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特表2024-545615医療用クリップ、再成形工具、再成形機および医療用クリップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】医療用クリップ、再成形工具、再成形機および医療用クリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20241203BHJP
   B21J 7/14 20060101ALI20241203BHJP
   B21J 7/16 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61B17/122
B21J7/14
B21J7/16 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531673
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2022083502
(87)【国際公開番号】W WO2023094661
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021131279.5
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(72)【発明者】
【氏名】ベガー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ハップレ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ポップ,マイク
(72)【発明者】
【氏名】ラール,マイク
【テーマコード(参考)】
4C160
4E087
【Fターム(参考)】
4C160DD19
4C160MM33
4E087CA47
4E087HA93
(57)【要約】
協働する2つのクランプアームと、2つの端部を有するバイアス要素と、を備え、2つのクランプアームのそれぞれは、連結部分を介してバイアス要素の一方の端部に連結され、医療用クリップの基本位置において、2つのクランプアームは、互いに最大限に近接し、特に互いに当接しており、かつ、バイアス要素の作用に対抗して、基本位置から開放位置へと互いに離れるように移動可能であり、2つの連結部分は、第1の直径を有する第1の円形断面を画定し、バイアス要素は、第2の直径を有する第2の円形断面を画定し、第2の直径は、第1の直径よりも小さく、連結部分は、円錐形遷移領域が形成されるように、バイアス要素に向かって先細りになり、円錐形遷移領域は円錐角を画定する、医療用クリップ、特に動脈瘤クリップの形態である医療用クリップを改良するために、すなわち、特に高品質でコンパクトな医療用クリップを形成することができるように改良するために、円錐角が少なくとも10°の値を有することが提案される。さらに、改良された再成形工具、改良された再成形機、および、医療用クリップを製造するための改良された方法が提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用クリップ(10)、特に動脈瘤クリップ(12)の形態である医療用クリップ(10)であって、
協働する2つのクランプアーム(14、16)と、
2つの端部を有するバイアス要素(54)と、を備え、
2つの前記クランプアーム(14、16)のそれぞれは、連結部分(34、36)を介して前記バイアス要素(52)の一方の端部に連結され、
前記医療用クリップ(10)の基本位置において、2つの前記クランプアーム(14、16)は、互いに最大限に近接し、特に互いに当接しており、かつ、前記バイアス要素(52)の作用に対抗して、前記基本位置から開放位置へと互いに離れるように移動可能であり、
2つの前記連結部分(34、36)は、第1の直径(58)を有する第1の円形断面(64)を画定し、前記バイアス要素(52)は、第2の直径(60)を有する第2の円形断面を画定し、前記第2の直径(60)は、前記第1の直径(58)よりも小さく、
前記連結部分(34、36)は、円錐形遷移領域(44、46)が形成されるように、前記バイアス要素(52)に向かって先細りになり、前記円錐形遷移領域(44、46)は円錐角(62)を画定し、前記円錐角(62)は、少なくとも10°の値を有する、医療用クリップ。
【請求項2】
a)前記円錐角(62)は少なくとも15°、特に少なくとも20°の値を有する、および/または、
b)前記第1の円形断面(64)が第1の断面積を画定し、前記第2の円形断面が第2の断面積を画定し、前記第2の断面積と前記第1の断面積との比が最大0.7、特に最大0.5である、請求項1に記載の医療用クリップ。
【請求項3】
a)前記円錐形遷移領域(44)は、専ら再成形、特にロータリースウェージングによって製造されている、および/または、
b)前記バイアス要素(52)は、専ら再成形、特にロータリースウェージングによって製造されている、および/または、
c)前記円錐形遷移領域(44)は、研磨されていない、および/または、
d)前記バイアス要素(52)は、研磨されていない、および/または、
e)前記医療用クリップ(10)は、一体的に、特にモノリシックに構成されている、および/または、
f)前記バイアス要素(52)は、少なくとも1巻きの完全な巻線部を有するコイルばね(54)の形態に構成されている、請求項1または2に記載の医療用クリップ。
【請求項4】
前記クランプアーム(14、16)のクランプ面(22、24)は、クランプ面平面(26、28)を画定し、前記クランプ面平面(26、28)は、前記基本位置において互いに平行に方向づけられている、請求項1から3のいずれか1つに記載の医療用クリップ。
【請求項5】
特に医療用クリップ(10)を形成するための、ワイヤ状のブランク(56)を再成形するための、再成形工具(70)、特にスウェージング工具(78)であって、
