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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】無縫合吻合接続デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A61B17/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536091
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 US2022053195
(87)【国際公開番号】W WO2023114484
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/291,063
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】500273296
【氏名又は名称】ザ・ペン・ステート・リサーチ・ファンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】524226405
【氏名又は名称】ダウリング、 ロバート
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダウリング、 ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ピアース、 ウィリアム エス.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、 ガーソン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD26
(57)【要約】
内側支持構造と、内側支持構造の周りに位置付けられ、人工器官デバイスに結合された外側支持構造と、を備える人工器官吻合固定デバイスであって、内側支持構造が、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備え、拡張構成において、内側支持構造が、外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、内側及び外側支持構造が、拡張構成において、生体導管の一部分が外側支持構造の内面と内側支持構造の外面との間に固定的に固着されるように、内側支持構造と外側支持構造との間に生体導管の一部分を受け入れるように寸法決め及び構成されている、人工器官吻合固定デバイス。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工器官固定デバイスであって、
内側支持構造と、
前記内側支持構造の周りに位置付けられ、人工器官デバイスに結合された外側支持構造と、を備え、
前記内側支持構造が、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備え、
前記拡張構成において、前記内側支持構造が、前記外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、
前記内側及び外側支持構造が、前記拡張構成において、患者の血管の一部分が前記外側支持構造の前記内面と前記内側支持構造の外面との間に固定的に固着されるように、前記内側支持構造と前記外側支持構造との間に患者の血管の前記一部分を受け入れるように寸法決め及び構成されている、デバイス。
【請求項2】
未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える第2の内側支持構造と、
前記第2の内側支持構造の周りに位置付けられ、前記人工器官デバイスの遠位端に結合された第2の外側支持構造と、を更に含み、
前記拡張構成において、前記第2の内側支持構造が、前記第2の外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、
前記第2の内側及び外側支持構造が、前記拡張構成において、患者の血管の第2の部分が、前記第2の外側支持構造の前記内面と前記第2の内側支持構造の外面との間に固定的に固着されるように、前記第2の内側支持構造と前記第2の外側支持構造との間に患者の血管の前記第2の部分を受け入れるように寸法決め及び構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記外側支持構造が、前記外側支持構造の近位端において前記人工器官デバイスに結合され、
前記内側支持構造が、前記内側支持構造の近位端において前記人工器官デバイスに結合されている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記未拡張構成において、前記内側支持構造の近位端直径は、前記内側支持構造の遠位端直径よりも大きい、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記内側支持構造が、環状リング形状を画定する、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記内側支持構造が、拡張可能なステントである、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記拡張可能なステントの遠位端部分が、未拡張構成から拡張構成に拡張し、前記未拡張構成において、前記遠位端部分が、前記拡張可能なステントの近位端部分よりも圧着されている、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記内側支持構造が、カバー(例えば、布地)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記内側支持構造が、布で覆われた拡張可能なステントを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記内側支持構造が、磁性材料から構築されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記内側支持構造が、前記外側支持構造に磁気的に引き付けられる、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記内側支持構造が、生物学的に不活性な材料から構築されており、
前記内側支持構造が、金属(例えば、ステンレス鋼、ニチノール)及びポリマー(例えば、ポリエチレン、テフロン)のうちの少なくとも1つから構築されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記拡張構成において、前記内側支持構造が、前記患者の血管の内側にぴったりと適合するように寸法決定及び構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記拡張構成における前記内側支持構造の長さが、前記外側支持構造の長さに対応する、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記内側支持構造の長さが、前記外側支持構造の長さよりも大きいか、又は小さい、請求項1~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
外側支持体が、環状リング形状を画定する、請求項1~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記外側支持構造の前記内面が、テクスチャ加工された表面(すなわち、前記患者の血管を把持し、組織の内方成長を可能にするための)を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記テクスチャ加工された表面が、フロック加工された表面、レーザーエッチングされた表面、外側層の内面上に堆積されたテクスチャ材料、前記外側層の前記内面上に堆積された粘着剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記外側支持構造が、生物学的に不活性な材料(例えば、ポリマー、接着剤で強化されたフェルト材料、金属)から構築されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記外側支持構造が、ポリマー(例えば、ポリエチレン、テフロン)から構築されている、請求項1~19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記外側支持構造が、前記患者の血管の前記外側にぴったりと適合するように寸法決定及び構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記内側及び外側支持構造が、2.0cm~6.0cmの範囲の軸方向長さと、1.5mm~2.5mmの範囲の厚さと、18mm~36mmの内径と、を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記人工器官デバイスが、グラフト材料及び/又は生体導管のうちの少なくとも一方を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記人工器官デバイスが、血管グラフトである、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記人工器官デバイスが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル(例えば、Dacron(登録商標)、Gortex(登録商標))、シルクフィブロイン、及びポリウレタンのうちの少なくとも1つを含む生体適合性合成材料から構成されており、当技術分野で既知の任意の他の材料が、生体導管の代替として好適である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記人工器官デバイスには、(すなわち、ゼラチン、コラーゲンを含む、前記患者の血管構造と前記人工器官デバイスとの間の密封を促進するための)密封剤、細菌感染を阻害する添加剤(例えば、抗生物質、消毒剤)のうちの少なくとも1つを含む含浸材料が含浸させられている、請求項23又は24に記載のデバイス。
