(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】CGPの動物、真菌及び海洋供給源、並びに疾患管理のための、並びに非神経学的及び/又は神経学的状態の治療のための増大したCGP濃度
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20241203BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20241203BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20241203BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20241203BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241203BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241203BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241203BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241203BHJP
A61K 36/03 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K35/60
A61K35/32
A61K38/39
A61P9/12
A61P9/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/00
A61K36/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536390
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 NZ2022050172
(87)【国際公開番号】W WO2023113623
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524228797
【氏名又は名称】ザ シージーピー ラボ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グアン,ジャン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA02
4C084BA24
4C084BA44
4C084CA05
4C084CA07
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4C084MA37
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4C087MA41
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4C087MA55
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4C087ZA02
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA36
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4C088AA13
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4C088NA14
4C088ZA02
4C088ZA15
4C088ZA16
4C088ZA36
4C088ZA42
(57)【要約】
IGF-1機能の分析、調整に関する改善、並びに非神経学的及び/又は神経学的状態の疾患管理におけるその適用が本明細書に記載される。より詳細には、IGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクの予測及び回復のための血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)及び/又はcGP/IGF-1モル比の臨床適用に関する方法、並びにそれを治療するための、GP含有動物、海洋又は真菌ベースの材料、例えば加水分解されたウシコラーゲン及び海洋コラーゲン、キノコ及び海藻の濃縮物/抽出物を、植物ベースのcGPMAX(商標)と共に使用すること。本方法は、cGP及びcGP/IGF-1モル比を、cGP及びcGP/IGF-1モル比(したがって活性IGF-1濃度)を調整及び正常化する手段と共に間接的に使用して、IGF-1機能をインビボでより正確に測定し、ベースラインデータの標準セットに対するより低いcGPレベル、又はcGPレベルの低下を有する個体のための特定の治療方法。ウシコラーゲンで処方されたcGPMAX(商標)の補充は、糖尿病性神経症を有する患者の感覚機能を効果的に改善した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法であって:
a)前記動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)前記生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定する工程;
c)前記生物学的検体における前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量とのモル比のいずれかを標準と比較して、一連の結果において、前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比が、前記個体のIGF-1機能を推定するための前記相対標準と一致するか否かを確認する工程;並びに
d)治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物を前記動物に投与して:
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1とのモル比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1とのモル比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1とのモル比を増大させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
変化したIGF-1機能を伴う血漿バイオマーカーとしての環状グリシンプロリン(cGP)を使用する、動物における年齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法であって:
a)前記動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)前記動物の第1設定年齢、又は前記非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又は治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物による前記動物への治療前に、前記生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定する工程;
c)前記動物のさらなる設定年齢間隔、又は前記非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又は前記治療有効量の、前記動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物による前記動物の治療後に、前記生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を再測定する工程;並びに
d)前記設定年齢間隔における前記生物学的検体における前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量とのモル比のいずれかを、前記第1設定年齢、又は前記IGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態の前記初期段階、又は前記治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来の前記cGPの濃縮物/抽出物による前記動物への前記治療前と比較して、一連の結果において、前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量とのモル比に変化があるか否かを確認し、それにより前記動物がベースラインデータの標準セットに対する認知低下から非神経学的及び/又は神経学的状態を発症する増大したリスクにあるか否かを決定し、上記の前記測定された比を用いて前記cGP治療のための個々の患者及び前記患者におけるcGP治療に適した投与量を選択する工程
を含む、方法。
【請求項3】
IGF-1機能の血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)及びcGP/IGF-1モル比を使用する、IGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態を有する動物の自発的回復を予測する方法であって:
a)前記動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)前記非神経学的及び/又は神経学的状態の発症(急性状態において<72h)から前記動物のベースラインにおいて前記生物学的検体における環状グリシン-プロリン(cGP)血漿バイオマーカーの濃度及び活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティを測定する工程;
c)回復中の前記動物のさらなる一定間隔において、前記生物学的検体における前記環状グリシン-プロリン(cGP)血漿バイオマーカーの濃度及び活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティを再測定する工程;
d)前記ベースラインから、及びさらなるセット間隔において、前記動物の機能回復を評価する工程
を含み、
一連のデータからのCGPの前記ベースライン濃度は、ベースラインcGP濃度が高いほど、機能回復の前記評価に基づいて前記動物の予後がより良好であるように、前記動物の非神経学的及び/又は神経学的状態の回復の短期結果を予測する、方法。
【請求項4】
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1とのモル比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1とのモル比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させる
ために処方される医薬の製造における動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物の使用。
【請求項5】
それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を寛解させ及び/又は治療するために経口投与用に処方される医薬の製造における動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物の使用。
【請求項6】
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1とのモル比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の(正常な/生理学的)濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1とのモル比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1とのモル比を増大させ又は正常化する
ために動物に投与されるように処方される、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPを含む濃縮物/抽出物。
【請求項7】
それを必要とする患者における高血圧及び/又は脳卒中の影響を寛解させ;及び/又は高血圧及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧及び/又は脳卒中に関連した症状を低減する方法であって、前記方法は、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物を投与することを含む、方法。
【請求項8】
それを必要とする患者におけるパーキンソン病又はパーキンソン病に関連した症状、又は認知障害に関連した合併症の影響を寛解させ及び/又は治療する方法であって、前記方法は、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物を投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記非神経学的及び/又は神経学的状態又は疾患は、脳血管発作若しくは脳卒中、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、血管性認知症、レット症候群、脳振盪、高血圧及びその関連する脳合併症、パーキンソン病及び/又は任意の他の老化関連の状態若しくはIGF-1欠乏関連状態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
投与は、疾患又は状態の結果としてのcGP濃度の低下を停止させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
投与は、cGP濃度を、cGP抽出物投与のない前記患者で測定されるであろうものに対して少なくとも1%増大させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記動物はヒトである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記動物は健康である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記動物は、既存の状態又は病状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
標準又はベースラインは、患者について収集されたデータのセットに基づく、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記標準又はベースラインは、集団について収集されたデータのセットに基づく、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬は、経口投与用に処方される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬は、非経口投与用に処方される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬は、丸剤、錠剤、カプセル剤、液体、粉末、微粉化粉末、ジェル、液体で満たされたソフトジェル及び/又はそれらの組み合わせとして処方される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記微粉化粉末の粒子サイズは、実質的に1~1000ミクロンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬は、一日用量として少なくとも10,000~100,000ng(10~100μg)の濃縮cGPの治療有効用量を提供するように投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
cGP抽出物補充後に脳脊髄液(CSF)中のcGPの少なくとも25%の増加が存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
高濃度のcGPを有する前記濃縮物/抽出物は、ウシ、海洋及び骨コラーゲン供給源のいずれかから選択される任意の生命体を含む、任意の動物、海洋及び/又は真菌供給源に由来する、請求項4~6のいずれか一項に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項24】
前記抽出物の加水分解プロセスは、コラーゲン/ゼラチンタンパク質を切断し、加水分解されたプロリン-グリシンの反復配列を有する線状ペプチドを形成し、これらの線状ペプチドの環化は、IGF-1機能を正常化するためにcGPの生成をもたらす、請求項4~6のいずれか一項に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項25】
前記濃縮物/抽出物は、加水分解されたウシコラーゲン粉末、コラーゲン海洋皮膚粉末、加水分解された魚類皮膚粉末及び/又は骨コラーゲンである、請求項23に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項26】
前記濃縮物/抽出物は、皮膚、タンパク質、骨、筋肉、腱など及び/又はそれらの組み合わせから選択される身体部分を使用して加工及び生成される、請求項4~6のいずれか一項に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項27】
前記濃縮物/抽出物は、動物、海洋及び/又は真菌材料の浸漬、及びその後乾燥して濃縮粉末を形成し、これを微粉化することによって生成される、請求項26に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項28】
前記微粉化粉末は、ソフトジェル及び/又はハードシェルに封入される、請求項27に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項29】
前記濃縮物/抽出物ブレンドは、一日用量として少なくとも10,000ng以上を提供する濃度の環状グリシン-プロリン(cGP)を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項30】
前記濃縮物/抽出物は、組み合わせて又は別々に、IGF-1の結合に対する観察されたインビボでの効果、並びに観察されたcGP濃度及び/又はcGPと総IGF-1との比の増大に起因する、請求項4~6のいずれか一項に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項31】
前記濃縮物/抽出物は、cGP以外の他の生理活性化合物を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項32】
コラーゲン及びゼラチン(コラーゲンの加熱形態)は、グリシン-ヒドロキシプロリンアミノ酸配列が多く、コラーゲン/ゼラチンの前記分解は、有意な量のcGPを形成する、請求項4~6のいずれか一項に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項33】
ゼラチン分解によるcGPの形成は、より低いpH及びより高い温度に依存する、請求項32に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項34】
ソフトジェルカプセル中のカプセル化(capsulisation)後のcGP濃度の増大は、0.1ng/mgから10ng/mgである、請求項32又は請求項33に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項35】
コラーゲンと35℃で2週間インキュベートした濃縮物は、前記cGP濃度を40ng/mgから120ng/mgに増大させる、請求項32~34のいずれか一項に記載の濃縮物/抽出物。
【請求項36】
cGP抽出材料の投与のためにcGP抽出材料を封入するのに使用され、そこに含まれる前記抽出材料のcGP濃度を経時的に増大させる、ソフトジェル又はハードシェルカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
IGF-1機能の分析、調整に関する改善、並びにその非神経学的及び/又は神経学的状態の疾患管理における適用が本明細書に記載される。より詳細には、IGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクの予測及び回復のための環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの臨床適用に関する方法、並びにそれを治療するための、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料、例えば加水分解されたウシ及び海洋コラーゲン、キノコ及び海藻の濃縮物/抽出物をソフトジェルカプセルに封入されたcGPと共に使用すること。
【背景技術】
【0002】
背景技術
インスリン様増殖因子-1(IGF-1)は、内分泌ホルモンとして生成されるタンパク質である。これは、成長ホルモンの効果の主要なメディエーター(エフェクター)であり、身体内のほぼ全ての細胞の身体成長を刺激する。成長効果に加えて、IGF-1は神経細胞及び細胞DNA合成も調節することができる。
【0003】
これはまた神経栄養因子であり、多様な神経細胞機能、例えば認知機能において重要な役割を有する。IGF-1は生涯にわたって生成されるが、乳児(特に新生児)では最も低く、成人期に増加し、年齢と共に減少する。IGF-1機能の測定は、年齢による認知低下のバイオマーカーであり、次いで薬物治療などの介入が有用であり得るか否か、及びそのような治療をいつ開始するかを知るために使用され得る。IGF-1レベルは乳児では低い。しかしながら、IGF-1機能は、乳児の脳の発達中に重要な役割を果たし、その後の人生における脳機能に影響する。
【0004】
しかしながら、血漿IGF-1濃度は、IGF-1の直接測定が、ある程度の信頼をもって使用することができない一貫性のない結果を提供するので、IGF-1機能に関する歴史的に不十分なバイオマーカーであった。例えば歴史的な使用は、成長ホルモン欠乏及び異常な成長パターンについてのスクリーニング検査としての血中のIGF-1の試験であり得るが、結果は主に総IGF-1の誘導であり、活性IGF-1の具体的な尺度ではない。
【0005】
