(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】MEMS共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/24 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
H03H9/24 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537848
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 FI2022050863
(87)【国際公開番号】W WO2023118664
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520071814
【氏名又は名称】キョーセラ テクノロジーズ オーユー
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3 02150 Espoo Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】セイジ エリック
(72)【発明者】
【氏名】オヤ アールネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェステリネン ハンヌ
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA09
5J108BB00
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE08
5J108FF02
5J108FF11
5J108KK01
(57)【要約】
MEMS(微小電気機械システム)共振器アセンブリ(100)は、支持構造体(102)と、支持構造(102)に懸架された共振器要素(101)と、共振器要素(101)を共振モードに励起するアクチュエータとを備える。共振器要素(101)は、2つのバルク音響共振子(110a,110b)と屈曲モード共振子(120)とを備える。屈曲モード共振子(120)は、2つのバルク音響共振子(110a,110b)を機械的に接続する。MEMS共振器アセンブリ(100)は、2つのバルク音響共振子(110a,110b)の運動が互いに対して実質的に同位相又は180度ずれた位相となる集団共振モードで振動するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMS(微小電気機械システム)共振器アセンブリであって、
支持構造と;
前記支持構造体に懸架される共振器要素と;
前記共振器要素を共振モードに励起するアクチュエータと;
を備え、
前記共振器要素は2つのバルク音響共振子と屈曲モード共振子とを有し、前記屈曲モード共振子が前記2つのバルク音響共振子を機械的に接続し、前記MEMS共振器アセンブリは集団共振モードで振動するように構成され、前記集団共振モードにおいて、前記2つのバルク音響共振子の動きは互いに対して実質的に同位相であるか又は180度位相がずれる、
MEMS共振器アセンブリ。
【請求項2】
前記2つのバルク音響共振子のうち少なくとも1つは、長さ伸縮共振子、相互接続された長さ伸縮共振素子アセンブリ、幅伸縮共振子、正方形伸縮共振子、又はラーメ共振子である、請求項1に記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項3】
前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子の1つの延出部又は1つの延出面は、前記屈曲モード共振子によって、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子の1つの延出部又は1つの延出面と接続されている、請求項1又は2に記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項4】
前記バルク音響共振子は振動方向に共振し、前記屈曲モード共振子はビーム(梁)型共振子であり、その最長寸法は前記振動方向に対して垂直である、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項5】
前記屈曲モード共振子のN次オーバートーン周波数は、前記集団共振モードの周波数に実質的に等しい、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項6】
前記集団共振モードの周波数は、前記第1のバルク音響共振子の基本周波数又はN次オーバートーン周波数と、前記第2のバルク音響共振子の基本周波数又はN次オーバートーン周波数とに実質的に等しい、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項7】
前記屈曲モード共振子が面内屈曲ビーム共振器である、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項8】
前記バルク音響共振子が面内共振器である、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項9】
前記屈曲モード共振子は、前記バルク音響共振子の反節点で前記バルク音響共振子に機械的に接続されている、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項10】
前記バルク音響共振子は、屈曲モード共振子の反節点で前記屈曲モード共振子に機械的に接続されている、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項11】
前記屈曲モード共振子は、前記屈曲モード共振子の第1の側の1つ又は複数の接続点で、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子に機械的に接続され、前記屈曲モード共振子の前記第1の側の反対側の第2の側の1つ又は複数の接続点で、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子に機械的に接続される、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項12】
前記屈曲モード共振子は、前記屈曲モード共振子の一方の側の1つ又は複数の接続点で、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子に機械的に接続され、前記屈曲モード共振子の前記一方の側と同じ側の1つ又は複数の接続点で、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子に機械的に接続される、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項13】
前記屈曲モード共振子の共振モード形状は、2つのタイプの反節点を有し、
第1のタイプの反節点は、振動軸に沿って正の変位を有し、そのうちの少なくとも1つは、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子への機械的接続のための接続点であり、
第2のタイプの反節点は、前記振動軸に沿って負の変位を有し、そのうちの少なくとも1つは、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子への機械的接続のための接続点である、
先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項14】
前記アクチュエータは圧電アクチュエータ又は静電アクチュエータである、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項15】
前記2つのバルク音響共振子間の距離は50μm以下、例えば20μm以下である、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項16】
前記共振器要素の質量の50%以上が単結晶シリコンで構成されている、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項17】
前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子と前記屈曲モード共振子とが第1の数の接続要素によって接続され、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子と前記屈曲モード共振子とは第2の数の接続要素によって接続され、前記第1の数は前記第2の数とは異なる、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項18】
前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子と前記屈曲モード共振子とが第1の数の接続要素によって接続され、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子と前記屈曲モード共振子とは第2の数の接続要素によって接続され、前記第1の数は前記第2の数に等しい、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項19】
キャビティが、前記共振器要素を前記支持構造から分離する、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項20】
前記共振器要素は、圧電AlN、ScドープAlN、ZnO、LiNbO
3、LiTaO
3のいずれかの層を有する、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項21】
前記共振器要素は、0.5μmから4μmの範囲、例えば1μmから2μmの範囲の厚さの圧電体層を有する、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項22】
前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子及び第2のバルク音響共振子が同じ支持構造に固定されており、前記支持構造は、前記第1のバルク音響共振子と第2のバルク音響共振子との中間にある線に沿って前記共振器要素の平面内に形成されたものである、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項23】
前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子が第1の振動方向に共振し、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子が前記第1の振動方向に直交する第2の振動方向に共振する、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項24】
前記屈曲モード共振子は、長方形の枠の形の部分を有する、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【請求項25】
前記集団共振モードの周波数は、7MHzから160MHzの範囲内、例えば15MHzから110MHzの範囲内である、先行する請求項のいずれかに記載のMEMS共振器アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微小電気機械システム(MEMS)共振器(レゾネータ)に関する。
【発明の背景】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を説明するが、ここで説明されている技術が技術水準を示していることを認めている訳ではないことに注意されたい。
【0003】