【請求項27】
前記人工器官デバイスが、ゼラチン含浸ポリエステル織物血管グラフトである、請求項23又は24に記載のデバイス。
【請求項28】
人工器官デバイスを患者の血管に取り付ける方法であって、前記方法が、
人工器官固定デバイスを患者の血管の開口部において治療部位まで前進させることであって、前記人工器官固定デバイスが、
未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える内側支持構造と、
前記内側支持構造の周りに配置され、人工器官デバイスの遠位端に連結された外側支持構造と、を備える、前進させることと、
前記患者の血管の前記開口部内で前記未拡張構成の前記内側支持構造を前進させることと、
前記外側支持構造を、前記患者の血管の外面に隣接して位置付けることと、
前記内側支持構造が前記外側支持構造の内面に対して半径方向外向きの力を提供し、それによって、前記外側支持構造の前記内面と前記内側支持構造の外面との間に前記患者の血管の一部分を固着するように、前記内側支持構造を前記拡張構成に向かって半径方向に拡張することと、を含む、方法。
【請求項29】
前記人工器官固定デバイスが、
未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える第2の内側支持構造と、
前記第2の内側支持構造の周りに位置付けられ、前記人工器官デバイスの遠位端に結合された第2の外側支持構造と、を更に含み、
前記方法が、
前記患者の血管の第2の開口部内で、前記未拡張構成の前記第2の内側支持構造を前進させることと、
前記第2の外側支持構造を、前記患者の血管の外面に隣接して位置付けることと、
前記第2の内側支持構造が、前記第2の外側支持構造の内面に対して半径方向外向きの力を提供し、それによって、前記第2の外側支持構造の内面と第2の内側支持構造の外面との間に前記患者の血管の第2の部分を固着するように、前記第2の内側支持構造を前記拡張構成に向かって半径方向に拡張することと、を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記内側支持構造を半径方向に拡張することが、前記内側支持構造を手動で拡張することを含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記内側支持構造を半径方向に拡張することが、前記内側支持構造の中央内腔内にバルーン拡張デバイスを位置付けることと、前記バルーンを膨張させて前記内側支持構造を拡張することと、を含み、
前記内側支持構造が前記血管に対して固着され、前記血管が前記外側支持構造に対して固着された後、前記バルーン拡張デバイスが、収縮させられ、前記内側支持構造及び前記患者の血管から離れるように移動される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記患者の血管の前記一部分を前記外側支持構造と前記内側支持構造との間に固着することが、前記内側支持構造と前記血管と前記外側支持構造との間に液密シールを形成し、
前記内側支持構造と前記血管と前記外側支持構造との間のシールが、前記人工器官デバイスを通して流体を流すことによって試験され、
前記内側支持構造と前記血管と前記外側支持構造との間の前記液密シールが決定されない場合、前記内側支持構造が追加的に拡張される(例えば、バルーンの追加的な膨張が、完全な止血を達成するために用いられ得る)、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記外側リングのテクスチャ加工された内面を用いて前記患者の血管の前記表面を把持することを更に含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者の血管が、動脈セグメント、静脈セグメント、心房構造、生体導管(例えば、胆管、尿管、卵管)のうちの少なくとも1つを含む、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記血管が、大動脈を含み、
前記外側支持構造を前記患者の血管の外面に隣接して位置付けることが、前記外側支持構造の前記内面を前記大動脈の外膜に隣接して位置付けることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記内側支持構造が、前記内側支持構造と前記外側支持構造との間で大動脈組織を半径方向に拡張する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記人工器官デバイスが、グラフト材料、人工心臓弁、心臓補助ポンプ、人工心臓のうちの少なくとも1つを含む、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記人工器官デバイスが、血管グラフトである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記固定デバイスが前記血管の前記開口部まで前進させられる前に、前記固定デバイスのための着座面を提供するために前記患者の血管内に牽引ステッチを配置することと(すなわち、大動脈をデバイス内にうまく着座させるのを確実にするように大動脈上に牽引ステッチが配置される)、
前記窓内に前記牽引ステッチを位置付けることと、
前記固定デバイスが前記患者の血管に固着された後、前記牽引ステッチを取り外すことと、を更に含む、請求項28~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者の血管の直径を測定することと、
前記患者の血管の前記測定された直径に対応する直径を有する内側支持構造及び外側支持構造を選択することと、を更に含む、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
人工器官固定デバイスであって、
内側支持構造と、
前記内側支持構造の周りに位置付けられ、人工器官デバイスに結合された外側支持構造と、を備え、
前記内側支持構造が、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備え、
前記拡張構成において、前記内側支持構造が、前記外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、
前記内側及び外側支持構造が、前記拡張構成において、生体導管の一部分が前記外側支持構造の前記内面と前記内側支持構造の外面との間に固定的に固着されるように、前記内側支持構造と前記外側支持構造との間に生体導管の前記部分を受け入れるように寸法決め及び構成されている、デバイス。
【請求項42】
未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える第2の内側支持構造と、
前記第2の内側支持構造の周りに位置付けられ、前記人工器官デバイスの遠位端に結合された第2の外側支持構造と、を更に含み、
前記拡張構成において、前記第2の内側支持構造が、前記第2の外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、
前記第2の内側及び外側支持構造が、前記拡張構成において、生体導管の第2の部分が、前記第2の外側支持構造の前記内面と前記第2の内側支持構造の外面との間に固定的に固着されるように、前記第2の内側支持構造と前記第2の外側支持構造との間に生体導管の前記第2の部分を受け入れるように寸法決定及び構成されている、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
人工器官固定デバイスであって、
人工器官デバイスに結合された内側支持構造と、
