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特表2024-545538手ブレ防止機構、カメラモジュール、携帯端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】手ブレ防止機構、カメラモジュール、携帯端末
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20241203BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20241203BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20241203BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B30/00
H04N23/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575350
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2022130427
(87)【国際公開番号】W WO2024098220
(87)【国際公開日】2024-05-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516180667
【氏名又は名称】北京小米移動軟件有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing Xiaomi Mobile Software Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.018, Floor 8, Building 6, Yard 33, Middle Xierqi Road, Haidian District, Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宇野 勝
【テーマコード(参考)】
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2K005CA14
2K005CA24
2K005CA40
2K005CA44
2K005CA57
5C122DA09
5C122EA41
5C122FH13
5C122HA77
5C122HA82
(57)【要約】
効率が良く、消費電力が小さく、共鳴しにくくでき、姿勢差が小さくなり、低コストである手ブレ防止機構を提供することを課題とする。基部31と、前記基部31に前記カメラモジュール2の光軸方向で対向して設けられた可動部32であって、前記基部31に対して、前記光軸方向に直交する第1方向X、前記光軸方向及び前記第1方向Xに直交する第2方向Y、の各方向に移動可能に支持された可動部32と、前記基部31と前記可動部32とを連結し、前記可動部32を前記第1方向X及び前記第2方向Yのうちの少なくとも一つの方向に移動させるための駆動力を発する駆動部33と、を備え、前記可動部32は撮像素子32b1を備え、前記駆動部33は、長さ方向に変形可能な駆動ワイヤ331を、前記第1方向Xに対向するように一対有し、前記第2方向Yに対向するように一対有しており、前記駆動ワイヤ331の両端は前記基部31に固定されており、前記駆動ワイヤ331の中間部は前記可動部32に取り付けられており、前記駆動ワイヤを変形させて、前記可動部32を前記駆動ワイヤ331の両端に近づく方向に移動させる、手ブレ防止機構3である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールに内蔵される手ブレ防止機構であって、
基部と、
前記基部に前記カメラモジュールの光軸方向で対向して設けられた可動部であって、前記基部に対して、前記光軸方向に直交する第1方向、前記光軸方向及び前記第1方向に直交する第2方向、の各方向に移動可能に支持された可動部と、
前記基部と前記可動部とを連結し、前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向のうちの少なくとも一つの方向に移動させるための駆動力を発する駆動部と、を備え、
前記可動部は撮像素子を備え、
前記駆動部は、駆動ワイヤを、前記第1方向に対向するように一対有し、前記第2方向に対向するように一対有しており、
前記駆動ワイヤの両端は前記基部に固定されており、前記駆動ワイヤの中間部は前記可動部に取り付けられており、
前記駆動ワイヤのうち少なくとも1本を長さ方向に変形させることにより、前記可動部を前記駆動ワイヤの両端に近づく方向に移動させる、手ブレ防止機構。
【請求項2】
前記駆動ワイヤは、加熱されることで長さ方向に収縮する、請求項1に記載の手ブレ防止機構。
【請求項3】
前記一対を構成する前記駆動ワイヤの一方が収縮した場合、前記一対を構成する前記駆動ワイヤの他方は伸長する、請求項1または2に記載の手ブレ防止機構。
【請求項4】
前記駆動ワイヤは、形状記憶合金から形成されている、請求項1~3のいずれかに記載の手ブレ防止機構。
【請求項5】
前記基部は給電電極を備え、 前記駆動ワイヤの両端は、前記給電電極に固定されることで前記基部に固定されると共に、前記給電電極に電気的に接続されており、
前記駆動ワイヤは、通電により自己が発熱することで前記収縮がなされる、請求項2~4のいずれかに記載の手ブレ防止機構。
【請求項6】
前記可動部は、前記光軸方向視の形状が四角形であって、
前記可動部は、前記基部に向かって突出したワイヤ変曲部を四隅に備え、
前記ワイヤ変曲部の側面には、前記駆動ワイヤの前記中間部が当接することにより、前記駆動ワイヤの前記中間部が前記可動部に取り付けられている、請求項1~5のいずれかに記載の手ブレ防止機構。
【請求項7】
前記ワイヤ変曲部は、前記駆動ワイヤが前記光軸方向にずれることを規制する溝または突起を備える、請求項6に記載の手ブレ防止機構。
【請求項8】
前記第1方向に対向する前記一対の駆動ワイヤは、前記第1方向で対称に配置され、
前記第2方向に対向する前記一対の駆動ワイヤは、前記第2方向で対称に配置され、
前記第1方向に対向する前記一対の駆動ワイヤ、及び、前記第2方向に対向する前記一対の駆動ワイヤの中心位置に、前記撮像素子の前記光軸方向視の中心が一致する、請求項1~7のいずれかに記載の手ブレ防止機構。
