(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】反応蒸留によってトリフルオロアセチルクロリド及びヨウ化水素からトリフルオロアセチルヨージドを作製するための連続プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 51/04 20060101AFI20241129BHJP
C07C 53/48 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C07C51/04
C07C53/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534153
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 US2022081415
(87)【国際公開番号】W WO2023114748
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、テリス
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】ジュンゴン、クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC30
4H006AC47
4H006AD11
4H006BC31
4H006BD80
4H006BD84
4H006BE01
4H006BM10
4H006BM71
4H006BM74
4H006BS90
(57)【要約】
本開示は、反応蒸留を介して、トリフルオロアセチルクロリド(TFAC)及びヨウ化水素(HI)からトリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を生成するためのプロセスを提供する。プロセスは、触媒の存在下又は不在下で実行され得る。プロセスは、溶媒の存在下又は不在下で実行され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を作製するためのプロセスであって、
トリフルオロアセチルクロリド(TFAC)を含む流れをヨウ化水素(HI)を含む流れと組み合わせて、組み合わされた反応物流を提供することと、
前記組み合わされた反応物流を反応蒸留カラムに通して、粗生成物流を提供することと、
前記粗生成物流を精製して、トリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を含む精製された生成物流を提供することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
TFAC:HIのモル比が、約1:1~約2:1である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応蒸留カラムが、再沸器を更に含む充填カラムである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
反応蒸留カラム再沸器温度が、約50℃~110℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記反応蒸留カラムが、約50~100psigの圧力で運転される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粗生成物流を精製することが、前記粗生成物流を1つ以上の蒸留カラムに通すことを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応蒸留カラムが、触媒を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒が、活性炭、メソカーボン、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル-クロム合金、ニッケル-クロム-モリブデン合金、ニッケル-銅合金、銅、アルミナ、白金、パラジウム、炭化鉄、炭化モリブデン、炭化ニッケル、炭化ケイ素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記組み合わされた反応物流が、溶媒を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イオン液体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記精製された生成物流からヨウ素(I
