IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

特表2024-545493安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法
<>
  • 特表-安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法 図1
  • 特表-安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法 図2
  • 特表-安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法 図3
  • 特表-安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法 図4
  • 特表-安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-09
(54)【発明の名称】安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20241202BHJP
   H01M 10/0563 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241202BHJP
【FI】
H01M50/204 401Z
H01M10/0563
H01M10/052
H01M50/204 401D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532774
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022083019
(87)【国際公開番号】W WO2023104524
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021132739.3
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヴェールレ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シャルナー・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ユング・ローラント
(72)【発明者】
【氏名】アーダム・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
5H029
5H040
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AM01
5H040AA34
5H040AS04
5H040DD26
(57)【要約】
本発明は、貯蔵ハウジング(12)と、貯蔵ハウジング(12)内に配置されており、かつ、二酸化硫黄をベースとする電解質を含む少なくとも1つの電池セル(14)とを備える電池貯蔵装置(10)に関し、電池貯蔵装置(10)が、供給装置(34)を備える安全装置を有し、供給装置(34)は電解質を中和するための添加剤(16)を含み、かつ貯蔵ハウジング(12)内に添加剤(16)を放出するように設計されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵ハウジング(12)と、貯蔵ハウジング(12)内に配置されており、かつ、二酸化硫黄をベースとする電解質を含む少なくとも1つの電池セル(14)とを備える電池貯蔵装置(10)であって、電池貯蔵装置(10)が、供給装置(34)を備える安全装置を有し、供給装置(34)は電解質を中和するための添加剤(16)を含み、かつ貯蔵ハウジング(12)内に添加剤(16)を放出するように設計されている、前記電池貯蔵装置(10)。
【請求項2】
添加剤(16)が塩基を含み、水溶液中に存在し、塩基が好ましくは炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物および水酸化物ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の電池貯蔵装置(10)。
【請求項3】
供給装置(34)が、添加剤(16)を含むリザーバー(26)と、リザーバー(26)に接続されたポンプ(22)とを有し、ポンプ(22)が、バルブ(20)を介して、貯蔵ハウジング(12)内に配置された分配器(18)に接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電池貯蔵装置(10)。
【請求項4】
安全装置が監視装置(36)をさらに備え、監視装置(36)が、電池制御システム(30)と、電池制御システム(30)に接続されたセンサユニット(28)とを備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つに記載の電池貯蔵装置(10)。
【請求項5】
センサーユニット(28)が、光学センサー、圧力センサー、温度センサーおよび化学センサーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の電池貯蔵装置(10)。
【請求項6】
前記センサユニット(28)が、ガス状の二酸化硫黄を検出するための分光式ガスセンサー(39)であることを特徴とする請求項4または5に記載の電池貯蔵装置(10)。
【請求項7】
センサーユニット(28)が、電池セル(14)からの電解液の漏出を検出し、そこからデータを生成し、電池制御システム(30)に転送するように設計されていることを特徴とする、請求項4~6のいずれか1つに記載の電池貯蔵装置(10)。
【請求項8】
電池制御システム(30)が、センサーユニット(28)からデータを受信し、作動シナリオまたは非作動シナリオに関してそれを評価するために設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の電池貯蔵装置(10)。
【請求項9】