【請求項9】
前記カメラモジュールに加えられた振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部が検出した振動に応じて制御を行う制御部と、を備える、請求項1~8のいずれかに記載の手ブレ防止機構。
【請求項10】
前記制御部は、前記振動検出部が検出した振動の大きさに応じて、前記駆動ワイヤを変形させるためのエネルギーの入力を前記駆動部に対して行わせ、前記振動検出部が振動を検出しなくなると、前記エネルギーの入力を停止させる、請求項9に記載の手ブレ防止機構。
【請求項11】
前記基部と前記可動部の一方は永久磁石を備え、他方はホール素子を備え、
前記ホール素子は、前記基部に対する前記可動部の、前記第1方向及び前記第2方向のうちの少なくとも一つの方向の位置関係を検出する、請求項1~10のいずれかに記載の手ブレ防止機構。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の手ブレ防止機構を内蔵したカメラモジュール。
【請求項13】
請求項12に記載のカメラモジュールを備えた携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末(例えばスマートフォン、タブレット)等の機器が備えるカメラモジュールに内蔵される手ブレ防止機構と、これを備えたカメラモジュール、携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に関係する従来技術として、例えば、CN108780207Aに記載の光学画像安定化(OIS)機構が挙げられる。
【0003】
この従来技術では、画像センサを備えた動的プラットフォームが、静的プラットフォームに対して、カメラレンズの光軸に直交する複数の方向に動くように構成されている。具体的に、OIS機構はボイスコイルモータ(Voice Coil Motor、VCM)を含む。ボイスコイルモータは、前記動的プラットフォームとしての画像センサフレーム部材、前記静的プラットフォームとしてのボイスコイルモータのフレーム、そして、複数のOISコイルを含む。前記OISコイルは、カメラレンズの光学軸に直交する複数の方向に動的プラットフォームを移動させる力を生じさせるべく、磁石の磁界内で画像センサフレーム部材に搭載される。
【0004】
この構成で駆動源として用いられるボイスコイルモータは、効率が低く消費電力が大きい。また、この構成における動的プラットフォームと静的プラットフォームの組み合わせは、共鳴しやすい、姿勢差が大きい、コストが高いとの問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このことに鑑み、本発明は、従来技術よりも優位であって、効率が良く、消費電力が小さく、共鳴しにくくでき、姿勢差が小さくなり、低コストである手ブレ防止機構と、これを備えたカメラモジュール、携帯端末を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの形態は、カメラモジュールに内蔵される手ブレ防止機構であって、基部と、前記基部に前記カメラモジュールの光軸方向で対向して設けられた可動部であって、前記基部に対して、前記光軸方向に直交する第1方向、前記光軸方向及び前記第1方向に直交する第2方向、の各方向に移動可能に支持された可動部と、前記基部と前記可動部とを連結し、前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向のうちの少なくとも一つの方向に移動させるための駆動力を発する駆動部と、を備え、前記可動部は撮像素子を備え、前記駆動部は、駆動ワイヤを、前記第1方向に対向するように一対有し、前記第2方向に対向するように一対有しており、前記駆動ワイヤの両端は前記基部に固定されており、前記駆動ワイヤの中間部は前記可動部に取り付けられており、前記駆動ワイヤのうち少なくとも1本を長さ方向に変形させることにより、前記可動部を前記駆動ワイヤの両端に近づく方向に移動させる、手ブレ防止機構である。
【0007】
また、前記駆動ワイヤは、加熱されることで長さ方向に収縮するものとできる。
【0008】
また、前記一対を構成する前記駆動ワイヤの一方が収縮した場合、前記一対を構成する前記駆動ワイヤの他方は伸長するものとできる。
【0009】
また、前記駆動ワイヤは、金属により形成されていることができるが、本発明を実現可能な他の材料により形成されることもでき、好ましくは、形状記憶合金から形成されているものとできる。
【0010】
また、前記基部は給電電極を備え、前記駆動ワイヤの両端は、前記給電電極に固定されることで前記基部に固定されると共に、前記給電電極に電気的に接続されており、前記駆動ワイヤは、通電により自己が発熱することで前記収縮がなされるものとできる。
【0011】
また、前記可動部は、前記光軸方向視の形状が四角形であって、前記可動部は、前記基部に向かって突出したワイヤ変曲部を四隅に備え、前記ワイヤ変曲部の側面には、前記駆動ワイヤの前記中間部が当接することにより、前記駆動ワイヤの前記中間部が前記可動部に取り付けられているものとできる。
【0012】
また、前記ワイヤ変曲部は、前記駆動ワイヤが前記光軸方向にずれることを規制する溝または突起を備えるものとできる。
【0013】
また、前記第1方向に対向する前記一対の駆動ワイヤは、前記第1方向で対称に配置され、前記第2方向に対向する前記一対の駆動ワイヤは、前記第2方向で対称に配置され、前記第1方向に対向する前記一対の駆動ワイヤ、及び、前記第2方向に対向する前記一対の駆動ワイヤの中心位置に、前記撮像素子の前記光軸方向視の中心が一致するものとできる。
【0014】
また、前記カメラモジュールに加えられた振動を検出する振動検出部と、前記振動検出部が検出した振動に応じて制御を行う制御部と、を備えるものとできる。
【0015】
また、前記制御部は、前記振動検出部が検出した振動の大きさに応じて、前記駆動ワイヤを変形させるためのエネルギーの入力を前記駆動部に対して行わせ、前記振動検出部が振動を検出しなくなると、前記エネルギーの入力を停止させるものとできる。
【0016】