2)を回収することを更に含む、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年12月6日に出願された米国特許出願第18/075,936号、及び2021年12月14日に出願された米国特許仮出願第63/289,461号に対する優先権を主張するものであり、これらの両方は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、反応器及びHCl除去カラムを1つの装置に組み合わせる連続反応蒸留を介して、トリフルオロアセチルクロリド(trifluoroacetyl chloride、TFAC)及びヨウ化水素(hydrogen iodide、HI)からトリフルオロアセチルヨージド(trifluoroacetyl iodide、TFAI)を生成するための連続プロセスを提供する。本開示は更に、精製工程を含む、反応蒸留による統合されたTFAI製造プロセスを提供する。
【背景技術】
【0003】
トリフルオロアセチルヨージド(CF3COI)は、トリフルオロヨードメタン(CF3I)に変換することができる化合物である。トリフルオロヨードメタン(CF3I)は、ペルフルオロメチルヨージド、トリフルオロメチルヨージド、又はヨードトリフルオロメタンとしても知られているが、例えば、冷媒又は消火剤としての商業用途において有用な化合物である。トリフルオロヨードメタンは、そのオゾン層破壊ポテンシャルが無視できるほど小さい、地球温暖化ポテンシャルの低い分子である。トリフルオロヨードメタンは、より環境的に害のある材料に取って代わることが可能である。
【0004】
トリフルオロアセチルヨージドの調製方法は既に知られている。例えば、論文「The Reactions of Metallic Salts of Acids with Halogens.Part I.The Reaction of Metal Trifluoroacetates with Iodine,Bromine,and Chlorine,」R.N.Haszeldine,Journal of the Chemical Society,pp.584-587(1951)には、トリフルオロアセチルクロリドと無水ヨウ化水素とを、触媒なしで、120℃で8時間にわたりバッチ反応させることで、トリフルオロアセチルヨージドを約62%の収率で生成することが記載されている。低い収率及び長い反応時間により、かなり非効率である。
【0005】
米国特許第7,196,236号(Mukhopadhyayら)は、トリフルオロヨードメタンを生成するための触媒プロセスを開示し、このプロセスは、ヨウ素源、少なくとも化学量論量の酸素、及び反応物CF3R(式中、Rは、-COOH、-COX、-CHO、-COOR2、及び-SO2Xからなる群から選択され、なお、R2はアルキル基であり、Xは塩素、臭素、又はヨウ素である)を含む、反応物を使用するものである。反応により生成され得るヨウ化水素は、少なくとも化学量論量の酸素によって酸化され、水及びヨウ素を生成することができ、経済的な再循環が可能となっている。
【0006】
米国特許第7,132,578号(Mukhopadhyayら)もまた、触媒を用いる、1工程のプロセスを開示しており、このプロセスでは、トリフルオロアセチルクロリドからトリフルオロヨードメタンを生成する。しかしながら、ヨウ素源はフッ化ヨウ素(iodine fluoride、IF)である。ヨウ化水素とは対照的に、フッ化ヨウ素は比較的不安定であり、0℃を超えるとI2及びIF5に分解してしまう。フッ化ヨウ素はまた、商業的に有用な量で利用することができない場合がある。
【0007】
トリフルオロアセチルヨージドを調製するいくつかの既知の方法としては、液相プロセスが挙げられる。液相プロセスは、分離及び廃棄されなければならない溶媒を必要とし得る。分離及び廃棄のために必要な追加の工程により、プロセスの効率は低下する。
【0008】
したがって、比較的安価な原料から商業的な量のトリフルオロヨードメタンを生成するように規模が調整され得る、より効率的なプロセスを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、トリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を作製するためのプロセスであって、トリフルオロアセチルクロリド(TFAC)を含む流れをヨウ化水素(HI)を含む流れと組み合わせて、組み合わされた反応物流を提供することと、組み合わされた反応物流を反応蒸留カラムに通して、粗生成物流を提供することと、粗生成物流を精製して、トリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を含む精製された生成物流を提供することと、を含む、プロセスを提供する。反応蒸留は、触媒の存在下で実施され得る。代替的に、反応蒸留は、触媒の不在下で実施され得る。プロセスは、溶媒の存在下で実行され得る。代替的に、プロセスは、添加された溶媒の不在下で実行され得る。
