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<図1>
  • -EP4アンタゴニストの結晶塩形態 図1
  • -EP4アンタゴニストの結晶塩形態 図2
  • -EP4アンタゴニストの結晶塩形態 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】EP4アンタゴニストの結晶塩形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/20 20060101AFI20241203BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20241203BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C07D231/20 Z CSP
A61K31/415
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537165
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 US2022053842
(87)【国際公開番号】W WO2023122289
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/293,183
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】ベナユード, ファリド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC36
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZB26
(57)【要約】
【課題】EP4アンタゴニストの結晶塩形態の提供。
【解決手段】(S)-4-(1-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-5-(3-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド)エチル)安息香酸の結晶性遊離酸形態が提供される。(S)-4-(1-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-5-(3-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド)エチル)安息香酸の結晶性遊離酸形態を作製及び使用する方法も提供される。

【選択図】図なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1:
【化1】

の結晶形態。
【請求項2】
化合物1の結晶性遊離酸形態である、請求項1に記載の結晶性化合物。
【請求項3】
前記結晶性遊離酸形態化合物が、少なくとも以下の粉末X線回折ピーク2θ°(±0.2°):18.4、20.4、及び24.2を示す、請求項2に記載の結晶性遊離酸化合物。
【請求項4】
前記結晶性遊離酸形態化合物が、少なくとも以下の粉末X線回折ピーク2θ°(±0.2°):14.7、14.8、18.4、19.5、20.4、23.0、24.2、及び33.3を示す、請求項3に記載の結晶性遊離酸化合物。
【請求項5】
前記結晶性遊離酸形態化合物が、少なくとも以下の粉末X線回折ピーク2θ°(±0.2°):14.7、14.8、15.3、16.4、18.3、18.4、19.5、20.4、23.0、24.2、27.7、33.3、及び34.2を示す、請求項4に記載の結晶性遊離酸化合物。
【請求項6】
前記結晶性遊離酸形態化合物が、少なくとも以下の粉末X線回折ピーク2θ°(±0.2°):8.2、10.3、12.6、14.2、14.5、14.7、14.8、15.3、15.8、16.4、17.8、18.3、18.4、19.2、19.5、20.4、23.0、23.4、24.2、25.4、25.8、26.3、26.5、27.7、28.9、29.4、30.0、30.4、31.2、32.0、32.6、33.3、34.0及び34.2を示す、請求項5に記載の結晶性遊離酸化合物。
【請求項7】
前記結晶性遊離酸形態が、実質的に図1に示す粉末X線回折(XRPD)パターンを特徴とする、請求項2に記載の結晶性遊離酸化合物。
【請求項8】
前記結晶性遊離酸形態が、図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを特徴とする、請求項2に記載の結晶性遊離酸化合物。
【請求項9】
前記結晶性遊離酸形態が、図3に示すものと実質的に同じ吸湿性を特徴とする、請求項2に記載の結晶性遊離酸化合物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項11】
経口投与用に製剤化されている、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項2に記載の結晶性遊離酸形態化合物を調製するための方法であって、以下のステップ:
a)反応スキームAに従ってピラゾールを生成するステップ:
【化2】