前記内側支持構造の周りに位置付けられた外側支持構造と、を備え、
前記内側支持構造が、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備え、
前記拡張構成において、前記内側支持構造が、前記外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、
前記内側及び外側支持構造が、前記拡張構成において、患者の血管の前記一部分が前記外側支持構造の前記内面と前記内側支持構造の外面との間に固定的に固着されるように、患者の心臓組織の一部分(例えば、心房、血管)を前記内側支持構造と前記外側支持構造との間に受け入れるように寸法決め及び構成されている、デバイス。
【請求項44】
前記未拡張構成において、前記内側支持構造の近位端直径が、前記内側支持構造の遠位端直径よりも大きい、請求項43に記載のデバイス。
【請求項45】
前記内側支持構造が、環状形状を画定する、請求項43又は44に記載のデバイス。
【請求項46】
前記内側支持構造が、拡張可能なステントである、請求項43~45のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項47】
前記内側支持構造が、カバー(例えば、布地)を含む、請求項43~46のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項48】
前記内側支持体構造が、布で覆われた拡張可能なステントを含む、請求項47に記載のデバイス。
【請求項49】
前記内側支持構造が、磁性材料から構築される、請求項43~48のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項50】
前記内側支持構造が、前記外側支持構造に磁気的に引き付けられる、請求項49に記載のデバイス。
【請求項51】
前記内側支持構造が、生物学的に不活性な材料から構築されており、
前記内側支持構造が、金属(例えば、ステンレス鋼、ニチノール)及びポリマー(例えば、ポリエチレン、テフロン)のうちの少なくとも1つから構築されている、請求項43~50のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項52】
前記拡張構成において、前記内側支持構造が、前記患者の血管の前記内側(例えば、前記患者の心房の内側であり、30~70mmの範囲の直径を有する)にぴったりと適合するように寸法決め及び構成されている、請求項43~51のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項53】
前記拡張構成における前記内側支持構造の長さが、前記外側支持構造の長さに対応する、請求項43~52のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項54】
前記内側支持構造の長さが、前記外側支持構造の長さよりも大きい、請求項43~53のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項55】
前記外側支持体が、前記拡張構成において環状形状を画定する、請求項43~54のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項56】
前記外側支持構造の前記内面が、(すなわち、前記患者の血管を把持し、組織の内方成長を可能にするための)テクスチャ加工された表面を含む、請求項43~55のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項57】
前記テクスチャ加工された表面が、フロック加工された表面、レーザーエッチングされた表面、前記外側層の前記内面上に堆積されたテクスチャ材料、前記外側層の前記内面上に堆積された粘着剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項56に記載のデバイス。
【請求項58】
前記外側支持構造が、生物学的に不活性な材料(例えば、ポリマー、接着剤で強化されたフェルト材料、金属)から構築されている、請求項43~57のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項59】
前記外側支持構造が、ポリマー(例えば、ポリエチレン、テフロン)から構築されている、請求項43~58のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項60】
前記外側支持構造が、前記患者の血管の外側にぴったりと適合するように寸法決め及び構成されている(例えば、30~70mmの範囲の直径を有する)、請求項43~59のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項61】
前記人工器官デバイスが、人工心臓弁、心臓補助ポンプ、及び人工心臓のうちの少なくとも1つを含む、請求項43~60のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項62】
前記人工器官デバイスが、完全人工心臓の心房カフである、請求項61に記載のデバイス。
【請求項63】
前記人工器官デバイスには、密封剤(すなわち、例えば、ゼラチン、コラーゲンを含む、前記患者の血管構造と前記人工器官デバイスとの間の密封を促進するための)、細菌感染を阻害する添加剤(例えば、抗生物質、消毒剤)のうちの少なくとも1つを含む含浸材料が含浸させられている、請求項43~62のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項64】
人工器官デバイスを患者の血管に取り付ける方法であって、前記方法が、
人工器官固定デバイスを患者の血管の開口部において治療部位まで前進させることであって、前記人工器官固定デバイスが、
前記人工器官デバイスに結合された内側支持構造であって、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える、内側支持構造と、
前記内側支持構造の周りに位置付けられるように構成された外側支持構造と、を備える、前進させることと、
前記患者の血管の前記開口部内で前記未拡張構成の前記内側支持構造を前進させることと、
前記外側支持構造を、前記患者の血管の外面に隣接して位置付けることと、
前記内側支持構造が前記外側支持構造の内面に対して半径方向外向きの力を提供し、それによって、前記外側支持構造の前記内面と前記内側支持構造の外面との間に前記患者の血管の一部分を固着するように、前記内側支持構造を前記拡張構成に向かって半径方向に拡張することと、を含む、方法。
【請求項65】
前記内側支持構造を半径方向に拡張することが、前記内側支持構造を手動で拡張することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記内側支持構造を半径方向に拡張することが、前記内側支持構造の中央内腔内にバルーン拡張デバイスを位置付けることと、前記バルーンを膨張させて前記内側支持構造を拡張することと、を含み、
前記内側支持構造が前記血管に対して固着され、前記血管が前記外側支持構造に対して固着された後、前記バルーン拡張デバイスが、収縮させられ、前記内側支持構造及び前記患者の血管から離れるように移動される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記患者の血管の前記一部分を前記外側支持構造と前記内側支持構造との間に固着することが、前記内側支持構造と前記血管と前記外側支持構造との間に液密シールを形成し、
前記内側支持構造と前記血管と前記外側支持構造との間のシールが試験され、
前記内側支持構造と前記血管と前記外側支持構造との間の液密シールが決定されない場合、前記内側支持構造が追加的に拡張される(例えば、前記バルーンの追加的な膨張が、完全な止血を達成するために用いられ得る)、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記患者の血管は、心房を含み、
前記内側支持構造と前記血管と前記外側支持構造との間の前記シールを試験することが、
人工器官デバイスの中央内腔(例えば、心房カフの中央開口部)に閉塞器を導入することと、
前記人工器官デバイスの上流にフォーリーカテーテルを前進させることと、
フォーリーバルーンを膨張させて前記肺静脈を通る/からの血流を閉塞させることと、
前記人工器官デバイスの前記中央内腔に液体を提供することと、
前記内側及び外側支持構造を通る及び/又は前記内側及び外側支持構造の周りの流体の漏れを確認することと、を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記患者の血管の前記表面を、外側リングのテクスチャ加工された内面を用いて把持することを更に含む、請求項64~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記患者の血管が、動脈セグメント、静脈セグメント、心房構造のうちの少なくとも1つを含む、請求項64~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記患者の血管が、心房を含み、