前記電池制御システム(30)は、作動シナリオが存在する場合には、添加剤(16)が貯蔵ハウジング(12)内の分配器(18)によって放出されるように、供給装置(34)を作動するようにさらに設計されていることを特徴とする、請求項8に記載の電池貯蔵装置(10)。
【請求項10】
請求項9に記載の電池貯蔵装置(10)の安全装置を作動する方法であって、以下のステップ
a) 監視装置(36)のセンサユニット(28)により、貯蔵ハウジング(12)内の電池セル(14)からの電解液の漏出を検知し、その際、そこからデータが生成され、電池制御システム(30)に転送されるステップ、
b) 電池制御システム(30)により、作動シナリオまたは非作動シナリオの有無に関して前記データの評価するステップ、
c) 作動シナリオを認識するステップ、
d) 添加剤(16)が貯蔵ハウジング(12)内に放出されるように、供給装置(34)を作動させるステップ、
を含むことを特徴とする前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全装置を備えた電池貯蔵装置および安全装置を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルは、多くの技術分野で非常に重要である。例えば、電気化学セルはノートパソコン、電気自転車、携帯電話などのモバイル・アプリケーションに使われている。電気化学セルの利点のひとつは、直列または並列に接続して、より高いエネルギーを持つ電池を形成できることである。このような電池は、いわゆる電池貯蔵装置(電池貯蔵システム)と組み合わせることができ、とりわけ高電圧用途にも適している。例えば、電池貯蔵装置は、自動車の電気駆動を可能にし、定置エネルギー貯蔵装置として使用することができる。
【0003】
以下では、「電気化学セル」という用語は、セル、電池セル、アキュムレータ、バッテリーアキュムレータ、二次電池など、充電可能なガルバニック素子について当技術分野で一般的に使用されているすべての用語と同義に使用される。
【0004】
電気化学セルは、放電過程において外部回路に電子を供給することができる。逆に、電気化学セルは、電子を供給することによって、外部回路を使用して充電プロセス中に充電することができる。
【0005】
電気化学セルには少なくとも2つの異なる電極、正極(カソード)と負極(アノード)がある。両電極は、電気絶縁体であるセパレータと接触している。例えば、液体電解質組成物を含浸させた多孔性ポリオレフィン製セパレータが当技術分野で使用されている。セパレータは、2つの電極を空間的に互いに分離し、2つの電極をイオン伝導的に互いに接続する。
【0006】
最も一般的に使用されている電気化学電池は、リチウムイオン電池としても知られているリチウムイオン電池である。先行技術のリチウムイオン電池は、通常、複合アノードを有し、この複合アノードは、非常に多くの場合、炭素ベースのアノード活物質、典型的にはグラファイトカーボンからなり、このアノード活物質は、通常、金属銅担体箔上に電極バインダーで被覆されている。原則として、複合カソードはカソード活物質、例えば層状酸化物、バインダー、導電性添加剤からなり、これらは例えば圧延アルミニウム集電箔に塗布される。層状酸化物は、しばしば、LiCoOまたはLiNi1/3Mn1/3Co1/3からなる。
【0007】
リチウムイオン電池は一般的に、充電放電プロセスにおいてカソードとアノードの間の電荷平衡化を保証する液体電解質組成物を有する。このために必要な電流の流れは、電解質組成物中の導電性塩のイオン輸送によって達成される。リチウムイオン電池では、導電性塩はリチウム導電性塩(例えばLiPF、LiBF)である。
【0008】
電解質組成物は、リチウム伝導性塩に加えて、伝導性塩の解離とリチウムイオンの十分な移動度を可能にする溶媒を含む。直鎖状および環状ジアルキルカーボネートからなる液体有機溶媒は、先行技術から知られている。原則として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物が使用される。ここで挙げた溶媒はそれぞれ、与えられたセル電圧下で安定に機能する特定の安定性範囲を持っている。この範囲は電圧ウィンドウとも呼ばれる。電気化学セルは、この電圧ウィンドウの範囲内で安定的に作動することができる。電圧ウィンドウの限界に近づくと、電解質組成物の成分の電気化学的酸化または還元が起こる。そのため、異なるセル電圧に対してより安定した電解質を使用する努力がなされている。
【0009】
したがって、二酸化硫黄を溶媒とする無機電解質を用いたリチウムイオン電池は、有機電解質を用いたリチウムイオン電池のさらなる発展を意味する。二酸化硫黄をベースとする安定な電解質組成物のための様々なアプローチが、当該技術分野において知られている。特に、二酸化硫黄をベースとする電解質組成物は、イオン伝導性が向上しているため、電池セルの安定性に悪影響を及ぼすことなく、高放電電流での電池セルの動作を可能にする。さらに、二酸化硫黄をベースとする特定の電解質組成物は、その上限電圧の増加により、特に高いエネルギー密度を有するセルの構築に適している。特に、二酸化硫黄をベースとする電解質を用いたセルは、従来の有機電解質およびLiPF含裕の導電性塩を含むセルよりも高い電圧限界を有する。
【0010】
EP1201004B1は、二酸化硫黄をベースとする電解質を用いた二次電池を開示している。二酸化硫黄は添加剤として添加されているのではなく、電解質組成物の導電性塩の溶媒としての主成分である。したがって、電極間のイオン輸送に影響を及ぼす導電塩のリチウムイオンの移動度を、少なくとも部分的に確保する必要がある。提案されたセルでは、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl)が、リチウム含有導電塩として、遷移金属酸化物、特にコバルト酸リチウム(LiCoO)などのインターカレーション化合物からのカソード活物質と組み合わせて、使用されている。二酸化硫黄含有電解質組成物に塩添加剤、例えばフッ化リチウム、塩化ナトリウム、塩化リチウムなどのハロゲン化アルカリを添加することにより、機能する充電可能なセルが得られた。
