(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-09
(54)【発明の名称】核燃料棒被覆管及び核燃料棒被覆管を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/06 20060101AFI20241202BHJP
G21C 3/07 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G21C3/06 200
G21C3/07
G21C3/06 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532509
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2022085044
(87)【国際公開番号】W WO2023104989
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504448335
【氏名又は名称】ウエスチングハウス エレクトリック スウェーデン アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライト ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】リンベック マグナス
(72)【発明者】
【氏名】アドルノ ロペス デニス
(72)【発明者】
【氏名】ノーレン マグナス
(57)【要約】
核燃料棒被覆管(1、1’)が記載される。核燃料被覆管は、窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)の耐酸化コーティングを有する。核燃料棒被覆管(1、1’)を製造するための方法も記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料棒被覆管(1、1’)であって、窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)の耐酸化コーティング(5、5’)を有することを特徴とする、前記核燃料棒被覆管(1、1’)。
【請求項2】
前記耐酸化コーティング(5)が単層として構成される、請求項1に記載の核燃料棒被覆管(1)。
【請求項3】
前記耐酸化コーティング(5’)が多層コーティングとして構成される、請求項1に記載の核燃料棒被覆管(1’)。
【請求項4】
前記耐酸化コーティング(5’)が、窒化クロム-ニオブ/窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N/Cr-Nb-N)-超格子などのナノスケールの多層コーティングとして構成される、請求項3に記載の核燃料棒被覆管(1’)。
【請求項5】
前記超格子の第2のCr-Nb-N層ごとに、前記超格子の残りの層と比較して、Nbに対するCrの比が異なる、請求項4に記載の核燃料棒被覆管(1’)。
【請求項6】
前記Cr-Nb-Nのニオブの含有量が、5at%~90at%の間、好ましくは、5at%~50at%の間、最も好ましくは5at%~35at%の間である、請求項1~4のいずれかに記載の核燃料棒被覆管(1、1’)。
【請求項7】
前記第2のCr-Nb-N層ごとに、ニオブの含有量が、1at%~45at%の範囲にあり、好ましくは、1at%~35at%、最も好ましくは2at%~20at%であり、前記残りの層のニオブの含有量は、55at%~99at%の範囲であり、好ましくは、65at%~99at%、最も好ましくは80at%~98at%の範囲である、請求項5に記載の核燃料棒被覆管(1’)。
【請求項8】
前記耐酸化コーティング(5、5’)が、1μm~30μmの間の厚さ(t、t’)を有し、好ましくは2μm~15μmの間、最も好ましくは4μm~12μmの間である、請求項1~7のいずれかに記載の核燃料棒被覆管(1、1’)。
【請求項9】
核燃料棒被覆管(1、1’)を製造するための方法であって、以下のステップ、
-核燃料被覆管基部(7)を提供すること、及び、
-前記核燃料被覆管基部に窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)の耐酸化コーティング(5、5’)を提供すること、を含む、前記方法。
【請求項10】
