(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ステータ巻線用ステータスロットを有し、ステータスロットの少なくとも1つに冷却流体が流れることができる電気機械用ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/24 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H02K3/24 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535447
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 DE2022100845
(87)【国際公開番号】W WO2023110002
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021133029.7
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルセル レル
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603AA11
5H603BB01
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC04
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE04
5H603CE05
(57)【要約】
本発明は、ステータ本体(3)であって、周囲に分散して配置された複数のステータ歯部(4)と、ステータ歯部(4)の間に形成され、ステータ本体(3)をとおって軸方向に延在する、ステータスロット(5)と、を有する、ステータ本体(3)を備える、ステータ(1)に関し、ステータスロット(5)内には、複数の電気導体(7)を有するステータ巻線(6)が配置され、ステータスロット(5)は、その径方向外側端部においてその径方向延在部に沿うスロットベース(8)と、径方向内側端部においてスロット開口部(9)と、を有し、ステータ巻線(6)の電気導体(7)は、断面において幅(19)および高さ(10)を有し、幅(19)は高さ(10)よりも大きく、電気導体(7)は、ステータスロット(5)において、幅(19)が周方向に延在し、高さ(10)が径方向に延在するように配置され、少なくとも1つの、好ましくはすべてのステータスロット(5)を冷却流体(12)が流れることが可能であり、対応するステータスロット(5)において、少なくとも部分的に、当該電気導体の幅(19)が径方向に延在し、当該電気導体の高さ(10)が周方向に延在するように、電気導体(7)の少なくとも1つが、冷却流体(12)が流れることができるステータスロット(5)の少なくとも1つに配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ本体(3)であって、周囲に分散して配置された複数のステータ歯部(4)と、前記ステータ歯部(4)の間に形成され、前記ステータ本体(3)をとおって軸方向に延在するステータスロット(5)と、を有する、ステータ本体(3)と、前記ステータスロット(5)において配置されている複数の電気導体(7)を有するステータ巻線(6)であって、径方向延在部に沿う前記ステータスロット(5)が、径方向外側端部にスロットベース(8)、および径方向内側端部にスロット開口部(9)を有するか、または、径方向延在部に沿う前記ステータスロット(5)が、径方向内側端部にスロットベース(8)、および径方向外側端部にスロット開口部(9)を有し、前記ステータ巻線(6)の前記電気導体(7)が、断面において幅(19)および高さ(20)を有し、前記幅(19)が、前記高さ(20)よりも大きく、前記電気導体(7)が、前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)が、周方向に延在し、前記高さ(20)が、径方向に延在するように、前記ステータスロット(5)内に配置される、ステータ巻線(6)と、少なくとも1つの、好ましくはすべての前記ステータスロット(5)を流れることができる、冷却流体(12)と、を備える、電気機械用ステータ(1)において、
前記電気導体(7)の少なくとも1つが、少なくとも部分的に、対応する前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)が径方向に延在し、前記高さ(10)が周方向に延在するように、前記冷却流体(12)が流れることができる前記ステータスロット(5)の少なくとも1つに配置されていることを特徴とする、電気機械用ステータ(1)。
【請求項2】
複数の、好ましくはすべての前記電気導体(7)が、断面において実質的に長方形の輪郭を有することを特徴とする、請求項1に記載のステータ(1)。
【請求項3】
複数の、好ましくはすべての前記電気導体(7)が、断面において実質的に同一の輪郭を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のステータ(1)。
