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特表2024-545479パーソナルケア組成物又は医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】パーソナルケア組成物又は医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/455 20060101AFI20241129BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20241129BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61K31/455
A61K8/67
A61K8/44
A61Q19/00
A61P43/00 121
A61P17/02
A61K31/198
A61K9/107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539291
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2022085284
(87)【国際公開番号】W WO2023126161
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/143517
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】22153549.5
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】グ,シュエラン
(72)【発明者】
【氏名】ミ,ティンヤン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC19
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD631
4C083AD632
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC12
4C083DD08
4C083DD17
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD33
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE13
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC19
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA58
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA14
4C206MA42
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
ビタミンB3化合物及びカルボキシメチルシステイン化合物を含むパーソナルケア組成物又は医薬組成物であって、前記ビタミンB3化合物の前記カルボキシメチルシステイン化合物に対する重量比が少なくとも6:1である組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB3化合物及びカルボキシメチルシステイン化合物を含むパーソナルケア又は医薬組成物であって、前記ビタミンB3化合物の前記カルボキシメチルシステイン化合物に対する重量比が少なくとも6:1である組成物。
【請求項2】
前記カルボキシメチルシステイン化合物がカルボキシメチルシステイン、カルボキシメチルシステインのエステル、及び/又はカルボキシメチルシステインの塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カルボキシメチルシステイン化合物がカルボキシメチルシステインの塩を含み、好ましくは前記カルボキシメチルシステイン化合物がリジンカルボキシメチルシステイナートを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルボキシメチルシステイン化合物が前記組成物の少なくとも0.00001重量%及び10重量%以下の量で存在し、好ましくはカルボキシメチルシステイン化合物が前記組成物の少なくとも0.01重量%及び3重量%以下の量で存在する、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビタミンB3化合物がナイアシン、ナイアシンアミド又はそれらの混合物を含み、好ましくは前記ビタミンB3化合物がナイアシンアミドである、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ビタミンB3化合物が前記組成物の少なくとも0.00001重量%及び10重量%以下の量で存在し、好ましくは前記ビタミンB3化合物が前記組成物の少なくとも0.001重量%及び5重量%以下の量で存在する、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ビタミンB3化合物の前記カルボキシメチルシステイン化合物に対する重量比が6:1~10000:1、好ましくは6:1~100:1である、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ビタミンB3化合物の前記リジンカルボキシメチルシステイナートに対する重量比が6:1~10000:1、好ましくは7:1~50:1である、請求項3~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が乳濁液、好ましくは水中油型乳濁液である、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が当該組成物の10~96重量%、好ましくは当該組成物の42~88重量%の量で水を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
