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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】多層焼結セラミック体及び作製方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/44 20060101AFI20241203BHJP
   C04B 35/443 20060101ALI20241203BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C04B35/44
C04B35/443
H01L21/302 101G
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024532250
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022082030
(87)【国際公開番号】W WO2023122597
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/293,329
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,スティーブン ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,ルーク
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004CA04
(57)【要約】
【解決手段】 多層焼結セラミック体であって、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層(100)であって、少なくとも1つの第1の層(100)が少なくとも1つの表面を有する、少なくとも1つの第1の層と、マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層(102)と、を含み、少なくとも1つの第1の層(100)の少なくとも1つの表面は、SEMによって測定して、0.1~5pmの最大サイズを有する細孔を含み、少なくとも1つの第1の層(100)及び少なくとも1つの第2の層(102)の各々は、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(GTE)を有する、多層焼結セラミック体が開示される。作製方法も開示される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層焼結セラミック体であって、
多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層であって、前記少なくとも1つの第1の層が、少なくとも1つの表面を有する、少なくとも1つの第1の層と、
マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層と、
を含み、
前記少なくとも1つの第1の層の前記少なくとも1つの表面は、SEMによって測定して、0.1~5μmの最大サイズを有する細孔を含み、
前記少なくとも1つの第1の層及び前記少なくとも1つの第2の層の各々は、25~1400℃の温度範囲にわたってASTM E228-17に従って測定して、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(CTE)を有し、各差を計算するために使用される前記少なくとも1つの第1の層及び前記少なくとも1つの第2の層の前記CTEは、各々同じ温度範囲にわたって測定され、前記少なくとも1つの第2の層は、0.1~1.0体積%のジルコニアを含む、多層焼結セラミック体。
【請求項2】
前記多層焼結セラミック体が、100mm~625mmの最大寸法を有する、請求項1に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項3】
前記細孔が、SEMによって測定して、0.1~2μmの最大サイズを有する、請求項1に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項4】
前記細孔が、SEMによって測定して、0.1~1μmの最大サイズを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の層が、0.5体積%のジルコニアを含む、請求項1に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項6】
多層焼結セラミック体の作製方法であって、
a.イットリア粉末とアルミナ粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製する工程と、
b.酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び酸化ジルコニウム粉末を組み合わせて第2の粉末混合物を作製する工程と、
c.前記第1の粉末混合物及び前記第2の粉末混合物を、熱を加えて前記粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、前記焼成温度を維持して焼成を行い、第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を形成することによって、焼成する工程と、
d.前記第1の焼成粉末混合物及び前記第2の焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、前記第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層及び前記第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、前記容積内に真空条件を作り出す工程と、
e.焼結温度まで加熱しながら前記第1の焼成粉末混合物及び前記第2の焼成粉末混合物の前記層に圧力を加え、焼結を行って、前記多層焼結セラミック体を形成する工程であって、焼結後の前記第1の焼成粉末混合物の前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、前記第2の焼成粉末混合物の前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成する、工程と、
f.前記多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、
を含み、
前記少なくとも1つの第1の層は多結晶YAGを含み、前記少なくとも1つの第1の層は少なくとも1つの表面を有し、少なくとも1つの第2の層はマグネシウムアルミネートスピネルを含み、前記少なくとも1つの第1の層の前記少なくとも1つの表面は細孔を含み、前記細孔はSEM及び画像処理方法を使用して測定して、0.1~5μmの最大サイズを有し、前記少なくとも1つの第1の層及び前記少なくとも1つの第2の層の各々は、25~1400℃の温度範囲にわたってASTM E228-17に従って測定して、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(CTE)を有し、各差を計算するために使用される前記少なくとも1つの第1の層及び第2の層の前記CTEは各々同じ温度範囲にわたって測定され、前記少なくとも1つの第2の層は、0.1~1.0体積%のジルコニアを含む、方法。
【請求項7】
g.必要に応じて、アニーリングを行うアニーリング温度に達するように熱を加えて前記多層焼結セラミック体の温度を上昇させることにより、前記多層焼結セラミック体をアニーリングする工程と、
h.前記アニーリングされた多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、
を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ツールセットが、容積、内壁、第1の開口部及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、前記ダイと動作可能に連結された第1のパンチ及び第2のパンチとを含み、前記第1のパンチ及び前記第2のパンチの各々が、前記ダイの前記内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記第1のパンチ及び前記第2のパンチの少なくとも一方が前記ダイの前記容積内で移動するとき、前記第1のパンチ及び前記第2のパンチの各々と前記ダイの前記内壁との間にギャップを形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ギャップが、前記ダイの前記内壁と前記第1のパンチ及び前記第2のパンチの各々の前記外壁との間の10~100μmの距離である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2の層が、0.5体積%のジルコニアから構成される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性多層焼結セラミック及びそれから形成された構成要素、セラミックの製造方法、並びに半導体プラズマ処理チャンバ内での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体処理は、プラズマ環境を作り出すために、高電界及び高磁界と組み合わせてハロゲン系ガスを使用することを必要とする。このプラズマ環境は、半導体基板上に材料をエッチング又は堆積するために真空チャンバ内で作られる。これらの真空チャンバは、ディスク又はウィンドウ、ライナ、インジェクタ、リング、及びシリンダなどの構成要素を含む。半導体プラズマ処理中、基板は、典型的には、例えば米国特許第5,262,029号及び米国特許第5,838,529号に開示されているように、基板ホルダによって真空チャンバ内に支持される。プラズマ処理環境を作り出すためのプロセスガスは、様々なガス供給システムによってチャンバに供給することができる。いくつかのプロセスは、高周波(RF)場の使用を伴い、プロセスガスは処理チャンバに導入され、一方、RF場はプロセスガスに印加されてプロセスガスのプラズマを生成する。これらの構成要素を形成するために使用されるセラミック材料は、特にRF用途では、1×10-3以下のオーダーの低い誘電正接を有することが必要とされる。これより高い誘電損失は、使用中に構成要素内に過熱及びホットスポットを引き起こし、プロセス変動及び歩留まり損失につながる。高純度の出発粉末から製造された構成要素及び初期純度を保持する製造プロセスの使用は、これらの低損失要件を満たす焼結セラミックを提供する。過酷なプラズマ処理環境では、チャンバ構成要素に耐腐食性及び耐浸食性の高い材料を使用する必要がある。これらの構成要素は、プラズマ環境における腐食及び浸食に対する耐性を提供する材料から形成されており、例えば、米国特許第5,798,016号、米国特許第5,911,852号、米国特許第6,123,791号、及び米国特許第6,352,611号に記載されている。更に、プラズマ処理チャンバは、処理されるウェハ上にプラズマを閉じ込めるディスク、リング、及びシリンダなどの部品を含むように設計されている。しかしながら、プラズマ処理チャンバ内で使用されるこれらの部品は、プラズマによって継続的に攻撃され、その結果、最終的には、腐食、浸食、又は夾雑物質及びポリマービルドアップを蓄積する。プラズマエッチング及び堆積条件は、プラズマに曝されるチャンバ部品の表面の浸食及び粗面化を引き起こす。この腐食は、構成要素表面からチャンバ内への粒子の放出を通じてウェハレベルの夾雑の一因となり、半導体デバイスの歩留まり損失をもたらす。
【0003】
これに対処するために、多くの場合、チャンバ構成要素は、プロセスガスに曝されたときの腐食及び浸食に対して耐性のある表面層を有する。表面層は、優れた機械的特性、電気的特性又は他の好ましい特性を有し得る基部又は基板の上に形成される。例えば、酸化イットリウム又はイットリウムアルミニウムガーネットの耐食性膜又は被覆が、ほとんどの耐食性材料よりも安価で強度が高いアルミナなどの異なる材料で形成された基部又は基板の上に堆積されることが知られている。そのような膜又は被覆は、いくつかの方法によって作製されてきた。蒸着法は、基板上に耐食性膜を堆積させるために使用されてきたが、蒸着は、内部膜応力のために比較的薄い層に限定され、多くの場合、小さな孔が薄膜に存在する。これらの内部膜応力は、不十分な層間接着を引き起こし、典型的には耐食性膜と基材との間の界面で層間剥離をもたらし、これらの層を亀裂及び剥離しやすくし、それによって望ましくない微粒子夾雑につながる。エアロゾル又はプラズマスプレー技術によって作製された耐食性被覆又は膜は、典型的には、3%~約50%の高レベルの多孔率、及びそれに対応して低い密度を示す。更に、エアロゾル又はスプレー法によって生成されたこれらの膜は、基板材料と耐食層との間の不十分な界面接着を示し、剥落及び剥脱並びにその後のチャンバ夾雑をもたらす。
【0004】
焼結基板上への膜堆積のための商業的に利用可能な方法は、膜厚を約0.45mm未満に制限する。そのような膜厚は、多くの場合、ベースとなる基板の不均一性に由来する孔を有し、孔の存在及び制限された膜厚により、膜表面層に亀裂が入りやすくなり、ベースとなる基板が処理中に腐食性のプロセスガス及び粒子生成に曝される。
【0005】
耐食性で高強度の焼結体及び/又は構成要素を形成するための他の手法は、プレキャスト膜を積層し、膜に圧力を加えて積層体を形成し、続いて積層体を共焼結することを含む。これらの方法は、典型的には、常圧焼結を使用し、焼結された積層体の平坦度は、それぞれの膜の焼結速度を厳密に一致させることに依存する。例えば、上部膜の焼結速度が下部層の焼結速度よりも大きい場合、焼結セラミック積層体は凹状の湾曲を有することになり、一方、下部膜の焼結速度が上部膜の焼結速度よりも大きい場合、焼結セラミック積層体は凸状の湾曲を有することになる(両方とも上部膜を上向きにして構成される)。焼結速度のばらつきは、焼結された積層体に残留応力を生じさせ、特に大きな寸法で、積層体の破損及び亀裂を起こりやすくする。したがって、共焼結のために選択される材料は、当業者に知られているように、時間、温度、及び持続時間の同じ又は非常に類似した焼結プロファイルを有するものに限定される。更に、これらの焼結された積層体は、多くの場合、層間の不十分な界面接着を示し、その結果、低密度と相まって、最上層のピーリング及びスポーリングが起こり、破損、層間剥離及び亀裂が生じやすくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体基板の寸法が増大するにつれて、大規模な半導体デバイスの製造を可能にするために、耐食性で高強度の焼結セラミック体、特に大きな寸法(100mm超、例えば100mm~625mmなど)の焼結セラミック体が必要とされている。
【0007】
その結果、当該技術分野では、プラズマ処理チャンバで使用するための、耐腐食性及び耐浸食性、層間の高い接着性、低い誘電正接、高い熱伝導率及び高い機械的強度の組み合わせ特性を有する多層焼結セラミック体が必要とされている。
【0008】
これら及び他の必要性を満たすために、その目的を考慮して、本開示は、多層焼結セラミック体、並びに改善された機械的特性、電気的特性及び熱的特性並びに取り扱い能力を有する大きな多層焼結セラミック体を調製するための方法の実施形態を提供する。
【0009】
本明細書において多層焼結セラミック体とも呼ばれる焼結セラミック体、及び作製方法が本明細書に記載される。これらのセラミック体は、塩素及びフッ素ベースのプロセスガスに対する高い耐食性、低い誘電損失正接(tanδ)、高い熱伝導率及び高い機械的強度を提供し、ひいてはハロゲン系プロセスガスを利用する半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素として使用するのに望ましい。セラミック体は、寸法100mm以上の大きなチャンバ構成要素として使用するのに特に適している。
【0010】
実施形態1.多層焼結セラミック体であって、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層であって、少なくとも1つの第1の層が、少なくとも1つの表面を有する、少なくとも1つの第1の層と、マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層と、を含み、少なくとも1つの第1の層の少なくとも1つの表面は、SEMによって測定して、0.1~5μmの最大サイズを有する細孔を含み、少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の各々は、25~1400℃の温度範囲にわたってASTM E228-17に従って測定して、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(CTE)を有し、各差を計算するために使用される少なくとも1つの第1の層及び第2の層のCTEは、各々同じ温度範囲にわたって測定され、少なくとも1つの第2の層は、0.1~1.0体積%のジルコニアを含む、多層焼結セラミック体。
【0011】
実施形態2.多層焼結セラミック体が、100mm~625mmの最大寸法を有する、実施形態1に記載の多層焼結セラミック体。
【0012】
実施形態3.細孔が、SEMによって測定して、0.1~2μmの最大サイズを有する、実施形態1又は2に記載の多層焼結セラミック体。
【0013】
実施形態4.細孔が、SEMによって測定して、0.1~1μmの最大サイズを有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0014】
実施形態5.細孔が、SEM及び画像処理方法を用いて測定して、約2~約600μm/mmの累積細孔分布によって特徴付けられる、実施形態1~4のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0015】
実施形態6.細孔分布が、SEMによって測定して、約2~約300μm/mmである、実施形態5に記載の多層焼結セラミック体。
【0016】
実施形態7.少なくとも1つの表面が、SEMによって測定して、少なくとも1つの表面の総面積の百分率による0.0005~1%の多孔率を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0017】
実施形態8.少なくとも1つの表面の総面積の百分率による多孔率が0.005~2%である、実施形態7に記載の多層焼結セラミック体。
【0018】
実施形態9.少なくとも1つの第1の層の相対密度及び少なくとも1つの第2の層の相対密度が99~100%である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0019】
実施形態10.相対密度が、多層焼結体の最大寸法にわたって5%以下で変動する、実施形態9に記載の多層焼結セラミック体。
【0020】
実施形態11.相対密度が、最大寸法にわたって3%以下で変動する、実施形態10に記載の多層焼結セラミック体。
【0021】
実施形態12.相対密度が、最大寸法にわたって1%以下で変動する、実施形態11に記載の多層焼結セラミック体。
【0022】
実施形態13.最大寸法が400~625mmである、実施形態10~12のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0023】
実施形態14.少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との間の熱膨張係数(CTE)の差が0~0.3×10-6/℃である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0024】
実施形態15.少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値が、周囲温度から約1700℃までの温度範囲全体にわたって維持される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0025】
実施形態16.少なくとも1つの第2の層が0.1~1.0体積%のジルコニアから構成される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0026】
実施形態17.少なくとも1つの第2の層が、0.5体積%のジルコニアを含む、実施形態1に記載の多層焼結セラミック体。
【0027】
実施形態18.少なくとも1つの第1の層が、XRD、SEM及び画像処理方法を用いて測定して、98~99.3体積%の量のYAGと、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、YAM及びYAP並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの結晶相を含む残部とを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0028】
実施形態19.少なくとも1つの第1の層が、ICPMSによって測定して、少なくとも1つの第1の層の質量に対して25ppm未満の総不純物含有量を有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0029】
実施形態20.少なくとも1つの第1の層がドーパントを含まない、実施形態1~19のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0030】
実施形態21.少なくとも1つの第1の層が焼結助剤を含まない、実施形態1~20のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0031】
実施形態22.少なくとも1つの第1の層が、ICPMSによって測定して、少なくとも1つの第1の層の質量に対して14~25ppmの量のシリカを含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0032】
実施形態23.少なくとも1つの第1の層が、ISO規格25178-2-2012に従って測定して0.0005~1umのSaを有する、実施形態1~22のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0033】
実施形態24.Saが、ISO規格25178-2-2012に従って測定して0.001~0.020umである、実施形態26に記載の多層焼結セラミック体。
【0034】
実施形態25.少なくとも1つの第1の層が、ISO規格25178-2-2012に従って測定して0.3~3umのSzを有する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0035】
実施形態26.少なくとも1つの第2の層が、ASTM B962-17に従って測定して3.47~3.58g/ccの密度を有する、実施形態1~25のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0036】
実施形態27.少なくとも1つの第2の層が、ICPMS法を用いて測定して、少なくとも1つの第2の層の質量に対して10~80ppmの総不純物含有量を有する、実施形態1~26のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0037】
実施形態28.少なくとも1つの第1の層及び第2の層によって画定される界面を有し、界面が平均界面線を有し、界面から平均界面線までの距離が、SEMによって測定して10~100umの量で変動する、実施形態1~27のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0038】
実施形態29.少なくとも1つの第1の層及び第2の層によって画定される界面が、SEMによって測定して1~3の屈曲度を有する、実施形態34に記載の多層焼結セラミック体。
【0039】
実施形態30.少なくとも1つの第1の層が厚さd1を有し、少なくとも1つの第2の層が厚さd2を有し、少なくとも1つの第2の層の厚さは、少なくとも1つの第1の層及び第2の層の合計厚さの80%~98%である、実施形態1~29のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0040】
実施形態31.少なくとも1つの第1の層が、少なくとも1つの第1の層のプラズマ対向面で測定して90未満のL*値を有する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0041】
実施形態32.多層焼結セラミック体の作製方法であって、a)イットリア粉末とアルミナ粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製する工程と、b)酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び酸化ジルコニウム粉末を組み合わせて第2の粉末混合物を作製する工程と、c)第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を、熱を加えて粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行い、第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物を形成することによって、焼成する工程と、d)第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出す工程と、e)焼結温度まで加熱しながら第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物の層に圧力を加え、焼結を行って多層焼結セラミック体を形成する工程であって、焼結後の第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成する、工程と、f)多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、を含み、少なくとも1つの第1の層は多結晶YAGを含み、少なくとも1つの第1の層は少なくとも1つの表面を有し、少なくとも1つの第2の層はマグネシウムアルミネートスピネルを含み、少なくとも1つの第1の層の少なくとも1つの表面は細孔を含み、細孔は、SEM及び画像処理方法を用いて測定して、0.1~5μmの最大サイズを有し、少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の各々は、25~1400℃の温度範囲にわたってASTM E228-17に従って測定して、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(CTE)を有し、各差を計算するために使用される少なくとも1つの第1の層及び第2の層のCTEは各々同じ温度範囲にわたって測定され、少なくとも1つの第2の層は、0.1~1.0体積%のジルコニアを含む、方法。
【0042】
実施形態33.g)必要に応じて、アニーリングを行うアニーリング温度に達するように熱を加えて多層焼結セラミック体の温度を上昇させることにより、多層焼結セラミック体をアニーリングする工程と、h)アニーリングされた多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、を更に含む、実施形態32に記載の方法。
【0043】
実施形態34.ツールセットが、容積、内壁、第1の開口部及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、ダイと動作可能に連結された第1のパンチ及び第2のパンチとを含み、第1のパンチ及び第2のパンチの各々が、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、第1のパンチ及び第2のパンチの少なくとも一方がダイの容積内で移動するとき、第1のパンチ及び第2のパンチの各々とダイの内壁との間にギャップを形成する、実施形態32又は33に記載の方法。
【0044】
実施形態35.ギャップが、ダイの内壁と第1のパンチ及び第2のパンチの各々の外壁との間の10~100μmの距離である、実施形態34に記載の方法。
【0045】
実施形態36.少なくとも1つの第2の層が0.5体積%のジルコニアから構成される、実施形態32~435のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