b)反応スキームBに従って前記ピラゾールを酸化するステップ:
【化3】


c)反応スキームCに従って前記酸化ピラゾールを官能化するステップ:
【化4】


d)反応スキームDに従って前記官能化ピラゾールをアミンにカップリングしてアミドを形成するステップ:
【化5】


e)反応スキームEに従って化合物1の前記結晶性遊離酸形態を生成するステップ:
【化6】

のいずれかのうち1つ以上を含む、方法。
【請求項13】
がんの治療を必要とする対象においてがんを治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物又は請求項10若しくは請求項11に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記がんが、皮膚がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、神経膠芽腫、頭頸部がん、髄芽腫、肺がん、又は尿路がんである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが、変化したEP4状態を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記変化したEP4状態が、EP4の発現増加を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
がんの治療を必要とする対象においてがんを治療する方法であって、
前記がんの細胞を含有する生物学的試料中の変化したEP4状態を検出することと、前記がんが前記変化したEP4状態を有する場合、
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物の結晶形態又は請求項10若しくは請求項11に記載の医薬組成物を、前記対象に治療有効量で投与することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記変化したEP4状態が、EP4の発現増加を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
がんの治療方法における、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物の結晶形態又は請求項10若しくは請求項11に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
前記がんが、変化したEP4状態を有する、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記変化したEP4状態が、EP4の発現増加を含む、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
医薬の調製における、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物の結晶形態の使用。
【請求項23】
前記医薬が、がんの治療用である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記がんが、変化したEP4状態を有する、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記変化したEP4状態が、EP4の発現増加を含む、請求項24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/293/183号の利益を主張する。その出願は、本明細書に完全に書き換えられているかのように参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
アンタゴニストによるPGE2とプロスタグランジンE受容体4(EP4)との相互作用を介したプロスタグランジンE2(PGE2)シグナル伝達の遮断は、炎症の軽減に有効であることが示されている(Chen et al.(2010)British J.Pharmacol.160,292-310)。PGE2はまた、多くの固形腫瘍によって作り出される免疫抑制環境における重要な構成要素として関与しており(Whiteside(2010)Expert Opinion in Biological Therapy.2010.10,1019-1035)、アンタゴニストによるEP4シグナル伝達の阻害は、腫瘍動物モデルにおいて腫瘍成長(Terada et al.(2010)Cancer Res.70,1606-1615)及び腫瘍転移を減少させることが示された(Yang et al.(2006)Cancer Res.66,9665-9672)。腫瘍学分野で使用されるPGE2型EP4拮抗作用のさらなる報告は、Ma X.et al.(2013)Oncoimmunology 2:e22647及びCherukuri,D.P.et al.(2007)Exp.Cell Res.313,2969-2979;Majumder,M.et al.(2018)Int.J.Mol.Sci.19,1019;及びTerada,N.et al.(2010)Cancer Research 70,1606-1615に見出すことができる。
【0003】
EP4アンタゴニストの具体例としては、式Iによる化学構造の化合物が挙げられ、米国特許第8,686,018号明細書(これは参照により本明細書に完全に組み込まれる)に記載されている。
【化1】
【0004】
EP4拮抗作用の有用性は当技術分野において実証されているが、医薬品中の活性医薬成分としてのそれらの製造及び使用は、便利に操作及び処理することができる形態でなければならない。これに関して、活性化合物の化学的安定性及び物理的安定性は重要な考慮事項である。好ましくは、化合物及びそれを含有する医薬組成物は、生理化学的特性の著しい変化を示すことなく長期間にわたって効果的に貯蔵することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、式IIによる化合物(以下、化合物1)の結晶性遊離酸形態を提供し得る。
【化2】

(S)-4-(1-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-5-(3-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド)エチル)安息香酸
【0006】
化合物1又は本明細書に報告される任意の他の化合物の記載されたIUPAC名とその完全に描かれた化学構造との間に矛盾がある場合、構造が制御されることに留意されたい。
【0007】
いくつかの実施形態では、式IIの化合物の結晶性遊離酸形態は、2θ°(±0.2°)の以下の値の範囲の少なくとも1、2、3、4、5、6又はそれ以上の粉末X線回折(XRPD)スペクトルのピークを与える:8.2、10.3、12.6、14.2、14.5、14.7、14.8、15.3、15.8、16.4、17.8、18.3、18.4、19.2、19.5、20.4、23.0、23.4、24.2、25.4、25.8、26.3、26.5、27.7、28.9、29.4、30.0、30.4、31.2、32.0、32.6、33.3、34.0及び34.2。いくつかの実施形態において、化合物1の結晶性遊離酸形態は、実質的に図1に図示されるXRPDパターンを特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物の結晶性遊離酸形態は、2θ°(±0.2°):8.2、10.3、12.6、14.2、14.5、14.7、14.8、15.3、15.8、16.4、17.8、18.3、18.4、19.2、19.5、20.4、23.0、23.4、24.2、25.4、25.8、26.3、26.5、27.7、28.9、29.4、30.0、30.4、31.2、32.0、32.6、33.3、34.0及び34.2の範囲で粉末X線回折スペクトルにピークを与える。他の実施形態では、化合物の結晶性遊離酸形態は、2θ°(±0.2°):14.7、14.8、15.3、16.4、18.3、18.4、19.5、20.4、23.0、24.2、27.7、33.3、及び34.2の範囲で粉末X線回折スペクトルにピークを与える。さらなる実施形態では、化合物の結晶性遊離酸形態は、2θ°(±0.2°):14.7、14.8、18.4、19.5、20.4、23.0、24.2及び33.3の範囲で粉末X線回折スペクトルにピークを与える。いくつかの実施形態では、化合物の結晶性遊離酸形態は、2θ°(±0.2°):18.4、20.4及び24.2の範囲で粉末X線回折スペクトルにピークを与える。
【0008】
式IIによる化合物の結晶性遊離酸形態の2θ°値は、5.00°/分の走査速度で連続走査モード及び平行ビーム測定モードで実行される50kV及び300mAのCuKα線を使用する50kV、300mA X線回折計、モデル:RINT TTR-III(Rigaku)の使用によって同定された。検出器はシンチレーションカウンターであり、管電圧は300mAの管電流で50kVであった。段差幅は0.02°とし、0.50mmの入射スリットボックスを用いた。回折計はまた、室温で5~35°の走査範囲で作動させた。
【0009】
いくつかの実施形態では、結晶性遊離酸形態は、図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフによって特徴付けられる。他の実施形態では、化合物1の結晶性遊離酸形態は、150℃での吸熱ピークを特徴とする。
【0010】
実施形態は、本明細書に記載の化合物1の結晶形態及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、経口又は非経口投与用に製剤化される。
【0011】
実施形態は、化合物1の結晶性遊離酸形態を作製する方法を提供し得る。そのような方法は、以下のステップ:
a)反応スキームAに従ってピラゾールを調製するステップ:
【化3】