【0011】
EP2534719B1には、カソード活物質としてリン酸鉄リチウム(LFP)と組み合わせた二酸化硫黄ベースの電解質を用いた二次電池用リチウム電池セルが記載されている。テトラクロロアルミン酸リチウムは、電解質組成における好ましい導電性塩として使用された。これらの成分をベースにしたセルのテストでは、セルの高い電気化学抵抗が実証された。
【0012】
WO2015/043573A2には、ハウジング、カソード、アノード、および二酸化硫黄と導電性塩とを含む電解質を備える電気化学二次電池セルが記載されており、電極の少なくとも1つは、ポリマーからなるバインダーAからなる群から選択されるバインダーを含む。バインダーAは、共役カルボン酸のモノマー構造単位、またはこの共役カルボン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニウム塩、またはこれらの組み合わせからなるポリマー、およびバインダーBは、スチレンおよびブタジエンのモノマー構造単位をベースとするポリマー、またはバインダーAとBの混合物からなる群から選択される。
【0013】
WO2021/019042A1には、活性金属、カソード活物質としての層状酸化物、および二酸化硫黄を含む電解質を備えた二次電池セルが記載されている。多くの一般的なリチウム伝導性塩の二酸化硫黄への溶解性が低いため、式M[Z(OR)] の伝導性塩が電池に使用された。式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属および周期表第12族の金属からなる群から選択される金属を表し、Rは炭化水素残基である。アルコキシ基-ORはそれぞれ、アルミニウムまたはホウ素であってもよい中心原子に結合している。好ましい実施形態において、セルは式Li[Al(OC(CF ]のパーフルオロ導電性塩を含む。記載された成分からなるセルは、実験的研究において安定した電気化学的性能を示す。さらに、導電性塩、特にパーフルオロ化アニオンは驚くべき加水分解安定性を示す。さらに、電解質は5.0Vの上限電位まで酸化に対して安定であると示されている。また、開示された電解質を用いたセルは、-41℃までの低温で放電または充電できることが示された。
【0014】
さらに、未公開のドイツ特許出願第102021118811.3号は、電気化学セル用の二酸化硫黄をベースとする液体電解質組成物を開示している。この電解質組成物は、以下の成分を含む:A)二酸化硫黄;B)少なくとも1つの塩であって、該塩が少なくとも1つの二座配位子を有するアニオン性複合体を含む塩。アニオン性錯体の対イオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属および周期表第12族の金属からなる群から選択される金属カチオンである。複合体(錯体)の中心イオンZは、アルミニウムおよびホウ素からなる群から選択される。二座配位子は、中心イオンZと、中心イオンZとブリッジ残基に結合した2個の酸素原子とで環を形成し、これにより環は、2~5個の炭素原子の連続した配列を含む。さらに、上記の電解質組成を有する電気化学セル、特にリチウムイオン電池が提案されている。
【0015】
加えて、二酸化硫黄をベースとする電解質を有するセルは、EP3703161A1、EP2227838B1、EP2742551B1、EP3771011A2、WO2005/031908A2、およびWO2014/121803A1から公知であり、ここで参照される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】EP1201004B1
【特許文献2】EP2534719B1
【特許文献3】WO2015/043573A2
【特許文献4】WO2021/019042A1
【特許文献5】独国特許出願第102021118811.3号
【特許文献6】EP3703161A1
【特許文献7】EP2227838B1
【特許文献8】EP2742551B1
【特許文献9】EP3771011A2
【特許文献10】WO2005/031908A2
【特許文献11】WO2014/121803A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
電池セル、特に二酸化硫黄をベースとする電解質組成を有するリチウムイオン電池セルの欠点は、セルに機械的、電気的または熱的欠陥が生じた場合にセルが開くことである。このようなセル開放の場合、電解質成分、特に二酸化硫黄のようなガス状の電解質成分がセルから放出される可能性がある。
【0018】
本発明は、二酸化硫黄を主成分とする電解液を使用したセルがそのような損傷を受けた場合に、電解液が環境中に漏出(流出)するのを防止するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、この問題は、請求項1に記載の、貯蔵ハウジングと、二酸化硫黄をベースとする電解質を備えた少なくとも1つの電池セルを備えた電池貯蔵装置によって解決される。
【0020】
本発明による電池貯蔵装置の有利な実施形態は、従属請求項および図に示されており、これらは任意に互いに組み合わせることができる。
【0021】
本発明によれば、この課題は、貯蔵ハウジングと、貯蔵ハウジングの内部に配置されており、および、二酸化硫黄をベースとする電解質を含む少なくとも1つの電池セルとを備えた電池貯蔵装置によって解決される。この電池貯蔵装置は、電解液を中和するための添加剤を含み、貯蔵ハウジング内で添加剤を放出するように設計されている供給装置を備えた安全装置を備えている。
【0022】
本発明の基本的な考え方は、電池貯蔵装置が、添加剤を放出することによってセルから流出する二酸化硫黄ベースの電解液を中和または結合させ、電解液が環境中に流出するのを防ぐ安全装置を備えていることである。
【0023】
好ましくは、電池貯蔵装置は車両に搭載され、車両の電気駆動に使用される。もちろん、このような車両に複数の電池貯蔵装置を搭載することもできる。
