(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】油圧トルクレンチ
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20241203BHJP
B25B 23/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B25B21/00 F
B25B23/00
B25B21/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535493
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 IB2022062228
(87)【国際公開番号】W WO2023111903
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジル,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ドッズ,トニー
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,イアン
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA04
3C038BC03
3C038EA03
(57)【要約】
油圧トルクレンチ(10)であって:加圧油圧流体に対する入力を有するヘッド(11);油圧トルクレンチ(10)によって回転対象物品に結合するための回転可能なコネクタ;及び、入力で導入された油圧流体により駆動され、且つ、回転可能な結合を回転させることとなる駆動機構(12)を備える、油圧トルクレンチ(10)が提供されている。反作用アーム(1)は、軸を中心としてヘッド(11)に対する反作用アーム(1)の回転運動を選択的に可能とするマウント(16)を介してヘッド(11)に装着されており、反作用アーム(1)は、駆動機構(12)が回転可能な結合を回転させた時に表面に対して反作用するよう配置されている。ここで、マウント(16)は:ヘッド(11)及び反作用アーム(1)における補完的スプライン(20)を備えるスプライン結合であって、反作用アーム(1)及びヘッド(11)の相対的回転を防止するようスプライン結合のスプライン(20)が相互に係合する第1の位置と、スプライン結合のスプライン(20)が相互に係合せず、ヘッド(11)及び反作用アーム(1)の相対的回転が可能とされた第2の位置とからの軸に沿ったヘッド(11)に対する反作用アーム(1)の直線運動を許可するスプライン結合;並びに、反作用アーム(1)及びヘッド(11)の相対的回転運動を制限する回転移動リミッタを備える。反作用アーム(1)及びヘッド(11)が、予期できずに、不必要に、又は、望ましくなく分離する可能性が低減される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧トルクレンチであって:
加圧油圧流体に対する入力を有するヘッド、前記油圧トルクレンチによる回転対象物品に結合するための回転可能なコネクタ、及び、前記入力で導入された油圧流体により駆動され、且つ、前記回転可能な結合を回転させることとなる駆動機構;並びに
反作用アームであって、軸を中心として前記ヘッドに対する前記反作用アームの回転運動を選択的に可能とするマウントを介して前記ヘッドに装着された反作用アームであり、前記駆動機構が前記回転可能な結合を回転させた時に表面に対して反作用するように配置された前記反作用アーム
を備える油圧トルクレンチであり、
前記マウントは:
前記ヘッド及び前記反作用アームにおける補完的スプラインを備えるスプライン結合であって、前記反作用アーム及び前記ヘッドの相対的回転を防止するよう前記スプライン結合の前記スプラインが相互に係合する第1の位置と、前記スプライン結合の前記スプラインが相互に係合せず、前記ヘッド及び前記反作用アームの相対的回転が可能とされた第2の位置とからの前記軸に沿った前記ヘッドに対する前記反作用アームの直線運動を許可するスプライン結合;並びに
前記反作用アーム及び前記ヘッドの相対的回転運動を制限する回転移動リミッタ
を備える、油圧トルクレンチ。
【請求項2】
油圧トルクレンチであって:
加圧油圧流体に対する入力を有するヘッド、前記油圧トルクレンチによる回転対象物品に結合するための回転可能なコネクタ、及び、前記入力で導入された油圧流体により駆動され、且つ、前記回転可能な結合を回転させることとなる駆動機構;並びに
