(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ラジカルスカベンジャー複合体、その製造方法、及びそれを含む燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20241203BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20241203BHJP
C01B 32/16 20170101ALI20241203BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20241203BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20241203BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241203BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/88 Z
C01B32/16
B82Y30/00
B82Y40/00
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529267
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 KR2022018674
(87)【国際公開番号】W WO2023101313
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0172353
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0157928
(32)【優先日】2022-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン カヨン
(72)【発明者】
【氏名】コン ナコン
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンス
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュソン
(72)【発明者】
【氏名】ナム キョンシク
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンミ
【テーマコード(参考)】
4G146
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G146AA13
4G146AA16
4G146AB06
4G146AC03A
4G146AC03B
4G146AD17
4G146AD23
4G146AD24
4G146BA12
4G146BB21
4G146BB23
4G146BC09
4G146BC23
4G146BC25
4G146BC26
4G146BC34B
4G146BC37B
4G146BC43
4G146CB08
5H018AA06
5H018BB01
5H018BB08
5H018DD05
5H018EE05
5H018HH01
5H018HH03
5H018HH05
5H018HH08
5H126BB06
(57)【要約】
本発明は、一側端部に閉じたキャップ(closed cap)構造を有する長手方向に長い炭素ナノチューブ及び前記閉じたキャップ構造のキャップ内に位置するラジカルスカベンジャー粒子を含むラジカルスカベンジャー複合体;基材表面にラジカルスカベンジャー粒子を提供する段階及び前記ラジカルスカベンジャー粒子の表面に炭素ナノチューブを成長させる段階を含むラジカルスカベンジャー複合体の製造方法;及び燃料電池に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側端部が閉じたキャップ(cap)構造を有するカーボンナノチューブ、及び
前記閉じたキャップ構造のキャップ内に位置するラジカルスカベンジャー粒子を含む、ラジカルスカベンジャー複合体。
【請求項2】
前記炭素ナノチューブは、単一壁炭素ナノチューブまたは多重壁炭素ナノチューブである、請求項1に記載のラジカルスカベンジャー複合体。
【請求項3】
前記炭素ナノチューブは長さが0.3ないし10μm(マイクロメートル)であり、直径が100nm(ナノメートル)以下である、請求項1に記載のラジカルスカベンジャー複合体。
【請求項4】
前記ラジカルスカベンジャー粒子は直径が3ないし100nm(ナノメートル)である、請求項1に記載のラジカルスカベンジャー複合体。
【請求項5】
前記キャップ内に位置するラジカルスカベンジャー粒子は、ラジカルスカベンジャー複合体粒子全体の重量に対して55ないし95重量%である、請求項1に記載のラジカルスカベンジャー複合体。
【請求項6】
燃料電池用膜電極アセンブリにおいて電極に使用されるものである、請求項1に記載のラジカルスカベンジャー複合体。
【請求項7】
基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を提供する段階;及び
前記ラジカルスカベンジャー粒子の表面に炭素ナノチューブ(CarbonNano Tube、CNT)を成長させる段階;
を含むラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項8】
前記基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を提供する段階は、前記基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を含有する溶液を塗布する段階を含む、請求項7に記載のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項9】
