(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】漁具が失われたか否かを監視し、失われた漁具の位置を推定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A01K 75/00 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
A01K75/00 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533266
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 KR2022019184
(87)【国際公開番号】W WO2023101406
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0171732
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323009416
【氏名又は名称】クァンジュ・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ギ ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ソン
【テーマコード(参考)】
2B106
【Fターム(参考)】
2B106EA01
2B106EH03
2B106PA01
2B106PA13
2B106PA16
(57)【要約】
漁具が失われたか否かを監視し、失われた漁具の位置を推定するためのシステム及び方法を開示する。水中に設置され、少なくとも一つ以上のセンサを用いてセンシング情報を提供し、自分の識別情報および位置情報を外部へ提供する漁具と、前記漁具と通信して自分の漁具の位置情報を確認し、漁船の情報を提供する漁船用の端末装置と、既設定済みの管轄区域内の漁具または漁船に対する管理機能を行い、前記漁具から漁具の位置情報を、外部より潮流の流速および流向を、受信し、受信した漁具の位置情報に基づいて、漁具の流速および流向の情報を演算し、演算した流速および流向の情報と潮流の流速および流向の情報とに基づいて、漁具が失われたか否か、及び失われた漁具の現在位置を推定する漁具紛失管理装置と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設置され、少なくとも一つ以上のセンサを用いてセンシング情報を提供し、自分の識別情報および位置情報を外部へ提供する漁具と、
前記漁具と通信して自分の漁具の位置情報を確認し、漁船の情報を提供する漁船用の端末装置と、
既設定済みの管轄区域内の漁具または漁船に対する管理機能を行い、前記漁具から漁具の位置情報を、外部より潮流の流速および流向を、受信し、受信した漁具の位置情報に基づいて、漁具の流速および流向の情報を演算し、演算した流速および流向の情報と潮流の流速および流向の情報とに基づいて、漁具が失われたか否か、及び失われた漁具の現在位置を推定する漁具紛失管理装置と、を含む
ことを特徴とする漁具紛失管理システム。
【請求項2】
前記漁具紛失管理装置は、
前記漁具との通信断が発生する場合、前記漁具が失われたものと判断する
請求項1に記載の漁具紛失管理システム。
【請求項3】
前記漁具紛失管理装置は、
演算された漁具の流速が、既設定済みの基準値を超えるか否かにより、前記漁具が失われたものと判断する
請求項1に記載の漁具紛失管理システム。
【請求項4】
前記漁具紛失管理装置は、
前記漁具が失われたと判断した場合、前記漁具が失われた時点から既設定済みの期間の前における漁具の流速および流向の情報と、潮流の流速および流向の情報とを比較する
請求項1に記載の漁具紛失管理システム。
【請求項5】
前記漁具紛失管理装置は、
現時点の潮流の流向に基づいて、前記漁具が失われた時点から、既設定済みの期間の前の漁具の流向と潮流の流向とのばらつきを反映して、現時点の漁具の流向を推定する
請求項4に記載の漁具紛失管理システム。
【請求項6】
前記漁具紛失管理装置は、
前記前記漁具が失われた時点から既設定済みの期間の前における漁具の流速および流向の情報と、潮流の流速および流向の情報とがいずれも同一である場合、現時点の潮流の流向および流速を、現時点の漁具の流向および流速と推定する
請求項4に記載の漁具紛失管理システム。
【請求項7】
前記漁具紛失管理装置は、
推定された現時点の漁具の流向および流速に基づいて漁具の位置を推定する
請求項6に記載の漁具紛失管理システム。
【請求項8】
漁具紛失管理システムが、漁具が失われたか否か、及び失われた漁具の位置を推定する方法であって、
漁具から漁具の位置情報を、海洋情報調査組織から潮流の流速および流向を、受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された漁具の位置情報に基づいて、漁具の流速および流向を算出する演算ステップと、
