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特表2024-545556電源システムで使用するためのフロースルー冷却による機械的障壁素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電源システムで使用するためのフロースルー冷却による機械的障壁素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20241203BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 10/623 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 10/6235 20140101ALI20241203BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20241203BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241203BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20241203BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20241203BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/651
H01M10/6555
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/6568
H01M10/625
H01M10/623
H01M10/6235
H01M50/291
H01M50/204 401H
H01M50/262 E
H01M50/293
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519877
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 IB2022061675
(87)【国際公開番号】W WO2023100141
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/285,680
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506229844
【氏名又は名称】アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヨンギュ
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE03
5H031HH03
5H031HH06
5H031KK02
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA29
5H040AS07
5H040AS12
5H040AS13
5H040AS14
5H040AS15
5H040AS18
5H040AS19
5H040AT04
5H040AY04
5H040AY08
5H040LL01
5H040LL04
(57)【要約】
本開示は、エネルギー貯蔵システムでの熱暴走問題を管理するための材料及びシステムに関する。例示的な実施形態は、障壁を含み、この障壁は、障壁を通した流体の流動を可能にする機械的圧縮性層を有する。さらに本開示は、1つ以上の電池セルを有する電池モジュールまたは電池パック、及び電池セルと熱連通して配置される障壁に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー貯蔵システム内の電池セル間で使用するための障壁であって、
少なくとも1つの絶縁層、及び
前記少なくとも1つの絶縁層に結合された少なくとも1つの圧縮性層であって、一対の剛性プレートと、前記剛性プレート間に配置された1つ以上のばね素子とを含む、前記圧縮性層、
を含む、前記障壁。
【請求項2】
前記一対の剛性プレートの少なくとも1つは、熱伝導性プレートである、請求項1に記載の障壁。
【請求項3】
前記熱伝導性プレートは、少なくとも約200mW/m-Kの熱伝導率を有する、請求項2に記載の障壁。
【請求項4】
前記熱伝導性プレートは、アルミニウム、銅及びステンレス鋼から選択された金属を含む、請求項2または3に記載の障壁。
【請求項5】
前記一対の剛性プレートは、サイズ及び形状において実質的に同一であり、
前記一対の剛性プレートは、アライメントされた配置にあり、前記アライメントされた配置では、前記一対の剛性プレートの一方の外縁部は、前記一対の剛性プレートの他方の外縁部と実質的にアライメントされる、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項6】
ガイドは前記一対の剛性プレートの間に位置決めされ、
前記ガイドは前記剛性プレートを前記アライメントされた配置に維持する、請求項5に記載の障壁。
【請求項7】
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のカンチレバーばね素子を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項8】
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のコイルばねを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項9】
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上の弓ばねを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項10】
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のウェーブスプリングを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項11】
前記ばね素子は、前記電気エネルギー貯蔵システム内の隣接する電池セルに前記剛性プレートを押し付けるように構成される、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項12】
前記ばね素子は、使用中に前記隣接する電池セルが膨張するにつれて、前記ばね素子が圧縮されることを可能にする、ばね定数を有する、請求項11に記載の障壁。
【請求項13】
前記1つ以上のばねは、流路が前記剛性プレート間に形成されるように、前記剛性プレート間に位置決めされる、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項14】
1mm~5mmの間の幅を有する流路は、前記剛性プレート間に形成される、請求項13に記載の障壁。
【請求項15】
前記絶縁層は、前記絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m-K未満、及び600℃で約60mW/m-K未満の熱伝導率を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項16】
前記絶縁層はエアロゲルを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項17】
前記絶縁層は強化材料を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項18】
前記強化材料は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択された繊維である、請求項17に記載の障壁。
【請求項19】
前記絶縁層は1つ以上の添加剤を含み、前記添加剤は前記エアロゲルの少なくとも約5~20重量パーセントのレベルで存在する、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項20】
前記1つ以上の添加剤は火災クラス添加剤を含む、請求項19に記載の障壁。
【請求項21】
前記絶縁層は、約2MPa~約8MPaの曲げ弾性率を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項22】
前記絶縁層は圧縮抵抗を有し、
25%のひずみでの前記圧縮抵抗は、約40kPa~約180kPaの間である、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項23】
前記絶縁層は、対向層によって被包される、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項24】
前記対向層は、炭化水素誘電性流体に不活性である、請求項23に記載の障壁。
【請求項25】
前記対向層は、フッ素系誘電性流体に不活性である、請求項23または24に記載の障壁。
【請求項26】
前記障壁は、非圧縮状態で約5mm~約30mmの間の範囲内の平均厚さを有し、
前記障壁は、約2mm~10mmの間の最小平均厚さまで圧縮可能である、先行請求項のいずれか1項に記載の障壁。
【請求項27】
複数の電池モジュールを含む電池パック中にあり、または複数の電池セルを含む電池モジュール中にあり、前記電池モジュールまたは前記電池セルを互いから熱的に分離させるための先行請求項のいずれか1項に記載の障壁の使用。
【請求項28】
前記電池の一部の1つ以上の電池セルまたは電池モジュール内で起こる暴走事象は、前記電池パック内の電池セルまたは電池モジュールに破損を引き起こさない、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
複数の電池セル、及び
少なくとも1つの障壁が隣接する電池セル間に配置される、請求項1~26のいずれか1項に記載の1つ以上の障壁、
を含む、電池モジュール。
【請求項30】
請求項29に記載の1つ以上の電池モジュール、及び前記電池モジュールに結合された流体移送システムを含み、
前記流体移送システムは流体を前記1つ以上の電池モジュール内に送り、前記流体が前記1つ以上の電池モジュールを通過した後に前記流体を収集する、電源システム。
【請求項31】
前記流体移送システムは、誘電性液体の流体を前記電池モジュール内に送る、請求項30に記載の電源システム。
【請求項32】
前記流体移送システムは、誘電性気体を前記電池モジュール内に送る、請求項30に記載の電源システム。
【請求項33】
前記流体は加熱される、または冷却されることで、前記流体は前記電池モジュール内の前記複数の電池セルをそれぞれ加熱する、または冷却する、請求項30~32のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項34】
前記障壁は隣接する電池セル対の間に流路を画定し、使用中、前記流体は前記流路を通って流れる、請求項30~32のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項35】
前記1つ以上の電池モジュールの少なくとも1つは、前記流路とアライメントされた1つ以上のポートを有する、前記流体移送システムに結合されたマニホールドをさらに含み、使用中、前記流体移送システムからの流体が前記マニホールド内に入り、1つ以上の出口を通って出て、前記流路に入る、請求項34に記載の電源システム。
【請求項36】
前記流体移送システムは、冷却コンポーネントを含み、
前記冷却コンポーネントは、前記流体の温度を前記電池セルの動作温度以下に維持する、請求項30~35のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項37】
電池パックであって、請求項29に記載の複数の電池モジュールと、隣接する電池モジュールの間に配置された、請求項1~26のいずれか1項に記載の障壁とを含む、前記電池パック、及び
前記電池パックに結合された流体移送システムであって、流体を前記電池パック内に送り、前記流体が前記電池パックを通過した後に前記流体を収集する、前記流体移送システム、
を含む、電源システム。
【請求項38】
前記流体移送システムは、誘電性液体の流体を前記電池パック内に送る、請求項37に記載の電源システム。
【請求項39】
前記流体移送システムは、誘電性気体を前記電池パック内に送る、請求項37に記載の電源システム。
【請求項40】
前記流体は加熱される、または冷却されることで、前記流体は前記電池パック内の前記電池モジュールをそれぞれ加熱する、または冷却する、請求項37~39のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項41】
前記障壁は、前記隣接する電池モジュール対の間に流路を画定し、使用中、前記流体は、前記流路を通って流れる、請求項37~40のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項42】
前記障壁内の前記ばね素子は、乱流を生じさせるように前記一対の剛性プレートの間に配置される、請求項41に記載の電源システム。
【請求項43】
前記乱流は、1000より大きいレイノルズ数を有する、請求項42に記載の電源システム。
【請求項44】
前記電池パックは、前記流路とアライメントされた1つ以上のポートを有する、前記流体移送システムに結合されたマニホールドを含み、使用中、前記流体移送システムからの流体が前記マニホールド内に入り、1つ以上の出口を通って出て、前記流路に入る、請求項41~43のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項45】
前記流体移送システムは、冷却コンポーネントを含み、
前記冷却コンポーネントは、前記流体の温度を前記電池セルの動作温度以下に維持する、請求項37~44のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項46】
請求項37~45のいずれか1項に記載の電源システムを含むデバイスまたはビークル。
【請求項47】
前記デバイスは、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、表示パネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザ測距装置、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、エレクトロニクス一体型衣料品、暗視機器、電動工具、計算器、ラジオ、リモコン式アプライアンス、GPSデバイス、ハンドヘルド及びポータブルテレビ、自動車用スタータ、懐中電灯、音響装置、ポータブル暖房装置、ポータブル掃除機、またはポータブル医療機器である、請求項46に記載のデバイス。
【請求項48】
前記ビークルは電気自動車である、請求項46に記載のビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月3日に出願され、「Mechanical Barrier Elements With Flow-Through Cooling For Use In Electrical Power Systems」と題された米国仮特許出願第63/285,680号の利益及び優先権を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に援用されている。
【0002】
本開示は、一般に、エネルギー貯蔵システムでの、熱暴走問題など、熱事象を防止する、または緩和すると同時に、流体冷却を提供するための障壁及びシステムに関する。本開示は、さらに、障壁を含む1つ以上の電池セルを有する電池モジュールまたはパックだけでなく、これらの電池モジュールまたはパックを含むシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池のような充電式電池は、動力駆動及びエネルギー貯蔵システムで広い用途を見いだされてきた。リチウムイオン電池(LIB)は、従来の電池と比較して、動作電圧が高く、メモリ効果が低く、エネルギー密度が高いため、携帯電話、タブレット、ラップトップ、電動工具のようなポータブル電子デバイス、及び電気自動車などの他の高電流デバイスに電力を供給する際に広く使用されている。しかしながら、充電式電池が過充電される(設計電圧を超えて充電される)、過放電される、高温及び高圧で動作する、または高温及び高圧に曝露される場合など、「誤用条件」の下で致命的な不具合をLIBが起こしやすいため、安全性が懸念されている。結果として、動作温度範囲及び充電/放電レートが狭いことにより、それらの設計範囲外の条件を受ける場合、急速な自己発熱または熱暴走事象によってLIBが不具合を起こし得るため、LIBの使用が制限される。
【0004】
図1に示されるように、LIBの電気化学セルは、主に、正極、負極、リチウムイオンを伝導することができる電解液、正極及び負極を分離させるセパレータ、ならびに集電体から構成される。LiCoO、LiFePO、LiMn、LiTiO、LiNi0.8Co0.15Al0.05(NCA)及びLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NMC)はLiイオン電池に広く使用されている6種類のカソード材料である。現在、これら6種類の電池は電池市場のシェアの大半を占める。電解液は、特異的な溶媒(主に、エチレンカルボナート(EC)、ジエチルカルボナート(DEC)、ジメチルカルボナート(DMC)、プロピレンカルボナート(PC)を含む)に溶解したリチウム塩からなる。リチウム塩は、一般的に、LiClO、LiPF、LiBF、LiBOBなどから選択される。セパレータ材料は、一般に、ポリオレフィン系樹脂材料である。ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)系ミクロ多孔質膜は、市販のリチウムイオン電池のセパレータとして一般的に使用される。通常、集電体として正極にはアルミ箔を、そして負極には銅箔を用いる。現在、ハードカーボン、カーボンナノチューブ及びグラフェンを含む炭素系材料は、市販のリチウムイオン電池の負極の大部分の主な選択であり、チタン系酸化物、合金/脱合金材料及び変換材料のような他の新規の負極材料も検討されてきており、良好な熱的及び電気化学的性能を示している。
【0005】
通常条件下でのLIBの動作
通常動作の下では、リチウムイオンは、拡散及び泳動によって一方の電極から、電解液及びセパレータを介して他方の電極へ移動する。
【0006】
LIBを充電すると、電解液中のリチウムイオンはカソードから泳動してセパレータを通り、それら自体がアノードに入る(図2)。電荷平衡電子もアノードに移動するが、充電器内の外部回路を通り移動する。放電の際、逆のプロセスが起こり、電子は、電力が供給されるデバイスを通り流れる(図2)。このプロセス中、熱は3つの主なメカニズムによってセル内で発生する。第一メカニズムは可逆熱であり、この可逆熱は、リチウム化プロセス(放電)及び脱リチウム化プロセス(充電プロセス)中に起こる酸化還元反応に関連するエントロピー変化によって起こる。可逆熱は、エントロピー熱とも呼ばれる。第二メカニズムは、セル内の過電圧によって起こる電極分極に関連する不可逆熱である。最後に、ジュール熱と呼ばれる、オーム損に関連する不可逆熱がある。ジュール熱は、セル内のリチウムイオン及び電子の移動に起因する。通常条件下では、自己発熱は非常に低く、一般的には重要でなく、良好な電池設計または電池熱管理システムによって容易に消散することができる。しかしながら、誤用条件下では、熱暴走を引き起こすいくつかの副反応が起こることがある。熱暴走の原因を理解することにより、機能材料の設計をガイドして、LIBの安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0007】
熱暴走及び熱暴走伝播の概要
熱暴走は、取り除かれることができる熱よりも多く熱が発生している点まで内部反応速度が増加することにより、反応速度及び熱発生の両方がさらに増加する場合に起こり得る。熱暴走の間、高温が電池内の発熱反応の連鎖をトリガすると、電池の温度が急速に上昇する。多くの場合、1つの電池セル内で熱暴走が起こる場合、発生した熱は、熱暴走を受けるセルのすぐ近くにあるセルを急速に加熱する。熱暴走反応に加わる各セルは、反応を継続するための追加のエネルギーを含むため、電池パック内で熱暴走が伝播し(図3)、最終的に発火または爆発を伴う大惨事に至る。熱消散を促し、熱伝達経路の遮断効果があることは、熱暴走伝播によって起こる危険を低減させるのに効果的な対策であることができる。
【0008】
熱暴走の誘起-誤用条件
熱暴走は、機械的誤用、電気的誤用、及び熱的誤用を含む、様々なタイプの誤用によってトリガされることができる(図3)。各タイプの誤用により、電池内で内部短絡(ISC)が誘起され得ると、温度が上昇する可能性がある。誤用条件は外部または内部で開始されることができる。例えば、サービスが誘発する応力、経年劣化、設計、例えば、セル間隔、セル相互接続スタイル、セルフォームファクタなどの構成パラメータの誤り、製造の誤り、操作の誤り、及びメンテナンスの誤りは、様々なタイプの誤用を引き起こすことができる内部要因である。外部要因は、セルの落下または貫通からなど、LIBに対する破損または損傷を含む。
【0009】
機械的誤用
機械的誤用は、主に機械的な力によって起こり、一般に、衝突、圧壊、貫通、及び曲げを含む、過酷なビークル衝突などの外部要因によって起こる。電池または電池パックが衝撃を受ける、または衝突に関与する場合、セパレータの破裂及び引火性電解液の漏れを含む、電池内部の潜在的な破損が起こることで、ISCが開始し、その結果、熱暴走が起こる可能性がある。力が加えられることによって起こる破壊的な変形及び変位は、機械的誤用の2つの共通の特徴である。車の衝突中、電池パックの変形の可能性がかなりある。電気自動車に搭載された電池パックのレイアウトは、電池パックの衝突応答に影響する。電池パックが変形すると、電池セパレータが引き裂かれ得、内部短絡(ISC)が起こり、引火性電解液が漏れると、発火が起こる可能性があるという危険な結果になり得る。貫通は、ビークル衝突の間に起こり得る別の一般的な現象である。圧壊条件と比較して、貫通が始まると、即時に激しいISCがトリガされることができる。機械的破壊及び電気的短絡は同時に起こり、貫通の誤用条件は、単純な機械的または電気的誤用の条件よりも厳しい可能性がある。
【0010】
電気的誤用
電気的誤用は、主に、LIBの内部短絡または外部短絡、過充電、及び過放電を含む。
【0011】
内部短絡は、誤用条件の90%超で起こる。大まかに言えば、内部短絡は、電池セパレータの不具合が原因で、カソード及びアノードが互いに接触したときに起こる。内部短絡は、(1)セパレータが貫通または圧壊によって破壊される場合の機械的誤用、(2)セパレータがデンドライトの成長によって貫通される場合の電気的誤用(図4)、及び(3)セパレータが高温で圧壊する場合の熱的誤用によって起こることができる。
【0012】
外部短絡は、電圧差の有る電極が導体によって接続される場合に形成される。電池パックの外部短絡は、車の衝突中の変形、水浸、導体による混入、またはメンテナンス中の電気ショックなどによって起こることができる。貫通と比較して、一般的に、外部短絡で放出される熱はセルを加熱しない。外部短絡により、主にオーム加熱が発生することが原因で、電池で電流が大きくなり、高熱が発生することができる。温度が約70℃を超え始めると、電池は破裂し始める。結果として、噴出及び電解液漏れがトリガされ得る。
【0013】
過充電は、電池をその設計電圧を超えて充電することとして定義されることができる。過充電は、高い比電流密度、積極的な充電プロファイルなどによってトリガされることができ、電池の電気化学的性能及び安全性に重大な影響を与えるアノード上へのLi金属の析出と、酸素を放出するカソード材料の分解と、熱及びガス状生成物(H、炭化水素、COなど)を放出する有機電解液の分解とを含む、一連の問題を引き起こすことができる。過充電プロセスは、3つのフェーズに分けられることができる。第一フェーズでは、(1)電圧及び温度は影響されず、実質的に変化しないままである。第二フェーズでは、(2)リチウムデンドライト析出が電圧プラットフォームで起こる。そして第三フェーズでは、(3)熱及び気体が発生するにつれて電圧が劇的に降下するため、電池に熱暴走が起こる。
【0014】
過放電は、別の可能な電気的誤用条件である。一般に、電池パック内のセル間の電圧不整合は避けられない。したがって、電池管理システムがいずれかのシングルセルの電圧を監視できなくなると、電圧が最も低いセルは過放電する。過放電誤用メカニズムは他のものとは異なり、潜在的な危険は過小評価され得る。電池パック内の電圧が最も低いセルは、過放電中に直列に接続された他のセルによって強制的に放電することができる。強制放電の間、極が反転し、セルの電圧が負になると、セルの過放電時に異常な熱を発生する。
【0015】
熱的誤用
熱的誤用は、一般的には、過熱によってトリガされる。リチウムイオン電池の過熱は、機械的誤用、電気的誤用、及びコネクタの接触損失によって起こり得る。一般的に、通常の動作温度では、LIBは安定であるが、ある温度を超えると、LIBの安定性はあまり予測可能でなくなり、昇温時に、電池ケース内の化学反応により、気体が発生し、電池ケース内の内部圧力が増加する。これらの気体はカソードとさらに反応し、より多くの熱を放出し、酸素の存在下で電解液を点火することができる温度を電池内またはそれに隣接して発生させることができる。電解液が燃えると、酸素が生成され、さらに燃焼を促進する。ある時点で、電池ケース内の圧力の上昇により、電池ケースが破裂する。気体は、漏れると点火し、燃焼する可能性がある。
【0016】
熱暴走が機械的、電気的及び熱的誤用条件によって起こると、連続的な熱発生を誘起するため、電池内部の温度が上昇する可能性がある。一連の連鎖反応は、温度の上昇に伴って異なる段階で起こり得る。熱暴走は、連鎖反応のメカニズム、例えば、物理的プロセス及び/または化学的プロセスに従い、その間に、電池成分材料の分解反応が次々に起こる(図3)。
【0017】
熱暴走中の連鎖反応の概要
これらの物理的及び/または化学的プロセスの放出を理解することは、LIBの熱暴走のための緩和策を開発するのに役立つ。LIBは、状態I:低温(<0℃)、状態II:常温(0~90℃)、及び状態III:高温(>90℃)を含む、異なる温度状態または領域(図5)で熱暴走に異なる誘因を有することができる。
【0018】