前記ラジカルスカベンジャー粒子表面に炭素ナノチューブを成長させる段階は、
チップ成長(Tip Growth)方式で行われる、請求項7に記載のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項10】
前記ラジカルスカベンジャー粒子表面に炭素ナノチューブを成長させる段階は、
前記ラジカルスカベンジャー粒子が表面に提供された前記基材を第1熱処理する段階;及び
前記第1熱処理された前記基材を、炭素ナノチューブ前駆体を供給しながら前記第1熱処理温度より高い温度で第2熱処理する段階を含む、請求項7に記載のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項11】
前記第1熱処理段階は、不活性気体雰囲気において200ないし400℃の温度で行われ、前記第2熱処理段階は、水素と不活性気体の混合気体雰囲気において500ないし1100℃の温度で行われる、請求項10に記載のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項12】
前記炭素ナノチューブ前駆体は、エチレン、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、アルコール、フタロシアニン、ポルフィリン、メラミン、シアナミド及びジシアンジアミドからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項13】
前記炭素ナノチューブ前駆体は、エチレン、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、及びアルコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、気体状態で第2熱処理段階に提供される、請求項10に記載のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項14】
前記炭素ナノチューブ前駆体は、フタロシアニン、ポルフィリン、メラミン、シアナミド、及びジシアンジアミドからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記炭素ナノチューブ前駆体は、前記基材が位置するゾーン(zone)と離隔した第2ゾーンにおいて加熱気化されることにより第2熱処理段階のために前記基材が位置するゾーンに提供される、請求項10に記載のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項15】
前記基材は、銅(Cu)基板、鉄(Fe)基板、ニッケル(Ni)基板、及びシリコン(Si)基板からなる群から選択されたいずれか1つである、請求項7に記載のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法。
【請求項16】
請求項1によるラジカルスカベンジャー複合体を含む膜電極アセンブリ。
【請求項17】
請求項16による膜電極アセンブリを含む燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質膜の化学的劣化を防止できる添加剤複合体及びその製造方法として、既存のラジカルスカベンジャーに比べて安定性が向上して、クラック発生、性能低下及び耐久性低下が防止され、添加剤の流失が防止されるため、添加剤性能が長期間維持される特性及びナノ構造体から性能及び耐久が改善された特性を有するラジカルスカベンジャー複合体、その製造方法、及びそれを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の酸化により発生する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる電池であり、高いエネルギー効率性と汚染物排出が少ない環境にやさしい特徴により次世代エネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
燃料電池は、一般的に電解質膜を挟んでその両側に酸化極(Anode)と還元極(Cathode)がそれぞれ形成された構造を有し、このような構造を膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)と称する。
【0004】
燃料電池は、電解質膜の種類に応じてアルカリ電解質燃料電池、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)などに区分できるが、その中で高分子電解質燃料電池は100℃未満の低い作動温度、速い始動と応答特性及び優れた耐久性などの長所により携帯用、車両用及び家庭用電源装置として脚光を浴びている。
【0005】
このような高分子電解質燃料電池の代表的な例としては、水素ガスを燃料として使用する水素イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell:PEMFC)などが挙げられる。
【0006】
高分子電解質燃料電池で起こる反応を要約すると、まず、水素ガスのような燃料が酸化極に供給されると、酸化極においては水素の酸化反応により水素イオン(H+)と電子(e-)が生成される。生成された水素イオン(H+)は高分子電解質膜を介して還元極に伝達され、生成された電子(e-)は外部回路を介して還元極に伝達される。還元極においては酸素が供給され、酸素が水素イオン(H+)及び電子(e-)と結合して酸素の還元反応により水が生成される。
【0007】