前記漁具が失われたか否かを判断する判断ステップと、
前記演算工程で演算された漁具の流速および流向の情報と潮流の流速および流向の情報とに基づいて前記漁具の位置を推定する推定ステップと、を含む
ことを特徴とする漁具紛失管理方法。
【請求項9】
前記演算ステップは、
相異なる時点で受信される漁具の位置情報に基づいて、漁具の流速および流向を算出する
請求項8に記載の漁具紛失管理方法。
【請求項10】
前記判断ステップは、
前記漁具との通信断が発生するか、前記演算ステップで演算された流速が既設定済みの基準値を超えるか否かにより、前記漁具が失われたか否かを判断する
請求項8に記載の漁具紛失管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁具が失われたか否かを監視し、失われた漁具の位置を推定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示内容は、単に本実施形態に対する背景情報を提供するだけであり、従来の技術を構成するものではない。
【0003】
一般に、漁具とは、水中において直接魚などの対象物を捕捉又は採取するために用いられる道具をいう。そして、海上の漁場に設置される漁具の位置を確認するために従来より浮標やGPS(Global Positioning System)を活用している。
【0004】
浮標は、水面に浮かべた浮体からなる表示手段であって、ブイ(Buoy)または浮具とも呼び、漁具に連結されて漁具の位置を表示する。浮標を用いる場合には、GPS方式に比べて低コストで漁具の位置が表示できることに対し、作業者が浮標を用いて漁具の位置を一つ一つ確認しなければならないので、位置情報をリアルタイムで把握しにくく、かつ目視では正確な把握が困難である。
【0005】
なお、GPSを利用する場合は、浮標による方式に比べて漁具に装着されたGPSモジュールを介して漁具の位置を遠距離で容易に確認することができることに対し、高価なGPSモジュールを利用することに伴う高コストの問題が発生する。特に、漁具が失われて水面の下へ沈降すると、漁具と共に、GPSモジュールも沈降してしまい、失われた漁具の位置を確認することができないという問題点がある。
【0006】
さらに、従来の漁具に取り付けられた浮標やGPSモジュールは、単に漁具の位置に関する情報を提供するだけで、その他の情報、例えば、漁具が設置された地域の潮流の温度、流速、風速、気温などに対する情報を提供しないので、直接海上に出ない限り、海上に設置された漁具を効果的に管理するのには限界がある。
【0007】
これらの問題点を解消するために、最近は、水圧を監視し、水圧センサ、漁具と連結されたロッドの圧力を監視するための張力センサ、ブイの速度変化を測定するための加速度センサなどのセンサを装着しているブイを提供している。
【0008】
これらのセンサが取り付けられている浮標は、既設定済みの値とセンサの情報とを比較して漁具の紛失と盗難を感知しているが、多様なセンサ情報を活用するために制御回路などの電子システムが別途設置されなければならないので、製造コストが高くなり、且つ、短時間内に設置しなければならないという漁具の特性上、紛失防止のためのロッドと張力センサなどの設置が現実的に困難である。また、従来のブイを用いた漁具の盗難および紛失を感知する方法は、漁具のユーザがブイを用いる場合でも、盗難アラームが頻繁に動作する恐れがあり、ユーザまたはオペレータに誤作動解除などの無駄な作業が要求され、誤動作が頻繁な盗難警報の場合に、正確な状況の判断が難しくなるという不具合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施形態は、漁具が失われているかを監視し、失われた場合、どの箇所まで移動したかを推定する漁具紛失管理システム及び方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、水中に設置され、少なくとも一つ以上のセンサを用いてセンシング情報を提供し、自分の識別情報および位置情報を外部へ提供する漁具と、前記漁具と通信して自分の漁具の位置情報を確認し、漁船の情報を提供する漁船用の端末装置と、既設定済みの管轄区域内の漁具または漁船に対する管理機能を行い、前記漁具から漁具の位置情報を、外部より潮流の流速および流向を、受信し、受信した漁具の位置情報に基づいて、漁具の流速および流向の情報を演算し、演算した流速および流向の情報と潮流の流速および流向の情報とに基づいて、漁具が失われたか否か、及び失われた漁具の現在位置を推定する漁具紛失管理装置と、を含むことを特徴とする漁具紛失管理システムを提供する。