MEMS共振器の等価直列抵抗(ESR)を低くすることは困難であり、特にサイズが小さい共振器ではそうである。バルク音響共振子の場合、共振周波数は横方向の寸法に反比例する。これは周波数を定める寸法(周波数決定寸法)として定義できる。長さ伸縮型(LE)共振子の場合、ビーム長が周波数決定寸法となる。高い共振周波数に到達するためには、周波数決定寸法は縮小される。しかし、周波数要件によりLE共振子の長さを短くすると同時に、十分に低い等価直列抵抗を実現するためには幅を広げる必要がある。
【0004】
一方の寸法を縮小し、他方の寸法を拡大する必要があるため、設計上の課題が生じる。
【摘要】
【0005】
本発明の特定の実施形態の目的は、低い等価直列抵抗(ESR)を有するMEMS共振器を提供すること、及び/又はダイ上の共振器要素のレイアウトにおける設計自由度を高めること、あるいは少なくとも既存技術に代わるものを提供することである。
【0006】
本発明の第1の捉え方によれば、次のようなMEMS(微小電気機械システム)共振器アセンブリが提供される。このMEMS共振器アセンブリは、
支持構造と;
前記支持構造体に懸架される共振器要素と;
前記共振器要素を共振モードに励起するアクチュエータと;
を備え、前記共振器要素は2つのバルク音響共振子(bulk acoustic resonator)と屈曲モード共振子(flexural mode resonator)とを有し、前記屈曲モード共振子が前記2つのバルク音響共振子を機械的に接続し、前記MEMS共振器アセンブリは集団共振モード(collective resonance mode)で振動するように構成され、前記集団共振モードにおいて、前記2つのバルク音響共振子の動きは互いに対して実質的に同位相であるか又は180度位相がずれている。
【0007】
実施形態によっては、前記2つのバルク音響共振子のうち少なくとも1つは、長さ伸縮モード共振子(「LE共振子」)、相互接続された長さ伸縮モード共振素子アセンブリ、幅伸縮モード共振子、正方形伸縮モード共振子、又はラーメ共振子である。
【0008】
実施形態によっては、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子の1つの延出部又は1つの延出面は、前記屈曲モード共振子によって、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子の1つの延出部又は1つの延出面と接続されている。
【0009】
実施形態によっては、前記バルク音響共振子は振動方向に共振し、前記屈曲モード共振子はビーム(梁)型共振子であり、その最長寸法は前記振動方向に対して垂直である。
【0010】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子のN次オーバートーン周波数は、前記集団共振モードの周波数に実質的に等しい。
【0011】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子は面内屈曲(in-plane flexural)ビーム共振子である。
【0012】
実施形態によっては、前記バルク音響共振子は面内(in-plane)共振子である。
【0013】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子は、前記バルク音響共振子の反節点(anti-nodal point)で前記バルク音響共振子に機械的に接続されている。
【0014】
実施形態によっては、前記バルク音響共振子は、屈曲モード共振子の反節点で前記屈曲モード共振子に機械的に接続されている。
【0015】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子は、前記屈曲モード共振子の第1の側の1つ又は複数の接続点で、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子に機械的に接続され、前記屈曲モード共振子の前記第1の側の反対側の第2の側の1つ又は複数の接続点で、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子に機械的に接続される。
【0016】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子は、前記屈曲モード共振子の一方の側の1つ又は複数の接続点で、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子に機械的に接続され、前記屈曲モード共振子の前記一方の側と同じ側の1つ又は複数の接続点で、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子に機械的に接続される。このような実施形態によっては、前記第1のバルク音響共振子の第1の端部又は第1の側面が前記屈曲モード共振子に接続され、また前記第2のバルク音響共振子の第1の端部又は第1の側面も前記屈曲モード共振子に接続される。
【0017】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子の共振モード形状は、2つのタイプの反節点を有し、
第1のタイプの反節点は、振動軸に沿って正の変位を有し、そのうちの少なくとも1つは、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子への機械的接続のための接続点であり、
第2のタイプの反節点は、前記振動軸に沿って負の変位を有し、そのうちの少なくとも1つは、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子への機械的接続のための接続点である。
【0018】
このような実施形態によっては、屈曲振動の波動的性質を考慮すると、ビームの長手方向に沿って、接続要素(もしあれば)の位置は、λ/2ごとに一方の側から他方の側へと切り替えられることになる(λは屈曲共振波長である)。
【0019】
実施形態によっては、前記アクチュエータは圧電アクチュエータ又は静電アクチュエータである。
【0020】
実施形態によっては、前記2つのバルク音響共振子間の距離は50μm以下、例えば20μm以下である。
【0021】
実施形態によっては、前記共振器要素の質量の50%以上が単結晶シリコンで構成されている。
【0022】
実施形態によっては、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子と前記屈曲モード共振子とが第1の数の接続要素によって接続され、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子と前記屈曲モード共振子とは第2の数の接続要素によって接続され、前記第1の数は前記第2の数とは異なる。
【0023】
実施形態によっては、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子と前記屈曲モード共振子とが第1の数の接続要素によって接続され、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子と前記屈曲モード共振子とは第2の数の接続要素によって接続され、前記第1の数は前記第2の数に等しい。
【0024】
実施形態によっては、キャビティ(空洞)が、前記共振器要素を前記支持構造から分離する。
【0025】
実施形態によっては、前記共振器要素は、圧電AlN、ScドープAlN、ZnO、LiNbO3、LiTaO3のいずれかの層を有する。
【0026】
実施形態によっては、前記共振器要素は、0.5μmから4μm、例えば1μmから2μmの範囲の厚さの圧電体層を有する。
【0027】
実施形態によっては、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子及び第2のバルク音響共振子が同じ支持構造に固定されており、前記支持構造は、前記第1のバルク音響共振子と第2のバルク音響共振子との中間にある線に沿って前記共振器要素の平面内に形成されたものである。
【0028】
実施形態によっては、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子が第1の振動方向に共振し、前記2つのバルク音響共振子のうちの第2のバルク音響共振子が前記第1の振動方向に直交する第2の振動方向に共振する。
【0029】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子は、長方形の枠の形の部分を有する。
【0030】
実施形態によっては、前記集団共振モードの周波数は、7MHzから160MHzの範囲、例えば15MHzから110MHzの範囲である。
【0031】
実施形態によっては、前記2つのバルク音響共振子のうちの第1のバルク音響共振子と第2のバルク音響共振子との間にある前記屈曲モード共振子は、前記屈曲モード共振子の反節点を介して前記第1のバルク音響共振子と前記第2のバルク音響共振子とを機械的に接続する。
【0032】
実施形態によっては、前記第1及び第2のバルク音響共振子は相互接続された複数の共振素子ビームを有し、隣接する共振素子ビームは少なくとも1つの機械的接続(又は結合)要素によって接続される。
【0033】
実施形態によっては、前記第1及び第2のバルク音響共振子の共振ビームと、前記屈曲モード共振子の細長い共振素子(又はビーム)とは、前記共振素子内の単結晶シリコン層の各<100>結晶方向に沿って整列しており、<100>結晶方向からのずれがあったとしても、ずれの大きさは最大で15度である。
【0034】
実施形態によっては、前記MEMS共振器アセンブリは、面内伸縮(LE)共振モードで共振するように構成された相互接続された複数の共振素子ビームを有する2つのバルク音響共振子と、該2つのバルク音響共振子に機械的に接続された少なくとも1つの屈曲モード共振子とを備え、前記少なくとも1つの屈曲モード共振子は、その反節点の一部に配置された接続要素を介して前記2つのバルク音響共振子に接続され、前記2つのバルク音響共振子は同相で共振する。
【0035】
実施形態によっては、前記MEMS共振器アセンブリは2つのバルク音響共振子を備え、各バルク音響共振子は、1つ又は複数の長さ伸縮ビーム(extensional beam)から構成され、前記1つ又は複数の長さ伸縮ビームは、その長手方向が平行になるように並んで配置され、その幅方向で結合される(これにより、相互接続された長さ伸縮共振器アセンブリを形成する)。
【0036】
実施形態によっては、前記2つ以上のバルク音響共振子は、長手方向が平行になるように並んで配置され、同相振動中に各バルク音響共振子の2つの遠位端が周期的に互いに近づいたり遠ざかったりするようにされる。
【0037】
実施形態によっては、前記面内屈曲モード共振子は、伸縮モード共振子のペアの間に配置され、その長手方向は前記伸縮モード共振子の振動方向に対して垂直である。
【0038】
実施形態によっては、自由境界条件を仮定すると、前記屈曲モード共振子は前記伸縮モード共振子と実質的に同じ共振周波数を持つ。この周波数は、基本共振周波数又はN次オーバートーンとすることができる。実施形態によっては、面内屈曲振動はN+1個の節点とN+2個の反節点を特徴とする。実施形態によっては、前記屈曲モード共振子と前記伸縮モード共振子との間の周波数マッチングは、適切なビーム長とビーム幅に設計することによって達成される。
【0039】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子は、該屈曲モード共振子の両側に設けられる少なくとも1つの接続点に配置された接続要素を介して前記伸縮モード共振子と機械的に結合される。
【0040】
実施形態によっては、前記屈曲モード共振子の接続点は、該屈曲モード共振子の反節点及び(接続された)前記バルク音響共振子の反節点にある。
【0041】
実施形態によっては、ある伸縮モード共振子とその隣の伸縮モード共振子との間の距離は、前記屈曲モード共振子の幅に接続要素の長さの2倍を足したものに等しい。
【0042】
実施形態によっては、前記伸縮モード共振子は、前記共振器要素内の単結晶シリコン層の<100>結晶方向([100]など)に(実質的に)整列した共振体を有する。更に、実施形態によっては、屈曲結合要素(屈曲モード共振子)は、別の<100>結晶方向([010]など)に(実質的に)整列している。