燃料電池は酸化極と還元極での反応が異なり、これによる反応物と反応副産物が異なるため、燃料電池の駆動中に高分子電解質膜の一面と他面はそれぞれ異なる環境に露出する。また、燃料電池は高分子電解質膜の両面に電極層を転写して積層構造の膜電極アセンブリとして形成され、その表面にバイポーラプレート(Bipolar plate)が積層され、バイポーラプレートに形成された流路を介して酸素と燃料ガスが注入される構造を有する。
【0008】
燃料電池が駆動する時に電極から発生するラジカルは、高分子電解質膜の劣化の主な原因として知られている。還元極での酸素の還元反応中に過酸化水素(H2O2)が生成され、生成された過酸化水素から過酸化水素ラジカル(hydroperoxyl radical)(HO2・)及び/又は水酸化ラジカル(hydroxyl radical)(・OH)が生成される。このように生成されたラジカルは、高分子電解質膜に含まれて実質的に水素イオン伝達性を有するイオノマー(ionomer)の劣化を引き起こして高分子電解質膜のイオン伝導度を低下させ、究極的には燃料電池の性能低下を誘発する。
【0009】
生成されたラジカルを除去するために、高分子電解質膜や電極層にラジカルスカベンジャー、すなわち、ラジカルを捕獲する物質を添加して、高分子電解質膜の劣化とこれによる燃料電池の性能低下を防止する方法が活用されている。
【0010】
このように、ラジカルを捕獲する物質がラジカルスカベンジャー(Radical Scavenger)であり、電極で発生したラジカルが高分子電解質膜を劣化させる前に、ラジカルと反応してラジカルを除去する機能をする。
【0011】
前記ラジカルスカベンジャーは高分子電解質膜の表面にコーティングされるか、電極層に混合された形態で添加されるが、金属粒子や金属化合物などの粒子形態で添加される前記ラジカルスカベンジャーは、燃料電池の運転中に溶出されるという問題がある。すなわち、ラジカルを除去できるラジカルスカベンジャーの量が減少するため、燃料電池の駆動時間が長くなるほどラジカル除去が適切に行われなくて燃料電池の急激な性能低下が引き起こされる。
【0012】
大韓民国公開特許第2020-0130179号では、表面に多孔性保護膜を含むラジカルスカベンジャー粒子を備えたラジカルスカベンジャーを提示しているが、ラジカルスカベンジャーがラジカルを捕獲した後に形成される金属イオンなどの構成成分が保護膜の外に溶出されないように構成して燃料電池の性能低下を防止する技術を開示している。
【0013】
ただし、ラジカルスカベンジャーを表面に保護膜が形成された複合体の形態で製造する場合、これを製造するために追加工程と費用が必要であるため、より簡単な方法で複合体を製造できる技術開発が必要である。
【0014】
従って、ラジカルスカベンジャーのラジカル捕獲効果を長期間維持しながらも、製造が容易で、製造効率性に優れたラジカルスカベンジャー複合体の製造方法に対する開発が必要な実情であり。
【0015】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【特許文献4】韓国公開特許第2020-0130179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、ラジカルスカベンジャーのクラック発生、流失などを防止して、膜電極アセンブリ内において安定的に機能することができ、性能及び耐久を改善できるラジカルスカベンジャー複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
本発明はまた、既存のラジカルスカベンジャーに比べて物理的、化学的安定性が向上したラジカルスカベンジャー複合体を提供することを目的とする。
【0022】
本発明は、簡単且つ安価に製造できる安定性が向上したラジカルスカベンジャー複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一側面によれば、一側端部が閉じたキャップ構造を有する炭素ナノチューブ、及び前記閉じたキャップ構造のキャップ内に位置するラジカルスカベンジャー粒子を含む、ラジカルスカベンジャー複合体が提供される。
【0024】
前記炭素ナノチューブは、単一壁炭素ナノチューブまたは多重壁炭素ナノチューブであってもよい。
【0025】
前記炭素ナノチューブは長さが0.3ないし10μm(マイクロメートル)で、直径が100nm(ナノメートル)以下であってもよい。
【0026】
前記ラジカルスカベンジャー粒子は直径が3ないし100nm(ナノメートル)であってもよい。
【0027】
前記キャップ内に位置するラジカルスカベンジャー粒子は、全体ラジカルスカベンジャー複合体粒子の総重量に対して55ないし95重量%であってもよい。
【0028】
前記ラジカルスカベンジャー複合体は、燃料電池用膜電極アセンブリにおいて電極に使用されるものであってもよい。
【0029】
本発明の他の側面によれば、基材表面にラジカルスカベンジャー粒子を提供する段階;及び前記ラジカルスカベンジャー粒子の表面に炭素ナノチューブ(Carbon Nano Tube、CNT)を成長させる段階;を含むラジカルスカベンジャー複合体の製造方法が提供される。
【0030】
前記基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を提供する段階は、前記基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を含有する溶液を塗布する段階を含んでもよい。
【0031】
前記ラジカルスカベンジャー粒子表面に炭素ナノチューブを成長させる段階は、チップ成長(Tip Growth)方式で行われてもよい。
【0032】
前記ラジカルスカベンジャー粒子表面に炭素ナノチューブを成長させる段階は、前記ラジカルスカベンジャー粒子が表面に提供された前記基材を第1熱処理する段階;及び前記第1熱処理された前記基材を、炭素ナノチューブ前駆体を供給しながら前記第1熱処理温度より高い温度で第2熱処理する段階を含んでもよい。
