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特表2024-545697フィブリノーゲンを含む製剤及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】フィブリノーゲンを含む製剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/38 20060101AFI20241203BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20241203BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241203BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20241203BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241203BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20241203BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20241203BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20241203BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20241203BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K38/38
A61P7/04
A61P43/00 121
A61K38/36
A61K9/14
A61L15/32 100
A61L15/28 100
A61L15/26 100
A61L15/44 100
A61L15/58 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537484
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 IL2022051316
(87)【国際公開番号】W WO2023119265
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/292,173
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511203455
【氏名又は名称】オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ラバー-シャピラ・ニナ
(72)【発明者】
【氏名】ファインゴールド・オムリ
(72)【発明者】
【氏名】デアングリス・アシュリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076BB31
4C076CC14
4C076FF01
4C081AA02
4C081AA03
4C081BB04
4C081CA16
4C081CA161
4C081CD02
4C081CD021
4C081CD17
4C081CD171
4C081CD172
4C081CD18
4C081CD23
4C081DA05
4C081DC02
4C081DC13
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA18
4C084DA36
4C084DC11
4C084DC12
4C084MA02
4C084MA43
4C084MA63
4C084NA05
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZC751
(57)【要約】
本発明は、アルブミンと、フィブリノーゲンを含む凝固性タンパク質とで構成された組成物、及び例えば、出血を治療するための、その使用に関する。具体的には、本組成物は、アルブミンと、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質とで構成されており、アルブミン及び1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質は、総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度で存在し、凝固性タンパク質フィブロネクチンは、総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の量で存在するか又は存在せず、アルブミンの凝固性タンパク質フィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、少なくとも1:15である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、を含む組成物であって、前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及び前記アルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度であり、前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、前記フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の量であるか又は存在せず、前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、組成物。
【請求項2】
前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及び前記アルブミンが、約90%~約99.5%の総濃度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及び前記アルブミンが、総タンパク質重量に基づいて少なくとも95%の総濃度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記凝固性タンパク質が、少なくとも90%のフィブリノーゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記凝固性タンパク質が、少なくとも95%のフィブリノーゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記フィブロネクチンが、約0.3重量%未満の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、1:1~1:15である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、1:1~1:10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、1:1.6~1:3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルブミンの含有量が、約0.5重量%~約55重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記アルブミンの含有量が、約4.5重量%~約55重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記アルブミンの含有量が、約5重量%~約43重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
乾燥形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
粉末形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
剥離力試験によって測定される少なくとも40N/mの組織接着性を特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
トロンビンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記アルブミンの含有量が、約5重量%~約43重量%である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
約0.5%未満のフィブロネクチンを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、トロンビンと、を含む組成物であって、前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及び前記アルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度であり、前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、前記フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の量であるか又は存在せず、前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15であり、前記組成物が粉末形態である、組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を含む、製造物品。
【請求項21】
創傷被覆材である、請求項20に記載の製造物品。
【請求項22】
少なくとも1層の吸収性織布又は編布を含む、請求項20に記載の物品。
【請求項23】
前記吸収性織布又は編布が、1つ又は2つ以上の酸化多糖を含む、請求項22に記載の製造物品。
【請求項24】
前記吸収性織布又は編布が、酸化セルロース(OC)、酸化再生セルロース(ORC)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項22に記載の製造物品。
【請求項25】
少なくとも1層の吸収性不織布を含む、請求項20に記載の製造物品。
【請求項26】
前記吸収性不織布が、乳酸、ラクチド(L-、D-、メソ、及びD,L混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートからなる群から選択される1つ又は2つ以上のモノマーの脂肪族ポリエステルポリマー又はコポリマーで構成されている、請求項25に記載の製造物品。
【請求項27】
前記組成物が、前記不織布全体にわたって実質的に均一に分散している、及び/又は前記不織布の表面上に配置されている、請求項25に記載の製造物品。
【請求項28】
局所投与に使用するための、請求項1に記載の組成物又は請求項20に記載の製造物品。
【請求項29】
組織接着剤に使用するための、請求項1に記載の組成物又は請求項20に記載の製造物品。
【請求項30】
出血又はそれに関連する任意の障害の治療、抑制、抑止又は遅延に使用するための、請求項1に記載の組成物又は請求項20に記載の製造物品。
【請求項31】
出血又はそれに関連する任意の障害を治療する、抑制する、抑止する又は遅延させるための方法であって、それを必要とする対象の創傷組織に、有効量の請求項1又は19又は20に記載の組成物を局所投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記出血が、損傷誘発性出血、手術誘発性出血、又は外傷誘発性出血のうちの少なくとも1つである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記出血が、外科処置中である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記外科処置が、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭頸部手術、硬膜手術、脊椎手術、骨盤手術、皮膚処置、又は皮下組織処置を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物又は前記製造物品を前記創傷組織に押し当てることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記押し当てが、前記組成物又は前記物品の前記創傷組織の少なくとも一部への接着を可能にするのに十分な時間にわたる、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィブリノーゲンを含む組成物に関する。本発明は、とりわけ、アルブミンと非常に少量のフィブロネクチンとを含むフィブリノーゲン調製物に関する。