【0024】
本発明の目的において、電池貯蔵装置とは、少なくとも1つの電池セル、好ましくは複数の電池セルが配置された電池貯蔵装置の内部空間中の貯蔵ハウジングを指す。電池セルは、より高いレベルのエネルギーを供給するために、貯蔵ハウジング内で相互に接続することができる。
【0025】
電池セルは、二酸化硫黄をベースとする電解質を備えた電気化学セルである。好ましくは、電池セルはリチウムイオン電池である。
【0026】
本発明は、二酸化硫黄をベースとする電解質組成物に関してさらに限定されるものではない。したがって、従来技術で慣用されている二酸化硫黄をベースとする電解質組成物はすべて使用することができる。
【0027】
特に、二酸化硫黄をベースとする電解質は、二酸化硫黄を成分として含む液体電解質組成物と理解される。二酸化硫黄は、電解質組成物中に、液体、気体または複合体に結合した形態で存在することができる。
【0028】
このような電解質組成物の好適な例は、EP1201004B1、EP2534719B1、WO2015/043573A2、WO2021/019042A1、EP3703161A1、EP2227838B1、EP2742551B1、EP3771011A2、WO2005/031908A2およびWO2014/121803A1、ならびにまだ公開されておらず、ここで参照されるドイツ特許出願第102021118811.3号から公知である。
【0029】
セルが機械的、熱的、電気的に損傷した場合、二酸化硫黄をベースとする電解液が漏れた場合、電池貯蔵装置は安全装置を備えている。この安全装置は、電解液を中和または結合させるための添加剤を含む供給装置を含み、貯蔵ハウジング内で添加剤を放出するように設定されている。電解液が漏れた場合、直接的かつ容易に安全に中和することができる。
【0030】
本発明の目的において、電解質の中和とは、電解質成分を化学的により安定で安定かつ無毒な化合物に変換する化学的中和を意味すると理解される。
【0031】
さらに、電解液の中和は電池貯蔵装置の貯蔵ハウジング内において既に行われるため、漏出した電解液が環境中に漏出するのを容易に防止することができる。貯蔵ハウジングは液体の流出に対して密閉されているため、添加剤、電解液、得られた無害な反応生成物およびその他の成分は、中和後も電池貯蔵装置内に残る。したがって、貯蔵ハウジングは、制御された条件下で中和を実施することができる限定された反応室を提供する。有利なことに、中和が完了すると、電池貯蔵装置は安全に個別に廃棄されるか、リサイクルプロセスに投入されることができる。
【0032】
本発明の一態様では、添加剤は塩基を含む。本発明は塩基に関してさらに限定されるものではない。一般に、先行技術において一般的に使用されている全ての塩基を添加剤に使用することができる。
【0033】
例えば、塩基は多孔質の天然石灰とすることができる。
【0034】
好ましくは、塩基は炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
特に、炭酸塩として金属炭酸塩が使用され、好ましくはアルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩が使用される。炭酸塩の好適な例は、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、および、炭酸亜鉛、ならびにそれらの組み合わせである。
【0036】
特に、炭酸水素として金属炭酸水素塩が使用され、好ましくはアルカリ金属炭酸水素塩およびアルカリ土類金属炭酸水素塩が使用される。炭酸水素塩の好適な例としては、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
特に、酸化物として金属酸化物を使用することができ、好ましくはアルカリ金属およびアルカリ土類金属酸化物である。酸化物の好適な例としては、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
特に、水酸化物として金属水酸化物が使用され、好ましくはアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物が使用される。水酸化物の例としては、特に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化亜鉛、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
添加剤は水を含むこともできる。したがって、塩基は水溶液中に存在する。好ましくは、塩基は水溶液に溶解している。
【0040】
本発明の別の態様においては、水溶液は塩基によって飽和された溶液である。塩基含量が高いため、飽和溶液は特に高いイオン濃度を有する。好ましくは、イオン濃度(塩基濃度)は、それぞれの塩基の溶解度積に相当する。その結果、溶液は水の凝固点以下でも液体のままである。したがって、飽和溶液は、特に車両での操作または使用に適している。
【0041】
特に好ましくは、添加剤は炭酸ナトリウムの飽和水溶液、より好ましくは炭酸カリウムの飽和水溶液またはそれらの組み合わせを含む。
【0042】
水溶液中に塩基を供給することにより、酸塩基中和の形で二酸化硫黄をベースとする電解質の化学的中和が可能になる。電解液に含まれる二酸化硫黄は水に特によく溶解するため、添加剤によって特に迅速に吸収され結合させることができる。二酸化硫黄の水への溶解度は、20℃、常圧で水1リットルあたり39.4リットルである。二酸化硫黄は水と反応して亜硫酸を生成し、中和反応で塩基と反応する。そのため塩基は、水溶液中に溶解している二酸化硫黄を、より安定した化学化合物に変換することができる。例えば、二酸化硫黄は炭酸塩によって安定な亜硫酸塩(または硫酸塩)および/または亜硫酸水素塩に変換することができる。
【0043】
さらに、使用される塩基は無毒で、水に溶けやすく、必要に応じて入手可能である。塩基は水性媒体中に存在するため、供給装置によって貯蔵ハウジング内に容易に放出することができる。これは、電解液が放出された場合、水溶液に溶解した塩基が貯蔵装置内の電池セルを湿らすことができ、その結果、電解液が環境に漏出するのを防ぐことができることを意味する。
