(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-09
(54)【発明の名称】新規アディポネクチン由来ペプチド誘導体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20241202BHJP
C07K 5/02 20060101ALI20241202BHJP
C07K 5/103 20060101ALI20241202BHJP
C07K 7/02 20060101ALI20241202BHJP
C07K 7/50 20060101ALI20241202BHJP
C07K 7/64 20060101ALI20241202BHJP
C07K 5/12 20060101ALI20241202BHJP
C07K 5/11 20060101ALI20241202BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241202BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241202BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20241202BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241202BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20241202BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20241202BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20241202BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20241202BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C07K7/06
C07K5/02 ZNA
C07K5/103
C07K7/02
C07K7/50
C07K7/64
C07K5/12
C07K5/11
A61P3/00
A61P17/00
A61P29/00
A61P35/00
A61P17/02
A61P17/14
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q7/00
A61K38/08
A61K38/07
A61K38/12
A61Q19/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534563
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2022020076
(87)【国際公開番号】W WO2023106897
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0176940
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0165949
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516011833
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ ホスピタル
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY HOSPITAL
(71)【出願人】
【識別番号】518452917
【氏名又は名称】テグ-キョンプク メディカル イノベーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ウン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ス, ジュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジ フン
(72)【発明者】
【氏名】クァク, ユン ナ
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ゴー ニ
(72)【発明者】
【氏名】パク, サン ユー
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ミョン ア
(72)【発明者】
【氏名】ミン, ジュ シク
(72)【発明者】
【氏名】イ, ハ ヨン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AD411
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE22
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA03
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA23
4C084BA24
4C084BA28
4C084BA32
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA921
4C084ZA922
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC211
4C084ZC212
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA31
4H045BA35
4H045EA15
4H045EA20
4H045EA27
4H045EA28
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、新規ペプチド誘導体などに関し、前記ペプチド誘導体は、アディポネクチン受容体ペプチドを一部変形したものとして、既存のアディポネクチン受容体ペプチドよりもさらに高い安定性及び優れたp-AMPK活性を有し、物性及び活性が改善されて薬物の剤形化に有利であるという長所がある。従って、本発明のペプチド誘導体は、皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、又は、癌の予防又は治療、老化、敏感肌、シワ、又は、保湿の予防又は改善のために活用されることができる。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の[化学式1]に表示される、ペプチド誘導体。
[化学式1]
【化1】
前記[化学式1]において、
R
1はアミノ基(NH
2)、アセチルアミノ基(Ac-NH)、NH
2-(CH
2CH
2O)
m-CH
2CONH、C
15-C
20のアミド基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり(ここで、mは1~5の整数である)、
R
2は、アミノ基又はヒドロキシ基(OH)であり、
R
3は、水素(H)であり、
R
4は、C
1-C
6の鎖型アルキル基、C
2-C
6のアルキルカルボキシル基、C
1-C
6のアルキルアミド基、イミダゾリルメチル基(imidazoylmethyl)、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、
R
5及びR
6は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にベンジル基、フェニルエチル基、又はインドールメチル基(indolylmethyl)であり、前記ベンジル基は、非置換であるかヒドロキシ基、トリフルオロメチル基(CF
3)、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C
1-C
6の鎖型アルキル基、C
1-C
6のアルコキシ基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、
R
7は、ベンジル基又はC
1-C
6のアルキルアミノ基であり、前記ベンジル基は、非置換であるかヒドロキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C
1-C
6の鎖型アルキル基、C
1-C
6のアルコキシ基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であるか、
R
3及びR
7は、互いに連結されてC
15-C
20のヘテロシクロアルケン基を形成し、
R
8、R
9、及びR
10は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素又はC
1-C
6のアルキル基であり、
nは、0又は1であり、
nが0である場合、R
4はC
2-C
6のアルキルカルボキシル基であり、R
5、R
6、及びR
7はベンジル基であり、
但し、R
1はNH
2であり、R
2はOHであり、R
3は水素であり、R
4はイソブチル基であり、R
5及びR
6は全てヒドロキシベンジル基であり、R
7は非置換されたベンジル基であり、R
8、R
9、及びR
10は全て水素であり、nは1である場合は除く。
【請求項2】
前記R
4は、
【化2】
、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項3】
前記R
5及びR
6は互い同一であるか異なり、それぞれ独立的に、
【化3】
、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項4】
前記C
15-C
20のヘテロシクロアルケン基は、
【化4】
、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項5】
前記ペプチド誘導体は、下記の[化学式1-1]~[化学式1-56]に表示されるペプチド誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド誘導体。
【化5】
【請求項6】
前記ペプチド誘導体は、配列番号1ないし配列番号16からなる群より選択されるいずれか1つ以上のペプチド配列を変形したことを特徴とする、請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体を有効性分として含むアディポネクチン(adiponectin)の発現増加用組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用化粧料組成物。
【請求項10】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用化粧料組成物。
【請求項12】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体を個体に投与するステップを含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は治療方法。