【0010】
添付の図面を考慮して、実施形態についての以下の記載を参照することによって、本開示の上述及び他の特性、並びにそれらを達成する様式がより明らかになり、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】触媒を用いない一実施形態のプロセスフロー図を示す。
【
図2】触媒を用いた一実施形態のプロセスフロー図を示す。
【
図3】触媒を用いない別の実施形態のプロセスフロー図を示す。
【
図4】触媒を用いた別の実施形態のプロセスフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、トリフルオロアセチルクロリド(TFAC)及びヨウ化水素からトリフルオロアセチルヨージド(TFAI)生成するための連続プロセスを提供する。具体的には、本開示は、連続反応蒸留プロセスを介してTFAIを生成するためのプロセスを提供する。本開示は更に、精製工程を含む、反応蒸留を介するTFAIの生成のための統合された製造プロセスを提供する。
【0013】
本明細書に開示されるように、TFAIは、以下の式1に示される反応に従って生成され得る。
式1:TFAC+HI→TFAI+HCl
【0014】
反応は、触媒の存在下又は不在下で実施され得る。簡潔に述べると、TFAC及びHIは、反応蒸留を受ける前に組み合わされ、蒸発され得る。反応蒸留プロセスの間に、気相及び液相反応の両方が起こり得る。気相反応は、反応物が沸騰するときに起こり得るが、液相反応は、反応物がカラム充填物上で凝縮するときに起こり得る。反応からのHClの連続除去は、熱力学的平衡条件下で反応を右に押し進め、それによって逆反応を制限し得る。
【0015】
同様に、反応は、溶媒の存在下又は不在下で実施され得る。溶媒が存在する場合、それは、例えばヨウ素などの、反応の可能な副生成物を溶解するために使用され得る。触媒を用いる方法及び用いない方法の両方、並びに追加の溶媒を用いる方法及び用いない方法の両方が、以下により詳細に記載される。
【0016】
1つの方法において、反応は、
図1に示されるように触媒なしで実施される。液体TFACが、TFAC供給タンク(図示せず)からTFAC予熱器(図示せず)に連続的に添加されて、TFACを含む反応物流10を提供し得る。液体HIが、HI供給タンク(図示せず)からHI予熱器(図示せず)に連続的に添加されて、HIを含む反応物流12を提供し得る。次いで、TFACとHIとの混合物を含む供給流14が、蒸気18として、充填された反応蒸留カラム20に通される前に、供給気化器16に通され得る。充填された反応蒸留カラム20内では、TFACとHIとの間で気相反応が起こり、TFAI及びHClを形成し得る。TFAC及びHIが、反応蒸留カラム20内の充填物と接触し、凝縮すると、TFACとHIとの間で液相反応も起こって、TFAI及びHClを形成し得る。TFACとHIとの間の液相反応はまた、カラム再沸器中で起こって、TFAI及びHClを形成し得る。反応蒸留カラム20から、HCl、水素(H
2)、及びトリフルオロアセチルフルオリド(TFAF)を含む第1の塔頂流22を、回収のために除去し得る。所望のTFAI生成物に加えて、未反応TFAC、未反応HI、R133異性体(C
2H
2F
3Cl)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ヨウ素、及び他の不純物を含む第1の塔底流24が、TFAC/HI再循環カラムとも称される第2の蒸留カラム26に供給され得る。蒸留カラム26から、微量のHCl及びTFAIとともにTFAC及びHIを含む第2の塔頂流28が、供給流14に再循環されて戻され得る。R133異性体などの低沸点不純物は、塔頂流28から流れ30として定期的にパージされ得る。TFAI及びTFAなどの高沸点不純物を含む第2の塔底流32は、蒸留カラム26から連続的に除去され、第3の蒸留カラム34に通される。TFAなどの高沸点不純物を含む第3の塔底流36は、定期的にパージされ得る。精製されたTFAIを含む第3の塔頂流38が、収集され得る。
【0017】
代替的に、本プロセスは、
図2に示されるように、触媒の存在下で実行され得る。液体TFACが、TFAC供給タンク(図示せず)からTFAC予熱器(図示せず)に連続的に添加されて、TFACを含む反応物流50を提供し得る。液体HIが、HI供給タンク(図示せず)からHI予熱器(図示せず)に連続的に添加されて、HIを含む反応物流52を提供し得る。次いで、TFACとHIとの混合物を含む供給流54が、蒸気58として、充填された反応蒸留カラム60に通される前に、供給気化器56に通され得る。充填された反応蒸留カラムは、カラム充填物の底部に触媒62を含み得る。充填された反応蒸留カラム60内では、反応物が触媒62と接触すると、TFACとHIとの間で気相反応が起こり、TFAI及びHClが形成され得る。TFAC及びHIが反応蒸留カラム60内の充填物と接触し、凝縮し、触媒62と接触すると、TFACとHIとの間で液相反応も起こって、TFAI及びHClを形成し得る。TFACとHIとの間の液相反応はまた、カラム再沸器中で起こって、TFAI及びHClを形成し得る。反応蒸留カラム60から、HCl、水素(H
