(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】低飽和度脂質組成物及びその適用
(51)【国際特許分類】
A23D 7/005 20060101AFI20241129BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20241129BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20241129BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20241129BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20241129BHJP
A23L 13/50 20160101ALI20241129BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20241129BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20241129BHJP
【FI】
A23D7/005
A23D7/00 500
A21D2/14
A23L13/00 A
A23L13/60 A
A23L13/00 Z
A23L13/50
A21D13/80
A21D13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539254
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(85)【翻訳文提出日】2024-08-26
(86)【国際出願番号】 CN2022141767
(87)【国際公開番号】W WO2023125354
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111625708.2
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111626927.2
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111628605.1
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514297958
【氏名又は名称】▲豊▼益(上海)生物技▲術▼研▲発▼中心有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】郭 瑞▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 冬▲いん▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 虹
(72)【発明者】
【氏名】徐 学兵
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG01
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG06
4B026DG07
4B026DG08
4B026DG09
4B026DH02
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4B042AD03
4B042AD21
4B042AG07
4B042AH01
4B042AH11
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AP03
4B042AP17
(57)【要約】
本発明は低飽和度脂質組成物及びその適用を提供する。総質量で計算する場合、前記脂質組成物は、50~71%脂質、25~40%水、1~6%タンパク質を含み、そのうち、前記脂質の飽和度が20~42%である。本発明の脂質組成物は、菜食の多汁性、粘着性、咀嚼性の改善や食感の向上と、調理時の水煮による損失と焼きによる損失の減少と、食品脆性の増加や食品保存中の脂質の抽出率の低下や生地捏ね時間の短縮に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
総質量で計算する場合、50~71%脂質、25~40%水、1~6%タンパク質を含み、飽和度が20~42%である、脂質組成物。
【請求項2】
液体脂質と固体脂質を含み、前記液体脂質が常温における液体となる脂質であり、前記固体脂質が常温における固体又は半固体となる脂質であり、
好ましくは、前記液体脂質が、大豆油、コーン油、ヒマワリ種子油、菜種油、米油、パーム油、シアオレイン、パーム核油、ヤシ油から選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記固体脂質が、スーパーパームステアリン、パームステアリン、水添パーム油、シアステアリン、パーム核ステアリン、パーム油の中間抽出物、完全水添植物油から選ばれる1種又は複数種であり、好ましくは、前記完全水添植物油が、完全水添菜種油、完全水添大豆油、完全水添ヒマワリ種子油、完全水添シアオレイン、完全水添米油、完全水添パーム核油から選ばれる1種又は複数種であることを特徴とする、請求項1に記載の脂質組成物。
【請求項3】
前記タンパク質が、植物性タンパク質及び/又は動物性タンパク質であり、
好ましくは、前記植物性タンパク質が、大豆、緑豆、えんどう豆、そば、燕麦、小麦、米、落花生に由来するタンパク質から選ばれ、好ましくは、大豆タンパク質及び/又は穀物タンパク質であり、
好ましくは、前記動物性タンパク質が、ホエイプロテイン及び/又はカゼインであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の脂質組成物。
【請求項4】
下記特徴、即ち、
(1)脂質組成物の総質量で計算する場合、前記脂質組成物が、60~71%の脂質を含み、又は50~60%の脂質を含むこと、
(2)前記脂質の飽和度が20~32%、22~30%、29~42%又は29~40%であること、
(3)脂質組成物の総質量で計算する場合、前記脂質組成物が、1~4%、2~4%又は2~6%の前記タンパク質を含むことの1つ又は複数を有することを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の脂質組成物。
【請求項5】
前記脂質組成物が、トランスグルタミナーゼ、コロイドの何れか1種又は全部2種を更に含み、
好ましくは、脂質組成物の総質量で計算する場合、前記脂質組成物が、0.2~0.8%、好ましくは0.4~0.8%のトランスグルタミナーゼを含み、
好ましくは、脂質組成物の総質量で計算する場合、前記脂質組成物が、1~4%のコロイドを含み、
好ましくは、前記コロイドが、カラギナン、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、コンニャクグルコマンナンから選ばれる1種又は複数種であり、好ましくは、カラギナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンから選ばれる1種又は複数種であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の脂質組成物。
【請求項6】
脂質組成物の総質量で計算する場合、前記脂質組成物が、60~71%の脂質、25~40%の水、1~4%、好ましくは2~4%のタンパク質、0.2~0.8%、好ましくは0.4~0.8%のトランスグルタミナーゼを含み、そのうち、脂質の飽和度が20~32%であり、好ましくは、22~30%であり、
好ましくは、前記脂質が液体脂質を含むとともに、固体脂質を任意に含み、
好ましくは、脂質の総質量で計算する場合、前記脂質が、60~95%、好ましくは80~95%又は75~91%の液体脂質、及び5~40%、好ましくは5~20%又は9~25%の固体脂質を含み、
好ましくは、前記液体脂質が、パーム油、大豆油から選ばれる何れか1種又は全部2種であり、
好ましくは、前記固体脂質が、パームステアリン、完全水添パーム油から選ばれる何れか1種又は全部2種であり、
好ましくは、前記脂質組成物の硬度が130~350gの範囲内であることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の脂質組成物。
【請求項7】
脂質組成物の総質量で計算する場合、前記脂質組成物が50~60%脂質、2~6%タンパク質、1~4%コロイド、31~40%水を含み、そのうち、前記脂質の飽和度が29~42%であり、好ましくは29~40%であり、25℃における固体脂質の含有量が5~30%であり、好ましくは5~27%であり、
好ましくは、前記脂質の総質量で計算する場合、前記脂質が60~95%、好ましくは80~95%の液体脂質、及び5~40%、好ましくは5~20%の固体脂質を含み、
好ましくは、前記液体脂質がパーム油、シアオレイン、高オレイン酸ヒマワリ種子油、大豆油から選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記固体脂質がスーパーパームステアリン、パームステアリンの何れか1種又は全部2種を含むことを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の脂質組成物。
【請求項8】
(1)パーム油とシアオレイン、及び(2)パーム油とシアオレインを除く液体脂質を含み、そのうち、前記脂質組成物は、常温における固体であるとともに、その飽和度が25~32%であり、
好ましくは、前記パーム油のヨウ素価が20g/100g以下であり、前記シアオレインのヨウ素価が45~75g/100gの範囲であり、トリグリセリドPPPの含有量が7~15%であり、好ましくは7~10%であり、並びにトリグリセリドSOSの含有量が3.5~15%であり、好ましくは3.5~10%であり、より好ましくは3.5~6%である、脂質組成物。
【請求項9】
下記特徴、即ち、
(1)前記脂質組成物の飽和度が25~32%であり、好ましくは25~30%であること、
(2)前記脂質組成物のヨウ素価が60~100g/100gであり、好ましくは65~90g/100gであること、
(3)前記パーム油とシアオレインを除く液体脂質が、大豆油、ヒマワリ種子油、落花生油、菜種油、綿実油、コーン油、サフラワー油、ごま油、コメヌカ油、亜麻仁油、オリーブオイル、ヘーゼルナッツオイル、ペカン油、アーモンドオイル、カシューナッツオイル、ククイナッツオイル、ピスタシオ種子油、パーム核油、ヤシ油の1種又は複数種及びこれらの液体脂質の抽出物、並びにエステル交換脂質から選ばれること、
(4)前記脂質組成物が乳化剤を更に含み、好ましくは、乳化剤が、モノグリセリド、レシチン、ポリリシノール酸ポリグリセロール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ツインから選ばれる1種又は複数種であり、好ましくは、脂質組成物の総質量で計算する場合、乳化剤の含有量が0.5~3%であり、より好ましくは、乳化剤の含有量が0.5~1%又は1.0~2.5%であることの1つ又は複数を有することを特徴とする、請求項8に記載の脂質組成物。
【請求項10】
脂質組成物の総質量で計算する場合、パーム油の含有量が1~25%であり、シアオレインの含有量が5~40%であり、パーム油とシアオレインを除く前記液体脂質の含有量が50~80%であり、好ましくは、パーム油の含有量が5~20%であり、シアオレインの含有量が10~30%であり、液体脂質の含有量が55~75%であり、