【請求項13】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体を個体に投与するステップを含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アディポネクチン由来ペプチド誘導体及びその用途などに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚老化は、一般に皮膚のシワ、たるみの増加に関する外的及び内的な過程によるもので、外的老化は、反復する紫外線(ultraviolet rays、UV)露出により主に発生するため、一般に「光老化」という。自然的に老化した皮膚は滑らかで青白く小ジワがあるが、光老化された皮膚は、太い肌のシワができ、色素沈着及び毛細血管の拡張症を引き起こす。
【0003】
皮下脂肪は、他の組織の代謝を調節するホルモンとアディポカイン(adipokine)を分泌してエネルギー恒常性を保持するために重要な役割を担当している。最近、光老化と炎症、免疫抑制、癌などの様々な疾患を誘発する環境因子である紫外線により、ヒトの皮下脂肪組織の脂肪含有量が減少し、脂肪由来の産物であるアディポネクチンが老化した皮膚で減少しており、MMP-1の増加とコラーゲンの減少が誘導されていることが知られている。
【0004】
【0005】
人体の毛髪は約130万個以上、頭髪は10万~15万個であり、それぞれの毛髪は互いに異なる周期をもって成長期(anagen、the active growth phase)、退行期(catagen、the apoptotic regression phase)、休止期(telogen、the resting phase)といった3段階の周期を経て成長、維持、及び脱落する。このような周期は3~6年にわたって反復するが、その結果、正常に1日平均50~100個の毛髪が脱落することになる。一般に「脱毛」とは、髪の毛や毛がいずれかの原因によって正常よりも少ないか、ない状態を意味する。
【0006】
今日、脱毛の原因として、男性ホルモンの作用のような内的要因又は日常生活における精神的なストレス、頭皮における過酸化脂質の蓄積のような外的要因があり、かかる要因が複雑に関与して脱毛症状が現れるものと知られている。最近では、男性型脱毛だけでなく食生活の変化、社会環境などによるストレスの増加により女性の脱毛人口も増加している傾向であり、上記のような頭皮及び毛髪の異常症状で悩んでいる人口が次第に増えており、その年齢も低くなっている。
【0007】
現在の市販中である発毛剤は明確な効果の不在及び副作用の問題があり、持続的に服用しなければならず、性機能の減少やアレルギー、うつ病など副作用を誘発するという問題がある。
【0008】
【0009】
代謝性疾患(metabolic disease)は、体内の過剰な栄養蓄積及び運動不足による肥満、糖尿、高血圧、及び動脈硬化、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease、NAFLD)などのような危険因子が共に現れる症候群をいい、最近では、世界保健機構と米国国立保健研究院の心、肺、血液研究所が制定した成人治療プログラムIIIを介して、メタボリックシンドローム又はインスリン抵抗性症候群と公式に命名された。また、2001年に公表された米国NCEP(National Cholesterol Education Program)のATPによれば、胴回りが男40インチ(102cm)、女35インチ(88cm)以上の腹部肥満、中性脂肪(triglycerides)150mg/dL以上、HDLコレステロールが男40mg/dL、女50mg/dL以下、血圧130/85mmHg以上、空腹血糖(fasting glucose)が110mg/dL以上などの5種類の危険因子のうち患者が3つ以上を有する場合、これを代謝性疾患として判定し、東洋人の場合は、胴回りが男90、女80以上であるとき腹部肥満として多少調整されており、このような規定を適用する場合に、韓国人は全人口の25%程度がメタボリックシンドロームの症状を示すという最近の研究報告もある。
【0010】
【0011】
一方、アディポネクチン(adiponectin)は、脂肪細胞で特異的に分泌されるタンパク質ホルモンであるアディポカインの一種として、インスリンの機能を増進させてインスリン抵抗性を抑制することで炎症を遮断し、血管に脂肪が蓄積されることを防ぎ、高血糖、高インスリン症、肥満、動脈硬化のような心血管疾患を調節するために重要な役割を果たすものと知られている。また、アディポネクチンは、癌細胞の転移と炎症反応を抑制する機能があり、角質細胞の増殖だけでなく皮膚でフィラグリン(Filaggrin)、ヒアルロン酸(Hyaluronic Acid)と細胞外の基質の発現を促進することで、傷の治療、線維化抑制、皮膚シワの改善、保湿などの機能を行うことができる。
【0012】
アディポネクチンは244個のアミノ酸から構成されており、信号配列(signal sequence)、N-末端(N-terminal)に位置するコラーゲン-類似ドメインとC-末端に位置するC1q-類似球状ドメイン(globular domain)から形成されている。6量体(hexamer)と400kDaの高分子複合体(HMW complex)が主要なオリゴマー(oligomer)として、前記高分子複合体は、低分子複合体(LMW complex)よりも活性が高いものと知られている。
【0013】
従来、様々な生理活性を有するものと知られているアディポネクチンを変形したペプチドの開発は、国内外の多くの研究者と製薬会社のターゲットとなってきたが、体内のポリマー形成の困難で最終的に成功する可能性は相対的に低かった。
【0014】
【0015】
このような背景下で、本発明者は、難用性により剤形化の難しい既存のアディポネクチン由来ペプチドの物性及び活性を改善して皮膚に塗布可能な短いペプチド誘導体を開発し、そのアディポネクチンの発現増加、発毛促進、中性脂肪の抑制効果などを確認することによって本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、新規ペプチド誘導体を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含むアディポネクチンの発現増加用組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、又は、癌予防又は治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、又は、癌予防又は改善用化粧料組成物を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、又は、保湿予防又は改善用薬学的組成物を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、又は、保湿予防又は改善用化粧料組成物を提供することにある。
【0022】
しかし、本発明が達成しようとする技術的な課題は以上で言及した課題に制限されず、言及されない更なる課題は下記の記載によって当技術分野の当業者にとって明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記課題を解決するために、本発明は下記の[化学式1]に表示されるペプチド誘導体を提供する。
[化学式1]
【0024】
【0025】
前記[化学式1]において、
【0026】
R1はアミノ基(NH2)、アセチルアミノ基(Ac-NH)、NH2-(CH2CH2O)m-CH2CONH、C15-C20のアミド基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、ここで、mは1~5の整数であり、好ましくは3であってもよく、前記アミド基は、好ましくはC16のアミド基、即ち、パルミタミド(palmitamide)基であってもよく、
【0027】
R2は、アミノ基又はヒドロキシ基(OH)であり、
【0028】
R3は、水素(H)であり、
【0029】
R4は、C1-C6の鎖型アルキル基、C2-C6のアルキルカルボキシル基、C1-C6のアルキルアミド基、イミダゾリルメチル基(imidazoylmethyl)、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、
【0030】
R5及びR6は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にベンジル基、フェニルエチル基、又はインドールメチル基(indolylmethyl)であり、前記ベンジル基は、非置換であるか、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基(CF3)、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C1-C6の鎖型アルキル基、C1-C6のアルコキシ基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、
【0031】
R7は、ベンジル基又はC1-C6のアルキルアミノ基であり、前記ベンジル基は、非置換であるか、ヒドロキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C1-C6の鎖型アルキル基、C1-C6のアルコキシ基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であるか、
【0032】
R3及びR7は、互いに連結されてC15-C20のヘテロシクロアルケン基を形成し、
【0033】
R8、R9、及びR10は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素又はC1-C6のアルキル基であり、
【0034】
nは、0又は1であり、
【0035】
nが0である場合、R4はC2-C6のアルキルカルボキシル基であり、R5、R6、及びR7はベンジル基であり、
【0036】
但し、R1はNH2であり、R2はOHであり、R3は水素であり、R4はイソブチル基であり、R5及びR6は全てヒドロキシベンジル基であり、R7は非置換されたベンジル基であり、R8、R9、及びR10は全て水素であり、nは1である場合は除く。即ち、APN5ペプチドとして知られているNH2-GLYYF-OHは除く。
【0037】
本発明の一具現例として、前記R4は、
【0038】
【化2】
及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であるが、これに制限されることはない。
【0039】
本発明の他の具現例として、前記R5及びR6は互い同一であるか異なり、それぞれ独立的に、
【0040】
【0041】
【化4】
