(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ベローズ状の壁の容器壁を備える焦点調整可能な液体レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 3/14 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
G02B3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533962
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2022085211
(87)【国際公開番号】W WO2023105056
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/061529
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515100639
【氏名又は名称】オプトチューン スウィツァランド アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ヘーベストリート,エリック
(72)【発明者】
【氏名】コルティソ,アラン
(57)【要約】
本発明は、透明な液体で満たされる容器(6)を備える焦点調整可能な液体レンズ(100)に関し、容器(6)は容器の構成要素:a)容器(6)の第1の側面に配置される弾性変形可能な透明な膜(4)、b)容器(6)の第2の側面で膜(4)の反対側に配置される透明なウィンドウ素子(5)であり、特にウィンドウ素子(5)が容器(6)の透明な底部を形成する、前記ウィンドウ素子(5)、c)ウィンドウ素子(5)と膜(4)とを壁部分(1)の輪郭に沿って接続する弾性変形可能な円周方向の壁部分(1)であり、壁部分(1)は、レンズ(100)の半径方向に沿った容器(6)の半径方向の延在を制限する、前記壁部分(1)、d)膜(4)に接続されるレンズ成形素子であり、レンズ成形素子は、レンズ(100)の光軸(OA)を含む円周方向のアパーチャーを有し、アパーチャーは、屈折力及び/又は非点収差、プリズム、レンズのその他の光学収差などの他の光学特性を調節するための作動力の手段によって、ウィンドウ素子(5)に対してレンズ成形素子を作動させることによって、膜(4)の形状を調節することができる、膜(4)のレンズ領域を囲む、前記レンズ成形素子、を備え、壁部分(1)はベローズとして形成され、特にレンズ成形素子の作動時に、容器(6)の半径方向の延在が維持されるか、少なくとも低減されるように形成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な液体で満たされる容器(6)を備える焦点調整可能な液体レンズ(100)であって、容器(6)は容器の構成要素:
a)容器(6)の第1の側面に配置される弾性変形可能な透明な膜(4)、
b)容器(6)の第2の側面で膜(4)の反対に配置される透明なウィンドウ素子(5)であり、特にウィンドウ素子(5)は容器(6)の透明な底部を形成する、前記ウィンドウ素子(5)、
c)ウィンドウ素子(5)と膜(4)とを、壁部分(1)の輪郭に沿って接続する弾性変形可能な円周方向の壁部分(1)であり、壁部分(1)は、レンズ(100)の半径方向に沿った容器(6)の半径方向の延在を制限する、前記壁部分(1)、
d)膜(4)に接続されるレンズ成形素子であり、レンズ成形素子は、レンズ(100)の光軸(OA)を含む円周方向のアパーチャーを有し、アパーチャーは膜(4)のレンズ領域を囲み、そのレンズ領域内で、レンズの屈折力、及び/又は非点収差、プリズム及び/又は別の光学収差などの他の光学特性を調節するための作動力の手段によってウィンドウ素子(5)に対してレンズ成形素子を作動させることによって、膜(4)の形状を調節することが可能である、前記レンズ成形素子、
を含み、
壁部分(1)は、ベローズとして形成され、特にレンズ成形素子の作動時に容器(6)の半径方向の延在が維持されるか、又は少なくとも低減されるように形成される、前記レンズ(100)。
【請求項2】
壁部分(1)は、壁部分(1)の周りの壁部分(1)の輪郭に円周方向に延びる複数の環状の屈曲部(3)を備え、各屈曲部(3)は、壁部分(1)が所定の方向に曲がることができるベローズの屈曲を備える、請求項1に記載のレンズ(100)。
【請求項3】
壁部分(1)は、屈曲部(3)の間に延びる複数の環状の折り畳み部位(2)を備え、隣接する折り畳み部位(2)は、その屈曲によって角度をなす、請求項1及び2に記載のレンズ(100)。
【請求項4】
折り畳み部位(2)は、屈曲部(3)よりも剛性であり、特にレンズ成形素子の作動時にベローズが屈曲部(3)のみで曲がるように、特にレンズ成形素子の作動時に折り畳み部位(2)の間の角度が変化するように、屈曲部(3)よりも剛性である、請求項3に記載のレンズ(100)。
