(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ガラス-セラミックプレート
(51)【国際特許分類】
C03C 10/14 20060101AFI20241203BHJP
C03C 10/12 20060101ALI20241203BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C03C10/14
C03C10/12
C03C3/087
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536069
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 FR2022052361
(87)【国際公開番号】W WO2023111460
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504374919
【氏名又は名称】ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100232895
【氏名又は名称】林 海藍
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ セルべ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-パトリック コシャール
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジャニオー
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062AA11
4G062BB01
4G062BB06
4G062CC09
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4G062DB04
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4G062DE01
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4G062GA10
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4G062JJ01
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4G062NN29
4G062NN31
4G062NN33
4G062QQ02
4G062QQ09
4G062QQ10
(57)【要約】
本発明は、リチウムアルミノケイ酸塩タイプのガラス-セラミックプレートに関し、これは、重量パーセントで表される、以下に定義する範囲内の、以下の成分を含む化学組成を有することを特徴とする、:
SnO2 0.05%以上かつ0.35%未満、
V2O5 0.05%以上かつ0.40%以下、
Fe2O3 0.32%超かつ0.40%以下、
Cr2O3 0.005%以上かつ0.040%。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムアルミノケイ酸-タイプのガラス-セラミックプレートであって、重量パーセントで表される、以下に定義される範囲内の、以下の成分:
SnO
2 0.05%以上かつ0.35%未満、
V
2O
5 0.05%以上かつ0.40%以下、
Fe
2O
3 0.32%超かつ0.40%以下、
Cr
2O
3 0.005%以上かつ0.040%以下、
を含む化学組成を有し、前記SnO
2、前記V
2O
5、及び前記Fe
2O
3の含有量が、14<1000×(2Fe
2O
3-SnO
2)×V
2O
5/2<40を満たす、ガラス-セラミックプレート。
【請求項2】
前記SnO
2、前記V
2O
5、及び前記Fe
2O
3の含有量が、20<1000×(2Fe
2O
3-SnO
2)×V
2O
5/2<35を満たす、請求項1に記載のガラス-セラミックプレート。
【請求項3】
0.07~0.30%、より好ましくは0.10~0.20%の、V
2O
5の含有量を含む、請求項1又は2に記載のガラス-セラミックプレート。
【請求項4】
0.35~0.40%の、Fe
2O
3の含有量を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス-セラミックプレート。
【請求項5】
0.10~0.32%、より好ましくは0.15~0.30%の、SnO
2の含有量を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス-セラミックプレート。
