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  • 特表-雰囲気による炉の制御 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】雰囲気による炉の制御
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20241203BHJP
   C22C 38/04 20060101ALI20241203BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C21D9/56 101C
C22C38/04
F27D7/06 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535408
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 IB2022062128
(87)【国際公開番号】W WO2023111837
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/061686
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケラッシ,アーメド
(72)【発明者】
【氏名】ダルマズ・シルバ,ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】プリュニアン,モルバン
【テーマコード(参考)】
4K043
4K063
【Fターム(参考)】
4K043AA01
4K043AB03
4K043AB04
4K043AB15
4K043AB16
4K043AB27
4K043AB28
4K043CA03
4K043CA04
4K043DA05
4K043EA02
4K043FA02
4K043FA09
4K043GA03
4K063AA05
4K063BA02
4K063BA16
4K063CA03
4K063DA06
4K063DA16
4K063DA34
(57)【要約】
本発明は、炉内の雰囲気Aを調整する方法に関し、ある組成及び露出表面積Aを有する鋼帯は、時間Tから時間TS1ENDまで熱処理され、ある組成及び露出表面積を有する鋼帯は、時間TS2STARTから時間Tまで熱処理され、該方法は以下のステップ、すなわち、データ取得ステップ、最適化ステップ及びHOの注入ステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
及びNを含む炉内の雰囲気Aを調整する方法であって、組成C及び露出表面積ASURF1を有する鋼帯Sは、時間Tから時間TS1ENDまで熱処理され、組成C及び露出表面積ASURF2を有する鋼帯Sは、時間TS2STARTから時間Tまで熱処理され、以下のステップ、すなわち、
A. データ取得ステップであって、
i. 時間Tにおいて、前記雰囲気Aの露点DPを測定し、
ii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR1が読み出され、前記目標雰囲気ATAR1は少なくとも露点値を含み、
iii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR2が読み出され、前記目標雰囲気ATAR2は少なくとも露点値を含むデータ取得ステップ、
B. 調整ステップであって、
i. N個の時間T~Tに対応するN個の予測雰囲気APRO-1~APRO-Nを、
a. 時間Tで測定された前記雰囲気の前記露点DP
b. 前記炉の容積
c. 前記時間T~Tの各々における前記炉内の前記鋼帯S及びSの組成及び露出表面積
に基づいて定義するステップ、
ii. 前記炉内のTで注入されるHOの量QH2Oを、モデル予測制御コントローラを使用して、以下のデータ、すなわち、
a. 前記予測雰囲気APRO-1~APRO-N
b. 前記目標雰囲気ATAR1及びATAR2
c. 前記炉の前記容積及びN及びHの更新流量、
d. Tにおける前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
を使用して推定するステップを含む調整ステップ、
C. Tにおいて、前記推定量のHOを注入するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記熱処理が焼鈍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鋼帯が、重量パーセントで、0.0001%~0.50%のC、0.01%~5.0%のMn、0.001%~5.0%のSiを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Nが2~100の正の整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記時間T~Tの各々が、5秒~1分の間隔を置かれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップB.i.において、前記定義は、前記雰囲気の温度及び圧力が時間T~Tの間一定であると仮定して行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
