(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】3D印刷可能なバイオコンポジット
(51)【国際特許分類】
A61L 27/28 20060101AFI20241203BHJP
A61F 2/28 20060101ALI20241203BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20241203BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20241203BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20241203BHJP
A61L 27/10 20060101ALI20241203BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61L27/28
A61F2/28
A61L27/36 311
A61L27/12
A61L27/02
A61L27/10
A61L27/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532743
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 AU2022051435
(87)【国際公開番号】W WO2023097368
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300030406
【氏名又は名称】ニューサウス・イノベイションズ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Newsouth Innovations Pty Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ギホ
(72)【発明者】
【氏名】プルスティ,ベラサンティ ガンガーダラ
(72)【発明者】
【氏名】ディワン,アシシュ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB04
4C081CA08
4C081CE11
4C081CF03
4C081CF13
4C097AA01
4C097BB01
4C097CC03
4C097CC06
4C097DD01
4C097DD06
4C097DD07
4C097DD09
4C097DD10
4C097DD11
4C097DD15
4C097EE03
4C097EE07
4C097FF04
4C097MM03
(57)【要約】
光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、光開始剤と、少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、を含む組成物から形成可能なバイオコンポジットを、本明細書で開示する。バイオコンポジットは、3D印刷を含むプロセスで形成することができる。対象における、骨欠損の任意の処置、または、骨の一部の修復を含む、組成物及びバイオコンポジットの適用可能性もまた、本明細書で開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、
を含む組成物から形成されるバイオコンポジット。
【請求項2】
前記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、化学エッチング;化学コーティング、任意選択的に、化学グラフト;電気化学グラフト;レーザーエッチング;機械的表面改質;プラズマアシストコーティング;プラズマアシストエッチング;任意選択的に、プラズマもしくはイオンビームを用いる、物理蒸着;化学蒸着;原子層堆積法;またはこれらの混合物から選択されるプロセスで改質される、請求項1に記載のバイオコンポジット。
【請求項3】
前記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面をエッチングして、前記表面の少なくとも一部を除去し、前記エッチングは、化学エッチング、レーザーエッチング、プラズマアシストエッチング、機械エッチング、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1つの技術を任意選択的に含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項4】
前記エッチングは、約20℃~約50℃の範囲、任意選択的に、約25℃~約42℃の範囲の温度で行われる、請求項3に記載のバイオコンポジット。
【請求項5】
前記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、プラズマで処理される、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項6】
プラズマでの前記処理によって、前記プラズマで処理した前記表面の少なくとも一部における、ヒドロキシル基、ヒドロキシルラジカル、及び/またはまたは活性酸素種のうちの少なくとも1つの濃度が増加する、請求項5に記載のバイオコンポジット。
【請求項7】
少なくとも1つの表面をプラズマでエッチングし、前記表面の少なくとも一部を除去する、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項8】
前記プラズマは、低温アルゴン-酸素プラズマ、酸素プラズマ、ヘリウムプラズマ、窒素プラズマ、アルゴンプラズマ、またはこれらの組み合わせからを含む群から選択される、請求項2~6のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項9】
前記バイオコンポジットは3D印刷、任意選択的に、ステレオリソグラフィ3D印刷、マスクステレオリソグラフィ3D印刷、またはデジタルライトプロセッシングにより形成される、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項10】
前記バイオコンポジットは、紫外線光源を用いる3D印刷により形成される、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項11】
前記バイオコンポジットは、約280nm~約400nmの範囲の波長を有する光源を用いる3D印刷により形成される、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項12】
-前記バイオコンポジットは、ヒドロキシアパタイト、n-ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、及び/またはガラス粒子のうちの少なくとも1つをさらに含むか、あるいは、
-ヒドロキシアパタイト、n-ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、及び/またはガラス粒子を含む層が、前記バイオコンポジットの1つ以上の表面の少なくとも一部に適用される、
先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項13】
ヒドロキシアパタイトを含む前記層は、3D印刷技術を用いて適用される、請求項12に記載のバイオコンポジット。
【請求項14】
前記フィラーは、ヒドロキシアパタイト;シリカ;任意選択的に、E型及びS型ガラス型繊維から選択される、ガラス繊維;生体活性ガラス繊維;ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機化合物を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項15】
前記フィラーは、ナノスフィア、ナノウィスカー、及びナノロッドから選択される微粒子形態のヒドロキシアパタイトを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項16】
前記フィラーは、約50nm~約200nmの直径を有する微粒子形態のヒドロキシアパタイトを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項17】
前記フィラーは、約50nm~約700nmの粒径を有するシリカナノ微粒子を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項18】
前記フィラーは、
・約250~約350μmの長さ、及び/または
・約5~10μmの直径
を有する、任意選択的に、E型及びS型から選択される、ガラス繊維
を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項19】
前記光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、少なくとも1種の光重合性アルケン、アリル、ビニルメタクリレート、及び/またはアクリレート基、ならびにこれらの混合物を含む少なくとも1種のモノマーを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項20】
前記光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、任意選択的に、アルケン、アリル、ビニル、メタクリレート、及び/またはアクリレート基から選択される、複数の光重合性基を含む少なくとも1種のモノマーを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項21】
前記光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、2つもしくは3つのメタクリレート基;2つもしくは3つのアクリレート基;2つもしくは3つのビニル基;または、2つもしくは3つのアリル基を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項22】
前記光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、ウレタンジメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、デカンジオールジメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項23】
前記光開始剤は、カンファーキノン、エチル=4-ジメチルアミノベンゾエート、トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、及びこれらの混合物から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項24】
前記1種以上のモノマーは、前記バイオコンポジットの約70~約95wt%の範囲で存在する、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項25】
前記フィラー組成物は、前記バイオコンポジットの約5~約30wt%の範囲で存在する、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項26】
可塑剤、染料、顔料、改質剤、安定化剤、酸捕捉剤、相溶化剤、他のポリマー、薬学的活性化合物、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項27】
薬学的活性化合物である少なくとも1種の添加剤をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項28】