【0002】
(参照文献)
本開示の主題の背景として関連性があるとみなされる参照文献を以下に列記する。
-米国特許第7,241,603号
-米国特許出願第2016/0015792号
-米国特許第9,084,728号
-米国特許第8,962,025号
-米国特許第10,111,980号
-米国特許第9,056,092号
-国際公開第2000/009018号
-国際公開第1992/013495号
-米国特許出願第2020/0054720号
-Bar,L.,et al.The binding of fibrin sealant to collagen is influenced by the method of purification and the cross-linked fibrinogen-fibronectin(heteronectin)content of the「fibrinogen」component,Blood Coagulation & Fibrinolysis:2005,16(2),111-117。
【0003】
本明細書において上記参照文献を承認することは、これらが本開示の主題の特許性と何らかの形で関連すると解釈することを示唆するものではない。
【背景技術】
【0004】
出血の制御は、失血を最小限に抑えるために外科処置において必須かつ重要である。組織接着剤として使用されるか、又は止血の制御のために使用される生物学的グルー/シーラントについて、当該技術分野で説明されている。
【0005】
フィブリノーゲンは、凝固カスケードにおいて重要な役割を果たし、とりわけ、フィブリンパッチ及びフィブリンシーラントを含む、様々な止血製品及びシーリング製品中の重要な成分であると考えられている。現在のフィブリノーゲン製品は、フィブリノーゲンに加えて、フィブリノーゲンとともに血漿から精製される他の成分を含む。これらの化合物には、例えば、第VIII因子、第XIII因子、フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor、vWF)、並びにフィブロネクチンなどの凝固因子が含まれ、後者は、組織接着の促進に必須であることが以前に示された(Bar,L.,et al.,Blood Coagulation & Fibrinolysis:2005,16(2),111-117)。
【0006】
米国特許第7,241,603号は、フィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含むタンパク質組成物を製造するための方法について記載しており、フィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含む出発溶液が沈殿組成物で処理され、これにより、一段階沈殿でフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含む沈殿物が形成され、形成された沈殿物が、任意選択で、それ自体が既知の方法によって更に処理される。
【0007】
米国特許出願第2016/0015792号は、トロンビン及びフィブリノーゲンを含む医学的使用に好適な滅菌粉末組成物、及びそれを製造するための方法に関する。
【0008】
米国特許第9,084,728号は、乾燥安定止血組成物を作製するためのプロセスについて記載している。
【0009】
米国特許第8,962,025号は、シーリング用途のための組成物、方法、及びキットについて記載している。
【0010】
米国特許第10,111,980号は、水性媒体の添加時に止血処置における使用に好適な実質的に均一なペーストを形成する1つ又は2つ以上のポリオールを含む乾燥組成物について記載している。
【0011】
米国特許第9,056,092号は、生体吸収性足場材料、凍結乾燥トロンビン粉末、凍結乾燥フィブリノーゲン粉末、及び溶融性結合剤粉末を含み、全ての粉末が生体吸収性足場材料上に配置されている、止血パッドについて記載している。
【0012】
国際公開第2000/009018号は、血管シーラント及び創傷被覆材としての医学的使用のための重合I型及び/又はIII型コラーゲンベースの組成物、並びにその調製について記載している。
【0013】
国際公開第1992/013495号は、ポリエチレングリコール(「PEG」)及びグリシン沈殿技法を使用してウシ血漿から得られるフィブリノーゲンベースの組成物について記載している。
【0014】
米国特許出願第2020/0054720号は、グリセロール、安定液体トロンビン組成物、及び止血組成物で構成された滅菌安定液体トロンビン組成物を大規模調製するための方法、並びにキットを提供している。
【0015】
Bar,L.ら(2005)は、フィブリノーゲン調製物について説明しており、高度に精製されたタンパク質を用いた実験の使用により、フィブロネクチンが、活性化第XIII因子(トランスグルタミナーゼ)の作用下でのフィブリノーゲンのコラーゲンへの漸進的結合を促進するのに必須であることを示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、を含む組成物であって、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度で存在し、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の濃度であるか又は存在せず、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、組成物を提供する。
【0017】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、トロンビンと、を含む組成物であって、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度で存在し、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の濃度であるか又は存在せず、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、組成物を提供する。
【0018】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、を含む組成物を含む製造物品であって、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度で存在し、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の濃度であるか又は存在せず、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15であり、組成物が粉末形態である、製造物品を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、本製造物品は、創傷被覆材である。
【0020】
いくつかの更なる態様によれば、本開示は、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、を含む組成物であって、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度で存在し、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の濃度であるか又は存在せず、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、組成物を更に提供する。本開示は、例えば、組織接着剤に使用するための、本組成物を含む物品を更に提供する。
【0021】
いくつかの更なる態様によれば、本開示は、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、を含む組成物であって、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度で存在し、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の濃度であるか又は存在せず、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、組成物を更に提供する。本開示は、出血又はそれに関連する任意の障害の治療、抑制、抑止、又は遅延に使用するための、本組成物を含む物品を更に提供する。
【0022】
いくつかの他の態様によれば、本開示は、出血又はそれに関連する任意の障害を治療する、抑制する、抑止する、又は遅延させるための方法であって、それを必要とする対象の創傷組織に、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンを含む有効量の組成物を局所投与することを含み、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度で存在し、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の量であるか又は存在せず、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、方法を提供する。本開示は、本組成物を含む物品であって、それにより、出血又はそれに関連する任意の障害を治療する、抑制する、抑止する、又は遅延させるための、物品を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、実際にその主題をどのように実施することができるのかを例示するために、ここで添付の図面を参照しながら単なる非限定的な例によって実施形態について説明する。
図1】組織剥離力試験を使用した総タンパク質に対するアルブミン%の関数として例示的なサンプルの組織接着を示すグラフであり、エラーバーは標準偏差を表し、p値はプールt検定によって計算したものである。
図2】組織剥離力試験を使用した総タンパク質に対するフィブリノーゲン%の関数として組織剥離力を示す棒グラフであり、エラーバーは標準偏差を表す。
図3】アルブミン%の関数として組織剥離力を示す棒グラフであり、Y軸は平均組織剥離力(N/メートル)を示し、X軸はアルブミン%を示し、エラーバーは標準偏差を表す。
図4】切除した腎臓に押し当てたフィブリノーゲン組成物を含む例示的な創傷被覆材を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
出血の制御は、失血を最小限に抑え、術後合併症を軽減し、手術室での手術時間を短縮するために、例えば、外科処置において必須かつ重要である。
【0025】
本発明者らは、驚くべきことに、多量のフィブリノーゲン及び非常に少量のフィブロネクチンを含み、時にはフィブロネクチンを本質的に含まない純粋なフィブリノーゲン調製物が、アルブミンと組み合わせた場合に、非常に有効であり、強力な組織接着を達成し、止血活性も開始することを見出した。この少量のフィブロネクチン(存在する場合)は、数ある特徴の中でもとりわけ、本開示のフィブリノーゲン調製物を既知のフィブリノーゲン調製物と区別する。
【0026】
したがって、本開示は、フィブリノーゲン、アルブミン、及び少量のフィブロネクチンを含み、時にはフィブロネクチンを本質的に含まない組成物に関する。かかる組成物は、時には、純粋なフィブリノーゲン組成物とみなされ得る。
【0027】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、を含む組成物であって、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90w/w%の総濃度であり、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であるか又は存在せず、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、組成物を提供する。
【0028】
本組成物は、時には、本明細書で「フィブリノーゲンを含む組成物(fibrinogen-comprising composition)」と呼ばれる。
【0029】