及びNを含む炉内の雰囲気Aを調整する方法であって、組成C及び露出表面積Aを有する鋼帯Sが、時間Tから時間Tまで熱処理され、以下のステップ、すなわち、
A. データ取得ステップであって、
i. 時間Tにおいて、前記雰囲気Aの露点DPを測定し、
ii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR1が読み出され、前記目標雰囲気ATAR1は少なくとも露点値を含むデータ取得ステップ、
B. 調整ステップであって、
i. n個の時間T~Tに対応するn個の予測雰囲気APRO-1~APRO-Nを、
a. 時間Tで測定された前記雰囲気の前記露点DP
b. 前記炉の容積
c. 前記時間T~Tの各々における前記炉内の前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
に基づいて定義するステップ、
ii. 前記炉内のTで注入されるHOの量QH2Oを、モデル予測制御コントローラを使用して、以下のデータ、すなわち、
a. 前記予測雰囲気APRO-1~APRO-N
b. 前記目標雰囲気ATAR1
c. 前記炉の前記容積及びN及びHの更新流量、
d. Tにおける前記炉内の前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
を使用して推定するステップを含む調整ステップ、
C. Tにおいて、前記推定量のHOを注入するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯の熱処理時の炉の雰囲気の調整方法に関する。より具体的には、この方法は、鋼帯の焼鈍中に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の焼鈍中、鋼帯は、その延性を高め、その硬度を低下させるために、加熱され、次いでその再結晶温度を超えて維持される。これは、その雰囲気の温度及び露点が調整される炉内で行われる。雰囲気の制御は、帯の品質を保証するためのかなめである。
【0003】
温度の調整は、所望の量の熱を供給する加熱装置(放射管、インダクタなど)によって確保される。
【0004】
露点の調整は、例えば蒸気の形態の水を雰囲気に提供することによって確保される。
【0005】
各鋼種及び形式は、好ましい炉の雰囲気、すなわち温度及び露点の範囲を含む好ましいプロセス条件を有する。したがって、異なる種及び形式の鋼帯を製造する連続生産ラインでは、炉の雰囲気を各製品に適合させる必要がある。製品移行中、ある炉の雰囲気から別の炉の雰囲気への時間が短いほど、製品の達成可能な品質は良好である。
【0006】
露点を調整するために、既存のシステムは、露点測定装置及び水を注入するシステムと結合された制御ループ機構の一部である比例積分微分コントローラ(PIDコントローラ)を使用する。
【0007】
このシステムでは、図1に示すように、雰囲気の露点を測定し(DPMEASURED)、目標露点を定義する(DPTARGET)。次いで、誤差値、例えば、測定された露点と目標露点との間の差が計算される。その後、PIDコントローラによって計算された比例積分項及び微分項に基づいて、注入するHOの流れ(HINJECT)が決定される。最終的に、決定されたHOの流れが炉に注入される。このシーケンスは、熱処理中ずっと定期的に繰り返される。
【0008】
しかし、焼鈍炉は通常、炉に注入することができる蒸気の流れと比較して重要な容積を有することを思い出すことが重要である。したがって、炉内で異なる露点を必要とする2つの鋼種を短時間で連続して送る場合、コイル全長にわたって経時的に最適な露点を得ることができない。これは、特に第1の帯の後部及び第2の帯の前部に関して、歩留まりの低下又は不良な帯品質をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、焼鈍炉の部分に注入されるHOの調整を改善することである。
【0010】
より具体的には、本発明の目的は、最終製品の最適な品質をもたらす炉の部分において、鋼帯Sの好ましい焼鈍雰囲気ATAR1から鋼帯Sの好ましい焼鈍雰囲気ATAR2への移行管理を改善することである。好ましい焼鈍雰囲気は、ある範囲の値を含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の方法を提供することによって達成される。方法はまた、請求項2~7の任意の特徴を有することができる。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0013】
本発明を説明するために、特に以下の図を参照して、様々な実施形態及び非限定的な実施例の試行を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来技術において知られているような調整方法を示す。
図2】本発明による調整システムの一実施形態を示す。
図3A】従来技術で知られている露点調整を示す。
図3B】従来技術で知られている蒸気注入調整を示す。
図4A】本発明による露点調整を示す。