【0033】
前記第1熱処理段階は不活性気体雰囲気において200ないし400℃の温度で行われ、前記第2熱処理は水素と不活性気体の混合気体雰囲気において500ないし1100℃の温度で行われてもよい。
【0034】
前記炭素ナノチューブ前駆体は、エチレン、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、アルコール、フタロシアニン、ポルフィリン、メラミン、シアナミド及びジシアンジアミドからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0035】
前記炭素ナノチューブ前駆体は、エチレン、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、及びアルコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、気体状態として第2熱処理段階に提供されることができる。
【0036】
前記炭素ナノチューブ前駆体は、フタロシアニン、ポルフィリン、メラミン、シアナミド、及びジシアンジアミドからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記炭素ナノチューブ前駆体は、前記基材が位置するゾーン(zone)と離隔した第2ゾーンにおいて加熱気化されることにより第2熱処理段階のために前記基材が位置するゾーンに提供されることができる。
【0037】
前記基材は、銅(Cu)基板、鉄(Fe)基板、ニッケル(Ni)基板、及びシリコン(Si)基板からなる群から選択されたいずれか1つであってもよい。
【0038】
本発明のまた他の一側面によれば、前述のラジカルスカベンジャー複合体を含む膜電極アセンブリが提供されることができる。
【0039】
本発明のまた他の一側面によれば、前述の膜電極アセンブリを含む燃料電池が提供されることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によるラジカルスカベンジャー複合体は、外部の物理、化学的要因からラジカルスカベンジャーの損傷を防止することができ、これと同時に、ラジカルスカベンジャーのラジカル捕獲効果には影響を及ぼさないため、ラジカル捕獲効果が改善された効果を有する。
【0041】
本発明によるラジカルスカベンジャー複合体を含む膜電極アセンブリ及び燃料電池の化学的耐久性が向上した効果を有する。
【0042】
本発明は、簡単な方法でラジカルスカベンジャー複合体を製造することができるため、ラジカルスカベンジャーをそのまま使用する場合と比べて、製造効率性が低下することなく、化学的耐久性が向上した効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【0044】
【
図2】本発明の一実施例による燃料電池の全体的な構成を示した模式図である。
【0045】
【
図3】本発明によるラジカルスカベンジャー複合体の製造過程を示した模式図である。
【0046】
【
図4】本発明により製造されたラジカルスカベンジャー複合体の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0047】
【
図5】本発明により製造されたラジカルスカベンジャー複合体を含む電極の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0048】
【
図6】本発明の実施例及び比較例によって製造されたラジカルスカベンジャーを使用して製造した膜電極接合体の化学耐久性評価結果である。
【0049】
【
図7】本発明の実施例及び比較例によって製造されたラジカルスカベンジャーを使用して製造した膜電極接合体の性能評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の各構成をより詳しく説明するが、これは1つの例に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容により制限されない。
【0051】
本発明に使用された「好ましい」または「好ましくは」は、特定の条件で特定の長所を有する本発明の実施例を示す。しかしながら、他の実施例も同一条件または他の条件で好ましい場合がある。また、1つ以上の好ましい実施例は、他の実施例が有用でないことを意味するものではなく、本発明の範囲内にある他の実施例を排除するものでもない。
【0052】
本明細書に使用された「含む」という用語は、本発明に有用な材料、組成物、装置、及び方法を羅列する時に使用され、その羅列された例に制限されるものではない。
【0053】
【0054】
本発明は、ラジカルスカベンジャー粒子及びその表面を包む炭素ナノチューブ(Carbon Nano Tube、CNT)を含むラジカルスカベンジャー複合体の製造方法に関する。
【0055】
炭素ナノチューブは多孔性炭素材料であって、電池駆動中に発生するラジカルがラジカルスカベンジャー粒子と直接接触して反応できるようにしながらも、ラジカルスカベンジャー粒子が膜電極アセンブリ内において物理、化学的に損傷することを防止する役割をする。
【0056】
具体的に、本発明によるラジカルスカベンジャー複合体の製造方法は、基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を提供する段階、及び前記ラジカルスカベンジャー粒子の表面に炭素ナノチューブ(Carbon Nano Tube、CNT)を成長させる段階を含む。
【0057】