前記バイオコンポジットは、任意選択的に、チタン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、及び銅、ならびにこれらの合金または混合物から選択される金属を、実質的に含まない、または含まない、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項29】
前記バイオコンポジットは、任意選択的に、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、またはこれらの混合物から選択されるポリアリールエーテルケトンを、実質的に含まない、または含まない、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項30】
前記バイオコンポジットは、対象における損傷した、または欠損した骨の処置または修復に用いられる、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項31】
前記処置または前記修復は、外傷、任意選択的に、低もしくは高エネルギー外傷;腫瘍;及び/または感染症の結果である、請求項30に記載のバイオコンポジット。
【請求項32】
前記処置または前記修復は、骨幹端、軟骨下領域、もしくは骨幹、または、扁平骨もしくは椎骨における任意の領域におけるものである、請求項30または請求項31に記載のバイオコンポジット。
【請求項33】
前記バイオコンポジットは医療用デバイスの形態である、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項34】
前記バイオコンポジットはインプラントの形態である、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項35】
前記バイオコンポジットは整形インプラントの形態である、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか1項に記載のバイオコンポジットを合成する方法であって、
-
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、
を含む組成物を提供するステップと、
-前記バイオコンポジットを3D印刷するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項37】
前記3D印刷は、ステレオリソグラフィ3D印刷、マスクステレオリソグラフィ3D印刷、またはデジタルライトプロセッシングである、請求項Xに記載の方法。
【請求項38】
前記3D印刷は、紫外線光源を用いる、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記3D印刷は、約280nm~約400nmの範囲の波長を有する光源を用いる、請求項36~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
-前記組成物は、ヒドロキシアパタイト、n-ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、及び/またはガラス粒子のうちの少なくとも1つをさらに含むか、あるいは、
-前記方法は、ヒドロキシアパタイトを含む層を、前記バイオコンポジットの1つ以上の表面の少なくとも一部に適用するステップをさらに含む、
請求項36~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
ヒドロキシアパタイトを含む前記層は、3D印刷技術を用いて適用される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、化学エッチング;化学コーティング、任意選択的に、化学グラフト;電気化学グラフト;レーザーエッチング;機械的表面改質;プラズマアシストコーティング;プラズマアシストエッチング;任意選択的に、プラズマもしくはイオンビームを用いる、物理蒸着;化学蒸着;原子層堆積法;またはこれらの混合物から選択されるプロセスを含むステップで改質される、請求項36~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面をエッチングして、前記表面の少なくとも一部を除去し、前記エッチングは、化学エッチング、レーザーエッチング、プラズマアシストエッチング、機械エッチング、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1つの技術を任意選択的に含む、請求項36~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記エッチングは、約20℃~約50℃の範囲、任意選択的に、約25℃~約42℃の範囲の温度で行われる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、プラズマで処理される、請求項36~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
プラズマでの前記処理によって、前記プラズマで処理した前記表面の少なくとも一部における、ヒドロキシル基、ヒドロキシルラジカル、及び/またはまたは活性酸素種のうちの少なくとも1つの濃度が増加する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも1つの表面をプラズマでエッチングし、前記表面の少なくとも一部を除去する、請求項36~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記プラズマは、低温アルゴン-酸素プラズマ、酸素プラズマ、ヘリウムプラズマ、窒素プラズマ、アルゴンプラズマ、またはこれらの組み合わせからを含む群から選択される、請求項36~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
請求項36~48のいずれか1項に記載の方法から形成されるバイオコンポジット。
【請求項50】
対象における、損傷した、または欠損した骨を処置または修復する方法であって、前記方法は、請求項1~35のいずれか1項に記載のバイオコンポジットを、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項51】
前記処置または前記修復は、外傷、任意選択的に、低もしくは高エネルギー外傷;腫瘍;及び/または感染症の結果である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記処置または前記修復は、骨幹端、軟骨下領域、もしくは骨幹、または、扁平骨もしくは椎骨における任意の領域におけるものである、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項1~35のいずれか1項に記載のバイオコンポジットの形成における、
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・フィラー組成物と、
を含む組成物の使用。
【請求項54】
対象における骨の処置または修復のための物品の形成における、請求項1~35のいずれか1項に記載のバイオコンポジットの使用。
【請求項55】
前記処置または前記修復は、外傷、任意選択的に、低もしくは高エネルギー外傷;腫瘍;及び/または感染症の結果である、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
前記処置または前記修復は、骨幹端、軟骨下領域、もしくは骨幹、または、扁平骨もしくは椎骨における任意の領域におけるものである、請求項54または請求項55に記載の使用。
【請求項57】
前記物品は医療用デバイスである、請求項54~56のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
前記物品はインプラントである、請求項54~57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
前記物品は整形インプラントである、請求項54~57のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月3日に出願された豪州仮特許出願第2021903920号に対する優先権を主張し、その内容のすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、光開始剤と、少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、を含む組成物から形成可能なバイオコンポジットに関する。バイオコンポジットは、3D印刷を含むプロセスで形成することができる。バイオコンポジットはまた、対象における、骨欠損の処置、または、骨の一部の修復に使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
世界的な脊椎移植及びデバイスの市場は、2020年に95億米ドルの価値があり、2025年までに、138億米ドルに達すると予想される(Markets and Markets Research Private, 2020)。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びチタン椎体間固定ケージの両方が断然、脊椎固定手術において単独型デバイスとして最も多く使用されている。高度な3D手術撮像システムを用いることで、3D印刷されたインプラントを導入することが、世界的な脊椎移植市場における新たな傾向となっており、脊椎領域は、3次元(3D)印刷用の用途を拡大し続けている。
【0004】
世界的な脊椎デバイス企業の中でも、Orthofixは、機能的な勾配多孔質構造体によって設計された、3D印刷されたチタン頸部椎体間のConstrux Mini Ti Spacer Systemを開発しており、これは、2021年4月にFDAの認可を受けた。Medtronicは、チタン3D印刷プラットフォームのTiONIC技術を売り出しており、これは、脊椎手術インプラントに対して、より複雑なデザイン、及び、一体化された表面技術を可能にする。この会社は、PEEKインプラント表面に、単一の椎体間にPEEKとチタンの両方の利点を組み合わせた、ピュアチタンコーティング(PCT(商標))もまた導入している。Johnson & Johnson medical devices、Zimmer Biomet、Nexxt Spine、及びStrykerもまた、3D印刷されたチタンインプラントを開発している。HAPPE Spineは、皮質及び海綿骨質を解剖模倣することで、ヒドロキシアパタイト(HAP)及びPEEK複合材料の、高密度かつ多孔質のデュアルデザインの特許を取得している。
【0005】
機能化材料と、最適化された建築構造を一体化することは、椎体間固定ケージ(またはスペーサ-)などの、整形インプラントの開発において非常に重要である。
【0006】
その良好な機械的特性及び生体適合性によって、チタン(またはチタン合金)及びPEEKが一般的に、医療用インプラントに選択される。従来のインプラント及び脊椎固定ケージは、十分な耐荷重能力をもたらしているものの、これらの表面は一般的に不活性であるか、または、周囲の骨とのオステオインテグレーションを支持する能力が限定的である。
【0007】
結果的に、界面の骨結合が弱くなることで、骨の不安定性、陥没、インプラントの移動、及び深刻な痛みまたは不快感を引き起こす、高度なインプラントの破壊がもたらされる可能性があり、これは、第2の手術をもたらし得る。骨/インプラントの反応を向上させるために、インプラント構造において、リン酸カルシウムなどの骨伝導/骨誘導剤を用いる多くの表面コーティング技術が開発されているものの、2つの異なる材料同士の不十分な結合から生じる、亀裂及び層間剥離によるコーティング失敗の潜在的なリスクが、インプラントの緩みに繋がり、インプラントの突発故障をもたらす可能性がある。
