(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-09
(54)【発明の名称】眼用レンズ及び眼用レンズを形成する方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/02 20060101AFI20241202BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241202BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G02C7/02
G02B5/18
B29C39/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532525
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022085026
(87)【国際公開番号】W WO2023104982
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレフ・ジャルリ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ・ウェン・チウ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・フロマンタン
(72)【発明者】
【氏名】ローリー・マリオン
【テーマコード(参考)】
2H249
4F204
【Fターム(参考)】
2H249AA18
4F204AA21
4F204AA36
4F204AD05
4F204AD07
4F204AG03
4F204AH74
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB12
4F204EB22
4F204EF05
(57)【要約】
本開示は、近視の矯正のための眼用レンズに関する。具体的には、本開示は、第1の層であって、第1の層は、第1の層の第1の表面上に微細構造を有し、第1の層の第1の表面上の微細構造は一定のパターンで形成され、第1の層の材料が熱可塑性材料である、第1の層と;第1の層の第1の表面上に形成された第2の層であって、第1の層のガラス転移温度が第2の層のガラス転移温度よりも高い、第2の層と、を備える眼用レンズに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層(302;602)であって、前記第1の層(302;602)は、前記第1の層(302;602)の第1の表面(306;606)上に微細構造(303;603)を有し、前記第1の層(302;602)の前記第1の表面(306;606)上の前記微細構造(303;603)は一定のパターンで形成され、前記第1の層(302;602)の材料が熱可塑性材料である、第1の層(302;602)と、
前記第1の層(302;602)の前記第1の表面(306;606)上に形成された第2の層(304;604)であって、前記第1の層(302;602)のガラス転移温度が、前記第2の層(304;604)のガラス転移温度よりも高い、第2の層(304;604)と、
を備える眼用レンズ。
【請求項2】
前記第1の層(302;602)の屈折率は前記第2の層(304;604)の屈折率とは異なる、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記微細構造(303;603)の各微細構造はプラス屈折力小型レンズである、請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記第2の層(304;604)の材料が熱硬化性材料又は熱可塑性材料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記第1の層(602)の前記第1の表面(606)上、及び前記第1の層(602)と前記第2の層(604)との間に堆積された接着促進層(609)を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記第1の層(602)の第2の表面(607)上に配置された第3の層(604’)を更に備え、前記第1の層(602)の前記第2の表面(607)は前記第1の層(602)の前記第1の表面(606)とは反対側にあり、前記第2の層(604)の材料が熱硬化性材料であり、前記第3の層(604’)の材料が熱硬化性材料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記第1の層(602)の前記第2の表面(607)上、及び前記第1の層(602)と前記第3の層(604’)との間に堆積された接着促進層(609)を更に備える、請求項6に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記第1の層(302)の前記第2の表面(307)及び前記第2の層(304)の露出表面のうちの少なくとも1つの上に堆積された少なくとも1つの保護層(308)を更に備え、前記第1の層(302)の前記第2の表面(307)は、前記第1の層(302)の前記第1の表面(306)とは反対側にあり、前記第2の層(304)の前記露出表面は、前記第1の層(302)に接触しない前記第2の層(304)の表面である、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項9】
カプセル化された小型レンズを有する眼用レンズ(301;601)を形成する方法であって、前記方法は、
形成チャンバの空洞(150)の中に第1の層(302;602)を提供するステップであって、前記第1の層(302;602)は、前記第1の層(302;602)の第1の表面(306;606)上に微細構造(303;603)を有し、前記第1の層(302;602)の前記第1の表面(306;606)上の前記微細構造(303;603)は一定のパターンで形成され、前記第1の層(302;602)の材料が熱可塑性材料である、提供するステップと、
前記形成チャンバの前記空洞(150)の中に第2の材料を流し、前記第1の層(302;602)の前記第1の表面(306;606)に接触させるステップと、
前記第1の層(302;602)の前記第1の表面(306;606)上に第2の層(304;604)を形成するように前記第2の材料を設定するステップと、
を含み、
前記第1の層(302;602)のガラス転移温度が、前記第2の層(304;604)のガラス転移温度よりも高い、方法。
【請求項10】
前記第1の層(302;602)の屈折率は前記第2の層(304;604)の屈折率とは異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の層(304;604)の材料が熱硬化性材料又は熱可塑性材料である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の層(602)の前記第1の表面(606)上、及び前記第1の層(602)と前記第2の層(604)との間に接着促進層(609)を堆積させるステップを更に含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の層(302)の第2の表面(307)及び前記第2の層(304)の露出表面のうちの少なくとも1つの上に保護層(308)を堆積させるステップを更に含み、前記第1の層(302)の前記第2の表面(307)は、前記第1の層(302)の前記第1の表面(306)とは反対側にあり、前記第2の層(304)の前記露出表面は、前記第1の層(302)に接触しない前記第2の層(304)の表面である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の材料は熱硬化性材料であり、
前記形成チャンバの前記空洞(150)の中に前記第2の材料を流すステップは、前記形成チャンバの前記空洞(150)の中に前記第2の材料を流して、前記第1の層(602)の前記第1の表面(606)及び前記第1の層(602)の第2の表面(607)に接触させるステップを更に含み、前記第1の層(602)の前記第2の表面(607)は前記第1の層(302;602)の前記第1の表面(606)とは反対側にあり、
前記第2の材料を設定するステップは、前記第2の材料を硬化させて、前記第1の層(602)の前記第1の表面(606)上に前記第2の層(604)を形成するステップと、前記第1の層(602)の前記第2の表面(607)上に第3の層(604’)を形成するステップと、を更に含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の層(302;602)及び前記第2の層(304;604)は、混和性官能基を有する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、カプセル化された光学要素を有する眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近視(near-sightedness)又は近眼(short-sightedness)としても知られる近視(Myopia)は、目に入る光が網膜上に直接焦束しない目の状態である。代わりに、目に入る光が網膜の前方で焦束され、それにより、人の目から物体への距離に応じて、人が観察する画像の焦点が合うか又は焦点がずれる。例えば、物体が遠くにある物体の場合、観察される物体は焦点がずれることになる一方で、物体が近くにある物体の場合、観察される物体は焦点が合うことになる。
【0003】