前記基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を提供する段階は、前記基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を含有する溶液を塗布する段階を含んでもよい。具体的には、前記段階は、ラジカルスカベンジャー粒子用シードを形成させる段階及び前記シードを含有する溶液を前記基材の表面に塗布する段階を含んでもよい。前記シードは、後続する熱処理過程でラジカルスカベンジャー粒子になりうる。
【0058】
基材表面にラジカルスカベンジャー粒子を分散させた後、ラジカルスカベンジャー粒子の表面において炭素ナノチューブが閉じた構造の炭素ナノチューブに成長する。
【0059】
閉じた構造の炭素ナノチューブ内にラジカルスカベンジャー粒子が位置する形態で複合体は形成される。
【0060】
前記炭素ナノチューブを成長させる段階は、いかなる方法でも特に制限されずに多様な方法で実現できるが、前記ラジカルスカベンジャー粒子表面に炭素ナノチューブを成長させる段階は、チップ成長(Tip Growth)方式で行われることが好ましい。
【0061】
このようなチップ成長方式で炭素ナノチューブが成長すると、ラジカルスカベンジャー粒子は炭素ナノチューブの閉じたキャップ(Closed Cap)部分に位置した形態で複合体が成長する。
【0062】
すなわち、前記炭素ナノチューブは一側端部が閉じたキャップ構造(Closed Cap)を有し、前記ラジカルスカベンジャー複合体は前記炭素ナノチューブの閉じたキャップ構造のキャップ部分に前記ラジカルスカベンジャー粒子が位置し、その下に炭素ナノチューブが成長した構造を有する。
【0063】
前記ラジカルスカベンジャー複合体の製造方法において各段階をより具体的に説明すると、次のようである。
【0064】
前記基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を提供する段階は、前記基材の表面にラジカルスカベンジャー粒子を含有する溶液を塗布する段階を含んでもよい。
【0065】
前記溶液の塗布はスプレー塗布、スピン塗布、インクジェットプリンティング塗布などの溶液工程による塗布方式で行われてもよい。
【0066】
前記ラジカルスカベンジャー粒子を含有する溶液は、溶媒として水、アルコール、ヘキサン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリジン、及びこれらの混合溶媒から選択される少なくとも1つの溶媒を含んでもよい。
【0067】
また、前記ラジカルスカベンジャー粒子を含有する溶液は、ウレア(urea)のような補助添加物質をさらに含んでいても良い。前記ウレアは、ラジカルスカベンジャー粒子の前駆体からシードが容易に形成されることができ、ラジカルスカベンジャー粒子の表面に炭素がキャッピング(capping)できるようにすることができる。
【0068】
前記ラジカルスカベンジャー粒子の表面に炭素ナノチューブを成長させる段階は、より具体的には、前記ラジカルスカベンジャー粒子が表面に提供された前記基材を第1熱処理する段階(以下、第1熱処理段階ともいう);及び前記第1熱処理された前記基材を、炭素ナノチューブ前駆体を供給しながら前記第1熱処理温度より高い温度で第2熱処理する段階(以下、第2熱処理段階ともいう)を含んでもよい。
【0069】
前記第1熱処理段階は、不活性気体雰囲気、例えば、窒素雰囲気において200ないし400℃の温度で行われる。前記第1熱処理段階は1ないし4時間行われる。また、前記第2熱処理段階は水素と不活性気体の混合気体の雰囲気、例えば、水素/窒素混合気体の雰囲気において500ないし1100℃の温度で行われる。前記第2熱処理段階は1ないし20分間行われる。
【0070】
好ましくは、第1熱処理段階において250ないし350℃の温度で1.5ないし3.5時間、第2熱処理段階において750ないし1050℃の温度で2ないし15分間行われる。第1熱処理温度及び第2熱処理温度が前記温度より低い場合は、キャッピング(capping)及び炭素ナノチューブの成長がうまく行われないか、炭素ナノチューブの密度と直径が減少する問題があり、前記温度より高い場合は、ウレアが炭素にキャッピングされないか、炭素ナノチューブが過度に成長する問題がある。
【0071】
また、前記時間より短い時間熱処理する場合は、キャッピング及び炭素ナノチューブの成長がうまく行われない問題があり、前記時間より長い時間熱処理する場合は、炭素ナノチューブが過度に成長する問題がある。
【0072】
前記第1熱処理と第2熱処理をはじめとする炭素ナノチューブの成長段階はチューブ(Tube)形態のファーネス(Furnace)で行われる。必要に応じて、特に後述する炭素ナノチューブ前駆体の加熱気化の実行のためには、2つの熱処理ゾーン(zone)を有するファーネスを使用してもよい。例えば、ファーネスの前端部には炭素ナノチューブ前駆体を位置させ、後端部には前記表面にラジカルスカベンジャー粒子が分散された基板を位置させた後、後端部で第1熱処理を行った後、前端部において炭素ナノチューブ前駆体を加熱気化し流動してファーネスの後端部にある基材表面のラジカルスカベンジャー粒子上において第2熱処理により炭素ナノチューブが成長するようにする。すなわち、蒸着方式により炭素ナノチューブが成長できる。
【0073】
前記炭素ナノチューブ前駆体は特に制限されず、炭素前駆体または炭素/窒素前駆体であってもよく、例えば、エチレン、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、アルコール、フタロシアニン、ポルフィリン、メラミン、シアナミド及びジシアンジアミドからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0074】