前記再成形工具(70)は、長手方向(82)を画定するベース本体(80)を備え、
前記ベース本体(80)上には、前記長手方向(82)に対してインフィード角度(86)だけ傾斜して延在する少なくとも1つの成型要素(84)が形成されており、
少なくとも1つの前記成型要素(84)は、前記長手方向(82)を含む前記ベース本体(80)の中央面(88)に対して非対称な構成を有し、
特に、前記インフィード角度(86)は、少なくとも10°、特に少なくとも15°、さらに特に少なくとも20°の値を有する、再成形工具。
【請求項6】
前記ベース本体(80)上に形成された較正領域(90)を有し、
前記較正領域(90)は、前記長手方向(82)に平行に延在するか、または前記長手方向を画定し、
特に、前記較正領域(90)は、前記中央面(88)に対して非対称な構成を有する、請求項5に記載の再成形工具。
【請求項7】
前記成型要素(84)は、前記長手方向(82)に垂直な断面において、第1の端部(94)と第2の端部(96)とを有する湾曲した断面線(92)を画定し、
前記断面線(92)の曲率は、前記第1の端部(94)において最大値を有し、前記断面線(92)の曲率は、前記第2の端部(96)において最小値を有し、
特に、
a)前記断面線(92)の曲率は、前記第2の端部(96)でゼロである、および/または、
b)前記断面線(92)の曲率は、前記第1の端部(94)から前記第2の端部(96)に向かって連続的に減少する、請求項5または6に記載の再成形工具。
【請求項8】
前記断面線(92)の曲率は、前記第1の端部(94)から始まり、前記長手方向(82)に対して画定された鍛造角度領域(100)に亘って一定であり、
特に、前記鍛造角度領域(100)と前記第2の端部(96)との間の前記断面線(92)の曲率は、前記鍛造角度領域(100)における前記断面線(92)の曲率よりも小さい、請求項7に記載の再成形工具。
【請求項9】
前記鍛造角度領域(100)から始まる前記断面線(92)の曲率は、
a)特に連続的に、前記第2の端部(96)に向かって減少する、および/または、
b)前記第2の端部(96)まで一定であり、特に、前記断面線(92)の曲率は、前記鍛造角度領域(100)から前記第2の端部までゼロ(96)である、請求項8に記載の再成形工具。
【請求項10】
前記鍛造角度領域(100)が、前記長手方向(82)に対して、約5°~約90°の範囲、特に約10°~約50°の範囲の円周角(102)に亘って延在している、請求項8または9に記載の再成形工具。
【請求項11】
インフィード領域(112)の前記断面線(92)の前記第1の端部(94)における曲率は、前記較正領域(90)の方向に、特に連続的に、増加する、請求項7から10のいずれか1つに記載の再成形工具。
【請求項12】
再成形機(72)、特にロータリースウェージング機であって、請求項11から24のいずれか1つに記載の少なくとも1つの再成形工具(70)を備える、再成形機。
【請求項13】
医療用クリップ(10)、特に動脈瘤クリップ(12)の形態である医療用クリップ(10)を製造するための方法であって、
第1の円形断面(64)および第1の直径(58)を有するワイヤ状のブランク(56)を、特にロータリースウェージングによって、再成形することを包含し、
前記再成形することによって、第2の円形断面および第2の直径(60)を有する中間部分(68)が、前記ブランク(56)の未変形の2つの端部分(66)の間に形成され、
前記再成形することによって、少なくとも1つの円錐形遷移領域(44、46)が、前記未変形の前記端部分(66)と前記中間部分(68)との間に形成され、
少なくとも1つの前記円錐形遷移領域(44、46)は、少なくとも10°の円錐角(62)を有するように構成されている、方法。
【請求項14】
a)前記中間部分(68)が、少なくとも1巻きの完全な巻線部を形成し、バイアス要素(52)を形成するように巻かれ、および/または、
b)2つの前記端部分(66)のそれぞれの第1の部分を、クランプアーム(14、16)に再成形し、前記クランプアームは、2つの前記端部分(66)の自由端(18、20)から延在し、
特に、2つの前記端部分(66)のそれぞれの第2の部分を、連結部分(34、36)に形成し、前記連結部分(34、36)のそれぞれは、前記クランプアーム(14、16)を前記バイアス要素(52)の一方の端部(48、50)に接続し、前記医療用クリップ(10)の基本位置において、前記クランプアーム(14、16)が互いに最大限に近接し、特に互いに当接し、前記バイアス要素(52)の作用に対抗して前記基本位置から開放位置へと互いに離れるように移動可能である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ブランク(56)を、請求項5から11のいずれか1つに記載の少なくとも1つの再成形工具(70)で再成形して、前記中間部分(68)を形成し、
特に、前記中間部分(68)を形成するための再成形中、前記ブランク(56)と少なくとも1つの前記再成形工具(70)とを、これらが係合から外れているときに前記ブランクによって画定される長手方向(74)に関して互いに相対的に回転させる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ブランク(56)を、請求項25に記載の再成形機(72)で再成形して前記中間部分を形成する、請求項13から15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
a)少なくとも1つの前記円錐形遷移領域(44)を研磨することなく形成する、および/または、
b)少なくとも1つの前記円錐形遷移領域(44)を、専ら再成形によって、特に専らロータリースウェージングによって形成する、請求項13から16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