b)反応スキームBに従ってピラゾールを酸化するステップ:
【化4】


c)反応スキームCに従って酸化ピラゾールを官能化するステップ:
【化5】


d)反応スキームDに従って前記官能化ピラゾールをアミンにカップリングしてアミドを形成するステップ:
【化6】


e)反応スキームEに従って化合物1の結晶性遊離酸形態を調製するステップ:
【化7】

のうちの1つ以上を含むことができる。
【0012】
実施形態は、治療有効量の化合物1の結晶性遊離酸形態を対象に投与することを含む、それを必要とする対象においてがんを治療する方法を提供し得る。
【0013】
実施形態は、それを必要とする対象においてがんを治療する方法であって、細胞の生物学的試料中の変化したEP4状態(例えば、EP4の発現の増加)を検出することと、前記生物学的試料が変化したEP4状態を有するがん性細胞を有する場合、化合物1の結晶性遊離酸形態を治療有効量で前記対象に投与することとを含む方法を提供し得る。
【0014】
実施形態は、がんの治療方法における化合物1の結晶性遊離酸形態の使用を提供し得る。
【0015】
実施形態は、がんを治療するための医薬の調製における化合物1の結晶性遊離酸形態の使用を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、化合物1の結晶性遊離酸形態から得られたXRPDスペクトルを示す。
図2図2は、化合物1の結晶性遊離酸形態のDSCサーモグラフを示す。
図3図3は、化合物1の結晶性遊離酸形態の吸湿性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
化合物1:
【化8】

の結晶形態が本明細書で提供され、これは選択的EP4アンタゴニストとして有用である。
【0018】
いくつかの実施形態では、化合物1の結晶形態は遊離酸形態である。化合物1の結晶性遊離酸形態の一実施形態は、粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて、以下の2θ°(±0.2°)の値の範囲:8.2、10.3、12.6、14.2、14.5、14.7、14.8、15.3、15.8、16.4、17.8、18.3、18.4、19.2、19.5、20.4、23.0、23.4、24.2、25.4、25.8、26.3、26.5、27.7、28.9、29.4、30.0、30.4、31.2、32.0、32.6、33.3、34.0及び34.2のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上にピークを与える。例えば、化合物1の結晶性遊離酸形態は、2θ°(±0.2°):14.7、14.8、15.3、16.4、18.3、18.4、19.5、20.4、23.0、24.2、27.7、33.3及び34.2からなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つの値を示し得る。さらなる実施形態では、化合物の結晶性遊離酸形態は、2θ°(±0.2°):14.7、14.8、18.4、19.5、20.4、23.0、24.2及び33.3の範囲で粉末X線回折スペクトルにピークを与える。いくつかの実施形態では、化合物の結晶性遊離酸形態は、2θ°(±0.2°):18.4、20.4及び24.2の範囲で粉末X線回折スペクトルにピークを与える。いくつかの実施形態において、化合物1の結晶性遊離酸形態は、実質的に図1に示されるXRPDパターンを特徴とする。
【0019】
いくつかの実施形態では、結晶性遊離酸形態は、図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフによって特徴付けられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、結晶性遊離酸形態は、図3に示すものと実質的に同じ吸湿性を特徴とする。
【0021】
本明細書で使用される場合、スペクトルなどのデータに関して「実質的に示されるように(substantially as shown)」、「実質的に同じ(substantially the same)」又は「実質的に示されるように(substantially as indicated)」は、当業者が、例えば図1に示すような、同じデータ収集方法を使用して得られたそのようなスペクトルを比較する場合、スペクトルが、本明細書で教示される化合物の同じ結晶性遊離酸形態を示すのに十分に類似していると結論付けることを意味する。
【0022】
本明細書で教示される化合物を合成及び結晶化する方法も提供される。結晶性遊離酸形態の場合、方法は、以下のステップ:
a)反応スキームAに従ってピラゾールを調製するステップ:
【化9】