以下の文書において、本組成物について言及する場合、本明細書に開示される製造物品、方法、及びキットについても言及するものとして理解されるべきである。したがって、本組成物に関して特徴を提供する場合はいつでも、製造物品、方法、及びキットに関して同じ特徴を定義するものとして理解されるべきである。
【0030】
以下の実施例1に示されるように、少量のフィブロネクチンを含む純粋なフィブリノーゲン調製物は、アルブミンの添加時に強力な組織接着を達成した。実施例2に示されるように、本明細書に記載の組成物を含むパッチの投与後に完全な止血が達成された。
【0031】
したがって、アルブミン及び少量のフィブロネクチンを含むか、又は時にはフィブロネクチンを含まない純粋なフィブリノーゲン調製物が、組織によく接着し、かつ恒常性を達成するため、非常に有効であることが示唆された。
【0032】
本明細書に記載されるように、本組成物は、凝固性タンパク質を含む。本開示の文脈において、形成された血餅の一部である「凝固性タンパク質」は、血漿タンパク質のうちの1つ又は2つ以上を包含する。
【0033】
典型的には、「凝固性タンパク質」という用語は、血餅形成の一環として活性化される全ての酵素を包含しないものとして理解されるべきである。凝固性タンパク質の非限定的な例としては、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、アルファ2抗プラスミン、及びビトロネクチンが挙げられる。
【0034】
本組成物中の凝固性タンパク質の含有量は、当該技術分野で既知の任意の方法によって計算することができる。例えば、凝固性タンパク質の含有量は、凝固性タンパク質及び総タンパク質の測定から計算することができる。「凝固性タンパク質」は、カルシウムイオンの存在下でトロンビンを用いて希釈サンプルを凝固させることによって測定することができる。血餅が洗浄され、残りのタンパク質の含有量が測定される。測定は、重量測定によって行われ得るか、又は血餅をアルカリ性尿素若しくは他の試薬中に溶解させ、その後に続く分光光度タンパク質アッセイによって行われ得る。「総タンパク質」は、とりわけ、紫外分光光度法、色素結合アッセイ、例えば、クーマシー又はブラッドフォード、銅ベースのアッセイ、例えば、ビウレット、ローリー、及びビシンコニン酸(bicinchoninic acid、BCA)アッセイ、並びに免疫学的方法を含む様々な分析技法によって測定することができる。
【0035】
本組成物は、アルブミンも含む。アルブミンの含有量は、当該技術分野で既知の任意の方法によって計算することができる。例えば、アルブミンの含有量は、色素結合法、例えば、ブロモクレゾールグリーン及びブロモクレゾールパープル、電気泳動法、並びに免疫学的方法、例えば、免疫比濁法によって計算することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて少なくとも約91%の総濃度、総タンパク質乾物重量に基づいて時には少なくとも約92%、時には少なくとも約93%、時には少なくとも約94%、時には少なくとも約95%、時には少なくとも約96%、時には少なくとも約97%、時には少なくとも約97.5%、時には少なくとも約98%、時には少なくとも約98.5%、時には少なくとも約99%、時には少なくとも約99.2%、時には少なくとも約99.4%、時には少なくとも約99.6%、及び時には少なくとも約99.8%の総濃度の1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンは、総タンパク質乾物重量に基づいて少なくとも約95%の総濃度である。
【0037】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約90%~約100%の総濃度のアルブミン及び1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約90%~約99.5%の総濃度のアルブミン及び1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質を含む。
【0038】
いくつかの他の実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約90%~約99.9%の総濃度、時には総タンパク質乾物重量に基づいて約92%~約99.9%、約94%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%~約99.9%、約98%~約99.9%、約99%~約99.9%、約99.2%~約99.9%、約99.4%~約99.9%、約99.6%~約99.9%の総濃度の1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約90%の総濃度、総タンパク質乾物重量に基づいて時には約92%、時には約93%、時には約94%、時には約95%、時には約96%、時には約97%、時には約97.5%、時には約98%、時には約98.5%、時には約99%、時には約99.2%、時には約99.4%、時には約99.5%、時には約99.6%、時には約99.7%、時には約99.8%、及び時には約99.9%の総濃度の1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて99.5%の総濃度、総タンパク質乾物重量に基づいて時には約99.6%、時には約99.7%、時には約99.8%、時には約99.9%の総濃度の1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質は、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、アルファ2抗プラスミン、ビトロネクチン、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質は、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質は、フィブリノーゲンを含むか、又はフィブリノーゲンである。
【0044】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて少なくとも約91%の総濃度、総タンパク質乾物重量に基づいて時には少なくとも約92%、時には少なくとも約93%、時には少なくとも約94%、時には少なくとも約95%、時には少なくとも約96%、時には少なくとも約97%、時には少なくとも約97.5%、時には少なくとも約98%、時には少なくとも約98.5%、時には少なくとも約99%、時には少なくとも約99.2%、時には少なくとも約99.4%、時には少なくとも約99.6%、及び時には少なくとも約99.8%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含む。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲン及びアルブミンは、総タンパク質乾物重量に基づいて少なくとも約95%の総濃度である。
【0045】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約90%~約100%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含む。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約90%~約99.5%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含む。
【0046】
いくつかの他の実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約90%~約99.9%の総濃度、総タンパク質乾物重量に基づいて時には約92%~約99.9%、約94%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%~約99.9%、約98%~約99.9%、約99%~約99.9%、約99.2%~約99.9%、約99.4%~約99.9%、約99.6%~約99.9%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約90%の総濃度、総タンパク質乾物重量に基づいて時には約92%、時には約93%、時には約94%、時には約95%、時には約96%、時には約97%、時には約97.5%、時には約98%、時には約98.5%、時には約99%、時には約99.2%、時には約99.4%、時には約99.5%、時には約99.6%、時には約99.7%、時には約99.8%、及び時には約99.9%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約99.5%の総濃度、時には約99.6%、時には約99.7%、時には約99.8%、時には約99.9%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含む。
【0049】
本明細書に記載されるように、フィブリノーゲンを含む組成物中のフィブリノーゲンに対するアルブミンの重量比は、それぞれ、少なくとも約1~15(0.067)である。
【0050】
本開示の態様とみなされ得るいくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、を含むフィブリノーゲンを含む組成物であって、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲンを含み、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも約1:15である、フィブリノーゲンを含む組成物が提供される。
【0051】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、フィブリノーゲン及びアルブミンを含み、それぞれのアルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、少なくとも約1:14(0.07)、時には少なくとも約1:13(0.076)、時には少なくとも約1:12(0.083)、時には少なくとも約1:11(0.09)、時には少なくとも約1:10(0.1)、時には少なくとも約1:9(0.11)、時には少なくとも約1:8(0.125)、時には少なくとも約1:7(0.14)、時には少なくとも約1:6(0.167)、時には少なくとも約1:5(0.2)、時には少なくとも約1:4(0.25)、時には少なくとも約1:3.5(0.28)、時には少なくとも約1:3(0.31)、時には少なくとも約1:2.5(0.4)、時には少なくとも1:2(0.5)、時には約1:1.6(0.625)、時には約1:1.5(0.66)、時には少なくとも約1:1.4(0.71)、時には少なくとも約1:1.3(0.77)、及び時には少なくとも約1:1.2(0.83)である。
【0052】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、フィブリノーゲン及びアルブミンを含み、それぞれのアルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、約1:0.8(1.25)~約1:15(0.067)である。
【0053】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、フィブリノーゲン及びアルブミンを含み、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、約1:0.9~約1:15(0.067)、時には約1:1~約1:15、時には約1:1~約1:14、時には約1:1~約1:13、時には約1:1~約1:12、時には約1:1~約1:11、時には約1:1~約1:10、時には約1:1~約1:9、時には約1:1~約1:8、時には約1:1~約1:7、及び時には約1:2~約1:7である。
【0054】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、フィブリノーゲン及びアルブミンを含み、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、約1:1~約1:10、時には約1:1.6~約1:3である。