【0043】
様々な捉え方や実施形態を紹介してきたが、これらは発明の範囲を限定するために提示されたものではない。これらの実施形態や後述の実施形態は、本発明の実施にあたり使用され得る特定の態様やステップを説明するために用いられるにすぎない。いくつかの実施形態は他の実施形態にも適用可能であることが理解されるべきである。紹介する実施形態は適宜組み合わせ可能でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
次に、本発明を、添付図面を参照しながら例示的にのみ説明する。
【
図1】或る実施形態に従うMEMS共振器アセンブリを示す。
【
図2A】或る実施形態に従う、キャビティSOI基板上に形成されたMEMS共振器アセンブリの断面を示す。
【
図2B】MEMS共振器アセンブリの断面を示す。このMEMS共振器アセンブリは、或る実施形態に従い、ウェハレベルパッケージ部品の一部を形成している。
【
図3A】相互接続された2つのLE共振素子アセンブリと、3次オーバートーンで振動するように設計された1つの面内屈曲共振子から構成されるMEMS共振器アセンブリの一実施形態を示している。
【
図3C】相互接続された長さ伸縮モード共振素子アセンブリの収縮時の基本モードのモード形状を示す。
【
図3D】相互接続された長さ伸縮モード共振素子アセンブリの伸長時の基本モードのモード形状を示す。
【
図4】
図3A及び
図3Bの実施形態に関連するいくつかのパラメータの意味を示している。
【
図5A】相互接続された3つのLE共振素子アセンブリと、3次オーバートーンで振動するように設計された2つの面内屈曲共振子とからなる実施形態を示す。
【
図6A】相互接続された2つのLE共振素子アセンブリと、1次オーバートーンで振動するように設計された1つの面内屈曲共振子とから構成される実施形態を示す。
【
図7A】相互接続された2つのLE共振素子アセンブリと、7次オーバートーンで振動するように設計された1つの面内屈曲共振子とから構成される実施形態を示す。
【
図8A】相互接続された2つのLE共振素子アセンブリと、7次オーバートーンで振動するように設計された1つの面内屈曲共振子とからなる別の実施形態を示している。
【
図9A】圧電アクチュエータを有する、MEMS共振器アセンブリの例示的な実施形態を示す。
【
図9B】
図9AのMEMS共振器アセンブリの、線AA'に沿った断面の一例を示す。
【
図9C】
図9AのMEMS共振器アセンブリの、線BB'に沿った断面の一例を示す。
【
図10B】
図10AのMEMS共振器アセンブリの断面の、線AA'に沿った一例を示す。
【
図10C】或る実施形態に従う、エッチホールを有する
図10AのMEMS共振器アセンブリの断面の一例を示す。
【
図10D】
図10AのMEMS共振器アセンブリの、線BB'に沿った断面の一例を示す。
【
図11A】2つのWE共振子と1つの面内屈曲共振子から構成され、3次オーバートーンで振動するように設計された実施形態を示す。
【
図12A】2つのSE共振子と1つの面内屈曲共振子から構成され、3次オーバートーンで振動するように設計された実施形態を示す。
【
図13】2×2のアレイ状に配置された4つのSE共振子を有するMEMS共振器アセンブリを示している。
【
図14A】2つのLE共振素子と、3次オーバートーンで振動するように設計された屈曲共振子を有する、別のMEMS共振器アセンブリを示している。
【
図15A】2つのLE共振素子と、LE共振素子の両遠位端に結合された2つの屈曲共振子を有するMEMS共振器アセンブリを示す。
【
図16A】4つのLE共振素子と、LE共振素子の遠位端に結合された3つの屈曲共振子を有するMEMS共振器アセンブリを示す。
【
図17】相互接続された2つのLE共振素子アセンブリと、相互接続されたLE共振素子アセンブリの遠位端に結合された屈曲モード共振子を有するMEMS共振器アセンブリを示す。
【
図18】2つのWE共振子が中央の支持構造体に繋がれている様子を示している。
【
図19】中央支持構造を持つ更に別の実施形態を示している。
【
図20】相互接続された3つのLE共振素子アセンブリと、相互接続されたLE共振素子アセンブリの遠位端に結合された屈曲モード共振子とを有するMEMS共振器アセンブリを示す。
【
図21A】主振動軸が互いに垂直な伸縮モード共振子を示す。
【
図21C】主振動軸が互いに垂直な伸縮モード共振子の別の実施形態を示す。
【
図21E】位相が180度ずれた伸縮モード共振子の一実施形態を示す。振動の主軸は互いに垂直である。
【
図22】屈曲共振子によって結合された複数のラーメモード共振子を有するMEMS共振器アセンブリを示す。
【
図23】2つの伸縮モード共振子を接続する対称屈曲モード共振子を備える、更に別の実施形態を示す。
【詳細説明】
【0045】
以下の説明において、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0046】
本明細書に開示される実施形態のあるものによれば、MEMS共振器アセンブリは、1つ又は複数の屈曲共振子(flexural resonator)を用いて結合される少なくとも2つのバルク音響共振子(bulk acoustic resonator)を備え、前記少なくとも2つのバルク音響共振子の各々が他のバルク音響共振子と同一又は180度ずれた位相で共振する集団共振モード(collective resonance mode)で共振するようにされる。
【0047】
MEMS共振器アセンブリを構成するバルク音響共振子には、例えば、長さ伸縮(Length-Extensional,LE)モード共振子、幅伸縮(Width-Extensional,WE)モード共振子、正方形伸縮(Squire-Extensional,SE)モード共振子、及び相互接続された長さ伸縮モード共振子、ラーメ(Lame)モード共振子が含まれる。2つ以上のバルク音響共振子の同期は、共振器アセンブリの特性を向上させることを可能とする。特に、ESR(等価直列抵抗)を低減し、電力処理能力を向上させることができる。
【0048】
実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリは、1つ又は複数の屈曲共振子を用いて結合される少なくとも2つの伸縮モード(Extensionalモード)共振子を備え、これら少なくとも2つの伸縮モード共振子の各々が他の伸縮モード共振子と同一又は180度ずれた位相で共振する、集団共振モードで共振するようにされる。これらのMEMS共振器アセンブリの構成要素となり得る伸縮モード共振子には、例えば、長さ伸縮モード共振子、幅伸縮モード共振子、正方形伸縮モード共振子、及び相互接続された長さ伸縮モード共振子が含まれる。
【0049】
図1には、ダイなどに組み込まれた、或る実施形態に従うMEMS共振器アセンブリ100が示されている。共振器アセンブリ100は、共振器要素101と、支持構造102と、共振器要素101を支持構造102に固定する懸架要素140とを備える。
図1には4つの懸架要素が描かれている。共振器要素101は、(少なくとも)2つの伸縮モード共振子(110a,110b)と、(1つ又は複数の)屈曲モード共振子120とを備える。更に、共振器要素101は、屈曲共振子120と伸縮モード共振子110aとを接続する(1つ以上の)接続要素130aと、屈曲共振子120と伸縮モード共振子110bとを接続する(1つ以上の)接続要素130bとを備える。
図1の例では、伸縮モード共振子110a用の接続要素は1つであり、伸縮モード共振子110b用の接続要素は2つである。
【0050】
実施形態によっては、共振器要素101の伸縮モード共振子110a,110bの少なくとも1つは、当該伸縮モード共振子を共振モードに励起するための圧電薄膜アクチュエータを有する。当該伸縮モード共振子が共振モードに励起されると、伸縮モード共振子110aと110bとが機械的に結合されていることにより、共振器要素全体が集団共振(collective resonance)となる。実施形態によっては、共振器要素101の質量の50%以上が単結晶シリコンでできている。実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリ100は、伸縮モード共振子110a,110bの少なくとも1つを共振モードに励起し、それによって共振器要素全体を伸縮モード共振子110a,110bの機械的結合による集団共振に励起するための静電アクチュエータを備える。
【0051】
実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリは、SOI(Silicon-on-Insulator)基板又はキャビティSOI(cavity-SOI)基板上に形成される。後者の断面を
図2Aに示す。支持構造102と、伸縮モード共振子110a,110b及び屈曲共振子120からなる共振器要素101とは、キャビティSOI基板のいわゆるデバイス層に形成されている。キャビティSOI基板は、ハンドル層105(典型的には単結晶シリコン製)と絶縁体層106(典型的には酸化シリコン製)とを有する。共振器要素101とハンドル層105の間にキャビティ107を形成するために、ハンドル層に凹部が形成されている。共振器要素101を形成する材料層を貫通する垂直トレンチ190は、伸縮モード共振子110a及び110bを支持構造102及び屈曲共振子120から分離する。支持構造102は、絶縁体層106を介してハンドル層105に強固に取り付けられている。懸架要素及び接続要素は、
図2Aには図示されていない。
【0052】
実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリは、セラミックパッケージ内の低圧キャビティに封入されている。実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリは、
図2Bに示されるように、ウェハレベルパッケージ部品の一部である。キャップ108が支持構造102に取り付けられ、ウェハレベルパッケージング技術を用いて、共振器要素101のための気密封止された低圧環境を作り出している。キャップ108には凹部109が形成され、共振器要素101とキャップ108の間に空洞が設けられている。
図2A,
図2Bでは、電気的接続は図示していない。
【0053】
図1のMEMS共振器アセンブリ100の構造及び動作のさらなる特徴について、
図3A~3Dを参照しながら以下に説明する。図に示す構造は、共振器要素101と、共振器要素101を支持構造(図示せず)に繋ぐ懸架要素141a,142a,143b,144bとを示している。MEMS共振器アセンブリの静止位置での形状を
図3Aに、振動サイクルの最大変位での形状を
図3Bに示す。
図3A,3Bに示す伸縮モード共振子110a,110bは、相互接続された長さ伸縮(LE)共振器アセンブリであり、縦長のビーム(梁)状のLEモード共振子151で構成される。この例では、共振子110a,110bとも、5個のLE共振子151で構成されている。隣接するLE共振素子151同士は、トレンチ153によって分離されているが、遠位端部分152では繋がっている。隣接する2つのLE共振素子を接続する部分152は、本明細書では相互接続要素と呼ばれる。相互接続要素の目的は、複数のビーム(梁)型LE共振素子151が、同じ周波数で同じ長さ伸縮共振モードで連動し共振するようにすることである。これら2つの相互接続されたLE共振素子は、一緒に伸縮モード共振で振動する。
図3B~3Dの一点鎖線は、相互に連結されたLE共振素子アセンブリの遠位端(又は外側縁)の静止位置を示す。
図3B(及び3C)に示される共振運動の最大収縮位置では、
図3Bの4本の一点鎖線の隣に4本の矢印で示されるように、相互接続されたLE共振子の遠位端は、それらの(中心)対称軸に向かってx方向に移動している。もう一つの最大変位位置である共振運動の伸長位置では、
図3Bに示された位置に対して位相が180度ずれており、相互接続されたLE共振子の遠位端は、
図3Dに示されるように、それらの中心対称軸から外側にx方向に移動している。