【請求項5】
壁部分(1)は、壁部分(1)の輪郭に沿って円周方向に環状様式に配置される繊維を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項6】
隣接する折り畳み部位(2)によって形成される角度は、液体に面する容器(6)の側面の方へ、及び液体と反対側の側面の方へ交互に開く、請求項1~5及び請求項3のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項7】
各屈曲は、壁部分(1)の周わりを円周方向に延びる少なくとも1つの凹部によって形成され、特に少なくとも1つの凹部は、壁部分(1)の壁厚を局所的に低減する、請求項2~6のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項8】
複数の凹部のうちの第1の凹部の群は、容器(6)内の液体と反対に面する壁部分(1)の側面に配置され、複数の凹部のうちの第2の凹部の群は、容器(6)内の液体の方に面する壁部分の側面に配置される、請求項7に記載のレンズ(100)。
【請求項9】
第1の群の凹部は、壁部分(1)の輪郭に沿って第2の群の凹部と交互に配置される、請求項8に記載のレンズ(100)。
【請求項10】
第1の群の凹部と第2の群の凹部とは、壁部分(1)の輪郭に沿って同じ位置に配置され、それによりベローズの屈曲が対をなして形成される、請求項8又は9に記載のレンズ(100)。
【請求項11】
隣接する折り畳み部位によって形成される角度は、液体に面する容器(6)の側面の方と、液体と反対に面する側面の方とに交互に開く、請求項3~10のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項12】
壁部分(1)は第1及び第2の接続部位(2a、2b)を備え、第1の接続部位(2a)は壁部分(1)と膜(4)とを接続し、かつ第2の接続部位(2b)は壁部分(1)とウィンドウ素子(5)とを接続し、接続部位(2a、2b)は、屈曲(複数)のうちの1つの屈曲を介して直接隣接する折り畳み部位(2)に接続され、第1の接続部位と直接隣接する折り畳み部位とによって囲まれる第1の角度は、前記第1の角度に隣接する角度と同じ側に開き、及び/又は第2の接続部位と直接隣接する折り畳み部位とによって囲まれる第2の角度は、前記第2の角度に隣接する角度と同じ側に開く、請求項1~11のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項13】
各折り畳み部位(2)は、壁部分の輪郭に沿って延びる部位の長さを備え、折り畳み部位(2)の部位の長さは、異なる折り畳み部位(2)に対して異なる、請求項3~12のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項14】
隣接する折り畳み部位(22、23)は、対をなして同一の長さを有する、請求項13に記載のレンズ(100)。
【請求項15】
屈曲部(3)の剛性は、異なる屈曲部(3)に対して異なり、特にレンズの作動時に屈曲部の屈曲が同じ量だけ変化するように剛性が調節される、請求項1~14のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項16】
各折り畳み部位(2)は、部位の厚さを備え、折り畳み部位(2)の厚さは、屈曲部よりも厚く、特に凹部における壁部分(1)の厚さよりも厚い、請求項3~15のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項17】
壁部分(1)は、シリコーン又はPDMSなどの弾性変形可能な化合物によって一体的に形成される、請求項1~16のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項18】
折り畳み部位(2)の厚さは、300μm~700μmであり、かつ凹部の厚さは、100μm~300μmである、請求項1~17のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項19】
壁部分(1)は、容器(6)の第2の側面よりも容器(6)の第1の側面で大きな開口を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項20】
壁部分の円周方向に沿った壁部分(1)の剛性は、壁部分(1)の延在方向に沿った壁部分(1)の剛性、並びに壁部分(1)への半径方向に沿った壁部分の剛性よりも高い、請求項1~19のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項21】
レンズ成形素子は、レンズ(100)の屈折力を調節するためにウィンドウ素子(5)に対して相対的に移動可能であり、特にウィンドウ素子(5)はレンズ(100)のハウジング又は固定部材に接続され、特にレンズ成形素子は、レンズ成形素子をウィンドウ素子(5)に対して相対的に移動させるように構成されるアクチュエータに接続される、請求項1~20のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項22】