実施形態37.焼結温度が1000~1300℃である、実施形態32~36のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
実施形態38.焼結温度に加熱している間、5~59MPaの圧力を焼成粉末混合物に加える、実施形態32~37のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
実施形態39.圧力が5~40MPaである、実施形態38に記載の方法。
【0049】
実施形態40.圧力が5~20MPaである、実施形態39に記載の方法。
【0050】
実施形態41.第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物が、ICPMSによって測定して100ppm以下の合計総不純物含有量を有する、実施形態32~40のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
実施形態42.第2の焼成粉末混合物が、0.1~1.0体積%の重量基準量のジルコニアを含む、実施形態32~41のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態43.第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物が、X線回折によって決定して結晶性である、実施形態32~42のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態44.第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物の各々が、ASTM C1274に従って測定して、1m/g~約10m/gの比表面積(SSA)を有する、実施形態32~43のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態45.i)多層焼結セラミック体を機械加工して、プラズマ処理チャンバ内の誘電体ウィンドウ、RFウィンドウ、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバライナ、プラズマ源アダプタ、ガス入口アダプタ、ディフューザ、静電ウェハチャック(ESC)、チャック、パック、イオンサプレッサ要素、フェースプレート、アイソレータ、スペーサ、及び/又は保護リングの形状の多層焼結セラミック構成要素を形成する工程を更に含む、実施形態32~44のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態46.実施形態32~45のいずれか1つに記載のプロセスによって作製された、多層焼結セラミック体。
【0056】
実施形態47.100~約625mmの最大寸法を有する、実施形態46に記載の多層焼結セラミック体。
【0057】
実施形態48.400~約625mmの最大寸法を有する、実施形態47に記載の多層焼結セラミック体。
【0058】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本開示は、添付の図面に関連して読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は縮尺通りではないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小されている。図面には、以下の図が含まれる:
【0060】
図1図1において、a)は、多層焼結セラミック体の界面104の5000倍でのSEM顕微鏡写真を示し、b)は、本明細書に開示される実施形態による非線形界面104の屈曲度(T)の測定を示す。
図2図2は、本明細書に開示される実施形態による多層焼結セラミック体の例示的な概略図を示す。
図3図3は、酸化イットリウム/酸化アルミニウムの2成分相図を示す。
図4図4において、図8は、本明細書に開示される実施形態による、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のX線回折結果を示す。
図5図5において、a)は、後方散乱検出(BSD)法を用いた、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層の表面のSEM顕微鏡写真を示し、b)は、本明細書に開示される実施例2に対応する実施形態による、多孔性及びアルミナ相を明らかにするための閾値処理後の表面の同じ領域からのSEM画像を示す。
図6図6において、a)は、図6のYAGを含む少なくとも1つの第1の層の表面のトポグラフィSEM顕微鏡写真(トポグラフィ撮像方法を使用)を示し、b)は、本明細書に開示される実施例2に対応する実施形態による、多孔性及びアルミナ相を明らかにするための閾値処理後の表面の同じ領域からのトポグラフィSEM画像を示す。
図7図7は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を含む単一の多層焼結セラミック体の細孔面積対細孔径を示す。
図8図8は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を含む多層焼結セラミック体の累積細孔面積対細孔径を示す。
図9図9において、a)は、YAGを含む多層焼結セラミック体の少なくとも1つの層の表面のSEM顕微鏡写真を示し、b)は、図7及び図8の7枚の画像内の多孔性を含む表面積の合計%を示す。
図10図10において、a)は、多層焼結セラミック体98の概略図を示し、b)は、本明細書に開示される実施形態による非線形界面104を示す。
図11図11において、a)は、屈曲度(T)を示し、b)は、本明細書に開示される実施形態による非線形界面104を特徴付ける平均界面線(IL)を示す。
図12図12は、一実施形態による立方晶スピネル相を含む焼結体の例示的な層のXRDパターンである。
図13図13は、実施例4の5つの試料の研磨された表面を示す5000倍のSEM顕微鏡写真である。
図14図14は、実施例5によって作製されたマグネシウムアルミネートスピネルの層の倍率5000倍のSEM顕微鏡写真である。
図15図15は、実施例5によって作製されたYAGの層の倍率5000倍のSEM顕微鏡写真である。
図16図16は、200~1400℃の温度範囲にわたるYAGとスピネルとの間のCTEの差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の詳細な説明は、本開示が、半導体基板上へのデバイスの作製の一部として必要なエッチングチャンバ又は堆積チャンバなどの装置内で実施されると仮定する。しかしながら、本開示はそれに限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、及び材料であり得る。半導体ウェハ処理に加えて、本発明を利用することができる他のワークピースには、微細な特徴サイズの無機回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイスなどの様々な物品が含まれる。
【0062】
定義-本明細書で使用される場合、用語「アルミナ」は、酸化アルミニウム、Alであると理解され、「マグネシア」は、酸化マグネシウム、MgOであると理解される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「半導体ウェハ」、「ウェハ」、「基板」、及び「ウェハ基板」という用語は互換的に使用される。半導体デバイス産業で使用されるウェハ又は基板は、典型的には、200mm、又は300mm、又は450mmの直径を有する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック体」という用語は、「多層焼結セラミック体」、「耐食性焼結セラミック」、「耐食性体」、「焼結セラミック」、「多層単一体」及び類似の用語と同義であり、単一の高密度多層焼結セラミック体を形成する圧力及び熱を加えることによって2つ以上の粉末混合物を共圧縮することから形成される単一の一体型焼結セラミック物品を指す。単一の多層焼結セラミック体は、プラズマ処理用途におけるチャンバ構成要素として有用な単一の多層焼結セラミック構成要素に機械加工することができる。したがって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、予備成形された層を一緒に積層することによって形成されず、すなわち、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は積層体ではない。
【0065】
「単一の」又は「一体型」は、追加のピースなしで、それ自体で完全な単独のピース又は単独の単一の部品を意味し、すなわち、部品は、別の部品と共に1つのユニットとして形成された1つのモノリシックピースである。
【0066】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、近似を示す記述用語であり、「かなりの程度」又は「指定されたものの全体ではなく大部分」を意味し、指定されたパラメータに対する厳密な数値境界を回避することを意図している。
【0067】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック構成要素」又は「多層焼結セラミック構成要素」という用語は、セラミックを本明細書に開示される半導体処理チャンバで使用するための所望の構成要素の特定の形状に形成する機械加工工程後の焼結セラミック体、多層焼結セラミック体、又は耐食性セラミックを指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「粉末混合物」という用語は、焼結プロセスの前に一緒に混合された2つ以上の出発粉末を意味し、焼結工程の後にそれによって焼結セラミック体に形成される。本明細書に開示される焼成に供された粉末混合物は、本明細書において「焼成粉末混合物」と呼ばれる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「ナノ粉末」という用語は、約100nm以下の平均又はd50粒径を有する粉末を包含することを意図している。
【0070】
セラミックの熱処理に適用される場合の「アニーリング」という用語は、本明細書では、開示された焼結セラミック体に対して、応力を緩和し、及び/又は化学量論を正常化するために空気中で行われ得る熱処理を意味すると理解される。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ツールセット」という用語は、少なくとも1つのダイ及び少なくとも2つのパンチを含み得るものである。完全に組み立てられると、ツールセットは、開示されるように、焼成粉末混合物を配置するための容積を画定する。
【0072】
本明細書で使用される「固溶体」は、同じ結晶格子構造を共有する異なる元素の混合物として定義される。格子内の混合物は、一方の出発結晶の原子が他方の出発結晶の原子と置き換わる置換型であってもよいし、原子が格子内の通常空いている位置を占める侵入型であってもよい。
【0073】
本明細書で使用される場合、「ナノ粉末」という用語は、20m/g超の比表面積を有する粉末を包含することが意図される。
【0074】
本明細書で使用される「相」という用語は、特定の結晶構造を有する焼結セラミック体の別個の結晶領域、部分又は層を意味すると理解される。
【0075】
本明細書で使用される場合、「層」という用語は、材料の厚さ、典型的にはいくつかのうちの1つを意味すると理解される。材料は、例えば、セラミック粉末、又は焼結領域若しくは焼結部分とすることができる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「周囲温度」は、約22℃~25℃の温度範囲を指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「純度」という用語は、a)粉末混合物が形成され得る出発材料、b)処理後の粉末混合物(又は焼成粉末混合物)、及びc)本明細書に開示される焼結セラミック体又は構成要素中に様々な夾雑物質が存在しないことを指す。より高い純度(100%に近い)は、夾雑物質又は不純物を本質的に有しないか、又は非常に少量しか有しない材料であって、開示される出発粉末中に存在する材料組成物を実質的に含む、材料を表す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、意図された化合物自体(マグネシア、アルミナ、イットリア及びジルコニアの出発粉末、粉末混合物及びそれらから形成されたセラミック)以外の粉末又は焼結セラミック中に存在する化合物/夾雑物質を指す。不純物は、出発粉末、粉末混合物、処理後の粉末混合物、及び焼結セラミック体中に存在し得る。ICPMS法を用いて、本明細書に開示される粉末、粉末混合物、並びに焼結体の第1の層及び第2の層の不純物含有量を決定した。
【0079】
本明細書で使用される「ドーパント」という用語は、セラミック材料に所望の特性をもたらすために(例えば、電気的特性を変えるために)バルク材料に添加される物質である。典型的には、ドーパントは、使用される場合、低濃度、すなわち、>0.002重量%~<0.05重量%で存在する。
【0080】
不純物は、本明細書で定義されるドーパントが、例えば焼結セラミック体における結晶粒サイズの修正など、特定の電気的、機械的、光学的、又は他の特性を達成するために出発粉末又は粉末混合物に意図的に添加される化合物であるという点で、ドーパントとは異なる。本明細書で使用される「ドーパント」という用語は、酸化ジルコニウムの出発材料に含まれるHf及びYを、それらが焼結セラミック体中に残存し得る程度までは含まない。
【0081】
本明細書で使用される「焼結助剤」という用語は、焼結プロセス中に緻密化を高め、それによって多孔率を減少させる、シリカ(SiO)、リシア(LiO)、フッ化リチウム(LiF)、マグネシア(MgO)、及び/又はカルシア(CaO)などの化合物を指す。出発粉末中に存在し、焼結セラミック中に残る程度のHf及びYは、本明細書で定義される焼結助剤、不純物又はドーパントのいずれも構成しない。
【0082】
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「ほぼ」、及び「約」という用語は、数と関連して使用されるためプラス又はマイナス10%の分散が許容される。
【0083】
本明細書で使用される場合、「熱膨張係数(CTE)」という用語は、ASTM E228-17に従って、25~200℃~25~1400℃、好ましくは25~1200℃、より好ましくは25~1000℃、より好ましくは25~800℃、より好ましくは25~600℃、より好ましくは25~400℃、より好ましくは25~200℃の温度範囲にわたって測定される。CTEは、物体のサイズが温度の変化と共にどのように変化するかを記述する。具体的には、一定の圧力での温度変化度当たりのサイズ変化率を測定する。ある温度での係数を決定するために、材料の体積は基準温度で測定され、材料の体積は、CTEを決定したい温度で測定される。その後、体積及び温度の差に基づいて、わずかな変化が決定される。
【0084】
本開示の全てのCTE値は、ASTM E228-17に従って作成された。特に、使用した基準温度は、周囲温度、特に25℃であった。したがって、所与の温度(すなわち、200℃)でのCTEが開示される場合、CTEは、当該温度での体積(又は等方性材料の線膨張)を周囲温度、特に25℃での体積(又は等方性材料の線膨張)と比較することによって決定されている。CTEに関して矛盾するいずれの場合でも、ASTM E228-17が常に支配的な開示である。開示された実施例において、CTEは、垂直膨張計、特にLinseis Messgeraete GmbH(Selb,Germany)から入手可能なL75モデルを使用して測定された。
【0085】
半導体デバイスの処理中、耐腐食性チャンバ構成要素は、エッチング及び/又は堆積プラズマ処理チャンバ内で使用され、チャンバ内への粒子の放出を引き起こす過酷な腐食環境に曝され、その結果、ウェハレベルの夾雑による歩留まり損失をもたらす。本明細書に開示される多層焼結セラミック体及びそれから製造される関連構成要素は、以下に説明される特定の材料特性及び特徴によって、半導体処理チャンバ内で使用するための改善されたプラズマ耐性及び強化された機械的強度を提供する。
【0086】
耐腐食性セラミック、特に半導体反応器チャンバで使用するための2つ以上の層を有する多層焼結セラミック体、及びその作製が本明細書に記載される。半導体エッチング及び堆積反応器は、処理に必要な酸素及びハロゲン含有プラズマによる腐食及び浸食に対して高い耐性を有する表面を有する反応器構成要素を必要とする。加えて、チャンバ構成要素は、特に大きな構成要素において、取り扱い性及び使用のために十分な機械的強度を有していなければならない。本明細書で開示される多層焼結セラミック体は、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層を含み、少なくとも1つの第1の層は少なくとも1つの表面を有し、少なくとも1つの第2の層は、マグネシウムアルミネートスピネル(MgAl)を含み、少なくとも1つの第1の層の少なくとも1つの表面は、SEMによって測定して、0.1~5umの最大サイズを有する細孔を含み、少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の各々は、ASTM E228-17に従って測定して、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(CTE)を有する。YAG材料は優れた耐食性及び耐浸食性を有し、マグネシウムアルミネートスピネルは優れた熱特性及び誘電特性を有し、容易に機械加工可能である。この材料の使用は、例えば、ハロゲン系プラズマエッチング及び堆積条件に供されたときに、他の材料よりも改善されたプラズマ耐性を提供する表面を有する半導体プラズマ処理チャンバ構成要素をもたらす。
【0087】
本明細書に開示される焼結セラミック体は、大きい寸法を有する少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層を含み得る。少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の最大伸長部は、122mm、222mm、322mm、及び522mmを含む、約100mm~約625mmの範囲であってもよい。少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の更なる最大伸長部は、100~約625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは200~約625mm、好ましくは300~約625mm、好ましくは400~約625mm、好ましくは500~約625mm、好ましくは300~622mm、好ましくは400~622mm、好ましくは500~622mmで変化し得る。
【0088】
少なくとも1つの第1の層及び第2の層は、0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0~0.4×10-6、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.06×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6好ましくは0~0.01×10-6/℃の量のCTEの差の絶対値を有する。
【0089】
少なくとも第1の層及び第2の層のCTEは、ASTM E228-17に従って、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって測定される。
【0090】
上記の各差を計算するために使用される少なくとも1つの第1の層及び第2の層のCTEは、各々同じ温度範囲にわたって測定される。少なくとも1つの第1の層及び第2の層のCTEの差は、同じ温度範囲にわたって測定される。
【0091】
本明細書に開示される焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層は、周囲温度~約1700℃の全温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、上述のCTEの絶対値が同じ又は実質的に同じであるそれぞれのCTEを有し得る。
【0092】
百分率に基づいて、少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との組み合わせは、(少なくとも1つの第1の層に対して測定して)少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の4%以下、好ましくは3.5%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2.5%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下の百分率で互いに一致するCTE値(本明細書に開示された温度範囲にわたって)を有し得る。
【0093】
本明細書に開示される焼結セラミック体は、少なくとも1つの第1の層と第2の層との間に界面層又は界面を含む。界面層は、通常、少なくとも1つの第1の層と第2の層との間で通常蛇行するように、屈曲度及び非線形界面を有する。本明細書に開示される計算を使用する屈曲度は、1.2~2.2、特に1.4~2.0であり得る。屈曲度を決定するための測定は、以下で後述され、界面層の直線距離に対する界面長さの増加に基づく。したがって、本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層によって画定される界面を有する多層焼結セラミック体であって、界面長さが20~70%、好ましくは20~60%、好ましくは20~40%、好ましくは30~80%、好ましくは40~80%、好ましくは50~70%増加している多層焼結セラミック体である。
【0094】
それに対応して、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、界面層に沿った多層焼結セラミック体の最大寸法に界面面積が見合った界面で互いに接触してもよい。
【0095】
少なくとも1.2の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、少なくとも113cm、好ましくは少なくとも452cm、好ましくは少なくとも1,018cm、好ましくは少なくとも1,810cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0096】
少なくとも1.4の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、少なくとも153cm、好ましくは少なくとも616cm、好ましくは少なくとも1,386cm、好ましくは少なくとも2,464cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0097】
最大2.2の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、最大15,085cm、好ましくは最大14,850cm、好ましくは最大14,128cm、好ましくは最大9,802cm、好ましくは最大6,083cm、好ましくは最大3,421cm、好ましくは最大1,520cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0098】
最大2.0の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、最大12,468cm、好ましくは最大12,272cm、好ましくは最大11,676cm、好ましくは最大7,852cm、好ましくは最大5,028cm、好ましくは最大2,828cm、好ましくは最大1,256cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0099】
少なくとも1.2の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、113~約4,488cm、好ましくは113~約4,418cm、好ましくは113~4,204cm、好ましくは113~2,827cm、好ましくは113~1,918cm、好ましくは113~1,018cm、好ましくは113~452cm、好ましくは452~約4,488cm、好ましくは452~約4,418cm、好ましくは452~4,203cm、好ましくは452~2,827cm、好ましくは452~1,810cm、好ましくは1,018~約4,418cm、好ましくは1,810~4,376cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0100】
少なくとも1.4の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、153~約6,110cm、好ましくは153~約6,013cm、好ましくは153~5,722cm、好ましくは153~3,847cm、好ましくは153~2,464cm、好ましくは153~1,386cm、好ましくは153~616cm、好ましくは616~約6,110cm、好ましくは616~約6,013cm、好ましくは616~5,722cm、好ましくは616~3,847cm、好ましくは616~2,464cm、好ましくは1,386~約6,013cm、好ましくは2,464~5,957cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0101】
上記の最大2.2の屈曲性を考慮する最大寸法が100~約625mmの単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、378~約15,085cm、好ましくは378~約14,850cm、好ましくは378~14,128cm、好ましくは378~9,502cm、好ましくは378~6,083cm、好ましくは378~3,421cm、好ましくは378~1,520cm、好ましくは1,520~約15,085cm、好ましくは1,520~約14,850cm、好ましくは1,520~14,128cm、好ましくは1,520~9,502cm、好ましくは1,1520~6,083cm、好ましくは3,421~約14,850cm、好ましくは6,083~14,710cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0102】
最大2.0の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、312~約12,468cm、好ましくは312~約12,272cm、好ましくは312~11,676cm、好ましくは312~7,852cm、好ましくは312~5,028cm、好ましくは312~2,828cm、好ましくは312~1,256cm、好ましくは1,256~約12,468cm、好ましくは1,256~約12,272cm、好ましくは1,256~11,676cm、好ましくは1,256~7,652cm、好ましくは1,256~5,028cm、好ましくは2,828~約12,272cm、好ましくは5,028~7,294cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0103】
上記の界面層の幅dは、図1b)に示されており、以下で更に説明する。
【0104】
図1b)に示される界面層の幅dは、通常1~200μm、特に5~100μm、より具体的には10~50μm、更により具体的には20~30μmである。
【0105】
上記の界面層の幅dにわたる第1の層の体積は、5μm未満、特に3μm未満、特に1μm未満の最大サイズを有する細孔を有する。
【0106】
上記の界面層の幅にわたる第1の層の体積は、特に、5μm未満、特に3μm未満、特に1μm未満の最大サイズを有する細孔のみを有する。
【0107】
本明細書に開示される幅d内の少なくとも第1の層の体積は、体積の0.2%未満、より好ましくは0.15%未満、最も好ましくは0.1%未満が上記の細孔によって占められる構造を有する。
【0108】
上記の界面層の幅にわたる第2の層の体積は、5μm未満、特に3μm未満、特に1μm未満の最大サイズを有する細孔を有する。
【0109】
上記の界面層の幅にわたる第2の層の体積は、特に、5μm未満、特に3μm未満、特に1μm未満の最大サイズを有する細孔のみを有する。
【0110】
