールを含む5~15 mLの等張食塩水と組み合わせることができ、送達まで-80 ℃で凍結することができる。例えば、1 mLを母乳、又は殺菌牛乳と混合して10 mLとし、5 mLをレシピエントに投与することができる。
【0050】
本明細書で使用される糞便物質の一部とは、酵素、タンパク質、脂質、分子、微生物、ウイルス、細菌、真菌、酵母、古細菌、化合物、複合体、固体、液体、粒子、及び繊維を含むがこれらに限定されない、一つ、又は複数の特定の成分群を示す。
【0051】
本明細書で使用される糞便物質の精製された部分は、望ましくない成分群が糞便物質中に存在しないことを示す。
【0052】
好ましくは、本開示による使用のための糞便物質は、液体媒体中に含まれ、及び/又は10、25、50、75、100、200、400、600、800、若しくは1000 μmを超える直径を有する固形物を含まず、好ましくは、同種異個体(allogeneic)の糞便を水性媒体と混合し、その後濾過、及び/又は遠心分離することによって得られる。これにより、糞便の粘度が大幅に低下し、流動性が高まり、対象への糞便物質の投与が容易になる。液体媒体は、水、又は等張溶液を提供するために例えば塩などの他の成分を補充され得る他のタイプの液体から構含まれ得る。
【0053】
本開示の一態様によれば、本開示による糞便物質は、レシピエントへの糞便物質の投与を容易にする、医薬組成物などの組成物、より好ましくは液体剤形中に含まれる。
【0054】
本開示による糞便物質は、(胃環境から保護するために)凍結乾燥、及び/又はマイクロカプセル化された形態で存在することがさらに想定される。本開示による使用は、少なくとも一種のドナー対象から得られた糞便物質をレシピエントに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回に分けて投与することを含んでもよく、好ましくは、投与の間に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8週間の間隔をおく。
【0055】
代替的に、本開示によるAnaerobutyricum soehngenii 若しくはその近縁種、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌は、糞便中に含まれない。
【0056】
本開示による少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii 、若しくはその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、組成物中に含まれ得る。
【0057】
本開示による組成物は、経腸投与、好ましくは経口投与、経鼻投与、若しくは直腸投与、及び/又は経鼻十二指腸チューブ投与によって投与され得る。
【0058】
本開示による組成物は、医薬品として、及び/又は任意の不活性担体であり得る生理学的に許容される担体を伴って使用され得る。例えば、適切な生理学的又は薬学的に許容される担体の非限定的な例としては、任意の周知の生理学的、又は薬学的担体、緩衝剤、希釈剤、及び賦形剤が挙げられる。適切な生理学的担体の選択は、本明細書で教示される組成物の意図される投与様式(例えば、経口)に依存することが理解されるであろう。当業者は、本明細書で教示される使用のための組成物に適切である、又は適合性がある、生理学的に許容される担体を選択する方法を知っている。
【0059】
本開示による組成物が、(腸溶性)コーティング中に含まれ、及び/又は(腸溶性)コーティングによってカプセル化されることが想定され、前記コーティングがレシピエントの胃環境で溶解、及び/又は崩壊しないことが好ましい。当該コーティングは、組成物が、胃の酸性環境による分解を受けることなく、送達のための意図された部位、例えば十二指腸に到達するのを助けることができる。好ましい(腸溶性)コーティングは、胃に見られる強酸性のpHでは安定であるが、より低いpHではより急速に分解する表面を提示することによって機能する。例えば、胃の胃酸(pH約3)では溶解しないが、小腸、又は十二指腸に存在するアルカリ性(pH7~9)の環境では溶解する。
【0060】
一実施形態において、本開示は、プロバイオティクスとして使用するための組成物に関する。従って、本明細書で使用される「プロバイオティクス」は、腸内細菌などの微生物を指し、有効量を投与、又は摂取した場合、宿主(例えば、ヒト又は哺乳動物)に健康上の利益をもたらす。好ましくは、プロバイオティクスが宿主の大腸にコロニー形成するように、プロバイオティクスは対象に投与されたときに生きているか、又は生存可能であるべきである。しかしながら、特定の条件下では、プロバイオティクスによって産生される物質が依然として宿主に対してプロバイオティクス的な有益な効果を発揮するのであれば、投与時にプロバイオティクスが死滅していてもよい。
