(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】多層固体電解質及びそれらを含むバッテリー
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20241203BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241203BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20241203BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241203BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241203BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20241203BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241203BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241203BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241203BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0585
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M4/58
H01M4/525
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516389
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022076619
(87)【国際公開番号】W WO2023052280
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517132935
【氏名又は名称】フンダシオン セントロ デ インベスティガシオン コオペラティバ デ エネルヒアス アルテルナティバス セイセ エネルヒグネ フンダツィオア
【氏名又は名称原語表記】FUNDACION CENTRO DE INVESTIGACION COOPERATIVA DE ENERGIAS ALTERNATIVAS CIC ENERGIGUNE FUNDAZIOA
【住所又は居所原語表記】Parque Tecnologico de Alava Albert Einstein 48,Edificio CIC E-01510 Vitoria-Gasteiz,Alava SPANA
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ロペス-アラングレン、ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】オルエ、アンデル
(72)【発明者】
【氏名】アグエセ、フレデリク
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM12
5H029AM16
5H029BJ12
5H029EJ04
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
(57)【要約】
本発明は、Li及びNaイオンバッテリーのための多層固体電解質であって、当該固体電解質が、二重伝導性層、より具体的には、イオン伝導性かつ電子伝導性の層を、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層と組み合わせて含む、多層固体電解質に関する。本発明はまた、その調製のための方法、及び上記多層固体電解質を含む固体バッテリーに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liイオン及びNaイオンバッテリーのための多層固体電解質を含む、電気化学Naイオン若しくはLiイオン又はNa金属若しくはLi金属セル、またはNaイオン若しくはLiイオン又はNa金属若しくはLi金属バッテリーであって、前記固体電解質が、
c)イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、又は
-無機固体材料、を含む層と、
d)イオン伝導性かつ電子伝導性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤、又は
-無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む層とを含む、電気化学セル又はバッテリー。
【請求項2】
前記イオン伝導性かつ電子絶縁性の層が、イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩を含む、請求項1に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項3】
前記イオン伝導性かつ電子伝導性の層が、イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩、及び電子伝導性添加剤を含む、請求項1または2に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項4】
前記イオン伝導性ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドグラフト化ポリ(アルケン-交互-無水マレイン酸)(alkene-alt-maleic anhydride)ポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブレンド、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドブロックコポリマー及びポリスチレン-ポリエチレンオキシドブロックポリマーから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項5】
前記イオン伝導性ポリマーが、ポリエチレンオキシドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項6】
前記少なくともリチウム塩が、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム LiCF
3SO
3、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド Li[(CF
3SO
2)
2N]、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド Li[(CF
3CF
2SO
2)
2N]、リチウム(トリフルオロメタンスルホニル)(フルオロスルホニル)イミド Li[(CF
3SO
2)(FSO
2)N]、Li[(C
2F
5SO
2)
2N]、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド Li[(FSO
2)
2N]、Li[(FSO
2)(C
4F
9SO
2)N]及びリチウム(ペルフルオロエチルスルホニル)(フルオロスルホニル)イミド Li[(FSO
2)(CF
3CF
2SO
2)N]から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項7】
前記電子伝導性添加剤が、炭素、グラファイト、グラファイト粉末、グラファイト粉末フレーク、グラファイト粉末スフェロイド、カーボンブラック、活性炭、伝導性炭素、アモルファス炭素、ガラス状炭素、アセチレンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフィン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項8】
前記イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)が、
a)前記イオン伝導性ポリマーとしてのポリエチレンオキシドと、
b)Li[(CF
3SO
2)
2N]及びLi[(CF
3SO
2)(FSO
2)N]から選択されるリチウム塩とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項9】
前記イオン伝導性かつ電子伝導性の層が、
a)前記イオン伝導性ポリマーとしてのポリエチレンオキシドと、
b)Li[(CF
3SO
2)
2N]及びLi[(CF