図3Bに示される最大収縮位置では、屈曲共振子120の形状は、屈曲共振子120を伸縮モード共振子110aに接続する接続要素131aに近い材料部分と、屈曲共振子120を伸縮モード共振子110bに接続する接続要素132b,133bに近い材料部分が、x軸に沿って反対方向に運動するようになっている。接続要素131aに近い屈曲共振子120の材料部分は、伸縮モード共振子110aのLE共振素子の遠位端の動きに追従し、接続要素132b,133bに近い屈曲共振子120の材料部分は、伸縮モード共振子110bの相互接続されたLE共振子の遠位端の動きに追従する。
【0054】
好適な実施形態においては、屈曲共振子120は、伸縮モード共振子110a及び110bの共振周波数に実質的に等しい共振周波数を有する。屈曲共振子120のモード形状は、接続要素131a,132b,133bが、実質的に、固有モードの反節点に配置されるような形状である。説明のために、
図3Bに描いた変位の大きさは、一点鎖線で示された屈曲共振子120の静止位置と比較して共振モード形状を強調するために、拡大されている。
図3Bに示す実施形態では、屈曲共振子120の両端にある2つの反節点には接続要素が配置されていない。
【0055】
図3C,3Dは、基本共振モード下における、相互接続されたLE共振素子アセンブリ(例えばアセンブリ110a)の更なる特徴を示している。
図3Cは、相互接続されたLE共振素子アセンブリのx軸に沿った伸縮モード振動が、共振LEビーム151の節点(nodal point)近傍の中央材料部分を、LEビーム151が収縮したときに直交方向(y及びz方向)に膨張させ(
図3C)、LEビーム151が伸長したときに収縮させる(
図3D)様子を、(誇張して)示している。本明細書の他の図では、伸縮モード共振の主振動方向に直交する小さな横方向の収縮と膨張は、実施形態の動作にとって重要でないとして無視されている。
【0056】
本発明者は、伸縮モード共振子110a及び110bが共振で振動する屈曲共振子120と結合すると、共振子素子全体が集団共振モード(collective resonance mode)で共振し、結合に起因するエネルギー損失が最小化されることを見出した。屈曲モード共振子の面内(in-plane)共振周波数fflex-IPは、次のように見積もることができる。
【0057】
【0058】
ここで、Eは屈曲共振子の材料のヤング率、ρは密度、βnはN次のオーバートーンの固有値、Wはビーム幅、Lはビーム長である。ただしβnは境界条件に依存する。典型的な境界条件には、自由、固定、ピン止めがある。オーバートーン次数の選択後、或る実施形態におけるビーム幅Wと長さLは、屈曲共振周波数が結合される伸縮モード共振子の共振周波数と一致するように、式(1)を用いて寸法を決定することができる。圧電結合MEMS共振器アセンブリの場合、単結晶層、圧電層、上部電極層など複数の物質層が存在し、各層はそれぞれの物質パラメータと幾何学的寸法を有する場合がある。このため、式(1)のより一般的な形式を使用してもよい。
【0059】
図4は、
図3A,3Bの屈曲共振子と接続要素に関連する式(1)のパラメータの意味を示している。共振器120の幅Wと長さLは、3次オーバートーン周波数が、相互接続されたLE共振素子アセンブリ110aと110bの共振周波数に等しくなるように寸法決めされている。接続要素の位置と寸法は、ノード位置(node position)と同様に、共振周波数の正確な値に何らかの影響を与える。接続要素131a,132b,133bの幅と長さは、
図4ではそれぞれWC1とLC1、WC2とLC2、WC3とLC3で示されている。接続要素の最適な位置や、屈曲共振子の幅Wと長さLの最適な値を見つけるために、FEMシミュレーションを使用してもよい。一般的なルールとして、適切な結合(カップリング)は、結合された伸縮モード共振子と屈曲共振子の共振モード形状に与える影響はわずかである。
【0060】
下の表は、周波数f0の集団共振モードで振動する伸縮モード共振子を機械的に結合するために使用することのできる、ある種の例示的な屈曲共振子(長さL、幅W)と接続要素(長さLc,幅WC)の寸法を列挙したものである。
【0061】
【0062】
図5Aは、相互接続された3つのLE共振素子アセンブリ210a,210b,210cと、3次オーバートーンで振動するように設計された2つの面内屈曲モード共振子221,222から構成される実施形態を示す。屈曲共振子222は、屈曲共振子221に対してその長さ方向に対して鏡面対称であり、構造全体がx軸とy軸の両方について対称になっている。図示した構造全体が懸架される構造である。相互接続されたLE共振素子アセンブリのうち最も外側の210aと210cは、懸架要素241a,242a,243c,244cを介して支持構造120(図示せず)に繋がれている。中央の相互接続LE共振素子アセンブリ210bは、屈曲モード共振子221、222及びそれらに取り付けられた接続要素を介して、外側の相互接続LE共振素子アセンブリ210a,210cに繋がれている。屈曲共振子221、222のそれぞれの幅Wと長さは、その3次オーバートーン共振が互いに実質的に等しく、伸縮モード共振子(ここでは相互接続されたLE共振素子アセンブリ210a,210b,210c)の共振周波数に等しくなるようになっている。
【0063】
図5Bは、
図5Aに描かれたものと同じ実施形態の、振動サイクルの最大変位を示す。一点鎖線は、相互接続されたLE共振素子アセンブリ210a,210b,210cの初期静止位置を表す。屈曲モード共振子221,222は3次オーバートーンで振動する。屈曲共振子221、222の反節点位置に配置された接続要素は、屈曲振動を伸縮モード振動に効果的に結合している。変位の大きさは、説明のために拡大してある。
図5Bに示すMEMS共振器アセンブリ全体は、伸縮モード共振子210a,210b,210cの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0064】
実施形態によっては、
図6Aに示されるように、MEMS共振器アセンブリ300は、相互接続された2つのLE共振素子アセンブリ310a,310bと、その1次オーバートーンで振動するように設計された1つの(面内)屈曲モード共振子320から構成される。図示された構造全体は懸架構造であり、懸架要素341a,342a,343b,344bによって支持構造に繋がれている。屈曲共振子320の3つの反節点すべてに接続要素(331a,332b,333b)が配置されている。これらの接続要素は、屈曲モード共振子320の反節点を、相互接続されたLE共振素子アセンブリ310a,310bの隣接する側壁に結合する。
【0065】
図6Bは、
図6Aの実施形態の振動サイクルの最大変位を示す。一点鎖線は、相互接続されたLE共振素子アセンブリ310a,310bの静止位置を表す。屈曲共振子320の1次オーバートーン共振では、接続要素331aの反節点位置は、接続要素332b,333cの反節点位置に対して反対方向に運動する。共振器320の幅W及び長さLは、その1次オーバートーン共振周波数がLE共振素子アセンブリ310a,310bの共振周波数に実質的に等しくなるように設定されている。
図6A,
図6BのMEMS共振器アセンブリ300全体は、伸縮モード共振子(ここでは相互接続されたLE共振素子アセンブリ310a,310b)の運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0066】
図7Aは、相互接続された2つのLE共振素子アセンブリ410a,410bと、7次オーバートーンで振動するように設計された1つの(面内)屈曲モード共振子420から構成される実施形態を示す。図示された構造全体は懸架構造であり、懸架要素441a,442a,443b,444bによって支持構造に固定されている。7つの接続要素431a,432a,433a,434b,435b,436b,437bは、屈曲モード共振子420の反節点を、相互接続されたLE共振素子アセンブリ410a,410bの隣接する側壁に結合する。
【0067】
図7Bは、
図7Aの実施形態の振動サイクルの最大変位を描いたものである。一点鎖線は、相互接続されたLE共振素子アセンブリ410a,410bの静止位置を表す。屈曲共振子420の7次オーバートーン共振では、接続要素431a,432a,433aの反節点位置は、接続要素434b,435b,436b,437bの反節点位置に対して反対方向に運動する。共振器420の幅W及び長さLは、その7次オーバートーン共振周波数が、相互接続されたLE共振素子アセンブリ410a,410bの共振周波数に実質的に等しくなるように設定されている。
図7A,7BのMEMS共振器アセンブリ400全体は、伸縮モード共振子(ここでは、相互接続されたLE共振素子アセンブリ410a,410b)の運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。この実施形態では、共振器420の両端の2つの反節点には接続要素が配置されていない。
【0068】
図8Aは、相互接続された2つのLE共振素子アセンブリ510a,510bと、7次オーバートーンで振動するように設計された1つの(面内)屈曲モード共振子520から構成される実施形態を示す。図示された構造全体は懸架構造であり、懸架要素541a,542a,543b,544bによって支持構造に懸架されている。4つの接続要素531a,532a,533b,534bは、屈曲モード共振子520の反節点を、相互接続されたLE共振素子アセンブリ510a,510bの隣接する側壁に結合する。
【0069】
図8Bは、
図8Aの実施形態の振動サイクルの最大変位を描いている。一点鎖線は、相互接続されたLE共振素子アセンブリ510a,510bの静止位置を表す。屈曲共振子520の7次オーバートーン共振では、接続要素531a,532aの反節点位置は、接続要素533b,534bの反節点位置に対して反対方向に運動する。共振器520の幅W及び長さLは、その7次オーバートーン共振周波数が、相互接続されたLE共振素子アセンブリ510a,510bの共振周波数に実質的に等しくなるように設定されている。
図8A,8BのMEMS共振器アセンブリ500全体は、伸縮モード共振子(ここでは、相互接続されたLE共振素子アセンブリ510a,510b)の運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。この実施形態では、共振器520の9つの反節点のうち4つだけに接続要素が配置されている。
【0070】
屈曲共振子の幅と接続要素の長さは、伸縮モード共振子(
図8a,8Bの実施形態では、相互接続されたLE共振素子アセンブリ)の間隔をどれだけ狭くできるかを規定する。実施形態によっては、これらの寸法は、式(1)に従った屈曲共振子の対応する長さと共に、技術が許す限り小さい。有利な実施形態では、第1の伸縮モード共振子と第2の伸縮モード共振子との間の距離は50μm未満である。好ましい実施形態では、第1の伸縮モード共振子と第2の伸縮モード共振子との間の距離は20μm未満である。
【0071】
接続要素の寸法は、伸縮モード共振子と屈曲共振子との間の結合強度を規定する。実施形態によっては、接続要素の長さは技術が許す限り小さくし、その幅は結合強度と屈曲モード形状の乱れとのトレードオフとして選択される。有利な実施形態では、接続要素は屈曲共振子の反節点に配置される。
【0072】
屈曲共振子の全ての反節点が必ずしも接続要素を介して伸縮モード共振子に接続されるわけではない。
図3A-3B,
図5A-5B,
図7A-7B,
図8A-8Bのような実施形態によっては、自由境界条件を維持するために、屈曲共振子の両端の反節点は接続されていない。
【0073】
実施形態によっては、
図5A-5Bのものなどのように、伸縮モード共振子の数は3つ以上であり、屈曲共振子の数は2つ以上である。実施形態によっては、屈曲共振子とそれに結合された接続要素は、互いに同一であるか、又は互いに鏡像である。
【0074】
実施形態によっては、
図5A-5Bのものなどのように、伸縮モード共振子の1つは支持構造体に接続する懸架要素を持たないが、屈曲共振子を介して2つの隣接する伸縮モード共振子に接続する接続要素を持つ。
【0075】