本明細書に開示される幅d内の少なくとも第2の層の体積は、体積の0.2%未満、より好ましくは0.15%未満、最も好ましくは0.1%未満が上記の細孔によって占められる構造を有する。
【0111】
本開示の少なくとも1つの第1の層は、少なくとも1つの第2の層と同じ範囲又は同じの非常に小さいサイズの細孔を示す。
【0112】
上記の少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の体積における細孔径は、1000倍及び5000倍の倍率でPhenom XL走査型電子顕微鏡から得られたSEM画像を使用することによって、試料全体にわたって測定される。画像を解析のためにImageJソフトウェアにインポートした。ImageJは、米国の国立衛生研究所(National Institute of Health、NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。結晶粒サイズを測定するための半自動及び自動画像分析法の使用は、ASTM規格E1382に記載されている。53.7μm×53.7μmの寸法を有する画像を分析して、言及した体積にわたって存在する細孔径を決定した。
【0113】
少なくとも1つの第1の層は、好ましくは、最大寸法にわたって、5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下の密度の変動で、98.5%以上又は99.5%以上の平均密度を有し、それによって、最大寸法は、例えば、約625mm以下、622mm以下、610mm以下、好ましくは575mm以下、好ましくは525mm以下、好ましくは100~625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは200~625mm、好ましくは200~510mm、好ましくは400~625mm、好ましくは500~625mmであり得る。少なくとも1つの第1の層のこの密度は、上記の界面層の幅dにおいても実現され得る。
【0114】
本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層は、好ましくは、例えば98~100%、99~100%、更に99.5~100%の相対密度を有する。「相対密度」という用語は、測定された密度と理論密度との間のパーセント差を指す。
【0115】
少なくとも1つの第1の層は、好ましくは、SEM画像から、並びに本明細書に開示されるImageJソフトウェア及び方法を用いて測定して、0.0005~2%、好ましくは0.0005~1%、好ましくは0.0005~0.5%、好ましくは0.0005~0.05%、好ましくは0.0005~0.03%、好ましくは0.0005~0.005%、好ましくは0.0005~0.003%、好ましくは0.0005~0.001%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.5~2%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.005~1%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.05~1%、好ましくは0.5~2%の量の総面積のパーセントでの多孔率を有する。
【0116】
少なくとも1つの第2の層は、好ましくは、焼結セラミック体において0.1~2%、好ましくは0.1~1.5%、好ましくは0.1~1%、好ましくは0.1~0.5%の量の体積多孔率を有する。
【0117】
少なくとも1つの第1の層及び第2の層の上記の密度及び多孔率は、特に、上記の幅dにおいて界面層を取り囲むそれらの体積において実現される。
【0118】
少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との間のCTE差の特徴と、上記の幅dにおいて界面層を取り囲む少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の高密度の特徴との組み合わせは、最上層のピーリング及びスポーリングに対する形成された単一の安定性に有益な効果を提供する。
【0119】
少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との間のCTE差の特徴と、上記の幅dにおいて界面層を取り囲む少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の高密度の特徴との組み合わせは、破損、層間剥離、及び亀裂を回避する有益な効果を提供する。
【0120】
とはいえ、CTE差の特徴及び体積における最大細孔径は、少なくとも第1の層と少なくとも第2の層との間の向上した接着を提供することが予想される。
【0121】
図2の実施形態を参照すると、開示されているのは、ハロゲン系プラズマ及びイオン衝撃の腐食及び浸食作用に対する耐性、小さな細孔サイズでの制御された多孔性分布、高純度、高密度、及び低い表面粗さを提供するプラズマ対向面106を有する少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体98である。好ましくは、少なくとも1つの第1の層100は、少なくとも1つの第2の層102の熱膨張係数(CTE)と同じ又は実質的に同じCTEを有する。更に、本開示の多層焼結セラミック体98は、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102によって画定される非線形界面104を含み、それによって、非線形界面は、層間の向上した接着を提供することができる。
【0122】
少なくとも1つの第2の層102は、マグネシウムアルミネートスピネル(MgAl)を含む。少なくとも1つの第2の層102は、高い機械的強度、強化された剛性、高い熱伝導率、低い誘電損失、及び少なくとも1つの第1の層100の熱膨張係数(CTE)と同じ又は実質的に同じCTEを示す。本明細書に開示される範囲内のCTE値を有する少なくとも1つの第1の層及び第2の層は、大きな寸法(122mm、222mm、322mm、及び522mmを含む、100mm~約625mm)の多層焼結構成要素の調製を提供する。更に、そのような耐食性多層焼結セラミックの調製方法及びプラズマ処理チャンバにおけるその使用が開示される。
【0123】
いくつかの実施形態(図2には示されていない)では、少なくとも1つの第1の層100の反対側に第3の層が存在してもよく、それは、本明細書に開示されるようにCTEが層100及び102と厳密に一致する任意のセラミック材料を含んでもよい。一例として、存在する場合、第3の層は、YAG、アルミナ、及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含み得る。好ましくは、少なくとも1つの第1の層、第2の層及び第3の層のいずれかの間のCTE係数の差の絶対値は、ASTM E228-17に従って測定して、0~0.75×10-6/℃である。
【0124】
一実施形態では、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層を含む多層焼結セラミック体が本明細書に開示され、少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、0~0.6×10-6/℃(ASTM E228-17に従って測定)であり、少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層は、単一の多層焼結セラミック体を形成する。
【0125】
一実施形態によれば、多層単一焼結セラミック体は、0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0~0.4×10-6/℃、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.06×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6/℃、好ましくは0~0.01×10-6/℃の量のCTEの差の絶対値を有する少なくとも1つの第1の層及び第2の層から形成され得る。少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間のCTEがこれらの範囲内で変化する場合、より具体的には、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間のCTEが、ASTM E228-171に準拠して測定される25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって変化する場合、本明細書に開示される圧力支援方法を使用して、層間の高い強度及び高い接着性を有する単一の多層焼結セラミック体、特に大きい(>100mm~約625mm)寸法のものが形成され得る。本明細書に開示される少なくとも1つの第1の層及び第2の層を含むセラミック材料の等方性特性により、本明細書で使用される熱膨張係数(CTE)は、線形又は体積CTEのいずれかを互換的に指すことができる。少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間のCTEの差は、層間の界面応力を低減するために最小化されることが好ましい。少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間のCTEの差が、本明細書に開示されるものよりも大きいと、破壊及び/又は亀裂につながる可能性がある。
【0126】
図2を更に参照すると、多層焼結セラミック体98は、厚さd1を有する少なくとも1つの第1の層100を含み、102は、厚さd2を有する少なくとも1つの第2の層102を示す。好ましい実施形態では、d2は、厚さ(d1+d2)の約75%~98%を構成してもよい。CTE不一致から生じる応力は、多層焼結セラミック体の機械的強度及び完全性に影響を与える可能性がある。したがって、焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間のCTEの絶対値の差が大きすぎる場合、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの層は、本明細書に開示される方法の工程を行った際に亀裂及び/又は破損し得る。このCTEの差は、全てのプロセス温度にわたって、特に、焼結中、アニーリング中、特に冷却時に経験されるような高温で重要であり、CTEの差は、焼結体の層間の冷却中に著しい界面応力をもたらし得る。結果として、高い機械的強度、層間の高い接着強度、及び十分な取り扱い性(亀裂又は破損がない)を有する多層単一の焼結セラミック体を形成するために、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間のCTE差は、開示された範囲内であることが好ましく、更に可能な限り厳密に一致することが好ましい。好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1の層及び第2の層は、開示される方法に従って、周囲温度(又は図に開示されるように約200℃)~約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって、CTEの絶対値が同じ又は実質的に同じであるそれぞれのCTEを有し得る。本明細書で使用される「CTE一致」という用語は、開示される好ましい範囲内(0~約0.6×10-6/℃)でCTEが異なる少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との組み合わせを指す。一実施形態では、少なくとも1つの第1の層100は多結晶YAGを含み、これにより少なくとも1つの第1の層100は少なくとも1つの第2の層102(マグネシウムアルミネートスピネルを含む)とCTEが一致して単一の多層焼結セラミック体を形成する。百分率に基づいて、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との組み合わせは、(少なくとも1つの第1の層100に対して測定して)少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102の4%以下、好ましくは3.5%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2.5%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下の百分率で互いに一致するCTE値(本明細書に開示された温度範囲にわたって)を有し得る。
【0127】
CTE一致に加えて、多層焼結セラミック体は、好ましくは、半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素として使用するために高い熱伝導率を有する。マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層102は、単一の多層焼結体の特性に大きな影響を与える。少なくとも1つの第2の層102の高い熱伝導率は、熱を効果的に分散させ、それによって使用中に少なくとも1つの第2の層内の局所的な過熱を回避するための重要な材料特性である。この局所的な過熱は、単一の多層焼結体の亀裂又は破壊をもたらし得る。
【0128】
更に、少なくとも1つの第2の層102内で、焼結助剤としてガラスを形成することが知られている化合物(マグネシア、シリカ、及びカルシアなど)を使用すると、結晶粒間に存在する低熱伝導率のガラス相が生じ、したがって熱伝導率に悪影響を及ぼす可能性がある。結果として、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、ICPMS法を用いて測定して、第2の層の質量に対して約2~100ppm、好ましくは約2~75ppm、好ましくは約2~50ppm、好ましくは約2~25ppm、好ましくは約2~20ppm、好ましくは約2~10ppm、好ましくは約8ppmの範囲のマグネシア及び/又はカルシアを含むことが好ましい。更なる実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、少なくとも1つの第2の層102の質量に対して、約14ppm~100ppm、好ましくは約14ppm~約75ppm、より好ましくは約14ppm~約50ppm、好ましくは約14ppm~約30ppm、好ましくは約14ppm(ICPMS法を用いて測定)の量のシリカを含んでもよい。開示された範囲内の焼結助剤を含む第2の層102は、ガラス相を含まない、又は実質的に含まない多層焼結セラミック体を提供することができ、多層焼結セラミック体において高い熱伝導率を提供する。
【0129】
熱伝導率は、ASTM E1461-1に従って行われた熱拡散率測定から計算した。実施形態では、約16体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102は、周囲温度で約25W/m-Kの熱伝導率、及び200℃で約14W/m-Kの熱伝導率を有すると計算された。少なくとも1つの第2の層がプラズマ処理チャンバ内のプラズマ対向層として使用される場合、少なくとも1つの第2の層102は、好ましくは、例えば、高い熱伝導率を必要とする本明細書に開示されるプラズマ処理チャンバ内の誘電体又はRFウィンドウ又は蓋及び他の構成要素として使用するのに十分な熱伝導率を提供するために、少なくとも1つの第2の層102の体積に対して約10~約25体積%の量のジルコニアを含む。しかしながら、少なくとも1つの第2の層がスピネルの支持層であり、プラズマに面するYAGの層を支持するためにプラズマ処理チャンバ内でプラズマに背を向ける場合、少なくとも1つの第2の層102は、好ましくは、少なくとも1つの第2の層102の体積に対して約0.1~約1%の体積量のジルコニアを含む。後述するように、これは、スピネルのCTEに実質的に影響を与えることなく、焼結中のスピネルの結晶粒成長を減少させるためである。プラズマ対向層としてYAGを使用する本明細書に記載される実施形態は、最小量のジルコニアを含むことができるが、YAGのCTEにわずかな効果しか及ぼさないほど少量である。したがって、スピネル及びYAGは、図16に示すように互いに近いCTEを有する。
【0130】
使用中の局所的なホットスポット及び過熱を更に防止するために、特にRF用途では、低い誘電損失が好ましい。誘電損失は、例えば、結晶粒サイズ並びに不純物、焼結助剤及び/又はドーパントの存在などの材料特性によって影響を及ぼされる可能性がある。少なくとも1つの第2の層102における、特にシリカなどの不純物及び/又は焼結助剤及び/又はドーパントの存在は、より高い誘電損失をもたらし得る。高純度/低不純物含有量の出発粉末及び純度を維持する方法の使用は、高い全純度及び対応して低い総不純物含有量の少なくとも1つの第2の層102をもたらす。したがって、実施形態では、開示される少なくとも1つの第2の層102は、ICPMS法を用いて測定して、少なくとも1つの第2の層の質量に対して5~200ppm、好ましくは5~150ppm、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10~100ppm、好ましくは10~80ppm、好ましくは10~60ppm、好ましくは10~40ppm、好ましくは20~80ppm、好ましくは30~60ppmの総不純物含有量を有し得る。実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、焼成粉末混合物の総質量に対して約14~100ppm、好ましくは約14~75ppm、好ましくは約14~50ppm、好ましくは約14~25ppm、好ましくは約14ppmの量のシリカを含む焼成粉末混合物から形成される。実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、マグネシア(MgO)を、ICPMS法を用いて測定して、少なくとも1つの第2の層102の質量に対して約2~100ppm、好ましくは約2~75ppm、好ましくは約2~50ppm、好ましくは約2~25ppm、好ましくは約2~20ppm、好ましくは約2~10ppm、好ましくは約8ppmの量で含み得る。
【0131】
本明細書に開示される量のカルシア、シリカ及びマグネシアを含む少なくとも1つの第2の層102の総不純物含有量は、表3に記載されるように、ASTM D150に従って測定して周囲温度で1MHzの周波数で0.7×10-4未満の誘電損失を有する少なくとも1つの第2の層102を提供する。実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、本明細書に開示されるドーパント及び/又は焼結助剤を含まないか、又は実質的に含まない。ドーパント、焼結助剤及び他の化合物のレベルに関して本明細書で使用される「含まない」という用語は、本明細書に開示されるICPMS法によって決定して約2ppm以下の量でそれらが存在することを示す。本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102は、チャンバ構成要素として、特に高周波RFプラズマ処理チャンバで使用するための構成要素として使用するのに適した低い誘電損失を提供する。
【0132】
半導体デバイスの製造のためのプラズマ処理チャンバは、ますます増大する直径を有する基板を収容するように設計されており、それに対応して大きな寸法のチャンバ構成要素を必要とする。本明細書に開示される多層焼結セラミック体から製造されるこれらのチャンバ構成要素は、例えば、100~約625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは200~約625mm、好ましくは300~約625mm、好ましくは400~約625mm、好ましくは500~約625mm、好ましくは300~622mm、好ましくは400~622mm、好ましくは500~622mmの最大寸法を有し得る。腐食及び浸食に対する耐性を提供する多くの材料は、焼結が困難であることが知られており、その結果、低密度となり、それに対応して焼結強度が低くなり、破損又は亀裂が生じ得る。これは、これらの耐食性材料からの大きなモノリシック固体本体構成要素の製造を困難にし、多くの場合、実行不可能にする。したがって、大きなチャンバ構成要素の製造を可能にするために、少なくとも1つの第2の層102を形成する高強度材料(本明細書に開示される耐食性材料と適合性がある)が必要とされている。少なくとも1つの第2の層102は、本明細書に開示される単一の多層耐食性焼結体に機械的強度及び剛性を提供する。少なくとも1つの第2の層102は、非常に高密度に焼結されてもよく、実施形態では、十分に高密度の物体に焼結されてもよく、これは、大きな寸法の多層焼結体の製造に必要な機械的強度及び剛性を提供し、多層焼結体は、例えば、100~約625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは200~約625mm、好ましくは300~約625mm、好ましくは400~約625mm、好ましくは500~約625mm、好ましくは300~622mm、好ましくは400~622mm、好ましくは500~622mmの最大寸法を有する。
【0133】
真空条件下での半導体反応器における使用中に、本明細書に開示される多層焼結セラミック体から製造された耐食性多層構成要素は、500mmを超える構成要素寸法にわたる曲げ応力を受ける可能性がある。高強度及び増大した剛性/ヤング率の特性は、本明細書に開示される構成要素として使用するための材料を大規模エッチング及び/又は堆積チャンバに適用するために必要であり得る。98%緻密酸化アルミニウムの曲げ強さは約375MPaであると報告されており、剛性(弾性率/ヤング率)は約350GPaであると報告されている(Coorstek Advanced Aluminaデータシート、オンラインで入手可能)。本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102は、少なくとも1つの第1の層100に一致する必要なCTEを提供しながら、アルミナの機械的強度及び剛性/ヤング率とほぼ同じか又はそれを超える機械的強度及び剛性/ヤング率を提供することができる。本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102の使用は、多層焼結セラミック体から製造される単一の多層構成要素の曲げ強さ及び剛性を著しく向上させて、半導体プラズマ処理チャンバでの使用に必要な、高強度、高剛性、並びにハロゲン系腐食及び浸食に対する耐性の両方を有する大きな(>100~625mm寸法)構成要素の作製を可能にし得る。
【0134】
周囲温度から焼結温度及びアニーリング温度までの温度範囲にわたって、0.6×10-6/℃以下、好ましくは0.55×10-6/℃以下、好ましくは0.5×10-6/℃以下の層のCTEの差の絶対値を有し、本明細書に開示される範囲内にある、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102の材料とを選択することによって、本明細書に開示される高い強度及び剛性、耐食性並びに好ましい誘電特性及び熱特性を有する単一の多層焼結セラミック体98を形成することができる。
【0135】
プラズマ処理チャンバ内の構成要素としての用途に適した耐腐食性及び耐浸食性を提供するために、高度に相純粋な多結晶YAG(>90体積%)を含む少なくとも1つの第1の層100を有する多結晶単一の多層セラミック体の製造が望ましい場合がある。しかしながら、実質的に相純粋なYAGの形成は、化学量論を維持し、ひいては(37.5+/-0.1モル%の酸化イットリウム及び62.5+/-0.1モル%の酸化アルミニウムの組成の)相純粋なYAGを含む焼結セラミック体を形成するために、慎重な組成及び加工制御を必要とし得る。多くの場合、他の結晶相、例えばアルミナ、イットリア、YAP、(YAlO;イットリウムアルミニウムペロブスカイト相)、及びYAM(YAl;イットリウムアルミニウム単斜相)及びこれらの組み合わせが存在してもよい。参考として、図3は、酸化イットリウム/酸化アルミニウムの2成分相図を示す。横軸はイットリアとアルミナの混合割合(モル%)に対応し、縦軸は温度(摂氏)である。横軸の左側は100%アルミナに対応し、右側は100%イットリアに対応する。図3の相図は、YAG、YAP、及びYAMの酸化イットリウムアルミニウム相が形成される領域、並びにこれらの形態を生成するのに必要なモル組成及び温度の条件を示す。
【0136】
本明細書に開示される一実施形態による多層セラミック焼結体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100の結晶相及び画像ベースの多孔率の測定は、X線回折(XRD)、SEM撮像、及び画像処理ソフトウェア(ImageJ)の使用の組み合わせを用いて行われた。XRDは、約+/-5体積%までの結晶相同定が可能なPANanlytical AerisモデルXRDを用いて行った。図4は、この実施形態による少なくとも1つの第1の層100を含む高相純粋な多結晶YAGの形成を確認するX線回折結果を示す。XRDの検出限界内では、他の相は同定されなかった。YAGは、既知の相図によれば線状化合物として存在し、したがって、相純粋なYAGの形成は課題を提起し、慎重な組成及びプロセス制御を必要とする。そのような相純粋なYAGは、2020年11月17日に出願された国際特許出願第PCT/US20/60918号に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。この実施形態によるYAG含有の少なくとも1つの第1の層100は、いくつかの実施形態では、過剰なアルミナ及び/又は過剰なイットリアを含んでもよく、ドーパントを実質的に含まなくてもよく、又はドーパントを含まなくてもよく、並びに/あるいは本明細書に開示される焼結助剤を実質的に含まなくてもよく、又は焼結助剤を含まなくてもよい。他の実施形態では、YAGを含む第1の層は、本明細書に開示される量で焼結助剤及び/又はドーパントを含んでもよい。実施形態では、多結晶YAGの第1の層100は、ドーパントを実質的に含まず、又はドーパントを含まず、本明細書に開示される量で焼結助剤を含んでもよい。本明細書に開示される多層セラミック焼結体の少なくとも1つの第1の層100のXRDは、約95体積%以下の相純度を測定することができる。したがって、単一の多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100は、図4のxrd結果に示すように、この実施形態による少なくとも約95体積%のYAG相を含む。
【0137】
より高い精度で、例えば約99.8体積%以下の相純度を決定するために、当業者に知られている後方散乱検出(BSD)法を用いて、SEM画像を撮影した。BSDを用いると、YAG相は灰色に見え、酸化アルミニウム相は黒色に見え、酸化イットリウム相は白色に見え、多孔性も、存在する場合は黒色に見える。実施例2による多結晶YAG焼結セラミック体について、図6a)に示すように、BSD法を用いて5000倍で画像を撮影して、YAG相、アルミナ相及びイットリア相、並びに存在する任意の多孔性を同定した。
【0138】
アルミナを含む黒色領域と多孔性を含む黒色領域とを区別するために、図6b)の同じ領域に示されるように、多孔性又はアルミナのいずれかを含み得るBSD画像における黒色領域を強調するために、ImageJ処理ソフトウェアを用いてBSD画像を黒と白の閾値で処理した。ImageJは、米国の国立衛生研究所(National Institute of Health、NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。本明細書に開示される測定のために使用されるBSD検出器は、トポグラフィ特徴を測定する更なる能力を有し、それによって、表面多孔性などの表面トポグラフィにおける任意のばらつきを強調する。BSD検出器のトポグラフィモードを使用して、図5a)に示すように、実施例2による多結晶YAG焼結セラミック体の同じ領域の表面にわたって5000倍でトポグラフィ画像を撮影し、トポグラフィ画像を図6a)に示す。表面多孔性を含む領域は、ImageJにおけるトポグラフィ画像を閾値処理した後、図6b)に示されるように強調された。その後、図6b)のトポグラフィ画像内の表面多孔性を含む面積を、図6a)のBSD画像内のアルミナ及び/又は多孔性を含む面積から差し引き、実施例2による多結晶YAG焼結セラミック体中のアルミナ相を含む面積%、したがって体積%を得た。複数のSEM画像化モード及びImageJ分析のこれらの分析ツールの組み合わせは、約+/-0.1体積%の信頼度で相純度の決定を提供し得る。開示された方法を用いて、実施例7による多結晶YAG焼結セラミック体は、約0.1~約0.2体積%のアルミナ相、約0.1~約0.2体積%の多孔率、及び約99.6~約99.8体積%のYAG相を含むと測定された。測定のばらつきを考慮して、多結晶YAG焼結セラミック体は、99.4~99.8体積%の量のYAG相を含むことができ、0.1~0.3体積%の量の多孔率、及び0.1~約0.3体積%の量の酸化アルミニウムを更に含むことができる。