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記漁具紛失管理装置は、前記漁具との通信断が発生する場合、前記漁具が失われたものと判断することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記漁具紛失管理装置は、演算された漁具の流速が、既設定済みの基準値を超えるか否かにより、前記漁具が失われたものと判断することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記漁具紛失管理装置は、前記漁具が失われたと判断した場合、前記漁具が失われた時点から既設定済みの期間の前における漁具の流速および流向の情報と、潮流の流速および流向の情報とを比較することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様によれば、前記漁具紛失管理装置は、現時点の潮流の流向に基づいて、前記漁具が失われた時点から、既設定済みの期間の前の漁具の流向と潮流の流向とのばらつきを反映して、現時点の漁具の流向を推定することを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記漁具紛失管理装置は、前記漁具が失われた時点から既設定済みの期間の前における漁具の流速および流向の情報と、潮流の流速および流向の情報とがいずれも同一である場合、現時点の潮流の流向および流速を、現時点の漁具の流向および流速と推定することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様によれば、前記漁具紛失管理装置は、推定された現時点の漁具の流向および流速に基づいて漁具の位置を推定することを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様によれば、漁具紛失管理システムが、漁具が失われたか否か、及び失われた漁具の位置を推定する方法であって、漁具から漁具の位置情報を、海洋情報調査組織から潮流の流速および流向を、受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された漁具の位置情報に基づいて、漁具の流速および流向を算出する演算ステップと、前記漁具が失われたか否かを判断する判断ステップと、前記演算工程で演算された漁具の流速および流向の情報と潮流の流速および流向の情報とに基づいて前記漁具の位置を推定する推定ステップと、を含むことを特徴とする漁具紛失管理方法を提供する。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記演算ステップは、相異なる時点で受信される漁具の位置情報に基づいて、漁具の流速および流向を算出することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記判断ステップは、前記漁具との通信断が発生するか、前記演算ステップで演算された流速が既設定済みの基準値を超えるか否かにより、前記漁具が失われたか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
前述したように、本発明の一態様によれば、漁具が失われているかどうかを監視し、失われた場合、どの箇所まで移動したかを推定することができるので、漁具の管理の便宜性を向上させることができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による漁具紛失管理システムの構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による漁具紛失管理システムの構成を説明するブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態によるブイの構成を説明する図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による漁具紛失管理システムの電波陰影地域での通信サービス提供過程を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による漁具紛失管理装置の構成を説明するブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による漁具紛失管理装置が漁具の紛失を監視し、移動を推定する方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするわけではなく、本発明の思想及び技術範囲に属する全ての変更、均など物ないし代替物を含む。各図面を説明するにあたり、同様な構成要素に対して同様な符号を付してある。
【0023】