実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリの構成要素である伸縮モード共振子の少なくとも1つは、オーバートーン周波数で振動する。例えば、
図3A及び
図3Bに示した相互結合LEモード共振子(又は
図5A-5B,
図6A-6B,
図7A-7B,
図8A-8Bに示した共振子)は、屈曲共振子と相互結合LEモード共振子の共振周波数が実質的に等しい限り(これが集合共振モードの周波数となる)、3次オーバートーン周波数又はその他の奇数次オーバートーン(又は基本周波数)で振動しうる。(x軸とy軸のスケールの変化は無視されたい。)或る他の例示的な実施形態では、伸縮モード共振子の1つが基本モードで振動し、別の伸縮モード共振子がオーバートーンモードで振動し、これら2つの周波数と、これら2つの伸縮モード共振子に結合された屈曲モード共振子の共振周波数が、実質的に互いに等しい。
【0076】
実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリ100の共振器要素101は、共振器要素を共振モードに励起するための圧電アクチュエータを備える。このようなMEMS共振器アセンブリの例示的な実施形態を
図9A~9Cに示す。共振器アセンブリ600は、共振器要素601、支持構造体602(102)、及び共振器要素601を支持構造体602に固定する懸架要素641a,642a,643b,644bを有する。共振器要素601は、2つの伸縮モード共振子(610a,610b)と、屈曲モード共振子620と、屈曲モード共振子620を伸縮モード共振子610aに接続する接続要素631aと、屈曲モード共振子620を伸縮モード共振子610bに接続する接続要素632b,633bとを備える。
図9Aに示される伸縮モード共振子610a,610bは、共に5つの細長いビーム状のLEモード共振素子671を有する、相互接続されたLE共振素子アセンブリである。各LE共振素子671は、実質的に剛性材質の部分(相互接続要素)672を介して、その2つの遠位端(すなわち両端)で、隣接するLE共振素子に接続されている。
【0077】
図9Bは、
図9AのMEMS共振器アセンブリの、線AA'に沿う断面を示す。相互接続されたLE共振素子アセンブリ610a,610bは、圧電物質の層652及び上部電極層653を有する圧電薄膜アクチュエータを用いて駆動される。圧電物質の層652は、相互接続されたLE共振素子アセンブリ610a,610bの或る領域において、単結晶シリコン層651上に形成されている。また上部電極層653も、LE共振素子アセンブリ610a,610bの或る領域において圧電層652の上に形成されている。実施形態によっては、
図9A~9Bの例示的な実施形態のように、LE共振素子アセンブリ610a,610bの単結晶シリコン層651の上面全体が、圧電層652及び上部電極層653によって覆われる。実施形態によっては、
図9A~9Bに描かれるように、屈曲共振子620及び接続要素631a,632b,633bは、圧電層652を有するが、上部電極層653は有しない。ただし実施形態によっては、屈曲共振子620及び接続要素631a,632b,633bも、圧電層652及び上部電極層653を有する。屈曲共振子620を共振運動させる主要な駆動力は、LE共振素子アセンブリ610a,610bの圧電駆動に由来し、接続要素631a,632b,633bによって機械的に媒介される。
【0078】
実施形態によっては、単結晶シリコン層651はリンドーパントでドープされ、平均リンドーパント濃度は少なくとも2×10
19cm
-3である。実施形態によっては、単結晶シリコン層651の厚さは2μm~40μmの範囲であり、例えば5μm~20μmである。実施形態によっては、単結晶シリコン層651の結晶方向は、<100>方向がそれぞれの層の平面内にあるようなものである。実施形態によっては、2つの伸縮モード共振子(610a,610b)の振動の主方向は、前記<100>方向と実質的に平行である。また、共振器要素内の単結晶シリコン層(後述するように上部電極が単結晶シリコンからなる場合、当該上部電極層も含む)の平均リンドーパント濃度は、2×10
19cm
-3より大きい値を有する。これは、共振周波数の熱安定性を高めるためである。
図3B,
図5B,
図6B,
図7B,
図8Bに示す実施形態の場合、上記主方向は、x軸に沿った方向である。
【0079】
圧電層652の材料は、例えば、AlN、ScドープAlN、ZnO、LiNbO3、又はLiTaO3であってもよい。実施形態によっては、圧電層の厚さは500nm~4μmの範囲であり、例えば1μm~2μmなどである。
【0080】
実施形態によっては、上部電極層653の材料は、金、モリブデン、アルミニウム又はタングステンなどの金属、金属合金、縮退ドープされた多結晶シリコン、縮退ドープされた単結晶シリコン、別の半導体材料、又は導電性である任意の他の適切な材料を含む。実施形態によっては、上部電極層の厚さは50nmから1000nmの範囲であり、例えば150nmから400nmなどである。実施形態によっては、上部電極層653の材料は、縮退ドープされた単結晶シリコンからなり、層653の厚さは、2μmから40μmの範囲、例えば、5μmから20μmの範囲であり、これは、材料層スタックをより対称的にし、それによって、支持構造へのエネルギー漏れを低減することによって、共振の品質係数を大幅に改善させうる。
【0081】
実施形態によっては、
図9Bに示す材料スタックは、1層又は2層の酸化シリコン層など、他の層を有してもよい。実施形態によっては、キャビティ107に面する単結晶層651の下面にも酸化シリコン層がある。実施形態によっては、単結晶層651と圧電層652との間、圧電層652と上部電極層653との間、又は上部電極層653の上に、酸化シリコン層が存在し得る。これらの酸化シリコン層は、共振周波数の温度依存性を修正するために使用されうる。
【0082】
図9Cは、
図9AのMEMS共振器アセンブリの、線BB'に沿う断面を示す。単結晶層651上の(電気的に絶縁された)圧電層652上の(支持構造602上の)コンタクトパッド661は、共振器610bの懸架要素の1つ(
図9A,Cの要素643b)上の導電体を介して伸縮モード共振子610bの上部電極653にガルバニック接続を行うために設けられている。
図9A及び
図9Cの断面に示すMEMS共振器アセンブリ600のレイアウトによって示されるように、コンタクトパッド661は、圧電層652によってドープ単結晶シリコン層651から電気的に絶縁された懸架要素641a及び643b上に形成された導電体を介して、伸縮モード共振子610a及び610bの上部電極653にもガルバニック接続されている。支持構造602上の別のコンタクトパッド662は、
図9A~9Cの例示的な実施形態において下部電極として使用される単結晶シリコン層651にガルバニック接続を形成するために設けられる。コンタクトパッド662と単結晶シリコン下部電極651との間にガルバニック接触を提供するために、圧電層652に開口部663が形成され、上部電極653の材料が開口部663上に堆積される。
図9A~9Cに示される実施形態では、単結晶シリコン層651は、リン又はヒ素などのドーパントで縮退ドープされている。従って、伸縮モード共振子610a,610b及び支持構造602内の単結晶シリコン部分は、懸架要素(641a,642a,643b,644b)内の単結晶シリコン材料部分を介して、及び屈曲共振子620内の単結晶シリコン材料部分及び接続要素631a,632b,633bを介して、ガルバニック接続される。伸縮モード共振子610b(及び610a)は、コンタクトパッド661と662の間に共振周波数で交流電圧を印加し、それによって圧電層652に交流電界を生成することによって、伸縮モード共振に励起されることができる。MEMS共振器アセンブリ600の圧電駆動のための電気的相互接続は、貫通シリコン電極(Through-Silicon-Via,TSB)やウェハレベルパッケージングを使用するなど、いくつかの代替方法で実現することができる。
【0083】
実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリは、2つの伸縮モード共振子と、これら2つの伸縮モード共振子を機械的に接続する屈曲モード共振子とを備える。前記2つの伸縮モード共振子のうちの第1の伸縮モード共振子は圧電アクチュエータを備えるが、前記2つの伸縮モード共振子のうちの第2の伸縮モード共振子は圧電アクチュエータを備えない。
【0084】
このようなMEMS共振器アセンブリの例示的な実施形態は、伸縮モード共振子610a上の上部電極653層への懸架要素641a上の導電経路がないという違いを除いて、
図9A-Cのアセンブリ600と同じアセンブリであってもよい。すなわち、伸縮モード共振子610bのみが、対応する伸縮モード共振子、ひいては共振器要素を、共振モードに励起するために使用することができる圧電アクチュエータを備える。共振器アセンブリ全体のESRは、電気機械的結合の減少によって増加するが、共振器アセンブリのパワーハンドリングは、集団共振モードで振動する機械的に接続された伸縮モード共振子間で運動エネルギーが共有されるため、改善されうる。
【0085】
実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリは、共振器要素を共振モードに励起するための静電アクチュエータを備える。シリコンオンインシュレータ(Silicon on Insulator,SOI)基板上に形成されたこのようなMEMS共振器700の例示的な実施形態が、
図10A~10Dに示されている。SOI基板は、単結晶シリコンデバイス層751、酸化シリコン層706、及び単結晶シリコンハンドル層705(
図10B~10Dに示す)を有する。デバイス層751には、導電性を持たせるために不純物がドープされている。実施形態によっては、単結晶シリコン層751はリンドーパントでドープされ、平均リンドーパント濃度は少なくとも2×10
19cm
-3である。
図10AのMEMS共振器アセンブリ700は、共振器要素701と、支持構造702(支持構造部分781~784によって表される)と、共振器要素701を支持構造702に繋留する4つの懸架要素741a,742a,743b,744bと、静電駆動に使用される4つの固定電極771~774とを備える。共振器要素701は、2つの伸縮モード共振子(710a,710b)、屈曲モード共振子720、及び3つの接続要素とを備える。これら3つの接続要素のうちの1つは屈曲モード共振子720を伸縮モード共振子710aに接続し、2つは屈曲モード共振子720を伸縮モード共振子710bに接続している。
図10Aに示される伸縮モード共振子710a,710bは、共に5つの細長いビーム状のLEモード共振素子711を有する、相互接続されたLE共振素子アセンブリである。各LE共振素子711は、実質的に剛性材質の部分(相互接続要素)712を介して、その2つの遠位端(すなわち両端)で、隣接するLE共振素子に接続されている。共振器要素701、懸架要素741a,742a,743b,744b,及び固定電極771~774は、
図10AのAA'断面である
図10Bに示されるように、単結晶シリコンデバイス層751に形成される。2つの電極771、772は、相互接続されたLE共振素子アセンブリの最も外側の側壁に対向して形成される。狭いギャップ791(又は792)が電極771(又は772)を相互接続されたLE共振素子アセンブリ710a(又は710b)の対向する側壁から分離する。ギャップの幅は、典型的には500nm未満であり、好ましくは100nm未満である。
図10Aに示されるように、相互接続されたLE共振素子アセンブリの最も内側の側壁に面する電極も存在してもよい。狭い間隙が、SOI基板のデバイス層に形成された電極773、774を、相互接続されたLE共振素子アセンブリ710a,710bの対向する側壁から分離する。(相互接続されたLE共振素子アセンブリ710a,710bから電極774をそれぞれ分離する間隙793、794など。)
【0086】
