(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-09
(54)【発明の名称】反応性分岐を有するポリエーテルイミド
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534005
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 IB2022061992
(87)【国際公開番号】W WO2023105480
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オドル ロイ レイ
(72)【発明者】
【氏名】モンドシャイン ライアン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デニス ジョセフ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アーリントン クレイ ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】ロング ティモシー エドワード
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA01
4J043QB15
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA43
4J043SA44
4J043SA46
4J043SA47
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4J043SA72
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4J043UA041
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4J043UB012
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4J043UB281
4J043UB282
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB401
4J043VA012
4J043VA022
4J043VA032
4J043VA062
4J043VA072
4J043VA092
4J043YA06
4J043ZA12
4J043ZB04
4J043ZB51
(57)【要約】
芳香族二無水物と第1のジアミンの重合から誘導される第1の繰り返し単位であって、第1のジアミンはカルボキシル置換されたC6-24芳香族炭化水素基を含む、第1の繰り返し単位と、任意で、芳香族二無水物と第2のジアミンの重合から誘導される第2の繰り返し単位であって、第2のジアミンはC1-30二価炭化水素基(任意で1から4個のヘテロ原子を含む)を含む、第2の繰り返し単位と、を含む自己分岐型ポリエーテルイミドであって、自己分岐型ポリエーテルイミドは無水フタル酸でエンドキャップされる、自己分岐型ポリエーテルイミド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族二無水物と第1のジアミンの重合から誘導される第1の繰り返し単位であって、前記第1のジアミンはカルボキシル置換されたC
6-24芳香族炭化水素基を含む、第1の繰り返し単位と、
任意で、芳香族二無水物と第2のジアミンの重合から誘導される第2の繰り返し単位であって、前記第2のジアミンはC
1-30二価炭化水素基(任意で1から4個のヘテロ原子を含む)を含む、第2の繰り返し単位と
を含む、自己分岐型ポリエーテルイミドであって、
前記自己分岐型ポリエーテルイミドは無水フタル酸でエンドキャップされる、自己分岐型ポリエーテルイミド。
【請求項2】
前記第1の繰り返し単位は式(1)により表され、前記第2の繰り返し単位は式(2)により表され:
【化1】
(1)
【化2】
(2)
式中、
各Zは、独立して、任意で1から6個のヘテロ原子、1から8個のハロゲン原子、もしくはそれらの組み合わせで置換された、芳香族C
6-24単環式または多環式部分であり、ただし、Zの価数を超えないことを条件とし、
各R
1は独立して、式(3)の基であり:
【化3】
(3)
式中、
各L
1は独立して、単結合または二価連結基であり、好ましくは、前記二価連結基は、置換もしくは非置換C
1-30アルキレン、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換C
6-30アリーレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリーレン、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-N(R
2b)-、-S-、または-S(O)
2-の1つ以上であり、式中、R
2bは水素、直鎖もしくは分岐C
1-20アルキル、単環式もしくは多環式C
3-20シクロアルキル、または単環式もしくは多環式C
1-20ヘテロシクロアルキルであり、
各R
3は独立して、水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素であり、
nは1から3、または1から2の整数であり、および、
各R
2は独立してC
1-30二価炭化水素基(任意で1から4個のヘテロ原子を含む)である、請求項1に記載の自己分岐型ポリエーテルイミド。
【請求項3】
各R
1は独立して、式(3a)の基であり:
【化4】
(3a)
式中、n1は1から3、もしくは1から2の整数であり、または、
各R
1は独立して、式(3b)の基である:
【化5】
(3b)、
請求項2に記載の自己分岐型ポリエーテルイミド。
【請求項4】
各R
2はC
6-24芳香族炭化水素基もしくはそのハロゲン化誘導体、直鎖もしくは分岐鎖C
2-20アルキレン基もしくはそのハロゲン化誘導体、またはC
3-8シクロアルキレン基もしくはそのハロゲン化誘導体であり、
または、
各R
2は独立して、下記式の二価基であり:
【化6】
式中、
Q
1は-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、-P(R
k)(O)-、-C
yH
2-もしくはそのハロゲン化誘導体、または-(C
6H
10)
z-であり、
R
kはC
1-8アルキルまたはC
6-12アリールであり、
yは1から5の整数であり、および、
zは1から4の整数であり、
または、
各R
2は独立してメタ-フェニレン、パラ-フェニレン、ビス(4,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,4’-フェニレン)スルホン、またはビス(3,3’-フェニレン)スルホンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の自己分岐型ポリエーテルイミド。
【請求項5】
各Zは独立して式(4)のジヒドロキシ化合物から誘導され:
【化7】
(4)
式中、
各R
dおよびR
eは独立して、ハロゲン原子または一価C
1-6アルキル基であり、
p’およびq’は各々独立して、0から4の整数であり、
cは0から4であり、ならびに、
X
aは単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(O)-、またはC
1-18有機架橋基であり、
または、
各Zは独立して、式(4a)の二価基であり:
【化8】
(4a)
式中、
Jは-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、または-C
yH
2y-またはそのハロゲン化誘導体であり、ならびに、
yは1から5の整数である、請求項1~4のいずれか一項に記載の自己分岐型ポリエーテルイミド。
【請求項6】
各々、前記自己架橋可能なポリエーテルイミドの100mol%総繰り返し単位に基づき、
0.01から100mol%、または1から75mol%、または10から50mol%の前記第1の繰り返し単位と、
0から99.99mol%、または25から99mol%、または50から90mol%の前記第2の繰り返し単位と、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の自己分岐型ポリエーテルイミド。
【請求項7】
示差走査熱量測定により決定すると、200℃を超える、もしくは200から400℃、もしくは220から400℃、もしくは220から360℃のガラス転移温度、
熱重量分析により5%重量損失で決定すると、450℃を超える、もしくは450から550℃、もしくは500から550℃の熱分解温度、または、
それらの組み合わせ
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の自己分岐型ポリエーテルイミド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の自己分岐型ポリエーテルイミドの熱脱炭酸および架橋から誘導される、分岐ポリエーテルイミド。
【請求項9】
前記熱脱炭酸および前記架橋は前記自己分岐型ポリエーテルイミドの溶融加工中に起こる、請求項8に記載の分岐ポリエーテルイミド。
【請求項10】
示差走査熱量測定により決定すると、160℃を超える、または160から300℃、または180から250℃、または200から250℃のガラス転移温度、および