眼用レンズなどの光学物品を使用して、眼の屈折異常を矯正することができる。そのような異常は、とりわけ、近視、遠視、老視、及び乱視を含むことができる。いくつかの眼用レンズは、これら屈折異常の矯正を促進することができる光学要素、例えばマイクロレンズを含む。例えば、マイクロレンズは、入射光の一部を網膜の前で集束させるための正の加入値を提供でき、それにより近視の進行を制御できる。
【0004】
理論的には有効であるが、実際には、光学要素は多くの場合、外側レンズ面に配置され、したがって損傷からの保護が限定され、損傷を受けやすい。いくつかのレンズは、光学要素を保護するために光学レンズに一体化されたコーティング、例えばハードコーティング又はニスを含む。しかしながら、これらコーティングは光学要素を十分に保護しない場合がある。更に、これらコーティングは、光学要素の形状及び光学設計を変化させ得る。例えば、ハードコーティングの硬化により、光学要素に過度の応力が加わる結果となる場合がある。その結果、光学要素は、光学要素が満たすように設計されている光学目標をもはや提供することができない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、その光学設計を変えることなく光学要素の十分な保護を提供するように構成された光学物品が、当該技術分野において求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記「背景技術」の記載は、本開示の状況を全般的に提示することを目的としている。この「背景技術」に記載されている範囲における本発明者らの業績、並びに、出願時点で先行技術と見なされないかも知れない本明細書の態様は、本開示に対する先行技術として明示的にも暗黙的にも認められていない。
【0007】
本開示は、請求項のセットにおいて定義されるような、眼用レンズを形成する方法に関する。
【0008】
一実施形態によれば、本開示は、第1の層であって、第1の層は、第1の層の第1の表面上に微細構造を有し、第1の層の第1の表面上の微細構造は一定のパターンで形成され、第1の層の材料が熱可塑性材料である、第1の層と;第1の層の第1の表面上に形成された第2の層であって、第1の層のガラス転移温度が第2の層のガラス転移温度よりも高い、第2の層と、を備える眼用レンズに更に関する。
【0009】
とりわけ、第2の層の材料は熱硬化性材料又は熱可塑性材料である。
【0010】
一実施形態によれば、本開示は、カプセル化された小型レンズを有する眼用レンズを形成するための請求項のセットにおいて定義されるような方法に更に関し、本方法は、形成チャンバの空洞の中に第1の層を提供することであって、第1の層は、第1の層の第1の表面上に微細構造を有し、第1の層の第1の表面上の微細構造は一定のパターンで形成され、第1の層の材料が熱可塑性材料である、ことと;形成チャンバの空洞の中に第2の材料を流し、第1の層の第1の表面に接触させることと;第1の層の第1の表面上に第2の層を形成するように第2の材料を設定することであって、第1の層のガラス転移温度が第2の層のガラス転移温度よりも高い、ことと、を含む。
【0011】
一実施形態によれば、本開示は眼用レンズを形成する方法に更に関し、本方法は、形成チャンバの空洞の中に第1の層を提供することであって、第1の層は、第1の層の第1の表面上に微細構造を有し、第1の層の第1の表面上の微細構造は一定のパターンで形成されている、ことと;形成チャンバの空洞の中に熱硬化性材料を流し、第1の層の第1の表面及び第1の層の第2の表面に接触させることであって、第1の層の第2の表面は第1の層の第1の表面とは反対側である、ことと;熱硬化性材料を硬化させて、第1の層の第1の表面上に第2の層を形成し、第1の層の第2の表面上に第3の層を形成することであって、第1の層のガラス転移温度が第2の層及び第3の層の各々のガラス転移温度よりも高い、ことと、を含む。
【0012】
上記の段落は全般的な導入として提供されており、以下の特許請求の範囲を限定することは意図されていない。説明される実施形態及び更なる利点が、以下の詳細な説明を添付図面と関連させて参照することにより最もよく理解されるであろう。
【0013】
本開示のより完全な理解及びそれに付随する利点の多くが、添付図面と併せて考慮したときに以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるため、容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の例示的実施形態による、形成チャンバの概略図である。
【
図2】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズを形成する方法のフロー図である。
【
図3A】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図3B】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図3C】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図3D】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図4A】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図4B】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図5A】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図5B】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図6A】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図6B】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズの一部分の図である。
【
図7】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズのマイクロレンズの全体的屈折力平均のグラフ表示である。
【
図8】本開示の例示的実施形態による、眼用レンズを形成する方法のフロー図である。
【
図9】本開示の一実施形態による、PC/PMMA複合レンズの光学画像である。
【
図10】比較例としてのPMMA/PC複合レンズの光学画像である。
【
図11A】本開示の一実施形態による、PC/Durabio複合レンズの光学画像である。
【
図11B】本開示の一実施形態による、眼用レンズの各リングにおけるマイクロレンズの全体的屈折力平均のグラフである。
【
図12】比較例による、眼用レンズのマイクロレンズの全体的屈折力平均のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ又は複数として定義される。「複数」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上として定義される。「別の」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つ以上として定義される。「含む(including)」及び/又は「有する(having)」という用語は、本明細書で使用される場合、備える(comprising)(すなわち、オープン用語)として定義される。本文書全体を通しての「一実施形態」、「特定の実施形態」、「一実施形態」、「一実現形態」、「一実施例」又は同様の用語への言及は、その実施形態と関連して説明された特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して種々の箇所におけるそのような句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照している訳ではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、無制限に1つ又は複数の実施形態において任意の適切なやり方で組み合わせることができる。
【0016】
用語「ウェハー」及び「積層体」は、類似の構造を参照するために交換可能に使用される場合がある。更に、用語「光学レンズ」、「眼用レンズ」及び「矯正レンズ」、並びにそれらの複数形は、類似の構造を参照するために交換可能に使用される場合がある。
【0017】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって理解される通り、近いこととして定義される。1つの非限定的な実施形態において、この用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、そして最も好ましくは0.5%以内であるように定義される。
【0018】
近年、近視の進行に対処する取り組みは、矯正レンズの表面上に直接、光学微細構造を設けることを含む。光学微細構造は、例えば、入射光の一部を網膜に又は網膜に関連する位置に方向転換するマイクロレンズであり得る。この目的ため、標準の単焦点レンズの表面上にマイクロレンズを使用して周辺焦点ずれを導入することが、近視の進行を遅らせるのに効果的であることが示されている。マイクロレンズは、他の用途でも使用されている。例えば、マイクロレンズは、他の用途のなかでも、デジタルプロジェクタ、撮像デバイス(例えば、コピー機、携帯電話カメラ)、顕微鏡(例えば、均一な照明、ディスプレイのため、及び電荷結合素子アレイの光収集効率を改善するため)において使用されている。
【0019】
