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特表2024-545650炭化水素油の水素化方法、及び水素化システム
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  • 特表-炭化水素油の水素化方法、及び水素化システム 図1
  • 特表-炭化水素油の水素化方法、及び水素化システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】炭化水素油の水素化方法、及び水素化システム
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/04 20060101AFI20241203BHJP
   C10G 65/08 20060101ALI20241203BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20241203BHJP
   B01J 23/882 20060101ALI20241203BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20241203BHJP
   B01J 29/46 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C10G65/04
C10G65/08
C10G45/02
B01J23/882 M
B01J23/883 M
B01J29/46 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534732
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 CN2022142685
(87)【国際公開番号】W WO2023131019
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210008433.6
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210008420.9
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210014492.4
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522173712
【氏名又は名称】中石化(大連)石油化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】代萌
(72)【発明者】
【氏名】丁賀
(72)【発明者】
【氏名】徐大海
(72)【発明者】
【氏名】李士才
(72)【発明者】
【氏名】李坤鵬
(72)【発明者】
【氏名】牛世坤
(72)【発明者】
【氏名】李揚
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA07B
4G169BB02B
4G169BC59B
4G169BC67B
4G169BC68B
4G169CC02
4G169CC14
4G169EA02Y
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169EC07Y
4G169ZA11B
4G169ZF04B
4G169ZF05B
4H129AA02
4H129CA04
4H129CA05
4H129CA06
4H129CA07
4H129KA07
4H129KB03
4H129KD15Y
4H129KD22Y
4H129KD24Y
4H129MA01
4H129MA12
4H129MB15A
4H129MB15B
4H129MB18B
4H129MB19B
4H129NA02
4H129NA15
4H129NA23
(57)【要約】
本発明は、石油精製及び化学工業の分野に関し、炭化水素油の水素化方法及び水素化システムを開示する。該方法は、水素ガスの存在下、炭化水素油原料を気相水素化反応器において気相脱硫反応を行い、気相脱硫反応生成物を得るステップ(1)と、前記気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るステップ(2)と、前記増圧済み流れを液相水素化反応器に送り、前記増圧済み流れ中の液相成分を液相水素化反応器において液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るステップ(3)と、を含む。本発明による方法及びシステムは、高度水素化の効果を得ることができ、また、プロセスの流れを全体的に簡素化させて、反応の過酷さを軽減させ、化学反応効率を高める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油の水素化方法であって、
水素ガスの存在下、炭化水素油原料を気相水素化反応器において気相脱硫反応を行い、気相脱硫反応生成物を得るステップ(1)と、
前記気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るステップ(2)と、
前記増圧済み流れを液相水素化反応器に送り、前記増圧済み流れ中の液相成分を液相水素化反応器において液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする炭化水素油の水素化方法。
【請求項2】
前記炭化水素油原料は、低品質ディーゼル、航空用ケロシン、ワックスオイル、及びナフサから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記低品質ディーゼルは、初留点150~200℃、終留点320~400℃、S含有量≦20000μg/g、好ましくは≦15000μg/g、N含有量≦1000μg/g、好ましくは≦800μg/g、多環芳香族炭化水素の含有量≦50wt%であり、
好ましくは、前記航空用ケロシンは、初留点80~150℃、終留点200~300℃、S含有量≦8000μg/g、好ましくは≦4000μg/g、N含有量≦100μg/g、好ましくは≦20μg/gであり、
好ましくは、前記ワックスオイルは、初留点160~220℃、終留点300~400℃、S含有量≦30000μg/g、好ましくは≦20000μg/g、N含有量≦2000μg/g、好ましくは≦1500μg/g、多環芳香族炭化水素の含有量≦60wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気相脱硫反応は、第1水素化触媒の存在下で行われ、前記第1水素化触媒は、水素化脱硫機能を有する触媒であり、
好ましくは、前記気相脱硫反応の条件は、圧力0.1~2.8MPa、好ましくは0.5~2MPa、温度260~400℃、好ましくは320~390℃、水素/油体積比100~900、好ましくは300~700、空間速度0.5~3h-1、好ましくは0.8~2h-1を含み
好ましくは、前記気相水素化反応器は、固定床反応器である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は2~10MPa、好ましくは2.5~7.5MPaに増圧される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素油原料は低品質ディーゼルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は、4.5~6.5MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化脱芳香化触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素油原料は低品質ディーゼルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は4~7MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、高度水素化脱硫触媒である、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は2.5~4MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化脱芳香化触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は2.5~4MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化異性化触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素油原料はワックスオイルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は5~10MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、異性化流動点降下触媒であり、