状態Iでは、LIBは、低温で電気化学的反応速度が低下するため、効率的に機能することができない。低温では、電極材料の活性が低下し、電解液中のリチウムイオン拡散速度が低下した結果、電池性能が劇的に低下する。低温での化学反応の減速の結果には、望まれないLi析出、めっき、及びデンドライト成長が含まれる。デンドライトは、電池内のリチウムめっき上に形成されることができる樹状構造体である。それらは、電池のセパレータ、電池のアノードとカソードとの間の多孔質プラスチックフィルムに急速に貫入することができる(図4)。セル内のLi析出及びデンドライト成長は、低温で熱暴走を誘起するための主な寄与要因とみなされる。理論に拘束されることを望むものではないが、望まれないLi析出物及びデンドライトにより、電池内でISCが起こり得、熱暴走に至ると考えられている。
【0019】
状態II(常温動作)では、熱発生は、熱暴走プロセスで発生する熱と比較して最小である。この動作状態の間の熱発生は、主に、固相及び液相でのLiイオンの拡散、固液界面での電気化学反応、ならびに副反応によって起こる。熱発生により、電池内部の温度上昇及び温度差が生じることができ、これらの温度差はリチウムイオン電池の寿命及び安全性に影響する可能性がある。段階IIの間、初期過熱は、電池の過充電、過剰な温度への曝露、配線不良による外部短絡、またはセル不具合による内部短絡のような、上述の少なくとも1つの内部または外部誘因の結果として起こることができる。初期過熱が始まると、電池動作は、温度が90℃に向かい上昇するにつれて、正常から異常状態に変化する。温度が40℃より高くなると、副反応が速くなるため、リチウムイオン電池の寿命が短くなり得、温度が90℃付近またはそれ以上になると、固体電解質界面(SEI)膜の分解をトリガすることができ、これは熱暴走の始まりとして定義される。最初の数回の充電サイクルの間に、リチウムイオン電池のアノード上にSEIが生成される。SEIは、アノード表面上に不動態層を提供し、この不動態層は、さらなる電解液分解を抑制し、多くの用途に必要な長いカレンダー寿命を提供する。SEIの初期分解は、完全熱暴走プロセス中に起こる第一副反応とみなされる。SEIの初期分解は、80~120℃で起こり、ピークは約100℃に位置する。開始温度は、SEI分解が57℃という低い温度から始まり得るとWang et al.(Thermochim.Acta 437(2005)12-16)が報告するように、80℃を下回ることができる。
【0020】
SEIの分解
段階IIIが始まると、内部温度は急速に上昇し、SEI膜が分解する。SEI層は、主に、安定成分(LiF及びLiCOなど)及び準安定成分(ポリマー、ROCOLi、(CHOCOLi)、及びROLi)からなる。しかしながら、準安定成分は、おおよそ>90℃で発熱分解し、引火性ガス及び酸素を放出することができる。SEI膜の分解は、熱暴走の始まりとみなされ、その後、一連の発熱反応がトリガされる。
【0021】
SEIの分解により、温度が上昇し、アノード中のリチウム金属またはインターカレーションされたリチウムは、電解液中の有機溶媒と反応して、引火性炭化水素系ガス(エタン、メタンなど)を放出する。これは、温度をさらに上昇させる発熱反応である。
【0022】
セパレータの分解
T>約130℃の場合、ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)セパレータは、融解し始め、さらに状況を悪化させ、カソードとアノードとの間の短絡を引き起こす。PE/PPセパレータの融解が熱吸着プロセスであるが、セパレータ融解によって起こるISCは、熱暴走プロセスをさらに悪化させる。
【0023】
ガス放出及び電解液の分解
T>約180℃の場合、ISCによる熱発生により、リチウム金属酸化物のカソード材料が分解し、酸素が放出される。カソードのブレークダウンも発熱が大きいため、さらに、温度及び圧力が上昇し、その結果、反応がさらに加速される。次いで、熱蓄積及びガス放出(酸素及び引火性ガス)により、リチウムイオン電池の燃焼及び爆発が誘起される。
【0024】
熱暴走プロセスでは、ISCによって起こる熱発生は2%に過ぎず、化学反応は98%であり、これにはSEI層の分解、電解液の分解などが含まれる。割合が最も高い熱発生は、カソードとアノードとの間の急速な酸化還元反応によって起こり、約48%であり、アノード、カソード及び電解液中の他の化学反応の熱発生ははるかに小さい。最も小さい熱発生は、SEI膜の分解である。
【0025】
熱暴走緩和策の必要性
電池の熱暴走に至るメカニズムの理解に基づいて、電池コンポーネントの合理的な設計によって安全上の問題を軽減させることを目的として、多くのアプローチが研究されている。このような熱暴走事象のカスケードが起こることを防止するために、LIBは、一般的には、貯蔵されるエネルギーを十分に低く保つ、または電池モジュールもしくはパック内のセル間に十分な絶縁材料を使用して、それらを隣接するセルで起こり得る熱事象から絶縁する、またはそれらの組み合わせのいずれかであるように設計される。前者は、そのようなデバイスに潜在的に貯蔵され得るエネルギー量を大幅に制限する。後者は、セルを近接して配置できる程度を制限することによって、実効エネルギー密度を制限する。LIBの熱暴走の可能性を軽減するのに効果的な絶縁及び熱消散策が必要とされている。
【0026】
LIBに使用される現在の熱消散方法
現在、熱暴走のカスケードを防ぎながら、エネルギー密度を最大にするために使用される多くの異なる方法がある。1つのアプローチは、セルまたはセルクラスタ間に十分な量の絶縁体を組み込むことである。このアプローチは、一般に、安全上の観点から望ましいと考えられるが、このアプローチでは、必要な絶縁体の体積と組み合わされた、絶縁材料が熱を含む能力が、達成されることができるエネルギー密度の上限を決定する。別のアプローチは、相変化材料の使用によるものである。これらの材料は、ある昇温に達すると、吸熱相変化を起こす。吸熱相変化は、発生する熱の一部を吸収することによって、局所領域を冷却する。一般的には、電力貯蔵装置の場合、これらの相変化材料は、例えば、ワックス及び脂肪酸などの炭化水素材料に依存する。これらのシステムは冷却に有効であるが、それら自体は燃焼性であるため、一旦貯蔵装置内の点火が起こると、熱暴走の防止に有益でない。イントメッセント系材料の組み込みは、熱暴走のカスケードを防止するための別の策である。これらの材料は、所定の温度を上回ると膨張し、炭化層を生成し、炭化層は軽量で、必要な場合に熱絶縁を提供するように設計される。これらの材料は、絶縁効果を与えるのに有効であることができるが、貯蔵装置の設計では材料の膨張を考慮する必要がある。
【0027】
LIBシステムの機械的要件を満たす新規の熱障壁の必要性
充電及び放電中のアノード及びカソードの膨潤により、セルの寸法が変化する(膨潤する)ことができる。例えば、シリコンはインターカレーション中に最大300%の一般的な体積変化を有し、グラファイトは約10%の体積膨張を有する。この変化は、可逆及び不可逆的な成分の両方を有し、大きさは正確なセルの化学的性質に依存している。セル厚における可逆的な変化は、セルの充電状態(SOC)のみに依存し、その結果として厚さが2%超増加することができる。セルの不可逆的な膨潤は、セル内部の圧力の増加に関連し、SEIの形成によって起こる。この変化の最大の成分は、SEIが最初に形成される場合、第一充電サイクルの間に起こるが、膨潤はセルの寿命の間に継続する。
【0028】
熱暴走の問題を防止するために好ましい熱特性を有する新規の材料を作成するために広範な研究が行われてきたが、それらの材料の機械的特性は、それらの重要性にもかかわらず、あまり注目されていない。例えば、電池モジュールまたは電池パック内のセルの間で使用され、セルの寿命の間に続くセルの膨潤に適応するための圧縮変形に耐性を与えることができる効果的な熱障壁が必要とされている。加えて、電池モジュールの初期組み立て中に、一般的には、1MPa以下の比較的低い負荷をセル間の材料に加える。電池モジュールまたは電池パック内のセルが充電/放電サイクル中に膨張または膨潤すると、約5MPaまでの負荷がセル間の材料に加えられ得る。そのため、材料、例えばセル間の熱障壁の圧縮性、圧縮回復性、及びコンプライアンスが重要な特性である。
【0029】
したがって、熱暴走条件下に効果的な熱絶縁を、そして通常条件下に効果的な熱消散を与えるために、LIBシステムの機械的要件を満たす新規の熱障壁が必要とされている。
【発明の概要】
【0030】
本開示の目的は、充電式電池、例えばリチウムイオン電池の熱暴走を防止するまたは緩和するための、上述の以前の方法及び材料の少なくとも1つの欠点を取り除く、または緩和することである。本明細書で提供される障壁材料は、リチウムイオン電池の安全性を改善するように設計される。
【0031】
特に、本開示の目的は、電池モジュールまたは電池パックでの熱伝播の問題を解決し、1つのセルが熱暴走を有する場合に熱伝播を停止または緩和するために、電気エネルギー貯蔵システムに熱障壁として使用するための障壁を提供することである。本開示の障壁の固有の構成は、セル間の熱伝播の問題の解決に有用であることができる。また本開示の障壁は、電池モジュールまたは電池パックの通常の使用中に発生する熱を消散させるのに有用であることができる。電池モジュールまたは電池パックの温度を調節するのに有用であることができる熱伝達流体に、障壁内に画定された流路を使用して、障壁を通過させることができる。
【0032】
緩和策は、材料レベル、セルレベル、及びシステムレベルで機能することができ、リチウムイオン電池などの充電式電池を使用するエネルギー貯蔵システムの全体的な安全性を保証する。本開示による障壁は、以下の:(1)誤用条件の可能性を低下させること、(2)一度発生した誤用条件を除去すること、(3)誤用条件に対する電池セルの熱安定性を向上させること、(4)通常動作条件及び熱暴走ケースの下で放出されるエネルギーを低減させること、ならびに(5)伝播の危険を緩和し、限られた領域内に破損を制限すること、という緩和ステップのうちの少なくとも1つを実行することができる。
【0033】
本開示の別の目的は、本発明による障壁を含む電池モジュールまたはパックを提供することであり、この障壁は、1つのセルの熱暴走による熱破損から電池パックを保護し、電池パックの安全設計を確保することができる。
【0034】
1つの一般的な態様では、本開示は、エアロゲル組成物、例えば、強化エアロゲル組成物を含む新規の障壁を提供し、これらエアロゲル組成物は、耐久性があり、取り扱いやすく、使用される材料の厚さ及び重量を最小にしながら熱伝播及び火炎伝播への好ましい耐性を有し、そのうえ圧縮性、圧縮回復性、及びコンプライアンスに好ましい特性も有する。例えば、本明細書に開示される態様による障壁は、エアロゲル組成物または強化エアロゲル組成物を含む少なくとも1つの絶縁層を含むことができる。
【0035】
1つの一般的な態様では、本明細書に開示される障壁は、任意の構成の電池の電池セルまたは電池コンポーネント、例えば、パウチセル、円筒形セル、非円形セルだけでなく、そのような任意のセルを組み込むまたは含むパック及びモジュールを分離し、絶縁し、保護するのに有用である。本明細書に開示される障壁は、充電式電池、例えば、リチウムイオン電池、固体電池、ならびに分離、絶縁及び保護が必要な他の任意のエネルギー貯蔵デバイスまたは技術に有用である。
【0036】
1つの一般的な態様では、本開示は、電気エネルギー貯蔵システムの熱消散性能及び熱暴走保護性能を同時に改善するために使用される、電池モジュール及び電池パックを提供することを目的とする。電気エネルギー貯蔵システムでは、多数のセル100が予め選択された配置で(例えば、並列で、直列で、または組み合わせて)合わせてパックされて、電池モジュール200を形成することが一般的である(図6を参照)。多数のそれらのような電池モジュールは、当技術分野で知られているような様々な電池パック300を形成するために組み合わされても、または接合されてもよい。動作及び放電中、それらのようなセル、電池モジュール、または電池パックは、一般に、そこから生じる性能に著しい悪影響を与えることができる熱量を生成する、または発生させる。したがって、それらのようなセルまたは結果として得られる電池モジュールもしくは電池パックによって所望のまたは最適な性能を維持するために、一般に、それらのようなセル、電池モジュールまたは電池パックの温度を非常に狭い所定の範囲内に維持することが重要である。本開示の目的は、それらのようなセル、電池モジュール、または電池パックの温度を最適範囲内に保つことである。
【0037】
セルの温度を所定の範囲内に維持することに加えて、セルの構造健全性を維持することも目的である。セル内の材料は、電池動作中の体積の変化に適応させるために、コンプライアンス及び回復性の両方がある必要がある。いくつかの実施形態では、材料は、熱事象後または熱事象中に構造健全性を維持するために、難燃性または耐火性でなければならない。
【0038】
一態様では、本明細書に、電気エネルギー貯蔵システム内の電池セル間で使用するための障壁が提供され、障壁は、少なくとも1つの絶縁層と、少なくとも1つの絶縁層に結合された少なくとも1つの圧縮性層とを含み、圧縮性層は、一対の剛性プレートと、剛性プレート間に配置された1つ以上のばね素子とを含む。
【0039】
一部の実施形態では、一対の剛性プレートの少なくとも1つは、熱伝導性プレートである。熱伝導性プレートは、少なくとも約200mW/m-Kの熱伝導率を有することができる。熱伝導性プレートは、アルミニウム、銅、またはステンレス鋼など、金属から作製されることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、一対の剛性プレートはサイズ及び形状において同一であり、一対の剛性プレートはアライメントされた配置にある。アライメントされた配置にある場合、一対の剛性プレートの一方の外縁部は一対の剛性プレートの他方の外縁部と実質的にアライメントされる。ガイドは、一対の剛性プレート間に位置決めされ得る。ガイドは剛性プレートをアライメントされた配置に維持するのに有用であることができる。
【0041】
圧縮性層には、様々な異なるばね素子が使用され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のばね素子は、1つ以上のカンチレバーばね素子を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のばね素子は、1つ以上のコイルばねを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のばね素子は、1つ以上の弓ばねを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のばね素子は、1つ以上のウェーブスプリングを含む。また異なるタイプのばねの組み合わせは圧縮性層に使用されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、ばね素子は、電気エネルギー貯蔵システム内の隣接する電池セルに剛性プレートを押し付けるように構成される。ばね素子は、使用中に隣接する電池セルが膨張するにつれて、ばね素子が圧縮されることを可能にする、ばね定数を有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のばねは、流路が剛性プレート間に形成されるように、剛性プレート間に位置決めされる。存在する場合、流路は1mm~5mmの間の幅を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、絶縁層は、絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m-K未満、及び600℃で約60mW/m-K未満の熱伝導率を有する。いくつかの実施形態では、絶縁層はエアロゲルを含む。いくつかの実施形態では、絶縁層は、雲母、ミクロ多孔質シリカ、セラミック繊維、ミネラルウール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された材料をさらに含む。いくつかの実施形態では、絶縁層はエアロゲルを欠き、絶縁層は、雲母、ミクロ多孔質シリカ、セラミック繊維、ミネラルウール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、エアロゲルを含む絶縁層は、強化材料をさらに含む。いくつかの実施形態では、強化材料は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択された繊維である。一部の実施形態では、繊維は、短繊維、織布材料、乾式不織布材料、湿式不織布材料、ニードル不織布、バッティング、ウェッブ、マット、フェルト、及び/またはこれらの組み合わせの形態にある。いくつかの実施形態では、無機繊維は、ガラス繊維、ロックファイバ、金属繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、またはそれらの組み合わせから選択される。1つ以上の実施形態では、エアロゲルは、シリカ系エアロゲルを含む。
【0045】
1つ以上の実施形態では、エアロゲルは、1つ以上の添加剤を含み、添加剤は、エアロゲルの少なくとも約5~40重量パーセントのレベルで、好ましくはエアロゲルの少なくとも約5~20重量パーセントのレベルで、より好ましくはエアロゲルの少なくとも約10~20重量パーセントのレベルで存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤は火災クラスの添加剤を含む。一部の実施形態では、1つ以上の添加剤は、B4C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、AgO、Bi、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化(鉄/チタン)、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化(鉄/チタン)(イルメナイト)、酸化クロム、またはこれらの混合物から選択された不透明化剤を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤は、炭化ケイ素を含有する不透明化剤を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤は火災クラス添加剤及び不透明化剤の組み合わせを含む。
【0046】
1つ以上の実施形態では、エアロゲルは、約0.25g/cc~約1.0g/ccの範囲内の密度を有する。いくつかの実施形態では、エアロゲルは、約2MPa~約8MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、エアロゲルは、約70℃で約10%~約25%の範囲内の圧縮永久ひずみを有する。一部の実施形態では、エアロゲルは圧縮抵抗を示し、25%ひずみでの圧縮抵抗は約40kPa~約180kPaの間である。1つ以上の実施形態では、エアロゲルは、モノリス、ビーズ、粒子、造粒体、粉体、薄膜、シート、またはそれらの組み合わせの形態にある。
【0047】
一部の実施形態では、絶縁層は、対向層によって被包される。炭化水素熱伝達流体が電池モジュールまたは電池パックに使用される場合の実施形態では、対向層は、炭化水素誘電性流体に不活性である。フッ素系熱伝達流体が電池モジュールまたは電池パックに使用される場合の実施形態では、対向層は、フッ素系誘電性流体に不活性である。
【0048】
いくつかの実施形態では、障壁は、非圧縮状態で約5mm~約30mmの間の範囲内の平均厚さを有し、障壁は、約2mm~10mmの間の最小平均厚さまで圧縮可能である。
【0049】
一態様では、本明細書に、複数のシングル電池セルを含む電池モジュールでの上記の態様のいずれかの種々の実施形態の障壁の使用が提供される。別の態様では、本明細書に、複数の電池モジュールを含む電池パックの実施形態での上記の態様のいずれかの種々の実施形態の障壁の使用が提供される。障壁は、シングル電池セルまたはシングル電池モジュールを互いから熱的に分離するために使用され得る。いくつかの実施形態では、電池パックの1つの部分の1つ以上の電池セルまたは電池モジュール内で起こる暴走事象は、上記の態様のいずれか1つによる、電池によって分離される電池パックの部分内の電池セルまたは電池モジュールを破損させない。
【0050】
一態様では、本明細書に、第一表面を有する第一電池セルと、第二表面を有する第二電池セルであって、第二表面が第一表面に対向する関係にある、第二電池セルと、第一表面と第二表面との間に配置された上述の態様のいずれかの様々な実施形態による障壁とを含む、電池モジュールが提供される。いくつかの実施形態では、障壁は、対向する第一表面及び第二表面の表面積の少なくとも約80%を覆う。
【0051】
別の態様では、本明細書に、複数の電池セルと、上記の態様のいずれかの種々の実施形態による障壁とを含む電池モジュールが提供され、障壁は隣接する電池セル間に配置される。
【0052】
一態様では、本明細書に、2つの隣接セルまたは2つの隣接するモジュールの間に配置された複数のセル及びスペーサを含む電池パックが提供され、スペーサは、上記の態様のいずれかの様々な実施形態による障壁を含む。
【0053】
一態様では、電源システムは、上記の態様のいずれかの様々な実施形態によるような1つまたは複数の電池モジュールと、電池モジュールに結合された流体移送システムとを含む。流体移送システムは、流体を電池モジュール内に送り、流体が電池モジュールを通過した後に流体を収集する。流体移送システムは、誘電性液体の流体を電池モジュール内に送る、または誘電性気体を電池モジュール内に送る。いくつかの態様では、流体は加熱される、または冷却されることで、流体は電池モジュール内の複数の電池セルをそれぞれ加熱する、または冷却する。
【0054】
一態様では、上記の態様のいずれかの様々な実施形態による障壁は、電池セルの隣接する対の間に流路を画定する。使用中、流体は流路を通って流れる。いくつかの態様では、電池モジュールは、流路とアライメントされた1つ以上のポートを有する、流体移送システムに結合されたマニホールドを含み、使用中、流体移送システムからの流体はマニホールドに入り、1つ以上の出口を通って出て、流路に入る。流体移送システムは、冷却コンポーネントを含むことができる。冷却コンポーネントは、流体の温度を電池セルの動作温度以下に維持するために使用され得る。
【0055】
一態様では、電源システムは電池パックを含み、電池パックは、複数の電池モジュール、及び前述のように、隣接する電池モジュールと電池パックに結合された流体移送システムとの間に配置された電池を含み、流体移送システムは、流体を電池パック内に送り、流体が電池パックを通過した後に流体を収集する。流体移送システムは、誘電性液体の流体を電池パック内に送る、または誘電性気体を電池パック内に送る。いくつかの態様では、流体は加熱される、または冷却されることで、流体が電池パック内の複数の電池モジュールをそれぞれ加熱する、または冷却する。
【0056】
一態様では、上記の態様のいずれかの様々な実施形態による障壁は、電池モジュールの隣接する対の間に流路を画定する。使用中、流体は流路を通って流れる。いくつかの態様では、電池パックは、流路とアライメントされた1つ以上のポートを有する、流体移送システムに結合されたマニホールドを含み、使用中、流体移送システムからの流体はマニホールド内に入り、1つ以上の出口を通って出て、流路に入る。流体移送システムは、冷却コンポーネントを含むことができる。冷却コンポーネントは、流体の温度を電池モジュールの動作温度以下に維持するために使用され得る。
【0057】
一態様では、障壁内のばね素子は、乱流を生じるように一対の剛性プレートの間に配置される。いくつかの態様では、乱流は、1000より大きいレイノルズ数を有する流動である。
【0058】
別の態様では、本明細書に、上記の態様のいずれか1つによる電池モジュールまたはパックを含むデバイスまたはビークルが提供される。一部の実施形態では、デバイスは、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、表示パネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザ測距装置、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、エレクトロニクス一体型衣料品、暗視機器、電動工具、計算器、ラジオ、リモコン式アプライアンス、GPSデバイス、ハンドヘルド及びポータブルテレビ、自動車用スタータ、懐中電灯、音響装置、ポータブル暖房装置、ポータブル掃除機、またはポータブル医療機器である。一部の実施形態では、ビークルは電気自動車である。
【0059】
本明細書に記載の障壁は、既存の熱暴走緩和策に勝る1つ以上の利点を提供することができる。本明細書に記載の障壁は、電池モジュールまたはパックのエネルギー密度及び組み立てコストに大きい影響を与えることなく、セルの熱暴走伝播を最小にすること、または除去することができる。本開示の障壁は、セルの寿命の間、通常の動作条件下だけでなく熱暴走条件下でも好ましい熱特性を有しながら、継続するセルの膨潤に適応するために圧縮性、圧縮回復性、及びコンプライアンスに好ましい特性を与えることができる。本明細書に記載された障壁は、耐久性があり、取り扱いやすく、使用される材料の厚さ及び重量を最小にしながら熱伝播及び火炎伝播への好ましい耐性を有し、そのうえ圧縮性、圧縮回復性、及びコンプライアンスに好ましい特性も有する。
【0060】
このように本開示を一般的な用語で説明してきたが、これから添付の図面について言及する。図面は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】Liイオン電池の電気化学セルの概略図である。
図2】Liイオン電池内の充放電プロセスの概略図である。
図3】電池モジュール内の熱暴走誤用条件及び熱暴走伝播プロセスを概略的に示す。
図4】電池内のリチリウムめっき上のデンドライト成長の概略図である。
図5】熱暴走プロセスに至る3つの段階を概略的に示す。
図6】電池セル、電池モジュール、及び電池パックを概略的に示す。
図7】本明細書に開示される特定の実施形態による障壁を概略的に示す。
図8】本明細書に開示される特定の実施形態による、代替の障壁構成を概略的に示す。
図9A】障壁の膨張及び圧縮前の電池セルを概略的に示す。
図9B】障壁の膨張及び圧縮後の電池セルを概略的に示す。
図10A】線形ウェーブスプリングを有する圧縮性層の上面図を概略的に示す。
図10B】線形ウェーブスプリングを有する圧縮性層の側面図を概略的に示す。
図11A】カンチレバーばねを有する圧縮性層の上面図を概略的に示す。
図11B】カンチレバーばねを有する圧縮性層の側面図を概略的に示す。
図12】ディンプルばね素子を有する圧縮性層を概略的に示す。
図13】コイルばねを有する圧縮性層を概略的に示す。
図14A】弓ばねを有する圧縮性層の上面図を概略的に示す。