【0044】
本発明の別の態様において、供給装置は、添加剤を含むリザーバー(貯蔵容器)と、リザーバーに接続されたポンプとを備え、ポンプは、バルブを介して分配器(分配要素)に接続されている。少なくとも分配器は貯蔵ハウジング内に配置される。
【0045】
好ましくは、リザーバーは貯蔵ハウジングの外側に配置される。しかし、貯蔵ハウジングを貯蔵ハウジングの内部空間に配置することも考えられる。リザーバーは、添加剤を実際に放出する前に貯蔵するために使用される。添加剤を含むリザーバーを設けることにより、添加剤を電池セルとは別に貯蔵することができる。
【0046】
好ましくは、リザーバーに接続されるポンプは高圧ポンプである。さらに、ポンプはバルブを介して分配器に接続される。ポンプ、特に高圧ポンプを使用することにより、添加剤をリザーバーから分配器に、したがって貯蔵ハウジングの内部空間に迅速に輸送することができる。これにより、貯蔵ハウジング内での添加剤の効率的かつ迅速な放出が保証される。
【0047】
本発明は、分配器に関してさらに限定されるものではない。一般に、貯蔵ハウジング内で添加剤、特に塩基を有する水溶液からなる添加剤を放出するのに適した、従来技術で知られているすべての分配器を使用することができる。
【0048】
例えば、分配器は、添加剤を分配するためのノズル出口を有するライン、好ましくは可撓性ラインにより構成することができる。好ましくは、ノズルは添加剤の噴霧を可能にし、これは添加剤と出現する電解液との間の接触面を増加させる。
【0049】
本発明の別の態様において、安全装置は、監視装置をさらに備え、監視装置は、電池制御システムと、電池制御システムに接続されたセンサーユニットとを備える。
【0050】
電池制御システムは、好ましくは電池貯蔵装置の外部に配置される。したがって、電池制御システムが複数の電池貯蔵装置を監視することが考えられる。センサーユニットは、バッテリー監視システムに接続され、好ましくは貯蔵ハウジング内に配置される。
【0051】
一実施形態において、センサーユニットは、光学センサー、圧力センサー、温度センサー、および化学センサーからなる群から選択される。
【0052】
一実施形態において、センサーユニットは、ガス状の二酸化硫黄を検知するための分光式ガスセンサーである。
【0053】
好ましい実施形態において、分光ガスセンサーは非分散型赤外線センサーである。
【0054】
バッテリー動作中に少なくとも1つの電池セルの異常挙動が発生した場合、上記のセンサータイプによって検知することができる。したがって、圧力、温度の上昇、または貯蔵ハウジング内の雰囲気組成(大気組成)の変化は、センサーユニットによって検知することができる。こうして、電池セルの欠陥は、直接的に回り道をすることなく直接認識することができる。
【0055】
特に、二酸化硫黄に選択的に反応するガスセンサーは、貯蔵ハウジング内の二酸化硫黄の存在に関する直接的な情報を提供する。ガスセンサーが貯蔵ハウジングの雰囲気中の二酸化硫黄を検知した場合、二酸化硫黄に基づく電解液が電池セルから漏出し、したがって対応するセルは不良である。
【0056】
センサーユニットによって収集されたデータは、センサーユニットに接続された電池制御システムに転送される。通常、電池制御システムに送信されるデータは、特定の時間間隔で収集された測定データである。
【0057】
本発明のさらなる態様において、電池制御システムは、センサーユニットからデータを受信し、作動シナリオまたは非作動シナリオに関してそれを分析するために提供される。
【0058】
電池制御システムは、センサーユニットからのデータを受信し、貯蔵ハウジング内の電池セルの欠陥の有無に関して評価する。データに基づいて、電池制御システムは、作動シナリオまたは非作動シナリオのいずれを作動するかを決定する。電池制御システムが異常なデータ、より正確には期待されるデータから逸脱したデータを登録した場合、電池制御システムは作動シナリオを開始する。センサーユニットから受信したデータが予想データと一致した場合、非作動シナリオが選択される。
【0059】
作動シナリオが発生した場合、供給装置は電池制御システムによって作動され、貯蔵ハウジング内において、添加剤が分配器を通じて放出される。非作動シナリオの場合、現状が維持され、供給装置は作動しない。
【0060】
好ましくは、上述のプロセスは一定の時間間隔で行われる。これは、監視装置がリアルタイムで電池セルを監視できることを意味し、貯蔵ハウジング内の圧力、温度、大気(雰囲気)パラメータなどの異常データを即座にかつ確実に記録することができる。従って、電池制御システムは、漏出した電解液を中和するために、電池貯蔵装置の内部の添加剤を放出する措置を即座に取ることもできる。
【0061】
その結果、供給装置と監視装置を有する本発明による安全装置は、能動的な安全システムである。したがって、この安全装置は、セルから電解液が漏れた場合に、能動的に対策を開始することができる。
【0062】
本発明はさらに、先のタイプの電池貯蔵装置の安全装置を作動するための方法に関し、この方法は以下のステップを含む:
a) 監視装置のセンサーユニットにより、貯蔵ハウジングの内部で電池セルからの電解液の漏出を検知、そこからデータが生成され、電池制御システムに転送されるステップ、
b) 電池制御システムによる、作動シナリオまたは非作動シナリオの存在に関して、前記データの評価するステップ、
c) 作動シナリオを認識するステップ、
d) 供給装置を作動し、貯蔵ハウジング内に発泡体を放出するステップ。
【0063】
したがって、上述の方法を用いた安全装置は、電池セルから電解液が漏出した場合に直ちに反応し、対策を講じることができる。従って、二酸化硫黄を主成分とする電解液が環境中に漏出するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