2)、及びトリフルオロアセチルフルオリド(TFAF)を含む第1の塔頂流64を、回収のために除去し得る。所望のTFAI生成物に加えて、未反応TFAC、未反応HI、R133異性体(C
2H
2F
3Cl)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ヨウ素、及び他の不純物を含む第1の塔底流66が、TFAC/HI再循環カラムとも称される第2の蒸留カラム68に供給され得る。蒸留カラム68から、微量のHCl及びTFAIとともにTFAC及びHIを含む第2の塔頂流70が、供給流54に再循環されて戻され得る。R133異性体などの低沸点不純物は、塔頂流70から流れ72として定期的にパージされ得る。TFAI及びTFAなどの高沸点不純物を含む第2の塔底流74は、蒸留カラム68から連続的に除去され、第3の蒸留カラム76に通される。TFAなどの高沸点不純物を含む第3の塔底流78は、定期的にパージされ得る。精製されたTFAIを含む第3の塔頂流80が、収集され得る。
【0018】
更に別の代替として、高沸点溶媒を反応蒸留カラムに導入してもよい。これは、場合によっては、TFAIが高温に曝されたときに形成され得る、及び/又はHI供給物から持ち越され得る固体ヨウ素(I
2)を溶解するために望ましい場合がある。固体ヨウ素が存在すると、収率が低下し、装置の閉塞を伴う困難を引き起こし得る。固体ヨウ素を溶解するための高沸点溶媒の添加は、装置の閉塞を排除し、ヨウ素の回収を可能にし得る。
図3に示すように、反応は、触媒の不在下で実行される。液体TFACが、TFAC供給タンク(図示せず)からTFAC予熱器(図示せず)に連続的に添加されて、TFACを含む反応物流100を提供し得る。液体HIが、HI供給タンク(図示せず)からHI予熱器(図示せず)に連続的に添加されて、HIを含む反応物流102を提供し得る。次いで、TFACとHIとの混合物を含む供給流104が、蒸気108として、充填された反応蒸留カラム110に通される前に、供給気化器106に通され得る。高沸点溶媒112を充填された反応蒸留カラム110に添加してもよい。充填された反応蒸留カラム110内では、TFACとHIとの間で気相反応が起こり、TFAI及びHClを形成し得る。TFAC及びHIが、反応蒸留カラム110内の充填物と接触し、凝縮すると、TFACとHIとの間で液相反応も起こって、TFAI及びHClを形成し得る。TFACとHIとの間の液相反応はまた、カラム再沸器中で起こって、TFAI及びHClを形成し得る。反応蒸留カラム110から、HCl、水素(H
2)、及びトリフルオロアセチルフルオリド(TFAF)を含む第1の塔頂流114を、回収のために除去し得る。所望のTFAI生成物に加えて、溶媒、未反応TFAC、未反応HI、R133異性体(C
2H
2F
3Cl)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ヨウ素、及び他の不純物を含む第1の塔底流116が、TFAC/HI再循環カラムとも称される第2の蒸留カラム118に供給され得る。蒸留カラム118から、微量のHCl及びTFAIとともにTFAC及びHIを含む第2の塔頂流120が、供給流104に再循環されて戻され得る。R133異性体などの低沸点不純物は、塔頂流120から流れ122として定期的にパージされ得る。TFAI、溶媒、ヨウ素、及びTFAなどの高沸点不純物を含む第2の塔底流124が、蒸留カラム118から連続的に除去され、第3の蒸留カラム126に通される。溶媒、ヨウ素、及びTFAなどの高沸点不純物を含む第3の塔底流128を流れ130として定期的にパージして、不純物を除去し、ヨウ素を回収し得る。溶媒、TFAI、ヨウ素、及びTFAなどの高沸点不純物を含む塔底流132が、反応蒸留カラム供給流108に再循環されて戻され得る。精製されたTFAIを含む第3の塔頂流134が、収集され得る。
【0019】
更に別の代替として、
図3に示される方法は、触媒を含むように修正されてもよい。