光学微細構造は、0.1μm~50μmの物理的Z歪み/高さ、及び0.5μm~1.5mmの幅/長さを有するマイクロレンズ若しくはマイクロ小型レンズ、又は任意の他のタイプの構造若しくは要素を含んでもよい。これら構造は、好ましくは周期的又は準周期的レイアウトを有するが、ランダム化された位置を有してもよい。微細構造の好ましいレイアウトは、一定のグリッドステップを有するグリッド、ハニカムレイアウト、複数の同心円状リング、及び連続した微細構造(例えば、微細構造間にスペースがない)である。これら構造体は、強度、曲率、又は光偏差において光学波面の修正を提供することができ、ここで、波面の強度は、構造体が吸収性することができ且つ波面強度を0%~100%の範囲で局所的に吸収することができるように構成され、曲率は、構造体が波面曲率を±20ジオプタの範囲で局所的に修正することができるように構成され、光偏差は、構造体が光を±1°~±30°の範囲の角度で局所的に散乱することができるように構成されている。構造体間の距離は、X及び/又はYサイズにおいて0(連続)~3倍の構造体(別個の微細構造体)の範囲であり得る。
【0020】
効果的であるが、光学微細構造は、これまで、矯正レンズの表面上に直接組み込まれてきた。光学微細構造は、矯正レンズの凸面(例えば、着用者の目に隣接するレンズ面とは反対側のレンズ面)、又は矯正レンズの凹面(例えば、着用者の目に隣接するレンズ面)のいずれかの上に直接、刻み込まれても、エッチングされても、又はエンボス加工されてもよい。一例では、この構成は、日常的な使用の結果として、光学微細構造への擦傷又は他の損傷につながる場合がある。更に、レンズ面上に直接、光学微細構造を構築することにより、レンズ基板材料ごとに固有の設計が必要となる場合がある。なぜなら、光学微細構造の各設計は、光学微細構造と周囲の媒体との間の屈折率の変化に依存し、あらゆるレンズ基板材料が光学設計の固有のセットを必要とするからである。このように、各レンズ基板材料が、固有の光学微細構造アーキテクチャ及び構成を必要とする場合がある。
【0021】
上記に加えて、表面上に光学微細構造を有する熱硬化性レンズを注型成形することは、光学レンズに一体化する場合に技術的な課題となる。例えば、異なるモノマーが使用される場合、光学微細構造又はマイクロレンズは異なる量の収縮を受ける。加えて、レンズ中心とレンズ縁部とのアスペクト比が高い場合、同じモノマー中で異なる量の収縮を受ける場合がある。これは、特に、非常に小さい寸法を有する光学微細構造にとって問題である。そのような問題は、最終製品におけるマイクロレンズ設計に影響を及ぼすことになり、最終的な所望の設計に到達するために金型設計変更の複数回のイタレーションを必要とする場合がある。更に、レンズ面上にマイクロレンズを有することが、マイクロレンズをハードコーティングによる変更に曝し、これも最終的な設計製品を設計及び実現する際に考慮されなければならない。
【0022】
一実施形態によれば、本開示は、注型成形及びハードコーティング後にその構造を保持するカプセル化された光学微細構造を有する眼用レンズを提供する。これは、その表面上に光学微細構造を有する機能性ウェハー(すなわち、第1の層)を含む。熱可塑性樹脂であり得る機能性ウェハーは、その上に光学微細構造を有する機能性ウェハーの表面と接触する熱硬化性モノマーの重合サイクル中に形状を変えない。更に、熱硬化性モノマーによる光学微細構造のそのようなカプセル化により、ハードコーティングにより提示される課題が回避される。
【0023】
一実施形態では、本開示は、この目的のために、射出成形、ロールツーロール熱エンボス加工、又はフィルム及び/若しくは積層体により、熱硬化性材料のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する微細構造化された熱可塑性樹脂ウェハーを提供し、熱可塑性樹脂ウェハーは、形成チャンバの金型の内面に接して、形成チャンバの注型成形用の空洞の中に配置され得る、又は形成チャンバ内で金型として(例えば、前部金型に接して、又は後部金型の除去後に保持されることになる金型として)使用され得る。熱硬化性モノマーが形成チャンバの空洞に導入されたとき、熱可塑性樹脂ウェハーが熱硬化性モノマー(すなわち、第2の層)と接触するように、熱可塑性樹脂ウェハーは、光学微細構造を有する熱可塑性樹脂ウェハーの少なくとも表面が露出するように方向付けられ得る(代わりに、第2の層が熱可塑性樹脂であってもよい)。このように、光学微細構造は、最終的な光学レンズ設計中にカプセル化され得る。一例では、熱可塑性樹脂ウェハーの両面が熱硬化性モノマーに曝されることができ、それにより熱可塑性樹脂ウェハーは熱硬化性モノマーで挟まれる。熱硬化性モノマーの注型成形及び重合の後に、注型成形用金型は除去されることができ、結果として生じる二重材料レンズ(熱硬化性樹脂/熱可塑性樹脂)は、カプセル化された微細構造を有する。これら微細構造は、熱可塑性樹脂ウェハーにおいて使用されるものと厳密に同じ設計を有し、注型成形中に又は更なるレンズ処理の結果としてモノマー収縮量が異なっても、それらの形状を変えない。
【0024】
マイクロレンズが屈折力を有するため、すなわち、ΔRI=RIWafer-RILens≒0であるため、熱可塑性樹脂ウェハーの屈折率(RIWaferであり、RIfirst layerとも呼ばれる)は、レンズの屈折率(RILensであり、RIsecond layerとも呼ばれる)とは異なり得る。
【0025】
典型的には、熱可塑性樹脂ウェハーの屈折率(RIWaferであり、RIfirst layerとも呼ばれる)と、レンズの屈折率(RILensであり、RIsecond layerとも呼ばれる)との差は、0.01を超える、好ましくは0.04を超える、及び典型的には0.05を超える、例えば0.07である。
【0026】
本発明によれば、「熱可塑性樹脂ウェハーの屈折率(RIWafer)とレンズの屈折率(RILens)との差は0.01を超える」は、以下の値を含み、且つ、及び/又は以下の値の間に含まれるいかなる間隔も含む(境界値を含む):0.01;0.02;0.03;0.04;0.05;0.06;0.07;0.08;0.09;0.1;0.2;0.3等。
【0027】
一実施例では、熱可塑性樹脂ウェハーは、MR8レンズの間に又は表面上に熱硬化性モノマー(すなわち、熱硬化性レンズ)として配置されたDurabio(商標)微細構造化ウェハーであってもよい。熱硬化性モノマーと熱可塑性樹脂ウェハーとの間の屈折率差(ΔRI)は、約0.1であってもよい。
【0028】
別の例では、熱可塑性樹脂ウェハーは、MR7レンズの間に又は表面上に熱硬化性モノマー(すなわち、熱硬化性レンズ)として配置されたポリカーボネート微細構造化ウェハーであってもよい。熱硬化性モノマーと熱可塑性ウェハーとの間の(ΔRI)は、約0.07であってもよい。
【0029】
一実施形態では、近視制御のため、近視の進行を遅らせる周辺焦点ずれをもたらすために、光学微細構造の屈折力は正であり得る。ΔRI>0の場合、正の屈折力を有するため、ウェハー上の光学微細構造は、例えば
図4A及び
図4Bのように、凸面であり得る。ΔRI<0の場合、正の屈折力を有するため、ウェハー上の光学微細構造は、例えば
図5A及び
図5Bのように、凹型であり得る。
【0030】
一実施形態では、光学微細構造の屈折力は、各光学微細構造の形状を最終的に画定する半径、円筒度、及び/又は非球面性の関数でもある。したがって、射出オーバーモールディングの高温及び高圧下で光学微細構造の形状完全性を維持することが、光学設計の維持に役立つ。また、高い光学的忠実度を有するように、ウェハーとレンズとの間の界面が確実に透明であり明確に定義されていることも必要である。加えて、ウェハーとレンズとの間の結合は、ハードマルチコーティング(HMC)及びRxサーフェシング、エッジング、及び取り付けプロセスを乗り切るために、十分に強い可能性がある。
【0031】
一実施形態では、光学微細構造の形状完全性を維持するため、射出オーバーモールディングの高温及び高圧、又は熱硬化性樹脂の注型成形の高い硬化温度に耐えるように、ウェハー材料の熱抵抗をレンズ材料の熱抵抗よりも大きくすることができる。プラスチック材料については、その熱抵抗をガラス転移温度(Tg)によって特徴付けることができる。Tgが高いほど、耐熱性は高い。それゆえ、マイクロレンズが変形することを防止するために、ウェハーのガラス転移温度(Tg,Waferであって、Tg First layerとも呼ばれる)は、レンズのガラス転移温度(Tg,Lensであって、Tg Second layerとも呼ばれる)よりも大きくなければならない。更に、Tg,Waferは、Tg,Lensよりも少なくとも5℃高いこと、すなわち、Tg,Wafer>Tg,Lens+5℃であることが非常に望ましい。
【0032】
本発明によれば、「Tg,WaferとTgLensとの間が少なくとも5℃」は、以下の値を含み、且つ、及び/又は以下の値の間に含まれるいかなる間隔も含む(境界値を含む):5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、66、67、68、69、70等。一実施形態によれば、Tg,Waferは、Tg,Lensよりも、少なくとも8℃、好ましくは少なくとも10℃、特に少なくとも15℃、及び典型的には少なくとも20℃大きい。
【0033】
一実施形態では、透明であり明確に定義された界面を実現し、強力な結合を得るため、ウェハー材料及びレンズ材料は、それらの反復する化学構造ユニットにおいて同じ又は類似の官能基を含んで必要な混和性を有することができる。炭酸エステル-O-C(=O)-O-を含むエステル基-O-C(=O)を有する透明な熱可塑性物質は、互いに混和性を有する。いくつかの実施例は、とりわけ、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、及びコポリエステルを含む。アミド基-C(=O)-N=を有する透明な熱可塑性物質は、互いに混和性を有する。いくつかの実施例は、ポリアミド及びポリウレタンを含む。
