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2024-545504発現増強のために選択されるコザック配列を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-09
(54)【発明の名称】発現増強のために選択されるコザック配列を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20241202BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241202BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241202BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241202BHJP
   C12N 15/67 20060101ALI20241202BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20241202BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241202BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20241202BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/67 Z
C12Q1/68 100Z
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534491
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 US2022081283
(87)【国際公開番号】W WO2023108130
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/265,262
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524217735
【氏名又は名称】エイアバンティバイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AavantiBio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】キャシー,ワイドラー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QS38
(57)【要約】
本開示のいくつかの実施形態は、目的の導入遺伝子の発現増強をもたらすコザック配列の選択に関する。いくつかの実施形態は、発現させる遺伝子および/または前記遺伝子の発現を駆動するプロモーターのいずれに対しても非天然である、コザック配列に関する。いくつかの実施形態は、心臓組織などの目的組織における前記遺伝子の発現増強をもたらすように設計された、合成コザック配列に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入遺伝子をコードする配列、プロモーター、およびコンセンサスコザック配列を含む発現コンストラクトを含む核酸であって、前記発現コンストラクトが両側を逆向き末端反復配列で挟まれており、前記合成コザック配列がAGCCCCAACの配列に対して少なくとも88%の配列同一性を有する、核酸。
【請求項2】
前記コンセンサスコザック配列がAGCCCCAACの配列を有する、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記プロモーターが心臓特異的プロモーターを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
前記プロモーターが、CMV、mini-CMV、CBA、HSV、TK、RSV、SV40、MMTV、Ad E1A、心筋トロポニンC、心筋トロポニンI、心筋トロポニンT(cTnT)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
前記導入遺伝子をコードする配列が心臓遺伝子をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
前記心臓遺伝子がBAG3である、請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
前記導入遺伝子をコードする配列が、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項6に記載の核酸。
【請求項8】
前記心臓遺伝子が心臓ミオシン結合タンパク質C(MYBPC3)である、請求項5に記載の核酸。
【請求項9】
前記導入遺伝子をコードする配列が、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項8に記載の核酸。
【請求項10】
組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターゲノムである、請求項1に記載の核酸。
【請求項11】
前記ゲノムが一本鎖または自己相補的rAAV核酸ベクターである、請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸を含む、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項13】
AAV9粒子である、請求項12に記載のrAAV粒子。
【請求項14】
rh74粒子である、請求項12に記載のrAAV粒子。
【請求項15】
VP1カプシドの505番目のアミノ酸においてトリプトファンからアルギニンへの変異を含むAAVmut5粒子である、請求項12に記載のrAAV粒子。
【請求項16】
rh10粒子である、請求項12に記載のrAAV粒子。
【請求項17】
請求項12~16のいずれか一項に記載のrAAV粒子を複数含む、組成物。
【請求項18】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
標的細胞においてヒト導入遺伝子の発現増加を誘導する方法であって、
ヒト導入遺伝子をコードする配列;
コザック配列;および
プロモーターに動作可能に連結されたエンハンサーエレメント、
を含む核酸発現コンストラクトを含む複数のrAAV粒子を、標的細胞に接触させることを含み、
ここで前記コザック配列は、導入遺伝子、エンハンサーエレメント、および/またはプロモーターのうち1つ以上に対して非天然であり、
前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列で挟まれており、かつ
前記接触は、標的細胞において、接触前と比較したヒト導入遺伝子の発現増加をもたらし、それによってヒト導入遺伝子の発現を増加させる、
方法。
【請求項20】
前記コザック配列が合成コンセンサス配列である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記導入遺伝子をコードする配列が心臓遺伝子をコードする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記心臓遺伝子がBAG3である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記導入遺伝子をコードする配列が、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記心臓遺伝子が心臓ミオシン結合タンパク質C(MYBPC3)である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記導入遺伝子をコードする配列が、請求項11に対して少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記接触がインビボにおける接触である、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
コンセンサスコザック配列を生成する方法であって、
目的遺伝子に関連する複数の天然コザック配列の集合体を構築すること、
少なくとも第1の天然コザック配列の各ヌクレオチドポジションについて、少なくとも第1の天然コザック配列の第1のヌクレオチドの第1の同一性を第2の天然コザック配列の第1のヌクレオチドの第1の同一性と比較すること、ここで少なくとも第1の天然コザック配列の第1のヌクレオチドおよび第2のコザック配列の第1のヌクレオチドは、少なくとも第1の天然コザック配列および第2の天然コザック配列の長さに対して同じポジションを占める、
各ポジションにおける支配的なヌクレオチドを特定すること、ここで特定は、ヌクレオチド同一性、プリン同一性、またはピリミジン同一性のうち1つ以上を含む、および、
各ポジションについて支配的なヌクレオチドを含むコンセンサス配列を構築すること
を含む、方法。
【請求項28】
前記目的遺伝子が心臓遺伝子である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記天然コザック配列の集合体が少なくとも6つの目的遺伝子を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記コンセンサス配列のインシリコ安定性評価および/または前記コンセンサス配列に対するリボソーム複合体の結合効率のインシリコ予測を実施することをさらに含む、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
導入遺伝子への前記コンセンサスコザック配列のクローニングをさらに含む、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
コンセンサスコザック配列を生成する方法であって、
目的遺伝子に関連する複数の天然コザック配列の集合体を構築すること、および
コンセンサスコザック配列を生成するために、コンピューターに実装された方法を利用すること
を含む、方法。
【請求項33】
前記目的遺伝子が目的組織において高発現している、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組織が心臓組織である、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
この出願は2021年12月10日に出願された米国仮出願第63/265,262号に対する優先権の利益を主張し、その内容の全てが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の内容の参照による組み込み
本願は、AAVAN069WO_ST26.xmlと題した、2022年12月8日作成、サイズ21,730バイトの、添付のXMLファイルにおいて提供される内容を組み込む。
【背景技術】
【0003】
心筋症は、心筋の様々な状態の集合体を表し、かつ対象における2番目に一般的な心疾患の原因であり、かつ、副次的な兆候の医学的な管理が唯一の治療の選択肢である。これらの疾患には多くの原因、症状、および処置があり、かつ全ての年齢および人種の人々が罹患し得る。心筋症が発生した際、心臓の正常な筋肉は、厚くなり得、固くなり得、薄くなり得、または、体によって生産される、心筋に属さない物質で満たされ得る。結果として、心筋の血液ポンプ機能が低下し、不整脈、肺または体のその他の部位への血液の逆流(backup)、および心不全が引き起こされ得る。心筋症は後天性または遺伝性であり得る。その原因は全て知られているわけではないが、疾患の遺伝性形態の遺伝的基盤の理解が進みつつある。
【0004】
遺伝子導入戦略は心疾患を緩和することが示されてきている。遺伝子導入を通して、ダメージを受けたアレル、または機能していないアレルを、タンパク質に翻訳され得る、機能するコピーに置き換えることが、達成され得る。このような置き換えの効率、および下流の翻訳は、様々な手段で減弱され得る。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に規定されるいくつかの実施形態は、より効果的な遺伝子治療のための組成物および方法に関する。特に、いくつかの実施形態は、心臓組織における治療的遺伝子の発現増強に関する。
【0006】
心筋症は、心血管系を通して血液を循環させる心臓の能力に悪影響を及ぼす心筋の疾患のクラスである。拡張型心筋症、肥大型心筋症、および拘束型心筋症を含む、心筋症の様々なタイプが存在する。ヒト集団における心筋症は主要な医学的負担であり、かつ、ヒト集団における心筋症は特に処置が望まれているにもかかわらず、処置のニーズは今のところ満たされていない。
【0007】
拡張型心筋症(DCM)は、ヒト心筋症の最も一般的なタイプの1つであり、ほとんどが20~60歳の成人において発生する。DCMは、それぞれ心臓の上および下のチャンバーである、心室および心房に影響する。DCMのほとんどの形態は、冠状動脈性心疾患、心臓発作、高血圧、糖尿病、甲状腺疾患、ウイルス性肝炎、および心筋に炎症を起こすウイルス感染症を含む、数多くの原因による後天性形態である。アルコール濫用、およびコカインおよびアンフェタミンなどの特定の薬物、ならびにがんの処置に使用される少なくとも2つの薬物(ドキソルビシンおよびダウノルビシン)もまた、DCMを引き起こし得る。加えて、DCMには、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーに関連するDCMを含むがこれらに限定されない、数多くの遺伝的形態がある。ベッカー型筋ジストロフィーの特定の形態のケースにおいて、ならびにデュシェンヌ型筋ジストロフィーのほとんどのケースにおいて、心筋症は最終的に患者の生存を制限し得る。
【0008】
肥大型心筋症(HCM)は、心筋の壁が異常に厚くなった際に発生する。壁の厚みの増大は、心臓合併症を増加させる可能性、ならびに心臓において血流をブロックするかまたは閉塞させる可能性がある。
【0009】
拘束型心筋症(RCM)は、時間の経過とともに心臓のチャンバーの硬化を引き起こす状態である。心臓の収縮能力はほとんど影響を受けないままだが、心筋は心臓の拍動の間十分に弛緩しない。これは心室が血液で満たされる能力を制限し、かつ血液の循環器系への逆流を引き起こす。
【0010】
心機能はカルシウム依存性シグナル伝達に決定的に依存している。心疾患の間、心臓細胞内でのカルシウムチャネルの機能不全がカルシウムサイクル(calcium cycling)の異常を促進し、心機能をさらに阻害する。カルシウムサイクルの異常を低下させる遺伝子導入戦略により、小型および大型動物モデル、ならびにヒト臨床試験において心疾患が緩和されることが報告されている。前記遺伝子導入を達成するための実現可能な調節エレメントの選択は、最適なタンパク質発現のために決定的である。1つ以上のタイプの心筋症またはその症状を有するヒト対象を処置するために、遺伝子送達アプローチが企図されてきた。ベクター、調節エレメント、および導入遺伝子の選択は、タンパク質発現の総合的な効率に影響し得る。
【0011】
コザック配列は、真核生物のmRNAの翻訳開始部位の近く、または前記部位に位置する、機能性の配列モチーフである。コザック配列はリボソームの構築および翻訳開始を媒介し、かつタンパク質が正しいリーディングフレームで正しく転写されるよう調節するのに役立つ。
【0012】