前記耐酸化コーティング(5)が、単層として構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記耐酸化コーティング(5’)が、多層コーティングとして構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記耐酸化コーティング(5’)が、窒化クロム-ニオブ/窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N/Cr-Nb-N)-超格子などのナノスケールの多層コーティングとして構成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記超格子の第2のCr-Nb-N層ごとに、前記超格子の残りの層と比較して、Nbに対するCrの比が異なる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Cr-Nb-Nの前記耐酸化コーティング(5、5’)は、物理蒸着(PVD)プロセスによって実現される、請求項9~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記Cr-Nb-Nのニオブの含有量が、5at%~90at%の間、好ましくは、5at%~50at%の間、最も好ましくは5at%~35at%の間である、請求項9~11または14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第2のCr-Nb-N層ごとのニオブの含有量が、1at%~45at%の範囲にあり、好ましくは、1at%~35at%、最も好ましくは2at%~20at%であり、前記残りの層のニオブの前記含有量は、55at%~99at%の範囲であり、好ましくは、65at%~99at%、最も好ましくは80at%~98at%の範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記耐酸化コーティング(5、5’)が、1μm~30μmの間の厚さ(t、t’)を有し、好ましくは2μm~15μmの間、最も好ましくは4μm~12μmの間である、請求項9~16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核燃料棒被覆管に関し、より詳細には、外側コーティングを有する核燃料棒被覆管に関する。本開示はまた、核燃料棒被覆管を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の原子炉では、原子炉コアは多数の燃料集合体を含み、そのそれぞれは複数の細長い燃料棒から構成される。燃料棒はそれぞれ、通常、Heなどのガスによって取り囲まれた核燃料ペレットのスタックの形態で、核燃料分裂性物質を含有する。燃料棒は、核分裂性物質の封じ込めとして機能する被覆を有する。
【0003】
軽水原子炉(LWR)は、冷却剤及び中性子減速剤として水を使用する。LWRには、加圧水原子炉(PWR)及び沸騰水原子炉(BWR)の2つの基本的なタイプが存在する。水-水エネルギー原子炉(VVER)は、PWRのタイプと見なすことができる。小型モジュール式原子炉(SMR)もLWRのタイプであり得る。LWRでは、燃料棒被覆管は典型的には、ジルコニウムベースの合金で作られる。
【0004】
WO2021/112938には、Nbの中間層を含む外側コーティングを有する核燃料棒被覆管が記載されている。
【0005】
WO2018/067425は、核燃料棒被覆管上に二重鎖層を形成することを記載している。二重層は、内側の中間層と、外側の耐腐食層とを含む。
【0006】
WO2020/018361には、セラミック糸が管の周りに巻き付けられ、コーティングで結合されている、核燃料棒被覆管が記載されている。
【0007】
デブリフレッチングによる燃料の破損を相殺するために開発された燃料被覆材料上の硬質接触コーティングに関する1つの問題は、例えばBWRのコア内部に一般的な条件下でのこれらのコーティングの安定性である。
【0008】
したがって、核燃料棒被覆管の改善されたコーティングの必要性がある。
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、特に安定性及びデブリのフレッチングからの保護に関して改善された核燃料棒被覆管を提供することである。本発明のさらなる目的は、改善された核燃料棒被覆管を製造するための方法を達成することである。
【発明の概要】
【0010】
上記の目的は、独立請求項による本発明によって達成される。
【0011】
好ましい実施形態は、従属項に規定される。
【0012】
一態様によれば、本発明は、窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)の耐酸化コーティングを有する核燃料棒被覆管に関する。耐酸化コーティングはCr-Nb-Nからなる。
【0013】
ニオブ(Nb)は窒化クロム(Cr-N)とともにコーティング中に存在するため、例えばBWR条件でのCrOxの形成を伴う純粋なCr系の非保護的酸化などとは対照的に、Cr-Nの酸化を安定させることができ、コーティングをより保護し得る(安定化したCr2O3の形成による)。したがって、当技術分野で公知の燃料棒被覆管と比較して、改善された耐酸化性を有する核燃料棒被覆管が達成される。
【0014】
さらに、Cr-Nb-Nの耐酸化コーティングは、非コーティングまたはCrコーティング燃料被覆管と比較して、より高い硬度を有する表面を設け、そのために、例えば、BWR環境において適切なデブリ保護を実証する。
【0015】
CrへのNbの添加は、耐酸化を増加させるだけでなく、総合的な中性子の断面を減少させる。この利点は、追加の保護が有利であると見なされる場合、中性子の吸収がより低いこと、またはより厚いコーティングを可能にすることのいずれかとして得ることができる。