図14B】弓ばねを有する圧縮性層の側面図を概略的に示す。
図15A】剛性プレート内に形成されたインデンテーション内に配置された弓ばねを有する圧縮性層の上面図を概略的に示す。
図15B】剛性プレート内に形成されたインデンテーション内に配置された弓ばねを有する圧縮性層の側面図を概略的に示す。
図16】電池セルの冷却のために、ばね素子によって圧縮性層内に画定された流路の使用を概略的に示す。
図17】熱伝達ユニット、及び熱伝達流体を循環させるポンプを含む流体移送システムに結合された電池モジュールまたは電池パックを含むエネルギー貯蔵システムを概略的に示す。
図18】流体マニホールドを有する電池モジュールまたは電池パックを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付図面への参照が行われ、図面は、本開示が実施されることができる特異的な実施形態の例示によって示される。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造的な変更を行うことができることを理解されたい。
【0063】
本開示が特定のデバイスまたは方法に限定されるものではなく、当然のことながら変更し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、単数及び複数の指示対象を含む。さらに、単語「may」は、本出願全体を通して許容的な意味(すなわち、「する可能性がある」、「することができる」)で使用され、必須の意味(すなわち、「するべきである(must)」)で使用されない。「含む(include)」という用語、及びその派生語は、「を含むが、それに限定されない」を意味する。「結合された(coupled)」という用語は、直接または間接的に連結されていることを意味する。
【0064】
定義
本明細書で使用される場合、「約」は、おおよそまたはほぼを意味し、記載される数値または範囲の文脈では数値の±5%を意味する。一実施形態では、「約」という用語は、数値の有効数字による従来の丸めを含むことができる。さらに、「約「x」~「y」」という表現は、「約「x」~約「y」」を含む。
【0065】
本明細書で使用する場合、「組成物」及び「複合体」という用語は互換的に使用される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「圧縮性パッド」及び「圧縮性層」という用語は互換的に使用される。
【0067】
本開示の文脈内で、「エアロゲル」、「エアロゲル材料」または「エアロゲルマトリックス」という用語は、相互接続された構造体のフレームワークを含み、フレームワーク内に統合されている相互接続された細孔の対応するネットワークを有し、分散された格子間媒体として空気などの気体を含有するゲルを指し、これは、エアロゲルに起因すると考えられる以下の、(a)約2nm~約100nmの範囲の平均細孔径、(b)少なくとも80%以上の空隙率、及び(c)約100m/g以上の表面積、という物理的及び構造的特性(窒素ポロシメトリー試験による)によって特徴付けられる。
【0068】
したがって、本開示のエアロゲル材料は、先の段落に記載された定義要素を満たす任意のエアロゲルまたは他のオープンセル材料を含み、キセロゲル、クライオゲル、アンビゲル、ミクロ多孔性材料などとして他の方法でカテゴリ化されることができる材料を含む。
【0069】
またエアロゲル材料は、さらに、以下の、(d)約2.0mL/g以上、特に約3.0mL/g以上の細孔容積、(e)約0.50g/cc以下、特に約0.3g/cc以下、さらに特に約0.25g/cc以下の密度、及び(f)2~50nmの間の細孔径を有する細孔を含む全細孔容積の少なくとも50%を含む、さらなる物理的特性によって特徴付けられ得る(ただし、本明細書に開示される実施形態は以下にさらに詳細に論じられるように、50nmより大きい細孔径を有する細孔を含むエアロゲルフレームワーク及び組成物を含む)。しかしながら、エアロゲル材料としての化合物の性質決定に、これらの追加の特性を満たす必要はない。
【0070】
本開示の文脈内で、「エアロゲル組成物」という用語は、複合体の成分としてエアロゲル材料を含む任意の複合材料を指す。エアロゲル組成物の例は、繊維強化エアロゲル複合体;不透明化剤などの添加元素を含むエアロゲル複合体;オープンセル型マクロ多孔質フレームワークによって強化されたエアロゲル複合体;エアロゲル-ポリマー複合体;及びエアロゲル微粒子、粒子、造粒体、ビーズ、または粉体を、結合剤、樹脂、セメント、発泡体、ポリマー、または同様の固体材料と組み合わせるような、固体または半固体材料に組み込む複合材料を含むが、これらに限定されない。エアロゲル組成物は、一般に、本明細書に開示される様々なゲル材料から溶媒を除去した後に得られる。このようにして得られたエアロゲル組成物は、さらなる加工処理または処理を受け得る。種々のゲル材料はまた、溶媒の除去(または液体抽出もしくは乾燥)を受ける前に、当該技術でその他の方法で知られている、または有用である追加の加工処理または処理を受けてもよい。
【0071】
本開示のエアロゲル組成物は、強化エアロゲル組成物を含み得る。本開示の文脈内で、「強化エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル材料内に強化相を含むエアロゲル組成物を指し、強化相は、エアロゲルフレームワーク自体の一部ではない。
【0072】
本開示の文脈内で、「繊維強化エアロゲル組成物」という用語は、強化相として繊維強化材料を含む強化エアロゲル組成物を指す。繊維強化材料の例は、限定されないが、短繊維、織布材料、乾式不織布材料、湿式不織布材料、ニードル不織布、バッティング、ウェッブ、マット、フェルト、及び/またはこれらの組み合わせを含む。
【0073】
繊維強化材料は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択されることができる。繊維強化材料は、ポリエステル、ポリオレフィンテレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリカルボナート(例えば、レーヨン、ナイロン)、綿(例えば、DuPont製造ライクラ)、炭素(例えば、グラファイト)、ポリアクリロニトリル(PAN)、酸化型PAN、未炭化熱処理PAN(例えば、SGLカーボン製造のもの)、ガラスまたはガラス繊維系材料(Sガラス、901ガラス、902ガラス、475ガラス、Eガラスなど)、石英のようなシリカ系繊維(例えば、Saint-Gobain製造のQuartzel)、Qフェルト(Johns Manville製造)、Saffil(Saffil製造)、Durablanket(Unifrax製造)及び他のシリカ繊維、Duraback(Carborundum製造)、Kevlar、Nomex、Sontera(全てDuPont製造)、Conex(Taijin製造)のようなポリアラアミド繊維、Tyvek(DuPont製造)、Dyneema(DSM製造)、Spectra(Honeywell製造)のようなポリオレフィン、Typar、Xavan(両方ともDuPont製造)のような他のポリプロピレン繊維、Teflon(DuPont製造)、Goretex(W.L.GORE製造)などの商品名を持つPTFEのようなフルオロポリマー、Nicalon(COI Ceramics製造)のような炭化ケイ素繊維、Nextel(3M製造)のようなセラミック繊維、アクリル系ポリマー、羊毛、絹、アサ、皮革、スエードの繊維、PBO-Zylon繊維(Tyobo製造)、Vectan(Hoechst製造)のような液晶材料、Cambrelle繊維(DuPont製造)、ポリウレタン、ポリアミド、木部繊維、ホウ素、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼の繊維及びPEEK、PES、PEI、PEK、PPSなどの他のサーモプラスチックを含むが、これらに限定されない、材料の範囲を含むことができる。ガラスまたはガラス繊維系の繊維強化材料は、1つ以上の技法を用いて製造されてよい。特定の実施形態では、それらをカーディング及びクロスラッピングまたはエアレイドプロセスを用いて作製することが望ましい。例示的な実施形態では、カーディング及びクロスラッピングされたガラスまたはガラス繊維系の繊維強化材料は、エアレイド材料に勝る特定の利点を提供する。例えば、カーディング及びクロスラッピングされたガラスまたはガラス繊維系の繊維強化材料は、強化材料の所与の坪量に対して一貫した材料厚さを与えることができる。特定の追加の実施形態では、最終エアロゲル組成物中の機械的特性及び他の特性を向上させるために、z方向に繊維を交絡する必要がある繊維強化材料をさらにニードル加工することが望ましい。
【0074】
本開示の文脈内で、「熱暴走」への言及は、一般に、様々な動作要因に起因するセル温度及び圧力の突然の急速な上昇を指し、その結果、関連するモジュール全体にわたる過剰な温度伝播に至ることができる。それらのようなシステムでの熱暴走の潜在的な原因は、例えば、セル不具合及び/または短絡(内部及び外部の両方)、過充電、事故の場合などのセル穿刺または破裂、及び過剰な周囲温度(例えば、一般的には55℃超の温度)を含み得る。通常の使用では、セルは、内部抵抗の結果として熱くなる。通常の電力/電流負荷及び周囲動作条件の下で、ほとんどのLiイオンセル内の温度は、20℃~55℃の範囲内にとどまるように比較的容易に制御されることができる。しかしながら、高いセル/周囲温度での高い電力消費のようなストレスがかかる条件だけでなく、個々のセルの不具合は、局所的な熱発生を急激に増加させる可能性がある。特に、臨界温度を超えると、セル内の発熱化学反応が活性化される。さらに、化学的熱発生は、一般的には、温度と共に指数関数的に増加する。その結果、熱発生は、利用可能な熱消散よりもはるかに大きくなる。熱暴走により、セルが噴出し、内部温度が200℃を超える可能性がある。
【0075】
本開示の文脈内で、「可撓性の」及び「可撓性」という用語は、マクロ構造の不具合なしに曲がるまたは屈曲する材料または組成物の能力を指す。本開示の圧縮性層は、巨視的な不具合なしに、少なくとも5%、少なくとも25%、少なくとも45%、少なくとも65%、または少なくとも85%で圧縮することができる。同様に、「高い可撓性の」または「高い可撓性」という用語は、巨視的な不具合なしに、少なくとも90°まで曲げること、及び/またはUインチ未満の曲げ半径を有することができる材料を指す。さらに、「分類された可撓性」及び「可撓性として分類された」という用語は、ASTM Cl 101(ASTM International,West Conshohocken,PA)に従って可撓性として分類されることができる材料または組成物を指す。
【0076】
本開示の絶縁層は、可撓性、高い可撓性、及び/または分類された可撓性であることができる。また本開示のエアロゲル組成物は、ドレープ性であることができる。本開示の文脈内で、「ドレープ性の」及び「ドレープ性」という用語は、巨視的な不具合なしに、約4インチ以下の曲率半径で90°以上に曲がるまたは屈曲する材料の能力を指す。本開示の特定の実施形態による絶縁層は、組成物が非剛性であるように可撓性であり、3次元の表面または物体に適用されても、適合されてもよく、または設置もしくは適用を単純化するために様々な形状及び構成に予め形成されてもよい。
【0077】
本開示の文脈内で、「添加剤」または「添加元素」という用語は、エアロゲルの製造前、製造中、または製造後にエアロゲル組成物に添加され得る材料を指す。添加剤を添加して、エアロゲル中の望ましい特性を変更しても、もしくは改善しても、またはエアロゲル中の望ましくない特性を打ち消してもよい。添加剤は、一般的には、前駆体液体へのゲル化の前、遷移状態材料へのゲル化の間、または固体もしくは半固体材料へのゲル化の後のいずれかで、エアロゲル材料に添加される。
【0078】
添加剤の例としては、マイクロファイバ、フィラー、強化剤、安定剤、増粘剤、弾性化合物、不透明化剤、着色または色素沈着化合物、放射吸収化合物、放射反射化合物、火災クラス添加剤、腐食防止剤、熱伝導性成分、熱容量を与える成分、相変化材料、pH調整剤、酸化還元調整剤、HCN緩和剤、オフガス緩和剤、導電性化合物、電気誘電体化合物、磁性化合物、レーダー遮断成分、硬化剤、収縮防止剤、及び当業者に既知の他のエアロゲル添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるエアロゲル組成物、強化エアロゲル組成物、及び障壁は、高温事象中に実行することができ、例えば、本明細書に開示されるような高温事象中に熱保護を与えることができる。高温事象は、少なくとも2秒間、少なくとも約1cmの領域にわたる、少なくとも約25kW/m、少なくとも約30kW/m、少なくとも約35kW/m、または少なくとも約40kW/mの持続した熱流束によって特徴付けられる。約40kW/mの熱流束は、一般的な発火(Behavior of Charring Solids under Fire-Level Heat Fluxes;Milosavljevic,I.,Suuberg,E.M.;NISTIR 5499;September 1994)から生じるものと関連している。特別な場合、高温事象は、熱流束であり、少なくとも1分の持続時間、少なくとも約10cmの領域にわたる約40kW/mの熱流束である。
【0080】
本開示の文脈内で、「熱伝導率」及び「TC」という用語は、材料または組成物の両側の2つの表面の間で、温度差が2つの表面の間にある状態で、熱を伝達する材料または組成物の能力の測定値を指す。具体的には、熱伝導率は、単位時間あたりかつ単位表面積あたりに伝達される熱エネルギーを温度差で除算したものとして測定される。それは、一般的には、mW/mK(メートルケルビンあたりのミリワット)としてSI単位で記録される。材料の熱伝導率は、Test Method for Steady-State Thermal Transmission Properties by Means of the Heat Flow Meter Apparatus(ASTM C518,ASTM International,West Conshohocken,PA);Test Method for Steady-State Heat Flux Measurements and Thermal Transmission Properties by Means of the Guarded-Hot-Plate Apparatus(ASTM C177,ASTM International,West Conshohocken,PA);Test Method for Steady-State Heat Transfer Properties of Pipe Insulation(ASTM C335,ASTM International,West Conshohocken,PA);Thin Heater Thermal Conductivity Test(ASTM C1114,ASTM International,West Conshohocken,PA);Standard Test Method for Thermal Transmission Properties of Thermally Conductive Electrical Insulation Materials(ASTM D5470,ASTM International,West Conshohocken,PA);Determination of thermal resistance by means of guarded hot plate and heat flow meter methods(EN 12667,British Standards Institution,United Kingdom);またはDetermination of steady-state thermal resistance and related properties-Guarded hot plate apparatus(ISO 8203,International Organization for Standardization,Switzerland)を含むが、これらに限定されない、当技術分野で既知の試験方法によって決定され得る。異なる結果をもたらす可能性のある異なる方法により、本開示の文脈内で、明示的に別段の記載がない限り、熱伝導率測定値がASTM C518規格(Test Method for Steady-State Thermal Transmission Properties by Means of the Heat Flow Meter Apparatus)に従って、約37.5℃の温度で、周囲環境中の大気圧で、約2psiの圧縮荷重下で取得されることを理解されたい。ASTM C518に従って報告された測定値は、一般的には、圧縮荷重に対する任意の関連する調整を伴うEN 12667に従って行われた任意の測定値と良好に相関する。
【0081】
また熱伝導率測定値は、約10℃の温度で大気圧での圧縮下に取得されることもできる。10℃での熱伝導率測定値は、37.5℃での対応する熱伝導率測定値よりも一般に0.5~0.7mW/mK低い。特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、10℃で、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の熱伝導率を有する。
【0082】
本開示の文脈内で、「密度」という用語は、材料または組成物の単位体積あたりの質量の測定値を指す。「密度」という用語は、一般に、材料の見かけの密度だけでなく、組成物のかさ密度を指す。密度は、一般的には、kg/m、またはg/ccとして記録される。材料または組成物、例えばエアロゲルの密度は、当技術分野で既知の方法によって決定され得、この方法としては、限定されないが、Standard Test Method for Dimensions and Density of Preformed Block and Board-Type Thermal Insulation(ASTM C303,ASTM International,West Conshohocken,PA);Standard Test Methods for Thickness and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations(ASTM C167,ASTM International,West Conshohocken,PA);Determination of the apparent density of preformed pipe insulation(EN 13470,British Standards Institution,United Kingdom);またはDetermination of the apparent density of preformed pipe insulation(ISO 18098,International Organization for Standardization,Switzerland)が挙げられ得る。異なる結果をもたらす可能性のある異なる方法により、本開示の文脈内で、密度測定が、特に記載のない限り、ASTM C167規格(Standard Test Methods for Thickness and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations)に従って厚さ測定に2psiの圧縮で取得されることを理解されたい。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約1.0g/cc以下、約0.90g/cc以下、約0.80g/cc以下、約0.70g/cc以下、約0.60g/cc以下、約0.50g/cc以下、約0.40g/cc以下、約0.30g/cc以下、約0.25g/cc以下、約0.20g/cc以下、約0.18g/cc以下、約0.16g/cc以下、約0.14g/cc以下、約0.12g/cc以下、約0.10g/cc以下、約0.05g/cc以下、約0.01g/cc以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の密度を有する。
【0083】
エアロゲル材料または組成物の疎水性は、水蒸気取り込み量の観点から表されることができる。本開示の文脈内で、「水蒸気取り込み量」という用語は、エアロゲル材料または組成物が水蒸気を吸収する可能性の測定値を指す。水蒸気取り込み量は、特定の測定条件下で水蒸気に曝露された場合、エアロゲル材料または組成物によって吸収される、またはその他の方法で保持される水の(重量)パーセントとして表されることができる。エアロゲル材料または組成物の水蒸気取り込み量は、Standard Test Method for Determining the Water Vapor Sorption of Unfaced Mineral Fiber Insulation(ASTM C1104,ASTM International,West Conshohocken,PA);Thermal insulating products for building applications:Determination of long term water absorption by diffusion(EN 12088,British Standards Institution,United Kingdom)を含むが、これらに限定されない、当技術分野で知られている方法によって決定され得る。異なる結果をもたらす可能性のある異なる方法により、本開示の文脈内で、水蒸気取り込み量の測定が、特に記載のない限り、ASTM C1104規格(Standard Test Method for Determining the Water Vapor Sorption of Unfaced Mineral Fiber Insulation)に従って、周囲圧力下で49℃及び95%湿度で24時間(ASTM C1104規格に従って96時間から修正される)取得されることを理解されたい。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約50wt%以下、約40wt%以下、約30wt%以下、約20wt%以下、約15wt%以下、約10wt%以下、約8wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下、約1wt%以下、約0.1wt%以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の水蒸気取り込み量を有することができる。エアロゲル材料または組成物は、別のエアロゲル材料または組成物と比較して水蒸気取り込み量が改善されており、参照エアロゲル材料または組成物と比較して、水蒸気取り込み量/保持量のパーセントが低い。
【0084】
エアロゲル材料または組成物の疎水性は、材料表面と水滴の界面での平衡接触角を測定することによって表されることができる。本開示のエアロゲル材料または組成物は、約90°以上、約120°以上、約130°以上、約140°以上、約150°以上、約160°以上、約170°以上、約175°以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の水接触角を有することができる。
【0085】
本開示の文脈内で、「燃焼熱」、「HOC」、及び「ΔΗC」という用語は、材料または組成物の燃焼または発熱の熱分解中に放出される熱エネルギーの量の測定値を指す。燃焼熱は、一般的には、エアロゲル材料もしくは組成物1グラムあたりに放出される熱エネルギーのカロリー(cal/g)で、または材料もしくは組成物1キログムあたりに放出される熱エネルギーのメガジュール(MJ/kg)として記録される。材料または組成物の燃焼熱は、Reaction to fire tests for products-Determination of the gross heat of combustion(calorific value)(EN ISO 1716,International Organization for Standardization,Switzerland;EN adopted)が含まれるが、これに限定されない、当該技術分野で既知の方法によって決定され得る。本開示の文脈内で、燃焼熱の測定値は、特に明記しない限り、EN ISO 1716規格(Reaction to fire tests for products-Determination of the gross heat of combustion(calorific value))に従って取得される。
【0086】
本開示の文脈内で、全ての熱分析及び関連する定義は、25℃で開始し、周囲圧力の空気中に毎分20℃のランプレートで1000℃まで上昇させることによって実行される測定を参照する。したがって、熱分解の開始、熱放出のピーク温度、熱吸収のピーク温度などを測定して計算する際に、これらのパラメータの任意の変化を考慮する(またはこれらの条件下で再実行する)必要がある。
【0087】
本開示の文脈内で、「熱分解の開始」及び「TD」という用語は、有機材料の分解からの急速な発熱反応が材料または組成物内に現れる環境熱の最低温度の測定値を指す。材料または組成物内の有機材料の熱分解の開始は、熱重量分析(TGA)を用いて測定され得る。材料のTGA曲線は、周囲温度の上昇に曝露される場合の材料の重量損失(%質量)を示し、すなわち、熱分解を指示する。材料の熱分解の開始は、TGA曲線の以下の接線:TGA曲線のベースラインに対する接線、及び有機材料の分解に関連する急速な発熱分解事象の間の最大勾配点でのTGA曲線に対する接線の交点と相関されることができる。本開示の文脈内で、有機材料の熱分解の開始の測定値は、別段の記載がない限り、この段落に提供されるようなTGA分析を用いて取得される。
【0088】
また材料の熱分解の開始は、示差走査熱量測定(DSC)分析を用いて測定されてもよい。材料のDSC曲線は、周囲温度の漸増に曝露される場合に材料によって放出される熱エネルギー(mW/mg)を示す。材料の熱分解温度の開始は、ΔmW/mg(熱エネルギー出力の変化)が最大に増加するDSC曲線での点と相関されることができるため、エアロゲル材料からの発熱の熱生成を指示することができる。本開示の文脈内で、DSC、TGA、またはその両方を用いた熱分解の開始の測定値は、特に明記しない限り、前の段落でさらに定義されるような20℃/minの温度ランプレートを用いて取得される。DSC及びTGAはそれぞれ熱分解のこの開始に同様の値を提供し、多くの場合、試験は同時に行われるため、その結果は両方から得られる。
【0089】