ASTM D3801に従い測定すると、0.8mmの厚さでV0の難燃性評価、または0.6mmの厚さでV0の難燃性、または0.4mmの厚さでV0の難燃性、
を有する、請求項8または9に記載の分岐ポリエーテルイミド。
【請求項11】
式(5)の二無水物:
【化9】
(5)
またはその化学等価物の、第1のジアミン、
任意で第2のジアミン、および、
無水フタル酸、
との縮合反応生成物を含む、自己分岐型ポリアミド酸であって、
前記第1のジアミンは式(6)により表され:
【化10】
(6)
式中、
各L
1は独立して、単結合または二価連結基であり、
各R
3は独立して、水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素であり、ならびに、
nは1から3、または1から2の整数であり、
または、
前記二価連結基は、置換もしくは非置換C
1-30アルキレン、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換C
6-30アリーレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリーレン、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-N(R
2b)-、-S-、または-S(O)
2-の1つ以上であり、式中、R
2bは水素、直鎖もしくは分岐C
1-20アルキル、単環式もしくは多環式C
3-20シクロアルキル、または単環式もしくは多環式C
1-20ヘテロシクロアルキルである、自己分岐型ポリアミド酸。
【請求項12】
前記第1のジアミンは式(6a)により表され:
【化11】
(6a)
式中、
n1は1から3、好ましくは1または2の整数であり、および、
各R
3は独立して、水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素であり、
または、
前記第1のジアミンは式(6b)により表され:
【化12】
(6b)
式中、
R
3は水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素である、請求項11に記載の自己分岐型ポリアミド酸。
【請求項13】
自己分岐型ポリエーテルイミドの製造のための方法であって、請求項11に記載の自己分岐型ポリアミド酸を加熱し、前記自己分岐型ポリエーテルイミドを形成させる工程を含む、方法。
【請求項14】
前記自己分岐型ポリアミド酸の溶液流延サンプルは、熱重量分析により決定すると、250から300℃、または260から300℃、または265から300℃の温度で、前記自己分岐型ポリエーテルイミドを形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項に記載の自己分岐型ポリエーテルイミドから得られた分岐ポリエーテルイミド、請求項8~10のいずれか一項に記載の分岐ポリエーテルイミド、もしくは、請求項11または12のいずれか一項に記載の自己分岐型ポリアミド酸から得られた分岐ポリエーテルイミドを含む物品であって、
または、
前記物品はフィルム、繊維、フォーム、または成型部品である、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性分岐を有するポリエーテルイミドに関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、欧州特許庁における、2021年12月9日に出願された欧州特許出願第21213483.7号(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)の優先権および恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
ポリイミド(PI)は典型的には高性能ポリマーとして分類され、高温安定性(>450℃)、熱機械特性、機械的性能、および高芳香族組成を有する。PIは自動車、航空宇宙、エレクトロニクス、および消費者用途における適用に必要とされる多くの特性を有するが、剛性芳香族骨格は、一般的な加工温度およびせん断速度で、不溶性または制限されたメルトフローなどの加工課題を提示する。よって、これらのポリマーは、高いエネルギー消費を使用して製造すること、または、加工性を改善するために骨格組成の変更を必要とする。最近では、付加製造(3次元(3D)印刷としても知られている)開発の進歩が、以前加工が困難であったPIの製造に新たな道を提供する。
【0004】
PIの加工性は、骨格に、エーテルおよび/またはイソプロピリデン/ヘキサフルオロ-イソプロピリデンなどの柔軟性結合を組み込むことにより改善することができる。ポリエーテルイミド(PEI)として一般に知られている、これらの高性能熱可塑性物質は、射出成形および他の加工の容易さを提供するが、望ましい熱および機械特性は維持される。PEIの加工性を改善するために、他の方法を使用することができる。チオエーテル結合を組み込むと骨格柔軟性が増加するが、しばしば、熱安定性を低下させる可能性がある。長鎖分岐(LCB)は、加工せん断速度でのせん断減粘挙動を改善することができるが、PEIの合成中の架橋を回避するために注意深い配慮が必要とされる。骨格位置化学、ペンダント基、または嵩高いハロゲン化モノマーの変更による鎖パッキングおよびアライメントの減少は時として、加工性を改善することができるが、それはまた、コストを増加させ、機械特性を低減させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、改善された加工性、高温安定性、および優れた機械特性を有するポリエーテルイミドが引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
提供されるのは、自己分岐型ポリエーテルイミド(self-branching polyetherimide)であり、自己分岐型ポリエーテルイミドは芳香族二無水物と第1のジアミンの重合から誘導される第1の繰り返し単位(第1のジアミンはカルボキシル置換されたC6-24芳香族炭化水素基を含む)と、任意で、芳香族二無水物と第2のジアミンの重合から誘導される第2の繰り返し単位とを含み、第2のジアミンはC1-30二価炭化水素基(任意で1から4個のヘテロ原子を含む)を含み、自己分岐型ポリエーテルイミドは無水フタル酸でエンドキャップされる。
【0007】
自己分岐型ポリエーテルイミドの熱脱炭酸および架橋から誘導される分岐ポリエーテルイミド(branched polyetherimide)もまた、提供される。分岐ポリエーテルイミドはまた、本明細書で自己分岐ポリエーテルイミドと呼ばれることがある。
【0008】
別の態様は、式(5)の二無水物:
【化1】
(5)
またはその化学等価物の、第1のジアミン、任意で第2のジアミン、および無水フタル酸との縮合反応生成物を含む自己分岐型ポリアミド酸を提供し、第1のジアミンは式(6)により表され:
【化2】
(6)
式中、各L
1は独立して、単結合または二価連結基であり、各R
3は独立して、水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素であり、および、nは1から3、または1から2の整数であり、好ましくは、二価連結基は、置換もしくは非置換C
1-30アルキレン、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換C
6-30アリーレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリーレン、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-N(R
2b)-、-S-、または-S(O)
2-の1つ以上であり、式中、R
2bは水素、直鎖もしくは分岐C
1-20アルキル、単環式もしくは多環式C
3-20シクロアルキル、または単環式もしくは多環式C
1-20ヘテロシクロアルキルである。
【0009】
さらにもう一つの態様は、自己分岐型ポリアミド酸を加熱し、自己分岐型ポリエーテルイミドを形成させる工程を含む自己分岐型ポリエーテルイミドの製造のための方法を提供する。
【0010】
さらに別の態様は、自己分岐型ポリエーテルイミドから得られた分岐ポリエーテルイミド、分岐ポリエーテルイミド、または自己分岐型ポリアミド酸から得られた分岐ポリエーテルイミドを含む物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
潜在反応性ペンダント基または反応性エンドキャッパー(末端基)を有するポリマーは、加工中または後に反応して、加工がより困難な組成物の所望の特性を有する生成物を形成することができる。反応押出および後加工処理は、典型的には高温で活性化される反応性官能基を利用し、加工中または後に分子量を増加させ、または、架橋を促進する。これにより、完成後の最終的な所望の特性を維持しながら、加工の促進が助けられる。一般的な官能基としては、それらの高温安定性および調整可能性のために、鎖末端-キャッパーとしての様々なフェニルエチニル構造が挙げられる。
【0012】
