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特表2024-545530縮合環誘導体の結晶形、その製造方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-09
(54)【発明の名称】縮合環誘導体の結晶形、その製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20241202BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241202BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241202BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C07D495/04 105A
C07D495/04 CSP
A61P19/06
A61P9/12
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/4365
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539651
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 CN2022142594
(87)【国際公開番号】W WO2023131017
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210000887.9
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523442323
【氏名又は名称】上海瓔黎薬業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 祖盛
(72)【発明者】
【氏名】楼 楊通
(72)【発明者】
【氏名】唐 佑海
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC202
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC311
4C084ZC312
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB26
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA20
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA81
4C086ZC21
4C086ZC31
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、縮合環誘導体の結晶形、その製造方法、及びその使用を開示する。本発明の式(A)で示される如き化合物の結晶形Iは、純度が高く、安定性がよく、非吸湿性であり、且つその製造方法に使用される結晶化溶媒は、低残留という利点を有し、工業的生産に適している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、2θで表される8.3±0.2°、12.8±0.2°、13.4±0.2°、17.5±0.2°、17.9±0.2°、及び23.3±0.2°に回折ピークがある、ことを特徴とする式Aで示される如き化合物の結晶形I。
【化1】
【請求項2】
CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、さらに、2θで表される8.3±0.2°、11.2±0.2°、12.2±0.2°、12.8±0.2°、13.4±0.2°、17.5±0.2°、17.9±0.2°、20.8±0.2°、22.4±0.2°、及び23.3±0.2°に回折ピークがあり;一層、8.3±0.2°、11.2±0.2°、12.2±02°、12.8±0.2°、13.4±0.2°、17.1±0.2°、17.5±0.2°、17.9±0.2°、20.8±0.2°、21.5±0.2°、22.4±0.2°、23.3±0.2°、24.0±0.2°、25.4±0.2°、29.4±0.2°、及び34.5+0.2°に回折ピークがあることができる、ことを特徴とする請求項1に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形I。
【請求項3】
式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、CuターゲットのKα線を用いた、2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度で表される粉末X線回折スペクトル図において、その回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータがまた表3に示される通りで、
【表3】
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの赤外線吸収スペクトル図において、3090cm-1、3061cm-1、2965cm-1、2924cm-1、2868cm-1、2222cm-1、1697cm-1、1605cm-1、1578cm-1、1549cm-1、1499cm-1、1474cm-1、1420cm-1、1396cm-1、1296cm-1、1246cm-1、1188cm-1、1051cm-1、及び920cm-1に吸収ピークがあり、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの示差走査熱量測定チャートにおいて、開始温度193±2℃、ピーク値温度195±2℃の吸熱ピークがあり、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの熱重量グラフにおいて、190℃に加熱されたときに揮発分損失がなく、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの動的水分吸着図において、0~95%の相対湿度範囲内で、前記結晶形Iの重量が約0.01%の重量増加しか存在していない、ことを特徴とする請求項1に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形I。
【請求項4】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、CuターゲットのKα線を用いた、図2に示す粉末X線回折スペクトル図を有し、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの赤外線吸収スペクトル図は図3に示され、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの示差走査熱量測定チャートは図4に示され、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの熱重量グラフは図5に示され、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの動的水分吸着図は図6に示される、ことを特徴とする請求項3に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形I。
【請求項5】
60℃~75℃で、式Aで示される如き化合物、THF、及び貧溶媒の混合物を冷却して析晶し、濾過すればよい方案1であって、前記貧溶媒は、メタノール及び/又は水である方案1、又は、
60℃~70℃で、式Aで示される如き化合物の結晶形III及び/又はVIと、THFとイソプロピルアルコールとの混合溶媒である溶媒とで形成された溶液を降温し、固体を析出して濾過すればよい方案2である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造方法。
【請求項6】
前記式Aで示される如き化合物は、特許CN106008340Aを参照して製造され、
及び/又は、方案1では、前記THFと式Aで示される如き化合物との体積質量比は3.0mL/g~30.0mL/gであり、
及び/又は、方案1では、前記混合物は、式Aで示される如き化合物をTHFと貧溶媒との混合溶媒に加えることにより得られ、又は、式Aで示される如き化合物をTHFに溶解してから、前記貧溶媒を滴下することにより得られ、
及び/又は、方案1では、前記THFと前記貧溶媒との体積比は0.5:1~5:1であり、
及び/又は、方案1では、前記冷却の温度は-20℃~20℃であり、
及び/又は、方案1では、前記冷却の速度は5℃/h~30℃/hであり、
及び/又は、方案1では、前記濾過は減圧吸引濾過であり、
及び/又は、方案1では、前記濾過後に乾燥操作をさらに含み、
及び/又は、方案2では、前記降温の温度は-20℃~20℃であり、
及び/又は、方案2では、前記降温の速度は5℃/h~30℃/hであり、
及び/又は、方案2では、前記濾過は減圧吸引濾過であり、
及び/又は、方案2では、前記濾過後に乾燥操作をさらに含み、
