IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マニーナ、メドテック、ソシエダッド、リミターダの特許一覧 ▶ フンダシオ オスピタル ウニベルシタリ バイ デブロン ‐ インスティトゥ デ レセルカの特許一覧

<>
  • 特表-着床の窓の決定方法 図1
  • 特表-着床の窓の決定方法 図2
  • 特表-着床の窓の決定方法 図3
  • 特表-着床の窓の決定方法 図4-1
  • 特表-着床の窓の決定方法 図4-2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】着床の窓の決定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/84 20060101AFI20241203BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G01N33/84 Z
G01N33/50 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527782
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2022081633
(87)【国際公開番号】W WO2023084030
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21383030.0
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524177864
【氏名又は名称】マニーナ、メドテック、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】MANINA MEDTECH, S.L.
(71)【出願人】
【識別番号】515304400
【氏名又は名称】フンダシオ オスピタル ウニベルシタリ バイ デブロン ‐ インスティトゥ デ レセルカ
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モニカ、ロドリゲス、デ、ラ、ベガ、オタゾ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー、ギャラ―ト、アグート
(72)【発明者】
【氏名】メルチョー、カーボネル、ソシアス
(72)【発明者】
【氏名】フリオ、エレーロ、ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、マヌエル、アーティレス、マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】アンナ、テイシド、トロヤーノ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA02
2G045AA16
2G045AA27
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB30
2G045DA36
2G045DA54
2G045DB01
2G045DB30
2G045FB12
2G045GC15
(57)【要約】
本発明は、女性対象の子宮内膜着床能の決定方法および子宮内膜液の溶存ガス分析に基づいた胚を受ける候補としての女性対象の選択方法に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性対象(female subject)における子宮内膜着床能の決定方法であって、前記方法は:
i)前記女性対象の子宮内膜液溶存ガス濃度を測定して、これにより、溶存ガス濃度値を得るステップであって、前記溶存ガスはOおよびCOからなる群から選択される、ステップと;
ii)前記溶存ガス濃度値を参照値と比較するステップであって、前記参照値に対する溶存Oの濃度値の増加および/または溶存COの濃度値の減少は前記女性対象の子宮内膜が受容性であることを示す、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記子宮内膜液溶存ガス濃度を測定するステップは、前記女性対象の子宮内膜との接触を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照値に対する前記溶存ガス濃度値の偏差は、着床可能な胚に関する着床同期性子宮内膜を示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記参照値は、排卵開始2日前~黄体期の2日目または3日目に含まれる期間中少なくとも1回測定された前記女性対象の子宮内膜液中の溶存OまたはCOの濃度値である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記参照値は、前記排卵開始2日前~前記黄体期の2日目または3日目に含まれる期間中少なくとも1回測定された別の女性対象または女性対象群の子宮内膜液中の溶存OまたはCOの濃度値である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記子宮内膜液溶存ガス濃度を、1分~10分、好ましくは2分~7分、より好ましくは3分~5分の期間連続的に測定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記子宮内膜液溶存ガス濃度を、前記排卵2日前~前記黄体期の12日目に含まれる期間中少なくとも1回、好ましくは前記排卵日~前記黄体期の10日目に含まれる期間中少なくとも1回、より好ましくは前記黄体期の2日目~8日目に含まれる期間中少なくとも1回、更により好ましくは前記黄体期の3日目~6日目に含まれる期間中少なくとも1回測定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記子宮内膜液溶存ガス濃度を、前記排卵開始2日前に少なくとも1回、排卵時に少なくとも1回および/または前記黄体期の2日目、4日目、6日目、8日目、10日目もしくは12日目に少なくとも1回測定する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記参照値は、前記子宮内膜液中の生理的低酸素の濃度における溶存Oの値であり、前記生理的低酸素に対する前記溶存O濃度値の増加は、前記女性対象の子宮内膜が受容性であることを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記女性対象は、胚移植のステップを含む生殖補助処置を行っている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、ステップi)前に、黄体形成ホルモン(LH)のレベルの測定および/または超音波モニタリングにより、前記女性対象の排卵を検出するステップを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、尿中のLH濃度、血中のプロゲステロン、エストロゲンおよび/またはVEGF(血管内皮細胞増殖因子)の濃度、前記卵巣中の卵胞および/または黄体の存在、前記子宮内膜の厚さと外観、ならびに前記子宮らせん動脈の抵抗指数と拍動指数からなる群から選択されるパラメータを測定することを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記子宮内膜液溶存ガス濃度を、前記女性対象の子宮底および/または子宮頸管において測定する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記子宮内膜液溶存ガス濃度を測定するステップを、前記子宮内膜液溶存ガス濃度を測定することができるセンサーにより行い、前記センサーは、前記女性対象の子宮内膜と接触しない、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶存ガス濃度を、光学的に、好ましくは位相蛍光測定により測定する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記子宮内膜液溶存ガス濃度を測定するステップを、子宮内膜液のサンプルにおいてin vitroで行う、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
胚を受ける候補として生殖補助医療(ART)を行う女性対象の選択方法であって、前記方法は、
i)前記女性対象の子宮内膜が受容性であるかどうかを、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法ステップに従って決定するステップと;
前記子宮内膜が受容性である場合、
ii)ステップi)と同じ日に直ぐに行う胚移植処置で胚を受ける候補として前記女性対象を選択するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生殖補助医療の分野に関し、より詳細には、女性対象における子宮内膜着床能を決定するための溶存ガスの分析に基づいた方法および胚を受ける候補として女性対象(female subject)の選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不妊症は、世界的におよそ190百万人に影響を与える世界的健康問題である。生殖補助医療(ART)の中でも、体外受精(IVF)は好ましい治療の1つであり、胚は実験室で培養されて、将来の母親の子宮に移植される。平均すると、女性は、妊娠するために3つの完全なIVFサイクルを必要とする。欧州では、毎年900000サイクル超が行われるが、35%しか妊娠しない。失敗の主な原因の1つは胚移植であり、胚移植当たりの出生率は30%未満である。
【0003】