【0139】
したがって、各々が少なくとも1つの第1の層100の90~99.9体積%、好ましくは90~99.8体積%、好ましくは90~99.7体積%、好ましくは90~99.6体積%、好ましくは93~99.8体積%、好ましくは93~99.7体積%、好ましくは93~99.6体積%の量のYAG相を含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体は、本明細書に開示される材料及び方法を用いて形成され得る。
【0140】
半導体処理チャンバ内の構成要素として使用するための耐腐食性及び耐浸食性の要件を満たすために、表面106にわたって及び/又は層100内に低い多孔性を有する少なくとも1つの第1の層100を含む多層焼結セラミック体が好ましい。多孔性は、腐食及び浸食の開始部位としての役割を果たすことができ、したがって、多層焼結体の少なくとも1つの第1の層100内及び/又は第1の層100の表面106上に多孔性、細孔又は空隙が最小限で存在するか、全く存在しないことが好ましい。本明細書に開示される少なくとも1つの第1の層は、表面上及び全体の両方に非常に小さい細孔を有し得る。したがって、好ましくは、本明細書に開示されるプロセスに従って作製された多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、全体にわたって均一に分布した細孔を有する一体層である。換言すれば、表面106上で測定した細孔又は空隙又は多孔性は、少なくとも1つの第1の層100のバルク内の細孔又は空隙又は多孔性を表し得る。
【0141】
多孔率は、以下に開示する方法を用いて測定した。
【0142】
多孔率測定
【0143】
多孔率のレベルは、Phenom XL走査型電子顕微鏡から5000倍の倍率で得られたSEM画像を使用することによって、試料表面にわたって測定した。画像を解析のためにImageJソフトウェアにインポートした。ImageJは、米国の国立衛生研究所(National Institute of Health、NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。
【0144】
本明細書に開示されるImageJソフトウェア方法を用いて、7つのSEM画像にわたって細孔径及び多孔性を含む総面積を測定した。約2885μmの単一画像測定面積に対応する約53.7μm×53.7μmの総面積を各々有する画像を5000倍で撮影した。
【0145】
多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の結晶粒サイズを評価するために、ASTM規格E112-2010「Standard Test Method for Determining Average Grain Size」に記載されているHeyn Linear Intercept Procedureに従って、線形切片結晶粒サイズ測定を行った。(以下の表1に記載されるように)結晶粒サイズ(結晶粒径)測定を行い、25回の繰り返しにわたって1.1~6.3umの平均結晶粒サイズを測定した。2~7.7umの最大及び最小結晶粒サイズも、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の表面106上で測定された。単一の多層焼結セラミック体は、例えば、最大結晶粒サイズが約8um以下、好ましくは最大結晶粒サイズが6μm以下の結晶粒サイズを有する表面106を有し得る。実施形態では、単一の多層焼結セラミック体は、0.4~6.5μm、好ましくは0.4~5μm、好ましくは0.4~3μm、好ましくは0.8~6.5μm、好ましくは0.8~5μm、好ましくは0.8~3μm、好ましくは1~7μm、好ましくは1~6.5μmの平均結晶粒サイズを有する表面106を有し得る。
【表1】
【0146】
図7は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の表面106上で測定された多孔率の結果を示し、縦軸上に全細孔面積(um)を示し、横軸はマイクロメートル単位の細孔サイズを表す。測定は、5000倍で撮影された7枚の画像にわたって行われ、各画像は、約2885μmの全測定面積に対して53.7μm×53.7μmの面積であった。7枚の画像のうちのいずれか1枚の画像内の多孔性を含む総面積は、約0.015~約0.3μm、好ましくは約0.015~約0.2μm、好ましくは約0.015~約0.15μmとして測定された。0.7μm以下のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100の表面106上の最大細孔径が測定され、多孔性を含む最大面積は約0.3μm以下であることが分かった。少なくとも1つの第1の層100の多結晶YAG内で分析された7枚の画像にわたって、0.7μmより大きい細孔サイズの細孔は測定されなかった。
【0147】
図8は、mm単位の面積にわたるμm単位の多孔性(累積細孔面積)を含む累積部分面積を示し、図7で参照される7枚の画像の所与の細孔サイズについての累積細孔面積(μm/mm単位)として表される。本明細書に開示されるSEM画像及びImageJ画像処理方法を用いて、多孔率を各画像内で測定し(um単位)、測定された全画像面積(mm)を計算して累積細孔面積を計算する。本明細書に開示されるYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法を用いて測定して、約2~約800um/mm、好ましくは約2~約600μm/mm、好ましくは約2~約400μm/mm、好ましくは約2~約300μm/mmの累積細孔面積を含む。多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100のYAG内で分析した7枚の画像にわたって、0.6μmより大きい細孔径の細孔は測定されなかった。したがって、各々約54μm×54μmの面積の7枚の画像にわたって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、非常に低い(<0.1面積%)面積百分率で1μm未満の細孔径に対応する多孔率を含む表面106を有する少なくとも1つの第1の層100を有し、したがって、プラズマ処理チャンバで使用するための多層焼結セラミック体の耐腐食性及び耐浸食性表面を提供する。
【0148】
図9a)は、多結晶YAG相を含む少なくとも1つの第1の層100の表面106の熱エッチングプロセス後の高密度焼結微細構造を示す5000倍のSEM画像を示す。YAGの少なくとも1つの第1の層100の表面106上に、細孔がほとんどない非常に微細なスケールの多孔性が示されている。ほぼ完全に緻密な微細構造が示されており、最小多孔率及び約1um以下の細孔径を有している。一実施形態による多層焼結セラミック体は、細孔を含む表面106を有する多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を含み、細孔は、5μm以下程度の細孔径、約0.1~約5μm、好ましくは約0.1~約4μm、好ましくは約0.1~約3μm、好ましくは約0.1~約2μm、好ましくは約0.1~約1μmのサブミクロンスケールの細孔径を有する。本明細書に開示される一実施形態によれば、材料及びプロセスから形成される多層焼結セラミック体98のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法を用いて測定して、0.1~5μm、好ましくは0.1~4μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、及び0.1~1μmの最大サイズを有する細孔を含み得る。54μm×54μmの表面積にわたって、約22の細孔が計数された。
【0149】
図9b)は、縦軸上の図8について測定された7つのSEM画像の各々についての細孔又は多孔率(表面積の%)を含む全表面積の合計を示し、横軸は、ミクロン単位の所与の%細孔面積についての対応する細孔径を表す。所与の画像内で、多孔性を含む総面積及び総画像測定面積を使用して、%細孔面積を計算した。図9に示されるように、7つのSEM画像にわたる測定値は、YAGを含む表面106を有する少なくとも1つの第1の層100に対応し、YAGは、SEM画像から、並びに本明細書に開示されるImageJソフトウェア及び方法を用いて測定して、0.0005~2%、好ましくは0.0005~1%、好ましくは0.0005~0.5%、好ましくは0.0005~0.05%、好ましくは0.0005~0.03%、好ましくは0.0005~0.005%、好ましくは0.0005~0.003%、好ましくは0.0005~0.001%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.5~2%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.005~1%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.05~1%、好ましくは0.5~2%の量の総面積のパーセントでの多孔率を含む。したがって、各々約54um×54umの面積の画像にわたって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、非常に低い(総面積で<1%)百分率の多孔率を含む表面106を含み、したがって、プラズマ処理チャンバで使用するための多層焼結セラミック体98の耐腐食性及び耐浸食性表面を提供する。
【0150】
複数の相を含む多層体の密度測定は、相の固有密度の差のために困難であることが判明している。密度測定は、多層焼結セラミック体試料に対して、多層焼結体の全厚から切断された試料をそのそれぞれの層に区分し、各層について別々に密度測定を行うことにより行った。測定は、ASTM B962-17のアルキメデス浸漬法に従って行われ、約4.57g/ccの密度が、YAGの少なくとも1つの第1の層100について測定された。報告された密度値は、5回の測定にわたる平均である。バルクYAGの市販の単結晶試料を、本明細書に開示される方法を用いて密度について測定した。5回の測定にわたって4.56g/ccのアルキメデス密度が得られ、この値を、本明細書で使用されるYAGの理論密度とする。したがって、実施形態BによるYAGを含む多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100は、YAGの理論密度の99~100%、好ましくは99.5~100%、好ましくは99.7~100%、好ましくは約100%の密度を有する。
【0151】
所与の材料の相対密度(RD)は、以下の式に示されるように、同じ材料の報告された理論密度に対する試料の測定された密度の比として定義される。体積空隙率(Vp)は密度測定値から以下のように計算される:
【数1】
式中、ρ試料は、ASTM B962-17に従って測定された(アルキメデス)密度であり、ρ理論値は、本明細書に開示される報告された理論密度であり、RDは相対分率密度である。この計算を使用して、0.1~5%、好ましくは0.1~4%、好ましくは0.1~3%、好ましくは0.1~2%、好ましくは0.1~1%、好ましくは0.1~0.5%のパーセントの体積多孔率レベルが、本明細書に開示される実施形態による多層セラミック焼結体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層及びマグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層の各々について測定された密度値から計算された。
【0152】
これらの密度、純度及び空隙率レベルは、プラズマエッチング及び堆積処理から生じる浸食及び腐食の影響に対する向上した耐性を提供することができる。開示された方法及び材料は、大きな寸法、例えば200~625mmの最大寸法のセラミック焼結体の調製に特に有用である。セラミック焼結体の高い密度及びそれによる高い機械的強度はまた、特に大きな寸法において、向上した取り扱い性を提供する。焼結イットリウムアルミニウム酸化物体又は焼結イットリウムアルミニウム酸化物を含む多層体、特に、最長寸法(約200~625mm)にわたって本明細書に開示される範囲の相純粋なYAGから形成される物体の製造の成功は、少なくとも1つの最長寸法にわたる密度の変動を制御することによって可能になり得る。最大寸法にわたって、5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下の密度の変動で、98.5%以上及び99.5%以上の平均密度が得られ、それによって、最大寸法は、例えば、約625mm以下、622mm以下、610mm以下、好ましくは575mm以下、好ましくは525mm以下、好ましくは100~625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは200~625mm、好ましくは200~510mm、好ましくは400~625mm、好ましくは500~625mmであり得る。密度の変動を低減することにより、取り扱い性が向上し、セラミック焼結体全体の応力を低減することができる。微細な結晶粒サイズ、均一及び高密度のこの組み合わせは、機械加工、取り扱い性及び半導体処理チャンバ内の構成要素としての使用に適した大きな寸法の多層焼結セラミック体の高強度焼結YAG含有層を提供する。密度測定は、焼結体の最大寸法にわたってASTM B962-17に従って行うことができる。
【0153】
高密度の多結晶YAG含有の少なくとも1つの第1の層は、プラズマ対向の少なくとも1つの第1の層の高い硬度値を可能にし得、これは、典型的なプラズマプロセス中に使用されるイオン衝撃の浸食効果に対する耐性を提供することができる。浸食又はスポーリングは、Arなどの不活性プラズマガスの使用による構成要素又は層表面のイオン衝撃から生じ得る。高い硬度値を有するこれらの材料は、イオン衝撃及びそれによる浸食に対するより大きな耐性を提供するそれらの硬度値の向上によって、構成要素のための材料として使用するために好ましい場合がある。したがって、ASTM規格C1327「Standard Test Method for Vickers Indentation Hardness of Advanced Ceramics」に従って、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100に対してビッカース硬度測定を行った。全ての硬度測定に使用した試験装置は、Wilson Micro Hardness Tester Model VH1202であった。本明細書に開示される多層焼結セラミック体98の少なくとも1つの第1の層100について、少なくとも1200HV、好ましくは少なくとも1400HV、好ましくは少なくとも1800HV、好ましくは少なくとも2000HV、1300~1600HV、1300~1500HV、1300~1450HV、1300~1400HV、1400~1600HV、1450~1600HV、1450~1550HVの硬度値が測定された。当該技術分野で知られているビッカース硬度法を用いて行った測定値を、GPaのSI単位に変換した。12.75~15.69GPa、12.75~14.71GPa、12.75~14.22GPa、12.75~13.73GPa、13.73~15.69GPa、14.22~15.69GPa、好ましくは14.22~15.20GPaの硬度値が測定された。
【0154】
少なくとも1つの第1の層の表面粗さは、半導体処理チャンバにおける性能に影響を与え得る。表面粗さの測定は、クラス1のクリーンルームの環境条件下で、Keyenceの3Dレーザー走査型共焦点デジタル顕微鏡モデルVK-X250Xを用いて行った。顕微鏡は2.8Hzの固有振動数を有するTMC TableTop CSP卓上型パッシブ除振台の上に載っている。この非接触システムは、レーザービーム光と光学センサを使用して、表面を反射光の強度によって解析する。Sa及びSzの表面粗さの特徴は、基礎となる技術分野において公知のパラメータであり、例えば、ISO標準25178-2-2012に記載されている。ISO規格の第4.17節には表面粗さSaが記載されており、第4.1.6節にはSzが記載されており、第4.3.2節にはSdrが記載されている。ISO25178表面テクスチャ(Areal Roughness測定)は表面粗さの分析に関連する国際標準集であり、この顕微鏡はそれに準拠している。Saは、多層焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域(スケール制限表面の算術平均高さ)にわたって算出された平均粗さ値である。Szは、多層焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたる最大山から谷までの距離(スケール制限表面の最大高さ、山から谷まで)を表す。Sdrは、「展開界面面積比」として定義される計算数値であり、完全に平坦な表面に対する実際の表面積の増加分の比例表現である。平坦な表面には0のSdrが割り当てられ、その値は表面の勾配と共に増加する。より大きな数値は、表面積のより大きな増加と一致する。これにより、試料の表面積増加の程度の数値比較が可能になる。それは、平面領域と比較して、テクスチャ又は表面特徴から生じる追加の表面積を表す。
【0155】
共焦点顕微鏡を使用して50倍の倍率で試料の表面をレーザースキャンして、試料の詳細な画像をキャプチャした。Sa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)、Ra(ライン粗さ)及びSdr(界面展開面積)のパラメータは、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの層100の研磨面の選択された領域で測定された。7つの区画化されたブロックのプロファイルで粗さを得た。測定サンプリング長を表すラムダカイ(λ)を、ISO規格4288:Geometrical Product Specifications(GPS)--Surface texture:Profile method--Rules and procedures for the assessment of surface textureに従って、ラインの読取りが7つのうち5つの中央ブロックからの測定値に制限されるように調整した。表面積は、測定のために試料の研磨された表面内で選択された。領域は、典型的な試料表面を最も代表するように選択し、Ra、Sz及びSdrを計算するために使用した。
【0156】
少なくとも1つの第1の層がYAGを含む一実施形態によれば、表面粗さ測定は、ISO規格25178-2-2012に従って行われ、表面にわたって0.0005~2μm、好ましくは0.0005~1.5μm、好ましくは0.0005~1μm、好ましくは0.0005~0.75μm、好ましくは0.0005~0.5μm、好ましくは0.0005~0.25μm、好ましくは0.0005~0.125μm、好ましくは0.0005~0.075μm、好ましくは0.0005~0.050μm、好ましくは0.0005~0.025μm、好ましくは0.0005~0.020μm、好ましくは0.0005~0.015μm、好ましくは0.0005~0.010μm、好ましくは0.001~0.030μm、好ましくは0.001~0.020μm、好ましくは0.001~0.010μmのSa値が測定された。以下の表1は、本明細書に開示される実施形態による、YAGを含む表面106を含む少なくとも1つの第1の層100のSa、Sz、及びSdr値を記載する。
【0157】
【表2】
【0158】
したがって、開示される一実施形態による多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、ISO規格25178-2-2012に従って測定して、0.0005~2μm、好ましくは0.0005~1.5μm、好ましくは0.0005~1μm、好ましくは0.0005~0.75μm、好ましくは0.0005~0.5μm、好ましくは0.0005~0.25μm、好ましくは0.0005~0.125μm、好ましくは0.0005~0.075μm、好ましくは0.0005~0.050μm、好ましくは0.0005~0.025μm、好ましくは0.0005~0.020μm、好ましくは0.0005~0.015μm、好ましくは0.0005~0.010μm、好ましくは0.001~0.030μm、好ましくは0.001~0.020μm、好ましくは0.001~0.010μmの表面粗さSaを有する表面106を有し得る。
【0159】
表1によれば、一実施形態による多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、ISO規格25178-2-2012に従って測定して、0.3~5μm、好ましくは0.3~4μm、好ましくは0.3~3μm、好ましくは0.3~2μm、好ましくは0.3~1μm、好ましくは0.65~5μm、好ましくは1~5μm、好ましくは2~5μm、好ましくは0.35~3μm、好ましくは0.5~1μmの山から谷までのSzを有する表面106を有し得る。
【0160】
表1によれば、開示される実施形態による多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、ISO規格25178-2-2012に従って測定して、5×10-5~550×10-5、好ましくは30×10-5~400×10-5、好ましくは30×10-5~200×10-5、好ましくは40×10-5~100×10-5の展開界面面積Sdrを有する表面106を有し得る。
【0161】
【0162】
再び図2を参照すると、本明細書に開示される焼結セラミック体の別の利点は、表面106の色である。本明細書で使用される場合、「色」は、1976 CIELAB色空間を使用して決定され、これは、色を明度/暗度変数L*(絶対的な黒は0であり、完全な白は100である)と、物体の色相を表す他のパラメータa*及びb*に還元する。典型的には、65より大きいL*及び5未満のa*及びb*の絶対値を有する物体は、「白色」とみなされる。
【0163】
プラズマ対向面上及び少なくとも1つの第1の層内の特定の元素又は夾雑物質の存在は、プラズマ処理反応器チャンバ内での使用には望ましくない場合がある。半導体処理中にこれらの夾雑物質に曝されることは、例えばチャンバ夾雑の原因となり得る。これらの夾雑物質は、通常、暗いスポット又は領域として現れる。例えば、Fe、Co、Cr、V、Zn、Mn、Ni及びCuなどの遷移金属元素は、それらが電気的特性を変更する可能性が高いので、シリコン中でのそれらの拡散にとって望ましくない。Li、Na及びKの酸化物などの酸化物もシリコン中に容易に拡散し、デバイスレベルでの性能に影響を及ぼす可能性がある。したがって、夾雑物質の容易な検出が望ましく、したがって、スポットがより明確に現れるので、部品の色はより薄い方が好ましい。したがって、夾雑物質の容易な検出を可能にするために、高いL*値を有するプラズマ対向面、好ましくは白色表面を有する少なくとも1つの第1の層は、ダークスポットが容易に見え、許容できない部品又は構成要素が使用前に廃棄され得るように有利である。
【0164】
しかし、90以上のL*値を有するセラミックは、典型的には、かなりの多孔性を有する材料を示す。少なくとも1つの第1の層における多孔性は、処理において使用されるハロゲン系プラズマによる腐食及び浸食の開始部位としての役割を果たし、反応器チャンバ内への夾雑物質粒子のその後の放出をもたらすので、プラズマ処理用途にとって望ましくない。
【0165】
更に、米国特許出願公開第2017/0250057号に開示されているような90以上のL*値を有する表面は、プラズマエッチングプロセスにおける終点信号検出に干渉する可能性がある。終点信号検出への干渉により、エッチングプロセスの状態が誤って読み取られ、不良品が生じる可能性がある。したがって、より低いL*値、ひいてはプラズマ対向面のより暗い表面は、終点信号検出干渉を克服し、チャンバ内への粒子の放出を防止するために好ましい。
【0166】
一方、暗すぎる構成要素表面は、ダークスポットと構成要素表面の明度又は色が、スポットが目で容易に見えない程度に類似しているので、ダークスポットの容易な検出を困難にする。これは、許容できない部品又は構成要素の選別を困難にする。
【0167】
本開示の多層焼結セラミック体の実施形態のプラズマ対向面106は、少なくとも1つの第1の層のプラズマ対向面上で測定して、90未満、好ましくは82未満、好ましくは65以上82以下、好ましくは70以上82以下、より好ましくは75以上80以下のL*値を示す。他の実施形態では、本開示の多層焼結セラミック体の実施形態のプラズマ対向面106は、少なくとも1つの第1の層のプラズマ対向面上で測定して、65~90、好ましくは65~89、好ましくは70~82、好ましくは65~82、好ましくは70~82、より好ましくは75~80のL*値を示す。
【0168】
上記間隔内のL*値を有するプラズマ対向面106を有する少なくとも1つの第1の層100は、2つの効果を組み合わせる:プラズマ対向面上及び焼結体又はそれから製造される構成要素の少なくとも1つの第1の層内のダークスポット又は夾雑物質を検出することが容易であること;並びにチャンバ内への粒子放出を最小限に抑えながらエッチングプロセスの終点信号を正確に検出することができること。
【0169】
一実施形態では、本発明の多層焼結セラミック体から製造される構成要素、例えば、ウィンドウ、ディスク、及びシャワーヘッドは、本明細書に開示されるように、65~85のL*を有する少なくとも1つの第1の層を有するものとして特徴付けられる。別の実施形態では、本発明の多層焼結セラミック体から製造される構成要素、例えば、ウィンドウ、ディスク、及びシャワーヘッドは、本明細書に開示されるように、65~82のL*を有する少なくとも1つの第1の層を有するものとして特徴付けられる。別の実施形態では、本発明の多層焼結セラミック体から製造される構成要素、例えば、ウィンドウ、ディスク、及びシャワーヘッドは、本明細書に開示されるように、65~75のL*を有する少なくとも1つの第1の層を有するものとして特徴付けられる。
【0170】
均一性及び明度は、目で視覚的に評価されてもよく、又は1つの非限定的な例として、CIELAB L*a*b*スケールを使用するFRU WR-18比色計などの市販の機器を使用して測定されてもよい。CIELAB L*a*b*値は、本明細書において互換的にCIE Lab値又はL*、a*、b*値とも呼ばれる。「L*」の値は、明対暗の比、言い換えれば、濃淡を示す。「a*」及び「b*」の値は、一般に色相に関する。「a*」の値は、特定の変換された色空間における赤-緑座標を指し、一般に供試体と標準参照色との間の「a*」の差として使用される。「a*」が正である場合、緑色よりも赤色が強い。「a*」が負である場合、赤色よりも緑色が強い。a*の値は、通常、色度又は色度色差の一部としてb*と共に使用される。「b*」の値は、特定の色空間における黄-青座標を指し、一般に供試体と標準参照色との間の「b*」の差として使用され、通常、「a*」と共に、又は色度差の一部として使用される。一般に、「b*」が正である場合、青色よりも黄色が強い。「b*」が負である場合、黄色よりも青色が強い。
【0171】
エッチング手順:
【0172】
ハロゲン系プラズマ用途における性能を評価するために、以下に記載されるように、YAGの少なくとも1つの第1の層100を含む実施形態に従って調製された焼結セラミック体に対してエッチングが行われた。
【0173】
エッチング性能を評価するために、6mm×6mm×2mmの寸法のYAGの第1の層を含む表面を有する研磨されたセラミック試料を、シリコーン系ヒートシンク化合物を使用してc面サファイアウェハ上に取り付けた。各部分の領域は、5mm×5mmの正方形のサファイアセラミックを試料表面に接合することによって、エッチングプロセスへの曝露からブロックした。
【0174】