直接IGF-1測定の一貫性のない結果は、大部分のIGF-1がインビボで不活性であることに起因し得ることが理解される。重要なことは、それが活性部分であることである。血漿中では、95%を超えるIGF-1がIGF-結合タンパク質-3(IGFBP-3)に結合し、一旦結合するとIGF-結合タンパク質-3はIGF-1機能性受容体の活性化を防止する。したがって、IGF-1を直接測定した場合、活性及び不活性形態の間の区別がなく、したがってIGF-1のインビボでの実際の活性量は分からず、活性部分は関心対象のバイオマーカーである。
【0006】
IGF-1/IGFBP-3の比は、未結合の生理活性IGF-1を示す代替物として使用できるが、実際には、この比もまた、大部分のIGFBP-3がIGF-1に結合しないため、明確な指標を提供しない。
【0007】
理解し得るように、IGF-1の代替的な尺度は、IGF-1機能を追跡する手段として有益であり得、したがって患者の健康のバイオマーカーとしての尺度としてこれを使用することは有益であり得る。例えば、IGF-1の代謝物である環状グリシン-プロリン(cGP)は、血漿中のIGF-1のバイオアベイラビリティの改善/正常化を介して神経保護的である。
【0008】
IGF-1レベルの理解に対応して、患者の自然免疫を調整又は支持し、それらのIGF-1活性部分を増大させることによって系を修復することが所望され得る。
【0009】
さらに、IGF-1は、多様な動物機能(そのうちの1つは年齢関連の神経変性機能である)に密接に関連しているため、関連する変化を測定する方法、及び様々な関連状態を治療、寛解又はその治癒を加速させる方法の両方は有用であり得る。
【0010】
ヒトの身体は、傷害及び疾病から自身を保護する能力を有し、例えば我々のホルモン系がより活性となる。しかしながら、我々の回復を助ける能力は、より良好な回復を達成するには、特に高齢者において年齢に伴うホルモンの漸進的な低下により、常に有効であるとは限らない。脳卒中は若者及び高齢者の集団で生じる。より若い脳卒中患者は、急速且つより良好に回復することができるが、より高齢の患者の回復は遅く、且つ不十分であり得る。IGF-1機能も脳卒中回復に重要である。したがって、脳卒中におけるIGF-1機能の信頼できるバイオマーカーは脳卒中又は他の神経学的状態の予後に使用することができ、さらには脳卒中回復の能力を予測する方法は、個々の患者の臨床管理を設計する上で助けになり得る。しかしながら、上記のように、血漿IGF-1又はIGF-1/IGFBP-3比は信頼できるバイオマーカーではない。したがって、脳卒中患者の自発的回復を補助するために環状グリシン-プロリン(cGP)をIGF-1機能のバイオマーカーとして使用すること、及びその治療方法が有用であることが見出された。
【0011】
血液循環中のIGF-1の重要な機能は、内皮細胞の生成プロセスである血管リモデリングを維持すること、及び毛細血管ネットワークを形成することである。毛細血管の機能は、生理学的機能を維持するために、栄養素を組織(細胞)に送達し、組織(細胞)から代謝廃棄物を除去することである。研究結果は、血管疾患、例えば高血圧、脳卒中及び認知障害においてIGF-1の機能を調節することによって、cGPが血管リモデリングを改善する証拠を確立した。
【0012】
cGPの健康上の利点は周知であり、これはクロスグリを含む天然植物中で同定されており、ゼラチンハードシェルに封入されたクロスグリアントシアニン(BCA)の濃縮物/抽出物は、治療効果に利用されている。
【0013】
年齢に関連する状態として、パーキンソン病(PD)は2番目に多い神経変性状態である。IGF-1は神経栄養因子であり、神経細胞の生存及び脳機能の維持に重要な役割を果たす。循環及び/又は脳組織中のIGF-1の増加、並びにIGF-1機能の障害により特徴付けられるIGF-1抵抗性は、PD及びアルツハイマー病(AD)患者における神経障害及び認知低下に関連することが報告されている。上記のように、血清中のIGF-1濃度の変化は、PDの予後及び治療応答を監視するために使用されるIGF-1機能障害のバイオマーカーとして使用されているが、これはまだ議論の余地がある。液果類の大量の消費は、PDのより低いリスクに関連すると報告されているが、この推定上の利益の根底にある機構は不明のままである。
【0014】
しかしながら、植物中のcGPの濃度は比較的低く、ゼラチンソフトジェル/ハードシェルに封入された後に増大する。ゼラチンソフトジェル/ハードシェルは、cGPのさらなる供給源であるが、ゼラチンに封入されたクロスグリ抽出物の臨床適用は、一般的な健康を支持及び管理するのに十分であり得るが、老化に関連した健康問題には十分ではない。にもかかわらず、有効なバイオアベイラビリティを確実にするために、cGPを他の供給源から、より高いcGP濃度で獲得することは有用であろう。
【0015】
IGF-1機能の分析、調整、並びに、cGP由来供給源の増大した濃度に由来する、IGF-1機能障害に起因する非神経学的及び/又は神経学的状態の疾患管理に関する改善のさらなる態様及び利点は、例としてのみ与えられる後続する記述から明らかとなるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
概要
IGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクの予測及び回復のためのcGP血漿バイオマーカーの臨床適用、並びにそれを治療するための、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料、例えば加水分解ウシコラーゲンの濃縮/抽出の使用に関する方法が本明細書に記載される。本方法は、cGP及びcGP/IGF-1比を、cGP及びcGP/IGF-1比(したがって活性IGF-1濃度)を調整する手段と共に間接的に使用して、IGF-1機能をインビボでより正確に測定し、ベースラインデータの標準セットに対するより低いcGPレベル、又はcGPレベルの低下を有する個体のための特定の治療方法。
【0017】
第1の態様では、動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法が提供され、方法は:
a)動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定する工程;
c)生物学的検体における測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比のいずれかを標準と比較して、一連の結果において、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比が、個体のIGF-1機能を推定するための相対標準と一致するか否かを確認する工程;並びに
d)治療有効量の、動物、海洋、海藻、及び/又は真菌ベースの材料に由来するcGPの濃縮物/抽出物を動物に投与して:
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させる工程
を含む。
【0018】
第2の態様では、変化したIGF-1機能を伴う血漿バイオマーカーとしての環状グリシンプロリン(cGP)、及びバイオマーカー誘導による介入を使用する、動物における年齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法が提供され、方法は:
a)動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)動物の第1設定年齢、又は神経学的状態の初期段階、又は治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物による動物への治療前に、生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定する工程;
c)動物のさらなる設定年齢間隔、又は非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又は治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物による動物への治療後に、生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を再測定する工程;
d)設定年齢間隔における生物学的検体における測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比のいずれかを、第1設定年齢、又はIGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又は治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物による動物への治療前と比較して、一連の結果において、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比に変化があるか否かを確認し、それにより動物がベースラインデータの標準セットに対する認知低下から非神経学的及び/又は神経学的状態を発症する増大したリスクにあるか否かを決定し、上記の測定された比を用いてcGP治療のための個々の患者及び該患者におけるcGP治療に適した投与量を選択する工程
を含む。
【0019】
第3の態様では、IGF-1機能の血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)を使用する、IGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態を有する動物の自発的回復の能力を予測する方法が提供され、方法は:
a)動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)非神経学的及び/又は神経学的状態の発症(<72h)から動物のベースラインにおいて生物学的検体における環状グリシン-プロリン(cGP)血漿バイオマーカーの濃度及び活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティを測定する工程;並びに
c)回復中の動物のさらなる一定間隔において、生物学的検体における環状グリシン-プロリン(cGP)血漿バイオマーカーの濃度及び活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティを再測定する工程、
d)ベースラインから、及びさらなるセット間隔において、動物の機能回復を評価する工程
を含み、
一連のデータからのCGPのベースライン濃度は、ベースラインcGP濃度が高いほど、機能回復の評価に基づいて動物の予後がより良好であるように、動物の非神経学的及び/又は神経学的状態の回復の短期結果を予測する。
【0020】
第4の態様では、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させる
ために処方される医薬の製造における動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物の使用が提供される。
【0021】
第5の態様では、それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を寛解させ及び/又は治療するために、経口投与用に処方される医薬の製造における動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物の使用が提供される。