【0061】
一実施形態において、本明細書で教示される本組合せは、シンビオティックとして使用するためのものであってもよい。本明細書で使用される「シンビオティック」又は「シンビオティック製品」という用語は、一般に、プロバイオティクスと、プレバイオティクスなどのGI微生物の増殖、及び/又は活性を促進する一つ以上の化合物とを一つの製品に組み合わせた組成物、及び/又は栄養補助食品を指す。シンビオティックは、GI管におけるプロバイオティクスの生存、及びコロニー形成を改善することによって、プロバイオティクスの成長を選択的に刺激することによって、及び/又は代謝を活性化することによって宿主に有益な影響を与え、したがって宿主の状態を改善する。当業者はシンビオティクスに精通しており、シンビオティクスに配合され得る成分を選択する方法を知っている。
【0062】
本発明者らは、さらに驚くべきことに、本開示による少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii 、若しくはその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌のマイクロカプセル化が、脂肪肝(hepatic steatosis)、NAFLD、及び/又はNASHの予防又は治療においてさらなる相乗的治療効果を提供し得ることを見出した。
【0063】
用語「マイクロカプセル化」は、マトリックス、コーティング、又は膜、一般的には保護マトリックス、又は保護膜に細菌をカプセル化することを表すのに用いられる。マイクロカプセルの(平均)直径は50nm~2mm、好ましくは100nm~1mmである。マトリックス、コーティング、又は膜は典型的には、乳、乳タンパク質、及び/又はポリマーから含まれる。マイクロカプセル化の目的は、他の可能な目的の中でも、胃腸環境などの周囲環境による破壊から細菌、及びその成分を保護することであってもよい。細菌のマイクロカプセル化はまた、乳製品、食品、医薬製剤、及び/又は医薬組成物への細菌の組み込みを改善することも支援し得る。細菌のマイクロカプセル化はまた、治療効果をサポートする可能性がある。
【0064】
細菌のマイクロカプセル化には、様々な材料を使用することができ、例えば、エンドウタンパク、牛乳、乳タンパク質、乳清タンパク質、カゼイン、キサンタンガム、アルギン酸塩、ゼラチン、キトサン、カルボキシメチルセルロース、デンプン、及び/又はカラギーナン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態において、本開示によるAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌は、一つ以上のポリマー中にマイクロカプセル化される。
【0065】
本明細書で教示される組み合わせ又は組成物を受ける対象は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ウシ、及びブタからなる群から選択され得る。好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0066】
本開示による少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii 、若しくはその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、104~1015コロニー形成単位(CFU)の範囲の量で、組み合わせ物、
又は組成物中に含まれ得る。例えば、少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii 、若しくはその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、例えば、用量当たり、又は1 ml当たり、又は前記細菌種を含む製剤もしくは組成物1 g当たり、106 CFU~1013 CFU、好ましくは107 CFU~1012 CFU、好ましくは108 CFU~1011 CFU、より好ましくは109 CFU~1011 CFUの量で組み合わせ物中に含まれ得る。
【0067】
実施形態の一つでは、本明細書で教示される組み合わせ物、又は組成物中の少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、凍結乾燥形態、及び/又はマイクロカプセル化形態(例えば、Solankiら、BioMed Res. Int. 2013、Article ID 620719によって総説される)、又は細菌株の活性、及び/若しくは生存能力を保持する他の形態で組み込まれ得る。