好ましくは、前記増圧済み流れ中の気相成分を上方から液相水素化反応器の外に排出し、任意に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得、その後、前記水素化軽質成分と液相水素化反応生成物とを混合して、水素化脱芳香化反応を行うステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記液相水素化反応の圧力は、前記気相水素化脱硫の圧力よりも、少なくとも1MPa、好ましくは1.5~7MPa、さらに好ましくは2.5~6MPa高い、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記液相水素化反応器は、固定床反応器、好ましくは気液分離ゾーンが設けられた固定床反応器であり、
好ましくは、前記液相水素化反応の条件は、圧力2~8MPa、好ましくは3~6MPa、温度200~400℃、好ましくは260~360℃、空間速度0.1~3h-1、好ましくは0.5~1h-1を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記増圧済み流れ中の気相成分を上方へ移動させて液相水素化反応器から排出し、任意に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得、
好ましくは、前記脱不純物処理は、脱硫化水素処理、好ましくは前記気相成分を熱交換し、その後、高圧分離を行って、前記水素化軽質成分及び硫化水素含有水素ガスを得ることを含み、
好ましくは、前記熱交換により、前記気相成分は、100~200℃、好ましくは120~150℃に降温する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記液相水素化反応生成物と前記水素化軽質成分を混合して水素化生成物を得るステップをさらに含み、
好ましくは、前記水素化生成物は、多環芳香族炭化水素の含有量が5wt%以下、S含有量が10μg/g以下のディーゼル精製品であり、
好ましくは、前記水素化生成物は、煙点が26mm以上、及び/又は氷点が-50℃以下の航空用ケロシン精製品であり、
好ましくは、前記水素化生成物は、芳香族炭化水素の含有量が5wt%以下、S含有量が10μg/g以下の特殊油製品である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
炭化水素油の水素化システムであって、
順次連通している、第1水素化触媒が充填された気相水素化反応器、増圧装置、及び第2水素化触媒が充填された液相水素化反応器を含み、
前記気相水素化反応器は、炭化水素油原料と水素ガスの気相脱硫反応を行って、気相脱硫反応生成物を得るものであり、
前記増圧装置は、気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るものであり、
前記液相水素化反応器は、増圧済み流れと第2水素化触媒を接触させて液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るものである、ことを特徴とする炭化水素油の水素化システム。
【請求項15】
前記増圧装置は、気相脱硫反応生成物を2~10MPaに増圧するものである、請求項14に記載の水素化システム。
【請求項16】
前記炭化水素油原料はディーゼルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化脱芳香化触媒であり、又は
前記炭化水素油原料はディーゼルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は高度水素化脱硫触媒であり、又は
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化脱芳香化触媒であり、又は
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化異性化触媒であり、又は、
前記炭化水素油原料はワックスオイルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は異性化流動点降下触媒である、請求項14又は15に記載の水素化システム。
【請求項17】
前記気相水素化反応器は固定床反応器であり、
前記液相水素化反応器は、固定床反応器、好ましくは気液分離ゾーンが設けられた固定床反応器である、請求項14~16のいずれか1項に記載の水素化システム。
【請求項18】
脱不純物装置をさらに含み、前記脱不純物装置は、入口が前記液相水素化反応器の気相成分の出口に連通しており、液相水素化反応器から排出された増圧済み流れ中の気相成分に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得るものであり、
好ましくは、前記脱不純物装置は、脱硫化水素装置であり、
好ましくは、前記脱硫化水素装置は、連通している熱交換装置及び高圧分離装置を含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の水素化システム。
【請求項19】
前記液相水素化反応生成物及び前記水素化軽質成分を受けて、混合して水素化生成物を得るための混合装置をさらに含む、請求項18に記載の水素化システム。
【請求項20】
前記炭化水素油原料はワックスオイルであり、該システムは、第3水素化触媒が充填された第3水素化反応器をさらに含み、前記第3水素化反応器は、入口が前記液相水素化反応器の液相水素化反応生成物出口及び前記脱不純物装置の水素化軽質成分出口に連通して、前記水素化軽質成分及び前記液相水素化反応生成物の水素化脱芳香化反応を行う、請求項18に記載の水素化システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2022年1月6日に提出された、中国特許出願202210008433.6、202210008420.9及び202210014492.4の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本発明は、石油精製及び化学工業の分野に関し、具体的には、炭化水素油の水素化方法、及び水素化システムに関する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼル中の硫黄及び多環芳香族炭化水素の燃焼によって生じる排出物は、人類が依存している大気環境を汚染することになるため、各国はディーゼルの品質基準を向上させるペースを絶えずに加速させている。2017年に施行された中国の国家Vディーゼル基準では、硫黄含有量が10mg/kgを超えてはならないと規定されている。2019年に提案された国家VIディーゼル品質基準では、多環芳香族炭化水素が≦11%であることが要求され、2023年に施行される国家VIB基準では、多環芳香族炭化水素が≦5%であることが要求されている。また、中国の二次加工原料に対する需要も日に日に増加しており、触媒ディーゼルなどの低品質原料には芳香族炭化水素が60%も含まれており、このため、触媒活性に対するより高い要求が求められている。しかし、高度脱硫と高度脱芳香化の反応機構の観点から見ると、両者の反応環境要件には大きな違いがある。脱硫反応では、低分子硫黄の除去は主に直接脱硫経路、つまり水素化分解脱硫によって行われる。反応性の低い高分子硫化物は、芳香環を水素化してから、水素化分解脱硫を行う水素化脱硫反応経路によって行われる。したがって、反応器の上部の比較的低温かつ水素分圧の高い環境では、主に低分子硫化物の水素化分解(吸熱)と芳香環含有物質の水素化反応(大量発熱)が起こる。反応器の下部では、熱と硫化水素が蓄積するため、反応環境は高温かつ水素分圧が低くなる。この反応環境は、水素化後の高分子硫化物のさらなる水素化分解には役立つが、芳香族炭化水素の水素化の熱力学によって厳しく制限されるため、芳香族炭化水素のさらなる飽和には非常に好ましくない。特に反応終了時には触媒活性が低下し、温度を上げる以外に良い操作方法がなく、脱芳香化効果にさらに影響を及ぼしてしまう。反応環境に対する両方のさまざまな要件に加えて、触媒表面での芳香族炭化水素の競合吸着も高度脱硫を阻害するため、従来の水素化技術では、超高度脱硫と芳香族炭化水素の効率的な飽和という2つの要件のバランスをとることが困難になる。ディーゼル洗浄技術をアップグレードする必要性と緊急性がさらに要求されている。
【0004】
従来技術では、高度脱硫に加えて脱芳香化をさらに進めるためには、既存の触媒系を用いて反応空間速度を下げる、つまり処理量を下げるか反応器を増設する方法が考えられるが、経済性の点からあまり合理的ではない。2つ目は、従来の水素化の後、生成した油をストリッピングして硫化水素を除去し、その後貴金属水素化反応器に入れる2段プロセス技術を使用することであり、これにより、触媒の使用コストが大幅に増加し、プロセスが複雑になり、最善の解決策ではない。
【0005】
CN108085058Bは、炭化水素油の高度脱芳香化方法を開示している。この方法では、比較的穏やかな温度と圧力条件を使用して、原料油と水素ガスを高度に分散したPt-Pd/Al触媒に通過させる。反応後の気相は圧縮されてリサイクルされるが、液相は芳香族炭化水素含有量の低い生成物である。しかし、前記Pt-Pd/Al水素化触媒は、主に低硫黄分ディーゼル原料の脱芳香化に適しているが、低品質ディーゼルの脱硫・脱芳香化の効果は十分ではない。
【0006】