【0022】
第6の態様では、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の(正常な/生理学的)濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させ又は正常化する
ために動物に投与されるように処方される、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物を含む機能的特性が提供される。
【0023】
第7の態様では、それを必要とする患者における高血圧及び/又は脳卒中の影響を寛解させ;及び/又は高血圧及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧及び/又は脳卒中に関連した症状を低減する方法が提供され、方法は、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物を投与することを含む。
【0024】
第8の態様では、それを必要とする患者におけるパーキンソン病又はパーキンソン病に関連した症状、又は認知障害に関連した合併症の影響を寛解させ及び/又は治療する方法が提供され、方法は、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物を投与することを含む。
【0025】
第9の態様では、動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態の治療方法が提供され、方法は:
a)動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定する工程;
c)生物学的検体における測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比のいずれかを標準と比較して、一連の結果において、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比が、個体のIGF-1機能を推定するための相対標準と一致するか否かを確認する工程;並びに
d)治療有効量の、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の濃縮物/抽出物を動物に投与して:
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させる工程
を含む。
【0026】
第10の態様では、変化したIGF-1機能を伴う血漿バイオマーカーとしての環状グリシンプロリン(cGP)を使用する、動物における年齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法が提供され、方法は:
a)動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)動物の第1設定年齢、又は非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又は治療有効量の、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の濃縮物/抽出物による動物への治療前に、生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定する工程;
c)動物のさらなる設定年齢間隔又は非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又は治療有効量の、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の濃縮物/抽出物の治療後に、生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を再測定する工程;
d)設定年齢間隔における生物学的検体における測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比のいずれかを、第1設定年齢、又は非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又は治療有効量の、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の濃縮物/抽出物による動物への治療前と比較して、一連の結果において、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比に変化があるか否かを確認し、それにより動物がベースラインデータの標準セットに対する認知低下から非神経学的及び/又は神経学的状態を発症する増大したリスクにあるか否かを決定し、上記の測定された比を用いてcGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料治療のための個々の患者及び該患者におけるcGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料治療に適した投与量を選択する工程
を含む。
【0027】
第11の態様では、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させる
ために処方される医薬の製造におけるcGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の濃縮物/抽出物の使用が提供される。
【0028】
第12の態様では、それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を寛解させ及び/又は治療するために、経口投与用に処方される医薬の製造におけるcGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の使用が提供される。
【0029】
第13の態様では、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の(正常な/生理学的)濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させ又は正常化する
ために動物に投与されるように処方される、治療有効量の、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の濃縮物/抽出物を含む抽出物が提供される。
【0030】
第14の態様では、それを必要とする患者における高血圧及び/又は脳卒中の影響を寛解させ;及び/又は高血圧及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧及び/又は脳卒中に関連した症状を低減する方法が提供され、方法は、治療有効量の、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の濃縮物/抽出物を投与することを含む。
【0031】
第15の態様では、それを必要とする患者におけるパーキンソン病又はパーキンソン病に関連した症状、又は認知障害に関連した合併症の影響を寛解させ及び/又は治療する方法が提供され、方法は、治療有効量の、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料の濃縮物/抽出物を投与することを含む。
【0032】
第16の態様では、代謝障害及び関連する合併症、例えば2型糖尿病関連の末梢神経障害、腎臓機能不全、網膜症、及び毛細血管の不十分な機能による他の合併症の影響を寛解させ及び/又は治療する方法が提供される。
【0033】
第17の態様では、末期癌を含む癌の影響を寛解させ及び/又は治療する方法が提供される。
【0034】
第18の態様では、cGP抽出材料の投与のためにcGP抽出材料を封入するのに使用され、且つそこに含まれる抽出材料のcGP濃度を経時的に増大させる、ソフトジェル又はハードシェルカプセルが提供される。
【0035】
上記の利点は変動し得る。バイオマーカーに関連して、記述したようなcGPはIGF-1の安定な代謝物であり、本発明者らの作業に基づいて、動物から採取した生物学的検体中で容易に測定される。cGPは、不活性形態から活性形態を区別する点でIGF-1ほど可変性は有さず、したがって総IGF-1の測定よりも信頼できる。cGPの変化を測定し、及び/又は神経学的状態に対処する記載された方法に関連して、信頼できるバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の臨床適用の利点により、治療に適した患者の選択と個体の投与計画が可能となる。cGPの増大は神経学的状態のリスクを示し、cGPの低下は神経学的状態の段階を示す。有利には、治療に適した患者は、それらのcGPレベルに基づいて選択することができ、cGPレベルの変化は、調整又は個別化された治療投与計画のために容易にモニターすることができる。有利なことに、動物及び海洋組織由来のコラーゲン中のcGPの高い濃度は、植物ベースの材料の対応物よりも数千倍高いことが見出された。動物、海洋及び/又は真菌由来のより高濃度の生成物の補充は、非神経学的及び/又は神経学的状態のより速い有効な治療を可能にするため、投与計画を調整する際に非常に有利であり、この生成物は、身体が有効な濃度により速く到達することを助けるため、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中及び他のタイプの傷害などの急性状態の管理を改善又は支持する。
【0036】
そのような測定可能及び既知の方法での動物、海洋及び/又は真菌材料由来のcGPの使用は知られておらず、又は当技術分野で完成されていない。これらの供給源から抽出されたcGPは、既知の及び測定可能な方法で使用されていなかったが、目下可能であり、本明細書に記載される。実験結果は、有意且つ測定可能な利益を患者に提供することができ、また潜在的に既存の当技術分野の治療を妨げず、又は望まない副作用を生じることのないcGP抽出物の新たな又は少なくとも代替的な使用を示す。さらに、一般に天然産物及び関連する生理活性化合物に関連して、本明細書に記載される方法及び使用は、いつ治療に介入することが適切かを知る独自の方法を提供し、さらに、治療の成功又は不成功を測定する方法を提供する。このタイミング及び有効性への洞察は、多くの医薬品が目指すものであり、生理活性化合物を含有する天然産物中に一般に観察されないものである。
【0037】
本発明者らが予想外に見出したさらなる利点は、cGP抽出材料を封入するのに使用されるソフトジェルカプセルが、その中に含まれる抽出材料のcGP濃度を経時的に増大させることである。
【0038】
図面の簡単な説明
IGF-1機能障害に関連した非神経学的及び神経学的状態のリスクの予測及び回復のための環状グリシン-プロリン(cGP)血漿バイオマーカーの臨床適用、並びにそれを治療するためのcGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料、例えば加水分解ウシコラーゲン粉末の濃縮物/抽出物の使用に関する本方法のさらなる態様は、例としてのみ与えられる以下の記載から、及び添付の図面を参照して明らかとなるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】動物、真菌、海藻及び海洋生成物中のcGP(ng/mg)の相対濃度を示す;