【0034】
一実施形態によれば、本開示は、カプセル化された微細構造を有する熱硬化性レンズを作製する能力を提供し、熱硬化性レンズは任意のコーティングで被覆されることが可能であり、コーティングは微細構造の設計に影響を及ぼすことがなく、微細構造のカプセル化は、レンズの機械的特性(例えば、衝撃耐性)を高める。
【0035】
一実施形態では、本開示は、注型成形のための微細構造化ガラス鋳型を生成する必要性を回避する。更に、熱可塑性樹脂ウェハーが金型構成要素として使用される場合、本開示は透明な金型を介する紫外線重合を使用する手段を提供する。
【0036】
一実施形態によれば、本開示は、熱可塑性樹脂ウェハーを介して光フィルタを眼用レンズの中に導入する機会を提供する。
【0037】
一実施形態によれば、本開示は、熱硬化性レンズの量の増加に伴って、微細構造化された熱可塑性樹脂ウェハー(例えば、ポリカーボネート(PC)ウェハー)の単価の低減を可能にする。
【0038】
ここで図面を参照すると、
図1は、熱可塑性樹脂ウェハーを光学レンズに組み込むための形成チャンバ又は成型デバイスの概略図を提供する。
【0039】
この成型デバイスは、第1の成型面145a、第2の成型面145b、凹型成型インサート141、及び凸型成型インサート142を含むことができる。第1の成型面145a及び第2の成型面145bのそれぞれは、中空部分を含むことができ、凹型成型インサート141及び凸型成型インサート142をその中に取り外し可能に配置することができる。一実施形態では、凹型成型インサート141及び凸型成型インサート142のどちらか又は両方を熱可塑性樹脂ウェハーと置換することができ、それにより熱可塑性樹脂ウェハーは、熱硬化性モノマーが導入され得る空洞を形成する。
【0040】
図1に示すように、成型インサートが保持されると想定すれば、凹型成型インサート141を含む第1の成型面145aは、凸型成型インサート142を含む第2の成型面145bと連結するように構成可能である。連結時に、凹型成型インサート141及び凸型成型インサート142は、第1及び第2の成型面145a、145bの連結によって形成される中空ライン160に接続した空洞150を形成することができる。中空ライン160は、例えばスクリューフィーダ又は類似のデバイスを介して、ポリマー又はプレポリマーを受け取るように構成可能である。実施例では、光学微細構造103を有するウェハー102(例えば熱可塑性樹脂ウェハー又は熱硬化性ウェハーであるが、これらに限定されない)を空洞150内に配置することができる。
図1では、光学微細構造103は、ウェハー102の第1の表面106、すなわち凹面106上にあり、ウェハー102は、凹面106の反対側に、第2の表面、すなわち凸面107を有する。形成中に、空洞150内にウェハー102を配置した時点で、中空ライン160を介して空洞150の中に熱硬化性モノマーを流すことにより、第2の層(例えば熱硬化性層であるが、これに限定されない)を形成することができる。空洞150の中に熱可塑性材料を流すことにより、(第2の層用の熱硬化性層の代わりに)第2の層用の熱可塑性樹脂層が代わりに形成されてもよいことが理解され得る。とりわけ、ウェハー102のガラス転移温度が、熱硬化性層の対応するガラス転移温度よりも大きく、したがって、ウェハー102の構造を破壊することなく、熱硬化性モノマーを流すこと及び硬化させることが可能になる。ウェハー102の配置(例えば、凸型成型インサート142に接している、凹型成型インサート141に接している、及び凹型成型インサート141と凸型成型インサート142との間でそれらから間隔を空けている)に応じて、空洞150の残りの空間を熱硬化性モノマーが充填することが可能であり得る。一実施例では、熱硬化性モノマーは、ウェハー102の凹面106とだけ接触するように流されてもよい。硬化した時点で、次いで、ウェハー102の凹面106上の光学微細構造103は、熱硬化性層によってカプセル化されてもよい。
【0041】
一実施形態では、凹型成型インサート141の曲率及び凸型成型インサート142の曲率が、結果として得られるレンズのレンズ屈折力に寄与する。一実施形態では、半仕上げレンズに関して、光学レンズの凹側に沿った曲率が固定され、光学レンズの凸側は、成型後に、例えば研削及び研磨を介して変更され得る。供給源からのポリマーの1回の注入により、単一の注入で複数の成型デバイスが充填されて、複数レンズの並行製造を可能にできるように、ポリマーを受け取るための複数のラインが連結可能であることに留意されたい。
【0042】
一実施形態では、成型デバイス内に配置する前に、ウェハー102は、例えば熱成形機械によって、球面ドーム形状に熱成形され得る。既知のデバイス及び方法を使用して、ウェハー102を熱成形できることが理解され得る。例えば、熱を加えた状態で平坦なウェハーの曲率を逐次増加させるLEMA製造の機械を使用することができる。
【0043】
一実施形態では、光学レンズは、熱硬化性ポリウレタン、アリルジグリコールカーボネート、ポリチオウレタン、エピサルファポリマー、エポキシ、ポリ(メタ)アクリレート、ポリチオメタクリレート、又はそれらの組み合わせを含んでもよく、典型的にはポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0044】
一実施形態では、ウェハー102は、(メタ)アクリル(コ)ポリマー、特にメチルPMMA、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレン及び酢酸ビニルの熱可塑性コポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリカーボネート及びポリエステルコポリマー、エチレン及びノルボルネン又はエチレン及びシクロペンタジエンコポリマーなどのシクロオレフィンコポリマー、及びこれらの組み合わせを含む、多様な適切な基板のうちの1つであってもよい。本明細書で使用する場合、「(コ)ポリマー」は、コポリマー又はポリマーを指す。(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートである。
【0045】
一実施形態によれば、ウェハー102は、ポリカーボネート(PC)製である。
【0046】
本発明によれば、「ポリカーボネート」(PC)は、ホモポリカーボネート、コポリカーボネート及びブロックコポリカーボネートを指す。ポリカーボネートは、芳香族又は非芳香族であってもよい。芳香族ポリカーボネートは、例えば、Sabicから商品名Lexan(商標)にて、帝人株式会社から商品名Panlite(登録商標)にて、Covestroから商品名Makrolon(登録商標)にて、及び三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社から商品名Iupilon(商標)にて市販されている。非芳香族ポリカーボネートは、例えば、三菱化学株式会社から商品名Durabio(商標)にて市販されている。
【0047】
それを用いて、及びここで
図2を参照して、本開示の例示的実施形態による、眼用レンズを形成する方法について説明する。
【0048】
図2は、内部に光学微細構造がカプセル化された眼用レンズを形成する方法200の説明を提供する。
【0049】
方法200のステップ205では、例えば
図1を参照して説明したように、形成チャンバの空洞と共に第1の層(例えば、熱可塑性樹脂層又は熱硬化性層)が設けられてもよい。第1の層は第1の表面及び第2の表面を有してもよく、第1の表面は、その上に形成された光学微細構造を有し、第2の表面は、第1の表面とは反対側にある。形成される所望の光学レンズの特性に基づいて、第1の層が形成チャンバの空洞内に配置されてもよい。例えば、
図3A及び
図3Bを大まかに参照すると、所望の光学レンズは、第1の層の第1の表面にだけ接触する第2の層(例えば、熱可塑性樹脂層又は熱硬化性層)を有してもよい。したがって、第1の層は、形成チャンバの空洞の中で凹型成型インサートに接して設けられてもよい。別の例では、
図3C及び
図3Dを大まかに参照すると、所望の光学レンズは、第1の層の第1の表面及び第1の層の第2の表面の両方に接触する第2の層(例えば、熱可塑性樹脂層又は熱硬化性層)を有してもよい。したがって、第1の層は、形成チャンバの空洞の中で、凹型成型インサートと凸型成型インサートとの間でそれらから間隔を空けて設けられてもよい。
【0050】
任意選択で、第1の層を第2の層の熱硬化性モノマー又は熱可塑性材料に結合させるために「プライム」するために、第1の層の第1の表面上に接着促進層が設けられてもよい。そのような修正形態が、以降の図を参照してより詳細に説明される。
【0051】
代わりに、光学微細構造は第1の層の第2の表面上に形成されてもよく、その上に第2の層を形成することができる。
【0052】
一実施形態では、第1の層の第1の表面上の光学微細構造の各々が、次元高さ、次元幅を有してもよく、光学微細構造の隣接する1つから、光学微細構造間の領域を画定する所定の距離だけ分離されていてもよい。光学微細構造間の各領域は、第1の層の第1の表面と、光学微細構造の各々の基部との間の距離を画定する次元高さを有してもよい。光学微細構造の各々は、視覚要件により要求されるような、とりわけ、半球状、矩形状、円筒状、ピラミッド状、円形、楕円形、及びプリズム状を含む多様な形状を有してもよい。各光学微細構造の曲率は、線形、曲線状、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0053】