皮膚創傷の治療で使用するための、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
皮膚創傷を治癒及び/又は軽減し;及び/又は皮膚を再生する方法であって、前記皮膚に前記請求項のいずれか1項に記載の組成物を局所適用する段階を含む方法。
【請求項13】
皮膚創傷を治癒及び/又は軽減し;及び/又は皮膚を再生するための請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚創傷治癒及び/又は皮膚再生のためのビタミンB3化合物及びカルボキシメチルシステイン化合物を含むパーソナルケア又は医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は人体の主要なバリアであり、紫外線、汚染物質、温度などの外部環境によって引き起こされる刺激から体内の臓器を保護する。
【0003】
創傷治癒とは、傷ついた皮膚組織の修復である。創傷治癒の遅れ及び障害は、美容上の問題や、潰瘍などの重度の医学的状態さえ引き起こし得る。従って、創傷治癒を改善する処置は、美容用途及び医薬用途の両方で重要である。創傷治癒時には、さまざまな反応が関与している。ケラチノサイトの移動は、創傷治癒又は皮膚再生の特に重要なプロセスの一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明者らは、創傷治癒及び/又は皮膚再生のためにケラチノサイトの移動速度を向上させる解決策を開発する必要性があることを認識した。驚くべきことに、ビタミンB3化合物を特定の重量比で組み合わせることにより、ケラチノサイトの移動速度が大幅に向上することがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、ビタミンB3化合物及びカルボキシメチルシステイン化合物を含むパーソナルケア又は医薬組成物であって、前記ビタミンB3化合物の前記カルボキシメチルシステイン化合物に対する重量比が少なくとも6:1である組成物に関する。
【0006】
第2の態様において、本発明は、皮膚創傷を治癒及び/又は軽減し;及び/又は皮膚を再生する方法であって、前記皮膚に前記本発明の組成物を局所適用する段階を含む方法に関するものである。
【0007】
第3の態様において、本発明は、皮膚創傷を治癒及び/又は軽減し;及び/又は皮膚を再生するための本発明の組成物の使用に関するものである。
【0008】
本発明の他のすべての態様は、以下の詳細な説明及び実施例を考慮すると、より容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例を除いて、又は別断で明瞭に示されている場合を除いて、材料の量又は反応条件、材料の物性、及び/又は使用を示す本説明における全ての数字は、「約」という単語によって修飾されているものと理解されても良い。
【0010】
別断の断りがない限り、すべての量は組成物の重量基準である。留意すべき点として、値の範囲を特定する場合、特定の上限値を特定の下限値に関連付けることができる。
【0011】
誤解を避けるために、「含む(comprising)」という言葉は、「含む(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「構成されている(composed of)」とは限らない。言い換えれば、列記された段階又は選択肢は網羅的である必要はない。
【0012】
請求項は複数の従属や重複なしで見付かり得るという事実にかかわらず、本明細書中に見られる本発明の開示は、互いに多項従属した請求項中に見出される全ての実施形態をカバーするものと考えるべきである。
【0013】
本発明の特定の態様(例えば、本発明の組成物)に関して、ある特徴が開示される場合、そのような開示はまた、必要な変更を加えて本発明のいずれか他の態様(例えば、本発明の方法)に適用されると見なされるべきである。
【0014】
本明細書で用いられるビタミンB3化合物には、ナイアシン、ナイアシンアミド、ニコチニルアルコール、それらの誘導体、前述のいずれかの塩、及びそれらの混合物も含まれる。誘導体には、代表的には、ニコチン酸エステル、カルボン酸のニコチニルアルコールエステル、ナイアシンアミドN-オキサイド、ニコチニルアミノ酸、及び/又はニコチン酸n-オキサイドが含まれる。好ましくは、ビタミンB3化合物には、ナイアシン、ナイアシンアミド、又はそれらの混合物が含まれる。より好ましくは、ビタミンB3化合物は、ナイアシン、ナイアシンアミド、又はそれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、ビタミンB3化合物には、ナイアシンアミドが含まれ、最も好ましくは、ビタミンB3化合物は、ナイアシンアミドである。
【0015】
好ましくは、ビタミンB3化合物は、組成物の少なくとも0.00001重量%、より好ましくは少なくとも0.0001重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.001重量%、さらにさらに好ましくは少なくとも0.01重量%、最も好ましくは少なくとも0.03重量%の量で存在する。代表的には、ビタミンB3化合物は、組成物の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらにさらに好ましくは0.5重量%以下の量で存在する。好ましくは、ナイアシンアミドは、組成物の少なくとも0.00001重量%、より好ましくは少なくとも0.0001重量%、さらにさらに好ましくは少なくとも0.001重量%、さらにさらにさらに好ましくは少なくとも0.01重量%、最も好ましくは少なくとも0.03重量%の量で存在する。代表的には、ナイアシンアミドは、組成物の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下の量で存在する。