3SO
2)(FSO
2)N]から選択されるリチウム塩と、
c)単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト及びカーボンブラックから選択される電子伝導性添加剤とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項10】
d)請求項1~9のいずれか一項に定義される多層固体電解質と、
e)負極と、
f)正極と、を含み、
前記多層固体電解質の前記層a)が、前記正極と接触しており、前記多層固体電解質の前記層b)が、前記負極と接触している、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項11】
前記負極が、金属リチウム、リチウム合金形成材料及びリチウムインターカレーション材料から選択される材料を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【請求項12】
前記正極が、リチウム金属酸化物及びリチウム系カンラン石から選択される活性物質を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質の分野に関し、より具体的には、リチウム及びナトリウム金属バッテリーに使用される固体電解質に関する。本発明はまた、固体電解質を含むリチウム及びナトリウムバッテリーの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
固体バッテリー(固体電池、SSB)は、現代社会のパワーデバイスに対する有望な電気化学エネルギー貯蔵技術である。固体電解質は、従来のLiイオンバッテリー(LIB)と比較して、リチウム-金属アノードを使用して、エネルギー密度の実際の飛躍を提供することができると考えられている。しかし、SSBを実際に適用するには、依然として長い道のりがある。リチウムデンドライトの成長及びLi金属アノードから正極への伝播は、固体電解質を使用した場合であっても、依然として問題である(Nature Energy、https://www.nature.com/articles/nenergy2016141;R.Chen,et al.、Chem.Rev.、2020、120、6820-6877)。
【0003】
リチウムの伝播がLi金属から正極へと起こり、Liデンドライトの伝播が両側と接続すると、バッテリーが短絡し、その貯蔵寿命が制限される。固体電解質を通るリチウムの伝播は、Li金属電極におけるリチウムの不均一な電着に起因する場合があり、これはおそらく、これらの構成要素間の不均一な接触のため、Li金属-固体電解質界面における不均一な電流密度分布の存在によるものである。
【0004】
デンドライト成長のメカニズムは、完全には理解されていないが、Li金属と固体電解質(SE)との間の界面が重要な要因であることが知られている。Li金属とSEとの間の不均一な接触は、電極の表面に沿った不均一な電流密度分布の原因であり、したがって、Li金属が蓄積し、正極に向かう電解質の厚みを通って伝播するLi電気めっきのための優先的なスポットに寄与する。デンドライトは、より大きな電流(すなわち、バッテリーのより迅速な充電/放電)及びより大きな面積容量負荷(すなわち、表面領域によってより多くの量のリチウムがめっきされ、ストリッピングされる)で形成する可能性が高い。
【0005】
デンドライトの伝播は、ポリマー及び無機固体電解質を両方とも使用する固体バッテリーで観察されている。
【0006】
これを考慮して、デンドライト形成を低下させ、Li金属-固体電解質界面における電流密度を改善し、均一化するためのいくつかの取り組みがなされてきた。
【0007】
Luhan Ye et al.(Nature、2021、593、218-222)は、グラファイト-LPSCl-LGPS-LPSCI-グラファイトのシーケンスによって形成された多層電解質を含有するLi-金属バッテリーのためのセル構造を記載している。中央のLGPS層は、式Li10Ge1P2S12の固体電解質であり、一方で、LPSCl層は、式Li5.5PS4.5Cl1.5の固体電解質である。対称バッテリーにおいて多層シーケンスグラファイト-LPSCl-LGPS-LPSCI-グラファイトを使用することによって、上述のバッテリーが、顕著な短絡の徴候なく、非常に高い電流密度(20mA/cm2)で、低い過電位でサイクル可能であることが示されている。LPSCl層は、Li/グラファイト層に対する一次界面を安定化させ、全体的な過電位を下げるのに役立ち、高い電流密度での実用的なサイクルを可能にし、一方で、中央のLGPS層は、拡張ネジ効果(マイクロメートルサイズの亀裂を埋め、修復する自己修復コンクリートとして機能する強制された分解に由来する)と同様の効果を示し、Liデンドライト形成を低下させる。
【0008】
Alemayehu et al.、(Nanoscale、2018、10、6125-6138)は、アノードを含まないリチウム-金属バッテリーにおいて、リチウムデンドライトの形成を最小限に抑え、リチウムを均一に堆積させることを目指している。この目的のために、LiTFSI、1,2-ジメトキシエタン/1,3-ジオキソラン(DME/DOL)及びLiNO3の混合物から作製された電解質と、LiFePO4又はLiCoO2のカソードと組み合わせた、ポリエチレンオキシド(PEO)膜でコーティングされた銅電極の使用が開示される。
【0009】
PEO膜コーティングは、リチウムのサイクルを増強し、堆積したリチウムを迎え入れ、これが電解質と過剰に接触するのを防ぐことによってデンドライト形成を抑制することが示されている。リチウムイオンとPEO膜コーティングの極性表面との相互作用は、良好な界面適合性を提供し、サイクル中のリチウムイオンの流れを制御する。
【0010】
一方で、ポリエチレンオキシドは、リチウム-金属バッテリーにおける固体ポリマー電解質としても広く使用されている。このポリマーは、イオン伝導性を有するが、これが65℃未満の温度まで低下すると、主にアモルファス構造から結晶構造への遷移に寄与する。したがって、PEOは、結晶化プロセスを妨害する非常に大きな対イオンを有するリチウム塩と組み合わせて、また、PEOセグメントの効果的な架橋中心として作用するセラミック又は酸化物ナノ粒子と組み合わせて使用され、したがって、ポリマー鎖の再組織化を低下させ、局在化したアモルファス領域を促進する。
【0011】
そのようなポリマーのイオン伝導性を改善し、アモルファス化を増強するために、PEO電解質に炭素添加剤も使用されてきた。しかし、これらの化合物の電子伝導性に起因して、電解質にわたる電気伝導性が短絡を誘発するため、固体電解質としてあまり適したものとはいえない。例えば、カーボンナノチューブ(CNT)の電気伝導性及びバッテリー短絡のリスクは、ポリマー電解質の分野におけるこれらの炭素添加剤の用途を制限している。この理由のために、上述の電子伝導性を低下させるためのいくつかの試みがなされてきた。
【0012】
Ahn et al.、(Metals and Materials International、2006、12(1)、69-73)は、PEO-LiClO4電解質に対する少量かつ十分に分散した多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の使用を記載している。少量であることで、電解質にわたる直接的な電気伝導を回避する。実際に、この文献において、ポリマー鎖の無秩序化及び局在化したアモルファス化を増強するという観点で、MWCNTが酸化物ナノ粒子よりも効果的であり、したがって、この文献では電解質におけるPEO-LiClO4-MWCNTの組み合わせが、上に言及されたアモルファス状態の促進によってイオン伝導性を増加させると結論付けられている。
【0013】
Tang et al.、(Nano Letters、2012、12、1152-1156)は、絶縁クレイ層内に封入された、特に、モンモリロナイトで作製されたカーボンナノチューブに基づく、PEO電解質に組み込まれるハイブリッドナノフィラーの使用を記載している。これらのナノフィラーは、PEO電解質のリチウムイオン伝導性を増加させ、ポリマーの機械的特性を改善するだけではなく、カーボンナノチューブの電気伝導が、CNTに接続されるクレイ板によって遮断され、電気短絡のリスクを排除する。
【0014】
当該技術分野で行われた異なる提案にもかかわらず、デンドライト形成を低下させ、Li金属-固体電解質界面を改善しつつ、増強された伝導特性を有する固体電解質を含むバッテリーを提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、純粋にイオン伝導性の層も有する電解質において、二重伝導性(イオン及び電子)を有する層の使用が、リチウムデンドライトの成長を防止するか、又は少なくとも低減し、Li金属固体バッテリーにおける内部抵抗を低下させることが可能であることを示している。