【請求項4】
対応する前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)が径方向に延在し、前記高さ(10)が周方向に延在するように、前記ステータスロット(5)の少なくとも1つに配置される前記電気導体(7)の少なくとも1つが、前記ステータスロット(5)をとおる軸方向延在部にわたって変化する輪郭を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ(1)。
【請求項5】
前記ステータスロット(5)をとおる前記軸方向延在部にわたって変化する前記輪郭が、前記電気導体(7)がその長手方向軸線(11)を中心にねじれることによって生じることを特徴とする、請求項4に記載のステータ(1)。
【請求項6】
対応する前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)が径方向に延在し、前記高さ(10)が周方向に延在するように、前記ステータスロット(5)の少なくとも1つに配置されている前記電気導体(7)の少なくとも1つが、前記ステータスロット(5)において、それぞれの前記幅(19)が周方向に延在し、それぞれの前記高さ(10)が径方向に延在する電気導体(7)によって径方向に囲まれていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のステータ(1)。
【請求項7】
前記電気導体(7)が、その外側側面に絶縁体(12)を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のステータ(1)。
【請求項8】
電気導体(7)の前記幅(19)と前記高さ(10)との比が1.01:1~1.5:1であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のステータ(1)。
【請求項9】
複数の、好ましくはすべての前記ステータスロット(5)において、前記電気導体(7)が、実質的に同一の様式で配置されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のステータ(1)。
【請求項10】
対応する前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)がそれぞれの場合において径方向に延在し、前記高さ(10)がそれぞれの場合において周方向に延在するように、偶数の第1のグループ(14)の電気導体(7)が、複数の前記ステータスロット(5)内に配置され、前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)がそれぞれの場合において周方向に延在し、前記高さ(10)がそれぞれの場合において径方向に延在するように、偶数の第2のグループ(15)の電気導体(7)が、前記複数のステータスロット(5)内に配置されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のステータ(1)。
【請求項11】
前記ステータ巻線(6)は、ヘアピン巻線(16)として構成されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のステータ(1)。
【請求項12】
前記ヘアピン巻線(16)の少なくとも1つのヘアピン(13)が、第1の電気導体(7a)と、実質的に同一の断面輪郭を有し、前記第1の電気導体(7a)と平行な第2の電気導体(7b)と、を有し、前記第1の電気導体(7a)が、前記第2の電気導体(7b)に対して、前記第1の電気導体(7a)の前記長手方向軸線(11)を中心に少なくとも1回、約90°回転していることを特徴とする、請求項11に記載のステータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ本体であって、周囲に分散して配置された複数のステータ歯部と、ステータ歯部の間に形成され、ステータ本体をとおって軸方向に延在するステータスロットと、を有する、ステータ本体を備える電気機械用ステータに関し、ステータスロット内には、複数の電気導体を有するステータ巻線が配置され、径方向延在部に沿うステータスロットは、径方向外側端部にスロットベース、および径方向内側端部にスロット開口部を有するか、または、径方向延在部に沿うステータスロットは、径方向内側端部にスロットベース、および径方向外側端部にスロット開口部を有し、ステータ巻線の電気導体は、断面において幅および高さを有し、幅は高さよりも大きく、電気導体は、ステータスロットにおいて、幅が周方向に延在し、高さはステータスロット内で径方向に延在するように、ステータスロット内に配置され、冷却流体は、少なくとも1つの、好ましくはすべてのステータスロットを流れることができる。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を必要とする内燃機関の代替手段を提供するために、電気モータが自動車の駆動にますます使用されるようになっている。電気駆動装置の日常使用への適合性を向上させ、また、ユーザが慣れ親しんだ快適な駆動をユーザに提供できるようにするために、すでに多大な努力が払われている。