【0068】
一実施形態において、本明細書で教示される組み合わせ物、又は組成物は、保存中、及び/又は胆汁への曝露中、及び/又は哺乳動物(例えば、ヒト)の消化管通過中に、本明細書で教示される細菌又はそれに由来する株の生存、及び/若しくは生存能力を促進するのに適した一つ以上の成分を含み得る。このような成分の非限定的な例としては、腸溶性コーティング、及び胃の通過を可能にする制御放出剤が挙げられる。当業者は、本明細書で教示されるような細菌を生存可能かつ機能的に、すなわち意図される機能を遂行できるように維持するために適切な成分を選択する方法を知っている。
【0069】
例えば、本明細書で教示される細菌の効果(例えば、プロピオン酸/プロピオネート、及び/又は酪酸/ブチレート、又はそれらの誘導体の産生)を補足するために、本明細書で教示される組み合わせ物に一つ以上のプレバイオティック成分を添加することが有利であり得る。プレバイオティック成分はまた、本明細書で教示されるように、細菌、又はそれに由来する株の活性を増強、及び/又は増殖を刺激し得る。本明細書で使用される「プレバイオティック」は、一般に、腸内の有益な微生物の増殖を促進する難消化性の食品成分を指す。プレバイオティクス、又はプレバイオティクス製品は、主に発酵性繊維、又は難消化性炭水化物からなる。プロバイオティクスによるこれらの繊維の発酵は、例えばSCFA、特にブチレート等の有益な最終産物の産生を促進する。適切なプレバイオティクスの非限定的な例としては、イヌリン、ペクチン、難消化性デンプン(resistant starch)などの繊維、並びにセロビオース、マルトース、マンノース、サリシン、トレハロース、アミグダリン、アラビノース、メリビオース、ソルビトール、ラムノース、及び/又はキシロースが挙げられる。当業者は、プレバイオティクスの分野に精通しており、プレバイオティクス活性を備えた成分を選択する方法を知っている。
【0070】
脂肪肝(hepatic steatosis)、NAFLD、及び/又はNASHを予防、及び/又は治療することに加えて、又はそれに代えて、本開示は、好ましくはin situで、すなわち小腸で、酪酸、及び/又はブチレート産生を(増強する)ために使用され得る。同様に、本開示による組み合わせ物はまた、例えばin situで、小腸におけるラクテートのレベルを低下させることが可能である(ラクテートは、腸管において望ましくない化合物であることが知られている)。
【0071】
本明細書で使用する用語「ブチレート(butyrate)」又は「酪酸(butyric acid)」(系統名ブタン酸(butanoic acid)としても知られている)は、構造式CH3CH2CH2COOHを有するカルボン酸を指す。この用語は、その誘導体、すなわち酪酸から誘導される化合物を含み得、ブチレート、又はブタノエート(butanoate)として知られる酪酸の塩、及びエステルを含む。酪酸塩の非限定的な例としては、酪酸ナトリウム、酪酸カルシウム、酪酸マグネシウム、酪酸マンガン、酪酸コバルト、酪酸バリウム、酪酸リチウム、酪酸亜鉛、酪酸カリウム、酪酸第一鉄、及びそれに類するものが含まれる。ブチレートエステル(すなわち酪酸のエステル)の非限定的な例としては、セルロースアセテートブチレート、メチルブチレート、エチルブチレート、ブチルブチレート、ペンチルブチレート、及びそれに類するものが含まれる。
【0072】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本開示による細菌株は、ヒトに投与された場合、又はヒトが適切な量を摂取した場合、生存し、前記ヒトの胃腸管に少なくとも一過性にコロニー形成することができ得る。このコロニー形成は、他の機序を排除することはできないが、典型的には、in situにおける酪酸/ブチレート産生の増加を可能にすると考え得る。in situ における産生の増加は、少なくとも部分的には、本明細書で教示される組み合わせにおける有益な効果、例えば、脂肪肝(hepatic steatosis)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、及び/又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の予防、及び/又は治療の根底にあると考え得る。
【0073】