ウィンドウ素子(5)は剛性のウィンドウ素子であり、特にウィンドウ素子はガラス又は透明ポリマーから作成され、特にウィンドウ素子(5)は屈折力を備え、又はウィンドウ素子は、液体に面する、及び液体と反対に面する2つの平面側面を有する平面板状のウィンドウ素子(5)であり、より特にウィンドウ素子は固体レンズである、請求項1~21のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項23】
ウィンドウ素子(5)は第2の膨張可能な膜であり、特にレンズ成形素子の作動時に前記第2の膜はレンズ(100)の光軸(OA)に沿ってその曲率を調節する、請求項1~21のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【請求項24】
レンズ成形素子は、光軸に沿って円周方向のアパーチャーにおいて弾性変形可能であり、特に円周方向のアパーチャーに沿ってレンズ成形素子の軸方向の位置を局所的に調節することによって収差を補正することができるように、弾性変形可能である、請求項1~23のいずれか一項に記載のレンズ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズの作動時の容器の半径方向の変形を最小化するためのベローズ状の壁の容器壁を備える焦点調整可能な液体レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
液体レンズは当技術分野で知られている。本明細書の文脈における液体レンズという用語は、特にレンズ容積内に透明な液体を封入する容器を有するレンズに関し、前記容器は、可動のレンズ成形素子によって作動することができるように配置される少なくとも第1の膜を容器の第1の側面に備える。レンズ成形素子は、円周方向の透明なアパーチャーを備え、その中に膜のレンズ領域が囲まれる。可動のレンズ成形素子を作動させると、膜は、例えばレンズはその凸又は凹の形状、したがって屈折力を調節するように、レンズ領域の曲率を調節する。
【0003】
いくつかの液体レンズは、容器のレンズ容積部を円周部分に沿って制限する、すなわち壁部分がレンズ容積部の周囲を円周方向に延びる、弾性変形可能な壁部分を有する。レンズ成形素子がレンズ容積部に向かって押される際に容器内の圧力が増加し、壁部分には壁部分が半径方向に膨らむ半径方向の力がかかる。
【0004】
半径方向という用語は、特にレンズの光軸又はZ軸から直交方向に離れて延びる方向を指す。
【0005】
レンズ成形要素がレンズ容積部から離れる場合、壁部分がレンズ容積部の内側に膨らみ得る。しかしながら、いずれの壁部分の半径方向の膨らみは(膨らんでいない壁部分と比較した場合に)作動力の増加に変換される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当技術分野では、スリーブ状又はチューブ状の形状を有する弾性壁部分が知られている。レンズが作動すると、作動力によってスリーブが伸張又は圧縮される。しかし、伸張は作動力に対して非線形の伸張特性及び圧縮特性を示すため、スリーブが線形の力形態を超えて伸張されると作動力が比較的に高くなるため、この機構はレンズの移動範囲又はストロークを制限する。反対方向にスリーブは無制限に圧縮することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、この高い作動力の問題を克服する液体レンズを提供することである。その目的は、請求項1の特徴を有するデバイスによって達成される。
【0008】
有利な実施形態は従属請求項に記載される。
【0009】
請求項1によれば、焦点調整可能な液体レンズは、透明な液体で満たされる容器を備え、容器は特にレンズ容積部を囲み、容器は少なくとも以下の構成要素:
a)容器の第1の側面に配置される弾性変形可能な透明な膜、
b)膜の反対側に配置される容器の第2の側面の透明なウィンドウ素子であり、特にウィンドウ素子が容器の透明な底部を形成する、前記透明なウィンドウ素子、
c)弾性変形可能な壁部分であり、特に円周方向の壁部分であり、特に容器の円周部分において、特にウィンドウ素子と膜とを直接接続する壁部分であり、前記壁部分は、レンズの半径方向に沿った容器の半径方向の延在を制限する、前記壁部分、
d)膜に接続されたレンズ成形素子であり、レンズ成形素子は、レンズの光軸を含む円周方向のアパーチャーを有し、前記アパーチャーは、レンズの屈折力及び/又は非点収差、プリズム及び/又は別の光学収差などの他の光学特性を調節するための作動力の手段によって、ウィンドウ素子に対してレンズ成形素子を作動させることによって膜の形状を調節することができる、膜のレンズ領域を囲む、前記レンズ成形素子、
を備え、