共振器要素701は、キャビティ707によってハンドル層705から分離されている。キャビティ(空洞)707は、例えばフッ化水素(HF)酸蒸気エッチングを用いて空洞から酸化シリコンを除去することによって形成されてもよい。共振器要素を解放するには、酸化シリコン層706へのHF蒸気の流路を確保するために、深掘りRIE(Deep Reactive Ion Etching,DRIE)を用いて素子層を貫通する穴798(
図10C参照)をエッチングする必要がありうる。
図10Cは、
図10Bと同じAA'断面図であるが、エッチング孔798が示されている。
【0087】
図10AのBB'断面が
図10Dに示されている。懸架要素743b及び744bは、相互接続されたLE共振素子アセンブリ710bを、それぞれ、SOI基板のデバイス層751に形成された支持構造783(702)及び784(702)に固定する。
【0088】
MEMS共振器要素701は、静電駆動によって、
図3Bに示した集団伸縮モード共振に励起することができる。これを実現するために、(固定)電極771~774を同じ端子(例えばX1)にガルバニック接続してもよい。これらのガルバニック接続は、導電性構造をパターニングするためにSOI基板のデバイス層751を貫通するトレンチをエッチングすることによって、及び/又は、MEMS共振器アセンブリ700のパッケージ(セラミックパッケージ又はウェハレベルパッケージなど)に導電性構造を形成することによって、実現することができる。共振器要素にガルバニック接続される支持構造781~784は、別の端子(例えば、X2)にガルバニック接続される。例えば、デバイス層751に形成された導体を使用することによって、及び/又はMEMS共振器アセンブリ700のパッケージ内の導電構造によって、接続される。次いで、DCバイアス電圧を、大きなインピーダンスを介して端子の一方(X1など)に接続し、共振器要素701に十分な電気機械的結合を生じさせる一方、他方の端子(X2など)はゼロDC電位のままとしてもよい。その後、端子X1とX2の間に共振周波数で交流電圧を印加することにより伸縮モード共振を励起することができ、MEMS共振素子701は、
図3Bに示される集団的伸縮モード共振で振動する。
【0089】
図11Aは、2つの幅伸縮(WE)モード共振子810a,810bと、3次オーバートーンで振動するように設計された(面内)屈曲モード共振子820から構成される実施形態を示す。図示した構造全体は懸架構造である。WEモード共振子810a,810bは、懸架要素841a,842a,843b,844bを介して支持構造(図示せず)に繋留されている。
図11Aに示される例示的な実施形態では、懸架要素は、例えば、y方向の応力を緩和するのに有用なメアンダー形状の構造を有する。屈曲共振子820の中央部分の3つの反節点には、これらの反節点をWEモード共振子810a,810bの隣接する側壁に結合する接続要素が配置されている。屈曲共振子820の幅Wと長さLは、その3次オーバートーン共振が伸縮モード共振子(ここではWEモード共振子)810a,810bの共振周波数に実質的に等しくなるようになっている。
【0090】
図11Bは、
図11Aと同じ実施形態の、振動サイクルの最大変位時の様子を示している。一点鎖線はWEモード共振子810a,810bの初期静止位置を表す。屈曲モード共振子820は3次オーバートーンで振動している。変位の大きさは、説明のために拡大してある。
図11Bに示すMEMS共振器アセンブリ全体は、伸縮モード共振子810a,810bの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0091】
実施形態によっては、
図12Aに示すように、MEMS共振器アセンブリは、2つの正方形伸縮(SE)モード共振子910a,910bと、xy平面内の3次オーバートーンで振動するように設計された屈曲モード共振子920から構成される。図示した構造全体は懸架構造である。SEモード共振子910a,910bは、懸架要素941a,942a,943b,944bを介して支持構造体(図示せず)に繋留されている。
図12Aに示される例示的な実施形態では、懸架要素のメアンダー形状の構造は、機械的共振運動の間、正方形伸縮モード共振子910a,910bの交互の収縮と膨張を可能にするために、機械的にコンプライアントである。すなわち、弾性変形を通じて力を伝えることが可能である。屈曲モード共振子920の中央部分の3つの反節点には、これらの反節点をSEモード共振子910a,910bの隣接する側壁に結合する接続要素が配置されている。屈曲共振子920の幅Wと長さLは、その3次オーバートーン共振が伸縮モード共振子(ここでは正方形伸縮(SE)モード共振子)910a,910bの共振周波数に実質的に等しくなるようになっている。
【0092】
SEモード共振子を有する別の実施形態には、SE共振子の懸架要素は、
図12A~12Bの例示的な実施形態とは別の位置に接続されるものもある。例えば、懸架要素が、正方形伸縮振動モードの節点(nodal point)である、SE共振子の中心(中心柱)に配置された構造を有してもよい。懸架要素は、デバイス層とハンドル層との間のキャビティSOI構造のキャビティ内の材料部分によって形成されてもよい。懸架要素は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及び/又は酸化シリコンを有してもよい。
【0093】
図12Bは、
図12Aと同じ実施形態の、振動サイクルの最大内方変位時の様子を示している。一点鎖線はSEモード共振子910a,910bの初期静止位置を表す。屈曲モード共振子920は3次オーバートーンで振動している。変位の大きさは、説明のために拡大してある。
図12Bに示されるMEMS共振器アセンブリ全体は、伸縮モード共振子910a,910bの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0094】
実施形態によっては、
図13に示すように、MEMS共振器アセンブリは、複数のSEモード共振子(ここでは、2×2アレイ構成に配置された4つのSE共振子1010a,1010b,1010c,1010d)と、複数の屈曲モード共振子(ここでは、4つの屈曲共振子1021~1024)とを備える。
図13の例示的な実施形態では、各屈曲モード共振子は、2つの隣接するSE共振子に接続されている。屈曲モード共振子1021~1024は、それぞれ、その3次オーバートーン共振周波数が伸縮モード(SE)共振器1010a,1010b,1010c,1010dの共振周波数に実質的に等しくなるような幅W及び長さLを有する。屈曲モード共振子1021~1024の中央部分の3つの反節点には、これらの反節点をSEモード共振子1010a,1010b,1010c,1010dの隣接する側壁に結合する接続要素が配置されている。
図13に示す2×2アレイは、メアンダー形状の懸架要素1041a,1042b,1043c,1044dが共振器要素を支持構造(図示せず)に繋留する、懸架構造である。実施形態によっては、4つのSE共振子は、上述したように、それぞれのSE共振子の中心の節点をハンドル層に機械的に接続する懸架要素によって懸架されている。MEMS共振器アセンブリ1000は、伸縮モード共振子1010a,1010b,1010c,1010dの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0095】
図14Aは、2つの伸縮(LE)モード共振子1110a,1110bと、3次オーバートーンで振動するように設計された(面内)屈曲モード共振子1120とを備えるMEMS共振器アセンブリ1100を示している。図示した構造全体が懸架される構造である。LEモード共振子1110a,1110bは、懸架要素1141a,1142a,1143b,1144bを介して支持構造体(図示せず)に繋留されている。
図14Aに示される例示的な実施形態では、懸架要素は、例えばx方向の応力を緩和するのに有用なメアンダー形状の構造を有する。屈曲共振子1120の2つの反節点1131a,1132bには、これらの反節点をLEモード共振子1110a,1110bの遠位端側壁に結合する接続要素が配置されている。屈曲共振子1120の幅Wと長さLは、その3次オーバートーン共振が伸縮モード共振子(ここではLEモード共振子)1110a,1110bの共振周波数に実質的に等しくなるような幅と長さである。
【0096】
図14Bは、
図14Aと同じ実施形態の、振動サイクルの最大変位時(LEモード共振子1110a,1110bの最大収縮時)の様子を示している。一点鎖線は、LEモード共振子1110a,1110bの遠位端の初期静止位置を表す。屈曲モード共振子1120は3次オーバートーンで振動している。変位の大きさは、説明のために拡大してある。
【0097】
図14Bに示される最大収縮位置では、
図14Bの2つの一点鎖線の隣に4つの矢印で示されるように、LE共振子1110a,1110bの遠位端は、それらの(中央の)対称軸に向かってy方向に移動している。最大収縮時に対して位相が180度ずれた振動の最大伸長位置では、LE共振子1110a,1110bの遠位端は、それらの中心対称軸からy方向外側に伸びている。
図14Bに示される最大収縮位置では、屈曲共振子1120の形状は、屈曲共振子1120を伸縮モード共振子1110aに接続する接続要素1131aに近い材料部分と、屈曲共振子1120を伸縮モード共振子1110bに接続する接続要素1132bに近い材料部分とが、y軸に沿って同じ方向に移動し、LE共振素子1110a,1110bの隣接する遠位端の動きに追従するようになっている。屈曲共振子1120は、接続要素1131a,1132bへの反結節接続点の中間に反結節位置を有し、その両端に2つの反結節位置を有する。
図14Bに示す実施形態では、これら3つの反節点位置には接続要素が取り付けられておらず、接続要素1131a及び1132bに接続された2つの反節点位置に対して、振動時に逆方向に移動する。
図14Bに示されるMEMS共振器アセンブリ全体は、伸縮モード共振子1110a,1110bの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0098】
図15Aは、2つの伸縮(LE)モード共振子1210a,1210bと、2つの(面内)屈曲モード共振子1221、1222とを備えるMEMS共振器アセンブリ1200を示している。2つのLE共振子は、x軸に沿って並んで配置され、その長手方向がy軸方向に一致するように配置されている。LE共振素子1210a,1210bの、y軸正方向の遠位端は、屈曲モード共振子1221を介して結合され、y軸負方向の遠位端は屈曲モード共振子1222を介して結合されている。図示した構造全体が懸架される構造である。LEモード共振子1210a,1210bは、懸架要素1241a,1242a,1243b,1244bを介して支持構造体120(図示せず)に繋留されている。屈曲共振子1221の2つの反節点には、これらの反節点をLEモード共振子1210a,1210bの隣接する遠位端側壁に結合する接続要素1231a,1232bが配置されている。屈曲共振子1222の2つの反節点には、これらの反節点をLEモード共振子1210a,1210bの隣接する遠位端側壁に結合する接続要素1233a,1234bが配置されている。屈曲共振子1221,1222の幅Wと長さLは、その3次オーバートーン共振が、伸縮モード共振子(ここではLEモード共振子)1210a,1210bの共振周波数に実質的に等しくなるような幅と長さである。
【0099】
図15Bは、
図15Aに描かれたものと同じ実施形態における、LEモード共振子1210a,1210bの振動サイクル中の最大収縮時の様子を描いたものである。一点鎖線は、LEモード共振子1210a,1210bの遠位端の初期静止位置を表す。変位の大きさは、説明のために拡大してある。MEMS共振器アセンブリ1200全体は、伸縮モード共振子1210a,1210bの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0100】