【0055】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、フィブリノーゲン及びアルブミンを含み、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、約1:0.8、時には約1:0.9、時には約1:1、時には約1:1.1、時には約1:1.2、時には約1:1.3、時には約1:1.4、時には約1:1.5、時には約1:1.6、時には約1:1.7、時には約1.1.8、時には約1:1.9、時には約1:2、時には約1:3、時には約1:4、時には約1:5、時には約1:6、時には約1:7、時には約1:8、時には約1:9、時には約1:10、時には約1:11、時には約1:12、時には約1:13、時には約1:14、及び時には約1:15である。
【0056】
本明細書に記載されるように、アルブミン添加が接着を増強させた。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約0.1%~約55%のアルブミンを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約0.5%~約55%のアルブミン、乾燥基準で本組成物中の総タンパク質重量に基づいて時には約0.5%~約53%、時には約0.5%~約50%、時には約0.5%~約48%、時には約0.5%~約45%、時には約0.5%~約43%のアルブミンを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約1%~約55%、乾燥基準で本組成物中の総タンパク質量に基づいて時には約3%~約55%、時には約4.5%~約55%、時には約5%~約53%、時には約5%~約50%、時には約5%~約48%、時には約5%~約45%、時には約5%~約43%のアルブミンを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約10%~約55%、乾燥基準で本組成物中の総タンパク質量に基づいて時には約10%~約53%、時には約10%~約50%、時には約10%~約48%、時には約10%~約45%、時には約10%~約43%のアルブミンを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約10%~約55%、乾燥基準で本組成物中の総タンパク質量に基づいて時には約12%~約55%、時には約15%~約55%、時には約18%~約55%、時には約20%~約55%のアルブミンを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物重量に基づいて約10%~約55%、乾燥基準で本組成物中の総タンパク質量に基づいて時には約12%~約53%、時には約14%~約50%、時には約16%~約48%、時には約18%~約45%、時には約20%~約40%、時には約23%~約40%のアルブミンを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、乾燥基準で本組成物中の総タンパク質量に基づいて約1%(1mg/ml)のアルブミン、時には約5%、時には約10%、時には約12%、時には約15%、時には約17%、時には約20%、時には約23%、時には約25%、時には約27%、時には約30%、時には約32%、時には約35%、時には約38%、時には約40%、時には約43%、時には約45%、時には約47%、時には約50%、時には約53%のアルブミンを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、本組成物中の総タンパク質量に基づいて約20%、時には約23%、時には約25%、時には約27%、時には約30%、時には約32%、時には約35%、時には約38%、時には約39%、時には約40%のアルブミンを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。
【0065】
フィブリノーゲンを含む組成物がフィブロネクチン、免疫グロブリン、プラスミノーゲン、vWF、第VIII因子、アンチトロンビンIII、及びセルピンタンパク質などの他の血液由来タンパク質を含み得る一方で、これらは、存在する場合、少量であり、それ故に、本明細書に記載の組成物は、純粋なフィブリノーゲン組成物とみなされる。
【0066】
「少量」の他の血液由来タンパク質について言及する場合、本組成物中の総タンパク質量に基づいて約10%未満である、本組成物中の総タンパク質量に基づいて時には約8%未満、時には約6%未満、時には約5%未満、時には約3%未満、時には約1%未満、及び時には約0.6%未満であるとして理解されるべきである。
【0067】
典型的には、「純粋なフィブリノーゲン」という用語は、総凝固性タンパク質乾物に基づいて少なくとも約90w/w%の凝固性フィブリノーゲンを含む組成物を指す。言い換えれば、フィブリノーゲンを含む組成物は、少なくとも90%のフィブリノーゲンを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、総凝固性タンパク質乾物に基づいて少なくとも約91%のフィブリノーゲン、総凝固性タンパク質乾物に基づいて時には少なくとも約92%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約93%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約94%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約95%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約96%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約97%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約98%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.1%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.2%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.3%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.4%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.5%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.6%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.7%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.8%のフィブリノーゲン、時には少なくとも約99.9%のフィブリノーゲンを含む。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物中の凝固性タンパク質は、総凝固性タンパク質乾物に基づいて約100%のフィブリノーゲンを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物中の凝固性タンパク質は、総凝固性タンパク質乾物に基づいて約91%~100%のフィブリノーゲンを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、本組成物中の凝固性タンパク質は、総凝固性タンパク質乾物に基づいて約90%~約99.9%のフィブリノーゲン、総凝固性タンパク質乾物に基づいて時には約91%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約92%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約93%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約94%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約95%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約96%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約97%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約97.5%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約98%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約98.5%~約99.9%のフィブリノーゲン、時には約99%~約99.9%のフィブリノーゲンを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、本組成物中の凝固性タンパク質は、総凝固性タンパク質乾物に基づいて約99%~約99.9%のフィブリノーゲン、総凝固性タンパク質乾物に基づいて時には約99.1%~約99.9%、時には約99.2%~約99.9%、時には約99.3%~約99.9%、時には約99.4%~約99.9%、時には約99.5%~約99.9%を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、本組成物中の凝固性タンパク質は、総凝固性タンパク質乾物に基づいて約91%のフィブリノーゲン、総凝固性タンパク質乾物に基づいて時には約92%のフィブリノーゲン、時には約93%のフィブリノーゲン、時には約94%のフィブリノーゲン、時には約95%のフィブリノーゲン、時には約96%のフィブリノーゲン、時には約97%のフィブリノーゲン、時には約98%のフィブリノーゲン、時には約99%のフィブリノーゲン、時には約99.1%のフィブリノーゲン、時には約99.2%のフィブリノーゲン、時には約99.3%のフィブリノーゲン、時には約99.4%のフィブリノーゲン、約99.5%のフィブリノーゲン、時には約99.6%のフィブリノーゲン、時には約99.7%のフィブリノーゲン、時には約99.8%のフィブリノーゲン、及び時には約99.9%のフィブリノーゲンを含む。
【0073】
フィブリノーゲン源の例としては、組換えフィブリノーゲン及び血漿から精製されたフィブリノーゲンが挙げられるが、これらに限定されない。フィブリノーゲンの血漿源の非限定的な例としては、ヒト、ブタ、ウシ、及びサケが挙げられる。
【0074】
フィブリノーゲンの量は、当該分野で既知の任意の方法によって測定することができる。例えば、フィブリノーゲンは、クラウス速度論的凝固法、凝固性フィブリノーゲン法、免疫学的方法、又は電気泳動法のうちの1つ又は2つ以上によって測定することができる。クラウス法は、フィブリノーゲン含有溶液の血餅形成速度を測定することを含む。凝固性フィブリノーゲン法は、形成された血餅を洗浄することと、タンパク質の含有量を測定することと、を含む。クラウス法は、数秒(例えば、5~60秒)で凝固することができるフィブリノーゲンを測定する。凝固性タンパク質法(フィブリノーゲンを完全に凝固させ、その後に洗浄が続き、次いで、残りのタンパク質を測定することを含む)は、血餅形成に20~60分みておく。時には、このタイプのアッセイは、過去に血餅を秤量することによって血餅が測定されたため、重量測定フィブリノーゲンと呼ばれている。現在の方法では、凝固したタンパク質は、通常、溶解され、分光法又は様々な他のタンパク質測定法によって測定される。血餅形成エンドポイントの決定は、例えば、目測での血餅検出(血漿を用いて行われる場合、これは管傾斜法と呼ばれている)、粘度に基づく方法(Stago分析器が一例である)、及び吸光度の変化に基づいて血餅形成を同定する光学的方法(ほとんどの病院凝固分析器など)を含む、複数の方法によって行うことができる。かかる方法についての詳細は、例えば、内容が参照により組み込まれる、British Journal of Haematology,2003,121,396-404で見つけることができる。
【0075】
本明細書に記載されるように、驚くべきことに、本開示の組成物が、少量のフィブロネクチンを含むか、又は時にはフィブロネクチンを本質的に含まないという事実にもかかわらず、例えば、剥離試験で実証されるように、非常に有効であることが見出された。上記のように、これは、特に先行刊行物(例えば、Barら)を考慮すると、驚くべきことである。