壁部分はベローズとして形成され、特に、レンズ成形素子の作動時に、容器の半径方向の延びが、ベローズ形状でない壁部分と比較して維持、又は少なくとも低減されることを特徴とする。
【0010】
「弾性変形可能」という用語は、特に弾性変形可能な構成要素の膨張特性を指す。
【0011】
レンズには座標系を関連付けることが可能であり、座標系はデカルト座標系又は円筒座標系であり得る。特に、レンズの光学特性にプリズムが関与していない限り、どちらの場合もz軸は本質的にレンズの光軸に沿って延びる。レンズが平衡状態にあるとき、すなわちレンズに作動力が加えられていないとき、z軸は特に、レンズ容積部の方向に面するウィンドウ素子の側面に直交して延びる。
【0012】
レンズの半径方向(複数可)、例えばx方向及びy方向は、レンズのz軸に直交して延びる。同様に、レンズに関連付けられる方向は容器にも対応する。
【0013】
膜及びレンズ領域は、レンズのz軸に本質的に直交して延びる平面に沿う非円形、及びさらには丸くない形状を有する可能性があることに留意されたい。同じことが、ウィンドウ素子やレンズの他の構成要素、例えばレンズ成形素子、壁部分にも当てはまる。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、z軸はレンズの光軸に対応する。
【0015】
壁部分は、特に壁部分の輪郭を横切る直線で測定される厚さを備える。壁部分の厚さは、壁部分の輪郭に沿って変化してもよい。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、輪郭は、特にレンズが平衡状態にある場合、液体の方に面する壁部分の表面と反対方向に面する壁部分の表面とによって形成される。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、壁部分の輪郭はジグザグ形状を採用する。
【0018】
膜の形状は特に、光軸に沿った膜の曲率及び/又は輪郭を指し、例えば凸形状又は凹形状、並びにさらに複雑な形状が挙げられる。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、壁部分は、円周方向の延在方向(circumferential extension direction)、すなわち特に壁部分の周りに円周方向に延びる複数の環状の屈曲部を備え、各屈曲部はベローズの屈曲を構成し、そこで壁部分が所定の方向に屈曲する。
【0020】
作動時に壁部分が屈曲する所定の方向は、壁部分の製造工程中にインプリントすることができる。適切な製造工程としては、射出成形を含み得る。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、壁部分は、屈曲部の間に延びる、特に屈曲部を接続する、複数の環状の折り畳み部位を備え、隣接する折り畳み部位は、角度をなし、特に各角度は、隣接する折り畳み部位の間に囲まれる曲がり目(屈曲)を有し、曲がり目は角度の頂点を形成する。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、折り畳み部位は、屈曲部よりも硬く、これにより特にレンズ成形素子の作動時に、ベローズが、屈曲部においてのみ又は主に曲がるようにし、特にレンズ成形素子の作動時に、折り畳み部位間の角度が変化するようにし、かつここで特に部位の長さは変化しないままである。
【0023】
部位の長さは、特に、ウィンドウ素子から膜に向かう方向に壁部分の輪郭に沿って方向付けられ、かつ測定される。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、壁部分は、繊維、特に、繊維が埋め込まれる壁部分の基質物質よりも高い引張弾性を有する繊維を備え、繊維は、壁部分の輪郭において円周方向に光軸の周りに環状に配置され、これにより特に、繊維が壁部分の円周方向に沿って剛性を増加させるようにする。
【0025】
壁部分は、局所的に変化する3方向を定義することができることに留意されたい。第1の方向は壁部分の円周方向に関する。円周方向は特に壁部分の角度方向に対応する。
【0026】
壁部分の円周方向に直交し、かつ壁部分の輪郭内に延びる、壁部分の延在方向を規定することができる。前記方向は特に、ベローズの光軸に沿ったジグザグ断面に沿う方向を指す。この方向に沿って部位の長さを測定することができる。
【0027】
壁部分の円周方向及び延在方向と直交して延びる第3の方向は、特に壁部分の厚さに沿う方向を指す。この半径方向に沿って、壁部分の厚さを測定することができる。
【0028】
特に、延在方向及び半径方向は、方向がベローズの輪郭に応じ、輪郭はレンズに作動力を加えることによって変更できることに留意されたい。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、特に直接隣接し、かつしたがって隣の折り畳み部位によって形成される角度は、液体に面する容器側に向かって、及び液体と反対側に向かって、交互に開く。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、各屈曲は、壁部分における光軸の周囲に円周方向に延びる少なくとも1つの凹部によって形成され、特に少なくとも1つの凹部は、壁部分の壁厚を局所的に減少させる。