b)反応スキームBに従ってピラゾールを酸化するステップと、
【化10】


c)反応スキームCに従って酸化ピラゾールを官能化するステップ:
【化11】


d)反応スキームDに従って前記官能化ピラゾールをアミンにカップリングしてアミドを形成するステップ:
【化12】


e)反応スキームEに従って化合物1の結晶性遊離酸形態を生成するステップ:
【化13】

のうち1つ以上を含むことができる。
【0023】
本明細書に記載の結晶性化合物を薬学的に許容される担体と組み合わせて、その薬学的製剤を提供することができる。担体及び製剤の特定の選択は、組成物が意図される特定の投与経路に依存する。いくつかの実施形態では、担体は、投与前に化合物の結晶形態を維持するように選択される。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が特に指示しない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「HCl塩」への言及は、一塩酸塩、二塩酸塩、1.5塩酸塩、並びに他の化学量論的及び非化学量論的な塩酸塩を指す。
【0025】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、それが製剤化される化合物の薬理活性を破壊しない非毒性の担体、アジュバント、又はビヒクルを指す。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、化合物の結晶性遊離酸形態を維持するように選択される。薬学的に許容される担体、アジュバント又はビヒクルとしては、限定されないが、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が挙げられる。
【0026】
本発明の組成物は、経口、非経口、局所又は移植リザーバー投与に適し得る。いくつかの実施形態では、製剤は、天然源又は非天然源に由来する成分を含む。いくつかの実施形態では、製剤又は担体は、滅菌形態で提供し得る。滅菌担体の非限定的な例としては、エンドトキシンを含まない水又は発熱物質を含まない水が挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。特定の実施形態では、化合物は、静脈内、経口、皮下、又は筋肉内投与によって投与される。本発明の組成物の滅菌注射可能形態は、水性又は油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、当技術分野で公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であり得る。使用され得る許容され得るビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来から使用されている。
【0028】
この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を使用することができる。脂肪酸及びそれらのグリセリド誘導体は、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンにおいて、オリーブ油又はヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注射剤の調製において有用である。これらの油溶液又は懸濁液はまた、カルボキシメチルセルロース又はエマルジョン及び懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の製剤に一般的に使用される同様の分散剤などの長鎖アルコール希釈剤又は分散剤を含有し得る。薬学的に許容される固体、液体、又は他の剤形の製造に一般的に使用されるTween、Spans及び他の乳化剤などの他の一般的に使用される界面活性剤もまた、製剤化の目的のために使用され得る。
【0029】
経口投与のために、化合物又は塩は、カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液を含むがこれらに限定されない許容され得る経口剤形で提供され得る。経口用の錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加することができる。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁液が経口使用に必要とされる場合、活性成分を乳化剤及び懸濁化剤と組み合わせてもよい。所望であれば、特定の甘味剤、香味剤又は着色剤を添加してもよい。さらに、防腐剤を添加してもよい。薬学的に許容される防腐剤の適切な例としては、限定されないが、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば溶媒、例えばエタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、第4級アンモニウム塩及びパラベン(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンなど)が挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、化合物1の結晶性遊離酸形態はカプセルに製剤化され、5mg~50mg、10mg~40mg又は20mg~30mgの化合物1がカプセル内に存在する。