本開示の文脈内で、「吸熱分解の開始」及び「TED」という用語は、分解または脱水による吸熱反応が材料または組成物内に現れる環境熱の最低温度の測定値を指す。材料または組成物の吸熱分解の開始は、熱重量分析(TGA)を用いて測定され得る。材料のTGA曲線は、周囲温度の上昇に曝露される場合の材料の重量損失(%質量)を示す。材料の熱分解の開始は、TGA曲線の以下の接線:TGA曲線のベースラインに対する接線、及び材料の急速な吸熱分解または脱水の間の最大勾配点でのTGA曲線に対する接線の交点と相関され得る。本開示の文脈内で、材料の吸熱分解の開始の測定値は、別段の記載がない限り、この段落に提供されるようなTGA分析を用いて取得される。
【0090】
本開示の文脈内で、「炉温上昇」及び「ΔΤR」という用語は、熱分解条件下での材料または組成物のベースライン温度(通常、最終温度またはTFIN)に対する、熱分解条件下でのその材料または組成物の最高温度(TMAX)の間の差の測定値を指す。炉温の上昇は、一般的には、摂氏度または℃で記録される。材料または組成物の炉温上昇は、当技術分野で既知の方法によって決定され得、これには、Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test(EN ISO 1182,International Organization for Standardization,Switzerland;EN adopted)が含まれるが、これらに限定されない。本開示の文脈内で、炉温度上昇測定値は、特に明記しない限り、EN ISO 1182規格(Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test)に匹敵する条件に従って取得される。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル組成物は、約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下、約45℃以下、約40℃以下、約38℃以下、約36℃以下、約34℃以下、約32℃以下、約30℃以下、約28℃以下、約26℃以下、約24℃以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の炉温上昇を有することができる。昇温での組成安定性の文脈内で、例えば、第二組成物の炉温上昇よりも低い炉温上昇を有する第一組成物は、第二組成物に対する第一組成物の改善とみなされる。本明細書では、1つ以上の火災クラス添加剤を添加する場合、組成物の炉温上昇が火災クラス添加剤を含まない組成物と比較して低減することが企図される。
【0091】
本開示の文脈内で、「火炎時間」及び「TFLAME」という用語は、熱分解条件下での材料または組成物の持続的な火災の測定値を指し、「持続的な火炎」は、試料の可視部分上の任意の部分で5秒以上続く火炎の持続である。火炎時間は、一般的には、秒または分単位で記録される。材料または組成物の火炎時間は、当技術分野で既知の方法によって決定され得、これには、Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test(EN ISO 1182,International Organization for Standardization,Switzerland;EN adopted)が含まれるが、これに限定されない。本開示の文脈内で、火炎時間測定値は、特に明記しない限り、EN ISO 1182規格(Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test)に匹敵する条件に従って取得される。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル組成物は、約30秒以下、約25秒以下、約20秒以下、約15秒以下、約10秒以下、約5秒以下、約2秒以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の火炎時間を有する。本明細書の文脈内で、例えば、第二組成物の火炎時間よりも短い火炎時間を有する第一組成物は、第二組成物に対する第一組成物の改善とみなされる。本明細書では、1つ以上の火災クラス添加剤を添加する場合、組成物の火炎時間がいずれの火災クラス添加剤も含まない組成物と比較して短くなることが企図される。
【0092】
本開示の文脈内で、「質量損失」及び「ΔΜ」という用語は、熱分解条件下で損失する、または焼失する材料、組成物、または複合体の量の測定値を指す。質量損失は、一般的には、重量パーセントまたはwt%として記録される。材料、組成物、または複合体の質量損失は、当技術分野で既知の方法によって決定され得、これには、Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test(EN ISO 1182,International Organization for Standardization,Switzerland;EN adopted)が含まれるが、これに限定されない。本開示の文脈内で、質量損失測定値は、特に明記しない限り、EN ISO 1182規格(Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test)に匹敵する条件に従って取得される。特定の実施形態では、本開示の絶縁層またはエアロゲル組成物は、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約28%以下、約26%以下、約24%以下、約22%以下、約20%以下、約18%以下、約16%以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の質量損失を有することができる。本明細書の文脈内で、例えば、第二組成物の質量損失よりも少ない質量損失を有する第一組成物は、第二組成物に対する第一組成物の改善とみなされる。本明細書では、1つ以上の火災クラス添加剤を添加する場合、組成物の質量損失がいずれの火災クラス添加剤も含まない組成物と比較して低減することが企図される。
【0093】
本開示の文脈内で、「熱放出ピーク温度」という用語は、分解による発熱性熱放出が最大である環境熱の温度の測定値を指す。材料または組成物の熱放出ピーク温度は、TGA分析、示差走査熱量測定(DSC)またはそれらの組み合わせを用いて測定され得る。DSC及びTGAはそれぞれ熱放出ピーク温度に同様の値を提供し、多くの場合、試験は同時に行われるため、その結果は両方から得られる。一般的なDSC分析では、熱流を昇温に対してプロットし、熱放出ピーク温度は、それらのような曲線での最高ピークが生じる温度である。本開示の文脈内で、材料または組成物の熱放出ピーク温度の測定値は、特に明記しない限り、この段落に提供されるようなTGA分析を用いて取得される。
【0094】
吸熱材料の文脈では、「熱吸収ピーク温度」という用語は、分解による吸熱性熱吸収が最小である環境熱の温度の測定値を指す。材料または組成物の熱吸収ピーク温度は、TGA分析、示差走査熱量測定(DSC)またはそれらの組み合わせを用いて測定され得る。一般的なDSC分析では、熱流を昇温に対してプロットし、熱吸収ピーク温度は、そのような曲線での最低ピークが生じる温度である。本開示の文脈内で、材料または組成物の熱吸収ピーク温度の測定値は、特に明記しない限り、この段落に提供されるようなTGA分析を用いて取得される。
【0095】
本開示の文脈内で、「低引火性」及び「低引火性の」という用語は、以下のi)50℃以下の炉温上昇、ii)20秒以下の火炎時間、及びiii)50wt%以下の質量損失という特性の組み合わせを満たす材料または組成物を指す。本開示の文脈内で、「非引火性」及び「非引火性の」という用語は、以下のi)40℃以下の炉温上昇、ii)2秒以下の火炎時間、及びiii)30wt%以下の質量損失という特性の組み合わせを満たす材料または組成物を指す。組成物の引火性(例えば、炉温上昇、火炎時間、及び質量損失の組み合わせ)が、本明細書に記載されるように、1つ以上の火災クラス添加剤を含むと低減することが企図される。
【0096】
本開示の文脈内で、「低燃焼性」及び「低燃焼性の」という用語は、3MJ/kg以下の燃焼熱(HOC)の合計を有する低引火性の材料または組成物を指す。本開示の文脈内で、「非燃焼性」及び「非燃焼性の」という用語は、2MJ/kg以下の燃焼熱(HOC)を有する非引火性の材料または組成物を指す。本明細書に記載されるように、組成物のHOCが1つ以上の火災クラス添加剤を含むと低減することが企図される。
【0097】
本開示の文脈内で、「疎水結合ケイ素」という用語は、ケイ素原子に共有結合した少なくとも1つの疎水基を含むゲルまたはエアロゲルのフレームワーク内のケイ素原子を指す。疎水結合ケイ素の例としては、少なくとも1つの疎水基(MTESまたはDMDSなど)を含むゲル前駆体から形成されるゲルフレームワーク内のシリカ基中のケイ素原子が挙げられるが、これらに限定されない。また疎水結合ケイ素は、疎水化剤(例えば、HMDZ)で処理されて、さらなる疎水基を組成物に組み込むことによって、疎水性を付与する、または改善する、ケイ素原子をゲルフレームワーク中またはゲルの表面上に含み得るが、これに限定されない。本開示の疎水基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tertブチル基、オクチル基、フェニル基、または当業者に既知の他の置換もしくは非置換の疎水性有機基が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の文脈内で、「疎水基」、「疎水性有機材料」、及び「疎水性有機物含量」は、有機溶媒とシラノール基との間の反応の生成物である、ゲル材料のフレームワーク上の易加水分解性有機ケイ素結合アルコキシ基を特異的に除外する。これらのような除外された基は、NMR分析によって、この疎水性有機物含量と区別できる。エアロゲル中に含まれる疎水結合ケイ素の量は、CP/MAS 29Si固体状態NMRなど、NMR分光法を用いて分析されることができる。エアロゲルのNMR分析により、Mタイプ疎水結合ケイ素(TMS誘導体などの単官能シリカ)、Dタイプ疎水結合ケイ素(DMDS誘導体などの二官能シリカ)、Tタイプ疎水結合ケイ素(MTES誘導体などの三官能シリカ)、及びQタイプケイ素(TEOS誘導体などの四官能シリカ)の特徴付け及び相対的定量化が可能になる。また、特異的なタイプの疎水結合ケイ素をサブタイプにカテゴリ化すること(例えば、Tタイプの疎水結合ケイ素をT1種、T2種、及びT3種にカテゴリ化すること)を可能にすることによって、NMR分析を用いて、エアロゲルに含まれる疎水結合ケイ素の結合化学的性質を分析することができる。シリカ材料のNMR分析に関する具体的な詳細は、Geppi et al.による「Applications of Solid-State NMR to the Study of Organic/Inorganic Multicomponent Materials」という論文、特にページ7~9(Appl.Spec.Rev.(2008)、44-1:1-89)に見いだされることができ、これは、特に引用されたページに従って参照により本明細書に援用されている。
【0098】
CP/MAS 29Si NMR分析での疎水結合ケイ素の特徴付けは、以下の化学シフトピークに基づいていることができる:M1(30~10ppm);D1(10~-10ppm)、D2(-10~-20ppm);T1(-30~-40ppm)、T2(-40~-50ppm)、T3(-50~-70ppm);Q2(-70~-85ppm)、Q3(-85~-95ppm)、Q4(-95~-110ppm)。これらの化学シフトピークは、近似及び例示的なものであり、限定または決定的なものであることを意図したものではない。材料内の様々なケイ素種に起因し得る精確な化学シフトピークは、材料の特異的な化学成分に依存することができ、一般に、当業者による日常的な実験及び分析を通じて解読されることができる。
【0099】
本開示の文脈内で、「疎水性有機物含量」または「疎水性物質含量」または「疎水性含量」という用語は、エアロゲル材料または組成物中のフレームワークに結合した疎水性有機材料の量を指す。エアロゲル材料または組成物の疎水性有機物含量は、エアロゲル材料または組成物中の材料の総量に対するエアロゲルフレームワーク上の疎水性有機材料の量の重量パーセントとして表されることができる。疎水性有機物含量は、エアロゲル材料または組成物の製造に使用される材料の性質及び相対濃度に基づいて、当業者によって計算されることができる。また疎水性有機物含量は、好ましくは酸素雰囲気中で、対象材料の熱重量分析(TGA)を用いて測定されることもできる(ただし、代替の気体環境下でのTGAも有用である)。具体的には、エアロゲル中の疎水性有機材料のパーセントは、TGA分析中に水分損失、残留溶媒損失、及び易加水分解性アルコキシ基の損失に調整を行いながら、TGA分析中に燃焼熱温度を受ける場合の疎水性エアロゲル材料または組成物中の重量損失のパーセントと相関されることができる。示差走査熱量測定、元素分析(特に、炭素)、クロマトグラフィー技術、核磁気共鳴スペクトル、及び当業者に既知の他の分析技術などの他の代替技術を使用して、本開示のエアロゲル組成物中の疎水性含量を測定し、決定し得る。特定の例では、既知の技術の組み合わせは、本開示のエアロゲル組成物の疎水性含量を決定する際に有用または必要であり得る。
【0100】
本開示のエアロゲル材料または組成物は、50wt%以下、40wt%以下、30wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、10wt%以下、8wt%以下、6wt%以下、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の疎水性有機物含量を有することができる。
【0101】
「燃料含量」という用語は、エアロゲル材料または組成物中の燃焼性材料の総量を指し、これは、水分損失の調整を行いながら、TGAまたはTG-DSC分析中に燃焼熱温度を受ける場合のエアロゲル材料または組成物中の重量損失の総パーセントと相関されることができる。エアロゲル材料または組成物の燃料含量は、疎水性有機物含量だけでなく、他の燃焼性残留アルコール溶媒、フィラー材料、強化材料、及び易加水分解性アルコキシ基を含むことができる。
【0102】
本開示の文脈内で、「ormosil」という用語は、前述の材料だけでなく、「ormocer」と呼ばれることもある他の有機修飾材料を包含する。ormosilはコーティングとして使用されることが多く、ormosil膜は、例えば、ゾルゲル法によって基材の上に鋳造される。本開示の他の有機-無機ハイブリッドエアロゲルの例としては、シリカ-ポリエーテル、シリカ-PMMA、シリカ-キトサン、炭化物、窒化物、ならびに前述の有機及び無機エアロゲル形成化合物の他の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。公開されている米国特許出願20050192367(段落[0022]~[0038]及び[0044]~[0058])は、それらのようなハイブリッド有機-無機材料の教示を含み、個々に引用された節及び段落に従って参照により本明細書に援用されている。
【0103】
電池セルの障壁
本開示は、エネルギー貯蔵システムでの熱暴走問題を管理するために障壁及び障壁を含むシステムを対象とする。例示的な実施形態は、少なくとも1つの絶縁層と、少なくとも1つの絶縁層に結合された少なくとも1つの圧縮性層とを有する障壁を含む。圧縮性層は、一対の剛性プレートと、剛性プレート間に配置された1つ以上のばね素子とを含む。さらに本開示は、1つ以上の電池セルを有する電池モジュールまたは電池パック、及び電池モジュールまたは電池セルとそれぞれ熱連通して配置される障壁に関する。本開示の文脈内で、「電池素子」という語句は、電池セルまたは電池モジュールを指す。
【0104】
本明細書に開示される障壁の1つ以上の絶縁層は、エアロゲル組成物または強化エアロゲル組成物を含むことができる。エアロゲル材料は、他の一般的なタイプの絶縁体、例えば、発泡体、ガラス繊維などの熱抵抗の約2~6倍を有することが知られている。エアロゲルは、絶縁体の厚さを実質的に増加させることなく、または追加の重量を加えることなく、効果的な遮蔽及び熱絶縁を高めることができる。エアロゲルは、低密度、オープンセル構造、大きい表面積、及びナノメートルスケールの細孔径を有する構造のクラスであることが知られている。
【0105】
本開示の実施形態によるエアロゲル組成物を含む障壁は、圧縮性、圧縮回復性、及びコンプライアンスに好ましい特性を与える。電池モジュール内のセル間の熱障壁として使用される場合、障壁の圧縮性層は、電池の充電/放電サイクル中の活性材料の分解及び膨潤に起因するセルの膨張に適応するように、圧縮変形に対する抵抗を与えることができる。
【0106】
また本開示は、電池モジュールまたは電池パックを提供し、これは、少なくとも1つの電池セルと、電池セル上または電池モジュール上、例えば、少なくとも1つの電池セルの表面上または電池モジュールの表面上に配置された、本明細書に開示される実施形態による障壁とを含む。例えば、電池モジュールまたは電池パックは内面及び外面を有する。特定の実施形態では、障壁は、電池モジュールまたは電池パックの内面上にある。特定の実施形態では、障壁は、電池モジュールまたは電池パックの外面上にある。図6は、電池セル、電池モジュール、及び電池パックを概略的に示す。
【0107】
図7は、本明細書に開示される実施形態による、障壁400の概略図を示す。一実施形態では、障壁400は、少なくとも1つの絶縁層410と、少なくとも1つの絶縁層に結合された少なくとも1つの圧縮性層420とを含む。実施形態では、圧縮性層は、一対の剛性プレート422と、剛性プレート間に配置された1つ以上のばね素子425とを含む。圧縮性層は、障壁層を形成するために絶縁層に結合され得る。実施形態では、圧縮性層は、障壁層を形成するために絶縁層と接触して配置される。絶縁層は、接着機構によって圧縮性層に付着することができる。例示的な接着剤としては、限定されないが、エアロゾル接着剤、ウレタン系接着剤、アクリレート接着剤、ホットメルト接着剤、エポキシ、ゴム樹脂接着剤、ポリウレタン複合体接着剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、絶縁層は、非接着機構、例えば、火炎結合、ニードル加工、ステッチ加工、シーリングバッグ、リベット、ボタン、クランプ、ラップ、ブレース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される機構によって、圧縮性層に付着することができる。いくつかの実施形態では、上述の接着剤及び非接着機構のいずれかの組み合わせを用いて、層を合わせて付着させることができる。障壁層は、一実施形態では、2つの隣接する電池セルまたは電池モジュール(本明細書では「電池素子」と総称される)430の間に配置され、電池素子間の熱伝達を緩和し、熱暴走事象から電池素子を保護する。
【0108】
図7に示される実施形態では、障壁400は、単一絶縁層410に結合された単一圧縮性層420を含む。他の実施形態では、複数の圧縮性層及び複数の絶縁層を合わせて結合し、障壁を形成してもよい。例えば、図8は、2つの圧縮性層520a、520bの間に位置決めされた絶縁層510を含む障壁500の実施形態を示す。各圧縮性層は、少なくとも一対の剛性プレート522と、剛性プレート間に配置された1つ以上のばね素子525とを含む。圧縮性層は、障壁層を形成するために絶縁層と接触して配置されることができる。絶縁層は、接着剤または締結用部品(例えば、ねじ、リベットなど)を用いて圧縮性層に結合されてもよい。障壁は、2つの隣接する電池素子530の間に配置される。
【0109】
絶縁層
本明細書に記載の障壁の絶縁層は、小さい空間内の熱発生部品からの熱流を確実に制御し、電子、工業及び自動車の技術分野でのこれらのような製品に対する火炎伝播の安全性及び防止を提供する役割を果たす。圧縮で優れた特性を有する絶縁層は、これらのニーズに対処する際に有用であり得る。本開示の多くの実施形態では、絶縁層は、それ自体か、圧縮性層と組み合わせてかいずれかで、火炎/発火デフレクタ層としても機能する。例えば、絶縁層は、圧縮性層の剛性プレートと組み合わせて、隣接する電池セルまたは電池モジュールを、火炎及び/または高温ガスだけでなく、熱暴走事象中に電池セルから排出され得る材料など、微粒子材料が同伴する火炎/高温ガスからの保護を提供することができる。別の実施形態では、絶縁層は、それ自体が火炎及び/または高温ガスだけでなく、微粒子材料が同伴する火炎/高温ガスに対して耐性であり得る。雲母、ミクロ多孔質シリカ、またはエアロゲルなどの絶縁層は、火炎/発火デフレクタ層として機能することができる耐火炎層と組み合わされることができる。本明細書の実施形態に記載されるようなエアロゲルを含む絶縁層は、耐久性があり、取り扱いやすく、使用される材料の厚さ及び重量を最小にしながら熱伝播及び火炎伝播に好ましい耐性を有し、そのうえ圧縮性、圧縮回復性、及びコンプライアンスに好ましい特性も有する。
【0110】
エアロゲルは、相互接続された構造のフレームワークを含むオープンセルを有しフレームワーク内に統合される細孔の対応するネットワークと、主に空気などの気体からなる細孔のネットワーク内の格子間相とを有する、多孔質材料のクラスである。エアロゲルは、一般的には、低密度、高い空隙率、大きい表面積、及び小さい細孔サイズによって特徴付けられる。エアロゲルは、それらの物理的特性及び構造特性によって、他の多孔質材料と区別されることができる。
【0111】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の障壁の絶縁層は、エアロゲルを含む。いくつかの実施形態では、絶縁層は、雲母、ミクロ多孔質シリカ、セラミック繊維、ミネラルウール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された材料をさらに含むことができる。場合によっては、絶縁層はエアロゲルを欠く。いくつかの実施形態では、絶縁層は、雲母、ミクロ多孔質シリカ、セラミック繊維、ミネラルウール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含むことができる。
【0112】
特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、25℃で、約50mW/mK以下、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の、絶縁層の厚さ寸法を通した熱伝導率を有する。特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、600℃で、約60mW/mK以下、約50mW/mK以下、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の、絶縁層の厚さ寸法を通した熱伝導率を有する。
【0113】
本開示の絶縁層、例えば、エアロゲルを含む絶縁層は、約5MPaまでの負荷の下で、熱伝導率の実質的な量(一般にmW/m-k単位で測定される)を保持する、または増加させることができる。特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、約5MPaまでの負荷の下、25℃で約50mW/mK以下、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の、絶縁層の厚さ寸法を通した熱伝導率を有する。エアロゲル絶縁層の厚さは、エアロゲル絶縁層が受ける負荷の結果として減少し得る。例えば、エアロゲル絶縁層の厚さは、約0.50MPa~5MPaの範囲内の負荷の下で、50%以下、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内で減少し得る。エアロゲルを含む絶縁層の熱抵抗は、厚さが減少するにつれて低減し得るが、熱伝導率は、十分でない量だけ保持されること、または高まることができる。
【0114】
特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、約750cal/g以下、約717cal/g以下、約700cal/g以下、約650cal/g以下、約600cal/g以下、約575cal/g以下、約550cal/g以下、約500cal/g以下、約450cal/g以下、約400cal/g以下、約350cal/g以下、約300cal/g以下、約250cal/g以下、約200cal/g以下、約150cal/g以下、約100cal/g以下、約50cal/g以下、約25cal/g以下、約10cal/g以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の燃焼熱を有し得る。別の絶縁層に対して改善された燃焼熱を有する絶縁層は、参照絶縁層に対して、より低い燃焼熱の値を有する。本開示の特定の実施形態では、絶縁層の燃焼熱は、絶縁層に火災クラス添加剤を組み込むことによって改善される。
【0115】
特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、約300℃以上、約320℃以上、約340℃以上、約360℃以上、約380℃以上、約400℃以上、約420℃以上、約440℃以上、約460℃以上、約480℃以上、約500℃以上、約515℃以上、約550℃以上、約600℃以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の熱分解の開始を有する。本明細書の文脈内で、例えば、第二組成物の熱分解の開始よりも高い熱分解の開始を有する第一組成物は、第二組成物に対する第一組成物の改善とみなされる。本明細書では、1つ以上の火災クラス添加剤を添加する場合、いずれの火災クラス添加剤も含まない組成物と比較して、組成物または材料の熱分解の開始が増加することが企図される。
【0116】
「曲げ弾性率」または「曲げ弾性係数」という用語は、3点曲げ試験として知られている、サンプルの長辺に対して垂直に力が加えられる場合の材料の曲げに対する剛性/抵抗の尺度である。曲げ弾性率は、材料が曲がる能力を示す。曲げ弾性率は、応力-ひずみ曲線の最初の直線部分の傾きによって表され、応力の変化を対応するひずみの変化で除算することによって計算される。したがって、応力対ひずみの比率は、曲げ弾性率の尺度である。曲げ弾性率の国際標準単位は、パスカルである(PaまたはN/mまたはm-1.kg.s-2)。使用される実用単位は、メガパスカル(MPaもしくはN/mm)またはギガパスカル(GPaもしくはkN/mm)である。米国慣用単位では、それは1平方インチあたりのポンド(力)(psi)として表される。特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、約8MPa以下、約7MPa以下、約6MPa以下、約5MPa以下、約4MPa以下、約3MPa以下の曲げ弾性率を有する。好ましくは、本開示の絶縁層、例えばエアロゲルは、約2MPa~約8MPaの曲げ弾性率を有する。