【請求項6】
0.010~0.032%、より好ましくは0.012~0.030%の、Cr
2O
3の含有量を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス-セラミックプレート。
【請求項7】
前記SnO
2、前記V
2O
5、前記Fe
2O
3の含有量が:
7.0<Fe
2O
3/(V
2O
5×SnO
2)<15、好ましくは8.0<Fe
2O
3/(V
2O
5×SnO
2)<15、
を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス-セラミックプレート。
【請求項8】
前記化学組成が、重量パーセントで表される、以下に定義される範囲内の、以下の成分:
SiO
2 52%~75%、好ましくは65.0%~70%、
Al
2O
3 18%~27%、好ましくは18%~21%、
Li
2O 2.5%~5.5%、好ましくは2.5%~3.9%、
K
2O 0%~3%、好ましくは0%~1.0%、
Na
2O 0%~3%、好ましくは0%~1.0%、
ZnO 0%~3.5%、好ましくは1.2%~2.8%、
MgO 0%~3%、好ましくは0.20%~1.5%、
CaO 0%~2.5%、好ましくは0%~1.0%、
BaO 0%~3.5%、好ましくは0%~3%、
SrO 0%~2%、好ましくは0%~1.4%、
TiO
2 1.2%~5.5%、好ましくは1.8%~3.2%、
ZrO
2 0%~3%、好ましくは1.0%~2.5%、
P
2O
5 0%~8%、好ましくは0%~3%、
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス-セラミックプレート:
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス-セラミックプレートを含む、物品、特には調理装置。
【請求項10】
リチウムアルミノケイ酸塩タイプのガラスプレートであって、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス-セラミックプレートの前駆体であり、重量パーセントで表される、以下に定義される範囲内の、以下の成分:
SnO
2 0.05%以上かつ0.35%未満、
V
2O
5 0.05%以上かつ0.40%以下、
Fe
2O
3 0.32%超かつ0.40%以下、
Cr
2O
3 0.005%以上かつ0.04%以下、
を含む化学組成を有し、前記SnO
2、前記V
2O
5、及び前記Fe
2O
3の含有量が、14<1000×(2Fe
2O
3-SnO
2)×V
2O
5/2<40を満たす、ガラスプレート。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス-セラミックプレートの製造方法であって:
- 請求項10に記載のリチウムアルミノケイ酸塩タイプのガラスプレートを提供すること;
- 前記ガラス-プレートをセラミック化すること、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス-セラミックプレート及びその製造方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス-セラミックプレートは、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスプレートを、セラミック化サイクルとも知られる、高温熱処理にかけることによって生成される。この熱処理は、負の熱膨張係数を有する、β-石英又はβ-スポジュメン構造の結晶を、プレート内に、生成する。したがって、ガラス-セラミック材料は、もはやガラスではない:それは、残留するガラス質相によって連結される結晶でできており、ゼロに近い熱膨張係数を有する。
【0003】
このようなガラス-セラミックプレートは、特にはクックトップとも知られる、調理装置において用いられる。これらの器具は、多くの場合、ワークトップ内に組み込まれるか、又はコンロ内に取り付けられる。ガラス-セラミックプレートは、ワークトップとしても用いられうる。いずれの場合も、プレートの美的外観は、消費者が選択する際の重要な基準である。
【0004】