好ましくは、前記脂質組成物が、12~18%のパーム油、10~30%のシアオレイン、55~75%の液体脂質を含むとともに、当該脂質組成物におけるPPPの含有量が7~10%であり、SOS含有量が3.5~6%であり、好ましくは、前記液体脂質が、大豆油、高オレイン酸ヒマワリ種子油の何れか1種又は全部2種の混合物であり、好ましくは、脂質組成物の総質量で計算する場合、前記液体脂質が、30~75%の高オレイン酸ヒマワリ種子油、0~40%の大豆油を含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の脂質組成物。
【請求項11】
請求項8~10の何れか1項に記載の脂質組成物と水とを含むショートニング又はマーガリンであって、総質量で計算する場合、前記ショートニング又はマーガリンにおける前記脂質組成物の含有量が80~90wt%であり、水の含有量が10~20wt%である、ショートニング又はマーガリン。
【請求項12】
含有する脂質の全部又は一部が、請求項1~10に記載の脂質組成物又は請求項11に記載のショートニング又はマーガリンであることを特徴とする、食品。
【請求項13】
前記食品は
焼き菓子であり、好ましくは、前記食品は、ビスケット、パン、ケーキ、スプレッド、マヨネーズ、ドレッシング、ペストリー、クロワッサン、パルミエから選ばれ、好ましくは、前記食品に含まれる脂質の全部又は一部は、請求項5~10に記載の脂質組成物又は請求項11に記載のショートニング又はマーガリンであり、或いは、
前記食品は肉製品であり、ソーセージ、ミートボール、ミートパイ、挽き肉を含み、好ましくは、前記肉製品は請求項5~7の何れか1項に記載のトランスグルタミナーゼを含む脂質組成物を含み、好ましくは、前記肉製品はソーセージであり、総質量で計算する場合、前記ソーセージは5~20%の前記脂質組成物を含み、好ましくは、総質量で計算する場合、前記ソーセージは肉30~40%、タンパク質2~6%、5~20%の前記脂質組成物を含み、好ましくは、前記ソーセージにおける肉は、鶏肉、鴨肉、豚肉、ロバ肉、牛肉、羊肉から選ばれる1種又は複数種であり、或いは、
前記食品は菜食であり、例えば、植物肉製品であり、好ましくは、前記食品は、請求項5~7の何れか1項に記載のコロイドを含む脂質組成物を含み、好ましくは、前記食品は、植物肉チキンカツレツ、植物肉ステーキ、植物肉ポークチョップ、植物肉ミートボール、植物肉ミートパイ、植物肉挽き肉であり、好ましくは、菜食の総質量で計算する場合、前記脂質組成物の含有量が5~15%であることを特徴とする、請求項12に記載の食品。
【請求項14】
下記、即ち、
(1)請求項5~7の何れか1項に記載のコロイドを含む脂質組成物の、菜食、特に植物肉製品の多汁性、粘着性、咀嚼性の改善や食感の向上における適用、或いは菜食(特に植物肉製品)の多汁性、粘着性、咀嚼性の改善や食感の向上に利用される脂質組成物の製造における適用、
(2)請求項5~7の何れか1項に記載のトランスグルタミナーゼを含む脂質組成物の、調理時の水煮による損失と焼きによる損失の減少における適用、及び調理時の水煮による損失と焼きによる損失の減少に繋がる脂質組成物の製造における適用、
(3)請求項5~10に記載の脂質組成物又は請求項11に記載のショートニング又はマーガリンの、食品脆性の増加や食品保存中の脂質の抽出率の低下における適用、及び生地捏ね時間の短縮における適用、から選ばれる、適用。
【請求項15】
下記工程、即ち、
(1)タンパク質を水に十分に溶解させて、タンパク質水溶液を製造する工程と、
(2)脂質とタンパク質水溶液を混合して乳液を製造する工程と、
(3)工程(2)により得られた乳液を成形させる工程と、を含み、
好ましくは、前記工程(2)は、高速せん断の条件で液体脂質をタンパク質水溶液にゆっくりと入れて、O/W乳液を製造し、
好ましくは、前記脂質組成物は、請求項5~7の何れか1項に記載の脂質組成物であり、前記方法は、(2’)工程(2)により得られた乳液を前記タンパク質及び/又はトランスグルタミナーゼと十分に混合させてから、工程(3)の成形を実施する工程を含み、
好ましくは、前記工程(2’)は、得られた乳液をトランスグルタミナーゼと十分に混合させてから、得られた混合物を加熱して成形させ、好ましくは、前記加熱成形工程の温度は37~42℃であり、時間は0.5~1.5hであり、
好ましくは、前記工程(2’)は、得られた乳液をタンパク質と十分に混合させてから、得られた混合物を静置して成形させることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の脂質組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、食品に関し、具体的には、低飽和度脂質組成物及び適用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、マーガリン又はショートニングは、ベーキング用脂質として多く使用され、その飽和度が殆ど50%以上と高く、固体であると共に、一定のショートニング性を持ち、脂質の抽出などの課題が存在しない。脂質の健康性に関心が高まるにつれて、消費者が低飽和度脂質を選択するようになっている。ところが、多くの低飽和度脂質が液体であるため、脂質は大量の固体脂肪による支持がなくては、その可塑性、硬度などの重要指標が大幅に低下し、ベーキングなどの数多くの食品用途の需要が満足できなくなる。固体脂肪の適用効果を果たすために、液体脂質のテクスチャーを強化しなければならない。ゲル化剤によって形成される水晶クラスター、包埋層又は網状構造で液体脂質を固形化させるほかに、オイルベースで調整して低飽和度を保持すると共に、固形化させ、更にベーキングの需要を満足できる。
【0003】
動物性脂質は、通常、飽和度が高く、常温では固体であり、加工過程で切断や熱の作用を受けて、ある程度で溶解しても、一定の形状保持性を有するため、優れた粘着性を持つと共に、しっとりとした食感を実現できる。液体低飽和度脂質は加工過程でプロセスの変化に伴って動的変化ができないため、動物性脂質のような食感を実現できない。
【発明の概要】
【0004】
既存の課題を解決するために、本発明の発明者は、大量の実験によって脂質組成物を見出し、前記脂質組成物の飽和度が低い。
【0005】
具体的には、本発明の第1様態は、総質量で計算する場合、50~71%脂質、25~40%水、1~6%タンパク質を含む、脂質組成物を提供する。
【0006】
1つ又は複数の実施形態において、当該脂質組成物の総質量で計算する場合、当該脂質組成物は、60~71%の脂質又は50~60%の脂質を含む。
【0007】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質は液体脂質と固体脂質を含む。
【0008】
1つ又は複数の実施形態において、脂質の総質量で計算する場合、前記脂質は60-95%液体脂質と5-40%固体脂質を含み、好ましくは、80-95%液体脂質と5-20%固体脂質を含む。
【0009】
1つ又は複数の実施形態において、前記液体脂質は、大豆油、ヒマワリ種子油、落花生油、菜種油、綿実油、コーン油、サフラワー油、ごま油、コメヌカ油、亜麻仁油、オリーブオイル、ヘーゼルナッツオイル、ペカン油、アーモンドオイル、カシューナッツオイル、ククイナッツオイル、ピスタシオ種子油、パーム核油、ヤシ油及びこれらの抽出物、並びにエステル交換脂質の1種又は複数種を含む。
【0010】
1つ又は複数の実施形態において、前記液体脂質は、大豆油、コーン油、ヒマワリ種子油、菜種油、米油、パーム油、シアオレイン、パーム核油、ヤシ油の1種又は複数種を含む。
【0011】
1つ又は複数の実施形態において、前記固体脂質は、スーパーパームステアリン、パームステアリン、水添パーム油、シアステアリン、パーム核ステアリン、パーム油の中間抽出物(PMF)、完全水添植物油の1種又は複数種を含み、好ましくは、前記完全水添植物油は、完全水添菜種油、完全水添大豆油、完全水添ヒマワリ種子油、完全水添シアオレイン、完全水添米油、完全水添パーム核油から選ばれる1種又は複数種である。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、前記固体脂質は、スーパーパームステアリン、パームステアリン、水添パーム油、パーム油の中間抽出物、完全水添植物油の1種又は複数種を含み、好ましくは、前記完全水添植物油は、完全水添大豆油及び/又は完全水添菜種油を含む。
【0013】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物は、0.2~0.8%のトランスグルタミナーゼ及び/又は1~4%のコロイドを含む。
【0014】
1つ又は複数の実施形態において、前記タンパク質は、植物性タンパク質及び/又は動物性タンパク質である。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、前記植物性タンパク質は、大豆タンパク質及び/又は穀物タンパク質である。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、前記動物性タンパク質は、ホエイプロテイン及び/又はカゼインである。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、当該脂質組成物の総質量で計算する場合、当該脂質組成物は、1~4%又は2~6%の前記タンパク質を含む。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、前記コロイドは、カラギナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンの1種又は複数種である。
【0019】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物の総質量で計算する場合、前記脂質組成物は、60~71%脂質、25~40%水、1~4%タンパク質、0.2~0.8%トランスグルタミナーゼを含み、そのうち、前記脂質の飽和度が20~32%である。好ましくは、これらの実施形態において、前記脂質に含まれる固体脂質は、スーパーパームステアリン、パームステアリン、水添パーム油、シアステアリン、パーム核ステアリン、パーム油の中間抽出物(PMF)、完全水添植物油(例えば、完全水添菜種油、完全水添大豆油、完全水添ヒマワリ種子油、完全水添シアオレイン、完全水添米油、完全水添パーム核油)の1種又は複数種を含む。
【0020】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物の総質量で計算する場合、前記脂質組成物は、50~60%脂質、2~6%タンパク質、1~4%コロイド、31~40%水を含み、そのうち、前記脂質の飽和度が29~42%であり、25℃における固体脂質の含有量が5~30%である。好ましくは、これらの実施形態において、前記脂質に含まれる固体脂質は、スーパーパームステアリン、パームステアリン、水添パーム油、パーム油の中間抽出物(PMF)、完全水添植物油の1種又は複数種を含み、好ましくは、前記完全水添植物油が完全水添大豆油及び/又は完全水添菜種油を含む。
【0021】
本発明の第2様態は、下記工程、即ち、
(1)タンパク質を水に十分に溶解させて、タンパク質水溶液を製造する工程と、
(2)脂質とタンパク質水溶液を混合して乳液を製造する工程と、
(3)工程(2)により得られた乳液を成形させる工程と、を含む、脂質組成物の製造方法を提供する。
【0022】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物は、前記タンパク質及び/又はトランスグルタミナーゼを更に含み、前記方法は、(2’)工程(2)により得られた乳液を前記タンパク質及び/又はトランスグルタミナーゼと十分に混合させてから、工程(3)の成形を実施する工程を含む。