CN109926067Aは、白金-パラジウム-コバルト三元金属水素化脱芳香化触媒及びその製造方法を開示している。この方法は、活性金属前駆体の段階的含浸法を採用しているため、製造された触媒は、白金及びパラジウムの貴金属の利用率が高く、相乗触媒能力が高く、また、白金及びパラジウムの導入は非貴金属コバルトの芳香族炭化水素への水素化性能の向上につながる。しかし、この触媒は、貴金属による高度脱芳香化に対する硫化水素の影響を避けるために、硫黄含有化合物を基本的に除去した後の炭化水素油を対象としており、低品質ディーゼルの脱硫・脱芳香化を達成することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の欠点に対して、本発明は、炭化水素油の水素化方法、及び水素化システムを提供する。本発明による方法及びシステムは、高度水素化の効果を得ることができ、また、プロセスの流れを全体的に簡素化させて、反応の過酷さを軽減させ、化学反応効率を高める。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、
水素ガスの存在下、炭化水素油原料を気相水素化反応器において気相脱硫反応を行い、気相脱硫反応生成物を得るステップ(1)と、
前記気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るステップ(2)と、
前記増圧済み流れを液相水素化反応器に送り、前記増圧済み流れ中の液相成分を液相水素化反応器において液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るステップ(3)と、を含む、炭化水素油の水素化方法を提供する。
【0009】
好ましくは、前記気相脱硫反応の条件は、圧力0.1~2.8MPa、好ましくは0.5~2MPa、温度260~400℃、好ましくは320~390℃、水素/油体積比100~900、好ましくは300~700、空間速度0.5~3h-1、好ましくは0.8~2h-1を含む。
【0010】
好ましくは、前記液相水素化反応の条件は、圧力2~8MPa、好ましくは3~6MPa、温度200~400℃、好ましくは260~360℃、空間速度0.1~3h-1、好ましくは0.5~1h-1を含む。
【0011】
本発明の第2態様は、順次連通している、第1水素化触媒が充填された気相水素化反応器、増圧装置、及び第2水素化触媒が充填された液相水素化反応器を含み、
前記気相水素化反応器は、炭化水素油原料と水素ガスの気相脱硫反応を行って、気相脱硫反応生成物を得るものであり、
前記増圧装置は、気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るものであり、
前記液相水素化反応器は、増圧済み流れと第2水素化触媒を接触させて液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るものである、炭化水素油の水素化システムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明水素化方法、及びシステムは、従来技術と比較して、以下の利点を有する。
【0013】
(1)本発明の水素化方法及びシステムでは、反応しやすい低分子は気相水素化反応器内で除去され、未反応の高分子はわずかな増圧によって液化して液相水素化反応器に入り、液化しやすい重質成分は高度水素化精製反応を起こす。このように、高度脱硫と脱芳香化を同じ反応システムで行い、反応条件を両立させないという従来技術の欠点を回避する。本発明者らは、研究により、炭化水素油を気相水素化脱硫に供することにより、芳香族炭化水素などの炭化水素油中の他の物質の競合吸着を大幅に減少させることができ、目標とする脱硫反応に役立つことや、液相水素化反応器と連携することにより、その後の脱芳香化など、炭化水素油中の他の物質の高度除去がより容易になることを発見した。
【0014】
(2)本発明の水素化方法及びシステムでは、気相脱硫反応生成物を増圧することによって、水素ガスと油の同時液化を促進する。さらに、石油製品中の水素ガスと硫化水素の溶解規則が異なるため、後続の液相水素化反応器に入る際、触媒活性に対する硫化水素の影響を回避し、従来の液相水素化技術における高度脱硫に対する硫化水素の阻害効果を十分に回避でき、また、2つの反応器間で硫化水素をストリッピングする必要もなくなる。
【0015】
(3)本発明では、低品質ディーゼルを原料として使用する高度脱硫・脱芳香化など、より温和な操作条件及びより簡素化されたプロセスフローでの炭化水素油の水素化精製を実現することができる。気相脱硫反応生成物のうち、反応した低分子は増圧過程では液化せず、熱交換器を経て高圧分離されると液化する。この液化手段は、水素ガスと原料の分離に有利であり、大量の水素ガスを回収してリサイクルすることができ、水素の利用効率を向上させることができる。高圧分離を受けた水素化軽質成分は、水素化重質成分と混合された後、次のストリッピング及び分留システムに入る。反応システム全体では、固定床反応システムの水素ガスコンプレッサと液相水素化反応システムの循環オイルポンプが不要であるため、投資コストが削減され、プロセスのステップが簡素化され、反応効率が向上し、反応の過酷さが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による特定実施形態の炭化水素油の水素化方法及びシステムの模式図である。
図2】本発明による別の特定実施形態の炭化水素油の水素化方法及びシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解されるべきである。数値範囲の場合、個々の範囲の端点値の間、個々の範囲の端点値と個別の点値の間、及び個別の点値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書において具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0018】
例示的な実施例の説明は、図面を参照して読むことが意図されており、図面は、書面による説明全体の一部であるとみなされる。明細書では、「下」、「上」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「上向き」、「下向き」、「頂部」、及び「底部」、及びそれらの派生語(例えば、「水平に」、「下に」、「上に」など)の相対的な用語は、その時点で説明されている図面に示されている方向と解釈されるべきである。これらの相対的な用語は説明を容易にするためのものであり、特定の方向で装置を構築又は動作させる必要はない。特に明記されていない限り、本発明の前記「接続」とは、構造が中間構造を介して直接又は間接的に相互に固定又は接続される関係を意味する。
【0019】
本発明の第1態様は、
水素ガスの存在下、炭化水素油原料を気相水素化反応器において気相脱硫反応を行い、気相脱硫反応生成物を得るステップ(1)と、
前記気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るステップ(2)と、
前記増圧済み流れを液相水素化反応器に送り、前記増圧済み流れ中の液相成分を液相水素化反応器において液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るステップ(3)と、を含む、炭化水素油の水素化方法を提供する。
【0020】
本発明のステップ(1)における前記水素ガスは、水素ガスを含有する任意の水素含有ガスであってもよく、新鮮な水素ガス、リサイクルされた水素、又は水素リッチガスであってよい。当業者は、本発明の技術案を理解した後、本発明の前記水素含有ガスを明確に理解することができる。
【0021】
本発明では、前記炭化水素油原料の選択範囲が幅広く、本発明による方法は、低分子硫化物及び他の高分子不純物を同時に除去する必要がある、低品質ディーゼル、航空用ケロシン、ワックスオイル、及びナフサのうちの少なくとも1種を含むあらゆる炭化水素油に適している。本発明による方法は、主に、気相水素化反応器内で低分子硫化物を除去し、未反応の高分子は、わずかな増圧によって液化され、液相水素化反応器に入り、液化しやすい重質成分は、高度水素化精製反応を起こす。
【0022】
本発明では、炭化水素油原料の性質の選択範囲が幅広く、好ましくは、前記低品質ディーゼルは、初留点150~200℃、終留点320~400℃、S含有量≦20000μg/g、好ましくは≦15000μg/g、N含有量≦1000μg/g、好ましくは≦800μg/g、多環芳香族炭化水素の含有量≦50wt%である。例えば、前記低品質ディーゼルのS含有量としては、8000μg/g、9000μg/g、10000μg/g、11500μg/gなどが挙げられるが、これらに限定されず、N含有量としては、500μg/g、600μg/g、700μg/gなどが挙げられるが、これらに限定されず、多環芳香族炭化水素の含有量としては、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