第1、第2、A、Bなどの用語は、様々な構成要素を説明するために使用されることができるが、前記これらの構成要素は、前記これらの用語によって限定されてはならない。前記これらの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。例えば、本発明の権利範囲を外れない限り、第1の構成要素を動力手段要素と呼び、同様に、動力手段要素も、第1構成要素と呼んでもよい。「及び/または」という用語は、複数の関連した記載項目の組み合わせまたは複数の関連した記載項目の何れかの項目を含む。
【0024】
ある構成要素が他の構成要素に「連結」されているか、または「接続」されているとされたときは、当該他の構成要素に直接に連結されているか、または接続されていてもよく、中間に他の構成要素が介在してもよいことを理解してほしい。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結」されているか、または「直接接続」されているとされたときは、中間に他の構成要素が介在しない。
【0025】
本願で使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使われたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。本願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除しない。
【0026】
他に定義しない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで用いられる全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるものと同様な意味を有している。
【0027】
一般に使用される辞典上に定義されているような用語は、関連技術の文脈上に有する意味と一致する意味を有するものと解釈されなければならなく、本出願で明らかに定義しない限り、理想的にまたは過度に形式的な意味で解釈されない。
【0028】
また、本発明の各実施形態に含まれる各構成、過程、工程または方法などは、技術的に互いに矛盾しない範囲内で共有することができる。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態による漁具の紛失監視システムの構成を説明する図であり、
図2は、本発明の一実施形態による漁具の紛失監視システムの構成を説明するブロック図である。
【0030】
図1及び
図2を参照すれば、漁具の紛失監視システムは、ブイ100と、漁船用端末装置200と、管理船舶用端末装置300と、漁具紛失管理装置400と、を含む。
【0031】
ブイ100は、刺し網などの漁具ごとに一定間隔で着脱自在に設けられ、少なくとも一つ以上のセンサを用いてセンシング情報を提供し、自分の識別情報と位置情報を提供する。該ブイは、温度センサ、加速度センサ、水感知センサ、音響センサなどの種々のセンサを含むことができる。
【0032】
漁船用端末装置200は、少なくとも一つ以上のブイ100に自分の漁具識別情報を登録し、ブイ100と通信して自分のブイ位置情報を確認し、自分の漁船識別情報、自分の漁船位置情報、自分の漁具識別情報、及び自分のブイ位置情報を含む漁船情報を提供する。
【0033】
管理船舶用端末装置300は、漁具紛失管理装置400からブイ又は漁具の損失情報が伝送されれば、漁具のスキャニングを用いて失われた漁具を回収する動作を行うことができる。管理船舶用端末装置300は、漁業指導または漁業取締などの機能を遂行し、管轄する漁船の位置とブイの位置情報を知っていなければならない。
【0034】
漁具紛失管理装置400は、既設定済みの管轄区域内の漁具や漁船に対する管理機能を遂行し、漁船用端末装置200およびブイ100と通信網を介して情報の送受信を行う。また、漁具紛失管理装置400は、ブイ100或いは漁具の盗難や紛失有無を監視し、紛失が感知された場合、経路を推定して漁船用端末装置200又は管理船舶用端末装置300に通知する。これにより、漁船用端末または管理船舶用端末が、失われた漁具をより容易に回収可能にする。
【0035】
漁具紛失管理装置400は、漁船用コントローラ220又は管理舶用コントローラ320内のINS(Intelligent Navigation System)、IMIT(Integrated Maritime Information Technology)、MEIS(Marine Environment Information System)などで運用される情報のような統合情報を、通信網を介して受信して船舶のステータスをリアルタイムで監視できるものでなければならない。
【0036】