また、前記基部と前記可動部の一方は永久磁石を備え、他方はホール素子を備え、前記ホール素子は、前記基部に対する前記可動部の、前記第1方向及び前記第2方向のうちの少なくとも一つの方向の位置関係を検出するものとできる。
【0017】
また、本発明の他の一つの形態は、前記手ブレ防止機構を内蔵したカメラモジュールである。
【0018】
また、本発明の他の一つの形態は、前記カメラモジュールを備えた携帯端末である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、スマートフォンの手ブレ防止について示す概要図である。
図2図2は、手ブレ防止機構における処理に関して示す概要図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る手ブレ防止機構が設けられたカメラモジュールのうち、説明に必要な部分を簡略的に示した縦断面図である。
図4図4は、前記手ブレ防止機構を示し、可動部におけるベースプレートの後面位置から後方を見た場合の図である。
図5図5は、図4から説明に必要な部分を抜き出して示した図である。
図6図6は、図4から説明に必要な部分を抜き出して示した図である。
図7A図7Aは、前記手ブレ防止機構における可動部のうち撮像部を示す側面図である。
図7B図7Bは、前記手ブレ防止機構における基部と可動部(撮像部を除く)を示す側面図である。
図8A図8Aは、前記手ブレ防止機構における基部を示す平面図である。
図8B図8Bは、前記手ブレ防止機構における基部を示す右側面図である。
図9A図9Aは、前記手ブレ防止機構における可動部(撮像素子支持部を除く)を示す右側面図である。
図9B図9Bは、前記手ブレ防止機構における可動部(撮像素子支持部を除く)を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る手ブレ防止機構3に関し、図面を示しつつ説明する。なお、以下の「光軸方向」は、カメラモジュール2の光軸方向である。被写体側を前方(図3上では左方向)、撮像素子32b1側を後方(図3上では右方向)とする。
【0021】
本実施形態の手ブレ防止機構3は、携帯端末1(例えばスマートフォン、タブレット)等が備えるカメラモジュール2に内蔵される。まず、図1及び図2に携帯端末1における手ブレ防止機能の概要を示す。手ブレ防止機能自体は公知であるため、簡単に説明する。図1に示すように携帯端末1(スマートフォンを例示)にユーザーの手等から振動が伝わることがある。この振動はカメラモジュール2に伝わる。振動は、例えば図1に矢印で示すような回転運動成分を有している。なお、直線移動成分を有することもある。
【0022】
図2に示すように、携帯端末1の内部にはジャイロセンサ11及びサーボドライバ12が設けられており、カメラモジュール2にはアクチュエータ13及びセンサ14が設けられている。カメラモジュール2に振動が伝わると、ジャイロセンサ11が検知し、サーボドライバ12がアクチュエータ13をセンサ14の検知下で駆動させ、それをループする(サーボループ)させることにより、レンズから取り込まれて撮像素子32b1に投影される画像をブレないものとできる。
【0023】
図3に、カメラモジュール2の構成を簡略的に示す。携帯端末1にレンズ支持部21が支持されている。図示を省略しているが、レンズ支持部21にはレンズ、絞り、オートフォーカス機構が設けられている。レンズ支持部21の光軸方向後方に、レンズを通過して結像した撮像光を受ける撮像素子32b1が設けられている。この撮像素子32b1は手ブレ防止機構3に設けられている。
【0024】
手ブレ防止機構3は、基部31、可動部32、駆動部33を備える。基部31は、手ブレ防止機構3(及びカメラモジュール2)において固定的に設けられた、板状の部分である。図7Bに示すように、基部31は、剛性を有していて平板状のベースプレート311と、ベースプレート311の前面に貼り合わせられ、ベースプレート311と比べて柔軟なフレキシブル基板(Flexible Printed Circuits、FPC)312とを備える(図8A図8B参照)。ベースプレート311は光軸方向視の形状が四角形(具体的には長方形)とされている。フレキシブル基板312のうちベースプレート311に重なる部分は、ベースプレート311と同一形状とされている。基部31は給電電極313を備える。給電電極313は、ベースプレート311に光軸方向の前方に突出するようにして固定されている。給電電極313には、カメラモジュール2における手ブレ防止機構3の外部から矩形波状の電流が供給されている。なお、供給される電流は、直流電流や、矩形波以外の波形を有する電流であってもよい。
【0025】
可動部32は、基部31に光軸方向で対向して設けられた板状の部分である。可動部32は、平板状のベースプレート321を備える。ベースプレート321は、光軸方向視の形状が四角形(具体的には長方形)とされている。図7A図7Bに示すように、可動部32は、可動機構部32aと、可動機構部32aとは別体であって、例えば可動機構部32aに接着によって取り付けられることで、可動機構部32aに一体化される撮像部32bとを備える。撮像部32bは撮像素子32b1を備えている。
【0026】
可動部32は、基部31に対して、光軸方向に直交する第1方向X、光軸方向及び第1方向Xに直交する第2方向Y、の各方向に移動可能に支持されている。ここで、本実施形態の説明では、図4に示す左右方向を第1方向Xとし、上下方向を第2方向Yとする。なお、可動部32は、第1方向Xと第2方向Yとが合成された方向(図4における斜め方向であって、角度は任意)にも移動可能である。
【0027】
図9A図9Bに示すように、可動部32は、ベースプレート321から後方に(基部31に向かって)突出したワイヤ変曲部322を四隅に備える。つまり、可動部32においてワイヤ変曲部322は4箇所に設けられている。本実施形態のワイヤ変曲部322は、ベースプレート321の後面から突出した円柱状の突起である。ワイヤ変曲部322は樹脂等の絶縁体から形成されている。ワイヤ変曲部322において湾曲した側面には駆動ワイヤ331が引っ掛けられている。具体的に、図4に示すように、4個のワイヤ変曲部322で形成される仮想の四角形を基準とした、各ワイヤ変曲部322の外側を向いている外側部分322aの一部に沿うようにして、駆動ワイヤ331が引っ掛けられている。これにより、光軸方向視において駆動ワイヤ331が変曲させられる。本実施形態では、図4に示すように、駆動ワイヤ331が鋭角で変曲しているが、直角や鈍角の変曲であってもよい。ワイヤ変曲部322は、駆動ワイヤ331が光軸方向にずれることを規制する溝3221を備える(図9A参照)。この溝3221は、円柱状であるワイヤ変曲部322の軸方向に直交するように、ワイヤ変曲部322の側面に設けられる。なお、溝3221の代わりに駆動ワイヤ331を引っ掛ける突起が設けられていてもよい。また、ワイヤ変曲部322の外周面全体が湾曲面とされ、湾曲面の凹んだ部分に駆動ワイヤ331が引っ掛けられてもよい。