【0031】
この実施形態により、容器の比較的一定である半径方向の延在と合わせて、低い作動力を達成することができる。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、複数の凹部のうちの第1の凹部の群は、容器内の液体と反対の壁部分の側面に配置され、複数の凹部のうちの第2の凹部の群は、容器内の液体側、例えば容器内の液体に曝される側の壁部分の側面に配置される。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、第1の群の凹部は、壁部分の輪郭に沿って第2の群の凹部と交互に配置される。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、第1の群の凹部と第2の群の凹部とは、壁部分の輪郭に沿って同じ位置に配置され、それによりベローズの屈曲が対をなして形成される。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、特に直接隣接又は隣の折り畳み部位によって形成される角度は、液体に面する容器の側面に向かって、及び液体と反対側の側面に向かって交互に開く。
【0036】
この実施形態では、本質的にジグザグ形状のベローズを実現できる。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、壁部分は、第1及び第2の接続部位を備え、第1の接続部位は、壁部分を膜と接続し、かつ第2の接続部位は、壁部分をウィンドウ素子と接続し、これらの接続部位は、屈曲(複数)の1つの屈曲を介して、直接隣接又は隣の折り畳み部位と接続され、ここで、第1の接続部位と直接隣接又は隣の折り畳み部位とによって囲まれる第1の角度が、前記第1の角度に隣接又は隣の2つの折り畳み部位によって囲まれる角度と、液体に向かって又は液体と反対側という点で同じ側に開き、及び/又は第2の接続部位と、直接隣接又は隣の折り畳み部位とによって囲まれる第2の角度が、前記第2の角度に隣接又は隣の2つの折り畳み部位によって囲まれる角度と同じ側に開く。
【0038】
本発明の別の実施形態によれば、各折り畳み部位は、壁部分の輪郭に沿って延びる部位の長さを備え、ここで、折り畳み部位に対する部位の長さは、異なる折り畳み部位について異なる。
【0039】
部位の長さは、以前の実施形態の文脈で定義されている。
【0040】
この実施形態は、壁部分が、作動時にそれぞれの囲まれた角度が一様に折り畳まれ、特に部位的に(segment―wise)連続的、又は本質的に連続的でなく折り畳まれることを可能にする。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、隣接する折り畳み部位は対をなす同一の長さを有し、異なる対では長さが異なっていてもよい。
【0042】
本発明の別の実施形態によれば、屈曲部の剛性は、異なる屈曲部に対して異なっており、特に、この剛性は、レンズの作動時に屈曲部の屈曲が同じ量だけ変化するように調節され、特に壁部分が全ての屈曲において等しくかつ一様に折り畳まれるように、角度の開きが同じ量だけ変化する。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、各折り畳み部位は、部位の厚みを備え、折り畳み部位の厚みは、屈曲部よりも厚く、特に、凹部における壁部分の厚みよりも厚い。
【0044】
折り畳み部位の厚さは、特定の部位にて壁部分の厚さと同じである。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、壁部分は、シリコーン又はPDMSなどの弾性変形可能な化合物によって一体的に形成される。
【0046】
PDMSとは、ポリジメチルシロキサン(CAS-Nr:63148-62-9)に関する。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、折り畳み部位の厚さは300μm~700μmであり、凹部の厚さは100μm~300μmである。
【0048】
本発明の別の実施形態によれば、壁部分は、容器の第1の側面において、容器の第2の側面よりも大きな開口を有する。
【0049】
これにより、レンズの光路を妨げない壁部分を可能にしながら、壁部分は圧縮された状態になり得る。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、壁部分の円周方向に沿った壁部分の剛性は、壁部分の延在方向に沿った壁部分の剛性、及び壁部分の半径方向に沿った壁部分の剛性よりも高い。