好ましくは、前記航空用ケロシンは、初留点80~150℃、終留点200~300℃、S含有量≦8000μg/g、好ましくは≦4000μg/g、N含有量≦100μg/g、好ましくは≦20μg/gである。例えば、前記航空用ケロシンのS含有量としては、500μg/g、1000μg/g、2000μg/g、3000μg/gなどが挙げられるが、これらに限定されず、N含有量としては、5μg/g、10μg/g、15μg/gなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
好ましくは、前記ワックスオイルは、初留点160~220℃、終留点300~400℃、S含有量≦30000μg/g、好ましくは≦20000μg/g、N含有量≦2000μg/g、好ましくは≦1500μg/g、多環芳香族炭化水素の含有量≦60wt%である。例えば、前記ワックスオイルのS含有量としては、500μg/g、1000μg/g、2000μg/g、5000μg/g、8000μg/g、9000μg/g、10000μg/g、15000μg/gなどが挙げられるが、これらに限定されず、N含有量としては、500μg/g、700μg/g、1000μg/g、1200μg/gどが挙げられるが、これらに限定されない。多環芳香族炭化水素の含有量としては、10wt%、20wt%、30wt%、40wt%、50wt%などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明では、符号「≦」は、以下を意味し、符号「≧」は、以上を意味する。
【0026】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記気相脱硫反応は、第1水素化触媒の存在下で行われ、前記第1水素化触媒は、水素化脱硫機能を有する触媒である。本発明では、前記水素化脱硫機能を有する触媒の選択範囲が幅広く、当該分野の通常の選択であってもよい。例えば、前記水素化脱硫機能を有する触媒は、担体と、水素化活性金属と、を含み、ここで、担体は、無機耐火性酸化物であり、一般には、アルミナ、アモルファスシリコンアルミニウム、シリカ、及び酸化チタンなどから選択される1種又は複数種であり、水素化活性金属は、第VIB族金属成分及び/又は第VIII族金属成分を含む。前記水素化脱硫機能を有する触媒では、第VIB族金属成分は、好ましくはタングステン及び/又はモリブデンから選択され、酸化物質量で触媒中の含有量が5%~30%、好ましくは15%~30%である。第VIII族金属成分は、好ましくはニッケル及び/又はコバルトから選択され、酸化物質量で触媒中の含有量が1%~6%、好ましくは2%~6%である。前記水素化脱硫機能を有する触媒には、リン、ケイ素、ホウ素、マグネシウム、フッ素などのうちの少なくとも1種などの助剤成分がさらに含まれてもよく、水素化脱硫機能を有する触媒中のこの助剤成分の質量含有量は一般に6wt%以下である。
【0027】
前記水素化脱硫機能を有する触媒は、任意の方法で製造したものであってもよく、中国石化撫順石油化学工業研究所(FRIPP)によって開発されたFHUDS-5、FHUDS-6、及びFHUDS-7触媒のうちの少なくとも1種などの市販の触媒であってもよい。
【0028】
本発明による方法によれば、好ましくは、前記気相脱硫反応の条件は、圧力0.1~2.8MPa、好ましくは0.5~2MPa、温度260~400℃、好ましくは320~390℃、水素/油体積比100~900、好ましくは300~700、空間速度0.5~3h-1、好ましくは0.8~2h-1を含む。本発明による方法では、気相水素化脱硫反応がこの好ましい水素/油体積比で行われると、原料の分圧を低下させ、原料を完全に気化することを達成するのにさらに役立つ。また、本発明の気相脱硫反応は、より低い圧力で行われてもよく、それによって、エネルギー消費量を大幅に節約することができる。
【0029】
なお、ステップ(1)の気相脱硫反応では、炭化水素油原料中の硫黄分が除去されるだけでなく、窒素分も必然的に除去される。
【0030】
本発明では、前記気相水素化反応器の反応器のタイプは特に限定され、好ましくは、前記気相水素化反応器は、固定床反応器である。
【0031】
本発明のステップ(2)では、前記気相脱硫反応生成物が増圧され、前記増圧は増圧装置、例えばコンプレッサによって行われてもよく、コンプレッサのタイプは、特に限定されず、例えば、レシプロコンプレッサ、遠心コンプレッサであってもよい。
【0032】
本発明では、前記気相脱硫反応生成物の増圧範囲の選択が幅広く、液相水素化反応器への正常な供給を確保し、液相水素化反応器の操作圧力要件を満たすように生成物を増圧することが好ましい。本発明では、気相脱硫反応生成物を増圧することによって、水素ガスと油の同時液化を促進する。さらに、石油製品中の水素ガスと硫化水素の溶解規則が異なる、つまり高温条件下では、水素ガスの溶解度が高く、硫化水素の溶解度が低いため、液化液相中の水素ガスの濃度は高く、硫化水素の濃度は低い。後続の液相水素化反応器に入る際、触媒活性に対する硫化水素の影響を回避し、2つの反応器間で硫化水素をストリッピングする必要もなくなる。
【0033】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物を2~10MPa、好ましくは2.5~7.5MPaに増圧する。炭化水素類の原料及び種々の製品の要求によって、前記増圧範囲も異なる場合がある。
【0034】
好ましくは、前記炭化水素油原料は低品質ディーゼルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は4.5~6.5MPaに増圧される。この好ましい実施形態では、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化脱芳香化触媒である。前記炭化水素油原料が低品質ディーゼルである場合、本発明の方法では、高度脱硫と脱芳香化を同じ反応システムで行い、反応条件を両立させないという欠点を回避する。気相水素化反応器の反応条件を制御することで、芳香環含有物質が触媒表面に吸着しにくくなり、芳香族炭化水素物質の競合吸着が大幅に低減され、目的の脱硫反応に寄与する。また、気相水素化反応器の反応条件を制御することは、気相脱硫だけでなく、液相水素化反応器とより適切に連携することにより、その後の高度脱芳香化をより促進するためである。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記炭化水素油原料は、低品質ディーゼルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は4~7MPaに増圧される。この好ましい実施形態では、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、高度水素化脱硫触媒である。この好ましい実施形態では、本発明の方法は、比較的低温及び適切な圧力で高分子硫化物を効果的に除去することができる。さらに多環芳香族炭化水素を除去する必要がある場合は、多環芳香族炭化水素を除去する機能も備えた高度水素化脱硫触媒(例えば、Mo-Ni触媒)を選択することで、高品質ディーゼル製品の製造を実現できる。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記炭化水素油原料は、航空用ケロシンであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は、2.5~4MPaに増圧される。この好ましい実施形態では、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化脱芳香化触媒である。前記炭化水素油原料が航空用ケロシンである場合、本発明の方法は、航空用ケロシン中の芳香族炭化水素を効果的に除去し、航空用ケロシンの煙点を改善することができる。特に、航空用ケロシンの生産量を増やすために、航空用ケロシン留分から重質成分をカットし、原料中の芳香族炭化水素含有量を増加させる場合、芳香族炭化水素の除去に適した反応環境がより好ましく、高煙点航空用ケロシンの生産を実現することができる。
【0037】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記炭化水素油原料は、航空用ケロシンであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は2.5~4MPaに増圧される。この好ましい実施形態では、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化異性化触媒である。前記炭化水素油原料が航空用ケロシンである場合、本発明の方法は、航空用ケロシン中の分岐アルカンを効果的に異性化することができる。特に航空用ケロシンの生産量を増やすために、航空用ケロシン留分から重質成分をカットし、原料中の長鎖アルカンの含有量を増加させる場合、アルカン異性化に適した反応環境がさらに好ましく、低氷点の航空用ケロシンの生産を実現することができる。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記炭化水素油原料は、ワックスオイルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は5~10MPaに増圧される。この好ましい実施形態では、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、異性化流動点降下触媒である。この好ましい実施形態では、本発明の方法は、ワックスオイル留分中の長鎖アルカンを異性することで、特殊油製品の粘度指数を改善することができる。前記炭化水素油原料がワックスオイルである場合、好ましくは、該方法は、前記増圧済み流れ中の気相成分を上方へ移動させて液相水素化反応器から排出し、任意に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得、その後、前記水素化軽質成分と液相水素化反応生成物とを混合して、水素化脱芳香化反応を行うことで、白油などの特殊油製品を得るステップをさらに含んでもよい。前記水素化脱芳香化反応は、第3水素化反応器にて水素化脱芳香化触媒の存在下で行われてもよく、本発明では、第3水素化反応器の形態は、特に限定されず、固定床水素化反応器であってもよい。その反応条件の選択範囲が幅広いが、水素化脱芳香化を順調に実施できればよい。