前記患者の血管の前記開口部内で前記内側支持構造を前進させることが、心房組織が前記内側支持構造と前記外側支持構造との間にあるように、前記心房内に前記内側支持構造を位置付けることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記外側支持構造を前記患者の血管の外面に隣接して位置付けることが、前記外側支持構造の前記内面を前記心房の内面に隣接して位置付けることを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記内側支持構造を半径方向に拡張することが、前記内側支持構造と前記外側支持構造との間に前記心房組織を固着する、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
前記人工器官デバイスが、人工心臓弁、心臓補助ポンプ、及び人工心臓のうちの少なくとも1つを含む、請求項64~73のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項75】
前記人工器官デバイスが、完全人工心臓の心房カフである、請求項74に記載のデバイス。
【請求項76】
前記固定デバイスが前記血管の前記開口部まで前進させられる前に、前記固定デバイスのための着座面を提供するために前記患者の血管内に牽引ステッチを配置することと(すなわち、牽引ステッチが、前記デバイスがうまく着座させられることを確実にするために前記心房上に配置される)、
前記固定デバイスが前記患者の血管に固着された後、前記牽引ステッチを取り外すことと、を更に含む、請求項64~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記患者の血管の直径を測定することと、
前記患者の血管の前記測定された直径に対応する直径を有する内側支持構造及び外側支持構造を選択することと、を更に含む、請求項64~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
人工器官デバイスを患者の血管に取り付ける方法であって、前記方法が、
人工器官固定デバイスを患者の血管の開口部において治療部位まで前進させることであって、前記人工器官固定デバイスが、
前記人工器官デバイスに結合された内側支持構造であって、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える、内側支持構造と、
前記内側支持構造の周りに位置付けられるように構成された外側支持構造と、を備える、前進させることと、
前記外側支持構造を前記血管に取り付けることと、
前記患者の血管の前記開口部内で前記未拡張構成の前記内側支持構造を前進させることと、
前記外側支持構造を、前記患者の血管の外面に隣接して位置付けることと、
前記内側支持構造が前記外側支持構造の内面に対して半径方向外向きの力を提供し、それによって、前記外側支持構造の前記内面と前記内側支持構造の外面との間に前記患者の血管の一部分を固着するように、前記内側支持構造を前記拡張構成に向かって半径方向に拡張することと、を含む、方法。
【請求項79】
前記患者の血管が、心房を含み、
前記外側支持構造を前記血管に取り付けることが、前記外側支持構造を心房組織に取り付けること(例えば、前記外側支持構造を前記心房組織の外面に取り付けること)を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記外側支持構造が、機械的留め具又は化学的留め具(例えば、粘着剤)のうちの少なくとも一方を使用して前記心房組織に結合される、請求項78又は79に記載の方法。
【請求項81】
前記外側支持構造は、粘着剤(例えば、CryoLife社のBioGlue(商標)などのバイオグルー)を使用して前記心房組織に結合されるフェルト材料を含む、請求項80に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月17日に出願された、米国仮特許出願第63/291,063号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、血管グラフト及び他の人工器官デバイスに天然血管を接続するための吻合デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
動脈瘤性疾患及び解離のための大動脈の切除及び置換は、血管グラフトを天然血管に接続するために手縫い吻合を使用することが依然として標準治療である一般的な手術である。上行大動脈解離では、非手術療法による死亡率が非常に高い(1%死亡率/時間)ので、置換が必要である。解離のための大動脈置換の正確な発生率は既知ではないが、集団ベースの研究では、米国における年間30,000~80,000例の発生率が示唆されている。解離では、正常組織の完全性が損なわれ、心臓手術において最も困難な処置の1つである標準的な手縫い吻合部の形成が行なわれる。その結果、この吻合部を形成する時間はしばしば長く、縫合線出血がよく見られ、管理が非常に困難であり得る。更に、これらの手術は、遠位大動脈吻合を行うために低体温循環停止の期間を必要とする。吻合を形成するための時間によって、しばしば循環停止の期間が大幅に長くなり、循環停止期間の延長は、神経学的事象の増加及び末端器官機能障害に関連付けられる。
【0004】
大動脈瘤の選択的切除もまた、典型的には手縫い吻合が使用される一般的な手術である。大動脈瘤の選択的切除の正確な数は不明であるが、胸部外科医協会からの推定では、米国における年間15,000~20,000例が示唆されている。EUでも同様の数の手術が実施されている。これらの患者は、しばしば薄い壁の大動脈を有し、低体温循環停止の期間を必要とする。針及び縫合糸を不要にする本明細書に記載のデバイスを用いて止血吻合部を迅速に形成すると、傷つきやすい天然組織に関連する問題を防止し、吻合部を形成するための期間が長いことに関連する問題を解消する。更に、このアプローチは、外科医が大動脈切除の範囲を安全に広げることを可能にすることによって、患者の転帰を潜在的に改善することができる。上行大動脈を切除した患者の最大30%は、大動脈弓の進行性動脈瘤疾患の治療を必要とする。本明細書に記載の迅速かつ効果的な吻合デバイスは、外科医が大動脈弓を含めるように切除を拡張し、その後、近位下行胸部大動脈への迅速かつ安全な吻合を行うことを可能にする。次いで、弓分岐血管への迅速な吻合が実施され得、大動脈弓疾患の進行の懸念が解消される。
【0005】
心不全は、天然心房を人工心臓に接続するために手縫い吻合が使用される別の例示的な処置である。予後が悪いままである間、心不全の発生率は増加し続け、薬物療法に失敗した患者に利用可能な選択肢はほとんどない。心臓移植は、世界的に年間6,000回未満に制限されている。米国国立衛生研究所(National Institutes o f Health)は、改善された機械的循環支援(MCS)デバイスの必要性を引き続き特定し、最大175,000人の患者がMCSから即座に恩恵を被ることができると推定している。現在の世代の左心室補助デバイス(LVAD)は、転帰が改善されているが、依然として、高い脳卒中率(1年で8%)及び死亡率(5年生存率46%)を含む有意な罹患率aと関連付けられている。重要なことに、連続流完全人工心臓(TAH)が開発されているが、TAH移植に関連する主要な問題は、手術療法の範囲である。TAHの心房カフに対する天然心房の吻合部の形成は、組織への頻繁な裂傷及び/又は針穴出血を伴う薄い心房組織に起因して特に困難である。時間がかかる二重縫合線は、しばしば、脳気塞栓の可能性のある縫合線を通る出血及び空気のエントレインの両方を回避するために使用される。天然の心房組織に迅速に吻合され得、改善された止血を提供する、本明細書で説明するTAH心房カフの開発は、(1)手術の複雑さを軽減し、(2)術中及び周術期の出血を軽減し、(3)心肺バイパスの時間を短縮する。心肺バイパスの時間が長くなると、手術中の罹患率と死亡率の両方が増加する。
【0006】
要約すると、当技術分野では、天然血管を血管グラフト、完全人工心臓デバイス、又は胆管、尿管、及び/又は卵管などの他の生体導管に接続するための、迅速かつ容易に移植される無縫合吻合部が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本開示のある特定の例は、無縫合吻合固定デバイスを提供する。
【0008】