【0051】
これらの壁部分に関する方向は、本明細書の以前の実施形態で詳述した。
【0052】
壁部分の異なる剛性は、非等方性又は異方性の剛性を示す材料を含む壁部分によって達成され得る。
【0053】
異方性材料の特性は、壁部分に対応する射出成形プロセスによって達成されてもよく、ここで成形形態への材料の射出は、固化した壁部分がこの異方性特性を示すような射出である。
【0054】
この実施形態では、壁部分を低い作動力で曲げることができる一方で、壁部分のいずれの膨らみは大幅に減少又は防止されることが可能である。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、レンズ成形素子は、レンズの屈折力を調節するためにウィンドウ素子に対して相対的に移動することができ、特にウィンドウ素子は、レンズのハウジング又は固定部材に接続され、特にレンズ成形素子は、レンズ成形素子をウィンドウ素子に対して相対的に移動させるように構成されるアクチュエータに接続される。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、ウィンドウ素子は剛性のウィンドウ素子であり、特にウィンドウ素子がガラス又は透明ポリマーから作成され、特にウィンドウ素子が屈折力を備え、又はウィンドウ素子は、液体に面する、及び液体と反対に面する2つの平面側面を有する平面板状のウィンドウ素子であり、より特にウィンドウ素子が固体レンズである。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、ウィンドウ素子は、第2の膨張可能な膜である、又はそれを備え、特にレンズ成形素子の作動時に、前記第2の膜は、レンズの光軸に沿ってその曲率を調節する。
【0058】
本発明の別の実施形態によれば、レンズ成形素子は、光軸に沿って円周方向のアパーチャーにて弾性変形可能であり、それにより特に円周方向のアパーチャーに沿ってレンズ成形素子の軸方向位置を局所的に調節することによって収差を補正することができるようにする。
【0059】
特に、例示的な実施形態を図と併せて以下に説明する。図面は特許請求の範囲に添付され、示された実施形態の個々の特徴及び本発明の態様を説明する文章が付されている。図に示された、及び/又は、図の前記文章で言及された各個別の特徴は、本発明によるデバイスに関する請求項に(分離した形でも)組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は液体レンズの圧縮された弾性壁部分の先行技術である。
【
図2】
図2は、本発明による壁部分を備える液体レンズの断面図である。
【
図3】
図3は、本発明によるレンズの作動力のグラフである。
【
図4】
図4は、本発明による壁部分を備える液体レンズの延在状態の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明による壁部分を備える液体レンズの圧縮状態の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明による壁部分を備える液体レンズの延在状態の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明による壁部分を備える液体レンズの圧縮状態の断面図である。
【
図8】
図8は、光円錐との関係における、本発明による壁部分を備える液体レンズの断面図である。
【
図9】
図9は、変化する折り畳み部位を有する壁部分を備える液体レンズの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1において液体レンズの圧縮状態における折り畳まれた弾性壁部分の模擬形状を示す。壁部分はランダムに蛇行し、壁の曲がり角では高い表面応力が発生する。この状況は、液体レンズの作動に大きなエネルギー消費をもたらす。
【0062】
スリーブ状の壁部分は一定の厚みを持ち、等方的な材料特性を持つ。横軸(X)は壁部分の半径方向の変位を表し、縦軸(Y)はレンズの光軸又はz軸に沿った壁部分を表す。
【0063】
図2には、本発明による壁部分1の例示的な実施形態が概略的に描かれる。
図2の図は、レンズ100のz軸/光軸に沿った断面図である。z軸上では、壁部分1の上端2aと壁部分1の下端2bとの間のレンズ100の延在が示される。壁部分1の下端2bは、z軸に沿って0mmの位置でウィンドウ素子5に取り付けられており、上端2aは液体レンズ100の膨張性膜4に取り付けられている。壁部分2の高さは約9mmに伸びる。光軸OAは、z軸に沿って半径方向の距離0mmから延びる破線としてプロットされる。X軸には、液体レンズ100の半径方向の延在が描かれる。レンズ100の液体は、ウィンドウ素子5、壁部分1、及び膜4によって形成される容器6内に備えられる。
【0064】