請求項1から4のいずれか1つに記載の医療用クリップ(10)を製造するための、請求項13から17のいずれか1つに記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、医療用クリップ、特に動脈瘤クリップの形態である医療用クリップに関する。医療用クリップは、協働する2つのクランプアームと、2つの端部を有するバイアス要素と、を備え、2つのクランプアームのそれぞれは、連結部分を介してバイアス要素の一方の端部に連結され、医療用クリップの基本位置において、2つのクランプアームは、互いに最大限に近接し、特に互いに当接しており、かつ、バイアス要素の作用に対抗して、基本位置から開放位置へと互いに離れるように移動可能であり、2つの連結部分は、第1の直径を有する第1の円形断面を画定し、バイアス要素は、第2の直径を有する第2の円形断面を画定し、第2の直径は、第1の直径よりも小さく、連結部分は、円錐形遷移領域が形成されるように、バイアス要素に向かって先細りになり、円錐形遷移領域は円錐角を画定する。
【0002】
本発明は、さらに、特に医療用クリップを形成するために、ワイヤ状(線状)ブランクを再成形するための再成形工具、特にスウェージング工具に関する。再成形工具は、長手方向を画定するベース本体を備え、ベース本体上には、長手方向に対してインフィード角度だけ傾斜して延在する少なくとも1つの成型要素が形成されている。
【0003】
本発明は、また、再成形機、特にロータリースウェージング機に関する。
【0004】
本発明は、さらに、医療用クリップ、特に動脈瘤クリップの形態である医療用クリップを製造するための方法に関する。この方法は、特にロータリースウェージングによって、第1の円形断面および第1の直径を有するワイヤ状のブランクを再成形することを包含し、上記再成形によって、第2の円形断面および第2の直径を有する中間部分が、ブランクの2つの未変形の端部分の間に形成され、上記再成形によって、少なくとも1つの円錐形遷移領域が、未変形の端部分と中間部分との間に形成される。
【0005】
冒頭で述べたタイプの医療用クリップは、特に、血管のような中空の器官の嚢を治療するための動脈瘤クリップの形態で使用される。このような医療用クリップのバイアス要素の弾性領域を大きくするために、医療用クリップのバイアス要素を形成する部分の構造を再成形(reshaping)により変更することが知られている。このような冷間硬化によって、医療用クリップが形成される金属材料の降伏強度を高めることができる。その結果、医療用クリップの開口幅を拡大することができる。再成形には、特に、ロータリースウェージング加工が使用される。
【0006】
公知のロータリースウェージング加工、およびそのために使用される再成形工具および再成形機は、例えば独国実用新案第20309632号明細書から知られている。このような再成形工具、特にスウェージング工具では、非常に小さな円錐角を有する遷移領域(transition region)しか形成できない。公知の再成形工具でプランジ(ピアシング)および/またはフィードロータリースウェージングを行うと、限られた変形率(すなわち第2の直径と第1の直径との比)しか得られない。さらに、円錐角の大きさは、動脈瘤クリップのサイズにも影響する。円錐角が大きいほど、バイアス要素と各連結部分との間の遷移領域が小さくなる。この遷移領域が短ければ短いほど、バイアス要素を、クランプアームに対してより近い位置に配置することができる。
【0007】
公知の再成形工具では、成型要素は、中空円筒面の断面を画定する輪郭を有するように構成されている。再成形工具のこのような構成によると、ロータリースウェージングの再成形の可能性が制限される。このため、特に、変形率(以下、縮小率ともいう)が予め決められる。変形率が大きいほど、品質低下が大きくなる。これは、冷間硬化のために再成形工具がブランクに押し込まれるときに、ブランクを形成する材料が、隣接する再成形工具の間の隙間に流れ込み、そこにバリが形成される可能性があるからである。特に医療用クリップの場合、遷移領域におけるバリの形成は、全く望ましいものではない。このようなバリを、例えば機械加工や平滑にするための研磨など、更なる加工工程で除去する必要が生じ得る。しかしながら、このような加工は、医療用クリップの品質および強度に影響を与える。
【0008】
したがって、本発明の目的は、特に高品質のコンパクトな医療用クリップを形成できるように、医療用クリップ、再成形工具、再成形機、および、医療用クリップを製造する方法を改良することである。
【0009】
本発明によると、上記目的は、上述したタイプの医療用クリップにおいて、円錐角が少なくとも10°の値を有することで達成され得る。
【0010】
従来の再成形工具では、このような円錐角を形成することができない。円錐角を少なくとも10°にすることで、従来技術から知られている円錐角(医療用クリップでは最大約7°)に比べて、遷移領域がほぼ50%減少する。これは、既知の再成形工具における成型要素が対称的な構成を有することに起因する。これにより、よりコンパクトな医療用クリップを形成することができる。
【0011】
円錐角が少なくとも15°の値を有すると有利である。特に、少なくとも20°の値を有してもよい。円錐角が大きいほど、連結部分とバイアス要素との間の遷移領域が短くなる。したがって、例えばコイルばねの形態のバイアス要素が、クランプアームにより近づくことができる。これは神経外科で使用される医療用クリップに特に有利である。
【0012】
第1の円形断面が第1の断面積を画定し、第2の円形断面が第2の断面積を画定し、第2の断面積と第1の断面積との比が最大0.7であれば好ましい。特に、上記比は最大0.5であってもよい。特定された比は、特にバイアス要素の特性を予め決定する。変形率dεが大きいほど、すなわち断面積の変化dA(すなわち再成形後の断面積Aと再成形前の断面積Aとの差)と断面積Aとの比dA/Aが大きいほど、降伏強度の増加が大きくなり、バイアス要素がより弾性的になる。既知の再成形工具を用いると、0.7を超える断面積比を有する医療用クリップしか再成形できない。これは、-0.3~0の範囲の変形率に相当する。