図16Aは、4つの長さ伸縮(LE)モード共振子1310a,1310b,1310c,1310dと、LE共振素子の遠位端に結合された3つの(面内)屈曲モード共振子1321、1322、1323とを備えるMEMS共振器アセンブリ1300を示している。これらのLEモード共振子はx軸に沿って一列に配置されており、その長手軸はy軸方向を向いている。屈曲モード共振子1321,1322,1323の幅Wと長さLは、その3次オーバートーン共振が、伸縮モード共振子(ここではLEモード共振子)1310a,1310b,1310c,1310dの共振周波数に実質的に等しくなるような幅と長さである。屈曲共振子1321、1322、1323の最も外側の反結節位置は、接続要素(1331a,1332b,1333b,1334c,1335c,1336d)に接続されている。これらの接続要素の他端は、LEモード共振子の隣接する遠位端側壁に接続されている。屈曲共振子1321(又は1323)は、LE共振素子の中心線に対してy軸正方向において、LE共振素子1310a及び1310b(又は1310c及び1310d)の遠位端に接続される。屈曲共振子1322は、LE共振素子の中心線に対してy軸負方向において、LE共振素子1310b及び1310cの遠位端に接続される。
【0101】
図16Bは、
図16Aに描かれたものと同じ実施形態における、LEモード共振子1310a,1310b,1310c,1310dの振動サイクル中の最大収縮時の様子を描いたものである。一点鎖線は、LEモード共振子1310a,1310b,1310c,1310dの遠位端の初期静止位置を表す。変位の大きさは、説明のために拡大してある。MEMS共振器アセンブリ1300全体は、伸縮モード共振子1310a,1310b,1310c,1310dの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0102】
上述した利点に加えて、
図14A~14b,
図15A~15b,及び
図16A~16Bに示される実施形態は、更なる利点を有する。まず、MEMS共振器アセンブリを通過する交流電流の電気抵抗が低い。MEMS共振器アセンブリの各LE共振子部品は、支持構造に対する電気抵抗が低く、オーミック損失が低いため、共振器要素内のオーミック損失は最小限に抑えられる。第2に、各LE共振子のための懸架要素が互いに近接しているため、共振器要素内の熱機械応力が低い。これにより、共振周波数の熱安定性と長期安定性が向上する。
【0103】
図17は、相互接続された2つのLE共振素子アセンブリ1410a,1410bと、相互接続されたLE共振素子アセンブリの遠位端に結合された(面内)屈曲モード共振子1420とを備えるMEMS共振器アセンブリ1400を示す。相互接続された2つのLE共振素子アセンブリはx軸に沿って列に配置されており、各LE共振素子アセンブリの長手方向軸はy方向に一致している。屈曲モード共振子1420の幅Wと長さLは、その3次オーバートーン周波数が、伸縮モード共振子(ここでは相互接続されたLE共振素子アセンブリ)1410a,1410bの共振周波数に実質的に等しくなるような幅と長さである。屈曲共振子1420の2つの反節点には、これらの反節点を相互接続LE共振素子アセンブリ1410a,1410bの隣接する遠位端側壁に結合する接続要素1431a,1432bが配置されている。相互接続されたLE共振素子アセンブリ1410a,1410bは、懸架要素1441a,1442bを介して、相互接続された2つのLE共振素子アセンブリの中央で、同じ支持構造1402に繋がれている。MEMS共振器アセンブリ1400全体は、伸縮モード共振子1410a,1410bの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0104】
y軸に平行な中心線に関して対称である支持構造1402及び懸架要素1441a,1442bには、いくつかの利点がある。第1に、このような中央支持構造は、懸架要素を介する支持構造への振動エネルギーの漏れを低減する。これは、振動中にx方向に沿った振動運動がないためである。これに対して
図3C-3Dに示される実施形態では、LE共振素子151の中心線での小さな交互の収縮と伸縮が、2つの懸架要素141a,142aと支持構造との両方の接続点で、(小さいとはいえ)いくらかの動きを引き起こしてしまう。従って、中央支持構造を有するMEMS共振器では、共振の品質係数が上がり、ESR(等価直列抵抗)が減少する。第2に、中央支持構造は、懸架要素1441a及び1442bと支持構造1402との接続点が互いに近いため、共振器要素が経験する熱機械的応力を減少させる。第3に、中央支持構造は、その低い熱機械応力とともに、共振周波数の熱的及び長期的安定性を改善する傾向がある。
【0105】
中央支持構造を有する他の実施形態もある。中央支持構造という用語は、本明細書では、MEMS共振器アセンブリの伸縮モード共振子のx方向若しくはy方向の中央、又はx方向とy方向の両方の中央にある線に沿って、共振器要素の平面内、及び/又は平面の下もしくは上(上述したSE共振子の中央支柱構造のように)に配置される支持構造(102)を意味する。実施形態によっては、屈曲共振子を介して接続された2つのLE共振素子は、両方とも同じ中央支持構造に固定されている。このような実施形態の例としては、
図17のMEMS共振器アセンブリに似ているが、相互接続された各LE共振素子アセンブリ内にLE共振素子が1つしかないという例がある。中央支持構造を有する別の実施形態が
図18に示されている。この実施形態では、懸架要素1541a,1542a,1543b,1544bが、屈曲共振子1520を介して接続された幅伸縮モード共振子1510a,1510bを、幅伸縮モード共振子1510aと1510bの間に位置する線に沿って配置された中央支持構造体1502、1503に繋いでいる。それ以外は、
図18の実施形態は、
図11A-11Bを参照して説明したものと同様である。
【0106】
図19は、中央支持構造を有する更に別の実施形態を示す。この実施形態では、屈曲モード共振子1620を介して結合された相互接続された2つのLE共振素子アセンブリ1610a,1610bがある。MEMS共振器アセンブリ1600の共振器要素は、3つの支持構造1602、1603、1604に固定されており、そのうちの1つ(1603)は中央支持構造である。支持構造と関連する懸架要素を除けば、MEMS共振器アセンブリ1600は、
図17のアセンブリ1400と同様である。MEMS共振器アセンブリ1600に複数の支持構造を使用すると、支持構造に対する電気抵抗が(距離が短いために)低くなるため、懸架構造内の交流オーミック損失が低減する。複数の支持構造(中央支持構造など)の別の利点は、z方向において、gの力(g-force)に対する感度が低下することである。
【0107】
実施形態によっては、中央支持構造は、(共振器要素のxy平面内において、)0.04 mm2未満の面積を有する。例えば、中央支持構造のx寸法×y寸法は、0.19mm×0.19mm又は0.1mm×0.39mmとすることができる。
【0108】
圧電駆動を使用する或る実施形態においては、単結晶層(圧電層の開口部及び
図9Cの符号663,662によって図示されるコンタクトパッドを含む)及び上部電極(
図9Cの符号661によって図示されるコンタクトパッドを含む)へのガルバニック接続が、中央支持構造内に形成される。2つのコンタクトパッド661及び662は、ウェハレベルパッケージングされた共振器(
図2B参照)において、キャップウェハ108を貫通するシリコン貫通電極(TSV)構造に、又はセラミックパッケージ(
図2Bに関連する議論を参照)内のボンディングワイヤに、更に接続され得る。
【0109】
図20は、相互接続された3つのLE共振素子アセンブリ1710a,1710b,1710cと、相互接続されたLE共振素子アセンブリの遠位端に結合された(面内)屈曲モード共振子1720とを備えるMEMS共振器アセンブリ1700を示している。これらのLE共振素子アセンブリはx軸方向に2列に配置されており、またその長手軸はy方向に一致するように整列されている。アセンブリ1710aと1710bは下側の列(すなわち、屈曲共振子1720からy軸負方向にある列)にあり、アセンブリ1710cは上側の列(すなわち、屈曲共振子1720からy軸正方向にある列)にある。屈曲モード共振子1720の幅Wと長さLは、その3次オーバートーン共振周波数が、伸縮モード共振子(ここでは相互接続されたLE共振素子アセンブリ)1710a,1710b,1710cの共振周波数に実質的に等しくなるような幅と長さである。屈曲共振子1720の中央部分の3つの反節点には、これらの反節点を相互接続LE共振素子アセンブリ1710a,1710b,1710cの隣接する遠位端側壁にそれぞれ結合する接続要素1731a,1732b,1733cが配置されている。相互接続されたLE共振素子アセンブリ1710a,1710b,1710cは、懸架要素1741a,1742a,1743b,1744b,1745c,1746cを介して支持構造(図示せず)に繋留されている。MEMS共振器アセンブリ1700全体は、伸縮モード共振子1710a,1710b,1710cの運動が互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動する。
【0110】
実施形態によっては、複数の伸縮モード共振子の主振動軸が互いに垂直になっている。このような実施形態の一例が
図21A~21Bに示されている。
図21AのMEMS共振器アセンブリ1800は、相互接続された2つのLE共振素子アセンブリ1810a,1810bを備える。これら2つのLE共振素子アセンブリの振動の主軸方向は、互いに垂直である(1810aはy方向、1810bはx方向)。アセンブリ1800のレイアウトはy軸に関して対称である。第1の屈曲モード共振子1821は、接続要素1831bを用いて、相互接続されたLE共振素子アセンブリ1810bの左遠位端に(x軸負方向に)結合されると共に、接続要素1831aを用いて、相互接続されたLE共振子1810aの上遠位端に(y軸正方向に)に結合される。第2の屈曲モード共振子1822は、接続要素1832bを用いて、相互接続されたLE共振素子アセンブリ1810bの右遠位端に(x軸正方向に)結合されると共に、接続要素1832aを用いて、相互接続されたLE共振子1810aの上遠位端に(y軸正方向に)に結合される。両屈曲モード共振子1821、1822は、2つの矩形枠(この場合、2つの同一の正方形状の枠)と、2つの枠間の実質的に剛性の連結要素から構成される。
【0111】
共振時の屈曲共振子1822の形状を
図21Bに示す。2つの枠1822a,1822bの対向する側面は、共振振動の間、内側又は外側のいずれかに交互に移動し、2つの枠の隣接する側面は、互いに対して異なる方向(内側又は外側のいずれか)に移動する。実質的に剛性の連結要素1822cに連結されている枠1822a及び1822bの2つの側面は、y方向において同じ方向に動くが、それぞれの枠の中心に対して反対方向に動く(内側又は外側のいずれか)。従って、屈曲モード共振子1822の共振運動は、
図21Bに示されるように、接続要素1832aがy軸正方向に動くと、接続要素1832bがx軸正方向に動くようになっている。矩形枠1822a及び1822bは、それらの共振周波数が互いに実質的に等しく、相互接続されたLE共振素子アセンブリ1810a及び1810bの共振周波数と等しくなるように寸法決めされている。共振における屈曲モード共振子1822のモード形状は、接続要素1832aのy軸正方向の運動の大きさが、接続要素1832bのx軸正方向の運動の大きさに実質的に等しくなるような形状である。従って、屈曲モード共振子1822の作用は、MEMS共振器アセンブリ1800全体が、互いに直交する主振動方向を有する伸縮モード共振子(ここでは、相互接続されたLE共振素子アセンブリ)1810a,1810bの運動が、互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動することである。この作用は屈曲モード共振子1821も同様である。MEMS共振器アセンブリ1800の共振器要素は、3つの懸架要素によって繋がれており、そのうち2つの懸架要素1841a,1842aは伸縮モード共振子1810aに接続され、懸架要素1843bは伸縮モード共振子1810bに接続されている。
図21Aに示す構造全体が懸架される構造である。
【0112】
同様の技術的効果を有する別の実施形態が