【0076】
フィブロネクチンの量は、当該分野で既知の任意の方法によって測定することができる。例えば、フィブロネクチンは、電気泳動法、比濁法、又は免疫学的方法によって測定することができる。具体的には、かかる方法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay、ELISA)、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、及び比濁技法が含まれ得る。ネフェロメトリー法が、目的とするタンパク質の存在下で凝集して光を散乱させる抗体(粒子上にコーティングされていることもある)を使用することを含むことに留意されたい。
【0077】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物に基づいて約0.5%未満のフィブロネクチン、時には約0.4%未満、時には約0.3%未満、時には約0.2%未満、時には約0.1%未満、時には約0.05%未満のフィブロネクチン、時には約0.04%未満、時には約0.02%未満、時には更に約0.01未満、時には約0.005%未満のフィブロネクチン、時には約0.004%未満、時には約0.002%未満、及び時には更に約0.001%のフィブロネクチンを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物に基づいて約0.001%~約0.5%のフィブロネクチンを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物に基づいて約0.004%~約0.5%のフィブロネクチンを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質乾物に基づいて約0.01%~約0.4%のフィブロネクチン、時には約0.01%~約0.3%、及び時には約0.01%~約0.2%のフィブロネクチンを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、本組成物は、総タンパク質乾物に基づいて約0.01%のフィブロネクチン、時には約0.05%、時には約0.1%、時には約0.15%、時には約0.2%、時には約0.25%、時には約0.3%、時には約0.35%、時には約0.4%のフィブロネクチンを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、本組成物は、フィブロネクチンを本質的に含まない。
【0083】
フィブロネクチンを含まないフィブリノーゲンを含む組成物について言及する場合、このフィブリノーゲンを含む組成物が、本明細書に記載の方法などのフィブロネクチンを測定するために使用される方法で検出することができない量のフィブロネクチンを含む組成物を包含することに留意されたい。
【0084】
組換えフィブリノーゲン又はその組成物が時にはフィブロネクチンを含まないとみなされ得ることに留意されたい。時には、組換えフィブリノーゲン組成物がフィブロネクチンを含み得るが、フィブロネクチンの量が検出レベル未満であることに更に留意されたい。
【0085】
本開示の態様とみなすことができるいくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質重量に基づいて少なくとも90w/w%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは、総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、少なくとも1:15である。
【0086】
本開示の態様とみなすことができるいくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質重量に基づいて少なくとも約90w/w%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは、総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、1:1~1:15である。
【0087】
本開示の態様とみなすことができるいくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質重量に基づいて少なくとも約90w/w%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは、総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、1:1~1:10である。
【0088】
本開示の態様とみなすことができるいくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質重量に基づいて少なくとも約90w/w%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは、総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、約1:1.6~約1:3である。
【0089】
本開示の態様とみなすことができるいくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質重量に基づいて少なくとも約95w/w%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは、総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、1:1~1:10である。
【0090】
本開示の態様とみなすことができるいくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、総タンパク質重量に基づいて少なくとも約95w/w%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは、総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、約1:1.6~約1:3である。
【0091】
一実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、フィブリノーゲン及びアルブミンを含むクリオプレシピテートを含み、フィブロネクチンは、総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の量であるか又は存在しない。一実施形態では、アルブミンは、それぞれ、少なくとも1:15のアルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比で存在する。
【0092】
フィブリノーゲンを含む組成物は、任意の形態とすることができる。いくつかの実施形態によれば、フィブリノーゲンを含む組成物は、液体形態である。液体形態について言及する場合、室温で液体であるものとして理解されるべきである。液体形態である場合、いくつかの実施形態によれば、液体担体が、本質的に中性のpH、例えば、約6.0~約8.0の範囲、時には約6.5~約8.0の範囲、及び時には約7.0±0.5のpH、及び時には7.25±0.5のpHを有する緩衝液である。
【0093】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、水性製剤である。「水性製剤」について言及する場合、水分子を含む液体又は凍結形態の成分のブレンドを包含すると理解されるべきである。
【0094】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、凍結している。使用前に、フィブリノーゲンを含む組成物を解凍し、それにより、室温で液体形態にすることができる。
【0095】
いくつかの実施形態によれば、フィブリノーゲンを含む組成物は、粉末形態又は凍結乾燥形態である。粉末形態又は凍結乾燥形態である場合、使用時に製剤が液体形態になるように、フィブリノーゲンを含む組成物を好適な水性製剤と混合することができる。
【0096】
いくつかの他の実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物は、乾燥形態である。典型的には、乾燥形態である組成物について言及する場合、これは、3%未満の水性媒体、時には2%未満の水性媒体、及び時には1%未満の水性媒体を含む組成物に関連している。乾燥形態は、いくつかの例によれば、水性媒体を本質的に含まない。
【0097】
いくつかの更なる実施形態では、本組成物は、粉末形態である。
【0098】
いくつかの実施形態では、本組成物は、13μm以上のD50(粒子径中央値(「粒子サイズ中央値」とも呼ばれる))(すなわち、サンプル中の粒子の50%が13μm以上である)及び/又は100μm未満のD90(すなわち、サンプル中の粒子の90%が100μm以下である)を特徴とする粉末形態である。
【0099】
本開示は、トロンビン成分とフィブリノーゲンを含む組成物との組み合わせについても言及する。トロンビン成分とのかかる組み合わせを使用して、例えば、組織接着などの性能を改善することができる。
【0100】
したがって、いくつかの態様によれば、本開示は、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、トロンビンと、を含む組成物であって、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度であり、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の量であるか又は存在せず、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、組成物を提供する。
【0101】
トロンビンは、様々な源から得ることができる。いくつかの実施形態では、トロンビンは、ヒトトロンビンである。いくつかの他の実施形態は、トロンビンは、ウシトロンビンである。いくつかの実施形態では、トロンビンは、組換えトロンビンである。
【0102】
トロンビン成分は、いくつかの実施形態によれば、トロンビンに加えて、アルブミン、カルシウム、塩化ナトリウム、グリシン、酢酸塩、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、トロンビン成分は、約40mMのカルシウムを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、トロンビン成分は、トロンビンに加えて、又はトロンビンの不在下で、少なくとも1つのビタミンK依存性凝固因子を含む。いくつかの実施形態では、トロンビン成分は、トロンビンに加えて、免疫グロブリン、セルロプラスミン、又は補体C4を含む。ビタミンK依存性凝固因子は、第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインS、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0104】
フィブリノーゲンを含む組成物と、トロンビンとを含む組成物は、本明細書ではトロンビンを含む組成物/トロンビン含有組成物と呼ばれ、時には「フィブリンシーラント」又は「フィブリングルー」と呼ばれる。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、フィブリノーゲンを含む組成物とトロンビンは互いに分離されており、使用前に組み合わせられる。かかる実施形態によれば、フィブリノーゲンを含む組成物及びトロンビンは各々、別個の製剤、例えば、水性製剤として存在する。フィブリノーゲンを含む組成物及びトロンビンを1つずつ凍結させ、解凍することができ、その後、これらの2つが組み合わせられて使用されることに留意されたい。
【0106】
本明細書に記載されるように、本開示による組成物は、止血血餅形成組成物である。例えば、組織及び/若しくは血液と創傷(例えば、出血している創傷)上で直接、又は創傷に近接して接触しているときに、本組成物が反応して、その後、組織接着剤として作用する血餅を形成し、それにより、出血を止めることに留意されたい。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、トロンビンは、フィブリノーゲンを含む組成物の凍結乾燥及び粉砕後に、フィブリノーゲンを含む組成物に添加することができる。