【0013】
好ましくは、円錐形遷移領域は、専ら再成形、特にロータリースウェージングによって形成される。これにより、医療用クリップの製造において、例えばロータリースウェージングにより、単一の作業工程で遷移領域を形成することができるという利点がある。バリを削り取る(研磨する)などの後処理は不要である。このことは、医療用クリップの幾何学的特性および微細構造特性に基づいて容易に検証することができる。特に、微細構造分析により、円錐形遷移領域が再成形のみによって形成されたのか、再成形後に平滑するための研磨や機械加工が行われて追加的に変化したのかを明確に判断することができる。
【0014】
バイアス要素は、専ら再成形、特にロータリースウェージングによって形成されていると有利である。このような医療用クリップは高品質である。また、バイアス要素を再成形のみで形成できるため、容易に製造され得る。この作業工程によって、医療用クリップを形成するブランクの断面を、バイアス要素の領域(ブランクの端部間の中間部分とも呼ばれる)で縮小する。この中間部分は、例えば、バネ状に巻かれてもよい。ただし、ここではロータリースウェージング加工を行わない。
【0015】
円錐形遷移領域は、研磨されていない方が有利である。このような医療用クリップは、遷移領域を研磨しなくても、遷移領域にバリを発生させることなく形成され得る。これは、特に、上記で特定したような円錐角で可能である。公知の医療用クリップでは、このような円錐角を、再成形のみで、特にロータリースウェージングだけで実現することができない。さらに、従来の再成形工具では、遷移領域におけるバリの形成を実質的に避けることができない。
【0016】
好ましくは、バイアス要素は研磨されていない。したがって、バイアス要素を、研削(研磨)やその他の機械加工によって材料の構造に悪影響を与えることなく、高品質に形成することができる。
【0017】
特に安定した医療用クリップが、例えば、一体的に、特にモノリシックに構成することで形成され得る。このような医療用クリップは、例えば、クランプアーム、連結部、およびバイアス要素を形成するために、ブランクの異なる部分を対応して再成形することにより、1つのブランクから形成され得る。
【0018】
クランプアームを規定された方法で基本位置から開放位置へ移動させ、バイアス要素によって開放位置から基本位置へ戻すために、バイアス要素は、少なくとも1巻き(1ターン)の完全な巻線部を有するコイルばねの形態で構成されていると有利である。バイアス要素は、特に、2つ、3つ、またはそれ以上の巻き数を有する完全な巻線部を有してもよい。特に、巻き数によって、バイアス要素のバネ定数を予め決定することができる。
【0019】
さらに好ましい実施形態によれば、クランプアームのクランプ面は、クランプ面平面を画定し、クランプ面平面は、基本位置において互いに平行に方向づけられるように構成され得る。クリップのこのような実施形態により、例えば、特にいわゆる動脈瘤として知られる、人体または動物体内の中空の器官の嚢にクリップを確実に配置することが可能になる。
【0020】
本発明によると、冒頭で述べた目的は、冒頭で述べたタイプの再成形工具において、少なくとも1つの成型要素が、長手方向を含むベース本体の中央面に対して非対称な構成を有することによってさらに達成される。
【0021】
このように再成形工具を構成することで、特に中空円筒形状の場合、ロータリースウェージング中に被加工品にバリが形成されることを防止または実質的に防止することが可能になる。特に、非対称の構成によると、被加工品と再成形工具とが対応して回転するときに通常形成されるバリを、直接変形させることが可能になる。これは特に、少なくとも1つの成型要素がその再成形面の一部上のみに、公知の再成形工具の従来の成型要素のような輪郭を有し、その輪郭が、再成形される被加工品に対応する内径を有することによって達成される。しかし、再成形工具の非対称な設計により、成型要素の半径または形状が、再成形される被加工品に完全に適合(接触)しないように、成型要素の領域を設計することができる。この領域によって、再成形工具と加工される被加工品とを互いに相対的に回転させることで、ブランクが変形される際にバリが形成されないように材料を連続的に変形させることができる。このような再成形工具は、特にプランジおよび/またはロータリースウェージングに使用することができる。特に、被加工品の品質に影響を与えるバリやその他の負の変形を形成することなく、遷移領域で従来よりも大きな円錐角を実現することが可能になる。被加工品上の遷移領域における円錐角は、再成形工具のインフィード角によって予めに決定される。
【0022】
インフィード角度は、少なくとも10°の値を有すると有利である。特に、少なくとも15°の値を有してもよい。特に、少なくとも20°の値を有してもよい。このような再成形工具を用いると、上述した方法で(例えば、専らロータリースウェージングによって)、断面が縮小されたブランクの領域にバリを発生させることなく、また遷移領域にもバリを発生させることなく、被加工品を形成することができる。
【0023】
最小断面を有する被加工品を規定された方法で形成するためには、較正領域がベース本体に形成され、較正領域が長手方向に平行に延在しているか、または長手方向を画定していることが好ましい。
【0024】
すでに説明した理由により、較正領域が中央面に対して非対称であることが好ましい。これにより、被加工品を較正領域によって所望の最終形状にすることができる。
【0025】