【0016】
前記カルボキシメチルシステイン化合物は、カルボキシメチルシステイン、カルボキシメチルシステインの塩、カルボキシメチルシステインのエステル、カルボキシメチルシステインのアミド又はそれらの混合物から選択される化合物を指す。好ましくは、カルボキシメチルシステイン化合物は、カルボキシメチルシステイン、カルボキシメチルシステインのエステル、及び/又はカルボキシメチルシステインの塩を含む。より好ましくは、カルボキシメチルシステイン化合物はカルボキシメチルシステイン、及び/又はカルボキシメチルシステインの塩を含む。さらにより好ましくは、カルボキシメチルシステイン化合物は、カルボキシメチルシステインの塩を含む。さらにより好ましくは、カルボキシメチルシステイン化合物はリジンカルボキシメチルシステイナートを含み、最も好ましくは、カルボキシメチルシステイン化合物はリジンカルボキシメチルシステイナートである。
好ましくは、カルボキシメチルシステイン化合物は、組成物の少なくとも0.0000重量1%、より好ましくは少なくとも0.0001重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.001重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.01重量%、最も好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在する。好ましくは、カルボキシメチルシステイン化合物は、組成物の10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらにより好ましくは3重量%以下、さらにより好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下の量で存在する。
【0017】
好ましくは、リジンカルボキシメチルシステイナートは、組成物の10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらにより好ましくは3重量%以下、さらにより好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下の量で存在する。好ましくは、リジンカルボキシメチルシステイナートは、組成物の少なくとも0.00001重量%、より好ましくは少なくとも0.0001重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.001重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.01重量%、最も好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在する。
【0018】
好ましくは、前記ビタミンB3化合物の前記カルボキシメチルシステイン化合物に対する重量比は、6:1~10000:1、より好ましくは6:1~1000:1、さらにより好ましくは6:1~100:1、さらにより好ましくは7:1~50:1、最も好ましくは8:1~20:1である。好ましくは、前記ビタミンB3化合物の前記リジンカルボキシメチルシステイナートに対する重量比は6:1~10000:1、より好ましくは6:1~1000:1、さらにより好ましくは6:1~100:1、さらにより好ましくは7:1~50:1、最も好ましくは8:1~20:1である。
【0019】
組成物は、任意に、ホワイトニング顔料を含んでいてもよい。ホワイトニング顔料は、代表的には、高屈折率材料の粒子である。例えば、ホワイトニング顔料は、1.3より大きい、より好ましくは1.8より大きい、最も好ましくは2.0~2.7の屈折率を有することができる。このようなホワイトニング顔料の例としては、オキシ塩化ビスマス、窒化ホウ素、硫酸バリウム、雲母、シリカ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、又はそれらの組み合わせを含むものがある。より好ましいホワイトニング顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、雲母、酸化鉄、又はそれらの組み合わせを含む粒子である。さらにより好ましいホワイトニング顔料は、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、又はそれらの組み合わせを含む粒子であり、これらの材料が特に高い屈折率を有するからである。さらに好ましくは、ホワイトニング顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、又はそれらの混合物から選択され、最も好ましいホワイトニング顔料は二酸化チタンである。ホワイトニング顔料の平均直径は、代表的には15nm~1ミクロン、より好ましくは35nm~800nm、さらにより好ましくは50nm~500nm、さらにより好ましくは100~300nmである。ホワイトニング顔料の量は、組成物の0.1~15重量%、好ましくは0.5~5重量%であることができる。
【0020】
好ましくは、組成物は、グルタミン、グルタミンエステル、グルタミン酸、ピログルタミン酸、塩、及びそれらの混合物からなる群から選択されるグルタミン酸源を含む。より好ましくは、組成物は、ピログルタミン酸及び/又はピログルタミン酸の塩を含む。さらにより好ましくは、組成物は、ピログルタミン酸のナトリウム塩を含む。好ましくは、グルタミン酸源は、組成物の0.0001~10重量%、より好ましくは組成物の0.001~6重量%、さらにより好ましくは0.01~3重量%の量で存在する。
【0021】