長鎖分岐(LCB)は、ポリマー溶融強度およびせん断減粘挙動(どちらもポリマーの加工性の一因となる)に影響する。低い分岐密度はコイルサイズを低減させ、同様の分子量および加工温度でより低い粘度およびより迅速なせん断減粘を促進する。よって、LCBを組み込んだPEIは、メルトフロー特性を増加させながらレオロジー性能を調整する道を提供する。本発明者らは、より低い分子量の官能化PEIを使用した、溶融加工により誘導される分岐は、加工中または後に、ゼロせん断粘度を有するより高い分子量の分岐PEIを提供することができることを発見した。PEIはそれらの高芳香族組成のために典型的には望ましい難燃性を有し、この難燃性評価はより高い分子量に基づき増加し、よって、本発明者らは、難燃性および加工性の両方を改善する方法を発見した。
【0013】
1つの態様は、自己分岐型ポリエーテルイミドを提供する。自己分岐型ポリエーテルイミドは、反応性ペンダントカルボン酸官能基を組み込んだ溶融加工可能なポリマーである。反応性ペンダントカルボン酸基(複数可)は溶融状態の自己分岐型ポリエーテルイミドを分岐させる分岐点を与える。自己分岐型ポリエーテルイミドの得られた溶融加工生成物は分岐ポリエーテルイミド(または自己分岐ポリエーテルイミド)である。言い換えれば、自己分岐型ポリエーテルイミドは溶融加工工程まで直鎖ポリマーであり、溶融加工時に、熱脱炭酸および架橋が結果として生じる自己分岐ポリエーテルイミドを提供する。理論に縛られることは望まないが、ペンダントカルボン酸基(複数可)は脱炭酸を受ける可能性があり、自己分岐型ポリエーテルイミドの架橋が誘導され、分岐ポリエーテルイミドが形成される。よって、自己分岐型ポリエーテルイミドは、長鎖分岐を有する分岐ポリエーテルイミドを生成する反応経路を提供する。得られた分岐ポリエーテルイミドは、例えば、ドリップがなく、残炎時間が短い改善された難燃性を達成するフィルムを提供する。
【0014】
本明細書では、「自己分岐(分枝)型ポリエーテルイミド」という用語は、自己分岐(分枝)することができる、反応性カルボン酸官能基またはその誘導体を含むポリエーテルイミドを示す。高温では、これらの官能基は脱炭酸し、ラジカルカップリングにより、ビフェニル単位または他の架橋を形成する。本明細書では、「架橋」という用語は、自己分岐する部分(すなわち、カルボン酸基またはその誘導体)の熱反応を示す。自己分岐型ポリエーテルイミドは、上述のように、生成された時には直鎖であり、反応性カルボン酸部位で架橋を受け、分岐ポリエーテルイミド生成物を形成する。三価またはそれ以上の価数のポリアミン分岐基を直接使用して合成することができる他の長鎖分岐ポリイミドおよびポリエーテルイミドとは異なり、本開示の自己分岐型ポリエーテルイミドはポリアミンを長鎖分岐点として使用しない。
【0015】
自己分岐型ポリエーテルイミドは、芳香族二無水物と第1のジアミンの重合から誘導される第1の繰り返し単位を含み、第1のジアミンはカルボキシル置換されたC6-24芳香族炭化水素基を含む。自己分岐型ポリエーテルイミドは無水フタル酸でエンドキャップされる。
【0016】
自己分岐型ポリエーテルイミドの第1の繰り返し単位は、便宜上、後の使用の文脈により特に明記されない限り、ポリエーテルイミドと呼ばれ、式(1)により表すことができ
【化3】
(1)
式中、-O-Z-O-におけるZ基は二価有機基であり、任意で1から6個のヘテロ原子、1から8個のハロゲン原子、またはそれらの組み合わせで置換された芳香族C
6-24単環式もしくは多環式部分とすることができ、ただし、Zの価数を超えないことを条件とする。-O-Z-O-基の二価結合は3,3’、3,4’、4,3’、または4,4’位にある。例示的なZ基としては、式(4)のジヒドロキシ化合物から誘導される基が挙げられ:
【化4】
(4)
式中、R
aおよびR
bは同じか、または、異なるものとすることができ、ハロゲン原子または一価C
1-6アルキル基であり、例えば、p’およびq’は各々独立して、0から4の整数であり、cは0から4であり、ならびにX
aは、ヒドロキシ置換された芳香族基を連結させる架橋基であってもよく、各C
6アリーレン基の架橋基およびヒドロキシ置換基は、C
6アリーレン基上で互いにオルト、メタ、またはパラ(好ましくはパラ)に配置されてもよい。架橋基X
aは単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(O)-、またはC
1-18有機架橋基であってもよい。C
1-18有機架橋基は環状もしくは非環状、芳香族もしくは非芳香族であってもよく、ハロゲンおよび/または酸素、窒素、硫黄、ケイ素、またはリンなどのヘテロ原子をさらに含んでもよい。C
1-18有機基は、それに連結されたC
6アリーレン基が各々、C
1-18有機架橋基の共通のアルキリデン炭素または異なる炭素に連結されるように配置することができる。Z基の具体例は、式(4a)の二価基であり
【化5】
(4a)
式中、Jは-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、または-C
yH
2y-(式中、yは1から5の整数である)またはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基が含まれる)である。特定の態様では、ZはビスフェノールAから誘導され、そのため、式(3a)におけるJは2,2-イソプロピリデンである。
【0017】
式(1)において、各R
1は独立して、式(3)の基であり
【化6】
(3)
式中、各L
1は独立して、単結合または二価連結基であり、および、nは1から3、または1から2の整数である。好ましくは、L
1は、単結合、または、置換もしくは非置換C
1-30アルキレン、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換C
6-30アリーレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリーレン、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-N(R
2b)-、-S-、または-S(O)
2-の1つ以上である二価連結基であり、式中、R
2bは水素、直鎖もしくは分岐C
1-20アルキル、単環式もしくは多環式C
3-20シクロアルキル、または単環式もしくは多環式C
1-20ヘテロシクロアルキルである。各R
3は独立して、水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素である。例えば、各R
1は独立して、式(3a)の基とすることができ:
【化7】
(3a)
式中、各R
3は式(3)について規定される通りであり、n1は1から3、または1から2の整数である。いくつかの態様では、各R
1は独立して、式(3b)の基とすることができ:
【化8】
(3b)
式中、R
3は式(3)について規定される通りである。さらにいっそう好ましくは、各R
1は独立して、式(3c)の基である
【化9】
(3c)
【0018】
自己分岐型ポリエーテルイミドは任意で、芳香族二無水物と第2のジアミンの重合から誘導される第2の繰り返し単位をさらに含み、第2のジアミンはC
1-30二価炭化水素基(任意で1から4個のヘテロ原子を含む)を含む。例えば、第2の繰り返し単位は式(2)により表すことができ:
【化10】
(2)
式中、各Zは、式(1)について以上で記載される基とすることができる。いくつかの態様では、Z基は第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位の両方において同じである。
【0019】
式(2)において、各R
2は独立してC
1-30二価炭化水素基(任意で1から4個のヘテロ原子を含む)である。例えば、各R
2は同じか、または、異なるC
6-24芳香族炭化水素基もしくはそのハロゲン化誘導体、直鎖もしくは分岐鎖C
2-20アルキレン基もしくはそのハロゲン化誘導体、C
3-8シクロアルキレン基もしくはそのハロゲン化誘導体、特に下記式のいずれか一つの二価基であり:
【化11】
式中、Q
1は、-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、-P(R
k)(=O)-(式中、R
kはC
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)、-C
yH
2y-(式中、yは1から5の整数である)またはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基が含まれる)、または-(C
6H
10)
z-(式中、zは1から4の整数である)である。特定の態様では、各R
2は独立してメタ-フェニレン、パラ-フェニレン、ビス(4,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,4’-フェニレン)スルホン、またはビス(3,3’-フェニレン)スルホンである。
【0020】
自己分岐型PEIが式(1)の第1の繰り返し単位および式(2)の第2の繰り返し単位を含むコポリマーである場合、第1の繰り返し単位はPEIにおける100mol%総繰り返し単位に基づき、0.01から100モルパーセント(mol%)、または1mol%から75mol%、または10mol%から50mol%の量で存在することができる。例えば、自己分岐型PEIは、0.01mol%から100mol%、または1mol%から75mol%、または10mol%から50mol%の第1の繰り返し単位、および、0mol%から99.99mol%、または25mol%から99mol%、または50mol%から90mol%の第2の繰り返し単位を含むことができる。
【0021】
自己分岐型PEIはコポリマー、例えば、PEIにおける繰り返し単位の少なくとも50mol%が式(1)を有し、PEIにおける繰り返し単位の残りの50mol%が式(2)を有し、Q