【0023】
1つ又は複数の実施形態において、前記工程(2)は、高速せん断の条件で液体脂質をタンパク質水溶液にゆっくりと入れて、O/W乳液を製造する。
【0024】
1つ又は複数の実施形態において、前記高速せん断の条件は10,000-18,000rpmであり、せん断時間は5-15minである。
【0025】
1つ又は複数の実施形態において、前記工程(2’)は、得られた乳液をトランスグルタミナーゼと十分に混合させてから、得られた混合物を加熱して成形させる。
【0026】
1つ又は複数の実施形態において、前記加熱成形工程の温度は37~42℃であり、時間は0.5~1.5hである。
【0027】
1つ又は複数の実施形態において、前記工程(2’)は、得られた乳液をタンパク質と十分に混合させてから、得られた混合物を静置して成形させる。
【0028】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物は、本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物である。
【0029】
本発明の第3様態は、パーム油とシアオレイン、及びパーム油とシアオレインを除く液体脂質、を含む脂質組成物を提供する。
【0030】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物は常温において固体である。
【0031】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物の飽和度が25~32%である。
【0032】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物のヨウ素価が100g/100g以下であり、好ましくは60~100g/100gである。
【0033】
1つ又は複数の実施形態において、前記パーム油のヨウ素価が20g/100g以下である。
【0034】
1つ又は複数の実施形態において、前記シアオレインのヨウ素価が45~75g/100gである。
【0035】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物におけるトリグリセリドPPPの含有量が7~15%である。
【0036】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物におけるトリグリセリドSOSの含有量が3.5~15%である。
【0037】
1つ又は複数の実施形態において、前記PPPの含有量が7~10%である。
【0038】
1つ又は複数の実施形態において、前記SOSの含有量が3.5~10%であり、好ましくは、3.5~6%である。
【0039】
1つ又は複数の実施形態において、前記パーム油とシアオレインを除く液体脂質は、大豆油、ヒマワリ種子油、落花生油、菜種油、綿実油、コーン油、サフラワー油、ごま油、コメヌカ油、亜麻仁油、オリーブオイル、ヘーゼルナッツオイル、ペカン油、アーモンドオイル、カシューナッツオイル、ククイナッツオイル、ピスタシオ種子油、パーム核油、ヤシ油及びこれらの抽出物、並びにエステル交換脂質から選ばれる1種又は複数種である。
【0040】
1つ又は複数の実施形態において、前記液体脂質は大豆油及び/又はヒマワリ種子油を含む。
【0041】
1つ又は複数の実施形態において、前記液体脂質は大豆油及び/又は高オレイン酸ヒマワリ種子油を含む。
【0042】
1つ又は複数の実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、パーム油の含有量が1~25%であり、好ましくは5~20%であり、シアオレインの含有量が5~40%であり、好ましくは10~30%であり、前記液体脂質の含有量が50~80%であり、好ましくは55~75%である。
【0043】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物は、12~18%のパーム油、10~30%のシアオレイン、55~75%の液体脂質を含むとともに、当該脂質組成物におけるPPPの含有量が7~10%であり、SOSの含有量が3.5~6%であり、好ましくは、前記液体脂質が、大豆油、高オレイン酸ヒマワリ種子油の何れか1種又は全部2種の混合物である。
【0044】
1つ又は複数の実施形態において、前記脂質組成物は乳化剤を更に含む。
【0045】
1つ又は複数の実施形態において、前記乳化剤は、モノグリセリド、レシチン、ポリリシノール酸ポリグリセロール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ツインから選ばれる1種又は複数種である。
【0046】
1つ又は複数の実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、乳化剤の含有量が0.5~3%であり、好ましくは0.5~1%である。
【0047】
幾つかの実施形態において、本発明に係るショートニング又はマーガリンは、本明細書の第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物を含む。
【0048】
1つ又は複数の実施形態において、前記ショートニング又はマーガリンは、80~90wt%の本明細書の第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物と、10~20wt%の水を含む。
【0049】
本発明の第4様態は、本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物、第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物及び/又はショートニング又はマーガリンを含み、或いは、本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物、第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物及び/又はショートニング又はマーガリンを含む原料で製造してなる、食品を提供する。好ましくは、前記食品に含まれる脂質の全部又は一部は、本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物、第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物及び/又はショートニング又はマーガリンである。
【0050】
1つ又は複数の実施形態において、前記食品は肉製品である。
【0051】
1つ又は複数の実施形態において、前記肉製品は、本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物を含む。
【0052】
1つ又は複数の実施形態において、前記肉製品は、ソーセージ、ミートボール、ミートパイ、挽き肉である。
【0053】
1つ又は複数の実施形態において、前記ソーセージの総質量で計算する場合、前記ソーセージは、5~20%の本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物を含む。
【0054】
1つ又は複数の実施形態において、前記食品は焼き菓子である。
【0055】
1つ又は複数の実施形態において、前記焼き菓子は、第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物及び/又はショートニング又はマーガリンを含む。
【0056】
1つ又は複数の実施形態において、前記食品は、ビスケット、パン、ケーキ、スプレッド、マヨネーズ、ドレッシング、ペストリー、クロワッサン、パルミエから選ばれ、第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物及び/又はショートニング又はマーガリンを含む。
【発明の効果】
【0057】
本発明は既存技術と比較すれば、本発明の脂質組成物における飽和脂質の含有量が低く、水煮による損失率と焼きによる損失率が低く、硬度が適切であり、成形性が優れる。本発明の脂質組成物で製造されたソーセージは、一般的な動物性脂質で製造されたソーセージと比較すれば、湿潤性、食感、風味が類似するが、プラントベースを採用するため、当該ソーセージ製品は、肥満や心血管疾患のリスクを低減できる。
【0058】
本発明はコロイドとタンパク質との間で発生される静電気作用により、低飽和度液体脂質を効果的に凝固させて、ハイドロゲルとオレオゲルを含有する製品が取得された。食品の適用、特に植物肉製品の適用において、本発明の低飽和度含水脂質組成物製品で製造された植物肉製品は、多汁性、粘着性、咀嚼性などについて、液体脂質よりも優れた性質を持つ。飽和度と脂質摂取量を低下させるとともに、植物肉製品の食感を大幅に向上させた。
【0059】
また、本発明の脂質組成物(特に第3様態の脂質組成物とショートニングとマーガリン)は、ビスケットベーキング中にビスケットの脆性を増加させるとともに、ビスケット保存中の脂質の抽出率を明らかに低下させるが、パンベーキング中に生地の形成時間を明らかに短縮させ、作業コストを低下させる。また、当該脂質組成物は、更に低飽和度の特徴を有し、高飽和度脂質による健康リスクを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明において、特別な説明がない限り、パーセンテージ(%)又は部は、組成物に対する重量パーセンテージ又は重量部である。
【0061】
本発明において、特別な説明がない限り、関わる各成分又はその好適な成分は、互いに組合せて、新しい技術手段を形成してもよい。
【0062】
本発明において、特別な説明がない限り、本明細書に係る全ての実施形態及び好適な実施形態は、互いに組合せて、新しい技術手段を形成してもよい。
【0063】
本発明において、特別な説明がない限り、本明細書に係る全ての技術特徴及び好適な特徴は、互いに組合せて、新しい技術手段を形成してもよい。
【0064】
本発明において、相反する説明がない限り、組成物における各成分の含有量の合計は100%である。
【0065】
本発明において、相反する説明がない限り、組成物における各成分の部数の合計は100重量部であってもよい。
【0066】
本発明において、別途で説明がない限り、数値範囲「a~b」はaからbまでの任意の実数組合せの簡略表示であり、そのうち、aとbは実数である。例えば、数値範囲「0~5」は本明細書において「0~5」の間の全ての実数が挙げられたことを示し、「0~5」はこれらの数値組合せの簡略表示に過ぎない。
【0067】
本発明において、別途で説明がない限り、整数数値範囲「a~b」はaからbまでの任意の整数組合せの簡略表示であり、そのうち、aとbは整数である。例えば、整数数値範囲「1~N」は1、2…Nを示し、そのうち、Nは整数である。
【0068】
本発明において、別途で説明がない限り、「その組合せ」は前記各エレメントの多成分混合物を示し、例えば、2種、3種、4種及び可能な限り最多までの多成分混合物である。
【0069】
特別な説明がない限り、本明細書に使用される用語「1種」とは「少なくとも1種」を意味する。
【0070】
特別な説明がない限り、本発明に係るパーセンテージ(重量パーセンテージを含む)の基準は前記組成物の総重量である。
【0071】