【
図2】尿中のcGP濃度が100mgのウシコラーゲン粉末の経口消費の3時間後に有意に増大することを示す;
【
図3】尿cGP濃度と血漿cGP濃度との間の強い正の相関を示唆するピアソン相関分析を示す(r=0.78、p<0.001);
【
図4】ウシコラーゲンとブレンドされたcGPMAX(商標)の新しい製剤の経口補充後の改善された感覚消失を示す。反復測定分散分析は、感覚消失がcGPMAX(商標)の補充の3及び6ヶ月後に低下することを示唆した(p=0.0007)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
上記のように、非神経学的及び神経学的状態のリスクの予測及び回復のための環状グリシン-プロリン(cGP)血漿バイオマーカーの臨床適用、並びにそれを治療するためのcGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料、例えばウシコラーゲンの濃縮物/抽出物を、ソフトジェルカプセルに封入されたcGPと共に使用することに関する方法が本明細書に記載される。本方法は、cGPとcGP/IGF-IGFBP3の比を、cGPとcGP/IGF-1の比(したがって活性IGF-1濃度)を調整する手段と共に使用して、IGF-1を間接的にインビボでより正確に測定し、ベースラインデータの標準セットに対するより低いcGPレベル、又はcGPレベルの低下を有する個体のための特定の治療方法。
【0041】
本明細書の目的のために、用語「約(about)」又は「約(approximately)」及びその文法的バリエーションは、参照された量(quantity)、レベル、程度、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量(amount)、重量又は長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%まで変動する量、レベル、程度、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量又は長さを意味する。
【0042】
用語「実質的に」又はその文法的バリエーションは、少なくとも約50%、例えば75%、85%、95%又は98%を指す。
【0043】
用語「含む」及びその文法的バリエーションは、包括的な意味を有するものとし、即ち、それが直接参照するリストされた構成要素のみではなく、特定されていない他の構成要素又は要素も含むとして理解されるであろう。
【0044】
抽出物という用語は、原料からのcGPの抽出物として理解するべきであり、抽出物及び/又は濃縮物は、動物、海洋及び/又は真菌供給源から適切に抽出された場合、cGPの供給源又は担体であり得る。
【0045】
第1の態様では、動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法が提供され、方法は:
a)動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定する工程;
c)生物学的検体における測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比のいずれかを標準と比較して、一連の結果において、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比が、個体のIGF-1機能を推定するための相対標準と一致するか否かを確認する工程;並びに
d)治療有効量の、動物、海洋、海藻、及び/又は真菌ベースの材料に由来するcGPの濃縮物/抽出物を動物に投与して:
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させる工程
を含む。
【0046】
第2の態様では、変化したIGF-1機能を伴う血漿バイオマーカーとしての環状グリシンプロリン(cGP)を使用する、動物における年齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法が提供され、方法は:
a)動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)動物の第1設定年齢、又は神経学的状態の初期段階、又は治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物による動物への治療前に、生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定する工程;
c)動物のさらなる設定年齢間隔又は非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又は治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物による動物への治療後に、生物学的検体における活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティに関する血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を再測定する工程;並びに
d)設定年齢間隔における生物学的検体における測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比のいずれかを、第1設定年齢、又はIGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又は治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物による動物への治療前と比較して、一連の結果において、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度とIGF-1の総測定量との比に変化があるか否かを確認し、それにより動物がベースラインデータの標準セットに対する認知低下から非神経学的及び/又は神経学的状態を発症する増大したリスクにあるか否かを決定し、上記の測定された比を用いてcGP治療のための個々の患者及び該患者におけるcGP治療に適した投与量を選択する工程
を含む。
【0047】
第3の態様では、IGF-1機能の血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)を使用する、IGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態を有する動物の自発的回復を予測する方法が提供され、方法は:
a)動物から生物学的検体を獲得する工程;
b)非神経学的及び/又は神経学的状態の発症(急性状態において<72h)から動物のベースラインにおいて生物学的検体における環状グリシン-プロリン(cGP)血漿バイオマーカーの濃度及び活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティを測定する工程;
c)回復中の動物のさらなる一定間隔において、生物学的検体における環状グリシン-プロリン(cGP)血漿バイオマーカーの濃度及び活性濃度依存性インスリン様増殖因子1(IGF-1)バイオアベイラビリティを再測定する工程;
d)ベースラインから、及びさらなるセット間隔において、動物の機能回復を評価する工程
を含み、
一連のデータからのCGPのベースライン濃度は、ベースラインcGP濃度が高いほど、機能回復の評価に基づいて動物の予後がより良好であるように、動物の非神経学的及び/又は神経学的状態の回復の短期結果を予測する。
【0048】
環状グリシン-プロリン(cGP)は、未結合の生理活性IGF-1によって自然に形成される安定な断片である。cGPは、IGFBP-3への結合についてIGF-1と濃度依存的に競合する。本発明者は、cGPが、上記の不活性化の濃度依存性の結果として活性IGF-1の量と強く相関し、測定可能且つ信頼できる血漿バイオマーカーであることを見出した。即ち、可変である直接IGF-1測定結果に頼る代わりに、cGP濃度を測定することにより、活性IGF-1機能の存在又は非存在を測定することができる。
【0049】
本発明者の作業は、より高い濃度のcGPが、上記した濃度依存性を介してより多くのIGF-1をIGFBP-3から遊離させ、したがって、生体利用可能なIGF-1の増大をもたらすことを示した。
【0050】
直接的なcGP測定に加えて、本発明者らは、cGPとIGF-1の相対濃度(即ちcGP/IGF-1モル比)もまた、患者における生体利用可能なIGF-1の量を表すことができ、したがって潜在的にIGF-1関連の認知機能についての適切なバイオマーカーの役割を果たし得ることを特定した。cGPの増大が神経学的状態のリスクを示し、cGPの低下が神経学的状態の段階と相関することも見出された。したがって、cGP抽出物を用いた治療は、認知低下の発症を予防し又は遅延させ得ることが想定される。
【0051】
本明細書で使用される用語「バイオマーカー」は、動物の健康及び機能を検査する手段としての、動物中で追跡可能なcGP又はcGPと総IGF-1とのモル比を指す。健康及び機能は、動物又は集団のいずれかに関する歴史的な標準測定に対する、動物に関する「正常」又は「健康」な状態の検出を含み得るがこれに限定されない。健康及び機能は、おそらく状態、疾患又は異常な状態に関連する非正常又は非健康な動物状態の検出も含み得る。理解し得るように、「正常」又は「健康な」などの用語は、主観的用語であるが、本明細書の文脈では、この用語は、動物に関する歴史的詳細及び/又はベースライン若しくは標準と称される集団に対する変動のいずれかと比較した、記載したバイオマーカー化合物又は比の相対的尺度である。
【0052】
上記のように、標準は、個々の動物について収集されたデータのセットに基づき得る。例えば、ある期間、例えば1週間~6ヶ月~2年間の平均cGP及びcGPと総IGF-1とのモル比のデータを動物について収集し得る。バイオマーカー濃度又は比の変動が観察され得、分析されて、動物についての「典型的な」数値が見出され、そのデータ及び任意の偏差の程度が正常又は標準的な数値、対、典型的な変動の理解に使用され、したがって非正常又は非定型な変化が生じた場合に確認される。
【0053】
標準は、代わりに、又は個々の動物データと共に、集団について収集されたデータのセットに基づき得る。集団は、例えば性別群、年齢により定義される群、症状、状態又は病状により定義される群などであり得る。
【0054】
cGP及び/又はIGF-1は、動物から採取した生物学的検体中で測定され得る。本明細書の目的のために、用語「生物学的検体」、「身体サンプル」又は「サンプル」は、互換的に使用することができ、患者から採取又は抽出され、保存され、後に分析される検体を集合的に指す。検体の抽出技術は、例えばスワブ、静脈穿刺、スティック、生検、分画、排尿、大便サンプルなどによるものであり得る。選択された実施形態では、生物学的検体は:脳脊髄液(CSF)、血漿、尿、母乳、任意の他の生物学的検体(涙液及び任意の他の身体機能)及びそれらの組み合わせであり得る。
【0055】
生物学的検体中のcGP及び/又は総IGF-1は:ELISA、HPLC、質量分析、及びそれらの組み合わせから選択される技術によって測定することができる。当技術分野の他の分析技術も使用することができ、それらの技術への参照は、限定するものとして理解するべきではない。