、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であるが、これに制限されることはない。
【0042】
本発明の他の具現例として、前記C15-C20のヘテロシクロアルケン基は、
【0043】
【0044】
【化6】
及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であるが、これに制限されることはない。
【0045】
本発明の他の具現例として、前記ペプチド誘導体は、下記の[化学式1-1]~[化学式1-56]に表示されるペプチド誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上であるが、これに制限されることはない(表1)。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
本発明の他の実現例として、前記ペプチド誘導体は、配列番号1ないし配列番号16からなる群より選択されるいずれか1つ以上のペプチド配列を変形したものであるが、これに制限されることはない(表2)。
【0060】
【0061】
【0062】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含むアディポネクチン(adiponectin)の発現増加用組成物を提供する。
【0063】
【0064】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0065】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を個体に投与するステップを含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は治療方法を提供する。
【0066】
また、本発明は、皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は治療用薬剤の製造のための前記ペプチド誘導体の用途を提供する。
【0067】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用化粧料組成物を提供する。
【0068】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0069】
【0070】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用薬学的組成物を提供する。
【0071】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を個体に投与するステップを含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善方法を提供する。
【0072】
また、本発明は、老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用薬剤の製造のための前記ペプチド誘導体の用途を提供する。
【0073】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用化粧料組成物を提供する。
【0074】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0075】
本発明の一実施形態に係るペプチド誘導体は、アディポネクチン受容体ペプチドを一部変形したもので、既存のアディポネクチン受容体ペプチドよりもさらに高い安定性及び優れたp-AMPK活性を有し、物性及び活性が改善されて薬物の剤形化に有利であるという長所がある。
【0076】
従って、本発明のペプチド誘導体は、皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、又は、癌の予防又は治療、老化、敏感肌、シワ、又は、保湿の予防又は改善のために活用されることができる。
【0077】
本発明の一実施形態に係るペプチド誘導体の効果は、以上で言及されたものなどに限定されず、言及されない他の効果は下記の記載によって当業者にとって明確に理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】
図1は、[化学式1-1]~[化学式1-10]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-1ないしDS-10)がマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0079】
【
図2】
図2は、[化学式1-11]及び[化学式1-12]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-11、DS-12)がマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0080】
【
図3】
図3は、[化学式1-13]~[化学式1-16]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-17ないしDS-20)がマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0081】
【
図4】
図4は、[化学式1-17]~[化学式1-20]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-27ないしDS-30)がマウス脂肪細胞でリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0082】
【
図5】
図5は、[化学式1-21]~[化学式1-24]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-35ないしDS-38)がマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0083】
【
図6】
図6は、[化学式1-25]~[化学式1-30]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-39ないしDS-42、DS-44、DS-45)がマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0084】
【
図7】
図7は、[化学式1-31]~[化学式1-39]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-48ないしDS-56)がマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0085】
【
図8】
図8は、[化学式1-40]~[化学式1-46]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-57ないしDS-63)がマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0086】
【
図9】
図9は、[化学式1-47]~[化学式1-52]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-68、DS-70、DS-72ないしDS-75)がこのマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0087】
【
図10】
図10は、[化学式1-53]~[化学式1-56]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-76ないしDS-79)がマウス脂肪細胞でAMPKリン酸化活性に及ぼす影響をグラフに示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。
【0088】
【
図11】
図11は、[化学式1-4]、[化学式1-5]、[化学式1-6]、[化学式1-8]、[化学式1-9]、[化学式1-18]、及び[化学式1-35]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-4、DS-5、DS-6、DS-8、DS-28、DS-43、DS-52)によって増加したAMPKリン酸化活性がアディポネクチン受容体1(adiponectin receptor1)ノックダウン時に減少するか否かを示したものである。ここで、NCはscrambled siRNAであり、R1はアディポネクチン受容体1 siRNAである。Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。DS-43は、アディポネクチン受容体1の作用剤であるアディポロン(adiporon)である。
【0089】
【
図12】
図12は、[化学式1-2]、[化学式1-7]、[化学式1-13]、[化学式1-14]、[化学式1-17]、[化学式1-19]、[化学式1-31]、及び[化学式1-34]に表示される本発明のペプチド誘導体(DS-2、DS-7、DS-17、DS-18、DS-27、DS-29、DS-48、DS-51)によって増加したAMPKリン酸化活性がアディポネクチン受容体1(adiponectin receptor 1)ノックダウン時に減少するか否かを示したものである。ここで、NCはscrambled siRNAであり、R1はアディポネクチン受容体1 siRNAである。Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。DS-43は、アディポネクチン受容体1の作用剤であるアディポロン(adiporon)である。
【0090】
【
図13】
図13は、4種類の細胞株(3T3-L1 adipocytes、RD muscle cells、keratinocytes、fibroblasts)に対する[化学式1-6]に表示される本発明のペプチド誘導体の細胞毒性を確認したものである。ここで、Vehはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものである。
【0091】
【
図14】
図14は、4種類の細胞株(3T3-L1 adipocytes、RD muscle cells、keratinocytes、fibroblasts)に対する[化学式1-8]に表示される本発明のペプチド誘導体の細胞毒性を確認したものである。ここで、Vehはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものである。
【0092】
【
図15】
図15は、4種類の細胞株(3T3-L1 adipocytes、RD muscle cells、keratinocytes、fibroblasts)に対する[化学式1-18]に表示される本発明のペプチド誘導体の細胞毒性を確認したものである。ここで、Vehはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものである。
【0093】