【0028】
ワイヤ変曲部322の軸方向端部には回転部323が設けられている。回転部323は、ワイヤ変曲部322の、基部31に対向する端面から一部が突出するように埋め込まれた回転体(具体的にはボール)を備える。回転部323は基部31の前面(平面)に当接していて、基部31の前面に対して回転する。これにより可動部32が基部31に対する距離を一定に保ったまま、光軸方向に直交する面方向に移動する。
【0029】
基部31と可動部32とは、光軸方向に分離しないように、面方向への移動を許容しつつ、光軸方向に位置保持されている。具体的には、可動部32の後面に設けられた複数(本実施形態では4個)の永久磁石324と、基部31の前面であり、前記複数の永久磁石324に対向する位置に設けられた磁性体314(例えば鋼材)との、磁力による吸引力によって光軸方向に位置保持されている。永久磁石324と磁性体314との間の吸引力は、基部31に対して可動部32が最大限ずれた場合にも作用するように設定されている。また、図示していないが、基部31と可動部32とは、面方向についても、駆動部33の駆動する範囲を超えた移動を規制するため、可動部32に当接するストッパー等を設けることで、面方向に位置保持されている。
【0030】
可動部32には、図9Bに示すように、ワイヤ変曲部322の他に円柱状のワイヤガイド325が設けられている。このワイヤガイド325は可動部32のベースプレート321から後方に突出している。ワイヤガイド325は樹脂等の絶縁体から形成されている。図4、及び、図4から一部構成を抜き出した図5に示すように、このワイヤガイド325は、各駆動ワイヤ331の通る経路で、給電電極313とワイヤ変曲部322(前記経路上で給電電極313に最も近いもの)との間に位置している。ワイヤガイド325の外周面に、一対が第1方向Xに対向している方の各駆動ワイヤ331(図5において示した駆動ワイヤ331と、左右対称となる駆動ワイヤ331(図示しない)との2本の組み合わせにおけるもの)が当接する。このため、ワイヤガイド325は第2方向Yに対向して2本設けられている。ワイヤガイド325の外周面と各駆動ワイヤ331の当接状態は、各駆動ワイヤ331の伸縮及び可動部32の基部31に対する移動に応じて変化する。ワイヤガイド325は、給電電極313とワイヤ変曲部322との間において、各駆動ワイヤ331の、延びる方向に交わる方向のぶれを抑制する。
【0031】
ここで、本実施形態では、配置の都合上、基部31にも円柱状のワイヤガイド315が設けられている。このワイヤガイド315は基部31のベースプレート311から前方に突出している。ワイヤガイド315は樹脂等の絶縁体から形成されている。ワイヤガイド315は、図8Aに示された、フレキシブル基板312に設けられた貫通穴315hを貫通している。図4、及び、図4から一部構成を抜き出した図6に示すように、このワイヤガイド315は、各駆動ワイヤ331の通る経路で、給電電極313とワイヤ変曲部322(前記経路上で給電電極313に最も近いもの)との間に位置している。ワイヤガイド315の外周面に、一対(2本)が第2方向Yに対向している方の各駆動ワイヤ331が当接する。このため、ワイヤガイド315は第1方向Xに対向して2本設けられている。ワイヤガイド315の外周面と各駆動ワイヤ331の当接状態は、各駆動ワイヤ331の伸縮に応じて変化する。このワイヤガイド315は可動部32のワイヤガイド325と同様、給電電極313とワイヤ変曲部322との間において、各駆動ワイヤ331の、延びる方向に交わる方向のぶれを抑制する。
【0032】
基部31と可動部32の一方(本実施形態では可動部32)は永久磁石324を備え、他方(本実施形態では、手ブレ防止機構3における固定側の基部31)はホール素子316を備える。ホール素子316は、図8A図8Bに示すように、第1方向Xに延びる一対(2個)の磁性体314のうち一組(図8Aにおける上側の磁性体314)と、第2方向Yに延びる一対(2個)の磁性体314のうち一組(図8Aにおける左側の磁性体314)であって、各方向に並ぶ2個の磁性体314に挟まれるように設けられている。このホール素子316により、磁性体314に対向した位置に設けられている永久磁石324の発する磁気を検出することにより、基部31に対する可動部32の、第1方向X及び第2方向Yの位置関係を検出する。このようにホール素子316が、各方向に並ぶ2個の磁性体314に挟まれるように設けられていることで、永久磁石324と磁性体314との間の吸引力(磁力)による、基部31と可動部32との光軸方向での位置保持と、基部31に対する可動部32の位置関係の検出を同じ部分で行うことができる。
【0033】
駆動部33は、基部31と可動部32とを連結し、可動部32を第1方向X及び第2方向Yのうちの少なくとも一つの方向に移動させるための駆動力を発する部分である。駆動部33は図4に示すように、駆動ワイヤ331を、第1方向Xに対向するように一対(2本)有し、第2方向Yに対向するように一対(2本)有している。つまり、駆動ワイヤ331は4本用いられている。駆動ワイヤ331は、長さ方向に変形可能(伸縮可能)に構成されている。具体的に、駆動ワイヤ331は、加熱されることで長さ方向に収縮するものであって、本実施形態では形状記憶合金(Shape Memory Alloy、SMA)から形成されている。複数の駆動ワイヤ331は光軸方向に前後にずれて配置されている。このため、伸縮に伴って互いに干渉しない。なお少なくとも、図4に示されている、駆動ワイヤ331同士が光軸方向視で交差する部分とその周囲につき、駆動ワイヤ331が前後にずれて配置されていればよい。駆動ワイヤ331は細いため、光軸方向にずれて配置しても、手ブレ防止機構3の光軸方向の寸法に影響を与えることはほとんどない。駆動ワイヤ331は、例えば横断面が円状である線状のものである。このような形状記憶合金製ワイヤは、汎用品が入手しやすいため、コスト的に有利である。駆動ワイヤ331の太さは長さ方向にわたって一定とされている。また、材質も長さ方向にわたって均質とされている。断面寸法は種々に設定できるが、例えば直径50μmに設定できる。断面寸法は、駆動ワイヤ331の一端から他端までの必要長さ、伸縮の反応精度、耐久性等を考慮して決定できる。駆動ワイヤ331は、加熱がされなくなると、自然冷却により元の長さに戻る。つまり、加熱がされなくなると長さ方向に伸長する。この伸長は、駆動ワイヤ331に外力がかかることでもなされる。外力は、例えば、一対(2本)を構成する他の1本の駆動ワイヤ331が収縮することにより生じる引張力である。