【0008】
チタンインプラントの表面は、骨成長を刺激することができる。しかし、これらは、X線撮像、コンピュータ断層撮影、及び磁気共鳴映像法において、組織-金属界面において、大きな放射線濃度及び磁場の歪みを引き起こすため、場合によっては不十分である。X線により、金属表面から誘起された二次電子は、金属インプラント付近のDNA損傷またはDNA変異に寄与し得る。
【0009】
チタン及びPEEKケージは共に、同様の固定速度で会合するが、チタンケージ(金属群)では、その高い弾性率及び応力遮蔽効果により、沈下の速度増加がもたらされた、または、インプラントが終板表面に徐々に貫入した。他方では、PEEKケージ(ポリマー群)は、チタンと比較して、弾性率が、皮質及び海綿骨質におけるものの範囲の骨にほぼ等しいため、はるかに柔軟である。しかし、PEEKは、疎水性かつ生物学的に不活性であり、これは、移植後に、周囲の組織との一体化がさほどもたらされない。また、PEEKの半結晶性、及び高い融解温度により、PEEKは、3D印刷前/後の処理条件に非常に影響を受けやすく、これは、PEEK構造の機械的性能においてバラつきが大きく生じる。これによって、高い品質保証及び再現性が必要とされる医療用途において、PEEKの3D印刷の採用は制限されてきた。
【0010】
多くの従来のインプラントから生じるこれらの制限を克服するために、新規の材料及び/または方法が必要とされている。
【0011】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物、またはこれらに類するものに関するいかなる議論も、これらの事項のいずれかもしくは全てが先行技術基盤の一部を形成していること、またはこれらが、本願の各請求項の優先日前に存在していたとして、本開示に関連する分野で周知の一般知識であったことを認めるものとはみなされない。
【発明の概要】
【0012】
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、
を含む組成物から形成されるバイオコンポジットを、本明細書で開示する。
【0013】
本明細書で開示するバイオコンポジットの合成方法であって、上記方法は、
-
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、
を含む組成物を提供するステップと、
-上記バイオコンポジットを3D印刷するステップと、
を含む、上記方法もまた、本明細書で開示する。
【0014】
提示する、多機能脊椎固定ケージの開発方法についての例示的な概略図を、
図1に示す。
図1では、いくつかのステップが例示される:
図1では、いくつかのステップが例示される:A-多機能樹脂系;B-3D印刷;C-3D印刷インプラント;D-3D印刷脊椎ケージ(階層型及び多孔質);E-表面テクスチャー処理;ならびに、F-スマート固定ケージ/インプラント。
【0015】
本明細書で開示する方法から形成されるバイオコンポジットを、本明細書で開示する。
【0016】
対象における、骨、例えば、損傷した、または欠損した骨の処置または修復方法であって、上記方法は、それを必要とする対象に、本明細書で開示するバイオコンポジットを投与することを含む、上記方法もまた、本明細書で開示する。
【0017】
対象における、骨、例えば、損傷した、または欠損した骨の処置または修復において使用するための、本明細書で定義するバイオコンポジットもまた、本明細書で開示する。
【0018】
本明細書で開示するバイオコンポジットの形成において、
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・フィラー組成物と、
を含む組成物の使用もまた、本明細書で開示する。
【0019】
対象において、骨を処置または修復するための物品の形成における、本明細書で開示するバイオコンポジットの使用もまた、本明細書で開示する。
【0020】
本明細書で開示するバイオコンポジットは整形インプラント/ケージの用途を、良好な放射線不透過性、高い機械的強度、ならびに、骨伝導性、骨誘導性、及び/または生体適合性などの生物学的性質のうちの1つ以上を必要とする、「金属非含有」医療用インプラントまで拡張する。本明細書で定義するバイオコンポジット、及びPEEKの、例示的な崩壊強度及び圧縮弾性率を、
図4に示す。
【0021】
複合材料中に、ナノヒドロキシアパタイト(n-HAP)、シリカナノ微粒子、及び/または、マイクロサイズの短いガラス繊維などの材料が存在することによって、可能性のある他の利点の中でもとりわけ、in vivoでの、材料の機械的及び/または生物学的性能が向上することができる。
【0022】
バイオコンポジットが、インプラントの3Dマイクロ/ナノ階層多孔質構造体(ステレオリソグラフィ(SLA)3D印刷及び低温プラズマ表面処理によって製造可能である)として形成される場合、骨成長及び接着を促進することができる。インプラント内の、3D印刷された微孔構造は、インプラントと新しい骨との界面において、より大きな接触面積、及び、骨の内方生長及び機械的連結による長期にわたる安定を、潜在的にもたらすことができる。また、冷アルゴン-酸素プラズマ処理などの処理による、インプラントのナノテクスチャー化表面は、表面の「親水性」、オステオインテグレーション、及び/または、新たな骨の成長を改善する、表面が露出したn-HAPを有する、多機能階層トポグラフィーを生み出すことができる。
【0023】
本開示の各態様の実施形態は、互いの態様に等しく準用可能であることが理解されよう。
【0024】
本明細書で開示する様々な実施形態が利用可能であることが理解されるであろうが、この先は、以下の図面を参照して、いくつかの実施例を本明細書に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】提示する、多機能脊椎固定ケージの開発方法の概略図である。
【
図2】例示的なインプラントであり、1は、3D印刷されたマルチスケール組換え整形インプラントの本体;2は、多層構造、及び、3は微多孔質構造である。
【
図4】本明細書に記載するバイオコンポジット、及びPEEKの、崩壊強度及び圧縮弾性率である。
【
図5】親水性/疎水性の変化を示す、大気低温プラズマエッチングプロセスを用いる、バイオコンポジット表面のナノテクスチャー処理である。
【
図6】大気低温プラズマエッチングプロセスを用いる、バイオコンポジット表面のナノテクスチャー処理である。
【
図7】n-HAP強化バイオコンポジットに対する、表面エッチング厚さとプラズマエッチング時間である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一般的定義及び用語
本明細書で提示される定義に関して、特に明記しない限り、または文脈から暗示されない限り、定義された用語及び句は、提示された意味を含む。加えて、別途明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語及び句は、その用語または句が関連技術の当業者により得ている意味を排除するものではない。定義は、特定の実施形態の説明を促すために提示され、発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限されるので、クレームの発明を制限することを意図するものではない。
【0027】
「クリーピング置換」という用語は、バイオコンポジット移植片またはインプラントが、生組織により徐々に置き換えられる、または、対象の体内に徐々に組み込まれるプロセスを意味することが理解されよう。対象の細胞は、バイオコンポジット、及び特に、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、コラーゲンなどで構成される無機構造の、多孔質表面を満たして、新しい物理的及び生理学的骨構造にし、本質的に、バイオコンポジットまたはその一部を、新しい骨に変換する。
【0028】
本明細書で議論及び/または参照される全ての公開物は、別途明記されない限り、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
文脈によって別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。本開示全体を通して、具体的に別段明記されない限り、または文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単一のステップ、単一の組成物、ステップ群、または組成物群への言及は、それらのステップ、それらの組成物、ステップ群、または組成物群のうちの1つ及び複数(すなわち1つ以上)を包含すると解釈すべきである。したがって、本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別途明記しない限り複数の態様を含む。例えば、「a」への言及は単数に加えて2つ以上も含む;「an」への言及は単数に加えて2つ以上も含む;「the」への言及は単数に加えて2つ以上なども含む。
【0030】
本明細書の開示は、具体的に記載されるもの以外の変形及び変更が可能であることを、当業者は理解するであろう。当然のことながら、本開示は、そのような変形及び変更をすべて含むものである。本開示はまた、個別にまたは包括的に本明細書で言及しまたは示している例、ステップ、特徴、方法、組成物、配合物、及びプロセスの全てを含むものであり、さらに、それらのステップまたはそれらの特徴の任意の2つ以上の任意のもの及びそれらのステップまたはそれらの特徴の任意の2つ以上の組み合わせすべてを含むものである。
【0031】
「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」という用語は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味またはいずれかの意味に明確なサポートを提供するものとみなされる。
【0032】
特に指示がない限り、「第1の」、「第2の」などの用語は、本明細書では単にラベルとして使用し、これらの用語が言及する項目に、順序、位置、または階層的要件を課することを意図するものではない。さらに、「第2の」項目への言及には、数の小さい項目(例えば、「第1の」項目)、及び/または、数の大きい項目(例えば、「第3の」項目)の存在を必要とはしない、または、除外するものではない。
【0033】
本明細書で使用する場合、項目の一覧と共に使用する場合の、「のうちの少なくとも1つ」、または「1つ以上の」という句は、列挙した項目の1つ以上の異なる組み合わせを使用することができ、一覧における項目のうち1つのみを必要とし得ることを意味する。項目は、特定の対象物、こと、またはカテゴリーであることができる。換言すれば、「のうちの少なくとも1つ」とは、項目の任意の組み合わせ、または任意の数の項目を、一覧から使用することができるが、一覧における項目の全てを必要とし得るわけではないことを意味する。例えば、「項目A、項目B、及び項目Cのうちの少なくとも1つ」とは、項目A;項目A及び項目B;項目B;項目A、項目B、及び項目C;または、項目B及び項目Cを意味し得る。場合によっては、「項目A、項目B、及び項目Cのうちの少なくとも1つ」とは、例えば、限定されるものではないが、2つの項目A、1つの項目B、及び10個の項目C;4つの項目B及び7つの項目C;または、いくつかの他の好適な組み合わせを意味し得る。
【0034】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記述されている特定の特徴は、単一の実施形態中で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において説明される様々な特徴を、別々に、または任意のサブコンビネーションで提供することもできる。