【0039】
本発明では、上記の第2水素化触媒の種類の選択範囲が幅広いが、上記の目的を達成できればよく、例えば、水素化脱芳香化炭化水素機能を有する水素化脱芳香化触媒、水素化異性化機能を有する水素化異性化触媒、高度水素化脱硫機能を有する高度水素化脱硫触媒、又は異性化流動点降下機能を有する異性化流動点降下触媒であってもよい。
【0040】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、水素化脱芳香化触媒は、非貴金属触媒又は貴金属触媒であってもよく、前記非貴金属触媒は、担体と、水素化活性金属と、を含んでもよく、ここで、担体は、無機耐火性酸化物であり、一般には、アルミナ、アモルファスシリコンアルミニウム、シリカ、及び酸化チタンなどから選択される1種又は複数種であり、好ましくはアルミナであり、水素化活性金属は、第VIB族金属成分及び/又は第VIII族金属成分を含む。前記水素化脱芳香化触媒では、第VIB族金属成分は、好ましくはタングステン及び/又はモリブデンから選択され、酸化物質量で触媒中の含有量が5%~30%、好ましくは15%~30%である。第VIII族金属成分は、好ましくはニッケル及び/又はコバルトから選択され、酸化物質量で触媒中の含有量が1%~6%、好ましくは2%~5%である。前記水素化脱芳香化触媒には、リン、ケイ素、ホウ素、マグネシウム、フッ素などのうちの少なくとも1種などの助剤成分がさらに含まれてもよく、水素化脱硫機能を有する触媒中のこの助剤成分の質量含有量は一般に6wt%以下である。前記水素化脱芳香化触媒は、好ましくはMo-Ni型触媒である。
【0041】
前記水素化脱芳香化触媒は、任意の方法で製造したものであってもよく、中国石化撫順石油化学工業研究所(FRIPP)によって開発されたFHUDS-10、FHUDS-6、及びFHUDS-8のうちの少なくとも1種などの市販の触媒であってもよい。
【0042】
前記貴金属触媒は、好ましくは、Pt、Pdなどを活性金属とし、同様に任意の方法で製造したものであってもよく、中国石化撫順石油化学工業研究所(FRIPP)によって開発されたFHDA-10触媒などの市販の触媒であってもよい。
【0043】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記水素化異性化触媒は、水素化異性化機能を発揮できる任意の触媒であってもよく、好ましくは、該触媒は、分子篩(ZSM-5、Y、β分子篩のうちの少なくとも1種を含むが、これに限定されない)を添加したアルミナを担体、第VIII族金属を活性成分(Niを含むが、これに限定されない)としたものであり、任意の方法で製造したものであってもよく、中国石化撫順石油化学工業研究所(FRIPP)によって開発されたFDW-3触媒などの市販の触媒であってもよい。
【0044】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記高度水素化脱硫触媒は、高分子硫除去機能を発揮できる任意の触媒であってもよく、該触媒の担体は、好ましくは、アルミナであり、活性成分は第VIB族金属、第VIII族金属とし、第VIB族金属、第VIII族金属は、上記のように選択されてもよい。該触媒は、任意の方法で製造したものであってもよく、中国石化撫順石油化学工業研究所(FRIPP)によって開発されたFHUDS-5、FHUDS-7触媒などの市販の触媒であってもよい。
【0045】
本発明では、前記異性化流動点降下触媒の選択は特に限定されず、従来技術でよく使用されている種々の異性化流動点降下触媒であってもよい。その活性成分及び担体の選択範囲は、具体的には、上記の水素化異性化触媒と同様であってもよいが、本発明では詳しく説明しない。
【0046】
なお、本発明では、前記の特定の機能を有する触媒は、当該機能しか発揮できないわけではなく、主に当該機能を発揮するものであり、例えば、前記水素化脱硫触媒は、水素化脱硫作用しか発揮できないわけではなく、その応用環境において主に水素化脱硫作用を発揮する。
【0047】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記液相水素化反応の圧力は、前記気相水素化脱硫の圧力よりも、少なくとも1MPa、好ましくは1.5~7MPa、さらに好ましくは2.5~6MPa高い。本発明による方法は、中低圧下で反応することができ、それによって、反応の過酷さを大幅に軽減させ、エネルギー消費量を節約する。
【0048】
本発明による方法によれば、好ましくは、前記液相水素化反応の条件は、圧力2~8MPa、好ましくは3~6MPa、温度200~400℃、好ましくは260~360℃、空間速度0.1~3h-1、好ましくは0.5~1h-1を含む。
【0049】
本発明では、前記液相水素化反応器の反応器のタイプは、特に限定されず、好ましくは、前記液相水素化反応器は、固定床反応器である。
【0050】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記液相水素化反応器は、気液分離ゾーンが設けられた固定床反応器である。前記気液分離ゾーンは、分離を実現できる任意の領域であってもよく、例えばフラッシュゾーンの場合、前記液相水素化反応器は、フラッシュゾーンが設けられた固定床反応器になる。
【0051】
具体的には、前記液相水素化反応器内にフラッシュゾーンが設けられており、フラッシュゾーン及びそれ以上には触媒が充填されておらず、フラッシュゾーンの下方は液相水素化反応ゾーンとなる。気相脱硫反応生成物を増圧して得た流れ(気液混合相)が液相水素化反応器のフラッシュゾーンに供給され、得られた気相成分は上方へ移動して液相水素化反応器から排出され、得られた液相成分は下方へ移動して液相水素化反応を起こし、得られた液相水素化反応生成物である水素化重質成分は液相水素化反応器の底部から排出される。
【0052】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記増圧済み流れ中の気相成分を上方へ移動させて液相水素化反応器から排出し、任意に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得る。
【0053】
本発明では、前記脱不純物処理の選択範囲が幅広いが、脱硫化水素処理が含まれるが、これに限定されない。好ましくは、前記脱不純物処理は、脱硫化水素処理、好ましくは、前記気相成分を熱交換し、その後、高圧分離を行って、前記水素化軽質成分及び硫化水素含有水素ガスを得ることを含む。本発明による方法では、気相脱硫反応生成物には、反応済みの低分子は増圧中に液化されず、熱交換及び高圧分離によって液化され、このような液化手段は、水素ガスと原料との分離に有利であり、水素ガスを大量で回収してリサイクルすることを可能にし、水素ガスの利用率を高める。高圧分離した水素化軽質成分を、水素化重質成分と混合して、後続のストリッピング及び分留システムに供する。反応システム全体は、固定床反応システムにおける水素ガスコンプレッサや液相水素化反応システムにおける循環オイルポンプを必要としないため、投資費用を削減させ、化学プロセスの流れを簡素化させ、反応効率を高め、反応の過酷さを軽減させることができる。
【0054】
前記熱交換は、熱交換器で行われてもよい。前記高圧分離は、高圧分離器で行われてもよい。本発明では、前記熱交換及び高圧分離の条件は特に限定されず、上記の目的を達成できればよい。
【0055】
好ましくは、前記熱交換により、前記気相成分は、100~200℃、好ましくは120~150℃に降温する。
【0056】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、該方法は、前記液相水素化反応生成物(水素化重質成分とも呼ばれる)と前記水素化軽質成分を混合して水素化生成物を得るステップをさらに含んでもよい。
【0057】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、該方法は、前記水素化生成物をストリッピング(脱硫化水素)して分留し、目的の生成物を得るステップをさらに含んでもよい。前記ストリッピング及び分留の具体的な条件は、特に限定されず、原料及び目的の製品の性能の要件に応じて操作することができる。例えば、前記炭化水素油原料が低品質ディーゼルである場合、前記水素化生成物をストリッピングして分留し、ナフサ留分をカットし、ディーゼル精製品を得る。