【
図16】
図16は、4種類の細胞株(3T3-L1 adipocytes、RD muscle cells、keratinocytes、fibroblasts)に対する[化学式1-31]に表示される本発明のペプチド誘導体の細胞毒性を確認したものである。ここで、Vehはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものである。
【0094】
【
図17】
図17は、[化学式1-6]、[化学式1-18]、及び[化学式1-31]に表示される本発明のペプチド誘導体が濃度依存的にAMPKリン酸化活性を増加させるか否かを示したものである。
【0095】
【
図18】
図18は、[化学式1-8]、[化学式1-18]、及び[化学式1-31]に表示される本発明のペプチド誘導体の発毛効能を示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてEtOH:polyethylene glycol=30:70、v/vであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有し、Mnxは陽性対照群として発毛剤で知られたミノキシジルである。
【0096】
【
図19】
図19は、[化学式1-8]、[化学式1-18]、[化学式1-31]に表示される本発明のペプチド誘導体の皮膚老化改善効能を示したものである。ここで、Vehはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドである。
【0097】
【
図20A】
図20Aは、[化学式1-8]、[化学式1-5]、[化学式1-6]、[化学式1-18]、[化学式1-2]、[化学式1-7]、[化学式1-31]、及び[化学式1-50]に表示される本発明のペプチド誘導体の中性脂肪除去効能を示したものである。
【
図20B】
図20Bは、[化学式1-6]、[化学式1-8]、[化学式1-18]、及び[化学式1-31]に表示される本発明のペプチド誘導体の分化及び中性脂肪抑制効能を示したものである。ここで、Vはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドであり、NH2-GLYYF-OH配列を有する。NDは未分化培地(non-differentiation medium)で培養したものであり、Dは分化培地(differentiation medium)で培養したものである。
【0098】
【
図21】
図21は、[化学式1-8]、[化学式1-18]、[化学式1-31]に表示される本発明のペプチド誘導体の敏感肌改善効能を示したものである。ここで、Vehはビークル(vehicle)としてDMSOを処理したものであり、LAは乳酸(lactic acid)であり、P5は陽性対照群としてAPN5ペプチドである。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明は、アディポネクチン由来ペプチドAPN5を母体にした新規ペプチド誘導体の合成に関し、より詳しくは、既存のアディポネクチンペプチドの物性と活性を改善するために一部のアミノ酸を変形したペプチドに関する。本発明におけるペプチド誘導体は、物性及び活性などの効能が改善されて薬物の剤形化に有利である。
【0100】
【0101】
ここで、本発明は、下記の[化学式1]に表示されるペプチド誘導体を提供する。
[化学式1]
【0102】
【0103】
前記[化学式1]において、
【0104】
R1はアミノ基(NH2)、アセチルアミノ基(Ac-NH)、NH2-(CH2CH2O)m-CH2CONH、C15-C20のアミド基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、ここで、mは1~5の整数であり、
【0105】
R2は、アミノ基又はヒドロキシ基(OH)であり、
【0106】
R3は、水素(H)であり、
【0107】
R4は、C1-C6の鎖型アルキル基、C2-C6のアルキルカルボキシル基、C1-C6のアルキルアミド基、イミダゾリルメチル基(imidazoylmethyl)、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、
【0108】
R5及びR6は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にベンジル基、フェニルエチル基、又はインドールメチル基(indolylmethyl)であり、前記ベンジル基は、非置換であるか、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基(CF3)、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C1-C6の鎖型アルキル基、C1-C6のアルコキシ基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、
【0109】
R7は、ベンジル基又はC1-C6のアルキルアミノ基であり、前記ベンジル基は、非置換であるか、ヒドロキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C1-C6の鎖型アルキル基、C1-C6のアルコキシ基、及びその組み合わせからなる群より選択されるいずれか1つ以上であるか、
【0110】
R3及びR7は、互いに連結されてC15-C20のヘテロシクロアルケン基を形成し、
【0111】
R8、R9、及びR10は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素又はC1-C6のアルキル基であり、
【0112】
nは、0又は1であってもよい。
【0113】
【0114】
本発明において、用語「置換」とは、化合物の分子のうちに含まれている原子又は原子団を他の原子又は原子団に切り替える反応である。
【0115】
本発明において、用語「鎖型」とは、鎖型構造のある分子を称し、鎖型構造は、炭素原子が鎖状につながっている化学構造であって、まっすぐな鎖状のものと分枝した形状のものがある。
【0116】
本発明において、用語「リング型」とは、有機化合物の骨格で連鎖した両端がつながって環状になっている構造をいう。
【0117】
本発明において、用語「鎖型又はリング型アルキル基」とは、1~12個の炭素原子を有する、ひたすら炭素と水素原子だけで構成される1価線型又は分枝型又はリング型の飽和された炭化水素残基を意味する。このようなアルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2-ブチル、3-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを含むが、これに限定されない。
【0118】
本発明において、用語「ハロゲン基」とは、周期律の表の17族に属する元素として、フローリン(F)、クロライド(Cl)、ブロミン(Br)、又は、アイオダイン(I)などであってもよい。
【0119】
本発明において、用語「アルコキシ基」とは、アルキル基に酸素源者が結合して構成された原子団CnH2n+1O-を意味し、このようなアルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、又はブトキシなどを含むが、これに制限されることはない。
【0120】
本発明において、用語「シクロアルケン基」とは、リング型アルケン基とも言い、全てのリング構成が炭素であり、1つ以上の二重結合を有する(しかし、芳香族ではない)リング基を指す。用語「ヘテロシクロアルケン基」とは、それぞれ少なくとも1つ以上のN、O、又は、Sのヘテロ原子を含むシクロアルケン基を指す。前記シクロアルケン基又はヘテロシクロアルケン基はそれぞれ1つ以上のリング構造を含み、例えば、単一リング、二重リング、三重リングなどであってもよい。
【0121】
【0122】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0123】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用薬学的組成物を提供する。
【0124】
本発明において、用語「予防」とは、発明の組成物の投与で前記疾患の発生、拡散又は再発を抑制させたり遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明の組成物の投与で前記疾患の症状がよくなったり良く変更される全ての行為を意味する。
【0125】
本発明において、用語「改善」とは、治療される状態に関するパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも減少させたり、疾患が好転されたり良く変更される全ての行為を意味する。
【0126】
本発明において、用語「薬学的組成物」とは、前記疾患の予防又は治療を目的に製造されたものを意味し、それぞれ通常の方法により様々な形態に剤形化して使用されてもよい。例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルション、シロップなどの経口型の剤形で剤形化することができ、外用剤、坐薬、及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用することができる。
【0127】
本発明において、「有効性分として含む」とは、所望する生物学的な効果を実現するために必要であったり、又は十分な量で該当成分が含まれることを意味する。実際の適用において、有効成分として含まれる量の決定は対象病気を治療するための量として、他の毒性を引き起こさない事項を考慮して決定され、例えば、治療される病気又は病態、投与される組成物の形態、被験体の大きさ、又は、病気又は病態の深刻度などのような様々な因子に応じて変化し得る。本発明が属する分野で通常の技術を有する技術者であれば、過剰な試験を伴わないで個別的な組成物の有効量を経験的に決定することができる。
【0128】
また、本発明の薬学的組成物は、それぞれの剤形に応じて前記記載した有効性分以外に追加的に薬学的に許容可能な担体を1種以上含むことができる。
【0129】
前記薬学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びその成分のうちの1つ以上の混合物であってもよく、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤をさらに含んでもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒、又は錠剤に剤形化することもできる。さらに、当分野の適正な方法として、又はRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton PA)に開示されている方法を用いて各疾患に応じて又は成分に応じて、好ましく製剤化することもできる。
【0130】