【0035】
本明細書全体を通して、本開示の様々な態様及び構成要素は、範囲の形式で提示することができる。範囲形式は便宜上含まれており、本開示の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、特に明記されていない限り、すべての可能なサブ範囲とその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~5などの範囲の記載は、整数が要求されている、または文脈から暗黙に示されている場合を除き、1~3、1~4、1~5、2~4、2~5、3~5などのサブ範囲と、例えば、1、2、3、4及び4.5のような、記載の範囲内の個々の数及び部分的数(partial number)、とを具体的に開示していると見なされるべきである。これは、開示された範囲の幅に関係なく適用される。特定の値が必要な場合、これらは明細書に示される。
【0036】
本明細書を通じて、単語「含む、備える(comprise)」、または「含む、備える(comprises)」もしくは「含む、備える(comprising)」などの変形は、記載した要素、整数もしくはステップ、または要素群、整数群もしくはステップ群を包含するが、いかなる他の要素、整数もしくはステップ、または要素群、整数群もしくはステップ群をも排除することを意味するものではないことが理解されよう。
【0037】
本明細書全体を通して、「本質的にからなる」という用語は、クレームされている組成物、方法、またはプロセスの特性に物質的に影響を与える要素を除外することを意図する。
【0038】
「含む、備える(comprising)」、「含む、備える(comprise)」、及び「含む、備える(comprises)」という用語は、本明細書では、任意選択的に、それぞれ、各例において、それぞれ、「から本質的になる(consisting essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「からなる(consist of)」、及び「からなる(consists of)」の用語と置換可能であることが意図される。
【0039】
本明細書において、別途明記されない限り、「約」という用語は、その用語に関連する任意の値または複数の値における10%の許容誤差を包含する。
【0040】
本明細書では、「重量%」は、「wt%」または「wt.%」と略すことができる。
【0041】
記載したバイオコンポジットのレシピエントは、本明細書では、互換性のある用語「患者」、「レシピエント」、「個体」、及び「対象」と呼ばれる。これら4つの用語は同じ意味で用いられ、本明細書で定義する、任意のヒトまたは動物(別途明記されない限り)と呼ばれる。
【0042】
本明細書に記載するバイオコンポジットのレシピエントは、任意の性別のヒトであることができる。あるいは、本明細書に記載するバイオコンポジットのレシピエント、例えば、患者または対象は、非ヒト動物であることもまた可能である。「複数の非ヒト動物」または「非ヒト動物」とは、ヒトを除く動物界に関し、脊椎動物及び無脊椎動物、オスまたはメスの両方を含み、哺乳類(限定されるものではないが、霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、モルモット、ウマ、または、他のウシ科動物、ヒツジ科動物、ウマ科動物、イヌ科動物、ネコ科動物、齧歯類、もしくはマウス種を含む)、鳥類、昆虫、爬虫類、魚類、及び両生類を含む温血動物を含む。
【0043】
本明細書では、「活性剤」という用語は、対象または患者内で、治療、予防、または他の生物学的効果を付与することができる任意の剤を意味する。活性剤はまた、診断剤であることも可能である、または、in vivo部位における治癒を向上させるためのものであることができる。
【0044】
明確に定義されない限り、または、文脈より明確でない限り、本明細書で使用する「薬学的活性剤」または「活性剤」という用語は、これが導入される生物学的系を、認識可能な程度に変化させる、または当該系に、認識可能な程度の影響を及ぼす、任意のタンパク質、ペプチド、糖、糖類、ヌクレオシド、無機化合物、脂質、核酸、低合成化学化合物、または有機化合物を意味することができる。
【0045】
バイオコンポジット
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、
を含む組成物から形成されるバイオコンポジットを、本明細書で開示する。
【0046】
本明細書で定義するバイオコンポジットの合成方法であって、上記方法は、
・
■光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
■光開始剤と、
■フィラー組成物と、
を含む組成物を提供するステップと、
・上記バイオコンポジットを3D印刷するステップと、
を含む、上記方法もまた、本明細書で開示する。
【0047】
本明細書に記載する方法から形成されるバイオコンポジットもまた、本明細書で開示する。
【0048】
本明細書で開示するバイオコンポジットの形成において、
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・フィラー組成物と、
を含む組成物の使用もまた、本明細書で開示する。
【0049】
一実施形態では、バイオコンポジットは、3D印刷により形成される。いくつかの実施形態では、バイオコンポジットの形成で用いる組成物は、その未硬化状態において流体であり、3D印刷を可能にする。適切な3D印刷法の例としては、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタルライトプロセッシング(DLP)、及びマスクステレオリソグラフィ(MSLA)が挙げられるが、これらに限定されない。3D印刷用途に関して、流動学的性質を、特定の用途、利用されている特定のモノマー、及び/または、任意の追加の添加剤の存在に関連して調整することができる。
【0050】
一実施形態では、バイオコンポジットは、バイオコンポジットの形成で用いられる材料または組成物の光重合を開始するための光源を用いる3D印刷により形成される。光源は、紫外線(UV)光源であってよい。光源は、約280nm~約400nmの範囲の波長を有することができる。例えば、約、または、少なくとも約280nm、285nm、290nm、295nm、300nm、305nm、310nm、315nm、320nm、325nm、330nm、335nm、340nm、345nm、350nm、355nm、360nm、365nm、370nm、375nm、380nm、385nm、390nm、395nm、または400nmの波長。
【0051】
いくつかの実施形態では、バイオコンポジットは、硬化プロセス中に光硬化される。いくつかの実施形態では、光硬化は、UV光によって行われる。いくつかの実施形態では、光硬化は、UV光によって行われる。いくつかの実施形態では、光硬化プロセスは、バイオコンポジットを滅菌もする。
【0052】
一実施形態では、バイオコンポジットは、特定の用途及び/または特定の対象に対して調整するように採用することができる。
【0053】
一実施形態では、1種以上の構成成分を含む層を、バイオコンポジットの表面の少なくとも一部に適用する。いくつかの実施形態では、1種以上の構成成分を含む層は、ヒドロキシアパタイト、ならびにガラス繊維及び/またはガラス粒子を含む。例えば、ヒドロキシアパタイトを含む層が、バイオコンポジットの1つ以上の表面の少なくとも一部に適用される。一実施形態では、この層によって、表面層の生物活性及び機械的特性が増大する。この層は、当該技術分野において周知の、及び、本明細書で開示する技術で適用することができる。例えば、層の1つ以上を、3D印刷技術を用いて適用することができる。
【0054】
バイオコンポジットは、組成物から形成されると、直接使用することができる。あるいは、バイオコンポジットの少なくとも1つの表面を、任意選択的に、化学エッチング、化学コーティング(任意選択的に、化学グラフト)、電気化学グラフト、レーザーエッチング、機械的表面改質、プラズマアシストコーティング、プラズマアシストエッチング、物理蒸着(任意選択的に、プラズマもしくはイオンビームを用いる)、化学蒸着、原子層堆積法、またはこれらの混合物から選択されるプロセスで改質することができる。
図5~7は、水滴による、親水性/疎水性の変化を示す、大気低温プラズマエッチングプロセスを用いる、バイオコンポジット表面のナノテクスチャー処理;大気低温プラズマエッチングプロセスを用いる、バイオコンポジット表面のナノテクスチャー処理;及び、n-HAP強化バイオコンポジットに対する、表面エッチング厚さとプラズマエッチング時間について示す。
【0055】
一実施形態では、少なくとも1つの表面をエッチングして、上記表面の少なくとも一部を除去し、エッチングは、化学エッチング、レーザーエッチング、プラズマアシストエッチング、または機械エッチングのうちの少なくとも1つを含む。バイオコンポジットへの、任意のエッチングまたは修飾を、バイオコンポジットの形成で用いる1種以上のモノマーまたはポリマーの、ガラス転移温度(Tg)を下回る温度で行うことができる。一実施形態では、エッチング(または、本明細書で開示する別のプロセス)は、約20℃~約50℃の範囲、任意選択的に、約25℃~約42℃の範囲の温度で行われる。例えば、約、または少なくとも約20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、または50℃の温度。
【0056】
本明細書では、バイオコンポジットの少なくとも1つの表面を、プラズマで処理することができる。例えば、少なくとも1つの表面をプラズマでエッチングし、上記表面の少なくとも一部を除去することができる。当該技術分野において周知の任意の適切なプラズマを、バイオコンポジットの改質に用いることができ、例えば、プラズマは、アルゴン-酸素プラズマ、酸素プラズマ、ヘリウムプラズマ、窒素プラズマ、アルゴンプラズマ、またはこれらの組み合わせであることができる。一実施形態では、プラズマ処理は、約20℃~約40℃の範囲の温度である。例えば、約、または少なくとも約20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、または40℃の温度。
【0057】
バイオコンポジットの任意の改質により、バイオコンポジットの少なくとも1つの表面の化学組成を変化させることができる。例えば、プラズマ処理によって、プラズマで処理した表面の少なくとも一部における、ヒドロキシル基、ヒドロキシルラジカル、及び/またはまたは活性酸素種のうちの少なくとも1つの濃度を増加させることができる。バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、例えば、プラズマ処理などの処理の後で、抗菌性となることができる、または、抗菌性を示すことができる。
【0058】
低線量のX線を用いて、バイオコンポジットを、in vivoで可視化可能となるように配合することができる。一実施形態では、低線量のX線は、約52kV×1.9mA~約60kV×6.2mAである。
【0059】
モノマー/ポリマー
バイオコンポジットの形成で用いる組成物は、光重合に適した少なくとも1種のモノマーを含むのが好ましい。
【0060】
一実施形態では、バイオコンポジットは、光重合により形成され、光源は、重合反応を開始し、及び/または進める光(例えば、可視光またはUV光)を用いる。別の実施形態では、光重合はラジカル重合である。
【0061】
