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特表2024-545449フェックスプラザン注射剤組成物の用法用量
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】フェックスプラザン注射剤組成物の用法用量
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/40 20060101AFI20241129BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61K31/40
A61P1/00
A61P1/04
A61P7/04
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533293
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 KR2022020425
(87)【国際公開番号】W WO2023113487
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0179757
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOONG PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】35-14,Jeyakgongdan 4-gil,Hyangnam-eup,Hwaseong-si,Gyeonggi-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】イ,アルム
(72)【発明者】
【氏名】ハン,キフン
(72)【発明者】
【氏名】イム,クォンジョ
(72)【発明者】
【氏名】ベク,ソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC16
4C076DD23
4C076EE23
4C076EE32
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA10
4C086ZA53
4C086ZA68
(57)【要約】
本発明は、各適応症に応じたフェックスプラザン注射剤組成物の適切な用法用量を提供するためのものであって、各適応症に応じたフェックスプラザン注射剤組成物の適切な用法用量を提供することによって、最適な予防または治療効果を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、経口投与に対して治療効果確認された用量の0.4-0.6倍の用量で投与する、胃腸管疾患の予防または治療用注射剤組成物。
<化学式1>
【請求項2】
下記の化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、1日1回10mg~30mg投与する、胃腸管疾患の予防または治療用注射剤組成物。
<化学式1>
【請求項3】
前記胃腸管疾患は、胃酸分泌に関連する疾患である、
請求項1または2に記載の注射剤組成物。
【請求項4】
前記胃腸管疾患は、逆流性食道炎である、
請求項1または2に記載の注射剤組成物。
【請求項5】
前記胃腸管疾患は、びらん性食道炎である、
請求項1または2に記載の注射剤組成物。
【請求項6】
下記の化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、1日1回70mg~90mg、または1日2回それぞれ30mg~50mg投与する、出血治療用注射剤組成物。
<化学式1>
【請求項7】
前記出血は、消化性潰瘍による出血である、
請求項6に記載の注射剤組成物。
【請求項8】
前記出血は、内視鏡施術後の医原性潰瘍による出血である、
請求項6に記載の注射剤組成物。
【請求項9】
下記の化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、30mg~50mg投与後、1mg/h~10mg/hで24時間以上維持して投与する、出血予防用注射剤組成物。
<化学式1>
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェックスプラザン注射剤組成物の適切な用法用量に関する。
【背景技術】
【0002】
米国で急性上部胃腸管出血で入院する年間比率は人口100,000人あたり160人で、これは一年あたり400,000件以上に換算される。上部胃腸管出血例のほぼ大部分(80-90%)は非静脈瘤出血であり、このうち最も多い病変が胃・十二指腸消化性潰瘍と説明される。上部胃腸管出血の最も多くの原因が消化性潰瘍で約50%に達し、ヘリコバクターによる消化性潰瘍は上部消化管出血の最もありふれた原因である。消化性潰瘍は、胃酸とペプシンのような攻撃因子が粘液のような防御因子より勝る時に発生し、攻撃因子によって胃腸管粘膜の欠損が発生すると定義される。消化性潰瘍のありふれた原因には、ヘリコバクターの感染、非ステロイド性消炎剤の使用、身体的ストレスがあり、一部医原性潰瘍の場合、内視鏡粘膜切除術あるいは内視鏡粘膜下剥離術による潰瘍が発生することがある。