ドライエッチングプロセスは、業界の標準装置であるPlasma-Therm Versaline DESC PDC Deep Silicon Etchを用いて行った。エッチングは、2工程プロセスを用いて合計6時間の持続時間で完了した。エッチング方法は、10ミリトルの圧力、600ボルトのバイアス、及び2000ワットのICP出力を用いて行った。エッチング方法は、90標準立方センチメートル/分(sccm)のCF流量、30標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量、及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を有する第1のエッチング工程と、100標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を有する第2のエッチング工程とを用いて行い、第1のエッチング工程及び第2のエッチング工程は、6時間の合計持続時間にわたって各々300秒間繰り返す。試料性能を評価するためにここで使用されるエッチング条件は、性能を区別するために、開示された材料を極端なエッチング条件に供するように選択された。エッチング手順が完了すると、Sa、Sz及びSdrの表面粗さパラメータが、本明細書に開示される方法を用いて測定された。表2は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層を有する種々の試料に対するエッチング(本明細書に開示されるような2工程プロセスを使用する)後の結果を記載する。
【0175】
【表3】
【0176】
YAGを含む例示的な少なくとも1つの第1の層100は、過剰アルミナ(試料311及び322)、ジルコニアドーピング(試料298)、化学量論的YAG(試料454及び223)、並びに低下した相対密度(RD)、試料454-1を用いて作製された。表2に記載されるように、プロセス条件(プロセス)は、本明細書に開示される方法に従ってそれぞれの試料の各々を作製するために使用される温度T(℃)、圧力P(MPa)、及び時間t(分)として記載される。アニーリングは、空気中、1400℃で8時間行った。
【0177】
一実施形態では、本開示は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素であって、エッチング又は堆積プロセスの前に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、エッチングされていない領域において、15nm未満、より好ましくは13nm未満、より好ましくは10nm未満、より好ましくは8nm未満、より好ましくは5nm未満の算術平均高さSa、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素に関する。
【0178】
一実施形態では、本開示は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素であって、エッチング又は堆積プロセスの前に、ISO規格25178-2-2012に従って、5.0μm未満、より好ましくは4.0μm未満、最も好ましくは3.5μm未満、より好ましくは2.5μm未満、より好ましくは2μm未満、より好ましくは1.5μm未満の最大高さSzを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素に関する。
【0179】
一実施形態では、本開示は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素であって、エッチング又は堆積プロセス前に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、1500×10-5未満、より好ましくは1200×10-5未満、より好ましくは1000×10-5未満、より好ましくは800×10-5未満、より好ましくは600×10-5未満、より好ましくは400×10-5未満の展開界面面積Sdr、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素に関する。
【0180】
一実施形態では、本開示は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素であって、本明細書に開示されるエッチング又は堆積プロセス後に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、25nm未満、20nm未満、より好ましくは18nm未満、より好ましくは16nm未満、より好ましくは14nm未満、より好ましくは12nm未満の算術平均高さSa、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素に関する。
【0181】
一実施形態では、本開示は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素であって、本明細書に開示されるエッチング又は堆積プロセス後に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、4.8μm未満、より好ましくは3.8μm未満、最も好ましくは3.2μm未満、より好ましくは2.5μm未満、より好ましくは2μm未満、より好ましくは1.5μm未満の最大高さSz、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素に関する。
【0182】
一実施形態では、本開示は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素であって、本明細書に開示されるエッチング又は堆積プロセス後に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、3000×10-5未満、より好ましくは2500×10-5未満、より好ましくは2000×10-5未満、より好ましくは1500×10-5未満、より好ましくは1000×10-5未満、より好ましくは800×10-5未満の展開界面面積Sdr、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素に関する。一実施形態による上記の多層焼結セラミック体を使用することによって、エッチング及び堆積プロセスにおける構成要素としての連続的な長期使用を可能にする有意な耐腐食性及び耐浸食性材料が提供される。この耐腐食性及び耐浸食性材料は、本明細書に開示される改善された表面特性によって粒子生成を最小限に抑え、使用中の改善された性能及び処理中の半導体基板の低減された夾雑を提供する。
【0183】
非常に高い純度を有する少なくとも1つの第1の層100を作製するために使用される出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物は、半導体エッチング及び堆積用途における構成要素としての使用を可能にする耐腐食性及び耐浸食性を提供することができる。この高純度は、化学的に不活性な表面(本明細書で使用される不活性という用語は、化学的に不活性であることを意味することが意図されている)を提供し、これは、少なくとも1つの第1の層100の表面がハロゲン系ガス種によって粗面化することを防止することができ、そうでなければ、純度がより低い粉末及び粉末混合物から作製された材料を化学的に攻撃及びエッチングするか、又はイオン衝撃によって浸食され得る。少なくとも1つの第1の層100内の不純物及び夾雑物質は、腐食及び浸食の開始部位としての役割を果たし、したがって、多層耐腐食性焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100内では、高純度(及び夾雑物質のppmで表される対応する低不純物含有量)が好ましい。表5は、実質的に相純粋な多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を形成するために焼結される、実施形態による例示的な焼成粉末混合物の不純物を記載する。
【0184】
本明細書の開示によれば、90体積%超の量のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む少なくとも1つの第1の層を有する多層焼結セラミック体は、本明細書に開示される焼成粉末混合物の粒径分布、純度及び/又は表面積の組み合わされた特性によって、焼結工程中にin situ反応焼結によって形成され得る。実施形態では、焼成粉末混合物は、イットリア及びアルミナの結晶粉末を含む。特定の実施形態では、イットリア及びアルミナの結晶性粉末に加えて、焼成粉末混合物は、10体積%未満のYAG、好ましくは8体積%未満のYAG、好ましくは5体積%未満のYAGを含むことが好ましい場合がある。他の実施形態では、本明細書に開示されるのは、YAG相(イットリア及びアルミナの結晶性粉末を含む)を含まないか、又は実質的に含まない焼成粉末混合物である。他の実施形態では、焼成粉末混合物は、2m/g超の比表面積を有することが好ましい。他の実施形態では、焼成粉末混合物は、本明細書に開示されるin situ反応相焼結プロセスによってYAGを含む焼結セラミック体を形成するために、約2m/g以上の比表面積を有するYAG相を含まないことが好ましい。本明細書に開示される全ての純度測定値は、特定の元素の報告限界を超えて測定されたものであり、Agilent製の7900ICP-MSモデルG8403のICP-MSを用いて行った。液体試料は、微細なエアロゾルとしてICP-MSに導入され、これはプラズマ放電中でイオン化され、その後、当業者に公知の四重極質量分析器を用いて分離される。より軽い元素の存在を同定するために本明細書に開示されるICP-MS法を使用する検出限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すれば、より重い元素、例えばSc以上の元素は、より軽い元素、例えばLiからAl(例えば0.7ppm程度の低い精度で検出される)よりも高い精度、例えば0.06ppm程度の低い精度で検出される。したがって、LiからAlまでのようなより軽い元素を含む粉末の不純物含有量は、約0.7ppm以上に決定することができ、Sc(スカンジウム)からU(ウラン)までのより重い元素の不純物含有量は、約0.06ppm以上に決定することができる。本明細書に開示されるICPMS法を用いると、シリカは約14ppm程度の低い量で検出され得るが、K(カリウム)及びCa(カルシウム)は1.4ppm以上の量で同定され得る。鉄は、0.14ppm以上という低い量の精度で検出することができる。本明細書に開示される総不純物含有量は、シリカを含まない。
【0185】
YAGの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100は、ICPMS法を用いて測定して、YAGの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層の総質量に対して、100ppm未満、好ましくは75ppm未満、50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは8ppm未満、好ましくは5ppm未満、好ましくは5~30ppm、好ましくは5~20ppmの総不純物含有量を有し得る。本明細書に開示される総不純物含有量は、シリカの形態のSiを含まない。
【0186】
より軽い元素の存在を同定するために本明細書に開示されるICP-MS法を使用する検出限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すれば、より重い元素、例えばSc以上の元素は、より軽い元素、例えばLiからAl(例えば0.7ppm程度の低い精度で検出される)よりも高い精度、例えば0.06ppm程度の低い精度で検出される。したがって、LiからAlまでのようなより軽い元素を含む粉末の不純物含有量は、約0.7ppm以上に決定することができ、Sc(スカンジウム)からU(ウラン)までのより重い元素の不純物含有量は、約0.06ppm以上に決定することができる。本明細書に開示されるICPMS法を用いると、シリカは約14ppm程度の低い量で検出され得るが、K(カリウム)及びCa(カルシウム)は1.4ppm以上の量で同定され得る。鉄は、0.14ppmという低い量の精度で検出することができる。
【0187】
SiO、MgO、CaO、LiO及びLiFなどの焼結助剤は、緻密化を促進することが知られており、特にLiFは、結晶粒成長を促進し、それによってYAG及びスピネルの結晶粒サイズを増大させるために使用されることが知られている。しかしながら、これらの焼結助剤は、エッチング及び堆積用途における耐食性、強度及び性能を低下させる場合がある。したがって、実施形態では、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100は、粉末混合物の総質量に対して、各々約2ppmのカルシア、マグネシア、リチア及び/又はフッ化リチウム含有量を有する少なくとも1つの焼成粉末混合物から形成されてもよい。高純度の焼成粉末混合物(その後、本明細書に開示される方法を用いて焼結される)は、それによって、焼結後に多層焼結セラミック体に移される。上で詳述した実施形態では、例えば、多層焼結セラミック体は、YAG、マグネシウムアルミネートスピネル及びイットリア及びジルコニアからなる群から選択されるセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100を有し得、少なくとも1つの第1の層100の各々は、少なくとも1つの第1の層100の質量に対して、各々14~100ppm、好ましくは14~75ppm、好ましくは14~50ppm、好ましくは14~25ppm、好ましくは14~20ppm、好ましくは約14ppmの量のシリカを含む。他の実施形態では、少なくとも1つの第1の層100の各々は、マグネシア、リチア/フッ化リチウム及び/又はカルシアを、少なくとも1つの第1の層100の質量に対して、各々約2~100ppm、好ましくは約2~75ppm、好ましくは約2~50ppm、好ましくは約2~25ppm、好ましくは約2~20ppm、好ましくは約2~10ppmの量で含み得る。YAG、マグネシウムアルミネートスピネル、並びにジルコニア及びアルミナを含む少なくとも1つの第1の層100において強度を高め、化学的不活性を提供するために、少なくとも1つの第1の層100の各々は、少なくとも1つの第1の層100の質量に対して、各々約2ppmを超える量のLi又はLiFを含まないことが好ましい。したがって、更なる実施形態では、少なくとも1つの第1の層100の各々は、フッ化リチウム、カルシア、及び/又はマグネシアを、少なくとも1つの第1の層100の質量に対して、各々約2~100ppm、好ましくは約2~75ppm、好ましくは約2~50ppm、好ましくは約2~25ppm、好ましくは約2~20ppmの量で含み得る。
【0188】
好ましい実施形態では、YAGを含む少なくとも1つの第1の層は、本明細書に開示されるICPMS法を用いて測定して100%純度を有する材料に対して、各々99.99%以上、好ましくは99.995%以上の純度を有し得る。
【0189】
実施形態では、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層は、少なくとも1つの第1の層の総質量に対して、各々14~100ppm、好ましくは14~75ppm、好ましくは14~50ppm、好ましくは14~25ppm、好ましくは14~20ppm、好ましくは約14ppmの量のシリカの形態のSiを含む。
【0190】
本明細書に開示される多層焼結セラミック体の実施形態では、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、例えば、Sc、La、Er、Ce、Cr、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、及びLu並びに酸化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される希土類酸化物の必要に応じてのドーパントを用いて、0.002重量%以上、好ましくは0.0035重量%以上、好ましくは0.005重量%以上、好ましくは0.0075重量%以上の量で作製することができ、以下に詳述する工程a)で出発粉末又は粉末混合物に添加することができる。
【0191】
いくつかの実施形態では、上述のドーパントを用いずに作製してもよい。特に、高い強度と組み合わせた化学的不活性並びに腐食及び浸食に対する耐性を必要とする半導体チャンバ用途では、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、ドーパントを含まないか、又は実質的に含まないことが好ましい。
【0192】
一実施形態によれば、YAG層100内の過剰なイットリア及び/又はアルミナは、少なくとも1つの第1の層に残留し得る程度まで、ドーパント又は焼結助剤とはみなされない。開示される少なくとも1つの第1の層の高純度及びそれに対応する低不純物は、半導体反応器での使用に必要とされる粒子生成並びに腐食及び浸食の低減を可能にし得る。YAGを含む少なくとも1つの第1の層100について、例えば99.995%以上、好ましくは99.999%以上、好ましくは99.9995%以上、好ましくは約99.9999%の純度を測定することができる。
【0193】
しかしながら、これらの耐腐食性及び耐浸食性材料は、半導体エッチング及び堆積チャンバへの適用に必要とされる高密度に焼結するという課題を提起する。したがって、典型的には圧力支援焼結法、いくつかの実施形態では圧力及び電流支援焼結法が必要とされる。
【0194】
当業者に知られているような多層焼結体は、多くの場合、積層されて共焼結されるか、又は焼結基板上に積層又は堆積されて焼結されるプレキャスト層又はテープから形成される。しかしながら、これらの多層積層体は、多くの場合、層間の不十分な界面結合によって層間の界面で剥離し、その結果、半導体反応器での使用中にスポーリング及び粒子放出が生じる。典型的には、これらの積層体は、線形である界面を有し、したがって、本明細書に開示される単一の多層焼結セラミック体の特徴である向上した接着強度及び結合を有するインターロッキングな非線形界面104の利点を提供しない。
【0195】
本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102を含む多層焼結セラミック体であり、これらの層は、図10b)の概略図に示されるように、連続しており、非線形界面104によって境界付けられている。図示されるように、(本明細書でより詳細に説明されるように)非線形である界面104は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の向上した接着を提供し得る。この改善された接着は、界面長さの増加、及び関連する界面の面積の増加、屈曲度(T)、界面の算術平均(平均界面線からの界面の距離)、非線形性、及び界面104の形態によって提供されるインターロッキング効果を含む、いくつかの要因によって達成され得る。図1a)及びb)は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の界面104の特性を示すSEM画像を示し、図1b)の例示的な画像に示すように、端部間の直線長さ(L)は約54umであり、界面104に沿って測定された界面長さ又は曲線(C)は約90umである。本明細書に開示される計算を用いた図1b)による屈曲度は1.7である。本明細書に開示されるImageJソフトウェア分析を用いて、9つのSEM画像にわたって測定を行った。約90umの平均界面長さが測定され、直線距離(L)に対して界面長さ(C)が約66%増加したことを示した。したがって、本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層によって画定される界面104を有する多層焼結セラミック体であって、界面長さが20~70%、好ましくは20~60%、好ましくは20~40%、好ましくは30~80%、好ましくは40~80%、好ましくは50~70%増加している多層焼結セラミック体である。それに対応して、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100は、多層焼結セラミック体の最大寸法に界面面積が見合った界面で互いに接触してもよい。100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100は、約3,117cm2、好ましくは約3,068cm以下、好ましくは2,919cm以下、好ましくは78~約3,117cm、好ましくは78~約3,068cm、好ましくは78~2,919cm、好ましくは78~1,963cm、好ましくは78~1,257cm、好ましくは78~707cm、好ましくは78~314cm、好ましくは314~約3,117cm、好ましくは314~約3,068cm2、好ましくは314~2,919cm、好ましくは314~1,963cm、好ましくは、314~1,257cm、好ましくは707~約3,068cm、好ましくは1257~3,039cmの面積を有する非線形界面104で互いに接触する。実施形態では、第1の層及び第2の層が直接接触して非線形界面104を形成し、したがって、少なくとも1つの第1の層及び第2の層が隣接層であることが好ましい。他の実施形態では、回路、加熱要素、RFコイル/RFアンテナ等は、特定の構成要素用途によって要求されるように、第1の層と第2の層との間に配置されてもよく、これらの特徴にかかわらず、第1の層及び第2の層は、隣接又は実質的に隣接していてもよい。この増加した界面長さ及び界面面積は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の非線形界面104における接着を強化する。
【0196】
図11a)は、多層焼結セラミック体の界面104の500倍でのSEM顕微鏡写真を示し、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100によって画定される界面は、不規則な非線形境界であり、これは、実施形態では、逆行角を含み得る。図11a)に示すようないくつかの実施形態では、界面は、少なくとも1つのバチ形構造及び/又はバチ形構造の少なくとも一部を含み得る。他の実施形態では、界面の少なくとも一部は、台形形状を含み得る。本明細書に開示される屈曲度(T)は、曲線の長さCとその端部間の直線距離Lとの比として数学的に定義され、T=C/Lである。図11a)の画像は、2.7の屈曲度を有することが測定された。本明細書に開示される非線形界面104は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法(ImageJソフトウェア内での測定)を用いて測定して、1超~約1.5、好ましくは1超~約2.0、好ましくは1超~約2.5、好ましくは1超~約3.0、好ましくは1.1超~約3.0の屈曲度Tを有し得る。直線界面(層が適用される予備焼結体を使用する積層体及び構造体に典型的である)は、約1の屈曲度を有する。本明細書に開示される多層体の界面104の増加した屈曲度は、層間のインターロッキング効果を提供し、それによって、不可分の、単一の多層セラミック焼結体が形成されるように接着強度を増加させる。
【0197】
図11b)は、SEM及び画像処理方法から計算された界面104の界面線(IL)を示す。図示のように、非線形界面104を示す例示的なSEM画像をImageJソフトウェアにインポートし、界面に沿った点に対応するx/y座標を使用して、図11bに示すような界面線(IL)の一次方程式を得、界面104を、界面線(IL)からの非線形界面104の距離によって特徴付けた。界面線(IL)からの界面104の距離(D)は、SEM及び画像処理を用いて測定して、10~100um、好ましくは20~100um、好ましくは30~100um、好ましくは40~100um、50~100um、好ましくは25~85umの量で変化する。界面線(IL)からの距離(D)の増加は、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の向上した接着及びインターロッキング効果に寄与し得る。
【0198】
これらの逆方向又は逆行性の角度、特性、及び構造は、アンカー効果を提供し、それによって、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100によって画定される界面104にわたる界面強度及び引張強度並びに結合を増加させ得る。
【0199】
少なくとも1つの第2の層102は、90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.471~3.579g/ccの密度を有する組成MgAlのマグネシウムアルミネートスピネルを含む。立方晶スピネル、特にマグネシアアルミナスピネルを含む焼結された少なくとも1つの第2の層102は、材料特性が結晶面又は方向に基づいて変化しないという点で等方性であり、したがって、立方晶スピネル形態は、その一貫した材料特性及び多くの用途において得られる予測可能な性能のために好ましい。実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、95~100体積%、好ましくは98~100体積%、好ましくは99~100体積%、より好ましくは100体積%の立方晶結晶構造の量のマグネシウムアルミネートスピネルMgAlを含む。
【0200】
更に、マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層102は、大きな(100~600mm)寸法での取り扱い性に十分な曲げ強度及び剛性を有する。かなりの応力が、使用中に構成要素にかかることがあり、大きな本体寸法を考慮すると、より大きな程度までかかることがあり、高強度の材料の選択を必要とする。
【0201】
マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層102は、高密度を有し、それにより高い曲げ強度又は機械的強度をもたらし、スピネル焼結体を多数の構造用途で使用する際の取り扱い性及び性能の向上を可能にする。密度測定は、当該技術分野において既知であるアルキメデス水浸漬法を用いて行った。L.Ping et al,”Magnesium aluminate(MgAl)spinel produced via self-heat-sustained(SHS)technique”,Materials Research Bulletin 36(2001)によれば、マグネシウムアルミネートスピネルの理論密度は3.579g/ccであり、本明細書に開示されているセラミック焼結体は、例えば3.471~3.579g/cc、好ましくは3.489~3.579g/cc、好ましくは3.506~3.579g/cc、好ましくは3.542~3.579g/cc、好ましくは3.560~3.579g/ccの密度を有し得る。これらの値は、97~100%、97.5~100%、更に98~100%、更に99~100%、更に99.5~100%の理論密度のパーセントに対応し、これにより、有益な特性の中でもとりわけ、機械的強度の強化、化学的浸食及び腐食の影響に対する耐性の改善を提供し得る。
【0202】
高い機械的強度に加えて、マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層102は、焼結体の表面にチッピング、剥離又は損傷を与えることなく特定の形態に機械加工する際にセラミック焼結体に微細な特徴部を形成する能力を可能にする、高い硬度値を有する。例えば、マグネシウムアルミネートスピネルを機械加工して、約75um以下の程度などの微細な幾何学的形状の入り組んだ特徴部をより少ない時間で形成することができる。例えば、ジルコニア強化アルミナの第2の層と比較して、マグネシウムアルミネートスピナル(spinal)の第2の層を約50%少ない時間で機械加工することができる。マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層102の硬度は、0.025kgfのロードセルを使用してASTM C1327に従って測定した。15.06GPaの平均硬度を8回の繰り返しにわたって測定した。スピネル焼結体の硬度は、好ましくは13.5GPa~16.5GPa、好ましくは13.5GPa~16GPa、好ましくは13.5GPa~15.5GPa、好ましくは14GPa~16.5GPa、好ましくは15GPa~16.5GPa、好ましくは14GPa~16GPaである。
【0203】
実施形態では、マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の後半(later)102は、ICPMS法を用いて測定した場合、99.99%以上、好ましくは99.995%以上、好ましくは99.999%以上の純度を有する。