一実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、ラジカル重合で利用することが可能な官能基を含む。光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、限定されるものではないが、アルケン、アリル、ビニルメタクリレート、及び/またはアクリレートから選択される、少なくとも1つの光重合性基を含むことができる。一実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、少なくともアルケン基を含む。一実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、少なくとも1つのアクリレート基を含む。一実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、少なくとも1つのメタクリレート基を含む。一実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、少なくとも1つのビニル基を含む。一実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、少なくとも1つのアリル基を含む。
【0062】
光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、限定されるものではないが、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビスGMA)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(ビスEMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、デカンジオールジメタクリレート(D3MA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、及びこれらの混合物から選択することができる。いくつかの実施形態では、光重合に適したモノマーは、限定されるものではないが、モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、またはジメタクリレートモノマー(例えば、PEGMA、UDMA、HDDMA、及びTEGDMA)から選択することができる。いくつかの実施形態では、UDMAとTEGDMAの混合物を使用することができる。いくつかの実施形態では、UDMAとTEGDMAの混合物の比は、8:2である。
【0063】
光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、任意選択的に、アルケン、アリル、ビニル、メタクリレート、及び/またはアクリレート基から選択される、複数の光重合性基を含む少なくとも1種のモノマーを含むことができる。光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、2つもしくは3つのメタクリレート基;2つもしくは3つのアクリレート基;2つもしくは3つのビニル基;または、2つもしくは3つのアリル基を含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のモノマー、例えば、ビスGMA、ビスEMA、及び/またはUDMAのうちの1つ以上を、「ベース」として用いることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、1つ以上のベースモノマー、例えば、TEGDMA、D3MA、及び/またはHEMA用の希釈剤またはコモノマーであることができる。
【0065】
光重合性モノマーは、当該技術分野において周知の方法により設定、または硬化(キュア)することができる。一般的な方法としては、例えば、露光(例えば、400~470nmで)、空気に曝すことによる酸化、組成物中に存在する(通常、使用の直前に、バイオコンポジットに混合される)化学酸化剤への曝露による酸化、または、モノマーの重合を開始する他の形態の化学反応が挙げられる。
【0066】
一実施形態では、バイオコンポジットは架橋している。少なくとも1つの光重合性モノマーを含む組成物から形成されるポリマーを反応させて、ポリマー鎖間での(または、コポリマー鎖用の生長部位として)相互接続連結を形成し、これによって、最終のバイオコンポジットを架橋させることができる。代替的実施形態では、バイオコンポジットは架橋してなくてもよいが、任意選択的に、架橋可能である。
【0067】
架橋によって得られる潜在的な利点の1つは、もたらされるバイオコンポジットの安定性である。例えば、架橋によって、架橋されていない同様の組成物と比較して、バイオコンポジットの溶解性を下げることができる。加えて、バイオコンポジットの架橋特性によって、バイオコンポジットの化学的及び/または生物学的耐性が増加し得る。架橋を用いることによって、架橋されていないバイオコンポジットと比較して、耐熱性が増加し、透過性が低下し、磨耗耐性が良好になり、及び/または、寿命が長くなった表面を有するバイオコンポジットもまた得ることができる。架橋によって、所望の機械的特性もまた増大させることができる。架橋は、水素結合によって生じることができる。水素結合は、ポリマーのセグメントに含まれる部分同士での分子内結合、または、1つ以上のポリマー同士での分子間結合のいずれかであることができる。物理的架橋は、ポリマーセグメント同士での特定の水素結合により達成することができる。架橋は、分岐しており、複数の分岐またはアームを含む、試薬またはポリマーセグメントを用いることにより導入することができる。
【0068】
ポリ乳酸(PLA)及びポリグリコール酸(PGA)などの、一般的な生分解性材料の分解生成物の、酸性の性質によって、内在する組織との界面における瘢痕化及び狭窄化を含む、予測不可能な臨床的結果がもたらされ得る。一実施形態では、バイオコンポジットを配合して、in vivo及び/またはin vitroで分解するのとは対照的に、バイオコンポジットを配合して、クリーピング置換を可能にすることができる。
【0069】
配合に用いられる1種以上のモノマーは、限定されるものではないが、ヒドロキシル基、アミン基、チオール基、カルボン酸基、カルボニル基、ハロ基、ニトロ基、及びこれらの混合物から選択される官能性部分によって、官能化することができる。
【0070】
1種以上のモノマーは、バイオコンポジットの約70~約95wt%の範囲で存在することができる。例えば、1種以上のモノマーは、バイオコンポジットの少なくとも約70wt%、72.5wt%、75wt%、77.5wt%、80wt%、82.5wt%、85wt%、87.5wt%、90wt%、92.5wt%、または95wt%の範囲の量で存在する。
【0071】
光開始剤
本明細書で開示するバイオコンポジットの形成で用いられる組成物は、少なくとも1種の光開始剤を含むことができる。
【0072】
光開始剤の例としては、カンファーキノン(CQ)、ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)、ベンゾフェノン(BP)、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT)、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDMAB)、及び、2-4-6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド(TPO)、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
1種以上の光開始剤の濃度は、限定されるものではないが、光開始剤の種類、使用するモノマー、モノマーの濃度、及び/または、バイオコンポジットを生成するために利用する条件(例えば、光の波長)を含む、いくつかの因子に依存するであろう。
【0074】
フィラー組成物
バイオコンポジットの形成で用いる組成物は、フィラー組成物を含むのが好ましい。
【0075】
フィラー組成物は、1種以上の無機化合物を含むことができる。フィラー組成物は、ヒドロキシアパタイト、シリカ、例えばシリカ微粒子、ガラス粉末、ガラス繊維(任意選択的に、E型及びS型ガラス型繊維から選択される)、ならびにこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の化合物を含むことができる。
【0076】
一実施形態では、フィラー組成物は、任意選択的に微粒子形態の、ヒドロキシアパタイトを含む。ナノヒドロキシアパタイトの画像を、
図3に示す。微粒子形態は、ナノスフィア、ナノウィスカー、及び/またはナノロッドから選択することができる。任意選択的に微粒子形態のヒドロキシアパタイトは、約50nm~約200nmの直径を有することができる。例えば、直径は、約、または、少なくとも約50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、150nm、155nm、160nm、165nm、170nm、175nm、180nm、185nm、190nm、195nm、または200nmであることができる。
【0077】
フィラー組成物は、任意選択的に、約50nm~約700nmの粒径を有する、シリカナノ微粒子を含むことができる。例えば、直径は、約、または、少なくとも約50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、または700nmであることができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するフィラー組成物は、ポリマー繊維またはガラス繊維などの、任意の繊維または繊維状材料であることができる。フィラー組成物は、ガラス繊維(任意選択的に、E型及びS型から選択される)を含むことができる。いくつかの実施形態では、フィラー組成物は、生体活性ガラス繊維を含むことができる。いくつかの実施形態では、フィラー組成物は、(ASTM C1557-14により測定した)約1GPaを上回る引張り強度、及び/または、(ISO 4049の3点曲げ試験を用いる)約150MPaを上回る曲げ強さを有する繊維である、高強度繊維を含むことができる。
【0079】
一実施形態では、ガラス繊維は、アルミノケイ酸ガラス、バリウムガラス、フッ素ガラス、石英、不透明石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノフルオロケイ酸ガラス、高カルシウムガラス、高マグネシウムガラス、及びこれらの混合物から選択することができる。一実施形態では、ガラスはSガラス(構造ガラス)である。Sガラスは、典型的には、無視できるCaO含有量、及び高いMgO含有量を有する、アルミノケイ酸塩ガラスである。Sガラスは、その高い引張り強度または弾性率によって、「硬質ガラス」と名付けられている。使用可能な、他の種類のガラス、ガラス繊維、または繊維ガラスの例としては、Eガラス(1% w/w未満のアルカリ酸化物を含むアルミノホウケイ酸ガラス)、Aガラス(酸化ホウ素をほぼ、または全く含まないアルカリ石灰ガラス)、E-CRガラス(約1% w/w未満のアルカリ酸化物を有する、電気/化学耐性アルミノ石灰ケイ酸ガラス)、Cガラス(高い酸化ホウ素含有量を有するアルカリ石灰ガラス)、Dガラス(その低い誘電定数によって名付けられたホウケイ酸ガラス)、ならびに、Rガラス(強化材として、高い機械的要件のために用いられる、無視できるMgO及びCaO含有量を有するアルミノケイ酸塩ガラス)が挙げられる。一実施形態では、フィラーは、ガラス粉末を含む。別の実施形態では、フィラーは、ガラス粉末及びコンクリートの、モルタル組成物を含む。別の実施形態では、モルタル組成物は、約10%~約40%のガラス粉末を含む。さらに別の実施形態では、フィラーは、GP10、GP20、GP30、及び/またはGP40のうちの1つ以上を含む。