以下、添付図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、電池セル、供給装置、監視装置を備えた電池貯蔵装置の模式図である;
図2は、電池セルから電解液が漏出した場合の、図1の電池貯蔵システムのアクティブ動作の模式図である;
図3は、ガス状二酸化硫黄を選択的に検知するガスセンサーの模式図である;
図4は、図3のガスセンサーに適した測定範囲の例を示す。
図5は、電池貯蔵装置の安全装置を作動するプロセスのステップを示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、安全装置を備えた貯蔵池ユニット10を示している。安全装置は、供給装置34と監視装置36を備える。
【0066】
また、電池貯蔵装置10は、貯蔵ハウジング12と、貯蔵ハウジング12の内部空間40に配置された複数の電池セル14とを備えている。特に、貯蔵ハウジング12は液体の流出に対して密閉されている。気体の排出を制御するために、貯蔵ハウジングは圧力調整弁または圧力逃がし弁(ここでは図示せず)を備えることもできる。
【0067】
内部空間40には少なくとも1つの電池セル14が配置されている。しかしながら、任意の数の電池セルを貯蔵ハウジング12内に配置することができる。特に、より高いエネルギーを有する電池を提供するために、電池セル14を相互接続することができる(ここでは図示せず)。さらに、貯蔵ハウジング12内における電池セル14の配置は任意であり、これ以上制限されることはない。
【0068】
電池セル14は、二酸化硫黄をベースとする少なくとも1つの電解質を含む。一般に、本発明は、電池セルが電解質成分として二酸化硫黄を含む限り、電池セル14に関してさらに限定されるものではない。
【0069】
例えば、WO2021/019042A1、WO2015/04573A2、またはまだ公開されていないドイツ特許出願第102021118811.3号からの電解質組成物を有する電池セル14を使用することができる。
【0070】
供給装置34は、添加剤16を含むリザーバー26を含む。
【0071】
リザーバー26は、電池セル14に含まれるすべての二酸化硫黄を中和するのに十分な量の添加剤16を含む。好ましくは、リザーバー26は、電池セル14に含まれる二酸化硫黄ベースの電解質に対して過剰の添加剤16を含む。これは、添加剤16が取り出されたときに通常リザーバー26内に残留物が残るため、特に有利である。
【0072】
リザーバー26は、パイプ24を介してポンプ22に接続されている。
【0073】
ポンプ22はバルブ20にも流体連結されている。
【0074】
バルブ20は、貯蔵ハウジング12の壁に埋設されており、貯蔵ハウジング12の内部空間40をポンプ22に、従ってリザーバー26に流体連結されている。
【0075】
分配器18はバルブ20に接続され、貯蔵ハウジング12内に配置されている。
【0076】
分配器18は、剛性ラインでも可撓性ラインでもよい。分配器18は、貯蔵ハウジング12内のどこにでも配置することができる。例えば、貯蔵ハウジング12の内壁または電池セル14の外壁に固定することができる。
【0077】
さらに、分配器18は、添加剤を放出するための出口(ここでは図示せず)を有する。出口は、例えば、貯蔵ハウジング12の内部空間40に放出される添加剤16を噴霧するノズルとして設計することができる。このようにして、放出される電解液と添加剤16との接触面を増加させることができる。
【0078】
さらに、安全装置は監視装置36を備えている。
【0079】
監視装置36は、電池制御システム30と、電池制御システム30に接続されたセンサーユニット28を含み、電池制御システム30は貯蔵ハウジング12内に配置されている。
【0080】
センサーユニット28は、貯蔵ハウジング12内のどこにでも配置することができる。したがって、センサーユニット28を貯蔵ハウジング12の内壁に固定することが考えられる。しかし、センサーユニット28を電池セル14に直接取り付けることもできる。
【0081】
本発明の変形例においては、複数のセンサーユニット28を貯蔵ハウジング12内の任意の所望の位置に配置することもできる。このようにして、電池貯蔵ユニット10の異なる領域をセンサーユニット28によって監視することができる。
【0082】
本発明は、センサーユニット28に関してさらに限定されるものではない。圧力、温度または大気(雰囲気)の差を検知するのに適した、従来技術で一般的に使用されているすべてのセンサーユニットを使用することができる。
【0083】
好ましくは、センサーユニットは、二酸化硫黄、好ましくは大気中のガス状二酸化硫黄を選択的に検知するためのセンサーである。この目的のためには、当技術分野で知られているすべてのセンサーを使用することができる。
【0084】
例えば、US4222745から知られている既知の検知剤を使用して、電池から漏出する二酸化硫黄を検知することができる。これは、微分散した二酸化ケイ素に吸着した重クロム酸カリウムと、安定化マトリックスとしての接着性ポリマー材料、例えばポリジメチルシロキサンからなる。二酸化チタンを添加することで、色を強く認識させることもできる。この検知剤は二酸化硫黄と接触すると変色する。
【0085】
また、WO02079746から知られている既知の粉末状の重クロム酸カリウムからなる検知剤も考えられる。この検知剤は、酸化促進剤および金属酸化物抑制剤とともに粘着ストリップに適用され、特に二酸化硫黄の検知を可能にする。
【0086】
ガス状二酸化硫黄を検知するためのUS6579722のセンサーも知られており、このセンサーでは化学発光試薬がポリマーフィルムに固定化されている。二酸化硫黄との接触によって生じる化学発光は、光電子増倍管または光電素子を用いて検知される。
【0087】
特開2003035705号公報から知られている既知のセンサーも使用することができ、これはガス状試料中の二酸化硫黄の検知に適しており、UV/VIS/IR領域の光透過率が被分析物の影響下でモニターされる。このセンサーは、オレンジ-1とアミンの組み合わせ、および、硫酸鉄アンモニウム、フェナントロリン、酸の組み合わせから構成されている。