さらに好ましい実施形態によれば、成型要素は、長手方向に垂直な断面において、第1の端部と第2の端部とを有する湾曲した断面線を画定し、断面線の曲率は、第1の端部において最大値を有し、断面線の曲率は、第2の端部において最小値を有する。このような成型要素の構成によると、特に、第1の端部の領域で所望の半径を有する形状に被加工品を変形させることが可能になる。曲率の最大値は、第1端部の領域における断面線の半径の最小値に対応する。このように、断面線が上述したように湾曲して延びることで、再成形工具と被加工品とが互いに異なる回転位置で連続して接するときに、再成形工具を被加工品に連続的に鍛造することができる。
【0026】
断面線の曲率が第2の端部でゼロであると好ましい。これは、断面線が、第2の端部の領域で直線状に延在することを意味する。これにより、特に、被加工品を変形させるために、成型要素の平坦な領域が得られる。
【0027】
断面線の曲率が第1の端部から第2の端部に向かって連続的に減少すると有利である。これにより、第1の端部の領域で最小半径を有し、第2の端部の領域で最大半径を有するインボリュートの形態の断面線を得ることができる。第1の端部の半径は、完成した被加工品の半径より小さくなることはない。
【0028】
さらに、断面線の曲率は、第1の端部から始まり、長手方向に対して画定された鍛造角度領域に亘って一定であると有利である。すでに述べたように、従来の成型工具に対応する成型要素の領域を得ることができる。ただし、従来の成型工具との違いは、曲率が、鍛造角度領域でのみ一定であり、鍛造角度領域から第2の端部に向かって変化することである。
【0029】
鍛造角度領域と第2の端部との間の切断線の曲率は、鍛造角度領域の切断の曲率よりも小さいと有利である。これにより、非対称の再成形要素を簡易な方法で形成することができる。
【0030】
断面線の曲率は、鍛造角度領域から第2端部に向かって減少すると好ましい。特に、断面線の曲率は連続的に減少してもよい。なお、断面線の曲率は1段階で減少してもよい。その場合、鍛造角度領域が、第1の半径を画定し、鍛造角度領域と断面線の第2の端部との間の領域が、第1の半径よりも大きい第2の半径を画定する、すなわち鍛造角度領域における最大曲率よりも小さい曲率を有する。
【0031】
再成形要素のいわゆる「ルーフ形状」を実現するためには、断面線の曲率が鍛造角度領域から第2の端部まで一定であると有利である。これにより、成型要素は、従来の再成形工具に対応する一部領域と、平坦な一部領域との組み合わせによって形成され得る。
【0032】
鍛造角度領域と第2端部との間に平坦領域を得るためには、切断線の曲率が鍛造角度領域から第2の端部までゼロであると有利である。
【0033】
さらに好ましい実施形態によれば、鍛造角度領域が、長手方向に対して約5°~約90°の範囲の円周角に亘って延在している構成が得られる。特に、円周角は、約10°~約50°の範囲であってもよい。このような鍛造角度領域によって、被加工品の最適な変形が可能になる。
【0034】
さらに、インフィード領域の断面線の第1端部における曲率が、較正領域の方向に、特に連続的に、増加すると好ましい。換言すれば、これは、較正領域に近いインフィード領域の断面線の第1端部における曲率が、較正領域からさらに離れた断面線の第1端部における曲率よりも大きいことを意味する。これにより、被加工品が再成形工具およびその成型要素との接触を繰り返すことによって、被加工品の断面が連続的に縮小され得る。
【0035】
本発明によると、冒頭に述べた目的は、上述した再成形工具を少なくとも1つ備える再成形機においてさらに達成される。
【0036】
特に、再成形機は、2個、3個、4個またはそれ以上の再成形工具を備えてもよい。これらの再成形工具は、特に、長手方向に移動可能に配置されている。従って、形状を変形させるために、被加工品に向かって移動させることができる。また、被加工品を解放するために、被加工物からわずかに離れるように移動させ、再成形工具および被加工物を長手方向に関して互いに相対的に回転させることができる。本発明による再成形機と公知の再成形機との違いは、特に再成形工具の設計、特にその非対称設計にある。
【0037】
本発明によると、冒頭に述べた目的は、冒頭で説明したタイプの方法において、少なくとも1つの円錐形遷移領域が少なくとも10°の円錐角を有するように構成されていることで達成される。既に冒頭で述べたように、遷移領域が短くなることで、バイアス要素をクランプアームのより近くに移動させることができ、その結果、医療用クリップのサイズを小さくできるという利点を有する。
【0038】
中間部分が、少なくとも1巻きの完全な巻線部を形成し、バイアス要素を形成するように巻かれると有利である。特に、中間部分の巻回は、クランプアームが所望の方法で変形された後にのみ行われ得る。
【0039】
2つの端部分のそれぞれの第1の部分をクランプアームに再成形し、クランプアームが2つの端部分の自由端から延在していると有利である。医療用クリップの製造において、特に、バイアス要素が巻かれる前に、すなわち、断面が縮小された中間部分が形成された後にブランクがまだ伸長しているときに、クランプアームが形成されると有利である。クランプアームは、特にプレス工具を用いて形成され得る。
【0040】
2つの端部分のそれぞれの第2の部分を連結部分に再成形し、連結部分のそれぞれは、クランプアームをバイアス要素の一方の端部に接続し、医療用クリップの基本位置において、クランプアームが互いに最大限に近接し、特に互いに当接し、バイアス要素の作用に対抗して基本位置から開放位置へと互いに離れるように移動可能であると、さらに有利である。連結部分のこのような構成により、特に医療用クリップを所望の方法で調整することが可能になる。特に、基本位置でバイアス要素によって及ぼされるバイアス力も設定され得る。バイアス力は、クランプアームおよびバイアス要素に対して連結部分を適宜変形させることにより、所望の方法で予め決定することができる。
【0041】
好ましくは、ブランクが、上述した再成形工具の少なくとも1つを使用して再成形されて、中間部分が形成される。これにより、特に、バリが形成されないように、中間部分および遷移領域を直接変形させることが可能になる。したがって、遷移領域および中間部分の再加工が不要になる。このことは、再成形工具の非対称設計によって簡便な方法で可能となる。このような再成形工具により、遷移領域において10°を超える円錐角を得ることができる。