【0058】
好ましくは、前記水素化生成物は、芳香族炭化水素の含有量が5wt%以下、S含有量が10μg/g以下のディーゼル精製品である。
【0059】
好ましくは、前記水素化生成物は、煙点が26mm以上、及び/又は氷点が-50℃以下の航空用ケロシン精製品である。
【0060】
好ましくは、前記水素化生成物は、芳香族炭化水素の含有量が5wt%以下、S含有量が10μg/g以下の特殊油製品である。
【0061】
本発明の第2態様は、順次連通している、第1水素化触媒が充填された気相水素化反応器、増圧装置、及び第2水素化触媒が充填された液相水素化反応器を含み、
前記気相水素化反応器は、炭化水素油原料と水素ガスの気相脱硫反応を行って、気相脱硫反応生成物を得るものであり、
前記増圧装置は、気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るものであり、
前記液相水素化反応器は、増圧済み流れと第2水素化触媒を接触させて液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るものである、炭化水素油の水素化システムを提供する。
【0062】
好ましくは、前記増圧装置は、気相脱硫反応生成物を2~10MPa、好ましくは2.5~7.5MPaに増圧する。本発明では、前記増圧装置のタイプは、特に限定されず、例えば、コンプレッサであり、コンプレッサのタイプは、特に限定されず、例えば、レシプロコンプレッサ、遠心コンプレッサであってもよい。
【0063】
本発明によるシステムでは、第1水素化触媒及び第2水素化触媒のタイプは、炭化水素油原料の種類に応じて選択してもよく、具体的には、第1態様に記載の内容に応じて選択することができるので、ここでは詳しく説明しない。
【0064】
好ましくは、前記炭化水素油原料はディーゼルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化脱芳香化触媒であり、又は
前記炭化水素油原料はディーゼルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は高度水素化脱硫触媒であり、又は
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化脱芳香化触媒であり、又は
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化異性化触媒であり、又は
前記炭化水素油原料はワックスオイルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は異性化流動点降下触媒である。
【0065】
上記の第1水素化触媒及び第2水素化触媒の選択は、具体的には、同様に第1態様に記載の通りであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0066】
本発明によるシステムによれば、好ましくは、前記気相水素化反応器は、固定床反応器である。
【0067】
本発明の1つの好ましい形態によれば、前記液相水素化反応器の上部には、気相成分出口が設けられ、底部には液相水素化反応生成物出口が設けられる。
【0068】
本発明によるシステムによれば、好ましくは、前記液相水素化反応器は、固定床反応器、好ましくは気液分離ゾーンが設けられた固定床反応器である。具体的には、前記気液分離ゾーンは、分離を実現できる任意の領域であってもよく、例えば、フラッシュゾーンの場合、前記液相水素化反応器は、フラッシュゾーンが設けられた固定床反応器になる。具体的には、前記液相水素化反応器にはフラッシュゾーンが設けられ、フラッシュゾーン及びそれ以上には触媒が充填されておらず、フラッシュゾーンの下方は液相水素化反応ゾーンとなり、すなわち、好ましくは、前記気液分離ゾーンは液相反応ゾーンよりも上にある。気相脱硫反応生成物を増圧して得た流れ(気液混合相)が液相水素化反応器のフラッシュゾーンに供給され、得られた気相成分は上方へ移動して液相水素化反応器の上部出口から排出され、得られた液相成分は下方へ移動して液相水素化反応を起こし、得られた液相水素化反応生成物である水素化重質成分は液相水素化反応器の底部出口から排出される。
【0069】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、該システムは、脱不純物装置をさらに含み、前記脱不純物装置は、入口が前記液相水素化反応器の気相成分の出口に連通しており、液相水素化反応器から排出された増圧済み流れ中の気相成分に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得るものである。
【0070】
好ましくは、前記脱不純物装置は、脱硫化水素装置である。
【0071】
好ましくは、前記脱硫化水素装置は、連通している熱交換装置及び高圧分離装置を含む。
【0072】
本発明によるシステムによれば、好ましくは、液相水素化反応器の気相成分出口は熱交換装置の入口に連通し、前記熱交換装置の出口は前記高圧分離装置の入口に連通する。気相成分を熱交換して高圧分離し、前記水素化軽質成分及び硫化水素含有水素ガスを得る。硫化水素含有水素ガスを処理して得た水素リッチガスはリサイクル可能である。
【0073】
好ましくは、前記熱交換装置は、前記気相成分を、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~150℃に降温するものである。
【0074】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、該システムは、前記液相水素化反応生成物及び前記水素化軽質成分を受けて、混合して水素化生成物を得るための混合装置をさらに含む。
【0075】
具体的には、前記液相水素化反応器の気相成分出口は、熱交換器及び高圧分離器に順次接続され、液相水素化反応器底部の液相出口のパイプラインは、高圧分離器の底部液相出口のパイプラインに接続され、共同で混合装置への供給を行う。
【0076】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、該システムは、ストリッピング及び分留装置をさらに含み、前記ストリッピング及び分留装置は、前記水素化生成物をストリッピング(脱硫化水素)して分留するものである。前記ストリッピング及び分留の具体的な条件は特に限定されず、原料及び目的の製品の性能の要件に応じて操作することができる。具体的には、上記の通りである。
【0077】
前記炭化水素油原料がワックスオイルである場合、好ましくは、該システムは、第3水素化触媒(好ましくは水素化脱芳香化触媒)が充填された第3水素化反応器をさらに含み、前記第3水素化反応器は、入口が前記液相水素化反応器の液相水素化反応生成物出口及び前記脱不純物装置の水素化軽質成分出口に連通して、前記水素化軽質成分及び前記液相水素化反応生成物の水素化脱芳香化反応を行う。
【0078】
以下、実施例によって本発明の形態及び効果をさらに説明する。
【0079】
本発明では、特に明記しない限り、百分率及び百分率含有量は質量によるものである。
【0080】
以下、図1を参照して本発明の方法及びシステムについて詳細に説明する。炭化水素油原料がディーゼルである場合を例にして例示的に説明する。ディーゼル原料及び水素ガス1を気相水素化反応器2(第1水素化反応器とも呼ばれる)に入れて、気相脱硫反応を行って、気相脱硫反応生成物3を得る。増圧装置4(コンプレッサ)に入れて、コンプレッサで増圧した後、フラッシュゾーンが設けられた液相水素化反応器5(第2水素化反応器とも呼ばれる)に入れる。そのうち、液相成分は下方へ移動して反応ゾーンに入り、水素化脱芳香化反応を起こし、液相水素化反応生成物6(水素化重質成分)を得、気相成分7は、上方へ移動して液相水素化反応器から排出され、熱交換装置8に入り、次に、高圧分離装置9に入って水素化軽質成分11と硫化水素含有水素ガス10に分離され、液相水素化反応生成物6と水素化軽質成分11は混合されてストリッピング及び分留装置12に入り、最終的には、ディーゼル精製品13が得られる。
実施例1~3
【0081】
図1に示す流れの模式図に従って行った。それぞれ気相水素化反応器及び液相水素化反応器である2つの100mL固定床水素化反応器は直列接続された。反応器の間に通常の電力のレシプロコンプレッサが設けられた。気相水素化反応器には、Mo-Co型ディーゼル水素化触媒Aが50mL充填され、液相水素化反応器には、Mo-Ni型ディーゼル水素化触媒Bが50mL充填され、その上方にフラッシュゾーンが設けられている。液相水素化反応器の上方には、気相成分出口が設けられ、この気相成分出口は、熱交換器(130℃に降温)及び高圧分離器に順次接続され、液相水素化反応器の底部には、液相出口が設けられ、液相出口のパイプラインと高圧分離器の底部の液相出口のパイプラインは接続されて、一緒に後のストリッピング及び分留装置に入り、ナフサ留分がカットされ、ディーゼル精製品(初留点150℃)が得られた。
原料として直留ディーゼル、コークス化ディーゼル、触媒ディーゼルの混合油が使用された。触媒の性質は表1、原料油の性質は表2、反応プロセスの条件及び結果は表3に示される。
比較例1
【0082】
