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特表2024-545690溶解度が改善されたフルベストラントの医薬組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】溶解度が改善されたフルベストラントの医薬組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/565 20060101AFI20241203BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241203BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241203BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241203BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241203BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241203BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K31/565
A61K9/08
A61K47/44
A61K47/26
A61K47/24
A61K47/10
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536525
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2022020858
(87)【国際公開番号】W WO2023121232
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182344
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521268484
【氏名又は名称】サムヤン、ホールディングス、コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ウン ロク
(72)【発明者】
【氏名】チョー,ジュン ウン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA14
4C076BB15
4C076CC27
4C076DD09F
4C076DD15F
4C076DD37
4C076DD37R
4C076DD45R
4C076DD63F
4C076EE23F
4C076EE53
4C076FF16
4C076FF32
4C076FF39
4C076FF43
4C076GG46
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086DA09
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA02
4C086NA12
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、フルベストラントを含む医薬組成物及びその製造方法に関し、より詳細には、特定の非イオン性界面活性剤、レシチン、ヒマシ油及び特定アルコールを、難溶性薬物であるフルベストラントと組み合わせて含むことにより、薬物の溶解度が改善され、製剤中の薬物の濃度を高めることができるため、従来のフルベストラント製剤と比較して、同等の薬理学的治療効果を示しながら、薬物の投与回数を減らすことができ、従来の製剤の不便さを軽減し、患者及び医薬提供者の利便性を高めることができる医薬組成物及びその製造方法に関するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてフルベストラント;
ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はそれらの組み合わせである非イオン性界面活性剤;
レシチン;
ヒマシ油;及び
C2~C5のアルコール;
を含む癌治療用医薬組成物。
【請求項2】
ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体が、ポリオキシルヒマシ油である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、ポリソルベートである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに加えて、追加の非イオン性界面活性剤をさらに含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
追加の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキル又はアリールエーテル、ソルビタンエステル又はそれらの組み合わせである請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ポリエチレングリコールをさらに含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ヒマシ油に加えて、追加の植物油をさらに含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
追加の植物油が、ゴマ油である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
C2~C5のアルコールが、エタノールである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
組成物中の植物油とC2~C5のアルコールとの重量比が、1~10:1である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
安息香酸ベンジルをさらに含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、筋肉注射剤である請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
(1)フルベストラント及びレシチンをC2~C5のアルコールに溶解する工程;及び
(2)前記工程(1)の生成物に、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はそれらの組み合わせである非イオン性界面活性剤、及びヒマシ油を添加する工程;
を含む癌治療用医薬組成物の製造方法。
【請求項14】
前記工程(1)の生成物に、ポリエチレングリコールを添加する工程をさらに含む請求項13に記載の癌治療用医薬組成物の製造方法。
【請求項15】