本明細書により開示される「範囲」は下限と上限の形態とする。1つ又は複数の下限、及び1つ又は複数の上限であってもよい。所定範囲は、1つの下限と1つの上限を選定することで、限定される。選定される下限と上限は、特別範囲の境を限定した。この方法で限定できる全ての範囲は、含有及び組合せ可能なものであり、即ち、任意の下限が任意の上限と組合わせることで1つの範囲を形成できる。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲が挙げられた場合、60~110と80~120の範囲が想定できると理解する。また、範囲の最小値として1、2が挙げられ、範囲の最大値として3、4、5が挙げられた場合、下記の範囲、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5が全て想定できる。
【0072】
本明細書において、別途で説明がない限り、各反応は常温常圧で行う。
【0073】
本明細書において、別途で説明がない限り、各反応工程は順序に沿って行ってもよく、順序に沿わずに行ってもよい。例えば、各反応工程の間にその他の工程を含んでもよく、反応工程同士が互いに順序を交換してもよい。好ましくは、本明細書における反応方法は順序に沿って行うものである。
【0074】
<第1様態>
本願の第1様態は、ソーセージ、ミートボールなどの食品、特に肉製品の動物性脂質又は脂肪の代替、或いは植物肉製品の多汁性、粘着性、咀嚼性の改善や植物肉製品の食感の向上に利用できる、脂質組成物を提供する。総質量で計算する場合、当該脂質組成物は、50~71%脂質、25~40%水、1~6%タンパク質を含む。
【0075】
当該脂質組成物において、脂質は、液体脂質と固体脂質を含んでもよい。幾つかの実施形態において、脂質の全部は液体脂質である。本発明において、前記液体脂質は、常温、例えば20℃における液体の脂質であり、前記固体脂質は、常温、例えば20℃における固体又は半固体の脂質である。代表的に、前記液体脂質は、大豆油、コーン油、ヒマワリ種子油(高オレイン酸ヒマワリ種子油を含む)、菜種油、米油、パーム油、シアオレイン、パーム核油、ヤシ油の1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。前記固体脂質は、スーパーパームステアリン、パームステアリン、水添パーム油、シアステアリン、パーム核ステアリン、パーム油の中間抽出物、完全水添植物油の1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、前記完全水添植物油は、完全水添菜種油、完全水添大豆油、完全水添ヒマワリ種子油、完全水添シアオレイン、完全水添米油、完全水添パーム核油から選ばれる1種又は複数種である。幾つかの実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、当該脂質組成物は60~71%の脂質を含む。幾つかの実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、当該脂質組成物は50~60%の脂質を含む。本発明の脂質組成物に利用される脂質の飽和度は20~42%であり、例えば、20~32%、22~30%、29~42%又は29~40%である。
【0076】
本発明の脂質組成物のタンパク質の種類は、限定されるものではなく、植物性タンパク質と動物性タンパク質のどちらでもよい。代表的に、前記植物性タンパク質は、タンパク質を含む任意の植物に由来してもよく、大豆、緑豆、えんどう豆、そば、燕麦、小麦、米、落花生を含むが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、植物性タンパク質は大豆タンパク質及び/又は穀物タンパク質である。幾つかの実施形態において、動物性タンパク質はホエイプロテイン及び/又はカゼインである。幾つかの実施形態において、前記タンパク質は、ソイプロテインアイソレート、ホエイプロテイン、カゼインから選ばれる1種又は複数種である。幾つかの実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、当該脂質組成物は1~4%、好ましくは2~4%の前記タンパク質を含む。幾つかの実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、当該脂質組成物は2~6%の前記タンパク質を含む。本発明に係るタンパク質はその塩も含むと理解すべきである。例えば、カゼインはカゼインナトリウムも含む。本明細書に係る脂質組成物におけるタンパク質の含有量は、タンパク質で計算する場合の含有量である。
【0077】
本発明の脂質組成物は、トランスグルタミナーゼ、コロイドの何れか1種又は全部2種を更に含む。本発明は、本分野の常用方法、例えば、市販されるトランスグルタミナーゼにより実施できる。コロイドは、食品に添加される本分野通常のコロイドであってもよく、カラギナン、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、コンニャクグルコマンナンの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、コロイドは、カラギナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンから選ばれる1種又は複数種である。含有する場合、本発明の脂質組成物において、総質量で計算する場合、トランスグルタミナーゼの含有量は、0.2~0.8%、好ましくは0.4~0.8%であり、コロイドの含有量は1~4%である。
【0078】
幾つかの実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、本発明の脂質組成物は、60~71%の脂質、25~40%の水、1~4%、好ましくは2~4%のタンパク質、0.2~0.8%、好ましくは0.4~0.8%のトランスグルタミナーゼを含み、そのうち、脂質の飽和度が20~32%であり、好ましくは、22~30%である。好ましくは、これらの実施形態において、前記脂質は、液体脂質を含むとともに、固体脂質を任意に含む。幾つかの実施形態において、前記脂質の全部は液体脂質である。幾つかの実施形態において、前記脂質は液体脂質と固体脂質を含み、好ましくは、脂質の総質量で計算する場合、前記脂質は60~95%液体脂質と5~40%固体脂質を含む。幾つかの実施形態において、前記脂質は80~95%液体脂質と5~20%固体脂質を含む。幾つかの実施形態において、前記脂質は75~91%の液体脂質と9~25%の固体脂質を含む。好ましくは、これらの実施形態において、前記液体脂質は、大豆油、コーン油、ヒマワリ種子油(高オレイン酸ヒマワリ種子油を含む)、菜種油、米油、パーム油、シアオレイン、パーム核油、ヤシ油の1種又は複数種を含む。前記固体脂質は、パームステアリン、水添パーム油、シアステアリン、パーム核ステアリン、パーム油の中間抽出物、完全水添植物油(例えば、完全水添菜種油、完全水添大豆油、完全水添ヒマワリ種子油、完全水添シアオレイン、完全水添米油、完全水添パーム核油)の1種又は複数種を含む。好ましくは、前記固体脂質はパームステアリン、水添パーム油、パーム油の中間抽出物(PMF)、完全水添植物油の1種又は複数種を含む。好ましくは、前記液体脂質はパーム油、大豆油から選ばれる何れか1種又は全部2種である。好ましくは、前記固体脂質はパームステアリン、完全水添パーム油から選ばれる何れか1種又は全部2種である。好ましくは、本願の実施例1に係る方法で測定した結果、この脂質組成物の硬度は130~350gの範囲内である。
【0079】
幾つかの実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、本発明の脂質組成物は、60~71%の脂質、25~40%の水、2~4%のタンパク質、0.4~0.8%のトランスグルタミナーゼを含み、脂質の飽和度が22~30%であり、前記脂質はパーム油、大豆油から選ばれる何れか1種又は全部2種の液体脂質であり、或いは、前記脂質は75~91%の液体脂質と9~25%の固体脂質を含み、前記液体脂質はパーム油、大豆油から選ばれる何れか1種又は全部2種であり、前記固体脂質はパームステアリン、完全水添パーム油から選ばれる何れか1種又は全部2種である。好ましくは、この脂質組成物の硬度は130~350gの範囲内である。
【0080】
1つ又は複数の実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、本発明の脂質組成物は、50~60%脂質、2~6%タンパク質、1~4%コロイド、31~40%水を含み、そのうち、前記脂質の飽和度が29~42%であり、好ましくは29~40%であり、25℃における固体脂質の含有量は5~30%であり、好ましくは5~27%である。好ましくは、前記脂質の総質量で計算する場合、前記脂質は60~95%の液体脂質と5~40%の固体脂質を含む。幾つかの実施形態において、前記脂質は80~95%の液体脂質と5~20%の固体脂質を含む。好ましくは、これらの実施形態において、前記脂質に含まれる液体脂質は、大豆油、コーン油、ヒマワリ種子油(高オレイン酸ヒマワリ種子油を含む)、菜種油、米油、パーム油、シアオレイン、パーム核油、ヤシ油の1種又は複数種を含み、好ましくは、前記液体脂質はパーム油、シアオレイン、高オレイン酸ヒマワリ種子油、大豆油から選ばれる1種又は複数種であり、前記脂質に含まれる固体脂質は、スーパーパームステアリン、パームステアリン、水添パーム油、パーム油の中間抽出物、完全水添植物油の1種又は複数種を含み、好ましくは、スーパーパームステアリン、パームステアリンの何れか1種又は全部2種を含み、好ましくは、前記完全水添植物油は、完全水添大豆油及び/又は完全水添菜種油を含む。幾つかの実施形態において、前記脂質の飽和度は29%、30%又は40%であり、25℃における固体脂質の含有量は5.9%、9.1%又は26.7%である。幾つかの実施形態において、実施例2に係る方法で測定した結果、前記脂質組成物の硬度は60~200gの範囲内である。
【0081】
1つ又は複数の実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、本発明の脂質組成物は、50~60%脂質、2~6%タンパク質、1~4%コロイド、31~40%水を含み、そのうち、前記脂質の飽和度は29~40%であり、25℃における固体脂質の含有量は5~27%であり、前記脂質の総質量で計算する場合、前記脂質は60~95%の液体脂質と5~40%の固体脂質を含み、そのうち、前記液体脂質はパーム油、シアオレイン、高オレイン酸ヒマワリ種子油、大豆油から選ばれる1種又は複数種であり、前記固体脂質はスーパーパームステアリン、パームステアリンから選ばれる何れか1種又は全部2種である。
【0082】
本発明の脂質組成物は、その他の添加可能な成分を更に含んでもよい。その他の添加可能な成分の使用量は、実際のニーズ又は製品品質基準に応じて添加してもよく、特別に限定されるものではない。添加可能な成分の種類は、食品添加剤、調味料、風味物質、色素などの1種又は複数種を含んでもよい。
【0083】
<第2様態>
本発明の第2様態は、下記工程、即ち、
(1)タンパク質を水に十分に溶解させて、タンパク質水溶液を製造する工程と、
(2)脂質とタンパク質水溶液を混合して乳液を製造する工程と、
(3)工程(2)により得られた乳液を成形させる工程と、を含む、脂質組成物の製造方法を提供する。
【0084】
好ましくは、前記脂質組成物は、本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物である。
【0085】
幾つかの実施形態において、前記脂質組成物は、前記タンパク質及び/又はトランスグルタミナーゼを更に含み、前記方法は、(2’)工程(2)により得られた乳液を前記タンパク質及び/又はトランスグルタミナーゼと十分に混合させてから、工程(3)の成形を実施する工程を含む。
【0086】