反作用アームであって、軸を中心として前記ヘッドに対する前記反作用アームの回転運動を選択的に可能とするマウントを介して前記ヘッドに装着された反作用アームであり、前記駆動機構が前記回転可能な結合を回転させた時に表面に対して反作用するように配置された前記反作用アーム
を備える油圧トルクレンチであり、
前記マウントは:
前記ヘッド及び前記反作用アームにおける補完的スプラインを備えるスプライン結合であって、前記反作用アーム及び前記ヘッドの相対的回転を防止するよう前記スプライン結合の前記スプラインが相互に係合する第1の位置と、前記スプライン結合の前記スプラインが相互に係合せず、前記ヘッド及び前記反作用アームの相対的回転が可能とされた第2の位置とからの前記軸に沿った前記ヘッドに対する前記反作用アームの直線運動を許可するスプライン結合;並びに
前記第2の位置を超える前記ヘッドに対する前記反作用アームの直線運動を防止する直線移動リミッタであって、前記ヘッドに取り付けられた剛性細長部材を備え、前記反作用アームにおける段が前記剛性細長部材におけるストッパーと係合して、前記第2の位置を超える前記直線運動を停止する、直線移動リミッタ
を備える、油圧トルクレンチ。
【請求項3】
油圧トルクレンチであって:
加圧油圧流体に対する入力を有するヘッド、前記油圧トルクレンチによる回転対象物品に結合するための回転可能なコネクタ、及び、前記入力で導入された油圧流体により駆動され、且つ、前記回転可能な結合を回転させることとなる駆動機構;並びに
反作用アームであって、軸を中心として前記ヘッドに対する前記反作用アームの回転運動を選択的に可能とするマウントを介して前記ヘッドに装着された反作用アームであり、前記駆動機構が前記回転可能な結合を回転させた時に表面に対して反作用するように配置された前記反作用アーム
を備える油圧トルクレンチであり、
前記マウントは:
前記ヘッド及び前記反作用アームにおける補完的スプラインを備えるスプライン結合であって、前記反作用アーム及び前記ヘッドの相対的回転を防止するよう前記スプライン結合の前記スプラインが相互に係合する第1の位置と、前記スプライン結合の前記スプラインが相互に係合せず、前記ヘッド及び前記反作用アームの相対的回転が可能とされた第2の位置とからの前記軸に沿った前記ヘッドに対する前記反作用アームの直線運動を許可するスプライン結合;並びに
前記第2の位置を超える前記ヘッドに対する前記反作用アームの直線運動を防止する直線移動リミッタ、及び、前記反作用アームを前記第1の位置に付勢するよう作用する少なくとも1つの付勢部材
を備える、油圧トルクレンチ。
【請求項4】
前記マウントは、前記第2の位置を超える前記ヘッドに対する前記反作用アームの直線運動を防止する直線移動リミッタを備える、請求項1に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項5】
前記マウントは、前記反作用アームを前記第1の位置に付勢するよう作用する少なくとも1つの付勢部材を有する、請求項4に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項6】
前記マウントは、前記反作用アーム及び前記ヘッドの相対的回転運動を制限する回転移動リミッタを備える、請求項2又は3に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項7】
前記直線移動リミッタは、スタッド及びヘッドを有する少なくとも1つのボルトを備え、各ボルトの前記スタッドは、前記ヘッド及び前記反作用アームの一方に対して固定されていると共に、前記ヘッド及び前記反作用アームの他方におけるアパーチャ内で機能し、前記ヘッドは、前記直線移動を制限するよう、前記アパーチャを通過するには大きすぎる、請求項3~5のいずれか一項に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項8】
前記回転移動リミッタは前記移動を一定範囲に制限する、請求項1又は6に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項9】
前記範囲は最大で270度、180度又は90度である、請求項8に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項10】
前記範囲は90度又は180度である、請求項9に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項11】