【0034】
駆動ワイヤ331の両端(詳しくは、駆動ワイヤ331のうちで駆動力が生じる部分のうち両端)は基部31(給電電極313)に固定されており、駆動ワイヤ331の中間部は、ワイヤ変曲部322に引っ掛けられることで可動部32に位置ずれ可能に取り付けられている。駆動ワイヤ331の、自由状態(収縮状態及び伸長状態でない)での張力は、弛みが生じない程度に設定されている。駆動ワイヤ331を自由状態で張った状態としておくことにより、反応の俊敏性を確保できる。なお、張力は、携帯端末1の使用が想定される気温変化を考慮して設定することができる。
【0035】
図4に示すように、第1方向Xに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331は、第1方向Xで対称に配置され、第2方向Yに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331は、第2方向Yで対称に配置されている。第1方向Xに対向する一対の駆動ワイヤ331、及び、第2方向Yに対向する一対の駆動ワイヤ331の中心位置に、撮像素子32b1の光軸方向視の中心(長方形または正方形では対角線の交わる位置)が一致するように配置される。駆動ワイヤ331のうち少なくとも1本を変形させる(具体的には、駆動ワイヤ331が加熱されることで収縮する)ことにより、可動部32を駆動ワイヤ331の両端に近づく方向に移動させることができる。
【0036】
本実施形態では、駆動ワイヤ331の加熱は、駆動ワイヤ331自体への通電で生じる抵抗熱を利用してなされる。このため、駆動ワイヤ331の両端は、基部31における給電電極313に電気的に接続されている。給電電極313に対する駆動ワイヤ331の接続は、例えば結び付け、挟み込み、ねじ止め等の物理的結合でなされてもよいし、はんだや導電性接着剤を用いた接着でなされてもよい。給電電極313のうち、駆動ワイヤ331の一端側が固定される側は正極、他端側が固定される側は負極とされている。また、駆動ワイヤ331の中間部は、ワイヤ変曲部322の側面に当接する。駆動ワイヤ331は、給電電極313から供給される電流により自己が発熱することで収縮がなされる。このため本実施形態では、駆動ワイヤ331の収縮は部分的ではなく、全長にわたってなされる。各方向X,Yに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331のうち一方の1本が通電により収縮する際、他方の1本は通電がされないことで非加熱状態とされ、自発的には収縮も伸長もしない。しかし、他方の駆動ワイヤ331は、一方の駆動ワイヤ331の収縮に伴う力を受けて、他方の駆動ワイヤ331自体が有する弾性によって伸長させられる。作用を具体的に説明すると、通電されて収縮する一方の駆動ワイヤ331は、当該駆動ワイヤ331が引っ掛けられたワイヤ変曲部322に対して駆動力を伝達する。これに伴い可動部32が移動する。その結果、移動する可動部32が備える別のワイヤ変曲部322に引っ掛けられた他方の駆動ワイヤ331(非通電)は強制的に伸長させられることになる。このように、本実施形態では、一対を構成する前記駆動ワイヤ331の一方が収縮した場合、前記一対を構成する前記駆動ワイヤ331の他方は伸長するように構成されている。これにより、駆動ワイヤ331の一方により生じる駆動力が駆動ワイヤ331の他方により阻害されない。さらに、駆動ワイヤ331の他方の張力が可動部32にかかった状態で駆動ワイヤ331の一方が収縮することから、可動部32を安定的に移動させられる。ここで外観上、各方向X,Yに対向する一対(それぞれ2本)の駆動ワイヤ331は、一方(1本)が収縮して他方(1本)が伸長するという関係となるから連動するように見える。
【0037】
図4に示された、第1方向X(図示左右方向)に対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331のうち、説明を容易にするために1本を抜き出して図5に示す。なお、第1方向Xに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331のうち、図5に示したものと対向する位置関係にあるものは、図示されているものに対し、光軸方向視で180°対称の動作(図示における左右逆の動作)をする。なお、前述のように、一対(2本)の駆動ワイヤ331は、一方の1本が収縮する際には他方の1本は収縮しないように制御され、同時に両方(2本)の収縮力が対抗しないようにされている。また、第2方向Y(図示上下方向)に対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331のうち、説明を容易にするために1本を抜き出して図6に示す。また、第2方向Yに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331のうち、図6に示したものと対向する位置関係にあるものは、図示されているものに対し、光軸方向視で180°対称の動作(図示における上下逆の動作)をする。なお、第2方向Yに対向する一対の駆動ワイヤ331のそれぞれは、図5に示したものに対し、光軸方向視で90°対称の動作をする(図6参照)。このため、以下の詳細な説明は、図5に関してのみ行う。
【0038】