前記工程(2)の生成物に、C2~C5のアルコールとヒマシ油に加えて、追加の植物油を同時又は順次に添加する一つ以上の工程をさらに含む請求項13に記載の医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルベストラントを含む医薬組成物及びその製造方法に関し、より詳細には、特定の非イオン性界面活性剤、レシチン、ヒマシ油及び特定アルコールを、難溶性薬物であるフルベストラントと組み合わせて含むことにより、薬物の溶解度が改善され、製剤中の薬物の濃度を高めることができるため、従来のフルベストラント製剤と比較して、同等の薬理学的治療効果を示しながら、薬物の投与回数を減らすことができ、従来の製剤の不便さを軽減し、患者及び医薬提供者の利便性を高めることができる医薬組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルベストラント(Fulvestrant)の化学名は、7-α-[9-(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]エストラ-1,3,5-(10)-トリエン-3,17β-ジオール(7-alpha-[9-(4,4,5,5,5-penta fluoropentylsulphinyl) nonyl]estra-1,3,5-(10)-triene-3,17beta-diol))であり、以下の化学構造を有する:
【化1】
【0003】
フルベストラントは、ホルモン・レセプター陽性(ER+)、HER2陰性(HER2-)進行性乳癌の治療に使用される薬物として許可された唯一のSERD(選択的エストロゲン受容体分解薬)系列の薬物である。フルベストラントは、フェソロデックス(Faslocdex)(登録商標)筋注(アストラゼネカ社製)の製品名で発売されており、これは5mLの注射液にフルベストラントとして250mgを含有している製剤であり、1回500mg(プレフィルドシリンジ2本)を最初の1カ月間は、2週に1回筋肉に投与し、その後1カ月に1回同量を投与するのが基本である。
【0004】
フェソロデックス(登録商標)筋注を患者に投与する場合、左右の臀部筋肉にそれぞれ1~2分間注射するように投与方法が設定されているが、これは、投与されるヒトに少なからず苦痛を与え、投与を行う医療提供者にもかなりの不便さを与えている。用法が、このように設定されている理由は、全注射液の容積が合計10mLであるため、筋肉投与時に、1回最大投与可能体積(約5mL)を大きく超えるためと解釈される。
【0005】
フルベストラントは、水溶液への溶解度が極めて低く、FDAの資料によると、純粋な水に「ほとんど溶解しない(Practically insoluble)」と知られている(フェソロデックス(登録商標)の注射の製剤処方において、フルベストラントの飽和溶解度は室温で約90mg/mL、冷蔵保管状態で約65mg/mLと調査されており、製品の濃度はフルベストラントとして50mg/mLである)。従って、フルベストラントを製剤化する際には、可溶化剤が必須であり、フェソロデックス(登録商標)筋注の場合、エタノールとベンジルアルコールが主な可溶化剤として使用され、これらはいずれも有機溶媒に該当する。しかし、有機溶媒は、過剰に多く使用する場合、製剤内の薬物に対する溶解度を高めることができるが、人体への使用量が限られており、投薬後急速に放出され、薬物の初期放出を急激に増加させるため、Cmaxが過多に高くなるだけでなく、急速放出後に残留する製剤内でも薬物沈殿のリスクを増加させる可能性があるため、好ましくない。このため、フルベストラントの溶解度を向上させるためには、適切な量の有機溶媒に加えて、他の添加剤を活用した溶解度向上が切実に必要である。
【0006】
フェソロデックス(登録商標)筋注はオイルデポ(oil depot)製剤であり、添加剤の中でヒマシ油成分が最も大きな部分を占めている。オイルデポは、徐放性注射剤でよく見られる製剤であり、マトリックス(matrix)のほとんどがオイルで構成されており、高分子を使う徐放製剤であるin situ ゲル形成やin situポリマー沈殿、ポリマーインプラント製剤などと異なり、体内で液状を維持しているのが特徴である。オイルデポは、皮下注射と筋肉注射の両方が可能な製剤であり、フェソロデックス(登録商標)筋注は、筋肉注射の用途にのみ使用される。
【0007】
フルベストラントを製剤化する際には、オイルの種類と量、有機溶媒の種類と比率、添加剤の種類と比率などが非常に重要であり、これにより、マトリックスに対するフルベストラントの溶解度が決定されるだけでなく、徐放の特性(放出速度、初期放出量など)が決定される主要な要因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、フルベストラントの溶解度がよくないために投与量が過度に大きい従来のフルベストラント製剤の問題点を解決しようとするものであり、本発明の目的は、製剤中のフルベストラントの溶解度を向上させて薬物濃度を増加させることができるフルベストラント含有組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、有効成分としてフルベストラント;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はそれらの組み合わせである非イオン性界面活性剤;レシチン;ヒマシ油;及びC2~C5のアルコール;を含む、癌治療用医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、(1)フルベストラント及びレシチンをC2~C5のアルコールに溶解する工程;及び(2)前記工程(1)の生成物に、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はそれらの組み合わせである非イオン性界面活性剤、及びヒマシ油を添加する工程;を含む癌治療用医薬組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により提供されるフルベストラントの医薬組成物は、従来フルベストラント製剤と理化学的同等性を示し、非臨床試験と生物学的同等性試験でも同等性が確保され、同等の薬理学的治療効果を示しながらも、従来の製剤に比べて製剤内のフルベストラント濃度を増加させることができ、投与回数を減らすことができ(従来の2回投与を1回に減少可能)、これにより、従来の製剤の不便さを改善し、患者と医療提供者の利便性を増大させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の明細書全体において、特に断らない限り、「含むこと」又は「含有すること」は、特に限定されることなく、特定の構成要素(又は構成成分)を含むことを意味し、他の構成要素(又は構成成分)の付加を排除するものと解釈されるものではない。
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の一態様は、有効成分としてフルベストラント;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はそれらの組み合わせである非イオン性界面活性剤;レシチン;ヒマシ油;及びC2~C5のアルコール;を含む、癌治療用医薬組成物に関するものである。
【0014】