1が-SO
2-である、構造単位を含むポリエーテルイミドスルホンコポリマーとすることができる。あるいは、自己分岐型ポリエーテルイミドは任意で、追加の構造イミド単位、例えば、Vが下記式を有するイミド単位を含むコポリマーとすることができ
【化12】
式中、Wは単結合、-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、-P(R
j)(=O)-(式中、R
jはC
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)、または-C
yH
2y-(式中、yは1から5の整数である)またはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基が含まれる)である。これらの追加の構造イミド単位は、合計100mol%に基づき、ポリイミドにおける繰り返し単位の総数の20mol%未満、または0mol%から10mol%、または0mol%から5mol%、または0mol%から2mol%を占めることができる。いくつかの態様では、ポリエーテルイミド単位以外の追加のイミド単位は存在しない。
【0022】
ポリエーテルイミドは当技術分野で知られている方法により調製することができ、重縮合またはエーテル形成重合が挙げられる。
【0023】
1つ以上の態様では、ポリイミドは重縮合により調製することができ、これは、式(5)の二無水物
【化13】
(5)
またはその化学等価物の、式(6)の第1のジアミン
【化14】
(6)
および、任意で、式(7)のジアミン
H
2N-R
2-NH
2(7)
による、
溶媒中での、自己分岐型ポリエーテルイミドを提供するのに有効な条件下でのイミド化を含み、式中、nは1から3、または1から2、または1の整数であり、Z、L
1、R
2、およびR
3は本明細書で記載される通りである。
【0024】
例えば、第1のジアミンは式(6a)により表すことができ
【化15】
(6a)
式中、n1は1から3、または1から2、または1の整数であり、R
3は本明細書で規定される通りである。いくつかの態様では、第1のジアミンは式(6b)により表され
【化16】
(6b)
式中、R
3は本明細書で規定される通りであり、好ましくは水素である。
【0025】
式(5)の例示的な二無水物としては、下記が挙げられる:3,3-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、および、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、またはそれらの組み合わせ。
【0026】
式(7)のジアミンの具体例としては、下記が挙げられる:ヘキサメチレンジアミン、ポリメチル化1,6-n-ヘキサンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、4-メチルノナメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、N-メチル-ビス(3-アミノプロピル)アミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、ビス(3-アミノプロピル)スルフィド、1,4-シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレン-ジアミン、5-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレン-ジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、1,5-ジアミノナフタレン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、ビス(2-クロロ-4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,4-ビス(p-アミノ-t-ブチル)トルエン、ビス(p-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-メチル-o-アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p-メチル-o-アミノペンチル)ベンゼン、1,3-ジアミノ-4-イソプロピルベンゼン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス-(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)としても知られている)、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、またはそれらの組み合わせ。前記化合物の任意の位置異性体が使用できる。例えば、式(7)のジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、またはそれらの組み合わせとすることができる。
【0027】
触媒が、イミド化中に存在することができる。例示的な触媒としては下記が挙げられる:アリールホスフィン酸ナトリウム、グアニジウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、テトラ(C7-24アリールアルキレン)アンモニウム塩、ジアルキルヘテロシクロ脂肪族アンモニウム塩、ビス-アルキル四級アンモニウム塩、(C7-24アリールアルキレン)(C1-16アルキル)ホスホニウム塩、(C6-24アリール)(C1-16アルキル)ホスホニウム塩、ホスファゼニウム塩、およびそれらの組み合わせ。アニオンは、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、リン酸、酢酸、マキュレート(maculate)、トシル酸、など、またはそれらの組み合わせとすることができる。触媒の量は、ジアミン(6)または(7)のモルに基づき、例えば、0.01から5mol%、または0.05から2mol%、または0.2から1mol%とすることができる。
【0028】
ポリエーテルイミドは溶媒中、例えば、100℃を超える、または150℃を超える沸点を有する比較的非極性の溶媒、例えばo-ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ジメチルアセトアミド、ジフェニルスルホン、アニソール、ベラトロール、ジフェニルエーテル、N-メチルピロリドン、フェネトール、など、またはそれらの組み合わせ中での重合により調製することができる。重合は、溶液重合については、少なくとも110℃、または150から275℃、または175から225℃の温度で実施することができる。溶媒損失を最小に抑えるために、例えば500キロパスカル(kPa)までの、大気圧または超大気圧が使用できる。反応時間は反応物および条件によって変動し、0.5時間(h)から3日、または0.5から72時間、または1から30時間、または1から20時間、または20時間以下、または10時間以下、または3時間以下とすることができる。
【0029】
無水フタル酸(PA)エンドキャッピング剤は重合に、ジアミン(6)および任意的なジアミン(7)の量に基づき、0mol%超から20mol%、または1mol%から10mol%の範囲で添加することができる。エンドキャッピング剤はいつでも添加することができる。例えば、エンドキャッピング剤は、同様の官能基を有する反応物と混合することができ、または、これに溶解させることができ、例えば、無水物含有エンドキャッピング剤が二無水物(5)と合わせられる。最大分子量を達成するために、アミン官能基の量[2×ジアミンモル]=無水物官能基のモル([2×二無水物モル+エンドキャッピング剤中の無水物のモル])である。
【0030】
二無水物(5)対ジアミン(6)および任意でジアミン(7)の組み合わせのモル比は、0.9:1から1.1:1、または実に1:1とすることができる。
【0031】
ポリエーテルイミドはエーテル形成重合により合成することができ、これは、イミド化、すなわち、式(6)および任意で(7)のジアミンの式(10)の無水物との反応を介して進行し
【化17】
(10)
式中、Xはニトロ基またはハロゲンであり、式(11)の中間体ビス(フタルイミド)が提供され
【化18】
式中、Rは式(1)におけるR
1、および、任意で式(2)におけるR
2について記載される通りであり、Xは式(10)において記載される通りである。以上で記載される任意的な触媒または任意的な単官能性鎖終結剤がイミド化中に存在することができる。
【0032】
ビス(フタルイミド)(11)がその後、式(12)のジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩と反応させられ
AMO-Z-OAM (12)
式中、AMはアルカリ金属であり、Zは本明細書で規定される通りであり、無水物キャップオリゴマーが提供され、および、無水物キャップオリゴマーはポリエーテルイミドを提供するのに有効な条件下、任意でアミノ化合物(8)と反応させられる。ポリエーテルイミドを提供するのに有効な重合条件は一般に知られており、以上で記載される溶媒中で実施できる。この重合はまた、溶融状態で、例えば250℃から350℃で実施することができ、この場合、溶媒は一般に存在しない。
【0033】