【0003】
電気駆動装置の詳細な説明は、Hochintegrativ und Flexibel Elektrische Antriebseinheit fuer E-Fahrzeuge[Highly Integrative and Flexible Electric Drive Unit for E-Vehicles]と題されるErik Schneider,Frank Fickle,Bernd Cebulski,Jens Lieboldによるドイツの自動車雑誌ATZ、第113巻、2011年5月、360~365ページにおける記事において見出され得る。この記事は、かさ歯車差動装置に対して同心かつ同軸となるように配置されている電気モータと、電気モータとかさ歯車差動装置との間の駆動トレイン内に配置され、同様に電気モータおよびかさ歯車差動装置または平歯車差動装置と同軸となるように位置付けられた、切り替え可能な2速遊星歯車セットと、を備える、車両の車軸用駆動ユニットについて説明している。駆動ユニットは、非常にコンパクトで、切り替え可能な2速遊星歯車セットにより、登坂能力と、加速と、エネルギー消費との間の良好なバランスを可能にする。このような駆動ユニットはまた、eアクスルまたは電動駆動トレインとも呼ばれる。
【0004】
純粋に電気的に作動する駆動トレインに加えて、ハイブリッド駆動トレインも知られている。ハイブリッド車両のこのような駆動トレインは通常、内燃エンジンと電気モータとの組み合わせを含み、例えば、都市部では純粋な電気モードでの動作を可能にすると同時に、特に長距離走行時には十分な走行距離と可用性の両方を実現する。さらに、特定の運転状況では、内燃エンジンと電気モータを同時に駆動に使用することも可能である。
【0005】
eアクスルまたはハイブリッドモジュール用途の電動機械の開発では、これらの出力密度を高める必要性が継続的に存在しており、そのために必要な電動機械の冷却の重要性が高まっている。必要な冷却能力のために、冷却油などの油圧流体は、電気機械の熱負荷領域から熱を除去するためのほとんどのコンセプトで確立されている。
【0006】
例えば、油圧流体によって電気機械を冷却するための従来技術由来の、ジャケット冷却ならびに巻線ヘッド冷却が知られている。ジャケット冷却は、ステータ積層コアの外側表面で発生した熱を冷却回路に伝達する一方、巻線ヘッド冷却の場合は、巻線ヘッド領域にあるステータ積層コアの外側の導体で直接流体に熱伝達が行われる。
【0007】
さらなる改善は、導体に加えて、ステータ積層コア(例えば、欧州特許出願公開第3157138号明細書を参照)と、スロットの両方に導入されている別個の冷却チャネルによってもたらされる(例えば、Markus Schiefer:Indirekte Wicklungskuehlung von hochausgenutzten permanenterregten Synchronmaschinen mit Zahnspulenwicklung[Indirect Winding Cooling of Highly Utilized Permanently Excited Synchronous Machines with Toothed Coil Winding],dissertation,Karlsruhe Institute of Technology(KIT),2017参照)。
【0008】
出力密度を高めるために、油圧流体が巻線の周囲に直接流れるという概念もまた既知である。スロット内で油圧流体と導体とが直接接触して冷却が改善されることは、先行技術から既に知られている。例えば、独国特許出願公開第102015013018号明細書には、歯の周りに巻かれた巻線の周囲に流体が直接流れる、単歯巻線を備えた電気機械のソリューションが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、改善され、特にコスト効率よく製造可能なスロット冷却を有するステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、周囲に分散して配置された複数のステータ歯部と、ステータ歯部の間に形成され、ステータ本体をとおって軸方向に延在するステータスロットと、を有するステータ本体を備える、電気機械用ステータによって達成され、ステータスロット内には、複数の電気導体を有するステータ巻線が配置され、径方向延在部に沿うステータスロットは、径方向外側端部にスロットベース、および径方向内側端部にスロット開口部を有するか、または、径方向延在部に沿うステータスロットは、径方向内側端部にスロットベース、および径方向外側端部にスロット開口部を有し、ステータ巻線の電気導体は、断面において幅および高さを有し、幅は高さよりも大きく、電気導体は、ステータスロットにおいて、幅が周方向に延在し、高さが径方向に延在するように、ステータスロット内に配置され、冷却流体は、少なくとも1つの、好ましくはすべてのステータスロットを流れることができ、電気導体の少なくとも1つは、少なくとも部分的に、対応するステータスロットにおいて、幅が、径方向に延在し、高さが、周方向に延在するように、冷却流体が流れ得るステータスロットの少なくとも1つに配置されている。