一実施形態において、少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii 、又はその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、食品組成物、飼料組成物、飼料サプリメント組成物、食品サプリメント組成物、又は医薬組成物において含まれ得る。同時に、又は代替的に、少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、液体、液体飲料(乳飲料、及び発酵飲料を含む)、ヨーグルト、チーズ、ゲル、ゼラチン、ゼラチンカプセル、粉末、ペースト、錠剤、又はカプセルに含まれ得る。
【0074】
食品、又は食品補助剤組成物は、好ましくは乳製品、より好ましくは発酵乳製品、最も好ましくはヨーグルト、又はヨーグルト飲料である。
【0075】
医薬組成物は、例えば液体、又は固体の形態であってよく、より好ましくは固体の形態の固形剤形であり、例えば、カプセル、錠剤、又は粉末であってよい。好ましくは医薬組成物は、純水、又は99重量%を超える水を含む水性媒体に関するものではない。
【0076】
本開示による使用のための組合せを含む本明細書で教示されるような組成物は、本明細書によるAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌を、対象(例えばヒト、又は動物)によって消費されるまで生存可能に維持するのに適した任意の許容可能な担体をさらに含み得る。例えば、この目的に好適な許容可能な担体の非限定的な例としては、周知の生理学的、又は医薬的担体、緩衝剤、及び賦形剤のいずれかが挙げられる。適切な生理学的、又は薬学的担体の選択は、本明細書で教示されるような組成物の意図される投与様式(例えば、経口)及び組成物の意図される形態(例えば、飲料、ヨーグルト、粉末、カプセルなど)に依存することが理解され得る。当業者は、本明細書で教示されるような組成物に適した生理学的、又は薬学的担体を選択する方法を知っている。
【0077】
本開示において教示される少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、104~1015コロニー形成単位(CFU)の範囲の量で組成物中に含まれ得る。例えば、少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii 、又はその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌は、106 CFU~1013 CFU、好ましくは107 CFU~1012 CFU、好ましくは108 CFU~1011 CFU、より好ましくは109 CFU~1011 CFUの量で、例えば、用量当たり、又は1 ml当たり、又は1 g当たりの製剤、若しくは前記細菌種を含む組成物中に含まれ得る。あるいは、少なくとも一種のAnaerobutyricum soehngenii、又はその近縁種、少なくとも一種のBifidobacterium 属菌、少なくとも一種のAkkermansia 属菌、及び/又は少なくとも一種のLactobacillus 属菌の量、及び/又は投与頻度は、1日あたり、106~1013、好ましくは107~1012、好ましくは108~1011、より好ましくは109~1011 CFUの間になるように選択される。
【0078】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」又は「含む(to comprise)」及びそれらの活用は、当該用語が、単語の後に続く項目は含まれるが、具体的に言及されていない項目は除外されないことを意味する非限定的な意味で使用される状況を指す。また、より限定的な動詞である「本質的に~からなる(to consist essentially of)」や「~からなる(to consist of)」も包含する。
【0079】
不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、文脈上明らかに要素が一つだけであることが要求されない限り、要素が二つ以上存在する可能性を排除するものではない。したがって不定冠詞「a」又は「an」は通常「少なくとも一つ」を意味する。
【0080】
用語「増加させる」及び「増加したレベル」、並びに用語「減少させる」及び「減少したレベル」は、有意に増加させる能力、若しくは有意に減少させる能力、又は有意に増加したレベル、若しくは有意に減少したレベルを意味する。一般的にレベルは、コントロール、又は参照における対応するレベルよりも、それぞれ少なくとも5%、例えば10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%高い、又は低い場合に、増加、又は減少する。あるいは、試料中のレベルは、コントロール、又は基準中のレベルと比較して統計的に有意に増加、又は減少した場合に、増加、又は減少することができる。
【0081】