図5に示した駆動ワイヤ331(一対のうち1本)は、図示した位置関係にて、まず、第1経路331aとして、左上の給電電極313から上側のワイヤガイド325を通り、右上のワイヤ変曲部322まで右斜め上方向に延びる。右上のワイヤ変曲部322で駆動ワイヤ331は下方向に曲げられ、第2経路331bとして、右下のワイヤ変曲部322まで下(真下)方向に延びる。右下のワイヤ変曲部322で駆動ワイヤ331は左方向に曲げられる。次に、第3経路331cとして、右下のワイヤ変曲部322から下側のワイヤガイド325を通り、左下の給電電極313まで左斜め上方向に延びる。このように、本実施形態の駆動ワイヤ331が通る経路(連続する第1経路331a~第3経路331c)は、ほぼ台形の形状(「脚」に相当する第1経路331aと第3経路331cとが対称形状)であって、ワイヤ変曲部322が台形の「下底」(第2経路331bが相当する)と「脚」との交差部分にあり、台形の「上底」を除いた部分の各辺に沿うようにして駆動ワイヤ331が配置されている。なお、駆動ワイヤ331は台形(厳密な台形形状)の辺の全部に沿って配置されている必要はなく、例えばワイヤ変曲部322では駆動ワイヤ331が湾曲することから、台形の辺とは離れて配置されている。
【0039】
この駆動ワイヤ331が通電されると、駆動ワイヤ331全体が長さ方向に収縮する。これにより、図示上下の経路(第1経路331a及び第3経路331c)にて、各径路に沿って図に記載した矢印のうちで左方向(詳しくは、第1経路331aは左斜め下方向、第3経路331cは左斜め上方向)に駆動ワイヤ331が全体的に移動する。図示右側の経路(第2経路331b)においても、この経路の収縮に伴い駆動ワイヤ331が全体的に移動する。給電電極313は固定された基部31に設けられているため、可動部32に設けられた図示上下のワイヤ変曲部322は図示左方向に移動する。従って、可動部32が図5の中央に描かれた矢印の左方向に移動する。一方、駆動ワイヤ331への通電が停止すると、自然冷却により駆動ワイヤ331全体が長さ方向に伸長する。これと同時に、一対を構成するうちで、図5に示していない他の1本の駆動ワイヤ331が自己の有する張力によって収縮する(なお、通電により収縮させることもできる)。これに伴い、前記通電時とは逆に、可動部32が図5の中央に描かれた矢印の右方向に移動する。
【0040】
第1経路331aと第3経路331cとは、第1方向Xに沿う仮想線(図示していない)を基準として対称に配置されている。よって、第1経路331aと第3経路331cとは、長さが等しく、光軸方向視での前記仮想線に対する角度も等しい。また、第1経路331aと第2経路331bとがなす角度と、第2経路331bと第3経路331cとがなす角度も等しい。このように各径路が配置されていることにより、駆動ワイヤ331全体が収縮すると、駆動ワイヤ331が引っ掛けられた、図示上下に位置する二つのワイヤ変曲部322は、前記仮想線に沿って等しい距離を移動する。このため、ワイヤ変曲部322が設けられたベースプレート321も同じ距離を移動する。
【0041】
本実施形態においては、駆動ワイヤ331は4本が図4に示されているように配置されている。第1方向Xに可動部32を移動させる場合、第1方向Xに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331は、1本が通電状態となり、他の1本が非通電状態とされる。また、第2方向Yに可動部32を移動させる場合、第2方向Yに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331は、1本が通電状態となり、他の1本が非通電状態とされる。第1方向X側の駆動ワイヤ331と第2方向Y側の駆動ワイヤ331とは同時に通電されることがある。この場合、斜め方向に可動部32を移動させることができる。第1方向X側の駆動ワイヤ331と第2方向Y側の駆動ワイヤ331に通電する電流に差を設けることで、第1方向Xまたは第2方向Yに対する移動角度を調整できる。
【0042】
ここで比較例として、光軸方向視で正方形に形成した可動部における対角二点を固定点、他の対角二点を動作点に設定し、動作点を形状記憶合金製の駆動ワイヤによって、可動部の周縁に沿う方向である一方向と、前記一方向に直交する他方向に移動させる構成を挙げる。この比較例では、可動部の周縁に沿って直線状に延びる駆動ワイヤが4本配置される。ところが、この比較例では、所望の方向に可動部を移動させるために、二つの動作点を移動させる必要があるが、このためには4本の駆動ワイヤの通電制御(オン、オフ)が複雑になってしまう。
【0043】
これに対し、本実施形態では、第1方向Xに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331のうち1本と、第2方向Yに対向する一対(2本)の駆動ワイヤ331のうち1本とを選択して通電する、または、第1方向Xに対向する一対の駆動ワイヤ331のうち1本のみを通電する、または、第2方向Yに対向する一対の駆動ワイヤ331のうち1本のみを通電するだけで、可動部32を所望の方向に移動させることができる。このため、コスト的に有利な簡略な構成でありながら、高性能な手ブレ防止機構3を実現できる。そして本実施形態では、駆動ワイヤ331を駆動源として用いることにより、手ブレ防止機構3を、従来に比べて共鳴しにくくでき、姿勢差が小さくなり、低コストとできる。
【0044】
次に、カメラモジュール2、またはカメラモジュール2を備えた機器(携帯端末1)は、カメラモジュール2に加えられた振動を検出する振動検出部と、振動検出部が検出した振動に応じて制御を行う制御部(図示しない)と、を備える。なお、携帯端末1におけるカメラモジュール2の手ブレに対応するべく手ブレ防止機構3を制御するための構成(例えば、制御部や、本説明で特記しなかったセンサ類)は、公知の構成を利用できる。振動検出部には、例えば前述したジャイロセンサ11(図1参照)が用いられる。制御部は、振動検出部が検出した振動の大きさに応じて、駆動ワイヤ331を加熱するためのエネルギーの入力(本実施形態では通電)を駆動部33に対して行わせ、振動検出部が振動を検出しなくなると、エネルギーの入力を停止させる。
【0045】