及び/又は、方案2では、前記混合溶媒において、前記THFとイソプロピルアルコールとの体積比は0.5:1~2:1であり、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIは、式Aで示される如き化合物のテトラヒドロフラン溶液から溶媒を除去すればよいステップを含む製造方法によって得られ、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIは、CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、2θで表される6.7±0.2°、13.6±0.2°、14.5±0.2°、15.3±0.2°、15.8±0.2°、16.1±0.2°、16.8±0.2°、17.1±0.2°、19.0±0.2°、19.6±0.2°、20.3±0.2°、及び22.6±0.2°に回折ピークがあり、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIは、式Aで示される如き化合物と1,4-ジオキサンとで形成される溶液を-10℃~-20℃に降温し、濾過して、乾燥すればよいステップを含む製造方法によって得られ、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIは、CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、2θで表される6.3±0.2°、12.7±0.2°、14.1±0.2°、14.6±0.2°、17.3±0.2°、17.8±0.2°、19.1±0.2°、19.5+0.2°、22.4±0.2°、24.6±0.2°、及び25.2±0.2°に回折ピークがある、ことを特徴とする請求項5に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造方法。
【請求項7】
方案1では、前記貧溶媒がメタノールである場合、前記THFと前記貧溶媒との体積比は0.5:1~2:1であり、
及び/又は、方案1では、前記貧溶媒が水である場合、前記THFと前記貧溶媒との体積比は0.5:1~5:1であり、
及び/又は、方案1では、前記冷却は、前記混合物をイソプロピルアルコールと混合して、冷却することをさらに含み、
及び/又は、方案1では、前記乾燥は、65℃減圧乾燥であり、前記乾燥の時間は、1時間~3日間であり、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIの製造方法において、前記溶媒の除去は蒸留によって行われ、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIの製造方法において、前記溶媒を除去する前に、式Aで示される如き化合物のテトラヒドロフラン溶液を濾過する操作をさらに含み、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIは、CuターゲットのKα線を用いた、2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度で表される粉末X線回折スペクトル図において、回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータがまた表4に示される通りで、
【表4】
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造方法において、前記式Aで示される如き化合物と1,4-ジオキサンとで形成される溶液の温度は40℃~120℃であり、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造方法において、前記降温は迅速降温であり、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造方法において、前記濾過は減圧吸引濾過であり、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造方法において、前記乾燥は減圧乾燥であり、
及び/又は、方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIは、CuターゲットのKα線を用いた、2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度で表される粉末X線回折スペクトル図において、その回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータがまた表5に示される通りである、ことを特徴とする請求項6に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造方法。
【表5】
【請求項8】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIは、CuターゲットのKα線を用いた図8に示す粉末X線回折スペクトル図を有し、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIのDSCチャートは図9に示される通りで、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIのTGAチャートは図10に示される通りで、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIは、CuターゲットのKα線を用いた図12に示す粉末X線回折スペクトル図を有し、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIのDSCチャートは図13に示される通りで、
及び/又は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIのTGAチャートは図14に示される通りである、ことを特徴とする請求項7前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造方法。
【請求項9】
高尿酸血症又はそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造における請求項1~4のいずれか1項に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形Iの使用であって、
高尿酸血症に関連する前記疾患は、例えば、痛風、高血圧、糖尿病、高トリグリセリド血症、メタボリック・シンドローム、冠状動脈性心臓病、及び腎臓損傷のうちの1種又は複数種である、使用。
【請求項10】
尿酸トランスポータ1阻害剤の製造における請求項1~4のいずれか1項に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形Iの使用であって、前記尿酸トランスポータ1阻害剤は、哺乳類の生体内に用いられることができ、又は、主に実験用として生体外に用いられる、使用。
【請求項11】
治療有効量の請求項1~4のいずれか1項に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形Iと、薬学的に許容される1種又は複数種の担体及び/又は希釈剤と、を含有する医薬組成物。
【請求項12】
治療有効量の請求項1~4のいずれか1項に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形I及び他の尿酸降下薬を含有し、前記他の尿酸降下薬は、尿酸トランスポータ1阻害剤、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、キサンチンオキシドレダクターゼ、及びキサンチンデヒドロゲナーゼ阻害剤のうちの1種又は複数種であることができる、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2022年1月4日の中国特許出願202210000887.9の優先権を主張している。上記の中国特許出願の全文は、ここに、援用されている。
【0002】
本発明は、医薬分野に属し、具体的には、縮合環誘導体である3-[4-(4-シアノフェニル)チエノ[2,3-c]ピリジン-2-イル]-2,2-ジメチルプロピオン酸の結晶形、その製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
縮合環誘導体である3-[4-(4-シアノフェニル)チエノ[2,3-c]ピリジン-2-イル]-2,2-ジメチルプロピオン酸は、分子式がC1916Sであり、その構造が式A
【0004】
【化1】
【0005】
(以下、式Aで示される如き化合物と称する)で示され、腎臓の近位尿細管における尿酸の再吸収を阻害することにより、尿酸の尿液に介する体外への排泄を促進する尿酸トランスポータ1(urate transporter 1、URAT1と略称)阻害剤であり、高尿酸血症や関連疾患を効果的に和らげたり治療したりすることができる。
【0006】
物質の結晶多形性現象が2つ以上の異なる配列の結晶構造に起因することはよく知られている。化合物の異なる結晶形は、異なる物理的及び化学的特性を示すことがよくある。薬物の場合、無水物、水和物、溶媒和物及び非晶質を含む異なる固体形態は、融点、吸湿性、溶解度、溶出速度、流動性、圧縮可能性、安定性などの物理的及び化学的特性がある程度異なることがある。臨床使用中の薬物の安全性、有効性、品質の一貫性を確保するには、薬物の研究開発プロセスにおいて薬物の結晶多形性現象を十分に研究し、薬物の臨床開発に適切な固体形態を選択する必要がある。
【0007】
中国発明特許CN106008340Aは、尿酸トランスポータhURAT1の活性に対して明らかな阻害作用を有する縮合環誘導体を開示しており、これに含まれる化合物48は、本発明の式Aで示される如き化合物であり、hURAT1の細胞活性を阻害するIC50が0.012μmolであり、この化合物は低用量で投与すると良い臨床上の利益を患者にもたらすことが期待される。式Aで示される如き化合物は、CN106008340Aに開示された化合物48の製造方法に従って製造され、XRPD測定により非晶質であることが確認された。しかしながら、上記の製造方法を使用してスケールアップ(例えば、投入量が27gである)して式Aで示される如き化合物を得た場合、採集された逆相高速液体クロマトグラムにおいて、式Aで示される如き化合物の相対的な保持時間の約0.62(RRT)に、未知不純物のピークが常に存在する。スラリー化や塩形成などの精製手段を使用しても不純物を完全に除去したり、内部管理基準(0.10%を超えてはならない)以下に制御したりすることは困難であり、これは、薬物製品の品質と安全性に影響を与える。このため、再結晶によって製品を精製することで、薬物の純度が製剤や臨床上のニーズを確実に満たすようにする。
【0008】