好ましくは、組成物は多価アルコールを含む。多価アルコールは、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、エトキシル化グリセロール、プロポキシル化グリセロール、又はそれらの混合物の群から選択することができる。最も好ましい多価アルコールは、グリセリンとしても知られるグリセロールである。多価アルコールの量は、組成物の0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは2~10重量%の範囲であることができる。
【0022】
好ましくは、組成物は皮膚軟化材料を含む。好適な皮膚軟化材料には、シリコーン、炭化水素、トリグリセリド又はそれらの混合物などがある。これらのシリコーンは、有機、シリコーン含有又はフッ素含有、揮発性又は非揮発性、極性又は非極性であってもよい。炭化水素には、鉱油、ワセリン及びポリα-オレフィンなどがあり得る。好ましい揮発性炭化水素の例には、イソドデカン及びイソデカンなどのポリデカン(例えば、Presperse Inc.から入手可能なPermethyl-99A)及びC7-C8~C12-C15のイソパラフィン(例えば、Exxon Chemicalsから入手可能なIsoparシリーズ)などがある。例示的なトリグリセリドには、ヒマワリ種子油、綿実油、菜種油、大豆油、ヒマシ油、ルリヂサ油、オリーブ油、シアバター、ホホバ油及びそれらの混合物があるが、これらに限定されるものではない。モノグリセリド及びジグリセリドも有用であり得る。特に好ましいのは、モノステアリン酸グリセリル及びジステアリン酸グリセリルである。
【0023】
好ましくは、組成物は保湿剤を含む。特に好ましい保湿剤としては、ワセリン、アクアポリン操作(manipulating)活性物質、カラスムギ穀粒粉、ヒドロキシエチル尿素などの置換された尿素、ヒアルロン酸及び/又はその前駆体であるN-アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸及び/又はその前駆体であるN-アセチルグルコサミン、又はそれらの混合物などがある。
【0024】
一部の組成物は増粘剤を含むことができる。これらは、セルロース誘導体、天然ゴム及びアクリルポリマーから選択することができるが、この増粘剤の種類によって限定されない。セルロース誘導体には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びそれらの組み合わせがある。適切なガムには、キサンタン、ペクチン、カラヤ、寒天、アルギン酸ガム及びそれらの組み合わせなどがある。アクリル系増粘剤の中には、Lubrizol Corporationから入手可能なCarbopol 1382、Carbopol 982、Ultrez、Aqua SF-1及びAqua SF-2などのカルボマー等のアクリル酸及びメタクリル酸のホモポリマー及びコポリマーがある。増粘剤の量は、組成物中の活性ポリマー(溶媒又は水を除く)の0.01~3重量%の範囲であることができる。
【0025】
さらに、本発明の組成物はさらに、0.5~10重量%のエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA)、EHDP又は混合物などの金属イオン封鎖剤;エチレングリコールジステアレート、二酸化チタン、又はLytron 621(スチレン/アクリレートコポリマー)などの乳白剤及びパール光沢剤を含むことができ、これらはすべて、製品の外観や特性を向上させるのに有用である。
【0026】
当該組成物は、組成物の10~96重量%、より好ましくは26~92重量%、さらにより好ましくは42~88重量%、最も好ましくは55~82重量%の量で水を含むことができる。
【0027】
好ましくは、当該組成物は、約20s-1の比較的高いせん断速度で20℃で測定した場合に、少なくとも10mPa・s、より好ましくは30~10000mPa・sの範囲、さらにより好ましくは50~5000mPa・s、最も好ましくは100~2000mPa・sの粘度を有する。好ましくは、当該組成物は、流体の形態である。
【0028】
好ましくは、当該組成物は乳濁液であり、より好ましくは水中油型乳濁液である。スキンケア組成物とは、ヒトの皮膚に局所適用するのに適した組成物を指し、リーブオン製品及びウォッシュオフ製品を含むが、好ましくはリーブオン組成物である。本明細書において組成物に関して使用される「リーブオン」という用語は、皮膚に適用されるか又は擦り込まれ、その上に放置される組成物を意味する。本明細書において組成物に関して使用される「ウォッシュオフ」という用語は、皮膚に適用されるか又は皮膚に擦り込み、適用後直ちにほぼ洗い流される皮膚洗浄剤を意味する。好ましくはスキンケア組成物は、流動性の液体を意味し、特には、メイクアップ製品ではなく保湿剤を意味する。
【0029】
好ましくは、パーソナルケア組成物はスキンケア組成物である。本明細書で使用される「皮膚」という用語は、顔、首、胸、腹部、背中、腕、脇の下、手、及び足の皮膚を含む。好ましくは、「皮膚」は、顔及び脇の下を含み、より好ましくは、皮膚は唇及びまぶた以外の顔面の皮膚を意味する。
【0030】
好ましくは、当該組成物は局所組成物である。好ましくは、当該組成物は、クリーム、ローション、軟膏、液剤、懸濁液、乳濁液、ペースト、ジェル、粉剤、粉末ファンデーション、乳液ファンデーション、ワックスファンデーション、又はスプレーの形態であることができる。より好ましくは、組成物は、クリーム、ローション、軟膏、乳濁液、ジェル、又はスプレーの形態で製剤することができる。
【0031】
本発明はまた、皮膚創傷の治癒及び/又は緩和、及び/又は皮膚の再生のための医薬品の製造における、ビタミンB3化合物のカルボキシメチルシステイン化合物に対する重量比が少なくとも6:1である、ビタミンB3化合物及びカルボキシメチルシステイン化合物の使用を提供する。