本発明の組成物は、目的とする方法により薬学的に有効な量で経口投与したり非経口投与することができ、本発明の用語「薬学的に有効な量」とは、医学的な治療に適用可能な合理的な利得/危険の比率で疾患を治療するために充分であり、副作用を起こさないほどの量を意味し、有効容量レベルは、患者の健康状態、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路、及び排出比率、治療期間、配合又は同時に使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野で公知の要素により決定されてもよい。
【0131】
本発明において、「皮膚炎症性疾患」とは、かゆみ、水泡、赤み、腫れをはじめとして多くの場合に、滲出、かさぶた、剥がれを誘発する皮膚の外層に発生する炎症をいい、非制限的な例として、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触性皮膚炎、紅皮症、慢性単純性苔癬、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、うっ滞性皮膚炎などがあるが、これに限定されることはない。
【0132】
本発明において、「代謝性疾患」とは、体内の過剰栄養蓄積及び運動不足による肥満、糖尿、高血圧、及び動脈硬化、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease、NAFLD)などのような危険因子が共に現れる症候群をいい、非制限的な例として、糖尿病、高血圧、高脂血症、心脳血管疾患、血栓症、脂質異常症、中風、動脈硬化症、高インスリン血症などがあるが、これに限定されることはない。
【0133】
【0134】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を個体に投与するステップを含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は治療方法を提供する。
【0135】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を個体に投与するステップを含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善方法を提供する。
【0136】
本発明において、用語「個体」とは、前記疾患の予防、治療、及び/又は診断が必要な家畜、ヒトなどの哺乳類であれば制限されないが、好ましくは、ヒトであってもよい。
【0137】
本発明の用語「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明の薬学的組成物は、個体に投与するための様々な形態に剤形化され、非経口投与用の剤形の代表的なものは注射用剤形であって、等張性水溶液又は懸濁液が好ましい。注射用剤形は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて当業界で周知技術により製造することができる。例えば、各成分を食塩水又は緩衝液に溶解させて注射用に剤形化することができる。また、経口投与用の剤形として、例えば、摂取型錠剤、バッカル剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、及びウェハーなどがあるが、これらの剤形は、有効性分以外に希釈剤(例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン)と潤滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアル酸、及びそのマグネシウム又はカルシウム塩及び/又はポリエチレングリコール)を含んでもよい。前記錠剤は、マグネシウムアルミニウムシリケート、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリジンのような結合剤を含んでもよく、場合に応じて、デンプン、寒天、アルギン酸、又はそのナトリウム塩のような崩壊剤、吸収剤、着色剤、香味剤及び/又は甘味剤をさらに含んでもよい。前記剤形は、通常の混合に顆粒化又はコーティング方法によって製造されてもよい。
【0138】
また、本発明の薬学的組成物は、防腐剤、水和剤、乳化促進剤、浸透圧調節のための塩又は緩衝剤のような補助剤と、その他の治療的に有用な物質をさらに含んでもよく、通常の方法により製剤化されることができる。
【0139】
本発明に係る薬学的組成物は、経口、経皮、皮下、静脈、鼻腔内、腹腔内、又は、筋肉を含む様々な経路を介して投与され、活性成分の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重、及び患者の重症度などの様々な因子により適切に選択されてもよい。また、本発明の組成物は、目的とする効果を上昇させることができる周知の化合物とも並行して投与してもよい。
【0140】
【0141】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用化粧料組成物を提供する。
【0142】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用化粧料組成物を提供する。
【0143】
前記化粧料組成物は、例えば、前記ペプチド誘導体又はその化粧品学的に許容可能な塩を有効性分として含み、皮膚学的に許容可能な賦形剤と共に基礎化粧品組成物(化粧水、クリーム、エッセンス、クレンジングフォーム及びクレンジングウォーターのような洗顔剤、パック、ボディオイル)、色化粧品組成物(ファンデーション、リップスティック、マスカラ、メイクアップベース)、頭髪製品組成物(シャンプー、リンス、ヘアーコンディショナー、ヘアジェル)及び石鹸などの形態に製造されることができる。
【0144】
前記賦形剤として、例えば、皮膚軟化剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、濃化剤及び溶媒を含んでもよく、より詳しくは、デンプン、グルコース、ラクトス、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ナトリウムステアレート、グリセロールモノステアレート、滑石、塩化ナトリウム、無水脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられるが、これに限定されることはない。
【0145】
【0146】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、及び癌からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0147】
また、本発明は、前記ペプチド誘導体を有効性分として含む老化、敏感肌、シワ、及び保湿からなる群より選択されるいずれか1つ以上の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0148】
前記食品組成物は、例えば、前記ペプチド誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含み、前記ペプチド誘導体を食品組成物の添加物として使用する場合、これをそのまま添加したり他の食品又は食品成分と共に使用でき、通常の方法により適切に使用することができる。一般に、食品又は飲み物の製造時に本発明の組成物は、原料に対して15重量%以下、好ましくは10重量%以下の量に添加される。しかし、健康及び衛生を目的としたり、又は健康調節を目的とする長期間摂取の場合は前記範囲以下であってもよく、安全性の面でいずれの問題もないことから、有効成分は前記範囲以上の量に使用してもよい。即ち、有効成分の混合量は、予防、健康又は治療などの各使用目的に応じて適するように決定することができる。
【0149】
前記食品組成物の剤形は、散薬、顆粒剤、環、錠剤、カプセル剤の形態だけでなく、一般食品又は飲み物の形態のいずれのものも可能である。
【0150】
本発明の食品は、当技術分野において通常に使用される方法により製造可能であり、前記製造時には当技術分野において通常に添加する原料及び成分を添加して製造してもよい。具体的に、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤、及び香味剤を含んでもよく、前記炭水化物の例として、ブドウ糖、果糖、マルトス、スクロース、オリゴ糖、デキストリン、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、サッカリン、又は合成香味剤があるが、これに限定されることはない。
【0151】
【0152】
実施形態において使用した用語は、説明を目的にして使用したものであって、限定する意図として解釈されることはない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有しない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は、明細書上に記載した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれを組み合わせたものが存在することを示すものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品、又はこれを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0153】
異なるように定義さがれない限り、技術的又は科学的な用語を含み、ここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈されなければならず、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0154】
また、実施形態の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を用いてもよい。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのもので、その用語によって当該構成要素の本質や順番又は順序などが限定されることはない。いずれかの構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」又は「接続」されと記載されている場合、その構成要素はその異なる構成要素に直接的に連結されたり接続され得るが、各構成要素の間に更なる構成要素が「連結」、「結合」又は「接続」され得ることを理解しなければならない。
【0155】
【0156】
以下、添付の図面を参照して実施形態を詳細に説明売る。しかし、実施形態は、様々な変更が加えられ得るため、特許出願の権利範囲がこの実施形態によって制限されたり、限定されることはない。実施形態に対するすべての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものと理解されなければならない。