図4に示すように、液体TFACが、TFAC供給タンク(図示せず)からTFAC予熱器(図示せず)に連続的に添加されて、TFACを含む反応物流150を提供し得る。液体HIが、HI供給タンク(図示せず)からHI予熱器(図示せず)に連続的に添加されて、HIを含む反応物流152を提供し得る。次いで、TFACとHIとの混合物を含む供給流154が、蒸気158として、充填された反応蒸留カラム160に通される前に、供給気化器156に通され得る。充填された反応蒸留カラムは、カラム充填物の底部に触媒162を含み得る。高沸点溶媒164を充填された反応蒸留カラム160に添加してもよい。充填された反応蒸留カラム160内では、反応物が触媒162と接触すると、TFACとHIとの間で気相反応が起こり、TFAI及びHClが形成され得る。TFAC及びHIが反応蒸留カラム160内の充填物と接触し、凝縮し、触媒162と接触すると、TFACとHIとの間で液相反応も起こって、TFAI及びHClを形成し得る。TFACとHIとの間の液相反応はまた、カラム再沸器中で起こって、TFAI及びHClを形成し得る。反応蒸留カラム160から、HCl、水素(H
2)、及びトリフルオロアセチルフルオリド(TFAF)を含む第1の塔頂流166を、回収のために除去し得る。所望のTFAI生成物に加えて、溶媒、未反応TFAC、未反応HI、R133異性体(C
2H
2F
3Cl)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ヨウ素、及び他の不純物を含む第1の塔底流168が、TFAC/HI再循環カラムとも称される第2の蒸留カラム170に供給され得る。蒸留カラム170から、微量のHCl及びTFAIとともにTFAC及びHIを含む第2の塔頂流172が、供給流154に再循環されて戻され得る。R133異性体などの低沸点不純物は、塔頂流172から流れ174として定期的にパージされ得る。TFAI、溶媒、ヨウ素、及びTFAなどの高沸点不純物を含む第2の塔底流176は、蒸留カラム170から連続的に除去され、第3の蒸留カラム178に通される。溶媒、ヨウ素、及びTFAなどの高沸点不純物を含む第3の塔底流180を流れ182として定期的にパージして、不純物を除去し、ヨウ素を回収し得る。溶媒、TFAI、ヨウ素、及びTFAなどの高沸点不純物を含む塔底流184は、反応蒸留カラム供給流158に再循環されて戻され得る。精製されたTFAIを含む第3の塔頂流186は、収集され得る。
【0020】
新鮮なHI及びTFACは、下流の処理から、例えば蒸留トレーンから回収されたHI及びTFACを含む再循環混合物と組み合わされ得る。組み合わされたせたTFAC:HIモル比は、過剰のTFACとともに提供されて、より高価なHIの高い転化率を与えるが、等モル量又は過剰のHIも使用される場合がある。
【0021】
TFAC:HIのモル比は、約1:10以上、約1:5以上、約1:2以上、約1:1.9以上、約1:1.8以上、約1:1.7以上、約1:1.6以上、約1:1.5以上、約1:1.4以上、約1:1.3以上、約1:1.2以上、約1:1.1以上、約1:1以下、約1.1:1以下、約1.2:1以下、約1.3:1以下、約1.4:1以下、約1.5:1以下、約1.6:1以下、約1.7:1以下、約1.8:1以下、約1.9:1以下、約2:1以下、約5:1以下、約10:1以下、又はこれらの終点によって包含される任意の値若しくは範囲である。好ましくは、TFAC:HIのモル比は、約1:1~約2:1である。
【0022】
反応蒸留カラム再沸器温度は、約20℃以上、約30℃以上、約40℃以上、約50℃以上、約60℃以上、約70℃以下、約80℃以下、約90℃以下、約100℃以下、約110℃以下、約120℃以下、又はこれらの終点によって包含される任意の値若しくは範囲であり得る。好ましくは、温度は、約50℃~約110℃である。
【0023】
反応蒸留カラムからの塔頂流の温度は、約-60℃以上、約-50℃以上、約-40℃以上、約-30℃以上、約-20℃以下、約-10℃以下、約0℃以下、約10℃以下、又はこれらの終点によって包含される任意の値若しくは範囲であり得る。
【0024】
反応蒸留コラムは、約10psig以上、約20psig以上、約30psig以上、約40psig以上、約50psig以上、約60psig以上、約70psig以上、約100psig以上、約200psig以下、約300psig以下、約400psig以下、約500psig以下、又はこれらの終点によって包含される任意の値若しくは範囲の圧力で運転され得る。好ましくは、圧力は、約50~約100psigである。
【0025】
TFAC/HI再循環カラム塔頂流の温度は、約-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上、約-20℃以上、約-10℃以上、約0℃以上、約10℃以下、約20℃以下、約30℃以下、約40℃以下、約50℃以下、約60℃以下、約70℃以下、約80℃以下、又はこれらの終点によって包含される任意の値若しくは範囲であり得る。
【0026】