本明細書に開示される人工器官吻合固定デバイスは、内側支持構造と、内側支持構造の周りに位置付けられ、人工器官デバイスに結合された外側支持構造と、を備え、内側支持構造は、拡張構成と未拡張構成との間に半径方向に移動可能な拡張可能構造を備え、拡張構成において、内側支持構造は、外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、内側及び外側支持構造は、拡張構成において、患者の血管の一部分が(例えば、円周方向において)外側支持構造の内面と内側支持構造の外面との間に固定的に固着されるように、内側支持構造と外側支持構造との間に患者の血管のこの部分を受け入れるように寸法決め及び構成されている。
【0009】
本明細書に開示される固定デバイスを使用して人工器官吻合デバイスを患者の血管に取り付ける方法は、人工器官固定デバイスを患者の血管の開口部において治療部位まで前進させることを含み、人工器官固定デバイスは、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える内側支持構造と、内側支持構造の周りに位置付けられ、人工器官デバイスの遠位端に連結された外側支持構造と、を含む。この方法は、患者の血管の開口部内で未拡張構成の内側支持構造を前進させることと、外側支持構造を患者の血管の外面に隣接して位置付けることと、内側支持構造が外側支持構造の内面に対して半径方向外向きの力を提供し、それによって、外側支持構造の内面と内側支持構造の外面との間に患者の血管の一部分を固定するように、内側支持構造を拡張構成に向かって半径方向に拡張することと、を更に含む。
【0010】
本明細書に開示される人工器官吻合固定デバイスの更なる実装形態は、内側支持構造と、内側支持構造の周りに位置付けられ、人工器官デバイスに結合された外側支持構造と、を備え、内側支持構造は、拡張構成において、内側支持構造が、外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、内側及び外側支持構造が、拡張構成において、生体導管の一部分が、外側支持構造の内面と内側支持構造の外面との間に固定的に固着されるように、内側支持構造と外側支持構造との間に生体導管のこの部分を受け入れるように寸法決め及び構成されている。
【0011】
本明細書に開示される人工器官吻合固定デバイスの別の実施態様は、人工器官デバイスに結合された内側支持構造と、内側支持構造の周りに位置付けられた外側支持構造と、を備える。ここで、内側支持構造は、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える。拡張構成において、内側支持構造は、外側支持構造の内面に向かって半径方向外向きの力を提供し、内側及び外側支持構造は、拡張構成において、患者の心臓組織の一部分(例えば、心房、血管)が外側支持構造の内面と内側支持構造の外面との間に固定されるように、内側支持構造と外側支持構造との間に患者の血管のこの部分を受け入れるように寸法決め及び構成されている。
【0012】
本明細書に開示される固定デバイスを使用して、人工器官吻合デバイスを患者の血管に取り付ける別の方法は、人工器官固定デバイスを、患者の血管の開口部において治療部位まで前進させることを含み、人工器官固定デバイスは、人工器官デバイスに結合された内側支持構造であって、内側支持構造が、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える、内側支持構造と、内側支持構造の周りに位置付けられるように構成された外側支持構造とを備える。この方法は、患者の血管の開口部内で未拡張構成の内側支持構造を前進させることと、外側支持構造を患者の血管の外面に隣接して位置付けることと、内側支持構造が外側支持構造の内面に対して半径方向外向きの力を提供し、それによって、外側支持構造の内面と内側支持構造の外面との間に患者の血管の一部分を固定するように、内側支持構造を拡張構成に向かって半径方向に拡張することと、を更に含む。
【0013】
本明細書に開示される固定デバイスを使用して人工器官吻合デバイスを患者の血管に取り付ける更なる方法は、人工器官固定デバイスを患者の血管の開口部において治療部位まで前進させることを含み、人工器官固定デバイスは、人工器官デバイスに結合された内側支持構造であって、内側支持構造が、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える、内側支持構造と、内側支持構造の周りに位置付けられるように構成された外側支持構造と、を含んでいた。方法は、外側支持構造を血管に取り付けることと、患者の血管の開口部内で未拡張構成の内側支持構造を前進させることと、外側支持構造を患者の血管の外面に隣接して位置付けることと、内側支持構造が外側支持構造の内面に対して半径方向外向きの力を提供し、それによって、外側支持構造の内面と内側支持構造の外面との間に患者の血管の一部分を固定するように、内側支持構造を拡張構成に向かって半径方向に拡張することと、を更に含む。
【0014】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】いくつかの例による、人工器官固定デバイスを有する患者の解剖学的構造の概略図である。
図2図1の例示的な人工器官固定デバイスの斜視図である。
図3】閉鎖/拡張構成であり、隣接する患者の解剖学的構造を含む、図1の例示的な人工器官固定デバイスの部分斜視図である。
図4図1の例示的な人工器官固定デバイスの斜視図である。
図5図1の例示的な人工器官固定デバイスの遠位端の部分断面図である。
図6】開放/未拡張構成の隣接する患者の解剖学的構造を含む、図1の例示的な人工器官固定デバイスの遠位端の部分断面図である。
図7】閉鎖/拡張構成の隣接する患者の解剖学的構造を含む、図6の例示的な人工器官固定デバイスの遠位端の部分断面図である。
図8】別の例による、人工器官固定デバイスを備えた患者の解剖学的構造の概略図である。
【0016】
様々な図面における同様の参照記号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に開示されるのは、患者の転帰を改善することを目的とした、現在の手縫い技術よりも顕著な利点を提供する、迅速な無縫合吻合である。本開示は、心臓及び血管の両方の手術、並びに泌尿器又は腸の処置などの中空臓器へのグラフト又は他の材料の取り付けを含む他の処置において、迅速かつ止血性の無縫合吻合を可能にするデバイス及び方法を提供する。例えば、開示されるデバイス及び方法を使用して、天然の心臓、天然の血管、又は任意の中空臓器にグラフトを吻合することができ、また、完全人工心臓の配置を必要とする患者に利益をもたらすことができる。本明細書に記載されるように、吻合部固定デバイスは、従来の手縫い技術と比較してはるかに速い方法で、任意の組織が天然組織を貫通することなく、吻合部を急速に作成する。更に、針穴出血の解消及び手術時間の短縮は、患者の転帰の改善につながる。
【0018】
図1は、例示的な人工器官吻合固定デバイス10を備えた患者の概略図を示す。人工器官固定デバイス10は、内側支持構造20と、円周方向において内側支持構造20の周りに位置付けられた外側支持構造30と、を含む。人工器官デバイス50は、内側支持構造20及び/又は外側支持構造30に結合されている。例示的な人工器官デバイス50は、グラフト材料及び/又は他の生体導管を含む。
【0019】
内側及び外側支持構造20、30は、患者の解剖学的構造40の一部分(例えば、血管)が外側支持構造30の内面32と内側支持構造20の外面22との間に固定的に固着されるように、内側支持構造20と外側支持構造30との間に患者の解剖学的構造(例えば、血管)のこの部分を受け入れるように寸法決定及び構成されている。例えば、患者の血管は、円周方向において内側支持構造20と外側支持構造30との間に固着されている。
【0020】
内側支持構造20は、それを通って延びる中央内腔24を有する環状の概してリング形状の構造を画定している。図1図7に示されるように、内側支持構造20及び外側支持構造30は、それらの近位端26、36において人工器官デバイス50に結合されている。内側支持構造20は、未拡張構成(図5、6)と拡張構成(図1、3、7)との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える。
【0021】
図5及び図6に示されるように、未拡張構成において、近位端26における内側支持構造20の直径は、遠位端28における内側支持構造20の直径よりも大きい。拡張構成において、遠位端28での内側支持構造20の直径は、近位端26での直径に対応する。拡張構成において、内側支持構造20は、外側支持構造30の内面32に向かって半径方向外向きの力を提供し、それによって、外側支持構造30の内面32と内側支持構造20の外面22との間に患者の解剖学的構造を固定する。例えば、拡張構成において、内側支持構造20は、患者の解剖学的構造40の内側(例えば、血管の内面)にぴったりと適合するように寸法決定及び構成されている。いくつかの例では、内側支持構造20は、1mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mmの例示的な値を含む、1mm~100mmの範囲の拡張直径を有する。なお更なる態様では、直径は、前述の値のいずれかの間の任意の値を有し得る。例えば、直径は、15mm~50mm、18mm~36mm、50mm~55mm、50mm~100mmの間であり得る(及び数値自体を含む)。