【0157】
また、添付図面を参照して説明の際に、図面符号に関係なく同じ構成要素には同じ参照符号を付与し、それに対する重複する説明は省略することにする。実施形態形態の説明において、関連する公知技術に対する具体的な説明が実施形態の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0158】
【0159】
本発明は様々な変換を加えることができ、様々な実施形態を有し得るところ、以下の特定実施形態を図面に例示し、詳細な説明に詳説しようとする。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変換、均等物ないし代替物を含むものと理解されなければならない。本発明の説明において、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にするものと判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0160】
[発明を実施するための形態]
実施形態1.本発明のペプチド誘導体の製造
【0161】
本発明のペプチド誘導体は、通常のアミノ酸合成法(Umbarger.H.E.、Ann.Rev.Biochem.1978、47、533-606)を用いて製造した。
【0162】
C-末端の開始は、Wang resin(100-200mesh、Novabiochem(登録商標)、CAS No:65307-53-1)を用いて一般的なC-末端がCOOHカルボキシ基の末端からなるペプチド製造と、Rink amide AM resin(100-200mesh、Novabiochem(登録商標)、CAS No:65307-53-1)を用いてC-末端がCONH2アミド末端からなるペプチドで製造される。
【0163】
【0164】
実施形態1.1.N-末端がアミノ基であり、C-末端がカルボキシ基である場合
【0165】
C-末端のカルボキシ基の末端からなるペプチド製造のために、Torviq社の反応容器ポリプロピレンシリンジ(polypropylene syringe)を用いて乾燥されたWang resin(100mg、0.5-1.3mmol/g)をジクロロメタン(DCM)溶媒下で60分間撹拌した後、溶媒を除去して最初の段階の反応を開始した。最初段階の反応は、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole、HOBt)、ジイソプロピルカルボジイミド(N、N’-Diisopropylcarbodiimide、DIC)、4-ジメチルアミノピリジン(4-Dimethylaminopiridine、DMAP)と最初のアミノ酸残基であるFmoc-Phe-OHをジクロロメタン(DCM)、そして、ジメチルホルムアミド(DMF)3:2比率の溶媒下で2時間の間に撹拌した後、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して樹脂を洗浄した。2番目の段階のペプチドモノマー合成は、Fmoc保護基の除去反応のために、20%(v/v)ピペリジン(Piperidine)を添加したジメチルホルムアミド(DMF)1mLを用いて常温で10分ずつ2回反応させた後、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して樹脂を洗浄した後、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole、HOBt)、N-[(ジメチルアミノ-)-1H-1、2、3-トリアゾロ[4、5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(N、N-diisopropylethylamine、DIEA)とFmoc-Tyr(OtBu)-OHをジメチルホルムアミド(DMF)の溶媒下で2時間の間に反応撹拌完了した。反応済みの樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。次の段階のペプチドモノマー合成も2番目のモノマー合成段階と同様の過程を経て合成を行った。段階ごとのモノマー合成が完了したペプチドは、最終的に樹脂の最後のペプチドのFmoc保護基の除去反応で、20%(v/v)ピペリジン(Piperidine)を添加したジメチルホルムアミド(DMF)1mLを用いて常温で10分ずつ2回反応させた後、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。ペプチドをアセトニトリル(Acetonitrile)と水の勾配溶媒組成で高性能液体クロマトグラフィー(Prep-HPLC、Gilson)を用いて精製した。純度確認及び分析のために、RP-HPLC及びLC-MSを用いて純度98%以上のペプチドを収得した。
【0166】
【0167】
実施形態1.2.N-末端がアミノ基であり、C-末端がアミド基である場合
【0168】
C-末端のアミド基の末端からなるペプチド製造のために、Torviq社の反応容器ポリプロピレンシリンジ(polypropylene syringe)を用いて乾燥されたRink amide AM resin(100mg、0.9mmol/g)をジメチルホルムアミド(DMF)の溶媒下で60分間撹拌した後、溶媒を除去して最初の段階の反応を開始した。樹脂でFmoc保護基の除去反応のために、Fmoc-Rink amid MBHA resinを20%(v/v)ピペリジン(Piperidine)を添加したジメチルホルムアミド(DMF)1mLを用いて常温で10分ずつ2回反応させた後、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して樹脂を洗浄した後、最初のアミノ酸残基を導入するためにヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole、HOBt)、N-[(ジメチルアミノ-)-1H-1、2、3-トリアゾロ[4、5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(N、N-diisopropylethylamine、DIEA)とFmoc-Phe-OHをジメチルホルムアミド(DMF)の溶媒下で2時間の間に反応撹拌完了した。反応済みの樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。2番目の段階のペプチドモノマー合成は、Fmoc保護基の除去反応のために、20%(v/v)ピペリジン(Piperidine)を添加したジメチルホルムアミド(DMF)1mLを用いて常温で10分ずつ2回反応させた後、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して樹脂を洗浄した後、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole、HOBt)、N-[(ジメチルアミノ-)-1H-1、2、3-トリアゾロ[4、5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(N、N-diisopropylethylamine、DIEA)とFmoc-Tyr(OtBu)-OHをジメチルホルムアミド(DMF)の溶媒下で2時間の間に反応撹拌完了した。反応済みの樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。次の段階のペプチドモノマー合成も前記のモノマー合成段階と同様の過程を経て合成を行った。最終的に樹脂の最後のペプチドのFmoc保護基除去反応で、20%(v/v)ピペリジン(Piperidine)を添加したジメチルホルムアミド(DMF)1mLを用いて常温で10分ずつ2回反応させた後、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。ペプチドをアセトニトリル(Acetonitrile)と水の勾配溶媒組成で高性能液体クロマトグラフィー(Prep-HPLC、Gilson)を用いて精製した。純度確認及び分析のために、RP-HPLC及びLC-MSを用いて純度98%以上のペプチドを収得した。
【0169】
【0170】
実施形態1.3.N-末端のアセチル保護化
【0171】
実施形態1.1.又は1.2で合成したN-末端の非保護されたペプチドに無水酢酸(Acetic anhydride)と、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(N、N-diisopropylethylamine、DIEA)をジメチルホルムアミド(DMF)の溶媒下で2時間の間に反応撹拌完了した。反応済みの樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返してN-末端がアセチル基で保護されたペプチドを合成した。ペプチドをアセトニトリル(Acetonitrile)と水の勾配溶媒組成で高性能液体クロマトグラフィー(Prep-HPLC、Gilson)を用いて精製した。純度確認及び分析のために、RP-HPLC及びLC-MSを用いて純度98%以上のペプチドを収得した。
【0172】
【0173】
実施形態1.4.N-末端のPAL保護化
【0174】
実施形態1.1.又は1.2で合成したN-末端の非保護されたペプチドにPAL(Palmitic acid)で保護されたペプチド合成のために、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole、HOBt)、N-[(ジメチルアミノ-)-1H-1、2、3-トリアゾロ[4、5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(N、N-diisopropylethylamine、DIEA)とPEG(2-(2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)ethoxy)acetic acid)又はPAL(Palmitic acid)をジメチルホルムアミド(DMF)の溶媒下で2時間の間に反応撹拌完了した。反応済みの樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。
【0175】
前記の方法により取得した粗(crude)ペプチドは、分離溶液であるトリフルオロ酢酸(TFA):H2O:トリイソプロピルシラン(TIPS)(95:2.5:2.5vol./vol.)の溶液を加え、2~3時間の間に反応させて保護基の除去及び樹脂からペプチドを分離させた後、冷却ジエチルエーテル(Diethylether)でペプチドを沈殿させて取得した。ペプチドをアセトニトリル(Acetonitrile)と水の勾配溶媒組成で高性能液体クロマトグラフィー(Prep-HPLC、Gilson)を用いて精製した。純度確認及び分析のために、RP-HPLC及びLC-MSを用いて純度98%以上のペプチドを収得した。