【0080】
多くの異なる直径を有するガラス繊維が市販されている。一実施形態では、所望のアスペクト比を有するガラス繊維を得ることには、典型的には、所望の直径を有するガラス繊維を選択することと、長さを適宜切断することと、が伴う。
【0081】
ガラス繊維は、約250~約350μmの長さを有することができる。例えば、約、または、少なくとも約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、または350μmの長さ。ガラス繊維は、約5~10μmの直径を有することができる。例えば、約、または、少なくとも約5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、または10μmの直径。
【0082】
フィラー組成物は、バイオコンポジットの約5~約30wt%の範囲で存在することができる。例えば、約、または、少なくとも約5wt%、7.5wt%、10wt%、12.5wt%、15wt%、17.5wt%、20wt%、22.5wt%、25wt%、27.5wt%、または30wt%の量。
【0083】
他の添加剤
少なくとも1種の添加剤を、バイオコンポジットの形成前、形成中、または形成後に添加することができる。追加の添加剤の例は、可塑剤、染料、顔料、改質剤、安定剤、酸捕捉剤、相溶化剤、他のポリマー、またはこれらの混合物から選択することができる。少なくとも1種の添加剤は、薬学的活性化合物であることができる。
【0084】
好適な活性剤の例としては、合成無機及び有機化合物、薬剤、タンパク質、ペプチド、多糖類及び他の糖類、脂質、及びオリゴヌクレオチド、ならびに、DNA及びRNA核酸配列などが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、患者の細胞を活性剤として使用することができる。さらに、内皮細胞接着性リガンドなどのペプチド、及び成長因子などのタンパク質もまた、本明細書で定義するコポリマー及び/または組成物から部分的に、または全体的に構成される構造体に組み込むことができる。
【0085】
バイオコンポジットは、1種以上の成長因子を含むことができる。広義には、1種以上の成長因子は、細胞分裂及び細胞生残を促進及び/または制御する、1種以上の物質であることができる。例えば、1種以上の成長因子は、限定されるものではないが、BMP2、BMP4、BMP6、BMP7、BMP9、BMP14などを含む、骨形成タンパク質(BMP)またはその活性フラグメントの1つ以上;血小板由来の成長因子(PDGF)、例えば、PDGF AA、PDGF BB;インスリン様成長因子(IGF)、例えば、IGF-I、IGF-II;線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えば、酸性FGF、塩基性FGF、β-内皮細胞成長因子、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、及びFGF9;トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF-β1、TGF-β1.2、TGF-β3、TGF-β5;血管内皮成長因子(VEGF)、例えば、VEGF、上皮成長因子(EGF)、例えば、EGF、アンフィレグリン、ベータセルニン、ヘパリン結合EGF;インターロイキン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、CSF-G、CSF-GM、CSF-M、BMPサイトカインタンパク質;神経成長因子(NGF)、幹細胞因子、肝細胞成長因子、ならびに毛様体神経栄養因子から選択することができる。
【0086】
グリセロールまたはソルビトールなどのポリオールを、例えば、3D印刷を容易にするための可塑剤として使用することができる。
【0087】
例示的な可塑剤としては、鉱油、低分子量エステル、グリコールエーテル、脂肪酸のグリコールエーテルエステル、脂肪族二酸のグリコールエーテルエステル、ケイ皮酸のグリコールエーテルエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、オルト及びテレフタレート、クエン酸塩、アジピン酸塩、組み合わせ、混合物などといった材料が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、可塑剤としては、グリコールエーテル、または、グリコールエーテルの、脂肪酸もしくは脂肪族二酸とのエステル、または、グリコールエーテルの、ケイ皮酸とのエステル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス(2-ブトキシエチル)セバケート、ビス[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロピル]アジペート、ビス[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロピル]セバケート、ビス(2-エトキシエチル)アジペート、ビス(2-エトキシエチル)セバケート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルシンナメート、ジエチレングリコールブチルエーテルシンナメート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテルブチレート、トリプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレグリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、これらの組み合わせなどが挙げられる。特定の実施形態では、可塑剤を使用して、得られるブレンドのTgを下げることができ、ブレンドを、室温(すなわち、約25℃)においてエラストマー領域内とし、かつ可撓性とすることができる。可塑剤は、組成物の総重量に対して、約1%~約60%、例えば、約2%~約45%の量で存在することができる。
【0088】
例示的な改質剤としては、窒化ホウ素のような追加の成核剤、または、シランもしくはジイソシアネートなどの架橋剤といった、任意の合理的な改質剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
例示的な安定剤としては、ヒンダードアミン、フェノールUV安定剤、金属系熱安定剤、ブチル化ヒドロキシトルエン、及びこれらの組み合わせなどの、任意の合理的な安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
例示的な酸捕捉剤としては、カルシウムまたはステアリン酸亜鉛などの、任意の合理的な酸捕捉剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
例示的な相溶化剤としては、界面活性剤と同様の作用をする、低~中分子量ポリマーなどの、任意の合理的な相溶化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
特定の実施形態では、他のポリマーなどの添加剤を使用して、得られる組成物、及び/または最終バイオコンポジットのTgを下げることができる。
【0093】
バイオコンポジットは、遷移/金属を実質的に含まない、または含まないことができる。金属は、任意選択的に、チタン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、及び銅、ならびにこれらの合金から選択することができる。
【0094】
バイオコンポジットは、ポリアリールエーテルケトンを実質的に含まない、または含まないことができる。ポリアリールエーテルケトンは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトン(PEKK)、またはこれらの混合物から選択することができる。
【0095】
用途
対象における骨の処置または修復のためのバイオコンポジットを、本明細書で開示する。
【0096】
対象における、例えば、骨幹端、軟骨下領域、もしくは骨幹、または、扁平骨もしくは椎骨の任意の領域における、例えば、低エネルギーまたは高エネルギー外傷、腫瘍、感染症の結果としての骨欠損を処置または修復する方法であって、上記方法は、必要とする対象に、本明細書で開示するバイオコンポジットを投与することを含む、上記方法もまた、本明細書で開示する。
【0097】
対象において、負傷した、または欠損した骨を処置または修復するための物品の形成における、本明細書で開示するバイオコンポジットの使用もまた、本明細書で開示する。
【0098】
処置または修復は、適切な形態、例えばねじ、プレート、ロッドの形状をした、または、事前に作成したモジュール形態により、もしくは、CTスキャンダイコムデータなどにより欠損を測定した後に印刷することにより、欠損を埋めるように型に入れて作られた、バイオコンポジットから選択することができ、対象に特異的な骨に関連した病理に対する、個別化された解決策を可能にする。
【0099】
処置または修復には、対象における1つ以上の骨が関与する場合がある、例えば、骨は、ねじ付きプレートを必要とする橈骨または尺骨の骨幹の破壊、インターロックねじによる髄内釘を必要とする脛骨骨幹の骨折、プレート及びねじによる骨移植増強を必要とし得る近位または遠位脛骨のプラトーまたは脛骨天蓋骨折、ポリメチルメタクリレート注入を必要とする椎体の低衝撃骨折、骨移植の増強を伴う、または伴わない、プレート、ねじを必要とする遠位橈骨の骨折であることができる。非骨折状態においては、本明細書で開示する現行のバイオコンポジット、または組成物を、椎間板変性症及び脊柱側彎症矯正に対する脊椎固定などの状況に適用することができる。本明細書では、バイオコンポジットは、腰、胸、または頸部領域のいずれかにおける、前方、側方、後方、経椎間孔、及び斜方椎体間固定用のものを含む、多くの椎体間デバイスのうちの1つとして設計することができる。同様に、非骨折状態においては、ロッド、ねじ、及びプレートを、本明細書に記載するバイオコンポジットを用いて設計することができる。
【0100】
本明細書では、バイオコンポジットは物品として配合または製造することができ、物品は医療用デバイスであることができる。医療用デバイスの例としては、骨置換内部人工装具デバイス;ねじ及びプレート及び髄内ロッドなどの骨固定デバイス;骨の空隙及び欠損用の海綿骨質フィラーなどの骨増強デバイスが挙げられる。
【0101】
本明細書では、バイオコンポジット及び/または物品は、インプラントの形態であることができ、このようなインプラントとしては、臀部関節形成デバイスの大腿構成部品の基部などの、関節置換義肢の部分構成部品、または、膝関節形成デバイスの脛骨もしくは大腿構成部品の一部であることを挙げることができ、同様に、上記バイオコンポジットを、肩、肘、手首、椎間円板、足首などの、他の関節置換のパーツの作製において利用することができる。例示的なインプラントを
図2に示す。
【0102】
本明細書では、バイオコンポジット及び/または物品は、整形インプラントの形態であることができる。
【0103】
本明細書では、バイオコンポジット及び/または物品は、整形ねじ、ロッド、またはプレートの形態であることができる。
【0104】
撮像
対象において、低線量のx線で撮像可能なバイオコンポジットを、本明細書で開示する。一実施形態では、低線量のX線は、約52kV×1.9mA~約60kV×6.2mAである。
【0105】
低線量のX線は高度に電離しておらず、対象におけるDNA損傷の可能性を低減し得る。
【0106】
例示的実施形態
本開示は、以下の例示的実施形態の1つ以上により記載することができる。
【0107】
1.