範囲の端点は、前記ヘッドに対する前記反作用アームの所望の位置を表す、請求項8~10のいずれか一項に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項12】
前記回転移動リミッタは、前記ヘッド及び前記反作用アームの他方におけるスロット又は溝又は溝において機能する、前記ヘッド及び前記反作用アームの一方における突出部を備え、前記スロット又は溝は、典型的には、前記範囲を画定する端部を有する、請求項1、6又は8~11のいずれか一項に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項13】
前記ヘッドに対する前記反作用アームの所望の相対的回転位置を示す少なくとも1つの目印を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項14】
前記第1の位置にある時に前記ヘッド及び前記反作用アームを相互に選択的に固定する保持機構を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項15】
前記剛性細長部材は前記反作用アームにおける穿孔において機能し;前記穿孔及び前記剛性細長部材は各々長さを有し、前記穿孔は直径を有し、及び、前記剛性細長部材は幅を有し、
前記段は、前記穿孔の直径における変化を含み、及び、前記ストッパーは、前記剛性細長部材の残部よりも広い前記剛性細長部材の一部を備える、請求項1、又は、これ以降の従属請求項のいずれか一項に記載の油圧トルクレンチ。
【請求項16】
前記ヘッドにおける前記スプラインは、前記ヘッドにおける基部から外方に延びる円筒状ボスに設けられ、前記剛性細長部材は、前記基部において、又は、基部に隣接して前記ヘッドに取り付けられている、請求項15に記載の油圧トルクレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧トルクレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧トルクレンチなどのトルクレンチは従来技術において周知であり、例えばナット、ボルト又は他の締結具にトルクを加える場合に広く用いられている。
【0003】
国際公開第2018/130854号に開示されているものなどのいくつかの油圧トルクレンチは、回転対象物品を駆動する油圧流体によって駆動される駆動機構と、作動している時にトルクレンチに対する反作用的な支持を提供する反作用アームとを含むヘッドを備える。動作上の柔軟性の理由から、ヘッドに対する反作用アームの向きを変更可能であることが望ましい。
【0004】
国際公開第2018/130854号には、スプライン結合により、ヘッドと反作用アームとの分離、及び、異なる角度位置でのその再結合を可能とする解決法が開示されている。しかしながら、このような解決法はなお数々の問題を提示するものである。第1に、一旦ヘッド及び反作用アームが分離されると、一方の部品を止めるものがないことである。油圧トルクレンチは、風力タービンなどの作業が高所で実施される状況で頻繁に使用されることを考慮すると、これは、工具部品の損失と、使用者の下方に居る者に対する危険性、及び、落下部品の経路にある何らかの機器に対する危険性とが潜在的にもたらされる落下事故を意味する。従来技術の設計は典型的には部品を一緒に保持するラッチ等を備えるが、このようなラッチは使用中に故障して、予期しない分離又は不安定な工具の位置決めに繋がる可能性がある。
【0005】
第2に、スプライン結合では、使用者は、2つの部品を任意の数の位置で結合することが可能である一方で、工具が望ましく操作される位置の数はかなり少なく、典型的には、反作用アームは、ヘッドと一直線上に並ぶか、又は、90度でずらされるかである。本発明者らは、使用者が、所望の位置からスプライン1本又は2本分離れて2つの部品を結合してしまい、これにより非人間工学的な使用位置となってしまうことは容易に生じ、これは、位置決めが不安定で、工具が使用中に予期できず、及び、予想できずに動いてしまう場合には、潜在的に危険であることを理解している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、本発明者らは、油圧トルクレンチであって:
加圧油圧流体に対する入力を有するヘッド、油圧トルクレンチによる回転対象物品に結合するための回転可能なコネクタ、及び、入力で導入された油圧流体により駆動され、且つ、回転可能な結合を回転させることとなる駆動機構;並びに