【0176】
【0177】
実施形態1.5.N-末端のPEG保護化
【0178】
実施形態1.1.又は1.2で合成したN-末端の非保護されたペプチドに(PEG)3(2-(2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)ethoxy)acetic acid)で保護されたペプチド合成のために、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole、HOBt)、N-[(ジメチルアミノ-)-1H-1、2、3-トリアゾロ[4、5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(N、N-diisopropylethylamine、DIEA)とPEG(2-(2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)ethoxy)acetic acid)又はPAL(Palmitic acid)をジメチルホルムアミド(DMF)の溶媒下で2時間の間に反応撹拌完了した。反応済みの樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。
【0179】
前記の方法により取得した粗(crude)ペプチドは、分離溶液であるトリフルオロ酢酸(TFA):H2O:トリイソプロピルシラン(TIPS)(95:2.5:2.5vol./vol.)の溶液を加え、2~3時間の間に反応させて保護基の除去及び樹脂からペプチドを分離させた後、冷却ジエチルエーテル(Diethylether)でペプチドを沈殿させて取得した。ペプチドをアセトニトリル(Acetonitrile)と水の勾配溶媒組成で高性能液体クロマトグラフィー(Prep-HPLC、Gilson)を用いて精製した。純度確認及び分析のために、RP-HPLC及びLC-MSを用いて純度98%以上のペプチドを収得した。
【0180】
【0181】
実施形態1.6.リング型ペプチドの合成
【0182】
実施形態1.2の方法で、C-末端のアミド基の末端からなるペプチド製造法でペプチドを合成する。最初と最後のアミノ酸は、Fmoc-Allyl-Gly-OHを用いて上記の実施形態1.2の合成法と同様の方法で線型ペプチド合成を行った後、N-末端がFmocで保護された樹脂をジクロロメタン(DCM)溶媒下でジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させたLiCl(0.4M)と、グラブス触媒(Grubbs’ catalyst)を添加してマイクロ波(2.5GHz、300W)を用いて100℃で1~2時間の間に反応した。反応済みの樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。最終的に、樹脂の最後のペプチドのFmoc保護基除去反応で、20%(v/v)ピペリジン(Piperidine)を添加したジメチルホルムアミド(DMF)1mLを用いて常温で10分ずつ2回反応させた後、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアルコール(MeOH)、ジクロロメタン(DCM)、そして、最後のジメチルホルムアミド(DMF)を用いて前記洗浄過程をそれぞれ2回ずつ繰り返して完了した。前記の方法により取得した粗(crude)ペプチドは、分離溶液であるトリフルオロ酢酸(TFA):H2O:トリイソプロピルシラン(TIPS)(95:2.5:2.5vol./vol.)の溶液を加え、2~3時間の間に反応させて保護基の除去及び樹脂からペプチドを分離させた後、冷却ジエチルエーテル(Diethylether)でペプチドを沈殿させて取得した。ペプチドをアセトニトリル(Acetonitrile)と水の勾配溶媒組成で高性能液体クロマトグラフィー(Prep-HPLC、Gilson)を用いて精製した。純度確認及び分析のために、RP-HPLC及びLC-MSを用いて純度98%以上のペプチドを収得した(J.Pept.Sci.2007;13:280-285)。
【0183】
【0184】
本発明の一実施形態に係るペプチド誘導体の配列及び分子量は、下記の表3のとおりである。
【0185】
[表3]
【0186】
【0187】
前記の表3で、本発明の ペプチド誘導体を構成している各アミノ酸は、次のような構造を有することができる。
【0188】
【0189】
【0190】
試験例1.生体外(in vitro)AMPKリン酸化活性の検証
【0191】
本発明のペプチド誘導体が主なアディポネクチン生成箇所であるマウス脂肪細胞でアディポネクチンの発現と受容体の活性に及ぼす影響を確認した。マウス脂肪細胞株である3T3-L1に本発明のペプチド誘導体をそれぞれ10μMの濃度で処理して24時間培養した後、細胞を取得した。その後、タンパク質を抽出してアディポネクチンの主な下位シグナリングを担当しているAMPKリン酸化に及ぼす影響をウエスタンブロット(western blot)で確認した。
【0192】
その結果、本発明のペプチド誘導体は、マウス脂肪細胞でアディポネクチン受容体の活性に関するAMPKリン酸化活性を増加させ(
図1~
図10)、特に、[化学式1-2]、[化学式1-4]~[化学式1-9]、[化学式1-13]、[化学式1-14]、[化学式1-17]~[化学式1-19]、[化学式1-31]、[化学式1-34]、及び[化学式1-35]に表示されるペプチド誘導体は、従来に知られているアディポネクチン由来ペプチドであるAPN5と比較しても著しいAMPKリン酸化活性増加の効果があることが確認された(表4)。
【0193】
【0194】
【0195】
試験例2.生体外(in vitro)アディポネクチン受容体1ノックダウン後のAMPKリン酸化活性消失の有無検証
【0196】
本発明のペプチド誘導体がアディポネクチン受容体1(adiponectin receptor1)と結合するか否かを検証するために、マウス脂肪細胞株である3T3-L1にアディポネクチン受容体1のsiRNAを処理してノックダウンし、本発明のペプチド誘導体をそれぞれ10μMの濃度で処理して24時間培養した後、細胞を取得した。その後、タンパク質を抽出して前記ペプチド誘導体によって増加したAMPKリン酸化活性が消失するか否かをウエスタンブロットで確認した。
【0197】
その結果、[化学式1-2]、[化学式1-5]~[化学式1-8]、[化学式1-13]、[化学式1-14]、[化学式1-17]~[化学式1-19]、[化学式1-31]、[化学式1-34]、及び[化学式1-35]をはじめとする本発明のペプチド誘導体は、アディポネクチン受容体1のノックダウン後のAMPKリン酸化活性が減少するという点を確認した(
図11及び
図12)。
【0198】
アディポネクチンは、アディポネクチン受容体に結合して作用し、アディポネクチン受容体が活性化すれば、下位信号伝達経路であるAMPKのリン酸化とPPARα/PPARγの活性度を増加させるものと知られている(Crystal structures of the human adiponectin receptors。Nature.2015 Apr16;5207547:312-6.doi:10.1038/nature14301)。また、アディポネクチン及びその受容体は、光老化された皮膚と紫外線の照射した皮膚でその発現が減少し、このようにアディポネクチンの発現が減少すれば、皮膚老化の調節因子であるMMP-1とプロコラーゲンの発現を調節して細胞外基質を変化させ、光老化を悪化させ得ることが知られている(UV-induced inhibition of adipokine production in subcutaneous fat aggravates dermal matrix degradation in human skin.2016.Scientific Reports.10;6:25616.doi:10.1038/srep25616)。
【0199】
したがって、本発明のペプチド誘導体は、アディポネクチン受容体の活性に関するAMPKリン酸化の活性を増加させるため、体内のアディポネクチンの発現を増加させて皮膚老化の防御に主な役割を果たすことを示唆している。
【0200】
【0201】
試験例3.生体外(in vitro)細胞毒性の検証
【0202】
4種の細胞株(3T3-L1 adipocytes、RD muscle cells、keratinocytes、fibroblasts)を用いて各細胞を24-well plateにwell当たり5×104個に分注した後、各細胞の培養条件で24時間培養した。培地を捨ててPBSで洗浄した後10%FBSを含まない新しい培地に取り替えて濃度ごとに(0、0.1、1、10、100、500μM)本発明のペプチド誘導体を処理して24時間培養した。再び培地を慎重に除去してPBSで洗浄した後、MTT試薬をメーカーの方法のとおりして入れ、室温で30分間反応した後450nmで吸光度を測定した。
【0203】
その結果、[化学式1-6]、[化学式1-8]、[化学式1-18]、及び[化学式1-31]をはじめとする本発明のペプチド誘導体は、複数の細胞株で毒性のないことが確認された(
図13~
図16)。
【0204】
【0205】
試験例4.生体外(in vitro)AMPKリン酸化活性の濃度依存性の検証
【0206】
マウス脂肪細胞株である3T3-L1に本発明のペプチド誘導体を一連の濃度ごとに(0、0.01、0.1、1、10、100μM)処理して24時間培養した後、細胞を取得した。その後、タンパク質を抽出して前記ペプチド誘導体が濃度依存的にAMPKリン酸化に及ぼす影響をウエスタンブロットで確認した。
【0207】
その結果、[化学式1-6]、[化学式1-18]、及び[化学式1-31]をはじめとする本発明のペプチド誘導体は、濃度依存的にAMPKリン酸化活性を増加させることが確認された(
図17)。
【0208】
【0209】
試験例5.溶解度試験
【0210】
PRISMA HT溶液を蒸留水に1:40の比率で希釈した後、pHを7.4に合わせて試験溶液(Test buffer)として使用した。また、一般的な溶解度の試験時に正確性のために使用する参照物質(Diclofenac stock 50mM、Phenazopyridine stock 25mM)及び試験物質として本発明のペプチド誘導体(50mM)をDMSOに準備した後、試験標準溶液として使用した。
【0211】
準備された試験物質10mLを190μLのイソプロピルアルコールに希釈して準備した。また、試験溶液75mLとイソプロピルアルコール70mLを混合して空試料として使用し、イソプロピルアルコールに希釈された試験物質5mLを空試料に添加した。希釈試料を混合した後、吸光度を測定して初期試験値として使用した。溶解度試験は1mL試験溶液と10mLのDMSO試験標準溶液とを混合した後、常温で24時間反応させた。その後、試料をfilter plateを用いて沈殿物は除去し、濾過された試料74mLにイソプロピルアルコール75mLを添加してから吸光度を測定しサンプル値として使用した。