【0016】
二重伝導特性を有するこの層は、アノードのLi金属と接触して配置され、その電気特性のおかげで電流分布を均質化しつつ、デンドライト成長のバッファ層として作用する。実際に、二重伝導性層の電子伝導性は、Li金属アノードと上述の電解質層との間の界面における電流密度の分布を改善し、したがって、リチウムデンドライト成長及び他の電解質層(純粋なイオン伝導性層)を通る伝播を遮断する。
【0017】
本明細書で提供される実験結果は、電解質の唯一の構成要素としてイオン伝導性層を有するリチウムバッテリーとは対照的に、本発明の電解質は、0.05Cから最大4Cまでの電流を有する全レート能力に耐え、デンドライト形成の証拠なく、0.1Cまで戻すことができることを示している。更に、電解質層を含有する全セルは、高い電流で、より高い放電容量値を示す。同じことがNa金属バッテリーについても予想される。
【0018】
したがって、本発明の第1の態様は、Liイオンバッテリー及びNaイオンバッテリーのための多層固体電解質であって、当該電解質が、
a)イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、又は
-無機固体材料、を含む、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層と、
b)イオン伝導性かつ電子伝導性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤、又は
-無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む、イオン伝導性かつ電子伝導性の層と、を含む、多層固体電解質を指す。
【0019】
本発明の第2の態様は、多層固体電解質を得るための方法であって、当該方法が、
a)イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、又は
-無機固体材料、を含む、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層を提供することと、
b)イオン伝導性かつ電子伝導性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤、又は
-無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む、イオン伝導性かつ電子伝導性の層を提供することと、
c)工程b)で提供されたイオン伝導性かつ電子伝導性の層を、工程a)で提供されたイオン伝導性かつ電子絶縁性の層の上部に配置することと、を含む、方法を指す。
【0020】
本発明の別の態様は、上に定義される多層固体電解質を含む、電気化学Naイオン若しくはLiイオン又はNa金属若しくはLi金属セル、あるいはNaイオン若しくはLiイオン又はNa金属若しくはLi金属バッテリーに関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】固体電解質のストリッピングめっき能力を試験するために使用される2つの構成の模式図。a)対称Li金属セル。b)Li金属全セル。
【
図2】固体電解質層1(a、b)並びに層1及び層2(c)を含む対称セルのストリッピングめっき試験。試験は、前者について0.2及び0.5mAh cm
-2で行われ、後者について0.5mAh cm
-2で行われた。レート能力を0.05Cから最大4Cまで調べた。
【
図3】セル1及びセル2の模式図(左)、並びにC/20から最大2Cまでのレートでのセルの放電容量。
【
図4】RTで測定された層1(セル1)及び層2(セル2)を有するLi金属対称セルの電気化学インピーダンス分光法プロット。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上に述べたように、本発明の第1の態様は、Liイオンバッテリー及びNaイオンバッテリーのための多層固体電解質であって、当該電解質が、
a)イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、又は
-無機固体材料、を含む、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層と、
b)イオン伝導性かつ電子伝導性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤、又は
-無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む、イオン伝導性かつ電子伝導性の層と、を含む、多層固体電解質を指す。
【0023】
イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)及びイオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)は、本文書ではそれぞれ層1及び層2とも呼ばれる。
【0024】
本発明の文脈において、「多層」は、少なくとも別の層によって部分的に、又は完全に覆われたか、又はコーティングされた第1の層を少なくとも含む構造を包含する一般的な用語として使用される。したがって、最も単純な形態では、多層は、二層である。
【0025】
好ましい実施形態において、多層固体電解質は、Liイオンバッテリーのためのものであり、当該電解質は、
a)イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩、又は
-無機固体材料、を含む、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層と、
b)イオン伝導性かつ電子伝導性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩、及び電子伝導性添加剤、又は
-無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む、イオン伝導性かつ電子伝導性の層と、を含む。
【0026】
特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)は、イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩又はナトリウム塩を含む。より特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)は、イオン伝導性ポリマー及び少なくともリチウム塩を含む。
【0027】
別の特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)は、イオン伝導性ポリマーと、リチウム塩又はナトリウム塩との混合物からなる。より特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)は、イオン伝導性ポリマーとリチウム塩との混合物からなる。
【0028】
上述のイオン伝導性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレンオキシド(PEO)誘導体、ポリプロピレンオキシド(PPO)誘導体、ポリテトラヒドロフラン(ポリTHF)誘導体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、イオン解離性基を含むポリマーである。上述のものの少なくとも1つを含む組み合わせも使用可能である。
【0029】
より好ましくは、イオン伝導性ポリマーは、アルキレンオキシド系セグメントを有するイオン伝導性ポリマーである。
【0030】
本明細書で使用される「アルキレンオキシド系セグメントを有するイオン伝導性ポリマー」という語句は、アルキレン基及びエーテル酸素基が交互に整列したアルキレンオキシド鎖構造単位を有するイオン伝導性ポリマーを指す。
【0031】
アルキレンオキシド鎖構造単位は、イオン伝導性ポリマーの主鎖に含まれていてもよく、又はグラフト化形態でイオン伝導性ポリマーに含まれていてもよい。例えば、アルキレンオキシド鎖構造単位は、8~500.000個の炭素原子、例えば、40~250.000個の炭素原子を有するアルキレンオキシド鎖構造単位であってもよい。いくつかの実施形態において、アルキレンオキシド鎖構造単位は、分岐していてもよく、又は櫛様構造を有していてもよい。
【0032】