反作用アームであって、軸を中心としてヘッドに対する反作用アームの回転運動を選択的に可能とするマウントを介してヘッドに装着された反作用アームであり、駆動機構が回転可能な結合を回転させた時に表面に対して反作用するように配置された反作用アーム
を備える油圧トルクレンチであり、
マウントは:
ヘッド及び反作用アームにおける補完的スプラインを備えるスプライン結合であって、反作用アーム及びヘッドの相対的回転を防止するようスプライン結合のスプラインが相互に係合する第1の位置と、スプライン結合のスプラインが相互に係合せず、ヘッド及び反作用アームの相対的回転が可能とされた第2の位置とからの軸に沿ったヘッドに対する反作用アームの直線運動を許可するスプライン結合;並びに
第2の位置を超えるヘッドに対する反作用アームの直線運動を防止する直線移動リミッタ、及び、反作用アームを第1の位置に付勢するよう作用する少なくとも1つの付勢部材
を備える、油圧トルクレンチを提供する。
【0007】
そのため、これは、反作用アーム及びヘッドが、予期できずに、不必要に、又は、望ましくなく分離する可能性が低い油圧トルクレンチを表す。使用者は、付勢部材による付勢に逆らって操作して、反作用アームを第2の位置に動かす必要があり、これは、反作用アームは、ヘッド及び反作用アームが分離する可能性が低い第1の位置に留まる傾向にあることを意味する。使用者が、予期せず第2の位置において反作用アームを手放した場合でも、反作用アームは、落下するのではなく、第1の位置に戻る傾向にある。
【0008】
典型的には、付勢部材はばねを備えていてもよい。直線移動リミッタはスタッド及びヘッドを有する少なくとも1つのボルトを備えていてもよく、各ボルトのスタッドは、ヘッド及び反作用アームの一方に対して固定されていると共に、ヘッド及び反作用アームの他方におけるアパーチャ内で作用し、ヘッドは、直線移動を制限するよう、アパーチャを通過するには大きすぎる。
【0009】
マウントはさらに、回転移動リミッタを備えていてもよく、これは、反作用アーム及びヘッドの相対的回転運動を制限し得る。典型的には、移動リミッタは、移動を一定の範囲に制限し得る。この範囲は、典型的には、最大で270度、180度又は90度となり、90度又は180度であり得る。これにより、範囲の端点は、ヘッドに対する反作用アームの所望の位置(典型的には、反作用アームの垂直位置及び水平位置、又は、2つの180度離れた水平位置)を表し得、それ故、これらの位置を探す使用者を補助する。回転移動リミッタは、ヘッド及び反作用アームの一方におけるスロット又は溝において機能するヘッド及び反作用アームの他方におけるピン又はスクリューなどの突出部を備えていてもよく、スロット又は溝は、典型的には、範囲を画定する端部を有する。
【0010】
油圧トルクレンチはまた、ヘッドに対する反作用アームの所望の相対的回転位置を示す少なくとも1つの目印を備えていてもよい。
【0011】
マウントはさらに、第1の位置にある時にヘッド及び反作用アームを相互に選択的に固定する保持機構を備えていてもよい。これは、例えば、ラッチ又はプッシュボタンロックを備えていてもよく、及び、補完的スプラインを相互に相対的に固定するよう作用し得る。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、本発明者らは、油圧トルクレンチであって:
加圧油圧流体に対する入力を有するヘッド、油圧トルクレンチによる回転対象物品に結合するための回転可能なコネクタ、及び、入力で導入された油圧流体により駆動され、且つ、回転可能な結合を回転させることとなる駆動機構;並びに
反作用アームであって、軸を中心としてヘッドに対する反作用アームの回転運動を選択的に可能とするマウントを介してヘッドに装着された反作用アームであり、駆動機構が回転可能な結合を回転させた時に表面に対して反作用するように配置された反作用アーム
を備える油圧トルクレンチであり、
マウントは:
ヘッド及び反作用アームにおける補完的スプラインを備えるスプライン結合であって、反作用アーム及びヘッドの相対的回転を防止するようスプライン結合のスプラインが相互に係合する第1の位置と、スプライン結合のスプラインが相互に係合せず、ヘッド及び反作用アームの相対的回転が可能とされた第2の位置とからの軸に沿ったヘッドに対する反作用アームの直線運動を許可するスプライン結合;並びに
反作用アーム及びヘッドの相対的回転運動を制限する回転移動リミッタ
を備える、油圧トルクレンチを提供する。