【0003】
このような潰瘍性出血の治療方法としては、内視鏡治療、薬物治療、または手術治療があり、薬物治療は、主に注射剤を用いて早くて強力な胃酸分泌の抑制により行われる。胃の胃酸は血液凝固過程に損傷を与え、血小板凝集破壊を促進させ、繊維素溶解に有利に作用する。そのため、胃酸分泌を抑制し、胃内酸度を上昇させ、上昇したpHを夜間にも維持させることは、血液凝固過程の安定化を促進させて再出血の傾向を低下させる。ただし、PPI(proton-pump inhibitor)高用量注射でも胃内プロトンポンプに不可逆的に作用するため、新しく生成される壁細胞のプロトンポンプを持続的に抑制できず、早期薬剤耐性によって意味のある治療結果を得にくい問題点があった。
【0004】
P-CAB(potassium-competitive acid blocker)は、既存の胃酸分泌抑制剤であるPPIの短所を克服して、可逆的にプロトンポンプに結合して胃内酸分泌を抑制し、胃酸に対する安定性が高く、プロドラッグ(pro-drug)ではない、プロトンポンプに直接作用して、早い作用発現と強力な効果、長い半減期、食事に影響なく薬物投与可能などの長所に基づいて新たな胃酸分泌抑制剤の市場を切り開いており、vonoprazan、tegoprazanなどの物質が商用化され、胃酸関連疾患、特に胃食道逆流疾患(GERD;Gastroesophageal reflux disease)の治療に主に使用されている。
【0005】
それにもかかわらず、P-CAB製剤に対する注射剤が開発されておらず、経口剤より早い効果が必要な患者または経口剤の服用が不可能な患者への投薬時に困難があった。
【0006】
フェックスプラザンと名付けられた「1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミン」は、韓国特許登録番号第10-1613245号に記載された物質であって、優れた抗-潰瘍活性(つまり、プロトンポンプ抑制活性など)およびヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌活性およびGPCR抑制作用を有することによって、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリによる胃腸管損傷の予防および治療に有用であることが知られている。
【0007】
フェックスプラザンは、胃酸分泌に関連する疾患、具体的には、胃食道逆流疾患(gastroesophageal reflux disease、GERD)、さらに具体的には、びらん性食道炎(Erosive Esophagitis、EE)に対して1日1回40mgを経口投与時に治療効果があることが知られている。
【0008】
そこで、本発明者らは、フェックスプラザンに対する注射剤組成物を開発し、当該組成物に関する鋭意研究により、各適応症に応じたフェックスプラザン注射剤組成物の適切な治療用法用量を確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、各適応症に応じたフェックスプラザン注射剤組成物の適切な用法用量を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記の化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、経口投与に対して治療効果が確認された用量の0.4-0.6倍の用量で投与する、胃腸管疾患の予防または治療用注射剤組成物を提供する。
<化学式1>
【0011】
前記化学式1で表される化合物の化学名は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンであって、韓国特許登録番号第10-1613245号に記載された物質である。
【0012】
前記化合物は、本発明による注射剤組成物の薬理効果を示す活性成分であって、優れた抗-潰瘍活性(つまり、プロトンポンプ抑制活性など)およびヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌活性およびGPCR抑制作用を有することによって、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリによる胃腸管損傷の予防または治療に有用な物質である。
【0013】
また、前記化合物はもちろん、前記化合物の薬学的に許容可能な塩も本発明で使用することができる。塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩のような、当業界で通常使用される塩を制限なく使用可能である。本発明の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、患者に比較的非毒性であり、無害な有効作用を有する濃度として、この塩に起因する副作用が化学式1で表される化合物の有利な効能を低下させない、前記化合物の任意のすべての有機または無機付加塩を意味する。
【0014】