【0056】
第4の態様では、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させる
ために処方される医薬の製造における動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物の使用が提供される。
【0057】
第5の態様では、それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を寛解させ及び/又は治療するために、経口投与用に処方される医薬の製造における動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物の使用が提供される。
【0058】
第6の態様では、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比の低下を予防し;及び/又は
動物におけるcGPの既存の(正常な/生理学的)濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPと総測定IGF-1との比を増大させ又は正常化する
ために動物に投与されるように処方される、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPを含む濃縮物/抽出物が提供される。
【0059】
第7の態様では、それを必要とする患者における高血圧及び/又は脳卒中の影響を寛解させ;及び/又は高血圧及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧及び/又は脳卒中に関連した症状を低減する方法が提供され、方法は、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物を投与することを含む。
【0060】
本発明者は、cGPの濃縮物/抽出物を、高血圧(高い血圧)を有する患者に適用すると、それらの血圧が許容可能な基準レベルに低下することを見出した。
【0061】
治療のため及び回復を予測するための非神経学的状態又は疾患は、高血圧、急性脳損傷(例えば、脳振盪)、肥満女性における体重変化、及び出生後の発達から選択され得るが、これらに限定されない。
【0062】
第8の態様では、それを必要とする患者におけるパーキンソン病又はパーキンソン病に関連した症状、又は認知障害に関連した合併症の影響を寛解させ及び/又は治療する方法が提供され、方法は、治療有効量の、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来のcGPの濃縮物/抽出物を投与することを含む。
【0063】
治療のための神経学的状態又は疾患は、脳血管発作(CVA)若しくは脳卒中、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、血管性認知症、高血圧及びその関連する脳合併症、パーキンソン病及び/又は任意の他の老化関連の状態若しくはIGF-1欠乏関連状態から選択され得るが、これらに限定されない。
【0064】
脳卒中は、典型的には脳の一部が適切に機能しなくなる、脳への不十分な血流が細胞死をもたらす例示的な神経学的状態である。本発明者は、上記のバイオマーカーを介してcGP濃度及びcGPと総IGF-1との比が脳卒中患者において変化し、cGP又は比が低下する程度が患者回復及び転帰の強力な指標であることを特定した。より少ない低下は、より速い回復及び潜在的により少ない進行中の問題に関連する。これに関する正確な機構は証明されていないが、IGF-1は成長に関連するため、より低いcGPレベル又はcGPと総IGF-1との比は、より低い活性のIGF-1に対応し、したがって神経経路のより遅い成長、ひいてはより遅い回復に対応する。この発見に基づき、本発明者は、動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料由来の濃縮されたcGP抽出物の投与が、cGPレベル及び/又はcGPと総IGF-1との比を増大させ得、したがって脳卒中の影響を寛解させ、脳卒中を治療し、又は少なくとも脳卒中及び/又は他の神経学的状態に関連した症状を低下させることを示す。
【0065】
本発明者により評価される神経学的状態のさらなる例は、2番目に一般的な神経変性状態であるパーキンソン病(PD)である。前述のように、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)は神経栄養因子であり、神経細胞の生存及び脳機能に重要な役割を果たす。IGF-1機能を損なった循環IGF-1の増加として特徴付けられるIGF-1抵抗性は、特発性PDの疾患進行、認知障害及びPDの病理に役割を果たす。したがって、IGF-1の血漿濃度の変化もまた、PD並びに代謝障害及び癌などの他の状態の予後及び治療応答を予測するために、IGF-1機能を監視するためのバイオマーカーとして本発明者により評価されている。
【0066】
本明細書の目的のために、用語「寛解」、「治療」又は「症状の低減」は、神経学的状態に関連した少なくとも1つの兆候又は症状の測定された影響を、クロスグリ抽出物投与のない患者で測定されたものと比較して少なくとも1、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は6%、又は7%、又は8%、又は9%、又は10%減少させることを指す。
【0067】
投与は、疾患若しくは状態を原因とする、又は疾患若しくは状態に関連した症状から生じるものなどの非正常状態の結果としてのcGP濃度の低下又はcGPと総IGF-1とのモル比の低下を停止させ得る。使用される用語「低下を停止させる」は、投与前に測定された濃度又は比の少なくとも1、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は6%、又は7%、又は8%、又は9%、又は10%以内のままであるcGP濃度及び/又はcGPと総IGF-1との比を指す。
【0068】
投与は、cGP濃度及び/又はcGPとIGF-1とのモル比を、cGP抽出物投与のない患者で測定されるであろうものに対して少なくとも1、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は6%、又は7%、又は8%、又は9%、又は10%増大させ得る。本発明者は、cGP抽出物補充後に脳脊髄液(CSF)中のcGPの25%の増加が存在し得ることを予想外に見出した。理論に束縛されるものではないが、これは経口投与後の脳による有効な取り込みを示唆し、任意の脳疾患の治療のための重要な発見である。さらに、cGP抽出物は、ヒト血漿中のcGPの形成を増大させ得る。本発明者が知る限りでは、CSF中の少なくとも25%のcGPの有効な脳取り込みを示した他の研究は存在しない。さらに、高濃度のcGP生成物の補充の有効性及び取り込み、並びにこれらのサプリメントがどのように、より速く有効濃度に達するのを助けるかを確認する臨床試験が進行中である。また、機構の解明により、IGF-1機能の正常化の介入物としてのcGP抽出物をさらに支持する重要な科学的証拠が提供され得る。
【0069】
上記の態様で参照された動物は、ヒトであり得る。動物は、或いは非ヒト動物であってもよい。動物への参照は、本明細書で、単語「対象」又は「患者」と互換的に使用され得、一方又は他方への参照は、限定するものと理解するべきではない。
【0070】
一実施形態では、cGP抽出物が投与される動物は、いずれの非正常なcGP及び/又はcGPと総IGF-1との比も示さない健康な動物であり得る。この実施形態では、抽出物は、次に疾患、状態又は疾患若しくは状態の症状に関連し得る、cGP又はcGPと総IGF-1との比の変化を予防又は回避するための手段として積極的に投与され得る。或いは、動物は、既存の状態、病状、及び/又は状態若しくは病状に関連する症状を有し得る。
【0071】
上記のように、「正常」、「健康」及び「健康な」などの用語は、主観的用語であるが、本明細書の文脈では、この用語は、動物に関する歴史的詳細及び/又はベースライン若しくは標準と称される集団に対する変動のいずれかと比較した、記載したバイオマーカー化合物又は比の相対的尺度である。個体のベースラインは、年齢、性別、及びIGF-1機能に関連し得る任意の他の医学的状態の間で変動し得る。個体のベースラインからのcGP及び/又はcGPと総IGF-1との比の変化は、治療及びcGP投与計画を誘導する上でより重要な情報であることが見出された。本発明者により実施された例示的な研究では、健康女性における血漿中のcGPレベルは3.5ng/mg、高齢者のIGF-1機能の低下及びPD患者におけるIGF-1抵抗性に起因して、50~70歳の高齢者では8~10ng/ml、PD患者では12ng~15ng/mlであることが示された。cGP濃度の増大は、IGF-1機能を維持するための内因性応答である。この応答がその有効性を喪失すると、患者は、症状、例えばPD患者における認知症を発症する。
【0072】
記載される医薬は、一実施形態では経口投与用に処方され得る。経口投与は、非侵襲性であり、生理活性化合物を投与する簡易な手段であり、この方法は経口サプリメントに関してよく研究されている。加えて、規制当局の承認を目的として、記載される方法のマーケティングを行うための手法は有用であり得る。経口投与への参照にもかかわらず、この医薬は、例えば非限定的な例は、注射、舌下ウエハ又は坐薬である非経口投与用に処方され得る。血管脳関門(BBB)の克服は、多くの生理活性化合物について当技術分野で広範囲に記載されており、したがって経口若しくは非経口方法のどちらが好ましいか、又はBBBが移動を可能にするかについても多少の余談がある。本発明者は、cGP抽出物の経口投与が血管脳関門を横切り、したがって投与の有用な手段であり得ることを見出した。
【0073】
濃縮物/抽出物自体は、一実施形態では乾燥粉末であり得る。加工された粉末はミクロン範囲の直径に微粉化され得、1000、又は100、又は10、又は1ミクロン未満の粒子サイズを有し得る。抽出物を含む医薬は、丸剤、錠剤、カプセル剤、液剤、粉末、微粉化粉末、ジェル、液体で満たされたソフトジェル、及びこれらの形態の組み合わせとして処方され得る。当技術分野の抽出物は、1000ミクロンを超える粒子サイズを有する粗い粉末であり得る。そのような抽出物は、水性環境で可溶化することが困難であり得、したがって記載した抽出物の微粉化形態が有用であり得、これは、微粉化形態が、可溶化が容易であり、したがってより急速且つより完全に摂取され、動物の血流に移動するためである。
【0074】
上記のように、用量は治療有効量である。一実施形態では、濃縮cGPの治療有効用量は、一日用量として少なくとも10,000~100,000ng(10~100μg)の用量を提供し得る。動物及び海洋組織からのコラーゲン中のcGPの高い濃度は、植物ベースの等価物の数千倍であり得ることが発見された。健康の維持、神経学的又は非神経学的状態の疾患予防又は治療の目的のために、有効な一日用量を提供する、処方物としての成分のブレンド。植物ベースのcGPの臨床適用は、cGPの低い濃度に起因して多少の限界を有する。例えば、これは、体内のcGP濃度の増加した需要及び取り込みを必要とするIGF-1機能障害の人々の健康管理には制限的である。したがって、植物供給源由来のcGP補充の初期期間は、cGPの蓄積が有効なレベルとなるのを確認するまで通常数週間又は数ヶ月を要するであろう。これは、疾患管理、特に急性状態のその臨床適用における植物源のcGPの限界である。