TFAC/HI再循環カラム塔底流の温度は、約50℃以上、約60℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、約100℃以下、約110℃以下、約120℃以下、約130℃以下、約140℃以下、約150℃以下、又はこれらの終点によって包含される任意の値若しくは範囲であり得る。
【0027】
TFAC/HI再循環カラムは、約10psig以上、約14psig以上、約20psig以上、約30psig以上、約40psig以上、約50psig以上、約60psig以下、約70psig以下、約80psig以下、約90psig以下、約100psig以下、又はこれらの終点によって包含される任意の値若しくは範囲の圧力で運転され得る。好ましくは、圧力は、約10psig~約30psigである。
【0028】
触媒が使用される場合、それは、活性炭、メソカーボン、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル-クロム合金、ニッケル-クロム-モリブデン合金、ニッケル-銅合金、銅、アルミナ、白金、パラジウム、若しくは炭化鉄、炭化モリブデン及び炭化ニッケルなどの金属炭化物、並びに炭化ケイ素などの非金属炭化物などの炭化物、又はそれらの組み合わせを含む群から選択され得る。
【0029】
触媒は、メッシュ、ペレット、又は球体の形態であり得る。
【0030】
溶媒を使用する場合、溶媒は高いヨウ素溶解度を示すことが望ましい。好適な溶媒としては、ベンゼン、及びトルエン、キシレン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、エチルベンゼンなどの置換芳香族化合物、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)及びジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)など極性非プロトン性溶媒、及びイミダゾリウム塩及び硫酸水素カプロラクタミウムなどのイオン液体、並びにそれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0031】
本プロセスは、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、又は約99%以上の収率でトリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を生成し得る。
【0032】
トリフルオロアセチルクロリド(TFAI)は、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、又は約99%以上の純度で生成され得る。
【0033】
本発明は、例示的な設計に対するものとして説明してきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で更に修正することができる。更に、本出願は、本発明が関連する技術分野における既知の又は慣習的な実践に属する本開示からのそのような逸脱を包含することが意図されている。
【0034】
本明細書で使用する場合、「前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内」という句は、それらの値が列挙のより低い部分にあるか又は列挙のより高い部分にあるかにかかわらず、任意の範囲がそのような句の前に列挙された値のうちのいずれか2つから選択され得ることを意味する。例えば、一対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値及びより高い値から選択され得る。
【実施例】
【0035】
実施例1:触媒の不在下でのTFAIの形成
この実施例は、触媒の不在下で反応蒸留を介して、TFAC及びHIからTFAIを生成するための連続プロセス、並びに反応生成物からのTFAIの精製を例示する。このユニットは、TFAC及びHI供給システム、TFAC/HI供給ミキサー/気化器、反応蒸留カラム、TFAC/HI再循環カラムとして作用する第2の蒸留カラム、及びTFAI精製カラムとして作用する第3の蒸留カラムからなる。3つ全てのカラムは、同じ装備を有し、10ガロンの再沸器、Goodloe 2インチ直径×6インチ厚の構造化金属充填物を有する2インチID×120インチ長さのカラム、及びシェル型凝縮器におけるチューブからなる。
【0036】