無機酸または有機酸を用いて、通常の方法で薬学的に許容可能な塩を得ることができる。例えば、前記化学式1で表される化合物を水混和性有機溶媒、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、またはアセトニトリルに溶解させ、有機酸または無機酸を加えて沈殿した結晶を濾過して製造、乾燥させて薬学的に許容可能な塩を得ることができる。あるいは、酸が付加された反応混合物で溶媒や過剰の酸を減圧して、残渣を乾燥させて製造したり、または他の有機溶媒を加えて析出した塩を濾過して製造することができる。この時、好ましい塩として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはトルエンスルホン酸などから誘導された塩が挙げられる。
【0015】
一方、本発明の注射剤組成物は、標準薬学的実施により剤形化することができ、これらの剤形は、有効成分のほか、薬学的に許容可能な担体、補助剤または希釈液などの添加物を含有することができる。特に、注射剤組成物に製造するための適当な担体を使用することができ、例えば、生理食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物性オイルおよびイソプロピルミリステートなどがあり、希釈液としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシンなどがあるが、これらに限定されるものではない。また、注射剤組成物の製造に通常使用されるオイル、プロピレングリコールまたは他の溶媒に溶解することができる。
【0016】
また、本発明の用語「予防」は、本発明の注射剤組成物の投与で前記疾患の発生、拡散および再発を抑制させたり遅延させるすべての行為を意味し、「治療」は、本発明の注射剤組成物の投与で前記疾患の症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0017】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む注射剤組成物を、胃腸管疾患の予防または治療のために、1日1回10mg~30mg投与する。この時、10mg~30mgの質量は、投与される前記化学式1で表される化合物の量を意味し、前記化学式1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を使用した場合には、塩成分を除いた量を意味する。また、前記投与は、静脈投与であることが好ましい。
【0018】
前記胃腸管疾患は、胃酸分泌に関連する疾患である。胃酸分泌に関連する疾患とは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、びらん性逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流疾患など胃酸に関連する消化器系疾患を通称し、疾患の原因である胃酸分泌を抑制または除去して完治または症状を緩和させることができる。胃食道逆流疾患(GERD)とは、食道に逆流した胃の内容物によって不快な症状や合併症が誘発される状態で、食道に潰瘍やびらんなどの形態学的変化の有無により、びらん性食道炎(erosive esophagitis、EE)と非びらん性胃食道逆流疾患(non-erosive reflux disease、NERD)に分類し、びらん性食道炎は内視鏡的に遠位部食道粘膜に肉眼で識別可能な損傷がある場合、非びらん性は典型的な逆流症状はあるものの内視鏡で食道粘膜の損傷がない場合と定義する。
【0019】
本発明では、1日の40%以上の時間pH4以上の条件が維持されると、胃酸分泌に関連する疾患、具体的には、胃食道逆流疾患、さらに具体的には、びらん性食道炎に対する治療効果があることが確認された。前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を経口で1日1回40mg投与時、胃酸分泌に関連する疾患、具体的には、胃食道逆流疾患、さらに具体的には、びらん性食道炎に対する治療効果があり、本発明では、同一の化合物を静脈を通して1日1回10mg~30mgで前記投与する場合、経口投与と同一の効果があることを確認した。
【0020】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む注射剤組成物を、胃腸管疾患の予防または治療のために、1日1回20mg投与する。
【0021】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、1日1回70mg~90mg、または1日2回それぞれ30mg~50mg投与する、出血治療用注射剤組成物を提供する。この時、70mg~90mgおよび30mg~50mgのそれぞれの質量は、投与される前記化学式1で表される化合物の量を意味し、前記化学式1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を使用した場合には、塩成分を除いた量を意味する。
【0022】