本明細書で使用する場合、用語「同一性」は、ヌクレオチド配列、又はアミノ酸配列の同一性の尺度を指す。一般に、配列は、最も高い配列の一致が得られるように整列される。「同一性 」それ自体は、当技術分野で認識されている意味を有し、公表されている技術を用いて計算することができる。例えば、以下を参照:(COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; BIOCOMPUTING: BIOCOMPUTING: INFORMATICS AND GENOME PROJECTS, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; COMPUTER ANALYSIS OF SEQUENCE DATA, PART I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds、 Humana Press, New Jersey, 1994; SEQUENCE ANALYSIS IN MOLECULAR BIOLOGY, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and SEQUENCE ANALYSIS PRIMER; Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991)。二つのポリヌクレオチド、又はポリペプチド配列間の同一性を測定する方法は数多く存在するが、用語「同一性」は当業者には周知である(Carillo, H., and Lipton, D., SIAM J. Applied Math (1988) 48:1073)。
【0082】
二つの配列間の同一性、又は類似性を決定するために一般的に採用される方法としては、GUIDE TO HUGE COMPUTERS, Martin J. Bishop, ed., Academic Press, San Diego, 1994、及びCarillo, H., and Lipton, D., SIAM J. Applied Math (1988) 48:1073に開示されているものが含まれるが、これらに限定されない。同一性、及び類似性を決定する方法は、コンピュータープログラムで体系化されている。例えばNCBI Nucletide Blastの標準設定(blastn, https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)が挙げられる。二つの配列間の同一性、及び類似性を決定する好ましいコンピュータープログラム方法としては、GCSプログラムパッケージ(Devereux, J., ら., Nucleic Acids Research (1984) 12(1):387)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul, S. F. ら., J. Molec. Biol. (1990) 215:403)が挙げられる。
【0083】
例示として、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも、例えば95%の「同一性」を有するヌクレオチド配列によって、参照ポリペプチド配列の各100ヌクレオチドあたり最大5個の点変異が存在し得ることを除いて、ヌクレオチド配列が参照配列と同一であることが意図される。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を得るために、参照配列中のヌクレオチドの5%までが欠失し、及び/又は別のヌクレオチドで置換されてもよく、及び/又は参照配列中の全ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドが参照配列に挿入されてもよい。配列表において、「n」はa、t、g、又はcを示し得る。
【0084】
本明細書に開示された配列と配列表に開示された配列との間に矛盾がある場合、本明細書に開示された配列が好ましい。あるいは、配列表の配列を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】Bifidobacterium animalis subsp. lactis BLC1の非存在下又は存在下におけるSCFA産生量。
【
図2】L.rhamnosus GGの非存在下、又は存在下で、YCFA培地中フコース(25mM)上で産生されたSCFA。
【
図3】マウスの組織学的評価。A-D:マウスの炎症グレード、線維症グレード、NASスコア又はグローバルNASHスコア、E:CRN分類。
【0086】
【実施例】
【0087】
実施例1