イオン伝導性ポリマーとしては、シロキサン系ポリマー又はアクリレート系ポリマー、アルキレンオキシド系ポリマーに接続されるポリ(アルケン-交互-無水マレイン酸)(alkene-alt-maleic anhydride)ポリマーを挙げることができる。イオン伝導性ポリマーは、アルキレンオキシド系ポリマーブレンド、シロキサン系ポリマーブレンド、及びアクリレート系ポリマーブレンドポリ(アルケン-交互-無水マレイン酸)ポリマーから選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0033】
特定の実施形態において、イオン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリブチレンオキシド(PBO)、PEO-PPOブレンド、PEO-PBOブレンド、PEO-PPO-PBOブレンド、PEO-PPOブロックコポリマー、PEO-PBOブロックコポリマー、PEO-PPO-PBOブロックコポリマー、PBO-PEO-PBOブロックコポリマー、PEO-PBO-PEOブロックコポリマー、PEOグラフト化ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、PPOグラフト化PMMA、及びPBOグラフト化PMMA、PEO/PPOグラフト化ポリ(アルケン-交互-無水マレイン酸)ポリマーから選択される少なくとも1つであってもよい。
【0034】
より具体的には、イオン伝導性ポリマーは、PEO、PPO、PEO/PPOグラフト化ポリ(アルケン-交互-無水マレイン酸)ポリマー、PEO-PPOブレンド、PEO-PPOブロックコポリマー、PEO-PPO-PEOブロックコポリマー及びポリスチレン-PEOブロックポリマーから選択される少なくとも1つであってもよい。最も好ましい実施形態において、イオン伝導性ポリマーは、PEOである。
【0035】
イオン伝導性ポリマーは、約100,000ダルトン~約7.000.000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。イオン伝導性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば、約200.000ダルトン~約7.000.000ダルトン、例えば、約300.000ダルトン~約5.000.000ダルトンであってもよい。上述の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有するイオン伝導性ポリマーは、適切な鎖長(すなわち、適切な重合度)を有しており、したがって、室温で増強されたイオン伝導性を有していてもよい。しかし、イオン伝導性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に上述の範囲に限定されず、電解質組成物のイオン伝導性を増強するか、又は機械的特性の獲得を表す任意の範囲内であってもよい。
【0036】
リチウム塩に関して、任意のリチウム塩を本発明に使用してもよい。しかし、低い格子エネルギーに起因する良好なイオン伝導性(すなわち、高い解離度)、並びに高い熱安定性及び酸化耐性を有するリチウム塩が好ましい。
【0037】
本発明で使用可能なリチウム塩の例としては、限定されないが、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、ヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsF6、ヨウ化リチウムLiI、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)2N]、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミドLi[(CF3CF2SO2)2N]、Li[(C2F5SO2)2N]、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi[(FSO2)2N]、リチウム(トリフルオロメタンスルホニル)(フルオロスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)(FSO2)N]、Li[(FSO2)(C4F9SO2)N]、リチウム(ペルフルオロエチルスルホニル)(フルオロスルホニル)イミドLi[(FSO2)(CF3CF2SO2)N]、過塩素酸リチウムLiClO4、リチウムビス(オキサラト)ボレートLiB(C2O4)2、リチウムオキサラトジフルオロボレートLi[BF2C2O4]、4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾールのリチウム塩、4,5-ジシアノ-2-トリフルオロメチル-イミダゾールのリチウム塩、4,5-ジシアノ-2-ペンタフルオロエチル-イミダゾールのリチウム塩、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
好ましい実施形態において、リチウム塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)2N]、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミドLi[(CF3CF2SO2)2N]、リチウム(トリフルオロメタンスルホニル)(フルオロスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)(FSO2)N]、Li[(C2F5SO2)2N]、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi[(FSO2)2N]、Li[(FSO2)(C4F9SO2)N]及びリチウム(ペルフルオロエチルスルホニル)(フルオロスルホニル)イミドLi[(FSO2)(CF3CF2SO2)N]から選択される。更により好ましくは、リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)2N]又はリチウム(トリフルオロメタンスルホニル)(フルオロスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)(FSO2)N]であり、最も好ましくは、リチウム塩は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)2N]である。
【0039】
好ましい実施形態において、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)は、
-PEO、PPO、PEO/PPOグラフト化ポリ(アルケン-交互-無水マレイン酸)ポリマー、PEO-PPOブレンド、PEO-PPOブロックコポリマー、及びPEO-PPO-PEOブロックコポリマー及びポリスチレン-PEOブロックポリマーから選択されるイオン伝導性ポリマーと、
-LiCF3SO3、Li[(CF3SO2)2N]、Li[(CF3CF2SO2)2N]、Li[(CF3SO2)(FSO2)N]、Li[(C2F5SO2)2N]、Li[(FSO2)2N]、Li[(FSO2)(C4F9SO2)N]及びLi[(FSO2)(CF3CF2SO2)N]から選択される少なくともリチウム塩と、を含む。
【0040】
最も好ましい実施形態において、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)は、
-イオン伝導性ポリマーとしてのPEOと、
-Li[(CF3SO2)2N]及びLi[(CF3SO2)(FSO2)N]から選択されるリチウム塩と、を含む。
【0041】
更に最も好ましい実施形態において、イオン伝導性ポリマーは、PEOであり、リチウム塩は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)2N]である。
【0042】
別の特定の実施形態において、リチウム塩とイオン伝導性ポリマーのモル比は、1:10~1:30、より好ましくは1:15~1:25、更により好ましくは1:20である。
【0043】
上に述べたように、本発明の多層電解質は、ナトリウムイオンバッテリーにも実装することができる。この特定の場合において、リチウム塩についても必要とされるのと同様に、ナトリウム塩は、好ましくは、良好なイオン伝導性(すなわち、高い解離度)、並びに高い熱安定性及び酸化耐性を有する塩である。
【0044】
本発明で使用可能なナトリウム塩の例としては、限定されないが、Na[R1SO2NSO2R2](ここで、R1及びR2は、独立してフッ素又はフルオロアルキル基から選択される)NaCF3SO3、NaC(CN)3、NaB(C2O4)2及びNaBF2(C2O4)、NaSbF6、NaAsF6、NaBF4、NaClO4、NaPF6、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0045】