胃酸は、血液凝固過程を困難にし、凝集された血小板と繊維素を溶解する。したがって、出血治療のために、胃酸分泌を調節して胃内pHが高く維持されなければならず、胃内pHが高いほど、維持される時間が長いほど、出血に対する治療効果に優れている。ただし、一般に、胃内酸度pHが6以上の時、血液凝固過程が安定化されて再出血が減少することが知られており、1日の50%以上の時間pH6以上の条件が維持されると、治療効果がある。本発明では、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む注射剤組成物を、1日1回70mg~90mg、または1日2回それぞれ30mg~50mg投与する場合、このような条件を満足することを確認した。また、前記出血は、消化性潰瘍による出血、または内視鏡施術後の医原性潰瘍による出血である。
【0023】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む注射剤組成物を、出血の治療のために、1日1回80mgまたは1日2回40mg投与する。
【0024】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、30mg~50mg投与後、1mg/h~10mg/hで24時間以上維持して投与する、出血予防用注射剤組成物を提供する。この時、30mg~50mgの質量および1mg/h~10mg/hは、投与される前記化学式1で表される化合物の量を意味し、前記化学式1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を使用した場合には、塩成分を除いた量を意味する。また、維持して投与する方法としては、一般に、生理食塩水(bag)にフェックスプラザン注射剤組成物を希釈して輸液セットに連結した後、投与速度および投与時間を調節する方法がある。
【0025】
出血予防のために、胃内pHが一定水準以上維持されなければならず、一般に、1日の50%以上の時間pH6以上の条件が維持されると、予防効果がある。本発明では、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む注射剤組成物を30mg~50mg投与後、1mg/h~10mg/hで24時間以上維持して投与する場合、このような条件を満足することを確認した。
【0026】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む注射剤組成物を、出血の予防のために、40mg投与後、1-10mg/hで48時間以上維持して投与する。
【発明の効果】
【0027】
上述のように、本発明は、各適応症に応じたフェックスプラザン注射剤組成物の適切な用法用量を提供することによって、最適な予防または治療効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実験例4の臨床試験方法を図式化したものである。
図2】フェックスプラザン10mg、20mg、40mgおよび80mgそれぞれを単回静脈投与時の血漿内濃度を示したものである。図2Aはlinear scale、図2Bはsemi-log scaleで示したものである。
図3】フェックスプラザン注射剤の静脈投与時の用量と血漿内濃度との関係を示したものである。各用量群においてフェックスプラザン投与用量のlog値に対して、図3Aは血漿内Cmax値、図3Bは血漿内AUClast値、図3Cは血漿内AUCinf値のlog値を示したpower modelグラフである。
図4】フェックスプラザン注射剤10mg、20mg、40mgおよび80mgそれぞれの単回投与によるCmax、AUClast、AUCinf値に用量補正した結果を示したものである。フェックスプラザン投与用量に対して、図4AはCmax、図4BはAUClast、図4CはAUCinfパラメータ値をそれぞれ投与用量で補正したdose-normalized comparisonグラフを示したものである。
図5】フェックスプラザン注射剤10mg、20mg、40mgおよび80mgそれぞれの単回投与時、時間に応じた胃腸管内酸度の変化を示したものである。
図6】実験例5の臨床試験方法を図式化したものである。
図7】フェックスプラザン40mgをそれぞれ経口および静脈投与時、時間に応じた胃腸管内酸度の変化を示したものである。
図8】本発明の実験例6において、用量群1および3の試験概要を示したものである。
図9】本発明の実験例6において、用量群2の試験概要を示したものである。
図10】本発明の実験例6において、用量群1に対する胃腸管内酸度(pH)の検査結果を示したものである。
図11】本発明の実験例6において、用量群2に対する胃腸管内酸度(pH)の検査結果を示したものである。
図12】本発明の実験例6において、用量群3に対する胃腸管内酸度(pH)の検査結果を示したものである。
図13】本発明の実験例6において、胃腸管内pHが4以上持続する時間を示したものである。
図14】本発明の実験例6において、胃腸管内pHが6以上持続する時間を示したものである。
図16】本発明の実験例7の試験概要を示したものである。
図16】本発明の実験例7において、時間に応じた胃腸管内酸度の変化を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0030】
製造例
【0031】
韓国特許出願番号第10-2016-0013588号の実施例8と同様の方法で、本発明の化学式1で表される化合物を製造した。