【0031】
他の実施形態では、カプセルは、ヒプロメロースで作られたカプセルシェルを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、化合物1の結晶性遊離酸形態は錠剤に製剤化され、化合物1は錠剤形成中に湿式造粒プロセスを受ける。
【0033】
他の実施形態では、錠剤は、ラクトース一水和物、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム及び/又は水を含む。
【0034】
錠剤は、1mm~7mm、2mm~7mm、4mm~6.5mm又は5.5mm~6.5mmのサイズを有し得る。いくつかの実施形態では、錠剤は6.5mmのサイズを有する。
【0035】
対象及び使用方法
本明細書で教示される化合物の結晶形態は、皮膚がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、神経膠芽腫、頭頸部がん、髄芽腫、肺がん、又は尿路がんなどのがんを治療するために使用され得る。
【0036】
「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、本明細書中に記載されるような疾患又は障害を逆転させること、軽減すること、その発症を遅延させること、その進行を阻害すること、又は他の方法で改善することを指す。いくつかの実施形態では、治療は、1つ以上の症状が発症した後に投与し得る。他の実施形態では、治療は、症状の非存在下で投与し得る。例えば、治療は、症状の発症前に(例えば、症歴に照らして、及び/又は遺伝的若しくは他の感受性因子に照らして)感受性個体に投与し得る。治療はまた、症状が解消した後、例えば再発を防止又は遅延させるために継続し得る。
【0037】
本明細書で使用される「患者」又は「対象」は、動物対象、好ましくは哺乳動物対象、特にヒト対象(男性対象及び女性対象の両方を含み、新生児、乳児、若年、青年、成人及び老人の対象を含む)を意味する。対象としては、実験目的又は獣医学目的のための他の哺乳動物対象(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、サル、鳥類など)も挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、EP4状態が変化したがんを有する対象に治療が提供される。
【0039】
いくつかの実施形態では、治療は、前記がんの細胞を含有する生物学的試料中のEP4状態を分析すること(例えば、測定すること、又は評価すること)を含み得るか、又はそれと併せて行われ得、前記がんがEP4変化を示す場合、本明細書に記載の治療有効量の活性薬剤で対象を治療することを含む。
【0040】
EP4に関して本明細書で使用される「変更された状態」は、対応する非がん性組織と比較して、その発現の増加(例えば、mRNAレベルの増加又はタンパク質レベルの増加)、ゲノム内のコピー数の増加、及び/又は突然変異などの結果としてのコードされたタンパク質の活性の増加を含む。いくつかの実施形態では、EP4の変化した状態には、活性の増加をもたらすか、そうでなければより侵攻性の形態の肝細胞がんに関連する遺伝子及び/又はコードされたタンパク質変異が含まれる。
【0041】
EP4の「発現」は、それをコードする遺伝子が転写され、好ましくは翻訳されることを意味する。典型的には、コード領域の発現は、コードされたポリペプチドの産生をもたらす。
【0042】
EP4タンパク質は公知であり、その変化した状態及び/又は発現は、当技術分野で標準的な技術、例えば核酸増幅、配列決定分析及び/又はハイブリダイズに基づく技術などによる突然変異又はコピー数異常のゲノム分析、ノーザンブロット又はqRT-PCRなどのRNA発現分析、ウェスタンブロット又は他の免疫ブロット又はイムノアッセイ、蛍光活性化細胞選別(FACS)などを使用して測定され得る。
【0043】
本明細書に記載の発明をより完全に理解することができるように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は例示のみを目的としており、限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例
【0044】
定義:以下の略語は示された意味を有する。
ACN アセトニトリル
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
CO 炭酸カリウム
MeOH メタノール
EtOAc 酢酸エチル
分取HPLC 分取高速液体クロマトグラフィー
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
AcOH 酢酸
POCl 塩化ホスホリル
t-BuOH tert-ブタノール
IPA イソプロパノール
V 体積当量
【0045】
実施例1:化合物1の遊離酸結晶形態の合成のための手順:
【化14】