【0011】
これは、任意の追加の構成要素または形態を必要としない流路が、銅線のすぐ近くのステータスロット内に生成されるという利点を有する。電気導体自体を使用して、ステータスロット内で交互の断面方向に位置付けられる流路を形成する。
【0012】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、少なくとも2つの電気導体がステータスロット内で互いに対して90°だけ回転するように配置され、基本形態の電気導体は、特に好ましくは長方形の断面を有する。したがって、90°だけ回転するように配置されている電気導体は、ステータスロットを周方向に完全には満たさず、残りの間隙がステータスロット内の冷却流体の流路を形成する。最も好ましくは、積層コアにおいて、ステータスロット内に周方向に突出する突起を形成することができ、これにより、電気導体の周方向の変位が防止され、それ故に、ステータの動作中に画定された流路形状を確保することができる。
【0013】
本発明によるステータは、好ましくは、径方向磁束機械における使用のために構成される。径方向磁束機械のためのステータは、通常、円筒形構造を有し、互いから電気的に絶縁され、層状に構造化され、圧縮されて、積層コアを形成する電気鋼板から概ねなる。ステータスロットは、円周に沿って分散し、電気鋼板に埋め込まれ、ロータシャフトと実質的に平行になるように配置されており、当該ステータスロットは、ステータ巻線またはステータ巻線の一部を受容する。ステータスロットは、好ましくは、実質的にU字形の断面輪郭を有する。最も好ましくは、ステータスロットは、径方向に延在する直線状のスロット壁を有する。
【0014】
本発明によるステータのステータスロット内にはステータ巻線が埋め込まれている。ステータ巻線は、直径よりもはるかに大きい長手方向延在部を有する導電性導体である。ステータ巻線は、概ね任意の断面形状を有することができる。長方形の断面形状は、高い圧縮密度と、その結果として高い電力密度を達成できるため好ましい。特に好ましくは、ステータ巻線は、銅で形成される。好ましくは、ステータ巻線は、絶縁体を有する。ステータ巻線を絶縁するために、例えば、機械的な理由からガラス繊維の裏地で補強できるマイカ紙を、硬化樹脂で含浸させている1つ以上のステータ巻線の周りにテープ形態に巻き付けることができる。原理的には、ステータ巻線を絶縁するために、マイカ紙を使用せずに硬化性ラッカー層を使用することも可能である。
【0015】
本発明によるステータはまた、ステータ本体を有する。ステータ本体は、一体型で、または多数に分割して、特に分割様式で製造することができる。一体型ステータ本体は、周囲全体を見たときにステータ本体全体が一体型に形成されていることを特徴とする。ステータ本体は、通常、積み重ねられた複数の積層電気鋼板から形成され、電気鋼板のそれぞれは閉じられて、円形リングを形成する。分割されたステータ本体は、個々のステータの分割部品から構成されていることを特徴とする。ステータ本体は、個々のステータ歯部またはステータ歯部群から構成することができ、各個々のステータ歯部または各個々のステータ歯部群は、複数の積み重ねられた積層電気鋼板から形成することができ、電気鋼板のそれぞれは、ステータ分割積層部品として構成される。
【0016】
ステータ本体は、好ましくは、1つ以上のステータ積層コアから形成される。ステータ積層コアは、複数の積層された個々のシートまたはステータ積層体を意味するものと理解され、これらは概ね、電気鋼板から製造され、層状に積み重ねられてスタック、すなわちステータ積層コアと呼ばれるものを形成する。次に、個々のシートは、接着接合、溶接、またはねじ止めによって積層コア内に保持されたままであり得る。
【0017】
ステータのステータ歯部は、好ましくはステータ本体内に形成される。ステータ歯部は、周方向に間隔をあけて径方向で内側を向いたステータの歯様部品として構成されているステータ本体の構成要素であり、ステータ歯部の自由端とロータ本体との間に磁場用の空隙が形成されている。ロータとステータとの間の間隙は、空隙と呼ばれる。径方向磁束機械では、これは、ロータ本体とステータ本体との間の距離に対応する径方向幅を有する実質的に環状の間隙である。
【0018】
特に、ステータは、自動車の駆動トレイン内の電気機械における使用のために提供され得る。電気機械は、特にハイブリッド自動車または完全電動自動車の駆動トレイン内での使用を意図されている。特に、電気機械は、50km/hを超える、好ましくは80km/hを超える、特に100km/hを超える車両速度を達成できるような諸元を有する。電気機械は、特に好ましくは、30kWを超える出力、好ましくは50kWを超える出力、特に70kWを超える出力を有する。さらに、電気機械が5,000rpmを超える、特に好ましくは10,000rpmを超える、極めて特に好ましくは12,500rpmを超える速度を提供することが好ましい。
【0019】