【0032】
分子量446.87
1H-NMR (500 MHz, MeOD): 7.69(s, 1H), 7.58-7.53(m, 1H), 7.45(t, 1H), 7.30(d, 1H), 7.20-7.15(m, 2H), 7.02-6.94(m, 2H), 4.07(d, 2H), 3.46(s, 3H), 2.71(s, 3H)
【0033】
実験例1:フェックスプラザン注射剤による出血/潰瘍治療効果の確認
フェックスプラザンの出血性胃潰瘍効能を評価するために、雄ラットを用いたインドメタシン誘導出血性胃潰瘍モデルを利用した。
【0034】
具体的には、生理食塩水にポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol400)ポリマーが30wt%存在する溶液に、前記製造した1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミン(以下、「フェックスプラザン」)塩酸塩を溶解し、フェックスプラザンの重量ベースで0、0.1、0.5、1、2mg/kgをそれぞれの試験動物に1mL/kgの液量で投与できるように濃度調節して製造した後、試験動物にそれぞれ単回尾静脈投与した。また、陽性対照群であるエソメプラゾールマグネシウム三水和物をエソメプラゾールの重量ベースで1mg/kgを試験動物に単回尾静脈投与した。30分後、胃出血および潰瘍を誘導するために、各試験動物にインドメタシン80mg/kgを単回経口投与した。インドメタシン投与5時間後に解剖検査を実施して胃を摘出した。そして、イメージプログラム(Leica Application Suite V4)を用いて胃の潰瘍面積指標(Ulcer index、%)を測定し、組織病理学的検査により胃の鬱血およびびらんのレベル(Gastric hemorrhage and erosion state)を評価した。結果は下記表1の通りである。
【0035】
【表1】
【0036】
前記表1のように、フェックスプラザン投与群は、賦形剤投与群に比べて統計学的に有意性があるように胃の潰瘍指標と鬱血およびびらんのレベルが減少して胃保護能および出血防止効果があり、最小効果用量は0.5mg/kgであることを確認した。
【0037】
実験例2:フェックスプラザン注射剤の薬物動態学実験
生理食塩水にメチルセルロースを溶解してメチルセルロースが0.5wt%の濃度で存在する溶液を製造した後、これに前記製造したフェックスプラザン塩酸塩を添加して、フェックスプラザンとして1mg/mLの濃度で組成物を製造した。雄ラットに前記製造した組成物を個体の体重により2mg/kgの用量を2mL/kgの液量で経口投与した後、0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間に眼窩採血方法で採血して、遠心分離機で10,000rpmで5分間遠心分離して血漿を採取し、HPLC-MS/MSで分析後、薬物動態学的パラメータを算出した。
【0038】
そして、生理食塩水にメチルセルロースを溶解してメチルセルロースが0.5wt%の濃度で存在する溶液を製造した後、これに前記製造したフェックスプラザン塩酸塩を添加して、フェックスプラザンとして1mg/mLの濃度で組成物を製造し、雄ラットに前記組成物を個体の体重により1mg/kgの用量を1mL/kgの液量で尾静脈投与後、0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間に経口投与と同様の方法で採血後、分析した。分析結果は下記表2の通りである。
【0039】
【表2】
【0040】
実験例3:フェックスプラザン注射剤の毒性試験結果
生理食塩水にポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol400)ポリマーが30wt%存在する溶液に、前記製造したフェックスプラザン塩酸塩を溶解し、フェックスプラザンの重量ベースで、ラットに対しては5mL/kg、ビーグル犬に対しては2mL/kgの液量で投与できるように濃度計算してそれぞれの組成物を製造し、0、2.5、5、10mg/kg/dayでラットとビーグル犬にそれぞれ1日1回、4週間静脈投与して毒性を評価した。試験結果、すべての投与群で試験物質による毒性症状が観察されず、高用量である10mg/kg/dayを無害用量に設定した。
【0041】
【表3】
【0042】
実験例4:フェックスプラザン注射剤の単一用量安全性/PK/PDの確認
本発明の化合物の静脈投与時の安全性/PK/PDを確認するために、満19歳から50歳の間の健康な成人(韓国人/中国人)を対象に、ランダム割当、二重冒険、偽薬対照、単回投与、段階的増量で臨床を設計した。
【0043】
安定化剤(200mg)、凍結乾燥補助剤(200mg)、および前記製造したフェックスプラザン塩酸塩(フェックスプラザンの重量ベース40mg)を注射用水(4mL)に溶解し、適量の酸を加えてpHを4.0に調整した。製造された溶液をバイアル中に入れて、凍結乾燥法で乾燥させて凍結乾燥剤に製造した。
【0044】