1から99重量パーセント(wt%)、または10wt%から90wt%、または0.1wt%から20wt%または0.5wt%から10wt%、または1wt%から5wt%の、式(5)の二無水物、式(6)のジアミン、任意で式(7)のジアミン、および無水フタル酸の縮合反応から誘導される自己分岐型ポリアミド酸、および溶媒を含むポリアミド酸溶液もまた、提供される。ポリアミド酸溶液は二無水物(5)、式(6)および任意で(7)のジアミン成分、無水フタル酸、ならびに溶媒を、撹拌により、粘性溶液が形成されるまで、合わせることにより調製することができる。例えば、ポリアミド酸溶液を製造する方法は、成分を合わせる工程および成分を溶媒に溶解させるのに有効な温度および期間で、または、溶媒の沸点より低い温度で、かくはんまたは撹拌しながら加熱する工程を含むことができる。温度は特に制限されず、ポリアミド酸の不安定性を回避するように選択することができる。好ましくは、温度は50℃以下、または30℃以下、または25℃以下である。
【0034】
例えば、自己分岐型ポリアミド酸フィルムは、ポリアミド酸溶液を基材上に流延(キャスト:cast)し、溶媒を流延層から除去することにより調製することができる。溶媒はいくつもの手段により除去することができ、流延層を加熱すること、または、熱および圧力下で流延層を加熱することが挙げられる。自己分岐型ポリアミド酸フィルムはその後、熱処理を使用してイミド化され、自己分岐型PEIを形成することができ、次いで、これは、硬化を受けることができ、本明細書で記載される分岐PEIが形成される。例えば、自己分岐型ポリアミド酸の溶液流延サンプルは、熱重量分析(TGA)により決定すると、250℃から300℃、または260℃から300℃、または265℃から300℃の温度で自己分岐型ポリエーテルイミドを形成することができる。
【0035】
自己分岐型ポリエーテルイミドは、下記特性の1つ以上を有することができる。自己分岐型ポリエーテルイミドは、示差走査熱量測定(DSC)により決定すると、200℃を超える、または200℃から400℃、または220℃から400℃、または220℃から360℃のガラス転移温度(Tg)、および、熱重量分析(TGA)により5%重量損失で決定すると、450℃を超える、または450℃から550℃、または500℃から550℃の熱分解温度(Td)を有することができる。
【0036】
分岐ポリエーテルイミドは、下記特性の1つ以上を有することができる。分岐ポリエーテルイミドは、DSCにより決定すると160℃を超える、または160℃から300℃、または180℃から250℃、または200℃から250℃のガラス転移温度、およびASTM D3801に従い測定すると、0.8mmの厚さでV0の難燃性評価、または0.6mmの厚さでV0の難燃性評価、または0.4mmの厚さでV0の難燃性評価を有することができる。
【0037】
別の態様では、ポリマー組成物が提供される。組成物は自己分岐型または分岐ポリエーテルイミドおよび第2のポリマーを含むことができる。そのようなポリマー組成物は、溶媒を排除した組成物の総重量に基づき、1wt%から99wt%の自己分岐型または分岐ポリエーテルイミドおよび1wt%から99wt%の第2のポリマー、または10wt%から90%の自己分岐型または分岐ポリエーテルイミドおよび10wt%から90wt%の第2のポリイミドを含むことができる。
【0038】
第2のポリマーの例示的な例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:ポリアセタール、ポリ(C1-6アルキル)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアンヒドリド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリアリーレンケトン、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルホン、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(C1-6アルキル)メタクリレート、ポリメタクリルアミド、環状オレフィンポリマー、ポリオレフィン、ポリオキサジアゾール、ポリオキシメチレン、ポリフタリド、ポリイミド、ポリシラザン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホンアミド、ポリスルホネート、ポリチオエステル、ポリトリアジン、ポリ尿素、ポリウレタン、ビニルポリマー、など、またはそれらの組み合わせ。
【0039】
ポリマー組成物はこれらの型の組成物に通常、組み込まれる様々な添加物を含むことができ、ただし、いずれの添加物も、組成物の所望の特性に著しくは悪影響を及ぼさないように選択されることを条件する。例示的な添加物としては、下記が挙げられる:抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線(UV)吸収添加物、消光剤、可塑剤、潤滑剤、離型剤、帯電防止剤、視覚効果添加物、例えば、染料、顔料、および照明効果添加物、難燃剤、抗ドリップ剤、および放射線安定剤。微粒子フィラーおよび補強フィラーもまた存在することができ、下記が挙げられる:ミネラルフィラー、フレーク状フィラー、カーボンナノチューブ、剥離ナノクレイ、カーボンナノワイヤー、カーボンナノスフェア、カーボン金属ナノスフェア、カーボンナノロッド、カーボン金属ナノロッド、ナノ粒子、不溶性ポリマー、ガラス繊維、炭素繊維、ガラス-炭素繊維、タルク、例えば、繊維状、モジュール状、針状、およびラメラ状タルク、グラファイト、フィブリル化フルオロポリマー、ポリマー繊維およびフィラメント、織繊維、金属粒子、無機繊維、単結晶繊維または「ウィスカー」、など。添加物の組み合わせが使用できる。前記添加物は組成物の総重量に基づき、個別に、0.005wt%から10wt%の量で、または組み合わせて、0.005wt%から20wt%、または0.01wt%から10wt%の量で存在することができる。
【0040】
本明細書では、自己分岐型ポリエーテルイミドから得られた分岐ポリエーテルイミド、分岐ポリエーテルイミド、自己分岐型ポリアミド酸から得られた分岐ポリエーテルイミド、本明細書で記載されるポリマー組成物、またはそれらの組み合わせを含む物品もまた提供される。多種多様の物品が製造でき、例えば、自動車、テレコミュニケーション、航空宇宙、電気/エレクトロニクス、電池製造、ワイヤコーティング、輸送、食品業界、およびヘルスケア用途に有用な物品である。そのような物品はフィルム、膜、繊維、フォーム、シート、導電性部品、コーティング、プリフォーム、複合物、ワニス、レンズ、などを含むことができる。例えば、物品は、連続または独立気泡フォーム、ナノフォーム、電池セパレータ、イオン交換膜、チュービング、キャピラリ、帯電防止コーティング、自浄表面、防汚表面、または耐擦傷性部品であってもよい。別の特別な例は二次電池、例えばリチウムイオン電池のためのセパレータである。物品は押出または成型させることができ、例えば、射出成形、溶融押出、熱成形、またはロト成形である。物品は付加製造法、例えば3次元印刷により製造することができる。電子デバイス用の構成要素および殺菌可能な医療用物品のための構成要素がとりわけ有用である。射出成形により製造される薄壁構成要素、例えば、0.1mmから10mm、または0.2mmから5mm、または0.5mmから2mmの厚さを有する壁が有用である。
【0041】
自己分岐型または分岐ポリエーテルイミドおよびポリアミド酸について、さらに下記非限定的な例により説明する。
【実施例】
【0042】
表1は実施例において使用した成分を列挙する。
【0043】
【0044】
組成物の物理試験を下記試験方法および手順に従い、実施した。別記されない限り、本明細書で明記される試験標準は全て、事実上、2016年時点での試験標準である。
【0045】
プロトン核磁気共鳴(1H NMR)分光法を23℃で、Varian Unity 400を400MHzで、重水素化クロロホルム(CDCl3)または重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)において使用して実施した。
【0046】
高度浸透クロマトグラフ(APC)を、450Å×150mm、200Å×150mm、および125Å×150mm XTカラムが備えられたWaters ACQUITYおよびWaters ACQUITY RI検出器を用い、1.0mL/分流速、40℃で、CHCl3中で使用して実施し、ポリスチレン標準に対する分子量を得た。APC分析前に、40℃での動的光散乱(DLS)を使用して、CHCl3における全てのポリマー溶液は凝集を示さなかったことを証明した。
【0047】
ガラス転移温度(Tg)を窒素下で示差走査熱量測定(DSC)を使用し、ASTM D3418に従い決定した。試験をDSC Q2000 DSC機器を使用して、-10℃から300℃まで、10℃/分の速度で加熱することにより実施し、Tg値を第2の熱サイクルから変曲点によって決定した。
【0048】
動的機械分析(DMA)は、弾性率対温度挙動を、TA Instruments Q800動的機械分析計を使用して、振動張力モードにおいて、周波数1Hz、振動振幅15μm、および静的力0.01Nで、3℃/分加熱勾配を用いて明らかにした。段階的等温分析は、DMAによりイミド化温度(Tim)を探った。Tgもまた、指定された場合、DMAにより決定した。
【0049】