特に調理装置において用いられるガラス-セラミックプレートは、一般的には、暗色のガラスセラミック、典型的には酸化バナジウムで着色されている暗色のガラス-セラミックである。これらは、光の透過率が低い、又はさらには非常に低いという際立った特徴を有し、内部構成要素、例えばヒーターなどを隠すことを可能にする。また、それらの調理機器における使用は、これらの用途に特有の一定の要件を課す。また、良好な赤外線透過率が、タッチ制御(約950nm)又は放射ヒーター(約2400nm)の操作に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機能的な理由及び美的な理由の両方から、調理装置は、一般的にはディスプレイ、例えば発光ダイオード(LED)又はスクリーンなどを備える。比較的幅広い選択肢を求める市場の要求が、特には美的魅力の観点から、高まっている。この文脈では、採用されている差別化の態様のひとつが、ガラス-セラミックプレートを通して見える、ディスプレイ手段、例えばLEDなどの使用を介した、さまざまな美的効果の開発である。したがって、ガラス-セラミックプレートの要求される特性、特に光透過率に関しては、所望の効果に応じて変化しうる。ガラス-セラミックの光学特性を変えるには、通常、組成を調整する必要がある。したがって、ガラス-セラミックプレートの広範囲の利用可能性は、多大な追加作製コストを伴い、このことは、例えば、マザーガラス作製のために溶融炉内で組成を変更するのに必要な移行時間及び/又は在庫管理の必要性などを理由とする。したがって、組成を適合させる必要なく、ガラス-セラミックプレートであって、それらの特性、特に光透過率が、調整されうるし、それによって比較的幅広い仕様を満たす、ガラス-セラミックプレートを作製するために用いられうるマザーガラスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、リチウムアルミノケイ酸塩-タイプのガラス-セラミックプレートに関し、これは、重量パーセントで表される、以下に定義される範囲内の、以下の成分を含む化学組成を有することを特徴とする:
SnO2 0.05%以上かつ0.35%未満、
V2O5 0.05%以上かつ0.40%以下、
Fe2O3 0.30%超かつ0.40%以下、
Cr2O3 0.005%以上かつ0.04%以下。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明はまた、マザーガラスとして知られる、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスプレートの提供、及びガラスプレートのセラミック化を含む、ガラス-セラミックプレートの製造方法にも関する。
【0008】
本発明の別の目的は、本発明によるガラス-セラミック前駆体プレート、又はマザーガラスである。このガラスプレートは、本発明によるガラス-セラミックプレートを得るための中間物品である。
【0009】
所与の組成について、セラミック化パラメータ(特にはセラミック化段階の温度及び時間)が、適切な結晶化を確保しつつ、改変されうる、セラミック化ウィンドウが存在し、ガラス-セラミックには、その特別な機械的特性、特にはほぼゼロの熱膨張係数、典型的には20~700℃で15.10-7K-1以下、又はさらには10.10-7K-1以下、又は5.10-7K-1以下の熱膨張係数が与えられる。本出願人は、SnO2、V2O5、Fe2O3、及びCr2O3の含有量を、本発明に従って定義される平衡を尊重するような方法で、選択することによって、同じマザーガラスから、所望の用途、特には調理装置における用途について必要とされる要件を維持しながら、比較的広い範囲の特性、特には比較的広い範囲の光学特性を有するガラス-セラミックスを得ることができることを実証した。特に、比較的広い範囲の光透過率が、セラミック化ウィンドウにおいて達成されうる。
【0010】
酸化バナジウム(V2O5)は、本発明によるガラス-セラミックスの主顔料である。それらは、0.05%~0.40%、好ましくは0.07%~0.30%、より好ましくは0.10%~0.20%のV2O5含有量を有する。V2O5は、SnO2の存在下で、セラミック化の際にガラスを著しく暗くする。V2O5は、主に700nm未満の、吸収に関与し、その存在下で、950nmにおいて、かつ赤外線内で、十分に高い透過率を維持することがありうる。
【0011】
酸化クロム(Cr2O3)の含有量は、0.005%~0.040%、好ましくは0.010%~0.032%、より好ましくは0.012%~0.030%の範囲である。いくつかの実施形態では、Cr2O3含有量は、0.010%~0.025%、又はさらには0.020%である。
【0012】
本発明によるガラス-セラミックスは、厳密には0.30%超かつ0.40%以下の全酸化鉄含有量(Fe2O3として表される)を有する。Fe2O3含有量は、好ましくは厳密には0.32%超であり、0.40%まで高くなりうる。それは、0.33%~0.40%、より好ましくは0.35%~0.40%でありうる。
【0013】