実施例1A:
一般的合成スキームI:
【化15】

化合物2~4は、参照により本明細書に全体が組み込まれる米国特許第8,686,018号明細書に記載されているように調製することができる。
【0046】
ステップ1.1(段階4A)
化合物3(1.0kg)及び5LのDMFを反応器に20~30℃で投入し、次いで、反応塊を-5℃~10℃に冷却した。化合物4(0.56kg)及びHBTU(1.36kg)を-5~10℃で反応器に順次添加した。トリエチルアミン(TEA)(0.6019kg)を-5~10℃でゆっくりと添加した。反応塊を0~10℃で1~3時間撹拌した。反応の進行をHPLCによってモニターした。
【0047】
サンプリング手順:反応塊2mlを取り、HPLCに供する。
【0048】
合格基準:化合物3は(NMT)1.0%以下である。
【0049】
反応が完了していない場合:反応塊をさらに0~10℃で1~3時間撹拌し、許容基準に従って化合物3の含有量を確認する。
【0050】
完了すると、4Lの水を0~20℃で反応塊にゆっくり投入し、反応塊を10Lの酢酸エチルで抽出し、再び6Lの酢酸エチル(注:層の分離が最初の抽出中に起こらない場合、温度を10~20℃に上昇させ、酢酸エチル2Lを添加し、10~30分間撹拌し、酢酸エチル層を沈降させ、分離する)で抽出した。合わせた酢酸エチル層を、20~30℃で8% NaHCO3溶液(水5L+NaHCO 0.4Kg)及び10%塩化ナトリウム溶液(水5L+塩化ナトリウム0.5Kg)で順次洗浄した。酢酸エチル層を真空下、55℃未満で蒸留して、化合物2(収率=1.48kg w/w w.r.t化合物3、収率100%と仮定)を得て、単離することなくステップ2.1で使用した。
【0051】
キラリティ制御:
化合物2のキラリティは、(S)-メチル4-(1-アミノエチル)ベンゾエート(化合物4)出発物質から商業的に得られる。
【0052】
ステップ2.1(段階4B)
THF(2.96L)を、55℃未満の温度で化合物2(粗物質、1.48kg)との反応器に投入した。THFを真空下で反応器から留去し、反応器に55℃未満の温度でTHF(2.96L)を再び装入した。THFを真空下で反応器から再び留去し、反応器にTHF(7.4L)を再び装入した。反応塊を10から30℃に冷却した。NaOH(水中7.4Lで0.3kg)を反応塊に10~30℃で投入した。温度を35から50℃に上げ、反応塊を8から14時間撹拌した。反応の進行をHPLCによってモニターした。
【0053】
サンプリング手順:HPLC用の反応塊2mlを取る。
【0054】
合格基準:化合物2が1.0%以下である。
【0055】
反応が完了していない場合:反応塊を35~50℃で1~3時間さらに撹拌する。
【0056】
完了すると、反応塊を0~10℃の温度に冷却した。反応塊に10LのHCl溶液(13.32L水中1.48L濃HCl)を0~30℃でゆっくり添加することによって、反応塊のpHを1.5~2.5に調整した。反応塊を酢酸エチル(11.84L)で抽出し、再び酢酸エチル(10.36L)で抽出した。合わせた酢酸エチル層を10%塩化ナトリウム溶液(水7.4L+塩化ナトリウム0.74Kg)で洗浄した。有機層を、粒子を含まない濾過によって別の反応器に移した。酢酸エチルを真空下、55℃未満の温度で完全に留去した。IPA(1.48L)を55℃未満の温度で残渣に添加した。IPAを真空下で反応塊から留去した。IPA(7.4L)を再び反応塊に投入し、反応塊を55~65℃の温度に加熱して透明な溶液を得た。反応塊を55~65℃で10~30分間撹拌し、次いで40~50℃に冷却した。水(10.36L)を40~50℃で反応塊にゆっくり添加し、反応塊を40~50℃で30~60分間撹拌した。反応塊を20~30℃に冷却し、20~30℃で60±15分間撹拌した。反応塊をさらに5~15℃に冷却し、5~15℃で2~4時間撹拌した。次いで、沈殿した固体を濾過し、固体を2.96Lの(1:2V/V)IPA+水混合物、次いで1.48Lの水、続いて1.48Lの(1:2v/v IPA+水混合物で順次洗浄した。湿潤材料を55~65℃で10~20時間乾燥させた。カールフィッシャー滴定を使用して含水量によって材料の乾燥の進行をモニターした。含水率の合格基準は1.0%以下である。含水量が合格基準を満たさない場合、55~65℃で2~4時間乾燥を継続し、含水量を確認する。乾燥の目標基準を満たした後、乾燥機から材料を取り出して、粗表題化合物1(0.9~1.3kg、収率=70~90%)を得る(段階4B)。
【0057】
ステップ3.1(段階4C)
メタノール(5L)を反応器に20~30℃で投入した。粗化合物1段階4Bからの生成物(1.0kg)を反応器に添加した。反応塊を55~65℃に加熱し、30~45分間撹拌して透明な溶液を得た。次いで、反応塊を30~50℃に冷却し、粒子を含まない濾過(5ミクロンフィルター)によって別の反応器に移した。反応塊を30~50℃でメタノール(2L)ですすぎ、粒子を含まない濾過(5ミクロンフィルター)によって別の反応器に移した。反応塊を5~15℃に冷却し、水(13L)を5~25℃で反応塊にゆっくり添加した。水の添加が完了した後、反応塊を20~30℃の温度に加熱し、同じ温度で2~4時間撹拌した。沈殿した固体を濾過し、固体を3Lの(1:2V/V)MeOH+水混合物で洗浄した。湿潤材料を55~65℃で10~20時間乾燥させた。材料の乾燥の進行を、(i)カールフィッシャー滴定を使用する含水量及び(ii)GCによるメタノール含有量によってモニターした。含水率の合格基準は1.0%以下であり、メタノール含有率の合格基準は3000ppmである。含水量及びメタノール含有量が合格基準を満たさない場合、55~65℃で2~4時間乾燥を継続し、含水量及びメタノール含有量を確認する。乾燥の目標基準を満たした後、乾燥機から材料を取り出して、化合物1の結晶性遊離酸形態を白色固体として得た(0.9~0.98kg、収量=90~98%)。
【0058】
実施例1B:
【化16】