【0016】
その結果、当技術分野で公知の棒被覆管と比較して、耐酸化が改善され、デブリ保護が改善された核燃料棒被覆管が提供される。したがって、上記の目的は達成される。
【0017】
任意選択で、耐酸化コーティングは単層として構成される。単層を有することにより、腐食に対して層全体で一貫した性能が確保され、最も簡単であり、したがって製造するのに最も安価になり得るコーティングである。
【0018】
任意選択で、耐酸化コーティングは、多層コーティングとして構成される。複数の層は、両方の層コンポーネントの有利な特性を組み合わせることができる。さらに、層間の界面は、亀裂を逸らすように機能することができる。層間の界面はまた、より大きな視点から無傷の層を維持して、互いにある程度の滑りを可能にし得る。複数層コーティングは、多層コーティングと呼ぶことができる。
【0019】
任意選択で、耐酸化コーティングは、窒化クロム-ニオブ/窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N/Cr-Nb-N)-超格子などのナノスケール多層コーティングとして構成される。超格子構造は、多くの場合、単層薄膜、または2層コーティングなどの一部の多層コーティングによっても実現不可能な改善された特性を有する可能性がある。超格子内の層は、燃料棒被覆管の強化されたデブリ保護を含む、耐酸化性及び機械的特性に関する特性のさらなる改善に寄与する。
【0020】
任意選択で、該超格子の第2のCr-Nb-N層ごとに、超格子の残りの層と比較して、Nbに対するCrの比率が異なる。超格子構造と、Cr対Nbの比率が異なる2つのCr-Nb-N変種の組み合わせとの相乗効果により、接着、摩耗性能、及び疲労強度の改善、ならびに耐食性の改善など、さらに強化された特性が提供され得る。
【0021】
任意選択で、Cr-Nb-N中のニオブの含有量は、5at%~90at%の間、好ましくは5at%~50at%の間、最も好ましくは5at%~35at%の間である。
【0022】
任意選択で、超格子の第2のCr-Nb-N層ごとのニオブの含有量は、1at%~45at%、好ましくは1at%~35at%、最も好ましくは2at%~20at%の範囲にある。前記超格子の残りの層の前記ニオブの含有量が、55at%~99at%、好ましくは65at%~99at%、最も好ましくは80at%~98at%の範囲にある、前記ニオブの含有量。
【0023】
任意選択で、耐酸化コーティングは、1μm~30μmの間、好ましくは2μm~15μmの間、最も好ましくは4μm~12μmの間の厚さを有する。したがって、多層コーティングとして構成された耐酸化コーティングの場合、厚さはコーティングの合計の厚さになる。
【0024】
任意選択で、核燃料棒被覆管は、沸騰水原子炉(BWR)での使用に適合される。代替として、核燃料棒被覆管は、加圧水原子炉(PWR)、水-水エネルギー原子炉(VVER)、及び小型モジュール式原子炉(SMR)などの他のタイプの軽水原子炉(LWR)で使用することができる。
【0025】
さらなる態様によれば、本発明は、核燃料棒被覆管を製造するための方法に関し、この方法は、以下のステップを含む。
-核燃料棒被覆管基部を提供すること、及び、
-前記管状ベース上に窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)の耐酸化コーティングを設けること、である。耐酸化コーティングはCr-Nb-Nからなる。
【0026】
ニオブ(Nb)は窒化クロム(Cr-N)とともにコーティング中に存在するため、例えばBWR条件でのCrOxの形成を伴う純粋なCr系の非保護的酸化などとは対照的に、Cr-Nの酸化を安定させることができ、コーティングをより保護し得る(安定化したCr2O3の形成による)。したがって、当技術分野で公知の棒被覆管と比較して、改善された耐酸化性を有する核燃料棒被覆管が達成される。
【0027】
さらに、Cr-Nb-Nの耐酸化コーティングは、非コーティングまたはCrコーティング燃料被覆管と比較して、より高い硬度を有する表面を提供し、そのために、例えば、BWR環境において適切なデブリ保護を実証する。
【0028】
CrへのNbの添加は、耐酸化を増加させるだけでなく、総合的な中性子の断面を減少させる。この利点は、追加の保護が有利であると見なされる場合、中性子の吸収がより低いこと、またはより厚いコーティングを可能にすることのいずれかとして得ることができる。
【0029】
その結果、改良された核燃料棒被覆管を製造するための方法が提供され、その方法によって、当技術分野で公知の燃料棒被覆管と比較して、改善された耐酸化性及び改善されたデブリ保護を有する核燃料棒被覆管が提供される。したがって、上記の目的は達成される。
【0030】
任意選択で、耐酸化コーティングは単層として構成される。単層を有することにより、腐食に対して層全体で一貫した性能が確保され、最も簡単であり、したがって製造するのに最も安価になり得るコーティングである。