通常のディーゼル固定床水素化プロセスの流れが使用され、1台の水素化反応器、すなわち第1水素化反応器が配置された。触媒の従来の配合体系に従って、采用Mo-Ni型触媒Bを上方、Mo-Co型触媒Aを下方に充填し、充填体積をそれぞれ50mLとした。一般には、反応器の後に高圧分離、低圧分離、ストリッピングなどの工程が設定され、ディーゼル製品が得られた。水素ガスから硫化水素を除去して、サイクル水素用コンプレッサで増圧してリサイクルした。原料及び触媒の性質は、実施例1~3と同様であり、反応プロセスの条件及び結果は表3に示される。
比較例2
【0083】
通常のディーゼル固定床水素化プロセスの流れが使用され、1台の水素化反応器、すなわち第1水素化反応器が配置された。実施例1~3と同様な触媒の配合順番に従って、Mo-Co型触媒Aを上方、Mo-Ni型触媒Bを下方に充填し、充填体積をそれぞれ50mLとした。一般には、反応器の後に高圧分離、低圧分離、ストリッピングなどの工程が設定され、ディーゼル製品が得られた。水素ガスから硫化水素を除去して、サイクル水素用コンプレッサで増圧してリサイクルした。原料及び触媒は、実施例1~3と同様であり、反応プロセスの条件及び結果は表3に示される。
比較例3
【0084】
通常のディーゼル固定床水素化プロセスの流れが使用され、第1反応器と第2反応器の2台の水素化反応器が直列接続され、2つの反応器の間にストリッピング塔が設けられた。反応器1には、Mo-Co型ディーゼル水素化触媒Aが50mL充填され、反応器2には、Mo-Ni型ディーゼル水素化触媒Bが50mL充填された。一般には、反応器の後に高圧分離、低圧分離、ストリッピングなどの工程が設定され、ディーゼル製品が得られた。水素ガスから硫化水素を除去して、サイクル水素用コンプレッサで増圧してリサイクルした。原料及び触媒は、実施例1~3と同様であり、反応プロセスの条件及び結果は表3に示される。
比較例4
【0085】
第1水素化反応器と第2水素化反応器との間に大電力レシプロコンプレッサが設けられること、及びプロセスの条件への制御以外に、実施例1~3と同様な水素化プロセスの工程を採用した。反応プロセスの条件及び結果は表3に示される。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表3から分かるように、通常の固定床水素化技術、及び通常の触媒充填系が使用された比較例1では、反応器の上部には多環芳香族炭化水素の水素化が起こり、反応器の下部には高度脱硫が起こる。高度脱硫の効果を得るために、芳香族炭化水素の水素化の反応条件を両立しにくく、その結果として、多環芳香族炭化水素の除去効果が劣る。一方、本発明では、反応システムの圧力が顕著に低くなり、また、脱硫と脱芳香化とを2つの反応システムで行うため、反応条件を個別に最適化することができ、より良好な脱芳香化効果が得られる。
比較例2では、固定床水素化技術には実施例と同様な触媒充填順番が採用されており、反応器の上部には硫化物が除去され、下部には芳香族炭化水素の水素化飽和反応が起こる。反応器の底部の温度が大きく上昇するため、芳香族炭化水素の水素化が熱力学的に制限され、硫化物除去効果と芳香族炭化水素の水素化効果のいずれも劣る。
【0090】
比較例3で使用される2つの反応器のいずれも通常の固定床水素化反応器を採用しており、反応条件が比較的過酷で、水素消費量もエネルギー消費量も高い。また、第1反応器の流出物がすべて第2反応器に入ることから、第2反応器中の芳香族炭化水素の水素化の空間速度が速くなり、多環芳香族炭化水素の除去効果が劣化する。
【0091】
比較例4では、気相水素化反応器における水素/油比が大きすぎるため、原料油の分圧が低下し、硫化物の触媒表面への吸着が影響をうけ、脱硫効果が不十分になる。また、気化した気相反応器流出物の液化の難度が顕著に上昇し、10MPaの反応圧力でも重質成分の全部が液化されにくく、多環芳香族炭化水素の除去効果に悪影響を与える。
実施例4
【0092】
図1に示す流れの模式図が採用されている。それぞれ気相水素化反応器及び液相水素化反応器である2つの100mL固定床水素化反応器は直列接続された。反応器の間に通常の電力のレシプロコンプレッサが設けられた。気相水素化反応器には、Mo-Ni型水素化触媒Aが50mL充填され、液相水素化反応器には、異性化触媒B(グレードはFDW-3)が50mL充填され、その上方にフラッシュゾーンが設けられている。液相水素化反応器の上方には、気相出口が設けられ、この気相出口は、熱交換器(気相成分を130℃に降温)及び高圧分離器に接続され、液相水素化反応器の底部には、液相出口が設けられ、液相出口のパイプラインと高圧分離器の底部の液相出口のパイプラインは接続されて、一緒に後のストリッピング及び分留装置に入る。
触媒の性質は表4、原料油の性質は表5における航空用ケロシン1、反応プロセスの条件及び結果は6に示される。
実施例5
【0093】
図1に示す流れの模式図が採用されている。2つの100mL固定床水素化反応器は直列接続され、反応器の間にレシプロコンプレッサが設けられた。第1反応器は、Mo-Ni型ディーゼル水素化触媒Aが50mL充填された気相水素化反応器であり、第2反応器は、Ni系水素化触媒Cが50mL充填された液相水素化反応器であり、その上方にフラッシュゾーンが設けられている。第2反応器の上方には、気相出口が設けられ、この気相成分出口は、熱交換器(130℃に降温)及び高圧分離器に順次接続され、第2反応器の底部液相出口のパイプラインと高圧分離器の底部の液相出口のパイプラインは接続されて、一緒に後のストリッピング及び分留装置に入る。
触媒の性質は表4、原料油の性質は表5における航空用ケロシン2、反応プロセスの条件及び結果は表6に示される。
実施例6
【0094】
図1に示す流れの模式図が採用されている。それぞれ第1反応器及び第2反応器である2つの100mL固定床水素化反応器は直列接続された。反応器の間に通常の電力のレシプロコンプレッサが設けられた。第1反応器は、Mo-Ni型ディーゼル水素化脱硫触媒Dが50mL充填された気相脱硫反応器であり、第2反応器は、Mo-Co型ディーゼル水素化脱硫触媒Eが50mL充填された液相脱硫反応器であり、その上方にフラッシュゾーンが設けられている。第2反応器の上方には、気相出口が設けられ、この気相成分出口は、熱交換器(130℃に降温)及び高圧分離器に順次接続され、第2反応器の底部液相出口のパイプラインと高圧分離器の底部の液相出口のパイプラインは接続されて、一緒に後のストリッピング及び分留装置に入り、ナフサ留分がカットされ、低硫黄ディーゼル製品(初留点180℃)が得られた。
触媒の性質は表4、原料油の性質は表5におけるディーゼル、反応プロセスの条件及び結果は表6に示される。
実施例7
【0095】
図2に示す流れの模式図が採用されている。第1反応器、第2反応器、及び第3反応器の3つの100mL固定床水素化反応器が直列接続された。第1反応器と第2反応器の間に通常の電力のレシプロコンプレッサが設けられた。第1反応器は、Mo-Co型ディーゼル水素化触媒Eが50mL充填された気相水素化反応器であり、第2反応器は、Ni型異性化流動点降下触媒Bが50mL充填された液相水素化反応器であり、その上方にフラッシュゾーンが設けられている。第2反応器の上方には、気相出口が設けられ、この気相成分出口は、熱交換器(130℃に降温)及び高圧分離器に順次接続され、第2反応器の底部液相出口のパイプラインと高圧分離器の底部の液相出口のパイプラインは接続されて、一緒に後の第3反応器に入り、第3反応器には、Mo-Ni型高度水素化触媒Dが50mL充填されている。最終的に特殊油製品が得られた。
触媒の性質は表4、原料油の性質は表5におけるワックスオイル、反応プロセスの条件及び結果は表6に示される。
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術構想の範囲内では、各技術的特徴を他の適切な方法で組み合わせることも含め、本発明の技術案に対して様々な単純な変形を行うことができ、これらの単純な変形及び組合せは、同様に本発明に開示された内容とみなすべきであり、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0100】
図1において、
1 ディーゼル原料及び水素ガス
2 気相水素化反応器
3 気相脱硫反応生成物
4 増圧装置
5 液相水素化反応器
6 液相水素化反応生成物
7 気相成分
8 熱交換装置
9 高圧分離装置
10 硫化水素含有水素ガス
11 水素化軽質成分
12 ストリッピング及び分留装置
13 ディーゼル精製品
図2において、
1 ワックスオイル原料及び水素ガス
2 気相水素化反応器
3 気相脱硫反応生成物
4 増圧装置
5 液相水素化反応器
6 液相水素化反応生成物
7 気相成分
8 熱交換装置
9 高圧分離装置
10 水素化軽質成分
11 硫化水素含有水素ガス
12 第3水素化反応器
13 特殊油製品

図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油の水素化方法であって、
水素ガスの存在下、炭化水素油原料を気相水素化反応器において気相脱硫反応を行い、気相脱硫反応生成物を得るステップ(1)と、
前記気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るステップ(2)と、