本発明の有利な実施形態によれば、複数の、好ましくはすべての電気導体は、断面において実質的に長方形の輪郭を有する。この構成の利点は、一般的に標準として入手可能な電気導体を使用して、ステータ巻線を形成できることであり、これはステータの製造コストの点で特に有利である。
【0020】
本発明のさらに好ましい発展によれば、複数の、好ましくはすべての電気導体は、断面において実質的に同一の輪郭を有する。これにより、ステータの構成要素と製造の複雑さを小さく抑えることができ、コスト効率の高い製造プロセスにも貢献する。
【0021】
さらに、本発明の同様に有利な実施形態によれば、対応するステータスロットにおいて、幅が径方向に延在し、高さが周方向に延在するように、ステータスロットの少なくとも1つに配置される電気導体の少なくとも1つは、ステータスロットを通る軸方向の延在部にわたって変化する輪郭を有する。本発明のさらに特に好ましい実施形態によれば、この文脈において、ステータスロットを通る軸方向延在部にわたって変化する輪郭が、電気導体のその長手方向軸線の周りのねじれによって引き起こされることが可能である。原理的には、電気導体が連続的にねじれていること、すなわち、電気導体が一種の「ねじれ」を有し、軸方向延在部における電気導体の周囲を回転する4つの流路が形成されることも好ましいことであり得る。電気導体の断面は、長方形または正方形のいずれか一方であり得る。流路の断面は、電気導体の幾何形状によって直接影響を受け得る。
【0022】
さらに、本発明は、対応するステータスロットにおいて、幅が径方向に延在し、高さが周方向に延在するように、ステータスロットの少なくとも1つにおいて配置される電気導体の少なくとも1つが、ステータスロットにおいて、それぞれの幅が周方向に延在し、それぞれの高さが径方向に延在する電気導体によって径方向に囲まれるようにさらに発展させることもでき、これにより、特に有利な巻線パターンを実現でき、ステータスロット内の電気導体の特に効果的な冷却を達成することができ、これは出願人による試験およびシミュレーションによっても示されている。
【0023】
本発明の同様に好ましい実施形態では、電気導体は、その外側側面に絶縁体を有する。
【0024】
電気導体の幅と高さとの比が1.01:1~1.5:1となるように本発明をさらに発展させることも有利であり得る。出願人は、テストおよびシミュレーションで、この比率の範囲内で特に簡単な方法で特に効率的な溝冷却を実現できることを実証することができた。
【0025】
本発明によるさらに好ましい実施形態によれば、電気導体は、複数の、好ましくはすべてのステータスロットにおいて実質的に同一に配置される。これにより、ステータの製造における複雑さを可能な限り軽減することができる。
【0026】
最後に、本発明はまた、対応するステータスロットにおいて、幅がそれぞれの場合において径方向に延在し、高さがそれぞれの場合において周方向に延在するように、偶数の第1のグループの電気導体が、複数のステータスロットにおいて配置され、ステータスロットにおいて、幅がそれぞれの場合において周方向に延在し、高さがそれぞれの場合において径方向に延在するように、偶数の第2のグループの電気導体が、この複数のステータスロットにおいて配置されるように、有利に構成され得る。
【0027】
本発明の非常に好ましい実施形態では、ステータ巻線は、ヘアピン巻線として構成される。ヘアピン巻線において使用され得るようなヘアピンとして構成された電気導体の場合、電気導体の互いに対する回転は、巻線ヘッドに有益な効果をもたらすこともできる。なぜなら、この場合、原則として、いずれにしても電気導体に何らかの変形が発生するが、追加の成形によってこれを簡素化できる可能性があるからである。
【0028】
最後に、この文脈では、ヘアピン巻線の少なくとも1つのヘアピンが、第1の電気導体と、第1の電気導体に平行で実質的に同一の断面輪郭を有する第2の電気導体と、を有し、第1の電気導体が、第2の電気導体に対して、第1の電気導体の長手方向軸線を中心に少なくとも1回約90°だけ回転していることもまた好ましいことであり得る。
【0029】
以下では、本発明の一般的概念を限定することなく、図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】互いに対して回転する2つの電気導体を備えたヘアピンと、ねじれた電気導体を備えたヘアピンの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、周囲に分散配置された複数のステータ歯部4と、ステータ歯部4の間に形成され、ステータ本体3をとおって軸方向に延在するステータスロット5と、を有するステータ本体3を備える、電気径方向磁束機械用のステータ1を示す。ステータスロット5には、電流を供給可能な複数の電気導体7を有するステータ巻線6が配置されている。電気導体7は、その外側側面に絶縁体12、例えば、絶縁ラッカーを有する。ステータスロット5は、ほぼU字形状で、直線状の径方向に延在するスロット壁を備え、冷却流体12は、スロット壁をとおって流れることができる。
【0032】