【0117】
特定の実施形態では、絶縁層(例えば、エアロゲルを含む層)の圧縮弾性率は、約1MPa、約2MPa、約3MPa、約4MPa、約5MPa、約6MPa、約7MPa、約8MPa、約9MPa、約10MPa、約11MPa、約12MPa、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内である。
【0118】
エアロゲル
実施形態では、絶縁層は、エアロゲルから形成され得る。エアロゲルは、有機物、無機物、またはそれらの混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲルは、シリカ系エアロゲルを含む。障壁の絶縁層は、強化材料をさらに含むエアロゲルであってもよい。強化材料は、エアロゲル材料に回復性、追従性、または構造安定性を与える任意の材料であり得る。周知の強化材料の例としては、オープンセル型マクロ多孔質フレームワーク強化材料、クローズドセル型マクロ多孔質フレームワーク強化材料、オープンセル膜、ハニカム強化材料、ポリマー強化材料、ならびに例えば短繊維、織布材料、不織布材料、ニードル不織布、バッティング、ウェッブ、マット、及びフェルトなどの繊維強化材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
強化材料は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択されることができる。無機繊維は、ガラス繊維、ロックファイバ、金属繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0120】
いくつかの実施形態では、強化材料は、複数の材料層を含む強化材を含むことができる。例えば、複数の材料層を合わせて結合することができる。例示的な実施形態では、複数の層のうちの少なくとも1つは第一材料を含むことができ、複数の層のうちの少なくとも1つの他の層は第二材料を含むことができる。第一材料及び第二材料は、同じまたは異なる材料特性を有することができる。例えば、第一材料は、第二材料よりも圧縮性であることができる。別の例では、第一材料はクローズドセルを含むことができ、第二材料はオープンセルを含むことができる。
【0121】
エアロゲルは、相互接続したオリゴマー、ポリマー、またはコロイド粒子から最も一般的に構成される相互接続構造体のフレームワークとして記載される。エアロゲルフレームワークは、無機前駆体材料(例えば、シリカ系エアロゲルの製造に使用される前駆体);有機前駆体材料(例えば、炭素系エアロゲルの製造に使用される前駆体);ハイブリッド無機/有機前駆体材料;及びこれらの組み合わせを含む、種々の前駆体材料から作成され得る。本開示の文脈内で、「アマルガムエアロゲル」という用語は、2つ以上の異なるゲル前駆体の組み合わせから製造されるエアロゲルを指し、対応する前駆体は、「アマルガム前駆体」と呼ばれる。
【0122】
無機エアロゲル
無機エアロゲルは、一般に、金属酸化物または金属アルコキシド材料から形成される。金属酸化物または金属アルコキシド材料は、酸化物を形成することができる任意の金属の酸化物またはアルコキシドに基づいていることができる。それらのような金属としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウム、セリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。無機シリカエアロゲルは、従来、シリカ系アルコキシド(例えば、テトラエトキシシラン)の加水分解及び縮合を介して、またはケイ酸もしくは水ガラスのゲル化を介して作成される。シリカ系エアロゲル合成のための他の関連する無機前駆体材料としては、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムなどの金属ケイ酸塩、アルコキシシラン、部分加水分解アルコキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、部分加水分解TEOS、TEOSの縮合ポリマー、テトラメトキシシラン(TMOS)、部分加水分解TMOS、TMOSの縮合ポリマー、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシランの部分加水分解及び/または縮合ポリマー、ポリエチルシリケート、部分加水分解ポリエチルシリケート、モノマーアルキルアルコキシシラン、ビス-トリアルコキシアルキルもしくはアリールシラン、多面体シルセスキオキサン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本開示の特定の実施形態では、約1.9~2の水/シリカ比で加水分解される、Silbond H-5(SBH5、Silbond Corp)など、前加水分解TEOSは、市販のものが使用されてもよく、またはゲル化プロセスに組み込まれる前にさらに加水分解されてもよい。部分加水分解TEOSまたはTMOS、例えばポリエチルシリケート(Silbond40)またはポリメチルシリケートも、市販のものが使用されてもよく、またはゲル化プロセスに組み込む前にさらに加水分解されてもよい。
【0124】
無機エアロゲルは、少なくとも1つの疎水基、例えば、アルキル金属アルコキシド、シクロアルキル金属アルコキシド、及びアリール金属アルコキシドを含有するゲル前駆体も含むことができ、これらは、安定性及び疎水性などのゲルに特定の特性を付与する、または改善することができる。無機シリカエアロゲルは、具体的には、アルキルシランまたはアリールシランなどの疎水性前駆体を含むことができる。疎水性ゲル前駆体を一次前駆体材料として使用して、ゲル材料のフレームワークを形成してもよい。しかしながら、疎水性ゲル前駆体は、アマルガムエアロゲルの形成に単純な金属アルコキシドと組み合わせたco-前駆体としてより一般的に使用される。シリカ系エアロゲル合成のための疎水性無機前駆体材料としては、トリメチルメトキシシラン(TMS)、ジメチルジメトキシシラン(DMS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン(DMDS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン(ETES)、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、ヘキサメチルジシラザン、及びヘキサエチルジシラザンなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記の前駆体のいずれかの任意の誘導体を使用してもよく、具体的には、他の化学基の特定のポリマーを上記の前駆体の1つ以上に加えても、または架橋してもよい。
【0125】
またエアロゲルは、疎水性を付与する、または改善するために処理され得る。疎水化処理は、ゾル-ゲル溶液、液体抽出前のウェットゲル、または液体抽出後のエアロゲルに適用されることができる。疎水化処理は、特に、シリカエアロゲルなど、金属酸化物エアロゲルの製造に一般的である。ゲルの疎水化処理の例は、具体的にはシリカウェットゲルの処理という観点から、以下でより詳細に論じられる。しかしながら、本明細書に提供される特異的な例及び例示は、本開示の範囲を任意の特異的なタイプの疎水化処理手順またはエアロゲル基板に限定することを意図するものではない。本開示は、当業者に既知の任意のゲルまたはエアロゲルだけでなく、ウェットゲル形態か乾燥エアロゲル形態かいずれかで、エアロゲルの疎水化処理の関連方法を含むことができる。
【0126】
疎水化処理は、シリカゲルのフレームワーク上に存在するシラノール基(Si-OH)など、ゲル上のヒドロキシ部分を、疎水化剤の官能基と反応させることによって行われる。得られた反応により、シラノール基及び疎水化剤がシリカゲルのフレームワーク上で疎水基に変換される。疎水化剤化合物は、以下の反応に従ってゲル上のヒドロキシル基と反応することができる:RNMX4-N(疎水化剤)+MOH(シラノール)→MOMRN(疎水基)+HX。
疎水化処理は、シリカゲルの外側マクロ表面上でも、ゲルの多孔質ネットワーク内の内側細孔表面上でも行うことができる。
【0127】
ゲルは、疎水化剤と、疎水化剤が可溶性であり、そのうえウェットゲル中のゲル溶媒とも混和性である任意選択の疎水化処理溶媒との混合物中に浸漬されることができる。メタノール、エタノール、イソプロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、及びヘキサンなどの溶媒を含む、広範囲の疎水化処理溶媒を使用することができる。また液体または気体の形態の疎水化剤をゲルと直接接触させて、疎水性を付与してもよい。
【0128】
疎水化処理プロセスは、疎水化剤がウェットゲルに浸透するのを助けるための混合または攪拌を含むことができる。また疎水化処理プロセスは、処理反応をさらに強化し、最適化するために、温度及びpHなどの他の条件を変動させることも含むことができる。反応が完了した後、ウェットゲルを洗浄して、未反応化合物及び反応副生成物を除去する。
【0129】
エアロゲルの疎水化処理のための疎水化剤は、一般に、式:RNMX4-Nの化合物であり、式中、Mは金属であり、RはCH、CHCH、C、または同様の疎水性アルキル、シクロアルキル、もしくはアリール部分などの疎水基であり、Xはハロゲン、通常Clである。疎水化剤の具体的な例としては、トリメチルクロロシラン(TMCS)、トリエチルクロロシラン(TECS)、トリフェニルクロロシラン(TPCS)、ジメチルクロロシラン(DMCS)、ジメチルジクロロシラン(DMDCS)などが挙げられるが、これらに限定されない。また疎水化剤は、式:Y(RM)のものであることができ、式中、Mは金属であり、YはNHまたはOなどの架橋基であり、RはCH、CHCH、C、または同様の疎水性アルキル、シクロアルキル、もしくはアリール部分などの疎水基である。このような疎水化剤の具体的な例としては、ヘキサメチルジシラザン[HMDZ]、及びヘキサメチルジシロキサン[HMDSO]が挙げられるが、これらに限定されない。疎水化剤は、式:RNMV4-Nの化合物をさらに含むことができ、式中、Vはハロゲン以外の反応基または脱離基である。これらのような疎水化剤の具体的な例としては、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
また本開示の疎水化処理は、ゲル中の液体の除去、交換、または乾燥の間に行われ得る。具体的な実施形態では、疎水化処理は、超臨界流体環境(超臨界二酸化炭素など、ただしこれに限定されない)で行われてもよく、乾燥または抽出ステップと組み合わされてもよい。
【0131】
有機エアロゲル
有機エアロゲルは、一般に、炭素系ポリマー前駆体から形成される。これらのようなポリマー材料としては、限定されないが、レゾルシノールホルムアルデヒド(RF)、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリレートオリゴマー、ポリオキシアルキレン、ポリウレタン、ポリフェノール、ポリブタジエン、トリアルコキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフルフラール、メラミン-ホルムアルデヒド、クレゾールホルムアルデヒド、フェノール-フルフラール、ポリエーテル、ポリオール、ポリイソシアネート、ポリヒドロキシベンゼン、ポリビニルアルコールジアルデヒド、ポリシアヌレート、ポリアクリルアミド、種々のエポキシ、寒天、アガロース、キトサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一例として、有機RFエアロゲルは、一般的には、アルカリ条件下でレゾルシノールまたはメラミンとホルムアルデヒドとのゾル-ゲル重合から作成される。
【0132】
有機/無機ハイブリッドエアロゲル
有機/無機ハイブリッドエアロゲルは、主に(有機修飾シリカ(「ormosil」))エアロゲルから構成される。これらのormosil材料は、シリカネットワークに共有結合している有機成分を含む。ormosilは、一般的には、有機修飾シラン、R-Si(OX)と、従来のアルコキシド前駆体、Y(OX)との加水分解及び縮合によって形成される。これらの式では、Xは例えばCH、C、C、Cを表し得、Yは例えばSi、Ti、Zr、またはAlを表し得、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、メタクリレート、アクリレート、ビニル、エポキシドなどの任意の有機フラグメントであり得る。またormosilエアロゲル中の有機成分は、シリカネットワーク全体に分散しても、またはシリカネットワークに化学的に結合してもよい。
【0133】
特定の実施形態では、本開示のエアロゲルは、好ましくはオリゴマーとしての前重合シリカ前駆体から主に形成される無機シリカエアロゲル、またはアルコール溶媒中のシリコンアルコキシドから形成される加水分解ケイ酸エステルである。特定の実施形態では、これらのような前重合シリカ前駆体または加水分解ケイ酸エステルは、他の前駆体またはケイ酸エステル、例えばアルコキシシランまたは水ガラスからin situで形成され得る。しかしながら、本開示は、全体として、当業者に既知の他の任意のエアロゲル組成物を用いて実施されてもよく、任意の1つの前駆体材料または前駆体材料のアマルガム混合物に限定されない。
【0134】
マクロ細孔
上述のように、本開示の実施形態によるエアロゲル組成物は、マクロ細孔を含有するエアロゲルフレームワークを含むことができる。いかなる特定の動作理論にも拘束されることなく、エアロゲルフレームワーク内にマクロ細孔が存在することにより、熱特性を維持し、またはさらには改善しながら、例えば熱伝導率を低下させながら、エアロゲル組成物、例えば強化エアロゲル組成物の圧縮が可能になることができる。例えば、マクロ細孔は、組成物の圧縮によって変形される、押し潰される、またはその他の方法でサイズが縮小することができることによって、組成物の厚さが負荷の下で縮小することが可能になる。しかし、マクロ細孔が変形するにつれて、それらは効果的に小さい細孔になる。結果として、エアロゲルフレームワーク内の熱伝達のための経路は、マクロ細孔が変形するにつれて、より蛇行していることができることによって、熱特性が改善されることができる(例えば、熱伝導率が低下することができる)。本開示の文脈内で、「メソ細孔」は、平均細孔径が約2nm~約50nmの範囲内にある細孔である。エアロゲルフレームワークは、一般的にはメソ細孔である(すなわち、主に約2nm~約50nmの範囲の平均直径を有する細孔を含む)。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル組成物のエアロゲルフレームワークは、マクロ細孔を含むことができる。本開示の文脈内で、「マクロ細孔」は、平均細孔径が約50nmより大きい細孔である。エアロゲルフレームワークは、マクロ細孔及びメソ細孔の両方を含むことができる。例えば、エアロゲルフレームワークの細孔容積の少なくとも10%はマクロ細孔で構成されることができ、エアロゲルフレームワークの細孔容積の少なくとも5%はマクロ細孔で構成されることができ、エアロゲルフレームワークの細孔容積の少なくとも75%はマクロ細孔で構成されることができ、エアロゲルフレームワークの細孔容積の少なくとも95%はマクロ細孔で構成されることができ、またはエアロゲルフレームワークの細孔容積の100%はマクロ細孔で構成されることができる。いくつかの特定の実施形態では、エアロゲルフレームワークは、その細孔容積の大部分がマクロ細孔で構成されるようなマクロ多孔質エアロゲルフレームワークであることができる。場合によっては、マクロ多孔質エアロゲルフレームワークは、ミクロ細孔及び/またはメソ細孔も含むことができる。いくつかの実施形態では、エアロゲルフレームワーク中の細孔の平均細孔サイズ(直径)は、50nm超、50nm~5000nm、250nm~2000nm、500nm~2000nm、500nm~1400nm、または1200nm超であることができる。特定の実施形態では、平均細孔サイズは、直径50nm超、50nm~1000nm、好ましくは100nm~800nm、より好ましくは250nm~750nm超であることができる。
【0135】
均一及び不均一な細孔径分布
いくつかの実施形態では、エアロゲルフレームワーク内の細孔サイズのばらつきは、エアロゲルフレームワークを通して均一に分布することができる。例えば、平均細孔サイズは、エアロゲルフレームワーク全体にわたって実質的に同じであることができる。
【0136】
他の実施形態では、エアロゲルフレームワーク内の細孔サイズのばらつきは、エアロゲルフレームワークを通して不均一に分布することができる。例えば、平均細孔サイズは、エアロゲルフレームワークの特定の領域内で異なることができる。いくつかの例示的な実施形態では、平均細孔サイズは、エアロゲルフレームワークの上面、下面、または上面及び下面の両方の領域内でより大きくなることができる。例えば、マクロ細孔は、マクロ細孔対メソ細孔の比率が下面よりも上面で大きくなるように、上面よりも下面で大きくなるように、または上面と下面との間の中間領域内よりも上面と下面との両方で大きくなるように、組成物内に分布することができる。別の例の場合、マクロ細孔は、マクロ細孔対メソ細孔の比率が下面近くよりも上面近くで大きくなるように、上面近くよりも下面近くで大きくなるように、または上面と下面との間の中間領域内よりも上面と下面との両方の近くで大きくなるように、組成物内に分布することができる。他の実施形態では、平均細孔サイズは、エアロゲルフレームワークの上面と下面との間の中間領域内でより大きくなることができる。
【0137】
マクロ細孔形成
マクロ細孔は、エアロゲル組成物の製造中に形成されることができる。例えば、マクロ細孔の形成は、ゲル組成物内への移行中にゲル前駆体材料内に誘起されることができる。いくつかの実施形態では、マクロ細孔の形成は、例えばゲル前駆体溶液の、スピノーダル分解を誘起することによるものであることができる。別の例の場合、マクロ細孔の形成は、1つ以上の発泡剤の添加によって誘起されることができる。
【0138】
得られるエアロゲルフレームワーク内に存在するマクロ細孔は、マクロ細孔対メソ細孔及び/またはミクロ細孔の形成に有利な処理条件を選択することによって形成されることができる。マクロ細孔の量は、以下の変数:(1)重合溶媒、(2)重合温度、(3)ポリマー分子量、(4)分子量分布、(5)コポリマー組成物、(6)分岐量、(7)架橋量、(8)分岐方法、(9)架橋方法、(10)ゲルの形成に使用される方法、(11)ゲルの形成に使用される触媒の種類、(12)ゲルの形成に使用される触媒の化学組成物、(13)ゲルの形成に使用される触媒の量、(14)ゲル形成温度、(15)ゲル形成中に材料の上を流れるガス種、(16)ゲル形成中に材料の上を流れるガスの速度、(17)ゲル形成中の雰囲気の圧力、(18)ゲル形成中に溶解したガスの除去、(19)ゲル形成中に樹脂内の固体添加剤の存在、(20)ゲル形成プロセスの時間量、(21)ゲルの形成に使用された基板、(22)溶媒交換プロセスの各ステップで使用される1つまたは複数の溶媒の種類、(23)溶媒交換プロセスの各ステップで使用される1つまたは複数の溶媒の組成物、(24)溶媒交換プロセスの各ステップで使用された時間量、(25)溶媒交換プロセスの各ステップでの部品の滞留時間、(26)溶媒交換用溶媒の流量、(27)溶媒交換用溶媒の流量タイプ、(28)溶媒交換用溶媒の撹拌速度、(29)溶媒交換プロセスの各ステップで使用される温度、(30)溶媒交換用溶媒の体積対部品の体積の比率、(31)乾燥方法、(32)乾燥プロセス中の各ステップの温度、(33)乾燥プロセスの各ステップでの圧力、(34)乾燥プロセスの各ステップで使用されるガスの組成、(35)乾燥プロセスの各ステップ中のガス流量、(36)乾燥プロセスの各ステップ中のガスの温度、(37)乾燥プロセスの各ステップ中の部品の温度、(38)乾燥プロセスの各ステップ中の部品周囲の筐体の存在、(39)乾燥中の部品周囲の筐体のタイプ、及び/または(40)乾燥プロセスの各ステップで使用される溶媒のうちのいずれか1つ、いずれかの組み合わせ、または全てを行うことによって、調整されることができる。多官能アミン及びジアミン化合物は、固体として、そのまま、または適切な溶媒中に溶解させて、別々に、または合わせて1つ以上の部分に加えられてもよい。他の態様では、エアロゲル作製方法は、(a)多官能アミン化合物及び少なくとも1つのジアミン化合物を溶媒に与えて溶液を形成するステップと、(b)少なくとも1つの二無水物化合物を、分岐ポリマーマトリックス溶液を形成するのに十分な条件下でステップ(a)の溶液に与えるステップであって、分岐ポリマーマトリックスが溶液中に可溶化される、ステップと、(c)オープンセル構造を有するエアロゲルを形成するのに十分な条件を分岐ポリマーマトリックス溶液が受けるステップとを含むことができる。得られたエアロゲルフレームワーク中に存在するマクロ細孔は、上記の方法で形成されることができる。1つの好ましく非限定的な態様では、マクロ細孔対より小さいメソ細孔及びミクロ細孔の形成は、主に、ゲル形成中にポリマー/溶媒の動態を制御することによって制御されることができる。
【0139】
上述のように、本開示の実施形態によるエアロゲル組成物は、エアロゲルフレームワーク及び強化材料を含むことができ、強化材料の少なくとも一部はエアロゲルを含まない。例えば、エアロゲルフレームワークは、強化材料の厚さを部分的に通って延在することができる。それらのような実施形態では、強化材料の一部、例えば、OCMF、繊維、またはそれらの組み合わせはエアロゲル材料を含むことができ、一部はエアロゲルを含まないことができる。例えば、いくつかの実施形態では、エアロゲルは、強化材料の厚さの約90%を通って、強化材料の厚さの約50%~約90%の範囲を通って、強化材料の厚さの約10%~約50%の範囲を通って、または強化材料の厚さの約10%を通って延在する。
【0140】
いかなる特定の動作理論にも拘束されることなく、強化材料の少なくとも一部がエアロゲルを含まないエアロゲル組成物は、圧縮性、圧縮回復性、及びコンプライアンスに有利な特性を与えることができる。例えば、強化材料の特性は、エアロゲルを含む領域内の熱特性に十分な強化及び支持を与え、そのうえエアロゲルの無い領域内にも十分な圧縮性、圧縮回復性、及び/またはコンプライアンスを与えるように選択されることができる。強化エアロゲル組成物のエアロゲル含有部分は、所望の熱伝導率、例えば、約25mW/mK未満を与えることができ、エアロゲルの無い強化部分は、所望の物理的特性、例えば、圧縮性を与える、または改善することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、強化材料の少なくとも一部がエアロゲルを含まない強化エアロゲル組成物は、本明細書に開示される方法を使用して形成されることができ、この方法では、強化材料を前駆体溶液で部分的に充填するのに十分な量の前駆体溶液と強化材料を組み合わせる。例えば、前駆体の体積は、前駆体が強化材料を部分的にのみ通って延在するように、強化材料の体積よりも小さくなることができる。乾燥されると、得られる強化エアロゲル組成物は、上述のように、強化材料の全厚未満を通って延在するエアロゲルフレームワークを含む。他の実施形態では、強化材料の少なくとも一部がエアロゲルを含まない強化エアロゲル組成物は、強化エアロゲル組成物から表面エアロゲル層を除去することによって形成されることができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、強化材料の少なくとも一部がエアロゲルを含まない強化エアロゲル組成物は、強化材料の厚さを通して混合特性を有する強化材料を使用して形成されることができる。例えば、強化材料は複数の層を含むことができ、各層は様々な特性、例えば、平均細孔/セルサイズ、材料組成、クローズドセル、オープンセル、表面処理、またはそれらの組み合わせの差異を有する。複数の層は、例えば、接着剤を用いて、火炎結合によって、または本明細書で論じられるような他の適切な方法もしくは機構によって、互いに結合されることができる。強化材料の異なる特性により、層を通してエアロゲルの分布を変動させることができる。例えば、強化材料のオープンセル部分は、クローズドセル部分が実質的にエアロゲルを含まないままでありながら、エアロゲルフレームワークを含むことができる。同様に、強化材料またはそれらの層の他の材料特性は、強化材料内、ひいては強化エアロゲル組成物内のエアロゲルの分布を決定することができる。
【0143】
いくつかの例示的な実施形態では、強化材料の少なくとも一部がエアロゲルを含まない強化エアロゲル組成物は、本明細書に開示される方法を使用して形成されることができ、この方法では、強化材料もしくは層の特性または強化材料は、例えば鋳造プロセス中に、その材料または層を充填する前駆体溶液の量を、前駆体溶液によって強化材料の部分充填を提供するように制御する、またはその量に影響する。例えば、強化材料の1つの層はオープンセルを有することができ、強化材料の別の層はクローズドセルを有することができる。前駆体溶液がそのような強化材料と組み合わされる場合、ゲル前駆体溶液は、その層のオープンセルに浸潤することができるが、もう1つの層のクローズドセルに実質的に浸潤していないことができる。このような組成物を乾燥させると、得られる強化エアロゲル組成物は、エアロゲルを含まない部分、例えばクローズドセル層を含むことができるが、エアロゲルを含む別の部分、例えばオープンセル層を含むことができる。
【0144】