【0032】
好ましくは、当該使用は非治療的である。好ましくは、当該方法は非治療的である。非治療的という用語は、代表的には美容目的であり、治癒目的でも治療目的でもないことを意味する。
【0033】
以下の実施例は、本発明の理解を容易にするために提供されるものである。これら実施例は、特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例
【0034】
材料
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1
本実施例は、ビタミンB3化合物を特定の比率で組み合わせることで、創傷治癒効果が向上することを実証するものである。
【0037】
表皮ケラチノサイトの移動は、創傷治癒時の皮膚の再上皮化の基礎である。初代ヒト表皮ケラチノサイトの単層を用いるイン・ビトロ擦過傷-創傷アッセイが、移動能力を評価するための簡単で効果的な方法である。
【0038】
ヒト上皮ケラチノサイト(ロット:Ep21012001, Biocell)を、4.5×10細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種し、ウェルにおいて細胞が70~80%の集密度に達するまで、EpiLife(商標名)ケラチノサイト培地中、5%二酸化炭素雰囲気下で37℃のインキュベーター内に維持した。次に、細胞を新鮮培地(対照として)又は各種活性物質を補充した新鮮培地によって24時間培養した。細胞を同じ方法で5mLピペット先端によって引っ掻くことで、創傷形成をシミュレーションし、細胞の画像を撮影して直ちに創傷を記録した。細胞を同一の新鮮培地又は各種活性物質を補充した新鮮培地により、37℃で24時間再度培養し、再度細胞の画像を撮影した。そのさらなる培養の前後の面積比を、ソフトウェアImage-pro plusを用いることで得た。各種活性物質についての相対移動速度を、対照の値を割ることによって計算し、表1にまとめた。
【0039】
表1
【表2】
【0040】
表1から、ナイアシンアミドとリジンカルボキシメチルシステイナートを本発明の重量比で組み合わせた場合にのみ、相対移動速度が有意に改善されることが明らかになった(1対C及びD)。対照的に、ナイアシンアミドとリジンカルボキシメチルシステイナートを本発明の範囲外の重量比で組み合わせた場合は、相対移動速度は有意には改善されない(F対A及びE;G対A及びD;H対B及びD)。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB3化合物及びカルボキシメチルシステイン化合物を含むパーソナルケア又は医薬組成物であって、前記ビタミンB3化合物の前記カルボキシメチルシステイン化合物に対する重量比が少なくとも6:1である組成物。
【請求項2】
前記カルボキシメチルシステイン化合物がカルボキシメチルシステイン、カルボキシメチルシステインのエステル、及び/又はカルボキシメチルシステインの塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カルボキシメチルシステイン化合物がカルボキシメチルシステインの塩を含み、好ましくは前記カルボキシメチルシステイン化合物がリジンカルボキシメチルシステイナートを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルボキシメチルシステイン化合物が前記組成物の少なくとも0.00001重量%及び10重量%以下の量で存在し、好ましくはカルボキシメチルシステイン化合物が前記組成物の少なくとも0.01重量%及び3重量%以下の量で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビタミンB3化合物がナイアシン、ナイアシンアミド又はそれらの混合物を含み、好ましくは前記ビタミンB3化合物がナイアシンアミドである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ビタミンB3化合物が前記組成物の少なくとも0.00001重量%及び10重量%以下の量で存在し、好ましくは前記ビタミンB3化合物が前記組成物の少なくとも0.001重量%及び5重量%以下の量で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ビタミンB3化合物の前記カルボキシメチルシステイン化合物に対する重量比が6:1~10000:1、好ましくは6:1~100:1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ビタミンB3化合物の前記リジンカルボキシメチルシステイナートに対する重量比が6:1~10000:1、好ましくは7:1~50:1である、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が乳濁液、好ましくは水中油型乳濁液である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が当該組成物の10~96重量%、好ましくは当該組成物の42~88重量%の量で水を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
皮膚創傷の治療で使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
皮膚創傷を治癒及び/又は軽減し;及び/又は皮膚を再生する方法であって、前記皮膚に請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物を局所適用する段階を含む方法。
【請求項13】
皮膚創傷を治癒及び/又は軽減し;及び/又は皮膚を再生するための請求項1~のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【国際調査報告】