いくつかの実施形態において、導入遺伝子をコードする配列、プロモーター、およびコンセンサスコザック配列(consensus Kozak sequence)を含む発現コンストラクトを含む核酸が提供され、ここで前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列(inverted terminal repeat sequence)で挟まれており、前記合成コザック配列は、AGCCCCAACの配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも88%の同一を有する。いくつかの実施形態において、前記コンセンサスコザック配列は、AGCCCCAACの配列を有する。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは心臓特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは、CMV、mini-CMV、CBA、HSV、TK、RSV、SV40、MMTV、Ad E1A、心筋トロポニンC、心筋トロポニンI、心筋トロポニンT(cTnT)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、導入遺伝子をコードする配列は、心臓遺伝子をコードする。いくつかの実施形態において、前記心臓遺伝子はBAG3である。いくつかの実施形態において、導入遺伝子をコードする配列は、配列番号10に対して少なくとも90、91、92、93、94、95%、またはそれ以上の配列同一性を有するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、前記心臓遺伝子は心臓ミオシン結合タンパク質C(cardiac myosin binding protein C: MYBPC3)である。いくつかの実施形態において、導入遺伝子をコードする配列は、配列番号11に対して少なくとも90、91、92、93、94、95%、またはそれ以上の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記核酸は組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターゲノムである。いくつかの実施形態において、前記ゲノムは一本鎖または自己相補的rAAV核酸ベクターである。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される核酸のいずれかを含む、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子が提供される。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はAAV9粒子である。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はrh74粒子である。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子は、VP1カプシドの505番目のアミノ酸におけるトリプトファンからアルギニンへの変異を含むAAVmut5粒子である。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はrh10粒子である。本明細書に規定されるrAAV粒子を複数含む組成物も提供される。いくつかの実施形態において、前記組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0015】
本明細書に規定される組成物に加え、対象の処置のためのそれらの使用も規定される。例えば、いくつかの実施形態において、標的細胞におけるヒト導入遺伝子の発現増加を誘導する方法が提供され、前記方法は、ヒト導入遺伝子をコードする配列、コザック配列、およびプロモーターに動作可能に連結されたエンハンサーエレメントを含む、核酸発現コンストラクトを含む、複数のrAAV粒子を標的細胞に接触させることを含み、ここで前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列で挟まれており、かつ、前記接触は、標的細胞において接触前と比較したヒト導入遺伝子の発現増加をもたらし、それによってヒト導入遺伝子の発現を増加させる。いくつかの実施形態において、前記コザック配列は、導入遺伝子、エンハンサーエレメント、および/またはプロモーターのうち1つ以上に対して非天然である。いくつかの実施形態において、前記コザック配列は、合成コンセンサス配列である。
【0016】
上記に述べたように、いくつかの実施形態において、導入遺伝子をコードする配列は、BAG3またはMYBPC3などの心臓遺伝子をコードする。いくつかの実施形態において、導入遺伝子をコードする配列は、配列番号10に対して少なくとも90、91、92、93、94、95%、またはそれ以上の配列同一性を有するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、導入遺伝子をコードする配列は、配列番号11に対して少なくとも90、91、92、93、94、95%、またはそれ以上の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記接触はインビボ(in vivo)における接触である。
【0018】
いくつかの実施形態において、コンセンサスコザック配列を生成する方法が提供され、前記方法は、目的遺伝子に関連する複数の天然コザック配列の集合体を構築すること;少なくとも第1の天然コザック配列の各ヌクレオチドポジションについて、少なくとも第1の天然コザック配列の第1のヌクレオチドの第1の同一性を第2の天然コザック配列の第1のヌクレオチドの第1の同一性と比較すること、ここで少なくとも第1の天然コザック配列の第1のヌクレオチドおよび第2のコザック配列の第1のヌクレオチドは、少なくとも第1の天然コザック配列および第2の天然コザック配列の長さに対して同じポジションを占める;各ポジションにおける支配的なヌクレオチドを特定すること、ここで特定は、ヌクレオチド同一性、プリン同一性、またはピリミジン同一性のうち1つ以上を含む;および、各ポジションについて支配的なヌクレオチドを含むコンセンサス配列を構築することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記目的遺伝子は、心臓遺伝子である。いくつかの実施形態において、前記天然コザック配列の集合体は、少なくとも6つの目的遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記コンセンサス配列のインシリコ(in silico)安定性評価および/または前記コンセンサス配列に対するリボソーム複合体の結合効率のインシリコ予測を実施することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、導入遺伝子への前記コンセンサスコザック配列のクローニングをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、コンセンサスコザック配列を生成する方法が提供され、前記方法は、目的遺伝子に関連する複数の天然コザック配列の集合体を構築すること、および、コンセンサス配列を生成するために、コンピューターに実装された方法を利用することを含む。いくつかの実施形態において、前記目的遺伝子は、目的組織において高発現している。いくつかの実施形態において、前記組織は心臓組織である。
【0021】
本明細書において、1つ以上のタイプの心筋症又はその症状を有するヒト対象を処置するための、目的遺伝子の発現を調節または増強するためのコザック配列を決定する方法、および前記コザック配列の組成物が開示される。いくつかの実施形態において、前記コザック配列は、非天然の導入遺伝子(例えば、通常は前記コザック配列と関連しない遺伝子)の発現を増強するために選択される。いくつかの実施形態において、前記コザック配列は、導入遺伝子の発現を駆動するプロモーターに対して非天然である。いくつかの実施形態において、前記コザック配列は、プロモーターおよび導入遺伝子の両方に対して非天然である。いくつかの実施形態において、前記コザック配列は、合成コンセンサス配列である。
【0022】
本開示のいくつかの態様は、1つ以上のコザック配列の誘導、および、1つ以上の目的遺伝子をコードするコンストラクトおよびベクターへの、1つ以上のコザック配列の挿入のための方法を提供する。したがって、これらのコンセンサス配列は、同配列(例えば、非天然コザック配列および/またはコンセンサス配列)を欠いたベクターおよびコンストラクトと比較して、タンパク質の翻訳効率を増強し得る。
【0023】
したがって、本開示のいくつかの態様は、対象の心臓に導入遺伝子を送達するための、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する。このようなrAAVベクターは、5’から3’の順に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆向き末端反復(ITR)配列、プロモーターが動作可能に連結された1つ以上の導入遺伝子、および第2のAAV逆向き末端反復(ITR)配列を含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記rAAVベクターは、プロモーターに加えて、例えば生理学的に同等な発現レベルをもたらすような形で、および/または、特定の細胞タイプまたは組織に発現を制限するような形で、発現を調節する、調節エレメントを含む。いくつかの実施形態において、前記調節エレメントは、エンハンサー、5’非翻訳領域(UTR)、および3’UTRのうち1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、前記調節エレメントは、本明細書に規定されるコザック配列(例えばコンセンサス配列)を含む。いくつかの実施形態において、前記rAAVベクターは、少なくとも1つのポリアデニル化シグナル(例えば導入遺伝子の3’に位置する)も含む。いくつかの実施形態において、2つの導入遺伝子が、単一の同じプロモーターに動作可能に連結される。いくつかの実施形態において、各導入遺伝子が、別々のプロモーターに動作可能に連結される。複数の導入遺伝子が提供されるいくつかの実施形態において、前記rAAVベクターは少なくとも1つのポリアデニル化シグナル(例えば、単一のプロモーターから発現される2つの導入遺伝子の3’に位置するか、または異なるプロモーターから発現される導入遺伝子の一方または両方の3’に位置する)も含む。本開示の態様は、2つ以上の導入遺伝子を対象の心臓に送達するための組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)核酸ベクターを提供し、ここで前記ベクターは、5’から3’に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆向き末端反復(ITR)配列、2つ以上の導入遺伝子および前記2つ以上の導入遺伝子に動作可能に連結されたプロモーター、ポリアデニル化シグナル、および第2のAAV逆向き末端反復(ITR)配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、発現コンストラクトを含む核酸が提供され、ここで前記発現コンストラクトは、導入遺伝子をコードする配列、プロモーター、および合成コンセンサスコザック配列を含むか、それらからなるか、または実質的にそれらからなり、前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列で挟まれており、前記合成コザック配列はAGCCCCAACの配列に対して少なくとも88%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、前記コンセンサスコザック配列は、AGCCCCAACの配列を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、発現コンストラクトを含む核酸が提供され、ここで前記発現コンストラクトは、導入遺伝子をコードする配列、プロモーター、および、導入遺伝子、プロモーター、および(存在する場合は)エンハンサーエレメントのうち1つ以上に対して非天然である(例えば、通常はその発現または機能に関連しない)コザック配列を含むか、それらからなるか、または実質的にそれらからなる。いくつかの実施形態において、前記発現コンストラクトは、両側を逆向き末端反復配列で挟まれている。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記プロモーターは心臓特異的プロモーターを含む。他の実施形態において、非特異的プロモーターが使用される。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは、CMV、mini-CMV、CBA、HSV、TK、RSV、SV40、MMTV、Ad E1A、心筋トロポニンC、心筋トロポニンI、心筋トロポニンT(cTnT)、およびそれらの組み合わせから選択される。スペースが許せば、いくつかの実施形態において、場合により複数のプロモーターが使用され、かつ、実施形態によっては、それらは同一であってもよく、または互いに異なっていてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターゲノムである。いくつかの実施形態において、前記ゲノムは、一本鎖または自己相補的rAAV核酸ベクターである。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される1つ以上の核酸コンストラクトを含む、複数のrAAV粒子が提供される。いくつかの実施形態において、前記複数のrAAV粒子は、AAV9粒子を含む。いくつかの実施形態において、前記複数のrAAV粒子は、rh74粒子を含む。いくつかの実施形態において、前記複数のrAAV粒子は、rh10粒子を含む。いくつかの実施形態において、前記複数のrAAV粒子は、VP1カプシドの505番目のアミノ酸におけるトリプトファンからアルギニンへの変異を含むAAVmut5粒子を含む。
【0028】
本明細書において、本明細書で開示される複数のrAAV粒子を含む組成物が追加で規定され、前記複数のrAAV粒子は、同じタイプのrAAV粒子であるか、または本明細書に規定される異なるタイプのrAAVの組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化される。
【0029】
いくつかの実施形態において、標的細胞におけるヒト導入遺伝子の発現増加を誘導する方法が提供され、前記方法は、ヒト導入遺伝子をコードする配列、コザック配列、およびプロモーターに動作可能に連結されたエンハンサーエレメントを含む、核酸発現コンストラクトを含む、複数のrAAV粒子を標的細胞に接触させることを含み、ここで前記コザック配列は、導入遺伝子、エンハンサーエレメント、および/またはプロモーターのうち1つ以上に対して非天然であり、前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列で挟まれており、かつ、前記接触は、標的細胞において接触前と比較したヒト導入遺伝子の発現増加をもたらし、それによってヒト導入遺伝子の発現を増加させる。いくつかの実施形態において、前記非天然コザック配列は合成コンセンサス配列である。いくつかの実施形態において、前記接触はインビボにおける接触である。
【0030】