このような漁具紛失管理装置400は、陸上で少なくとも一つ以上の漁具及び少なくとも一つ以上のブイの位置を把握し、管理船舶用端末装置300又は漁船用端末装置200と通信して、陸上と管理船舶、漁船との間の遠隔監視を通じて気象情報と海洋状態情報などを船舶に提供し、船舶の統合情報を受信することで、陸上で船舶をリアルタイムで監視および管制を行うことができるようにする。より具体的に、漁具紛失管理装置は、船舶に無線通信(衛星、無線通信モデムなど)を通じて受信された船舶の状態を表示し、船舶にMEIS気象情報と制御命令などを伝送することになる。
【0037】
漁具紛失管理装置400は、ブイ100または漁具と通信し、ブイ100または漁具の位置を把握する。漁具紛失管理装置400は、ブイ100または漁具から伝送されるそれら自分の位置に基づいて漁具の流速および流向を把握し、これから失われたか否かを判断することができる。また、漁具紛失管理装置400は、国立海洋調査院などの海洋情報調査機関から漁具が位置した地域における潮流の流速および流向を受信する。漁具紛失管理装置400は、漁具の流速/流向及び潮流の流速/流向に基づいて、失われた漁具がどの方向にどれくらい移動したかを推定する。漁具紛失管理装置400は、推定結果を管理船舶用端末装置300又は漁船用端末装置200に送信することによって、管理船舶または漁船が漁具を回収できるようにする。漁具紛失管理装置400の具体的な構成は、
図5を参照して後述する。
【0038】
一方、漁船用端末装置200は、漁船用無線ノード210と、漁船用コントローラ220とを含み、管理船舶用端末装置300は、管理船舶用無線ルータ310と、管理舶用コントローラ320とを含む。漁船用無線ノード210は、LoRa基盤のゲートウェイであって、漁船から既設定済みの半径(10km)以内に位置した複数のブイ100と通信チャンネルで接続されて情報を送受信する。また、管理船舶用無線ルータ310は、ブイ100、漁船用端末装置200、漁具紛失管理装置400、及びLoRa基盤無線中継通信ゲートウェイの役割を果たす。
【0039】
また、漁船用コントローラ220と管理舶用コントローラ320は、一般的な意味のサーバー用コンピュータ本体であってもよく、その他に、サーバーの役割を果たすことができる多様な形態の装置で具現されてもよい。より具体的に、漁船用コントローラ220および管理舶用コントローラ320は、各通信モジュール(図示せず)、メモリ(図示せず)、プロセッサ(図示せず)、およびデータベース(図示せず)を含むコンピューティングデバイスで具現されることができる。
【0040】
図3は、本発明の一実施形態によるブイの構成を説明する図である。
【0041】
ブイ100は、電源モジュール110、センサモジュール120、GPS受信モジュール130、通信モジュール140、制御モジュール150を含むが、これらに限定されない。
【0042】
電源モジュール110は、ブイ100の動作に必要な電源を提供する。電源モジュール110は、通信モジュール140を介して漁船用端末装置200又は管理船舶用端末装置300にバッテリの充電状態を報知することができる。
【0043】
センサモジュール120は、温度センサ、加速度センサ、音響センサの少なくとも1つ以上のセンサを含み、センサで感知されたセンサ情報を提供する。
【0044】
GPS受信モジュール130は、GPS衛星から受信されるGPS信号を用いて現在のブイ位置情報を提供する。このとき、GPS受信モジュール130は、GNSS(Global Navigation Satellite System)、SBAS(Satellite Based Augmentation System)の信号を受信して、高い精度の位置情報を提供することができる。
【0045】
通信モジュール140は、電波の状態に応じて商用LoRaと私用LoRaを選択的に用いて漁船用端末装置200、管理船舶用端末装置300、および漁具紛失管理装置400と通信することができる。通信モジュール140は、漁船用無線ノード210または管理船舶用無線ルータ310をLoRa基盤の通信網に接続することができる。
【0046】
表示灯170は、夜間や暗所でブイの位置を目視可能に表示することができる警光灯としての役割を果たすことができる。
【0047】
制御モジュール150は、メモリ160に格納された各種プログラムを用いてブイ100内の全般的な動作を制御する。メモリ160には、ブイの動作を制御するためのプログラムのみならず、ブイ100の識別情報、制御情報などが格納される。
【0048】
図4は、本発明の一実施形態による漁具の紛失監視システムの電波陰影地域での通信サービス提供過程を説明する図である。
【0049】
図4を参照するに、ブイ100、漁船用端末装置200、管理船舶用端末装置300、および漁具紛失管理装置400は、低電力の長距離通信のためにLoRa基盤で通信チャンネルを形成する。
【0050】