【0031】
任意選択で、耐酸化コーティングは、多層コーティングとして構成される。多層コーティングは、両方の層コンポーネントの有利な特性を組み合わせることができる。さらに、層間の界面は、亀裂を逸らすように機能することができる。層間の界面はまた、より大きな視点から無傷の層を維持して、互いにある程度の滑りを可能にし得る。複数層コーティングは、多層コーティングと呼ぶことができる。
【0032】
任意選択で、耐酸化コーティングは、窒化クロム-ニオブ/窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N/Cr-Nb-N)-超格子などのナノスケール多層コーティングとして構成される。超格子構造は、多くの場合、単層薄膜、または2層コーティングなどの一部の多層コーティングによっても実現不可能な改善された特性を有する可能性がある。超格子内の層は、燃料棒被覆管の強化されたデブリ保護を含む、耐酸化性及び機械的特性に関する特性のさらなる改善に寄与する。
【0033】
任意選択で、超格子の第2のCr-Nb-N層ごとに、超格子の残りの層と比較して、Nbに対するCrの比率が異なる。超格子構造と、Cr対Nbの比率が異なる2つのCr-Nb-N変種の組み合わせとの相乗効果により、接着、摩耗性能、及び疲労強度の改善、ならびに耐食性の改善など、さらに強化された特性が提供され得る。
【0034】
任意選択で、窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)のコーティングは、物理蒸着(PVD)プロセスによって実現される。したがって、コーティングは効果的かつ信頼できる方法で実現され得る。
【0035】
任意選択で、Cr-Nb-N中のニオブの含有量は、5at%~90at%の間、好ましくは5at%~50at%の間、最も好ましくは5at%~35at%の間である。
【0036】
任意選択で、超格子の第2のCr-Nb-N層ごとのニオブの含有量は、1at%~45at%、好ましくは1at%~35at%、最も好ましくは2at%~20at%の範囲にあり、超格子の残りの層のニオブの含有量が、55at%~99at%、好ましくは65at%~99at%、最も好ましくは80at%~98at%の範囲にある。
【0037】
任意選択で、耐酸化コーティングは、1μm~30μmの間、好ましくは2μm~15μmの間、最も好ましくは4μm~12μmの間の厚さを有する。したがって、多層コーティングとして構成された耐酸化コーティングの場合、厚さはコーティングの総合的な厚さになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】Cr-Nb-N及びCr-Nコーティングの表面の外観のシミュレーション結果を示す。
【
図2】単層として構成された耐酸化コーティングを有する、概略的に例示された核燃料棒被覆管に亘る断面図である。
【
図3】多層コーティングとして構成された耐酸化コーティングを伴う、概略的に例示された核燃料棒被覆管に亘る断面図である。
【
図4】実施形態による、核燃料棒被覆管を含むBWR原子炉用の概略的な燃料アセンブリの切断図である。
【
図5】実施形態による、核燃料棒被覆管を含むPWR原子炉用の概略的な燃料アセンブリの切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図面全体を通して、同じまたは類似の品目は同じ参照符号を有する。さらに、品目及び図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、発明の原理を例示することに、むしろ重点が置かれている。
【0040】
コロビウムとしても知られるニオブは、Nbという符号(以前はCb)で原子番号41の化学元素である。ニオブは、淡灰色、結晶性、延性の遷移金属である。純粋ニオブは、純チタンと同様のモース硬さの定格を有し、鉄と同様の延性を有する。ニオブは地球の大気で非常に低速で酸化する。
【0041】
一態様によれば、本発明は、の窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)の耐酸化コーティング5、5’を有する核燃料棒被覆管1、1’に関する。
【0042】
ニオブ(Nb)は窒化クロム(Cr-N)とともにコーティング中に存在するため、例えばBWR条件でのCrOxの形成を伴う純粋なCr系の非保護的酸化などとは対照的に、Cr-Nの酸化を安定させることができ、より保護し得る(安定化したCr
2O
3の形成による)。いくつかのシミュレーションが実施されており、添付の
図1は、BWR条件をシミュレートするオートクレーブで60日間曝露した後のCr-Nb-N及びCr-Nコーティングの表面の外観のシミュレーションの結果を示す。図からわかるように、Cr-Nb-Nコーティングは、滑らかで安定した表面を有し、それにより、改善された耐食性及び改善されたデブリに対する保護の両方をもたらす。
【0043】