一部の実施形態では、本明細書に開示される添加剤(例えば、吸熱添加剤、不透明化添加剤、火炎クラス添加剤、または他の添加剤)は、強化エアロゲル組成物内に不均一に分散することができる。例えば、添加材料は、エアロゲル組成物の厚さを通して、または長さ及び/または幅に沿って変動することができる。例えば、添加剤は、エアロゲル組成物の一方の側の上に蓄積することができる。いくつかの実施形態では、添加材料(複数可)は、エアロゲル複合体の1つの層に濃縮されること、または複合体に隣接する、もしくは付着する添加剤から本質的になる別個の層として与えられることができる。例えば、熱制御部材は、吸熱材料、例えば石膏、重炭酸ナトリウム、苦土系セメントから本質的になる層を含むことができる。さらなる例示的な実施形態では、エアロゲル組成物は、組成物内か、対向層としてかいずれかで、少なくとも1つの追加材料層も含むことができる。例えば、層は、ポリマーシート、金属シート、繊維シート、高配向グラファイト材料、例えば熱分解グラファイトシート、及びファブリックシートからなる群から選択された層であることができる。一部の実施形態では、対向層は、例えば選択された接着機構によって、組成物に付着することができる。例示的な接着機構としては、限定されないが、エアロゾル接着剤、ウレタン系接着剤、アクリレート接着剤、ホットメルト接着剤、エポキシ、ゴム樹脂接着剤、ポリウレタン複合体接着剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、対向層は、非接着機構によって、組成物に付着することができる。例示的な非接着機構は、限定ではないが、火炎結合、ニードル加工、ステッチ加工、シーリングバッグ、リベット、ボタン、クランプ、ラップ、ブレース、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、上述の接着機構及び非接着機構の任意の組み合わせを用いて、対向層を組成物に付着させることができる。
【0145】
粉末エアロゲル組成物
本明細書で論じられるように、エアロゲル組成物または複合体は、エアロゲル微粒子、粒子、造粒体、ビーズ、または粉体を固体または半固体材料に組み込む材料を、例えば、接着剤、樹脂、セメント、発泡体、ポリマー、または類似の固体もしくは凝固材料などの結合剤と組み合わせて含むことができる。例えば、エアロゲル組成物は、強化材料、エアロゲル粒子、及び任意選択で結合剤を含むことができる。例示的な実施形態では、エアロゲル粒子及び少なくとも1つのタイプの湿潤剤を含むスラリーを提供することができる。例えば、エアロゲル粒子は、界面活性剤または分散剤など、少なくとも1つの湿潤剤によってコーティングされる、または濡れることができる。エアロゲル粒子は、完全濡れ、部分濡れ(例えば、表面濡れ)であること、またはスラリー中に存在することができる。好ましい湿潤剤は、疎水性エアロゲル粒子の疎水性の適切な回復を可能にするために揮発することができる。湿潤剤がエアロゲル粒子の表面上に残存する場合、残存する湿潤剤は、複合材料の全体的な熱伝導率に寄与することができる。したがって、好ましい湿潤剤は、例えば分解または他の手段の有り無しで揮発によって、除去可能なものである。一般に、エアロゲルと混和性である任意の湿潤剤を使用することができる。
【0146】
湿潤剤
湿潤剤でコーティングされたスラリーまたはエアロゲルは、疎水性エアロゲルを、種々の材料、例えば、他の含水流体、スラリー、接着剤、結合剤材料に容易に導入する方法として有用であることができ、これらの材料は、任意選択で、硬化して、固体材料、繊維、金属蒸着繊維、短繊維、織布材料、不織布材料、ニードル不織布、バッティング、ウェッブ、マット、フェルト、及びそれらの組み合わせを形成することができる。少なくとも1つの湿潤剤によって濡れたエアロゲル、またはエアロゲルを少なくとも1つの湿潤剤と共に含むスラリーにより、疎水性エアロゲルの導入及び均一な分布を容易にすることが可能になる。米国特許第9,399,864号、第8,021,583号、第7,635,411号、及び第5,399,422号に記載されているもの(それぞれ参照により本明細書にそれら全体が援用されている)などの湿式プロセスは、水性スラリーを使用してエアロゲル粒子、繊維及び他の添加剤を分散させる。次いで、スラリーを脱水して、エアロゲル粒子、繊維、及び添加剤の層を形成することができ、これを乾燥させ、任意選択で、カレンダー加工し、エアロゲル複合体を製造することができる。
【0147】
エアロゲル粒子及び添加剤
他の実施形態では、エアロゲル組成物は、エアロゲル粒子、少なくとも1つの無機マトリックス材料、及び任意選択で、繊維、補助材料、添加剤、及びさらなる無機結合剤を含むことができる。無機マトリックス材料は、一部の実施形態では、フィロシリケート、例えば、カオリン、粘土もしくはベントナイトのような天然起源フィロシリケート、マガディアイトもしくはケニヤアイトのような合成フィロシリケート、またはこれらの混合物を含むことができる。フィロシリケートは、例えば、材料を乾燥させ、結晶水を除去するために、焼成されても、または焼成されなくてもよい。また無機マトリックス材料は、いくつかの実施形態では、フィロシリケートと組み合わせて、セメント、石灰、石膏またはそれらの適切な混合物など、無機結合剤を含むことができる。また無機マトリックス材料は、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される、他の無機添加剤、例えば火災クラス添加剤、不透明化剤、またはそれらの組み合わせを含むことができる。例示的なプロセス、及び無機マトリックス材料を含むエアロゲル組成物は、米国特許第6,143,400号、第6,083,619号に開示されている(それぞれ参照により本明細書にそれら全体が援用されている)。いくつかの実施形態では、エアロゲル組成物は、織布材料、不織布材料、ニードル不織布、バッティング、ウェッブ、マット、フェルト、及びそれらの組み合わせの上にコーティングされた、またはそれらの内部に吸収されたエアロゲル粒子を含むことができる。接着結合剤は、組成物中に含まれることができる。本明細書に開示されるような、火災クラス添加剤、不透明化剤、またはそれらの組み合わせなどの添加剤も含まれることができる。例示的なプロセス、及び織物にコーティングされた、または吸収されたエアロゲル組成物は、米国特許公開第2019/0264381A1号に開示されている(参照によりその全体が本明細書に援用されている)。
【0148】
本明細書で論じられるように、エアロゲル複合体は、他の材料、例えば対向材料の強化層と積層する、または対向することができる。一実施形態では、本開示は、強化エアロゲル組成物を含む少なくとも1つの基層と、少なくとも1つの対向層とを含む多層積層体を提供する。一実施形態では、対向層は強化材料を含む。一実施形態では、強化エアロゲル組成物は、繊維強化層またはオープンセル型発泡体強化層によって強化される。一実施形態では、本開示は、強化エアロゲル組成物を含有する基層と、強化材料を含有する少なくとも2つの対向層とを含む多層積層体を提供し、2つの対向層は、基層の対向する表面上にある。例えば、多層エアロゲル積層複合体は、米国特許出願2007/0173157に記載の方法及び材料に従って製造されることができる。
【0149】
対向層は、改善された可撓性または減少した粉塵などの特異的な特性を最終複合構造体にもたらすのに役立つ材料を含むことができる。対向材料は、剛性または可撓性であることができる。対向材料は、伝導層または反射箔を含むことができる。例えば、対向材料は、金属または金属蒸着材料を含むことができる。対向材料は、不織布材料を含むことができる。対向層は、炭化水素系誘電性冷却流体及びフッ素系誘電性冷却流体などの誘電性流体から絶縁層を保護するように選択され得る。対向層は、複合構造体、または複合構造体を形成する強化エアロゲル複合体、例えば熱制御部材の表面上に配置されることができる。対向層は、複合構造体、または複合構造体を形成する強化エアロゲル複合体、例えば熱制御部材の周囲に連続コーティングまたはバッグを形成することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の対向層は、複合構造体、または複合構造体を形成する強化エアロゲル複合体を被包することができる。
【0150】
一実施形態では、対向層は、絶縁層を取り囲むポリマーシートと;より具体的には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミドを含むポリマー材料と;より具体的には、ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリ(4-メチル-ペンタン)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(1-ブテン)、ポリスチレン、ポリビニルアセタタエ(polyvinylacetatae)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルホン、セルローストリアセテート、ポリカルボナート、ポリエチレンナフタレート、ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリウンデカノアミド、ポリイミド、またはこれらの組み合わせなどのポリマーを含む。一実施形態では、ポリマーシートは、延伸ポリマー材料、より具体的には、PTFEを含有する延伸ポリマー材料(ePTFE)、延伸ポリプロピレン(ePP)、延伸ポリエチレン(ePE)、延伸ポリスチレン(ePS)、またはそれらの組み合わせを含む、またはそれらから本質的になる。1つの好ましい実施形態では、対向材料は、延伸ポリマー材料から本質的になる。一実施形態では、ポリマーシートは、0.1μm~210μm、0.1μm~115μm、0.1μm~15μm、または0.1μm~0.6μmの範囲の細孔サイズによって特徴付けられたミクロ多孔質ポリマー材料を含む、またはそれから本質的になる。
【0151】
一実施形態では、対向層材料は、フルオロポリマー材料を含む、またはそれから本質的になる。本開示の文脈内で、「フルオロポリマーの」または「フルオロポリマー材料」という用語は、主にポリマーフルオロカーボンからなる材料を指す。適切なフルオロポリマー対向層材料としては、限定されないが、米国特許第5,814,405号に記載のミクロ多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びGore-Tex(登録商標)(W.L.Goreから入手可能)などの延伸PTFE(ePTFE)を含むPTFE;ポリフッ化ビニル(PVF);ポリフッ化ビニリデン(PVDF);ペルフルオロアルコキシ(PFA);フッ化エチレン-プロピレン(FEP);ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE);ポリフッ化ビニリデン(PVDF);エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE);及びこれらの組み合わせが挙げられる。1つの好ましい実施形態では、対向材料は、フルオロポリマー材料から本質的になる。1つの好ましい実施形態では、対向材料は、延伸PTFE(ePTFE)材料から本質的になる。
【0152】
一実施形態では、対向層材料は、非フルオロポリマー材料を含む、またはそれから本質的になる。本開示の文脈内で、「非フルオロポリマーの」または「非フルオロポリマー材料」という用語は、フルオロポリマー材料を含まない材料を指す。適切な非フルオロポリマー対向層材料としては、限定されないが、アルミニウム蒸着Mylar;低密度ポリエチレン、例えばTyvek(登録商標)(DuPontから入手可能);ゴムまたはゴム複合体;不織布材料、弾性繊維、例えばスパンデックス、ナイロン、ライクラまたはエラスタン;及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、対向材料は可撓性対向材料である。
【0153】
いくつかの実施形態では、対向層材料は、約100℃まで、約120℃まで、または約150℃までの最高使用温度を有するものなど、自動車用樹脂及びポリマーを含むことができる。例えば、対向層材料は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリカルボナートABS、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカルボナート、ポリイミド、ポリアミド、PVC、またはそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、本明細書に開示される実施形態によるエアロゲル複合体及び熱制御部材は、自動車用樹脂または自動車用ポリマーの層、金属層または金属蒸着層、及びエアロゲル層を含むことができる。
【0154】
対向層は、無機または有機対向材料を基層の強化材料に固定するのに適している接着剤を使用して、絶縁層に付着することができる。本開示に使用されることができる接着剤の例としては、限定されないが、セメント系接着剤、ケイ酸ナトリウム、ラテックス、感圧接着剤、シリコーン、ポリスチレン、エアロゾル接着剤、ウレタン、アクリレート接着剤、ホットメルト接着系、3Mから市販されている接着系、エポキシ、ゴム樹脂接着剤、ポリウレタン接着混合物(例えば、米国特許第4,532,316号に記載されるもの)が挙げられる。
【0155】
また対向層は、無機または有機対向材料を基層の強化材料に固定するのに適している非接着材料または技法を使用して、絶縁層に付着することができる。本開示に使用されることができる非接着材料または技法の例としては、限定されないが、ヒートシール加工、超音波ステッチ加工、RFシール加工、ステッチもしくはスレッド加工、ニードル加工、シーリングバッグ、リベットもしくはボタン、クランプ、ラップ、または他の非接着積層材料が挙げられる。
【0156】
対向層は、エアロゲル複合材料の製造のいずれかの段階で絶縁層に付着することができる。一実施形態では、対向層は、ゾルゲル溶液を基部強化材料に注入した後であるが、ゲル化する前に、絶縁層に付着する。別の実施形態では、対向層は、ゾルゲル溶液を基部強化材料に注入した後に続くゲル化の後であるが、ゲル材料を経年劣化させる、または乾燥させる前に、絶縁層に付着する。さらに別の実施形態では、対向層は、ゲル材料を経年劣化させて、乾燥させた後に絶縁層に付着する。好ましい実施形態では、対向層は、ゾルゲル溶液を基部強化材料に注入する前に、基部層の強化材料に付着する。対向層は、固体及び流体不透過性であることができる。
【0157】
好ましくは、対向層は、電池モジュールまたは電池パックを冷却させるために使用される冷却流体に不活性である。より詳細に後述されるように、絶縁層は、圧縮性層を通って流れ得る冷却流体(液体または気体)に曝露され得る。絶縁層の化学修飾を抑制または防止するために、対向層は、絶縁層を取り囲み、使用される冷却流体に不活性な材料から形成されることができる。例えば、炭化水素系誘電性冷却流体が使用されている場合、対向層は、炭化水素系誘電性冷却流体に化学的に不活性な材料から形成されてもよい。代替に、フッ素系誘電性冷却流体が使用されている場合、対向層は、フッ素系誘電性冷却流体に化学的に不活性な材料から形成されてもよい。
【0158】
不透明化剤
エアロゲル組成物は、熱伝達の放射成分を減少させるために不透明化剤を含むことができる。ゲル形成前のいずれかの時点で、不透明化化合物またはその前駆体を、ゲル前駆体を含む混合物中に分散させ得る。不透明化化合物の例としては、限定されないが、炭化ホウ素(B4C)、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、AgO、Bi、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、酸化(鉄/チタン)、酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化(鉄/チタン)(イルメナイト)、酸化クロム、炭化物(SiC、TiCもしくはWCなど)、またはこれらの混合物が挙げられる。不透明化化合物前駆体の例としては、TiOSOまたはTiOClが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、添加剤として使用される不透明化化合物は、炭化ケイ素のウィスカまたは繊維を除外することができる。エアロゲル組成物が電気デバイス、例えば障壁層としての電池または他の関連用途での使用に意図される場合、不透明化剤を含む組成物は、望ましくは、高い体積抵抗率及び表面抵抗率を有する高い絶縁耐力を有することができる。それらのような実施形態では、不透明化剤として使用される炭素添加剤は、非導電性であり、または修飾され、導電率を低減させることができる。例えば、不透明化剤を表面酸化させて、導電率を低減させることができる。いくつかの実施形態では、固有の導電率を有する炭素質添加剤を、電気デバイスで使用することを意図したエアロゲル組成物中の不透明化剤として使用することができる。それらのような実施形態では、導電性炭素質添加剤は、電気デバイスで使用するのに適した絶縁耐力を有する組成物を与えるように、パーコレーション閾値を下回る濃度で使用されることができる。
【0159】
火炎クラス添加剤
エアロゲル組成物は、1つ以上の火災クラス添加剤を含むことができる。本開示の文脈内で、「火災クラス添加剤」という用語は、火災に対する反応の文脈では吸熱効果を有し、エアロゲル組成物に組み込まれることができる材料を指す。さらに特定の実施形態では、火災クラス添加剤は、火災クラス添加剤が存在するエアロゲル組成物の熱分解(Td)の開始よりも高い100℃以下の吸熱分解(ED)の開始を有し、また特定の実施形態では、火災クラス添加剤が存在するエアロゲル組成物のTdよりも低い50℃以下のEDの開始も有する。換言すれば、火災クラス添加剤のEDは、(T-50℃)~(T+100℃)の範囲を有する:
【数1】
【0160】
ゾル(例えば、従来技術で理解されるような様々な方法でアルキルシリケートまたは水ガラスから調製されたシリカゾル)による取り込みまたはゾルとの混合の前に、それと同時に、またはさらにはそれに続いて、火災クラス添加剤を、エタノール及び任意選択で最大10vol%の水を含む媒体と混合する、またはその他の方法で媒体中に分散させることができる。混合物を、必要に応じて混合し、及び/または攪拌し、媒体中の添加剤の実質的に均一な分散を達成し得る。理論に拘束されることなく、上記に参照された粘土の水和形態及び他の火災クラス添加剤を利用すると、さらなる吸熱効果が得られる。例えば、ハロイサイト粘土(Applied Minerals,Inc.から商標名DRAGONITEで、またはImerysから単にハロイサイトとして市販されている)、カオリナイト粘土は、水和形態では水和水を昇温で放出すること(ガス希釈)によって吸熱効果を有するケイ酸アルミニウム粘土である。別の例として、水和形態での炭酸塩は、加熱または昇温で二酸化炭素を放出することができる。
【0161】
本開示の文脈内で、「脱水熱」という用語は、昇温に曝露されない場合に水和形態にある材料から水を蒸発させる(また適用可能な場合、ジヒドロキシル化させる)のに必要な熱の量を意味する。脱水熱は、一般的には、単位重量ベースで表される。
【0162】
特定の実施形態では、本開示の火炎クラス添加剤は、約100℃以上、約130℃以上、約200℃以上、約230℃以上、約240℃以上、約330℃以上、350℃以上、約400℃以上、約415℃以上、約425℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、約650℃以上、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の熱分解の開始を有する。特定の実施形態では、本開示の火災クラス添加剤は、約440℃または570℃の熱分解の開始を有する。特定の実施形態では、本開示の火災クラス添加剤は、火災クラス添加剤が組み込まれるエアロゲル組成物(火災クラス添加剤の無い)のTdより上下50℃以下、上下40℃以下、上下30℃以下、上下20℃以下、上下10℃以下、上下5℃以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の熱分解の開始を有する。
【0163】
本開示の火災クラス添加剤は、粘土材料、例えば、限定されないが、フィロシリケート粘土(イライトなど)、カオリンまたはカオリナイト(ケイ酸アルミニウム;AlSi(OH))、メタカオリン、ハロイサイト(ケイ酸アルミニウム;AlSi(OH))、エンデライト(ケイ酸アルミニウム;AlSi(OH))、雲母(シリカ鉱物)、ジアスポア(水酸化酸化アルミニウム;α-AlO(OH))、ギブサイト(水酸化アルミニウム)、ベーマイト(水酸化酸化アルミニウム;γ-AlO(OH))、モンモリロナイト、バイデライト、パイロフィライト(ケイ酸アルミニウム;AlSi10(OH))、ノントロナイト、ブラバイサイト(bravaisite)、スメクタイト、レバリエライト(leverrierite)、レクトライト、セラドナイト、アタパルジャイト、クロロパール、ボルコンスコイト(volkonskoite)、アロフェン、レースウィナイト(racewinite)、ディルナイト(dillnite)、セベライト(severite)、ミロサイト(miloschite)、コリライト(collyrite)、シモライト(cimolite)及びニュートナイト(newtonite)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化マグネシウム(または二水酸化マグネシウム、「MDH」)、アルミナ三水和物(「ATH」)、石膏(硫酸カルシウム二水和物;CaSO・2HO)、バーリントナイト(MgCO・2HO)、ネスケホナイト(MgCO・3HO)、ランスフォルダイト(MgCO・HO)、ハイドロマグネサイト(水和炭酸マグネシウム;Mg(CO(OH)・HO)、他の炭酸塩、例えば、限定されないが、ドロマイト及び炭酸リチウムを含む。粘土材料の中でも、本開示の特定の実施形態は、少なくとも部分的に層状構造を有する粘土材料を使用する。本開示の特定の実施形態では、エアロゲル組成物中の火災クラス添加剤としての粘土材料は、少なくとも一部の水を、例えば水和形態で有する。添加剤は、含水結晶形態であってもよく、本開示の組成物の製造/処理で水和するようになってもよい。特定の実施形態では、火災クラス添加剤は、化学組成の変化なしに熱を吸収する低融点添加剤も含む。このクラスの例は、不活性ガラスビーズなど、低融点ガラスである。本開示の組成物に有用であり得る他の添加剤としては、限定されないが、ワラストナイト(ケイ酸カルシウム)及び二酸化チタン(TiO)が挙げられる。特定の実施形態では、他の添加剤は、限定されないが、二酸化チタンもしくは炭化ケイ素などの赤外不透明化剤、限定されないが、低融点ガラスフリット、ケイ酸カルシウムなどのセラミファイア(ceramifier)、または限定されないが、リン酸塩及び硫酸塩などのチャーフォーマ(charformer)を含み得る。特定の実施形態では、添加剤が均一に分布することを確保し、多量に凝集することで生成物性能のばらつきを引き起こさないための技法など、特別な処理上の配慮を添加剤は必要とする場合がある。処理技法は、追加の静的及び動的撹拌機、安定剤、処理条件の調整、及び当該技術分野で既知の他のものを含み得る。
【0164】
添加剤の量
本明細書に開示されるエアロゲル組成物中の添加剤の量は、組成物の所望の特性に依存し得る。ゾルゲル組成物の調製及び処理の間に使用される添加剤の量は、一般的には、ゾルのシリカ含量に対する重量パーセントと呼ばれる。ゾル中の添加剤の量は、シリカ含量に対して重量で約5wt%~約70wt%まで変動し得る。特定の実施形態では、ゾル中の添加剤の量は、シリカ含量に対して10wt%~60wt%の間であり、特定の好ましい実施形態では、シリカ含量に対して20wt%~40wt%の間である。例示的な実施形態では、シリカ含量に対するゾル中の添加剤の量は、シリカ含量に対して約5wt%~約20wt%、約10wt%~約20wt%、約10wt%~約30wt%、約10wt%~約20wt%、約30wt%~約50wt%、約35wt%~約45wt%、または約35wt%~約40wt%の範囲内である。一部の実施形態では、ゾル中の添加剤の量は、シリカ含量に対して少なくとも約10wt%、またはシリカ含量に対して約10wt%である。いくつかの実施形態では、添加剤の量は、シリカ含量に対して約5wt%~約15wt%の範囲内である。特定の実施形態では、添加剤は、1種類を超えるものであってもよい。また1つ以上の火災クラス添加剤が最終エアロゲル組成物中に存在してもよい。ケイ酸アルミニウムの火災クラス添加剤を含むいくつかの好ましい実施形態では、添加剤は、シリカ含量に対して約60~70wt%内のエアロゲル組成物中に存在する。例えば、カオリンのようなケイ酸アルミニウムの火災クラス添加剤、またはカオリンのようなケイ酸アルミニウムの火災クラス添加剤とアルミナ三水和物(「ATH」)との組み合わせを含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、シリカ含量に対して約30~40wt%である。別の例として、添加剤が炭化ケイ素を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、シリカ含量に対して約30~40wt%、例えば35wt%である。別の例として、添加剤が炭化ケイ素を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、シリカ含量に対して約5~15wt%、例えば10wt%である。
【0165】
最終強化エアロゲル組成物を参照する場合、添加剤の量は、一般的には、最終強化エアロゲル組成物の重量パーセントと呼ばれる。最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、強化エアロゲル組成物の約1重量%~約50重量%、約1重量%~約25重量%、または約10重量%~約25重量%まで変動し得る。例示的な実施形態では、最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、強化エアロゲル組成物の約10重量%~約20重量%の範囲内である。例示的な実施形態では、最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、組成物の重量パーセントとして、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、または前述のパーセントのいずれかの間の範囲内である。特定の実施形態では、最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、強化エアロゲル組成物の約15重量%である。特定の実施形態では、最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、強化エアロゲル組成物の約13重量%である。例えば、炭化ケイ素のような添加剤を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、強化エアロゲル組成物の約10~20重量%、例えば約15重量%である。別の例として、添加剤が炭化ケイ素を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、強化エアロゲル組成物の約3~5重量%、例えば約4重量%である。
【0166】
火災クラス添加剤による熱分解の開始