また、式Aで示される如き非晶質化合物は、高湿度条件下では強い吸湿現象を示し、これは、薬物の保存や固形製剤の開発には非常に不利であることも判明した。
【0009】
したがって、最終生成物の純度を向上させるために未知不純物の制限を厳密に制御し、最終製剤及び臨床応用のニーズを満たすように吸湿性の低い固体形態の式Aで示される如き化合物を製造することが急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術のプロセスにより式Aで示される如き化合物をスケールアップして生産する場合に、純度が高くなく及び吸湿が酷いなどの欠陥に対処し、縮合環誘導体の結晶形、その製造方法、及びその使用を提案することである。本発明の結晶形は、純度が高く、安定性が良く、非吸湿性であり、且つ製造方法に使用される結晶化溶媒は、低残留という利点を有し、工業的生産に適している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の技術的解決手段によって上記の技術的課題を解决する。
【0012】
本発明は、CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、2θで表される8.3±0.2°、12.8±0.2°、13.4±0.2°、17.5±0.2°、17.9±0.2°、及び23.3±0.2°に回折ピークがある、式Aで示される如き化合物の結晶形Iを提供する。
【0013】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、さらに、2θで表される8.3±0.2°、11.2±0.2°、12.2±0.2°、12.8±0.2°、13.4±0.2°、17.5±0.2°、17.9±0.2°、20.8±0.2°、22.4±0.2°、及び23.3±0.2°に回折ピークがある。
【0014】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、一層、2θで表される8.3±0.2°、11.2±0.2°、12.2±0.2°、12.8±0.2°、13.4±0.2°、17.1±0.2°、17.5±0.2°、17.9±0.2°、20.8±0.2°、21.5±0.2°、22.4±0.2°、23.3±0.2°、24.0±0.2°、25.4±0.2°、29.4±0.2°、及び34.5±0.2°に回折ピークがある。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、CuターゲットのKα線を用いた、2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度で表される粉末X線回折スペクトル図において、その回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータがまた表3に示されることができる。
【0016】
【表3】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、CuターゲットのKα線を用いた、図2に示す粉末X線回折スペクトル図を有する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの赤外線吸収スペクトラム(IR)は、3090cm-1、3061cm-1、2965cm-1、2924cm-1、2868cm-1、2222cm-1、1697cm-1、1605cm-1、1578cm-1、1549cm-1、1499cm-1、1474cm-1、1420cm-1、1396cm-1、1296cm-1、1246cm-1、1188cm-1、1051cm-1、及び920cm-1に吸収ピークがある。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの赤外線吸収スペクトル図は図3に示される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの示差走査熱量測定(DSC)チャートは、開始温度193±2℃(例えば、192.79℃)、ピーク値温度195±2℃(例えば、194.58℃)の吸熱ピークを有する。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される化合物の結晶形Iの示差走査熱量測定チャートは図4に示される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される化合物の結晶形Iの熱重量グラフ(TGA)は、190℃に加熱されるときに揮発分損失がない。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される化合物の結晶形Iの熱重量グラフは図5に示される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの動的水分吸着(DVS)図において、0~95%の相対湿度範囲内で、前記結晶形Iの重量が約0.01%の増加しか存在していない。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの動的水分吸着図は図6に示される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、図7に示す液体水素核磁気スペクトル(H NMR)を有し、H NMRスペクトル図における各特徴ピークの化学シフト及び積分値は、式Aで示される如き化合物の構造式に合致し、また、結晶形Iは未溶媒和固体形態の式Aで示される如き化合物であることが確認された。
【0027】
本発明の1つの代表的な実施形態では、式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、カール・フィッシャー法により測定したところ、水分含有量が0.05%であり、結晶形Iは純粋な無水物固体形態であることが証明された。
【0028】
本発明はまた、
60~75℃で、式Aで示される如き化合物、THF及び貧溶媒の混合物を冷却して、析晶し、濾過すればよい方案1であって、前記貧溶媒は、メタノール及び/又は水である方案1、又は、
60~70℃で、式Aで示される如き化合物の結晶形III及び/又はVIと、THFとイソプロピルアルコールとの混合溶媒である溶媒とで形成された溶液を降温し、固体を析出して濾過すればよい方案2である、式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造方法を提供する。
【0029】
前記式Aで示される如き化合物は、式Aで示される如き化合物の任意の形態であってもよく、任意のルートを通じて入手してもよく、いくつかの実施形態では、前記式Aで示される如き化合物は、特許CN106008340Aを参照して製造される。
【0030】
方案1では、前記THFの使用量は、当該分野のこのような操作の通常の使用量であってもよく、式Aで示される如き化合物を溶解できるものであればよく、いくつかの実施形態では、式Aで示される如き化合物との体積質量比は、3.0~30.0mL/gで、例えば、4.0mL/g、7.0mL/g又は10.0mL/gである。
【0031】
方案1では、前記混合物は、式Aで示される如き化合物をTHFと貧溶媒との混合溶媒に加えることにより得られ、又は、式Aで示される如き化合物をTHFに溶解してから、前記貧溶媒を滴下することにより得られる。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記THFと前記貧溶媒との体積比は0.5:1~5:1である。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記貧溶媒がメタノールである場合、前記THFと前記貧溶媒との体積比は0.5:1~2:1で、例えば、1:1である。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記貧溶媒が水である場合、前記THFと前記貧溶媒との体積比は、0.5:1~5:1で、例えば、1:1、3.5:1、4.4:1又は5:1である。
【0035】
方案1では、前記冷却の温度は-20~20℃で、例えば、-8℃、10℃又は20℃である。方案1では、前記冷却の速度は、5~30℃/hで、例えば、10℃/h又は20℃/hであってもよい。
【0036】
方案1では、前記冷却は、前記混合物をイソプロピルアルコールと混合して、冷却することをさらに含む。例えば、前記混合物を20~-8℃に冷却し、イソプロピルアルコールを加え、次に前記濾過を行う。
【0037】
方案1では、前記濾過は、当該分野のこのような濾過の通常の操作、例えば、減圧吸引濾過であってもよい。
【0038】
方案1では、前記濾過後に乾燥操作をさらに含んでもよい。前記乾燥の温度及び時間は、当業者が一般的に決定し得るものである。例えば、いくつかの実施形態では、前記乾燥は、65℃減圧乾燥であり、前記乾燥の時間は、1時間~3日間であってもよい。
【0039】
方案2では、前記降温の温度は、-20~20℃で、例えば、5℃であってもよい。
【0040】
方案2では、前記降温の速度は、5~30℃/hで、例えば、10℃/hであってもよい
方案2では、前記混合溶媒において、前記THFとイソプロピルアルコールとの体積比は、0.5:1~2:1で、例えば、1:1であってもよい。
【0041】
方案2では、前記濾過は、当該分野でのこのような濾過の通常の操作、例えば、減圧吸引濾過であってもよい。
【0042】
方案2では、前記濾過後に乾燥操作をさらに含んでもよい。前記乾燥の温度及び時間は、当業者が一般的に決定し得るものである。例えば、いくつかの実施形態では、前記乾燥は、65℃減圧乾燥であり、前記乾燥の時間は、1時間~3日間であってもよい。
【0043】
方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIは、式Aで示される如き化合物のテトラヒドロフラン溶液から溶媒を除去すればよいステップを含む製造方法によって得られる。前記溶媒の除去は、蒸留(例えば、減圧蒸留)によって行われてもよい。
【0044】