好ましい実施形態において、ナトリウム塩は、Na[R1SO2NSO2R2]であり、ここで、R1及びR2は、独立して、F及びCF3から選択され、より好ましくは、両方ともFであるか、又は両方ともCF3である。R1及びR2が両方ともFである場合、得られるアニオンは、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンである(「FSIアニオン」とも呼ばれる)。R1及びR2が両方ともCF3である場合、得られるアニオンは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンである(「TFSIアニオン」とも呼ばれる)。したがって、NaFSI又はNaTFSIの使用が好ましい。
【0046】
別の特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層は、無機固体材料を含む。
【0047】
上述の無機固体材料は、セラミック、例えば、ガーネット、より具体的には、立方晶ガーネット、例えば、Li7La3Zr2O12、又は例えばβ-アルミナ、例えば、Li-β-アルミナ;ペロブスカイト、例えば、Li3.3La0.56TiO3;アルジロダイト、例えば、Li6PS5Cl;硫化物、例えば、Li2S-P2S5;水素化物、例えば、LiBH4;ハロゲン化物、例えば、LiI;NASICON、例えば、LiTi2(PO4)3、Li3Zr2(SiO4)2(PO4);LISICON、例えば、Li14Zn(GeO4)4;ホウ酸塩、例えば、Li2B4O7;並びにリン酸塩、例えば、Li3PO4、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3及びLi1.3Al0.3Ge1.7(PO4)3から選択される材料を含むか、又はそれらから作製される。無機固体材料は、好ましくはガーネット、より好ましくはリチウムガーネットを含むか、又はそれから作製される。
【0048】
リチウムガーネットの例としては、Li5相リチウムガーネット、例えば、Li5La3M1
2O12(ここで、M1は、Nb、Zr、Ta、Sb、又はそれらの組み合わせである);Li6相リチウムガーネット、例えば、Li6DLa2M3
2O12(ここで、Dは、Mg、Ca、Sr、Ba、又はそれらの組み合わせであり、M3は、Nb、Ta、又はそれらの組み合わせである);並びにLi7相リチウムガーネット、例えば、立方晶Li7La3Zr2O12及びLi7Y3Zr2O12が挙げられる。
【0049】
特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)は、イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩又はナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤を含む。より特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)は、イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩、及び電子伝導性添加剤を含む。
【0050】
別の特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)層は、イオン伝導性ポリマーと、リチウム塩又はナトリウム塩と、電子伝導性添加剤との混合物からなる。より特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)層は、イオン伝導性ポリマーと、リチウム塩と、電子伝導性添加剤との混合物からなる。
【0051】
イオン伝導性かつ電子絶縁性の層について上に述べたイオン伝導性ポリマー、リチウム塩及びナトリウム塩のいずれかを、特定の実施形態及び好ましい実施形態を含め、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)にも適用することができる。
【0052】
別の特定の実施形態において、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)は、無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む。
【0053】
イオン伝導性かつ電子絶縁性の層について上に述べた無機固体材料のいずれかを、特定の実施形態及び好ましい実施形態を含め、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)にも適用することができる。
【0054】
電子伝導性添加剤に関して、その非限定的な例としては、炭素、グラファイト、グラファイト粉末、グラファイト粉末フレーク、グラファイト粉末スフェロイド、カーボンブラック、活性炭、伝導性炭素、アモルファス炭素、ガラス状炭素、アセチレンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフィン、又はそれらの任意の組み合わせなどの任意の伝導性炭素が挙げられる。より好ましくは、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの使用である。
【0055】
いくつかの実施形態において、電子伝導性添加剤は、約1~約50ミクロン、又は約2~約30ミクロン、又は約5~約15ミクロンの範囲の粒径を有し得る。
【0056】
電子伝導性添加剤の量は、0.1重量%程度に低くてもよく、層(b)を処理することができるほど高くてもよい。特定の実施形態において、電解質層(b)中の電子伝導性添加剤の総重量パーセントは、約5重量%~20重量%、より好ましくは5~10重量%の範囲であってもよく、重量パーセントは、電解質層(b)の総重量の観点で与えられる。
【0057】
好ましい実施形態において、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)は、
-PEO、PPO、PEO/PPOグラフト化ポリ(アルケン-交互-無水マレイン酸)ポリマー、PEO-PPOブレンド、PEO-PPOブロックコポリマー、及びPEO-PPO-PEOブロックコポリマー及びポリスチレン-PEOブロックポリマーから選択されるイオン伝導性ポリマーと、
-LiCF3SO3、Li[(CF3SO2)2N]、Li[(CF3CF2SO2)2N]、Li[(CF3SO2)(FSO2)N]、Li[(C2F5SO2)2N]、Li[(FSO2)2N]、Li[(FSO2)(C4F9SO2)N]及びLi[(FSO2)(CF3CF2SO2)N]から選択されるリチウム塩と、
-単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、及びグラファイトから選択される電子伝導性添加剤と、を含む。
【0058】
最も好ましい実施形態において、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)は、
-イオン伝導性ポリマーとしてのPEOと、
-Li[(CF3SO2)2N]及びLi[(CF3SO2)(FSO2)N]から選択されるリチウム塩と、
-単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、及びカーボンブラックから選択される電子伝導性添加剤と、を含む。
【0059】
この好ましい実施形態の中で、リチウム塩とPEO伝導性ポリマーのモル比は、1:10~1:30、より好ましくは1:15~1:25で変動してもよく、更により好ましくは1:20である。
【0060】
また、この好ましい実施形態の中で、電子伝導性添加剤は、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(b)の総重量の観点で、5~10重量%の範囲の重量パーセントで存在してもよい。
【0061】
本発明の第2の態様は、上に定義される固体電解質を調製するための方法であって、当該方法が、
a)イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、又は
-無機固体材料、を含む、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層を提供することと、
b)イオン伝導性かつ電子伝導性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤、又は
-無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む、イオン伝導性かつ電子伝導性の層を提供することと、
c)工程b)で提供されたイオン伝導性かつ電子伝導性の層を、工程a)で提供されたイオン伝導性かつ電子絶縁性の層の上部に配置することと、を含む、方法を指す。