Cr-Nb-Nコーティングは、Cr及びNbの複数のターゲットを使用する物理蒸着(PVD)プロセスによって、または選択した組成でCr-Nb合金ターゲットを予備製造した後、いずれの場合もN2雰囲気下で堆積を行うことで、達成され得る。
【0044】
添付の図面、
図2~
図5について次に説明する。
図2は、単層として構成された耐酸化コーティング5を有する、概略的に例示された核燃料棒被覆管1に亘る断面図である。核燃料棒被覆管1は、核燃料被覆管基部7及び耐酸化コーティング5を含み、コーティング5は、窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)からなる。核燃料被覆管基部7の厚さは、典型的には、約0.5~0.8mm(500~800μm)である。核燃料被覆管基部7は、好ましくはジルコニウムベースの合金で作製される。コーティング5は、Cr-Nb-Nからなる。耐酸化コーティング5は、1μm~30μmの間、好ましくは2μm~15μmの間、最も好ましくは4μm~12μmの間の厚さを有する。したがって、耐酸化コーティング5は、核燃料被覆管基部7よりもはるかに薄い。Cr-Nb-Nのニオブの含有量は、5at%~90at%であり、好ましくは、5at%~50at%であり、最も好ましくは5at%~35at%である。核燃料被覆管基部7は、物理蒸着(PVD)プロセスを用いて耐酸化コーティング5によってコーティングされ得る。PVDプロセスの原理は一般的な知識であり、したがって、本明細書では詳細に説明しない。
【0045】
図3は、多層コーティングとして構成された耐酸化コーティング5’を伴う、概略的に例示された核燃料棒被覆管1’に亘る断面図である。複数層コーティングは、多層コーティングと呼ぶことができる。
図3に示す実施形態によれば、耐酸化コーティング5’は2つの層を含む。しかしながら、耐酸化コーティング5’は、2層だけでなく、多数の非常に薄い層を含み得る。核燃料棒被覆管1’は、核燃料被覆管基部7と、複数の層を有する耐酸化コーティング5’とを含み、複数の層の各層は、窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N)からなる。
図3に示される実施形態によれば、核燃料被覆管基部7は、
図2に示される実施形態による核燃料被覆管基部7と同様である。したがって、核燃料被覆管基部7の厚さは、典型的には、約0.5~0.8mm(500~800μm)である。核燃料被覆管基部7は、好ましくはジルコニウムベースの合金で作製される。コーティング5’の各層は、Cr-Nb-Nからなる。コーティング5’は、1μm~30μmの間、好ましくは2μm~15μmの間、最も好ましくは4μm~12μmの間の厚さt’を有する。したがって、多層コーティングとして構成された耐酸化コーティング5’は、1μm~30μmの間、好ましくは2μm~15μmの間、最も好ましくは4μm~12μmの間の総合的な厚さt’を有する。したがって、耐酸化コーティング5’は、核燃料被覆管基部7よりもはるかに薄い。コーティング5’の各層の厚さは、同じであってもよく、またはコーティング5’の層ごとに厚さが異なっていてもよい。各層のCr-Nb-N中のニオブの含有量は、5at%~90at%の間、好ましくは5at%~50at%の間、最も好ましくは5at%~35at%の間である。核燃料被覆管基部7は、物理蒸着(PVD)プロセスを使用して耐酸化コーティング5’によってコーティングされてもよく、すなわち、コーティング5’の各層はPVDプロセスによって実現することができる。PVDプロセスの原理は一般的な知識であり、したがって、本明細書では詳細に説明しない。
【0046】
任意選択で、耐酸化コーティング5’は、窒化クロム-ニオブ/窒化クロム-ニオブ(Cr-Nb-N/Cr-Nb-N)-超格子などのナノスケール多層コーティングとして構成され得る(図示せず)。
【0047】
さらなるオプションとして、超格子の第2のCr-Nb-N層ごとに、超格子の残りの層と比較して、Nbに対するCrの比率が異なる場合がある。第2のCr-Nb-N層ごとのニオブの含有量は、1at%~45at%、好ましくは1at%~35at%、最も好ましくは2at%~20at%の範囲にあり得、残りの層のニオブの含有量が、55at%~99at%、好ましくは65at%~99at%、最も好ましくは80at%~98at%の範囲にあり得る。
【0048】
図4は、本明細書に記載の本発明の実施形態による、核燃料被覆棒管1、1’を含むBWR原子炉2用の概略的な燃料アセンブリの切断図である。
【0049】
図5は、本明細書に記載の本発明の実施形態による、核燃料被覆棒管1、1’を含むPWR原子炉3用の概略的な燃料アセンブリの切断図である。
【0050】
本発明による核燃料棒被覆管1、1’はまた、軽水原子炉(LWR)、水-水エネルギー原子炉(VVER)、または小型モジュール式原子炉(SMR)内に配置することもできる。
【0051】
本発明は、上記の好ましい実施形態に限定されない。様々な代替物、修正形態、及び均等物を使用してもよい。したがって、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】