世界的IVF市場は、2027年までに377億米ドルに達すると予想され、年平均成長率(CAGR)9.5%で拡大している。欧州は、2019年にIVFの手順および装置市場を支配していた。日本、米国およびスペインは、世界的に最も活発な国であったが、アジア太平洋の需要は急上昇すると予想される。製品は医療専門家により使用されることを目標としているので、可能性のある顧客は民営および公営IVFクリニックである。欧州では1200クリニック(スペインでは250クリニック)があり、米国では480クリニックがある。
【0004】
胚品質、子宮着床能、および胚・子宮同期性は、着床を成功するために重要である。最近、胚の成熟度および品質を評価することは可能であるが、排卵後の日数またはプロゲステロン治療の日数を数えることに依存しているので、子宮内膜発育および同期性の推定は非常に不正確である。子宮内膜が受容性である期間は、着床の窓(WOI)と呼ばれ、通常、月経周期の19~21日目の黄体期の間である。周期におけるその期間および位置は、様々な因子に依存し、女性毎におよび同じ女性において月毎に異なる可能性があり、経験的に決定することを困難にしている。子宮内膜着床能検出の正確性は女性毎に必須であるが、変位または短縮したWOIを有する女性にとって不可欠であり、全IVF患者の30%を占める。着床障害を繰り返した女性では、このパーセンテージは更に高い。子宮内膜の厚さおよび血管分布をチェックするための超音波/ドップラー技術は、正確に子宮内膜着床能および同期性を上手く測定できなかったが、子宮内膜着床能に関する有用なマーカーは組織学的アプローチを用いて発見されていない。「オミックス」技術の到来は、受容性である子宮内膜の遺伝子の発現、タンパク質、マイクロRNA、脂質代謝、および分泌パターンの大規模分析を可能とした。商業的検査は、受容性である子宮内膜が利用可能であることを特徴とする遺伝子発現プロファイル、例えば、ERA、ERPeak、Le Win-Test、ER Mapの検出に焦点を合わせた。これらの方法は侵襲的であり、子宮内膜の生検および結果を得るのに数日を要し、検査を行って同周期中に移植を行うことは不可能となる。
【0005】
子宮内膜着床能のタイムリーな検出、子宮発育と協調した胚移植、および生殖補助医療の成功率を向上するための胚・子宮同期性のマッチングを改善するためのニーズがある。胚移植当たりの出生率を増加する胚を受容することができる女性の特定およびより短縮し、より負担を減らし、より手頃な価格にする生殖補助処置の成功を促進するためのニーズもある。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、子宮の受容性の状態、詳細には、女性対象における胚移植のための着床の窓(WOI)の新規決定方法を見出した。WOIは、前記女性対象における受容性である子宮内膜の発生により現れ、本発明によれば、前記女性対象の子宮内膜液中の溶存ガス濃度の測定により決定することができる。女性の30%超は変位または短縮した着床の窓を有し、通常、48時間未満続き、このパーセンテージは、着床障害を繰り返した女性において更に高いと推定される。着床の窓の検出のための検証されたバイオマーカーも解剖学的指標もない。遺伝子発現分析の方法は、子宮内膜着床能の決定のために広く使用されるが、精巧な装置の使用および組織生検収集を必要とする。本発明者らは、女性対象の子宮内膜液において測定するための溶存ガスとしてのOおよび/またはCOの選択は、周期毎の変動に関連する困難さおよび女性間の生理的差異に関する困難さにもかかわらず、子宮内膜着床能の技術的に簡単だが非常に信頼のある決定を可能とすることを特定した。
【0007】
したがって、第一態様では、本発明は、女性対象における子宮内膜着床能の決定方法であって、前記方法は:
i)前記女性対象の子宮内膜液溶存ガス濃度を測定して、これにより、溶存ガス濃度値を得るステップであって、前記溶存ガスはOおよびCOからなる群から選択される、ステップと;
ii)参照値と前記溶存ガス濃度値を比較するステップであって、前記参照値に対する溶存Oの濃度値の増加および/または溶存COの濃度値の減少は、前記女性対象の子宮内膜が受容性であることを示す、ステップと、
を含む、方法に関する。
【0008】
本発明者らは、女性対象の子宮内膜液中の溶存ガス濃度の測定は、胚を受ける候補として生殖補助医療(ART)を行う女性対象の選択を可能とすることも見出した。
【0009】
したがって、第二態様では、本発明は、胚を受ける候補として生殖補助処置を行う女性対象の選択方法であって、前記方法は:
i)前記女性対象の子宮内膜が受容性であるかどうかを、本発明による方法ステップに従って決定するステップと;
前記子宮内膜が受容性である場合、
ii)ステップi)と同じ日に行う胚移植処置で胚を受ける候補として前記女性対象を選択するステップと、
を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、着床の窓に対するおよび子宮内酸素濃度に関する胚の発育期の時系列的相関関係を示す本発明による胚/子宮内膜同期性の原理の概略図である。
図2図2は、着床の窓の開示時における、子宮から子宮腔への酸素拡散および子宮液中の溶存子宮内酸素濃度の増加を示す本発明の原理の概略図である。Bartelmez GWからの画像。アカゲザルにおける子宮血管の形状および機能。Contrib Embryol 1957;36:154-83,courtesy of Carnegie Institution for Science,Copyright Carnegie Institution for Science。
図3図3は、月経周期を通して計画された追加検査を含むpO2の変動および着床の窓の発生の相関関係を示す本発明の原理の概略図である。
図4-1】図4は、試験における女性の黄体期の間に観察された子宮内溶存酸素パターンを示す。溶存酸素濃度を、移植カテーテルに取り付けられた滅菌されたIMP-7光学式センサーを用いて測定した。5分間1秒毎に測定を行い、最初の120秒はラグタイムのために除外した。箱ひげグラフを使用した。ひげは、データの5~95%を示し;中間値は線により表され、平均値は+記号で表される。ひげを外れたデータを点として表す。酸素濃度を、トール(Torr)で表し、1トール=133.22Pa。図4A:異なる3患者からのデータを合わせた。酸素レベルは、LH4からLH5までおよびLH5からLH6まで有意に増加している(p<0.0001、テューキー多重比較検定)。LH6とLH7との間に差異はなく、pOは、LH8において有意に減少している(p<0.0001)。表1~3参照。着床の窓(WOI)は、天然周期のLH6~LH7(または人為的周期のP5~P6)に起こる。AにおけるpOパターンは、WOI発生の基準であり、WOIの開(LH5)閉(LH8)を示す。
図4-2】図4B:データは、進んだおよび短縮したWOIを有するボランティアの溶存子宮内pOパターンを表す:LH5におけるpO最大値およびLH7における最小値(表1~3参照)。図4C:データは、黄体期の間に酸素レベルが増加しない健康なボランティアの溶存子宮内pOプロファイルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理想的条件下、着床の窓(WOI)と呼ばれる子宮内膜着床能の状態は、通常、月経周期の19日目~21日目の黄体期中に起こる(Navot D.et al.,Fertil Steril 1991,55:114-118;Harper MJK.Baillieres Clin Obstet Gynaecol 1992,6:351-371)。人為的周期(ホルモン補充療法周期)では、着床の窓は、プロゲステロン治療の5日後(P+5)に起こる(Enciso,M.et al.,Sci Rep 11,13420(2021))。周期におけるその期間および位置は、いくつかの因子に依存し、同じ女性において月毎に異なる可能性があり、このことは、経験的に推定することを困難にしている。事実、女性の30%超は、変位または短縮したWOIを有し、このパーセンテージは、着床障害を繰り返した女性において更に高い。多くの研究グループの努力にもかかわらず、解剖学的パターンまたは分子バイオマーカーによるWOIの検出方法は確立されていない。最近数十年における「オミックス」技術の出現は、WOIを特徴とする遺伝子発現プロファイルの検出に焦点を当てられた新規診断検査の開発を可能とした。しかしながら、これらの方法は、子宮内膜組織の生検および結果を得るために少なくとも1週間を必要とし、このことは、活性ART周期中の検査を行うことを不可能とする。加えて、「オミックス」技術は、極めて高度な技術の使用および/または「オミックス」分析プロバイダーのサービスに依存する。言い換えれば、ほとんどの場合、臨床医単独で「オミックス」技術を行うことができない。更に、結果は、将来のWOIの位置の予測であり、この予後の正確さを増大するため、外因性ホルモンを用いた子宮内膜の人為的な準備が推奨される。人為的に準備された周期は、天然周期より産科および周産期合併症を有し、母親および胎児の健康の危険性を生じるだけでなく、医療制度により高い出費となることを強調することは重要であるので、ARTサービスは、患者の生理が許す場合、可能な限り天然周期に近い方法の使用を促進することが優先することである。本発明は、上記問題を克服する。
【0012】
酸素恒常性は、真核生物の生存維持に不可欠である。細胞酸素レベルの増加は、毒性酸素種の生成をもたらし、酸素欠乏は、ミトコンドリア呼吸阻害を引き起こす。詳細には、胚は、子宮内膜肥厚および血管新生による子宮系により調節された子宮または子宮内膜液中に溶存する酸素に曝露され、胚代謝性要求と密接に調和されなければならない。事実、胚代謝は、ほんの5日で嫌気性から好気性に変化する。
【0013】