【0022】
図1図4及び図7に示されるように、拡張構成における内側支持構造20の軸方向の長さは、外側支持構造30の長さに対応する。代替的に、拡張構成において、内側支持構造20は、外側支持構造30の長さよりも大きいか又は小さい長さを有することができる。いくつかの例では、内側及び外側支持構造20、30は、0.5cm、1.0cm、1.5cm、2.0cm、2.5cm、3.0cm、3.5cm、4.0cm、4.5cm、5.0cm、5.5cm、6.0cm、6.5cmの例示的な値を含む0.5cmから6.5cmの範囲の長さを有する。なお更なる態様では、内側及び外側支持構造20、30の長さは、前述の値のいずれかの間の任意の値を有する。例えば、長さは、2.0cmから6.0cmの間(及び数値自体を含む)であり得る。
【0023】
内側及び外側支持構造20、30は、同じ厚さ又は変化する厚さ(半径方向において対応する内側及び外側支持構造20、30の内面と外面との間において測定される)を有することができる。いくつかの例では、内側及び外側支持構造20、30の各々の厚さは、0.5mm、1mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mmの例示的な値を含む、0.5mmから3mmの範囲である。なお更なる態様では、内側及び外側支持構造20、30の厚さは、前述の値のいずれかの間の任意の値を有する。例えば、厚さは、1.0mmと2.5mmとの間(及び数値自体を含む)であり得る。いくつかの例では、内側支持構造20は、人工器官デバイス50に近位端において結合された拡張可能なステントを備える。一般に、内側支持構造20のステント状近位端26は、人工器官デバイス50に結合されているため、内側支持構造20がステント状内側部材の遠位端28の直径を拡張すると、ステントライン内側部材の近位端の直径は一定のままであるが、ステント状内側部材の遠位端の直径は拡張する。いくつかの例では、未拡張構成において、ステント状内側部材の遠位端部分は、より圧着され、患者の解剖学的構造40が内側支持構造20、30と外側支持構造30との間で前進することができるように、ステント状内側部材の近位端部分よりも小さい直径を有する。次に、ステント状内側部材の遠位端部分は、未拡張構成から拡張構成に拡張される。その結果、患者の解剖学的構造40は、ステント状内側部材(内側支持構造20)と外側支持構造30との間に固定される。
【0024】
内側支持構造20は、内側支持構造20がその内面又は外面の全部又は一部の上にカバー及び/又はコーティングを含まないように、露出された/覆われていない拡張可能なステントを含むことができる。例えば、内側支持構造20は、ベアメタルの拡張可能なステントを含むことができる。更なる実施例では、内側支持構造20は、カバー材料(例えば、布地)を含み、例えば、内側支持構造20は、布で覆われた拡張可能なステントを備える。カバー材料は、患者の解剖学的構造40への損傷を防止し、また、固定デバイス10を固着するときに、内側支持構造20と患者の解剖学的構造40との間の把持/抵抗を増強する。
【0025】
上記で説明したように、人工器官固定デバイス10は、円周方向において内側支持構造20の周りに配置された外側支持構造30を含む。図1~7に示されるように、外側支持構造30は、それを通って延びる中央内腔34を有する概して環状のリング形状構造を画定している。
【0026】
上述のように、人工器官デバイス50は、内側支持構造20及び/又は外側支持構造30に結合されている。いくつかの例では、人工器官デバイス50は、内側支持構造20及び外側支持構造30の両方に結合されている。別の例では、人工器官デバイス50は、外側支持構造30に結合されており、内側支持構造20から分離されている。この例では、外側支持構造30(及び人工器官デバイス50)は、患者の解剖学的構造40の対応する部分に隣接して位置付けられている。一旦位置付けられると、内側支持構造20は、患者の解剖学的構造/血管の中央内腔内で前進させられ、内側支持構造20と外側支持構造30との間に解剖学的構造を固着するために拡張される。
【0027】
更なる例では、人工器官デバイス50は、内側支持構造20に結合されており、外側支持構造30から分離されている。この例では、内側支持構造20(及び人工器官デバイス)は、患者の解剖学的構造40の対応する部分に隣接して位置付けられている。内側支持構造20が位置付けられると、外側支持構造20は別個に前進させられ、患者の解剖学的構造/血管の上に位置付けられ、内側支持構造が、内側支持構造20と外側支持構造30との間の解剖学的構造40を固定するために拡張される。外側支持構造30は、患者の解剖学的構造40の外面に別個に結合され得る。例えば、外側支持構造30は、血管の外面、例えば、心房組織に結合されている。いくつかの例では、外側支持構造30は、機械的及び/又は化学的留め具(例えば、CryoLife社のBioGlue(商標)などの粘着剤)を使用して血管に結合されている。いくつかの実施例では、外側支持構造30は、粘着剤を使用して血管心房組織に結合された材料(例えば、フェルト材料)を含む。例示的な固定デバイス10では、外側支持構造30の内面32は、固定デバイス10と患者の解剖学的構造40との間の把持を改善するためのテクスチャ加工された表面及び/又はコーティングを含む。テクスチャ加工された表面及び/又はコーティングはまた、外側支持構造30と患者の解剖学的構造との間の組織の内方成長を可能にすることができる。内側支持構造20の外面22はまた、患者の解剖学的構造40との把持を改善し、及び/又は内側支持構造20と患者の解剖学的構造40との間の組織の内方成長を可能にするためのテクスチャ加工された表面及び/又はコーティングを含むことができることが企図される。例示的なテクスチャ加工された表面は、フロック加工された表面、レーザーエッチングされた表面、堆積されたテクスチャ材料、内側及び/又は外側支持構造20、30の表面上に堆積された粘着剤、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0028】
外側支持構造30は、患者の解剖学的構造の外側に、例えば、円周方向において患者の血管の外面の周りにぴったりと適合するように寸法決定及び構成されている。いくつかの例では、外側支持構造30は、半径方向内向きの力を提供せず、患者の解剖学的構造40は、内側支持構造20の半径方向外向きの力によって外側支持構造30に固着されている。他の例では、外側支持構造30は、内側支持構造20と外側支持構造30との間で患者の解剖学的構造40を圧縮するための半径方向内向きの力を提供する。更なる例では、内側支持構造20が外向きの力を提供すると共に、外側支持構造30が、固定デバイス10の隣接する層の間に患者の解剖学的構造40を固着するための内向きの力を提供する。
【0029】
外側支持構造30は、患者の解剖学的構造40の外面(例えば、血管の外面)にぴったりと適合するように寸法決定及び構成されている。いくつかの例では、外側支持構造30は、1mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mmの例示的な値を含む、1mmから100mmの範囲の直径を有する。なお更なる態様では、直径は、前述の値のいずれかの間の任意の値を有し得る。例えば、直径は、15mm~50mm、50mm~100mmの間(及び数値自体を含む)であり得る。
【0030】
外側支持構造30は、患者の解剖学的構造(例えば、血管)の周りにぴったりと適合するように構成されているが、外側支持構造30が内側支持構造20から除去されかつ/又は内側支持構造20上で位置付け直されることを可能にする材料から構成され得る。例えば、以下に記載されるように、外側支持構造30は、より大きな直径に伸長し、最初の未拡張直径に向かって収縮するように構成された、エラストマーポリマー材料を含むポリマー材料から構築され得る。外側支持構造30は、外側支持構造30が弱化された構造に沿って引き裂かれるか、又は伸長したりすることを可能にする、スコアライン及び/又はエッチングなどの弱化構造を更に含むことができる。外側支持構造30は、外側支持構造30の周囲に離間された複数の弱化構造を含むことができる。使用中、外側支持構造30は、内側支持構造20に対応する位置において患者の解剖学的構造40の上に位置付けられる。内側及び/又は外側支持構造20、30を位置付け直すか又は除去する必要がある場合、医師は、弱化構造/スコアラインに沿って外側支持構造30を引き裂くか、又は伸長させ、患者の解剖学的構造40から外側支持構造30を除去することができる。
【0031】
患者の解剖学的構造の隣接する部分を接合し、例えば、患者の血管の隣接するセグメント間に人工器官デバイス50をリンクするために固定デバイス10が使用され得るように、固定デバイス10が、人工器官デバイス50の両端に結合された固定構造(すなわち、内側及び外側支持構造20、30)を含むことが企図される。