組成物は、精製剤として酸化スズ(SnO2)を含有する。SnO2の存在量が比較的多いほど、精製プロセスは比較的容易かつ効率的になる。しかしながら、SnO2は、セラミック化の際にバナジウム及び鉄との酸化還元平衡を改変することによって着色にも影響すると、推測される。したがって、SnO2含有量は、0.05%以上かつ厳密には0.35%未満、好ましくは0.10%~0.32%、より好ましくは0.15%~0.30%である。
【0014】
SnO2、V2O5、及びFe2O3の含有量は、以下の条件を満たす:14<1000×(2Fe2O3-SnO2)×V2O5/2<40、好ましくは20<1000×(2Fe2O3-SnO2)×V2O5/2<35。このバランスは、セラミックウィンドウ上で達成可能な光透過の範囲を著しく改善する。
【0015】
SnO2、V2O5、及びFe2O3の含有量は、以下の条件も満たしうる:7.0<Fe2O3/(V2O5×SnO2)<15、好ましくは8.0<Fe2O3/(V2O5×SnO2)<15。このバランスを維持することは、ガラス-セラミックの光学特性を向上させる。
【0016】
シリカ(SiO2)は、主なガラス形成酸化物である。高い含有量は、許容範囲を超えて、ガラスの粘度を上昇させる原因であり、一方で過度に低い含有量は、熱膨張係数を上昇させるであろう。シリカ含有量は、好ましくは、52~75%、特には64~70%、65.0~70%の範囲内である。
【0017】
アルミナ(Al2O3)も、ガラスの粘度の上昇の原因であり、したがってそれを比較的溶融しにくくさせる。しかしながら、それが低すぎる量で存在する場合、ガラスは、セラミックス化しにくくなる。アルミナ含有量は、好ましくは18~27%、特には18~21%の範囲内である。
【0018】
酸化リチウム(Li2O)は、β-石英結晶の形成に不可欠である。また、最低限の含有量レベルが必要であり、それによって、高温でのガラスの粘度を低下させる。Li2Oの含有量は、好ましくは2.5~5.5%、特には2.5~3.9%の範囲内である。
【0019】
ソーダ(Na2O)及びポタッシュ(K2O)の含有量は、それぞれ好ましくは3%未満、より好ましくは1.0%未満である。Na2O+K2Oと表記される、これらの含有量の合計は、好ましくは、低い熱膨張係数を確保するために制限される。この合計は、有利には、最大1.5%、又はさらには最大1%である。
【0020】
高温での適切な粘性を確保して、マザーガラスの溶融及び形成の両方を最適化することを可能にするために、プレートの組成は、石灰(CaO)及び酸化バリウム(BaO)を含有する。CaO含有量は、好ましくは最大2.5%、より好ましくは最大1.0%であり、それによって、炉の耐火物の過度な腐食を防止すること、及び潜在的に散乱する結晶の形成を制限することの、両方を行う。BaO含有量は、好ましくは最大3.5%、特には最大3%である。CaO及びBaO含有量の合計(CaO+BaOと表記される)は、約2%~5%、特には2.5%~4%の範囲内である。
【0021】
MgO含有量は、好ましくは3%以下である。0.20%~1.5%の含有量が好ましい。
【0022】
SrO含有量は、好ましくは最大2%、又はさらには最大1.4%である。それは、さらに有利にはゼロである。
【0023】
ZnOの含有量は、好ましくは最大3.5%、又はさらには1.2%~2.8%である。セラミックス化の際に、この酸化物は、β-石英構造の結晶の形成に関与し、したがって熱膨張係数の低下に寄与する。
【0024】
チタン酸化物(TiO2)及びジルコニウム(ZrO2)は、核形成剤として機能し、β-石英構造結晶のバルク結晶化を促進する。TiO2含有量は、好ましくは1.2%~5.5%、より好ましくは1.8%~3.2%である。ZrO2含有量は、好ましくは3%未満、より好ましくは1.0%~2.5である。高いZrO2含有量は、液相線温度が過度に高くなる可能性がある。TiO2及びZrO2の併用が、有利である。これらの含有量の合計(TiO2+ZrO2)は、好ましくは3.80%超、より好ましくは4%超である。低量は、過剰な結晶成長を促しうるし、それによって、望ましくない光散乱をもたらす。
【0025】
本発明によるガラス-セラミックプレートは、有利には、SnO2、V2O5、Fe2O3、及びCr2O3に加えて、重量パーセントで表される、以下に定義される範囲内の、以下の成分を含む化学組成を有する:
SiO2 52%~75%、好ましくは64%~70%、
Al2O3 18%~27%、好ましくは18%~21%、
Li2O 2.5%~5.5%、好ましくは2.5%~3.9%、
K2O 0%~3%、好ましくは0%~1.0%、
Na2O 0%~3%、好ましくは0%~1.0%、
ZnO 0%~3.5%、好ましくは1.2%~2.8%、
MgO 0%~3%、好ましくは0.20%~1.5%、