方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIの製造方法において、前記溶媒を除去する前に、式Aで示される如き化合物のテトラヒドロフラン溶液を濾過する操作をさらに含んでもよい。前記濾過は、当該分野でのこのような濾過の通常の操作、例えば、濾過膜による濾過、また、例えば、0.45μmナイロン濾過膜による濾過であってもよい。
【0045】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIは、CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、2θで表される6.7±0.2°、13.6±0.2°、14.5±0.2°、15.3±0.2°、15.8±0.2°、16.1±0.2°、16.8±0.2°、17.1±0.2°、19.0±0.2°、19.6±0.2°、20.3±0.2°、及び22.6±0.2°に回折ピークがある。
【0046】
さらに、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIは、CuターゲットのKα線を用いた、2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度で表される粉末X線回折スペクトル図において、その回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータがまた表4に示される通りであることができる。
【0047】
【表4】
【0048】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIは、CuターゲットのKα線を用いた、図8に示す粉末X線回折スペクトル図を有する。
【0049】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIのDSCチャートは図9に示される通りである。DSCに示されるように、前記結晶形IIIは、開始温度103±2℃(例えば、103.39℃)、ピーク値温度111±2℃(例えば、111.33℃)に吸熱ピークが現れ、開始温度192±2℃(例えば、191.85℃)、ピーク値温度193±2℃(例えば、193.04℃)に吸熱ピークが現れる。
【0050】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IIIのTGAチャートは図10に示される通りである。TGAに示されるように、前記結晶形IIIは、約190℃に加熱されたときに9.746%の重量の揮発分が損失され、190℃を超える場合の重量損失は分解によるものである。
【0051】
方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIは、式Aで示される如き化合物と1,4-ジオキサンとで形成される溶液を-10~-20℃に降温し、濾過して乾燥すればよいステップを含む製造方法によって得られてもよい。
【0052】
方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造方法において、前記式Aで示される如き化合物と1,4-ジオキサンとで形成される溶液の温度は、40~120℃で、例えば、105±5℃である。
【0053】
方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造方法において、前記降温は、迅速降温であり、例えば、直ちに-10~-20℃の冷蔵庫に静置することであり、前記静置の時間は、1~3日間で、例えば、3日間であってもよい。
【0054】
方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造方法において、前記濾過は、当該分野でのこのような濾過の一般的な操作、例えば、減圧吸引濾過であってもよい。
【0055】
方案2では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造方法において、前記乾燥は、減圧乾燥、例えば、60℃減圧乾燥であってもよい。
【0056】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIは、CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、2θで表される6.3±0.2°、12.7±0.2°、14.1±0.2°、14.6±0.2°、17.3±0.2°、17.8±0.2°、19.1±0.2°、19.5±0.2°、22.4±0.2°、24.6±0.2°、及び25.2±0.2°に回折ピークがある。
【0057】
さらに、前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIは、CuターゲットのKα線を用いた、2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度で表される粉末X線回折スペクトル図において、その回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータがまた表5に示される通りであることができる。
【0058】
【表5】
【0059】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIは、CuターゲットのKα線を用いた、図12に示す粉末X線回折スペクトル図を有する。
【0060】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIのDSCチャートは図13に示される通りである。DSCに示されるように、前記結晶形VIは、開始温度140±2℃(例えば、140.47℃)、ピーク値温度146±2℃(例えば、145.60℃)に吸熱ピークが現れ、開始温度192±2℃(例えば、191.92℃)、ピーク値温度193±2℃(例えば、193.21℃)に吸熱ピークが現れる。
【0061】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形VIのTGAチャートは図14に示される通りである。TGAに示されるように、前記結晶形VIは、約190℃に加熱されたときに11.545%の重量の揮発分が損失され、190℃を超える場合の重量損失は分解によるものである。
【0062】
本発明はまた、CuターゲットのKα線を用いた粉末X線回折スペクトル図において、2θで表される8.4±0.2°、12.8±0.2°、13.5±0.2°、16.1±0.2°、16.7±0.2°、16.9±0.2°、17.6±0.2°、17.9±0.2°、18.9±0.2°、22.7±0.2°、23.4±0.2°、24.1±0.2°、及び25.5±0.2°に回折ピークがある、式Aで示される如き化合物の結晶形IVを提供する。
【0063】
さらに、前記式Aで示される如き化合物の結晶形IVは、CuターゲットのKα線を用いた、2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度で表される粉末X線回折スペクトル図において、その回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータがまた表6に示される通りであることができる。
【0064】
【表6】
【0065】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IVは、CuターゲットのKα線を用いた、図16に示す粉末X線回折スペクトル図を有する。
【0066】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IVのDSCチャートは図17に示される通りである。DSCに示されるように、前記結晶形IVは、開始温度191±2℃(例えば、191.36℃)、ピーク値温度194±2℃(例えば、193.60℃)に吸熱ピークが現れる。
【0067】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IVのTGAチャートは図18に示される通りである。TGAに示されるように、前記結晶形IVは、約190℃に加熱されたときに0.364%の重量の揮発分が損失され、190℃を超える場合の重量損失は分解によるものである。
【0068】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IVは、カール・フィッシャー法により測定したところ、水分含有量が0.3%であり、結晶形IVは純粋な無水物固体形態であることが証明された。
【0069】
前記式Aで示される如き化合物の結晶形IVは、式Aで示される如き化合物と1,4-ジオキサンとで形成される溶液を室温に降温し、析晶し、濾過して乾燥すればよいステップを含む製造方法によって得られる。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記式Aで示される如き化合物と1,4-ジオキサンとで形成される溶液の温度は、40~120℃で、例えば、80℃である。
【0071】
前記溶液は、飽和溶液であってもよく、前記飽和溶液は、濾過され、例えば、0.45μmナイロン濾過膜で熱いうちに濾過された飽和溶液である。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記降温は、緩慢降温であり、前記降温の速度は、5℃/hであってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記析晶の温度は室温である。
【0074】
前記濾過は、当該分野でのこのような濾過の一般的な操作、例えば、減圧吸引濾過であってもよい。
【0075】
前記乾燥は、減圧乾燥、例えば、40℃減圧乾燥であってもよい。
【0076】
本発明は、高尿酸血症又はそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造における前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの使用を提供する。