図21C~21Dに示されている。
図21CのMEMS共振器アセンブリ1900は、相互接続された2つのLE共振素子アセンブリ1910a,1910bを備える。これら2つのLE共振素子アセンブリの振動の主軸方向は、互いに垂直である(1910aはy方向、1910bはx方向)。アセンブリ1900のレイアウトはy軸に関して対称である。第1の屈曲モード共振子1921は、接続要素1931b及び1931cを用いて、相互接続されたLE共振素子アセンブリ1910bの左遠位端に(x軸負方向に)結合されると共に、接続要素1931aを用いて、相互接続されたLE共振子1910aの上遠位端に(y軸正方向に)に結合される。第2の屈曲モード共振子1922は、接続要素1932b及び1932cを用いて相互接続LE共振素子アセンブリ1910bの右遠位端に(x軸正方向に)結合され、接続要素1932aを用いて相互接続LE共振素子1910aの上遠位端に(y軸正方向に)結合される。両屈曲モード共振子1921、1922は、屈曲ビーム共振器と矩形枠(本例では正方形状の枠)と、屈曲ビーム共振器と矩形枠との間の実質的に剛性の連結要素から構成される。屈曲共振子1922の共振時の形状を
図21Dに示す。枠1922bの対向する側面は、共振振動の間、内側又は外側に交互に移動し、2つの枠の隣接する側面は、互いに対して異なる方向(内側又は外側のいずれか)に移動する。屈曲ビーム共振器1922aは、その長手軸がy方向に沿っており、実質的に剛性の連結要素1922cを用いて、共振器1922aからx軸正方向に向かって距離を置いて枠1922bに連結されている。
図21Dの例示的な実施形態では、屈曲ビーム共振子1922aの1次オーバートーン周波数と矩形枠1922bの共振周波数は実質的に等しく、相互接続されたLE共振素子アセンブリ1910a及び1910bの共振周波数に等しい。従って、屈曲モード共振子1922の共振運動は、
図21Dに示されるように、接続要素1932aがy軸負方向に動くと、接続要素1932b及び1932cがx軸負方向に動くようなものである。従って、屈曲モード共振子1922の作用は、MEMS共振器アセンブリ1900全体が、互いに直交する主振動方向を有する伸縮モード共振子(ここでは、相互接続されたLE共振素子アセンブリ)1910a,1910bの運動が、互いに対して実質的に同位相である集団共振モードで振動することである。この作用は屈曲モード共振子1921も同様である。MEMS共振器アセンブリ1900の共振器要素は、3つの懸架要素によって繋がれており、そのうち2つの懸架要素1941a,1942aは伸縮モード共振子1910aに接続され、懸架要素1943bは伸縮モード共振子1910bに接続されている。
図21Cに示す構造全体が懸架される構造である。
【0113】
屈曲共振子が、互いの主振動軸が垂直な伸縮モード共振子を接続する実施形態は、等価直列抵抗と共振器要素に必要な面積の積(ESR*A)を最小化するために使用することができる。実施形態によっては、最適なESR*Aは、(
図21A及び
図21Cの例示的な実施形態のような、)正方形に近い形状を有する共振器要素によって得られる。実施形態によっては、共振器要素の面積Aは0.001mm
2から1mm
2の範囲である。
【0114】
図21EのMEMS共振器アセンブリ2900は、相互接続された2つのLE共振素子アセンブリ2910a,2910bを備える。これら2つのLE共振素子アセンブリの振動の主軸方向は、互いに垂直である(2910aはy方向、2910bはx方向)。アセンブリ2900のレイアウトはy軸に関して対称である。第1の屈曲モード共振子2921は、接続要素2931bを用いて、相互接続LE共振素子アセンブリ2910bの左遠位端に(x軸負方向に)結合され、接続要素2931aを用いて、相互接続LE共振素子2910aの上遠位端に(y軸正方向に)結合される。第2の屈曲モード共振子2922は、接続要素2932bを用いて、相互接続LE共振素子アセンブリ2910bの右遠位端(x軸正方向)に結合され、接続要素2932aを用いて相互接続LE共振素子2910aの上遠位端(y軸正方向)に結合される。両屈曲モード共振子2921、2922は矩形枠(この場合は正方形状の枠)で構成されている。屈曲共振子2922の共振時の形状を
図21Fに示す。共振振動の間、枠2922の対向する側面は内側又は外側のいずれかに交互に移動し、2つの枠の隣接する側面は互いに対して異なる方向(内側又は外側のいずれか)に移動する。
図21Fの例示的な実施形態では、屈曲共振子2922の共振周波数は、相互接続されたLE共振素子アセンブリ2910a及び2910bの共振周波数に実質的に等しい。従って、屈曲モード共振子2922の共振運動は、
図21Fに示されるように、接続要素2932aがy軸負方向に動くと、接続要素2932bがx軸正方向に動くようになっている。従って、屈曲モード共振子2922の作用は、MEMS共振器アセンブリ2900全体が、互いに直交する主振動方向を有する伸縮モード共振子(ここでは、相互接続されたLE共振素子アセンブリ)2910a,2910bの運動が、互いに対して実質的に180度ずれた位相である集団共振モードで振動することである。それによって、伸縮モード共振子2910aが最も収縮するとき、伸縮モード共振子2910bが最も伸長する。この作用は屈曲モード共振子2921も同様である。MEMS共振器アセンブリ2900の共振器要素は、3つの懸架要素によって繋がれており、そのうち2つの懸架要素2941a,2942aは伸縮モード共振子2910aに接続され、懸架要素2943bは伸縮モード共振子2910bに接続されている。
図21Eに示す構造全体が懸架される構造である。
【0115】
実施形態によっては、MEMS共振器アセンブリはラーメモード共振子を備える。
図22に示すMEMS共振器アセンブリ2100には、2×2のアレイ状に配置された4つのラーメモード共振子2110a,2110b,2110c,2110dと、それぞれが隣接する2つのラーメモード共振子に接続される4つの屈曲モード共振子2121~2124がある。ラーメ共振子は、xy平面において正方形の板状をしている。屈曲モード共振子2121~2124は、矩形の枠(この場合、正方形状の枠)の形状を有する。共振器アセンブリ2100の形状は、集団共振における共振器2121~2124の基本ラーメモードと基本屈曲モードからなるモード形状を示すために、誇張して図示されている。基本ラーメモードでは、
図22に示すように、隣接する正方形板の中央の側壁が互いに180度位相がずれて動く(伸びるか縮むか)。隣接する2つのラーメ共振子の対向する側壁は、2つの側壁の(反)中心点に接続された屈曲共振子を介して結合されている。枠状の屈曲共振子2121-2124の対向する側面は、共振振動の間、内側又は外側のいずれかに交互に移動し、2つの枠の隣接する側面は、(
図21Fの共振器2922と同様に、)互いに対して異なる方向(内側又は外側のいずれか)に移動する。矩形枠2121~2124を形成するビーム(梁)の寸法は、屈曲共振子2121~2124の共振周波数がラーメモード共振子2110a,2110b,2110c,2110dの共振周波数と実質的に等しくなるように選択される。従って、屈曲共振子カプラの作用はラーメ共振子を同期させることであり、それによってMEMS共振器アセンブリ2100は集団共振モードで、特に伸縮モード共振子2110a,2110b,2110c,2110dの運動が互いに対して実質的に同位相であるような集団共振モードで、振動する。
図22に示す構造全体が懸架される構造である。角の点は基本ラーメモードの節点であり、従って懸架要素がこれらの点に接続されている(図示の実施形態では、8つの懸架要素2141a,2142a,2143b,2144b,2145c,2146c,2147d、2148dのみが共振子の角に接続されている)。
【0116】
図23は、屈曲モード共振子(本明細書では2320)が2つのバルク音響共振子2310a及び3210bを機械的に接続する、MEMS共振器アセンブリのさらなる実施形態を示す。
図23のMEMS共振器アセンブリの構造は、屈曲共振子2320とバルク音響共振子(又は伸縮モード共振子)2310a及び3210bとを接続する接続要素において、先の実施形態で説明したMEMS共振器アセンブリとは異なるが、それ以外の構造及び動作は、先の実施形態で説明したMEMS共振器アセンブリと同じである。
図23のMEMS共振器アセンブリの接続要素は、(先の実施形態における非対称の位置取りとは異なり、)対称に配置されている。従って、第1のバルク音響共振子2310aと屈曲モード共振子2320とを接続する接続要素2331aは、第2のバルク音響共振子2310bと屈曲モード共振子2320とを接続する接続要素2332bと、y方向において同じ位置にある。また
図23に示す例において、屈曲モード共振子2320は、その両端が互いに接続された2本の平行な(屈曲)共振ビームで形成されている。前記接続要素2331a及び2332bは、それぞれビームの反節点(ビームの側縁の中間点又は中間領域)において、それぞれビームとバルク音響共振子とを接続する。従って、実施形態によっては、屈曲共振子2320のビームの中間点又は中間領域は、それぞれのバルク音響共振子の側縁の中間点又は中間領域と接続される。
図23に示すような対称構造の利点は、プロセスのばらつきに対する影響が低減されることである。接続要素が対称に配置された構造の寄生共振スペクトルは、接続要素が非対称に配置された構造の寄生共振スペクトルとは異なる。従って、非対称に配置された接続要素を有するMEMS共振器アセンブリにおいて発生する寄生共振を回避する必要がある場合には、例えば
図23に示す構造等で対応することができる。
【0117】
当業者は、上記の例示的な実施形態に照らして、MEMS共振器アセンブリの上記の例示的な実施形態はすべて、共振器を共振モードに励起するためのアクチュエータを含んでもよいことを理解するだろう。またアクチュエータは、
図9A~9C及び
図10A~10Dを参照して上述したように、圧電型や静電型であってもよいことも理解するだろう。実施形態によっては、共振器要素の振動運動を測定するために圧電抵抗センサが使用される。
【0118】
MEMS共振器アセンブリ(100など)の部品であるバルク音響共振子は、同じタイプである必要はない。実施形態によっては、例えば、MEMS共振器アセンブリは、相互接続された長さ伸縮(LE)共振器アセンブリと、正方形伸縮モード(SE)共振器とを備える。別の例示的な実施形態では、MEMS共振器アセンブリは、SEモード共振子と幅伸縮(WE)モード共振子とを備える。更に別の例示的な実施形態では、MEMS共振器アセンブリは、LEモード共振子と、相互接続されたLE共振素子アセンブリとを備える。共振モードの順序を考慮する場合、更に他の代替実施形態が提供される。バルク音響共振子が基本周波数で振動する実施形態に加えて、バルク音響共振子の少なくとも1つが、MEMS共振器アセンブリの集団共振モードの共振周波数に実質的に等しい3次オーバートーン周波数で振動する実施形態も存在する。
【0119】
請求項に係る発明の技術的範囲及び解釈を制限することなく、本明細書に開示された例示的な実施形態の1つ又は複数の技術的効果を以下に列挙する。技術的効果は、共振器のESRが低いことである。別の技術的効果は、ダイ上の共振器要素のレイアウトに関する設計の自由度である。更に別の技術的効果としては、高い電力対応能力と、熱機械的応力に対する影響の低さが挙げられる。
【0120】
上の説明は、本発明の特定の実装形態および実施形態の非限定的な例によって、本発明を実施するために本発明者らが現在考えている最良の形態の完全かつ有益な説明を提供したものである。しかしながら、当業者には明らかであるように、上述の実施形態の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段を用いて、他の実施形態に実装することができる。
【0121】
さらに、以上に開示した本発明の実施形態の特徴は、対応する他の特徴を用いることなく用いられてもよい。然るに、以上の説明は、本発明の原理を説明するための例に過ぎず、それを限定するものではないと捉えるべきである。よって、本発明の範囲は添付の特許請求のみによって制限されるものである。
【国際調査報告】