或いは、化合物1は、以下の合成から製造することができる。化合物2は、参照により本明細書に全体が組み込まれる米国特許第8,686,018号明細書に記載されているように調製することができる。
【0059】
反応器に化合物2(1当量)を投入し、続いてTHF(5V)を投入した。反応物を撹拌し、1M NaOH(5V)を20~25℃で添加した。反応物を60~65℃に加熱し、完了をモニターした(約4~6時間)。完了すると、反応物を0~10℃に冷却し、1M HCl(6V)をゆっくり投入した。次いで、反応物にEtOAc(8V)を投入し、撹拌し、相分離させ、次いで、有機相を水相から除去した。水相をEtOAc(8V)で逆抽出した。次いで、有機相を合わせ、12%ブライン(5V)で洗浄した。水相を除去し、有機相を濃縮した。次いで、濃縮有機相をMeOHと2回共沸した(1V)。次いで、粗有機材料にMeOH(2V)を投入し、溶液が透明になるまで50~60℃に加熱した。次いで、水(6V)を溶液にゆっくり添加した。溶液を0.1℃/分の速度で15~20℃の温度まで冷却した。次いで、沈殿した固体を溶液から濾別し、1VのMeOH:水(1:3v/v)で2回洗浄した。集めた固体を、一定の重量が達成されるまで乾燥させ、全体として、化合物1(0.85W、87%)を白色固体として得た。
【0060】
実施例2:化合物1の結晶性遊離酸形態のXRPD特性評価:
化合物1の結晶性遊離酸形態についての粉末X線回折(XRPD)パターンを図1に示す。
【0061】
実施例3:TG-DTA化合物1の結晶性遊離酸形態の特性評価:
化合物1の結晶性遊離酸形態の熱重量測定及び示差熱分析(TG-DTA)を図2に示す。DTA曲線では、150℃付近(オンセット)に吸熱ピークが認められた。TG曲線において、180℃まで測定可能な重量減少は観察されなかった。化合物1の結晶性遊離酸形態の融解範囲は、USP-NF 37に従って152℃~154℃で観察された。
【0062】
実施例4:化合物1の結晶性遊離酸形態の吸湿性の特性決定:
動的水蒸気吸着(DVS)法を用いて、化合物1の結晶性遊離酸形態の吸湿性を測定した。化合物1の結晶性遊離酸形態についての吸着及び脱着等温線を図3に示す。25℃、相対湿度5%~95% RHの範囲にわたって、化合物1の結晶性遊離酸形態の有意な重量変化は観察されなかった。結果は、化合物1の結晶性遊離酸形態が非吸湿性であることを示した。
【0063】
化合物1の結晶性遊離酸形態の要約データ:
化合物1の結晶性遊離酸の物理的及び化学的特性を表1に要約する。
【0064】
【表1】
図1
図2
図3
【国際調査報告】