熱重量分析(TGA)を使用して、Discovery TGA Q500により、熱分解温度を決定した。サンプルを25℃から600℃まで、10℃/分の加熱速度で、窒素のストリーム中(25mL/分)で加熱した。段階的等温分析は、10℃min-1の加熱速度および重量%変化が>0.1%min-1となると等温工程を使用し、重量%変化が<0.01%min-1となるとすぐに加熱を再開した。Thermo-Fisher Nicolet iS-10フーリエ変換赤外分光計に結合させたTGA(TGA-FTIR)は20℃/分で加熱した20mgサンプルの発生ガスを分析した。等温工程を、溶媒蒸発/イミド化と脱炭酸の間および脱炭酸と骨格分解の間30分間使用し、様々なオフガス成分のFTIR分析を分離した。
【0050】
イミド化フィルムのFTIR分析をDiamond GladiATRアタッチメントが備えられたVarian 670-IR上で実施した。スペクトルデータを、各々32スキャンを用いて、4cm-1の分解能で取得した。
【0051】
圧縮成形をCarver Model No.3856で実施し、PARTALL Power Glossy Liquid(Rexco)離型剤でコートしたKAPTONフィルムで被覆した2つのステンレス鋼プレートを使用して、透明な延性フィルムを生成させた。16mil厚の鋼シムを使用してフィルム厚を制御した。
【0052】
メルトフローレオロジーを、N2雰囲気下、TA Instruments Discovery Hybridレオメータ(DHR)-2上で、8mm直径の使い捨てアルミニウム平行プレートジオメトリを使用して実施した。1Hzで0.01-10%振動ひずみからのひずみ掃引試験により、線形粘弾性領域(LVR)を探った。1.25%振動ひずみ振幅および1-100rad/sの振動周波数範囲を使用して、340から220℃まで10℃間隔での周波数掃引により、複素粘度(η*)ならびに貯蔵(G’)および損失弾性率(G”)が得られた。TA Instrumentsソフトウェア(TRIOS)は、粘度および弾性率をシフトさせることによりマスター曲線を作成した。メルトフロー特性決定は、せん断減粘性レジームのべき法則分析を含んだ。1Hzおよび1.25%ひずみ振幅での3600秒間の時間掃引は粘度および弾性率を時間の関数としてモニタし、溶融状態での架橋を誘導した。
【0053】
燃焼性試験を、「プラスチック材料の燃焼性のための試験、UL94(“Tests for Flammability of Plastic Materials, UL 94”)」と題するUnderwriter’s Laboratory Bulletin 94(UL94)の手順に従い実施した。いくつかの評価が、燃焼速度、消火までの時間、ドリップに抵抗する能力、およびドリップが燃焼しているかどうかに基づき適用できる。バーの厚さは0.4mmとした。難燃性評価をUL-94垂直燃焼試験により、ASTM D3801標準に従い特徴付けた。各試験において、炎をサンプルに10秒(s)間適用し、次いで除去した。自己消火時間をt1(s)として記録した。次いで炎を再び、もう10秒間適用し、自己消火時間をt2(s)として記録した。
【0054】
<実施例1:DABA-PAAおよびDABA-PEIの合成>
ジアミノ安息香酸置換されたポリアミド酸(DABA-PAA)およびジアミノ安息香酸置換されたポリエーテルイミド(DABA-PEI)を下記の通り調製した。
【0055】
20,000g/molのMnを有するDABA-PEIの合成は、一例として、ポリマーを調製するために使用されるジアミンの総モルに基づき50mol%DABAを標的にすることに従う。DABA(3.02g、19.6mmol)、mPD(2.12g、19.6mmol)、BPA-DA(20.00g、37.8mmol)、およびNMP(92mL)を三つ口、500mL、丸底フラスコに入れた。次いで、フラスコには、撹拌ブレードが取り付けられたガラス撹拌ロッド、ゴムセプタム、および凝縮器が乗せられたディーン・スターク・トラップを備えさせた。中身を20分間、ゆっくり撹拌しながら窒素でパージした。反応混合物を75-100rpmで18時間、23℃にて、成分が溶解するまで撹拌した。次いで、PA(0.42g、2.9mmol)をエンドキャッピング試薬として添加した。次いで、得られた生成物溶液をメタノール中に沈殿させて、DABA-PAAとして単離させるか、または、溶液を溶液流延させて、DABA-PAAフィルムを生成させ、これを次いで加熱によりイミド化させ、DABA-PEIフィルムを形成させた。
【0056】
あるいは、DABA、mPD、BPA-DA、およびNMPを含む反応混合物を180℃で、75-100rpmで撹拌しながら、18時間加熱した。次いで、PAを反応混合物に添加した。生成物を、沈殿またはフィルムの溶液流延のいずれかにより単離した。
【0057】
同様の手順を使用して、10、25、および75mol%のDABAを組み込んだ、DABA-PAAおよびDABA-PEIを調製した。100mol%DABAを含む追加のサンプルもまた、上記合成手順からmPDを排除することにより調製した。
【0058】
1H NMR分光法を使用して、DABA(mol%)の組込みを決定し、MnをPA芳香族プロトンと関連する化学シフトの末端基分析により決定した。
【0059】
スキーム1に見られるように、室温で合成されたポリ(アミド酸)(PAA)はワンポット、2段階反応により進行し、直鎖ポリマーが提供された。
(スキーム1)
【化19】
【0060】
<実施例2:DABA-PAAのイミド化>
DABA-PAAについては、溶液流延を使用して、フィルムを生成させ、イミド化温度を分析した。ガラススライド/プレート上に流延させたサンプルを80℃、150℃、または200℃で加熱し、次いで、イミド化温度分析に供した。フィルムを単離して、乾燥させた後、FTIRおよびTGAにより、完全イミド化に必要とされる温度(Tim)を決定した。TGAを段階的分析により実施し、Timを探り、この場合、0.1wt%/分を超える変化は等温工程を、0.01wt%/分未満の変化が起こるまで持続させることを促し、サンプルが600℃に到達するまで加熱および等温工程を繰り返した。50mol%DABA-PAAを一例として使用し、80℃および150℃まで加熱したフィルムは、およそ260℃の等温工程およびおよそ480℃から490℃の第2の等温工程を示した。200℃まで加熱したDABA-PAAフィルムはおよそ260℃で重量%のわずかな低下を示したが、等温工程を示さず、一方、480℃から490℃範囲において等温工程を示した。理論に縛られることは望まないが、第1の等温工程はNMP溶媒の揮発および熱イミド化のために起こる。Timを等温工程の温度プラス10℃として決定した。適切なTimまで加熱したフィルムのFTIR分析により、これらの温度を確認した。
【0061】
さらなる分析を150℃で加熱したサンプルについて実施した。組成物は150℃での加熱後にTGAにより2つの等温工程を示した。第1の等温工程は250℃から300℃の間で起きた。より高いmol%のDABA組込みは、第1の工程の温度を増加させた。第1の等温工程プラス10℃が、各組成物のTimを決定した。TimはDABAコモノマーのmol%の組込みの増加に伴い、100mol%DABA-PEIに対する300℃まで直線的に増加した。組成物はTimと450℃の間では一定のwt%を示し、ここで重量損失が再び始まり、520℃付近の第2の等温工程まで続いた。第2の等温工程は骨格分解のために起こり、他のPEIと一致した。理論に縛られることは望まないが、450℃と第2の等温工程の間の重量損失はDABAのより高いmol%組込みでより顕著になり、カルボン酸ペンダント基の含有により与えられた骨格分解前の熱不安定性が示唆された。
【0062】
<実施例3:DABA-PEIの熱特性>
mol% DABA組込みに対応するTimの決定により、より大きな工業規模でのPEI合成が可能になった。反応構成は実施例1のDABA-PAA合成と一致したままであったが、反応を180℃まで加熱し、直接、DABA-PEIサンプルを得た。合成の完了後、反応フラスコを適切なTimまで加熱して、NMP溶媒を除去し、および、イミド化を完了した。サンプルをNMPに再溶解し、溶液流延させ、透明な延性フィルムを得た。完全イミド化DABA-PEIのTGAにより、およそ450℃まで重量損失がないことが明らかになり、より高いmol%のDABA組込みを有するPEIではより早期の重量損失が開始し、DABA-PAAのTGA分析と一致した。
【0063】
示差走査熱量測定(DSC)により、より高いmol%のDABA組込みに伴うTgの増加を決定した。TimをTgで正規化すると、全ての組成物が完全イミド化を受けるにはTgを超える同様の温度(約45℃)を必要とすることが明らかになった。上述のように、イミド化温度はDABA組込みの増加に伴い直線的に増加した。
【0064】
DABA-PEIの熱特性を表2に示す。
【0065】
【0066】
<実施例4:DABA-PEIのDMA分析>
動的機械分析(DMA)を使用して、ある範囲の温度にわたって熱機械性能を探った。DABA-PEIにより、100mol%のDABA-PEI以外でのTg後の流れが明らかになり、Tg後にプラトーを有した。400℃を超えて延びるプラトーは架橋を示した。
【0067】
<実施例5:DABA-PEIのFTIR分析>