幾つかの実施形態において、前記工程(2)は、高速せん断の条件で液体脂質をタンパク質水溶液にゆっくりと入れて、O/W乳液を製造する。工程(2)において、好適には、脂質とタンパク質水溶液が均一な乳液を形成する。均一な乳液を形成できる任意の通常手段で均一な乳液を取得できるが、当該手段は、高速せん断均質を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、高速せん断の条件で脂質をタンパク質水溶液にゆっくりと入れる。本明細書において、高速せん断の条件は、せん断速度が10,000~15,000rpmであり、せん断時間が5~15minである。
【0087】
幾つかの実施形態において、前記工程(2’)は、得られた乳液をトランスグルタミナーゼと十分に混合させてから、得られた混合物を加熱して成形させる。好ましくは、前記加熱成形工程の温度は37~42℃であり、時間は0.5~1.5hである。
【0088】
幾つかの実施形態において、前記工程(2’)は、得られた乳液をタンパク質と十分に混合させてから、得られた混合物を静置して成形させる。
【0089】
幾つかの実施形態において、前記方法は、(a)タンパク質を水に十分に溶解させて、タンパク質水溶液を製造すること、(b)脂質とタンパク質水溶液を混合して乳液を製造すること、(c)乳液をトランスグルタミナーゼと十分に混合させること、(d)加熱して成形させること、を含む。好ましくは、これらの実施形態において、前記脂質組成物は、脂質組成物の総質量で計算する場合、脂質の使用量が60~71%であり、タンパク質の使用量が1~4%であり、水の使用量が25~40%であり、トランスグルタミナーゼの使用量が0.2~0.8%である。幾つかの実施形態において、前記方法は、本願の何れか1つの実施形態に係るトランスグルタミナーゼを含む脂質組成物の製造に適用される。
【0090】
幾つかの実施形態において、前記工程(c)の目的は、乳液を酵素と十分に接触させるためである。例えば、高速せん断といった、両者を十分に接触させる任意の手段を利用できる。好ましくは、高速せん断のせん断速度が10,000~15,000rpmであり、せん断時間が1~2minである。
【0091】
幾つかの実施形態において、前記工程(d)の目的は、脂質組成物を成形させるためである。
【0092】
幾つかの実施形態において、本発明に係る製造方法は、主として、(i)タンパク質を水に十分に溶解させて、タンパク質水溶液を製造すること、(ii)脂質とタンパク質水溶液を混合して乳液を製造すること、(iii)工程(2)で得られた乳液をコロイドと十分に混合させること、及び(iv)静置して成形させること、を含む。好ましくは、これらの実施形態において、前記脂質組成物は、脂質組成物の総質量で計算する場合、脂質の使用量が50~60%であり、タンパク質の使用量が2~6%であり、水の使用量が31~40%であり、コロイドの使用量が1~4%である。前記脂質に対して、脂質の飽和度が29~42%であり、25℃における固体脂質の含有量が5~30%である。幾つかの実施形態において、前記方法は、本願の何れか1つの実施形態に係るコロイドを含む脂質組成物の製造に適用される。
【0093】
本発明の幾つかの実施形態において、前記工程(iv)の目的は、脂質組成物を成形させるためである。好ましくは、前記成形の方法は、室温又は冷蔵条件における静置成形、例えば、0~7℃における静置成形を含むが、これらに限定されるものではない。
【0094】
本発明に係る脂質組成物の形状は、製品の必要によって決めるが、立方体であってもよく、球状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。
【0095】
<第3様態>
本発明の第3様態は、(1)パーム油とシアオレイン、及び(2)パーム油とシアオレインを除く液体脂質、を含む脂質組成物を提供する。本発明の脂質組成物は常温(例えば、約25℃)における固体である。本発明でオイルベース調整により製造してなる飽和度25~32%の脂質組成物は常温における固体であり、これをオイルベースとして、各低飽和度ベーキング用脂質を製造できる。ビスケットベーキング中にビスケットの脆性を増加させるとともに、ビスケット保存中の脂質の抽出率を明らかに低下できる。パンベーキング中に生地の形成時間を明らかに短縮させて、作業コストを低下できる。また、当該脂質組成物は、更に低飽和度の特徴を有し、高飽和度脂質による健康リスクを低減できる。
【0096】
本発明の脂質組成物の特徴は、パーム油のヨウ素価が20g/100g以下であること、シアオレインのヨウ素価が45~75g/100gの範囲であること、トリグリセリドPPPの含有量が7~15%であること、及びトリグリセリドSOSの含有量が3.5~15%であること、を含む。
【0097】
本明細書において、PPPは3つのパルミチン酸と結合するトリグリセリドであり、SOSは1位、3位でステアリン酸と結合し、2位でオレイン酸と結合するトリグリセリドである。
【0098】
本明細書において、パーム油は、混合してなるパーム油のヨウ素価が20g/100g以下であれば、異なるヨウ素価のパーム油の混合物であってもよい。様々な市販パーム油を含む既知の各パーム油で本発明を実施できる。
【0099】
本発明において、シアオレインは、混合してなるシアオレインのヨウ素価が45~75g/100gの範囲内であれば、異なるヨウ素価のシアオレインの混合物であってもよい。様々な市販シアオレインを含む既知の各シアオレインで本発明を実施できる。
【0100】
好ましい実施形態において、本発明の脂質組成物におけるPPPの含有量が7~10%である。
【0101】
好ましい実施形態において、本発明の脂質組成物におけるSOSの含有量が3.5~10%である。幾つかの実施形態において、脂質組成物におけるSOSの含有量が3.5~6%である。
【0102】
好ましい実施形態において、本発明の脂質組成物の飽和度が25~32%であり、好ましくは25~30%であり、及び/又はヨウ素価が60~100g/100gであり、好ましくは65~90g/100gである。
【0103】
本明細書において、前記パーム油とシアオレインを除く液体脂質は、大豆油、ヒマワリ種子油、落花生油、菜種油、綿実油、コーン油、サフラワー油、ごま油、コメヌカ油、亜麻仁油、オリーブオイル、ヘーゼルナッツオイル、ペカン油、アーモンドオイル、カシューナッツオイル、ククイナッツオイル、ピスタシオ種子油、パーム核油、ヤシ油など、及びこれらの液体脂質の抽出物、並びにエステル交換脂質などを含むが、これらに限定されるものではない。これらの液体脂質の任意の1種又は複数種の混合物で本発明の脂質組成物を製造できる。前記ヒマワリ種子油は高オレイン酸ヒマワリ種子油であってもよい。幾つかの実施形態において、本発明の脂質組成物は、前記液体脂質が大豆油及び/又はヒマワリ種子油、特に高オレイン酸ヒマワリ種子油を含む。
【0104】
本発明の脂質組成物において、脂質組成物の総質量で計算する場合、パーム油の含有量が1~25%であり、シアオレインの含有量が5~40%であり、パーム油とシアオレインを除く前記液体脂質の含有量が50~80%である。好ましくは、パーム油の含有量が5~20%である。好ましくは、シアオレインの含有量が10~30%である。好ましくは、液体脂質の含有量が55~75%である。
【0105】
幾つかの実施形態において、本発明の脂質組成物は、12~18%のパーム油、10~30%のシアオレイン、55~75%の液体脂質を含むとともに、当該脂質組成物におけるPPPの含有量が7~10%であり、SOSの含有量が3.5~6%であり、好ましくは、前記液体脂質が、大豆油、高オレイン酸ヒマワリ種子油の何れか1種又は全部2種の混合物である。
【0106】
幾つかの実施形態において、脂質組成物の総質量で計算する場合、前記液体脂質は、30~75%の高オレイン酸ヒマワリ種子油と0~40%の大豆油を含む。
【0107】
本発明の脂質組成物は乳化剤を更に含む。乳化剤は、脂質に使用される本分野通常の乳化剤であってもよく、モノグリセリド(例えば、モノステアリン酸グリセロール)、レシチン、ポリリシノール酸ポリグリセロール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ツインの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。脂質組成物の総質量で計算する場合、乳化剤の含有量が0.5~3%である。幾つかの実施形態において、乳化剤の含有量が0.5~1%である。幾つかの実施形態において、乳化剤の含有量が1.0~2.5%である。
【0108】
本発明の脂質組成物における各成分及び任意の乳化剤を混合させることで、本発明の脂質組成物を製造してなる。幾つかの実施形態において、脂質組成物を溶解させ(例えば、60~80℃の温度で溶解させ)、溶解された脂質を凝結処理し、例えば、凝結装置に入れて一定時間凝結して、本発明の脂質組成物を取得できる。通常、脂質の量によって凝結時間を決める。例示的な凝結時間は10~60分間であってもよい。凝結装置の出口温度は10~20℃、好ましくは15~18℃に制御できる。
【0109】
幾つかの実施形態において、本発明の脂質組成物をオイルベースとしてショートニング又はマーガリンを製造する。そのため、本発明はショートニング又はマーガリンを提供し、当該ショートニング又はマーガリンにおける本発明の脂質組成物の含有量が80~90wt%であり、水の含有量が10~20wt%である。ショートニング又はマーガリンは、一般的にショートニングに含まれるその他の成分を更に含み、酸化防止剤、食塩、エッセンス、色素などの添加物を含むが、これらに限定されるものではない。これらの成分の使用量は本分野の通常の使用量である。
【0110】
通常の予冷、急冷、捏ね上げ、熟成などの方法で本発明のショートニング又はマーガリンを製造してなる。例えば、油相と水相をそれぞれ提供し、油相を溶解させ、油相と水相を混合させ、50~70℃で十分な時間攪拌してから、混合された原料を凝結処理し、例えば、凝結装置に入れ、十分な時間凝結して、本発明のショートニング又はマーガリンを製造してなる。通常、原料の量によって凝結時間を決める。例示的な凝結時間は10~60分間であってもよい。凝結装置の出口温度は10~20℃、好ましくは15~18℃に制御できる。
【0111】
幾つかの実施形態において、本発明は食品を提供し、前記食品に含まれる脂質の全部又は一部は、本発明の第3様態に係る脂質組成物、ショートニング又はマーガリンである。前記食品は、ビスケット、パン、ケーキ、スプレッド、マヨネーズ、ドレッシング、ペストリー、クロワッサン、パルミエなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0112】
幾つかの実施形態において、本発明は、本発明に係る脂質組成物、ショートニング又はマーガリンの、食品脆性の増加や食品保存中の脂質の抽出率の低下における適用、及び生地捏ね時間の短縮における適用、を提供する。前記食品は、特に焼き菓子、例えば、ビスケットであってもよい。前記生地はパンを製造する生地であってもよい。本明細書において、前記生地捏ね時間は、本発明の脂質組成物、ショートニング又はマーガリンの添加から、グルテンの形成まで必要とされる時間である。
【0113】
<第4様態>
本発明の第4様態は、本発明の何れか1つの様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物を含み、或いは、本発明の何れか1つの様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物を含む原料で製造してなる、食品を提供する。
【0114】
本発明の食品において、前記脂質組成物の含有量は食品総重量の1~30%、例えば5~20%であってもよい。