本発明者らは、受容性である子宮内膜の発生により現れる着床の窓の特定が、子宮内膜液中の溶存ガス濃度に関連する方法を開発した。本発明者らは、月経周期を通して子宮内膜液中の溶存ガス濃度の傾向の変化は、所定の女性対象における胚着床に適切なタイミング(胚/子宮内膜同期性)の解明を可能とすることの証拠を提供する。本発明者らは、子宮環境が、胚が嫌気的段階では低酸素状態であり、子宮内膜が受容性になる場合、子宮内酸素圧は増加し、胚の酸素消費が劇的に増加する胚盤胞発育および着床と一致することも見出した。
【0014】
したがって、本発明は、女性対象における子宮内膜着床能の決定方法、したがって、着床の窓の特定方法ならびに胚着床結果および妊娠の評価方法を提供する。本発明の方法は、子宮内膜生検を得ることはもはや必要としない利点を有する子宮内膜着床能の信頼ある決定を提供する。特に、本方法は、臨床医が、着床の窓を特定することおよび数時間内、すなわち同日中に胚移植を行うことを可能とする。本発明の方法は、高価またはかさばる装置を必要としないが、手で持って操作できる標準的医療用ガス測定機器を必要とし、その結果、たとえより低い経費の、広範囲のクリニックにより適用することができる。更に、着床の窓の簡単かつ迅速な特定は、次回の周期におけるWOIの予測をより正確にするため、天然周期に関するより頻度の高い妊娠合併症に関連する必要としないホルモン治療を投与する必要性を減らす。したがって、この方法は、胚着床率および妊娠率を向上するための生殖補助センターおよび体外受精ユニットにおいて応用され、臨床決定過程を加速し、ならびに天然周期から利益を得ることができる女性におけるホルモン治療の投与から誘導される費用および合併症を低減する。
【0015】
1.女性対象における子宮内膜着床能の決定方法
本発明者らは、女性対象における子宮内膜液中の溶存ガス濃度の決定は、前記女性対象における着床の窓の信頼ある特定を可能とすることを見出した。したがって、本発明の第一態様では、本発明は、女性対象における子宮内膜着床能の決定方法(本発明の第一方法)であって、前記方法は:
【0016】
i)前記女性対象の子宮内膜液溶存ガス濃度を測定して、これにより、溶存ガス濃度値を得るステップであって、前記溶存ガスはOおよびCOからなる群から選択される、ステップと;
ii)参照値と前記溶存ガス濃度値を比較するステップであって、前記参照値に対する溶存Oの濃度値の増加および/または溶存COの濃度値の減少は、前記女性対象の子宮内膜が受容性であることを示す、ステップと、
を含む、方法に関する。
【0017】
第一ステップでは、前記女性対象の子宮内膜液溶存ガス濃度を測定し、それにより、溶存ガス濃度値を得る。
【0018】
本明細書で使用されるとき、表現「子宮内膜着床能の決定」は、特に、妊娠結果に関して、子宮内膜の生理または臨床状態の評価または予測(例えば、妊娠または着床可能な胚生存の可能性)に関する。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「子宮内膜着床能」は、女性対象の子宮内膜が胚着床のために準備される状態に関する。用語「子宮内膜着床能」は、子宮内膜が、胚盤胞着床を可能とし、妊娠に至る機能的状態を獲得する期間の状態を表し得る。着床は、3段階:(1)胚盤胞が着床部位と接触する場合の対位;(2)胚盤胞が受容性である子宮内膜上皮へ結合する場合の接着;および(3)胚盤胞の浸潤性トロホブラスト細胞が子宮内膜上皮を横断し、子宮内膜間質を浸潤する場合の浸潤からなる。用語「着床の窓」は、前記女性対象の子宮が胚着床のために受容性である期間を表し得る。また、用語「受容性である子宮内膜」は、女性対象において「着床の窓」として知られている期間を特徴とする子宮内膜の状態を表し得る。また、用語「子宮内膜着床能」は、胚移植が高確率で妊娠に至るように着床の窓が起こる子宮内膜の状態を表し得る。
【0020】
用語「対象」もしくは「個体」または「動物」もしくは「患者」または「哺乳類」は、決定または診断もしくは予後が望ましいいずれもの対象、特に哺乳類として理解される。哺乳類対象としては、ヒト、家畜、農用動物、および動物園、スポーツ、またはイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、ウシなどのペット動物が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、対象は、哺乳類である。本発明のより好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「女性対象」は、その子宮内膜着床能を決定しようとする哺乳類女性(雌)を表す。通常、前記哺乳類は、ヒト(すなわち、女性)であるが、霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウシなどの他の哺乳類に関する可能性もある。
【0022】
子宮内膜は、哺乳類子宮の、その粘膜と共に、内上皮層であり、腔を形成する。本明細書で使用されるとき、用語「子宮内膜液」(EF)もしくは「子宮内膜腔液」(ECF)または「子宮液」もしくは「子宮腔液」は、子宮内膜腔内の体液貯留である。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「溶存ガス」は、体液中のガス圧を表し得る。用語「ガス圧」は、前記体液中のガスの分圧を表し得る。ガス混合物では、各構成ガスは、同じ温度において元の混合物の全体積を単独で占めるとする場合のその構成ガスの概念的圧である「分圧」を有する。本発明との関連で、所定の液体、詳細には子宮内膜液中に溶存する所定のガスの量は、前記液体と接触しているガスの分圧と直接的に比例する。本明細書で使用されるとき、溶媒中のガスの分圧は、所定の液体、詳細には子宮内膜液中に溶存するガスの濃度とも比例する。本発明との関連で、用語「溶存ガス濃度」、「ガス圧」、「分圧」または「部分圧」は、互換的に使用される。「溶存ガス濃度」の測定方法は、当技術分野において公知である。
【0024】
本発明によれば、方法は、酸素(O)圧(PxO)および/または二酸化炭素(CO)圧(PxCO)の測定を含む。慣例的に、各記号中の下付き文字「x」は、溶存ガスを測定する体液を含む組織または器官を表す:例えば、「a」は動脈(arterial)(血液)を意味し、「v」は静脈(venous)(血液)であり、「c」は毛細(capillary)(血液)である。いくつかの実施形態では、「u」が子宮液を意味するPuOまたは「e」が子宮内膜液」を意味するPeOは、互換的に使用され、子宮内膜腔に含まれる体液中の酸素圧を表し得る。いくつかの実施形態では、「u」が子宮液を意味するPuCOまたは「e」が子宮内膜液」を意味するPeCOは、互換的に使用され、子宮内膜腔に含まれる体液中の二酸化炭素圧を表し得る。
【0025】
本発明によれば、子宮内膜液中の酸素の分圧は、単位mmHgで表し得る。いくつかの実施形態では、酸素の分圧は、溶存酸素の濃度値(パーセンテージ(%))として互換的に表される。いくつかの実施形態では、子宮内膜液中の酸素の分圧は、単位kPaまたはトール(Torr)で表され得る。単位の換算方法は、当技術分野において公知である。例えば、1トールは、1001325/760パスカル、したがって、約133.22Paであることは周知である。
【0026】
本発明によれば、子宮内膜液中の二酸化炭素の分圧は、単位mmHgで表し得る。いくつかの実施形態では、二酸化炭素の分圧は、溶存二酸化炭素の濃度値(パーセンテージ(%))として互換的に表される。いくつかの実施形態では、子宮内膜液中の二酸化炭素の分圧は、単位kPaで表され得る。
【0027】
本発明によれば、子宮内膜液溶存ガス濃度の測定は、体液中に溶存するガスの存在を検出および定量するために適したいずれもの従来の測定機器によって子宮内膜液中に溶存するガスの濃度の絶対的または相対的決定を表す。溶存ガス濃度の測定に適した技術の非限定例は、動脈/静脈血液の分析および呼吸する空気の分析における医薬品において使用される従来の機器、ポーラログラフ微小電極、電気化学電極、光学式センサー、光ファイバーセンサー、蛍光団消光センサーである。溶存ガス濃度の測定に適した技術の更なる非限定例としては、ダイナミック造影磁気共鳴画像法、血中酸素濃度依存性画像法および電子常磁性共鳴画像法が挙げられる。かかるセンサーは、当技術分野において周知であり、本発明に関連する機能の測定を行うために当業者により容易に適用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、溶存ガス濃度を、光学的に、好ましくは位相蛍光測定により測定する。本明細書で使用されるとき、用語「光学的方法」は、ガスの検出、特徴付けおよび/または定量のために光が使用されるいずれもの方法を表す。光学的方法は、吸収、蛍光強度または蛍光寿命の測定に基づき得る。OおよびCO溶存濃度の測定のために使用することができる光学的方法の例証となる非限定例は、通常、酸素の存在下蛍光の消光に基づいている。これらは、強度消光検出、または寿命消光検出、時間または周波数領域における両方を含む。時間分割蛍光追跡の測定方法および解析方法としては、位相変調蛍光測定またはパルス蛍光測定(直接発光減衰測定、単一光子時間分解、ストリークカメラ測定、蛍光アップコンバージョン、および光学カーゲーティング)が挙げられる。溶存ガス濃度の測定のための光学的方法および蛍光団は、当技術分野において公知である。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「位相蛍光測定」は、サンプルが高周波で正弦波的に変調された光により励起される方法を表す。染料の蛍光応答も、同周波数において正弦波的に変調されるが、励起シグナルに対して時間遅延または位相シフトし、次に、センサープローブの表面の染料と接触しているpOに依存する。
【0030】
本明細書で使用されるとき、子宮内膜液溶存ガス濃度の測定は、子宮内膜液中の酸素圧の決定を表し得る。本明細書で使用されるとき、子宮内膜液溶存ガス濃度の測定は、子宮内膜液中の二酸化炭素圧の決定を表し得る。本明細書で使用されるとき、子宮内膜液溶存ガス濃度の測定は、子宮内膜液中の酸素圧および二酸化炭素圧の決定を表し得る。