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、
を含む組成物から形成されるバイオコンポジット。
【0108】
2.上記バイオコンポジットは3D印刷、任意選択的に、ステレオリソグラフィ3D印刷、マスクステレオリソグラフィ3D印刷、またはデジタルライトプロセッシングにより形成される、例示的実施形態1に記載のバイオコンポジット。
【0109】
3.上記バイオコンポジットは、紫外線光源を用いる3D印刷により形成される、例示的実施形態1または例示的実施形態2に記載のバイオコンポジット。
【0110】
4.上記バイオコンポジットは、約280nm~約400nmの範囲の波長を有する光源を用いる3D印刷により形成される、例示的実施形態1~3のいずれか1つの例示的実施形態に記載のバイオコンポジット。
【0111】
5.
-上記バイオコンポジットは、ヒドロキシアパタイト、n-ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、及び/またはガラス粒子のうちの少なくとも1つをさらに含むか、または、
-ヒドロキシアパタイト、n-ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、及び/またはガラス粒子を含む層が、上記バイオコンポジットの1つ以上の表面の少なくとも一部に適用される、
先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0112】
6.ヒドロキシアパタイトを含む上記層は、3D印刷技術を用いて適用される、例示的実施形態5に記載のバイオコンポジット。
【0113】
7.上記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、化学エッチング、化学コーティング(任意選択的に、化学グラフト)、電気化学グラフト、レーザーエッチング、機械的表面改質、プラズマアシストコーティング、プラズマアシストエッチング、(任意選択的に、プラズマもしくはイオンビームを用いる)物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積法、またはこれらの混合物から選択されるプロセスで改質される、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0114】
8.上記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面をエッチングして、上記表面の少なくとも一部を除去し、上記エッチングは、化学エッチング、レーザーエッチング、プラズマアシストエッチング、機械エッチング、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1つの技術を任意選択的に含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0115】
9.上記エッチングは、約20℃~約50℃の範囲、任意選択的に、約25℃~約42℃の範囲の温度で行われる、例示的実施形態8に記載のバイオコンポジット。
【0116】
10.上記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、プラズマで処理される、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0117】
11.上記プラズマ処理によって、上記プラズマで処理した上記表面の少なくとも一部における、ヒドロキシル基、ヒドロキシルラジカル、及び/またはまたは活性酸素種のうちの少なくとも1つの濃度が増加する、例示的実施形態10に記載のバイオコンポジット。
【0118】
12.少なくとも1つの表面をプラズマでエッチングし、上記表面の少なくとも一部を除去する、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0119】
13.上記プラズマは、低温アルゴン-酸素プラズマ、酸素プラズマ、ヘリウムプラズマ、窒素プラズマ、アルゴンプラズマ、またはこれらの組み合わせからを含む群から選択される、例示的実施形態10~12のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0120】
14.上記フィラーは、ヒドロキシアパタイト、シリカ(任意選択的に、シリカ微粒子)、(任意選択的に、E型及びS型ガラス型繊維から選択される)ガラス繊維、生体活性ガラス繊維、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機化合物を含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0121】
15.上記フィラーは、ナノスフィア、ナノウィスカー、及びナノロッドから選択される微粒子形態のヒドロキシアパタイトを含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0122】
16.上記フィラーは、約50nm~約200nmの直径を有する微粒子形態のヒドロキシアパタイトを含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0123】
17.上記フィラーは、約50nm~約700nmの粒径を有するシリカナノ微粒子を含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0124】
18.上記フィラーは、
・約250~約350μmの長さ、及び/または
・約5~10μmの直径
を有する、(任意選択的に、E型及びS型から選択される)ガラス繊維を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のバイオコンポジット。
【0125】
19.上記光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、少なくとも1種の光重合性アルケン、アリル、ビニルメタクリレート、及び/またはアクリレート基、ならびにこれらの混合物を含む少なくとも1種のモノマーを含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0126】
20.上記光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、任意選択的に、アルケン、アリル、ビニル、メタクリレート、及び/またはアクリレート基から選択される、複数の光重合性基を含む少なくとも1種のモノマーを含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0127】
21.上記光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、2つもしくは3つのメタクリレート基;2つもしくは3つのアクリレート基;2つもしくは3つのビニル基;または、2つもしくは3つのアリル基を含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0128】
22.上記光重合に適した少なくとも1種のモノマーは、ウレタンジメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、デカンジオールジメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0129】
23.上記光開始剤は、カンファーキノン、エチル=4-ジメチルアミノベンゾエート、トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、及びこれらの混合物から選択される、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0130】
24.上記1種以上のモノマーは、バイオコンポジットの約70~約95wt%の範囲で存在する、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0131】
25.上記フィラー組成物は、バイオコンポジットの約5~約30wt%の範囲で存在する、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0132】
26.可塑剤、染料、顔料、改質剤、安定化剤、酸捕捉剤、相溶化剤、他のポリマー、薬学的活性化合物、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0133】
27.薬学的活性化合物である少なくとも1種の添加剤をさらに含む、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0134】
28.上記バイオコンポジットは、任意選択的に、チタン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、及び銅、ならびにこれらの合金または混合物から選択される金属を、実質的に含まない、または含まない、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0135】
29.上記バイオコンポジットは、任意選択的に、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、またはこれらの混合物から選択されるポリアリールエーテルケトンを、実質的に含まない、または含まない、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0136】
30.上記バイオコンポジットは、対象における損傷した、または欠損した骨の処置または修復に用いられる、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0137】
31.上記処置または修復は、外傷、任意選択的に、低もしくは高エネルギー外傷;腫瘍;及び/または感染症の結果である、例示的実施形態30に記載のバイオコンポジット。
【0138】
32.上記処置または修復は、骨幹端、軟骨下領域、もしくは骨幹、または、扁平骨もしくは椎骨における任意の領域におけるものである、例示的実施形態30または例示的実施形態31に記載のバイオコンポジット。
【0139】
33.上記バイオコンポジットは医療用デバイスの形態である、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0140】
34.上記バイオコンポジットはインプラントの形態である、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0141】
35.上記バイオコンポジットは整形インプラントの形態である、先行例示的実施形態のいずれか1つに記載のバイオコンポジット。
【0142】
36.例示的実施形態1~35のいずれか1つに記載のバイオコンポジットの合成方法であって、
-
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・少なくとも1種の無機化合物を含むフィラー組成物と、
を含む組成物を提供するステップと、
-上記バイオコンポジットを3D印刷するステップと、
を含む、上記方法。
【0143】
37.上記3D印刷は、ステレオリソグラフィ3D印刷、マスクステレオリソグラフィ3D印刷、またはデジタルライトプロセッシングである、例示的実施形態Xに記載の方法。
【0144】
38.上記3D印刷は、紫外線光源を用いる、例示的実施形態36または例示的実施形態37に記載の方法。
【0145】
39.上記3D印刷は、約280nm~約400nmの範囲の波長を有する光源を用いる、例示的実施形態36~38のいずれか1つに記載の例示的実施形態に記載の方法。
【0146】
40.