一実施形態では、光学微細構造は、複数の方法のうちの1つにより形成されてもよい。一例では、ニッケル-プラチナメッキされたシム又はニッケル-シリコンメッキされたシムを使用して、第1の層の第1の表面上に所与の光学微細構造アーキテクチャ及び設計を型押しすることができる。別の例では、エネルギー支援インプリンティングを使用して、第1の層の第1の表面にスタンプして、そこに光学微細構造を設けてもよい。第1の層の第1の表面に光学微細構造を固化させるために、反応性材料(例えば、エネルギー硬化材料、反応性、架橋性、など)、又は相変化材料(例えば、液体-結晶性固体、液晶材料)の薄い被覆層にスタンプすることにより、インプリンティングを支援することができる。例えば、インプリンティングは、紫外線プロセスを使用してもよく、紫外線プロセスでは、第1の層の第1の表面に紫外線硬化材料の薄い被覆層が適用され、複製スタンプを使用して光学微細構造の型押しパターンが生成され、次いで、紫外線光により硬化されて、第1の層の第1の表面に光学微細構造のパターンが固化される。紫外線プロセスが使用されてよいが、一実施形態では、熱プロセス並びに電子ビームプロセスも使用されてよい。
【0054】
一実施形態では、熱可塑性樹脂の第1の表面内に光学微細構造を生成するために、フォトリソグラフィ及び/又は直接描画付加製造も使用できる。
【0055】
一実施形態では、熱硬化性樹脂の第1の表面内に光学微細構造を生成するために、フォトリソグラフィ及び/又は直接描画付加製造も使用できる。
【0056】
一実施形態では、熱可塑性樹脂の第1の表面内に光学微細構造を有する熱可塑性樹脂層を形成するために、射出成形も使用できる。
【0057】
一実施形態では、熱硬化性樹脂の第1の表面内に光学微細構造を有する熱硬化性層を形成するために、熱硬化性注型成形も使用できる。
【0058】
一実施形態では、上述したプロセスは、第1の層と同じ材料又は異なる材料であってもよい凹型の光学微細構造(すなわち、負パターン)を生成できる。光学微細構造の型押しパターンの鏡像(すなわち、正パターン)を有するロール又は平板スタンプが、流体UV硬化材料のパターンを形成するテンプレートとして使用されてもよい。パターンをセットするために、材料のUV硬化が続いてもよい。
【0059】
上記を考慮して、押型し技術は、押型し技術中に使用されるテンプレートの設計に基づいて、第1の層の第1の表面に対して凹型の光学微細構造又は凸型の光学微細構造のいずれかを生成できると理解される。
【0060】
方法200に戻ると、ステップ205において、形成チャンバの空洞内に第1の層を配置した後に、(熱硬化性層である第2の層のための)熱硬化性材料を形成チャンバの空洞の中に流し、第1の層の第1の表面に接触させることができる。一実施例では、熱硬化性材料は、熱硬化性モノマーであってもよい。方法200のステップ215において、熱硬化性材料は硬化され、それにより、形成された第2の層(例えば、熱硬化性層)を介して光学微細構造が眼用レンズ内にカプセル化される。
【0061】
任意選択の実施形態では、方法200は、ステップ220において、眼用レンズの露出表面上に保護層を堆積させることを含む。例えば、
図3Bにおけるように、眼用レンズの露出表面は熱可塑性材料の第2の表面であってもよい。別の例では、
図3Dにおけるように、眼用レンズの露出表面は、第1の層の第2の表面上に堆積された熱硬化性材料の第2の層の表面であってもよい。一実施例では、保護層は、特定の耐摩耗性及び/又は耐擦傷性特性を眼用レンズに提供するハードコーティングであってもよい。ハードコーティングは、Mithrilハードコーティング(Essilor)であってもよく、具体的には、コロイド状シリカ及びアルミニウムアセチルアセトナートを含む、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)及びジメチルジエトキシシラン(DIVIDES)の加水分解物を主成分としてもよい。保護層に関する更なる議論を、残りの図を参照して更に詳細に説明する。
【0062】
ここで、方法200の実行から生じる例示的な眼用レンズについて
図3A~
図6Bを参照して説明する。
【0063】
図3A、
図4A及び
図5Aを参照すると、眼用レンズ301は、熱可塑性樹脂層302及び熱硬化性層304を含むことができる。熱可塑性樹脂層302の第1の表面306内/上に光学微細構造303が形成されてもよい。
図4Aにおけるように、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306は、その上にある光学微細構造303が熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上にエンボス加工されて見えるように、処理されてもよい。理解され得るように、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上の光学微細構造303は半球状且つ凸型形状である。ここで
図5Aを参照すると、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306は、その上にある光学微細構造303が熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上に型押しされて見えるように、処理されてもよい。理解され得るように、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上の光学微細構造303は半球状且つ凹型形状である。
【0064】
一実施形態では、熱硬化性層304は、一般に、架橋材料(例えば、熱硬化性材料)で作製されていてもよい。具体的には、熱硬化性層304は、直鎖又は分枝鎖の脂肪族又は芳香族多価アルコールのアリルカーボネートなどのアリル誘導体の重合により得られるものであってもよい。これは、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、イソプロピルエンビスフェノール-Aビス(アリルカーボネート)、ポリ(メタ)アクリレート及びコポリマーを主成分とする基質、ポリチオ(メタ)アクリレート、熱硬化性ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリエポキシド、ポリエピスルフィド、並びにこれらのコポリマー及びこれらのブレンドを更に含んでもよい。一実施形態では、熱硬化性層304はOrma(登録商標)(Essilor)基質など、例えば、PPG IndustriesによりCR-39(登録商標)として市販されているジエチレングリコールの(共)重合ビスアリルカーボネートであってもよい。
【0065】
一実施形態によれば、熱可塑性樹脂層302(すなわち、第1の層/ウェハー)は、ポリカーボネート(PC)又はポリ(メタ)アクリレート(PMMA)であってもよい。
【0066】
例えば、第1の熱可塑性樹脂層302(すなわち、第1の層)を形成するのに適切な材料は以下のTgを有する。
【0067】
【0068】
ここで
図3Bを参照すると、
図3Aの眼用レンズ301は、熱可塑性樹脂層302の第2の表面307上に保護層308を含むように、更に変更されてもよい。保護層308は、なかでも、ウレタンコーティング、アクリルコーティング、エポキシコーティング、耐擦傷性コーティング、反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、防汚コーティング、防曇コーティング、着色コーティング、自己修復コーティング、撥水コーティング、帯電防止コーティング、抗UVコーティング、及びブルーライトカットコーティングのうちの少なくとも1つであってもよい。例えば、保護層308は、特定の耐摩耗性及び/又は耐擦傷性特性を眼用レンズ301に提供するハードコーティングであってもよい。保護層308の露出表面318が、眼用レンズ301の外部環境に面していてもよい。保護層308がハードコーティングである場合、ハードコーティングは、Mithrilハードコーティング(Essilor)であってもよい。具体的には、ハードコーティングは、コロイド状シリカ及びアルミニウムアセチルアセトナートを含む、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)及びジメチルジエトキシシラン(DIVIDES)の加水分解物を主成分としてもよい。一実施形態では、保護層308は、Mithrilハードコーティングであってもよく、3.5μmの厚さを有してもよい。
【0069】
一実施例では、Mithrilハードコーティングは、約1.5の屈折率を有してもよい。特定の例では、Mithrilハードコーティングは1.6の屈折率を有する。Mithrilハードコーティングは、3μm~6μmの厚さを有してもよく、ディップコーティングなどにより眼用レンズ301に塗布されてもよい。
【0070】
図3C、
図4B及び
図5Bを参照すると、眼用レンズ301は、熱可塑性樹脂層302、第1の熱硬化性層304、及び第2の熱硬化性層304’を含んでもよい。第1の熱硬化性層304は、前の実施例のように、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上に形成されてもよい。更に、第2の熱硬化性層304’は、熱可塑性樹脂層302の第2の表面307上に形成されてもよい。熱可塑性樹脂層302の第1の表面306内/上に光学微細構造303が形成されてもよい。