【0115】
本発明の食品は、通常の食品添加剤と調味料など、例えば、食塩、味の素、胡椒、パプリカ、デンプン、食用コロイドなど、を更に含む。
【0116】
幾つかの実施形態において、前記食品は肉製品であり、ソーセージ、ミートボール、ミートパイ、挽き肉を含み、好ましくは、前記肉製品は本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物、好ましくは、第1様態の何れか1つの実施形態に係るトランスグルタミナーゼを含む脂質組成物を含む。本発明は、肉の種類に対して限定せず、製品の必要によって決めるが、鶏肉、鴨肉、豚肉、ロバ肉、牛肉、羊肉などを含むが、これらに限定されるものではなく、必要に応じて1種又は複数種の肉の混合物を使用してもよい。
【0117】
幾つかの実施形態において、前記食品はソーセージであり、前記ソーセージの総質量で計算する場合、前記ソーセージは、5~20%の本発明の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物、好ましくは、第1様態の何れか1つの実施形態に係るトランスグルタミナーゼを含む脂質組成物、を含む。幾つかの実施形態において、前記ソーセージの総質量で計算する場合、前記ソーセージは、肉30~40%、タンパク質2~6%、及び5~20%の前記脂質組成物を含む。本発明は、ソーセージにおける肉の種類に対して限定せず、製品の必要によって決めるが、鶏肉、鴨肉、豚肉、ロバ肉、牛肉、羊肉などの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0118】
幾つかの実施形態において、前記食品は焼き菓子である。好ましくは、前記焼き菓子は、第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物及び/又はショートニング又はマーガリンを含む。好ましくは、前記食品は、ビスケット、パン、ケーキ、スプレッド、マヨネーズ、ドレッシング、ペストリー、クロワッサン、パルミエから選ばれ、第3様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物及び/又はショートニング又はマーガリンを含む。
【0119】
幾つかの実施形態において、前記食品は菜食、例えば、植物肉製品であり、本明細書の第1様態の何れか1つの実施形態に係る脂質組成物を含み、或いは当該脂質組成物を含む原料で製造してなり、好ましくは、前記脂質組成物は、第1様態の何れか1つの実施形態に係るコロイドを含む脂質組成物である。好ましくは、前記食品は、植物肉チキンカツレツ、植物肉ステーキ、植物肉ポークチョップ、植物肉ミートボール、植物肉ミートパイ、又は植物肉挽き肉である。通常、菜食の総重量で計算する場合、前記脂質組成物の含有量は5~15%である。前記菜食、例えば、植物肉製品は、添加可能な食品添加剤と調味料などを添加してもよく、食塩、味の素、胡椒、パプリカ、デンプン、食用コロイドなどの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、前記菜食は植物肉製品であり、前記植物肉製品の総質量で計算する場合、前記植物肉製品は、本発明に係る脂質組成物5~15%を含み、好ましくは、前記植物肉製品の総質量で計算する場合、前記植物肉製品に含まれる大豆由来タンパク質の含有量が50~60%であり、好ましくは、大豆ストリッピングタンパク質38~45%、大豆タンパク質9~15%を含む。
【0120】
<第5様態>
本発明のコロイドを含む脂質組成物において、コロイドとタンパク質との間で発生される静電気作用によって、低飽和度液体脂質を効果的に凝固させて、ハイドロゲルとオレオゲルを含有する製品が取得された。食品の適用、特に植物肉製品の適用において、本発明のコロイドを含む低飽和度含水脂質組成物で製造された植物肉製品は、多汁性、粘着性、咀嚼性などについて、液体脂質よりも優れた性質を持つ。飽和度と脂質摂取量を低下させるとともに、植物肉製品の食感を大幅に向上させた。そのため、幾つかの実施形態において、本発明は、第1様態の何れか1つの実施形態に係るコロイドを含む脂質組成物の、菜食、特に植物肉製品の多汁性、粘着性、咀嚼性の改善や食感の向上における適用、或いは菜食(特に植物肉製品)の多汁性、粘着性、咀嚼性の改善や食感の向上に利用される脂質組成物の製造における適用、を提供する。
【0121】
幾つかの実施形態において、本発明は菜食、特に植物肉製品の多汁性、粘着性、咀嚼性の改善や食感の向上の方法を提供し、当該方法が、本願の第1様態の何れか1つの実施形態に係るコロイドを含む脂質組成物で前記菜食、特に植物肉製品を製造する工程、を含む。
【0122】
本発明の何れか1つの実施形態に係るトランスグルタミナーゼを含む脂質組成物は、その水煮による損失率と焼きによる損失率が低く、硬度が適切であり、成形性が優れ、当該脂質組成物で製造されたソーセージは、一般的な動物性脂質で製造されたソーセージと比較すれば、湿潤性、食感、風味が類似するが、プラントベースを採用するため、当該ソーセージ製品は、肥満や心血管疾患のリスクを低減できる。そのため、本発明は、本発明の何れか1つの実施形態に係るトランスグルタミナーゼを含む脂質組成物の、調理時の水煮による損失と焼きによる損失の減少における適用、及び調理時の水煮による損失と焼きによる損失の減少に繋がる脂質組成物の製造における適用、を更に提供する。
【0123】
以下の実施例により本発明をさらに説明し、本発明の内容は以下の内容によって限定されるものではない。本明細書に記載の実施形態は単に本発明を説明するものであり、本発明の保護範囲に対する限定ではない。本発明の保護範囲は請求の範囲に限定されるものであり、本発明の開示された実施形態に基づいて当業者が行うあらゆる省略、置き換え、修正はすべて本発明の保護範囲に含まれる。
【0124】
以下の実施例において、当該技術分野の通常の機器および装置が使用される。下記実施例における具体的な条件が明示されていない実施例の方法は、通常、一般的な条件、又はメーカに勧められた条件に従う。以下の実施例で使用される各原材料は、特に説明がない限り通常市販品を使用する。本発明の明細書及び下記実施例において、特別な説明がない限り、「%」は重量パーセンテージを示し、「部」は重量部を示す。
【実施例1】
【0125】
本実施例1の各実施例及び比較例に使用される原料は下記の通りである。
大豆油(SBO):Shanghai Kerry Food Industries Co.,Ltd.;
パーム油:Shanghai Kerry Food Industries Co.,Ltd.;
完全水添パーム油(FHPO):Shanghai Kerry Food Industries Co.,Ltd.;
パームステアリン(ST):Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.;
Tg酵素(トランスグルタミナーゼ):味の素株式会社;
ソイプロテインアイソレート(G100):Qinhuangdao JinHai grain and oil industry Co., LTD;
ソイプロテインアイソレート(G300):Qinhuangdao JinHai grain and oil industry Co., LTD;
カラギナン:SeaKem,CM611, 606023002;
変性コーンスターチ:ROQUETTE (China)Nutrition Food Co., Ltd.;
食塩(精製):Shandong Lujing,20-40目;
味の素:Tianfu ajinomoto,グルタミン酸ナトリウム>99%;
白胡椒の粉:McCormick;
砂糖:Korean Corporation;
アルラレッド:Anhui Suzhiwei Biotechnology Co., Ltd.;
ベニコウジ:Jiangxi Hengfeng Food Raw Materials Co., Ltd.;
鶏の胸肉:スーパーマーケットより購入。
タンパク質ケーシング:Haiao。
【0126】
低飽和度脂質組成物の製造
表1の比率で各成分を量り取り、80℃で加熱しながら30min以上攪拌し、対応する油相を取得した。
【0127】
【表1】
表2に示される組成で原料を準備し、製造プロセスは下記の通りである。
工程(1):タンパク質を水に十分に溶解させて、タンパク質水溶液を製造する。
工程(2):高速せん断15,000rpmの条件で脂質をタンパク質水溶液にゆっくりと入れて、O/W乳液を製造する。
工程(3):乳液にTG酵素を入れて、十分に混合させる。
工程(4):40℃で1h加熱し、脂質を成形させる。4℃で保存する。
【0128】
【表2】
脂質組成物の加工性質の測定
正確に量り取った脂質の質量をm
0とし、500mL水で10min茹でて、表面の水分を拭き取った後の質量をmとした場合、脂質の水煮による損失は(m
0-m)/m
0*100%である。
【0129】
正確に量り取った脂質の質量をm0とし、密封条件でオーブンに入れて、140℃で6min焼き、加工過程における揚げを再現する。熱いうちに表面の水分や脂質を拭き取った後の質量をmとした場合、脂質の焼きによる損失は(m0-m)/m0*100%である。
【0130】
テクスチャーアナライザ(イギリスSMS社,TA.XT plus,P/6 6 mm DAI CYLINDER STAINLESS プローブ)により圧縮モードで含水低飽和度脂質の硬度を検出した。測定前速度1.00
mm/sec、測定速度2.00 mm/sec、測定後速度2.00 mm/secである。距離は10mmであり、応力は5gである。
【0131】
上記結果は表3に示される。
【0132】
【表3】
脂質組成物のソーセージにおける適用である。
【0133】
【表4】
製造方法
表4に示される配合で原料を準備し、ソーセージの製造方法は下記の通りである。
工程(1):氷水を半分取り、食塩、リン酸塩を氷水に入れ、完全に溶解させてから、みじん切りにされた鶏の胸肉を入れて、粘度が増加し表面が滑らかになるまで攪拌し、4℃で一晩漬ける。
工程(2):(1)で漬けた後の鶏の胸肉に大豆タンパク質を入れ、攪拌し続ける。攪拌しながら残りの氷水を入れ、更にカラギナン、調味料、色素を入れて、均一に攪拌する。その後、本発明で製造された脂質組成物製品を入れて、均一に攪拌する。最後に、デンプンを入れて、均一に攪拌する。
工程(3):タンパク質ケーシングに詰めて成形させてから、60℃で30min乾燥させ、85℃で20min茹でる。
【0134】
検出方法
官能評価
年齢18-60歳の一般人男女消費者を男女比率1:1でランダムに40名選定して、トレーニングを実施してから、ソーセージの官能評価をした。製造されたソーセージを、それぞれ外観(30%)、湿潤性(40%)、歯ごたえ(30%)から評価した。満点を10点として、点数の高い製品を品質良いものとする。まず、外観について、滑らかさ、完全性、縮みや破裂の有無などの状況を観察した。ソーセージを薄切りにした後、切断面の完全性及び引き締まり方を観察して、歯ごたえ、平らさを判定した。指先でソーセージの薄切りを軽く押し込み、破裂しているか感じて、弾力を判定して、更に押し込んだ後に脂質の染み出しがあるかによって湿潤性を初歩的に判断した。口に入れて咀嚼した後、弾力及び回復力を判断した。ソーセージの粘着性や湿潤性、及び動物性肉ソーセージとの差異を念入りに評価した。
【0135】
評価結果
表5は各実施例及び比較例のソーセージの切断面状態及び食感の評価結果である。
【0136】
【表5】