【0088】
二酸化硫黄を検知するためのセンサー膜として設計されたセンサーもEP0585212から知られている。ルテニウム、オスミウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、白金またはレニウムを中心原子とし、2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリンまたは4,7-ジフェニル-1,10,フェナントロリンを配位子とし、過塩素酸塩または塩化物または硫酸塩を対アニオンとする遷移金属錯体がこの目的のために使用される。ポリマーマトリックスは、セルロース誘導体、ポリスチレン、ポリテトラヒドロフランまたはそれらの誘導体の群から得られる。
【0089】
二酸化硫黄を検知するための光学センサーのセンサー膜を提供するEP0578630のセンサーを使用することもできる。この目的のために、蛍光色素キニーネや吸収色素ブロモクレゾールパープルのようなpH指示薬が、長鎖スルホン酸イオンや長鎖残基を有するアンモニウムイオンのような対イオンとともに、ポリ塩化ビニル製のポリマーマトリックスに固定化されている。
【0090】
ガス状(気体の)二酸化硫黄を選択的に検知する光学センサーが特に好ましい。
【0091】
例えば、「Optical sensors for dissolved sulfur dioxide」(A.Stangelmayer, I.Klimant, O.S.Wolfbeis, Fresenius J.Analytical Chemistry,1998,362,73-76)から知られるように、光学センサーを使用することができる。ガス状二酸化硫黄の検知には、ガス透過性シリコーン膜またはOsmoSil膜に固定化されたイオン対の形態の親油性pH指示薬が、ガス状サンプルの二酸化硫黄センサーとして使用される。ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルーの長鎖アルキルラジカルを有するジテトラアルキルアンモニウム塩がpH指示薬として使用される。UV/VIS領域の光の吸光度が測定変数として使用される。
【0092】
DE102004051924A1から知られているように、試料中の二酸化硫黄を定量的に測定するために光学センサーを使用することもできる。ここで提案されているセンサーは、透明なセンサーのマトリックスに均一に固定化された指示物質を含み、この指示物質は少なくとも間接的に試料と接触し、二酸化硫黄の存在下でその濃度を変化させる。この指示物質の濃度変化は、センサーのUV/VIS領域における光透過率の変化として、光計測的にモニターすることができる。
【0093】
特に好ましい変形例では、二酸化硫黄を選択的に検知するセンサーは、図3に記載されているようなセンサーである。
【0094】
センサーユニット28は、電池セル14からの電解液の漏出を検知し、そこからデータを生成して電池制御システム30に転送するように設定されている。データはセンサーユニット28からデータライン33を介して電池制御システム30に流れる。
【0095】
電池制御システム30は、貯蔵ハウジング12の外部に配置され、データライン33を介してセンサーユニット28に電気的に接続されている。好ましくは、データライン33は、電気信号ひいてはデータを伝送するように設計されている。
【0096】
電池制御システム30は、センサーユニット28からデータを受信し、作動シナリオまたは非作動シナリオに関して評価することができる。電池制御システムが、貯蔵ハウジング12内の温度、圧力または雰囲気の変化に関する異常データを登録した場合、電池制御システム30は、作動シナリオをトリガーする。
【0097】
電池制御システム30は、接続部32を介してポンプ22に電気的に接続されている。作動シナリオが発生した場合、電池制御システム30はポンプ22を特に制御することができ、ポンプ22が作動し、添加剤16がリザーバー26から供給される。こうして、添加剤16は、リザーバー26からライン24、ポンプ22を経て、バルブ20を介して分配器18に入り、最終的に貯蔵ハウジング12内で添加剤16を放出する。
【0098】
図2は、作動シナリオが発生した場合の図1の電池貯蔵装置を示している。
【0099】
さらに、図2には、図1において、すでに説明したのと同じ構成要素が含まれている。
【0100】
作動シナリオのメカニズムは以下の通りである。
【0101】
少なくとも1つの電池セル14が損傷すると、二酸化硫黄を主成分とする電解液が損傷したセルから流出する。セルの損傷は、セルの開口が同時に起こらずに起こることもある。しかし、いずれの場合も、貯蔵ハウジング12の内部空間のパラメータは、例えば、温度、圧力、または大気組成などは、必然的に変化する。これらのパラメータの変化はセンサーユニット28によって検知される。
【0102】
例えば、セルの開口時に二酸化硫黄ベースの電解液が漏出した場合、それは貯蔵ハウジング12の大気中にも蓄積され、大気パラメータにフォーカスされたセンサーユニット28によって検知される。
【0103】
センサーユニット28は、圧力、温度、または大気組成に関する逸脱したパラメータの形で貯蔵ハウジング12内の電解質の存在を検知し、異常なパラメータをデータの形で電池制御システム30に転送する。電池制御システム30は、受信したデータを予想データと継続的に比較する。受信したデータと予想されるデータとの乖離が検知された場合、電池制御システム30は作動シナリオを作動する。その後、添加剤16は、ポンプ22によって、分配器18を介してリザーバー26から放出される。こうして放出された添加剤38は、貯蔵ハウジング12の内部空間40を濡らし、二酸化硫黄ベースの電解質と接触し、中和プロセス、特に酸塩基中和プロセスにおいて電解質と反応し、電解質が環境に流出するのを防止することができる。
【0104】
図3は、デュアルビーム分光計に基づく二酸化硫黄センサーを示している。
【0105】