一具現例において、前記炭素ナノチューブ前駆体はエチレン、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、及びアルコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、気体状態で第2熱処理段階に提供されることができる。
【0075】
一具現例において、前記炭素ナノチューブ前駆体は、フタロシアニン、ポルフィリン、メラミン、シアナミド、及びジシアンジアミドからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記炭素ナノチューブ前駆体は、前記基材が位置するゾーン(zone)と離隔した第2ゾーンにおいて加熱気化されることにより、第2熱処理段階のために前記基材が位置するゾーンに提供されることができる。
【0076】
前記ラジカルスカベンジャー複合体を構成する炭素ナノチューブは、単一壁炭素ナノチューブまたは多重壁炭素ナノチューブのうちいずれでも構わず、1つの膜電極アセンブリに添加される前記複合体は、必ずしも同じ形態の炭素ナノチューブで構成された複合体で構成されなければならないわけではなく、混合された形態でも関係ない。
【0077】
前記ラジカルスカベンジャー複合体において、炭素ナノチューブの長さは0.3ないし10μm(マイクロメートル)であってもよい。好ましくは、0.4ないし5μmであってもよく、最も好ましくは、0.5ないし3μmの長さで製造することが好ましい。
【0078】
前記長さより長い場合は、膜電極アセンブリに高分子電解質膜または電極の触媒層に前記ラジカルスカベンジャー複合体を添加する時に分散性が低下する問題があり、性能及び耐久改善効果が阻害される可能性があるので、前記範囲内の長さで構成することが好ましく、前記長さより短い場合は、ラジカルスカベンジャー粒子を十分に保護できなくなり、複合体で構成する安定性の向上や性能低下が抑制される効果が微々たる問題及び構造体としての役割を果たせないため、性能及び耐久改善の効果がない。
【0079】
一方、本発明において、前記基材は、銅(Cu)基板、鉄(Fe)基板、ニッケル(Ni)基板、及びシリコン(Si)基板からなる群から選択されたいずれか1つであってもよい。好ましくは、銅及びニッケル基板を使用してもよい。より好ましくは、銅基板を使用してもよい。
【0080】
他の基板を使用する場合は、ラジカルスカベンジャー粒子の表面に選択的に炭素ナノチューブが成長せずにランダムに成長する問題があるので、可能な限り銅基板を利用して製造することが好ましい。
【0081】
本発明において、前記ラジカルスカベンジャー粒子はラジカル消去能を有する添加剤、粒子であれば特に制限されることなく使用が可能であり、いかなる物質でも本発明において複合体の構成として活用することができる。例えば、前記ラジカルスカベンジャー粒子は、遷移金属、貴金属、これらのイオン、これらの塩、これらの酸化物、これらの窒化物、及びこれらの錯体からなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0082】
前記遷移金属は、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、またはネオジム(Nd)であってもよいが、これらに限定されない。
【0083】
前記貴金属は、銀(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、またはロジウム(Rh)であってもよいが、これらに制限されない。
【0084】
前記遷移金属または貴金属の塩は、炭酸塩、酢酸塩、塩化塩、フッ化塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、タングステン酸化塩、水酸化塩、酢酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、またはアセチルアセトネート塩であってもよいが、これは1つの例に過ぎず、これに制限されずに多様なラジカルスカベンジャー粒子を使用することができる。
【0085】
一方、前記ラジカルスカベンジャー粒子は直径が3ないし100nm(ナノメートル)であってもよく、好ましくは、4ないし80nmであってもよく、最も好ましくは、5ないし60nmであってもよい。
【0086】
前記直径より小さい場合は、ラジカルスカベンジャー粒子が炭素ナノチューブの中に位置しない問題があり、前記直径より大きい場合は、ラジカルスカベンジャー粒子を炭素ナノチューブが完全に包み込めず、炭素ナノチューブのキャッピング(Capping)された閉じたキャップ構造側にラジカルスカベンジャー粒子が位置しない問題がありうる。
【0087】
前記キャップ内に位置するラジカルスカベンジャー粒子は、全体ラジカルスカベンジャー複合体粒子の総重量に対して55ないし95重量%、具体的には60ないし90重量%の量であってもよい。
【0088】
前記炭素ナノチューブの前記キャップ内に位置するラジカルスカベンジャー粒子の量を前述の範囲にすることにより、本発明による燃料電池の性能及び寿命改善効果が効果的に発揮できる。
【0089】
前記多孔性保護膜は、前記ラジカルスカベンジャー粒子の移動度(mobility)を減少させることにより前記粒子の溶出を防止でき、ラジカル以外の反応種と反応することを抑制することで安定性を向上させることができる長所を有する。
【0090】
本発明において、前記ラジカルスカベンジャー複合体は、最終完成状態での炭素ナノチューブの直径が110nm以下、例えば、4ないし110nmであってもよく、好ましくは5ないし90nmであってもよく、最も好ましくは6ないし70nmであってもよい。
【0091】