駆動ワイヤ331への入力である通電から、出力である収縮までの時間差を考慮して制御部が制御することにより、手ブレによりカメラモジュール2に加わる振動への応答性を良好にできる。また、制御部により、各方向X,Yに対向する一対の駆動ワイヤ331の一方の通電と他方の通電とを瞬時に切り換えることで、基部31に対する可動部32の俊敏な移動を実現できる。以上のような制御により、カメラモジュール2の手ブレに、撮像素子32b1に影響させないように対応できる。
【0046】
以上、本実施形態についてまとめると、本実施形態は、カメラモジュール2に内蔵される手ブレ防止機構3であって、基部31と、前記基部31に前記カメラモジュール2の光軸方向で対向して設けられた可動部32であって、前記基部31に対して、前記光軸方向に直交する第1方向X、前記光軸方向及び前記第1方向Xに直交する第2方向Y、の各方向に移動可能に支持された可動部32と、前記基部31と前記可動部32とを連結し、前記可動部32を前記第1方向X及び前記第2方向Yのうちの少なくとも一つの方向に移動させるための駆動力を発する駆動部33と、を備え、前記可動部32は撮像素子32b1を備え、前記駆動部33は、駆動ワイヤ331を、前記第1方向Xに対向するように一対有し、前記第2方向Yに対向するように一対有しており、前記駆動ワイヤ331の両端は前記基部31に固定されており、前記駆動ワイヤ331の中間部は前記可動部32に取り付けられており、前記駆動ワイヤ331のうち少なくとも1本を長さ方向に変形させることにより、前記可動部32を前記駆動ワイヤ331の両端に近づく方向に移動させる、手ブレ防止機構3である。
【0047】
この構成によると、各方向X,Yに対向するように一対設けられた、形状記憶合金製の駆動ワイヤ331のうち少なくとも1本を変形させることにより、撮像素子32b1を備えた可動部32を基部31に対して移動させられる。
【0048】
また、前記駆動ワイヤ331は、加熱されることで長さ方向に収縮するものとできる。
【0049】
この構成によると、駆動ワイヤ331の収縮力を、可動部32を基部31に対して移動させる力に利用できる。
【0050】
また、前記一対を構成する前記駆動ワイヤ331の一方が収縮した場合、前記一対を構成する前記駆動ワイヤ331の他方は伸長するものとできる。
【0051】
この構成によると、駆動ワイヤ331の一方により生じる駆動力が駆動ワイヤ331の他方により阻害されない。
【0052】
また、前記駆動ワイヤ331は、形状記憶合金から形成されているものとできる。
【0053】
この構成によると、駆動ワイヤ331を、入手が容易な材料で形成できる。
【0054】
また、前記基部31は給電電極313を備え、前記駆動ワイヤ331の両端は前記給電電極313に固定されることで前記基部31に固定されると共に、前記給電電極313に電気的に接続されており、前記駆動ワイヤ331は、通電により自己が発熱することで前記収縮がなされるものとできる。
【0055】
この構成によると、駆動ワイヤ331が、通電により自己が発熱することで収縮がなされることから、駆動ワイヤ331を加熱させるための別個の加熱手段が不要である。
【0056】
また、前記可動部32は、前記光軸方向視の形状が四角形であって、前記可動部32は、前記基部31に向かって突出したワイヤ変曲部322を四隅に備え、前記ワイヤ変曲部322の側面には、前記駆動ワイヤ331の前記中間部が当接することにより、前記駆動ワイヤ331の前記中間部が前記可動部32に取り付けられているものとできる。
【0057】
この構成によると、可動部32の四隅に備えられたワイヤ変曲部322により、各方向X,Yに対向する一対の駆動ワイヤ331を容易に構成できる。
【0058】
また、前記ワイヤ変曲部322は、前記駆動ワイヤ331が前記光軸方向にずれることを規制する溝または突起を備えるものとできる。
【0059】
この構成によると、溝または突起により、ワイヤ変曲部322が駆動ワイヤ331を光軸方向で安定的に保持できる。
【0060】
また、前記第1方向Xに対向する前記一対の駆動ワイヤ331は、前記第1方向Xで対称に配置され、前記第2方向Yに対向する前記一対の駆動ワイヤ331は、前記第2方向Yで対称に配置され、前記第1方向Xに対向する前記一対の駆動ワイヤ331、及び、前記第2方向Yに対向する前記一対の駆動ワイヤ331の中心位置に、前記撮像素子32b1の前記光軸方向視の中心が一致するものとできる。
【0061】
この構成によると、全ての駆動ワイヤ331が対称配置され、その配置における中心位置に撮像素子32b1の中心を位置させることで、手ブレ防止機構3の構成を単純化できる。
【0062】
また、前記カメラモジュール2に加えられた振動を検出する振動検出部(ジャイロセンサ11等)と、前記振動検出部が検出した振動に応じて制御を行う制御部と、を備えるものとできる。
【0063】
この構成によると、振動検出部が検出した振動に応じて制御部が制御することで、高性能な手ブレ防止機構3とできる。
【0064】
また、前記制御部は、前記振動検出部が検出した振動の大きさに応じて、前記駆動ワイヤ331を変形させるためのエネルギーの入力を前記駆動部33に対して行わせ、前記振動検出部が振動を検出しなくなると、前記エネルギーの入力を停止させるものとできる。
【0065】
この構成によると、制御部により駆動部33に対するエネルギーの入力を制御することで、高性能な手ブレ防止機構3とできる。
【0066】
また、前記基部31と前記可動部32の一方は永久磁石324を備え、他方はホール素子316を備え前記ホール素子316は、前記基部31に対する前記可動部32の、前記第1方向及び前記第2方向のうちの少なくとも一つの方向の位置関係を検出するものとできる。
【0067】
この構成によると、永久磁石324とホール素子316との組み合わせにより、可動部32の移動状態を検出するための構成を単純化できる。
【0068】
また、本実施形態は、前記手ブレ防止機構を内蔵したカメラモジュール2であり、前記カメラモジュール2を備えた携帯端末1である。
【0069】
以上のように構成された本実施形態によると、各方向X,Yに対向するように一対設けられた駆動ワイヤ331により、撮像素子32b1を備えた可動部32を基部31に対して移動させられるため、従来技術よりも優位であって、効率が良く、消費電力が小さく、共鳴が起こらず、コストが低い手ブレ防止機構3と、これを備えたカメラモジュール2、携帯端末1を提供できる。
【0070】