【0042】
中間部分を形成するための再成形中、ブランクと少なくとも1つの再成形工具とを、これらが係合から外れているときにブランクによって画定される長手方向に関して互いに相対的に回転させると有利である。ロータリースウェージングで通常行われるように、再成形工具の開閉を繰り返すことによって、所望の方法でブランクを変形させることができる。
【0043】
上述したいずれかの再成形機を使用して再成形すれば、医療用クリップを簡便な方法で製造することができる。
【0044】
クリップの損傷を避けるため、少なくとも1つの円錐形遷移領域は、研磨されることなく形成されることが好ましい。従って、遷移領域はロータリースウェージングのみによって形成される。
【0045】
好ましくは、少なくとも1つの円錐遷移領域は、専ら再成形によって、特に専らロータリースウェージングによって形成される。これにより、さらなる加工工程を避けることができるので、医療用クリップの製造を簡素化するとともに、製造コストを最小限に抑えることができる。
【0046】
さらに、上述した医療用クリップのいずれか1つを製造するために、上述した方法のいずれか1つを使用することが提案される。
【0047】
以下の好ましい実施形態の説明において、図面と併せてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】医療用クリップの実施形態の概略斜視全体図。
図2】再成形工具がブランクに最初に押し込まれる前の再成形機の一部を、3つの再成形工具とブランクとともに示す概略図。
図3】再成形機の再成形工具が被加工物に接している状態の、図2と同様の再成形機の一部を、3つの再成形工具とブランクとともに示す概略図。
図4図3の線4-4に沿った断面図。
図5図3の線5-5に沿った断面図。
図6】再成形工具の実施形態の較正領域を通る概略断面図。
図7】再成形工具のさらなる実施形態の、図6と同様の概略断面図。
図8】再成形工具のさらなる実施形態の、図6と同様の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、医療用クリップの一例を模式的に示しており、参照番号10が付されている。これは、動脈瘤クリップ12の形態に構成されている。
【0050】
クリップ10は、協働する2本のクランプアーム14、16を備える。クランプアーム14、16は、自由な(free)遠位端18、20を有する。
【0051】
各クランプアーム14、16は、それぞれクランプ面22、24を有する。これらのクランプ面22、24は、互いに向かい合っている。図1に概略的に示す基本位置では、クランプアーム14、16は互いにできるだけ近接している。図1に示す実施形態では、クランプ面22、24は互いに接触している。
【0052】
クランプアーム14、16は、それぞれ、基本位置において互いに平行に配向されたクランプ面平面(clamping face planes)26、28を画定する。図1に示す実施形態では、クランプ面平面26、28は一致している。
【0053】
クランプアーム14、16の近位端30、32はそれぞれ、連結部分34、36によって互いに隣接している。図1に示す実施形態では、連結部分34、36は互いに貫通するように構成されている。このため、連結部分36はオス型連結要素38を有し、連結部分34のメス型連結要素40を通ってボックスロック(プッシュスルー)42を形成している。
【0054】
連結部分34、36は、バイアス要素(プレテンション要素)52の端部48、50に向かって先細りになっており、それぞれ円錐形遷移領域44、46を形成している。したがって、2つのクランプアーム14、16はそれぞれ、連結部分34、36を介して、バイアス要素52の端部48、50の対応する一方に連結される。
【0055】
バイアス要素52は、コイルばね54の形態に構成され、少なくとも1巻きの完全な巻線部を有する。図1に示す実施形態では、コイルばね54は約1.5巻きの巻線部を有する。
【0056】
クリップ10は、金属製のワイヤ状ブランク56から、一体的に、すなわちモノリシックに構成されている。クリップ10の製造について以下に詳細に説明する。
【0057】
連結部分34、36は、第1の直径58を有する第1の円形断面64を画定する。バイアス要素52は、第2の直径60を有する第2の円形断面を有する。第2の直径60は、第1の直径58よりも小さい。
【0058】
円錐形遷移領域44、46は、少なくとも10°の値を有する円錐角62を画定する。図示しない実施形態では、円錐角62は、少なくとも15°または少なくとも20°である。
【0059】
第1の直径58を画定する第1の円形断面64は、その円形の形状により第1の断面積を画定する。従って、第2の直径60によって画定される第2の円形断面は、第2の断面積を画定する。図1に概略的に示すクリップ10では、第2の断面積と第1の断面積との比は最大でも0.7である。図示しないさらなる実施形態では、第2の断面積と第1の断面積との比は最大でも0.5である。
【0060】
クリップ10の円錐形遷移領域44は、専ら再成形(reshape)、特に専らロータリースウェージング(rotary swaging)によって形成される。バイアス要素52も、専ら再成形、特に専らロータリースウェージングによって形成される。
【0061】
円錐形遷移領域44およびバイアス要素52は、どちらも研磨されていない。
【0062】
医療用クリップ10の製造方法を以下に説明する。
【0063】
医療用クリップ10は、ブランク56から成再形、すなわちロータリースウェージングによって形成される。これには、公知のプランジ加工(ピアス加工)およびインフィードロータリースウェージング加工を使用することができる。
【0064】