【0077】
高尿酸血症に関連する前記疾患は、例えば、痛風、高血圧、糖尿病、高トリグリセリド血症、メタボリック・シンドローム、冠状動脈性心臓病、及び腎臓損傷のうちの1種又は複数種である。
【0078】
本発明は、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの有効量を被験者に投与することを含む、高尿酸血症又はそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する方法を提供する。ここで、高尿酸血症に関連する前記疾患は、例えば、痛風、高血圧、糖尿病、高トリグリセリド血症、メタボリック・シンドローム、冠状動脈性心臓病、及び腎臓損傷のうちの1種又は複数種である。
【0079】
本発明はまた、尿酸トランスポータ1阻害剤の製造における前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの使用を提供する。
【0080】
本発明はまた、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iの有効量を被験者に投与することを含む、尿酸トランスポータ1を阻害する方法を提供する。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、前記尿酸トランスポータ1阻害剤は、哺乳類の生体内に用いられてもよく、又は、主に実験用として生体外に用いられ、例えば、標準サンプル又は対照サンプルとして比較のために提供され、又は、当該分野の通常の方法によって、尿酸トランスポータ1阻害効果を迅速に検出するためのキットに製造される。
【0082】
本発明はまた、治療有効量の前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iと、薬学的に許容される1種又は複数種の担体及び/又は希釈剤と、を含有する医薬組成物を提供する。
【0083】
本発明はまた、治療有効量の前記式Aで示される如き化合物の結晶形I及び他の尿酸降下薬を含有する、医薬組成物を提供する。
【0084】
前記他の尿酸降下薬は、尿酸トランスポータ1阻害剤、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、キサンチンオキシドレダクターゼ、及びキサンチンデヒドロゲナーゼ阻害剤のうちの1種又は複数種である。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態では、前記他の尿酸降下薬は、アロプリノール及び/又はフェブキソスタットである。
【0086】
本発明では、前記医薬組成物の投与方法は、特に限定されるものではなく、患者の年齢、性別、その他の条件や症状に応じて種々の剤型の製剤を選択して投与することができる。例えば、錠剤、丸剤、溶液、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、又はカプセル剤は経口投与され、注射剤は、単独で投与することも、注射用輸送液(ブドウ糖溶液やアミノ酸溶液など)と混合して静脈内注射投与することもでき、座薬は直腸内に投与する。
【0087】
いくつかの実例では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、1種又は複数種の薬学的に許容される担体及び/又は補助材料及び/又は希釈剤と製剤化するときに転化しない。
【0088】
いくつかの実例では、前記式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、他の尿酸降下薬と医薬組成物を形成するときに転化しない。
【0089】
当該分野の常識に反しないことに基づいて、上記の各好ましい条件を任意に組み合わせて本発明の各好ましい実例を得ることができる。
【0090】
本発明では、化合物48-aは、CN106008340Aを参照して合成され、使用される他の試薬や原料は、すべて市販品として得られる。
【0091】
本発明では、特に断らない限り、溶媒の割合は体積比である。
【0092】
本発明の積極的な効果は次のとおりである。本発明による式Aで示される如き化合物の結晶形Iは、純度が高く、製剤及び臨床応用のニーズを満たし、良い安定性を有し、非吸湿性であり、結晶転移が起こりにくく、製造方法が簡単で、使用される結晶化溶媒の残留が少なく、工業的生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】特許CN106008340Aの方法に従って実施例1で得られた式Aで示される如き非晶質化合物の粉末X線回折スペクトル図である。
図2】式Aで示される如き化合物の結晶形Iの粉末X線回折スペクトル図である。
図3】式Aで示される如き化合物の結晶形Iの赤外線吸収スペクトル図である。
図4】式Aで示される如き化合物の結晶形Iの示差走査熱量測定チャートである。
図5】式Aで示される如き化合物の結晶形Iの熱重量グラフである。
図6】式Aで示される如き化合物の結晶形Iの動的水分吸着図であり、1は吸湿曲線、2は除湿曲線である。
図7】式Aで示される如き化合物の結晶形Iの液体水素核磁気スペクトル図である。
図8】式Aで示される如き化合物の結晶形IIIの粉末X線回折スペクトル図である。
図9】式Aで示される如き化合物の結晶形IIIの示差走査熱量測定チャートである。
図10】式Aで示される如き化合物の結晶形IIIの熱重量グラフである。
図11】式Aで示される如き化合物の結晶形IIIの液体水素核磁気スペクトル図である。
図12】式Aで示される如き化合物の結晶形VIの粉末X線回折スペクトル図である。
図13】式Aで示される如き化合物の結晶形VIの示差走査熱量測定チャートである。
図14】式Aで示される如き化合物の結晶形VIの熱重量グラフである。
図15】式Aで示される如き化合物の結晶形VIの液体水素核磁気スペクトル図である。
図16】式Aで示される如き化合物の結晶形IVの粉末X線回折スペクトル図である。
図17】式Aで示される如き化合物の結晶形IVの示差走査熱量測定チャートである。
図18】式Aで示される如き化合物の結晶形IVの熱重量グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0094】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明は説明される実施例の範囲に限定するものではない。以下の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法については、従来の方法及び条件に従い、又は商品説明書に従って選択する。以下の実施例に係る溶媒は、いずれも分析純度又はクロマトグラフィー純度である。以下の実施例に係る溶媒が混合溶媒である場合、特に断りがない限り、体積比である。
【0095】
本発明の実験で使用されるテスト機器及びテスト条件
(1)粉末X線回折スペクトル(XRPD:X-Ray Powder Diffraction)
検出には、Bruker社製のD8 Advance型粉末X線回折装置を使用し、Cu-Kα線(λ=1.5406A)を使用する。電圧は40kVで、電流は40mAで、ステップ長さは0.02°で、スキャン速度は8°/分間で、スキャン範囲は4~40°である。
【0096】
(2)赤外線吸収スペクトル(IR:Infrared Absortion Spectroscopy)
検出には、島津製作所製のPresitage 21型フーリエ変換赤外分光計を使用し、中国薬局方2020年版4部通則0402赤外分光光度法に従い、臭化カリウム打錠法により試験品を製造し、4000~400cm-1の波数範囲内で赤外線吸収スペクトル図を収集する。試験品のスキャン数は45回で、機器の解像度は4cm-1である。
【0097】
(3)示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimeter)
検出には、TA Instrument社製のQ2000又はDSC25型示差走査熱量計を使用し、雰囲気を窒素、昇温速度を10℃/分間、昇温範囲を25~300℃とする。
【0098】
(4)熱重量分析(TGA:Thermo Gravimetric Analysis)
検出には、TA Instrument社製のQ500型熱重量分析装置を使用し、雰囲気を窒素、昇温速度を10℃/分間、昇温範囲を25~300℃とする。
【0099】
(5)動的水分吸着(DVS:Dynamic Vapor Sorption)
検出には、SMS社のAdvantage1.0型動的水分吸着装置を使用する。温度は25℃で、相対湿度範囲は0~95%で、湿度変化のステップは5%相対湿度である。質量変化率dm/dtの値が0.002%未満の場合、天びんは平衡化していると見なされる。5分間以内の質量変化率が0.01%/分未満の場合、検出プロセスの平衡化基準であり、最大平衡化時間は2時間である。
【0100】
(6)液体水素核磁気スペクトル(H NMR:Proton Nuclear Magnetic Resonance)
液体水素核磁気スペクトルはBruker社製の400MHz核磁気共鳴分光計で収集され、前記サンプルはジメチルスルホキシド-d6に溶解される。
【0101】
実施例1 式Aで示される如き化合物の合成
式Aで示される如き化合物の合成スキームは以下の通りである。
【0102】
【化2】
【0103】
中国発明特許CN106008340Aの化合物48の合成方法に従って、化合物48-a(3-[4-(4-シアノフェニル)チエノ[2,3-c]ピリジン-2-イル]-2,2-ジメチルプロピオン酸メチル)(76mmol)27gをメタノール(200mL)、テトラヒドロフラン(1.0L)及び水(200mL)の混合溶液に室温で加え、さらに水酸化リチウム(308mmol)13gを取り、混合液に加えた。混合液を6時間撹拌し、1M塩酸水溶液を加えてpH=5~6に調整し、減圧下濃縮した。残留物を2M水酸化ナトリウム水溶液でpH=7~8に調整し、酢酸エチル(2L)で抽出して不純物を除去した。水相を1M塩酸水溶液でpH=5~6に調整し、酢酸エチル(3L×2)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧吸引濾過した。濾液を減圧蒸留して、黄色固体20gを得た。