【0032】
例えば、固定デバイス10は、人工器官デバイス50の近位端52に結合された第1の内側支持構造20a及び外側支持構造30aと、人工器官デバイス50の遠位端53にある第2の内側支持構造20b及び外側支持構造30bと、を含む。第2の内側支持構造20b及び外側支持構造30bは、第1の内側支持構造20a及び外側支持構造30aと同様の設計及び機能を含むことができる。例えば、第2の内側支持構造20bは、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造(例えば、半径方向に拡張するステント)を含むことができる。第2の外側支持構造30bは、円周方向において第2の内側支持構造20bの周りに位置付けられている。人工器官デバイス50の遠位端54は、第2の内側支持構造20b及び/又は第2の外側支持構造30bのいずれかに結合され得る。人工器官デバイス50の近位端52の固定構造と同様に、第2の内側及び外側支持構造20b、30bは、患者の解剖学的構造40の第2の部分(例えば、患者の血管の第2の開口部)を第2の内側支持構成20bと第2の外側支持構造30bとの間に受け入れるように寸法決め及び構成されており、それによって、患者の解剖学的構造40のこの部分(例えば、血管)は、内側支持構造20bと外側支持構造30bとの間に固定的に固着されている。例えば、拡張構成において、第2の内側支持構造20bは、第2の内側支持構成20bと第2の外側支持構造30bとの間に特許の解剖学的構造40の第2の開口部を固定する、第2の外側支持構造30bの内面に向かう半径方向外向きの力を提供する。
【0033】
一般に、内側支持構造20及び外側支持構造30は、生物学的に不活性な材料から構築されている。例えば、内側支持構造20及び/又は外側支持構造30は、金属(例えば、ステンレス鋼、ニチノール)及びポリマー(例えば、ポリエチレン、Teflon(登録商標))のうちの少なくとも1つから構築されている。いくつかの例では、外側支持構造30は、接着剤で強化されたフェルト材料から構築されている。
【0034】
いくつかの例では、内側支持構造20は、磁性材料から構築されており、かつ/又は外側支持構造30に磁気的に引き付けられる磁性要素を含む。代替的に、外側支持構造30は、磁性材料から構築され得、及び/又は内側支持構造20に磁気的に引き付けられる磁性要素を含む。
【0035】
上述のように、例示的な人工器官デバイス50は、グラフト材料及び/又は他の人工器官生体導管を含む。ある特定の例では、人工器官デバイス50は、血管グラフトを含む。人工器官デバイス50は、生体適合性合成材料から構成されている。生体適合性合成材料の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル(例えば、Dacron(登録商標)、Gortex(登録商標))、シルクフィブロイン、ポリウレタン、及び/又は生体導管用の代替として好適である当技術分野で既知の任意の他の材料が挙げられる。
【0036】
いくつかの例では、吻合固定デバイス10では、人工器官デバイス50に、密封を促進し、かつ/又は感染を予防するための材料が含浸されている。例えば、含浸材料は、患者の血管構造と人工器官デバイス50との間の密封を促進するための密封剤(例えば、ゼラチン、コラーゲン)を含むことができる。追加的/代替的に、含浸材料は、細菌感染を阻害する添加剤(例えば、抗生物質、消毒剤)を含むことができる。ある特定の例では、人工器官デバイス50は、ゼラチン含浸された織物ポリエステル血管グラフトである。
【0037】
大動脈及び他の血管手術のための例示的な無縫合吻合固定デバイス10の使用を以下に説明する。上記で説明したように、本明細書に記載の吻合固定デバイスの使用は、上行大動脈の解離及び大動脈瘤の切除などの複雑な手術の転帰を改善する迅速な止血吻合技術を可能にする。標的患者の解剖学的構造は、例えば、動脈セグメント、静脈セグメント、及び/又は心房構造を含む患者の血管を含む。標的患者の解剖学的構造は、胆管、尿管、又は卵管などの任意の他の生体導管を含み得ることが更に企図される。患者の解剖学的構造内に固定デバイス10を位置付けるための方法は、患者の血管を参照して説明されるが、人工器官デバイス50を任意の他の生体導管に接続するために同様の方法が使用され得る。
【0038】
まず、例えば、特許の血管を切断することによって、患者の血管に開口部が形成される。患者の血管の測定された直径に対応する直径を有する内側及び外側支持構造20、30を識別するために血管の直径が測定され得る。
【0039】
固定デバイス10及び対応する人工器官デバイス50は、固定デバイス10を患者の血管の開口部において治療部位まで前進させることによって、患者の解剖学的構造に結合される。内側支持構造20は、患者の血管の開口部内において未拡張構成で前進させられる。外側支持構造30は、患者の血管の外面(開口部に隣接する)に隣接して、内側支持構造20に対応する位置に位置付けられている。
【0040】
いくつかの例では、固定デバイス10を位置付けるために牽引ステッチが使用される。例えば、牽引ステッチは、患者の血管内に配置されており、例えば、血管の周りの様々な周方向位置に単一又は複数のステッチが配置されている。図2及び図4に示されるように、外側支持構造30は、外側支持構造30の外面から内面に延在するウィドウ38を含む。外側支持構造30は、単一の窓38、又は円周方向において外側支持構造30の周りに離間された複数の窓38を含むことができる。いくつかの実施例では、窓38は、円形又は直線形状の開口部を備える。更なる例では、窓38は、外側支持構造30の端部から人工器官デバイス50に向かって延びる長手方向に延びる開口スロットを備える。患者の血管の開口部内に内側支持構造20及び/又は外側支持構造30を位置付けることは、窓38内に牽引ステッチを位置付けること、又は他の方法で牽引ステッチを着座させることを含む。例えば、血管が大動脈を含むとき、大動脈が内側及び外側支持構造20、30内にうまく着座されていることを確実にするために、牽引ステッチが大動脈上に配置される。牽引ステッチは、固定デバイス10が患者の血管に固着された後に除去され得る。
【0041】
内側支持構造20及び外側支持構造30が位置付けられると、内側支持構造20は、内側支持構造20が外側支持構造30の内面32に対して半径方向外向きの力を提供するように、拡張構成に向かって半径方向に拡張される。結果として、患者の血管の一部は、外側支持構造30の内面32と内側支持構造20の外面22との間に固着される。いくつかの実施例では、外側支持構造30は、患者の血管の外面を把持するテクスチャ加工された内面を含む。
【0042】
血管が大動脈を含む実施例では、外側支持構造30を患者の血管の外面に隣接して位置付けることは、外側支持構造30の内面32を大動脈の外膜に隣接して位置付けることを含む。内側支持構造20を半径方向に拡張すると、内側支持構造20と外側支持構造30との間に大動脈組織が固着される。
【0043】
上記で説明したように、固定デバイス10は、患者の解剖学的構造の隣接する部分を接合し、すなわち、人工器官デバイス50を患者の血管の隣接するセグメント間にリンクするために固定デバイス10が使用され得るように、固定構造(内側及び外側支持構造20、30)を人工器官デバイス50の両端に含む。したがって、固定デバイス10は、人工器官デバイス50の近位端52に設けられた第1の内側及び外側支持構造20a、30aと、人工器官デバイス50の遠位端54に設けられた第2の内側及び外側リング20b、30bと、を含む。上記で説明したように、近位端52における固定構造が最初に、患者の解剖学的構造に結合される。次いで、患者の血管40における第2の開口部内で未拡張構成の第2の内側支持構造20bを前進させることによって、人工器官デバイス50の遠位端54における固定構造が患者の血管に結合される。第2の外側支持構造30bが、患者の血管の外面に隣接して位置付けられる。次いで、第2の内側支持構造20bが、第2の外側支持構造30bの内面32に対して半径方向外向きの力を提供するように、第2の内側支持構造20bが、拡張構成に向かって半径方向に拡張される。結果として、患者の血管の第2の部分が、第2の外側支持構造30bの内面32と第2の内側支持構造20bの外面22との間に固定される。
【0044】