CaO 0%~2.5%、好ましくは0%~1.0%、
BaO 0%~3.5%、好ましくは0%~3%、
SrO 0%~2%、好ましくは0%~1.4%、
TiO2 1.2%~5.5%、好ましくは1.8%~3.2%、
ZrO2 0%~3%、好ましくは1.0%~2.5%、
P2O5 0%~8%、好ましくは0%~3%。
【0026】
ガラス-セラミックプレートの化学組成は、先に示した酸化物を含む。好ましくは、それは、本質的にはこれらの酸化物からなる。「本質的には~からなる」という表現は、前述の酸化物が、ガラスセラミックの重量のうち少なくとも96%、又はさらには98%若しくは99%を占めることを意味すると理解される。ガラス-セラミックプレートの化学組成は、一般的には、顔料としてFe2O3、V2O5、及びCr2O3のみを含む。他の顔料、例えばMnO、Bi2O3、CoO、NiO、又はCeO2などは、微量で、典型的には0.1%未満、又はさらには0.05%未満、又はさらには0.01%未満の総含有量で、存在しうる。特に、ガラス-セラミックプレートの化学組成は、典型的には10ppm未満、又はさらには5ppm未満のCoOを含む。
【0027】
ガラス-セラミックプレートは、典型的には2mm~10mm、特に2.5mm~8mm、例えば3mm、4mm、5mm、又は6mmなどの厚さを有する。ガラス-セラミックプレートの寸法(長さ及び幅)は、それが意図される用途に依存する:それは、一般的には、20cm~120cmの寸法を、特には調理装置におけるこれらの用途のために、有するが、比較的大きな寸法、例えば200cmを超える寸法を、ワークトップ用途のために有してもよい。
【0028】
本発明によるガラス-セラミックプレートは、典型的には0.5%~8%、好ましくは0.7%~6%の光透過率を有する。光透過率は、ISO9050:2003に従ってガラス-セラミックプレートの実際の厚さで測定される。実際の厚さでは、3.5%超、好ましくは4%超の625nmでの光透過率、40%~70%の950nmでの光透過率、及び45%~75%の1600nmでの光透過率を有する。
【0029】
本発明はまた、本発明によるガラス-セラミックプレートの前駆体である、リチウムアルミノケイ酸塩タイプのガラスプレートに関する。このガラスプレートの化学組成は、本発明によるガラス-セラミックプレートのものと同一又は実質的に同一である。したがって、ガラス-セラミックプレートの組成に関連して上述した内容は、本発明によるガラスプレートの組成にも適用される。特に、ガラスプレートは、好ましくは、重量パーセントで表される、以下に定義される範囲内の、以下の成分を含む化学組成を有する:
SnO2 0.05%以上かつ0.35%未満、
V2O5 0.05%以上かつ0.40%以下、
Fe2O3 0.30%超かつ0.40%以下、
Cr2O3 0.005%以上かつ0.04%以下。
【0030】
一方、ガラスプレートは、専ら本質的にはガラス質であり、すなわち結晶を含まない。上記前駆体ガラスは、有利には、1000~2500nmの任意の波長に対して、60%超の光透過率を有することに留意すべきである。これは、溶融及び精製を容易にする。
【0031】
本発明のさらなる目的は、本発明によるガラス-セラミックプレートを製造する方法であって、これは、本発明によるガラスプレートを提供すること、及び上記ガラスプレートをセラミック化することを含む。より具体的には、ガラスプレートを提供することは、溶融工程及び形成工程を含む。
【0032】
溶融は、典型的には、酸化剤として空気又は好ましくは酸素を用い、かつ燃料として天然ガス又は重油を用いる、バーナーの補助を受けて、耐火炉内で実行される。溶融ガラス中に浸漬されている、抵抗体、特にはモリブデン又は白金でできている抵抗体も、溶融ガラスを得るために用いられるエネルギーの一部又は全部を提供しうる。原料(シリカ、スポジュメン、ペタライト、炭酸リチウムなど)は、炉内に導入され、高温の影響下で、様々な化学反応、例えば脱炭酸反応、実際の溶融反応などを受ける。ガラスが到達する最高温度は、典型的には、少なくとも1500℃、特には1600℃~1700℃である。ガラスは、公知の方法で、例えば金属性ローラー又はセラミックローラー間でガラスを圧延することによる方法、引抜き(上向き又は下向き)による方法、又はさらには溶融ガラスを溶融スズ浴上に注ぐことを含む技術である、フロート(浮遊)プロセスによる方法などで、プレートへと成形されうる。
【0033】