【0204】
少なくとも1つの第2の層102は、0.1体積%~1体積%のジルコニアの添加によって安定化されてもよい。少量のジルコニアの添加は、結晶粒成長を制限し、層の機械的強度を改善する。少なくとも第2の層102のCTEに著しい影響を与えないように、少量のジルコニアのみが添加される。
【0205】
好ましい実施形態において、マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層は、CaOを含まない。
【0206】
高い機械的強度及び剛性を提供するために、図2に示される少なくとも1つの第2の層102の厚さd2は、好ましくは、少なくとも1つの第1の層100の厚さd1よりも大きい。少なくとも1つの第1の層100の厚さd1は、0.5~5mm、好ましくは0.5~4mm、好ましくは0.5~3mm、好ましくは0.5~2mm、好ましくは0.6~5mm、好ましくは0.6~3mm、好ましくは1~5mm、好ましくは1~4mm、好ましくは1~3mm、好ましくは2~4mm、好ましくは2~3mmであってもよい。本明細書に開示される多層焼結セラミック体98は、約10~約40mm、好ましくは約10~約35mm、好ましくは約10~約33mm、好ましくは約10~約30mm、好ましくは約10~約25mm、好ましくは約10~約20mmの全厚さ(d1+d2)を有し得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の層100の厚さを最小化することが望ましい場合があり、したがって、多層焼結セラミック体98は、焼結後及び/又はアニーリング後に必要に応じて機械加工されて、層100の厚さd1を減少させて、多層焼結体98又はそれから形成される構成要素の電気的、熱的又は他の特性を修正することができる。
【0207】
本明細書に開示される圧力支援(及び好ましい実施形態では、SPSなどの圧力及び電流支援)焼結プロセスは、ドーパント及び/又は焼結助剤を使用することなく、ツールセット(粉末圧縮体)内に配置された少なくとも2層の焼成粉末混合物から単一の多層焼結セラミック体の調製を提供する。単一の多層焼結体98は、焼成粉末混合物の層から形成され、その後、in-situ焼結工程において、焼結体の少なくとも1つの第1の層100及び第2の層102にそれぞれ形成される(当該技術分野において一般的であるような膜、テープ、又はグリーン体の形成を伴わない)。圧力支援方法は、当業者に知られているような無圧法の焼結速度を適合させる必要なしに、高密度の単一の多層焼結セラミック体を生成する。焼結体の少なくとも1つの第1の層100と第2の層102との間のCTE差の絶対値は、開示された範囲外のCTE不一致(焼結中及びアニーリングなどの他の熱エクスカーション中に経験され得る)から生じる亀裂及び破壊を回避するために、本明細書に開示された範囲内であることが好ましい。
【0208】
上述の耐食性多層焼結セラミック体は、プラズマエッチングチャンバの大型耐食性多層焼結構成要素に製造することができ、構成要素は、多層焼結体の最大寸法に関して100mm~625mmの寸法を有することができる。本明細書で説明される大きな構成要素寸法は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の非線形界面104の増大した界面長さ及びインターロッキング効果によって更に可能にされ得る。
【0209】
調製方法
多層焼結セラミック体の調製は、例えば、電界支援焼結技術(FAST)としても知られる放電プラズマ焼結(SPS)又は直流焼結(DCS)などの圧力支援焼結の使用によって達成されてもよい。これらの直流焼結支援技術及び関連技術は、導電性ダイ構成又はツールセットを加熱し、それによって焼結される材料を加熱するために直流を使用する。この加熱様式によって、非常に高い加熱及び冷却速度を適用することができ、結晶粒成長を促進する拡散メカニズムを超える高密度化メカニズムを増強して、非常に微細な結晶粒径のセラミック焼結体の調製を容易にし、元の粉末の固有の特性をそれらのほぼ又は十分に高密度の生成物に移すことができる。本明細書に開示される圧力及び電流支援方法は、本明細書に開示されるツールセットを加熱するために、好ましくはパルス化されていない連続直流電流を利用する。
【0210】
一実施形態による耐食性多層焼結セラミック体の上述の特性は、部分的には、第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物の純度及び比表面積(SSA)、第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物への圧力、第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物の温度、第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物の焼結の持続時間、必要に応じてのアニーリング工程中の多層焼結セラミック体の温度、並びにアニーリング工程の持続時間を適合させることによって達成される。
【0211】
多層焼結セラミック体の作製方法であって、a)イットリア粉末とアルミナ粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製する工程と、b)酸化マグネシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを組み合わせて第2の粉末混合物を作製する工程と、c)第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を、熱を加えて粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行い、第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物を形成することによって、焼成する工程と、d)第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出す工程と、e)焼結温度まで加熱しながら第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物の層に圧力を加え、焼結を行って、多層焼結セラミック体を形成する工程であって、焼結後の第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成する、工程と、f)多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、を含み、少なくとも1つの第1の層は、多結晶YAGを含み、少なくとも1つの第1の層は少なくとも1つの表面を有し、少なくとも1つの第2の層は、マグネシウムアルミネートスピネルを含み、少なくとも1つの第1の層の少なくとも1つの表面は細孔を含み、細孔は、SEM及び画像処理方法を用いて測定して、0.1~5umの最大サイズを有し、少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の各々は、ASTM E228-17に従って測定して、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(CTE)を有する、方法が開示される。
【0212】
以下の追加工程は必要に応じてである:g)アニーリングを行うアニーリング温度に達するように熱を加えて多層焼結セラミック体の温度を上昇させることにより、多層焼結セラミック体をアニーリングする工程と、h)アニーリングされた多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、i)多層焼結セラミック体又はアニーリングされた多層焼結セラミック体を機械加工して、プラズマ処理チャンバ内の誘電体ウィンドウ、RFウィンドウ、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバライナ、プラズマ源アダプタ、ガス入口アダプタ、ディフューザ、静電ウェハチャック(ESC)、チャック、パック、イオンサプレッサ要素、フェースプレート、アイソレータ、スペーサ、及び/又は保護リングの形状の多層焼結セラミック構成要素を形成する工程と。
【0213】
本明細書に開示される方法の工程a)は、イットリア粉末とアルミナ粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製することを含む。第1の粉末混合物を含む出発粉末材料は、焼結後に少なくとも1つの第1の粉末混合物がYAGを含む多結晶相を含む少なくとも1つの第1の層を形成するような割合で、組み合わされ混合される。上で詳述したように、最大1体積%のジルコニアを第1の粉末混合物に添加することもできる。少なくとも1つの第1の粉末混合物を形成するために選択される粉末は、好ましくは、高純度(>99.99%)の市販の粉末である。しかしながら、他の酸化物粉末、例えば化学合成プロセス及び関連する方法から生成されたものを使用してもよい。好ましい実施形態では、第1の粉末混合物はイットリア及びアルミナを含む。
【0214】
出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の粒径は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaモデルLA-960レーザー散乱粒径分布分析器を使用して測定することができる。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の比表面積(SSA)は、ほとんどの試料について0.01~2000m/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoriba BET Surface Area AnalyzerモデルSA-9601を用いて測定することができる。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の純度は、より軽い元素(Sc及びより小さい原子番号など)を約1.4ppmまで、及びより重い元素(Scより大きい原子番号など)を約0.14ppmまで分析することができるAgilent 7900 ICP-MSモデルG8403を用いるICP-MS測定を用いて測定することができる。純度は、本明細書では、不純物、ドーパント、焼結助剤などを含まず、意図された成分のみを含む材料を表す100%純度に対するパーセントとして報告される。不純物含有量は、本明細書において、評価中の材料の総質量に対するppmで報告される。シリカは、純度及び不純物の報告において開示されておらず、本明細書に開示されるICP-MS法を用いて約14ppm以上の量で測定され得る。
【0215】
本発明の実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd10粒径は、好ましくは1~6μm、好ましくは1~5μm、好ましくは1~4μm、好ましくは2~6μm、好ましくは3~6μm、好ましくは4~6μm、好ましくは2~4μmである。
【0216】
本発明の実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd50粒径は、好ましくは3~9μm、好ましくは3~8.5μm、好ましくは3~8μm、好ましくは3~7μm、好ましくは4~9μm、好ましくは5~9μm、好ましくは6~9μm、好ましくは4~8μmである。本明細書に開示されるイットリア粉末は、約5~9μmの平均粒径を有し得る。
【0217】
本発明の実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd90粒径は、好ましくは6~16μm、好ましくは6~15μm、好ましくは6~14μm、好ましくは6.5~16μm、好ましくは7~16μm、好ましくは7.5~16μm、好ましくは7.5~14μmである。
【0218】
酸化イットリウム粉末は、典型的には、2~10m/g、好ましくは2~8m/g、好ましくは2~6m/g、好ましくは3~10m/g、好ましくは4~10m/g、好ましくは6~10m/g、好ましくは2~4m/gの比表面積(SSA)を有する。
【0219】
酸化イットリウム出発材料の純度は、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超、より好ましくは99.999%超、より好ましくは99.9995%超、より好ましくは約99.9999%超である。これは、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは約1ppm、好ましくは1~100ppm、好ましくは1~50ppm、好ましくは1~25ppm、好ましくは1~10ppm、好ましくは1~5ppmの不純物レベルに相当する。
【0220】
当該技術分野で知られているように、d50粒径は、粒径中央値として定義され、粒径分布の半分がこの点を超えて存在し、半分がこの点を下回って存在する値を表す。同様に、分布の90%がd90を下回り、分布の10%がd10を下回る。
【0221】
本明細書で開示されるイットリア及びアルミナの出発粉末は、好ましくは結晶性であり、それによって長距離の結晶学的秩序を有する。20m/gを超えるものなどの高い表面積を有する出発粉末は、本明細書に開示される粉末混合物をツールセットに装入するときの取り扱い性に問題をもたらし、また、粉末の組み合わせ/混合工程中に均一な分散及び密接な混合を達成することが困難になる。したがって、実施形態では、本明細書に開示される粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、ナノ粉末を含まないか、又は実質的に含まず、約18m/g以下の比表面積(SSA)を有することが好ましい。
【0222】
約1m/g未満の比表面積を有する出発粉末は、凝集を被る可能性があり、混合のためにより高いエネルギー及びより長い混合時間を必要とし、焼結活性化エネルギーを減少させる可能性があり、したがって、より低い密度及びより高い多孔性を有する焼結セラミック体を生成する。開示される方法における使用にとって好ましいのは、1~18m/g、好ましくは2~15m/g、好ましくは3~12m/gのSSAを有する、本明細書に開示される出発粉末である。
【0223】
(工程a)及びb)のいずれか又は両方に従って)少なくとも第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物を作製するためにアルミナ及びイットリア粉末とマグネシア及びアルミナを組み合わせることは、湿式又は乾式ボール(軸方向回転)ミリング、湿式又は乾式タンブル(端部から端部まで又は垂直)混合、ジェットミリング、及びこれらの組み合わせの粉末調製技術を使用して実施することができる。これらの粉末組み合わせ方法の使用は、微粒子及び凝集体を分解する高エネルギープロセスを提供する。
【0224】
乾燥条件を使用して、出発粉末は、混合中に出発粉末の純度を維持するために、高純度(>99.9%)アルミナ媒体を使用してボールミリング又はエンドオーバーエンド/タンブリング混合され得る。他の実施形態では、ジルコニア媒体を使用して、硬質の凝集体を粉砕してもよい。高純度アルミナ媒体を本明細書に開示されるICPMS法を用いて試験し、約99.9~99.99%の純度を有することが見出された。ジルコニア媒体の使用は、多層焼結セラミック体中に100ppm未満などの微量のジルコニアをもたらし得る。乾式ボールミリングを行うために使用される媒体は、例えば直径5~15mmの範囲の寸法を有し得、粉末重量で約50~約100%の装入量で添加される。乾式タンブリング混合を行うために使用される媒体は、限定されないが、大きな寸法(直径約20~40mm)の少なくとも1つの媒体要素を含み得る。乾式ボールミリング及び/又は乾式タンブリング混合は、12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは16~24時間、好ましくは18~22時間の期間にわたって行うことができる。乾式ボールミリング又はタンブリングミリングプロセス(軸方向回転)は、各々約200mmの直径を有する容器で、50~250RPM、好ましくは75~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPM(毎分回転数)を使用してよい。RPMは、使用に選択される容器の寸法に依存して変化し得、例えば、直径200mmより大きいものは、当業者に知られているように、対応して低いRPMを有し得る。乾式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、10~30rpm、好ましくは約20のRPMで行うことができる。乾式ボールミリング及び/又はエンドオーバーエンド/タンブリングミリング/混合の後、当業者に知られているように反復又は順序に関して限定することなく、粉末混合物は、例えば例えば45~400umの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0225】
湿式ボールミリング又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、出発粉末をエタノール、メタノール、及び他のアルコールなどの様々な溶媒中に懸濁させてスラリーを形成することによって行うことができる。いずれかのプロセスにおけるスラリーは、ミリング又は混合中に、粉末重量で25~75%、好ましくは粉末重量で40~75%、好ましくは粉末重量で50~75%の粉末充填量を有して形成され得る。湿式ボールミリング又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、移動度の増加による粉末の分散の改善をもたらし、熱処理又は焼成の前に微細なスケールの均一な混合をもたらすことができる。実施形態では、分散剤は、任意の数の市販の分散剤、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びポリビニルピロリドン(PVP)及び当業者に公知の他の分散剤を使用して、スラリーに必要に応じて添加されてもよい。分散剤は、粉末重量の0.05~0.2%、好ましくは粉末重量の0.05~0.1%の量で必要に応じて添加されてもよい。湿式ボール又は湿式タンブリング/エンドオーバーエンド混合のいずれかのための媒体充填量は、粉末重量で30~100%、好ましくは粉末重量で30~75%、好ましくは粉末重量で30~60%の充填量で変動し得る。湿式ボールミリング又はタンブリング混合は、8~48時間、好ましくは12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは8~36時間、好ましくは8~24時間、好ましくは16~24時間、好ましくは12~24時間の継続時間で行われ得る。ボールミリングは、各々約200mmの直径を有する容器について、50~250RPM、好ましくは75~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPM(毎分回転数)を使用することができる。RPMは、使用に選択される容器の寸法に依存して変化し得、例えば、直径200mmより大きいものは、当業者に知られているように、対応して低いRPMを有し得る。湿式エンドオーバーエンド/タンブリング(又は垂直)混合は、10~30rpm、好ましくは約20のRPMで行われ得る。湿式ボールミリング及び/又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合の後、当業者に知られているように反復又は順序に関して限定することなく、粉末混合物は、例えば例えば45~400umの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0226】
当業者に公知のジェットミリングプロセスもまた、粉末を完全に混合して、狭い粒子径分布を有する粉末、粉末混合物又は焼成粉末混合物を形成するために使用することができる。ジェットミリングは、不活性ガス又は空気のいずれかの高速ジェットを使用して、ミリングも混合媒体も使用せずに出発粉末及び/又は粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物の粒子を衝突させ、したがってミリングされる粉末の初期純度を維持する。チャンバは、より大きな粒子のサイズを優先的に小さくすることができるように設計することができ、最終粉末、粉末混合物又は焼成粉末混合物に狭い粒径分布を提供することができる。粉末は、処理前の機械の設定で決定された所定の粒径に達すると、ジェットミリングチャンバを出て、プロセスを終了する。本明細書に開示される出発粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、単独か、又は本明細書に開示される、開示される粉末ミリング/混合プロセスのいずれか若しくは全てとの組み合わせであるかにかかわらず、約100psiの圧力でジェットミリングに供されてもよい。ジェットミリングの後、粉末又は粉末混合物は、当業者に知られているように反復又は順序に関して限定することなく、粉末混合物は、例えば例えば45~400umの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0227】
アトリッションミリング、高剪断混合、プラネタリーミリング、及び他の既知の手順の追加の粉末調製手順も適用することができる。上述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで、又はその後焼結されて単一の多層焼結セラミック体を形成する2つ以上の粉末混合物に使用することができる。
【0228】
湿式混合又はミリングプロセスが使用される場合、スラリーは、当業者に知られているように、乾燥されるスラリーの体積に応じて、回転蒸発法によって、例えば約40℃~90℃の温度で1~4時間乾燥させることができる。他の実施形態では、スラリーは、当業者に公知の噴霧乾燥技術を使用して乾燥させることができる。乾燥後、粉末混合物を、反復又は順序に関して限定することなく、例えば45~400umの開口部を有するメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。前述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで使用され得る。
【0229】
乾燥後、工程a)の粉末混合物の比表面積は、2~18m/g、好ましくは2~17m2/g、2~14m/g、好ましくは2~12m/g、2~10m/g、好ましくは4~17m/g、6~17m/g、好ましくは8~17m/g、好ましくは10~17m/g、4~12m/g、好ましくは4~10m/g、好ましくは5~8m/gであり得る。
【0230】
粉末混合物の純度は、高純度のミリング媒体、例えば純度99.99%以上の酸化アルミニウム媒体を使用することによって、混合/ミリング後に出発材料の純度から維持することができる。実施形態では、酸化ジルコニウムミリング媒体の使用が好ましい場合があり、15~100ppm、15~75ppm、好ましくは15~60ppm、好ましくは20~30ppmの量で多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層及び第2の層内に残留する程度まで酸化ジルコニウムを導入することができる。
【0231】
本明細書に開示される方法の工程b)は、酸化マグネシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを組み合わせて第2の粉末混合物を作製することを含む。少なくとも1つの第2の層を形成するための酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムを含む第2の粉末混合物を含む出発粉末材料は、好ましくは高純度の市販の粉末である。
【0232】
工程b)は、組成MgAlの立方晶結晶相を有する焼結スピネル層を含むセラミック焼結体形態又は構成要素の調製を提供する。
【0233】
本発明の実施形態による出発材料として使用される酸化マグネシウム粉末の平均又はd50粒径は、典型的には、1.5~5.5μm、2~5.5μm、2.5~5.5μm、3~5.5μm、1.5~5μm、1.5~4.5μm、より好ましくは2~4.5μmである。
【0234】
本発明の実施形態による出発材料として使用される酸化マグネシウム粉末のd90粒径は、4~9μm、好ましくは5~9μm、好ましくは6~9μm、好ましくは4~8μm、好ましくは4~7μm、より好ましくは5~7.5μmである。
【0235】
一実施形態により出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末の平均又はd50粒径は、0.75~7μm、好ましくは0.75~6.5μm、好ましくは0.75~6μm、好ましくは1~7μm、好ましくは1.5~7μm、好ましくは2~7μm、より好ましくは2~6μmである。酸化アルミニウム粉末は、通常、4~18m/g、好ましくは4~15m/g、好ましくは4~12m/g、好ましくは4~10m/g、好ましくは6~18m/g、好ましくは6~15m/g、好ましくは6~12m/g、好ましくは6~10m/g、好ましくは6~8m/gの比表面積(SSA)を有する。酸化アルミニウム出発材料の純度は、ICPMS法を使用して測定して、典型的には99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.9975%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9995%超、好ましくは99.9999%超である。これに対応して、アルミナ粉末の不純物含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは1ppm以下であり得る。
【0236】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd10粒径は、好ましくは0.1~0.5μm、好ましくは0.1~0.4μm、好ましくは0.1~0.3μm、好ましくは0.2~0.5μm、好ましくは0.3~0.5μm、好ましくは0.4~0.5μm、好ましくは0.1~0.2μmである。
【0237】
一実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd50粒径は、通常、2~8μm、好ましくは2~7μm、好ましくは2~6μm、好ましくは3~8μm、好ましくは4~8μm、好ましくは5~8μm、より好ましくは2.5~5μmである。
【0238】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd90粒径は、好ましくは15~40μm、好ましくは15~30μm、好ましくは15~25μm、好ましくは20~40μm、好ましくは30~40μm、好ましくは20~30μmである。
【0239】
酸化アルミニウム粉末は、典型的には、4~18m/g、好ましくは4~14m/g、好ましくは4~10m2/g、好ましくは4~6m2/g、好ましくは6~18m/g、好ましくは6~14m/g、好ましくは8~18m/g、好ましくは10~18m/g、好ましくは8~10m/g、好ましくは6~10m/gの比表面積を有する。
【0240】
酸化アルミニウム出発材料の純度は、典型的には、ICPMS法を用いて測定して、99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9995%超である。これに対応して、アルミナ粉末の不純物含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下であり得る。
【0241】
酸化ジルコニウム粉末は、最大1体積%で使用される場合、0.08~0.20μmのd10、0.3~0.7μmのd50、及び0.9~5μmのd90を有する粒径分布を有し得る。本発明の一実施形態による混合物の出発材料として使用される酸化ジルコニウム粉末の平均粒径は0.3~1μmであってもよい。
【0242】
ジルコニア粉末は、典型的には、1~16m/g、好ましくは2~12m/g、より好ましくは5~9m/gの比表面積を有し、ジルコニア粉末出発材料の純度は、典型的には、99.5%超、好ましくは99.8%超、好ましくは99.9%超、好ましくは99.99%超である。これは、5000pm以下、好ましくは2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、好ましくは100ppm以下の総不純物含有量に相当する。本明細書で使用されるジルコニアは、多くの市販のジルコニア粉末で一般的であるように、約2~5mol%の少量のHf又は他の安定剤を含んでもよい。