【0075】
有利には、動物、海洋及び/又は真菌供給源のより高濃度のcGP生成物の補充は、身体がより速く治療有効濃度に達することを助けるであろう。これは、急性状態、例えば外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中、他のタイプの傷害、並びに糖尿病性末梢神経障害(実施例3)などの代謝障害の合併症及び癌の管理のために又はその管理の支持において重要である。
【0076】
理解されるべきであるように、使用される用量は、個々の動物の代謝、動物の種、動物の体重、動物の年齢、医学的状態、健康状態及び他の因子などの因子に応じて変動する可能性があり、したがってこれらの用量は限定的であると見るべきではない。cGPの濃縮物を含む他のタイプの有機ベースの材料及び/又はそれらの組み合わせを、おそらく本発明で使用することができる。
【0077】
高濃度のcGPを有する成分は、任意の生命体(ウシに限らない)、海洋及び骨コラーゲン1型~7型などを含む、任意の動物、海洋及び/又は真菌供給源に由来することができる。
【0078】
コラーゲンの健康強調表示(health claim)は、主に皮膚、毛髪及び爪に限定される。基底膜(BM)は、血管、特に脳内の血管の構造の一部である。コラーゲンは、BMの生物学的及び構造的要素である。コラーゲンの実験的変異は、BMの機能障害をもたらし、これは脳卒中、他の脳血管疾患及びいくつかの発達神経学的状態の動物モデルでの研究で証明されている。しかしながら、これらの既知の研究は、コラーゲン変異及び組織の病理学的変化とのそれらの関連についての検討に限定されており、したがって本発明者の発明は、健康強調表示並びに神経学的及び血管状態を含むコラーゲンの疾患管理とは無関係である。さらに、cGPとコラーゲンの関連又は教示及び示唆は、当技術分野には存在しない。
【0079】
加水分解プロセスは、コラーゲン/ゼラチンタンパク質を切断し、加水分解されたプロリン-グリシンの反復配列を有する線状ペプチドを形成する。これらの線状ペプチドの環化によりcGPが生成される。コラーゲン/ゼラチンで組織を置き換えることとは別に、本発明者は、IGF-1機能を正常化するために、天然cGPの実行可能な供給源としてコラーゲン又はゼラチンを使用することを主張する。
【0080】
いくつかの実施形態では、抽出物は、加水分解されたウシコラーゲン粉末、コラーゲン海洋皮膚粉末、加水分解された魚類皮膚粉末及び骨コラーゲンであり得る。
【0081】
記載されるプロセスは:皮膚、タンパク質、骨、筋肉、腱など及び/又はそれらの組み合わせから選択される身体部分を使用して生成され得る。一実施形態では、抽出物は、動物、海洋及び/又は真菌材料の浸漬及び他の新規な抽出方法により生成され得、その後乾燥して濃縮粉末を形成し、これは次いで微粉化され得る。微粉化粉末は、場合により、カプセル形態が所望される場合に封入され、又は別様に最終形態に加工され得る。別の実施形態では、抽出物濃縮物及び/又は液体生成物は、cGP抽出生成物の供給源であり得る。
【0082】
ブレンドは、一日用量として少なくとも10,000ng以上、及び/又は少なくとも健康上の利点を提供するのに必要な量のcGPを提供する濃度の環状グリシン-プロリン(cGP)を含むことができる。
【0083】
理論に束縛されるものではないが、これらの抽出物は、組み合わせて又は別々に、IGF-1の結合に対する観察されたインビボでの効果、ひいては観察されたcGP濃度及び/又はcGPと総IGF-1との比の増大に起因し得ることが理解される。とはいえ、抽出物は、動物、海洋及び/又は真菌供給源由来のcGP以外の他の化合物を含み得、純粋にこれらの化合物に起因するものではない、抽出物からの他の生理活性化合物又は相乗効果が存在し得る。その結果、これらの化合物への特定の参照は、抽出物中に存在する可能性がある他の化合物の生理活性を排除することを意図するものではない。
【0084】
上記の利点は変動し得る。バイオマーカーに関連して、記載したcGPは、IGF-1の安定な代謝物であり、本発明者らの作業に基づいて、動物から採取した生物学的検体中で容易に測定される。cGPは、IGF-1の未結合活性形態から形成され、したがって総IGF-1の測定よりも信頼できる。cGPの増大及び/又は神経学的状態の対処の記載した方法に関連して、そのような測定可能且つ既知の方法での動物、海洋及び/又は真菌供給源由来のcGP濃縮物/抽出物の使用は知られておらず、又は当技術分野で完成されていない。このように、動物生成物は、クロスグリなどの植物由来cGPよりもはるかに高いcGP濃度を有する。ウシコラーゲンの経口投与は、cGPMax(商標)を長期間使用していた参加者のヒト系(尿)中のcGP濃度をさらに増大させ得ることが有利に見出された。植物ベースの生成物中のcGPの低い濃度の欠点は、多くの場合、消費者が改善を認めるためにより長い「蓄積」期間を経験することであり、急性状態及び/又は重症状態を有する患者の治療に適していないことである。このように、動物、海洋及び真菌由来の生成物の有意に高いcGP濃度は、植物ベースの生成物よりもはるかに速くcGP濃度を有効レベルに増大させ得る。植物ベースのcGPMax(商標)が主に正常な人々の健康を支持するのに使用されることを考えると、より高濃度のcGPを有する他の供給源は、IGF-1欠乏を有する医学的状態の人々の健康を支持するのに適切であり、動物、海洋、植物及び真菌誘導体由来の新たな生成物は、脳卒中回復並びにIGF-1欠乏による全身及び脳血管状態を有する他の投薬(medication)状態のために開発され得る。したがって、新たに開発された任意の生成物はまた、それらの系内でcGPの要求が増大した急性状態、例えば、外傷性脳損傷及び中の発症に適切であり得る。
【0085】
本発明者はまた、コラーゲン及びゼラチン(コラーゲンの加熱形態)はグリシン-ヒドロキシプロリンアミノ酸配列が多く、予想外に、コラーゲン/ゼラチンの分解が有意な量のcGPを形成し得ることを見出した。cGPを含むクロスグリ濃縮物を封入するのに使用されるソフトジェルカプセルの主な組成物は、ゼラチンである。
【0086】
予備研究により、ゼラチン分解によるcGPの形成は、より低いpH及びより高い温度に依存し得ることが示された。例えば、クロスグリ濃縮物は2.5という低いpHを有し、これはゼラチンを分解することができ、特に暑い環境においてcGPを形成し得る。本発明者は、ソフトジェルカプセルに封入された後のクロスグリ濃縮物中のcGP濃度の増大(0.1ng/mgから10ng/mg)を認めた。pH及び温度範囲が抽出物の保存中にcGPレベルを増大させて、効果を向上させ得ることは有意な発見である。この同じ現象が、植物、動物、海洋及び/又は真菌起源のいずれを供給源とするかにかかわらず、ソフトジェルカプセルに封入されたいずれのcGP抽出物にも適用可能であり得る。コラーゲンと35℃で2週間インキュベートしたクロスグリ濃縮物も、4℃で2週間インキュベートしたブレンドしたサンプルと比較して、cGP濃度を40ng/mgから120ng/mgに増大させる。この現象は、植物、動物、海洋及び真菌起源由来の他の成分にも当てはまる可能性がある。
【0087】
cGP抽出物は、既知の及び測定可能な方法で使用されていないが、目下可能であり、本明細書に記載される通りである。高齢者の認知機能及び代謝障害におけるコラーゲンブレンドを使用したcGPの有効性のさらなる試験は、有意且つ測定可能な利益を患者に提供することができ、また潜在的に既存の当技術分野の治療を妨げず、又は望まない副作用を生じることのない、cGP抽出物の新たな又は少なくとも代替的な使用を示すことができる。
【0088】
cGPの変化の測定及び/又は神経学的状態の対処の記載した方法に関連して、信頼できる血漿バイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の臨床適用の利点により、治療及び個々の投与計画に適した患者の選択が可能となる。cGPの増大は神経学的状態のリスクを示し、cGPの低下は神経学的状態の段階を示す。有利には、治療に適した患者は、それらのcGPレベルに基づいて選択することができ、cGPレベルの変化は、調整又は個別化された治療投与計画のために、容易にモニターすることができる。cGP抽出物の投与計画の調整により、神経学的状態の有効な治療が可能となり、したがって長期回復(3ヶ月を超える)を改善し、神経学的状態及び末梢神経学的状態に関連した長時間の合併症(認知障害)を予防する。さらなる利点は、cGPレベルが、分析の容易さのために、単に尿サンプルを測定することによりモニターできることであり、これは将来のcGP抽出物の大規模臨床試験に重要である。
【0089】
さらに、一般に天然産物及び関連する生理活性化合物に関連して、本明細書に記載される方法及び使用は、治療に介入する適切な時を知るための独自の方法を提供し、さらに、治療の成功又は不成功を測定するための方法を提供する。このタイミング及び有効性への洞察は、多くの医薬品が目指すものであり、生理活性化合物を含有する天然産物中に一般に観察されないものである。
【0090】
上述した実施形態はまた、本出願の明細書において個々に又は集合的に参照又は示される部分、要素及び特徴、並びに2つ以上の前記部分、要素又は特徴の任意又は全ての組み合わせからなると広義に述べることができる。
【0091】
さらに、実施形態が関連する当技術分野で、既知の等価物を有する特定の整数が本明細書で言及される場合、そのような既知の等価物は、個々に示されるように、本明細書に組み込まれるものと見なされる。
【実施例】
【0092】
作業実施例
非神経学的及び神経学的状態のリスクの予測及び回復のための増大した濃度の環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカー、並びにそれを治療するためのcGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料、例えばcGPの濃縮物/抽出物に関する上述した方法を、特定の実施例を参照して記載する。
【0093】
実施例1
動物、真菌及び海洋供給源中のcGP濃度の同定
本発明者は、以前にクロスグリを含む天然植物中のcGPの存在を同定した。しかしながら、cGP濃度は低い(約0.1~1ng/mg)。植物cGP単独の臨床適用は、一般的な健康、特に老化の健康を支持及び管理するには不十分である。増大した濃度のcGPを有する供給源は、疾患管理におけるその臨床適用にとってより有益であろう。特に、高濃度のcGP生成物の補充が、身体が有効濃度により速く達することを助ける、外傷性脳障害(TBI)、脳卒中及び他のタイプの傷害のような急性状態の管理。
【0094】
新規な加工/抽出方法を使用して、本発明者は、動物及び海洋組織からのコラーゲン中の高濃度のcGPを同定した。抽出物は、浸漬及びその後乾燥して濃縮粉末を形成し、これを次いで微粉化することにより生成される。微粉化粉末は、場合により他のcGP含有成分とブレンドされ、又はカプセル形態が所望される場合、封入され、又は別様に加工されて最終製剤となり得る。
【0095】