図2の壁部分1は、屈曲部3によって相互接続される複数の折り畳み部位2を備える。各折り畳み部位2は、液体レンズ100の内側に向かって、すなわち容器6に向かって、又は容器6と反対側に向かってのいずれかに傾斜している。これらの折り畳み部位2は、壁部分1のジグザグ形状を与える。
【0065】
折り畳み部位2は、壁部分1を横切る厚さが減少するように、壁部分1に凹形態の屈曲をそれぞれ有する屈曲部3によって相互接続される。壁部分の厚みを低減することによって、
図2に示す平衡位置から離れて壁部分1が伸張又は圧縮される場合に曲げモーメントが減少する。
【0066】
次に、折り畳み部位2は、膜4の作動時に屈曲が形成されにくいように、屈曲部3と比較して壁部分にわたって増加した厚さ及び/又は剛性を有する。
【0067】
壁部分1の上端2a(最後の折り畳み部位として形成されるもの)は、壁部分1を膜4に接続する第1の接続部位2aを備える。
【0068】
下端2bにおいて、壁部分1は、壁部分1とウィンドウ素子4とを接続する第2の接続部位2bを備える。ウィンドウ素子4は、ガラス又は透明ポリマーなどの透明な塊状材料から作成することができる。
【0069】
図3には、液体レンズ100の成形器(shaper)の偏差(deflection)と作動力との関係を示す図が示される。成形器の偏差は、要するに、ウィンドウ素子に対して膜を上下に作動させるアクチュエータの動きに対する高さの尺度(ストロークとも呼ばれる)である。
【0070】
この作動力は、-3mm~+3mmの範囲でほぼ線形である(「×」の線を参照)。同じグラフには、ベローズ状の壁部分(「○」の線を参照)のみを調節するのに必要な作動力が示される。2mm~3mmの延在した位置でのみ、ベローズ単独は作動を必要とする有意な量の力をもたらす。
【0071】
当技術分野で知られている壁部分は、壁部分のより急な角度のカーブを示し、その結果、液体レンズを作動させるのに必要なより大きな総作動力をもたらす。
【0072】
図4は、本発明による壁部分1の実施形態の2つの状態を示す。第1の状態は
図2にも描かれているため、
図4との関連では再度詳述しない。平衡状態、すなわち膜4に作動力が作用していない状態を示す
図2の壁部分1に加えて、
図4は、壁部分1の高さが約3mm増加した延在状態の壁部分1も示す。このような運動は、膜4をウィンドウ素子5から引き離すことによって、あるいはその逆によって、達成することができる。膜4は凹状態を採用し、かつ壁部分1は光軸OAに沿ってより延在した状態を採用する。屈曲部3及び折り畳み部2は、例えば壁の厚さ及び剛性を異ならせることにより、表面応力が低減するように設計されているため、壁部分1全体を通して有意な表面応力はほとんど観察することができない。
【0073】
逆の状況は
図5に示されており、ここでは壁部分1は圧縮されている。
図4と同様、有意な表面応力は観察することができない。
【0074】
さらに、本発明によれば、壁部分の圧縮又は延在によってレンズの半径方向の広がりが変化しないため、レンズの構築空間を小さくすることができる。
【0075】
図6及び
図7には、壁部分1の異なる実施形態が示されており、壁部分1は、
図2、
図3、及び
図4に描かれた壁部分1よりも1つ多い折り畳み部位2を備える。これにより、液体レンズ100のストロークを増加させることができる。
【0076】
図8では、レンズ100を通した視野を定義する光円錐7の考慮が、壁部分1の設計において実施される。このため、壁部分1は、異なる長さの折り畳み部位2を備える。液体レンズ100の底部、すなわちウィンドウ素子5では、折り畳み部位2の長さは、液体レンズ100の膜4に近い位置に配置される折り畳み素子2の長さよりも長い。このようにして、壁部分1の圧縮時及び壁部分1の他の状態においても、光円錐7は壁部分1の折り畳み部位2のいずれによっても妨げられないままであり、これにより液体レンズ100の視野を拡大することができる。
【0077】
図9には、壁部分1のさらに別の設計が描かれる。
図9Aでは、壁部分1は、対をなして同じ長さを有する折り畳み部位22を備えるが、
図9Bでは折り畳み部位22、23は、対をなして異なる長さを有する。
【0078】
どの設計を使用するかによって壁部分1の倒れ込みは異なる特性を持つ。例えば、
図9Aに示す圧縮状態の壁部分1は、折り畳み部位22の間に異なる角度A1、A2を採用する。見てわかるとおり、2つの下側の折り畳み部位22の間の角度A2は、上側の折り畳み部位22の間の角度A1よりもはるかに急な角度である。この考察では、第1及び第2の接続部位が考慮されていないことに留意されたい。
【0079】
対照的に、
図9Bでは、折り畳み部位22、23が囲む角度A3は同一である。これは、折り畳み部位22、23の長さが対をなして異なるためである。
【0080】
引用符号
100 液体レンズ
1 壁部分
2、22、23 折り畳み部位
2a 第1の接続部位
2b 第2の接続部位
3 屈曲部/屈曲
4 膜
5 ウィンドウ素子
6 容器/液体
7 光円錐
A1、A2、A3 折り畳み部位間の角度
A 光軸
【国際調査報告】