前記のように製造された凍結乾燥組成物を使用し、フェックスプラザンの重量ベースで4種の用量群(10mg、20mg、40mg、80mg)に対して、各4人、8人、8人、8人ずつ計28人の試験対象者が登録され、スクリーニング基準を通過した順に、試験群または対照群に各群あたり3:1の比率でランダム割当てられた。すべての試験対象者が計画された臨床試験日程により安全性、薬動学および薬力学評価を完了した。
【0045】
【表4】
【0046】
図1のように、臨床試験開始3日から28日前に選別検査訪問するようにし、投薬2日前に入院するようにした。投薬は当日朝に進行させ、投薬3日目の日に退院した。以後、投薬8日から11日の間に終了訪問するようにした。
【0047】
胃腸管内酸度(pH)および胃液分泌促進ホルモンガストリン検査を投薬24時間前から投薬24時間後まで行い、薬動学採血および薬動学集尿は投薬時点から48時間行った。測定した薬物動力学的パラメータは下記表5~8、図2~5の通りであり、重大な異常兆候や副作用は確認されなかった。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
前記表6および図5のように、胃腸管内酸度(pH)の確認結果、80mg静脈投与後、24時間pH6以上持続する時間が59.65%であることを確認し、40mg静脈投与時、12時間pH6以上持続する時間が50%以上であることを確認した。したがって、1日1回投与時、80mg以上で、1日2回投与時、40mg以上で出血治療効果があることを確認することができる。
【0051】
同様に、前記表6および図5のように、胃腸管内酸度(pH)の確認結果、20mg静脈投与後、24時間pH4以上持続する時間が46.7%であることを確認し、これによって、1日1回20mg投与時、胃酸分泌関連疾患で治療効果があることを確認することができる。
【0052】
【表7】
【0053】
フェックスプラザンに対する4種の用量群に対する単回静脈投与後、10mgから80mgの用量の間でフェックスプラザンのCmax、AUClast、AUCinfパラメータに対する用量比例性が評価された。単回投与後、各用量のログ変換したパラメータおよび95%信頼区間の回帰線をそれぞれ表7と図3に示した。Power modelを用いて10mgから80mgの用量までの単回静脈投与を評価した時、Cmax、AUClast、AUCinfの回帰線の傾き(95%信頼区間)はそれぞれ0.89(0.7477-1.0339)、1.10(0.9884-1.2090)、1.11(0.9940-1.2182)で、用量に比例して増加する様相を示した。つまり、静脈投与のpKパラメータは用量と比例関係にあることを確認することができる。
【0054】
【表8】
【0055】
表8および図4に用量群間用量補正した(Dose-normalized)Cmax(Cmax/Dose)、AUClast(AUClast/Dose)、AUCinf(AUCinf/Dose)に対して、Kruskal Wallis testを施した結果を示した。すべて統計的有意性が観察されなかった(p=0.4045、0.3430、0.2961)。つまり、比例関係に対する用量群別の有意な差はなく、経口投与適正用量により静脈投与適正用量を間接的に計算できることが分かる。
【0056】
これによって、経口投与用量対比の静脈投与用量の計算に必要な経口剤の生体利用率(bioavailability)を確認するための臨床試験を進行させた。
【0057】
実験例5:フェックスプラザン注射剤の生体利用率(BA、bioavailability)の確認
注射製剤に対する用法用量は、通常、静脈投与対比の経口投与に対する生体利用率と最高血中濃度のような薬動学的パラメータとこれによる薬理学的パラメータを確認し、これを経口投与用法用量に適用することによって、適切な注射製剤の用法用量を類推することができる。
【0058】
そこで、本発明の化合物の単回静脈投与時と単回経口投与時の安全性/PK/PDを比較し、生体利用率を導出するために、健康な成人を対象に、ランダム割当、公開、単回投与、2群2期交差試験で臨床を設計した。選定/除外基準は実験例4と同一である。計8人の試験対象者が登録され、スクリーニング基準を通過した順に、順序群1または順序群2に各4人ずつランダム割当てられた。すべての試験対象者が計画された臨床試験日程により安全性、薬動学および薬力学評価を完了した。
【0059】
【表9】
【0060】
臨床試験開始3日から28日前に選別検査訪問するようにし、投薬2日前に入院するようにした。1期投薬は当日朝にランダム割当てられた順序群により、安定化剤(200mg)、凍結乾燥補助剤(200mg)、および前記製造したフェックスプラザン塩酸塩(フェックスプラザンの重量ベース40mg)を注射用水(4mL)に溶解し、適量の酸を加えてpHを4.0に調整した組成物を静脈投与したり、賦形剤(100mg)、崩壊剤(5mg)、および前記製造したフェックスプラザン塩酸塩(フェックスプラザンの重量ベース40mg)を混合した後、圧縮して製造した錠剤を経口投与し、投薬3日目の日に退院した。2期投薬は、1期投薬後6日目の日に入院して8日朝に進行させ、投薬10日目の日に退院した。以後、投薬15日から18日の間に終了訪問するようにした(図6)。
【0061】