ステータ1は、内部ロータ用に構成されているため、ステータスロット5の径方向延在部に沿うステータスロット5は、径方向外側端部にスロットベース8を有し、径方向内側端部にスロット開口部9を有する。原理的には、ステータ1が外部ロータ用であることも当然考えられ、その場合、ステータスロット5の径方向延在部に沿うステータスロット5は、径方向内側端部にスロットベース8を有し、径方向外側端部にスロット開口部9を有するが、これは図面には示されていない。
【0033】
ステータ巻線6の電気導体7は、断面において幅19と高さ10を有し、幅19は高さ10よりも大きく、これは
図1から明確にわかり得る。電気導体7の一部、例えば、スロットベース8上に載置される電気導体7は、ステータスロット5内において、幅19が周方向に延在し、高さ10が径方向に延在するように、ステータスロット5内に配置される。
【0034】
これらに加えて、電気導体7もまた、対応するステータスロット5において、幅19が径方向に延在し、高さ10が周方向に延在するように、ステータスロット5内に配置される。これらは、ステータ1を軸方向に通る冷却流体12用の冷却チャネルを、ステータスロット5および径方向に隣接する電気導体7とともに画定する。冷却流体12により、ステータ巻線6またはステータスロット5から熱が放散される。
【0035】
電気導体7はすべて、断面において実質的に同一の長方形の輪郭を有する。本発明に従って示された実施形態では、長方形の電気導体7の幅19と高さ10との比は、1.01:1~1.5:1である。
図1の実施形態では、対応するステータスロット5において、幅19が径方向に延在し、高さ10が周方向に延在するように、ステータスロット5の1つに配置されている電気導体7の1つは、ステータスロット5内でそれぞれの幅19が周方向に延在し、それぞれの高さ10が径方向に延在する電気導体7によって径方向に囲まれている。これにより、それぞれの場合において径方向に連続する3つの電気導体7が断面で二重のT字様輪郭を形成することとなる。
図1からは、電気導体7がすべてのステータスロット5において実質的に同一の様式で配置されている、すなわち、電気導体7の2つの二重T字様群が、ステータスロット5内で径方向で上下に位置付けられていることが明らかである。
【0036】
この場合、偶数の第1のグループ14の電気導体7が、対応するステータスロット5において、幅19がそれぞれの場合において径方向に延在し、高さ10がそれぞれの場合において周方向に延在するように、ステータスロット5内に配置され、偶数の第2のグループ15の電気導体7が、ステータスロット5において、幅19がそれぞれの場合において周方向に延在し、その高さ10がそれぞれの場合において径方向に延在するように、これらのステータスロット5内に配置される。この偶数は、ヘアピン巻線を使用する場合に特に有利である。
【0037】
図1から既知のステータ巻線6は、ヘアピン巻線16として構成されている。このヘアピン巻線16のヘアピン13を
図2に示す。ヘアピン13は、第1の電気導体7aと、第1の電気導体7aと平行で実質的に同一の断面輪郭を有する第2の電気導体7bと、を含む。
【0038】
図3の上部の図に示すように、ヘアピン13の第1の実施形態における第1の電気導体7aは、第1の電気導体7aの長手方向軸線11を中心に、第2の電気導体7bに対して約90°だけ回転することができる。
【0039】
代替的にまたは追加的に、
図3の下部の図に示すように、第1の電気導体7aが、ステータスロット5をとおる軸方向延在部にわたって変化するねじ様輪郭を有することも可能であると考えられる。第1の電気導体7aの軸方向延在部にわたって変化するこの輪郭は、電気導体7aが長手方向軸線11を中心にねじれることによって生じる。
【0040】
本発明は、図面に示される実施形態に限定されない。したがって、上記の説明は、本発明を限定するものではなく、むしろ例示的なものとみなされる。以下の特許請求の範囲は、記載された特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に存在することを意味するものと理解されたい。これは、さらなる特徴の存在を排除するものではない。特許請求の範囲および上記の説明で「第1」および「第2」の特徴が定義されている場合、この指定は、優先順位を定義せずに同じタイプの2つの特徴を区別するのに役立つ。
【符号の説明】
【0041】
1 ステータ
3 ステータ本体
4 ステータ歯部
5 ステータスロット
6 ステータ巻線
7 導体
8 スロットベース
9 スロット開口部
10 高さ
11 長手方向軸線
12 冷却流体
14 第1のグループ
15 第2のグループ
16 ヘアピン巻線
19 幅