ガスセンサー39は、検知器ハウジング43で囲まれた検知器チャンバ44を有する。さらに、検知器ハウジング43はガス入口開口部41を有する。
【0106】
ガス入口開口部41は、検知器チャンバ44と貯蔵ハウジングの内部空間40とを流体連結している。これにより、2つの領域間でガスの自由な交換が行われ、貯蔵ハウジング12内の漏出する電解液は、ガスセンサー39によって検知することができる。
【0107】
検知器ハウジング43は細長い形状を有し、光源42はハウジング内の一端に付随している。
【0108】
光源42は、好ましくは赤外光源であり、特に好ましくは近赤外光源である。本発明は、赤外光源に関して限定されるものではない。ガス雰囲気中の二酸化硫黄の検知に適した波長を放出することができる限り、従来技術で知られているすべての赤外光源を使用することができる。
【0109】
好ましくは、光源42は、400~1800cm-1の範囲、特に好ましくは450~600cm-1、1100~1200cm-1および/または1300~1400cm-1の範囲の波長を放出する。作動時、光源42は、上記範囲の波長の連続スペクトルを有するNIRビーム46を放出する。
【0110】
光源42によって放射されたNIRビーム46は、検知器チャンバ44に配置された測定ビーム隔壁48と参照ビーム隔壁50によって、空間的に分離された2つのNIRビームに分割される。より正確には、NIRビーム46は、測定ビーム隔壁48によって測定ビーム56に分割され、参照ビーム隔壁50によって参照ビーム58に分割される。ダイアグラムによって2つのビーム経路が生成される。
【0111】
測定ビーム56は、測定ビーム隔壁48を通過した後、測定ビームフィルター52に入射する。参照ビーム58は、参照ビーム隔壁50を通過した後、参照ビームフィルター54に入射する。
【0112】
適切な測定ビームフィルター52および参照ビームフィルター54は、例えばバンドパスフィルター、好ましくは狭いバンド域フィルターである。例えば、バンドパスフィルターは、10~0.2nm、好ましくは5~0.2nm、特に好ましくは2~0.2nmの帯域幅を有することができる。これにより、参照ビーム58および測定ビーム56から所定の波長を選択的にフィルタリングすることができる。
【0113】
参考として、基準ビームフィルター54の透過範囲は、二酸化硫黄だけでなく二酸化炭素などの他の分子、または水蒸気も吸収帯を持たないスペクトルの狭い範囲で透過するように選択される。
【0114】
測定ビームフィルター52、すなわち測定ビーム56の透過範囲は、二酸化硫黄のみが吸収されるが、測定信号を改ざんする可能性のある他のガスが吸収されない範囲に入るように選択される
【0115】
測定ビームフィルターに適した波長の例としては、次のようなものがある:1.56μm、1.57μm、1.58μm、2.46μm、4.02μm。
【0116】
測定ビームフィルター52を通過した後、測定ビーム56は測定ビームフィルター52の下流の測定ビーム検知器62に入射する。同様に、参照ビーム58は参照ビームフィルター54の下流の参照ビーム検知器60に入射する。
【0117】
フィルターが透過する波長を検知するには、例えば熱電対を利用した検知器が適している。熱電対は熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換することができるため、非常に低い熱電圧を発生させ、それを検知することができる。したがって、この方法で使用される検知器は、特に精度が高く、雰囲気(大気)中の少量の二酸化硫黄の検知にも適している。
【0118】
図4は、図3の二酸化硫黄センサーの測定範囲を示し、波長に対する吸光度がプロットされている。測定ビーム検知器と参照ビーム検知器60、62の吸収の和が示されている。
【0119】
測定ビーム検知器62は測定波長範囲68で測定信号64を検知し、参照ビーム検知器60は参照波長範囲70で参照信号66を検知する。基準波長範囲70および測定波長範囲68は、ビームフィルターの選択によって事前に決定される。同様に、測定波長範囲の幅はビームフィルターの選択に依存し、一般に10~0.2nm、好ましくは5~0.2nm、特に好ましくは2~0.2nmである。
【0120】
測定ビーム検知器62が測定信号64を検知した場合、二酸化硫黄は検知器チャンバ44の雰囲気中に存在し、したがって貯蔵ハウジング12の内部空間にも存在する。二酸化硫黄の陽性検知には閾値を定めることができ、これは通常検知器のバックグラウンドノイズを上回る値である。
【0121】
図示のデュアルビーム分光計の利点は、コンパクトであるため、貯蔵ハウジング12内に収容してスペースを節約できることである。さらに、二酸化硫黄は分光学的に検知されるため、従来の方法と比較して評価および電子情報への変換が容易である。
【0122】
図5は、上述した電池貯蔵装置の安全装置を作動させる手順のステップを示す概略フローチャートである。
【0123】
最初のステップでは、電池セルからの電解液の漏出を検知する。検知は、貯蔵ハウジング内に設置された監視装置のセンサーユニットによって行われる。センサーユニットはデータを生成し、電池制御システムに送信する(ステップS1)。
【0124】
その後、電池制御システムによってデータが分析され、作動シナリオが発生したか非作動シナリオが発生したかが判定される(ステップS2)。電池制御システムは、センサーユニットによって測定されたパラメータを、予想されるパラメータと比較することによって評価する。
【0125】
パラメータに偏差があり、これが許容範囲外である場合、作動シナリオが実行される(ステップS3)。許容範囲は、検出器の選択やビーム経路の設計など様々な要因に依存するため、電池貯蔵装置やガスセンサーの設計に応じて選択される必要がある。
【0126】
最後に、電池制御システムがポンプを作動させることによって供給装置が作動し、ポンプがリザーバーから添加剤を取り出し、貯蔵ハウジング内のバルブおよび分配器を介して添加剤を放出する(ステップS4)。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】