内側支持構造20a、20bが、患者の血管の内面に対して手動で半径方向に拡張される。いくつかの実施例では、内側支持構造20a、20bを半径方向に拡張することは、内側支持構造20a、20bの中央内腔内にバルーン拡張デバイスを位置付け、バルーンを膨張させて内側支持構造20a、20bを拡張することを含む。内側支持構造20a、20bが血管に接触して固着され、血管が外側支持構造30a、30bに接触して固着された後、バルーン拡張デバイスが、収縮させられ、内側支持構造20a、20b及び患者の血管から離れるように移動させられる。いくつかの実施例では、バルーン拡張デバイスは、内側支持構造20a、20b及び/又は外側支持構造30a、30bに結合される。例えば、バルーン拡張デバイスが、内側及び/又は外側支持構造20、30に結合され、支持構造が、治療部位において患者の解剖学的構造内に位置付けられると、これに応じて、バルーン拡張デバイスは、内側支持構造20a、20bを拡張するように位置付けられる。更なる実施例では、バルーン拡張デバイスは、内側及び/又は外側支持構造20、30から分離される。
【0045】
例示的なプロセスでは、患者の血管の一部分を外側支持構造30a、30bと内側支持構造20a、20bとの間に固着すると、内側支持構造20a、20bと血管と外側支持構造30a、30bとの間に液密シールが形成される。内側支持構造20a、20bと血管と外側支持構造30a、30bとの間のシールは、人工器官デバイス50を通して流体(例えば、生理食塩水、血液)を流すことによって試験される。例えば、人工器官デバイス50の上流のクランプが解放され、固定デバイス10/人工器官デバイス50を通して血液が流される。固定デバイスでの漏れが判定された場合、すなわち、内側支持構造20a、20bと血管と外側支持構造30a、30bとの間の液密シールが存在しない場合、クランプが再適用され、外側支持構造30a、30bに向かって内側支持構造20a、20bによって加えられる半径方向外向きの圧力を増加させるように、内側支持構造20a、20bが追加的に拡張される。例えば、バルーンの追加的な膨張は、完全な止血を達成するために内側支持構造20a、20bを更に拡張するために用いられ得る。
【0046】
図8は、別の例による、人工器官固定デバイス10を有する患者の概略図を示す。この例では、人工心臓デバイス50は、人工心臓弁、心臓支援ポンプ、人工心臓のうちの少なくとも1つを含む。例えば、図8に提示されるように、人工器官デバイス50は、全人工心臓の心房カフである。
【0047】
図8の固定デバイスは、図1~7の固定デバイスと同様の構造及び材料を含む。同じ要素番号は、同じ構造を識別するために使用される。図1~7の固定デバイスと図8のデバイスとの間の違いは、以下により詳細に提示される。
【0048】
図8の固定デバイス10は、人工器官デバイス50(すなわち、心房カフ)に結合された内側支持構造20と、内側支持構造20の周りに位置付けられた外側支持構造30とを含む。上記のデバイスと同様に、内側支持構造20は、未拡張構成と拡張構成との間で半径方向に移動可能な拡張可能構造を備える。拡張構成において、内側支持構造20は、患者の解剖学的構造に対して、及び外側支持構造30の内面32に向かって半径方向外向きの力を提供する。内側及び外側支持構造20、30は、患者の心臓組織(例えば、心房)の一部分を受け入れるように寸法決定及び構成されている。したがって、拡張構成において、患者の心房のこの部分は、外側支持構造30の内面32と内側支持構造22の外面22との間に固着されている。
【0049】
内側支持構造20及び外側支持構造30は各々、それを通って延びる対応する中央内腔を含む環状形状を有する。いくつかの例では、内側及び外側支持構造20、30の各々の中央内腔の断面形状は、心房の断面形状(例えば、横断面の断面形状)に対応する。
【0050】
拡張構成において、内側支持構造20は、患者の心房内にぴったりと適応するように寸法決定及び構成されている。内側支持構造20の直径/幅は、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mmの例示的な値を含む、20mm~100mmの範囲である。なお更なる態様では、直径/幅は、前述の値のいずれかの間の任意の値を有し得る。例えば、直径は、20mm~70mm、30mm~70mmの間(及び数値自体を含む)であり得る。図8に示されるように、拡張構成の内側支持構造20の長さは、外側支持構造30の長さよりも大きい。他の例では、拡張構成の内側支持構造20の長さは、外側支持構造30の長さに対応する。
【0051】
大動脈手術及び全人工心臓の移植のための例示的な無縫合吻合固定デバイス10の使用を以下に説明する。上述のように、本明細書で説明する吻合固定デバイスを使用すると、全人工心臓の心房カフへの天然の心房の吻合部を形成するための迅速な止血技術が可能になる。
【0052】
最初に患者の心房に開口部が形成され、例えば、開放心房を露出させるために心臓が除去される。開口部の直径及び/又は幅が、対応する直径及び/又は幅を有する内側及び外側支持構造20、30を識別するために測定される。
【0053】
固定デバイス10及び対応する人工器官デバイス50は、固定デバイス10を患者の心房内の開口部の治療部位に前進させることによって、患者の心房に結合される。内側支持構造20は、内側支持構造20の外面22が心房の内面に隣接するように、開口部内において未拡張構成で前進させられる。外側支持構造30は、心房組織が内側支持構造20と外側支持構造30との間に位置付けられるように、内側支持構造20に対応する位置で、心房の外面32に隣接して位置付けられる。
【0054】
いくつかの例では、固定デバイス10を位置付けるために牽引ステッチが使用される。例えば、牽引ステッチは、心房内に配置され、例えば、単一又は複数のステッチは、心房の周りの様々な円周位置に配置され得る。外側支持構造30は、外側支持構造30を通って延びるウィドウ38を含む。上記で説明したように、外側支持構造30は、円周方向において外側支持構造30の周りに離間された単一の窓38又は複数の窓38を含むことができる。患者の心房の開口部内に内側支持構造20及び/又は外側支持構造30を位置付けることは、窓38内に牽引ステッチを位置付けるか、又はそれ以外の方法で着座させることを含む。
【0055】
内側支持構造20及び外側支持構造30が位置付けられると、内側支持構造20は次いで、内側支持構造20が心房及び外側支持構造30の内面32に対して半径方向外向きの力を提供するように、拡張構成に向かって半径方向に拡張される。結果として、患者の心房の一部は、外側支持構造30の内面32と内側支持構造20の外面22との間に固着される。いくつかの例では、内側及び/又は外側支持構造20、30は、心房組織との把持を改善するためのテクスチャ加工された表面を含む。
【0056】
いくつかの実施例では、内側支持構造20を半径方向に拡張することは、患者の心房の内面に対して内側支持構造20を手動で拡張することを含む。
【0057】
いくつかの実施例では、内側支持構造20を半径方向に拡張することは、バルーン拡張デバイスを内側支持構造20の中央内腔内に位置付け、バルーンを膨張させて内側支持構造20を拡張することを含む。内側支持構造20が心房に固着され、心房が外側支持構造30に固着された後、バルーン拡張デバイスが収縮され、内側支持構造20及び患者の心房から除去される。
【0058】
例示的なプロセスでは、患者の心房の一部分を外側支持構造30と内側支持構造20との間に固着すると、内側支持構造20と心房と及び外側支持構造30との間に液密シールが形成される。内側支持構造20と心房と外側支持構造30の間のシールは、人工器官デバイス50を通して流体を流すことによって試験される。例えば、閉塞器が心房カフの中央内腔に導入される。フォーリーカテーテルが人工器官デバイスの上流に前進させられ、膨張させられて肺静脈を通る/からの血流を閉塞する。液体(例えば、血液、生理食塩水)が心房カフの中央内腔に提供され、内側及び外側支持構造20、30の周りの漏れが判定される。
【0059】
固定デバイスにおける漏れが判定された場合、すなわち、内側支持構造20と心房と外側支持構造30との間に液密シールがない場合、内側支持構造20は、外側支持構造30に向かって内側支持構造20によって加えられる半径方向外向きの圧力を増加させるように追加的に拡張される。例えば、バルーンの追加の膨張は、完全な止血を達成するために内側支持構造20を更に拡張するために用いられ得る。
【0060】
本発明のいくつかの実施例が前述の明細書に開示されているが、前述の説明及び関連する図面で提示される教示の利益を有する、本発明が属する本発明の多くの修正形態及び他の実施例が想起されることが当業者によって理解される。したがって、本発明は、上記に開示される特定の実施例に限定されるものではないこと、並びに多くの修正形態及び他の実施例が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解される。更に、特定の用語が本明細書、並びに以下の特許請求の範囲で用いられているが、それらは、一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、説明された発明又は以下の特許請求の範囲を限定する目的では使用されていない。したがって、我々は、これらの特許請求の範囲の範囲及び趣旨内にあるすべてのものを我々の発明として主張する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】