炭素ナノチューブの前記直径より大きい場合は、ラジカルスカベンジャー粒子が炭素ナノチューブの気孔部位に流出するという問題がありうる。ただし、炭素ナノチューブの直径はラジカルスカベンジャーのサイズに応じて決定されるので、前記直径の下限は特に制限されない。
【0092】
このように、前述のラジカルスカベンジャー複合体の製造方法によって製造されたラジカルスカベンジャーは、高分子電解質膜及びイオノーマバインダーの劣化を防止して、燃料電池の性能低下を防止し、また、溶出されずにラジカル捕獲性能を維持できるため、燃料電池の性能及び寿命が低下することが防止される効果を有する。
【0093】
また、前述のラジカルスカベンジャー複合体は炭素ナノチューブで構成されているため、電極内において構造体として作用して性能及び耐久性の改善効果を有する。
【0094】
【0095】
以下では、図面を参考にして、本発明をより詳しく説明する。
【0096】
ただし、これは本発明の理解のための1つの例示に過ぎず、これによる本発明の権利範囲が制限されることではない。
【0097】
図1は、本発明による膜電極アセンブリを概略的に示した断面図である。
図1を参照して説明すると、前記膜電極アセンブリ100は、前記高分子電解質膜50及び前記高分子電解質膜50の両面にそれぞれ配置される電極20、20’を含む。前記電極20、20’は、電極基材40、40’と前記電極基材40、40’の表面に形成された触媒層30、30’とを含み、前記電極基材40、40’と前記触媒層30、30’の間に前記電極基材40、40’における物質拡散を容易にするために、炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0098】
前記膜電極アセンブリ100において、前記イオン交換膜50の一面に配置されて前記電極基材40を経て前記触媒層30に伝達された燃料から水素イオンと電子を生成させる酸化反応を起こす電極20をアノード電極といい、前記イオン交換膜500の他方の一面に配置されて前記イオン交換膜50を介して供給された水素イオンと電極基材40’を経て前記触媒層30’に伝達された酸化剤から水を生成させる還元反応を起こす電極20’をカソード電極という。
【0099】
前記電極基材40、40’としては水素または酸素の供給が円滑に行われるように多孔性の導電性基材が使用されてもよい。その代表的な例として、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)または金属布(繊維状態の金属布で構成された多孔性のフィルムまたは高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう)が使用できるが、これに限定されるものではない。また、前記電極基材40、40’はフッ素系樹脂で撥水処理したものを使用することが燃料電池の駆動時に発生する水により反応物拡散効率が低下することを防止できるため好ましい。
【0100】
前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオライドアルコキシビニルエーテル、フルオリネイテッドエチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレンまたはこれらのコポリマーを使用することができる。
【0101】
本発明の一実施例による燃料電池は、前記膜電極接合体を含むものであり、例えば、水素気体を燃料とする燃料電池であってもよい。
【0102】
図2は、本発明の一実施例による燃料電池の全体的な構成を示した模式図である。
【0103】
図2を参照すると、前記燃料電池200は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、並びに酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を含む。
【0104】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備える。
【0105】
それぞれの単位セルは電気を発生させる単位のセルを意味し、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる前記膜電極アセンブリと、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜電極アセンブリに供給するための分離板(または、バイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下、「分離板」という。)と、を含む。前記分離板は、前記膜電極アセンブリを中心に置き、その両側に配置される。ここで、前記スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を特にエンドプレートと称する。
【0106】
前記分離板のうち前記エンドプレートは、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2供給管232とを備え、他の1つのエンドプレートは、複数の単位セルにおいて最終的に未反応して残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出するための第1排出管233と、前記単位セルにおいて最終的に未反応して残った酸化剤を外部に排出するための第2排出管234とを備える。
【0107】
図3は、本発明によるラジカルスカベンジャー複合体の製造過程を示した模式図である。
【0108】
まず、銅基板上にラジカルスカベンジャー粒子を分散させた後、銅基板を基準に高さ方向が閉じたキャップ構造を有する炭素ナノチューブをラジカルスカベンジャー粒子の表面に成長させる。
【0109】