【0104】
LC-MS(ESI):m/z=337[M+H]
【0105】
H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.58(s,1H),9.21(s,1H),8.49(s,1H),8.03(d,2H,J=8.4Hz),7.84(d,2H,J=8.4Hz),7.30(s,1H),3.22(s,2H),1.17(s,6H)。
【0106】
H NMR及びLC-MS(ESI)測定により、得られた黄色固体が化合物48、すなわち本発明に記載の式Aで示される如き化合物であることを確認した。適量のサンプルを採取してXRPDをテストした結果、非晶質であることが判明し、XRPDスペクトル図は図1に示される。
【0107】
アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸(300/700/2)でサンプルの最終濃度を1mg/mLにした。Waters SunFireカラム(3.5μm、4.6×150mm)を使用して逆相HPLC分析を実行した。クロマトグラフィー条件:0.1%トリフルオロ酢酸-水溶液を移動相A、0.1%トリフルオロ酢酸-アセトニトリル溶液を移動相Bとし、且つ移動相Bを14分間以内で15%から23%に上昇させ、次に、16分間以内で23%から32%に上昇させ、さらに、15分間以内で32%から80%に上昇させてから5分間維持し、最後に0.01分間以内で80%から15%に回復させて10分間維持した。カラム温度は30℃で、サンプル注入体積は10μLで、検出波長は246nmであった。サンプル中の式Aで示される如き化合物の純度を面積正規化法で測定したところ、98.6%であり、且つ高速液体クロマトグラムでは、式Aで示される如き化合物の保持時間(RRT)約0.62での未知不純物の含有量が0.17%であり、内部管理基準(0.10%を超えてはならない)を超えている。実施例1で製造された式Aで示される如き化合物を以下の実施例2~8の出発原料として使用した。
【0108】
実施例2 式Aで示される如き化合物の抽出による精製
下記の操作方法に従って、式Aで示される如き化合物に対してそれぞれ精製処理を行い、実験結果を下記の表1に示す。
【0109】
式Aで示される如き化合物を0.5gずつ3回採取し、それぞれに水5mLを加え、10%炭酸ナトリウム溶液又は2M水酸化リチウム溶液でpH=11に調整し、すべての固体を溶解し、次に2-メチルテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又はトルエン(5mL×2)でそれぞれ抽出し、不純物を除去した。水相を1M塩酸水溶液でpH=3~4に調整し、濾過し、乾燥させた。
【0110】
生成物の純度を逆相HPLCにより分析し、生成物の結晶形をXRPDにより決定した。
【0111】
【表1】
【0112】
上記の結果より、有機溶媒による抽出は、RRT約0.62での未知不純物に対して一定の除去効果があるものの、内部管理基準以下(0.10%を超えてはならない)に不純物を厳密に制御できないことがわかった。
【0113】
実施例3 式Aで示される如き化合物のスラリー化による精製
下記の操作方法に従って、式Aで示される如き化合物に対する異なる溶媒によるスラリー化の精製効果を調べた。実験結果を以下の表2に示す。
【0114】
式Aで示される如き化合物を0.1gずつ3回採取し、それぞれに適切な体積の単一溶媒又は混合溶媒を加え、室温で4時間スラリー化し、濾過し、乾燥させた。
【0115】
生成物の純度を逆相HPLCにより分析し、生成物の結晶形をXRPDにより決定した。
【0116】
【表2】
【0117】
上記の結果より、RRT約0.62での未知不純物は、スラリーによって内部管理基準以下(0.10%を超えてはならない)に制御できないことが分かった。
【0118】
実施例4 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造
式Aで示される如き化合物5.0gをテトラヒドロフラン35mLと水7mLとの混合溶媒にて70~75℃で還流させ、撹拌して熱い澄明溶液を得て、10℃/時間の速度で温度を約10℃までゆっくりと下げ、析出した固体を濾取し、減圧下65℃で夜通し乾燥させて、白色固体2.2gを収率44.5%で得た。この固体中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、純度は99.6%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.05%であった。
【0119】
得られた固体は式Aで示される如き化合物の結晶形Iであり、その粉末X線回折スペクトル図は図2に示される通りである。この固体は、粉末X線回折スペクトル図において2θ角で表される主回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータが以下の表3に示される。
【0120】
【表3】
【0121】
前記結晶形IのIR図は、図3に示される通りで、3090cm-1、3061cm-1、2965cm-1、2924cm-1、2868cm-1、2222cm-1、1697cm-1、1605cm-1、1578cm-1、1549cm-1、1499cm-1、1474cm-1、1420cm-1、1396cm-1、1296cm-1、1246cm-1、1188cm-1、1051cm-1、及び920cm-1に吸収ピークがある。
【0122】
前記結晶形IのDSCチャートは、図4に示される通りで、その吸熱ピークは、開始温度が192.79℃で、ピーク値温度が194.58℃であった。
【0123】
TGAより、前記結晶形Iが190℃に加熱されたときに0.054%の重量の揮発分しか損失されていないことが示された。190℃を超える場合の重量損失は分解によるものである。そのTGAチャートを図5に示す通りである。
【0124】
DVSより、前記結晶形Iが、RH0%からRH95%までの時に、0.00944%の重量増加のみを有することが示された。そのDVS図を図6に示す通りである。
【0125】
H NMRテストにより得られた前記結晶形Iの各特徴的なピークの化学シフト及び積分値は、式Aで示される如き化合物の構造式と一致し、残留結晶化溶媒の特徴的なピークは観察されなかった。結晶形IのH NMRスペクトル図を図7に示す通りである。
【0126】
結晶形Iの水分含有量は、カール・フィッシャー法によって測定したところ、0.05%であり、結晶形Iが式Aで示される如き化合物の無水物固体形態であることが証明された。
【0127】
残留溶媒測定法(中国薬局方2020年版<0861>)に従うガスクロマトグラフィー(GC)分析によると、前記結晶形I中の残留溶媒は、規定される制限(テトラヒドロフランは0.072%を超えてはならない)を満たしている。
【0128】
実施例5 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造
式Aで示される如き化合物0.3gをテトラヒドロフラン1.2mLとメタノール1.2mLとの混合溶媒にて約60℃で還流させ、撹拌して熱い澄明溶液を得て、10℃/時間の速度で温度を約20℃までゆっくりと下げ、析出した固体を濾取し、減圧下65℃で夜通し乾燥させて、白色固体0.21gを収率70.0%で得た。このサンプルの粉末X線回折スペクトル図を検討して比較したところ、結晶形Iであることが判明した。このサンプル中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.5%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.09%であった。残留溶媒測定法(中国薬局方2020年版<0861>)に従うGC分析によると、このサンプルの残留溶媒は、規定される制限(テトラヒドロフランは0.072%を超えてはならず、メタノールは0.3%を超えてはならない)を満たしている。
【0129】
実施例6 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造
式Aで示される如き化合物0.5gをテトラヒドロフラン/水(7/1.6、V/V)5mLに65±5℃で混合し、保温しながら24時間撹拌し、30℃/時間の速度で温度を約10℃まで下げ、析出した固体を濾取し、減圧下65℃で夜通し乾燥させて、白色固体0.37gを収率74.0%で得た。このサンプルの粉末X線回折スペクトル図を検討して比較したところ、結晶形Iであることが判明した。このサンプル中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.8%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.02%であった。残留溶媒測定法(中国薬局方2020年版<0861>)に従うGC分析によると、このサンプルの残留溶媒は、規定される制限(テトラヒドロフランは0.072%を超えてはならない)を満たしている。
【0130】
実施例7 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造
式Aで示される如き化合物1.0gをテトラヒドロフラン10mLに65~70℃で還流させ、撹拌して熱い澄明液体を得て、水10mLをゆっくり滴下し、10℃/時間の速度で温度を約10℃までゆっくりと下げ、保温しながら夜通し撹拌し、析出した固体を濾取し、減圧下65℃で夜通し乾燥させて、白色固体0.65gを収率65.0%で得た。このサンプルの粉末X線回折スペクトル図を検討して比較したところ、結晶形Iであることが判明した。このサンプル中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.8%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.02%であった。残留溶媒測定法(中国薬局方2020年版<0861>)に従うGC分析によると、このサンプルの残留溶媒は、規定される制限(テトラヒドロフランは0.072%を超えてはならない)を満たしている。