いくつかの実施形態において、コンセンサスコザック配列を生成する方法が提供され、前記方法は、天然の目的遺伝子にそれぞれ関連する複数の天然コザック配列の集合体を構築すること;少なくとも第1の天然コザック配列の第1のヌクレオチドの第1の同一性を、第2の天然コザック配列の第1のヌクレオチドの第1の同一性と(少なくとも第1の天然コザック配列の各ヌクレオチドポジションについて)比較すること、ここで少なくとも第1の天然コザック配列の第1のヌクレオチドおよび第2の天然コザック配列の第1のヌクレオチドは、少なくとも第1の天然コザック配列および第2の天然コザック配列の長さに対して同じポジションを占める;各ポジションにおける支配的なヌクレオチドを特定すること、ここで特定は、ヌクレオチド同一性、プリン同一性、またはピリミジン同一性のうち1つ以上を含む;および各ポジションについて支配的なヌクレオチドを含むコンセンサス配列を構築することを含む。いくつかの実施形態において、前記目的遺伝子は、心臓遺伝子、または心臓組織において比較的高いレベルで発現することが知られている遺伝子である。いくつかの実施形態において、前記天然コザック配列の集合体は、少なくとも6つの目的遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、コンセンサス配列のインシリコ安定性評価および/または前記コンセンサス配列に対するリボソーム複合体の結合効率のインシリコ予測を実施することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、導入遺伝子への前記コンセンサスコザック配列のクローニングをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記コザック配列は、AGCCCCAACとして表すヌクレオチド配列に対して、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態において、本開示の1つ以上のコザック配列は、コンセンサス配列である。いくつかの実施形態において、1つ以上のコザック配列は、種特異的になるよう操作される。いくつかの実施形態において、1つ以上のコザック配列は、組織特異的になるよう操作される。いくつかの実施形態において、1つ以上のコザック配列は、目的組織(例えば心臓組織)における発現が増強されるように操作される。いくつかの実施形態において、1つ以上のコザック配列は、コンピューターで誘導された配列(computer-derived sequence)である。
【0032】
本開示の組成物は、様々な経路を介して対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、前記組成物は静脈内注射を介して対象に投与される。いくつかの実施形態において、前記組成物の投与は、対象の心臓における導入遺伝子の発現(または、複数の導入遺伝子が使用される場合、2つ以上の導入遺伝子の発現)をもたらす。様々な実施形態において、前記組成物を投与するステップは、対象における心機能の改善、例えば対象における10か月より長い期間の心機能の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、投与は、12か月より長い、14か月より長い、16か月より長い、17か月より長い、20か月より長い、22か月より長い、または24か月より長い期間の、心機能の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、改善される心機能は、左室駆出率(LVEF)の増加に代表される。いくつかの実施形態において、(治療前の測定と比較した)LVEFは、少なくとも約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、またはそれ以上(列挙した量の間の任意の量を含む)、増加する。いくつかの実施形態において、LVEFは心エコーによって測定される。いくつかの実施形態において、投与は、12か月より長い、14か月より長い、16か月より長い、17か月より長い、20か月より長い、22か月より長い、または24か月より長い期間の、心臓の生理機能(例えば構造的特性)の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、改善される心臓の生理機能は、左室壁厚の減少に代表される。いくつかの実施形態において、左室壁厚は、少なくとも約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、またはそれ以上(列挙した量の間の任意の量を含む)、減少する。いくつかの実施形態において、左室壁厚は、心臓の磁気共鳴イメージイング(MRI)または経胸壁心エコー(TTE)によって測定される。
【0033】
いくつかの実施形態において、1つ以上の有益な産物または治療的産物をコードする遺伝子材料(genetic material)を哺乳類の細胞および組織に送達するための方法に有用である、AAVベクター、ビリオン(virion)、ウイルス粒子、およびそれらの医薬製剤を含む組成物が記載される。本開示のrAAVベクター、rAAV粒子、またはrAAV粒子を含む組成物は、1つ以上のタイプの心筋症などの、遺伝子治療を必要とする対象における心疾患の遺伝子治療のために使用されてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、発現コンストラクト内で導入遺伝子の発現を増強するように設計された、最適化されたコザック配列が記載される。
【0035】
いくつかの実施形態において、核酸が記載される。前記核酸は、導入遺伝子をコードする配列、プロモーター、およびコンセンサスコザック配列を含む発現コンストラクトを含み、ここで前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列で挟まれている。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記核酸は組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである。いくつかの実施形態において、前記核酸は、一本鎖または自己相補的rAAV核酸ベクターである。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はAAV9粒子である。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はrh74粒子である。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はAAVmut5粒子である。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はrh10粒子である。いくつかの実施形態において、複数のrAAV粒子を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、前記複数のrAAV粒子は、薬学的に許容される担体をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記rh74粒子は、配列番号1、または配列番号4の一部として表すヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1つのカプシドタンパク質を含む(例えば、配列番号1はrh74のVP1、VP2、およびVP3タンパク質をコードする。すなわち、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される実施形態に記載されるrh74粒子は、配列番号1のヌクレオチド配列のサブ部分(subpart)に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1つのカプシドタンパク質を含む)。いくつかの実施形態において、前記rh74粒子は、配列番号4、または配列番号4の一部として表すアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む(例えば、配列番号4は、rh74のVP1、VP2、およびVP3タンパク質のアミノ酸配列である。すなわち、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態に記載されるrh74粒子は、配列番号4のアミノ酸配列のサブ部分に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する少なくとも1つのカプシドタンパク質を含む)。いくつかの実施形態において、前記AAV9粒子は、配列番号8として表すアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号5、6または7として表す配列のうち1つ以上に対して少なくとも約85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0037】
また、本明細書において、標的細胞におけるヒト導入遺伝子の発現増加を誘導する方法も記載され、前記方法は、プロモーターに動作可能に連結されたエンハンサーエレメント、コザック配列、およびヒト導入遺伝子をコードする配列を含む、核酸発現コンストラクトを含む、複数のrAAVを標的細胞に接触させることを含み、ここで前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列で挟まれており、かつ前記接触は、標的細胞において接触前と比較したヒト導入遺伝子の発現増加をもたらし、それによって前記導入遺伝子の発現を増加させる。いくつかの実施形態において、前記接触はインビボにおける接触である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の特定の特徴および/または非限定的な実施形態に言及する。この明細書における本発明の開示は、そのような特定の特徴の、全てのあり得る組み合わせを含むと理解される。例えば、特定の特徴が、発明の特定の態様または実施形態、または特定の請求項の文脈で開示される場合、その特徴は、有り得る範囲で、本発明のその他の特定の態様および実施形態との組み合わせ、および/またはそれらの文脈においても使用され得、かつ本発明において普遍的に使用され得る。
【0039】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語および科学的用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で参照される全ての特許、出願、出願公開、およびその他の出版物は、他に記載されない限り、その全体が参照によって組み込まれる。本明細書において、ある用語の定義が複数存在する場合、他に記載されない限り、このセクションにおける定義が優先される。
【0040】
「対象」は、本明細書に規定される方法または組成物を使用する処置の対象である哺乳類を指す。「哺乳類」は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、サル、チンパンジー、および類人猿などの霊長類、およびヒトを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記対象はヒトである。
【0041】
「処置すること」、「処置」、「治療的」、または「治療」という用語は、疾患または状態の完全な治癒または消失を必ずしも意味しない。疾患または状態の任意の望ましくない兆候または症状の、任意の程度までの任意の減弱が、処置および/または治療であるとみなされ得る。疾患を「処置する」ことは、前記用語を本明細書で使用する場合、対象が経験している疾患または障害の少なくとも1つの兆候または症状の頻度または重症度を低下させることを意味する。
【0042】
本明細書で使用する「有効量」という用語は、疾患または状態を処置または緩和できる量、あるいは、対象が経験している疾患または障害の少なくとも1つの兆候または症状の頻度または重症度を低下させることなどの、意図した治療効果をもたらすことができる量を指す。
【0043】
「核酸」配列は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)配列を指す。前記用語は、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン(pseudoisocytosine)、5-(カルボキシヒドロキシ-メチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ-アミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン(oxybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリン、などの、しかしこれらに限定されない、DNAおよびRNAの任意の既知の塩基アナログを含む配列を含む。
【0044】
「ポリヌクレオチド」という用語は、DNA、RNA、またはそれらのアナログを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなどの改変されたヌクレオチドを含んでもよく、かつ、非ヌクレオチド構成要素によって隔てられていてもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、ポリマーの構築の前または後に与えられてもよい。本明細書で使用するポリヌクレオチドという用語は、二重鎖または一本鎖の分子を互換的に指す。他に指定または要求されない限り、ポリヌクレオチドである本明細書に記載される本発明の任意の実施形態は、二重鎖形態、および、二重鎖を形成することが知られているかまたは予測される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれ、の両方を包含する。
【0045】
「単離された」という用語は、ヌクレオチド配列を指す場合、その分子が、同じタイプの他の高分子が実質的に存在しない状態で存在することを意味する。すなわち、「特定のポリペプチドをコードする、単離された核酸分子」は、対象のポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を指すが、前記分子は、組成物の基本的な特性に実質的に影響しない、いくつかの追加の塩基または部分を含んでもよい。
【0046】
「同一性」という用語は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、それぞれヌクレオチド-ヌクレオチド間またはアミノ酸-アミノ酸間の正確な対応を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)が、それらの「同一性パーセント」を決定することによって比較され得る。2つの配列の同一性パーセントは、核酸配列であれアミノ酸配列であれ、2つの整列された配列の間の正確な一致の数を短い方の配列の長さで割り、100を掛けた数である。
【0047】
本願全体を通して、特定の核酸分子中のヌクレオチド配列の相対的なポジションを説明する目的のために、例えば特定のヌクレオチド配列が別の配列に対して「上流」、「下流」、「3’」または「5’」に位置すると記載される場合、それは、当業界の慣例通り、指しているDNA分子の「センス」鎖または「コード」鎖中の配列のポジションのことであると理解される。
【0048】
配列同一性は、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.のBESTFIT、FASTA、およびTFASTAなどのアルゴリズムを使用して、初期設定のギャップパラメーターを使用して、または精査によって、配列を整列させることで、かつ最高のアラインメント(すなわち、比較ウインドウにわたって最も高い配列類似性パーセントをもたらす)によって、決定され得る。配列同一性パーセントは、2つの最適に整列された配列を比較ウインドウにわたって比較すること、両方の配列において同一の残基が発生しているポジションの数を決定し、一致するポジションの数を得ること、一致するポジションの数を、比較ウインドウ内の一致するポジションおよび一致しないポジションの総数(ギャップはカウントしない)(すなわちウインドウサイズ)で割ること、およびその商に100を掛けて配列同一性パーセントを得ることによって計算される。他に示されない限り、2つの配列間の比較ウインドウは、2つの配列のうち短い方の全長によって定められる。
【0049】
ポリヌクレオチドに対して適用される「組み換え」という用語は、そのポリヌクレオチドが、クローニング、制限またはライゲーションのステップ、および、天然に存在するポリヌクレオチドとは異なるコンストラクトおよび/または天然に存在しないポリヌクレオチドとウイルスタンパク質との組み合わせをもたらすその他の手順の様々な組み合わせの、産物であることを意味する。組み換えウイルスは、組み換えポリヌクレオチドを含むウイルス粒子である。これらの用語はそれぞれ、オリジナルのポリヌクレオチドコンストラクトの複製およびオリジナルのウイルスコンストラクトの子孫を含む。
【0050】
「遺伝子」という用語は、特定の遺伝子産物をコードできる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。本明細書に記載される任意のポリヌクレオチド配列が、それらが関連する遺伝子の、より大きなフラグメントまたは完全長のコード配列を特定するために使用されてもよい。より大きなフラグメント配列を単離する方法は、当業者に知られている。