一実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記フルベストラントの含量は、組成物の全量100重量%基準に対して、例えば、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上又は9重量%以上であってもよく、また、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、13重量%以下又は11重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0015】
一実施形態において、前記C2~C5のアルコールはエタノールであってもよい。
一実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記C2~C5のアルコールの含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上又は15重量%以上であってもよく、また、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下又は20重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0016】
別の実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記C2~C5のアルコールの含量は、フルベストラントを除いた残りの成分の合計100重量部に対して、例えば、3重量部以上、5重量部以上、7重量部以上、10重量部以上又は15重量部以上であってもよく、また、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下又は25重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0017】
一実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記非イオン性界面活性剤の含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上又は0.5重量%以上であってもよく、また、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下又は8重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0018】
別の実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記非イオン性界面活性剤の含量は、フルベストラントを除いた残りの成分の合計100重量部に対して、例えば、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上又は0.3重量部以上であってもよく、また、19重量部以下、18重量部以下、17重量部以下、16重量部以下又は15重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0019】
一実施形態において、前記ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体として、ポリオキシルヒマシ油(例えば、クレモフォールEL、クレモフォールELP、ポリオキシル-35ヒマシ油、ポリオキシル-40ヒマシ油、又はそれらの組み合わせ)を使用することができ、より具体的には、クレモフォールEL、クレモフォールELP、ポリオキシル-35ヒマシ油、又はそれらの組み合わせを使用することができ、さらに具体的には、クレモフォールEL、クレモフォールELP、又はそれらの組み合わせを使用することができるが、これらに限定されない。
【0020】
一実施形態において、前記医薬組成物がポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含む場合、組成物中のポリオキシエチレンヒマシ油誘導体含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上又は0.5重量%以上であってもよく、また、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下又は8重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0021】
別の実施形態において、前記医薬組成物がポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含む場合、組成物中のポリオキシエチレンヒマシ油誘導体含量は、フルベストラントを除いた残りの成分の合計100重量部に対して、例えば、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上又は0.3重量部以上であってもよく、また、19重量部以下、17重量部以下、15重量部以下、13重量部以下、11重量部以下又は10重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0022】
一実施形態において、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート(例えば、Tween80、Tween60、Tween20等)を使用することができ、より具体的には、Tween80を使用することができるが、これらに限定されない。
【0023】
一実施形態において、前記医薬組成物がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む場合、組成物中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上又は0.5重量%以上であってもよく、また、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下又は6重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0024】
別の実施形態において、前記医薬組成物がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む場合、組成物中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル含量は、フルベストラントを除いた残りの成分の合計100重量部に対して、例えば、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上又は0.5重量部以上であってもよく、また、19重量部以下、17重量部以下、15重量部以下、13重量部以下、11重量部以下又は10重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0025】