図4B】本発明による蒸気注入調整を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2に示すように、本発明は、H及びNを含む炉内の雰囲気Aを調整する方法であって、組成C及び露出表面積ASURF1を有する鋼帯Sは、時間Tから時間TS1ENDまで熱処理され、組成C及び露出表面積ASURF2を有する鋼帯Sは、時間TS2STARTから時間Tまで熱処理され、以下のステップ、すなわち、
A. データ取得ステップであって、
i. 時間Tにおいて、前記雰囲気Aの露点DPを測定し、
ii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR1が読み出され、前記目標雰囲気ATAR1は少なくとも露点値を含み、
iii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR2が読み出され、前記目標雰囲気ATAR2は少なくとも露点値を含むデータ取得ステップ、
B. 調整ステップであって、
i. N個の時間T~Tに対応するN個の予測雰囲気APRO-1~APRO-Nを、
a. 時間Tで測定された前記雰囲気の前記露点DP
b. 前記炉の容積
c. 前記時間T~Tの各々における前記炉内の前記鋼帯S及びSの組成及び露出表面積
に基づいて定義するステップ、
ii. 前記炉内のTで注入されるHOの量QH2Oを、モデル予測制御コントローラを使用して、以下のデータ、すなわち、
a. 前記予測雰囲気APRO-1~APRO-N
b. 前記目標雰囲気ATAR1及びATAR2
c. 前記炉の前記容積及びN及びHの更新流量、
d. Tにおける前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
を使用して推定するステップを含む調整ステップ、
C. Tにおいて、前記推定量のHOを注入するステップ
を含む方法に関する。
【0016】
炉は加熱手段を備える。加熱手段は、例えば、インダクタ及び/又は管などの放射要素であり得る。
【0017】
炉は、予熱部分、加熱部分、均熱部分及び冷却部分などのいくつかの部分を備えることができる。この方法は、炉のあらゆる部分に適用することができる。好ましくは、方法は、加熱部分及び/又は均熱部分において適用される。
【0018】
熱処理の種類は問わない。熱処理は焼鈍処理が好ましく、特に再結晶焼鈍が好ましい。
【0019】
鋼帯S及び鋼帯Sは、同じ製品群に対応する同じ組成又は同様の組成を有することができる。鋼帯S及び鋼帯Sは、異なる組成を有することができる。
【0020】
好ましくは、鋼帯は、重量パーセントで、0.0001%~0.50%のC、0.01%~5.0%のMn、0.001%~5.0%のSiを含む。
【0021】
鋼帯の露出表面積は、炉内にあり、炉の雰囲気に露出される鋼帯の表面を表す。露出表面は、単位当たり又は容積面積当たりで表すことができる。
【0022】
S1ENDは、ストリップSが炉内にない第1のステップである。換言すれば、TS1ENDは、ASURF1がゼロに等しい第1の時間である。
【0023】
S2STARTは、ストリップSが少なくとも部分的に炉内にある第1のステップである。換言すれば、TS2STARTは、ASURF2がゼロに等しくない第1の時間である。
【0024】
第1のステップであるデータ取得ステップでは、雰囲気の露点が測定され、時間T~Tのいずれかにおいて熱処理される鋼帯の目標露点が読み出される。目標露点は、目標雰囲気ATAR1及び/又はATAR2が露点値の範囲を含むことができるように、目標露点範囲であってもよい。
【0025】
鋼帯の目標雰囲気は、満足できる製品品質を保証する連続熱処理を実施することを可能にする。
【0026】
露点値又は範囲は、鋼組成に依存する。これらは、例えばデータベースから読み出すことができる。
【0027】
第2のステップである調整ステップでは、目標は、N回(T~T)、すなわち、各ステップで必要とされる水注入流量を決定しながら、炉内(例えば、雰囲気)に水が添加されない場合の、N個の予測雰囲気(APRO-1~APRO-N)に対応するN回のステップで炉の雰囲気を推定することである。
【0028】
あるいは、N回(T~T)の炉の雰囲気の推定は、注入するHOの量が異なる場合に行うことができる。
【0029】
好ましくは、Nは2~100の正の整数である。さらにより好ましくは、Nは5~50の正の整数である。さらにより好ましくは、Nは10~30の正の整数である。
【0030】
好ましくは、前記時間T~Tの各々は、5秒~1分だけ間隔を置かれる。さらに好ましくは、時間T~Tの各々は、15秒~45秒だけ間隔を置かれる。
【0031】
好ましくは、時間T~Tの各々は、同じ期間間隔を置かれる。例えば、N=50であり、その時間の各々が10秒の間隔を置かれる場合、Tは時間t=0秒にあり、Tは時間t=10秒にあり、Tは時間t=20秒にあり、T=T50は時間t=500秒にある。
【0032】
予測雰囲気APRO-1~APRO-Nの定義は、ステップA.iで測定された露点、炉の容積、前記時間T~Tの各々についての前記炉内の鋼帯の組成及び露出表面積を使用して行われる。予測雰囲気のそのような推定は、当業者に周知である。
【0033】
あるいは、予測雰囲気APRO-1~APRO-Nの定義は、ステップA.iで測定された露点、炉の容積、前記時間T~Tの各々についての前記炉内の鋼帯の組成及び露出表面積、並びに注入されるHOの量を使用して行われる。
【0034】