本実施形態は以上のとおりであるが、本発明は、前述した形態に限定されず、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更されることが可能である。また、本発明の作用効果も、前記実施形態で述べたもの限定されない。即ち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく特許請求の範囲によって画定される。また、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0071】
例えば、前記実施形態では、駆動ワイヤ331は、給電電極313から供給される電流により自己が発熱することで収縮がなされるよう構成されていた。しかしこれに限らず、駆動ワイヤ331とは別の熱源を備えてもよい。この場合、給電電極313は不要であり、駆動ワイヤ331の両端は基部31の別の位置に固定される。
【0072】
また、前記実施形態では、駆動ワイヤ331の両端は基部31に固定され、駆動ワイヤ331の中間部は可動部32に取り付けられていた。しかし、これとは逆に、駆動ワイヤ331の両端が可動部32に固定され、駆動ワイヤ331の中間部が基部31に取り付けられた構成であってもよい。
【0073】
また、前記実施形態のワイヤ変曲部322は円柱状の突起であったが、その他、駆動ワイヤ331の伸縮に伴い回転するプーリで実施することもできる。
【0074】
また、前記実施形態では駆動ワイヤ331が4本用いられていた。しかし、手ブレ防止機構3が有する駆動ワイヤ331の本数は限定されない。このため、3本、または5本以上でもよい。なお、複数の駆動ワイヤ331の各々は回転対称位置に配置することが、制御を容易にするため望ましい。
【0075】
また、ワイヤガイド315,325に、駆動ワイヤ331が通る溝を形成し、この溝によってワイヤガイド315,325に対する駆動ワイヤ331の位置決めを行ってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 携帯端末
2 カメラモジュール
3 手ブレ防止機構
31 基部
311 ベースプレート(基部)
312 フレキシブル基板(FPC)
313 給電電極
314 磁性体
315 ワイヤガイド
316 ホール素子
32 可動部
32a 可動機構部
32b 撮像部
32b1 撮像素子
321 ベースプレート(可動部)
322 ワイヤ変曲部
323 回転部
324 永久磁石
33 駆動部
331 駆動ワイヤ
X 第1方向
Y 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールに内蔵される手ブレ防止機構であって、
基部と、
前記基部に前記カメラモジュールの光軸方向で対向して設けられた可動部であって、前記基部に対して、前記光軸方向に直交する第1方向、前記光軸方向及び前記第1方向に直交する第2方向、の各方向に移動可能に支持された可動部と、
前記基部と前記可動部とを連結し、前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向のうちの少なくとも一つの方向に移動させるための駆動力を発する駆動部と、を備え、
前記可動部は撮像素子を備え、
前記駆動部は、駆動ワイヤを、前記第1方向に対向するように一対有し、前記第2方向に対向するように一対有しており、
前記駆動ワイヤの両端は前記基部に固定されており、前記駆動ワイヤの中間部は前記可動部に取り付けられており、
前記駆動ワイヤのうち少なくとも1本を長さ方向に変形させることにより、前記可動部を前記駆動ワイヤの両端に近づく方向に移動させる、手ブレ防止機構。
【請求項2】
前記駆動ワイヤは、加熱されることで長さ方向に収縮する、請求項1に記載の手ブレ防止機構。
【請求項3】
前記一対を構成する前記駆動ワイヤの一方が収縮した場合、前記一対を構成する前記駆動ワイヤの他方は伸長する、請求項1または2に記載の手ブレ防止機構。
【請求項4】
前記駆動ワイヤは、形状記憶合金から形成されている、請求項に記載の手ブレ防止機構。
【請求項5】
前記基部は給電電極を備え、 前記駆動ワイヤの両端は、前記給電電極に固定されることで前記基部に固定されると共に、前記給電電極に電気的に接続されており、
前記駆動ワイヤは、通電により自己が発熱することで前記収縮がなされる、請求項に記載の手ブレ防止機構。
【請求項6】
前記可動部は、前記光軸方向視の形状が四角形であって、
前記可動部は、前記基部に向かって突出したワイヤ変曲部を四隅に備え、
前記ワイヤ変曲部の側面には、前記駆動ワイヤの前記中間部が当接することにより、前記駆動ワイヤの前記中間部が前記可動部に取り付けられている、請求項に記載の手ブレ防止機構。
【請求項7】
前記ワイヤ変曲部は、前記駆動ワイヤが前記光軸方向にずれることを規制する溝または突起を備える、請求項6に記載の手ブレ防止機構。
【請求項8】
前記第1方向に対向する前記一対の駆動ワイヤは、前記第1方向で対称に配置され、
前記第2方向に対向する前記一対の駆動ワイヤは、前記第2方向で対称に配置され、
前記第1方向に対向する前記一対の駆動ワイヤ、及び、前記第2方向に対向する前記一対の駆動ワイヤの中心位置に、前記撮像素子の前記光軸方向視の中心が一致する、請求項に記載の手ブレ防止機構。
【請求項9】
前記カメラモジュールに加えられた振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部が検出した振動に応じて制御を行う制御部と、を備える、請求項に記載の手ブレ防止機構。
【請求項10】
前記制御部は、前記振動検出部が検出した振動の大きさに応じて、前記駆動ワイヤを変形させるためのエネルギーの入力を前記駆動部に対して行わせ、前記振動検出部が振動を検出しなくなると、前記エネルギーの入力を停止させる、請求項9に記載の手ブレ防止機構。
【請求項11】
前記基部と前記可動部の一方は永久磁石を備え、他方はホール素子を備え、
前記ホール素子は、前記基部に対する前記可動部の、前記第1方向及び前記第2方向のうちの少なくとも一つの方向の位置関係を検出する、請求項に記載の手ブレ防止機構。
【請求項12】
請求項に記載の手ブレ防止機構を内蔵したカメラモジュール。
【請求項13】
請求項12に記載のカメラモジュールを備えた携帯端末。
【国際調査報告】