動物及び海洋供給源中のcGP濃度は、
図1に示される。cGP濃度は1300~4400ng/mgであり、これは対応物の植物ベースの生成物の数千倍である。前述したように、このcGPの高濃度は、外傷性脳障害(TBI)、脳卒中及び他のタイプの傷害のような急性状態の管理又は該管理の支持に重要である。
【0096】
cGPMAX(商標)のベジタリアン又はビーガンバージョンを生成するために、本発明者は、キノコ及び海藻を供給源とするcGP濃縮成分を同定した。いくつかの例が表1にリストされている。脳機能に対する健康強調表示、例えばカワラタケ(Turkey tail mushroom)が広く主張されているが、cGP及びIGF-1のいずれとの関連性も存在しない。
【0097】
実施例2
ウシコラーゲン粉末の経口投与の薬物動態
ウシコラーゲン粉末の補充が、1)経口生体利用可能であるか、2)ウシコラーゲン由来のcGPの>40倍の濃度の補充が、ヒトにおけるcGP濃度のさらなる増大をもたらすことができるか、及び3)より高い用量のcGPが、植物ベースの生成物の補充よりも速く、身体が有効濃度に達することを補助するか否かを確認するために、本発明者による治験を完了した。
【0098】
治験参加者の全員が、食事摂取の一部として、1年を超えてcGPMax(商標)を規則的に摂取していた。cGPMax(商標)中のcGPの濃度は、最低10,000ng/日(10μg/日)である。cGPの濃度は、臨床適用の必要性に基づいて異なり、製剤を介して操作することができる。
【0099】
ウシコラーゲンの補充が体内でcGP濃度をさらに増大させるか否かを決定するために、非盲検薬物動態試験を実施した。ウシコラーゲン粉末を温水に溶解した。尿サンプルを100mgの単回用量の経口投与の前及び3時間後に採取した。対応のあるt検定を用いて、2時点間の差異を分析した。
【0100】
図2は、尿中のcGP濃度が、100mgウシコラーゲン粉末の経口消費の3時間後に有意に増大することを示す。
【0101】
タンパク質結合は、cGP及びcGP類似体の薬物動態に重要な役割を果たす。cGP(又はcGP類似体)の「有効」用量は、タンパク質結合部位の飽和に必要なcGPの量によって決定された。これは、より高い用量のより短期間の投与(
図2に示すように)又はより低い用量のcGPのより長期間の投与により達成され得る。
【0102】
植物ベースのcGP生成物と比較して、動物コラーゲンは、有効用量のcGPをより短期間で提供することができる。コラーゲンは経口生体利用可能であり、440μgのcGP(100mgのウシコラーゲン(collage)粉末)の投与は、参加者において単回投与の3時間後にcGP濃度をさらに増大させた。したがって、コラーゲンによるcGPレベルの急速な上昇が示唆される。
【0103】
尿中のcGPの濃度は、脳卒中の患者で評価してあった循環中のそれと高度に相関する。ピアソン相関分析は、尿cGP濃度と血漿cGP濃度との間の強い正の相関を示唆する(r=0.78、p<0.001、
図3)。
【0104】
尿と血漿との間のcGP濃度の高い相関はまた、cGPが主に腎臓を介して排泄されることを支持する。循環中の過剰な量のcGPは、腎臓を介して循環から離れるであろう。薬学的に開発されたcGP類似体は、高いμg~低いmg用量範囲で使用される。
【0105】
比較すると、コラーゲン補充により提供されるcGP濃度は、薬学的に開発された合成類似体よりもまだ低い。したがって、コラーゲンベースのcGPは、長期補充に安全である。したがって、自然食品中のcGPの吸収及び組織利用は、合成類似体と比較して有利であり得る。
【0106】
コラーゲンは、多くのプロリン及びグリシン配列を含む。コラーゲンは多様な環化プロリンを有するが、コラーゲンがcGPを含むという当技術分野での教示又は示唆は存在せず、コラーゲンの健康上の利点は主に皮膚及び関節内に寄与することのみ示唆されている。本発明者は、コラーゲン中のcGPの存在を最初に同定した。本発明者による大量の実験及び臨床研究結果は、実験研究でのcGP治療の有効性により支持される、臨床転帰と内因性cGP濃度との関連性を示した。コラーゲン中に見出されるこのようなcGPの高い濃度は、コラーゲン及び他のcGP由来供給源の健康強調表示における重要な機構である。したがって、この発見は、コラーゲンの当技術分野で有益であるという以前の主張を、皮膚及び関節の健康から、大脳及び全身の血管状態、神経障害、代謝障害などへと拡張し得る。
【0107】
さらに、本発明者は、真菌が多様な環状プロリン含有ペプチドを含み、これは真菌の健康強調表示に寄与し得ることに注目した。しかしながら、真菌中のcGPの存在についての文献報告は、現在の所存在しない。進行中のさらなる試験は、様々な真菌中のcGPの存在を同定する可能性があり、これは真菌の健康強調表示に寄与する要因であり得る。例えば、本発明者は、カワラタケ(18ng/mg)及びいくつかの他のキノコの抽出物中の高いcGP濃度を同定した(表1)。
【0108】
実施例4
cGPMAX(商標)の補充は、2型糖尿病を有する患者の末梢神経障害を改善した。
本発明者は、加水分解コラーゲンと共に再処方したcGPMAX(商標)の、末梢神経学的状態に対する有効性を検討した。2型糖尿病(T2DM)は、T2DM患者の25~50%に生じる末梢神経障害、進行性神経学的状態の主要な原因である。
【0109】
糖尿病性末梢神経障害(DPN)の初期段階は、多くの場合、四肢の感覚の喪失、しびれ、疼痛、若しくは灼熱感、遠位虚弱、又は萎縮症に進行する感覚変化として現れ、バランス及び歩行の障害をもたらし得る。治療なしでは、末梢神経障害の予後は不良であり、四肢切断の主要な原因となる。四肢切断の5年生存率は、結腸癌、乳癌及び前立腺癌と比較して、約2年以下である。
【0110】
T2DMの>5年臨床診断を有する患者において非盲検試験を行った。参加者は、3回の通院を補充前、補充から3ヶ月後及び6ヶ月後の様々な時点で予定された。18人のT2DM患者がフォローアップを完了していた。cGPMAX(商標)の毎日の補充は20~40μgの天然cGPを提供した。末梢神経障害を両足で評価した。
【0111】
圧力、振動及び温度に対する感覚機能を、それぞれSemmes-Weinsteinモノフィラメント試験、振動知覚閾値試験及び冷/温検知閾値試験(cold/ward detection thresholds test)を用いて、1=正常;2=感覚の低下、及び3=感覚なし:としてスコア化した。総スコア>22は異常な感覚機能を示し、スコアが高いほど障害が重症である。圧力、温度及び振動に対する感覚の総スコアを、反復測定分散分析による統計解析に使用した。
【0112】
全ての参加者はDNP症状の改善を経験し、大部分の参加者は、補充の2ヶ月後に(又はそれより早く)顕著な改善を報告した。
【0113】
反復測定分散分析は、時点間の有意な差を示した(p=0.0006、f[1.3、22.25]=13.54、n=18)。ベースライン(補充前)と比較して、cGPMAX(商標)の補充は、
図4に最もよく示されるように、3ヶ月目及び6ヶ月目(p=0.0007)に総DNPスコアの有意な低下を示した(p=0.003)。
【0114】
この臨床転帰は、末梢神経学的状態におけるcGPMAX(商標)の有効性を支持する最初の証拠である。
【0115】
要約/結論
・ 動物、海洋及び真菌生成物は、クロスグリなどの植物由来cGP抽出物のcGP濃度よりもはるかに高いcGP濃度を有する;
・ ウシコラーゲンの経口投与は、植物ベースのcGPMAX(商標)を長期間使用していた参加者のヒト系(尿)中のcGP濃度をさらに増大させることができる;
・ 動物、海洋及び真菌由来の生成物の有意に高いcGP濃度は、植物ベースを供給源とするcGPよりもはるかに速くcGP濃度を有効なレベルに増大させることができる。植物ベースのcGPMax(商標)の製剤が主に正常な人々の健康を支持するのに使用されることを考えると、動物、海洋及び真菌誘導体由来の新たな生成物は、脳卒中回復並びに全身及び脳血管状態を有する他の投薬状態を改善するために開発され得る;
・ コラーゲンと共に処方されたcGPMax(商標)は、より高い用量のcGP(20~40μg/日)を提供した。20~40μg/日cGPMAX(商標)の6ヶ月間の補充により、末梢神経障害を有するT2DM患者の感覚機能が改善した;
・ 新たに開発された生成物はまた、それらの系内でcGPの要求が増大した急性状態、例えば、外傷性脳損傷及び中の発症に適切であり得る。
【0116】
実施例4
コラーゲン/ゼラチンの化学分解によるcGP濃度の増大
本発明者はまた、コラーゲン及びゼラチン(コラーゲンの加熱形態)はグリシン-ヒドロキシプロリンアミノ酸配列が多く、予想外に、コラーゲン/ゼラチンの分解が有意な量のcGPを形成することを見出した。cGPを含むクロスグリ濃縮物を封入するのに使用されるソフトジェルカプセルの主な組成物は、ゼラチンである。
【0117】
予備研究により、ゼラチン分解によるcGPの形成は、より低いpH及びより高い温度に依存し得ることが示された。理論に束縛されるものではないが、クロスグリ濃縮物(実験目的のためのcGPを含む植物ベースの抽出物)は、2.5という低いpHを有し、これはゼラチンを分解し、特に暑い環境においてcGPを形成する。
【0118】
本発明者は、ソフトジェルカプセルに封入された後のクロスグリ濃縮物中のcGP濃度の増大(0.1ng/mgから10ng/mg)を認めた。pH及び温度範囲が抽出物の保存中にcGPレベルを増大させて、効果を向上させ得ることは有意な発見である。
【0119】
クロスグリ濃縮物とコラーゲンとの混合物を一緒に35度で2週間保存した安定性研究では、4度で2週間保存したもの(40ng/mg)と比較して、cGP濃度を110ng/mgに増大させた。この安定性研究の研究室報告は入手可能である。
【0120】
空のソフトジェル(クロスグリ濃縮物を含まない)又は封入されていないクロスグリを別々に評価した。
【0121】
ソフトジェル単独中のcGPの総量は26ng/mgであり、クロスグリ濃縮物は0.1ng/mgであり、cGPの総量は7030ng/カプセル剤である。しかしながら、カプセル剤全体(ソフトジェル及び封入クロスグリ濃縮物を一緒に、の分析により、cGPの総量は7030ngのcGPから11000ngに増加した。独立した試験研究所からの報告も、このcGP濃度を確認した。
【0122】
このデータは、クロスグリ濃縮物とゼラチンソフトジェルとの相互作用が、cGPを初期レベルから増加させるために重要であることを示唆し、低いpH、高い温度及び/又は他の成分がソフトジェル中のゼラチンの積極的な分解に関与した可能性がある。さらなる実験的試験が実施されている。
【0123】
IGF-1機能障害を有する非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクの予測及び回復のための環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの臨床適用、並びにそれを治療するための、cGP含有動物、海洋及び/又は真菌ベースの材料、例えば加水分解されたウシ及び海洋コラーゲン、キノコ及び海藻の濃縮物/抽出物をソフトジェルカプセルに封入されたcGPと共に使用することに関する方法の態様が、例のみとして記載されており、本明細書の特許請求の範囲から逸脱することなく修正及び追加を為し得ることを理解するべきである。
【国際調査報告】