1つ又はいくつかのステップにおいて、例えば、帯S及び帯Sは、同時に部分的に炉内にあることが可能であり、これは、2つの帯が互いに溶接される場合に特に当てはまる。その場合、TS2STARTはTS1ENDの前に起こる。
【0035】
その場合、予測雰囲気の定義は、炉内の帯の各々の組成及び表面積を使用して行われる。
【0036】
1つ又はいくつかのステップにおいて、例えば、帯が炉内にないことも可能であり、これは、TS2STARTがTS1ENDの後に起こる場合に特に当てはまる。
【0037】
予測雰囲気の定義は、好ましくは、前記雰囲気の温度及び圧力がステップT~Tについて一定であると仮定して行われる。
【0038】
好ましくは、前記目標雰囲気ATAR1及びATAR2は、少なくともH濃度の最小値及び最大値、CO濃度の最大値を含む。
【0039】
さらにより好ましくは、前記目標雰囲気は、0.1~50体積%のHを含む。さらにより好ましくは、前記目標雰囲気は、1~50体積%のHを含む。
【0040】
次いで、炉内においてTで注入するHOの量QH2Oを推定する。これは、モデル予測制御(MPC)を使用することによって行われる。
【0041】
一般に、モデル予測制御は、プラントモデルの反復の有限時間の平準化最適化に基づく。時間tにおいて、現在のプラント状態がサンプリングされ、コスト最小化制御戦略が、将来の比較的短い時間範囲[t,t+T]に対して計算される。
【0042】
例えば、本発明では、注入されるHOの量の定義は、最小化されるべきコスト関数を定義することによって実施され、コスト関数は、少なくとも1つの目標雰囲気ATARとN個の予測雰囲気APROnとの間の差を表す。
【0043】
例えば、コスト関数は、以下の構造を有することができる。
【0044】
【数1】
式中、
- APRO-nは、ステップnにおける予測雰囲気であり、
- ATARは目標雰囲気であり、
- QH2Onは、ステップnにおいて注入されるHOの量であり、
- Mat1及びMat2は、注入されたHOの量と露点制御誤差との間の重要性、すなわち、目標露点と投影露点との間の差を重み付けするための調整パラメータである。
【0045】
前記炉のN及びHの体積及び更新流量並びにTにおける鋼帯Sの組成及び露出表面は、注入されるHOの量と露点の発生との間の動態をモデル化することを可能にする。
【0046】
あるいは、ステップB.iiにおいて、前記炉内のTで注入されるHOの流れ、又は蒸気は、モデル予測制御コントローラを使用して、以下のデータを使用して推定することができる。
a) 前記予測雰囲気APRO-1~APRO-N
b) 前記目標雰囲気ATAR1及びATAR2
c) 前記炉の前記容積並びにN及びHの更新流量、
d) Tにおける鋼帯Sの組成及び露出表面積。
【0047】
第5のステップでは、工程B.ii.で定義された量又は流量のHOが、炉に注入される。この注入は、炉に水を直接注入することによって、又はポータガス(porter gas)を用いて行うことができる。
【0048】
本発明によれば、炉内の雰囲気を設定値に近づけることができる。本発明は、炉内で帯の組成及び/又は設定点が変化する場合に特に有利である。
【0049】
また、本発明は、H及びNを含む炉内の雰囲気Aを調整する方法であって、組成C及び露出表面積ASURF1を有する鋼帯Sが、時間Tから時間TS1ENDまで熱処理され、以下のステップ、すなわち、
A. データ取得ステップであって、
i. 時間Tにおいて、前記雰囲気Aの露点DPを測定し、
ii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR1が読み出され、前記目標雰囲気ATAR1は少なくとも露点値を含むデータ取得ステップ、
B. 調整ステップであって、
i. N個の時間T~Tに対応するN個の予測雰囲気APRO-1~APRO-Nを、
a. 時間Tで測定された前記雰囲気の前記露点DP
b. 前記炉の容積
c. 前記時間T~Tの各々における前記炉内の前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
に基づいて定義するステップ、
ii. 前記炉内のTで注入されるHOの量QH2Oを、モデル予測制御コントローラを使用して、以下のデータ、すなわち、
a. 前記予測雰囲気APRO-1~APRO-N
b. 前記目標雰囲気ATAR1
c. 前記炉の前記容積及びN及びHの更新流量、
d. Tにおける前記炉内の前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
を使用して推定するステップを含む調整ステップ、
C. Tにおいて、前記推定量のHOを注入するステップ
を含む方法に関する。
【実施例
【0050】
<実験結果>
炉の雰囲気調整に対する本方法の影響を評価するために、2つの調整方法について、アルセロールミタルによって販売されるタイプのIF(Interstitial Free)鋼と、アルセロールミタルによって販売されるタイプの二相780鋼との間の移行について、雰囲気をモデル化する。
【0051】
第1のシミュレーションでは、雰囲気を、PIDコントローラを用いて調整する。第2のシミュレーションでは、特許請求される方法を使用して雰囲気を調整する。
【0052】