【0062】
特定の実施形態において、本発明の方法の工程a)は、イオン伝導性ポリマー、及びリチウム又はナトリウム塩を含むイオン伝導性かつ電子絶縁性の層を提供することからなる。
【0063】
この特定の実施形態の中で、少なくとも1つのリチウム塩又はナトリウム塩及びイオン伝導性ポリマーを、一般的な揮発性溶媒に溶解してもよい。
【0064】
揮発性溶媒の例としては、限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチル-エチル-ケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ギ酸メチル又はギ酸エチル、ジクロロメタンが挙げられる。当業者は、最終生成物に必要とされる最良の特性に従って、溶媒又は溶媒混合物を選択することができるであろう。
【0065】
特定の実施形態において、リチウム塩又はナトリウム塩とイオン伝導性ポリマーのモル比は、1:10~1:30、より好ましくは1:15~1:25で変動し、更により好ましくは1:20である。
【0066】
得られる溶液は、粘性であり、これを基板(例えば、テフロンプレート)上に注ぎ、その後に溶媒を蒸発させてもよい。制御された厚みを有する電解質層又は膜は、得られたままのLi又はNa塩/ポリマー混合物をホットプレスするなどの当業者に既知の任意の方法によって得ることができる。
【0067】
好ましい実施形態において、工程a)によって、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、又は
-無機固体材料、を含む、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層が提供される。
【0068】
より好ましくは、工程a)によって、イオン伝導性ポリマー及び少なくともリチウム塩を含むイオン伝導性かつ電子絶縁性の層が提供される。
【0069】
別の特定の実施形態において、本発明の方法の工程b)は、イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩又はナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤、を含むイオン伝導性かつ電子伝導性の層を提供することからなる。
【0070】
このことは、本発明の方法のイオン伝導性かつ電子絶縁性の層を提供する(工程a)ための上に記載したのと同じ方法によって、但し、イオン伝導性ポリマー及び少なくともリチウム塩又はナトリウム塩を含有する溶液に電子伝導性添加剤を添加して、行うことができる。
【0071】
別の特定の実施形態において、本発明の方法の工程b)は、無機固体材料及び電子伝導性添加剤を含むイオン伝導性かつ電子伝導性の層を提供することからなる。この特定の実施形態の中で、電子伝導性添加剤を、無機材料を含有する溶液に添加してもよい。あるいは、構成要素を、例えば、プラネタリーミル粉砕、モルタル、又は任意の他の混合機によって混合する。
【0072】
本発明はまた、本明細書に記載の実施形態のうちのいずれかの本発明の多層固体電解質を含むハーフセル、セル又はバッテリー(SSB)を対象とする。
【0073】
ハーフセル又はセルは、カソード側及び/又はアノード側を更に含む。
【0074】
バッテリーは、複数の上述のセルを含んでいてもよく、特に、上述のセルの各々の隣接する対は、セパレータ(バイポーラプレートであってもよい)によって分離される。
【0075】
ある実施形態において、本発明のSSBは、リチウムバッテリーである。リチウムバッテリーは、リチウムイオンバッテリー及びリチウム金属バッテリーの両方を包含する。好ましい実施形態において、SSBは、リチウムイオンバッテリーである。
【0076】
ある実施形態において、本発明のSSBは、リチウムイオンバッテリー又はリチウム金属バッテリーである。当業者は、よくある一般的な知識に導かれるため、上述の実施形態は、リチウム-硫黄バッテリーを包含しない。
【0077】
別の実施形態において、本発明のSSBは、ナトリウムバッテリーである。ナトリウムバッテリーは、ナトリウムイオンバッテリー及びナトリウム金属バッテリーの両方を包含する。好ましい実施形態において、SSBは、ナトリウムイオンバッテリーである。
【0078】
ある実施形態において、本発明のSSBは、ナトリウムイオンバッテリー又はナトリウム金属バッテリーである。当業者は、よくある一般的な知識に導かれるため、上述の実施形態は、ナトリウム-硫黄バッテリーを包含しない。
【0079】
実際に、本発明の更なる態様は、セル又はバッテリーであって、
a)上に定義される多層固体電解質と、
b)負極と、
c)正極と、を含み、
固体電解質の層a)が、正極と接触しており、固体電解質の層b)が、負極と接触している、セル又はバッテリーを指す。
【0080】
より好ましくは、バッテリーは、リチウムバッテリーであり、より好ましくは二次リチウムバッテリーである。
【0081】
二次リチウムバッテリーは、再充電可能なリチウムバッテリーである。そのようなバッテリーの電解質と負極の組み合わせは、電極上へのリチウムのめっき/アロイ化(又はインターカレーション)(すなわち、充電)及び電極からのリチウムのストリッピング/脱アロイ化(又は脱インターカレーション)(すなわち、放電)の両方が可能なものでなければならない。
【0082】
バッテリーの文献で一般的に使用されるアノード及びカソードという用語は、特に、再充電可能/二次バッテリーと接続している場合、紛らわしく、誤読し得ることを指摘しておくべきである。より正確な名称を与えるように、本発明のバッテリーの組成物において負極及び正極という用語を含むのは、このためである。
【0083】
負極は、通常はアノードと呼ばれるものに対応し、正極は、通常はカソードと呼ばれるものに対応する。正確に言えば、負極は、放電プロセス中にのみ、アノード(酸化反応が行われる電極)である。再充電中に、負極は、カソード(還元反応が行われる電極)として機能する。これに対応して、正極は、放電中にのみ、カソードとして機能する。再充電中に、正極は、アノードとして機能する。したがって、本明細書全体で使用される場合、負極及び正極という用語が使用され、この段落の学術用語と一致するように読むべきである。
【0084】
更に、本発明のバッテリーは、正極及び負極へと、又はそれらから電流を伝達するための金属箔集電体を含んでいてもよい。
【0085】
本発明のリチウムバッテリーの負極は、通常、基板及び負極材料を含む。
【0086】
基板は、バッテリーにおいて集電体の役割も有していてもよい。したがって、基板は、任意の適切な金属又はアロイによって作製された金属基板であってもよく、例えば、Pt、Au、Ti、Al、W、Cu又はNiといった金属のうちの1つ以上から形成されてもよい。
【0087】
負極材料は、金属リチウム、リチウム合金形成材料、又はリチウムインターカレーション材料であってもよい。リチウムは、デバイスにおいて、これらの材料のいずれかの上/内部で電気化学的に還元されてもよい。
【0088】
特に好ましいのは、Li金属電極、及びAl、Bi、Cd、Mg、Sn、又はSb、Inとアロイ化されたLiを含む電極、例えば、Li-Alである。より好ましくは、負極は、Li金属電極である。
【0089】
正極は、任意の典型的なリチウムインターカレーション材料、例えば、遷移金属酸化物及びそれらのリチウム化合物から形成されてもよい。
【0090】
正極に適した活性物質
の例は、リチウム金属酸化物であり、例えば、
-式LiyNi1-xMxO2(ここで、Mは、少なくとも1つの金属を表し、0≦x≦1、0.8≦y≦1.2)のリチウムニッケルが豊富な層状酸化物、
-式LiNi2-xMxO4(ここで、Mは、少なくとも1つの遷移金属を表し、0≦x≦2)のスピネル酸化物、
-式Li1+xM1-xO2(ここで、Mは、少なくとも1つの遷移金属を表し、0≦x≦1)のリチウムが豊富な層状酸化物、
-式Li2MSiO4(ここで、Mは、Mn、Co若しくはNiである)、式LiMPO4(ここで、Mは、Co若しくはNiである)、式Li2MP2O7(ここで、Mは、Mn、Co若しくはNiである)、又は式Li3V2(PO4)3、Li2VOP2O7、若しくはLiVP2O7のリチウムポリアニオン、あるいは
-式LiyMXO4Z(ここで、yは、0、1、2であり、Mは、遷移金属であり、Xは、P又はSであり、Zは、F、O又はOHである)のリン酸塩又は硫酸塩である。
【0091】