【0031】
女性対象における子宮内膜着床能の決定のための本発明の第一方法の第二ステップでは、子宮内膜液溶存ガス濃度値を、参照値と比較する。
【0032】
本発明の方法との関連で、本明細書で使用されるとき、用語「参照値」または「参照レベル」は、特定の生理もしくは臨床状態内で分類するためまたは生理もしくは臨床状態に入る確率が高いかもしくは低いとして分類するため、または生理もしくは臨床状態に入る予後が良好もしくは不良であるとして分類するため溶存ガス濃度の測定から得られる値に対して、参照として使用される値に関する。本発明の方法のいずれかによる参照値または参照レベルは、絶対値;相対値;上限および/または下限を有する値;値の範囲;平均(average)値;中間値;平均(mean)値、または特定のコントロールもしくはベースライン値と比較される値であり得る。参照値は、個々のサンプル値、例えば、試験されているが、検討中の測定より早い時点の女性対象から得られる値に基づき、前記参照値と比較されることになる。参照値は、例えば、実年齢を一致させた群の対象集団からの多数のサンプル、または試験しようとするサンプルを含むもしくは除くサンプルのプールに基づき得る。マーカーの参照値を決定する場合、様々な検討を考慮に入れる。かかる検討の中でも、月経周期、年齢、体重、性別、患者の全身的な身体状態および同様のものである。例えば、好ましくは前述の検討、例えば様々な年齢カテゴリーにより分類された少なくとも2,少なくとも10、少なくとも100、好ましくは1000超の対象までの群の等量を、参照群とする。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「参照値」は、所定の時点における所定の対象における検討中の子宮内膜液中の溶存ガスの濃度値を表し得る。好ましい実施形態では、参照値は、所定の時点における子宮内膜液中のOの濃度値に対応する。他の実施形態では、参照値は、所定の時点における子宮内膜液中のCOの濃度値に対応する。他の実施形態では、参照値は、所定の時点における子宮内膜液中のOおよびCOの個々の濃度値に対応する。
【0034】
好ましい実施形態では、参照値は、所定の女性対象における着床の窓の開始前の所定の時点における前記女性対象に対する子宮内膜液中の溶存ガスの濃度値である。
【0035】
いくつかの実施形態では、参照値は、着床の窓の開始前の正常または健康な女性対象から得られる子宮内膜液中の溶存ガスの濃度値のプールから得られる値を表し得る。いくつかの実施形態では、参照値は、着床の窓の開始前の、生殖補助処置および/またはIVFを行っている女性対象における子宮内膜液中の溶存ガスの濃度値のプールから得られる値を表し得る。
【0036】
用語「参照値」は、異なる連続した時点において得られる子宮内膜液中の溶存ガスの一連の濃度値を表し得る。本明細書で使用されるとき、「参照値」は、子宮内膜着床能の決定を行っている対象または既知の生理的もしくは臨床状態を有することが分かっている対象群、好ましくは2以上の対象と異なる対象から得られる子宮内膜液中の溶存ガスの濃度値を表し得る。子宮内膜液中の溶存ガスの適切な参照濃度値を、所定の時点におけるいくつかの適切な対象における溶存ガスの濃度の測定により決定することができ、かかる参照レベルを、特定の対象集団または臨床設定に調整することができる。
【0037】
通常、参照値は、閾値であり得る。通常、「閾値」を、実験的に、経験的に、または理論的に決定することができる。閾値は、当業者により認識されるように、現在の実験および/または臨床条件に基づいて任意に選択することもできる。閾値は、試験の機能およびベネフィットリスクバランス(偽陽性および偽陰性の臨床結果)による最適な選択性および特異性を得るために決定されなければならない。通常、最適な選択性および特異性(それから閾値)を、実験データに基づいた受信者動作特性(ROC)曲線を用いて決定することができる。本発明の1つの実施形態では、閾値を、妊娠結果の高い可能性のある所定の時点における1つ以上の女性対象において決定される子宮内膜液中の溶存ガスの濃度値(または比、もしくはスコア)から誘導される。特定の実施形態では、参照値または閾値は、30トール(4.00KPa)、35トール(4.67KPa)および40トール(5.33KPa)からなる群から選択される。
【0038】
特定の実施形態では、参照値は、天然周期における排卵開始2日前~黄体期の2もしくは3日目、または人為的周期における排卵開始2日前~プロゲステロン投与後1~2日目に含まれる期間中に少なくとも1回測定される前記女性対象における子宮内膜液中の溶存Oおよび/もしくはCOの濃度値である。
【0039】
用語「少なくとも1回」は、1回、2回、3回、4回、5回またはそれ以上を含む。
【0040】
用語「排卵」は、卵子が卵巣から放出される月経周期の段階であり、卵子は、精子により受精するかも知れないし、受精しないかも知れない。受精する場合、卵子は子宮に移動し、着床して妊娠する可能性がある。受精しないままである場合、卵子は崩壊し、子宮内膜は期間中に剥がれる。排卵は、通常、28日の正常な月経周期の14日目辺りに起こる。しかしながら、本発明は、排卵期の正確タイミングが非常に変わる可能性がある生理または非生理状態および女性対象を意図する。排卵過程は、通常、卵巣内部の卵子の成熟に寄与する月経周期6日目~14日目の卵胞刺激ホルモン(FSH)の体の放出と共に始まり、卵胞におけるエストロゲンの産生を引き起こす。卵子が成熟したならば、体は黄体形成ホルモン(LH)急増を放出し、卵子の放出を引き起こす。正常状態下、排卵は、LH急増後28~36時間に起こる可能性がある。黄体形成ホルモン(LH)急増を、当技術分野において公知の方法を用いて子宮および/または血液検査で決定することができる。特定の実施形態では、LH急増は、少なくとも15mIU/mL(ミリリットル当たりミリ国際単位)、より特定の実施形態では、少なくとも20mIU/mLの血清LH濃度として定義される。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「天然周期」は、ホルモン補充療法がない場合の周期を表す。黄体期は、月経周期の後期である。黄体期は、黄体の形成と共に始まり、妊娠または黄体(CL)の構造的および機能的分解であり、妊娠しない場合に月経周期の黄体期の終わりに起こる黄体退縮(黄体退行も)のいずれかで終わる。この段階に関連する主なホルモンはプロゲステロンであり、周期の他の期より黄体期において著しく高くなる。黄体期は、排卵と共に開始する。したがって、本明細書で使用されるとき、黄体期の1日目(LH+1)は、排卵後その日に対応し、黄体期の2日目(LH+2)は、排卵後2日目に対応し、黄体期の3日目(LH+3)は、排卵後3日目に対応するなど。通常、天然周期の着床の窓は、LH+6~LH+9に起こる。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「人為的周期」は、ホルモン補充療法の刺激下の周期を表す。人為的周期では、プロゲステロンを、黄体期中に投与し、本明細書で使用されるとき、P+1は、プロゲステロン投与後1日目に対応し、P+2は、プロゲステロン投与後2日目に対応するなど。通常、人為的周期の着床の窓は、P+4~P+6に起こる。プロゲステロンを補助として投与する天然周期もある。黄体期を発育または支持するためにプロゲステロンを投与する周期毎に、着床の窓は、通常、P+4~P+6に起こる。
【0043】
いくつかの実施形態では、参照値は、天然周期において排卵開始2日前~黄体期2日目もしくは3日目、または人為的周期において排卵開始2日前~プロゲステロン投与後4~6日目に含まれる期間に少なくとも1回測定される別の女性対象または女性対象群における子宮内膜液中の溶存Oおよび/もしくはCOの濃度値である。前記別の女性対象または女性対象群は、健康もしくは正常な女性対象または生殖補助処置および/またはIVFを行っている女性対象であってよい。
【0044】
本発明によれば、子宮内膜液溶存ガス濃度の測定は、前記女性対象の子宮内膜と直接的接触も物理的相互作用も含まない。本方法は、もっぱら子宮内膜液との相互作用によるが、測定ステップにおける子宮内膜組織とのいずれもの直接的接触を回避することにより溶存ガス濃度の測定を意図する。
【0045】
参照値に対する本明細書で使用されるとき、溶存ガス濃度値の偏差は、参照値に対する濃度値の「増加」を表し得る。
【0046】
子宮内膜液中の溶存ガス濃度値との関連で本明細書で使用されるとき、用語「濃度値増加」または「溶存ガス濃度値増加」は、前記溶存ガスの濃度値が、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%増加する状態に関する。
【0047】
好ましい実施形態では、濃度値増加は、前の時点で前記女性対象において得られる参照値に対して、所定の女性対象において得られ得る。本明細書で使用されるとき、濃度値増加は、好気性代謝に入り、したがって、より高い酸素濃度を必要とする着床可能な胚に関する着床同期性子宮内膜を示し得る。用語「着床同期性子宮内膜」は、妊娠を進めるために受容性である子宮内膜と相互作用することができるような生理的および一時的に発育された胚の着床を可能とするために適した子宮内膜の状態を表す。
【0048】
1つの実施形態では、溶存ガス濃度値は、参照値に対して変化しないかも知れない。本明細書で使用されるとき、参照値に対して「変化しない」溶存ガス濃度値は、子宮内膜が受容性でないことを示し得る。
【0049】
参照値に対する本明細書で使用されるとき、溶存ガス濃度値の偏差は、参照値に対する濃度値の「減少」を表し得る。
【0050】