特定の実施形態では、火災クラス添加剤は、それらの熱分解の開始温度に基づいてクラス分類されること、または群化されることができる。例えば、火災クラス添加剤は、約200℃未満、約400℃未満、または約400℃超の熱分解の開始温度を有するものとしてクラス分類されること、または群化されることができる。例えば、約200℃未満の熱分解の開始温度を有する添加剤は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、ネスケホナイト(MgCO・3HO)、及び石膏(硫酸カルシウム二水和物;CaSO・2HO)を含む。別の例として、約400℃未満の熱分解の開始温度を有する添加剤は、アルミナ三水和物(「ATH」)、ハイドロマグネサイト(水和炭酸マグネシウム;Mg(CO(OH)・HO)、及び水酸化マグネシウム(または二水酸化マグネシウム、「MDH」)を含む。別の例として、約400℃未満の熱分解の開始温度を有する添加剤は、ハロイサイト(ケイ酸アルミニウム;AlSi(OH))、カオリンまたはカオリナイト(ケイ酸アルミニウム;AlSi(OH))、ベーマイト(水酸化酸化アルミニウム;γ-AlO(OH))、または高温相変化材料(PCM)を含む。
【0167】
本開示の特定の実施形態では、エアロゲル組成物中の添加剤として、粘土材料、例えば、ハロイサイトまたはカオリナイトなどのアルミノケイ酸塩粘土は、脱水形態、例えば、メタハロイサイトまたはメタカオリンである。本開示の組成物に有用であり得る他の添加剤としては、限定されないが、ワラストナイト(ケイ酸カルシウム)及び二酸化チタン(TiO)が挙げられる。特定の実施形態では、他の添加剤は、限定されないが、二酸化チタンもしくは炭化ケイ素などの赤外不透明化剤、限定されないが、低融点ガラスフリット、ケイ酸カルシウムなどのセラミファイア(ceramifier)、または限定されないが、リン酸塩及び硫酸塩などのチャーフォーマ(charformer)を含み得る。特定の実施形態では、添加剤が均一に分布することを確保し、多量に凝集することで生成物性能のばらつきを引き起こさないための技法など、特別な処理上の配慮を添加剤は必要とする場合がある。処理技法は、追加の静的及び動的撹拌機、安定剤、処理条件の調整、及び当技術分野で既知の他のものを含み得る。また1つ以上の火災クラス添加剤は、最終エアロゲル組成物中に存在し得る。
【0168】
特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料及び組成物中に添加剤、例えば、ハロイサイトまたはカオリンなどのアルミノケイ酸塩粘土系材料を含むことにより、高温収縮特性が改善されることができる。高温収縮の試験方法の一例は、「Standard Test Method for Linear Shrinkage of Preformed High-Temperature Thermal Insulation Subjected to Soaking Heat」(ASTM C356,ASTM International,West Conshohocken,PA)である。「熱浸漬」と呼ばれる、それらのような試験では、材料は、1000℃を超える温度まで最大60分の持続時間で曝露される。特定の例示的な実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約6%以下、約5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の高温収縮、すなわち、線収縮、幅収縮、厚さ収縮、または寸法収縮の任意の組み合わせを有することができる。
【0169】
いくつかの例示的な実施形態では、前駆体反応を触媒するために使用される特定の塩基性触媒により、エアロゲル組成物中に微量のアルカリ金属が生じることができる。エアロゲル材料中の微量、例えば100~500ppmのアルカリ、例えばナトリウムまたはカリウムは、高温収縮及び耐熱性に有害な影響を有することができる。しかしながら、任意の特定の機構または理論に拘束されることなく、ハロイサイトまたはカオリンなどのアルミノケイ酸塩粘土系材料は、例えばナトリウムまたはカリウムなどの揮散性アルカリを捕捉することによって、収縮及び耐熱性に対するアルカリの効果を低減させる、または除去することができる。本開示の特定の実施形態では、アルミノケイ酸塩粘土材料は、脱水形態、例えば、メタハロイサイトまたはメタカオリンである。例えば、シリカ含量に対して約0.5wt%超の量のメタカオリンまたはメタハロイサイトを含むエアロゲル材料または組成物は、熱収縮及び耐熱性を著しく低下させることができる。例示的な実施形態では、エアロゲル材料または組成物は、シリカ含量に対して約0.5wt%~約3.0wt%の範囲内の量のメタカオリンまたはメタハロイサイトを含むことができる。
【0170】
熱伝導性プレート
実施形態では、一対の剛性プレートの少なくとも1つは、熱伝導性プレートである。好ましくは、両方の剛性プレートは、熱伝導性プレートである。熱伝導性剛性プレートは、ばね素子の剛性支持体と、隣接する電池セルまたは電池モジュールからの熱が一対の剛性熱伝導性プレート間に形成された流路に伝達することを可能にする熱伝達面との両方を提供する。
【0171】
熱伝導性剛性プレートは、熱伝導性材料から形成される。熱伝導性材料は、少なくとも約200mW/m-Kの面内寸法に沿った熱伝導率を有することができる。熱伝導性材料は、50W/mK超、より好ましくは100W/mK超、さらにより好ましくは200W/mK超の熱伝導率を有することができる(全て25℃で測定)。熱伝導性材料は、金属、炭素、伝導性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含有する少なくとも1つの層を含むことができる。熱伝導性プレートを形成するために使用されることができる熱伝導性材料の例としては、炭素繊維、グラファイト、炭化ケイ素、限定されないが、銅、ステンレス鋼、アルミニウムなどを含む金属だけでなく、これらの組み合わせが挙げられる。
【0172】
上記の態様のいくつかの実施形態では、熱伝導性プレート(複数可)は、1つまたは複数の熱伝導性層を含むことができる。例えば、熱伝導性プレートは、熱伝導性材料の少なくとも1つの層、または熱伝導性材料を含有する少なくとも1つの層、例えば、金属、炭素、熱伝導性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含有する層を含むことができる。これらの実施形態の文脈で使用される場合、熱伝導性材料は、絶縁層の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料、例えばエアロゲル組成物を指す。特定の実施形態では、熱伝導性材料は、エアロゲル組成物の熱伝導率よりも少なくとも約1桁大きい熱伝導率を有する。
【0173】
好ましくは、熱伝導性プレートは、少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも600℃、さらにより好ましくは少なくとも1000℃、さらになおより好ましくは少なくとも1500℃の融解温度を有する。
【0174】
熱伝導性プレートの厚さは、使用される材料と、絶縁層の特性と、プレートに対してばね素子が加える圧力の量と、電池セルまたはモジュールの量、及び電池モジュールまたは電池パックの内部で利用可能な空間の量に関連する様々な要因とに依存し得る。機能的に言えば、熱伝導性層は、ばね素子に対して所望の抵抗を与えるのに十分に厚くなければならない。
【0175】
いくつかの実施形態では、熱伝導性プレートは、約0.010mm、0.025mm、0.05mm、0.07mm、0.10mm、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内にあり、約600~約1950W/mKの範囲内の面内熱伝導率内にある厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、熱伝導性プレートは、約0.05mm、約0.07mm、約0.10mm、約0.20mm、約0.25mm、約0.30mm、約0.5mm、約0.75mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内の厚さを有することができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、熱伝導性材料は、相変化材料から選択されることができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、サーマルペーストを絶縁層と圧縮性層との間、または電池セルもしくはモジュールと圧縮性層との間に使用して、それらのような層間の均一かつ一貫した熱伝導を確保することができる。本明細書で使用される場合、サーマルペーストは、熱的化合物、サーマルグリース、熱界面材料(TIM)、サーマルゲル、ヒートペースト、ヒートシンク化合物、及びヒートシンクペーストとしても知られている様々な材料を指す。例えば、サーマルペースト層を、絶縁層(例えば、エアロゲル組成物)と熱伝導性プレートとの間に配置することができる。
【0178】
圧縮性層
上述のように、本開示の実施形態による障壁は、低い熱伝達特性及び耐火特性に加えて、圧縮性、圧縮回復性、及びコンプライアンスに有利な特性を与える。絶縁層と共に使用される場合、圧縮性層は、電池の充電/放電サイクル中の活性材料の分解及び膨潤に起因するセルの膨張に適応するように、圧縮変形に対する耐性を与えることができる。電池モジュールまたは電池パックの最初の組み立ての間、1MPa以下の比較的低い負荷が障壁に一般的に加えられる。使用中、例えば、電池モジュール内のセルが充電/放電サイクル中に膨張または膨潤すると、約5MPaまでの負荷が圧縮性層に加えられ得る。
【0179】
実施形態では、圧縮性層は、約1MPa~約12MPaの圧縮弾性率を有する。圧縮性層の圧縮弾性率は、剛性プレート間に配置されたばね素子によって決定される。セルまたは電池モジュール及びパックの間の材料の圧縮特性及び回復特性は、セルの寿命サイクル中の膨潤に適応させるために重要である。特定の実施形態では、圧縮性層は、(i)その元の厚さまたは非圧縮厚さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、そして最も好ましくは少なくとも80%だけ圧縮可能であり、(ii)圧縮の解放後、その元の厚さまたは非圧縮厚さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、そして最も好ましくは少なくとも100%まで戻るばね素子を含む。
【0180】
ばね素子
障壁層の圧縮性層は、一対の剛性プレートと、剛性プレート間に配置された1つ以上のばね素子とを含む。本開示の文脈内で、「ばね素子」という用語は、機械的エネルギーを貯蔵する任意の弾性物体を指す。圧縮ばねは、ばね素子としての使用に好ましいばねである。例示的な圧縮ばねは、限定されないが、定圧縮ばね、可変圧縮ばね、平面圧縮ばね、蛇行圧縮ばね、カンチレバー圧縮ばね、弓形圧縮ばね、コイル圧縮ばね、らせん状圧縮ばね、円すい圧縮ばね、ウェーブスプリング、及び線形ばねを含む。圧縮性層の「ばね素子」は、単一タイプの圧縮ばね、または異なるタイプの圧縮ばねの組み合わせを含み得る。
【0181】
ばね素子は、プレートに加えられる圧力に弾性応答を与える材料から構成される。材料は、所望の弾性応答を与える任意の金属またはポリマー材料であることができる。好ましくは、ばね素子は、ステンレス鋼から作られる。ばね素子の特性は、2つの電池セルまたは2つの電池モジュールの間に配置される場合、剛性プレートに適切な量の圧縮力を与えるように選択される。圧縮力は、剛性プレートを電池セルまたは電池モジュールの側部と接触した状態に保つのに十分であるように選択される。圧縮力の上限は、電池セルまたはモジュールの動作寿命にわたる所期の膨張に基づいて決定される。一般に、電池セルまたはモジュールがそれらの最初の厚さの50%~100%まで膨張することが予想されることができる。
【0182】
図9A図9Bは、電池セルに見られる一般的な膨張を示す。図9A図9Bは、それらの間に配置された、障壁400を有する一対の電池セル430を示す。図9Aに示される、エネルギー貯蔵システムの「寿命の開始」では、電池セルは、それらの最も薄い厚さを有する。ばね素子425は、それらの最も圧縮されていない状態にあり、電池セル430に対して剛性プレート422aを、そして絶縁層410に対して剛性プレート422bを押し付けるのに十分な圧力を与える。電池セルが経年劣化すると、電池セルは膨張し始める。電池セルの「寿命の終了」段階を図9Bに示す。電池セルが膨張すると、電池セルが障壁に押し当たることにより、ばね素子が収縮して、電池セルの膨張を補償する。実施形態では、障壁は、非圧縮状態中、またはエネルギー貯蔵システムの寿命の開始時に、約5mm~約30mmの間の範囲内の平均厚さを有し、障壁は、エネルギー貯蔵システムの寿命の終了時またはその付近で、約2mm~10mmの間の最小平均厚さまで圧縮可能である。
【0183】
電池セルまたは電池モジュールがそれらの寿命の間に膨張することを可能にするために、ばね素子は、適切な量の膨張を可能にするように選択される。これは、正しいばね定数を有するばねを選択することによって行われる。これは、以下のフックの法則を用いて計算されることができる:
F=-kΔx
式中、(F)はばねによって発生する力であり、(Δx)はその緩和位置または中立位置からのばねの変位(例えば、圧縮)であり、(k)はばね定数である。2つの電池素子の間の位置に配置する前に、ばね素子上の変位はなく、力(F)はゼロである。電池素子間に障壁を配置するために、圧縮性素子は、障壁を電池素子間に挟装するように、障壁の幅を縮小するように圧縮される。障壁素子の間に位置決めされると、ばね素子は、ばね素子の変位(圧縮)の量に比例する初期定荷重(F)を剛性プレートに対して加える。使用中に電池が膨張すると、ばねは、より圧縮されるようになり、この定荷重は増加する。したがって、ばね定数は、ばね素子がこの膨張を妨げることなく、電池素子が膨張することを可能にするように選択される。
【0184】
ばね定数(k)は、いくつかの要因によって影響されることができる。ばね定数に影響する主な要因は、限定されないが、(1)ばね材料のワイヤ直径、(2)ばね素子の直径または長さ、及び(3)平衡状態から変位を受けていない場合のその長さを表す、ばね素子の自由長を含む。これらの要因のそれぞれは、電池素子の寿命にわたって剛性プレートに対して適切な量の圧縮力を与える、1つ以上のばね素子を作製するように調整されることができる。したがって、ばね素子のばね定数は、電気エネルギー貯蔵システム内の隣接する電池素子に対してプレートを押し付けるように選択される。またばね素子は、隣接する電池セルが膨張するにつれて、ばね素子が圧縮されることを可能にする、ばね定数を有するように選択される。
【0185】
ばね素子は、剛性プレートの一方または両方に取り付けられてもよく、または剛性プレートの一方または両方に取り付けられずに剛性プレート間に配置されてもよい。1つ以上の剛性プレートに取り付けられる場合、ばね素子は、接着剤、溶接、または機械的締結用部品を使用して取り付けられ得る。
【0186】
図7及び図8は、圧縮性層(420及び520)を含む障壁の実施形態を示す。図示の実施形態では、線形ウェーブスプリングがばね素子425として示されている。図10A図10Bは、線形ウェーブスプリングを有する圧縮性層の概略図を示す。これらの実施形態では、圧縮性層は、一対の剛性プレート422から構成され、線形ウェーブスプリング425は剛性プレート間に位置決めされている。線形ウェーブスプリングは、剛性プレートに取り付けられてもよく、またはいかなるタイプの取り付けもなく剛性プレート間に配置されてもよい。線形ウェーブスプリングは図9A図9Bにも示されている。
【0187】
図11A図11Bは、剛性プレートの表面上に形成されたカンチレバー圧縮ばねの実施形態を示す。図11Aは、タブ625のアレイを有する、剛性プレート622を示す。タブのアレイの各タブは、電池素子の間に配置された障壁の動作条件中に弾性的に変形することができるカンチレバー圧縮ばねとして機能する。タブ625のアレイは、エネルギー貯蔵システムの動作条件下で弾性的に変形可能な任意の金属またはポリマーから形成されることができる。図11Bに示される実施形態では、タブのアレイは、剛性プレート622のそれぞれの内面上に配置される。しかしながら、タブのアレイが剛性プレートの一方にのみ配置され得ることを理解されたい。
【0188】
図12は、ディンプル圧縮ばね素子725を有する剛性プレート722の実施形態を示す。この実施形態では、弾性の圧縮性材料から形成された複数のディンプル圧縮ばね素子725は、剛性プレート722の一方または両方の内面上に配置される。ディンプル圧縮ばね素子は、金属またはポリマーから形成され得る。ディンプル圧縮ばね素子は、中空または中実であってよい。
【0189】
図13は、剛性プレート822の表面上に配置された複数のコイル圧縮ばね素子825を有する圧縮性層800の一部分の実施形態を示す。好ましくは、円すい圧縮ばねが使用される。円すい圧縮ばねは、圧縮されるにつれて、縮小する輪郭を有する。電池素子が膨張するにつれて、ばねはそれ自体の内に圧縮することにより、円すい圧縮ばねが完全に圧縮されるまで、電池素子の膨張が可能になる。これらのばね素子の円すい形状のため、ばねは、ばねの高さがばねを作製するために使用されたワイヤの幅に等しくなるまで圧縮されることができる。
【0190】
図14A図14Bは、剛性プレート922の表面上に配置された複数の弓形圧縮ばね素子925を有する圧縮性層900の実施形態を示す。図14Bに示されるように、弓形圧縮ばね素子は、一対の剛性プレートの一方に対して端部に、そして剛性プレートの他方に対して中間に取り付けられる材料、金属、またはポリマーの胴締めであることができる。使用中、電池素子の膨張は、弓形状を変形させて、電池素子からの力の増加に適応させる。胴締めは、溶接、接着剤、または締結用部品を用いて適所に保持され得る。図15A図15Bに示される実施形態では、胴締めは、剛性プレートに形成される凹部によって適所に保持され得る。例えば、第一剛性プレート922aには、胴締めの端部を受け入れるために一対の凹部927を胴締めごとに形成してよい。第二剛性プレート922bには、胴締めの中心を受け入れる凹部929が形成される。凹部の使用は、いくつかの利点を提示する。この凹部は、圧縮力が圧縮性層に加えられる場合、胴締めの滑動または運動を防止することができる。別の利点は、凹部が圧縮中に剛性プレートをアライメントした状態に保つのに役立つことである。例えば、剛性プレートの一方に横方向の力が加えられる場合、胴締めは、横方向に実質的に非圧縮性であるため、凹部内に配置されたときにプレートをアライメントして保持することができる。
【0191】
使用中、障壁は、隣接する電池素子(例えば、電池セルまたは電池モジュール)と接触して配置される。障壁は、例えば、図7図8図9A、及び図9Bに示されるように、互いにサイズ及び形状が実質的に同一である剛性プレート(例えば、熱伝導性剛性プレート)を好ましくは含む。また剛性プレートは、一対の剛性プレートの一方の外縁部が一対の剛性プレートの他方の外縁部と実質的にアライメントされるように、アライメントされた配置にある。
【0192】
使用中、電池素子の膨張により、剛性プレート上の圧力は、増加し得るが、ばね素子によって打ち消される。電池素子の膨張が不均一で、例えば、剛性プレートに対して非対称な圧力が生じる位置で起こる場合、剛性プレートは摺動して、アライメントされた配置から外れ得る。剛性プレートをアライメントされた配置に保つために、1つ以上のガイドは、一対の剛性プレートの間に位置決めされ得る。ガイドは、各プレートに取り付けられ、プレートが摺動して、アライメントされた位置から外れない状態に保つ。図10Bは、プレート間に位置決めされたガイド427を有する2つのプレート422の実施形態を示す。ガイドは、ロッドまたはボルトであることができ、各剛性プレートに連結され、剛性プレートの互いに対する横方向の運動を抑制する、または防止する。ガイド427は、ストップ429も含み得る。ストップ429は、圧縮性層の完全な圧縮を防止し得る。例えば、熱暴走事象の間、隣接する電池セルが破裂し得ると、圧縮性層に対して爆発的な力が加えられる。この力は、ばね素子の抵抗に打ち勝ち、剛性部材を互いに接触させ得る。ガイド427に沿ったストップ429の配置は、剛性プレートに対して極端な力が加えられる事象での圧縮性層の完全な圧壊を防ぐことができる。
【0193】
電池モジュールまたはパック内での障壁の使用
リチウムイオン電池(LIB)は、従来の電池と比較して、高い動作電圧、低いメモリ効果、及び高いエネルギー密度により、最も重要なエネルギー貯蔵技術の1つであるとみなされる。しかしながら、安全性への懸念は、LIBの大規模な用途を妨げる大きい障害となる。誤用条件下では、発熱反応により、熱が放出され得、その後の安全でない反応がトリガされることがある。セルの誤用から熱が放出されるにつれて、連鎖反応が活性化され、壊滅的な熱暴走を引き起こすことができるため、状況はさらに悪化する。
【0194】
エネルギー密度でのLIBの継続的な改善による、それらの安全性の向上は、電気デバイス(例えば、電気自動車)の開発にとって、ますます急務になっている。安全問題の根底にある機構は、様々な電池の化学的性質ごとに異なる。本技術は、有利な熱的及び機械的特性を得るように障壁を作ることに焦点を当てる。本技術の障壁は、通常の動作モード下での(例えば、加えられた圧縮応力に耐える)LIBの安定性を確保しながら、通常条件だけでなく熱暴走条件下で効果的な熱消散策を提供する。
【0195】
本明細書に開示される障壁は、任意の構成の電池の電池セルまたは電池コンポーネント、例えば、パウチセル、円筒形セル、非円形セルだけでなく、それらのような任意のセルを組み込むまたは含むパック及びモジュールを分離し、絶縁し、保護するのに有用である。本明細書に開示される障壁は、充電式電池、例えば、リチウムイオン電池、固体電池、ならびに分離、絶縁及び保護が必要な他の任意のエネルギー貯蔵デバイスまたは技術に有用である。
【0196】
冷却システムは、電池モジュールまたは電池パック内で本開示の障壁と組み合わせて使用され得る。図16は、本開示の障壁と共に使用される冷却システムの実施形態を示す。図16では、2つの電池素子(電池セル1130)は、絶縁層1110と2つの圧縮性層1120とを含む障壁1100によって分離される。圧縮性層1120は、絶縁層1110の対向する側部に配置される。障壁は、電池素子1130の間に配置され、ばね素子を介して膨張し、電池素子と接触する。本開示の障壁の利点は、圧縮性層が剛性プレート間に流路を画定することである。この流路を使用して、図16に示されるように、個々の電池素子(すなわち、電池セルまたは電池モジュール)間に熱伝達流体を向けることができる。
【0197】
障壁を通る最適な流体の流れを得るために、ばね素子は、電池の寿命にわたって1mm~5mmの間の幅を有する流路を維持するように選択される。例えば、流路は、電池素子の寿命の開始時に5mmの幅を有し得るが、電池素子の寿命の終了時に1mmまで収縮し得る。ばね素子の使用により、ばねが広がっている間、流路を作り出すことが可能になり、流体は、ばね素子の周りを通り流れる。
【0198】
実施形態では、電源システムは、1つ以上の電池モジュールと、電池モジュールに結合された流体移送システムとを含み得る。電源システムの概略図を図17に示す。電源システム1200は、電池素子1230を含む。電池素子1230は、電池モジュール内に配置された1つ以上の電池セル、または電池パック内に配置された1つ以上の電池モジュールを含む。電池モジュールまたは電池パックは、電池素子が密閉容器内に収容されるように密閉される。電池セルまたは電池モジュールは、本開示の障壁によって分離される。障壁は、前述されたように、1つの絶縁層と、1つまたは2つの圧縮性層とを含む。流路は、障壁の圧縮性層を通って画定される。
【0199】
また電源システム1200は流体移送システムも含み、この流体移送システムは、熱伝達ユニット1250と、熱伝達流体を循環させるポンプ1255とを含む。ポンプ1255は、コンジット1262を介して電池素子1230を保持する容器に結合される。ポンプからの熱伝達流体は、電池素子を通過し、容器から出て、コンジット1264を介して熱伝達ユニット1270に至る。容器に導入されると、流体は、障壁の圧縮性層を通過して、熱伝達流体と電池素子との間で熱を伝達する。電源システムのこの実施形態では、圧縮性層の剛性プレートが熱伝導性材料から構成されることが好ましい。熱伝達ユニットでは、流体は、コンジット1266を介してポンプに送り返される前に、必要に応じて加熱または冷却される。電源システムに使用される例示的な流体移送システムは、米国特許第8,663,828号、米国特許第9,178,187号、及び米国特許出願公開第2020/0020998号に記載されており、それぞれが参照により本明細書に援用されている。
【0200】
熱伝達流体は、システムの要件に応じて、加熱されても、または冷却されてもよい。例えば、通常の使用中、電気エネルギーがデバイスに供給されると、電池素子は熱を発生する。熱伝達流体を冷却して、電池素子から発生した熱を除去するのを助ける。例えば、熱伝達流体は、電池セルの冷却を保つために、電池セルの動作温度を下回る温度まで冷却され得る。他の実施形態では、電池セルを加熱する必要がある場合がある。これは、電池素子が長期間低温に曝露されるデバイス内にある場合に重要になることがある。したがって、加熱された流体(例えば、周囲温度よりも熱い流体)が電池素子を通過することによって、使用前に電池素子を加熱することが必要になる場合がある。
【0201】
実施形態では、熱伝達流体は電池素子を保持する容器内に導入され、この流体は容器を通過し、コンジット1264に結合された出口から出る。流体は容器の底部に送り込まれ、容器の頂部から流出することができる、または流体は容器の頂部に送り込まれ、容器の底部から流出することができる。代替に、流体は、容器の側部に送り込まれ、容器の異なる側部から出る。したがって、障壁を通る流体の流動は、水平方向(電池素子の長い側部に沿って)または垂直方向(電池素子の頂部から底部までまたは底部から頂部まで)であることができる。
【0202】
障壁内のばね素子は、熱伝達流体と接触すると、層流または乱流を生じる所定のパターンで配置されてもよい。好ましい実施形態では、乱流は、ばね素子の適切な配置または構成によって障壁内に生じる。乱流の発生は、熱伝達流体が電池素子と接触している時間量を増加させる。本開示の文脈内で、1000超、1500超、2000超、2500超、3000超、3500超、4000超、4500超、または5000超のレイノルズ数を流れが有する場合に乱流が発生する。
【0203】