【0243】
アルミナ粉末とマグネシア粉末を組み合わせて第2の粉末混合物を作製することは、工程a)で開示された材料及び方法に従って実施することができる。
【0244】
本明細書に開示される方法の工程c)は、第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物を、熱を加えて粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行い、第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を形成することによって、焼成することを含む。この工程は、水分を除去することができ、粉末混合物の表面状態が焼結前に均一になるように行うことができる。熱処理工程による焼成は、600℃~1200℃、好ましくは600℃~1100℃、好ましくは600℃~1000℃、好ましくは600℃~900℃、好ましくは700℃~1100℃、好ましくは800℃~1100℃、好ましくは800℃~1000℃、好ましくは850℃~950℃の温度で行うことができる。焼成は、酸素含有環境において、4~12時間、好ましくは4~10時間、好ましくは4~8時間、好ましくは6~12時間、好ましくは4~6時間にわたって行われ得る。焼成後、粉末混合物は、少なくとも第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を形成するために、既知の方法に従って篩い分け及び/又はタンブリング及び/又はブレンドされてもよい。焼成は、比表面積の減少をもたらしても、もたらさなくてもよい。
【0245】
第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物は、0.1~4μm、好ましくは0.2~4μm、好ましくは0.3~4μm、好ましくは0.4~4μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、好ましくは0.1~1μmのd10粒径を有し得る。
【0246】
第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物は、3~50μm、好ましくは3~40μm、好ましくは3~30μm、好ましくは3~20μm、好ましくは3~10μm、好ましくは5~50μm、好ましくは10~50μm、好ましくは20~50μm、好ましくは30~50μm、好ましくは3~8μm、好ましくは5~10μm、好ましくは6~15μmのd50粒径を有し得る。
【0247】
第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物は、10~350μm、好ましくは10~300μm、好ましくは10~250μm、好ましくは10~200μm、好ましくは10~175μm、好ましくは10~150μm、好ましくは10~100μm、好ましくは10~75μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは10~25μm、好ましくは20~350μm、好ましくは40~350μm、好ましくは60~350μm、好ましくは100~350μm、好ましくは150~350μm、好ましくは200~350μm、好ましくは12~330um、好ましくは100~330μm、好ましくは100~250μmのd90粒径を有し得る。
【0248】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるより高い温度焼成条件は、結晶相の形成及び焼成粉末混合物の凝集をもたらし得、したがって、全体的な粒径分布のより大きな変動性、特に、より大きなd50及びd90粒径をもたらし得る。他の実施形態では、本明細書に開示されるより低い温度の焼成条件は、出発材料と比較して、焼成粉末混合物の粒径分布に影響を及ぼさない場合があり、それによって、粒径分布は、出発粉末材料と同じ範囲内にあるか、又は類似している。ロット間の変動及び焼成中の熱伝達の管理も粒径分布に寄与し得る。したがって、広い範囲の粒径分布、特に粉末混合物のd50及びd90粒径は、本明細書に開示される焼成条件から生じ得る。
【0249】
第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物は各々、ASTM C1274に従って測定して、約1m/g~約18m/g、好ましくは約1m/g~約14m/g、好ましくは約1m/g~約10m/g、好ましくは約1m/g~約8m/g、好ましくは約2m/g~約18m/g、好ましくは約2m/g~約14m/g、好ましくは約2m/g~約10m/g、好ましくは約3m/g~約9m/g、好ましくは約3m/g~約6m/gの比表面積(SSA)を有し得る。
【0250】
焼成後の第2の粉末混合物は、特に、3~9m/g、3~8m/g、好ましくは3~7m/g、好ましくは3~6m/g、好ましくは4~9m/g、好ましくは5~9m/g、好ましくは6~9m/g、好ましくは4~7m/gの比表面積を有することができる。焼成後、粉末混合物は、公知の方法に従って、篩い分け、タンブリング、ブレンド化、及びそれらの組み合わせがなされ得る。表3は、例示的な焼成粉末混合物309の特性を示す。
【表4】
【0251】
第1の焼成粉末混合物は、第1の焼成粉末混合物の質量に対して、5~200ppm、好ましくは5~150ppm、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10~100ppm、好ましくは10~80ppm、好ましくは10~60ppm、好ましくは10~40ppm、好ましくは20~80ppm、好ましくは30~60ppmの総不純物含有量を有し得る。
【0252】
表4は、少なくとも1つの第2の層(すなわち、マグネシウムアルミネートスピネル層)に形成される前の例示的な前駆体粉末混合物のICPMS純度の結果を示す。
【表5】
*N/Aは粉末混合物を形成する出発粉末中に存在する元素を表す。
【0253】
表5は、少なくとも1つの第1の層(すなわち、多結晶YAG層)に形成される前の例示的な前駆体粉末混合物10のICPMS純度の結果を示す。
【表6】
*N/Aは粉末混合物を形成する出発粉末中に存在する元素を表す。
【0254】
表4~5の各々について、N/Dは、元素がICPMSの報告限界未満で検出されたことを示す。報告された純度は、焼結後の5つの粉末混合物ロットの平均にわたるものである。
【0255】
第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物の各々は、5~200ppm、好ましくは5~150ppm、好ましくは100ppm未満、好ましくは75ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは8ppm未満、好ましくは5ppm未満、好ましくは5~50ppm、好ましくは5~30ppm、好ましくは3~20ppmの総不純物含有量を有し得る。
【0256】
本明細書に開示される方法の工程d)は、第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出すことを含む。本明細書に開示されるプロセスで使用される放電プラズマ焼結(SPS)装置は、通常は円筒形グラファイトダイである少なくとも1つのグラファイトダイを含む。グラファイトダイにおいて、第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物は、2つのグラファイトパンチの間に別々に配置されて、少なくとも2つの別々の層を形成する。
【0257】
好ましい実施形態では、SPSツールは、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、内壁が、少なくとも1種のセラミック粉末を受け入れることができる内部容積を画定する直径を有する、ダイと、ダイと動作可能に連結された上部パンチ及び下部パンチとを含み、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも一方がダイの内容積内で移動するとき、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間にギャップを画定し、ギャップは10μm~100μmの幅である。好ましくは、ダイ及びパンチはグラファイト製である。そのようなSPSツールは、2020年10月3日に出願された米国特許仮出願第63/087,204号に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0258】
実施形態では、2つ以上の焼成粉末混合物をグラファイトダイ内に配置することができる。当業者に公知の真空条件は、ダイによって取り囲まれたパンチ間の粉末内に確立される。典型的な真空条件としては10-2~10-3トルの圧力が挙げられる。主に、空気を除去してグラファイトを燃焼から保護するため、及び粉末混合物から空気の大部分を除去するために、真空が適用される。粉末混合物の配置の順序は、多層焼結セラミック体及びそれから形成される構成要素の所望の構造を達成するために、必要に応じて逆にするか又は繰り返すことができる。実施形態では、第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物の層は、焼結中にグラファイトダイ内に配置されたときに隣接しており、その後、焼結して第1及び第2の隣接層を形成し、それによって多層焼結セラミック体の界面104を形成する。少なくとも1つの第1の焼成粉末混合物及び少なくとも1つの第2の焼成粉末混合物をツールセットによって画定される容積内に配置することは、典型的には、第1の焼成粉末混合物と第2の焼成粉末混合物との混合をもたらし、それによって、本明細書に開示される方法によって生成される多層焼結体の特徴である非線形界面の上述のような屈曲度を作り出す。この非線形界面は、少なくとも1つの第1の層と第2の層との間に、実質的に線形(又は一次元)の界面を有する少なくとも1つの積層体又は予備焼結体から形成された積層体及び焼結体のものとは有意に異なるインターロッキング効果及び向上した接着を提供することができ、したがって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、積層物又は積層体ではない。少なくとも第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物は、焼結装置のツールセットに直接装入され、夾雑の一因となり得る結合剤、分散剤などの使用などの予備焼結工程なしで焼結され得る。
【0259】
開示されたプロセスは、ミクロンサイズの平均粒径分布を有する市販の出発粉末、又は焼結前にグリーン体を形成するか又はそれを機械加工する必要なしに化学合成技術から調製されたものを利用する。
【0260】
開示されたプロセス及び粉末材料から得られる多層焼結セラミック体に関連する高密度及び低気孔率は、初期粉末中に結合剤又は焼結助剤を使用することなく達成される。他の焼結技術は、焼結温度を低下させるために焼結助剤の使用を必要とし、これは、エッチング性能及び高密度化に悪影響を及ぼし得る。ポリマー結合剤もまた、多くの場合、前述のグリーン体を形成するために使用され、これは、バーンアウト時の残留多孔性及びより低い密度に寄与し得る。結合剤又は焼結助剤は、本明細書に開示される焼結耐食性セラミック体又はそれから形成される多相焼結構成要素の作製において必要とされない。
【0261】
本明細書に開示される方法の工程e)は、焼結温度まで加熱しながら第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物の層に圧力を加え、焼結を行って多層焼結セラミック体を形成する工程であって、焼結後の第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成する、工程と、f)多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、を含み、少なくとも第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物がダイ内に配置された後、圧力が、グラファイトパンチ間に配置された焼成粉末混合物に軸方向に加えられる。圧力は、5MPa~100MPa、好ましくは5MPa~60MPa、好ましくは5MPa~40MPa、好ましくは5MPa~20MPa、好ましくは10MPa~60MPa、好ましくは10MPa~40MPa、好ましくは10MPa~30MPa、好ましくは10MPa~20MPa、好ましくは15MPa~60MPa、好ましくは15MPa~40MPa、好ましくは15MPa~30MPa、好ましくは20MPa~40MPa、好ましくは15MPa~20MPaに達するまで上昇する。
【0262】
ダイに準備された粉末混合物に熱を加えることによって、1000~1700℃、好ましくは1200~1700℃、好ましくは1400~1700℃、好ましくは1500~1700℃、好ましくは1600~1700℃、好ましくは1200~1600℃、好ましくは1200~1400℃、好ましくは1400~1600℃、好ましくは1500~1600℃の焼結温度が容易になる。焼結は、典型的には、0.5~180分、好ましくは0.5~120分、好ましくは0.5~100分、好ましくは0.5~80分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~40分、好ましくは0.5~20分、好ましくは0.5~10分、好ましくは0.5~5分、好ましくは5~120分、好ましくは10~120分、好ましくは20~120分、好ましくは40~120分、好ましくは60~120分、好ましくは80~100分、好ましくは100~120分、好ましくは30~60分、好ましくは15~45分の時間で達成され得る。特定の実施形態では、焼結は等温保持時間なしで達成され得、焼結温度に達したら、本明細書に開示される冷却速度が開始される。プロセスの工程f)によれば、セラミック焼結体は、熱源の除去によって受動的に冷却される。必要に応じてのアニーリングプロセスを容易に得る温度に達するまで、自然対流又は強制対流を使用することができる。
【0263】
好ましい実施形態では、粉末混合物は焼結装置のパンチ及びダイによって直接加熱される。ダイ及びパンチは、抵抗加熱/ジュール加熱を容易にするグラファイトなどの導電性材料から構成されていてよい。焼結装置及び手順は米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0264】
圧力下で粉末層を焼結することにより、共圧縮された単一の多層体が形成される。開示される方法によれば、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層は、方法の工程e)の間に、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層へとin-situで同時に形成される。少なくとも1つの層及び少なくとも1つの第2の層への少なくとも1つの第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物のこの単一工程同時焼結は、多層焼結セラミック体の向上した接着性、高い機械的強度及び改善された平坦性を提供することができる。少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2の層のCTEの一致は、特に本明細書に開示される焼結温度の範囲にわたって、焼結後の冷却時に少なくとも1つの第2の層と少なくとも1つの第1の層との間の界面におけるCTEの不一致による応力の発生を防止し、したがって高い界面強度及び接着性を有する大きな寸法の多層焼結セラミック体の形成を可能にする。一方の層は多結晶YAGを含み、他方の層はマグネシウムアルミネートスピネル(多結晶でもある)を含む。図16に見られるように、YAG及びスピネルは、広い温度範囲にわたって厳密に一致するCTEを有する。
【0265】
焼結中、典型的には体積の減少が生じ、その結果、セラミック焼結体は、焼結装置のツールセットに配置したときの出発粉末混合物の体積の約3分の1の体積を有し得る。
【0266】
本開示による焼結装置の温度は、通常、装置のグラファイトダイ内で測定される。それにより、示された温度が実際に焼結される粉末混合物内で実現されるように、処理される粉末混合物に可能な限り近い温度が測定されることが好ましい。
【0267】
圧力及び温度の適用の順序は、本明細書に開示されるように変動し得る。一実施形態では、示された圧力が加えられてもよく、その後、所望の焼結温度を達成するために熱が加えられてもよい。別の実施形態では、所望の焼結温度を達成するために熱が加えられてもよく、その後、示された圧力が加えられてもよい。更なる実施形態では、温度及び圧力は、焼結される粉末混合物に同時に加えられ、示された値に達するまで上昇し得る。
【0268】
開示される方法は、特定の焼結前時間に達するまで、1~100℃/分、好ましくは2~50℃/分、より好ましくは5~10℃/分の特定の加熱勾配を有する焼結前工程を含み得る。
【0269】
開示される方法は、特定の焼結前時間に達するまで、0.50MPa/分~30MPa/分、好ましくは0.75MPa/分~10MPa/分、より好ましくは1~5MPa/分の特定の圧力勾配を有する焼結前工程を含み得る。
【0270】
本明細書に開示される方法は、上述の特定の加熱勾配及び上述の特定の圧勾配を有する焼結前工程を含み得る。
【0271】
前述の予備焼結工程において、温度及び圧力は10分~360分の期間にわたって維持される。
【0272】
誘導加熱又は輻射加熱の方法もまた、焼結装置を加熱してツールセット内の粉末を間接的に加熱するために使用することができる。
【0273】
本明細書に開示される方法の工程g)は、必要に応じて、熱を加えて多層焼結セラミック体の温度を、アニーリングを行うアニーリング温度に達するように上昇させることによって多層焼結セラミック体(又はそれから形成される構成要素)をアニーリングすることと、h)アニーリングした多層焼結セラミック体の温度を低下させることとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、必要に応じてのアニーリング工程を更に含んでもよい。本開示の実施形態による必要に応じてのアニーリング工程において、多層焼結セラミック体は、焼結装置から取り出し、約900~約1800℃、好ましくは約1250~約1700℃、より好ましくは約1300~約1650℃、より好ましくは約1400~約1600℃の温度の炉内でアニーリングすることによってアニーリング手順に供されてもよい。
【0274】
実施形態では、多層焼結セラミック体の必要に応じてのアニーリングは、0.5℃/分~50℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~5℃/分の加熱及び/又は冷却速度で行われてもよい。
【0275】
必要に応じてのアニーリング工程の持続時間は、1~24時間、好ましくは1~18時間、好ましくは1~16時間、好ましくは1~8時間、好ましくは4~24時間、好ましくは8~24時間、好ましくは12~24時間、好ましくは4~12時間、好ましくは6~10時間であり得る。
【0276】
一実施形態では、本開示によるアニーリングは、焼結プロセスの後、焼結装置内で行われてもよい。アニーリングの必要に応じてのプロセスは、酸化条件下で行われてもよい。アニーリングは、化学量論的補正のための酸素空孔の低減及び焼結体又は構成要素における応力の低減を通じて、多層焼結セラミック体又はそれから製造される構成要素の化学的及び物理的特性の改善をもたらす。焼結耐食性構成要素をアニーリングする必要に応じてのプロセス工程は、酸化雰囲気中で行われ、それによってアニーリングプロセスは、アルベドの増加、機械的取り扱い性の改善及び空隙率の減少を提供し得る。
【0277】
いくつかの実施形態では、アニーリングの工程は、ガラス、セラミック及び金属のアニーリングに使用される従来の方法によって行われてもよく、精密化の程度は、アニーリング温度及びアニーリングが行われる持続時間によって選択されてもよい。他の実施形態では、アニーリングは、焼結セラミック体に対して行われなくてもよい。
【0278】
多層焼結セラミック体をアニーリングする必要に応じてのプロセス工程が行われた後、焼結された、場合によってはアニーリングされた多層焼結セラミック体の温度は、工程h)に従って焼結セラミック体又はそれから製造された構成要素への熱源の除去によって周囲温度まで下げられる。焼結及びアニーリングした多層焼結セラミック体又はそれから製造された構成要素は、その後、アニーリング工程が焼結装置の外部で行われる場合には炉から取り出されるか、又はアニーリングが焼結装置内で行われる場合にはツールセットから取り外される。
【0279】
改善された多層焼結セラミック体及びその製造方法、特にプラズマエッチングチャンバで使用するための大きな本体サイズのものが本明細書に開示される。開示される多層焼結セラミック体は、焼結体の最長伸長部に関して、100mm~約625mmのサイズを有し得る。
【0280】
本明細書に開示されるプロセスは、最大細孔径に対する改善された制御、特に少なくとも1つの第1の層内のより高い密度、多層構成要素の層間の改善された接着性、改善された機械的強度、したがって多層焼結セラミック体の取り扱い性、及び多層焼結セラミック体の格子内の酸素空孔の減少を提供する。
【0281】
一実施形態による多層焼結セラミック体の前述の特性は、特に、第1の粉末及び第2の粉末の純度、第1の粉末及び第2の粉末に加えられる圧力、第1の粉末及び第2の粉末の焼結のための加熱中の温度、焼結の持続時間、必要に応じてのアニーリング工程中の焼結構成要素の温度、必要に応じてのアニーリング工程中の環境、及び必要に応じてのアニーリング工程の持続時間を適合させることによって達成される。
【0282】
開示されるプロセス工程は、開示されるものとは異なる順序及び反復を有してもよく、特定の順序又は特定の回数の反復で行われなくてもよい。更に、開示されたもの以外の追加の粉末を使用してもよいことが理解されよう。焼結助剤を含まず、99.9%~99.9999%、好ましくは99.99%~99.9999%、好ましくは99.999%~99.9999%、より好ましくは99.9995%~99.9999%の純度を有する高純度希土類元素又は化合物を出発材料として使用することにより、半導体製造装置などのプラズマ処理を伴う装置における多層耐食性部材としての使用に特に好適な改善されたプラズマ耐性を提供する、本明細書に開示される高純度の焼結多層耐食性体の製造が可能になる。更に、本明細書に開示されるプロセスは、少なくとも1つの第2の層102及び耐食性の少なくとも1つの第1の層100を接合するための焼結工程の前に、グリーン体又は焼結体の形成を必要としない。本明細書に開示される多層耐食性焼結体は、グリーン体、ポリマー結合剤又は焼結助剤を使用することなく単一のプロセス工程内で焼結される粉末から直接形成される。
【0283】
本明細書に開示される実施形態による圧力及び電流支援プロセスは、大きな多層焼結セラミック体の調製における使用に適している。開示されるプロセスは、迅速な粉末圧密及び高密度化を提供し、焼結セラミック体において約10um以下の最大結晶粒サイズを保持し、最大寸法にわたって少なくとも1つの第1の相及び第2の相内で高密度及び低気孔率を達成する。密度の変動を低減することは、本明細書に開示される範囲内の少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との間のCTE一致に加えて、取り扱い性を改善し、セラミック焼結体における全体的な応力を低減し得る。微細な結晶粒サイズ、均一及び高い密度並びにCTE一致のこの組み合わせは、機械加工、取り扱い性及び半導体処理チャンバ内の構成要素としての使用に適した大きな寸法の高強度多層焼結セラミック体を提供する。
【0284】
放電プラズマ焼結によって調製される多層焼結セラミック構成要素が、プラズマエッチング及び堆積処理チャンバにおける使用のために提案される。本明細書に開示される多層構成要素を含み得るチャンバ構成要素の例としては、基板支持アセンブリ、例えばウェハチャック又はウェハパック、静電チャック(ESC)、リング(例えば、プロセスキットリング若しくはシングルリング)、チャンバ壁、ベース、ガス分配プレート、シャワーヘッド、ライナ、ライナキット、シールド、プラズマスクリーン、流量平衡器、冷却ベース、チャンバビューポート、ウィンドウ、RFウィンドウ、誘電体ウィンドウ、チャンバリッド、ガスインジェクタ、アイソレータ、プラズマアダプタ、ディフューザ、ガス混合マニホールド、ガスボックス、イオン制限要素などが挙げられる。
【0285】
本明細書に開示される方法及び組成物は、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、それらに限定されるとみなされないことが理解されるべきである。
【実施例
【0286】
以下の実施例は、本開示の全体的な性質を実証するために含まれる。これらの実施例は本開示を例示するものであり、制限するものではない。
【0287】
本開示による多層焼結セラミック体及びそれから製造され得る構成要素を以下に開示する。実施例の項に開示される測定は、本明細書に記載される手順に従って行われる。
【0288】
本明細書に開示される実施例に従った多層焼結セラミック体は、予備焼結体、鋳造体若しくはグリーン体、又はテープ、膜若しくは積層体を形成することなく、焼成粉末混合物から単一の焼結工程で形成される。
【0289】
以下の実施例の各々に使用されるSPSツールは、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイを含み、内壁は、少なくとも1つのセラミック粉末を受け入れることができる内部容積を画定する直径と、ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチとを含み、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって上部パンチ及び下部パンチの少なくとも一方がダイの内容積内で移動するときに上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間にギャップを画定し、ギャップは10μm~100μmの幅であり得た。
【0290】
出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の粒径は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaモデルLA-960レーザー散乱粒径分布分析器を使用して測定した。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の比表面積は、ほとんどの試料について0.01~2000m/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoriba BET Surface Area AnalyzerモデルSA-9601を用いて測定した。比表面積(SSA)測定は、ASTM C1274に従って行った。
【0291】
実施例1:第1の層のときYAGを含み、第2の層のときマグネシウムアルミネートスピネルを含む多層焼結セラミック体(予測)
【0292】
第1の粉末混合物及び第2の粉末混合物から多層焼結セラミック体を形成した。第1の粉末混合物は、本明細書に開示されるYAGを含む第1の層100を形成する比率で組み合わされたアルミナ及びイットリアを含んでいた。第2の粉末混合物は、マグネシウムアルミネートスピネルを含む第2の層を形成する比率でマグネシア及びアルミナを含んでいた。
【0293】
第1の粉末混合物は、5.5~9m/gの比表面積(specific surface area:SSA)、0.05~1μmのd10粒径、2~6μmのd50粒径、15~30μmのd90粒径を有するアルミナ粉末と、1.75~3.5m/gの比表面積、2~4μmのd10粒径、5~9μmのd50粒径、及び10~14μmのd90粒径を有するイットリア粉末とを含んでいた。アルミナ粉末の平均不純物含有量は、3つの粉末ロットにわたって測定して約6ppmであり、100%純粋なアルミナに対して約99.9994%の純度に相当した。イットリア粉末の平均不純物含有量は、5つの粉末ロットにわたって測定して約17ppmであり、100%純粋なイットリア粉末に対して約99.9983の純度に相当した。本明細書に開示されるICPMSを使用してより軽い元素の存在を検出するための報告限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すれば、より重い元素、例えば原子番号がSc以上の元素は、例えばLiからCaなどの軽い元素(例えば約2ppm以下の精度で検出される)よりも高い精度(例えば1ppm以下の精度)で検出される。Li、Ca及びMgなどのより軽い元素を検出するためのICPMSの使用は、約2ppm以上の信頼の範囲内で行うことができる。Li、Ca及びMgは、当業者に知られているICPMSを使用して、イットリア及びアルミナ粉末中に検出されず、したがって、イットリア及びアルミナ粉末は、フッ化リチウム、カルシア及びマグネシアの形態で約2ppm以下のLi、Ca及びMgを含む。Siは、当業者に知られているICPMSを使用して、イットリア粉末及びアルミナ粉末中に検出されず、したがって、イットリア粉末及びアルミナ粉末は、シリカの形態で約14ppm以下のSiを含む。