A. soehngenii が小腸におけるグルコース代謝、及びインスリン抵抗性に影響を及ぼすことが示されている。合成微生物叢の存在下における回腸のin vitroモデルにおいて、A. soehngenii はSCFA産生に限定的にのみ寄与する。市販のプロバイオティクスであるBifidobacterium animalis subsp. lactis BLC1を補充することで、このSCFA産生が増強されるかどうかを確認する実験が行われた(Bottacini ら 2011, J Bacteriol 193: 6387-6388)。
【0088】
簡単に説明すると、回腸粘膜-SHIME(Simulator of Human Intestinal Microbial Ecosystem:ヒト腸内細菌生態系シミュレータ)モデルにおいて、上部腸内細菌(Lactobacillus spp.、Streptococcus spp.、Enterococcus spp.、Clostridium nexile、Faecalibacterium prausnitzii、Veillonella spp.、Prevotella melaninogenica、及びBlautia obeum)と支持基質を含む細菌合成コンソーシアムを14日間安定化させた。
【0089】
この安定化したコンソーシアム7 mlに、A. soehngenii、又はA. soehngenii 、及びB. infantis の組み合わせ物を播種し、37 ℃で3 mMの胆汁酸塩存在下、嫌気的条件下で培養した。培地の初期pHは7.5であった。
【0090】
24時間後にサンプルを採取し、SCFA(アセテート、プロピオネート、ブチレート)を分析した。その結果は、A. soehngenii 、及びB. infantis の両方が存在する場合、A. soehngenii のみが存在する場合のSCFAレベルと比較して、すべてのSCFAが明らかに増加したことが示された(
図1)。
【0091】
これは、上部腸管の条件下でのA. soehngenii 、及びB. infantis の間の代謝相乗効果を示している。
【0092】
実施例2
同様に、A.soehngenii L2-7と様々なLactbacillus 属菌との間の相乗効果は、様々な炭素源を用いた培養で示された。A.soehngenii、及び市販のプロバイオティクス株Lactobacillus rhamnosus GG(Kankainen ら 2009 106:17193-8)の組み合わせ物は、腸管に存在する一般的な糖であるフコース上での増殖において明らかな相乗効果を示した。A.soehngeniiはフコースを利用しないが、L.rhamnosus GGはフコースをラクテート、及びアセテートに変換する一方で両菌株の組み合わせ物はフコースをA.soehngeniiの主要な最終代謝産物であるブチレートに変換した。
図2を参照。
【0093】
実施例3
各群10匹ずつの2群のC57BL6/Jマウスに、飲料水中の15%のフルクトースで栄養強化した西洋食(WDF)を20週間与えた。10匹のマウスのコントロール群には、同じ期間チャウ食(chow diet)を与えた。WDFにより、非アルコール性脂肪性肝炎(Non-Alcoholic steatohepatitis:NASH)の食事誘導性肥満マウスモデル(Diet-Induced Obesity:DIO、体重がコントロールマウスより25%増加)が得られた。12週目から、DIO-NASHマウスに10^ CFUのA. soehngenii 、又はプラセボを週1回経口投与した。20週目にマウスを殺し、門脈サンプルを含む血液、肝臓と腸のサンプルを採取した。WDFによって誘導されたDIO-NASHモデルは、NASHを誘導するのに有効であった:20週目における組織学的脂肪症グレードの平均は3、NASスコアの平均は4、線維症グレードの平均は1(肝周囲線維症、又は大動脈周囲線維症)であった。
【0094】
A. soehngeniiの投与により、炎症グレード、線維症グレード、NASスコア、又はグローバルNASHスコアの明らかな低下がプラセボと比較して観察された。さらに、NASHを示したマウスの数はプラセボに比べて減少した(
図3)。
【0095】
実施例4
本発明者らは、Anaerobutyricum soehngenii 、又はAnaerobutyricum halliiと、Bifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/又はLactobacillus 属菌との共投与が、脂肪肝(hepatic steatosis)への罹患を有する患者、又はそのリスクを有する患者において有益かつ相乗的な効果を有することを見出した。
【0096】
方法
参加者