この系に対する脱炭酸および架橋をさらに理解するために、FTIRに結合させたTGAは、TGA炉からのオフガスをモニタし、分析した。等しいサイズおよび形状を有する20mgのフィルムを加熱し、オフガスの化学組成を探った。第1の揮発化合物はNMP溶媒であり、10から20分の間である。このピークに続いて、100mol%のDABA-PEIサンプルでは、CO2/COとなり、0mol%のDABA-PEIについてはCO2/COピークはなく、ピークとサンプルに組み込まれた初期DABAモノマーの量の関係が示された。およそ70分のCO2/COピーク後、骨格分解が>80分に観察された。両方のサンプル間で同様のピーク波数および強度が観察された。CO2/COの最大除去に対応する時のGram-Schmidtプロットの強度対DABA組込みのmol%のさらなる分析により直線関係が明らかになり、異なる加工手順中での脱炭酸の定量化が可能になった。
【0068】
<実施例6:DABA-PEIの分岐>
高温でのペンダントカルボン酸基の反応性は、溶融状態での反応性分岐を提供した。レオメータを使用して、340℃での0mol%、5mol%、および10mol%のDABA-PEIの溶融状態での時間掃引は溶融状態で誘導される架橋を標的とした。サンプルは全て、20,000g/molの標的Mnを有し、300℃までのN2雰囲気下での加熱により、レオロジー分析前に完全イミド化が確保された。よって、いくらかの架橋が初期イミド化中に起きた可能性がある。DABAを含むサンプルでは、対照PEIと比較して、全時間掃引にわたって、貯蔵弾性率(G’)と損失(G”)弾性率の間のギャップがより小さかった。サンプルは全時間にわたってG’に対してより大きなG”を維持し、架橋がないことが示唆された。DSCにより、時間掃引後のサンプルについてTgの最小シフトが確認されたが、転移のわずかな広がりはポリマー構造のわずかな変化を示唆する。
【0069】
高度浸透クロマトグラフィー(APC)は、PEI対照および5mol%のDABA-PEIの相対分子量および多分散性(PDI)を分析した。10mol%のDABA-PEIは不均一溶液を生成し、APC分析に不適切であった。対照PEIは同様の相対Mwを維持したが、5mol%のDABA-PEIサンプルは時間と共に直線的に増加した。CHCl3中での溶解度と共にPDIの>2.0までの対応する増加により、段階的に成長するポリマーについての分岐が示唆される。よって、粘弾性挙動およびレオロジー性能の変化が、処理後に予想され、60分間処理されたサンプルについて溶融レオロジーによりさらに分析した。
【0070】
340℃から220℃の間の10℃インクリメントでの周波数掃引により、粘弾性応答を探った。複素粘度(η*)マスターカーブにより、対照PEIサンプルについてのニュートンプラトーが明らかになったが、5mol%および10mol%のDABA-PEIの両方についてプラトーは識別できなかった。10mol%のDABA-PEIサンプルは最低周波数で最高η*を示し、最大の分岐量と潜在的Mwが示唆された。5mol%のDABA-PEIは、わずかに低いMwを有したとしても、低周波数でより高いη*を有した。理論に縛られることは望まないが、低分岐密度では、一鎖あたりの絡み合いの増加という結果になり、これが、通常η*を低減させるコイルサイズの通常の低減を超えて、低せん断速度での流動挙動に影響を与える。より高い周波数に到達すると、顕著なせん断減粘性が始まり、2-30年の周波数にわたって進行し、そのほとんどが射出成形などの加工で一般に使用されるものである。
【0071】
<実施例7:難燃性>
表3はPEI化合物の熱特性および難燃性を示す。
【0072】
【0073】
表3に示されるように、対照PEIサンプル(0.4mm厚さ)は全てのサンプルでドリップを示し、7試験のうち6で綿に引火し、市販PEIサンプルについての0.4mm厚さでのUL認定、94V-2フレームクラス評価と一致した。5mol%および10mol%のDABA-PEIについてのサンプルはより低いt1およびt2残炎時間を有し、アフターグローはなかった。ドリップを有し、綿に引火したサンプルはなく、よって、サンプルはUL94V0評価を達成した。DABA-PEIにおける架橋が難燃性を改善した。
【0074】
この開示は、下記非限定的態様によりさらに説明される。
【0075】
態様1.芳香族二無水物と第1のジアミンの重合から誘導される第1の繰り返し単位であって、第1のジアミンはカルボキシル置換されたC6-24芳香族炭化水素基を含む、第1の繰り返し単位と、任意で、芳香族二無水物と第2のジアミンの重合から誘導される第2の繰り返し単位であって、第2のジアミンはC1-30二価炭化水素基(任意で1から4個のヘテロ原子を含む)を含む、第2の繰り返し単位と、を含む自己分岐型ポリエーテルイミドであって、自己分岐型ポリエーテルイミドは無水フタル酸でエンドキャップされる、自己分岐型ポリエーテルイミド。
【0076】
態様2.態様1の自己分岐型ポリエーテルイミドであって、第1の繰り返し単位は式(1)により表され、第2の繰り返し単位は式(2)により表され:
【化20】
(1)
【化21】
(2)
式中、各Zは、独立して、任意で1から6個のヘテロ原子、1から8個のハロゲン原子、もしくはそれらの組み合わせで置換された、芳香族C
6-24単環式または多環式部分であり、ただし、Zの価数を超えないことを条件とし、各R
1は独立して、式(3)の基であり:
【化22】
(3)
式中、各L
1は独立して、単結合または二価連結基であり、好ましくは、二価連結基は、置換もしくは非置換C
1-30アルキレン、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換C
6-30アリーレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリーレン、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-N(R
2b)-、-S-、または-S(O)
2-の1つ以上であり、式中、R
2bは水素、直鎖もしくは分岐C
1-20アルキル、単環式もしくは多環式C
3-20シクロアルキル、または単環式もしくは多環式C
1-20ヘテロシクロアルキルであり、各R
3は独立して、水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素であり、nは1から3、または1から2の整数であり、および、
各R
2は独立してC
1-30二価炭化水素基(任意で1から4個のヘテロ原子を含む)である、自己分岐型ポリエーテルイミド。
【0077】
態様3.態様2の自己分岐型ポリエーテルイミドであって、各R
1は独立して、式(3a)の基であり:
【化23】
(3a)
式中、n1は1から3、または1から2の整数であり、好ましくは、各R
1は独立して、式(3b)の基である:
【化24】
(3b)、
自己分岐型ポリエーテルイミド。
【0078】
態様4.前記態様のいずれか一つの自己分岐型ポリエーテルイミドであって、各R
2はC
6-24芳香族炭化水素基もしくはそのハロゲン化誘導体、直鎖もしくは分岐鎖C
2-20アルキレン基もしくはそのハロゲン化誘導体、またはC
3-8シクロアルキレン基もしくはそのハロゲン化誘導体であり、好ましくは、各R
2は独立して、下記式の二価基であり:
【化25】
式中、Q
1は-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、-P(R
k)(O)-、-C
yH
2-またはそのハロゲン化誘導体、または-(C
6H
10)
z-であり、R
kはC
1-8アルキルまたはC
6-12アリールであり、yは1から5の整数であり、zは1から4の整数であり、より好ましくは、各R
2は独立してメタ-フェニレン、パラ-フェニレン、ビス(4,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,4’-フェニレン)スルホン、またはビス(3,3’-フェニレン)スルホンである、自己分岐型ポリエーテルイミド。
【0079】
態様5.前記態様のいずれか一つの自己分岐型ポリエーテルイミドであって、各Zは独立して式(4)のジヒドロキシ化合物から誘導され:
【化26】
(4)
式中、各R
dおよびR
eは独立して、ハロゲン原子または一価C
1-6アルキル基であり、
p’およびq’は各々独立して、0から4の整数であり、cは0から4であり、X
aは単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(O)-、またはC
1-18有機架橋基であり、好ましくは、各Zは独立して、式(4a)の二価基であり:
【化27】
(4a)
式中、Jは-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、または-C
yH
2y-またはそのハロゲン化誘導体であり、ならびに、
yは1から5の整数である、自己分岐型ポリエーテルイミド。
【0080】
態様6.前記態様のいずれか一つの自己分岐型ポリエーテルイミドであって、各々、自己架橋可能なポリエーテルイミドの100mol%総繰り返し単位に基づき、0.01から100mol%、または1から75mol%、または10から50mol%の第1の繰り返し単位と、0から99.99mol%、または25から99mol%、または50から90mol%の第2の繰り返し単位とを含む、自己分岐型ポリエーテルイミド。
【0081】
態様7.前記態様のいずれか一つの自己分岐型ポリエーテルイミドであって、示差走査熱量測定により決定すると、200℃を超える、もしくは200から400℃、もしくは220から400℃、もしくは220から360℃のガラス転移温度、熱重量分析により5%重量損失で決定すると、450℃を超える、もしくは450から550℃、もしくは500から550℃の熱分解温度、またはそれらの組み合わせを有する、自己分岐型ポリエーテルイミド。