子宮内膜液中の溶存ガス濃度値との関連で、本明細書で使用されるとき、用語「濃度値減少」または「溶存ガス濃度値現象」は、前記溶存ガスの濃度値が、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%減少する状態に関する。
【0051】
いくつかの実施形態では、濃度値減少は、前の時点で前記女性対象において得られる参照値に対して、所定の女性対象において得られ得る。本明細書で使用されるとき、濃度値減少は、着床可能な胚に関する着床同期性でない子宮内膜を示し得る。用語「着床同期性でない子宮内膜」は、胚の着床を可能とするために適していない子宮内膜の状態を表し、その結果、妊娠は起こらない。
【0052】
好ましい実施形態では、子宮内膜液中の溶存Oの濃度値に関して本明細書で互換的に使用される用語「子宮内膜は受容性である」または「着床同期性子宮内膜」は、溶存Oの濃度値が、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%増加する状態に関する。
【0053】
いくつかの実施形態では、溶存COの濃度値に関して本明細書で使用されるとき、用語「子宮内膜は受容性である」は、溶存COの濃度値が、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%減少する状態に関する。
【0054】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液中の溶存OおよびCOの濃度値に関して本明細書で使用されるとき、用語「子宮内膜は受容性である」は、溶存Oの濃度値が、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%増加し、かつ、溶存COの濃度値が、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%減少する状態に関する。
【0055】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液中の溶存Oの濃度値に関して本明細書で使用される用語「子宮内膜は受容性でない」または「着床同期性でない子宮内膜」は、溶存Oの濃度値が、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%減少する状態に関する。
【0056】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液中の溶存COの濃度値に関して本明細書で使用されるとき、用語「子宮内膜は受容性でない」または「着床同期性でない子宮内膜」は、溶存COの濃度値が、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%増加する状態に関する。
【0057】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液中の溶存OおよびCOの濃度値に関して本明細書で使用されるとき、用語「子宮内膜は受容性でない」は、溶存COのレベルが、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%増加し、かつ、溶存Oのレベルが、前の時点で前記女性対象において得られる対応する参照値と比較される場合、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%減少する状態に関する。
【0058】
本明細書で使用されるとき、用語「子宮内膜は受容性である」は、女性対象の子宮内膜が、着床可能な胚の移植により、胚盤胞接着を可能とし、妊娠に至るだろう機能的状態を獲得する少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%の確率を示す状態に関する。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「子宮内膜は受容性でない」は、女性対象の子宮内膜が、着床可能な胚の移植により、胚盤胞接着を可能とし、妊娠に至るだろう機能的状態を獲得しない少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%の確率を示す状態に関する。用語「妊娠」は、胚移植後4週の胎嚢の視覚化として理解される。
【0060】
いくつかの実施形態では、一旦参照値が確立されれば、子宮内膜の着床能を決定しようとする女性対象における子宮内膜液中の溶存ガスの濃度値を、参照値と比較し、したがって、前の時点における前記女性対象において得られた参照値に対して倍変化で「増加」、「減少」または「同等」と割り当てることができる。前の時点で前記女性対象において得られた参照値と比較して、例えば、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、1.6倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍または更にそれ以上の参照値上方へのレベル増加を、「増加した」濃度値と見做す。他方、参照値と比較して、少なくとも0.9倍、0.75倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、0.025倍、0.02倍、0.01倍、0.005倍または更により小さい参照値の下方へのレベル減少を、前の時点で前記女性対象において得られた「減少した」濃度値と見做す。濃度値が前の時点で前記女性対象において得られた参照値に対する差異が、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.1%未満、0.05%未満、またはより小さい場合、濃度値は、参照値と「同等」として見ることができる。
【0061】
当業者が理解するように、かかる決定は、通常、特定されるであろう対象の全て(すなわち、100%)にとって正しいことを求めない。しかしながら、用語は、対象の統計的に有意な部分を特定することができる(例えば、コホート研究におけるコホート)ことを必要とする。当業者は、いくつかの周知の統計的評価ツールを用いて部分が統計的に有意である場合に容易に決定することができ、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定、その他。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley and Sons,New York 1983で見られる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005または0.0001である。より好ましくは、集団の対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を、本発明の方法により適切に特定することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液溶存ガス濃度を、1分~10分、好ましくは2分~7分、より好ましくは3分~5分の期間連続的に測定する。
【0063】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液溶存ガス濃度を、排卵2日前~黄体期の12日目に含まれる期間中少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、またはより多い回数を含む少なくとも1回、好ましくは排卵日~黄体期の10日目に含まれる期間中少なくとも1回、より好ましくは黄体期の2日目~8日目に含まれる期間中少なくとも1回、更により好ましくは黄体期の4日目~7日目に含まれる期間中少なくとも1回測定する。
【0064】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液溶存ガス濃度を、排卵開始2日前に少なくとも1回、排卵時に少なくとも1回および/または黄体期の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、10日目もしくは12日目に少なくとも1回測定する。
【0065】
特定の実施形態では、排卵開始2日前~排卵2日後行われる測定を、参照値として使用してよい。この特定の実施形態では、偏差、詳細には、溶存Oの濃度値の増加および/またはCOの濃度値の減少の検出は、排卵前に行われる測定と比較した排卵後に行われる測定の1つ以上では、子宮内膜が受容性であることを示す。
【0066】
いくつかの実施形態では、排卵2日目および排卵日に行われる測定を、参照値として使用してよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、排卵日および排卵後の日において行われる測定を、参照値として使用してよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、排卵日および排卵後の2日において行われる測定を、参照値として使用してよい。
【0069】