前記増圧済み流れを液相水素化反応器に送り、前記増圧済み流れ中の液相成分を液相水素化反応器において液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする炭化水素油の水素化方法。
【請求項2】
前記炭化水素油原料は、低品質ディーゼル、航空用ケロシン、ワックスオイル、及びナフサから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記低品質ディーゼルは、初留点150~200℃、終留点320~400℃、S含有量≦20000μg/g、好ましくは≦15000μg/g、N含有量≦1000μg/g、好ましくは≦800μg/g、多環芳香族炭化水素の含有量≦50wt%であり、
好ましくは、前記航空用ケロシンは、初留点80~150℃、終留点200~300℃、S含有量≦8000μg/g、好ましくは≦4000μg/g、N含有量≦100μg/g、好ましくは≦20μg/gであり、
好ましくは、前記ワックスオイルは、初留点160~220℃、終留点300~400℃、S含有量≦30000μg/g、好ましくは≦20000μg/g、N含有量≦2000μg/g、好ましくは≦1500μg/g、多環芳香族炭化水素の含有量≦60wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気相脱硫反応は、第1水素化触媒の存在下で行われ、前記第1水素化触媒は、水素化脱硫機能を有する触媒であり、
好ましくは、前記気相脱硫反応の条件は、圧力0.1~2.8MPa、好ましくは0.5~2MPa、温度260~400℃、好ましくは320~390℃、水素/油体積比100~900、好ましくは300~700、空間速度0.5~3h-1、好ましくは0.8~2h-1を含み
好ましくは、前記気相水素化反応器は、固定床反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は2~10MPa、好ましくは2.5~7.5MPaに増圧される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素油原料は低品質ディーゼルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は、4.5~6.5MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化脱芳香化触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素油原料は低品質ディーゼルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は4~7MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、高度水素化脱硫触媒である、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は2.5~4MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化脱芳香化触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は2.5~4MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、水素化異性化触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素油原料はワックスオイルであり、ステップ(2)において、前記気相脱硫反応生成物は5~10MPaに増圧され、
好ましくは、前記液相水素化反応は、第2水素化触媒の存在下で行われ、前記第2水素化触媒は、異性化流動点降下触媒であり、
好ましくは、前記増圧済み流れ中の気相成分を上方から液相水素化反応器の外に排出し、任意に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得、その後、前記水素化軽質成分と液相水素化反応生成物とを混合して、水素化脱芳香化反応を行うステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記液相水素化反応の圧力は、前記気相水素化脱硫の圧力よりも、少なくとも1MPa、好ましくは1.5~7MPa、さらに好ましくは2.5~6MPa高い、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記液相水素化反応器は、固定床反応器、好ましくは気液分離ゾーンが設けられた固定床反応器であり、
好ましくは、前記液相水素化反応の条件は、圧力2~8MPa、好ましくは3~6MPa、温度200~400℃、好ましくは260~360℃、空間速度0.1~3h-1、好ましくは0.5~1h-1を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記増圧済み流れ中の気相成分を上方へ移動させて液相水素化反応器から排出し、任意に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得、
好ましくは、前記脱不純物処理は、脱硫化水素処理、好ましくは前記気相成分を熱交換し、その後、高圧分離を行って、前記水素化軽質成分及び硫化水素含有水素ガスを得ることを含み、
好ましくは、前記熱交換により、前記気相成分は、100~200℃、好ましくは120~150℃に降温する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記液相水素化反応生成物と前記水素化軽質成分を混合して水素化生成物を得るステップをさらに含み、
好ましくは、前記水素化生成物は、多環芳香族炭化水素の含有量が5wt%以下、S含有量が10μg/g以下のディーゼル精製品であり、
好ましくは、前記水素化生成物は、煙点が26mm以上、及び/又は氷点が-50℃以下の航空用ケロシン精製品であり、
好ましくは、前記水素化生成物は、芳香族炭化水素の含有量が5wt%以下、S含有量が10μg/g以下の特殊油製品である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
炭化水素油の水素化システムであって、
順次連通している、第1水素化触媒が充填された気相水素化反応器、増圧装置、及び第2水素化触媒が充填された液相水素化反応器を含み、
前記気相水素化反応器は、炭化水素油原料と水素ガスの気相脱硫反応を行って、気相脱硫反応生成物を得るものであり、
前記増圧装置は、気相脱硫反応生成物を増圧して、増圧済み流れを得るものであり、
前記液相水素化反応器は、増圧済み流れと第2水素化触媒を接触させて液相水素化反応を行い、液相水素化反応生成物を得るものである、ことを特徴とする炭化水素油の水素化システム。
【請求項15】
前記増圧装置は、気相脱硫反応生成物を2~10MPaに増圧するものである、請求項14に記載の水素化システム。
【請求項16】
前記炭化水素油原料はディーゼルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化脱芳香化触媒であり、又は
前記炭化水素油原料はディーゼルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は高度水素化脱硫触媒であり、又は
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化脱芳香化触媒であり、又は
前記炭化水素油原料は航空用ケロシンであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は水素化異性化触媒であり、又は、
前記炭化水素油原料はワックスオイルであり、前記第1水素化触媒は水素化脱硫触媒であり、前記第2水素化触媒は異性化流動点降下触媒である、請求項14に記載の水素化システム。
【請求項17】
前記気相水素化反応器は固定床反応器であり、
前記液相水素化反応器は、固定床反応器、好ましくは気液分離ゾーンが設けられた固定床反応器である、請求項14~16のいずれか1項に記載の水素化システム。
【請求項18】
脱不純物装置をさらに含み、前記脱不純物装置は、入口が前記液相水素化反応器の気相成分の出口に連通しており、液相水素化反応器から排出された増圧済み流れ中の気相成分に脱不純物処理を行って、水素化軽質成分を得るものであり、
好ましくは、前記脱不純物装置は、脱硫化水素装置であり、
好ましくは、前記脱硫化水素装置は、連通している熱交換装置及び高圧分離装置を含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の水素化システム。
【請求項19】
前記液相水素化反応生成物及び前記水素化軽質成分を受けて、混合して水素化生成物を得るための混合装置をさらに含む、請求項18に記載の水素化システム。
【請求項20】
前記炭化水素油原料はワックスオイルであり、該システムは、第3水素化触媒が充填された第3水素化反応器をさらに含み、前記第3水素化反応器は、入口が前記液相水素化反応器の液相水素化反応生成物出口及び前記脱不純物装置の水素化軽質成分出口に連通して、前記水素化軽質成分及び前記液相水素化反応生成物の水素化脱芳香化反応を行う、請求項18に記載の水素化システム。
【国際調査報告】