表5の結果によれば、本発明の実施例で製造された全ての製品は、優れた形状保持性を有するとともに、豚の脂肪の外観と湿潤性の食感を好適に再現できる。比較例1、3は、オイルベース飽和度及び固体脂質が比較的に低く、形状保持性が優れるとともに脂質が適切に流出する前提で、流出された大豆油が系統に対する湿潤効果が限定的であり、豚の脂肪から流出された動物性脂質との差異が比較的に大きい。比較例2、4、5は冷却した後に脂質が凝固した。考えられる原因は、飽和度が高すぎるほかに、系統全体の加工過程における脂質の流失が大きいため、パーム油とパームステアリンが系統に充満するとともに、融点よりも低い温度で固体脂質が形成されるため、豚の脂肪の外観と食感を再現できない。比較例6、7は脂質の形状保持性が劣るため、加工過程において粒子の形状保持性が悪く、大量の脂質が流出し、乳化してソーセージの乳化肉に進入し、ソーセージの食感に影響を与えた。比較例8は豚の脂肪であり、対照とする。
【0137】
表6は実施例及び比較例で得られたソーセージテクスチャーの検出結果である。
【0138】
【表6】
表6の結果によれば、実施例は弾力と咀嚼性などについて、より優れた性能を示した。優れた形状保持性及び加工過程における適切な脂質損失は、ソーセージ系統のより優れた粘着性と湿潤性に繋がるため、豚の脂肪などの動物性脂質製品に類似する。比較例で製造されたソーセージは、弾力や回復力の欠如が一般的であるため、咀嚼中に肉製品の特有な食感を提供できないと推測する。
【0139】
製品の外観、粒子完全性、食感の3つの観点から官能評価して得られた各実施例と比較例の総評価点数は表6に示される。結果によれば、実施例で製造された全てのソーセージの総評価点数が8点以上であるため、本発明で取得されたソーセージは全体的に好評を受けた。比較例について、豚の脂肪を除く全ての製品の総評価点数が6点以下であるため、受験者から好かれていない。
【0140】
このように、含水低飽和度脂質の加工性質と製品の官能評価結果によれば、本発明で製造された低飽和度脂質は、食品の動物性脂質である豚の脂肪に代用できるほかに、低脂低飽和度の特徴を有し、より優れた製品外観及び湿潤性の食感を提供できる。
【実施例2】
【0141】
本実施例2に関わる各実施例及び比較例に使用される原料は下記の通りである。
大豆油(SBO):Shanghai Kerry Food Industries Co.,Ltd.,2020.11.03;
シアオレイン(Shea Olein):Shanghai Kerry Food Industries Co.,Ltd.,2018.8.2;
パーム油:Shanghai Kerry Food Industries Co.,Ltd.;
高オレイン酸ヒマワリ種子油(HOSFO):Cargill Grain and Oil Nantong Co.,Ltd.;
スーパーパームステアリン(Hard ST):Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.,2020.11.28;
パームステアリン(ST):Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.,2020.11.28;
カゼインナトリウム:Fonterra;
大豆タンパク質706Z:Qinhuangdao JinHai grain and oil industry Co., LTD,2021.4.09;
大豆タンパク質307(12ウェル):Qinhuangdao JinHai grain and oil industry Co., LTD,2021.4.09;
ソイプロテインアイソレート(G100):Qinhuangdao JinHai grain and oil industry Co., LTD;
カラギナン:SeaKem,CM611, 606023002,2021.3.21;
アルギン酸ナトリウム:Huake;
ペクチン:Henan Beicheng food Co., LTD;
ラタンペッパーオイル:Arawanaラタンペッパーオイル;
大豆タンパク質(SS):Qinhuangdao JinHai grain and oil industry Co., LTD,2021.10.07;
卵白パウダー:Jiangsu Changjing,98%;
変性デンプン:Starpro,アセチル化アジピン酸架橋デンプン,99%;
精製塩:Shandong Lujing,20-40目;
味の素:Tianfu ajinomoto,グルタミン酸ナトリウム>99%;
I+G(二ナトリウム 5'-リボヌクレオチド):CJ,99%;
白胡椒の粉:McCormick;
砂糖:Korean Corporation;
エッセンス:Fimenich鶏肉味の食品級エッセンス。
【0142】
使用される主要設備は下記の通りである。
ハンバーグ成形機:SA130,イタリアsirman。
【0143】
低飽和度脂質組成物の製造
表7の比率で各成分を量り取り、80℃で加熱しながら30min以上攪拌し、対応する油相を取得した。
【0144】
飽和度の測定方法
ガスクロマトグラフィーにより脂肪酸の組成を測定した。AOCS Official Methods Ce 1b-89 Reapproved 1997を参照。飽和脂肪酸の比率を飽和度とする。
【0145】
固体脂質含有量の測定方法:
「GB/T 37517-2019 動物性脂質及び植物性脂質
パルスNMRによる固体脂肪含有量の測定 間接法」を参照。
【0146】
【表7】
表8に示される組成で原料を準備し、製造プロセスは下記の通りである。
工程(1):カゼインナトリウムを水に十分に溶解させて、カゼインナトリウム水溶液を製造する。
工程(2):せん断速度15000rpmの条件で10minせん断し、液体脂質をタンパク質水溶液にゆっくりと入れて、O/W乳液を製造する。
工程(3):乳液にカラギナンを入れて、十分に混合させる。
工程(4):室温で静置して、脂質を成形させる。4℃で保存する。
【0147】
【表8】
脂質組成物の加工性質の測定
正確に量り取った脂質の質量をm
0とし、500mL水で10min茹でて、表面の水分を拭き取った後の質量をmとした場合、脂質の水煮による損失は(m
0-m)/m
0*100%である。
【0148】
正確に量り取った脂質の質量をm0とし、密封条件でオーブンに入れて、140℃で6min焼き、加工過程における揚げを再現する。熱いうちに表面の水分や脂質を拭き取った後の質量をmとした場合、脂質の焼きによる損失は(m0-m)/m0*100%である。
【0149】
テクスチャーアナライザ(イギリスSMS社,TA.XT plus,P/6 6 mm DAI CYLINDER STAINLESS プローブ)により圧縮モードで含水低飽和度脂質の硬度を検出した。測定前速度1.00
mm/sec、測定速度2.00 mm/sec、測定後速度2.00 mm/secである。距離は10mmであり、応力は5gである。
【0150】
上記結果は表9に示される。
【0151】
【表9】
表9の結果によれば、全ての実施例は加工過程における系統が比較的に安定しており、脂質の損失が比較的に少なく、チキンカツレツ系統における脂質の残留が好適に確保されるとともに、最終的に多汁の食感を提供できる。これに対して、比較例は、通常、加工過程における脂質の大量損失が発生され、損失された脂質が乳化し、そのままチキンカツレツの乳化肉に進入して、湿潤作用を提供できなくなったり、揚げなどの過程においてそのまま流失したりする。脂質の飽和度及びカラギナン-カゼインナトリウムにより形成されたゲル乳液の安定性は、脂質の保持に対して重要な作用を果たしている。比較例9、11は、飽和度30以下の脂質をオイルベースとしたため、脂質の保持率が比較的に高いが、自身の飽和度が低いことから、湿潤の食感に対する作用が高飽和度脂質と比較すれば、顕著ではない。比較例13は捏ねによる損失が最も小さい。これは、オイルベースの飽和度が高すぎて、乳液系統から離れてから間もなく凝固し、脂質の流失を効果的に測定できないためである。
【0152】
脂質組成物の植物肉チキンカツレツにおける適用
【0153】
【表10】
製造方法
表10に示される配合で原料を準備し、植物肉チキンカツレツの製造方法は下記の通りである。
工程(1):大豆タンパク質307、706Z(硬)を復水する。307を脱水してから12ウェルプレートでみじん切りにし、復水率(脱水後質量/乾物質量)がおおよそ2.8倍である。706Zを復水してからストリッピングし、復水率がおおよそ2.8倍である。葱姜水を玉ねぎ:生姜:水の比率1:1:1.5で調製し、その他の原料を量り取り、使用に備える。
工程(2):大豆タンパク質、葱姜水、乾燥粉末の添加物、脂質、調味料、エッセンスをこの順で添加して、均一に混合させる。
工程(3):ハンバーグ成形機で成形させる。1個の重量が65gである。85℃で25min蒸し煮して、肉だねを作る(真空抽出せず)。
工程(4):小麦粉、卵白、パン粉をこの順でコーティングして、145℃で40秒間揚げてから、冷却して、急速冷凍する。
【0154】
検出方法
官能評価
年齢18-60歳の一般人男女消費者を男女比率1:1でランダムに40名選定して、トレーニングを実施してから、植物肉チキンカツレツの官能評価をした。製造された植物肉チキンカツレツを、それぞれ外観(30%)、湿潤性(40%)、歯ごたえ(30%)から評価した。満点を10点として、点数の高い製品を品質良いものとする。
【0155】
評価結果:
表11は実施例及び比較例の植物肉チキンカツレツの切断面状態及び食感の評価結果である。
【0156】
【表11】
表11の結果によれば、本発明の実施例で得られた全ての製品は、顕著なタンパク質の植物性組織化、比較的に強い歯ごたえ、優れた脂質の湿潤性を提供できる。比較例9、11は、脂質の融点が低く、加工過程においてより多くの脂質が抽出して、チキンカツレツにおける湿潤作用を果たす脂質が減少したため、湿潤性が悪い。比較例10、12、13は冷却した後に脂質が凝固した。考えられる原因は、パームステアリン飽和度が高すぎるほかに、系統全体の加工過程における脂質の流失が大きいため、パームステアリンが系統に充満するとともに、融点よりも低い温度で固体脂質が形成される。これは油っ濃さや滑らかでない食感に繋がる。比較例12-16は顕著なタンパク質の植物性組織化が形成されていない。O/Wエマルション系統が不安定であることから、加工過程において大量の脂質が流出し、乳化して植物肉チキンカツレツの乳化肉に進入し、植物性組織化タンパク質を覆うためである。これは歯ごたえのない食感に繋がる。比較例17はパーム油であり、効果が比較的に優れるが、飽和脂質の含有量が明らかに高い。
【0157】
【表12】
それぞれ製品の外観、粒子感、食感の3つの観点から官能評価して得られた各実施例と比較例の総評価点数は表12に示される。結果によれば、全ての実施例の植物肉チキンカツレツの総評価点数が7点以上であるため、本発明で取得された植物肉チキンカツレツは全体的に好評を受けた。比較例について、全ての製品の総評価点数が6点以下であるため、受験者から好かれていない。
【0158】
上記によれば、含水低飽和度脂質の加工性質と製品の官能評価結果によれば、本発明で製造された低飽和度脂質は、植物肉チキンカツレツなどの菜食類製品に適用されるほかに、低脂低飽和度の特徴を有し、より優れた製品の食感を提供できる。
【0159】
下記実施例3~12で使用される原料の供給元は下記の通りである。
パーム油1:ヨウ素価(AV)15 g/100 g、Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.;
パーム油2:ヨウ素価(AV)33 g/100 g、Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.;
パーム油3:ヨウ素価(AV)19 g/100 g、Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.