いずれの特定の理論にも束縛されることを望まないが、月経周期の増殖期中、らせん動脈から子宮腔へ酸素拡散は、子宮内膜の肥厚の結果として減少すると考えられる。この生理的子宮内低酸素は、毒性酸素種から胚を保護する。しかしながら、桑実胚が子宮に達し、胚盤胞がその発育を始める場合、子宮内膜液中の酸素濃度は、胚の代謝要求を満足するために増加すべきである。したがって、いくつかの実施形態では、参照値は、子宮内膜液中の生理的低酸素の濃度における溶存Oの値であり、生理的低酸素に対する溶存O濃度値の増加は、女性対象の子宮内膜が受容性であることを示す。本明細書で使用されるとき、「生理的低酸素」は、子宮内膜液中の酸素濃度が、大気中の酸素濃度より有意に低い状態を表す。あるいは、本明細書で使用されるとき、「生理的低酸素」は、組織内の酸素濃度が、40mmHg(pO 5%)未満、より特にpO 2%未満であり、生理的に達成される状態を表す。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記女性対象は、胚移植のステップを含む生殖補助処置を行う。本明細書で使用されるとき、フレーズ「生殖補助医療」または「生殖補助技術」もしくは「生殖補助処置」(ART)は、受胎能力を向上することを目的とされる複数の治療を表す。ARTの非限定例としては、子宮腔内精子注入法(IUI)、細胞質内精子注入法(ICSI)、体外受精(IVF)、女性対象への胚移植、着床前遺伝学的検査、ホルモン補充療法(HRT)サイクル(例えば、プロゲステロンおよびエストロゲンの外因性投与)、in vitro卵成熟、配偶子卵管内移植(GIFT)、接合子卵管内移植(ZIFT)、代理出産が挙げられる。体外受精(IVF)は、女性の卵子と男性の精子をin vitroで結合することである。IVFサイクルは、いくつかのステップ;ステップ1:過剰排卵とも呼ばれる、刺激;ステップ2:採卵;ステップ3:受精(IVFまたはICSIなど);ステップ4:胚培養;ステップ5:胚移植を含む。本明細書で使用されるとき、用語「胚移植」は、いずれかの受精方法により産生された胚を女性レシピエントの子宮に移植する方法を表す。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、前記女性対象の子宮内膜液溶存ガス濃度の測定前に、血液または尿中の黄体形成ホルモンレベル、超音波、基礎体温(BBT)法およびプロゲステロンおよびエストロゲンなどの他のホルモンの血液定量に基づく方法を含むいずれかの適切な方法により前記女性対象における排卵の検出ステップを更に含む。特定の実施形態では、排卵を、黄体形成ホルモン(LH)レベルの測定および/または超音波モニタリングにより検出する。黄体形成ホルモン(LH)レベルの測定および/または超音波モニタリングの方法は、当技術分野において公知である。黄体形成ホルモンレベルは、LHの血中レベルまたはLHの尿中レベルを表すことができる。両方の場合、排卵は、LH急増が起こった後12~36時間内に起こる。血中および尿中LHレベルを、タンパク質定量の日常検査法、好ましくは、アッセイされるタンパク質、この場合LHと特異的に結合する能力を有する抗体の使用を含む方法により決定することができ、例えば、ウェスタンブロット法または免疫ブロット法、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、RIA(放射免疫測定法)、競合EIA(酵素免疫測定法)、DAS-ELISA(二抗体サンドイッチELISA)、二次元ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、免疫細胞化学および免疫組織化学技術、免疫比濁法、免疫蛍光法、特異的抗体を含むバイオチップもしくはタンパク質マクロアレイの使用に基づく技術または試薬紙などのフォーマットのコロイド沈降に基づくアッセイおよび抗体結合量子ドットに基づくアッセイが挙げられる。タンパク質の検出および定量の他の形態としては、例えば、アフィニティクロマトグラフィー技術またはリガンド結合アッセイが挙げられる。特定の実施形態では、尿中LHレベルを、ラテラルフローデバイスによって決定することができる。
【0072】
排卵を、腹部または経膣的であり得る超音波により検出することができる。この方法は、卵胞寸法の測定により卵胞成長のモニタリングに基づく。排卵は、総じて、卵胞が約1.8~2.5cm径の大きさになる場合に起こる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、尿中の黄体形成ホルモン(LH)濃度、血中のプロゲステロン、エストロゲンおよび/または血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の濃度、前記卵巣中の卵胞および/または黄体の存在、前記子宮内膜の厚さと外観、ならびに前記子宮らせん動脈の抵抗指数と拍動指数からなる群から選択されるパラメータを測定することを更に含む。上記パラメータの測定方法は、当技術分野において公知である。
【0074】
詳細には、血中のプロゲステロン、エストロゲンおよびVEGFの濃度を、LH定量に関して上記説明されているように、血液サンプル中のタンパク質の定量のいずれかの適切な方法により決定することができる。
【0075】
卵巣における卵胞および/または黄体の存在を、経膣または腹部超音波により決定することができる。本明細書で使用されるとき、用語「卵胞」は、卵母細胞または卵子を含み、かつ育てる卵巣における構造物を表す。本明細書で使用されるとき、用語「黄体」は、卵胞が卵子を放出後に卵巣内に形成し、妊娠早期にプロゲステロンの産生に寄与する細胞塊を表す。排卵を、卵胞の成長および黄体の形成のモニタリングにより検出することができる。
【0076】
子宮内膜の厚さおよび外観を、超音波により分析することができる。
【0077】
子宮およびらせん動脈の抵抗指数(RI)および拍動指数(PI)を、経腟ドップラー超音波法により決定することができる。ゴスリング(Gosling)指数としても知られている用語「拍動指数」は、定義された心周期中の最大、最小、および平均ドップラー周波数シフトから誘導される超音波におけるフローパラメータ算出値である。拍動指数を、次式の1つにより算出する:
PI=(Vmax-Vmin)/(Vmean
PI=(収縮期最高血流速度-拡張末期血流速度)/(平均血流速度)。
【0078】
プースロー(Pourcelot)指数としても知られている用語「抵抗指数」は、定義された心周期中の最大、最小、および平均ドップラー周波数シフトから誘導される超音波におけるフローパラメータ算出値を表す。抵抗指数を、式:RI=(PSV-EDV)/PSVを用いて算出し、式中、PSVは収縮期最高血流速度を意味し、EDVは拡張末期血流速度を意味する。
【0079】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液溶存ガス濃度を、前記女性対象の子宮底および/または子宮頸管、好ましくは子宮の子宮頸管において測定する。
【0080】
本明細書で使用されるとき、用語「子宮底」は、卵管が子宮と接続する子宮の広く曲がった上部領域を表す。いくつかの実施形態では、溶存ガス濃度測定を、子宮底から少なくとも1cm離して行う。
【0081】
本明細書で使用されるとき、用語「子宮頸管」は、膣内に開くまで峡部から下方向に広がる子宮の下部部分を表す。いくつかの実施形態では、子宮内膜液溶存ガス濃度を測定するステップを、子宮内膜液溶存ガス濃度を測定することができるセンサーにより行い、センサーは、女性対象の子宮内膜と接触しない。子宮内膜液溶存ガス濃度を測定することができるセンサーの非限定例は、PreSens Oxygen Microsensors、Neotrend、Paratrend、Neurotrend、NEUROVENT-PTOおよびLicoxなどの商業的に入手可能なセンサーである。
【0082】
いくつかの実施形態では、子宮内膜液溶存ガス濃度を測定するステップを、子宮内膜液のサンプルにおいてin vitroで行う。本明細書で使用されるとき、用語「in vitro」は、方法をヒトまたは動物対象の体で行わず、むしろ前記対象から単離された細胞または体液または試験管内で行う。子宮内膜液サンプルの入手方法は、当業者に周知であり、例えば、子宮腔に含まれる体液の吸引による。本発明の方法のこの特定の実施形態を行うために、子宮内膜液サンプルと大気との接触は、子宮内膜液サンプル中の溶存ガス含有率が変わらないように避けられるべきである。
【0083】
別の特定の実施形態では、溶存OまたはCOを測定するためのセンサーを、カテーテル内部に配置し、子宮内膜液サンプルをカテーテル内部に吸引し、その結果、子宮内、好ましくは子宮頸管内に存在する間にカテーテル内部で測定を行う。
【0084】
2.胚を受けるための候補としてART手順を行う女性対象の選択方法
本発明者らは、女性対象の子宮内膜液中の溶存ガス濃度の測定は、溶存ガスの測定と同日に行われる胚を受けるための候補としてART手順を行う女性対象の選択を可能とすることを見出した。子宮内膜が受容性であるかまたは受容性でない女性対象の特定は、生殖補助手法の特定のステップにおける臨床決定のための基礎である。かかる臨床決定は、子宮内膜が受容性である場合に、着床可能な胚の選択および女性対象の子宮への前記胚の移植を含む可能性がある。反対に、子宮内膜が(まだ)受容性でない場合、対象は、別の測定のため次の日に戻るように求められる。そして、受容性の後である場合、着床可能性であることの選択は省略され、胚移植はもはや計画されない。本方法は、短時間、数分内にでさえ信頼ある臨床決定のための基礎を提供する。生殖補助処置におけるその後のステップの計画を、従来方法よりずっと迅速に評価することができる。加えて、所定の時点における子宮内膜着床能を評価するために女性対象の子宮内膜液中の溶存ガス濃度の測定は、子宮内膜生検の収集を必要としない。体外受精手順、より詳細には女性対象の子宮への胚移植ステップのために使用される標準的装置を用いて測定を行ってよい。本発明による測定手法は、女性対象において総じて疼痛または組織損傷に関連しない非常に軽度な手順である。したがって、溶存ガス濃度の測定ステップは、測定ステップから最短で数時間以内で、前記女性対象の子宮内膜が本発明の第一方法を用いて受容性であると決定される場合、同じ女性対象において胚移植を続いて行うことと共存できる。
【0085】
したがって、更なる態様では、本発明は、胚を受ける候補として生殖補助処置を行っている女性対象の選択方法(本発明の第二方法)であって、前記方法は:
i)前記女性対象の子宮内膜が受容性であるかどうかを、本発明の第一方法による方法ステップに従って決定するステップと;
前記子宮内膜が受容性である場合、
ii)ステップi)と同じ日に直ぐに行う胚移植処置で胚を受ける候補として前記女性対象を選択するステップと、