このとき、漁具紛失管理装置400は、ブイ100、漁船用端末装置200、及び管理船舶用端末装置300と商用(Public)LoRa(Low Power Wide Area)網を介して主通信チャンネルを形成する。したがって、漁具紛失管理装置400は、主通信チャンネルを介してブイ100から自己の位置および漁具の情報を報知され、各ブイ100別のブイ制御信号をブイ100に送信することができる。また、漁具紛失管理装置400は、主通信チャンネルを介して漁船用無線ノード210から自分で持っているブイの位置情報と漁具の情報を受信し、ブイ又は漁具の紛失情報を送信することができる。漁具紛失管理装置400は、管理船舶用無線ルータ310に管理船舶の管轄区域内の全てのブイ及び漁具の情報、ブイ又は漁具の紛失情報を送受信することができる。したがって、管理舶用コントローラ320は、漁具紛失管理装置400から判別結果(ブイまたは漁具の紛失情報など)を商用LTE(CAT.M1)を介して通知してもらえる。
【0051】
しかし、ブイ100、漁船用無線ノード210、管理船舶用無線ルータ310は、電波陰影地域で商用LoRa網を介した主通信チャンネルの通信接続を解除し、私用LoRa(Private LoRa)網を介して通信チャンネルを形成して情報を送受信する。
【0052】
ブイ100、漁船用端末装置200、および管理船舶用端末装置300は、トラフィック要求への肯定/否定の応答信号(Ack/Nck)を通じて通信状態を判断し、通信状態が良好である場合は、主通信チャンネルを介して情報を送受信するが、主通信チャンネルを介して既設定済みの受信確認時間に肯定応答(Ack)信号が受信されない場合、主通信チャンネルに対する通信断の状態と判断し、私用LoRa網を介したサブ通信チャンネルを形成する。
【0053】
このように、ブイ100、漁船用端末装置200および管理船舶用端末装置300は、伝搬状態に応じて商用LoRa網と私用LoRa網に選択的に接続して通信接続することで通信速度および通信接続性を保障することができる。
【0054】
図5は、本発明の一実施形態による漁具紛失管理装置の構成を説明するブロック図である。
【0055】
図5を参照すると、本発明の一実施形態による漁具紛失管理装置400は、通信部510、紛失判断部520、漁具移動推定部530、およびメモリ540を含む。
【0056】
通信部510は、外部とLoRaまたは他のプロトコルに基づく無線通信を行い、必要な情報を送受信する。
【0057】
通信部510は、その他のプロトコルに基づく無線通信を行い、外部の海洋情報調査機関から必要な情報を受信する。通信部510は、気象庁と通信し、気象情報を受信することができる。なお、通信部510は、国立海洋調査院などの海洋情報調査機関から潮流の流速及び流向の情報を受信することができる。通信部510は、外部の海洋情報調査機関から既設定済みの間隔(例えば、数分)ごとに情報を受信することができる。
【0058】
通信部510は、LoRa基盤の無線通信を行い、受信した気象情報を漁船用端末装置200又は管理船舶用端末装置300に伝送する。
【0059】
通信部510は、LoRa基盤の無線通信を行い、ブイ100から自分の現在位置(座標)を受信する。通信部510は、既設定済みの間隔ごとにブイの位置をブイ100から受信する。例えば、既設定済みの間隔は、数分であってもよく、通信部510は、数分間隔でブイの位置をブイ100から受信することができる。
【0060】
紛失判断部520は、ブイ100から受信したブイの座標またはブイ100との通信をしたか否かに基づいてブイ100或いは漁具の紛失(loss)有無を判断する。紛失判断部520は、次のような数式でブイの座標からブイの速度(流速及び流向)を判断することができる。
【0061】
【0062】
ここで、φ1およびφ2は、それぞれ第1及び第2時点での緯度を、λ1およびλ2は、それぞれ第1の時点と第2の時点における経度を意味する。緯度及び経度から当該時点におけるブイの座標(x、y、θ)を変換し、座標の変化と時間当たりの変化量に基づいて、流速と流向を把握することができる。
【0063】
ブイ100との通信が途絶した場合、または、前述の工程に従って、演算したブイ100の速度が既設定済みの基準値を超える場合、紛失判断部520はブイ100が紛失されたと判断する。
【0064】
漁具移動推定部530は、紛失される以前の漁具の流速および流向と、潮流の流速および流向とを比較して漁具の位置を推定する。漁具移動推定部530は、漁具が失われたと判断した時点から既設定済みの期間の前における漁具の流速および流向と同一時点の潮流の流速および流向とを比較する。ここで、既設定済みの期間は、潮流の流速と流向が変わる間隔に設定し得る。潮流は、持続的に流速と流向が変わるものではなく、所定期間の間は同じ値を有し、所定期間の経過後に変わるものである。例えば、潮流は、6時間を基準満潮と干潮を起点として、単位時間当たりの流向および流速が変わることが多い。このような潮流の特性を参照して、漁具移動推定部530は、漁具が失われた時点から既設定済みの期間の前の漁具のデータ(流量および流向)と潮流のデータ(流量および流向)とを比較する。