ブランク56は、ワイヤ状(線状)、すなわち細長いワイヤ片の形状を有し、第1の直径58を有する第1の円形断面64を画定する。ブランク56を再成形することにより、2つの変形していない端部分66と、端部分66の間に延在する中間部分68とが形成される。中間部分68は、第2の直径60を有する第2の断面を画定する。
【0065】
円錐形遷移領域44は、ロータリースウェージング加工によって、変形していない端部分66と中間部分68との間に形成される。円錐形遷移領域によって画定される円錐角62は、少なくとも10°である。
【0066】
ロータリースウェージング加工によって中間部分68を形成した後、各端部分66の一部がクランプアーム14、16の一方に、すなわちクランプアーム14、16が2つの端部分66の自由端から延在するように、再成形される。したがって、自由端18、20は、2つの端部分66の自由端である。
【0067】
次の工程では、中間部分68は、少なくとも1つの完全な巻線部を形成するように巻かれて、バイアス要素52が形成される。すなわち、コイルばね54が形成される。
【0068】
次の工程では、2つの端部分66のうちクランプアーム14、16に再成形されなかった部分が、対応する一方の連結部分34、36に再成形される。各連結部分34、36は、クランプアーム14、16の一方をバイアス要素52の端部48、50の一方に接続し、クリップ10の基本位置において、クランプアーム14、16が互いに最大限に接近し、バイアス要素52の作用に対抗して基本位置から開放位置へと互いに離れるように移動可能に形成される。本工程では、この後、図示された実施形態において図1に一例として示されたボックスロック42も形成することができる。
【0069】
クリップ10の製造において、中間部分68を形成するために、ブランク56は、1つまたは複数の再成形工具70を用いて再成形されるか、または図2から図5に概略的に示されている再成形機72を用いて、再成形機72が備える3つの再成形工具70を用いて再成形される。代替の実施形態において、再成形機72は、2つ、4つまたは5つの、特に同一の再成形工具70を備えてもよい。
【0070】
クリップ10の製造において、円錐形遷移領域44は研磨されていない構成を有する。これは、ロータリースウェージング加工による再成形後に、研磨やその他の再加工が行われないことを意味する。研磨やその他の再加工は、先行技術から知られている再成形工具とは異なり、以下でさらに詳細に説明する再成形工具70を使用する場合にも必要ではない。従って、円錐形遷移領域44および中間部分68の両方を、専ら再成形によって、すなわち専らロータリースウェージングによって形成することができる。
【0071】
再成形工具70がブランク56に押し込まれる際に、隣接する再成形工具70間の領域でバリの形成を回避するために、中間部分68を形成するための再成形中、再成形工具70は、それらが係合していない(すなわち互いに接触していない)ときに、ブランク56によって画定される長手方向74に関してブランク56に対して相対的に回転させられる。ブランク56が固定されていると仮定した場合の回転方向は、図2および図5に矢印76で概略的に示されている。
【0072】
ブランク56は生体適合性のある金属、例えば器具鋼やチタンで作られている。
【0073】
上述した方法で円錐形遷移領域44、46を形成するために、スウェージング工具78の形態をした再成形工具70が使用される。スウェージング工具を使用することにより最初の工程で説明したようにワイヤ状のブランク56を再成形することができ、その後の工程で、既に加工された被加工品を用いて医療用クリップ10を形成することができる。
【0074】
図2図5は、再成形工具70の第1の実施形態を概略的に示している。再成形工具70は、長手方向74と平行に延びるか、または長手方向74と一致する長手方向82を画定するベース本体80を備える。
【0075】
図2図5の再成形工具70の場合、ベース本体80には、長手方向82に対してインフィード角度86だけ傾斜した2つの成型要素84が形成されている。
【0076】
先行技術から知られている再成形工具の成型要素と比較して、成型要素84の特別な特徴は、長手方向82を含むベース本体80の中央面88に対して非対称な構成を有することである。正確な形状については、以下でさらに詳細に説明する。
【0077】
図2図5に示す実施形態では、インフィード角度86は少なくとも10°である。他の実施形態では、少なくとも15°、あるいは少なくとも20°であってもよい。
【0078】
さらに、ベース本体80上には較正領域90が形成されている。較正領域は、長手方向82に平行に延びるか、または長手方向82を画定する。較正領域90は、中央面88に対して非対称である。
【0079】
成型要素84は、特に、再成形工具70を特徴付ける役割を果たす。長手方向82に垂直な横断面において、成型要素84は、境界線とも呼ばれる湾曲した断面線(section line)92を有する。断面線92は、図5に概略的に示されている。断面線92は、第1の端部94と第2の端部96とを有する。成型要素84は、ブランク56に向かう方向に凹状に湾曲している。従って、断面線92も凹状に湾曲している。
【0080】
断面線92の曲率は、第1の端部94において最大値を有する。これは、成型要素84の半径98が第1の端部94で最小値を有することを意味する。一方、断面線92の曲率は、第2の端部96において最小値を有する。したがって、第2の端部96の領域における半径は最大となる。
【0081】
図2図5の実施形態では、断面線92の曲率は第1の端部94から減少するが、完全に連続的ではない。むしろ、断面線92の曲率は、第1の端部94から始まり、長手方向82に対して相対的に画定された鍛造(osculation)角度領域100に亘って一定である。鍛造角度領域100は、長手方向82に対して、約5°~約90°の範囲にある円周角102に亘って延びている。図2図5の実施形態では、鍛造角度領域100の円周角102は約50°である。