チップ成長方式で次第に炭素ナノチューブの長さが長くなり、この時、ラジカルスカベンジャー粒子は閉じたキャップ構造のキャップ部分に位置した状態で成長し、最終的に炭素ナノチューブの成長が完了した後には、ナイフで掻くか水中で超音波を加えることにより、銅基板から分離された独立した複合体として得られる。
【0110】
図4は、本発明によって製造されたラジカルスカベンジャー複合体の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
図4において確認できるように、
図3の過程に従って順次製造された複合体は、閉じたキャップ構造のキャップ部分にラジカルスカベンジャー粒子が位置する複合体の形態で製造される。
【0111】
図5は、本発明によって製造されたラジカルスカベンジャー複合体を利用して製造された電極の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図5から電極内に炭素ナノチューブ形態のラジカルスカベンジャー複合体が観察されることが確認できる。
【0112】
以下、本発明の実施例に基づいてより詳しく説明するが、これは、本発明の理解のための1つの例示的な記載に過ぎず、本発明の権利範囲が次の実施例に限定されるか制限されない。
【0113】
【0114】
[実施例]
【0115】
水-アルコール混合溶液に1.0gのureaを溶かす。前記混合溶液にCe(NO2)3・6H2Oを1g添加した後、100℃で3時間撹拌してCeOxシード(seed)を形成する。形成された前記溶液を銅基板上にスプレー塗布後に乾燥する。前記CeOxシードが塗布された銅基板をTube形態のファーネス(Furnace)に入れる。
【0116】
前記ファーネスを窒素雰囲気で300℃、2時間熱処理を行う。
【0117】
さらに、C2H4気体と5%のH2/N2混合気体の雰囲気において1,000℃、10分間熱処理を行う。
【0118】
炭素ナノチューブの長さが3μmに成長した状態で、ナイフで掻く過程(基板から複合体の分離過程)を行って複合体を得た。この時、前記複合体の炭素ナノチューブは多重壁炭素ナノチューブで形成され、複合体の直径は約20nmであった。炭素ナノチューブの一側端部に閉じたキャップ構造が観察され、前記キャップ構造のキャップ内に位置するラジカルスカベンジャー粒子の比率は60ないし90重量%程度であった。
【0119】
【0120】
[比較例1]
【0121】
先行文献1(韓国登録特許1282678)に開示された内容によってラジカルスカベンジャーを担持させた炭素ナノ繊維を製造し、長さ10 μm 、直径30nm炭素ナノ繊維に10nmラジカルスカベンジャーが30%担持された炭素ナノ繊維を得た。
【0122】
【0123】
[比較例2]
【0124】
先行文献3(韓国公開特許10-2017-0127250)の多孔性炭素コーティング層を有するラジカルスカベンジャーを次のように製造した:ドーパミンをトリス-塩酸バッファ溶媒に添加して炭素前駆体コーティング用組成物を製造し、前記炭素前駆体コーティング用組成物にCeO2である過酸化物またはラジカルを分解できる触媒粒子を添加した。この時、前記炭素前駆体コーティング用組成物は、前記触媒粒子100重量部に対して前記炭素前駆体を0.3重量部で含む。前記触媒粒子が添加された前記炭素前駆体コーティング用組成物を25℃で、12時間250rpmで撹拌し、250℃及び窒素雰囲気において前記炭素前駆体を安定化、700℃及び窒素雰囲気において前記炭素前駆体を炭化させて前記触媒粒子表面に多孔性炭素コーティング層が形成されたラジカル分解触媒を製造した。
【0125】
【0126】
[比較例3]
【0127】
Furnaceを窒素雰囲気で300℃、2時間熱処理を行う段階を省略したことを除いては、実施例と同じ方法でラジカルスカベンジャー複合体を製造した。前記製造されたラジカルスカベンジャー複合体は、炭素ナノチューブの一側端部に閉じたキャップ構造が観察されず、一側端部に位置するラジカルスカベンジャー粒子の割合は5ないし35重量%程度であった。
【0128】
【0129】
[実験方法]
【0130】
[実験例1:膜電極アセンブリの化学的耐久性評価]
【0131】
前記比較例、実施例によって製造されたラジカルスカベンジャーを使用して膜電極アセンブリを製造した。3つの膜電極アセンブリを同一の条件と方式で製造したが、比較例2のラジカルスカベンジャーがバルク(bulk)して比較例1及び実施例を使用した膜電極アセンブリに比べて実質的に投入された量が多い。前記膜電極アセンブリに対して化学的耐久性を米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)の耐久性評価プロトコルに基づいて評価した。具体的には、膜電極アセンブリの化学的耐久性評価のためにOCV維持法(OCV hold method)を行いながら電圧維持率(Voltage retention)をそれぞれ測定し、その測定値を
図6に示した。
図6から比較例1の場合、500時間以後に電圧が急激に低下するに対して、本発明の実施例1のラジカルスカベンジャーを使用した場合は、800時間が超えても電圧を安定的に維持していることが確認できる。
【0132】
【0133】
[実験例2:膜電極アセンブリの性能評価]
【0134】
前記比較例、実施例によって製造されたラジカルスカベンジャーを使用して膜電極アセンブリを製造した後、前記膜電極アセンブリに対して65℃、50/50RH、常圧条件で性能評価を行った結果を
図7に示した。
図7から炭素ナノチューブ内部にラジカルスカベンジャーを含む実施例の場合、燃料電池駆動中にラジカルスカベンジャーが溶解して燃料電池触媒の活性を阻害する比較例1に対比してラジカルスカベンジャーの安定性増大による性能低下がなく、炭素ナノチューブの構造的特徴による伝導性増大及び触媒層安定性向上から比較例2に対比して向上した性能を示すことが確認できる。
【国際調査報告】