【0065】
漁具移動推定部530は、当該時点での漁具の流向と潮流の流向とを比較して、現時点の漁具の流向を推定する。速度とは異なり、漁具の流向は、潮流の流向と同様に動く。よって、漁具移動推定部530は、漁具が失われたと判断した時点から、既設定済みの期間の前の時点での漁具の流向と潮流の流向とのばらつきを演算する。漁具移動推定部530は、現時点での潮流の流向に基づいて算出された流向のばらつきを反映することにより、現時点での潮流の流向を推定する。例えば、当該時点での漁具の流向と潮流の流向のばらつきが存在しないと、漁具移動推定部530は、現時点での潮流の流向が漁具の流向であると推定する。逆に、当該時点での漁具の流向が、潮流の流向を基準として時計回り方向に45°分だけ異なる場合、漁具移動推定部530は、現時点での漁具の流向は、現時点での潮流の流向を基準として時計回りに45°のばらつきを有すると推定する。
【0066】
同様に、漁具移動推定部530は、当該時点での漁具の流速と潮流の流速とを比較して、現時点の漁具の流速を推定する。前述した時点で漁具の流速と潮流の流速とが同じであれば、漁具移動推定部530は、現時点での潮流の流速を漁具の流速と推定する。ただし、前述した時点で漁具の流速と潮流の流速とが異なっていると、水深情報、潮流の流速、並びに潮流と漁具の流速の比を利用して、現時点の漁具の流速を以下の式を用いて推定する。
【0067】
【0068】
【0069】
漁具移動推定部530は、推定した漁具の流向および流速に基づいて、現時点での漁具の位置を推定する。漁具の移動方向と移動速度が決められるので、現時点で漁具がどの方向にどれくらい移動したかを算出する。これにより、漁具移動推定部530は、漁具の現在位置を推定することができる。
【0070】
メモリ部540は、通信部510がブイ100から、既設定された間隔ごとに受信した情報及び海洋情報調査機関から予め設定された間隔ごとに受信した情報を格納する。メモリ部540は、当該情報を格納しておくことで、紛失判断部520の判断および漁具移動推定部530の推定を助ける。
【0071】
図6は、本発明の一実施形態による漁具紛失管理装置が漁具の紛失を監視し、移動を推定する方法を示したフローチャートである。
【0072】
通信部510は、漁具から漁具の位置情報を、海洋情報調査機関から、漁具が位置した地域での潮流の流速および流向を受信する(S610)。
【0073】
消失判断部520は、漁具が失われたか否かを判断する(S620)。紛失判断部520は、漁具の位置情報から、流速および流向を算出する。紛失判断部520は、通信が途絶しているどうか、漁具の速度が予め設定された基準値を超えるか否かにより、漁具が失われたか否かを判断する。
【0074】
移動推定部530は、紛失された時点から既設定済みの期間の前における漁具の流速および流向を、同一時点の潮流の流速および流向と比較する(S630)。
【0075】
漁具移動推定部530は、現時点の潮流の流向に基づいて、既設定済みの期間の前の漁具の流向と潮流の流向とのばらつき値を反映して漁具の流向を推定する(S640)。
【0076】
漁具移動推定部530は、既設定済みの期間の前の漁具の流速と、同一時点の潮流の流速とが同一であるか否かを判断する(S650)。
【0077】
両者が等しいと、漁具移動推定部530は、現時点の潮流の流速を、漁具の流速と推定する(S660)。
【0078】
両者が異なっている場合は、漁具移動推定部530は、水深情報、潮流の速度、並びに潮流と漁具の速度の比を利用して、現時点の漁具の流速を計算する(S670)。
【0079】
漁具移動推定部530は、漁具の流速と流向を用いて漁具の現在位置を推定する(S680)。
【0080】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質から逸脱しない範囲内で、多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施形態により、本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、下記特許請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同などの範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれる。
発明を実施するための形態は、本発明を実施するための最良の形態にて一緒に述べた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、漁具が失われたか否かを監視し、失われた漁具の位置を推定するシステム及び方法に関し、漁具が失われたか否かを監視する際に多様に利用可能であるから、産業上の利用可能性がある。
【国際調査報告】