【0108】
言い換えれば、粉末形態のフィブリノーゲンを含む組成物は、トロンビンと組み合わせられる。いくつかの実施形態では、トロンビンは、粉砕されて粉末になった後に、粉末形態のフィブリノーゲンを含む組成物と組み合わせられる。
【0109】
いくつかの実施形態では、トロンビン組成物の粉末は、5μm以上のD50(すなわち、サンプル中の粒子の50%が5μm以上である)及び/又は39μm以下のD90(すなわち、サンプル中の粒子の90%が39μm以下である)を特徴とする。
【0110】
いくつかの実施形態では、トロンビン粉末は、フィブリノーゲンを含む組成物粉末に添加される。したがって、この粉末は、個別に凍結乾燥され、粉砕されて粉末(本明細書では組み合わせられた粉末)になったトロンビン及びフィブリノーゲンを含む組成物を含む。
【0111】
この粉末は、例えば、以下に記載されるように、製造物品上に配置されるために更に使用され得る。
【0112】
いくつかの態様によれば、本開示は、本明細書に記載の組成物を含む製造物品を提供する。
【0113】
いくつかの実施形態では、本製造物品は、フィブリノーゲンを含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物を含む粉末が本製造物品上に配置される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本製造物品は、フィブリノーゲンを含む組成物及びトロンビンの両方を含む組成物を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本製造物品は、組成物とトロンビンを含む、フィブリノーゲンを含む粉末を含む。言い換えれば、フィブリノーゲンを含む組成物とトロンビンとを含む粉末(すなわち、組み合わせられた粉末)が製造物品上に配置される。
【0116】
本製造物品が乾燥形態のフィブリノーゲンを含む組成物を含む実施形態によれば、トロンビンは、本製造物品の適用前に創傷に別個に適用することができる。トロンビンは、当該分野で既知の任意の方法、とりわけ、噴霧によって適用され得る。
【0117】
本明細書で使用される本製造物品が、組織上、具体的には創傷組織上に配置されるのに好適な滅菌被覆材であると理解されるべきである。
【0118】
本製造物品の創傷組織上への適用時に、血餅が形成されるように乾燥粉末が水和されるべきであることに留意されたい。言い換えれば、任意の流体、例えば、血液が組織の表面上に存在して粉末の水和を可能にするという条件で、本製造物品を創傷組織上に及び/又は創傷組織に近接して配置することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、本製造物品は、本発明の組成物(トロンビンを含む又は含まない)を含む創傷被覆材であり、創傷、例えば、出血している創傷に近接して又はその上に直接配置されるように構成されている。
【0120】
本発明で使用される場合、「被覆材」という用語は、創傷の被覆に関連する。
【0121】
本開示の組成物を含む製造物品、具体的には創傷被覆材が、創傷被覆材と組み合わせられた組成物を指すことに留意されたい。
【0122】
「組み合わせられた」が、組成物と被覆材との間の任意の形態の会合/接触として理解されるべきであることに留意されたい。これには、以下に更に記載されるように、噴霧、塗布、液浸、浸漬、ブラッシング、鋳造、印刷、注入、コーティング、又はそれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0123】
本組成物が粉末形態である、例えば、凍結乾燥されている実施形態によれば、粉末を使用前に水溶液で湿らせ、創傷被覆材と組み合わせることができる。
【0124】
「被覆材」という用語は、本明細書で使用される場合、パッチ又はパッドと同様の意味を有するよう意図されており、これらは全て本明細書で互換的に使用され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、少なくとも1層を含む。いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、多層被覆材である。
【0126】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、裏打ち層である少なくとも1層を含む。
【0127】
本明細書で使用される「裏打ち」とは、本組成物に支持を提供する物理的構造を指す。補強布、ひいては裏打ち層が、止血及び/又は組織接着を達成するために、創傷被覆材が組織(例えば、創傷)上に配置されることを可能にする支持/強度を提供することに留意されたい。
【0128】
いくつかの実施形態では、裏打ち層は、補強布であるか、又はそれを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、補強布は、織布又は編布を含む。いくつかの実施形態では、織布又は編布は、生体適合性材料である。いくつかの実施形態では、織布又は編布は、生体不適合性材料である。
【0130】
いくつかの実施形態では、織布又は編布は、吸収性材料である。
【0131】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、吸収性織布又は編布の層を含む。
【0132】
いくつかの他の実施形態では、(裏打ち層を形成する)織布又は編布は、酸化多糖類を含む。
【0133】
いくつかの他の実施形態では、織布又は編布は、セルロース及び/又はその誘導体を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、織布又は編布は、酸化セルロース(OC)、酸化再生セルロース(ORC)、コラーゲン、又は合成ポリマー(例えば、ポリグラクチン910、「PG910」)を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、織布又は編布は、OCを含む。
【0136】
いくつかの他の実施形態では、織布又は編布は、ORCを含む。
【0137】
裏打ち層は、例えば、とりわけ、INTERCEED(登録商標)及びSURGICEL(登録商標)の商品名で知られているものを含む、当該技術分野で既知の裏打ち材とすることができる。
【0138】
吸収性止血剤のSURGICEL(登録商標)ファミリーは、4つの主な製品グループからなり、全ての止血用創傷被覆材はEthicon,Inc.(Somerville,N.J.,Johnson & Johnson Company)から市販されている。これらの製品には、SURGICEL(登録商標)(オリジナル)、SURGICEL(登録商標)NU-KNIT(登録商標)、SURGICEL(登録商標)FIBRILLAR(商標)、及びSURGICEL(登録商標)SNoW(商標)が含まれる。
【0139】
いくつかの実施形態では、多層創傷被覆材は、裏打ち層に加えて、少なくとも1層の吸収性不織布を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、多層創傷被覆材は、少なくとも1層の補強布及び少なくとも1層の吸収性不織布を含む。
【0141】
本明細書で使用される「不織布」という用語は、典型的には、例えば、紡績、織り、又は編み以外のプロセスによって製造された、接合布、形成布、又は設計布も含むが、これらに限定されない。
【0142】
いくつかの実施形態では、不織布は、乳酸、ラクチド(L-、D-、メソ、及びD,L混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートからなる群から選択される1つ又は2つ以上のモノマーの脂肪族ポリエステルポリマー又はコポリマーで構成された繊維を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、不織布は、グリコリド/ラクチドコポリマーを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、多層被覆材は、グリコリド/ラクチドコポリマーを含む不織布を含む少なくとも1層と、ORCを含む織布又は編布を含む少なくとも1層と、を含む。
【0145】
吸収性不織布は、吸収性織布又は編布に直接的又は間接的のいずれかで取り付けられてもよい。例えば、不織布は、ニードルパンチ加工、カレンダー加工、エンボス加工、若しくは水流絡合(hydroentanglement)、又は化学的接合若しくは熱接合により、吸収性織布又は編布に組み込まれてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンを含む組成物又はトロンビン含有組成物は、不織布全体に実質的に均一に分散している、及び/又は不織布の表面上に配置されている。
【0147】
本明細書に記載されるように、例えば創傷被覆材である製造物品は、それを必要とする対象の組織上に配置される。いくつかの実施形態では、本製造物品又は本組成物は、局所投与に使用するためのものである。
【0148】
本明細書に示されるように、本明細書に記載の創傷被覆材の適用(投与)が、接着時及び止血開始時に非常に有効であることが見出された。
【0149】
したがって、いくつかの態様によれば、本開示は、組織接着剤において使用するための、フィブリノーゲンを含む組成物、トロンビン含有組成物(いずれも本明細書で集合的に「組成物」と呼ばれる)、フィブリノーゲンを含む組成物を含む製造物品、又はトロンビン含有組成物を含む製造物品(いずれも本明細書で集合的に製造物品と呼ばれる)を提供する。
【0150】
組織接着は、当該技術分野で既知の任意の方法によって測定することができる。例えば、組織接着は、剥離試験によって測定することができる。いくつかの例では、組織接着性は、剥離力試験によって測定される少なくとも40ニュートン/メートル(N/m)の値で検討される。いくつかの例では、組織接着性は、剥離力試験によって測定される約40N/m~約90N/mの値で検討される。
【0151】
加えて、いくつかの態様によれば、本開示は、出血の制御に使用するための、フィブリノーゲンを含む組成物、トロンビン含有組成物(いずれも本明細書で集合的に組成物と呼ばれる)、フィブリノーゲンを含む組成物を含む製造物品、又はトロンビン含有組成物を含む製造物品(いずれも本明細書で集合的に製造物品と呼ばれる)を提供する。
【0152】
加えて、いくつかの態様によれば、本開示は、出血又はそれに関連する任意の障害の治療、抑制、抑止、又は遅延に使用するための、フィブリノーゲンを含む組成物、トロンビン含有組成物(いずれも本明細書で集合的に組成物と呼ばれる)、フィブリノーゲンを含む組成物を含む製造物品又はトロンビン含有組成物を含む製造物品(いずれも本明細書で集合的に製造物品と呼ばれる)を提供する。
【0153】
本開示は、いくつかの態様に従って、組織を接着するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の組成物又は製造物品を局所投与することを含み、組成物がフィブリノーゲンを含む組成物又はトロンビン含有組成物である、方法も提供する。組織接着剤について言及する場合、それが出血を止めるためのもの及び/又は生理学的漏出をシーリングするためのものであることに留意されたい。
【0154】
いくつかの実施形態では、本組成物及び本製造物品は、生理学的漏出のシーリングに使用するためのものである。生理学的漏出には、脳脊髄液(cerebrospinal fluid、CSF)の漏出、リンパ液の漏出、胆汁の漏出、胃腸(GI)内容物の漏出、膵液の漏出、肺からの空気漏れ、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0155】
本開示は、いくつかの態様に従って、出血を制御するための方法も提供する。本明細書で使用される出血の制御とは、出血又はそれに関連する任意の障害の治療、抑制、抑止、又は遅延を指す。
【0156】
本開示は、いくつかの態様に従って、出血又はそれに関連する任意の障害を治療する、抑制する、抑止する、又は遅延させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の組成物又は製造物品を局所投与することを含み、組成物がフィブリノーゲンを含む組成物又はトロンビン含有組成物である、方法も提供する。
【0157】