【0082】
図2図5の再成形工具70の実施形態では、断面線92の曲率は、鍛造角度領域100から第2の端部96まで一定である。したがって、この部分における半径98は、鍛造角度領域100における半径98よりも大きい。
【0083】
鍛造角度領域100と第2の端部96との間の領域における半径98を、無限に大きくすることもできる。この場合、鍛造角度領域100と第2の端部との間の部分の曲率はゼロとなる。つまり、成型要素84の平坦部104がここに形成される。このような再成形工具70を図8に示す。
【0084】
図6は、図2図5の再成形工具70と基本構造において対応する再成形工具70を概略的に示す。ここで、鍛造角度領域100は、このように、中間部分68の第2の直径の半分に相当する半径98を有し、かつ、鍛造角度領域100と第2の端部96との間に延びる開口領域106を有する較正領域90内の中空円筒状壁面によって形成される。2つの半径98は異なっている。さらに、鍛造角度領域100と開口領域106とは、キンクすることなく一方から他方へと移行する。
【0085】
図7は、再成形工具70のさらなる実施形態を概略的に示す。ここで、断面線92の曲率は、第1の端部94から第2の端部96に向かって連続的に減少している。したがって、断面線92はインボリュートということができる。
【0086】
再成形工具70はさらに、インフィード領域112における断面線92の第1の端部94における曲率が較正領域90に向かって増大するように構成されている。換言すれば、これは、互いに離れる方向を向くベース本体80の端部108、110から始まる長手方向82に垂直な再成形工具70の断面において、それぞれの断面線92の第1の端部94における曲率が、較正領域90に向かう方向に増大することを意味する。インフィード領域112は、成型要素84がインフィード角度86を長手方向82で囲む領域である。再成形工具70の両側におけるインフィード領域112のこのような構成により、ワイヤ状のブランク56は、端部分66の間で再成形されて、上述した方法で中間部分を形成することができる。
【0087】
上述した再成形工具70の新規な設計により、従来技術から知られている欠点を回避することができる。そのような欠点の1つは、特に、断面が対称の成型要素(ダイスとも呼ばれる)が、再成形工具70の達成可能な半径方向の移動量と、設定可能なインフィード角度とを大幅に制限することである。
【0088】
成型要素84の非対称に設計された特別な輪郭は、長手方向82に垂直な断面線92が端部94、96の間で対称性を持たないので、中間部分および円錐形遷移領域44の両方でバリの形成を防止する。
【0089】
再成形工具70の構造では、ロータリースウェージング加工中のブランク56と再成形工具70との間の相対的な回転運動が考慮される。成型要素84の特別な形状のため、成型要素70は、ブランク56と再成形工具70との間の上述した回転運動によって、開口領域106に流れ込む材料の領域において、変形率が増加するにつれて、すなわち変形される材料の量が増加するにつれて、再成形工具70の工具縁部、すなわち断面線92の第2の端部96によって画定される工具縁部のブランク56への侵入が防止されるように開口している。例えば、成型要素84の輪郭が、片側が平坦であるか、または、定義されたより大きな半径を有する場合、高い適合性を有する一定の半径(すなわち1つの半径)を有する鍛造角度領域が用いられ、この一定の半径は、完成したロータリースウェージング被加工品の半径を決定する役割を果たす。
【0090】
提案された再成形工具70の非対称形状によると、先行技術と比較して、より大きな変形率およびより大きなインフィード角度86を得ることができる。さらに、成型要素84の非対称形状により、従来技術から知られている再成形工具によって引き起こされる翼または多角形の形成が防止されるので、1に近い値での鍛造が可能になる。これは、被加工品、特に中間部分68の半径と、鍛造角度領域100または第1の端部94近傍の断面線92の半径とが同一であることを意味する。
【0091】
非対称な再成形工具70を使用してロータリースウェージング加工された被加工品は、その幾何学的および微細構造的特性によって識別することができる。このようにして製造された被加工品は、従来技術から知られている限界を超えた変形率または縮小率およびインフィード角度を有する。
【0092】
上述した方法によると、ブランク56は、2つの端部分66およびその間に中間部分68を形成するために、第1の工程でロータリースウェージング加工され得る。提案された再成形工具70で形成された円錐形遷移領域44および中間部分68は、再加工する必要がなく、また、バリや多角形の形成のない高品質の表面を有する。
【符号の説明】
【0093】
10 医療用クリップ
12 動脈瘤クリップ
14 クランプアーム
16 クランプアーム
18 自由端
20 自由端
22 クランプ面
24 クランプ面
26 クランプ面平面
28 クランプ面平面
30 近位端
32 近位端
34 連結部分
36 連結部分
38 連結要素
40 連結要素
42 ボックスロック
44 円錐形遷移領域
46 円錐形遷移領域
48 端部
50 端部
52 バイアス要素
54 コイルばね
56 ブランク
58 第1の直径
60 第2の直径
62 円錐角
64 第1の断面
66 端部分
68 中間部分
70 再成形工具
72 再成形機
74 長手方向
76 角度
78 スウェージング工具
80 ベース本体
82 長手方向
84 成型要素
86 インフィード角度
88 中央面
90 較正領域
92 断面線
94 第1の端部
96 第2の端部
98 半径
100 鍛造角度領域
102 円周角
104 平坦部
106 開口領域
108 端部
110 端部
112 インフィード領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】