図18は、電池モジュールまたは電池パック1300の概略図を示す。電池モジュールの場合、複数の電池セル1330は、障壁1310によって分離される。電池パックの場合、複数の電池モジュール1330は、障壁1310によって分離される。本明細書に開示される障壁は、圧縮性層内に形成された1つ以上の流路1315を有する。流路内への熱伝達流体の流入を最適化するために、マニホールド1350を電池モジュールまたは電池パックの内部に配置し得る。使用中、ポンプからの流体は、電池モジュールまたは電池パックに移送され、マニホールドに送り込まれる。マニホールドは、流体入口1353と、障壁内の流路とアライメントされる一連の出口1355とを含む。次いで、熱伝達流体は、マニホールド内に分散され、一連の出口を通ってマニホールドから出る。出口は、熱伝達流体を障壁内に画定された流路に向ける。次いで、向けられた熱伝達流体は、流路を通過し、電池素子の温度を変化させる。マニホールドの使用は、熱伝達流体の大部分が障壁内に向けられることを確保するのに役立つことができる。容器出口1360は、熱伝達流体が流路を通過した後、熱伝達流体が容器から出ることを可能にするために、反対側に配置されてもよい。
【0204】
熱伝達流体は、液体か気体かいずれかであってもよい。実施形態では、熱伝達流体は、誘電性流体である。誘電性熱伝達流体の例としては、炭化水素系誘電性冷却流体及びフッ素系誘電性冷却流体が挙げられる。好ましい熱伝達流体は、液体熱伝達流体である。液体熱伝達流体が使用される場合、電池素子を保持する容器は、流体が容器から漏れ出ることを防止するように密閉される。使用される熱伝達流体の種類(例えば、炭化水素流体またはフッ素系流体)に応じて、対向層は、絶縁層を被包して、熱伝達流体による絶縁層の劣化を防止してもよい。
【0205】
別の実施形態では、本明細書に、上記の態様のいずれか1つによる電池モジュールまたはパックを含むデバイスまたはビークルが提供される。一部の実施形態では、デバイスは、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、表示パネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザ測距装置、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、エレクトロニクス一体型衣料品、暗視機器、電動工具、計算器、ラジオ、リモコン式アプライアンス、GPSデバイス、ハンドヘルド及びポータブルテレビ、自動車用スタータ、懐中電灯、音響装置、ポータブル暖房装置、ポータブル掃除機、またはポータブル医療機器である。一部の実施形態では、ビークルは電気自動車である。
【0206】
本特許では、特定の米国特許、米国特許出願、及びその他の資料(例えば、論文)が参照により援用されている。しかしながら、それらのような米国特許、米国特許出願、及び他の資料の文章は、そのような文章と本明細書に記載されたその他の記述及び図面との間に矛盾が存在しない程度にのみ、参照により援用されている。このような矛盾が生じた場合、参照によりそのように援用されている米国特許、米国特許出願、及びその他の資料のこのように矛盾するいずれの文章も、特に本特許に参照により援用されない。
【0207】
本発明の種々の態様の別の修正形態及び代替実施形態は、本記載を鑑みることで当業者には明らかとなるであろう。したがって、本記載は、単に例示として解釈されるべきであり、本発明を実施する一般的な態様を当業者に教示する目的である。本明細書に示され、記載される本発明の形態は、実施形態の例として取り入れるべきであることを理解されたい。要素及び材料は、本明細書に例示され記載されるものと置き換えられる場合もあり、部品及びプロセスは、反対にされる場合もあり、本発明の特定の特徴は、本発明の本記載の利点を得た後、全てが当業者に明らかになるように、独立して利用されてよい。以下の特許請求の範囲内に記載された本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更が行われる場合もある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0207
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0207】
本発明の種々の態様の別の修正形態及び代替実施形態は、本記載を鑑みることで当業者には明らかとなるであろう。したがって、本記載は、単に例示として解釈されるべきであり、本発明を実施する一般的な態様を当業者に教示する目的である。本明細書に示され、記載される本発明の形態は、実施形態の例として取り入れるべきであることを理解されたい。要素及び材料は、本明細書に例示され記載されるものと置き換えられる場合もあり、部品及びプロセスは、反対にされる場合もあり、本発明の特定の特徴は、本発明の本記載の利点を得た後、全てが当業者に明らかになるように、独立して利用されてよい。以下の特許請求の範囲内に記載された本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更が行われる場合もある。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[実施形態1]
電気エネルギー貯蔵システム内の電池セル間で使用するための障壁であって、
少なくとも1つの絶縁層、及び
前記少なくとも1つの絶縁層に結合された少なくとも1つの圧縮性層であって、一対の剛性プレートと、前記剛性プレート間に配置された1つ以上のばね素子とを含む、前記圧縮性層、
を含む、前記障壁。
[実施形態2]
前記一対の剛性プレートの少なくとも1つは、熱伝導性プレートである、実施形態1に記載の障壁。
[実施形態3]
前記熱伝導性プレートは、少なくとも約200mW/m-Kの熱伝導率を有する、実施形態2に記載の障壁。
[実施形態4]
前記熱伝導性プレートは、アルミニウム、銅及びステンレス鋼から選択された金属を含む、実施形態2または3に記載の障壁。
[実施形態5]
前記一対の剛性プレートは、サイズ及び形状において実質的に同一であり、
前記一対の剛性プレートは、アライメントされた配置にあり、前記アライメントされた配置では、前記一対の剛性プレートの一方の外縁部は、前記一対の剛性プレートの他方の外縁部と実質的にアライメントされる、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態6]
ガイドは前記一対の剛性プレートの間に位置決めされ、
前記ガイドは前記剛性プレートを前記アライメントされた配置に維持する、実施形態5に記載の障壁。
[実施形態7]
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のカンチレバーばね素子を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態8]
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のコイルばねを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態9]
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上の弓ばねを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態10]
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のウェーブスプリングを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態11]
前記ばね素子は、前記電気エネルギー貯蔵システム内の隣接する電池セルに前記剛性プレートを押し付けるように構成される、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態12]
前記ばね素子は、使用中に前記隣接する電池セルが膨張するにつれて、前記ばね素子が圧縮されることを可能にする、ばね定数を有する、実施形態11に記載の障壁。
[実施形態13]
前記1つ以上のばねは、流路が前記剛性プレート間に形成されるように、前記剛性プレート間に位置決めされる、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態14]
1mm~5mmの間の幅を有する流路は、前記剛性プレート間に形成される、実施形態13に記載の障壁。
[実施形態15]
前記絶縁層は、前記絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m-K未満、及び600℃で約60mW/m-K未満の熱伝導率を有する、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態16]
前記絶縁層はエアロゲルを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態17]
前記絶縁層は強化材料を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態18]
前記強化材料は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択された繊維である、実施形態17に記載の障壁。
[実施形態19]
前記絶縁層は1つ以上の添加剤を含み、前記添加剤は前記エアロゲルの少なくとも約5~20重量パーセントのレベルで存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態20]
前記1つ以上の添加剤は火災クラス添加剤を含む、実施形態19に記載の障壁。
[実施形態21]
前記絶縁層は、約2MPa~約8MPaの曲げ弾性率を有する、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態22]
前記絶縁層は圧縮抵抗を有し、
25%のひずみでの前記圧縮抵抗は、約40kPa~約180kPaの間である、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態23]
前記絶縁層は、対向層によって被包される、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態24]
前記対向層は、炭化水素誘電性流体に不活性である、実施形態23に記載の障壁。
[実施形態25]
前記対向層は、フッ素系誘電性流体に不活性である、実施形態23または24に記載の障壁。
[実施形態26]
前記障壁は、非圧縮状態で約5mm~約30mmの間の範囲内の平均厚さを有し、
前記障壁は、約2mm~10mmの間の最小平均厚さまで圧縮可能である、先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁。
[実施形態27]
複数の電池モジュールを含む電池パック中にあり、または複数の電池セルを含む電池モジュール中にあり、前記電池モジュールまたは前記電池セルを互いから熱的に分離させるための先行実施形態のいずれか1つに記載の障壁の使用。
[実施形態28]
前記電池の一部の1つ以上の電池セルまたは電池モジュール内で起こる暴走事象は、前記電池パック内の電池セルまたは電池モジュールに破損を引き起こさない、実施形態27に記載の使用。
[実施形態29]
複数の電池セル、及び
少なくとも1つの障壁が隣接する電池セル間に配置される、実施形態1~26のいずれか1つに記載の1つ以上の障壁、
を含む、電池モジュール。
[実施形態30]
実施形態29に記載の1つ以上の電池モジュール、及び前記電池モジュールに結合された流体移送システムを含み、
前記流体移送システムは流体を前記1つ以上の電池モジュール内に送り、前記流体が前記1つ以上の電池モジュールを通過した後に前記流体を収集する、電源システム。
[実施形態31]
前記流体移送システムは、誘電性液体の流体を前記電池モジュール内に送る、実施形態30に記載の電源システム。
[実施形態32]
前記流体移送システムは、誘電性気体を前記電池モジュール内に送る、実施形態30に記載の電源システム。
[実施形態33]
前記流体は加熱される、または冷却されることで、前記流体は前記電池モジュール内の前記複数の電池セルをそれぞれ加熱する、または冷却する、実施形態30~32のいずれか1つに記載の電源システム。
[実施形態34]
前記障壁は隣接する電池セル対の間に流路を画定し、使用中、前記流体は前記流路を通って流れる、実施形態30~32のいずれか1つに記載の電源システム。
[実施形態35]
前記1つ以上の電池モジュールの少なくとも1つは、前記流路とアライメントされた1つ以上のポートを有する、前記流体移送システムに結合されたマニホールドをさらに含み、使用中、前記流体移送システムからの流体が前記マニホールド内に入り、1つ以上の出口を通って出て、前記流路に入る、実施形態34に記載の電源システム。
[実施形態36]
前記流体移送システムは、冷却コンポーネントを含み、
前記冷却コンポーネントは、前記流体の温度を前記電池セルの動作温度以下に維持する、実施形態30~35のいずれか1つに記載の電源システム。
[実施形態37]
電池パックであって、実施形態29に記載の複数の電池モジュールと、隣接する電池モジュールの間に配置された、実施形態1~26のいずれか1つに記載の障壁とを含む、前記電池パック、及び
前記電池パックに結合された流体移送システムであって、流体を前記電池パック内に送り、前記流体が前記電池パックを通過した後に前記流体を収集する、前記流体移送システム、
を含む、電源システム。
[実施形態38]
前記流体移送システムは、誘電性液体の流体を前記電池パック内に送る、実施形態37に記載の電源システム。
[実施形態39]
前記流体移送システムは、誘電性気体を前記電池パック内に送る、実施形態37に記載の電源システム。
[実施形態40]
前記流体は加熱される、または冷却されることで、前記流体は前記電池パック内の前記電池モジュールをそれぞれ加熱する、または冷却する、実施形態37~39のいずれか1つに記載の電源システム。
[実施形態41]
前記障壁は、前記隣接する電池モジュール対の間に流路を画定し、使用中、前記流体は、前記流路を通って流れる、実施形態37~40のいずれか1つに記載の電源システム。
[実施形態42]
前記障壁内の前記ばね素子は、乱流を生じさせるように前記一対の剛性プレートの間に配置される、実施形態41に記載の電源システム。
[実施形態43]
前記乱流は、1000より大きいレイノルズ数を有する、実施形態42に記載の電源システム。
[実施形態44]
前記電池パックは、前記流路とアライメントされた1つ以上のポートを有する、前記流体移送システムに結合されたマニホールドを含み、使用中、前記流体移送システムからの流体が前記マニホールド内に入り、1つ以上の出口を通って出て、前記流路に入る、実施形態41~43のいずれか1つに記載の電源システム。
[実施形態45]
前記流体移送システムは、冷却コンポーネントを含み、
前記冷却コンポーネントは、前記流体の温度を前記電池セルの動作温度以下に維持する、実施形態37~44のいずれか1つに記載の電源システム。
[実施形態46]
実施形態37~45のいずれか1つに記載の電源システムを含むデバイスまたはビークル。
[実施形態47]
前記デバイスは、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、表示パネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザ測距装置、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、エレクトロニクス一体型衣料品、暗視機器、電動工具、計算器、ラジオ、リモコン式アプライアンス、GPSデバイス、ハンドヘルド及びポータブルテレビ、自動車用スタータ、懐中電灯、音響装置、ポータブル暖房装置、ポータブル掃除機、またはポータブル医療機器である、実施形態46に記載のデバイス。
[実施形態48]
前記ビークルは電気自動車である、実施形態46に記載のビークル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー貯蔵システム内の電池セル間で使用するための障壁であって、
少なくとも1つの絶縁層、及び
前記少なくとも1つの絶縁層に結合された少なくとも1つの圧縮性層であって、一対の剛性プレートと、前記剛性プレート間に配置された1つ以上のばね素子とを含む、前記圧縮性層、
を含む、前記障壁。
【請求項2】
前記一対の剛性プレートの少なくとも1つは、熱伝導性プレートである、請求項1に記載の障壁。
【請求項3】
前記熱伝導性プレートは、少なくとも約200mW/m-Kの熱伝導率を有する、請求項2に記載の障壁。
【請求項4】
前記熱伝導性プレートは、アルミニウム、銅及びステンレス鋼から選択された金属を含む、請求項2または3に記載の障壁。
【請求項5】
前記一対の剛性プレートは、サイズ及び形状において実質的に同一であり、
前記一対の剛性プレートは、アライメントされた配置にあり、前記アライメントされた配置では、前記一対の剛性プレートの一方の外縁部は、前記一対の剛性プレートの他方の外縁部と実質的にアライメントされる、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項6】
ガイドは前記一対の剛性プレートの間に位置決めされ、
前記ガイドは前記剛性プレートを前記アライメントされた配置に維持する、請求項5に記載の障壁。
【請求項7】
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のカンチレバーばね素子を含む、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項8】
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のコイルばねを含む、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項9】
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上の弓ばねを含む、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項10】
前記1つ以上のばね素子は、1つ以上のウェーブスプリングを含む、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項11】
前記ばね素子は、前記電気エネルギー貯蔵システム内の隣接する電池セルに前記剛性プレートを押し付けるように構成される、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項12】
前記ばね素子は、使用中に前記隣接する電池セルが膨張するにつれて、前記ばね素子が圧縮されることを可能にする、ばね定数を有する、請求項11に記載の障壁。
【請求項13】
前記1つ以上のばねは、流路が前記剛性プレート間に形成されるように、前記剛性プレート間に位置決めされる、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項14】
1mm~5mmの間の幅を有する流路は、前記剛性プレート間に形成される、請求項13に記載の障壁。
【請求項15】
前記絶縁層は、前記絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m-K未満、及び600℃で約60mW/m-K未満の熱伝導率を有する、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項16】
前記絶縁層はエアロゲルを含む、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項17】
前記絶縁層は強化材料を含む、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項18】
前記強化材料は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択された繊維である、請求項17に記載の障壁。
【請求項19】
前記絶縁層は1つ以上の添加剤を含み、前記添加剤は前記エアロゲルの少なくとも約5~20重量パーセントのレベルで存在する、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項20】
前記1つ以上の添加剤は火災クラス添加剤を含む、請求項19に記載の障壁。
【請求項21】
前記絶縁層は、約2MPa~約8MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項22】
前記絶縁層は圧縮抵抗を有し、
25%のひずみでの前記圧縮抵抗は、約40kPa~約180kPaの間である、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項23】
前記絶縁層は、対向層によって被包される、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項24】
前記対向層は、炭化水素誘電性流体に不活性である、請求項23に記載の障壁。
【請求項25】
前記対向層は、フッ素系誘電性流体に不活性である、請求項23に記載の障壁。
【請求項26】
前記障壁は、非圧縮状態で約5mm~約30mmの間の範囲内の平均厚さを有し、
前記障壁は、約2mm~10mmの間の最小平均厚さまで圧縮可能である、請求項1又は2に記載の障壁。
【請求項27】
複数の電池モジュールを含む電池パック中にあり、または複数の電池セルを含む電池モジュール中にあり、前記電池モジュールまたは前記電池セルを互いから熱的に分離させるための請求項1又は2に記載の障壁の使用。
【請求項28】
前記電池の一部の1つ以上の電池セルまたは電池モジュール内で起こる暴走事象は、前記電池パック内の電池セルまたは電池モジュールに破損を引き起こさない、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
複数の電池セル、及び
少なくとも1つの障壁が隣接する電池セル間に配置され1つ以上の、請求項1又は2に記載の障壁、
を含む、電池モジュール。
【請求項30】
請求項29に記載の1つ以上の電池モジュール、及び前記電池モジュールに結合された流体移送システムを含み、
前記流体移送システムは流体を前記1つ以上の電池モジュール内に送り、前記流体が前記1つ以上の電池モジュールを通過した後に前記流体を収集する、電源システム。
【請求項31】
前記流体移送システムは、誘電性液体の流体を前記電池モジュール内に送る、請求項30に記載の電源システム。
【請求項32】
前記流体移送システムは、誘電性気体を前記電池モジュール内に送る、請求項30に記載の電源システム。
【請求項33】
前記流体は加熱される、または冷却されることで、前記流体は前記電池モジュール内の前記複数の電池セルをそれぞれ加熱する、または冷却する、請求項30に記載の電源システム。
【請求項34】
前記障壁は隣接する電池セル対の間に流路を画定し、使用中、前記流体は前記流路を通って流れる、請求項30に記載の電源システム。
【請求項35】
前記1つ以上の電池モジュールの少なくとも1つは、前記流路とアライメントされた1つ以上のポートを有する、前記流体移送システムに結合されたマニホールドをさらに含み、使用中、前記流体移送システムからの流体が前記マニホールド内に入り、1つ以上の出口を通って出て、前記流路に入る、請求項34に記載の電源システム。
【請求項36】
前記流体移送システムは、冷却コンポーネントを含み、
前記冷却コンポーネントは、前記流体の温度を前記電池セルの動作温度以下に維持する、請求項30に記載の電源システム。
【請求項37】
電源システムであって、
(a)電池パックであって、
(i)複数の電池モジュールと、
(ii)隣接する電池モジュールの間に配置された、1つ又は2つ以上の、請求項1又は2に記載の障壁と
を含む電池パック及び
(b)前記電池パックに結合された流体移送システムであって、流体を前記電池パック内に送り、前記流体が前記電池パックを通過した後に前記流体を収集する、前記流体移送システム、
を含
各電池モジュールが、
複数の電池セル、及び
少なくとも1つの障壁が隣接する電池セル間に配置された、1つ又は2つ以上の、請求項1又は2に記載の障壁、
を含む、
電源システム。
【請求項38】
前記流体移送システムは、誘電性液体の流体を前記電池パック内に送る、請求項37に記載の電源システム。
【請求項39】
前記流体移送システムは、誘電性気体を前記電池パック内に送る、請求項37に記載の電源システム。
【請求項40】
前記流体は加熱される、または冷却されることで、前記流体は前記電池パック内の前記電池モジュールをそれぞれ加熱する、または冷却する、請求項37に記載の電源システム。
【請求項41】
前記障壁は、前記隣接する電池モジュール対の間に流路を画定し、使用中、前記流体は、前記流路を通って流れる、請求項37に記載の電源システム。
【請求項42】
前記障壁内の前記ばね素子は、乱流を生じさせるように前記一対の剛性プレートの間に配置される、請求項41に記載の電源システム。
【請求項43】
前記乱流は、1000より大きいレイノルズ数を有する、請求項42に記載の電源システム。
【請求項44】
前記電池パックは、前記流路とアライメントされた1つ以上のポートを有する、前記流体移送システムに結合されたマニホールドを含み、使用中、前記流体移送システムからの流体が前記マニホールド内に入り、1つ以上の出口を通って出て、前記流路に入る、請求項41に記載の電源システム。
【請求項45】
前記流体移送システムは、冷却コンポーネントを含み、
前記冷却コンポーネントは、前記流体の温度を前記電池セルの動作温度以下に維持する、請求項37に記載の電源システム。
【請求項46】
請求項37に記載の電源システムを含むデバイスまたはビークル。
【請求項47】
前記デバイスは、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、表示パネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザ測距装置、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、エレクトロニクス一体型衣料品、暗視機器、電動工具、計算器、ラジオ、リモコン式アプライアンス、GPSデバイス、ハンドヘルド及びポータブルテレビ、自動車用スタータ、懐中電灯、音響装置、ポータブル暖房装置、ポータブル掃除機、またはポータブル医療機器である、請求項46に記載のデバイス。
【請求項48】
前記ビークルは電気自動車である、請求項46に記載のビークル。
【国際調査報告】