一実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記レシチンの含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上又は1.5重量%以上であってもよく、また、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下又は10重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0026】
別の実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記レシチンの含量は、フルベストラントを除いた残りの成分の合計100重量部に対して、例えば、0.1重量部以上、0.2重量部以上又は0.3重量部以上であってもよく、また、20重量部以下、19重量部以下、18重量部以下、17重量部以下、16重量部以下又は15重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0027】
一実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記非イオン性界面活性剤1重量部に対する前記レシチンの重量比は、例えば、1以上、1.1以上、1.2以上又は1.3以上であってもよく、また、5以下、4.9以下、4.8以下又は4.7以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0028】
一実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記ヒマシ油の含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上又は50重量%以上であってもよく、また、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下又は75重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0029】
別の実施形態において、前記医薬組成物に含まれる前記ヒマシ油の含量は、フルベストラントを除いた残りの成分の合計100重量部に対して、例えば、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上又は50重量部以上であってもよく、また、95重量部以下、90重量部以下、85重量部以下又は80重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0030】
また、一実施形態において、前記医薬組成物中のヒマシ油とC2~C5のアルコールとの重量比は、例えば、1~10:1、又は1~5:1、又は2~4:1、又は2.5~3:1であってもよいが、これらに限定されない。
【0031】
一実施形態において、前記医薬組成物は、ポリエチレングリコールをさらに含むことができる。
前記ポリエチレングリコールは、例えば、200~1,000g/molの重量平均分子量を有してもよいが、これらに限定されない。
【0032】
一実施形態において、前記医薬組成物がポリエチレングリコールをさらに含む場合、組成物中のポリエチレングリコールの含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1重量%以上、0.3重量%以上又は0.5重量%以上であってもよく、また、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下又は5重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0033】
別の実施形態において、前記医薬組成物がポリエチレングリコールをさらに含む場合、組成物中のポリエチレングリコールの含量は、フルベストラントを除いた残りの成分の合計100重量部に対して、例えば、0.1重量部以上、0.3重量部以上又は0.5重量部以上であってもよく、また、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下又は2重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0034】
一実施形態において、前記医薬組成物は、前記ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに加えて、追加の非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。
【0035】
一実施形態において、前記追加の非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキル又はアリールエーテル、ソルビタンエステル又はそれらの組み合わせを使用することができる。
【0036】
一実施形態において、前記ポリオキシエチレンアルキル又はアリールエーテルとして、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、トリトンX-100等)を使用することができるが、これらに限定されない。
【0037】
一実施形態において、前記ソルビタンエステルとして、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、スパン(Span)20、スパン(Span)80等)を使用することができるが、これらに限定されない。
【0038】
一実施形態において、前記医薬組成物が、前記追加の非イオン性界面活性剤を含む場合、組成物中の追加の非イオン性界面活性剤の含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上又は3重量%以上であってもよく、また、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下又は15重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0039】
一実施形態において、前記医薬組成物は、前記ヒマシ油に加えて、追加の植物油をさらに含むことができる。
一実施形態において、前記追加の植物油は、ゴマ油であってもよい。
一実施形態において、前記医薬組成物が前記追加の植物油を含む場合、組成物中の追加の植物油の含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上又は3重量%以上であってもよく、また、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下又は10重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0040】
一実施形態において、前記医薬組成物は、組成物のCmax値が著しく増加する現象を防ぎ、薬物の予期せぬ副作用を減少させるのに役に立つように、安息香酸ベンジル(BB)をさらに含むことができる。