両方のシミュレーションであって、IF鋼帯は、-30℃の露点を必要とし、0分から9.5分まで炉内にあるのに対し、二相780鋼帯は、-15℃の露点を必要とし、9.5分から20分まで炉内にある。
【0053】
各目標露点について、HOのモル分率の5.10-4の許容差がある。したがって、30℃の目標露点については、許容差は±8℃であり、-15℃の目標露点については、許容差は±3℃である。
【0054】
両方のシミュレーションについて、測定された露点(連続線)、目標露点(太い破線)及び許容差(細い破線)を、第1のシミュレーションについては図3Aに、第2のシミュレーションについては図4Aにプロットする。さらに、蒸気注入も、第1のシミュレーションについては図3Bに、第2のシミュレーションについては図4Bにプロットする。
【0055】
第1のシミュレーションでは、許容範囲外で費やされた時間は14%であるのに対し、第2のシミュレーションでは、特許請求された方法によれば、許容範囲外で費やされた時間はわずか4%である。したがって、特許請求される方法を用いると、許容範囲外で費やされる時間は、この例では3.5で割られる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
及びNを含む炉内の雰囲気Aを調整する方法であって、組成C及び露出表面積ASURF1を有する鋼帯Sは、時間Tから時間TS1ENDまで熱処理され、組成C及び露出表面積ASURF2を有する鋼帯Sは、時間TS2STARTから時間Tまで熱処理され、以下のステップ、すなわち、
A. データ取得ステップであって、
i. 時間Tにおいて、前記雰囲気Aの露点DPを測定し、
ii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR1が読み出され、前記目標雰囲気ATAR1は少なくとも露点値を含み、
iii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR2が読み出され、前記目標雰囲気ATAR2は少なくとも露点値を含むデータ取得ステップ、
B. 調整ステップであって、
i. N個の時間T~Tに対応するN個の予測雰囲気APRO-1~APRO-Nを、
a. 時間Tで測定された前記雰囲気の前記露点DP
b. 前記炉の容積
c. 前記時間T~Tの各々における前記炉内の前記鋼帯S及びSの組成及び露出表面積
に基づいて定義するステップ、
ii. 前記炉内のTで注入されるHOの量QH2Oを、モデル予測制御コントローラを使用して、以下のデータ、すなわち、
a. 前記予測雰囲気APRO-1~APRO-N
b. 前記目標雰囲気ATAR1及びATAR2
c. 前記炉の前記容積及びN及びHの更新流量、
d. Tにおける前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
を使用して推定するステップを含む調整ステップ、
C. Tにおいて、前記推定量のHOを注入するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記熱処理が焼鈍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鋼帯が、重量パーセントで、0.0001%~0.50%のC、0.01%~5.0%のMn、0.001%~5.0%のSiを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Nが2~100の正の整数である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記時間T~Tの各々が、5秒~1分の間隔を置かれる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
ステップB.i.において、前記定義は、前記雰囲気の温度及び圧力が時間T~Tの間一定であると仮定して行われる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
及びNを含む炉内の雰囲気Aを調整する方法であって、組成C及び露出表面積Aを有する鋼帯Sが、時間Tから時間Tまで熱処理され、以下のステップ、すなわち、
A. データ取得ステップであって、
i. 時間Tにおいて、前記雰囲気Aの露点DPを測定し、
ii. 前記鋼帯Sの目標雰囲気ATAR1が読み出され、前記目標雰囲気ATAR1は少なくとも露点値を含むデータ取得ステップ、
B. 調整ステップであって、
i. n個の時間T~Tに対応するn個の予測雰囲気APRO-1~APRO-Nを、
a. 時間Tで測定された前記雰囲気の前記露点DP
b. 前記炉の容積
c. 前記時間T~Tの各々における前記炉内の前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
に基づいて定義するステップ、
ii. 前記炉内のTで注入されるHOの量QH2Oを、モデル予測制御コントローラを使用して、以下のデータ、すなわち、
a. 前記予測雰囲気APRO-1~APRO-N
b. 前記目標雰囲気ATAR1
c. 前記炉の前記容積及びN及びHの更新流量、
d. Tにおける前記炉内の前記鋼帯Sの組成及び露出表面積
を使用して推定するステップを含む調整ステップ、
C. Tにおいて、前記推定量のHOを注入するステップ
を含む方法。
【国際調査報告】