392g/hの液体TFAC及び379g/hの液体HIが、反応蒸留カラムに供給され、カラム再沸器温度が、30psigの飽和蒸気により約56℃に制御され、カラム塔頂温度が、液体窒素で冷却した凝縮器で-47℃に制御される。約107g/hのHClが、カラム塔頂からKOHスクラバーシステムに除去され、カラム塔頂圧力が、70psigに制御される。IC分析により、HCl流は、微量のTFAFとともに主にHClを含有する。反応蒸留カラム塔底流が、第2のカラムに供給され、カラム再沸器温度が、30psigの飽和蒸気により約65℃に制御され、カラム塔頂温度が、冷却エタノールによって冷却された凝縮器で約8℃に制御される。塔頂圧力を28psigに制御して、未反応のTFAC(88.1重量%)及びHI(9.5重量%)、HCl(<0.5重量%)及びTFAI(<2%)を含有し、残りが他のものである210g/hの第2の塔頂流が、供給物蒸発器に再循環されて戻される。R133異性体などの低沸点不純物が蓄積される場合、定期的に第2のカラム塔頂流をパージすることができる。主にTFAIを<1重量%のTFA及び他の重質分とともに含む第2のカラム塔底流が、第3の蒸留カラムに供給され、カラム再沸器温度は、30psigの飽和蒸気により約74℃に制御され、カラム塔頂温度は、水道水で冷却された凝縮器で36℃に制御される。第2のカラム塔頂圧力が周囲圧力である場合、約650g/hの純粋なTFAI(>99重量%)がカラム塔頂流から回収され、これは>97%のTFAI収率を表す。ヨウ素及びTFAなどの高沸点不純物が蓄積される場合、定期的に第3のカラム塔底流をパージすることができる。
【0037】
実施例2:触媒の存在下でのTFAIの形成
この実施例は、触媒の存在下で反応蒸留を介して、TFAC及びHIからTFAIを生成するための連続プロセス、並びに反応生成物からのTFAIの精製を例示する。このユニットは、TFAC及びHI供給システム、TFAC/HI供給ミキサー/気化器、反応蒸留カラム、TFAC/HI再循環カラムとして作用する第2の蒸留カラム、及びTFAI精製カラムとして作用する第3の蒸留カラムからなる。反応蒸留カラムは、10ガロンの再沸器、2インチIDX120インチ長さのカラム、及びシェル型凝縮器におけるチューブからなる。カラムは、底部に、触媒として機能する粒状活性炭(6インチ厚、容量309ml)が充填されており、カラムの残りの部分には、Goodloe 2インチ直径×6インチ厚の構造化金属充填材が充填されている。他の2つのカラムは、同じ装備を有し、10ガロンの再沸器、Goodloe 2インチ直径×6インチ厚の構造化金属充填物を有する2インチID×120インチ長さのカラム、及びシェル型凝縮器におけるチューブからなる。
【0038】
359g/hの液体TFAC及び347g/hの液体HIが、反応蒸留カラムに供給され、カラム再沸器温度が、30psigの飽和蒸気により約59℃に制御され、カラム塔頂温度が、液体窒素で冷却した凝縮器で-47℃に制御される。約99g/hのHClが、カラム塔頂からKOHスクラバーシステムに除去され、カラム塔頂圧力が、70psigに制御される。IC分析により、HCl流は、微量のTFAFとともに主にHClを含有する。反応蒸留カラム塔底流が、第2のカラムに供給され、カラム再沸器温度が、30psigの飽和蒸気により約65℃に制御され、カラム塔頂温度が、冷却エタノールによって冷却された凝縮器で約8℃に制御される。塔頂圧力を28psigに制御して、未反応のTFAC(94.1重量%)及びHI(4.3重量%)、HCl(<0.3重量%)及びTFAI(<1.5%)を含み、残りが他のものである164g/hの第2の塔頂流は、供給物蒸発器に再循環されて戻される。R133異性体などの低沸点不純物が蓄積される場合、定期的に第2のカラム塔頂流をパージすることができる。主にTFAIを<1重量%のTFA及び他の重質分とともに含む第2のカラム塔底流が、第3の蒸留カラムに供給され、カラム再沸器温度が、30psigの飽和蒸気により約74℃に制御され、カラム塔頂温度が、水道水で冷却された凝縮器で36℃に制御される。第2の塔頂圧力が周囲圧力である場合、約598g/hの純粋なTFAI(>99重量%)がカラム塔頂流から回収され、これは>97%のTFAI収率を表す。ヨウ素、TFAなどの高沸点不純物が蓄積される場合、定期的に第3のカラム塔底流をパージすることができる。
【0039】
実施例3:溶媒の添加によるTFAIの形成
実施例1に記載したのと同じ装備及び運転で、2kgのトルエンを、運転の開始時に反応蒸留再沸器に添加する。システムへのトルエンの添加は、TFAIが高温に曝されたときに形成され得る、及び/又はHI供給物から持ち越され得る固体ヨウ素(I2)を溶解するための溶媒として機能する。トルエンは、反応蒸留カラムの塔底から第2の蒸留カラムへ、次いで第2の蒸留カラム塔底から第3の蒸留カラムへとシステムを通過し、第3の蒸留カラム塔底から反応蒸留カラム再沸器へと再循環されて戻される。ヨウ素濃度が約20重量%に達するか、又はTFA濃度が約30重量%に達すると、ある特定の量の再沸器材料が第3の蒸留カラム塔底流からパージされ、ほぼ等量の新しいトルエンが反応蒸留再沸器に添加されて、パージされるトルエンを補充する。パージされたトルエン流は、再循環のためにトルエン及びヨウ素を回収するために処理され得るか、又は廃棄物として処分され得る。