【0013】
これにより、制限は、ヘッドに対する反作用アームの所望の位置(典型的には、反作用アームの垂直位置及び水平位置、又は、2つの180度離れた水平位置)を表し得、それ故、これらの位置を探す使用者を補助する。
【0014】
油圧トルクレンチは、本発明の第1の態様の任意の特徴のいずれかを有し得る。マウントは、第2の位置を超えるヘッドに対する反作用アームの直線運動を防止する直線移動リミッタを備えていてもよい。マウントはまた、反作用アームを第1の位置に付勢するよう作用する少なくとも1つの付勢部材を有し得る。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、油圧トルクレンチであって:
加圧油圧流体に対する入力を有するヘッド、油圧トルクレンチによる回転対象物品に結合するための回転可能なコネクタ、及び、入力で導入された油圧流体により駆動され、且つ、回転可能な結合を回転させることとなる駆動機構;並びに
反作用アームであって、軸を中心としてヘッドに対する反作用アームの回転運動を選択的に可能とするマウントを介してヘッドに装着された反作用アームであり、駆動機構が回転可能な結合を回転させた時に表面に対して反作用するように配置された反作用アーム
を備える油圧トルクレンチであり、
マウントは:
ヘッド及び反作用アームにおける補完的スプラインを備えるスプライン結合であって、反作用アーム及びヘッドの相対的回転を防止するようスプライン結合のスプラインが相互に係合する第1の位置と、スプライン結合のスプラインが相互に係合せず、ヘッド及び反作用アームの相対的回転が可能とされた第2の位置とからの軸に沿ったヘッドに対する反作用アームの直線運動を許可するスプライン結合;並びに
第2の位置を超えるヘッドに対する反作用アームの直線運動を防止する直線移動リミッタであって、ヘッドに取り付けられた剛性細長部材を備え、反作用アームにおける段が剛性細長部材におけるストッパーと係合して、第2の位置を超える直線運動を停止する、直線移動リミッタ
を備える、油圧トルクレンチが提供されている。
【0016】
典型的には、剛性細長部材は反作用アームにおける穿孔において機能し;穿孔及び剛性細長部材は各々長さを有し得、穿孔は直径を有し得、及び、剛性細長部材は幅を有し得る。直径及び幅は長さに沿って変化し得、及び、直径及び幅は共に長さに垂直であり得る。段は、穿孔の直径における変化を含み得、一方で、ストッパーは、剛性細長部材の残部よりも広い剛性細長部材の一部を含み得る。
【0017】
典型的には、剛性細長部材はヘッドに固定されたボルトを備えていてもよく、剛性細長部材の残部よりも剛性細長部材の一部が広く、ボルトのヘッドを形成している。
【0018】
ヘッドにおけるスプラインは、ヘッドにおける基部から外方に延びる円筒状ボスに設けられ得る。剛性細長部材は、基部における、又は、基部に隣接するヘッドに取り付けられていてもよい。
【0019】
この構成は、製造が確実で容易である。
【0020】
油圧トルクレンチは、本発明の第1又は第2の態様に係る任意の特徴のいずれかを有し得る。マウントは、反作用アーム及びヘッドの相対的回転運動を制限する回転移動リミッタを備えていてもよい。反作用アームを第1の位置に付勢するよう作用する少なくとも1つの付勢部材をも有していてもよい。
【0021】
ここで、添付の図面を参照して記載した、本発明の実施形態の説明を以下に単なる一例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1-4】
図1~4は、それぞれ、第1~第4の位置における本発明の実施形態に係る油圧トルクレンチの側面図を示す。
【
図6】
図6は、第1の位置における
図1の油圧トルクレンチの背面図を示す。
【
図8】
図8は、
図6におけるものと同一の断面であるが、トルクレンチが
図2に示す第2の位置にあるものを示す。
【
図10】
図10は、
図9におけるものと同一の断面であるが、トルクレンチが
図3に示す第3の位置にあるものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
油圧トルクレンチ10を添付の図面に示す。レンチ10は、油圧流体用のポート12を有するヘッド11を備える。ヘッド11は、ポート12における加圧油圧流体の圧力を用いてスクエアドライブ14を回転させる駆動機構(主に内部であるが、13で示す)を含む。次いで、これが、回転対象物品に(例えば、ソケットを介してナットに)結合される。
【0024】