【0051】
本明細書で使用する「導入遺伝子」という用語は、ウイルスベクター内に位置し、かつ目的のポリペプチド、タンパク質、またはその他の産物をコードする、核酸配列を指す。いくつかの実施形態において、1つのrAAVベクターが、1つ以上の導入遺伝子(場合により同じ遺伝子または異なる遺伝子であり得る)をコードする配列を含んでもよい。例えば、1つのrAAVベクターが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の導入遺伝子のコード配列を含んでもよい。本開示の導入遺伝子は、心筋症などの、本明細書に規定される1つ以上の心臓の状態の改善に関する。
【0052】
「遺伝子導入」または「遺伝子送達」という用語は、導入遺伝子などのDNAを、心筋症を患っている対象の細胞などの宿主細胞に挿入するための、方法またはシステムを指す。いくつかの実施形態において、遺伝子導入は、統合されていない導入されたDNAの一過性の発現、染色体外複製、および導入されたレプリコン(例えばエピソーム)の発現をもたらす。追加の実施形態において、遺伝子導入は、宿主細胞のゲノムDNAへの、導入された遺伝子材料の統合をもたらす。
【0053】
「調節エレメント」または「調節性配列」という用語、またはそれらのバリエーションは、ポリヌクレオチドの複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、または分解を含むポリペプチドの機能調節に関与するヌクレオチド配列を指す。調節エレメントは、実施形態によっては、増強性または抑制性の性質であり得る。調節エレメントの非限定的な例は、プロモーター配列などの転写調節配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節性ドメイン、複製起点、内部リボソーム進入部位(IRES)、エンハンサー、などを含む。これらのエレメントは、合わさることで、レシピエント細胞におけるコード配列の複製、転写、および翻訳を提供するが、これらの配列の全てが常に存在している必要はない。本明細書に規定されるrAAVベクターの構造的な構成要素は、明確性のために単独で個々の段落に列挙されてもよく、かつ組み合わせて共に使用されてもよいと理解される。例えば、任意の調節エレメントまたはその他の構成要素が、本明細書に規定される任意の導入遺伝子(または導入遺伝子(複数))と組み合わせて使用され得る。
【0054】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼと相互作用し、かつ通常プロモーターの下流(3’方向)に位置するコード領域(例えば導入遺伝子)の転写を開始させる、ポリヌクレオチドである。
【0055】
「動作可能に連結された」という用語は、構成要素が機能を発揮するように構成された、要素の配置のことである。例えば、コード配列に動作可能に連結された調節性配列は、前記コード配列の核酸をもたらす。実施形態によっては、調節性配列がコード配列と連続している必要はない。すなわち、例えば、1つ以上の翻訳されない一方で転写はされる配列が、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、これら2つの配列はなお「動作可能に連結された」ものとみなされる。
【0056】
「ベクター」という用語は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ウイルス粒子、ビリオンなどの、目的細胞に、または目的細胞間に、遺伝子配列(例えば導入遺伝子)を導入し得る、任意の分子媒体を意味する。
【0057】
「発現ベクター」は、目的の遺伝子産物(例えばポリペプチドまたはタンパク質)をコードする核酸の領域(例えば導入遺伝子)を含むベクターである。本明細書で開示されるように、ベクターは、意図される標的細胞におけるタンパク質の発現、例えば安定な発現、を達成するために使用される。発現ベクターは、また、標的細胞においてコードされるタンパク質の発現を促進するための、導入遺伝子に動作可能に連結された制御エレメントを含んでもよい。1つ以上の調節エレメントおよびそれ(ら)が発現のために動作可能に連結される1つまたは複数の遺伝子の組み合わせは、本明細書で「発現カセット」と称されてもよい。
【0058】
「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスの略称であり、かつ前記ウイルスそのものまたはその誘導体を指すために使用されてもよい。他に示されない限り、前記用語は全てのサブタイプおよび天然産生型および組み換え型の両方を包含する。「rAAV」という略称は、組み換えアデノ随伴ウイルスを指し、これは組み換えAAVベクター(または「rAAVベクター」)とも称され、AAV起源ではないポリヌクレオチド配列(例えば導入遺伝子)を含むAAVを指す。「AAV」という用語は、AAVセロタイプ1(AAV-1)、AAVセロタイプ2(AAV-2)、AAVセロタイプ3(AAV-3)、AAVセロタイプ4(AAV-4)、AAVセロタイプ5(AAV-5)、AAVセロタイプ6(AAV-6)、AAVセロタイプ7(AAV-7)、AAVセロタイプ8(AAV-8)、AAVセロタイプ9(AAV-9)、セロタイプrh10 AAV、セロタイプrh74 AAV、またはシュードタイプrAAV(例えば、AAV2のゲノム(例えばAAV2のITR)およびAAV9のカプシドを有するAAVベクターを指す、AAV2/9)を含む。いくつかの実施形態において、心筋症を患っているヒト患者への送達に好ましいセロタイプは、AAV-9、セロタイプrh74、セロタイプrh10、またはAAV-8のうちの1つである。いくつかの実施形態において、rh74 AAVは、例えばVP1カプシドの505番目のアミノ酸におけるトリプトファンからアルギニンへの変異(AAVmut5としても知られる)によって、または、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるPCT出願公開WO2019/178412に記載されるようなその他の変異によって、心臓組織への送達を有利に増強するように変異している。
【0059】
「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」という用語は、少なくともAAVカプシドタンパク質およびカプシド化された(encapsidated)ポリヌクレオチドで構成される、ウイルス粒子を指す。
【0060】
「異種性」という用語は、ジェノタイプの異なる起源を指す。例えば、異種性ポリヌクレオチドは、参照の種と比較して異なる種に由来するポリヌクレオチドである(例えば、ウイルスのプラスミドに挿入されたヒト遺伝子は、異種性の遺伝子である)。その本来のコード配列から取られたプロモーターであって、かつそれが本来連結していないコード配列と動作可能に連結されているプロモーターは、異種性プロモーターである。
【0061】
本明細書で使用する「キット」という用語は、持ち運び可能な、自己完結型の、本開示の診断方法または治療方法の1つ以上を実施するための少なくとも1つの構成要素のセットを含む封入物の、バリエーションを記載するために使用されてもよい。
【0062】
「担体」という用語は、rAAV粒子または製剤、および/またはrAAVベクターを投与するための、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体を指す。このような薬学的担体は、水、および石油などの鉱油、ピーナッツ油、大豆油、およびゴマ油などの植物油、動物油、または合成起源の油を含む油、などの無菌の液体であり得る。生理食塩水溶液およびブドウ糖水溶液およびグリセロール水溶液もまた、液体担体として採用されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される配列は、CpGを除去され、かつcDNAコドンが最適化されている。いくつかの実施形態において、導入遺伝子をコードする配列は、場合によりCpGを除去されている。
【0064】
本願で使用される用語および語句、およびそれらのバリエーションは、特に付属の特許請求の範囲において、他に明示的に記載されない限り、限定的ではなく、非限定的であると解釈されるべきである。前記の例のように、「含む」という単語は「限定することなく含む」、「含むが限定されない」などを意味すると解されるべきである。本明細書で使用される「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する」、または「特徴とする」の同義語であり、かつ包括的または非限定的であり、かつ、記載されていない追加の要素または方法ステップを除外しない。「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきである。「含む」という用語は「含むが限定されない」と解釈されるべきである。「例」という用語は、説明している項目の完全な、または限定的な列挙ではなく、その例示的な実例を提供するために使用される。かつ、「好ましくは」、「好ましい」、「所望の」、または「望ましい」などの用語、および類似した意味の言葉の使用は、特定の特徴が構造または機能に決定的である、不可欠である、あるいは重要であることを示唆していると理解されるべきではなく、代わりに、特定の実施形態において利用されてもよく、利用されなくてもよい、代替または追加の特徴を強調することを単に意図するものとして理解されるべきである。加えて、「含む」という用語は、「少なくとも有する」または「少なくとも含む」という語句と同義であると解釈されるべきである。プロセスの文脈で使用される場合、「含む」という用語は、そのプロセスが、少なくとも記載されているステップを含むが、追加のステップを含んでもよいことを意味する。化合物、組成物、またはデバイスの文脈で使用される場合、「含む」という用語は、その化合物、組成物、またはデバイスが、少なくとも記載されている特徴または構成要素を含むが、追加の特徴または構成要素も含んでもよいことを意味する。同様に、「および」で連結される項目の群は、その群の中に、それらの各項目すべてが存在していることを要求するものと解されるべきではなく、むしろ、他に明示的に記載されない限り「および/または」として解されるべきである。同様に、「または」で連結される項目の群は、その群の中での相互排他性を要求するものと解されるべきではなく、むしろ、他に明示的に記載されない限り「および/または」として解されるべきである。
【0065】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用について、当業者は、それが文脈および/または適用に対して適切になるように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に、変換し得る。明確性のために、様々な単数形/複数形の並べ替えが本明細書において明示的に表されてもよい。不定冠詞「a」または「an」は複数を除外しない。単一のプロセッサ(processor)またはその他のユニットが、請求項に記載されているいくつかの項目の機能を果たしてもよい。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせを有利に使用し得ないことを示さない。請求項中のいかなる参照符号(reference sign)も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0066】
本明細書で開示される範囲は、あらゆる全てのオーバーラップ、サブ範囲(sub-range)、およびそれらの組み合わせも包含する。「までの」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」、「間の」、などの語は、記載される数を含む。「約」または「およそ」などの用語の後に記載される数は、記載される数を含む。例えば、「約90%」は「90%」を含む。いくつかの実施形態において、参照配列に対して少なくとも95%相同または同一であることは、96%、97%、98%、99%、および100%相同または同一であることを含む。加えて、配列がヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を「含む」ものとして開示される場合、このような言及は、他に示されない限り、その配列が、記載される配列を「含む」か、その配列「からなる」か、またはその配列から「実質的になる」ことも含むだろう。
【表1】
【0067】
導入遺伝子
導入遺伝子は、遺伝子の不全を修正するか、低下させるか、消失させるか、またはその他の方法で緩和するために採用されてもよく、遺伝子の不全は、通常の遺伝子が、通常より低いレベルで発現する不全、通常または通常に近いレベルで発現するが、異常な活性を有する遺伝子産物を発現する不全、または機能性の遺伝子産物が発現されない不全を含んでもよい。いくつかの実施形態において、導入遺伝子配列は、宿主細胞において発現させる治療的タンパク質またはポリペプチドをコードする。本開示の実施形態は、複数の導入遺伝子を使用することも含む。
【0068】
コザック配列
本明細書で提供されるコザック配列は、真核細胞において、任意の遺伝子変化手法(gene alteration technique)を通して、翻訳を増強し得る。本明細書で提供されるコザック配列は、ポリペプチドをコードする導入遺伝子を保有するコンストラクトに挿入され得、ここで前記コザック配列は導入遺伝子配列に動作可能に連結される。転写されたとき、結果として生じるmRNA転写産物上のコザック配列は、リボソーム翻訳機構の動員のシグナルを発するか、またはその他の方法で動員を増加させ得る。したがって、発現コンストラクトに対するコザック配列の追加または変更は、対応するmRNA転写産物の翻訳を増強するよう働き得る。
【0069】
既知のコンセンサスコザックモチーフ(A/G)CCAUGGは転写開始を強力に手助けすることが実証されてきた。遺伝子工学者は、この配列を、高いレベルの組み換えタンパク質発現を生成するために使用してきた。ヒトゲノムにおいては、遺伝子の11%が古典的なコンセンサス配列(A/G)CCAUGGを使用することが報告されている(Ferreira et. al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Jul 9; 110(28): 11284-11289)。すなわち、ヒト遺伝子配列の約~89%が前記コンセンサスコザック配列とは異なっている。コンセンサスコザック配列の追加は、下流タンパク質の翻訳および産生を増強するよう働き得る。
【0070】
調節エレメント
いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、異種性の核酸の発現を促進する配列、例えば異種性の核酸に動作可能に連結された1つ以上の発現調節性配列を含む、1つ以上の領域を含む。プロモーターは、それが調節する核酸配列の転写を駆動する。すなわち、プロモーターは、典型的には遺伝子の転写開始部位またはその近くに位置する。プロモーターは、例えば、100から1000ヌクレオチドの長さを有してもよい。いくつかの実施形態において、プロモーターは、核酸、または核酸の配列(ヌクレオチド配列)に動作可能に連結される。プロモーターが、配列に対して、プロモーターがその配列を調節する(例えば転写開始および/または発現を制御(「駆動」)する)ような正しい機能的位置および向きにある場合、プロモーターは、それが制御する核酸の配列に「動作可能に連結」されているとみなされる。このような配列は当業界で数多く知られている。
【0071】