好ましい実施形態において、カソード活性物質は、式LiyNi1-xMxO2(ここで、Mは、少なくとも1つの金属を表し、0≦x≦1、0.8≦y≦1.2)のリチウムニッケルが豊富な層状酸化物である。好ましくは、Mは、Fe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mg、Ca、及びSrのうちの少なくとも1つを表し、より好ましくはCo、Mn、及びAlのうちの少なくとも1つを表し、最も好ましくは、Co及びMnを表す。好ましくは、xは、0.01~0.5の範囲である。最終的に表面処理することができ、かつ/又はわずかに過剰リチオ化することができる適切な活性物質の例は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2 LiNi0.4Co0.2Mn0.4O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.85Co0.05Mn0.1O2、LiNi0.84Co0.06Mn0.09Al0.01O2、LiNi0.85Mg0.15O2である。
【0092】
ある実施形態において、カソード活性物質は、式LiNi2-xMxO4(ここで、Mは、少なくとも1つの遷移金属を表し、0≦x≦2)のスピネル酸化物である。好ましくは、Mは、Mn及びTiのうちの少なくとも1つを表し、適切な活性物質の例は、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.5Mn1.2Ti0.3O4、好ましくはLiNi0.5Mn1.5O4である。
【0093】
ある実施形態において、カソード活性物質は、式Li1+xM1-xO2(ここで、Mは、少なくとも1つの遷移金属を表し、0≦x≦1)のリチウムが豊富な層状酸化物である。Mは、好ましくは、Mn、Ni及びCoのうちの少なくとも1つを表す。好ましくは、リチウムが豊富な層状酸化物は、式xLi2MnO3(1-x)LiMO2(ここで、Mは、少なくとも1つの金属を表し、0≦x≦1)によって表される。好適な活性物質の例は、Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13O2、Li1.2Mn0.6Ni0.2O2(これらは、それぞれ0.5Li2MnO3・0.5LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2及び0.5Li2MnO3・0.5LiNi0.5Mn0.5O2としても表すことができる);Li1.2Co0.4Mn0.4O2、Li1.3Nb0.3Mn0.4O2である。
【0094】
ある実施形態において、カソード活性物質は、式Li2MSiO4(ここで、Mは、Mn、Co若しくはNiである)、式LiMPO4(ここで、Mは、Fe、Mn、Co若しくはNiである)、式Li2MP2O7(ここで、Mは、Mn、Co若しくはNiである)、又は式Li3V2(PO4)3、Li2VOP2O7、若しくはLiVP2O7のリチウムポリアニオンである。
【0095】
ある実施形態において、カソード活性物質は、式LiyMXO4Z(ここで、yは、0、1、2であり、Mは、遷移金属であり、Xは、P又はSであり、Zは、F、O又はOHである)のリン酸塩又は硫酸塩である。Mは、好ましくは、Co、Ni、Mn、V及びFeのうちの1つを表す。好ましくは、材料は、タボライト構造を有する。より好ましくは、正極は、LiFePO4を含むか、又はそれから作製される。
【0096】
当該技術分野で知られているように、遷移金属酸化物コンポジット材料を、適切な形状の集電体に適用されるか、又は適切な形状の集電体へと形成される前に、ポリマー結合剤などの結合剤、及び任意の電子伝導性添加剤と混合してもよい。
【0097】
ある実施形態において、正極は、リチウム金属酸化物及びリチウム系カンラン石から選択される活性物質を含む。
【0098】
好ましい実施形態において、セル又はバッテリーは、負極としてリチウム金属を含み、正極としてLiFePO4を含む。
【0099】
別の実施形態において、バッテリーは、ナトリウムバッテリーであり、より好ましくは二次ナトリウムバッテリーである。
【0100】
この実施形態の中で、負極及び正極は、リチウムバッテリーについて上に定義された負極及び正極の同族体であり、LiがNaに置き換わっている。
【0101】
本明細書に記載のカソードは、市販されており、当該技術分野で、例えば、Li et al.、Chem Soc Rev、2017、46、3006-3059、又はLyu et al.、Sustainable Materials and Technologies、2019、21、e00098からよく知られている。
【0102】
電極及び多層固体電解質を組立てて電気化学セル又はハーフセルを形成する場合、電解質の層1は、負極の表面上に配置され、一方で、電解質の層2は、正極の表面上に配置される。
【0103】
より具体的には、多層固体電解質を含む全セルの組立のために、構成要素を互いに上部に配置することによって、層を積み重ねる。すなわち、電解質の層1は、正極の上部に配置され、次いで、層2は、層1の上部に配置され、最終的に、負極は、層2の上部に配置される。
【0104】
本発明はまた、コンピュータ、スマートフォン、又は携帯用電子機器(例えば、ウェアラブル)などの電子物品において、自動車両、飛行機、船舶、潜水艦、若しくは自転車などの車両において、又はソーラーパネル若しくはウィンドタービンなどに関連するものなどの電力系統において、エネルギー貯蔵のための多層固体電解質、ハーフセル、セル又はバッテリーの使用を対象とする。
【0105】
項目(更なる実施形態)
1.Liイオンバッテリー及びNaイオンバッテリーのための多層固体電解質であって、当該固体電解質が、
a)イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、又は
-無機固体材料、を含む、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層と、
b)イオン伝導性かつ電子伝導性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤、又は
-無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む、イオン伝導性かつ電子伝導性の層と、を含む、多層固体電解質。
【0106】
2.イオン伝導性かつ電子絶縁性の層が、イオン伝導性ポリマー及び少なくともリチウム塩を含む、項目1に記載の固体電解質。
【0107】
3.イオン伝導性かつ電子伝導性の層が、イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩、及び電子伝導性添加剤を含む、項目1に記載の固体電解質。
【0108】
4.イオン伝導性ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドグラフト化ポリ(アルケン-交互-無水マレイン酸)ポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブレンド、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドブロックコポリマー及びポリスチレン-ポリエチレンオキシドブロックポリマーから選択される、項目2又は3に記載の固体電解質。
【0109】
5.イオン伝導性ポリマーが、ポリエチレンオキシドである、項目4に記載の固体電解質。
【0110】
6.少なくともリチウム塩が、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)2N]、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミドLi[(CF3CF2SO2)2N]、リチウム(トリフルオロメタンスルホニル)(フルオロスルホニル)イミドLi[(CF3SO2)(FSO2)N]、Li[(C2F5SO2)2N]、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi[(FSO2)2N]、Li[(FSO2)(C4F9SO2)N]及びリチウム(ペルフルオロエチルスルホニル)(フルオロスルホニル)イミドLi[(FSO2)(CF3CF2SO2)N]から選択される、項目2~5のいずれかに記載の固体電解質。
【0111】
7.電子伝導性添加剤が、炭素、グラファイト、グラファイト粉末、グラファイト粉末フレーク、グラファイト粉末スフェロイド、カーボンブラック、活性炭、伝導性炭素、アモルファス炭素、ガラス状炭素、アセチレンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフィン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、項目1~6のいずれかに記載の固体電解質。
【0112】