【0131】
実施例8 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造
式Aで示される如き化合物1.0gをテトラヒドロフラン7mLと水2mLとの混合溶媒にて70~75℃で還流させ、撹拌して熱い澄明液体を得て、10℃/時間の速度で温度を約20℃までゆっくりと下げ、イソプロピルアルコール5mLを加え、10℃/時間の速度で温度を約-8℃までゆっくり下げ、5時間撹拌し、析出した固体を濾取し、65℃で夜通し減圧乾燥させ、白色固体0.76gを収率76.0%で得た。このサンプルの粉末X線回折スペクトル図を検討して比較したところ、結晶形Iであることが判明した。このサンプル中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度99.9%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.02%であった。残留溶媒測定法(中国薬局方2020年版<0861>)に従うGC分析によると、このサンプルにはテトラヒドロフラン残留はなく、イソプロパノール含有量は0.18%であり、残留溶媒は、規定される制限(テトラヒドロフランは0.072%を超えてはならず、イソプロピルアルコールは0.5%を超えてはならない)を満たしている。
【0132】
実施例9 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造
式Aで示される如き化合物(結晶形III)0.1gをテトラヒドロフラン0.5mLとイソプロパノール0.5mLとの混合溶媒に混合し、60~70℃で撹拌して熱い澄明液体を得て、10℃/時間の速度で温度を約5℃までゆっくりと下げ、析出した固体を濾取し、減圧下65℃で夜通し乾燥させた。このサンプルの粉末X線回折スペクトル図を検討して比較したところ、結晶形Iであることが判明した。
【0133】
このサンプル中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.8%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.07%であった。
【0134】
実施例10 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造
式Aで示される如き化合物(結晶形VI)0.1gをテトラヒドロフラン0.5mLとイソプロパノール0.5mLとの混合溶媒に混合し、60~70℃で撹拌して熱い澄明液体を得て、10℃/時間の速度で温度を約5℃までゆっくりと下げ、析出した固体を濾取し、減圧下65℃で夜通し乾燥させた。このサンプルの粉末X線回折スペクトル図を検討して比較したところ、結晶形Iであることが判明した。
【0135】
このサンプル中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.8%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.05%であった。
【0136】
実施例11 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの製造
式Aで示される如き化合物の粗製品を実施例1の方法に従って1バッチ分再度合成した。この粗製品中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.1%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.15%であった。この粗製品50gを取り、テトラヒドロフラン350mLと水100mLとの混合溶媒にて70~75℃で還流させ、撹拌して熱い澄明液体を得て、10℃/時間の速度で温度を約20℃までゆっくりと下げ、イソプロピルアルコール250mLを加え、10℃/時間の速度で温度を約-8℃までゆっくりと下げ、5時間撹拌し、析出した固体を濾取し、減圧下65℃で夜通し乾燥させて、白色固体41.0gを収率82.0%で得た。このサンプルの粉末X線回折スペクトル図を検討して比較したところ、結晶形Iであることが判明した。このサンプル中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.9%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.01%であった。残留溶媒測定法(中国薬局方2020年版<0861>)に従って、GCにより分析したところ、このサンプル中にテトラヒドロフラン残留はなく、イソプロパノール含有量は0.073%であり、残留溶媒は、規定される制限(テトラヒドロフランは0.072%を超えてはならず、イソプロピルアルコールは0.5%を超えてはならない)を満たしている。
【0137】
実施例12 式Aで示される如き化合物の結晶形IIIの製造
実施例11で製造された式Aで示される如き化合物の粗製品0.75gを取り、室温でテトラヒドロフラン50mLに混合し、固体が澄明に溶解するまで超音波処理し、0.45μmのナイロン濾過膜で濾過し、濾液を室温で減圧蒸留して溶媒を除去し、白色固体0.70gを収率93.2%で得た。
【0138】
得られた固体は、式Aで示される如き化合物の結晶形IIIであり、その粉末X線回折スペクトル図を図8に示す通りである。この固体は、粉末X線回折スペクトル図において2θ角で表される主回折ピークの2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータが以下の表4に示される。
【0139】
【表4】
【0140】
DSCより、前記結晶形IIIでは、開始温度103.39℃、ピーク値温度111.33℃に吸熱ピークが現れ、開始温度191.85℃、ピーク値温度193.04℃に吸熱ピークが現れることが示された。そのDSCチャートを図9に示す通りである。
【0141】
TGAより、前記結晶形IIIが約190℃に加熱されたときに9.746%の重量の揮発分が損失されたことが示され、190℃を超える場合の重量損失は分解によるものである。そのTGAチャートを図10に示す通りである。
【0142】
前記結晶形IIIのH NMRスペクトル図を図11に示す通りである。結晶形IのH NMRスペクトル図(図7)と比較すると、化学シフト1.76ppmに、積分値が1.97のピークが現れ、このピークはテトラヒドロフランのメチレン基(-CH-)の4つの水素の特徴的なピークであることがシフトから判明した。3.60ppmに、積分値が1.97のピークが現れ、このピークはテトラヒドロフランのメチレンオキシ基(-CHO-)の4つの水素の特徴的なピークであることがシフトから判明した。式Aで示される如き化合物の2つのメチル基(-CH)の6つの水素は1.17ppmにピークがあり、積分値が6.00であることが知られているため、結晶形IIIには約0.5モルのテトラヒドロフランが結合されていると推定された。
【0143】
前記結晶形III中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.1%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.15%であった。
【0144】
実施例13 式Aで示される如き化合物の結晶形VIの製造
実施例11で製造された式Aで示される如き化合物の粗製品1.0gを取り、1,4-ジオキサン10mLにて105±5℃で還流させ、撹拌して熱い澄明液体を得た直後、それを-20℃の冷蔵庫に3日間静置してから取り出し、固体を室温で濾取し、減圧下60℃で2時間乾燥させて、白色固体0.65gを収率65.3%で得た。
【0145】
得られた固体は、式Aで示される如き化合物の結晶形VIであり、その粉末X線回折スペクトル図を図12に示す通りである。この固体は、粉末X線回折スペクトル図において2θ角で表される主回折ピーク2θ角、d間隔、及びピーク高さの相対強度のデータが以下の表5に示される。
【0146】
【表5】
【0147】
DSCより、前記結晶形VIでは、開始温度140.47℃、ピーク値温度145.60℃に吸熱ピークが現れ、開始温度191.92℃、ピーク値温度193.21℃に吸熱ピークが現れることが示された。そのDSCチャートを図13に示す通りである。
【0148】
TGAより、前記結晶形VIは、約190℃に加熱されたときに11.545%の重量の揮発分が損失されたことが示され、190℃を超える場合の重量損失は分解によるものである。そのTGAチャートを図14に示す通りである。
【0149】
前記結晶形VIのH NMRスペクトル図を図15に示す通りである。結晶形IのH NMRスペクトル図(図7)と比較すると、化学シフト3.57ppmに、積分値が3.79のピークが現れ、このピークは1,4-ジオキサンの4つのメチレン基(-CH-)の合計8つの水素の特徴的なピークであることがシフトから判明した。式Aで示される如き化合物の2つのメチル基(-CH)の6つの水素は1.17ppmにピークがあり、積分値が6.00であることが知られているため、前記結晶形VIには約0.5モルの1,4-ジオキサンが結合されていると推定された。
【0150】
前記結晶形VI中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.6%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.13%であった。
【0151】
実施例14 式Aで示される如き化合物の結晶形IVの製造