本開示に従って使用されてもよいプロモーターは、対象の心臓において導入遺伝子の発現を駆動し得る任意のプロモーターを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは組織特異的プロモーターであってもよい。本明細書で使用する「組織特異的プロモーター」は、特定のタイプの組織、例えば心臓、においてのみ機能し得るプロモーターを指す。すなわち、「組織特異的プロモーター」は、他のタイプの組織において導入遺伝子の発現を駆動できない。いくつかの実施形態において、本開示に従って使用されてもよいプロモーターは、心臓に制限されたプロモーターである。使用されてもよい組織特異的なプロモーターおよび/または調節エレメントの非限定的な例は、(1)筋細胞に特異的な、デスミン、クレアチンキナーゼ、ミオゲニン(myogenin)、アルファミオシン重鎖、およびナトリウム利尿ペプチド、および(2)肝細胞に特異的な、アルブミン、アルファ-1-アンチトリプシン、B型肝炎ウイルスのコアタンパク質プロモーターを含む。心臓に制限されたプロモーターの非限定的な例は、心筋トロポニンC、心筋トロポニンI、および心筋トロポニンT(cTnT)から選択される。本明細書に規定される心筋症の処置において、心臓に制限されたプロモーターは、少なくとも、導入遺伝子のオフターゲット発現の可能性を低下させ、それによって効果的に心臓への送達量を増加させ、かつ治療を増強する点で、有利である。発現調節性配列の非限定的な例は、プロモーター、インスレーター、サイレンサー、応答エレメント(response element)、イントロン、エンハンサー、開始部位、終結シグナル、およびポリ(A)テールを含む。このような調節性配列の任意の組み合わせが、本明細書において企図される(例えばプロモーターおよびエンハンサー)。
【0072】
代わりに、前記プロモーターは、以下の遺伝子のうち1つのプロモーターであってもよいが、これらに限定されない:α-ミオシン重鎖遺伝子、6-ミオシン重鎖遺伝子、ミオシン軽鎖2v(MLC-2v)遺伝子、ミオシン軽鎖2a遺伝子、CARP遺伝子、心臓α-アクチン遺伝子、心臓m2ムスカリン性アセチルコリン遺伝子、心房性ナトリウム利尿因子(atrial natriuretic factor)遺伝子(ANF)、心筋小胞体Ca-ATPase遺伝子、骨格α-アクチン遺伝子;またはMLC-2v遺伝子由来の人工心臓プロモーター。
【0073】
目的の核酸、タンパク質、またはポリペプチドの適切な発現レベルを達成するために、選択される宿主細胞における使用に適した任意の数のプロモーターが採用されてもよい。前記プロモーターは、例えば、恒常的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、または合成プロモーターであってもよい。例えば、異なる強度の恒常的プロモーターが使用され得る。本明細書に記載されるrAAVベクターは、一般的には転写の促進において活性である、ウイルス性プロモーターまたは哺乳類の遺伝子のプロモーターなどの、1つ以上の恒常的プロモーターを含んでもよい。ウイルス性恒常的プロモーターの非限定的な例は、単純ヘルペスウイルス(HSV)、チミジンキナーゼ(TK)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、シミアンウイルス40、(SV40)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、Ad E1A、およびサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。非ウイルス性恒常的プロモーターの非限定的な例は、ニワトリβアクチンプロモーター(CBA)を含むβアクチンプロモーターに代表される、様々なハウスキーピング遺伝子プロモーターを含む。
【0074】
誘導性のプロモーターおよび/または調節エレメントもまた、目的のタンパク質またはポリペプチドの適切な発現レベルを達成するために企図されてもよい。適切な誘導性プロモーターの非限定的な例は、シトクロムP450遺伝子、熱ショックタンパク質遺伝子、メタロチオネイン遺伝子、およびエストロゲン遺伝子などのホルモン誘導性遺伝子などの遺伝子のプロモーターを含む。誘導性プロモーターの別の例は、テトラサイクリンに対して応答性の、tetVP16遺伝子プロモーターである。
【0075】
合成プロモーターもまた本明細書において企図される。合成プロモーターは、例えば既知のプロモーターの領域、調節エレメント、転写因子結合部位、エンハンサーエレメント、リプレッサーエレメント、などを含んでもよい。
【0076】
エンハンサーエレメントは、その他の調節エレメントと組み合わさって、導入遺伝子の発現を増加させるよう機能し得る。いくつかの実施形態において、エンハンサーエレメントは導入遺伝子の上流にある(5’に位置する)。エンハンサーエレメントの非限定的な実施形態は、例えばシミアンウイルス40の100塩基対エレメント(SV40後期2XUSE)、ヒト免疫不全ウイルス1の35塩基対エレメント(HIV-1 USE)、ジリス肝炎ウイルスの39塩基対エレメント(GHV USE)、アデノウイルスの21塩基対エレメント(アデノウイルスL3 USE)、ヒトプロトロンビンの21塩基対エレメント(hTHGB USE)、ヒトC2構成要素(human C2 component)遺伝子の53塩基対エレメント(hC2 USE)、前記のいずれかの切断型、および前記の組み合わせを含む、ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、エンハンサーはα-ミオシン重鎖(αMHC)遺伝子に由来する。いくつかの実施形態において、前記αMHCエンハンサーは、CCTTCAGATTAAAAATAACTAAGGTAAGGGCCATGTGGGTAGGGGAGGTGGTGTGAGACGGTCCTGTCTCTCCTCTATCTGCCCATCGGCCCTTTGGGGAGGAGGAATGTGCCCAAGGACTAAAAAAAGGCCCTGGAGCCAGAGGGGCGAGGGCAGCAGACCTTTCATGGGCAAACCTCAGGGCTGCTGTC(配列番号9)に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0077】
非限定的なポリアデニル化シグナルは、例えばヒト成長ホルモン(hGH)の624塩基対ポリアデニル化シグナル、シミアンウイルス40(sV40後期)の135塩基対ポリアデニル化シグナル、ウサギベータグロビン由来の49塩基対合成ポリアデニル化シグナル(SPA)、ウシ成長ホルモン(bGH)の250塩基対ポリアデニル化シグナル、前記のいずれかの切断型、および前記の組み合わせを含む、ヌクレオチド配列を含む。
【0078】
開示されるrAAVベクターのいくつかの実施形態において、2つ以上の導入遺伝子が、単一のプロモーターによって動作可能に制御されている。いくつかの実施形態において、2つ以上の導入遺伝子のそれぞれが、別々のプロモーターによって動作可能に制御されている。
【0079】
いくつかの実施形態において、本開示のrAAVベクターは、内部リボソーム進入部位(IRES)をさらに含む。IRESは、タンパク質合成のより大きなプロセスの一部として、メッセンジャーRNA(mRNA)配列の中間における翻訳開始を可能にするヌクレオチド配列である。通常、真核生物においては、開始複合体の構築に5’キャップの認識が要求されるため、翻訳はmRNA分子の5’末端のみで開始され得る。いくつかの実施形態において、IRESは導入遺伝子間に位置する。
【0080】
いくつかの実施形態において、異なる導入遺伝子によってコードされるタンパク質が個別に翻訳される(すなわち、融合タンパク質として翻訳されるのに対して)。
【0081】
いくつかの実施形態において、本開示のrAAVベクターは、5’から3’の順に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆向き末端反復(ITR)配列、プロモーターが動作可能に連結された第1の導入遺伝子、IRESが動作可能に連結された第2の導入遺伝子、ポリアデニル化シグナル、および第2のAAV逆向き末端反復(ITR)配列を少なくとも含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、本開示のrAAVベクターは、ポリアデニル化(pA)シグナルをさらに含む。
【0083】
発現カセット
発現カセットは、最低でも、導入遺伝子、およびコザック配列を含むその調節性配列から構成される。前記カセットがrAAVから発現されるように設計される場合、前記発現カセットは5’および3’ITRをさらに含む。これらのITRは完全長であってもよく、または前記ITRの一方または両方が切断されていてもよい。ある実施形態において、前記rAAVはシュードタイプである。すなわち、前記AAVのカプシドは、ITRを提供するAAVとは異なる供給源AAVのものである。ある実施形態において、AAVセロタイプ2のITRが使用される。追加の実施形態において、AAVセロタイプ1のITRが使用される。しかしながら、その他の適切な供給源のITRが選択されてもよい。
【0084】
ベクター
本明細書において、rAAVウイルス粒子またはこのような粒子を含有するrAAV製剤がさらに提供される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、ウイルスのカプシドおよび本明細書に記載される1つ以上の導入遺伝子を含み、これはウイルスのカプシドによってカプシド化されている。rAAV粒子を生産する方法は当業界で知られており、かつ市販されている(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるZolotukhin, et. al. Production and purification of serotype 1, 2, and 5 recombinant adeno-associated viral vectors. Methods 28 (2002) 158-167;および米国特許出願公開US2007/0015238号およびUS2012/0322861号;およびATCCおよびCell Biolabs, Inc.から入手可能なプラスミドおよびキットを参照)。例えば、前記rAAVベクターを含有するプラスミドは、1つ以上のヘルパープラスミド、例えばrep遺伝子(例えばRep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードする)およびcap遺伝子(VP1、VP2、および本明細書に記載される改変VP3領域を含むVP3をコードする)を含有するプラスミド、と組み合わせられてもよく、かつ、AAV粒子をパッケージ化しその後精製し得るように、産生細胞株(producer cell line)にトランスフェクトされてもよい。
【0085】
本明細書で開示されるrAAV粒子またはrAAV製剤中の粒子は、任意の誘導体またはシュードタイプを含む、任意のAAVセロタイプであってもよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、2/1、2/5、2/8、2/9、3/1、3/5、3/8、または3/9)。本明細書で使用する、rAAV粒子のセロタイプは、組み換えウイルスのカプシドタンパク質のセロタイプを指す。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はrAAV6またはrAAV9である。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はAAVrh.74である。好ましい実施形態において、前記rAAV粒子はAAVrh74である。追加の好ましい実施形態において、前記rAAVはAAV9である。いくつかの実施形態において、rh74 AAVは、例えばVP1カプシドの505番目のアミノ酸におけるトリプトファンからアルギニンへの変異によって、または参照によってその全体が本明細書に組み込まれるPCT出願公開WO2019/1784412に記載されるその他の変異によって、心臓組織への送達を有利に増強するように変異し得る。誘導体、シュードタイプ、および/またはその他のベクタータイプの非限定的な例は、AAVrh.10、AAVrh.74、AAV2/1、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/8、AAV2/9、AAV2-AAV3ハイブリッド、AAVhu.14、AAV3a/3b、AAVrh32.33、AAV-HSC15、AAV-HSC17、AAVhu.37、AAVrh.8、CHt-P6、AAV2.5、AAV6.2、AAV2i8、AAV-HSC15/17、AAVM41、AAV9.45、AAV6(Y445F/Y731F)、AAV2.5T、AAV-HAE1/2、AAVクローン32/83、AAVShHIO、AAV2(Y->F)、AAV8(Y733F)、AAV2.15、AAV2.4、AAVM41、およびAAVr3.45を含むが、これらに限定されない。
【0086】
このようなAAVセロタイプおよび誘導体/シュードタイプ、およびこのような誘導体/シュードタイプを生産する方法は、当業界で知られている(例えば、Mol Ther. 2012 Apr;20(4):699- 708. doi: 10.1038/mt.2011.287. Epub 2012 Jan 24. The AAV vector toolkit: poised at the clinical crossroads. Asokan Al, Schaffer DV, Samulski RJ.を参照)。特定の実施形態において、本明細書で開示されるrAAV粒子のいずれかのカプシドは、AAVrh.10セロタイプのカプシドである。好ましい実施形態において、前記rAAV粒子のカプシドは、AAVrh10セロタイプである。いくつかの実施形態において、前記カプシドは、AAV2/6セロタイプのカプシドである。いくつかの実施形態において、前記rAAV粒子はシュードタイプrAAV粒子であり、これは(a)あるセロタイプ(例えばAAV2、AAV3)のITRを含むrAAVベクター、および(b)別のセロタイプ(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10)由来のカプシドタンパク質を含むカプシドを含む。シュードタイプrAAVベクターを生産する方法および使用する方法は当業界で知られている(例えば、Duan et al, J. Virol., 75:7662-7671, 2001; Halbert et al, J. Virol., 74:1524-1532, 2000;Zolotukhin et al, Methods, 28:158-167, 2002;およびAuricchio et al., Hum. Molec. Genet., 10:3075-3081, 2001を参照)。rAAV Gene Therapy for Heart Diseases
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示のrAAVベクターは、ポリアデニル化(pA)シグナルをさらに含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、本開示のrAAVベクターは、5’から3’の順に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆向き末端反復(ITR)配列、プロモーターが動作可能に連結された導入遺伝子、ポリアデニル化シグナル、および第2の逆向き末端反復(ITR)配列を少なくとも含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記rAAVベクターゲノムは環状である。いくつかの実施形態において、前記rAAVベクターゲノムは直鎖状である。いくつかの実施形態において、前記rAAVベクターゲノムは1本鎖である。いくつかの実施形態において、前記rAAVベクターゲノムは二重鎖である。いくつかの実施形態において、前記rAAVゲノムベクターは自己相補的rAAVベクターである。好ましい実施形態において、前記rAAVベクターゲノムは1本鎖である。好ましい実施形態において、前記rAAVベクターゲノムは自己相補的である。
【0090】