油圧トルクレンチ10はまた、反作用アーム1を備える。これは、回転対象物品を回転させる時の反力に対して油圧トルクレンチを支持するために用いられる。典型的には、アームの反作用表面15は、反作用表面15が油圧トルクレンチを支持することが可能であるよう、都合の良い表面に対して位置されている。
【0025】
反作用アーム1は、マウント16を介してヘッド11に装着されている。これは、反作用アーム1中のスプライン21を有する補完的なスプライン付穿孔18と係合する、ヘッド11から延在するスプライン20を有するスプライン付円筒部材1を備える。2組のスプライン20,21が
図1に示す油圧トルクレンチの第1の位置で係合すると、反作用アーム1はヘッド11に対して回転不能である。
【0026】
マウントはさらにアンカー2を備える。添付図面の
図11において分かるとおり、アンカー2中の3本のダウエルスクリュー6は、円筒部材17のスプラインを有さない部分における円周溝19に対する接線方向に配置されている。これにより、アンカー2は回転可能であるが(スプライン20,21の効果を受ける)、ヘッド11に対して直線的には移動できない。
【0027】
2本の細長剛性ボルト3a,3bはアンカーには固定されているが、反作用アーム1中の穿孔22a,22b中を通過する。各ボルト3a,3bはヘッド23a,23bを有し;穿孔22a,22bはヘッド23a,23bより広いが、直径24a,24bが段階的に小さくなっている。
【0028】
ボルト3aは短く;そのため、ヘッド11から、
図1及び7の第1の位置から
図2及び8の第2の位置に反作用アーム1を直線的に引き出すと、ボルト3aのヘッド23aは段24aに当接して、
図2及び8のようにさらなる移動が停止されることとなる。直線運動におけるこの停止は、スプライン20,21の脱係合に対応する。
【0029】
ボルト3bは長く、穿孔内において段24bとヘッド23bとの間で作用する圧縮ばね25を有する。そのため、このばね25は、スプライン20,21が係合されるよう付勢して、マウントを
図1の第1の位置に戻すように作用する。
【0030】
それ故、使用者が反作用アーム1の位置を変更したい場合、
図1に示す第1の使用位置から開始して、スプライン20,21が脱係合するよう、ばね25の力に逆らって反作用アーム1を引き戻す。それ故、レンチは、ここで、
図2に示す第2の位置にある。
【0031】
この時点で、使用者は、反作用アーム1をヘッド11に対して回転させることが可能である。しかしながら、円筒部材17には円周溝8が設けられており、溝8は、円筒部材11の円周の周りに180度をわずかに超えて延在している。アンカー2中のスクリュー7がこの溝8中に延びる。そのため、スクリューはヘッド11に対する反作用アーム1を含む回転移動を制限し;スクリューの直径を考慮すると、回転移動は180度に制限されることとなる。溝8の端部は、反作用アーム1がヘッド11に対して垂直に延在する通常使用される位置を表し、その1つが
図3及び4に示されている。溝8の中点は、反作用アーム1がヘッド11と一直線に並ぶ他の通常使用される位置(図面の
図1及び2に示されている)を表す。
【0032】
ヘッド11に対する反作用アーム1の回転運動に対するこの制限により、使用者はもっとも通常使用される位置の2つを容易に見つけることが可能となり;所望の位置から1本又は2本分のスプライン間隔ずれるという誤差が生じる可能性がかなり低くなり、レンチが設置に際してより高い信頼性がもたらされる。
【0033】
添付図面の
図12に示されているとおり、
図1の中点位置はアンカー2に付された目印26によって示され得、それ故、使用者は、この他の通常使用される位置を容易に見つけることが可能となる。
【0034】
そのため、使用者はここで、反作用アーム1及びヘッド11の所望の新たな位置合わせを選択しており、レンチが添付図面の
図3に示されている第3の位置となる。次いで、使用者は、ばね25からの力と自身の加えられた力により、レンチが
図4に示されている第4の位置となるよう、スプライン20,21をガイドして係合し戻すことができる。反作用アーム1及びヘッド11を相互に所定位置に保持するプッシュボタンロック5が設けられており;次いで、使用者はこれを作動させることで、レンチは使用可能な状態となる。このロック5が故障したり、又は、誤って脱係合されたとしても、レンチは、ばね25の付勢力、及び、ボルト3aによる移動に対する制限により、従来技術による装置で可能性として生じ得るように分解することなく、係合位置に維持される傾向にある。
【国際調査報告】