を含む、方法に関する。
【0086】
本明細書で使用されるとき、用語「~直ぐに行う処置」は、所定の手順を、前記最も早い時点に対して後の時点において行われることは限定されず、行ってよい可能な限り早い時点を表す。用語「ステップi)と同じ日に直ぐに」は、本発明により、胚移植のための最も早い時点が、子宮内膜着床能の決定を行う日である可能性があるが、しかしながら、後の時点、例えば、子宮内膜着床能の決定後1日、子宮内膜着床能の決定後2日などにおいて行うことは限定されないと理解される。
【0087】
本発明の第二方法の第一ステップでは、子宮内膜液の溶存ガス濃度を測定し、女性対象の子宮内膜の着床能を、本発明の第一方法との関連で以前に記載されている通りに決定する。本発明の第一方法との関連で以前に記載されている子宮内膜液中の溶存ガスの濃度の測定方法は、本発明の第二方法に適用可能である。
【0088】
本発明の第一方法との関連で開示されている実施形態は、本発明の第二方法も意図される。
【0089】
3.女性対象における妊娠を達成する方法
本発明者らは、女性対象の子宮内膜液中の溶存ガス濃度の測定は、女性対象、詳細には、生殖補助処置を行う女性対象における妊娠可能性を用意することを見出した。本明細書で使用されるとき、表現「子宮内膜着床能の決定」は、妊娠結果に関して、子宮内膜の生理または臨床状態の評価(例えば、妊娠または着床可能な胚生存の可能性)に関する。本明細書で使用されるとき、用語「妊娠」は、胚移植後4週の胎嚢の視覚化として理解される。用語「妊娠」は、受精イベントの最終結果の結果として理解してもよい。
【0090】
本明細書で使用されるとき、用語「妊娠を達成する方法」は、女性対象において妊娠を促進する目的を有する衛生的手段、薬剤的手段、外科手術的手段または身体的手段などのいずれもの分類の手段を含むいずれもの種類の予防的措置あるいは治療的措置を表す。
【0091】
したがって、更なる態様では、本発明は、女性対象における妊娠を達成する方法(本発明の第三方法)であって、前記方法は:
i)前記女性対象の子宮内膜液溶存ガス濃度を測定して、これにより、溶存ガス濃度値を得るステップであって、前記溶存ガスはOおよびCOからなる群から選択される、ステップと;
ii)参照値と前記溶存ガス濃度値を比較するステップであって、前記参照値に対する溶存Oの濃度値の増加および/または溶存COの濃度値の減少は、前記女性対象の子宮内膜が受容性であることを示す、ステップと;
溶存ガス濃度値が前記参照値から外れている場合、
iii)前記女性対象の受容性である子宮内膜に胚を移植することと;
iv)妊娠の進行を可能にすることと、
を含む、方法に関する。
【0092】
あるいは、本発明は、女性対象における不妊症の治療方法であって、前記方法は、
i)前記女性対象の子宮内膜液溶存ガス濃度を測定して、これにより、溶存ガス濃度値を得ることであって、前記溶存ガスはOおよびCOからなる群から選択されることと;
ii)前記溶存ガス濃度値を参照値と比較することと;
参照値と比較して、溶存Oの濃度値の増加および/またはCOの濃度値の減少がある場合、
iii)前記女性対象の受容性である子宮内膜に胚を移植することにより不妊症を治療して、胚の着床を可能とすることと、
を含む、方法に関する。
【0093】
本発明の第三方法の第一ステップでは、子宮内膜液の溶存ガス濃度を測定し、女性対象の子宮内膜の着床能を、本発明の第一方法との関連で以前に記載されている通りに決定する。本発明の第一方法との関連で以前に記載されている子宮内膜液中の溶存ガスの濃度の測定方法は、本発明の第三方法に適用可能である。
【0094】
本発明の第一方法との関連で開示されている実施形態は、本発明の第三方法も意図される。
【0095】
本発明を、単に例証である以下の実施例および本発明の範囲を限定しない方法により以下に詳述する。
【実施例
【0096】
WOI検出の信頼ある方法が存在せず、子宮内膜着床能の多因子性の複雑性、公知のバイオマーカーの欠如により、酸素圧および二酸化炭素圧などの生物物理学的パラメータが、健康で適切に機能する子宮内膜の指標として検討されている。これらのパラメータは、子宮内部の動的挙動を有し、重要なことに、これらは、その発育の異なる段階において胚の要求と同期されなければならない。この意味で、胚が卵管に存在する時、桑実胚期までは、酸素必要量は低いが、胚が胚盤胞になる場合に酸素必要量は劇的に増加し、その生合成活性を保証するためのエネルギー源としてグルコースの使用が増加する。栄養素利用性、酸素濃度および胚盤胞の酸化還元状態は、その代謝および着床の可能性を調節する。胚の酸素供給が卵管内および子宮内膜液中に溶存する酸素に依存することを考慮すると、子宮内の酸素濃度変化は、胚の代謝発生と同期されなければならない。したがって、月経周期の増殖期の間に、子宮内膜は肥厚し、らせん動脈から子宮腔への酸素拡散はより難しくなる。この生理的子宮内低酸素は、毒性酸素種から胚を保護しており、子宮内膜が薄い場合のように、低酸素状態が確立されていない場合、妊娠するのは妨げられる。しかしながら、桑実胚が子宮の内部に達し、胚盤胞がその発育を始める場合、低酸素濃度はミトコンドリア活性およびグルコース代謝を阻害し、胚盤胞発育および着床に対して悪影響を与えるので、子宮内膜液中の酸素濃度は増加しなければならない。言い換えれば、子宮内酸素圧は、胚の発達段階に応じてその代謝性要求と同期しなければならない。つまり、細胞期は低酸素状態、胚盤胞期から着床の間はより高い酸素濃度に応じて胚の代謝性要求と同期しなければならない。
【0097】
これまでの研究により、排卵から黄体期の間に、らせん動脈の著しい成長およびコイリング、上皮下毛管網の成熟および血管の分岐点の密度増加があり、プロゲステロンの産生ならびに血管新生促進因子VEGFおよびその受容体の著しい増加と同時に起こることを示した。この過程は、血管から子宮内膜液への酸素の拡散を促進し、子宮内酸素濃度の増加をもたらすことができる。ヒトにおける研究は、増殖期に対して黄体期において酸素の増加および二酸化炭素の減少を示唆しているが、子宮底または子宮頸管において行われた測定間の差異は観察されていない。更に、これらのガスのバランスは、筋腫、子宮頸がんまたは子宮内膜がんなどのいくつかの子宮の病的状態において変化すると思われる。酸素恒常性は、全体として生態系の適切な機能に反映する複雑な過程である。酸素恒常性は、感染、炎症、がんにより、または血管新生もしくはホルモン調節の異常により変化し得る。i)胚は子宮内膜液中に溶存する酸素をin vivo消費し、ii)この体液中の酸素濃度は血管から子宮腔へのガスの拡散に依存し、iii)この拡散は血管および腔間の距離、したがって、子宮内膜の厚さおよびこれらの血管の発育に依存することも知られている。
【0098】
しかしながら、子宮内膜着床能の開始の指標として子宮内膜液中の溶存酸素濃度の傾向変化に関する研究はない。したがって、本発明は、子宮内膜液中の溶存酸素濃度の傾向変化に基づいた女性対象における着床の窓の検出方法であって、同じ対象における前に得られた参照値は子宮内膜着床能の発生に関連する、方法を提供する。言い換えれば、本発明者らは、子宮内膜液における酸素測定は、改良された着床率を達成することを目的として、子宮内膜が適切に発育したかどうかおよびART手順において胚移植のタイミングにおいて胚盤胞と同期および受容性であるかどうかを評価するための信頼ある手法であることを見出した。
【0099】
重要なことに、本発明の方法は、生検サンプルの分析に依存せず、したがって、子宮内膜組織の完全性に影響を与えず、その後の胚着床のための適切な環境を保護するので、従来の技術より有利である。WOIの検出方法であり、胚を移植する同じ周期で行うことができ、天然周期に適合し、次に、治療の成功を向上させることに焦点を当てたARTプロトコールのパーソナル化を可能とし、天然周期を促進し、妊娠するために必要な移植回数を減らし、それにより、家族の心身の健康および健康システムへの経済的コストに対する影響を減らすので、本発明の方法は有利である。
【0100】
本発明の方法は、子宮内膜液中の子宮内酸素圧の、例えば、光学的手段による非侵襲的測定により子宮内膜着床能および同期性を検出することを目的とする。酸素光学式センサーは、安全、正確であり、鎮静状態の患者および重症の新生児の連続式血中ガスモニタリングならびに急性脳損傷患者における脳酸素モニタリングなどの異なる臨床応用において使用されている。酸素光学式センサーの手段による溶存酸素濃度の測定を、子宮内膜液と接触しているが、子宮内膜と接触していない子宮底に光学式マイクロセンサーを配置するための移植カテーテル(IVFにおいて胚移植のために使用されるようなカテーテル)を用いて胚移植日に上手く実行し得る。
【0101】
材料および方法
対象集団
BMI<30、規則的周期、非喫煙者および正常子宮形態を有する5名の若い(18~35歳)健康女性ボランティア。
除外基準:
-医療病状:インスリン依存型糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能障害、肝不全および/または腎不全、卵巣刺激および/または妊娠に対して禁忌を示す病状ならびに抗リン脂質抗体症候群。
-子宮病状(子宮内膜症、がん、先天性異常、ポリープ、筋腫)。
-喫煙者または薬物摂取。
-この3ヶ月における経口避妊薬またはIUDを用いた治療。
【0102】
実験計画
子宮内酸素濃度の検出において以前に使用された無菌光学式酸素センサーを使用する(Ottosen et al.“Observations on intrauterine oxygen tension measured by fiber-optic microsensors” Reproductive biomedicine online vol.13,3(2006):380-5)。女性における子宮内酸素の検出のためのOttosen et al.における方法は、ファイバー光学式マイクロセンサーおよび子宮へのその導入のための移植カテーテルを使用する。使用される酸素センサーの種類は、血中および脳中の酸素の検出のためのいくつかの認可された医療デバイスの一部でもある:Neurotrend、Neotrend、Paratrend、NEUROVENT-PTO、Raumedic neuro-icu(https://www.raumedic.com/neuromonitoring/neuro-icu)。