本明細書において、rAAVベクターの非限定的な例が記載される。下記に例示されるベクターは、配列番号1~8に表す直鎖化プラスミド配列のうち1つ以上を含む。本開示のベクターは、配列番号1~8に表す配列に対して少なくとも70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、または少なくとも約99.9%の同一性を有する、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記rAAVは、配列番号1~8に表す配列に対して100%の配列同一性を有していてもよい。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0091】
いくつかの実施形態において、開示されたrAAV核酸ベクター配列のいずれかは、配列番号16-23のいずれかの配列に対して、5’末端または3’末端における切断を含む。いくつかの実施形態において、前記rAAVベクターのいずれかは、配列番号1-8のいずれかの配列から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または18より多くのヌクレオチド異なる、ヌクレオチド配列を含む。
【0092】
組み換えアデノ随伴ウイルスベクターおよびその治療的使用
AAVの多くのセロタイプがクローニングされ、かつ配列決定されてきた。セロタイプ1および6は、それらのカプシドタンパク質において99%より高いアミノ酸相同性を有している。最初の6つのAAVセロタイプのうち、セロタイプ2は広く特徴づけられており、したがって遺伝子導入研究でしばしば使用されるが、本明細書で開示される実施形態に従って、AAV9、AAV20、AAVrh74、AAVrh10などの、その他のAAVセロタイプも使用される。いくつかの実施形態において、液性免疫応答を誘発するであろうと予測される所定のセロタイプの反復投与が、免疫管理レジメンに紐づけて行われる。いくつかの実施形態において、免疫管理レジメンは、B細胞枯渇剤(B-cell depletor)として機能する1つ以上の物質の単独投与、またはmTOR経路の1つ以上の側面を阻害する1つ以上の物質と組み合わせた投与を含む。ある実施形態において、抗CD20抗体が投与され、かつラパマイシンが投与される。いくつかの実施形態において、これにより、その後のrAAV投与に対する免疫応答が減少するか、制限されるか、または無い状態での、所定のセロタイプのrAAVの反復投与が可能になる。免疫管理についてのさらなる情報は、米国特許出願第15/306,139号に記載されており、その内容の全てが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0093】
本開示の治療的rAAVベクター、治療的rAAV粒子、または治療的rAAV粒子を含む組成物は、本明細書に規定される心筋症などの、治療を必要とするヒト対象における心疾患の遺伝子治療のために使用されてもよい。本開示の方法および組成物を使用して処置してもよい心疾患の例は、心筋症および急性虚血を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、心筋症は肥大型心筋症または拡張型心筋症である。いくつかの実施形態において、心筋症は拡張型心筋症であり、かつ、遺伝子の発現および/または機能の低下または非存在によって引き起こされるか、またはそれに関連している。治療的rAAVベクター、粒子、および治療的rAAV粒子を含む組成物は、処置を必要とする対象に、例えば冠状動脈への経血管送達を介して、および/または心臓への直接的な注射によって、投与されて、このような心不全(例えば心筋症に続発する心不全)の処置のために使用されてもよい。前記治療的rAAVベクター、粒子、およびrAAV粒子を含む組成物は、対象の心筋細胞における導入遺伝子の同時発現を駆動する。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される核酸(および/または添付の配列表に含まれる核酸)のいずれかに対応するアミノ酸配列が、核酸コードの縮重を考慮しつつ、提供される。さらに、本明細書で明示的に開示される配列(および/または添付の配列表に含まれる配列)と異なるが、機能的類似性または同等性を有するそれらの配列もまた(核酸であれアミノ酸であれ)、本開示の範囲内で企図される。前記は、変異型、切断型、置換型、またはその他のタイプの改変型を含む。
【0095】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態によると、本明細書で開示される配列のいずれかが使用されてもよく、または、本明細書で開示される配列のいずれかの切断型または変異型(および/または添付の配列表に含まれる配列)が使用されてもよく、かつ任意の組み合わせで使用されてもよい。
【0096】
治療的核酸の発現を駆動するプロモーターは、恒常的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、神経特異的プロモーター、筋特異的プロモーター、または合成プロモーターであり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは神経特異的プロモーターまたは筋特異的プロモーターである。恒常的プロモーターは、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、アデノウイルスE1Aプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、哺乳類ハウスキーピング遺伝子プロモーター、またはβアクチンプロモーターであり得るが、これらに限定されない。誘導性プロモーターは、シトクロムP450遺伝子プロモーター、熱ショックタンパク質遺伝子プロモーター、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、ホルモン誘導性遺伝子プロモーター、エストロゲン遺伝子プロモーター、またはテトラサイクリンに対して応答性のtetVP16プロモーターであり得るが、これらに限定されない。筋特異的プロモーターは、デスミンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター、ミオゲニンプロモーター、アルファミオシン重鎖プロモーター、またはナトリウム利尿ペプチドプロモーターであり得るが、これらに限定されない。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記治療的rAAVプロモーターは、神経特異的プロモーターまたは心筋特異的プロモーターである。
【0098】
前記治療的rAAVは、セロタイプ1、セロタイプ2、セロタイプ3、セロタイプ4、セロタイプ5、セロタイプ6、セロタイプ7、セロタイプ8、セロタイプ9、セロタイプ10、セロタイプ11、セロタイプ12、セロタイプrh10、またはセロタイプrh74であり得る。前記治療的rAAVは、シュードタイプrAAVでもあり得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記治療的rAAVは、AGCCCCAACに対して少なくとも85%の配列同一性を有するコザック配列を有する。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記治療的rAAVは、AGCCCCAACに対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記治療的rAAVは、AGCCCCAACに対して少なくとも99%の配列同一性を有する配列を有する。
【0102】
医薬製剤および投与
【0103】
本明細書に記載される組成物は、医薬賦形剤、バッファー、または希釈剤をさらに含んでもよく、かつエクスビボ(ex vivo)で、または動物および特に人間においてインサイチュ(in situ)で、宿主細胞に投与するために製剤化されてもよい。このような組成物は、投与を必要とする対象の、細胞、組織、臓器、または体に投与するために、リポソーム、脂質、脂質複合体、マイクロスフィア、マイクロ粒子、ナノスフィア、またはナノ粒子を場合によりさらに含んでもよく、またはその他の方法で製剤化されてもよい。このような組成物は、例えば、例えば本明細書に記載される疾患または障害をもたらす状態を含む、ペプチド欠乏、ポリペプチド欠乏、ペプチド過剰発現、ポリペプチド過剰発現などの状態の緩和、予防、および/または処置など、様々な治療における使用のために製剤化されてもよい。
【0104】
薬学的に許容される賦形剤および/または担体溶液を含む製剤は当業者によく知られており、例えば経口投与、非経口投与、静脈内投与、鼻腔内投与、関節内投与、および筋肉内投与および製剤化を含む様々な処置レジメンにおいて本明細書に記載される特定の組成物を使用するのに適した投与レジメンおよび処置レジメンの開発も、同様である。
【0105】
典型的には、これらの製剤は少なくとも約0.1%の治療的物質(therapeutic agent)(例えば治療的rAAV粒子または製剤)またはそれより多くを含有してもよいが、活性成分の比率はもちろん様々であってもよく、かつ、製剤全体の重量または体積の約1または2%から約70%または80%以上の間であるのが好都合である。当然、治療上有用な組成物それぞれにおける治療的物質の量は、化合物の任意の所定の単位用量において適切な投与量が得られるような方法で、調製されてもよい。このような医薬製剤を調製する際、溶解性、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品の貯蔵寿命などの因子、ならびにその他の薬学的考慮事項が当業者によって企図されるであろう。加えて、様々な投与量および処置レジメンが望ましくてもよい。
【0106】
特定の状況において、前記rAAV粒子または製剤を、本明細書で開示される適切に製剤化された医薬組成物として、皮下投与、心臓内投与、眼内投与、硝子体内投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、脳室内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、経口投与、腹腔内投与、口または鼻からの吸入、または1つ以上の細胞(例えば心筋細胞および/またはその他の心臓細胞)、組織、または臓器への直接注射のいずれかによって、送達するのが望ましいであろう。いくつかの実施形態において、本発明の治療的rAAV粒子または本発明の治療的rAAV粒子を含む組成物は、特にヒトを処置するためのものにおいては、静脈内注射を介して全身性に送達される。いくつかの実施形態において、本発明の治療的rAAV粒子または本発明の治療的rAAV粒子を含む組成物は、対象の心臓に直接注射される。心臓への直接注射は、心筋組織、心臓の内膜、または心臓の周囲の骨格筋のうち1つ以上への、例えばニードルカテーテルを使用する注射を含んでもよい。いくつかの実施形態において、例えば送達が外科手術と同時に行われ、それによって心臓へのアクセスが改善される場合は、ヒト心臓への直接注射が好ましい。
【0107】
注射用に適した組成物の医薬製剤は、無菌の水溶液または分散体(dispersion)を含む。いくつかの実施形態において、前記製剤は無菌であり、かつ容易にシリンジから排出できる性質(easy syringability)が存在する程度に流動的である。いくつかの実施形態において、前記形態は製造および貯蔵の条件下で安定であり、かつ、細菌および真菌などの微生物による汚染作用から保護される。担体は、例えば水、生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、植物油、またはアメリカ食品医薬品局によって一般に安全と認められる(Generally Recognized as Safe: GRAS)担体などのその他の薬学的に許容される担体などを含有する、溶媒または分散媒(dispersion medium)であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体のケースにおいては要求される粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持されてもよい。実際、含まれてもよいその他の構成要素に対する限定は、その追加の物質が標的細胞または宿主組織との接触に際して顕著な有害作用を引き起こさない限り、事実上ない。すなわち前記治療的rAAVまたは製剤は、特定の場合において要求されるその他の様々な薬学的に許容される物質とともに送達されてもよい。このような組成物は、宿主細胞またはその他の生物学的供給源から精製されてもよく、あるいは本明細書に記載されるように化学的に合成されてもよい。
【0108】
治療的rAAV粒子または製剤、および/または治療的rAAVベクター組成物の量、およびこのような組成物の投与の時間は、本開示の利益を有する当業者の範囲内であろう。しかしながら、治療上有効な量の本開示の組成物の投与は、単回投与によって、例えば、このような処置を受ける患者に治療上の利益をもたらすのに十分な数の感染性粒子の単回投与によって、達成されてもよいと考えられる。いくつかの状況において、前記rAAV粒子または製剤、および/またはrAAVベクター組成物の複数回の投与または連続的な投与を、このような組成物の投与を監督する医療従事者によって決定されてもよい、比較的短い期間または比較的長い期間のいずれかにわたって、提供するのが望ましくてもよい。
【0109】
本発明の方法において利用される組成物の毒性および有効性は、標準的な薬学的手順で、LD50(集団の50%に対して致命的な用量)を決定するために培養細胞または実験動物のいずれかを使用して、決定されてもよい。毒性と有効性との間の用量比は治療指数であり、かつそれはLD50/ED50の比で表されてもよい。高い治療指数を呈する組成物が好ましい。毒性の副作用を呈する組成物が使用されてもよいが、そのような副作用の潜在的なダメージを最小化する送達システムを設計するように、ケアが行われるべきである。本明細書に記載される組成物の投与量は、一般的には、毒性がわずかであるか、または毒性のない、ED50を含む範囲内である。投与量はこの範囲内で、採用する投与形態および利用する投与経路に依存して変化してもよい。
【0110】
本開示の他の態様は、ヒトまたは非ヒト対象、対象のインサイチュの宿主細胞、または対象に由来する宿主細胞などの対象に使用するための、方法および製剤に関する。いくつかの実施形態において、前記対象は哺乳類である。いくつかの実施形態において、対象はコンパニオンアニマルである。本明細書で使用する「コンパニオンアニマル」は、ペットおよびその他の飼育動物を指す。コンパニオンアニマルの非限定的な例は、イヌおよびネコ;ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、およびニワトリなどの家畜;およびマウス、ラット、モルモット、およびハムスターなどのその他の動物を含む。いくつかの実施形態において、前記対象はヒト対象である。
【0111】
いくつかの実施形態において、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤(媒体、担体、希釈剤、および/または送達ポリマーを含む)が、治療的物質を含む医薬組成物に加えられ、それによって、ヒトなどの対象へのインビボ送達に適した医薬製剤が形成される。
【0112】
医薬組成物または医薬は、治療的物質、および場合により1つ以上の薬学的に許容される賦形剤のうち少なくとも1つを薬学的に有効な量含む。薬学的に許容される賦形剤(賦形剤)は、活性医薬成分(Active Pharmaceutical ingredient: API, 治療薬)以外の、薬物送達システム中に意図的に含まれる物質である。賦形剤は、意図された投与量において、治療効果を発揮しないか、または治療効果を発揮することを意図されない。賦形剤は、a)製造過程で薬物送達システムの処理に役立ち、b)APIの安定性、生物学的利用能、または患者に対する忍容性を、保護、サポート、または増強し、c)製品の識別を補助し、および/または、d)貯蔵中または使用中のAPIの総合的な安全性、有効性、または送達に関するその他任意の性状を増強するように作用してもよい。薬学的に許容される賦形剤は、不活性な物質であってもなくてもよい。
【0113】