【0040】
実施例4:溶媒を添加した触媒の存在下でのTFAIの形成
実施例2に記載したのと同じ装備及び運転で、2kgのトルエンを、運転の開始時に反応蒸留再沸器に添加する。システムへのトルエンの添加は、TFAIが高温に曝されたときに形成され得る、及び/又はHI供給物から持ち越され得る固体ヨウ素(I2)を溶解するための溶媒として機能する。トルエンは、反応蒸留カラムの塔底から第2の蒸留カラムへ、次いで第2の蒸留カラム塔底から第3の蒸留カラムへとシステムを通過し、第3の蒸留カラム塔底から反応蒸留カラム再沸器へと再循環されて戻される。ヨウ素濃度が約20重量%に達するか、又はTFA濃度が約30重量%に達すると、ある特定の量の再沸器材料が第3の蒸留カラム塔底流からパージされ、約等量の新しいトルエンが反応蒸留再沸器に添加されて、パージされるトルエンを補充する。パージされたトルエン流は、再循環のためにトルエン及びヨウ素を回収するために処理され得るか、又は廃棄物として処分され得る。
【0041】
態様
態様1は、トリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を作製するためのプロセスであって、トリフルオロアセチルクロリド(TFAC)を含む流れをヨウ化水素(HI)を含む流れと組み合わせて、組み合わされた反応物流を提供することと、組み合わされた反応物流を反応蒸留カラムに通して、粗生成物流を提供することと、粗生成物流を精製して、トリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を含む精製された生成物流を提供することと、を含む、プロセスである。
【0042】
態様2は、TFAC:HIのモル比が、約1:1~約2:1である、態様1に記載のプロセスである。
【0043】
態様3は、反応蒸留カラムが、再沸器を更に含む充填カラムである、態様1又は2に記載のプロセスである。
【0044】
態様4は、反応蒸留カラム再沸器温度が、約50℃~110℃である、態様1~3のいずれか1つに記載のプロセスである。
【0045】
態様5は、反応蒸留カラムが、約50~100psigの圧力で運転される、態様1~4のいずれか1つに記載のプロセスである。
【0046】
態様6は、粗生成物流を精製することが、粗生成物流を1つ以上の蒸留カラムに通すことを含む、態様1~5のいずれか1つに記載のプロセスである。
【0047】
態様7は、反応蒸留カラムが、触媒を更に含む、態様1~6のいずれか1つに記載のプロセスである。
【0048】
態様8は、触媒が、活性炭、メソカーボン、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル-クロム合金、ニッケル-クロム-モリブデン合金、ニッケル-銅合金、銅、アルミナ、白金、パラジウム、炭化鉄、炭化モリブデン、炭化ニッケル、炭化ケイ素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、態様7に記載のプロセスである。
【0049】
態様9は、組み合わされた反応物流が、溶媒を更に含む、態様1~8のいずれか1つに記載のプロセスである。
【0050】
態様10は、溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イオン液体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、態様9に記載のプロセスである。
【0051】
態様11は、精製された生成物流からヨウ素(I2)を回収することを更に含む、態様9又は10に記載のプロセスである。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を作製するためのプロセスであって、
トリフルオロアセチルクロリド(TFAC)を含む流れをヨウ化水素(HI)を含む流れと組み合わせて、組み合わされた反応物流を提供することと、
前記組み合わされた反応物流を反応蒸留カラムに通して、粗生成物流を提供することと、
前記粗生成物流を精製して、トリフルオロアセチルヨージド(TFAI)を含む精製された生成物流を提供することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
TFAC:HIのモル比が、約1:1~約2:1である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応蒸留カラムが、再沸器を更に含む充填カラムである、請求項1に記載のプロセス。
【国際調査報告】