セラミック化工程は、好ましくは850℃~1000℃、例えば900℃~980℃、さらには920℃~960℃の範囲内の、結晶化温度まで昇温を行う熱サイクルを含む。各組成物に適合するような、温度及び/又はセラミック化時間の選択は、結晶のサイズ及び量を変化させることによって得られる材料の熱膨張係数を調節することを可能にする。好ましくは、熱サイクルは、650℃~850℃の温度に15分~200分間にわたって上昇させ(核形成工程)、そして結晶化温度まで制御される上昇を、典型的には5分~120分間にわたって行い、次いで結晶化温度を5分~20分間にわたって維持する(結晶成長工程)ことを含む。
【0034】
本発明の別の目的は、本発明による少なくとも1つのガラス-セラミックプレートを有する物品、特には調理装置、又はワークトップである。
【0035】
調理装置は、好ましくは放射タイプ又は電磁誘導タイプである。プレートは、加熱手段(例えばインダクタ)、電気配線、並びに調理装置の制御及び制御回路を隠すことができるのが好ましい。この目的のために、プレート表面の少なくとも一部に、プレート上及び/又はプレートの下に堆積されるコーティングを提供することがありうるし、上記コーティングは、光放射を吸収及び/又は反射及び/又は散乱する能力を有する。コーティングは、プレートの下に、すなわち「下方面」とも称される、装置の内部要素に面している表面上に、かつ/又はプレート上に、すなわち上方面上に堆積されうる。コーティングは、有機物に基づく層、例えば塗料の層、樹脂の層、若しくはラッカーの層など、又は無機物に基づく層、例えばエナメル、若しくは金属性若しくは金属の、酸化物、窒化物、酸窒化物、若しくは酸炭化物層などでありうる。好ましくは、有機層は、下方面上に堆積されるであろうし、一方、無機層、特にエナメルは、上方面上に堆積されるであろう。ガラス-セラミックプレート及び少なくとも1つのインダクタ(好ましくは3つ、又は4つ、さらには5つ)の他に、調理装置は、少なくとも1つの発光装置、少なくとも1つの制御及び監視装置を有してよく、このアセンブリは、典型的にはハウジング内にある。1つ又は複数の発光装置は、有利には、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオードディスプレイ(例えば、7セグメント化されたディスプレイ)、場合によっては有機ディスプレイ(OLED)、蛍光ディスプレイ(VFD)から選択される。これらの発光装置は、純粋に装飾的であってよく、例えばプレートの異なる領域を視覚的に分離してよい。しかしながら、多くの場合、これらは、ユーザーにとって有用な様々な情報、特には加熱パワーの表示、温度の表示、調理プログラムの表示、調理時間の表示、プレートの所定温度を超えたゾーンの表示などを見せる機能的な役割を有するであろう。制御及び監視装置は、一般的には、タッチ感応制御、例えば静電容量式のもの又は赤外線式のものを含む。全ての内部要素は、一般的には、多くの場合金属性である、ハウジングに取り付けられており、これは、調理装置の下方部を構成し、通常は、ワークトップの中又は調理器本体の中に隠されている。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、本発明の非限定的な説明を提供するものである。
【0037】
表1に示す化学組成(重量による酸化物含有量)を有する様々なガラスを、公知の様式で溶融し、多数の厚さ4mmのマザーガラスプレート試料を、各組成について形成した。そして、このプレートを、異なるセラミック化温度Tc(925℃、945℃、960℃)を特徴とする、異なるサイクルでセラミック化処理にかける。セラミック化サイクルは、600℃までの急速加熱すること、17℃/分の速度で820℃まで昇温すること、このレベルを10分間にわたって保持すること、次いで17℃/分の速度でセラミック化温度Tcまで昇温すること、セラミック化温度Tcを10分間にわたって保持すること、及び最後にガラス-セラミックを室温まで制御冷却することを含む。
【0038】
光線透過率(Tv)を、ISO規格9050:2003に従って各試料について測定する。所与のマザーガラス組成について、Tvmax及びTvminはそれぞれ、異なるセラミック化サイクルを用いて得られたガラスセラミックの中で測定される、最大及び最小の光透過率を表す。
【0039】
以下の表1は、得られた結果を要約したものである:
- 用いられたマザーガラスの組成;
- 所定のマザーガラス組成について、セラミック化サイクルの関数としての、得られたガラスセラミックスの最小光透過率Tvmin;
- 3つのセラミック化サイクルで達成される、光透過率振幅Tvmax-Tvmin。
【0040】
【0041】
これらの結果は、本発明による組成物が、同じマザーガラス組成で、特には調理プレートとしての用途において有用な、比較的広い範囲の光透過率を達成することを可能にすることを示す。これは、マザーガラスの組成を改変する必要なしに、光学特性を異なる仕様に適合させることを可能にする。
【国際調査報告】