賦形剤の非限定的な例は、吸収促進剤、付着防止剤(anti-adherent)、消泡剤、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、担体、コーティング剤、着色料、送達促進剤(delivery enhancer)、送達ポリマー、デキストラン、デキストロース、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香料、流動化剤、保湿剤、滑沢剤、油、ポリマー、保存剤、生理食塩水、塩、溶媒、糖、懸濁化剤、持続放出性マトリックス、甘味料、増粘剤、等張化剤、媒体、撥水剤(water-repelling agent)、および湿潤剤を含むが、これらに限定されない。
【0114】
前記医薬組成物は、医薬組成物に一般的に含まれる他の追加の構成要素を含有し得る。このような追加の構成要素は、鎮痒剤、収斂剤、局所麻酔、または抗炎症剤(例えば抗ヒスタミン、ジフェンヒドラミンなど)を含み得るが、これらに限定されない。
【0115】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得るが、これらに限定されない。また、担体は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含有していてもよい。また、担体は、糖、多価アルコール、塩化ナトリウムなどの等張化剤を、組成物中に含有していてもよい。
【0116】
薬学的に許容されるとは、薬理学的/毒性学的観点から、対象にとって許容される特性および/または物質を指す。薬学的に許容されるという語句は、生理学的に容認され、かつ典型的には対象に投与された際にアレルギー反応またはその他の有害な反応または毒性の反応をもたらさない、分子種(molecular entity)、組成物、および特性を指す。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される化合物は、連邦政府または州政府の規制当局によって認可されているか、または米国薬局方またはその他の一般的に認識されている薬局方において、動物、かつより具体的にはヒトにおける使用について収載されている。
【0117】
本明細書に記載されるrAAVまたは医薬組成物は、エクスビボで、または動物および特に人間においてインサイチュで、宿主細胞に投与するために製剤化されてもよい。前記rAAVまたは医薬組成物は、様々な経路で投与され得る。投与経路は、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、肝内投与、腹腔内投与、および/または標的組織への局所的送達を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、複数回の注射、またはその他の投与タイプ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上の注射が提供される。必要であれば、投与のルートは組み合わせられてもよい。実施形態によっては、第1および第2のrAAVが同じ回数投与される必要はない(例えば、第1のrAAVが1回投与され、かつ第2のベクターは3回投与されてもよい)。いくつかの実施形態において、投与は筋肉内投与である。
【0118】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるrAAV粒子の数は、約10から約1014粒子/mL、または約10から約1013粒子/mLの範囲の桁であってもよく、またはいずれかの範囲の間の任意の値、例えば約10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、または1014粒子/mLなどであってもよい。いくつかの実施形態において、対象に投与されるrAAV粒子の数は、約10から約1014ベクターゲノム(vgs)/mL、または10から1015vgs/mLの範囲の桁であってもよく、またはいずれかの範囲の間の任意の値、例えば約10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、または1014vgs/mLであってもよい。いくつかの実施形態において、細胞あたり約0.5から約5の間のrAAVベクターゲノムが投与される。いくつかの実施形態において、細胞あたり約0.5から約2の間のrAAVベクターゲノムが投与される。いくつかの実施形態において、キロあたり約1x1013から約3x1014ベクターゲノム(vgs/kg)が投与される。いくつかの実施形態において、投与は対象の心筋の質量に基づく。いくつかの実施形態において、投与は体重に基づく。いくつかの実施形態において、投与は体表面積に基づく。前記rAAV粒子は、処置される特定の疾患または障害の治療を達成するために要求されるように、単回用量として投与され得、または2回以上の投与に分割され得る。いくつかの実施形態において、約0.0001mLから約10mLの範囲の用量が、対象に送達される。
【0119】
注射用の水溶液の投与のために、例えば、前記溶液は適切に緩衝されてもよく、かつ、必要であれば、前記液体希釈液は、まず十分な生理食塩水またはグルコースで等張化されてもよい。これらの特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、硝子体内投与、皮下投与、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、採用され得る無菌水性媒体は、本開示に照らせば、当業者には明らかであろう。例えば、単回用量は1mLの等張NaCl溶液に溶解されてもよく、かつ1000mLの持続皮下輸液に加えられるか、あるいは予定された注入部位に注射されてもよい(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照)。処置される対象の状態に応じて、投与量には多少のばらつきが必然的に生じる。投与を担当する者が、いずれの場合においても、個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与については、製剤は、無菌性、発熱原性(pyrogenicity)、および、例えばFDAの生物学部門(Office of Biologies)の基準によって要求される、総合的な安全性および純度の基準を満たすべきである。いくつかの実施形態において、前記rAAV製剤は、活性rAAV成分、一塩基性バッファー(例えばリン酸ナトリウム一塩基性バッファー)、二塩基性塩(例えばリン酸ナトリウム二塩基)、ナトリウムベースの等張化剤(tonicifier)(例えば塩化ナトリウム等張化剤)、非ナトリウム性等張化剤(例えば塩化マグネシウム六水和物等張化剤)、界面活性剤(例えばポロキサマー188界面活性剤)、および水を含むか、これらからなるか、または実質的にこれらからなるであろう。いくつかの実施形態において、前記rAAV製剤は、活性rAAV成分、リン酸ナトリウム一塩基性バッファー、リン酸ナトリウム二塩基、塩化ナトリウム等張化剤、塩化マグネシウム六水和物等張化剤、ポロキサマー188界面活性剤、および水を含むか、これらからなるか、または実質的にこれらからなるであろう。いくつかの実施形態において、前記活性rAAV成分は、本明細書に規定されるベクターゲノム量に従って、製剤中に含まれる。いくつかの実施形態において、前記一塩基性バッファー(例えばリン酸ナトリウム一塩基性バッファー)は、約0.2mg/mLから約0.5mg/mLの間の濃度で製剤中に含まれる。いくつかの実施形態において、前記二塩基性塩(例えばリン酸ナトリウム二塩基)は、約1.5mg/mLから約4mg/mLの間の濃度で製剤中に含まれる。いくつかの実施形態において、前記ナトリウムベースの等張化剤(例えば塩化ナトリウム等張化剤)は、約8mg/mLから約12mg/mLの間の濃度で製剤中に含まれる。いくつかの実施形態において、前記非ナトリウム性等張化剤(例えば塩化マグネシウム六水和物等張化剤)は、約0.1mg/mLから約0.35mg/mLの間の濃度で製剤中に含まれる。いくつかの実施形態において、前記界面活性剤(例えばポロキサマー188界面活性剤)は、約0.05mg/mLから約0.8mg/mLの間の濃度で製剤中に含まれる。いくつかの実施形態において、水は、製剤(例えば投与量単位)の容量を1mLにするように含まれる。
【0120】
無菌注射用溶液は、前記rAAV粒子または製剤を、要求される量、上に列挙したその他の成分のいくつかを必要に応じて含む適切な溶媒に組み込み、その後濾過滅菌を行うことによって調製される。一般的には、分散体は、滅菌した様々な活性成分を、塩基性の分散媒および上記に列挙したその他の成分を含有する無菌媒体に組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉体のケースにおいて、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥手法である。これらの方法により、活性成分と追加の任意の所望の成分を、予め濾過滅菌したそれらの溶液から、得ることができる。
【0121】
rAAV粒子または製剤の量、およびこのような粒子または製剤の投与の時間は、本開示の利益を有する当業者の範囲内であろう。しかしながら、治療上有効な量の本開示のAAV粒子または製剤の投与は、単回投与によって、例えば、このような処置を受ける患者に治療上の利益をもたらすのに十分な数の感染性粒子の単回投与によって、達成されてもよいと考えられる。代わりに、いくつかの状況において、前記rAAV粒子または製剤の複数回の投与または連続的な投与を、このような組成物の投与を監督する医療従事者によって決定されてもよい、比較的短い期間、または比較的長い期間のいずれかにわたって、提供するのが望ましくてもよい。
【0122】
必要であれば、rAAV粒子は、例えばタンパク質またはポリペプチドなどのその他の物質、または様々な薬学的に活性な物質と組み合わせて投与されてもよく、これは治療的ポリペプチド、生物学的に活性なフラグメント、またはそのバリアントの1回以上の投与を含む。実際、含まれてもよいその他の構成要素に対する限定は、その追加の物質が標的細胞または宿主組織との接触に際して顕著な有害作用を引き起こさない限り、事実上ない。すなわち前記治療的rAAVまたは製剤は、特定の場合において要求されるその他の様々な薬学的に許容される物質とともに送達されてもよい。このような組成物は、宿主細胞またはその他の生物学的供給源から精製されてもよく、あるいは本明細書に記載されるように化学的に合成されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるrAAV粒子による対象の処置は、以下の効果のうち1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を達成する:例えば、(i)疾患またはそれに関連する症状の重症度の低下または緩和;(ii)疾患に関連する症状の持続期間の減少;(iii)疾患またはそれに関連する症状の進行に対する保護;(iv)疾患またはそれに関連する症状の後退;(v)疾患に関連する症状の発現または発生に対する保護;(vi)疾患に関連する症状の再発に対する保護;(vii)対象の入院の減少;(viii)入院期間の短縮;(ix)疾患を有する対象の生存期間の延長;(x)疾患に関連する症状の数の減少;(xi)別の治療の予防効果または治療効果の増強、改善、補完、代償、または増大を含む効果。
【0124】
この明細書の開示を参照すれば当業者には明らかなように、加えられるウイルスベクターの有効量は、経験的に決定され得る。投与は、単回投与、複数回投与、処置の経過全体にわたる連続的投与または間欠的投与であり得る。最も効果的な投与の手段および投与量を決定する方法は当業者によく知られており、かつベクター、治療の組成、標的細胞、および処置される対象によって異なるだろう。単回投与および複数回投与は、処置する医師によって選択される用量レベルおよびパターンで行われ得る。
【0125】
キット
本明細書において、1つ以上の開示されるrAAVベクターを含む組成物を含む、心筋症などの心臓の疾患または状態の1つ以上の症状を、診断、予防、処置、または緩和するためのキットが記載される。このようなキットは、ヒト疾患の診断、予防、および/または治療に有用であってもよく、かつ特に、心筋症などの心疾患の1つ以上の症状の処置、予防、および/または緩和に有用であってもよい。いくつかの実施形態において、前記心疾患は、心筋症によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、前記心疾患は肥大型心筋症または拡張型心筋症によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、前記心疾患は拡張型心筋症である。
【0126】
開示されるrAAVベクターのうち1つ以上(ならびに1つ以上のビリオン、ウイルス粒子、形質転換した宿主細胞、またはこのようなベクターを含む医薬組成物)を含むキット、およびこのようなキットを1つ以上の治療的、診断的、および/または予防的な臨床実施形態に使用するための説明書も、いくつかの実施形態に従って提供される。このようなキットは、1つ以上の試薬、制限酵素、ペプチド、治療的物質、医薬化合物、または宿主細胞または動物への組成物の送達手段(例えばシリンジ、注射剤(injectables)など)を含んでもよい。実施形態によっては、キットは、疾患、不全、機能障害、および/または損傷の症状を処置、予防、または緩和するためのそれらを含むか、またはウイルスベクターそのものの大規模生産のための構成要素を含んでもよい。
【0127】
いくつかの実施形態において、キットは、記載される治療的物質のいずれかの1回以上の用量を含む、1つ以上の容器または入れ物(receptacle)を含む。このようなキットは、治療的な性質であってもよい。いくつかの実施形態において、前記キットは、例えば1つ以上の追加の物質を伴うかまたは伴わない、記載される治療的物質を含む、組成物の予め定められた量を意味する、単位投与量を含有する。
【0128】
キットの構成要素の1つ以上は、1つ以上の液体または凍結した溶媒で提供され得る。前記溶媒は水性または非水性であり得る。キット中の製剤は、適切な溶媒を加えることで再構成し得る、乾燥粉末または凍結乾燥形態としても提供され得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、キットは、キットの内容物の適切な使用方法を示す、ラベル、マーカー、添付文書、バーコード、および/またはリーダー(reader)を含む。いくつかの実施形態において、前記キットは、キットの内容物が特定の投与量または投与レジメンに従って対象を処置するために投与されてもよいことを示す、ラベル、マーカー、添付文書、バーコード、および/またはリーダーを含んでもよい。
【0130】
加えて、キットは、洗浄試薬、溶出試薬、および濃縮試薬を含むがこれらに限定されない、様々な試薬を含有してもよい。このような試薬は、本明細書に記載される試薬の中から、および従来の濃縮試薬の中から、容易に選択されてもよい。
【0131】
本明細書で使用する「キット」という用語は、持ち運び可能な、自己完結型の、本発明の診断方法または治療方法の1つ以上を実施するための少なくとも1つの構成要素のセットを含む封入物の、バリエーションを記載するために使用されてもよい。
【0132】
組み合わせ治療
本開示の複数の実施形態は、本明細書に記載される各個の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に指向している。加えて、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾していない場合、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法2つ以上の任意の組み合わせが、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0133】