-上記組成物は、ヒドロキシアパタイト、n-ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、及び/またはガラス粒子のうちの少なくとも1つをさらに含むか、または、
-上記方法は、ヒドロキシアパタイトを含む層を、上記バイオコンポジットの1つ以上の表面の少なくとも一部に適用するステップを含む、
例示的実施形態36~39のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
41.ヒドロキシアパタイトを含む上記層は、3D印刷技術を用いて適用される、例示的実施形態40に記載の方法。
【0148】
42.上記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、化学エッチング、化学コーティング(任意選択的に、化学グラフト)、電気化学グラフト、レーザーエッチング、機械的表面改質、プラズマアシストコーティング、プラズマアシストエッチング、(任意選択的に、プラズマもしくはイオンビームを用いる)物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積法、またはこれらの混合物から選択されるプロセスを含むステップで改質される、例示的実施形態36~41のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
43.上記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面をエッチングして、上記表面の少なくとも一部を除去し、上記エッチングすることは、化学エッチング、レーザーエッチング、プラズマアシストエッチング、機械エッチング、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1つの技術を任意選択的に含む、例示的実施形態36~42のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
44.上記エッチングは、約20℃~約50℃の範囲、任意選択的に、約25℃~約42℃の範囲の温度で行われる、例示的実施形態43に記載の方法。
【0151】
45.上記バイオコンポジットの少なくとも1つの表面は、プラズマで処理される、例示的実施形態36~44のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
46.上記プラズマ処理によって、上記プラズマで処理した上記表面の少なくとも一部における、ヒドロキシル基、ヒドロキシルラジカル、及び/またはまたは活性酸素種のうちの少なくとも1つの濃度が増加する、例示的実施形態45に記載の方法。
【0153】
47.少なくとも1つの表面をプラズマでエッチングし、上記表面の少なくとも一部を除去する、例示的実施形態36~46のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
48.上記プラズマは、低温アルゴン-酸素プラズマ、酸素プラズマ、ヘリウムプラズマ、窒素プラズマ、アルゴンプラズマ、またはこれらの組み合わせからを含む群から選択される、例示的実施形態36~47のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
49.例示的実施形態36~48のいずれか1つに記載の方法から形成されるバイオコンポジット。
【0156】
50.対象における、損傷した、または欠損した骨の処置または修復方法であって、上記方法は、例示的実施形態1~35のいずれか1つに記載のバイオコンポジットを、それを必要とする対象に投与することを含む、上記方法。
【0157】
51.上記処置または修復は、外傷、任意選択的に、低もしくは高エネルギー外傷;腫瘍;及び/または感染症の結果である、例示的実施形態50に記載の方法。
【0158】
52.上記処置または修復は、骨幹端、軟骨下領域、もしくは骨幹、または、扁平骨もしくは椎骨における任意の領域におけるものである、例示的実施形態50または例示的実施形態51に記載の方法。
【0159】
53.例示的実施形態1~35のいずれか1つに記載のバイオコンポジットの形成における、
・光重合に適した少なくとも1種のモノマーと、
・光開始剤と、
・フィラー組成物と、
を含む組成物の使用。
【0160】
54.対象における骨の処置または修復のための物品の形成における、例示的実施形態1~35のいずれか1つに記載のバイオコンポジットの使用。
【0161】
55.上記処置または修復は、外傷、任意選択的に、低もしくは高エネルギー外傷;腫瘍;及び/または感染症の結果である、例示的実施形態54に記載の使用。
【0162】
56.上記処置または修復は、骨幹端、軟骨下領域、もしくは骨幹、または、扁平骨もしくは椎骨における任意の領域におけるものである、例示的実施形態54または例示的実施形態55に記載の使用。
【0163】
57.上記物品は医療用デバイスである、例示的実施形態54~56のいずれか1つに記載の使用。
【0164】
58.上記物品はインプラントである、例示的実施形態54~57のいずれか1つに記載の使用。
【0165】
59.上記物品は整形インプラントである、例示的実施形態54~57のいずれか1つに記載の使用。
【0166】
実施例
以下の非限定例を参照し、及び、添付図面を参照して、ここで、本開示を説明する。
【0167】
実施例1
図1に示す、ステレオリソグラフィ3D印刷、及び、大気低温プラズマエッチング技術を使用して、多機能脊椎固定ケージの開発プロセスを設計し、実装した。純粋な歯科用レジン(PDR)及び複合材料を、固定ケージの調製で使用した(
図2)。バイオコンポジットに、機械的、物理的、及び生物学的機能を付与するために、ナノヒドロキシアパタイト(n-HAP、球状、D<200nm)及びストロンチウムをドープしたガラス粒子(D<700nm)を、フィラー材料として混合した。n-HAP粉末、及びその高倍率走査電子顕微鏡(SEM)画像を、
図3に示す。
【0168】
PDRは、以下で構成された:
・1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン(UDMA、80wt.%)及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA、20wt.%)の混合物;
・カンファーキノン(CQ、0.2wt.%)-光開始剤;
・エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート(EDMAB、0.5wt.%)-光開始剤;ならびに
・ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、0.05wt.%)-阻害剤。
【0169】
複合材料群は、以下で構成された:
・GP10-PDR(90wt.%)及びストロンチウムガラス粒子(10wt.%);
・GP10+nHAp02-PDR(88wt.%)、ストロンチウムガラス粒子(10wt.%)、及びn-HAP(2wt.%);
・GP20-PDR(80wt.%)及びストロンチウムガラス粒子(20wt.%);
・GP20+nHAp02-PDR(78wt.%)、ストロンチウムガラス粒子(20wt.%)、及びn-HAP(2wt.%)。
【0170】
骨誘導を改善するために、ケージの上部及び下部が多層(
図2-画像2)である脊椎固定ケージ(
図2-画像1)を設計した。また、骨伝導能力を改善するために、ケージの中央部に、反復微多孔構造(
図2-画像3)を組み込んだ。ケージの主要本体は、PDRを用いて3D印刷し、GP20+n-HAP複合材料を用いて、機能化上部/下部層を印刷した。3D印刷したケージを、イソプロピルアルコールで、超音波浴にて洗い流し、60℃で1時間、UV及び青色光の下で後硬化した。
【0171】
機械的特性におけるフィラーの影響を評価するために、各群における、印刷した試験片の圧縮崩壊強度及び弾性率を、圧縮試験で測定した。円柱試験片(長さ:10mm、直径:7mm)を、3D印刷を用いて調製し、3D印刷した試験片は全て、試験前に後硬化した。PDRを対照として使用し、複合材料試験片を実験群として使用した。また、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を、比較のために試験した。
図4は、圧縮崩壊強度及び弾性率を示し、両方の特性において、PDRと比較して、複合材料におけるフィラー含有量の増加として、統計的に有意な改善が観察される。PEEKの測定値と比較して、複合材料の崩壊強度は低いが、弾性率は、PEEKより高い。本実施例の複合材料は全て、対照よりも高い圧縮特性を示し、2つの群のGP20及びGP20+nHAp02は、PEEKよりも高い崩壊強度を示し、高圧縮応力領域での使用に関して、本開示のバイオコンポジットの良好な適合性を示す。
【0172】
骨再生及び接着のための、バイオコンポジットの表面性能を改善するために、3D印刷したインプラント構造に、大気低温プラズマを適用した。誘電体バリア放電プラズマ反応器及び大気圧で、プラズマを発生させた。本プロセスの間の、反応器の温度は、23~25℃に維持した。アルゴンと酸素ガスの混合物(9:1)を、処理ガスとして使用し、側面のガスチューブを通して、放電領域に直接導入した。RF電力を50Wに設定し、試験片を、最大4分間のプラズマオン時間で処理した。SEMにより、プラズマエッチングした複合材料の表面観察を行い、処理した表面の親水性を、
図5に示す水接触角測定により調査した。
【0173】
表面プラズマエッチングまたはテクスチャー処理の現象は、複合材料中の異なる材料間のエッチング速度の違いに関連し、無機フィラー材料で強化したポリマー複合材料などの、異なる相の材料の組み合わせにおいて、高いエッチング選択性を達成することができる。プラズマ処理時間が増大するにつれ、ポリマーマトリックスを高度にエッチングし、ガラス粒子及びn-HAPなどの無機フィラーが留まり、
図6に示すように、複合材料の外側表面に露出した。表面粗さはナノスケールで増大した。また、酸素原子は、露出したフィラー材料の表面でヒドロキシル基(-OH基)を作製し、ヒドロキシル基は、表面エネルギーの増加に伴い、複合材料の表面特性を、疎水性から親水性に変化させる。結果として、湿潤性の指標である水接触角は、2分間のプラズマ処理の後に、115°から50°まで減少した(
図5)。アルゴン-酸素プラズマ下での、複合材料(GP20+nHAp02)のエッチング速度を、
図7に示すとおりに計算した。
【0174】
実験結果に基づくと、提示した表面改質プロセスを伴う、開示した複合材料は、3D印刷した固定ケージ及びインプラントにおける、細胞接着及び増殖を向上させると推定される。
【0175】
本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、多数の変形及び/または修正が、上記の実施形態に対して行われ得ることは、当業者に理解されよう。したがって、本実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
【国際調査報告】