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ本体(3)であって、周囲に分散して配置された複数のステータ歯部(4)と、前記ステータ歯部(4)の間に形成され、前記ステータ本体(3)をとおって軸方向に延在するステータスロット(5)と、を有する、ステータ本体(3)と、前記ステータスロット(5)において配置されている複数の電気導体(7)を有するステータ巻線(6)であって、径方向延在部に沿う前記ステータスロット(5)が、径方向外側端部にスロットベース(8)、および径方向内側端部にスロット開口部(9)を有するか、または、径方向延在部に沿う前記ステータスロット(5)が、径方向内側端部にスロットベース(8)、および径方向外側端部にスロット開口部(9)を有し、前記ステータ巻線(6)の前記電気導体(7)が、断面において幅(19)および高さ(20)を有し、前記幅(19)が、前記高さ(20)よりも大きく、前記電気導体(7)が、前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)が、周方向に延在し、前記高さ(20)が、径方向に延在するように、前記ステータスロット(5)内に配置される、ステータ巻線(6)と、少なくとも1つの、好ましくはすべての前記ステータスロット(5)を流れることができる、冷却流体(12)と、を備える、電気機械用ステータ(1)において、
前記電気導体(7)の少なくとも1つが、少なくとも部分的に、対応する前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)が径方向に延在し、前記高さ(10)が周方向に延在するように、前記冷却流体(12)が流れることができる前記ステータスロット(5)の少なくとも1つに配置されていることを特徴とする、電気機械用ステータ(1)。
【請求項2】
複数の、好ましくはすべての前記電気導体(7)が、断面において実質的に長方形の輪郭を有することを特徴とする、請求項1に記載のステータ(1)。
【請求項3】
複数の、好ましくはすべての前記電気導体(7)が、断面において実質的に同一の輪郭を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のステータ(1)。
【請求項4】
対応する前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)が径方向に延在し、前記高さ(10)が周方向に延在するように、前記ステータスロット(5)の少なくとも1つに配置される前記電気導体(7)の少なくとも1つが、前記ステータスロット(5)をとおる軸方向延在部にわたって変化する輪郭を有することを特徴とする、請求項
1に記載のステータ(1)。
【請求項5】
前記ステータスロット(5)をとおる前記軸方向延在部にわたって変化する前記輪郭が、前記電気導体(7)がその長手方向軸線(11)を中心にねじれることによって生じることを特徴とする、請求項4に記載のステータ(1)。
【請求項6】
対応する前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)が径方向に延在し、前記高さ(10)が周方向に延在するように、前記ステータスロット(5)の少なくとも1つに配置されている前記電気導体(7)の少なくとも1つが、前記ステータスロット(5)において、それぞれの前記幅(19)が周方向に延在し、それぞれの前記高さ(10)が径方向に延在する電気導体(7)によって径方向に囲まれていることを特徴とする、請求項
1に記載のステータ(1)。
【請求項7】
前記電気導体(7)が、その外側側面に絶縁体(12)を有することを特徴とする、請求項
1に記載のステータ(1)。
【請求項8】
電気導体(7)の前記幅(19)と前記高さ(10)との比が1.01:1~1.5:1であることを特徴とする、請求項
1に記載のステータ(1)。
【請求項9】
複数の、好ましくはすべての前記ステータスロット(5)において、前記電気導体(7)が、実質的に同一の様式で配置されることを特徴とする、請求項
1に記載のステータ(1)。
【請求項10】
対応する前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)がそれぞれの場合において径方向に延在し、前記高さ(10)がそれぞれの場合において周方向に延在するように、偶数の第1のグループ(14)の電気導体(7)が、複数の前記ステータスロット(5)内に配置され、前記ステータスロット(5)において、前記幅(19)がそれぞれの場合において周方向に延在し、前記高さ(10)がそれぞれの場合において径方向に延在するように、偶数の第2のグループ(15)の電気導体(7)が、前記複数のステータスロット(5)内に配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載のステータ(1)。
【請求項11】
前記ステータ巻線(6)は、ヘアピン巻線(16)として構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載のステータ(1)。
【請求項12】
前記ヘアピン巻線(16)の少なくとも1つのヘアピン(13)が、第1の電気導体(7a)と、実質的に同一の断面輪郭を有し、前記第1の電気導体(7a)と平行な第2の電気導体(7b)と、を有し、前記第1の電気導体(7a)が、前記第2の電気導体(7b)に対して、前記第1の電気導体(7a)の前記長手方向軸線(11)を中心に少なくとも1回、約90°回転していることを特徴とする、請求項11に記載のステータ(1)。
【国際調査報告】