実施例11で製造された式Aで示される如き化合物の粗製品1.0gを取り、1,4-ジオキサン20mLに加え、約80℃でほぼ澄清に溶解するまで撹拌し、熱いうちに0.45μmのナイロン濾過膜で迅速に濾過し、濾液を5℃/時間の速度でゆっくりと室温まで降温し、固体を濾取し、減圧下40℃で夜通し乾燥させて、白色固体0.50gを収率50.0%で得た。
【0152】
得られた固体は、式Aで示される如き化合物の結晶形IVであり、その粉末X線回折スペクトル図を図16に示す通りである。この固体は、粉末X線回折スペクトル図において2θ角で表される主回折ピーク2θ角、d間隔及びピーク高さの相対強度のデータが以下の表6に示される。
【0153】
【表6】
【0154】
DSCより、前記結晶形IVでは、開始温度191.36℃、ピーク値温度193.60℃に吸熱ピークが現れることが示された。そのDSCチャートを図17に示す通りである。
【0155】
TGAより、前記結晶形IVは、約190℃に加熱されたときに0.364%の重量の揮発分が損失されたことが示され、190℃を超える場合の重量損失は分解によるものである。そのTGAチャートを図18に示す通りである。
【0156】
残留溶媒測定法(中国薬局方2020年版<0861>)に従って、GCにより分析したところ、前記結晶形IV中の1,4-ジオキサン残留は、規定される制限(0.038%を超えてはならない)を満たしている。
【0157】
結晶形IVの水分含有量は、カール・フィッシャー法により測定したところ、0.3%であり、結晶形IVが式Aで示される如き化合物の別の無水物固体形態であることが証明された。
【0158】
前記結晶形IV中の式Aで示される如き化合物を逆相HPLCにより分析したところ、その純度は99.7%であり、RRT約0.62での未知不純物の含有量は0.12%であった。
【0159】
実施例15 加熱実験
実施例11、12、13、及び14で得られた式Aで示される如き化合物の結晶形I、III、VI、及びIVサンプルをそれぞれ約50mg取り、それぞれ清潔なガラス皿に平らに広げた。105℃の恒温オーブンで約1時間加熱し、取り出した直後、XRPDをテストした。
【0160】
結論:前記結晶形I及び結晶形IVに関しては、105℃で加熱されたサンプルのXRPDは、それぞれ加熱前と比較して変化しなかった。前記結晶形III及び結晶形VIに関しては、比較により、105℃で加熱されたサンプルのXRPDスペクトル図は、いずれも本発明に記載の式Aで示される如き化合物の結晶形IのXRPDスペクトル図と一致した。結晶形III及び結晶形VIは、加熱により溶媒が除去された後に、式Aで示される如き化合物の結晶形Iに変換され、前記結晶形III及び結晶形VIは、結晶形Iほど熱的に安定ではないことが証明された。
【0161】
実施例16 安定性
1 式Aで示される如き化合物の結晶形I及び結晶形IVの溶媒中での安定性
1.1 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの溶媒中での室温における安定性実験
式Aで示される如き化合物の結晶形I約30mgをそれぞれ溶媒1mLに混合し、超音波分散してスラリーとし、室温で一定期間(7日間又は14日間)懸濁させて平衡化した。この期間中、ボトル内の固体が常に過剰であることを確保し、遠心分離して固体を収集し、室温で溶媒を蒸発させ、XRPDをテストした。
【0162】
結論:本発明では、前記結晶形Iは、室温で、様々な単一溶媒又は混合溶媒中で良好な安定性を有し、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、n-ペンタン、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、又は酢酸イソプロプルにて室温で7日間懸濁させて平衡化した後、いずれも、結晶形が変化しない様に保持し得る。水、メタノールと水との混合物(体積比はそれぞれ90:10、75:25、45:55、及び10:90である)、エタノールと水との混合物(体積比はそれぞれ95:5、90:10、65:35、及び15:85である)、イソプロピルアルコールと水との混合物(体積比はそれぞれ95:5、85:15、及び15:85である)、アセトンと水との混合物(体積比はそれぞれ95:5、85:15、及び15:85である)にて室温で14日間懸濁させて平衡化した後、いずれも、結晶形が変化しない様に保持し得る。
【0163】
1.2 式Aで示される如き化合物の結晶形Iの溶媒中での高温における安定性実験
式Aで示される如き化合物の結晶形I約50mgをそれぞれ溶媒1mLに混合し、超音波分散してスラリーとし、50℃の恒温振盪テーブルに入れて振盪して平衡化した。この期間中、ボトル内の固体が常に過剰であることを確保し、所定時間平衡化した後、スラリーを遠心分離して固体を収集し、室温で溶媒を蒸発させ、XRPDをテストした。
【0164】
結論:本発明では、前記結晶形Iは、50℃で、様々な単一溶媒又は混合溶媒中で良好な安定性を有する。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、又は酢酸エチル中で43日間懸濁させて平衡化した後、いずれも結晶形が変化しない様に保持し得る。体積比がいずれも50:50であるメタノールと水との混合物、エタノールと水との混合物、イソプロピルアルコールと水との混合物、及びアセトンと水との混合物中で30日間懸濁させて平衡化した後、いずれも結晶形が変化しない様に保持し得る。
【0165】
1.3 式Aで示される如き化合物の結晶形I及び結晶形IVの溶媒中での室温における競合実験
式Aで示される如き化合物の結晶形I約15mgと式Aで示される如き化合物の結晶形IV 15mgをそれぞれ溶媒1mLに混合し、超音波分散してスラリーとし、室温で懸濁させて平衡化した。この期間中、ボトル内の固体が常に過剰であることを確保し、7日後、遠心分離して固体を収集し、溶媒を室温で蒸発させ、XRPDをテストした。
【0166】
結論:本発明では、前記結晶形I及び結晶形IVは、室温で、各溶媒中で7日間競合した後、すべて結晶形Iに変換され、結晶形Iの安定性が前記結晶形IVよりも優れていることが証明された。前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、n-ペンタン、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、又は酢酸イソプロピルである。
【0167】
2 高温、高湿度、光照射条件下における式Aで示される如き化合物の結晶形Iの安定性
実施例11で製造された式Aで示される如き化合物の結晶形Iのサンプルを採取し、高温、高湿度及び光照射の影響要素についての安定性試験を行った。考査指標には、総不純物、水分、含有量及び結晶形の測定が含まれる。具体的な実験プロセスは次のとおりである。
【0168】
式Aで示される如き化合物の結晶形Iサンプルを清潔なガラス皿に適量平らに広げ、高温(60±2℃)、高湿度(25℃、RH92.5±5%)、及び光照射(4500±500Lux、25℃)の条件で開放して放置した。5日目と10日目にサンプリングして試験し、結果を以下の表7~9に示す。
【0169】
【表7】
【0170】
【表8】
【0171】
【表9】
【0172】
備考:
含有量の測定方法:高速液体クロマトグラフィー(中国薬局方2020年版<0512>第二法)によると、クロマトグラフィー条件は次の通りである。充填剤としてオクタデシルシラン結合シリカゲル(SunFire C18、3.5μm、4.6×150mm)、移動相Aとして0.05%トリフルオロ酢酸の水溶液、移動相Bとして0.05%トリフルオロ酢酸のアセトニトリル溶液を使用し、A:B=77:23でイソクラティック溶出を行った。流速は1.0mL/minで、検出波長は230nmで、カラム温度は30℃であった。メタノール:0.05%トリフルオロ酢酸の水溶液=40:60(体積比)を希釈液として、試験品及び対照品をそれぞれ0.1mg/mLにし、それぞれ10μLを正確に量り、液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録した。外部標準法に従って、ピーク面積で計算すると、無水含有量に基づいて、試験品中の式Aで示される如き化合物は98.0%~102.0%である。
【0173】
結論:上記の表7~表9のデータから、前記結晶形Iが高温(60±2℃)、高湿度(25℃、RH92.5±5%)及び光照射(4500±500Lux、25℃)の条件で10日間放置した場合、影響要素についての試験処理前と比較して、各考査指標に大きな変化はなく、結晶形Iの安定性も良好であったことが明らかとなった。
【0174】
3 式Aで表される化合物の結晶形Iの加速条件での安定性
実施例11で製造された式Aで示される如き化合物の結晶形Iのサンプルを採取し、加速条件下で安定性試験を行った。考査指標には、総不純物、水分、含有量及び結晶形の測定が含まれる。具体的な実験プロセスは以下の通りである。
【0175】
式Aで示される如き化合物の結晶形Iサンプルを医薬品用低密度ポリエチレン袋に密封し、その外にポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン医薬品包装用複合袋で密封して包装し、加速安定性(40±2℃、RH75±5%)条件で保管した。1、2、3、及び6か月目にサンプリングして試験した。その結果を以下の表10に示す。
【0176】
【表10】
【0177】
結論:上記の表10のデータから、前記結晶形Iを加速安定性(40±2℃、相対湿度75±5%)条件下で6か月間保管した場合、各考査指標は、加速試験前と比較して有意に変化しておらず、結晶形Iの安定性は良好であることが明らかとなった。
【0178】
なお、本発明に記載の実施例及び実施形態は、説明の目的にのみ用いられるものであり、これらに鑑みてなされた様々な改良又は変更が当業者に提示されるものであり、これらは本願の趣旨や範囲及び添付の請求の範囲内に含まれるものである。本発明で引用されているすべての出版物、特許、及び特許出願は、引用により本発明に組み込まれ、あらゆる目的で使用される。
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【国際調査報告】