本発明の方法は、それを必要とする対象に、有効量の組成物又は本明細書に記載の製造物品を局所投与する工程を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、それを必要とする対象の組織に、フィブリノーゲンを含む組成物又はフィブリノーゲンを含む製造物品を局所投与すること含み、組成物は1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンを含み、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及びアルブミンは総タンパク質重量に基づいて少なくとも90w/w%の総濃度であり、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質は総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量のフィブロネクチンを含み、1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質はフィブリノーゲンを含み、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、少なくとも1:15である。
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、それを必要とする対象の組織に、フィブリノーゲンを含む組成物又はフィブリノーゲンを含む組成物を含む製造物品を局所投与することを含み、組成物は総タンパク質重量に基づいて少なくとも90w/w%の総濃度のフィブロネクチン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、少なくとも1:15である。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、それを必要とする対象の組織に、フィブリノーゲンを含む組成物又はフィブリノーゲンを含む組成物を含む製造物品を局所投与することを含み、組成物は総タンパク質重量に基づいて少なくとも90w/w%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、1:1~1:15である。
【0161】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、それを必要とする対象の組織に、フィブリノーゲンを含む組成物又はフィブリノーゲンを含む組成物を含む製造物品を局所投与することを含み、組成物は総タンパク質重量に基づいて少なくとも90w/w%の総濃度のフィブリノーゲン及びアルブミンを含み、フィブロネクチンは総タンパク質重量に基づいて約0.5w/w%未満の量であり、アルブミンのフィブリノーゲンに対する重量比は、それぞれ、約1:1.6~約1:3である。
【0162】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、それを必要とする対象の組織に、本明細書に記載のトロンビン含有組成物又はトロンビン含有組成物を含む製造物品を局所投与することを含む。
【0163】
本明細書で使用される場合、「出血」という用語は、出血に対する感受性の増加をもたらす少なくとも1つの止血欠損、例えば、血友病、血小板障害、又は止血系に影響を及ぼす投薬を指し得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、出血は、外部刺激によって引き起こされる。出血は、様々な理由、例えば、パーソナルケアに起因する、外傷に起因する、又は外科処置中の出血創傷であり得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、出血は、損傷誘発性出血、手術誘発性出血、又は外傷誘発性出血のうちの少なくとも1つであり得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、出血は、外科処置中である。
【0167】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、外科処置中に本組成物又は本製造物品を投与することを含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、出血を起こす危険性の高い対象に適用可能であり得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、外科処置中に出血に苦しんでいる対象に適用可能であり得る。
【0170】
本開示の創傷被覆材を使用することができる多くの外科処置が存在する。いくつかの実施形態では、外科処置は、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭頸部手術、硬膜手術、脊椎手術、骨盤手術、皮膚処置、及び/又は皮下組織処置を含む。
【0171】
本開示の創傷被覆材は、様々な創傷組織への適用(投与)に好適である。
【0172】
いくつかの実施形態では、創傷組織は、出血動脈であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、創傷組織は、出血静脈であるか、又はそれを含む。静脈は、大静脈であってもよい。
【0173】
いくつかの実施形態では、創傷組織は、毛細血管床であるか、又はそれを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、創傷被覆材の創傷組織の少なくとも一部への接着を可能にするのに十分な時間にわたって創傷被覆材を押し当てる/押し付けることを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、押し付け(押し当て)、任意選択で、手動押し付けによって、止血の補助剤として使用するためのものである。
【0176】
いくつかの実施形態では、本方法は、創傷被覆材の当該創傷組織の少なくとも一部への接着を可能にするのに十分な時間にわたって創傷被覆材を押し当てる(押し付ける)ことを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、本方法は、出血が本質的に止まるまで、創傷被覆材を創傷組織に押し当てる(押し付ける)ことを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、本方法は、水和、組織接着、及び止血を可能にするのに十分な時間にわたって創傷被覆材を創傷組織に押し当てる(押し付ける)ことを含む。
【0179】
理解されるように、水和、組織接着、及び止血のうちのいずれかを可能にするのに十分な時間は、治療される創傷及び出血の量に依存する。この時間を調整して、完全な止血を達成することができる。いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、約1分間、時には約3分間にわたって、創傷の少なくとも一部に押し付けられる。
【0180】
更に、本開示は、キット(パッケージ)を提供する。いくつかの実施形態では、本キットは、フィブリノーゲンを含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、本キットは、トロンビン含有組成物を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、本キットは、製造物品を含む。
【0182】
いくつかの実施形態によれば、本発明のキットは、本明細書で上述したように、出血又はそれに関連する任意の障害に苦しんでいる対象に使用するためのものである。本発明のキットが出血の危険性の高い対象における出血を予防するためにも使用され得ることが更に理解されるべきである。
【0183】
いくつかの実施形態では、本キットは、出血又はそれに関連する任意の障害を治療する、抑制する、又は遅延させるための製剤の使用説明書を更に含む。
【0184】
フィブリノーゲンを含む組成物及び/又はトロンビン含有組成物は、液体形態又は凍結形態で保管され、使用直前に解凍されてもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、本キットには、創傷被覆材の調製及び創傷へのその適用のために、フィブリノーゲンを含む組成物及び/又はトロンビン含有組成物と組み合わせて、製造物品、具体的には、創傷被覆材の使用説明書が提供されている。
【0186】
上で示したように、本発明の方法は、治療有効量の本発明の組成物を投与することを含む。本明細書に開示される目的のための「有効量」又は「治療的に有効な」とは、組成物の量が、本明細書に記載の疾患の1つ又は2つ以上の症状を治療する、抑制する、又は遅延させる、具体的には、出血を抑制する又は止めるのに有効であることを示す。
【0187】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトなどの任意の哺乳動物を含むが、これに限定されない、本明細書に記載の製剤で治療される生物を指す。
【0188】
本明細書で使用される「約」という用語は、言及された値よりも最大1%、より具体的には5%、より具体的には10%、より具体的には15%、いくつかの事例では最大20%以上又は以下逸脱する可能性のある値を指し、偏差範囲は整数値を含み、該当する場合には非整数値も含み、開示及び記載される連続範囲を構成する。
【0189】
本発明が、本明細書に開示される特定の実施例、方法工程、及び組成物に限定されず、したがって、かかる方法、工程、及び組成物がいくらか変化し得ることを理解されたい。また、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0190】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」が、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0191】
本明細書及び実施例並びに以下の特許請求の範囲全体を通して、別途文脈が必要としない限り、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、規定の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外するものではないことを暗示することが理解されるであろう。
【0192】
以下の実施例は、本発明の態様を行う際に本発明者らによって用いられた技法を代表するものである。これらの技法は本発明を行うための好ましい実施形態の例示であるが、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の趣旨及び意図された範囲から逸脱することなく、多数の修正を加えることができることを認識するするであろうことを理解されたい。
【0193】
非限定的な実施例
実施例1:組織接着試験-アルブミン用量研究
表1に示す以下のサンプルは、フィブリノーゲンに対する指示した%でアルブミンを添加することにより調製した。フィブロネクチンの量は総タンパク質重量の約0.4w/w%未満であった。これらを本明細書では「フィブリノーゲンを含む組成物」と呼ぶ。
【0194】
【表1】
【0195】
様々な量のアルブミン及びフィブリノーゲンを有するフィブリノーゲンを含む組成物を、表1に詳述した比率で調製した。フィブリノーゲンを含む組成物を凍結乾燥し、粉砕して粉末にした。トロンビンを凍結乾燥し、フィブリノーゲン組成物とは別個に粉砕した。
【0196】
フィブリノーゲンを含む組成物粉末を、凝固性フィブリノーゲン及びトロンビン活性の量が全てのサンプルにおいて一定になるように試験した(が、アルブミンの量は異なった)。表2の量は、剥離試験複製物毎に秤量した粉末の量を表す。
【0197】
【表2】
【0198】
組み合わせた粉末(フィブリノーゲン/アルブミン+トロンビン-「トロンビン含有組成物」)を、粉末を2つの真皮片間に挟んだウシ真皮剥離試験において組織接着について試験した。具体的には、Lampire Biological Laboratories,Inc.(Pipersville,PA 18947)からの真皮を、およそ4インチ×0.75インチの組織を露出させた状態で固定具/フレームに取り付け、次いで、様々な量の粉末を、フレームに取り付けた湿らせた組織に適用した。第2の湿らせた真皮片を、取り付けた組織の上に適用し、重りを組織の裏側に37℃で3分間適用した。全てのサンプルに3分間の押し付け時間を使用した。3分後、真皮の縁を掴み、90°剥離試験を組織の長さにわたって行った。組織接着結果を表3に要約する。