一実施形態において、前記医薬組成物に安息香酸ベンジルが含まれる場合、その含量は、組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.01重量%以上又は0.05重量%以上であってもよく、また、1重量%以下又は0.5重量%以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0041】
一実施形態において、前記医薬組成物は注射剤であり、より具体的には筋肉注射剤である。
一実施形態において、前記注射剤の注入力は、0.5~10kgfであってもよい。
一実施形態において、前記注射剤中のフルベストラント濃度は、90~300mg/mLであってもよい。
一実施形態において、前記注射剤の透析袋を使用した試験管内放出所用時間は14日~60日であってもよい。
【0042】
前記医薬組成物は癌治療用、より具体的には、乳房癌治療用、より具体的には進行性乳癌治療用である。
【0043】
本発明の別の態様は、(1)フルベストラント及びレシチンをC2~C5のアルコールに溶解する工程;及び(2)前記工程(1)の生成物に、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はそれらの組み合わせである非イオン性界面活性剤、及びヒマシ油を添加する工程;を含む癌治療用医薬組成物の製造方法に関するものである。
一実施形態において、前記医薬組成物の製造方法は、前記工程(1)の生成物に、ポリエチレングリコールを添加する工程をさらに含むことができる。
【0044】
前記医薬組成物の製造方法において、前記フルベストラント、レシチン、ヒマシ油、C2~C5のアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリエチレングリコールについては前述の通りである。
【0045】
一実施形態において、前記工程(1)は、フルベストラント、レシチン及びC2~C5のアルコールの混合物からC2~C5のアルコールを一部除去することをさらに含むことができる。
前記C2~C5のアルコールの除去は、例えば、30~80℃で、ロータリーエバポレータを使用して行えるが、これらに限定されない。
【0046】
一実施形態において、前記工程(1)の生成物は、フルベストラントを含有したレシチンフィルムであってもよい。
【0047】
一実施形態において、前記工程(1)が、フルベストラント、レシチン及びC2~C5のアルコールの混合物からアルコールを一部除去することをさらに含む場合、前記医薬組成物の製造方法は、前記工程(2)の後、工程(2)の生成物に、C2~C5のアルコールをさらに添加する工程をさらに含むことができる。
【0048】
一実施形態において、前記医薬組成物の製造方法は、前記工程(2)の生成物にC2~C5のアルコールとヒマシ油に加えて、追加の植物油を同時又は順次に添加する一つ以上の工程をさらに含むことができる。
【0049】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を示す。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0050】
A.薬物の溶解度
1.製剤の製造
下記表1に示す種類及び含量の成分及び過剰のフルベストラントを用いて、各実施例及び比較例の溶解度測定用製剤を製造した。具体的な製造方法は以下の通りである。
フルベストラント、レシチン及びエタノールを混合した後、50℃の中温条件で30分間加温撹拌及び溶解し、得られた溶液に任意にポリエチレングリコール(PEG)を添加した後、クレモフォールEL(C-EL)又はTween80(T-80)を添加し、得られた溶液に任意にベンジルアルコール(BA)を添加した後、安息香酸ベンジル(BB)を添加し、ヒマシ油を添加した。
【0051】
2.溶解度の測定
前記製造された各実施例及び比較例製剤について、独自に設定した溶解度試験法によってフルベストラントの飽和溶解度を測定した。飽和溶解度は室温(25℃)で測定し、0.45μmのPVDFシリンジフィルターでろ過後、濃度をHPLCで測定した。測定結果を表1に示した。
【表1】
【0052】
比較例A1は、対照薬であるフェソロデックス(登録商標)筋注の製剤処方と同様に製造したものである。前記表1の結果から、フルベストラントの室温飽和溶解度は、実施例A1~A5の製剤(135.8mg/mL以上)が、比較例A1~A6の製剤(112.2mg/mL以下)に比べて向上していることがわかる。
【0053】
B.製剤の生物学的同等性
1.製剤の製造
下記表2に示す種類及び含量の成分を用いて、各実施例及び比較例(比較例B1除外)の薬物動態学試験用製剤を製造した。具体的な製剤の製造方法は、前記A.と同様であった。比較例B1には、市販の対照薬であるフェソロデックス(登録商標)筋注を用いた。
【0054】
2.薬物動態学試験
実施例B1と比較例B1(フェソロデックス(登録商標)筋注)についてはウサギ、実施例B2と比較例B1についてはラット、比較例B1~比較例B4についてはビーグルを実験用動物として用いた。各製剤を各動物にそれぞれ投与後、28日間血中濃度を測定し、そのプロファイルを観察した。その結果を下記表3に示した。
【表2】

【表3】
【0055】
市販対照薬であるフェソロデックス(登録商標)筋注(比較例B1)の結果を100%として、AUC28dは28日間薬物の血中濃度プロファイルの相対的な曲線下の面積(%)であり、Cmaxは薬物の相対的な血中最高濃度(%)であり、非臨床では、試験された製剤が対照薬と比較して80~125%のAUC28d及びCmaxを示した場合、対照薬と生物学的に同等であると評価する。
従って、実施例B1及びB2の製剤は、対照薬に対してそれぞれAUC28dが89.7%及び82.7%、及びCmaxが84.1%及び119.9%を示し、生物学的に同等であると評価されたの対し、比較例B2~B4の製剤は、対照薬に対してそれぞれAUC28dが36.2%、42.9%及び38.9%、及びCmaxが56.7%、75.2%及び60.4%を示し、生物学的に同等でないと評価された。
【0056】
C.製剤の生体利用効率
1.製剤の製造
下記表4に示す種類及び含量の成分を用いて、実施例C1の薬物動態学試験用製剤を製造した。具体的な製剤の製造方法は、前記A.と同様であった。比較例C1としては市販の対照薬であるフェソロデックス(登録商標)筋注を用いた。
【0057】
2.薬物動態学試験
実施例C1と比較例C1(フェソロデックス(登録商標)筋注)について、ラットとウサギを実験用動物として用いた。各製剤を各動物に投与後、28日間血中濃度を測定し、そのプロファイルを観察した。その結果を下記表5に示した。
【表4】

【表5】
【0058】
実施例C1の製剤は、ラットでAUC28dが135.8%、Cmaxが135.4%であり、ウサギでAUC28dが135.2%、Cmaxが156.6%であり、対照薬と比較して増加した生体利用効率を示した。
従って、本発明の製剤は、対照薬と比較して、投与回数を減らし、薬の用法を改善(例えば、従来の2回投与を1回に減らすことが可能)できるだけでなく、投与用量を減らすことができ、これにより、従来の製剤の不便さを改善し、患者と提供者の利便性を増大させることができる。
【国際調査報告】