【0212】
試験物質の溶解度値は、microplate readerを介して各サンプルの吸光度を測定した後、msol Exploer(Solubility explorer program)を用いて分析した。3回の反復試験値(n=3)をエクセルプログラムを用いて平均及び標準偏差を算出した。
【0213】
その結果、本発明のペプチド誘導体はDMSOに対して優れた溶解度を示した(表5)。
【0214】
【0215】
【0216】
試験例6.血漿安定性試験
【0217】
2種の血漿(plasma)(Human、Rat)に本発明のペプチド誘導体を1μM濃度で添加し、それぞれのチューブに入れた後37℃で時間(0、30、60、120、240分)に応じて培養した。各時間ごとに血漿が入っているチューブを取出して内部標準物質(chlorpropamide)が含まれているアセトニトリル溶液を添加し、5分間ボルテックス(vortexing)し、5分間遠心分離(14、000rpm、4℃)した後、上層液をLC-MS/MSシステムに注入して各時間帯の薬物を分析することで前記ペプチド誘導体に対する血漿安定性を評価した。ここで、一般的な血漿安定性の試験時に正確性のために使用する参照物質としてProcaineとEnalaprilを使用した。
【0218】
前記反応後の各チューブに残っている薬物の量は、Shimadzu Nexera XR system及びTSQ vantage(Thermo)を用いてLC-MS/MS分析した。HPLCカラムは、Luna C18 column(2.0×50mm、3μm particle size;Phenomenex、US)を使用し、移動相は0.1%formic acid含有蒸留水(A)と0.1%formic acid含有acetonitrile(B)にした。データ分析は、Xcalibur(version 1.6.1)を使用した。結果分析は、各ペプチド誘導体に対するそれぞれの血漿安定性は、培養させていないサンプルに対する各時間帯ごとの%remainingに示した。
【0219】
その結果、本発明のペプチド誘導体は血漿安定性が優れており、特に、従来に知られているアディポネクチン由来ペプチドであるAPN5と比較しても血漿安定性が極めて改善されたことが確認された(表6)。
【0220】
【0221】
【0222】
試験例7.代謝安定性の試験
【0223】
3種のliver microsomes(Human、Rat、Mouse、0.5mg/ml)と0.1Mリン酸緩衝溶液(pH7.4)、本発明のペプチド誘導体を1μM濃度で添加して37℃で5分間予め培養した後、NADPH Regeneration system溶液を添加して37℃で30分間培養した。その後、反応を終結させるために、内部標準物質(chlorpropamide)が含まれているアセトニトリル溶液を添加し、5分間遠心分離(14、000rpm、4℃)した後、上層液をLC-MS/MSシステムに注入して基質薬物を分析することで代謝安定性を評価した。ここで、一般的な血漿安定性の試験時に正確性のために使用する参照物質としてVerapamilを使用した。
【0224】
前記反応を介して残っている基質の量をAgilent 1290 infinity series pump system(Agilent、USA)及びTriple Quad 5500 LC-MS/MS system(Applied Biosystems、USA)を用いてLC-MS/MS分析した。HPLCカラムは、Kinetex C18 column(2.1×100mm、1.7μm particle size;Phenomenex、USA)を使用し、移動相は0.1%formic acid含有蒸留水(A)と0.1%formic acid含有のacetonitrile(B)にした。MS/MSのイオンソースとしてTurboSpray Ionizationを、質量分析器はTriple quadruple typeを使用した。生成された代謝物は、MRM(multiple reaction monitoring)定量モードを用いて定量し、データ分析はAnalyst software(version1.6.1)を使用した。
【0225】
その結果、本発明のペプチド誘導体は代謝安定性に優れ、特に、従来に知られているアディポネクチン由来ペプチドであるAPN5と比較しても、代謝安定性が極めて改善されていることが確認された(表7)。
【0226】
【0227】
【0228】
試験例8.CYP抑制分析
【0229】
Human liver microsomes(0.25mg/ml)と0.1Mリン酸緩衝溶液(pH7.4)、5種の薬物代謝酵素の基質薬物カクテル(Phenacetin50μM、S-mephenytoin100μM、dextromethorphan5μM、midazolam2.5μM、diclofenac10μM)及び本発明のペプチド誘導体をそれぞれ0、10μM濃度で添加して37℃で5分間予め培養した後、NADPH Regeneration system溶液を添加して37℃で15分間培養した。その後、反応を終結させるために内部標準物質(chlorpropamide)が含まれているアセトニトリル溶液を添加し、5分間遠心分離(14、000rpm、4℃)した後、上層液をLC-MS/MSシステムに注入して基質薬物の代謝物を同時に分析することで、前記ペプチド誘導体による薬物代謝酵素の阻害能を評価した。ここで、一般的な薬物代謝酵素の阻害能評価時に正確性のために使用する参照物質としてKetoconazoleを使用した。
【0230】
前記反応を介して生成されたそれぞれのCYP同酵素指標薬物の代謝物をShimadzu Nexera XR system及びTSQ vantage(Thermo)を用いてLC-MS/MS分析した。HPLCカラムは、Kinetex C18column(2.1×100mm、2.6μm particle size;Phenomenex、USA)を使用し、移動相は0.1%formic acid含有蒸留水(A)と0.1%formic acid含有acetonitrile(B)にした。MS/MSのイオンソースとしてTurboSpray Ionizationを、質量分析器はTriple quadruple typeを使用した。生成された代謝物は、MRM(multiple reaction monitoring)定量モードを用いて定量し、データ分析はXcalibur(version 1.6.1)を使用した。
【0231】
その結果、本発明のペプチド誘導体は、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3A4をはじめとするCYP酵素を抑制するため(表8)、薬物の相互作用による致命的な異常反応を起こさないという点を示唆する。
【0232】
【0233】
【0234】
試験例9.マウス塗布発毛及び皮膚老化改善効能の評価
【0235】
7週齢のC57BL/6マウスの背中を髭そり(shaving)した後、本発明のペプチド誘導体の剤形をそれぞれ0.15mM濃度でビヒクル(EtOH:polyethylene glycol=30:70、v/v)に溶解して塗布した。マウス当たり200μlに該当する溶液を背中全体に均一に35日間毎日塗布した。
【0236】
また、最後の塗布後に皮膚組織を摘出してmRNAを抽出し、皮膚老化の因子であるプロコラーゲン(procollagen)の発現に及ぼす影響をリアルタイムPCR(real-time PCR)で検証した。
【0237】
その結果、初めて毛を除去した部位のうち毛髪が伸びた部位の比率が本発明のペプチド誘導体を処理した群で有意に増加した。特に、陽性対照群として使用されたミノキシジルを処理した群と同様に、毛嚢の形成が促進されたことが確認された(
図18)。
【0238】
また、皮膚老化の因子であるプロコラーゲンが本発明のペプチド誘導体を処理した群で従来に知られているアディポネクチン由来ペプチドであるAPN5に類似しているか、それよりもさらに多く発現することが確認された(
図19)。
【0239】
【0240】
試験例10.脂肪細胞の中性脂肪抑制効能の検証
【0241】
マウス脂肪細胞株である3T3-L1に分化誘導試薬を処理して脂肪細胞に分化させて中性脂肪が満たされた後、本発明のペプチド誘導体をそれぞれ一連の濃度(10、30μM)で処理して24時間培養し、細胞を取得して中性脂肪の含量を測定した。その結果、本発明のペプチド誘導体を処理した場合、濃度依存的に作られていた中性脂肪の含量を低減させることが確認された(
図20A)。
【0242】
一方、マウス脂肪細胞株である3T3-L1に分化誘導前の分化誘導試薬と共に本発明のペプチド誘導体を10μMで処理して脂肪細胞に分化させた後、細胞を取得して中性脂肪の含量を測定した。その結果、本発明のペプチド誘導体を処理した場合、中性脂肪の蓄積を抑制するという点が確認された(
図20B)。
【0243】
【0244】
試験例11.筋肉細胞の敏感肌改善効能の検証
【0245】
ヒト筋肉細胞株であるRD細胞株を培養した後に細胞が90%満たされれば、無血清培地に交換して敏感肌誘発物質である乳酸(lactic acid、LA)50mMと本発明のペプチド誘導体10μMを処理し、4時間後に細胞を取得してmRNAを抽出し、痛み媒介因子の神経伝達物質であるCGRPの発現に及ぼす影響を観察した。
【0246】
その結果、本発明のペプチド誘導体を処理した場合、乳酸を処理した場合と比較して痛み媒介因子の発現が顕著に減少することはもちろん、いずれも処理していない場合と類似しているか、それよりも低いレベルであることが確認された(
図21)。即ち、本発明のペプチド誘導体が乳酸によって誘発される皮膚敏感性に関する遺伝子の発現を顕著に抑制させていることが分かる。
【0247】
【0248】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順に実行されたり、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法とは異なる形態に結合又は組み合せられたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても適切な結果を達成することができる。
【0249】
従って、他の実現、他の実施形態、及び特許請求の範囲と均等なものなども後述する請求範囲の範囲に属する。
【0250】
【産業上の利用可能性】
【0251】
本発明は新規ペプチド誘導体などに関し、前記ペプチド誘導体は、アディポネクチン受容体ペプチドを一部変形したもので、既存のアディポネクチン受容体ペプチドよりもさらに高い安定性及び優れたp-AMPK活性を有し、物性及び活性が改善されて薬物の剤形化に有利である長所がある。従って、本発明のペプチド誘導体は、皮膚炎症性疾患、傷、脱毛、線維化、代謝性疾患、又は、癌の予防又は治療、老化、敏感肌、シワ、又は、保湿の予防又は改善分野に便利に使用され得る。
【配列表】
【国際調査報告】