本開示の組成物は、rAAV粒子または製剤、および/またはrAAVベクターを、単体で、あるいは1つ以上の追加の活性成分と組み合わせて含んでもよく、前記成分は天然の供給源または組み換え供給源から得られてもよく、または化学合成されてもよい。いくつかの実施形態において、rAAV粒子または製剤は、同じ組成物で投与されるかあるいは同じ処置レジメンの一部として投与されるかのいずれかによって、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、またはヒドロキシウレアと組み合わせて投与される。
【0134】
必要であれば、rAAV粒子は、他の物質、例えばタンパク質またはポリペプチド、または様々な薬学的に活性な物質と、組み合わせて投与されてもよい。これは、いくつかの実施形態において、例えば治療的ポリペプチド(例えば、導入遺伝子によってコードされるタンパク質の置き換えまたはrAAVベースの産生の補完に役立つ機能的ペプチドまたはタンパク質の組み換え形態)、生物学的に活性なフラグメント、またはそのバリアントの1回以上の投与を反映してもよい。すなわち前記治療的rAAVまたは製剤は、特定の場合において要求されるその他の様々な薬学的に許容される物質とともに送達されてもよい。このような組成物は、宿主細胞またはその他の生物学的供給源から精製されてもよく、あるいは本明細書に記載されるように化学的に合成されてもよい。
【0135】
本明細書には、標的細胞においてヒト導入遺伝子の発現増加を誘導する方法であって、ヒト導入遺伝子をコードする配列、コンセンサスコザック配列、およびプロモーターに動作可能に連結されたエンハンサーエレメントを含む、核酸発現コンストラクトを含む、複数のrAAV粒子を標的細胞に接触させることを含み、ここで前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列で挟まれており、かつ、前記接触は、標的細胞において接触前と比較したヒト導入遺伝子の発現増加をもたらし、それによって前記導入遺伝子の発現を増加させる、方法も記載される。本明細書には、標的細胞においてヒト導入遺伝子の発現増加を誘導する方法であって、ヒト導入遺伝子をコードする配列、導入遺伝子および/またはプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントのいずれに対しても非天然であるコザック配列、およびプロモーターに動作可能に連結されたエンハンサーエレメントを含む、核酸発現コンストラクトを含む、複数のrAAV粒子を標的細胞に接触させることを含み、ここで前記発現コンストラクトは両側を逆向き末端反復配列で挟まれており、かつ、前記接触は、標的細胞において接触前と比較したヒト導入遺伝子の発現増加をもたらし、それによって前記導入遺伝子の発現を増加させる、方法も記載される。いくつかの実施形態において、前記接触はインビボにおける接触である。
【0136】
いくつかの実施形態において、追加の治療的物質は抗炎症剤を含む。前記抗炎症薬は、コルチコステロイド、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-21-モノエステル(例えば21-酢酸ヒドロコルチゾン、21-酪酸ヒドロコルチゾン、21-プロピオン酸ヒドロコルチゾン、21-吉草酸ヒドロコルチゾンなど)、ヒドロコルチゾン-17,21-ジエステル(例えば17,21-二酢酸ヒドロコルチゾン、17-酢酸-21-酪酸ヒドロコルチゾン、17,21-二酪酸ヒドロコルチゾンなど)、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、フルメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン(典型的には安息香酸ベタメタゾンまたは二プロピオン酸ベタメタゾンとして)、フルオシノニド、プレドニゾン、およびトリアムシノロン(典型的にはトリアムシノロンアセトニドとして)であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記抗炎症剤は、クロモリン(cromolyn)(5,5’-(2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ)ビス(4-オキソ-4H-クロメン-2-カルボン酸))(クロモグリク酸塩としても知られる)、およびビス(アセトキシメチル)、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミル(9-エチル-4,6-ジオキソ-10-プロピル-6,9-ジヒドロ-4H-ピラノ[3,2-g]キノリン-2,8-二カルボン酸)およびトラニラスト(2-{[(2E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロプ-2-エノイル]アミノ})などの2-カルボキシラトクロモン-5’-イル-2-ヒドロキシプロパン(2- carboxylatochromon-5'-yl-2-hydroxypropane)誘導体、およびロドキサミド(2-[2-クロロ-5-シアノ-3-(オキサロアミノ)アニリノ]-2-オキソ酢酸)などの、しかしこれらに限定されない、肥満細胞脱顆粒阻害剤である。いくつかの実施形態において、前記抗炎症剤は、アスピリン化合物(アセチルサリチル酸塩)、非アスピリンサリチル酸塩、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸塩、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フェニルブタゾン、スリンダク、およびトルメチン(tometin)などの、しかしこれらに限定されない、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である。
【0137】
いくつかの実施形態において、前記抗炎症剤は抗ヒスタミンを含む。前記抗ヒスタミンは、クレマスチン、クレマスチンフマル酸塩(2(R)-[2-[1-(4-クロロフェニル)-1-フェニル-エトキシ]エチル-1-メチルピロリジン)、デクスメデトミジン、ドキシラミン、ロラタジン(loratidine)、デスロラタジン(desloratidine)およびプロメタジン、およびジフェンヒドラミン、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、またはエステルであり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記抗ヒスタミンは、アザタジン、アゼラスチン、ブルフロリン(burfroline)、セチリジン、シプロヘプタジン、ドキサントラゾール(doxantrozole)、エトドロキシジン、フォルスコリン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、オキサトミド、ピゾチフェン、プロキシクロミル、N,N’-置換ピペラジン、またはテルフェナジンを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記抗ヒスタミンは、セチリジン、クロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、オルフェナドリン、フェニラミン、およびドキシラミンなどの、しかしこれらに限定されない、H1アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、前記抗ヒスタミンは、シメチジン、ファモチジン、ラフチジン、ニザチジン、ラニチジン、およびロキサチジンなどの、しかしこれらに限定されない、H2アンタゴニストである。
【0138】
いくつかの実施形態において、追加の治療的物質は、抗レトロウイルス剤を含む抗ウイルス剤を含む。適切な抗ウイルス剤は、レムデシビル、アシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、ホスカルネット、イドクスウリジン、ソリブジン、トリフルオロチミジン、バラシクロビル、ビダラビン、ジダノシン、ジデオキシイノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、アマンタジン、インターフェロンアルファ、リバビリン、およびリマンタジンを含むが、これらに限定されない。
【0139】
いくつかの実施形態において、追加の治療的物質は抗生物質を含む。適した抗生物質の非制限的な例は、ペニシリン、アミノペニシリン(例えばアモキシシリン、アンピシリン、ヘタシリンなど)、ペニシリナーゼ耐性抗生物質(例えばクロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリンなど)、広域スペクトル抗生物質(例えばアズロシリン(axlocillin)、カルベニシリン、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリンなど)などのベータラクタム系抗生物質;セファロスポリン(例えばセファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン(cefalixin)、セファロチン(cephalothin)、セファピリン、セフラジン、セファクロル、セファマンドール(cefacmandole)、セフメタゾール、セフォニシド、セフォラニド、セフォテタン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、ロラカルベフ、セフィキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチオフル、セフチゾキシム、セフトリアキソン、モキサラクタムなど);アズトレオナムなどのモノバクタム;イミペネムおよびメロペネム(eropenem)などのカルバペネム;キノロン系抗生物質(例えばシプロフロキサシン、エンロフロキサシン、ジフロキサシン、オルビフロキサシン、マルボフロキサシンなど);クロラムフェニコール系抗生物質(例えばクロラムフェニコール、チアンフェニコール、フロルフェニコールなど);テトラサイクリン系抗生物質(例えばクロルテトラサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど);マクロライド系抗生物質(例えばエリスロマイシン、タイロシン、チルミコシン(tlimicosin)、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど);リンコサミド系抗生物質(例えばリンコマイシン、クリンダマイシンなど);アミノグリコシド系抗生物質(例えばゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、アプラマイシン、トブラマイシン、ネオマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、パロモマイシンなど);スルホンアミド系抗生物質(例えばスルファジメトキシン(sulfadmethoxine)、スルファメタジン(sfulfamethazine)、スルファキノキサリン、スルファメラジン、スルファチアゾール、スルファサラジン、スルファジアジン、スルファブロモメタジン、スルファエトキシピリダジン(suflaethoxypyridazine)など);グリコペプチド系抗生物質(例えばバンコマイシン、テイコプラニン、ラモプラニン、およびデカプラニン);およびその他の抗生物質(例えばリファンピン、ニトロフラン、バージニアマイシン、ポリミキシン、トブラマイシンなど)を含む。
【0140】
いくつかの実施形態において、追加の治療的物質は、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール(fluoconazole)、およびアムホテリシンBなどの、しかしこれらに限定されない、抗真菌剤を含む。いくつかの実施形態において、前記治療的物質は、広域スペクトル抗寄生虫薬であるニタゾキサニド;抗マラリア薬およびその他の抗原虫剤(例えばアルテミシニン(artemisin)、メフロキン、ルメファントリン、チニダゾール、およびミルテホシンなど);メベンダゾール、チアベンダゾール、およびイベルメクチンなどの駆虫剤;およびリファンピンおよびアムホテリシンBなどの抗アメーバ剤などの、しかしこれらに限定されない、抗寄生虫剤である。
【0141】
いくつかの実施形態において、追加の治療的物質は、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、ドロコデ(drocode)、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、スフェンタニル、およびトラマドールなどのオピオイド鎮痛薬;およびアパゾン、エトドラク、ジフェンピラミド(diphenpyramide)、インドメタシン、メクロフェナム酸塩、メフェナム酸、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、およびトルメチンなどの非オピオイド鎮痛薬を含むがこれらに限定されない、鎮痛剤を含む。
【0142】
本明細書における、ある実施形態に紐づく任意の特定の特徴、態様、方法、特性、特徴、質、性状、要素などの開示は、本明細書に表すその他全ての実施形態において使用され得る。したがって、開示される実施形態の様々な特徴および態様が、開示される発明の異なる型を形成するために、別の特徴および態様と組み合わせられ得、または置換され得ると理解されるべきである。すなわち、本明細書で開示する本発明の範囲は、上記に開示する特定の実施形態によって限定されるべきではないと意図される。さらに、本発明には様々な改変および代替的な形態が可能であるが、その特定の例が、図面に示されており、かつ本明細書に詳細に記載されている。しかしながら、本発明は開示される特定の形態または方法に限定されるのではなく、逆に、本発明は記載される様々な実施形態および付属の特許請求の範囲の思想および範囲内にある全ての改変、同等物、および代替を包含すると理解されるべきである。本明細書で開示されるいかなる方法も、記載されている順に行われる必要はない。本明細書で開示される方法は、実施者によって行われる特定の動作を含むが、それらは、その動作に対する任意の第三者の、明示的あるいは示唆的な指示を含み得る。加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式の群の用語で記載される場合、当業者は、本開示が、マーカッシュ形式の群の任意の個別のメンバーまたはメンバーのサブグループの用語でも記載されていると認識するだろう。
【0143】
本明細書で使用されるあらゆる表題および小見出しは構成を整えるためのものであって、本明細書で開示される実施形態の範囲を限定するために使用されるべきではない。
【実施例
【0144】
下記の実施例は単なる例示であって、本発明の範囲に対する限定であるとは意図されない。
実施例1-心臓組織における発現増強のための、コンセンサスコザック配列のインシリコ誘導
【0145】
既知のコンセンサスコザックモチーフ(A/G)CCAUGGは翻訳開始を強力に手助けすることが実証されてきた。遺伝子工学者は、この配列を、高いレベルの組み換えタンパク質発現を生成するために使用してきた。ヒトゲノムにおいては、遺伝子の11%が前記コンセンサス(A/G)CCAUGGを使用することが報告されている(Ferreira et. al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Jul 9; 110(28): 11284-11289)。このように、ヒト遺伝子配列の~89%が前記コンセンサスとは異なっていることから、心臓における導入遺伝子の発現を増強する新たな合成コザック配列を設計するために、ヒト心臓組織において高発現している遺伝子の分析を行った。下記の表1に示すように、遺伝子はHuman Protein Atlasから選択し、各遺伝子のコザック配列は、NCBIで特定した。コンセンサス配列はWeblogo (https://weblogo.berkeley.edu/logo.cgi)を使用して誘導した。次に、コンセンサス配列(AGCCCCAAC)を、本明細書で提供される、選択される導入遺伝子コンストラクトの設計に利用した。
【表3】
【配列表】
2024545504000001.xml
【国際調査報告】