図4Bにおけるように、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306は、その上にある光学微細構造303が熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上にエンボス加工されて見えるように、処理されてもよい。理解され得るように、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上の光学微細構造303は半球状且つ凸型形状である。ここで
図5Bを参照すると、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306は、その上にある光学微細構造303が熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上に型押しされて見えるように、処理されてもよい。理解され得るように、熱可塑性樹脂層302の第1の表面306上の光学微細構造303は半球状且つ凹型形状である。
【0071】
一実施形態では、第1の熱硬化性層304及び第2の熱硬化性層304’は、一般に、架橋材料(例えば、熱硬化性材料)で作製されていてもよい。具体的には、第1の熱硬化性層304及び第2の熱硬化性層304’は、直鎖又は分枝鎖の脂肪族又は芳香族多価アルコールのアリルカーボネートなどのアリル誘導体の重合により得られるものであってもよい。これは、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、イソプロピルエンビスフェノール-Aビス(アリルカーボネート)、ポリ(メタ)アクリレート及びコポリマーを主成分とする基質、ポリチオ(メタ)アクリレート、熱硬化性ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリエポキシド、ポリエピスルフィド、並びにこれらのコポリマー及びこれらのブレンドを更に含んでもよい。一実施形態では、熱硬化性層304はOrma(登録商標)(Essilor)基質など、例えば、PPG IndustriesによりCR-39(登録商標)として市販されているジエチレングリコールの(共)重合ビスアリルカーボネートであってもよい。熱可塑性樹脂層302、第1の熱硬化性層304、及び第2の熱硬化性層304’について記載される特定の材料が、他の材料と交換又は置換されてもよいこと、例えば、他の組み合わせのなかでも、熱可塑性樹脂層302が熱硬化性層302、又は第1の熱硬化性層304が第1の熱可塑性樹脂層304、又は第2の熱硬化性層304’が第2の熱可塑性樹脂層304’であってもよいことが理解されよう。
【0072】
ここで
図3Dを参照すると、
図3Cの眼用レンズ301は、第2の熱硬化性層304の表面314上に保護層308を含むように、更に変更されてもよい。保護層308は、なかでも、ウレタンコーティング、アクリルコーティング、エポキシコーティング、耐擦傷性コーティング、反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、防汚コーティング、防曇コーティング、着色コーティング、自己修復コーティング、撥水コーティング、帯電防止コーティング、抗UVコーティング、及びブルーライトカットコーティングのうちの少なくとも1つであってもよい。例えば、保護層308は、特定の耐摩耗性及び/又は耐擦傷性特性を眼用レンズ301に提供するハードコーティングであってもよい。保護層308の露出表面318が、眼用レンズ301の外部環境に面していてもよい。
【0073】
保護層308がハードコーティングである場合、ハードコーティングは、Mithrilハードコーティング(Essilor)であってもよい。具体的には、ハードコーティングは、コロイド状シリカ及びアルミニウムアセチルアセトナートを含む、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)及びジメチルジエトキシシラン(DIVIDES)の加水分解物を主成分としてもよい。一実施形態では、保護層308は、Mithrilハードコーティングであってもよく、3.5μmの厚さを有してもよい。
【0074】
一実施例では、Mithrilハードコーティングは、約1.5の屈折率を有してもよい。特定の例では、Mithrilハードコーティングは1.6の屈折率を有する。Mithrilハードコーティングは、3μm~6μmの厚さを有してもよく、ディップコーティングなどにより眼用レンズ301に塗布されてもよい。
【0075】
ここで
図6A及び
図6Bに戻ると、方法200は、眼用レンズの層の間の界面を強化する接着促進層又は結合層の追加によって改善できる。したがって、
図6A及び
図6Bは、接着促進層を使用して形成される眼用レンズ601について示している。
【0076】
一番目に
図6Aを参照すると、
図3A、
図4A、及び
図5Aに示すのと同様に、眼用レンズ601は熱硬化性層604及び熱可塑性樹脂層602を含み、熱可塑性樹脂層602は、その第1の表面606上に光学微細構造603を有する。更に、眼用レンズ601は、熱可塑性樹脂層602の第1の表面606上に配置された接着促進層609を含んでもよい。接着促進層609は、熱可塑性樹脂層602の第1の表面606上の光学構造603に接触していてもよく、接触していなくてもよい。一実施例では、接着促進層609は、とりわけ、感圧性接着剤若しくはホットメルト接着剤などの接着剤系、コロナを介する表面活性化方法、又はプラズマ若しくはオゾンを介する表面活性化方法であってもよい。一実施例では、接着促進層609は、アクリルモノマー、又はアクリルモノマーと、アリル、ビニル、アクリル、チオール、イソシアネート、エポキシ、及びアミンを含む群から選択される反応基を有するアルコキシシランとの混合物、並びに、UVI-6976などの陽イオン光開始剤、及びDAROCUR 1173などの遊離基光開始剤を含む光活性触媒、を含むプライマーコーティングであってもよい。
【0077】
二番目に
図6Bを参照すると、
図3C、
図4B、及び
図5Bに示すのと同様に、眼用レンズ601は、第1の熱硬化性層604、第2の熱硬化性層604’、及び熱可塑性樹脂層602を含み、熱可塑性樹脂層602は、その第1の表面606上に光学微細構造603を有する。
図6Aにおけるように、眼用レンズ601は、熱可塑性樹脂層602の第1の表面606上、及び熱可塑性樹脂層602の第2の表面607上に配置された接着促進層609を更に含んでもよい。接着促進層609は、第1の熱硬化性層604及び第2の熱硬化性層604’のそれぞれと接触するように構成されてもよい。第1の熱硬化性層604と熱可塑性樹脂層602との間の接着促進層は、熱可塑性樹脂層602の第1の表面606上の光学微細構造603に接触していてもよく、接触していなくてもよい。一実施例では、接着促進層609は、とりわけ、感圧性接着剤若しくはホットメルト接着剤などの接着剤系、コロナを介する表面活性化方法、又はプラズマ若しくはオゾンを介する表面活性化方法であってもよい。一実施形態では、熱可塑性樹脂層602は、代わりに他の熱硬化性層であってもよい。
【0078】
ここでも、熱可塑性樹脂層602、第1の熱硬化性層604、及び第2の熱硬化性層604’について記載される特定の材料が、他の材料と交換又は置換されてもよいこと、例えば、他の組み合わせのなかでも、熱可塑性樹脂層602が熱硬化性層602、又は第1の熱硬化性層604が第1の熱可塑性樹脂層604、又は第2の熱硬化性層604’が第2の熱可塑性樹脂層604’であってもよいことが理解されよう。
【0079】
図8は、別の実施形態による、内部に光学微細構造がカプセル化された眼用レンズを形成する方法800の説明を提供し、ここでは、異なるガラス転移温度を有する熱硬化性層及び熱可塑性樹脂層の代わりに、異なるガラス転移温度を有する2層の熱可塑性樹脂層が使用される。
【0080】
方法800のステップ805では、例えば
図1を参照して説明したように、形成チャンバの空洞の中に第1の熱可塑性樹脂層が設けられてもよい。熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂層の第1の表面上に形成された光学微細構造を有することができる。方法800のステップ810において、形成チャンバの空洞の中に熱可塑性材料が流され、第1の熱可塑性材料の表面に接触して、第2の熱可塑性樹脂層が形成され得る。ステップ815において、第2の熱可塑性材料は冷却されて、微細構造がカプセル化されたレンズが形成される。形成チャンバの空洞の中に流された材料が第2の熱可塑性樹脂である場合、第1の熱可塑性樹脂層のガラス転移温度が第2の熱可塑性樹脂層のガラス転移温度よりも高く、第1の熱可塑性樹脂層及び第2の熱可塑性樹脂層は混和性官能基を有する。一実施例では、第1の熱可塑性樹脂層は147℃のガラス転移温度を有するビスフェノール-Aポリカーボネートであってもよく、PMMAの第2の熱可塑性樹脂層は120℃のガラス転移温度を有し、混和性官能基を有する。
【0081】
ここで上記のプロセスに従って製作される眼用レンズについて説明する。例示的なレンズを標準的な技術により製作し評価した。
【実施例】
【0082】
実験は、熱可塑性樹脂ウェハー(1.591のe線屈折率を有するPC)を用いて熱硬化性材料(1.665のe線屈折率を有するMR 7)を注型成形することを含む。使用される材料は、表1におけるようなものである。
【0083】
【0084】
最初の試験を、裏面にパターニングされた光学微細構造又はマイクロレンズを保持するPC半仕上げレンズ(ベース3.25)を用いて実施した。半仕上げレンズをサーフェシングにより薄くして、ウェハーとして使用するのに適切な厚さを得た。サーフェシングの後、ウェハーをイソプロピルアルコールで洗浄して塵埃及び汚染を除去した。次いで、ウェハーは、標準鉱物後部金型(80mm)と対にされて、所望の中心厚さにおいてテーパー形成された。換言すれば、