【0103】
特性の測定は、製造者により決定される。センサーの測定範囲は、0~500%空気飽和(air sat.)である。センサーの測定原理のせいで、分解能は分圧と共に変わる。1、30、100、250%空気飽和における分解能は、それぞれ、0.05、0.1、0.5および1.7%空気飽和であった。したがって、子宮腔における分解能は、0.1%空気飽和より優れる。精度は、±1%空気飽和以内である。0~90%応答時間は、<5~10秒である。センサーは、二酸化炭素またはいずれものイオン性化学種に対する交差感度は示さない(www.presense.de)。
【0104】
子宮内酸素圧を、0.9mmの外径を有する細い柔軟な絶縁型光ファイバーから製造された特別に考案された型のファイバー光学式マイクロセンサーを用いて測定する。これらの小型化された移植可能なプローブは、様々な応用、例えば、血液回路や組織への挿入などに適しており、オンラインリアルタイム酸素測定をもたらす。検出原理は、ファイバーチップに固定され、その後、内部蛍光からの干渉を回避するために光絶縁体で被覆された蛍光染料(フルオロフォア)の酸素による消光に基づく(PreSens、独国レーゲンスブルク、www.presens.de)。フルオロフォア[ルテニウム(II)-トリス-(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン]の蛍光量子収率の減少、ならびに蛍光減衰時間は、染料が固定されているマトリックスに結合された酸素の濃度に比例する。蛍光減衰時間を、ラップトップコンピュータと接続された酸素メーターOXY-1-ST(www.presens.de)を用いて記録する。詳細には、ルアーロックが回転する場合に子宮内膜液への1mm未満のセンサーチップの曝露を可能とする位置に、回転するメイルルアーロック端部を含むカテーテル結合デバイスを、センサーに固定する。近接端部でのルアー接続を含むLabotectのEmbryo Transfer Catheter Setのガイドカニューレを、超音波支援下、子宮腔に入れるために使用する。カニューレ端部が子宮底から1cm離れている場合、マイクロセンサーをこれにより導入し、ルアーロックを回転し、マイクロセンサーチップを子宮内膜液中に「泳がせる」が、決して子宮内膜組織と接触させない。labotectガイドカニューレの丸くなった遠位端部は、この意味で特に有用であることが分かった。センサーチップの1mm未満を直ぐに延伸した後、測定を開始し、後退した後、子宮腔からセンサーを取り出す。
【0105】
カテーテル結合デバイスをセンサーに固定することにより得られるセンサーチップのこの正確な延伸は、手動でセンサーを子宮腔に曝露することを避ける。特に、公知の方法に関する測定精度を実質的に向上させるので、子宮内膜液へのセンサーの1mm未満の制御された延伸は有利である。この手順は、安全性および結果の再現を保証する:センサーチップは壊れも損傷もせず、子宮液にのみ曝露する子宮内膜組織と接触しないことを保証し、子宮底において同位置で測定を常に行うことを保証する。
【0106】
測定が行われる場合、カテーテルを子宮から子宮頸管へ後退して子宮頸部における酸素濃度を測定する。
【0107】
卵胞期初期(月経周期の3日目~5日目)に1回および同周期の14日目~26日目に48時間毎に1回、これらの決定を行う。子宮内膜液中の溶存酸素濃度を、子宮底および子宮頸管において測定する。得られた値を、次のパラメータ:卵胞および黄体の存在、子宮内膜厚さおよび外観、抵抗指数および拍動指数、子宮LH濃度ならびに血中プロゲステロンおよびエストロゲンと比較する。
【0108】
実験計画
自宅にて:
-ラテラルフローストリップ(LHラテラルフローストリップ)を用いて周期の10~17日目の毎日、子宮LH検出。
【0109】
IVFクリニックにて:
-卵胞および黄体外観、ならびに子宮内膜厚さおよび外観の超音波モニタリング。加えて、抵抗指数および拍動指数を、ドップラー超音波により決定する。周期の3日目~5日目の日およびIVFクリニックにおいて月経周期の14日目~26日目の隔日にこのモニタリングを行う。
-子宮内膜液中の酸素測定を、移植カテーテルを用いて子宮内腔に挿入されたマイクロメーター光学式ファイバーを用いて本発明の方法により行う。腹部超音波により挿入をモニターする。子宮底において5~10分間および子宮頸管において更に5~10分間、測定を行う。周期の3日目~5日目の日およびIVF相談を用いて月経周期の14日目~26日目の隔日にこれらの測定を行う。
【0110】
処置室にて:
-周期の3日目~5日目の日および月経周期Aの14日目~26日目の隔日の8時間絶食後に採血を行う。
-パルスオキシメーターを用いて周期の3日目~5日目の日および月経周期の14日目~26日目の隔日に血中酸素飽和の決定を行う。
【0111】
結果
一元配置分散分析、次にテューキーの多重比較検定を、macOS用GraphPad Prismバージョン9.3.1(GraphPad Software、米国カリフォルニア州サンジエゴ、www.graphpad.com)を用いて行った。
【0112】
バルセロナのVall d‘Hebron HospitalのAssisted Reproductive Unitにおいてこの試験を行った。結果として、妊娠可能な女性の月経周期の黄体期を通して子宮内酸素パターンを示す初の人データを得た。pOパターンは、参加者の80%においてWOI発生を示し(図4:A、B)、溶存酸素濃度のピークにより示されている。図4に表されているデータの記述的分析結果を、表1、2および3に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
排卵日近くまたは排卵発生後直ぐに、生理的低酸素に達成し、溶存酸素圧は、子宮腔底部において10トール(1.4%または1333Pa)未満の値に達する。標準パターン(図4A)に従った女性は、LH+4日目までにおよそ20トールのpO値を有し、LH+5日目に30トールまでに増加する。LH+6日目に、pOは、最大値(40~45トール)に達し、LH+7日目に安定なままとなる。次いで、酸素レベルは、LH+8日目に減少し始め、再びおよそ30トールの値に達する。このパターンは、解剖学的病状および遺伝子発現により収集される病歴データと相関し、着床の窓が天然周期においてLH+6~LH+9またはホルモン補充療法(HRT)周期においてP+4~P+7に発生することを示している。子宮環境は、LH+6日目、およびLH+8日目に胚のために用意され、WOIは閉じ始めることが分かった(図4A)。
【0117】
胚着床の成功および進行する妊娠のため、受容性である子宮内膜と胚とのクロストークは重要である。一側面では、子宮内膜は、複数の因子、タンパク質、または小嚢を、胚盤胞発育およびトロホブラスト浸潤のために必要とされる子宮液中に分泌する。他の側面では、胚は、着床成功のため子宮内膜を調節する。いくつかのサイトカイン(胎盤成長因子など)は、胚盤胞5日目のヒト栄養外胚葉において上方制御される。受容性である上皮は、トロホブラストチャレンジに対して転写応答を開始し、子宮内膜上皮と結合される場合、受容性である上皮において早期および一時的転写上方制御を誘発する。
【0118】
したがって、LH+8に減少するpOレベルは、子宮腔における胚の非存在に対する応答であり、WOI閉鎖のシグナル伝達を誘発する必要がある。浸潤性胎盤形成および妊娠が、生存能力のある胚の存在下起こることが分かっている。しかしながら、その非存在下、子宮内膜は、破損し、リモデリングし、および再生する。
【0119】
図4Bは、短縮および進行したWOIを有する女性のpOプロファイルを示す。示されているように、生理的低酸素は、黄体期の開始時に起こった。しかしながら、LH+5日目、溶存酸素レベルは、既に40~45トールの範囲にあり、標準的プロファイルにおけるLH+6およびLH+7日目のpO値に相当する(図4A)。加えて、酸素濃度は迅速に減少し、LH+7日目に10トール未満のpO値に達する。したがって、WOIは、この女性に対してLH+7に胚移植を行った場合に既に閉じているだろう。加えて、参加者の20%は、pOの増加を示さなかったが、WOI破壊は疑わしい。このpOプロファイルを示す女性は、子宮内膜機能の詳細な評価を行うべきである。
【0120】
加えて、不妊症を治療し、胚移植を推奨するため、少なくとも2つの他のパラメータが、pO2-WOI検出と組み合わされ得る。他のパラメータは、血中プロゲステロンレベルおよび子宮内膜の厚さである。
【0121】
胚移植日の低血中プロゲステロンレベルは、新鮮または凍結胚移植後のより不良予後と関連し、胚移植日に10~20ng/mLのプロゲステロンレベルは最適であることが分かった。したがって、胚移植後の個別化されたプロゲステロン支援は、これらの患者に効果を与える可能性がある。更に、卵胞期後期における薄い子宮内膜(≦7mm)は、着床障害およびより低い出生率と関連し得る。
【0122】
胚移植前の単独で使用またはプロゲステロンレベルおよび/または子宮内膜厚さと組み合わせた子宮内酸素測定は、不妊症治療の推薦を可能とするだろう。選択肢は、胚移植を進める、個別化された方法でのプロゲステロンを補充する、薄い子宮内膜を治療する、子宮内膜機能の詳細な分析を得る、または次回の天然もしくは人為的IVF周期のために移植を中断することであり得る。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
【国際調査報告】