【0294】
イットリア粉末及びアルミナ粉末は、焼結後にYAG(酸化イットリウムアルミニウム、ガーネット相)を含む少なくとも1つの第1の層を形成する比率で組み合わせた。アルミナ粉末とイットリア粉末を組み合わせて第1の粉末混合物を作製することは、当業者に知られている湿式ボールミリングを使用して行われ、高純度(>99.9%)アルミナ媒体が、粉末重量に対して約55%~約65%の添加量で使用された。スラリー重量で約35%~約45%のエタノールでスラリーを形成した。スラリーを約150のRPMで約15時間ミリングし、その後、当業者に公知の方法に従って乾燥、タンブリング、及び篩い分けを行い、第1の粉末混合物を形成した。第1の粉末混合物を850℃で6時間焼成した。第1の焼成粉末混合物は、3~5m/gの比表面積、及び3~12μmのd50粒径を有していた。第1の焼成粉末混合物は、マグネシアMgOの形態の約1ppm以下のMg、約0.5ppm以下のLi、及び約5ppm以下のナトリウムを含む、約8ppmの総不純物(ICPMSを使用して測定)を有していた。Siは、本明細書に開示されるICPMS法を用いて、第1の焼成粉末混合物中に検出されず、したがって、ICPMS法の精度内で、第1の焼成粉末混合物は、シリカの形態で約14ppm以下のSiを含む。(焼結後にYAGを形成するようにバッチ処理した)第1の焼成粉末混合物は、当業者に知られているように、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行うことができる。
【0295】
第2の粉末混合物は、以下のようにマグネシア粉末及びアルミナ粉末を含んでいた。6ppmの総不純物に相当する99.9994%の総純度、4~6m/gの表面積、及び3~4μmの平均又はd50粒径を有するマグネシアの粉末を、5ppmの総不純物に相当する99.9995%の総純度、6~8m/gの表面積、及び2.5~4.5μmの平均又はd50粒径を有するアルミナの粉末と組み合わせた。焼結時に立方晶結晶構造を有するスピネル、MgAlを形成するモル比で粉末混合物を生成するように、粉末を相対量で秤量した。粉末を、高純度(99.99%)アルミナ媒体及びエタノールと各々等しい重量で混合して、スラリーを形成した。ボールミリングを150rpmで12時間の持続時間にわたって行い、ロータリーエバポレーターを用いてスラリーを乾燥させた。粉末混合物を、酸素含有環境中、850℃で4時間、焼成した。焼成粉末混合物は、必要に応じて、焼成後に、当該分野で公知の方法を使用して篩い分けされ得る。X線回折測定の検出限界内で、焼成粉末混合物は、図12に示すように、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの存在を示した。焼成粉末混合物の特性を表3に列挙する。
【0296】
第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第1の層、及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第2の層を形成し、容積内に10-2~10-3トルの真空条件を作り出した。少なくとも1つの第1の焼成粉末混合物及び少なくとも1つの第2の焼成粉末混合物をツールセットによって画定される容積内に配置することは、典型的には、第1の焼成粉末混合物と第2の焼成粉末混合物との混合をもたらし、それによって、焼結後に少なくとも1つの第1の層と第2の層との間に非線形界面を作り出す。
【0297】
焼成粉末混合物の層を、1600℃の焼結温度に60分間加熱しながら、第1の焼成粉末混合物の及び第2の焼成粉末混合物の層に15MPaの圧力を加えることによって共圧縮して、焼結を行い、最大寸法572mmを有する単一の多層焼結セラミック体を形成した。
【0298】
例示的なマグネシウムアルミネートスピネル焼結体について密度を別個に測定し(本明細書に開示されるものと同様の温度、圧力及び持続時間の条件下で調製される)、密度(アルキメデス水浸漬法を使用)が3.47g/cc又は理論密度の97%であると測定された。(本明細書に開示されるものと同様の温度、圧力、及び持続時間の条件下で調製された)例示的なYAG焼結体について密度を別個に測定し、密度は、YAGの理論密度の99%超に対応する4.55g/ccであると測定された(バルクYAGの市販の単結晶試料は、5回の測定にわたって4.56g/ccのアルキメデス密度を有すると測定され、この値は、本明細書で使用されるYAGの理論密度とみなされる)。2つの測定値は、本明細書に開示されるアルキメデス密度測定値の測定分散内にあり、したがって、少なくとも1つの第1の層を含む多結晶YAGは、理論値の約100%の密度を有し得る。
【0299】
実施例2:多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層
【0300】
約1~2m/gの比表面積、3.5~6.5μmのd10粒径、7.5~10.5μmのd50粒径及び15~20μmのd90粒径を有するイットリアの粉末(100%純粋なイットリアに対して約99.9992%の純度)と、5~7m/gの比表面積、1~3μmのd10粒径、3.5~6.5μmのd50粒径及び50~70μmのd90粒径を有するアルミナの粉末(100%純粋なアルミナに対して約99.9998%の純度)とを、焼結後に立方晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む少なくとも1つの第1の層を形成する第1の粉末混合物を形成するモル比で組み合わせた。高純度アルミナ媒体(ICPMS法によって測定して≧99.9%)を粉末重量で約100%の装入量で添加し、エタノールをエタノールと粉末との合計重量で約40%の量で添加してスラリーを形成した。150rpmで横軸を中心とした軸転作用を使用するボールミリングを20時間行い、その後、エタノールを、既知の方法による回転蒸発を使用して粉末混合物から抽出した。空気中、1050℃で6時間焼成すると、焼成粉末混合物は、2~4m/gの比表面積、1~4μmのd10粒径、3.5~6.5μmのd50粒径及び75~95μmのd90粒径を有すると測定された。粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、例えば45~400umの開口径を使用して篩い分けされ得、当業者に公知の方法に従って様々なプロセス工程で焼成、ブレンド及び/又はミリングされ得る。純度を、本明細書に開示されるICPMS法を用いて測定し、全構成成分から計算される酸化物の総質量に対して約5ppmの焼成粉末混合物の総不純物含有量が測定され、これは99.9995%の純度に相当していた。イットリア及びアルミナの出発粉末、並びに本明細書に開示される焼成粉末混合物の純度限界及び不純物含有量には、Siは含まれない。Siについて本明細書に開示される純度を測定するためにICPMS法を使用する検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末並びに焼成粉末混合物は、約14ppm以下の検出レベルでシリカの形態のSiを含み得る。
【0301】
焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に入れ、10-2~10-3トルの真空条件を容積内に作り出した。
【0302】
5MPaの圧力を加え、容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から約10℃/分で800℃まで加熱し、その後、圧力を約0.4~約0.6MPa/分の速度で上昇させ、昇温を前で開示したように継続して1500℃及び20MPaで30分間の焼結条件に到達させて、多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。多結晶YAG焼結セラミック体の一部を同じ条件に従って焼結し、その後、炉内にて空気中1400℃で8時間アニーリングした。密度測定は、ASTM B962-17に従って、焼結されたままの多結晶YAG焼結セラミック体及びアニーリングされた多結晶YAG焼結セラミック体について行った。4.547g/cc及び4.542g/ccの密度は、それぞれ、焼結されたままのYAG焼結セラミック体試料及びアニーリングされたYAG焼結セラミック体試料について5回の測定にわたって平均化した。これは、YAGについての理論密度の99.81%及び99.70%に対応し、本明細書に開示される密度測定から計算されるように、それぞれ0.19%及び0.30%の対応する体積多孔率に対応する。
【0303】
多結晶YAG焼結セラミック体の結晶相純度の測定は、本明細書に開示されるように、XRD、SEM撮像、及び画像処理ソフトウェアの使用の組み合わせを使用して行われた。XRDは、約+/-5体積%までの結晶相同定が可能なPANanlytical AerisモデルXRDを使用して行われ、したがって、この実施例による多結晶YAG焼結セラミック体は、XRDを使用して約95体積%の上限までYAGを含むと測定された。より高い精度で、例えば約99.8%以下の相純度を決定するために、当業者に知られている後方散乱検出(BSD)法を用いて、SEM画像を撮影した。BSDを用いると、YAG相は灰色に見え、結晶粒配向に多少依存して変化し、酸化アルミニウム相は黒色に見え、酸化イットリウム相は白色に見え、多孔性も、存在する場合は黒色に見える。多結晶YAG焼結セラミック体に対応する図5a)に示されているように、YAG相、アルミナ相及びイットリア相、並びに存在する任意の多孔性を同定するために、当業者に知られているBSD法を使用して5000倍で画像を撮影した。アルミナを含む黒色領域と多孔性を含む黒色領域とを区別するために、図5b)の同じ領域に示されるように、多孔性又はアルミナのいずれかを含み得る領域を強調するために、ImageJ処理ソフトウェアを用いてBSD画像を黒と白の閾値で処理した。本明細書に開示される測定のために使用されるBSD検出器は、トポグラフィ特徴を測定する更なる能力を有し、それによって、多孔性などの表面トポグラフィにおける任意のばらつきを強調する。BSD検出器のトポグラフィモードを使用して、図5a)の多結晶YAG焼結セラミック体のセラミック焼結体の同一領域の表面を5000倍で撮影し、そのトポグラフィ画像を図6a)に示す。多孔性を含む領域は、ImageJにおける閾値処理後に図6b)に示されるように強調された。その後、図6b)のトポグラフィ画像内の多孔性を含む面積を、図5b)のBSD画像内のアルミナ及び/又は多孔性を含む面積から差し引き、多結晶YAG焼結セラミック体に対応する焼結セラミック体中のアルミナを含む面積%、したがって体積%を得た。これらの分析ツール及び方法の組み合わせは、約+/-0.1体積%までの相純度の決定を提供し得る。アルキメデス密度測定、XRD、SEM撮像及び画像分析ソフトウェアの開示された方法を用いて、この実施例による多結晶YAG焼結セラミック体は、約0.2体積%のアルミナ相、約0.19体積%の多孔率、及び約99.6体積%のYAG相を含み得る。この例による多結晶YAG焼結セラミック体は、本明細書に開示されるプロセスに従って作製された一体型ボディを含むことができ、したがって、表面上及び本体全体にわたって分布したYAG相、酸化アルミニウム相、及び体積多孔率を含み得る。換言すれば、表面上で測定される構造は、バルク焼結セラミック体の体積内の構造を表す。したがって、各々90~99.8体積%、好ましくは90~99.6体積%、好ましくは90~99.4体積%、好ましくは95~99.8体積%、好ましくは95~99.6体積%、好ましくは95~99.4体積%の量のYAG相を含む多結晶YAG焼結セラミック体は、本明細書に開示される材料及び方法を用いて形成され得る。測定のばらつきを考慮して、本明細書で特定される量のYAG相を含む多結晶YAG焼結セラミック体は、0.1~0.3体積%の量の多孔率、及び0.1~約0.3体積%の量の酸化アルミニウムを更に含み得る。
【0304】
この実施例による多結晶YAG焼結セラミック体の形成方法及び特性(特に、開示されるように、YAGの高い相純度、低い多孔率、及び焼結セラミック体中に残留する程度までの残留アルミナ)は、本明細書に開示されるYAGを含む単一の多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層の形成方法及び特性に従う。したがって、単一の多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層は、約99.4~99.8%の体積量の多結晶YAGを含み、0.1~0.3%の体積量の多孔率を更に含み、0.1~約0.3%の体積量の酸化アルミニウムを含み得る。
【0305】
実施例3:比較試験
【0306】
評価のために5つの6インチディスク例を準備した。最初の3つはマグネシウムアルミネートスピネルであり、4番目はマグネシウムアルミネートスピネル+1体積%のジルコニアであり、最後の例はマグネシウムアルミネートスピネル+1体積%のイットリウムであった。全ての出発粉末は高純度であった。材料及び条件の概要は以下の通りである。
試料:119U21C
6インチディスク
粉末(焼成:3C/分~800C.6時間保持)
粉末組成:アルミナ及びマグネシア(D50-0.5um、SSA-8.5m/g)
4LのNalgene容器、1000gのAl 10mm媒体、286gのMgO、717gのAl、1LのEtOH。200rpmで16時間ミリングした。-40メッシュに篩い分けした。
粉末質量:400g(SPS前)
目標温度1650℃
目標圧力:15MPa
滞留:60分
ヤング率(Pa):2.43726E+11
ポアソン比:0.274
密度:NA
ビッカース:1323.3
CTE:50~1500(1E-6/℃):NA
試料187U21C
6インチディスク
粉末:(焼成:3℃/分~800Cで6時間)(約10m/g)
粉末組成:アルミナ/マグネシア(D50-0.5um、SSA-8.5m/g)
4LのNalgene容器、1.1kgの10mmのAl媒体、315gのMgO、794gのAl、1.3LのEtOH。200rpmで15時間ミリングする。-40メッシュに篩い分けした。
粉末質量:500g
目標温度1650℃
目標圧力:15MPa
滞留:60分
ヤング率(Pa):2.68087E+11
ポアソン比:0.283
密度:3.573g/cc
ビッカース:1467.2
CTE:50-1500(1E-6/℃):9.7437
試料190U21C
6インチディスク
粉末:(3℃/分~800Cで6時間焼成した)
粉末組成:マグネシア;アルミナ(高純度)
4LのNalgene、1.1kgの10mmのAl媒体、315gのMgO、790gのAl、1.3LのEtOH。200rpmで15時間ミリングする。-40メッシュに篩い分けした。
粉末質量:500g
目標温度1650℃
目標圧力:15MPa
滞留:60分
ヤング率(Pa):2.72584E+11
ポアソン比:0.283
密度:3.572g/cc
ビッカース:1481.9
CTE:50-1500(1E-6/℃):9.6665
試料195U21C(1体積%のZrO添加剤を有するマグネシウムアルミネートスピネル)
6インチディスク
粉末:(焼成3℃/分~800℃;6時間保持)
粉末組成:アルミナ、マグネシア、イットリア安定化ジルコニア
4LのNalgeneボトル、1kgの10mmのAlミリング媒体、286gのMgO、717gのAl、14.0gのZrO、1.3LのEtOH。200rpmで16時間ミリングした。-40メッシュに篩い分けした。
粉末質量:500g
目標温度1650℃
目標圧力:15MPa
滞留:60分
ヤング率(Pa):3.12928E+11
ポアソン比:0.283
密度:3.594g/cc
ビッカース:1493.6
CTE:50-1500(1E-6/℃):9.6348
試料204U21C(Sasol+Y)(1体積%のYを有するマグネシアアルミネートスピネル
6インチディスク
粉末:(焼成3℃/分~800℃。6時間保持)
粉末組成:アルミナ、マグネシア、酸化イットリウム
4LのNalgene、1.0kgの10mmのAl媒体、719gのAl、286gのMgO、11.5gのY、1.3LのEtOH(再利用)。
粉末質量:500g
目標温度1650℃
目標圧力:15MPa
滞留:60分
ヤング率(Pa):3.15392E+11
ポアソン比:0.283
密度:3.596g/cc
ビッカース:1547.7
CTE:50~1500(1E-6/℃):NA
【0307】
最初の3つの例(119U21C、187U21C、及び190U21C)は、大きすぎる結晶粒及び/又は高すぎる多孔率を示した結晶粒を有していた。試料195U21C(1%安定化ジルコニア)は、より小さい結晶粒及び許容可能なレベルの多孔率を示し、したがって、ジルコニアは、結晶粒を固定することによって結晶粒成長を制限するように見えた。試料204U21C(1%イットリア)は、大きすぎる結晶粒を有していた。驚くべきことに、イットリウムは均一に分布しているようには見えず、結晶粒が大きすぎる領域が生じた。これは、図13において倍率5000倍で見ることができる。
【0308】
実施例4:多層焼結体-マグネシウムアルミネートスピネル上のYAG
【0309】
0.5体積%のジルコニアを含むスピネル上のYAGの22.5インチのディスクを、以下の条件に従って調製した。
試料250F21M
YAG
5Gジャグ、10kgの10mm Al媒体、4745.45gのAl、6265.56gのイットリア、8LのEtOH、20時間のエンドオーバーエンドミリング。
焼成(1050℃で6時間)及び40メッシュ篩いに従う。
スピネル+0.5体積%Zr
アルミナ(高純度)
酸化マグネシウム(D50-0.5um、SSA-8.5m/g)
イットリア安定化ジルコニア
ミリング容器5ガロンジャグ、6kgの10mmのAl媒体、5.390kgのAl、2.147kgのMgO、59.8gのZrO、11LのEtOH。バケットタンブリング20時間、スラリー篩サイズ325メッシュ、ロータリーエバポレーター温度60℃~75℃、ロータリーエバポレーター時間120分、オーブン乾燥温度120℃、オーブン乾燥時間480分、80メッシュ予備焼成篩。
600℃で6時間焼成する(焼成勾配3℃/分)。
SPS前の粉末質量:4.57kg/23.8kg
目標温度:1625℃
目標プレス:15MPa
滞留:120分
研磨後:
YAG層の厚さ:3.5mm
スピネル層の厚さ:26.0mm
【0310】
図14(スピネル層)及び図15(YAG層)を参照すると、試料の結晶粒サイズは良好であったが、両層の多孔率が高すぎた。これは、大きいディスクサイズ(6インチ対22.5インチ)に対して目標温度を低く設定しすぎたためであると考えられる。22.5インチ以上のディスクの最適な目標温度は、120分の滞留で約1700℃である。あるいは、1625℃では、より長い(すなわち、5時間)滞留時間が十分であり得る。
【0311】
後に多層試料250U21Mでスピネルと同じ組成(0.5体積%のジルコニアを含む)を有するマグネシウムアルミネートスピネルの別の試料217U21Cを調製した。Mark-10 7i ESM 1500Sモデル(4点試験)を使用して曲げ強度試験を実施し、結果を表6に列挙する。
【表7】
【0312】
マグネシウムアルミネートスピネル(0.5体積%のジルコニアを含む)の強度は、マグネシウムアルミネートスピネルがジルコニア強化アルミナ(ZTA)の層で予想されるほど強くはないが、マグネシウムアルミネートスピネルが依然として十分な強度を有することを示す(ZTAの約60~65%;段落[00146]に開示されている強度データと比較されたい)。利点は、スピネルがより機械加工しやすく、スピネルは機械加工時間を約50%短縮することである。より詳細には、マグネシウムアルミネートスピネルが支持層として使用される場合、それはセラミック体の厚さの大部分を構成する(スピネルの支持層はYAG層よりも7~8倍厚い)。大型ディスク(22.5インチ以上)の機械加工時間の節約は、14時間にもなり得る。
【0313】
前述の例に基づいて、マグネシウムアルミネートスピネルは、好ましくはいくらかのジルコニア、少なくとも0.1体積%、より好ましくは少なくとも0.5体積%のジルコニアを含む。ジルコニアは、焼結中のスピネル中の結晶粒成長を低減する。しかし、ジルコニアが多すぎると、得られるCTEが図16に示すようにYAGのCTEともはや厳密に一致しない程度にCTEに影響を及ぼすため、望ましくない。CTEが一致しないと、特に少なくとも6インチの直径を有するディスクなどのより大きなサイズの本体の場合、セラミック体の焼結及び冷却中に応力が蓄積する。そのため、スピネルがYAGの支持層となる場合には、スピネル中のジルコニア量を1.0体積%に制限することが好ましい。具体的には、支持層は、反応チャンバ内のプラズマと対向しない面である。
【0314】
本明細書に開示される多層焼結セラミック体の支持層は、真空が反応チャンバに適用されたときにそこから作られた任意の構成要素(例えば、窓、蓋)が内破するのを防止するのに十分な強度を有し、妥当な安全余裕度を有する必要がある。
【0315】
ある特定の実施形態(及び実施例)を参照して上に例示及び説明したが、本開示はそれにもかかわらず、示された詳細に限定されることを意図しない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲及び範囲内で、本開示の趣旨から逸脱することなく、詳細において様々な修正を行うことができる。例えば、本書において記載されている全ての広義の範囲は、広義の範囲に含まれる全ての狭義の範囲もその範囲に含まれることが明示的に意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層焼結セラミック体であって、
多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層であって、前記少なくとも1つの第1の層が、少なくとも1つの表面を有する、少なくとも1つの第1の層と、
マグネシウムアルミネートスピネルを含む少なくとも1つの第2の層と、
を含み、
前記少なくとも1つの第1の層の前記少なくとも1つの表面は、SEMによって測定して、0.1~5μmの最大サイズを有する細孔を含み、
前記少なくとも1つの第1の層及び前記少なくとも1つの第2の層の各々は、25~1400℃の温度範囲にわたってASTM E228-17に従って測定して、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(CTE)を有し、各差を計算するために使用される前記少なくとも1つの第1の層及び前記少なくとも1つの第2の層の前記CTEは、各々同じ温度範囲にわたって測定され、前記少なくとも1つの第2の層は、0.1~1.0体積%のジルコニアを含む、多層焼結セラミック体。
【請求項2】
前記多層焼結セラミック体が、100mm~625mmの最大寸法を有する、請求項1に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項3】
前記細孔が、SEMによって測定して、0.1~2μmの最大サイズを有する、請求項1に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項4】
前記細孔が、SEMによって測定して、0.1~1μmの最大サイズを有する、請求項3に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の層が、0.5体積%のジルコニアを含む、請求項1に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項6】
多層焼結セラミック体の作製方法であって、
a.イットリア粉末とアルミナ粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製する工程と、
b.酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び酸化ジルコニウム粉末を組み合わせて第2の粉末混合物を作製する工程と、
c.前記第1の粉末混合物及び前記第2の粉末混合物を、熱を加えて前記粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、前記焼成温度を維持して焼成を行い、第1の焼成粉末混合物及び第2の焼成粉末混合物を形成することによって、焼成する工程と、
d.前記第1の焼成粉末混合物及び前記第2の焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、前記第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層及び前記第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、前記容積内に真空条件を作り出す工程と、
e.焼結温度まで加熱しながら前記第1の焼成粉末混合物及び前記第2の焼成粉末混合物の前記層に圧力を加え、焼結を行って、前記多層焼結セラミック体を形成する工程であって、焼結後の前記第1の焼成粉末混合物の前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、前記第2の焼成粉末混合物の前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成する、工程と、
f.前記多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、
を含み、
前記少なくとも1つの第1の層は多結晶YAGを含み、前記少なくとも1つの第1の層は少なくとも1つの表面を有し、少なくとも1つの第2の層はマグネシウムアルミネートスピネルを含み、前記少なくとも1つの第1の層の前記少なくとも1つの表面は細孔を含み、前記細孔はSEM及び画像処理方法を使用して測定して、0.1~5μmの最大サイズを有し、前記少なくとも1つの第1の層及び前記少なくとも1つの第2の層の各々は、25~1400℃の温度範囲にわたってASTM E228-17に従って測定して、0~0.6×10-6/℃異なる熱膨張係数(CTE)を有し、各差を計算するために使用される前記少なくとも1つの第1の層及び第2の層の前記CTEは各々同じ温度範囲にわたって測定され、前記少なくとも1つの第2の層は、0.1~1.0体積%のジルコニアを含む、方法。
【請求項7】
g.必要に応じて、アニーリングを行うアニーリング温度に達するように熱を加えて前記多層焼結セラミック体の温度を上昇させることにより、前記多層焼結セラミック体をアニーリングする工程と、
h.前記アニーリングされた多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、
を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ツールセットが、容積、内壁、第1の開口部及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、前記ダイと動作可能に連結された第1のパンチ及び第2のパンチとを含み、前記第1のパンチ及び前記第2のパンチの各々が、前記ダイの前記内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記第1のパンチ及び前記第2のパンチの少なくとも一方が前記ダイの前記容積内で移動するとき、前記第1のパンチ及び前記第2のパンチの各々と前記ダイの前記内壁との間にギャップを形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ギャップが、前記ダイの前記内壁と前記第1のパンチ及び前記第2のパンチの各々の前記外壁との間の10~100μmの距離である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2の層が、0.5体積%のジルコニアから構成される、請求項6に記載の方法。

【国際調査報告】