【0199】
【表3】
【0200】
図1は、表3の最初の5つの組成物の結果を、それらの対応する標準偏差値とともに示す。見ると分かるように、平均剥離力は、0.5%未満のアルブミンを有する組成物と比較して、23.8%及び38.5%のアルブミンを含む組成物において有意に増加する。これは、図1に示したt検定の低いp値から明らかである。
【0201】
図1は、フィブリノーゲンを含む組成物中の総タンパク質に対するアルブミン%の関数としての組織剥離力を更に示す。これに関連して、アルブミンがトロンビン含有組成物中に存在し得るが、その量は比較的少なく、加えて、トロンビンの量(存在する場合)はフィブリノーゲンの量と比較して少ないため、結果的に最終組成物中に比較的少量(微量添加)のアルブミンしか存在しないことに留意されたい。言い換えれば、図1がフィブリノーゲンを含む組成物中の総タンパク質に対するアルブミン%を示すことが示されているが、総タンパク質に対するアルブミン%とみなすこともできる(トロンビンの添加後であっても)。
【0202】
図1を見ると分かるように、組織接着はサンプル中のアルブミン%に依存した。剥離力の増加は約23.8%のアルブミン及び約38.5%のアルブミンを含むサンプルにおいて観察され、組織接着の増加を示す。アルブミンの量を55.6%に増加させると、剥離力が低下し、組織接着の低下を示す。
【0203】
これらの結果は、驚くべきことに、アルブミンが組織接着に影響を及ぼすこと、及びアルブミンの添加が接着を有意に改善することを示唆する。
【0204】
図2は、総タンパク質に対するフィブリノーゲン%の関数としての組織剥離力を示す。驚くべきことに、図2の結果は、フィブリノーゲンが99.5%未満又は100%であったサンプル番号2及びサンプル番号3(表1を参照されたい)において、組織剥離力が、99.5%のフィブリノーゲンを含むサンプル番号1で得た結果よりも高かったことを示す。
【0205】
総合すると、これらの結果は、アルブミンを38.5%の程度まで添加することにより、組織接着を増強させることができることを示す。フィブリノーゲンの更なる希釈により、組織剥離の低下がもたらされた。
【0206】
試験した全ての組成物は、少量のフィブロネクチン、すなわち、0.5%未満のフィブロネクチンを含んでいた。本実施例の結果は、予期せぬことに、少量のフィブロネクチンが存在した場合であっても組織接着が生じることを示す。
【0207】
実施例2:ブタ腎部分切除術モデル及び組織接着研究
本実施例を、困難な出血モデルにおける止血を試験するために設計した(Cornum RL et al.,The Journal of Urology 164,864-867,2000を参照されたい)。
【0208】
フィブリノーゲン、アルブミン、及びトロンビンを含む粉末を、酸化再生セルロース(ORC)及びポリグラクチン910を含むマトリックス上に適用した。本明細書でフィブリンパッチとも呼ばれるマトリックスの特性を表4に要約する。
【0209】
【表4】
【0210】
接着試験のために、フィブリンパッチ(長さ4インチ×幅0.75インチ)の条片を、パッチの一端がInstron張力計のロードセルに取り付けられた状態で、湿らせた組織表面に接着させた。フィブリンパッチを接着させ、3分間凝固させた後、ロードセルを組織表面から90°角度で上昇させることによってパッチを組織から除去した。フィブリンパッチを組織基質から分離するのに必要な力を、単位幅当たりの力(N/m)として記録した。
【0211】
示したように、コーティングしたマトリックスは、液体と接触すると表面に接着することができた。
【0212】
【表5】
フィブロネクチンの量は総タンパク質重量の0.4w/w%未満であった。
【0213】
表5及び図3を見ると分かるように、接着の増加が、全タンパク質の10%超の量のアルブミンを含むサンプルでコーティングしたマトリックスにおいて、実施例1にあるような組織接着試験によって観察された。
【0214】
加えて、コーティングしたマトリックスは止血効果を示した。具体的には、38.5%のアルブミンを含む製剤でコーティングしたマトリックス(上記の表1のサンプル3に対応する)は、表6に示すように、ブタ腎部分切除術モデルにおいて完全な止血を示した。
【0215】
技術的詳細:(1)評価中、平均動脈圧(MAP)を60mmHg超で維持し、収縮期圧を90mmHg超で維持した、(2)尾極からの平均腎臓切除(被膜は無傷の状態である)は、長さ約3.0cm及び深さ1.0cmであった。この部位での出血を重度と等級付けした、及び(3)適用後3分及び15分の両方の時点で、100%の成功率で完全な止血(4つのうち4つ)を達成した。再出血は観察されなかった。
【0216】
【表6】
「4」は重度の出血を示す。
【0217】
代表的な画像として図4を示す。この画像は、フィブリノーゲン組成物を含むパッドである創傷被覆材がブタ腎部分切除術モデルにおける出血表面に適用されている状態を示す。これらの結果は、本組成物が接着して出血を止めることができたことを示している。これは、フィブリノーゲン製剤中にアルブミンを含めることにより、組織表面に良好に接着することができ、かつ腎部分切除術モデルにおいて止血を達成することもできるパッチが生成されることを示す。
【0218】
〔実施の態様〕
(1) 1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、を含む組成物であって、前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及び前記アルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度であり、前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、前記フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の量であるか又は存在せず、前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15である、組成物。
(2) 前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及び前記アルブミンが、約90%~約99.5%の総濃度である、実施態様1に記載の組成物。
(3) 前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及び前記アルブミンが、総タンパク質重量に基づいて少なくとも95%の総濃度である、実施態様1又は2に記載の組成物。
(4) 前記凝固性タンパク質が、少なくとも90%のフィブリノーゲンを含む、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
(5) 前記凝固性タンパク質が、少なくとも95%のフィブリノーゲンを含む、実施態様1~4のいずれかに記載の組成物。
【0219】
(6) 前記フィブロネクチンが、約0.3重量%未満の量である、実施態様1~5のいずれかに記載の組成物。
(7) 前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、1:1~1:15である、実施態様1~6のいずれかに記載の組成物。
(8) 前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、1:1~1:10である、実施態様1~7のいずれかに記載の組成物。
(9) 前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、1:1.6~1:3である、実施態様1~8のいずれかに記載の組成物。
(10) 前記アルブミンの含有量が、約0.5重量%~約55重量%である、実施態様1~9のいずれかに記載の組成物。
【0220】
(11) 前記アルブミンの含有量が、約4.5重量%~約55重量%である、実施態様1~10のいずれかに記載の組成物。
(12) 前記アルブミンの含有量が、約5重量%~約43重量%である、実施態様1~11のいずれかに記載の組成物。
(13) 乾燥形態である、実施態様1及び12のいずれかに記載の組成物。
(14) 粉末形態である、実施態様1~13のいずれかに記載の組成物。
(15) 剥離力試験によって測定される少なくとも40N/mの組織接着性を特徴とする、実施態様1~14のいずれかに記載の組成物。
【0221】
(16) トロンビンを含む、実施態様1~15のいずれかに記載の組成物。
(17) 前記アルブミンの含有量が、約5重量%~約43重量%である、実施態様16に記載の組成物。
(18) 約0.5%未満のフィブロネクチンを含む、実施態様16又は17に記載の組成物。
(19) 1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質と、アルブミンと、トロンビンと、を含む組成物であって、前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質及び前記アルブミンが総タンパク質重量に基づいて少なくとも90%の総濃度であり、前記1つ又は2つ以上の凝固性タンパク質がフィブリノーゲン及びフィブロネクチンを含み、前記フィブロネクチンが総タンパク質重量に基づいて約0.5%未満の量であるか又は存在せず、前記アルブミンの前記フィブリノーゲンに対する重量比が、それぞれ、少なくとも1:15であり、前記組成物が粉末形態である、組成物。
(20) 実施態様1~19のいずれかに記載の組成物を含む、製造物品。
【0222】
(21) 創傷被覆材である、実施態様20に記載の製造物品。
(22) 少なくとも1層の吸収性織布又は編布を含む、実施態様20又は21に記載の物品。
(23) 前記吸収性織布又は編布が、1つ又は2つ以上の酸化多糖を含む、実施態様22に記載の製造物品。
(24) 前記吸収性織布又は編布が、酸化セルロース(OC)、酸化再生セルロース(ORC)、又はそれらの組み合わせを含む、実施態様22又は23に記載の製造物品。
(25) 少なくとも1層の吸収性不織布を含む、実施態様20~24のいずれかに記載の製造物品。
【0223】
(26) 前記吸収性不織布が、乳酸、ラクチド(L-、D-、メソ、及びD,L混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートからなる群から選択される1つ又は2つ以上のモノマーの脂肪族ポリエステルポリマー又はコポリマーで構成されている、実施態様25に記載の製造物品。
(27) 前記組成物が、前記不織布全体にわたって実質的に均一に分散している、及び/又は前記不織布の表面上に配置されている、実施態様25又は26に記載の製造物品。
(28) 局所投与に使用するための、実施態様1~19のいずれかに記載の組成物又は実施態様20~27のいずれかに記載の製造物品。
(29) 組織接着剤に使用するための、実施態様1~19のいずれかに記載の組成物又は実施態様20~27のいずれかに記載の製造物品。
(30) 出血又はそれに関連する任意の障害の治療、抑制、抑止又は遅延に使用するための、実施態様1~19のいずれかに記載の組成物又は実施態様20~27のいずれかに記載の製造物品。
【0224】
(31) 出血又はそれに関連する任意の障害を治療する、抑制する、抑止する又は遅延させるための方法であって、それを必要とする対象の創傷組織に、有効量の実施態様1~19のいずれかに記載の組成物又は実施態様20~27のいずれかに記載の製造物品を局所投与することを含む、方法。
(32) 前記出血が、損傷誘発性出血、手術誘発性出血、又は外傷誘発性出血のうちの少なくとも1つである、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記出血が、外科処置中である、実施態様31又は32に記載の方法。
(34) 前記外科処置が、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭頸部手術、硬膜手術、脊椎手術、骨盤手術、皮膚処置、又は皮下組織処置を含む、実施態様33に記載の方法。
(35) 前記組成物又は前記製造物品を前記創傷組織に押し当てることを含む、実施態様31~34のいずれかに記載の方法。
【0225】
(36) 前記押し当てが、前記組成物又は前記物品の前記創傷組織の少なくとも一部への接着を可能にするのに十分な時間にわたる、実施態様35に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】