超音波検査で脂肪肝(hepatic steatosis)が認められた、未治療の雑食性患者である白人が含まれる。主な選定の基準は、年齢21~69歳、男性、又は閉経後女性、ボディマス指数(BMI)が25kg/m2より大きく、事前の超音波検査でNAFLDが疑われる脂肪肝((hepatic steatosis)肝酵素上昇、耐糖能異常、超音波検査での脂肪症の重症度に基づく)とした。除外基準は、心血管疾患、T2DM、腎疾患、胆嚢摘出、又は免疫低下のいずれかの既往歴;過去3ヵ月間のプロトンポンプ阻害薬、抗生物質、抗凝固薬の使用;現在における薬剤の使用;中等度から重度のアルコール摂取歴(1日12 g以上);NAFLD以外の肝疾患の原因(例えばヘモクロマトーシス、自己免疫性肝炎、肝硬変、B型、又はC型肝炎、ヘモクロマトーシス、α-1アンチトリプシン欠損症、アルコール性肝疾患)とした。
【0097】
介入
対象は、表1に示す単独、又は組み合わせ物の治療群に従って少なくとも24週間治療された。ベースライン時、及び治療後に肝壊死炎症活性スコア(NAFLD活性スコア)を測定した。細菌叢治療は、1カプセルあたり1010生菌単位(living unit)を1日1回、カプセルの形で投与した。
【0098】
肝生検
経皮的肝生検は、現地の標準的手順に従い、臨床的適応に基づいて行なった。すべての組織標本は、他の結果と盲検化された肝臓病理医によって採点された。NASH Clinical Research Network (NASH-CRN) 分類(Kleinerら 41巻6号(2005年6月))に従って、ヘマトキシリン・エオジン染色スライドを用いて脂肪症、炎症、バルーン化の評価を行い、シリウスレッド染色スライドを用いて線維症の評価を行なった。壊死性炎症活性スコア(NAS)は、本明細書に記載されている通り決定した。
【0099】
血漿測定
胆汁酸血漿中濃度は、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)により測定した。
【0100】
結果
示されるように、本発明者らは、Anaerobutyricum soehngenii 、若しくはAnaerobutyricum hallii を単独で投与した場合、又はBifidobacterium 属菌、Akkermansia 属菌、及び/若しくはLactobacillus 属菌との組み合わせ物を投与した場合の治療効果を決定した。
【0101】
Anaerobutyricum soehngenii 、又はAnaerobutyricum hallii 単独では、壊死炎症活性スコアを改善する能力は限られている。その一方、Anaerobutyricum soehngenii 、又はAnaerobutyricum hallii 単独では、一次胆汁酸(コール酸、及びチェノデオキシコール酸)及び二次胆汁酸(デオキシコール酸、及びリトコール酸)の血漿レベルの上昇をもたらす。これらの胆汁酸の血漿レベルの増加は、ファルネソイド-X-レセプター(FXR)とGタンパク質共役型胆汁酸レセプターGPBAR1(TGR5)を活性化し、肝臓での脂肪生成を抑え、肝臓の炎症を抑えるGLP-1の分泌増加につながる(Chiang(Liver Res. 2017 Jun; 1(1): 3-9)。
【0102】
治療後の胆汁酸血漿レベル、及び壊死性炎症活性スコアの減少における有効性に対する効果を、以下のランク付けシステムに従って表6(Table.1)に示す。当該表では、以下に示すうち最初のランクは最も低い効果を、最後のランクは最も高い効果を表す:「測定不能」、「微弱」、「低度」、「低度/中程度」、「中程度」、「高い」、「極めて高い」。健常者において、より低い壊死性炎症活性スコアでは、脂肪肝(hepatic steatosis)、NAFLD、及び/又はNASHの発症を防ぐことができる。表6(Table.1)に示したような推定される効果と同様の結果が、より大規模な患者コホートで得られることが期待される。
【表6】
【0103】
実施例5
マイクロカプセル化
この実験に示すように、本発明者らは、非マイクロカプセル化細菌の効果とマイクロカプセル化細菌の効果を比較した。
【0104】
実験例4で説明したものと同じ対象と測定基準を用いた。有効性を示すために、実験例4で説明したものと同じランク付けシステムを使用した。細菌のマイクロカプセル化の効果を例証するために、細菌の投与量は実験例1と比較して100倍低くした。細菌はカプセルの形で、1日1回、1カプセルあたり108生菌単位で投与した。
【0105】
結果
結果を表7(Table.2)に示す。
【表7】
【0106】
より大規模な患者コホートでも、表7(Table.2)に示すような同様の効果が得られることが期待される。
【配列表】
【国際調査報告】