【0082】
態様8.前記態様のいずれか一つの自己分岐型ポリエーテルイミドの熱脱炭酸および架橋から誘導される、分岐ポリエーテルイミド。
【0083】
態様9.態様8の分岐ポリエーテルイミドであって、熱脱炭酸および架橋は、自己分岐型ポリエーテルイミドの溶融加工中に起こる、分岐ポリエーテルイミド。
【0084】
態様10.態様8または9の分岐ポリエーテルイミドであって、示差走査熱量測定により決定すると、160℃を超える、または160から300℃、または180から250℃、または200から250℃のガラス転移温度、および、ASTM D3801に従い測定すると、0.8mmの厚さでV0の難燃性評価、または0.6mmの厚さでV0の難燃性、または0.4mmの厚さでV0の難燃性を有する、分岐ポリエーテルイミド。
【0085】
態様11.式(5)の二無水物:
【化28】
(5)
またはその化学等価物の第1のジアミン、任意で第2のジアミン、および無水フタル酸との縮合反応生成物を含む、自己分岐型ポリアミド酸であって、第1のジアミンは式(6)により表され:
【化29】
(6)
式中、各L
1は独立して、単結合または二価連結基であり、各R
3は独立して、水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素であり、ならびに、nは1から3、または1から2の整数であり、好ましくは、二価連結基は、置換もしくは非置換C
1-30アルキレン、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換C
6-30アリーレン、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリーレン、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-N(R
2b)-、-S-、または-S(O)
2-の1つ以上であり、式中、R
2bは水素、直鎖もしくは分岐C
1-20アルキル、単環式もしくは多環式C
3-20シクロアルキル、または単環式もしくは多環式C
1-20ヘテロシクロアルキルである、自己分岐型ポリアミド酸。
【0086】
態様12.態様11の自己分岐型ポリアミド酸であって、第1のジアミンは式(6a)により表され:
【化30】
(6a)
式中、n1は1から3、好ましくは1または2の整数であり、各R
3は独立して、水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素であり、より好ましくは、第1のジアミンは式(6b)により表され:
【化31】
(6b)
式中、R
3は水素、置換もしくは非置換C
1-30アルキル、置換もしくは非置換C
3-30シクロアルキル、置換もしくは非置換C
1-30ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換C
6-30アリール、または置換もしくは非置換C
1-30ヘテロアリールであり、好ましくは水素である、自己分岐型ポリアミド酸。
【0087】
態様13.自己分岐型ポリエーテルイミドの製造のための方法であって、態様11の自己分岐型ポリアミド酸を加熱して、自己分岐型ポリエーテルイミドを形成させる工程を含む、方法。
【0088】
態様14.態様13の方法であって、自己分岐型ポリアミド酸の溶液流延サンプルは、熱重量分析により決定すると、250から300℃、または260から300℃、または265から300℃の温度で自己分岐型ポリエーテルイミドを形成する、方法。
【0089】
態様15.態様1から7のいずれか一つの自己分岐型ポリエーテルイミドから得られた分岐ポリエーテルイミド、態様8から10のいずれか一つの分岐ポリエーテルイミド、または態様11または12のいずれか一つの自己分岐型ポリアミド酸から得られた分岐ポリエーテルイミドを含む物品であって、好ましくは、物品はフィルム、繊維、フォーム、または成型部品である、物品。
【0090】
組成物、方法、および物品は、選択的に、本明細書で開示される任意の適切な構成要素または工程を含み、これから構成され、またはこれから本質的に構成され得る。組成物、方法、および物品は、加えて、またはその代わりに、組成物、方法、および物品の機能または目的の達成に別段必要とされない、任意の工程、構成要素、材料、材料成分、アジュバント、または種を欠く、または実質的に含まないように策定することができる。
【0091】
単数形「1つの(a、an)」または「その(the)」は文脈で明確に別記されない限り、複数の指示対象を含む。「または」は、文脈により明確に別記されない限り「および/または」を意味する。同じ構成要素または特性に向けられた全ての範囲の終点は含まれ、独立して組み合わせ可能である。より広い範囲に加えて、より狭い範囲またはより特定的な群を開示するのは、より広い範囲またはより大きな群を否定するものではない。本明細書で使用される「それらの組み合わせ」は、限定されておらず、組み合わせは列挙されたアイテムの1つ以上を、任意で、列挙されていない1つ以上の同様のアイテムと共に含むことを意味する。
【0092】
別に規定されない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は、この開示が属する分野の当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。「組み合わせ」はブレンド、混合物、合金、反応生成物、などを含む。「ヒドロカルビル」および「炭化水素」は広く、炭素および水素を含み、任意で、1から3個のヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、ハロゲン、ケイ素、硫黄、またはそれらの組み合わせを有する基を示し、「アルキル」は直鎖もしくは分岐鎖、飽和一価炭化水素基を意味し、「アルキレン」は直鎖もしくは分岐鎖、飽和、二価炭化水素基を意味し、「アルキリデン」は直鎖もしくは分岐鎖、飽和二価炭化水素基を意味し、両方の原子価が単一の共通の炭素原子上にあり、「アルケニル」は炭素-炭素二重結合により結合された少なくとも2つの炭素を有する直鎖もしくは分岐鎖一価炭化水素基を意味し、「シクロアルキル」は少なくとも3つの炭素原子を有する非芳香族一価単環式または多環式炭化水素基を意味し、「シクロアルケニル」は、少なくとも3つの炭素原子を有し、少なくとも1つの不飽和度を有する非芳香族環状二価炭化水素基を意味し、「アリール」および「アリーレン」は、それぞれ、少なくとも1つの芳香環、任意で非芳香環を含み、1つまたは複数の環内に炭素のみを有する一価基および二価基を意味し、「アルキルアリール」はアルキル基で置換されたアリール基を意味し、「アリールアルキル」はアリール基で置換されたアルキル基を意味し、「ヘテロアリール」および「ヘテロアリーレン」は、それぞれ、環内の少なくとも1つの炭素がヘテロ原子(S、O、P、またはN)に置き換えられた一価基および二価芳香族基を意味し、「アシル」はカルボニル炭素橋(-C(=O)-)を介して結合されたアルキル基を意味し、「アルコキシ」は酸素橋(-O-)を介して結合されたアルキル基を意味し、「アリールオキシ」は酸素橋(-O-)を介して結合された指示された数の炭素原子を有する、以上で規定されるアリール基を意味する。
【0093】
別記されない限り、前記基の各々は、非置換とすることができ、または置換することができ、ただし、置換が化合物の合成、安定性、または使用に著しい悪影響を及ぼさないことを条件とする。置換基または変数の組み合わせが許容される。本明細書で使用される「置換された」は、指定された原子または基上の少なくとも1つの水素が別の基に置き換えられたことを意味し、ただし、指定された原子の通常の原子価を超えないことを条件とする。置換基がオキソ(=O)である場合、その原子上の2つの水素が置き換えられる。「置換された」位置上に存在することができる例示的な基としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アルカノイル(例えば、C2-6アルカノイル基、例えばアシル)、カルボキサミド、C1-6またはC1-3アルキル、シクロアルキル、アルケニル、およびアルキニル、C1-6またはC1-3アルコキシ、C6-10アリールオキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6またはC1-3アルキルスルフィニル、C1-6またはC1-3アルキルスルホニル、アミノジ(C1-6またはC1-3)アルキル、C6-12アリール、C7-19アリールアルキル、またはC7-19アリールアルコキシ。基が置換される場合、炭素原子の指示された数には、置換基(複数可)の炭素原子は、あったとしても、含まれない。
【0094】
引用される全ての特許、特許出願、および他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願内の用語が、組み込まれる参考文献内の用語と矛盾または対立する場合、本出願の用語が、組み込まれる参考文献の対立する用語に優先する。
【0095】
特定の実施形態について記載してきたが、現在のところ、予期されない、または、予期され得ない代替、改変、変更、改善および実質的な等価物について、出願人または当業者は、思い着くことができる。したがって、出願された、補正される可能性のある添付の特許請求の範囲は、そのような代替、改変、変更、改善および実質的な等価物を全て包含することが意図される。
【国際調査報告】