シアオレイン1:ヨウ素価(AV)67 g/100 g、PGEO Edible Oils Sdn Bhd;
シアオレイン2:ヨウ素価(AV)35 g/100 g、PGEO Edible Oils Sdn Bhd;
シアオレイン3:ヨウ素価(AV)51 g/100 g、PGEO Edible Oils Sdn Bhd;
SBO(大豆油):Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.;
HOSFO(高オレイン酸ヒマワリ種子油):Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.;
花旗ショートニング:Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.;
金味マーガリン:Kerry Speciality Fats (Shanghai) Ltd.;
グラニュレステン:Qinhuangdao JinHai grain and oil industry Co., LTD;
モノグリセリド:Dupont Danisco (China) Co. LTD,型番HS-C;
低グルテン小麦粉:Yihai kerry (kunshan) Foodstuffs Industries Co.,Ltd ,Huaguブランド;
高グルテン小麦粉:Yihai kerry (kunshan) Foodstuffs Industries Co.,Ltd ,Lanjinshanブランド;
高活性ドライイースト:Angel Yeast Corporation;
パン改良剤A300:Angel Yeast Corporation;
ベーキングパウダー:Angel Yeast Corporation;
エマルジョンパウダー:Fonterra Trading (Shanghai) Co., LTD;
精製塩:China National Salt Industry Corporation;
精製砂糖:Korean Corporation。
【実施例3】
【0160】
実施例3:低飽和度脂質組成物の製造
低飽和度脂質組成物の配合は下記表13に示される。表13の比率で各成分を量り取り、80℃で加熱しながら30min以上攪拌し、対応する脂質組成物を取得した。
【0161】
【実施例4】
【0162】
実施例4:脂質組成物の飽和度、TAG(PPP、SOS)及びオイルベース状態の評価
飽和度の検出
ガスクロマトグラフィーにより脂肪酸の組成を測定した。AOCS Official Methods Ce 1b-89 Reapproved 1997を参照。飽和脂肪酸の含有量が飽和度である。
【0163】
PPP及びSOS含有量の検出
ガスクロマトグラフィーによりトリグリセリドの組成を測定した。AOCS Official Methods Ce 5-86 Reapproved 1997を参照。PPP、SOS含有量を取得した。
【0164】
各脂質組成物の飽和度、TAG(PPP、SOS)及び脂質組成物状態は下記表14に示される。
【0165】
【表14】
注記:Pはパルミチン酸であり、Sはステアリン酸であり、Oはオレイン酸である。PPPは3つのP分子と結合するトリグリセリドである。SOSは1位、3位でステアリン酸と結合し、2位でオレイン酸と結合する。
【実施例5】
【0166】
実施例5:ショートニング又はマーガリンの製造
脂質組成物はショートニング又はマーガリンの製造に使用される。具体的な配合は下記表15に示される。
【0167】
【表15】
実施例14-15と比較例18-19の製造方法は下記の通りである。
(1)表15に応じて油相を量り取り、75℃で完全溶解させ、65℃で保温して、使用に備える。
(2)凝結装置に入れ、20~30min(出口温度を16℃前後に制御)凝結して、サンプルを取り出し、室温で保存する。
【0168】
実施例16-18と比較例20の製造方法は下記の通りである。
(1)表15に応じて油相と水相をそれぞれ量り取り、油相を75℃で完全溶解させ、65℃で保温して、使用に備える。
(2)油相を水相に注ぎ、50~70℃で20~50min攪拌する(500~1500 rpm)。
(3)凝結装置に入れ、20~30 min(出口温度を16℃前後に制御)凝結して、サンプルを取り出し、室温で保存する。
【実施例6】
【0169】
実施例6:ビスケットの製造
ビスケットの配合は下記表16に示され、下記方法で製造する。
(1)原料の準備:低グルテン小麦粉、ベーキングパウダーを量り取り、まな板の一方に置く。粉砂糖を量り取り、単独でまな板の他方に置く。脂質を量り取り、スクレーパーに置く。
(2)原料の捏ね合せ:油、砂糖を混ぜ、片手で捏ね合せ、別の片手でスクレーパーで調製する。小麦粉、ベーキングパウダーを入れ、生地を捏ねこむ。生地を紙で覆い、伸ばしに備える。
(3)伸ばし:マニュアルモードを選択して、循環スイッチを切る。伸ばす前に保護用カバーを降ろし、伸ばし方向を選択する。高さを選択して、上から押し込んで伸ばす。通常、10mmから押し込み、ビスケットが3.8mmになるまで伸ばす。冷凍庫に15min置いてから、モールドで一定の形状になるように伸ばす(作業中に生地が解凍した場合、更に冷凍してから作業を続けても良い)。
(4)焼き:160℃、9minで焼く。終了後にカウントを止め、耐熱手袋で耐熱皿を取り出す。
【0170】
【実施例7】
【0171】
実施例7:ビスケット硬度と脆性の測定
テクスチャーアナライザで分析する。測定条件は、P/30Rプローブ、測定前速度2.0 mm/s、測定速度1.0 mm/s、測定後速度:2.0 mm/s、圧縮度30%である。結果は下記表17に示される。
【実施例8】
【0172】
実施例8:ビスケット脂質抽出率の測定
焼きたてのビスケットをろ紙に置き、室温で2日間静置して、ビスケットを置く前後のろ紙の質量をそれぞれ量る。
【0173】
工程は下記の通りである。きれいなろ紙を量り、質量をaとする。ビスケットをろ紙に置いた後に更に量り、質量をbとする。室温で2日間静置した後に、ビスケットサンプルを取り除き、残されたろ紙を量り、質量をcする。ビスケットの脂質抽出率は下記の算式で算出される。
【0174】
【数1】
式中に、aはきれいなろ紙の質量(g)である。bはビスケットサンプルとろ紙の総質量(g)である。cは抽出した油とろ紙の総質量(g)である。
【0175】
ビスケットの硬度、脆性、脂質抽出率は下記表17に示される。
【0176】
【表17】
表17の結果によれば、実施例14-18と比較例18-22で製造されたビスケットは、硬度について顕著な差異はない。比較例18-20で製造されたビスケットは、脆性が比較的に小さく、脂質の抽出がとても顕著であり、2.5%以上である。実施例14-18と比較例21-22で製造されたビスケットは、脂質の抽出率が比較的に低く、1%以下である。比較例21の花旗ショートニングと比較例22の金味マーガリンは、汎用ベーキング用脂質であり、その飽和度が50%よりも高い。そのため、本発明の脂質組成物12-16で製造された各ベーキング用脂質だけは、低飽和度の特徴を有し、ビスケットにおいて優れた適用効果があり、ビスケットの脆性を増加させるだけでなく、保存中ビスケットの脂質の抽出率も顕著に低減できる。
【実施例9】
【0177】
実施例9:パンの配合及びプロセス
パンの配合は表18に示され、下記方法で製造する。
(1)原料の準備:配合の乾燥原料を生地こね機に入れて混ぜる。
(2)湿潤原料を入れて、生地を展延性が出るまで捏ね続ける。
(3)脂質を入れ、脂質と生地を均一に混ぜて、グルテンが形成するまで捏ね続ける。
(4)捏ね上がった生地を室温で20-30min緩ませる。
(5)分割して形を整え、更に室温で20-30min緩ませる。
(6)発酵器に入れて、温度33-35℃、湿度75%で1時間寝かせる。
(7)焼き:オーブンに入れて、上火210℃、下火175℃で30min焼く。
【0178】
【実施例10】
【0179】
実施例10:パン外観状態(高さ、高径比、容積比)の測定
体積測定器でパンやマントウの高さ、幅(直径)、質量を測定し、計算により高径比、容積比を取得し、結果は表19に示される。
【実施例11】
【0180】
実施例11:パンテクスチャーの測定
まず、製造されたパンサンプルをパンスライサーで10mm厚みの薄切りに切ってから、TPA測定を実施する。パン測定条件は、P/36R型円柱平底プローブ、測定前速度1.0 mm/s、測定速度5.0 mm/s、測定後速度5.0 mm/sである。プローブが5.0gの力を感知した場合、下へ10.00mm押し込む。
【0181】
パンの外観状態(高度、高径比、容積比)及びテクスチャーの測定結果は、下記表19に示される。
【0182】
【表19】
表19の結果によれば、比較例21-22(汎用ベーキング用脂質)と比較すれば、実施例14-18で製造されたパンは、外観状態とテクスチャーについて、顕著な差異はない。即ち、本発明の脂質組成物で製造された各ベーキング用脂質は、パンの外観状態及びテクスチャーに対して顕著な影響はないが、低飽和度の特徴を有する。
【実施例12】
【0183】
実施例12:生地捏ね時間
パン製造(捏ね過程)中に、脂質の添加からグルテンの形成まで必要とされる時間、即ち、生地捏ね時間をそれぞれ記録し、結果は表20に示される。
【0184】
【表20】
表20の結果によれば、パンのベーキングにおいて、比較例18-20と比較すれば、実施例14-18のベーキング用脂質は、生地の捏ね時間を顕著に短縮できる。即ち、本発明の脂質組成物12-16で製造された各ベーキング用脂質は、パンのベーキングにおいて、生地の捏ね時間を効果的に短縮でき、その生地の捏ね時間が比較例21-22(汎用ベーキング用脂質)に近いが、低飽和度の特徴を有する。
【0185】
上記によれば、本発明の脂質組成物の飽和度が25-32%と低く、当該組成物が室温における固体であり、当該組成物で製造された各ベーキング用脂質は、ビスケットベーキング中にビスケットの脆性を増加させるとともに、ビスケット保存中の脂質の抽出率を明らかに低下させるが、パンベーキング中に生地の形成時間を明らかに短縮させ、作業コストを低下させる。
【国際調査報告】