8.イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(a)が、
a)イオン伝導性ポリマーとしてのポリエチレンオキシドと、
b)Li[(CF3SO2)2N]及びLi[(CF3SO2)(FSO2)N]から選択されるリチウム塩と、を含む、項目1~7のいずれかに記載の固体電解質。
【0113】
9.イオン伝導性かつ電子伝導性の層が、
a)イオン伝導性ポリマーとしてのポリエチレンオキシドと、
b)Li[(CF3SO2)2N]及びLi[(CF3SO2)(FSO2)N]から選択されるリチウム塩と、
c)単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト及びカーボンブラックから選択される電子伝導性添加剤と、を含む、項目1~8のいずれかに記載の固体電解質。
【0114】
10.項目1~9のいずれかに定義される多層固体電解質を調製するための方法であって、当該方法が、
a)イオン伝導性かつ電子絶縁性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、又は
-無機固体材料、を含む、イオン伝導性かつ電子絶縁性の層を提供することと、
b)イオン伝導性かつ電子伝導性の層であって、
-イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩若しくはナトリウム塩、及び電子伝導性添加剤、又は
-無機固体材料及び電子伝導性添加剤、を含む、イオン伝導性かつ電子伝導性の層を提供することと、
c)工程b)で提供されたイオン伝導性かつ電子伝導性の層を、工程a)で提供されたイオン伝導性かつ電子絶縁性の層の上部に配置することと、を含む、方法。
【0115】
11.項目1~9のいずれかに定義される多層固体電解質を含む、電気化学Liセル又はLiバッテリー。
【0116】
12.項目11に記載の電気化学Liセル又はLiバッテリーであって、
a)項目1~9のいずれかに定義される多層固体電解質と、
b)負極と、
c)正極と、を含み、
多層固体電解質の層a)が、正極と接触しており、多層固体電解質の層b)が、負極と接触している、電気化学Liセル又はLiバッテリー。
【0117】
13.多層固体電解質が、
a)イオン伝導性ポリマー、及び少なくともリチウム塩を含むイオン伝導性かつ電子絶縁性の層と、
b)イオン伝導性ポリマー、少なくともリチウム塩、及び電子伝導性添加剤を含むイオン伝導性かつ電子伝導性の層と、を含む、項目12に記載の電気化学セル又はバッテリー。
【0118】
14.負極が、金属リチウム、リチウム合金形成材料及びリチウムインターカレーション材料から選択される材料を含む、項目12又は13のいずれかに記載の電気化学セル又はバッテリー。
【0119】
15.正極が、リチウム金属酸化物、硫化リチウム及びリチウム系カンラン石から選択される活性物質を含む、項目12~14のいずれかに記載の電気化学セル又はバッテリー。
【0120】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照しつつ、更に詳細に説明する。
【実施例】
【0121】
実施例1:固体電解質の調製
イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(層1)を、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSIとしても知られる)とポリエチレンオキシド(Mw=5M)との混合物から調製した。層の配合物を、エチレンオキシド:Liモル比20:1で固定した。
【0122】
イオン伝導性かつ電子伝導性の層(層2)を、EO:Liモル比20:1に固定したLiTFSI塩とポリエチレンオキシド(Mw=5M)の混合物と、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)からなる電子伝導性添加剤とから調製されたコンポジットポリマーから作製した。上述の多層カーボンナノチューブを、上述の層2の総重量に対して8重量%の量で添加した。
【0123】
実施例2:対称Li金属セルの調製
多層固体電解質を含む対称セルの組立のために、実施例1で調製した層を、構成要素を互いに上部に配置することによって積み重ねた。
図1aは、層の組立体の概略を示す。イオン伝導性かつ電子絶縁性の層(層1)は、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(層2)の2つの層の間に挟まれており、次いで、その全積み重ねが、リチウム金属の2枚の板の間に挟まれており、最終構成がLi金属/層2/層1/層2/Li金属である。
【0124】
実施例3:Li金属バッテリーの調製
図1bは、正極層と、実施例1で調製した2つの層を含む固体電解質と、Li金属アノードとからなる、実施例で使用されるLi金属固体バッテリーセルを示す。
【0125】
観察され得る通り、層1(イオン伝導性であり、かつ電子絶縁性である層)は、カソードと接触して配置され、一方で、層2(イオン伝導性であり、かつ電子伝導性である層)は、アノードと接触して配置された)。
【0126】
正極層(又はカソード層)は、活性物質(LiFePO4)、伝導性添加剤(CNT)及びカソライトを混合することによって調製され、このカソライトは、層1と同じ固体電解質:PEO-Li塩の組成を有し、EO:Liモル比は20:1であり、Li塩は、LiTFSIであった。
【0127】
リチウム金属アノードは、望ましいサイズを有するリチウム金属箔片を切断することによって調製された。
【0128】
多層固体電解質を含む全セルの組立のために、上で調製した異なる層を、構成要素を互いに上部に配置することによって積み重ねた。
図1bに概略が説明されるように、電解質層1がカソード層の上部に配置され、次いで、イオン伝導性かつ電子伝導性の層(層2)が層1の上部に配置され、最後に、リチウム金属アノードが層2の上部に配置された。
【0129】
実施例4:対称な全セル構成における固体電解質の試験
本発明の電解質のストリッピングめっき能力を、実施例2に記載した、固体電解質層1が層2とLi金属板との間に挟まれた対称構成(
図1a)で試験した。
【0130】
0.5mAh・cm-2の面積容量で、C/20から最大4Cまで電流を増加させつつ、対称セルをサイクル試験した。PEO-LiTFSI固体電解質層1及び層2に対する高いイオン伝導性を確保するために、実験を70℃で行った。
【0131】
比較のために、固体電解質として層1のみを有する対称セルも調製し、試験した。比較対称セルを、0.2及び0.5mAh・cm-2の面積容量で、C/20から最大4Cまで電流を増加させつつ、サイクル試験した。
【0132】
0.2mAh・cm
-2の低い面積容量では、比較電解質は、2Cで短絡する前に、最大1Cまで耐える(
図2a)。負荷を0.5mAh・cm
-2まで増加させると、電解質は、電流を0.1Cまで増加させたときに、0.05Cで5サイクルの後に破損した(
図2b)。
【0133】
対照的に、本発明の固体電解質(
図2c)は、0.05Cから最大4Cまでの全レート能力に耐え、デンドライト形成の証拠なく、0.1Cまで戻すことができる。
【0134】
全セル実験のために、固体電解質を、実施例3に記載され、
図1bに示される構成に従って組立を行った。1.0mAh・cm
-2の活性物質負荷を有するセルのレート能力を、C/20から2Cまで、70℃で評価した。
【0135】
また、比較のために、層1を電解質として使用した標準的なセル構成も試験した。
【0136】
したがって、全セルの電気化学試験を、
図3に模式的に表されるセル1及びセル2の構成で行った。
【0137】
セル1は、0.05C及び0.1Cで放電容量を示した。より高い電流では、セルは、電気化学活性を示さず、これはデンドライトの形成に起因する可能性が高い。
【0138】
セル2及びその複製物は、C/20から最大C/5の高い放電容量値を示した。より高い電流では、放電容量は減少したが、セルは、C/2及び1Cで約50mAh/gを放電することができ、2Cで、ある程度の電気化学活性であった。セル2の電気化学の結果は、層2がLi金属と層1との間の界面に含まれるときのその改善が際だっている。
【0139】
加えて、層2は、層1と比較して、Li金属との界面抵抗がより低い。
図4は、層1(セル1)及び層2(セル2)を有する対称Liセルの電気化学インピーダンス分光法プロファイルを示す。
【0140】
セル1は、2つの半球を示す。より低い周波数で現れる2番目の半球は、Li金属/層1界面に起因する。この界面の空気中比抵抗(ASR)は、2100Ωcm2である。電子伝導性添加剤を含む層2の場合、ASRは120Ωcm2であり、層2が含まれる場合の界面レベルでの改善を示している。
【国際調査報告】