図1を参照すると、ウェハーは凹型成型インサート141を形成し、標準鉱物後部金型は凸型インサート142を形成し、それらの間の空間が所望の中心厚さを決定する。標準鉱物後部金型は、標準MR 7金型であってもよい。
【0085】
この例では、熱硬化性材料はモノマー配合物である。モノマー混合物は、表1の成分を計量及び混合することにより製造できる。混合は、真空接続部下での窒素ガスの適用を含んでもよい。混合は、最初に、モノマーMR 7 A、続いてDMC、UV 701、及びZelec UNを添加することを含んでもよい。混合物は、均質になるまで真空下で混合されてもよい。次いで、攪拌機は冷却され得る。冷却に続き、MR7 B及び青味剤が添加され真空下で混合され得る。
【0086】
以前に準備された金型(すなわち、ウェハー及び標準鉱物後部金型)を、洗浄されたシリンジを使用して、準備された熱硬化性モノマーで充填することができ、重合は調整電子オーブンにおいて実現できる。例えば、重合反応を以下のサイクルに従って電子オーブンにおいて実施することができる:(1)約10~20℃にて12時間、(2)7時間にわたって約5℃/時間~25℃/時間の割合で20℃から120℃まで温度を規則的に増加、(3)約100~120℃にて4時間。重合の後、アセンブリをオーブンから除去し、標準鉱物後部金型を分解することができる。このとき、熱可塑性樹脂層又は凹型成型インサート141は最終レンズの一部である。
【0087】
分解の後、眼用レンズ及び凸型成型インサートを洗浄した。眼用レンズを、浸漬し、界面活性剤溶液中で超音波処理し、リンスし、乾燥させた。凸型成型インサートを、熱濃硫酸中で洗浄し、水でリンスした。
【0088】
次いで、形成された眼用レンズを従来の試験技術に従って評価した。例えば、測定値は、パーセント(%)透過率、材料を通過する光の測定値、紫外線カット、透過率が1%よりも低い最大の波長の測定値、黄色度指数(YI)、(ASTM D1003標準に従う)三刺激値(X、Y、Z)からの測色計算、並びに、マイクロレンズ屈折力(例えば、中心、グローバル、周辺)、Rx屈折力(例えば、球体、円筒、円筒軸)、レンズ幾何中心、マイクロレンズネットワーク中心、及びRx光学的中心を含む光学的特性、を含む。そのような光学的特性及び他のレンズ特徴が、そのような目的に専用のソフトウェア及びハードウェアシステムにより測定できる。
【0089】
本明細書に記載される方法に従って準備された眼用レンズの結果を表2に示す。列挙した各特性の値は、確立されたレンズ性能要件を満たすことが分かる。最も重要なことに、撮像デバイスで(例えば、Jarvis Clear-Readerと呼ばれるEssilorの分析ツールを使用して)測定されたマイクロレンズの全体的屈折力平均は、
図7に示す設計目標と一致している。本発明によれば、「全体的平均屈折力」は、眼用レンズのマイクロレンズの屈折力プロファイルを測定する。例示された実施形態によれば、マイクロレンズはR01~R11(光学微細構造のパターン)などの同心リング状に配置され、1つのリング(例えば、R01)の中に位置するマイクロレンズがマイクロレンズのセットを形成する。この場合、全体的屈折力を平均化するために考慮されるマイクロレンズのセットは、同じ「リング」内にある全てのマイクロレンズに対応する。
【0090】
【0091】
上記から理解できるように、本開示の方法は、熱可塑性樹脂用に開発されたものと類似の近視制御及び他の機能を有する熱硬化性レンズの生産を可能にする。この開発は、消費者が材料に依存しない革新的な製品にアクセスするために重要である。
【0092】
実施例1(本発明)-実験は、熱可塑性樹脂ウェハー(PC)を熱可塑性材料(PMMA)でオーバーモールドすることを含む。
【0093】
Sabic Lexan(商標)OQ3820、すなわち1.591の屈折率及び約147℃のガラス転移温度を有するビスフェノール-Aポリカーボネートを使用して、凹面上に凸型光学微細構造(マイクロレンズ)を有するφ76mm CT 1.1mmの平面PCウェハーを射出成形により作製した。
図1を参照すると、ウェハー102(例えば、熱可塑性樹脂ウェハー又は熱硬化性ウェハーであるが、これらに限定されない)が、標準クロムメッキされた凹型成型インサート141の凹面に接して配置され、標準クロムメッキされた鋼製インサートが、凸型成型インサート142を形成し、これらの間の空間が所望の厚さを決定した。マイクロレンズのカプセル化を、1.513の屈折率及び120℃のガラス転移温度を有するRoehm America ACRYLITE(登録商標) hw55 PMMAを使用して実行した。オーバーモールドプロセスのための溶融温度及び金型温度をそれぞれ240℃及び100℃に設定した。結果PC/PMMA複合レンズのマイクロレンズ屈折力を撮像デバイスを使用して測定した。
【0094】
図9は、本開示の一実施形態による、PC/PMMA複合レンズの光学画像である。
図9から分かるように、複合レンズの画像は、マイクロレンズとベースレンズとの間の非常に明確に定義された境界を示し、各リングにおけるマイクロレンズの全体的屈折力平均は予想通りであった。したがって、これは、マイクロレンズの形状完全性が保存されていることを示唆する。更に、PC/PMMA複合レンズを、HMC及びRxサーフェシング/エッジングプロセスに通した。その結果、2つの層は分離されなかった。これはPCとPMMAとの間の結合が強いことを示す。この結果はまた、PC及びPMMAが、それらの反復する化学構造ユニットにおいてエステル基が類似していることに起因して混和性を有することを証明している。
【0095】
実施例2(比較例)-凹面上に凹型マイクロレンズを有するφ76mm CT 1.1mmの平面ACRYLITE(登録商標) hw55 PMMAウェハー(120℃のTg)を射出成形により作製した。実施例1に記載されるプロセスの後、Lexan(登録商標)OQ3820 PC(147℃のTg)を使用してマイクロレンズのカプセル化を実施した。オーバーモールドプロセスのための溶融温度及び金型温度をそれぞれ270℃及び110℃に設定した。
【0096】
図10は、比較例としてのPC/PMMA複合レンズの光学画像である。
図10から分かるように、実施例1におけるPC/PMMAの場合とは異なり、複合レンズの画像は、マイクロレンズとベースレンズとの間にぼやけた境界を示した。各リングにおけるマイクロレンズの全体的屈折力平均は測定可能ではなかった。この結果は、マイクロレンズが変形したこと、及びPMMA/PC界面において相互拡散が生じたことを示唆する。それでもやはり、PC/PMMA複合レンズは、層間剥離を生じることなくRxサーフェシング/エッジングプロセスを通過した。これは、PMMAとPCとの間の結合が、それらの反復する化学構造ユニットにおける類似のエステル基に起因して、強いことを示している。
【0097】
実施例3(本発明)-実験は、熱可塑性樹脂ウェハー(PC)を熱可塑性材料(Durabio)でオーバーモールドすることを含む。
【0098】
Sabic Lexan(商標)OQ3820、すなわち1.591のe線屈折率及び約147℃のガラス転移温度を有するビスフェノール-Aポリカーボネートを使用して、凸型マイクロレンズを有するφ76mm CT 1.1mmの平面PCウェハーを射出成形により作製した。
図1を参照すると、ウェハー102(例えば、熱可塑性樹脂ウェハー又は熱硬化性ウェハーであるが、これらに限定されない)が、標準クロムメッキされた凹型成型インサート141の凹面に接して配置され、標準クロムメッキされた鋼製インサートが、凸型成型インサート142を形成し、これらの間の空間が所望の厚さを決定した。マイクロレンズのカプセル化を、三菱化学株式会社のDURABIO(商標)D7340R、すなわち、1.507の屈折率及び125℃のガラス転移温度を有するバイオベースのイソソルビドポリカーボネートを金型の中に入れることにより実施した。射出オーバーモールドプロセスのための溶融温度及び金型温度をそれぞれ240℃及び100℃に設定した。
【0099】
図11Aは、本開示の一実施形態による、PC/Durabio複合レンズの光学画像である。
図11Aから分かるように、複合レンズの画像は、マイクロレンズ間の非常に明確に定義された境界を示す。
【0100】
図11Bは、本開示の一実施形態による、眼用レンズの各リングにおけるマイクロレンズの全体的屈折力平均のグラフである。一実施形態では、結果として生じるPC/Durabio複合レンズのマイクロレンズ屈折力を、撮像デバイスを使用して測定した。マイクロレンズの全体的屈折力平均は、
図11Bに示す設計目標に一致している。更に、PC/Durabio複合レンズは、層間剥離を生じることなくHMC及びRxサーフェシング/エッジングプロセスを通過した。これは、PCとDurabioとの間の結合が強いことを示している。この結果はまた、PC及びDurabioが、それらの反復する化学構造ユニットにおいて炭酸エステル基が類似していることに起因して混和性を有することを証明している。
【0101】
実施例4(比較例)-凹面上に凹型マイクロレンズを有するφ76mm CT 1.1mmの平面DURABIO(商標)D7340Rウェハー(125℃のTg)を射出成形により作製した。実施例3に記載されるプロセスの後、Lexan(登録商標)OQ3820 PC(147℃のTg)を使用してマイクロレンズのカプセル化を実施した。射出オーバーモールドプロセスのための溶融温度及び金型温度をそれぞれ270℃及び110℃に設定した。
【0102】
図12は、各リングにおけるマイクロレンズの全体的屈折力平均のグラフである。結果として生じるDurabio/PC複合レンズのマイクロレンズ屈折力を撮像デバイスを使用して測定した。