胃腸管内酸度(pH)および胃液分泌促進ホルモンガストリン検査を各期の投薬24時間前から投薬24時間後まで行い、薬動学採血および薬動学集尿は各期の投薬時点から48時間行った。測定した薬物動力学的パラメータは下記表10および11、図7の通りであり、重大な異常兆候や副作用は確認されなかった。
【0062】
【表10】
【0063】
【表11】
【0064】
前記表10から確認できるように、フェックスプラザン40mgを経口投与および静脈投与した時のCmax値はそれぞれ49.9μg/L、277μg/Lであり、Tmax値はそれぞれ2.09h、0.25hとなった。これによって、経口に比べて注射剤がより早い時間に、より高い最高血中濃度(Cmax)に到達した。AUClast値はそれぞれ536μg・h/L、1110μg・h/Lであり、これによって、経口投与時の生体利用率は約0.46であることを確認した。
【0065】
前記表11を通して、PD parameterを示した。胃腸管内酸度(pH)の確認結果、pH4以上持続する時間の比率は、経口および静脈投与においてそれぞれ47.5%、71.6%であることを確認し、pH6以上持続する時間の比率は、経口と静脈投与時、それぞれ20.3%、38.7%であることを確認した。また、経口および静脈投与においてMean pH値はそれぞれ3.9、4.9となった。
【0066】
前記表10、11および図7の結果をまとめた時、フェックスプラザンの薬効(PD)はフェックスプラザンの血中濃度(PK)と関連性があり、静脈投与は、経口投与に比べて早いTmax、高いCmax、高いAUC値を有することによってより早く、より高い薬効を有することが分かる。
【0067】
前記確認された生体利用率を代入する場合、フェックスプラザンを静脈注射投与時、経口投与の0.46倍の用量で同一のpKデータを示すことを確認することができ、よって、フェックスプラザン40mg経口投与とその0.46倍の18.4mg静脈投与の治療効果が同等水準であることを類推することができた。
【0068】
実験例6:フェックスプラザン注射剤の多回投与によるPD値の変化の確認
前記実験例4に続き、本発明の化合物を多回投与時のPD値の変化を確認するために、満19歳から50歳の間の健康な成人を対象に、ランダム割当、二重冒険、偽薬対照で臨床を設計した。
【0069】
安定化剤(200mg)、凍結乾燥補助剤(200mg)、および前記製造したフェックスプラザン塩酸塩(フェックスプラザンの重量ベース40mg)を注射用水(4mL)に溶解し、適量の酸を加えてpHを4.0に調整した。製造された溶液をバイアル中に入れて、凍結乾燥法で乾燥させて凍結乾燥剤に製造した。
【0070】
前記のように製造された凍結乾燥組成物を使用し、フェックスプラザンの重量ベースで3種の用量群(20mg、40mg、80mg)に対して、各9人、8人、8人ずつ計25人の試験対象者が登録され、スクリーニング基準を通過した順に、試験群または対照群に各群あたり3:1の比率でランダム割当てられた。
【0071】
【表12】
【0072】
前記表12の用量群1および3は1日1回(24時間ごとに)投与し(図8)、用量群2は1日2回(12時間ごとに)7日間投与した(図9)。
【0073】
胃腸管内酸度(pH)検査を投与前日から初投与後24時間後まで48時間行い、7日目には投与後24時間行った。測定した結果は下記表13および図10~14の通りである。
【0074】
【表13】
【0075】
前記結果から確認できるように、20mgを1日1回投与時、7日目に胃腸管内pHが4以上持続する時間が55.68(±14.85)%であることが分かり、40mgを1日2回投与および80mgを1日1回投与時、7日目の日に胃腸管内pHが6以上持続する時間がそれぞれ74.77(±13.39)%、70.07(±18.09)%であることが分かる。
【0076】
実験例7:フェックスプラザン注射剤の維持療法によるPD値の変化の確認
フェックスプラザン注射剤の維持療法によるPD値の変化を確認するために、満19歳から50歳の間の健康な成人8人を対象に試験を進行させた。試験対象者は実験例6で使用されたものと同一に製造された凍結乾燥剤形(40mg/vial)40mgと生理食塩水とを混合した溶液計100mlを30分間静脈投与した。以後、維持用量で初日には凍結乾燥剤形(40mg/vial)94mgと生理食塩水とを混合した溶液計1Lを23.5時間静脈投与し、2日目および3日目には凍結乾燥剤形(40mg/vial)96mgと生理食塩水とを混合した溶液計1Lずつ24時間静脈投与した。つまり、維持用量で凍結乾燥剤形(40mg/vial)286mgと生理食塩水とを混合した溶液計3Lを時間あたり4mg/hrの速度で71.5時間静脈投与した。初日および3日目にそれぞれ胃腸管内酸度検査を行い、その結果は下記表14および図15の通りである。
【0077】
【表14】
【0078】
前記結果から確認できるように、40mg静脈投与後、4mg/hで71.5時間維持時、胃腸管内pHが6以上持続する時間が76.33(±15.98)%であることが分かり、これによって当該療法で出血予防効果を予想することができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】