図12に示すように、実施例3におけるPC/Durabioの場合とは異なり、各リングにおけるマイクロレンズの全体的屈折力平均は予想される結果を下回っており、これは、マイクロレンズが射出オーバーモールディング中に平坦化されたことを示唆する。それでもやはり、Durabio/PC複合レンズは、層間剥離を生じることなくRxサーフェシング/エッジングプロセスを通過した。これは、DurabioとPCとの間の結合が、それらの反復する化学構造ユニットにおける類似の炭酸エステル基に起因して、強いことを示している。
【0103】
明らかに、上記教示を考慮すれば多くの修正及び変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本開示の実施形態を、本明細書で具体的に説明した形態以外で実施してもよいことを理解すべきである。
【0104】
本開示の実施形態は、以下の括弧内の番号で示される通りでもあり得る。
【0105】
(1)第1の層(602)であって、第1の層(602)は、第1の層(602)の第1の表面(606)上に微細構造(603)を有し、第1の層(602)は、第1の層(602)の第1の表面(606)上に微細構造(603)は一定のパターンで形成され、第1の層(602)の材料が熱可塑性材料である、第1の層(602)と;第1の層(602)の第1の表面(606)上に形成された第2の層(604)であって、第1の層(602)のガラス転移温度が第2の層(604)のガラス転移温度よりも高い、第2の層(604)と、を備える眼用レンズ(601)。
【0106】
(2)第1の層(602)の屈折率は第2の層(604)の屈折率とは異なる、(1)に記載の眼用レンズ。
【0107】
(3)微細構造(603)の各微細構造は正屈折力小型レンズである、(1)又は(2)のいずれかに記載の眼用レンズ。
【0108】
(4)第2の層(604)の材料が熱硬化性材料又は熱可塑性材料である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の眼用レンズ。
【0109】
(5)第1の層(602)の第1の表面(606)上、及び第1の層(602)と第2の層(604)との間に堆積された接着促進層(609)を更に備える、(1)~(4)のいずれか1つに記載の眼用レンズ。
【0110】
(6)第1の層(602)の第2の表面(607)上に配置された第3の層(604’)を更に備え、第1の層(602)の第2の表面(607)は第1の層(602)の第1の表面(606)とは反対側にあり、第2の層(604)の材料が熱硬化性材料であり、第3の層(604’)の材料が熱硬化性材料である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の眼用レンズ。
【0111】
(7)第1の層(602)の第2の表面(607)上、及び第1の層(602)と第3の層(604’)との間に堆積された接着促進層(609)を更に備える、(1)~(6)のいずれか1つに記載の眼用レンズ。
【0112】
(8)第1の層(602)の第2の表面(607)及び第2の層(604)の露出表面のうちの少なくとも1つの上に堆積された少なくとも1つの保護層(308)を更に備え、第1の層(602)の第2の表面(607)は、第1の層(602)の第1の表面(606)とは反対側にあり、第2の層(604)の露出表面は、第1の層(602)に接触しない第2の層(604)の表面である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の眼用レンズ。
【0113】
(9)カプセル化された小型レンズを有する眼用レンズを形成する方法であって、方法は、形成チャンバの空洞の中に第1の層(602)を提供することであって、第1の層(602)は、第1の層(602)の第1の表面(606)上に微細構造(603)を有し、第1の層(602)の第1の表面(606)上の微細構造(603)は一定のパターンで形成され、第1の層(602)の材料が熱可塑性材料である、ことと;形成チャンバの空洞の中に第2の材料を流し、第1の層(602)の第1の表面(606)に接触させることと;第1の層(602)の第1の表面(606)上に第2の層(604)を形成するように第2の材料を設定することと、を含み、第1の層(602)のガラス転移温度が第2の層(604)のガラス転移温度よりも高い、方法。
【0114】
(10)第1の層(602)の屈折率は第2の層(604)の屈折率とは異なる、(9)に記載の方法。
【0115】
(11)第2の層(604)の材料が熱硬化性材料又は熱可塑性材料である、(9)又は(10)のいずれかに記載の方法。
【0116】
(12)第1の層(602)の第1の表面(606)上、及び第1の層(602)と第2の層(604)との間に接着促進層(609)を堆積させることを更に含む、(9)~(11)のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
(13)第1の層(602)の第2の表面(607)及び第2の層(604)の露出表面のうちの少なくとも1つの上に保護層(308)を堆積することを更に含み、第1の層(602)の第2の表面(607)は、第1の層(602)の第1の表面(606)とは反対側にあり、第2の層(604)の露出表面は、第1の層(602)に接触しない第2の層(604)の表面である、(9)~(12)のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
(14)第2の材料は熱硬化性材料であり、形成チャンバの空洞の中に第2の材料を流すことは、形成チャンバの空洞の中に第2の材料を流して、第1の層(602)の第1の表面(606)及び第1の層(602)の第2の表面(607)に接触させることを更に含み、第1の層(602)の第2の表面(607)は第1の層(602)の第1の表面(606)とは反対側にあり、第2の材料を設定することは、第2の材料を硬化させて、第1の層(602)の第1の表面(606)上に第2の層(604)を形成することと、第1の層(602)の第2の表面(607)上に第3の層(604’)を形成することとを更に含む、(9)~(13)のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
(15)第1の層(602)及び第2の層(604)は混和性官能基を有する、(9)~(14)のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
(16)カプセル化された小型レンズを有する眼用レンズを形成する方法であって、方法は、形成チャンバの空洞の中に第1の層(602)を提供することであって、第1の層(602)は、第1の層(602)の第1の表面(606)上に微細構造(603)を有し、第1の層(602)の第1の表面(606)上の微細構造(603)は一定のパターンで形成されている、ことと、形成チャンバの空洞の中に熱可塑性材料を流し、第1の層の表面に接触させることと、熱可塑性材料を冷却して、第1の層の表面上に第2の層を形成させることと、を含み、第1の層のガラス転移温度が第2の層のガラス転移温度よりも高く、第1の層及び第2の層は混和性官能基を有する、方法。
【0121】
(17)第1の層の屈折率は第2の層の屈折率とは異なる、(16)に記載の方法。
【0122】
(18)各微細構造は凸面小型レンズ又は凹型小型レンズである、(1)~(8)のいずれか1つに記載の眼用レンズ。
【0123】
(19)保護層(308)は、ウレタンコーティング、アクリルコーティング、エポキシコーティング、耐擦傷性コーティング、反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、防汚コーティング、防曇コーティング、着色コーティング、自己修復コーティング、撥水コーティング、帯電防止コーティング、抗UVコーティング、及びブルーライトカットコーティングのうちの少なくとも1つを含む、(1)~(8)のいずれか1つに記載の眼用レンズ。
【0124】
(20)第1の層(602)であって、第1の層(602)は、第1の層(602)の第1の表面(606)上に微細構造(603)を有し、第1の層(602)は、第1の層(602)の第1の表面(606)上の微細構造(603)は一定のパターンで形成され、第1の層(602)の材料が熱硬化性材料である、第1の層(602)と;第1の層(602)の第1の表面(606)上に形成された第2の層(604)であって、第1の層(602)のガラス転移温度が第2の層(604)のガラス転移温度よりも高い、第2の層(604)と、を備える眼用レンズ(601)。
【0125】
したがって、上記議論は、単に本開示の例示的実施形態を開示し記載しているに過ぎない。当業者ならば理解するように、本開示は、本開示の趣旨又は基本特性から逸脱することなく他の特定の形態で具体化されてもよい。したがって、本開示の実施形態は、本開示の範囲並びに他の請求項の限定ではなく例示であることが意図される。本開示は、本明細書における教示の容易に認識できるあらゆる変形を含め、本発明の趣旨が公共に捧げられないように上述の請求項の用語の範囲を部分的に定義する。
【符号の説明】
【0126】
102 ウェハー
103 光学微細構造
106 第1の表面、凹面
107 第2の表面、凸面
141 凹型成型インサート
142 凸型成型インサート
150 空洞
160 中空ライン
301 眼用レンズ
302 熱可塑性樹脂層
303 光学微細構造
304 熱硬化性層
306 第1の表面
307 第2の表面
308 保護層
314 表面
318 露出表面
601 眼用レンズ
602 第1の層
603 光学微細構造
604 第2の層
606 第1の表面
607 第2の表面
609 接着促進層
【国際調査報告】