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特表2024-545699二次元光学スペクトルにおけるピーク位置測定オフセット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】二次元光学スペクトルにおけるピーク位置測定オフセット
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/73 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
G01N21/73
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537956
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2022138299
(87)【国際公開番号】W WO2023116481
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/139952
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508306565
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】524234178
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (シャンハイ) インストルメンツ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ウー シェンハイ
(72)【発明者】
【氏名】グッツォナト アントネッラ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チェン
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA07
2G043EA08
2G043FA06
2G043FA07
2G043JA04
(57)【要約】
ピーク位置測定オフセットは、二次元光学スペクトルにおいて決定される。既知の条件で基準材料から得られたスペクトルと、関心対象の試料から得られたスペクトルと、の両方に現れる複数のピークが識別される。ピーク位置測定オフセットは、関心対象の試料から得られたスペクトルにおける識別された複数のピークのピーク位置によって形成されたパターンを、基準材料から得られたスペクトルにおける識別された複数のピークと比較することによって、決定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元光学スペクトルにおけるピーク位置測定オフセットを決定する方法であって、前記方法が、
既知の条件で基準材料から得られたスペクトルと、関心対象の試料から得られたスペクトルと、の両方に現れる複数のピークを識別することと、
前記ピーク位置測定オフセットを、前記関心対象の試料から得られたスペクトルにおける識別された前記複数のピークのピーク位置によって形成されたパターンを、前記基準材料から得られたスペクトルと比較することによって、決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
識別された前記複数のピークが、少なくとも3つのピークを含み、かつ/又は、前記二次元光学スペクトルにおける識別された前記複数のピークの位置が、非対称多角形の頂点を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
識別された前記複数のピークが、前記基準材料及び前記試料のプラズマ化学の特性である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
識別された前記複数のピークによって囲まれる前記スペクトルの面積が、前記二次元光学スペクトルの少なくとも10%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記パターンが、識別された前記複数のピークの強度及び/又は形状を考慮して、ピーク位置によって形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記決定することが、画像位置合わせアルゴリズム及び/又は機械学習アルゴリズムを使用して、前記比較を確立することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ピーク位置測定オフセットが、前記複数のピークの各々に対するピーク固有のオフセットを使用して決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基準材料から得られたスペクトルにおける各識別されたピークのそれぞれの位置に基づいて、前記関心対象の試料から得られたスペクトル及び前記基準材料から得られたスペクトルにおける識別された前記複数のピークの各々の周りに、それぞれのサブアレイを確立することであって、前記比較が前記サブアレイ内の情報に基づいている、それぞれのサブアレイを確立することを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記サブアレイの外側の画素を、前記関心対象の試料から得られたスペクトルと、前記基準材料から得られたスペクトルと、の両方から除去することであって、前記比較が、前記画素の除去後に前記関心対象の試料から得られたスペクトルと、前記画素の除去後に前記基準材料から得られたスペクトルと、に基づいている、除去することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記比較が、基準レベルが除去された状態、対数変換が適用された状態、及び強度正規化のうちの1つ以上での識別された前記複数のピークを使用する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
識別された前記ピークの各々が、前記二次元光学スペクトルにおける他の識別されたピークと比較した、それぞれのピークの相対的最大値を示す数に従って、正規化される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
識別されたそれぞれのピークの周りの前記二次元光学スペクトルの強度に基づいて、識別された前記ピークの各々についての位置を確立することであって、前記パターンが、識別された前記ピークについての確立された前記位置に基づいている、位置を確立することを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ピーク位置測定オフセットを前記決定することが、
前記複数のピークの各々に対するピーク固有のオフセットを決定することと、
前記複数のピークに対して決定された前記ピーク固有のオフセットの加重平均を取ることによって、前記ピーク位置測定オフセットを計算することであって、各加重が、前記それぞれのピークに対応する前記関心対象の試料から得られたスペクトルの部分と、前記それぞれのピークに対応する前記基準材料から得られたスペクトルの部分と、の間の相対相関に基づいて決定される、計算することと、を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記決定されたピーク位置測定オフセットを、(i)前記関心対象の試料から得られたスペクトルと、前記基準材料から得られたスペクトルと、の間の相関と、(ii)前記関心対象の試料から得られた補正スペクトルと、前記基準材料から得られたスペクトルと、の間の相関を比較することによって検証することであって、前記関心対象の試料からの前記補正スペクトルが、前記決定されたピーク位置測定オフセットに基づいて、前記関心対象の試料から得られたスペクトルに補正を適用することによって生成される、検証することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
各ピークを中心とした前記二次元光学スペクトルの少なくとも部分を使用して、各ピークに対して、機械学習画像位置合わせアルゴリズムを訓練することと、
訓練された前記機械学習画像位置合わせアルゴリズムを使用して、前記複数のピークの各々に対して、ピーク固有のオフセットを決定することと、を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記機械学習画像位置合わせアルゴリズムが、半教師付きである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
識別された前記ピークの全てについて隣接ピークを接続することによって、多角形を画定することを更に含み、前記機械学習画像位置合わせアルゴリズムを前記訓練することが、各ピークを中心とした前記二次元光学スペクトルの前記部分を、画定された前記多角形の対応する部分とともに使用する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
コンピュータプログラムであって、コンピュータによって実行されると、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次元光学スペクトルにおけるピーク位置測定オフセットを決定又は判定することに関する。
【背景技術】
【0002】
誘導結合プラズマ発光分光法(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy、ICP-OES)では、プラズマ源が、プラズマを構成するガス中及び/又は試料中にある原子をイオン化して励起する。励起された原子によって放出された光は、集光され、散乱され、一連のミラーを通して検出器に向けて導かれる。各イオン化元素は、散乱後、二次元検出器アレイにおいて固有の位置を占有する、固有波長を放出する。
【0003】
散乱され、検出器上に投影された、任意の1点における(試料及び血漿からの)全ての発光波長の集合体は、「エシェログラム」又は「フルフレーム」と呼ばれる。ICP-OES機器の製造及び試験中に、(検出器、例えばCCDチップの物理的表面上のx、y座標として表される)位置と、波長、回折次数との間のマッピングは、波長較正と呼ばれる手順を介して実施される。この手順は、光学系が、熱的に安定化され、温度が、手順に必要な測定を通して一定に保たれるように特別に配慮しながら、実施される。強度ピークは、スペクトルにおいて識別され得、各ピークは、それぞれの固有波長由来の信号を表す。
【0004】
波長及び/又は次数に位置をマッピングするモデルは、これらの安定条件を指す。これらの安定条件は、環境(例えば、温度、空気流など)の点から見て、(関心対象の試料の)ルーチン測定中に、必ずしも満たされるとは限らない。例えば、光学系における一時的な温度変動は、ミラーを回転させ、それによって、検出器アレイに位置シフトが導入される場合がある。したがって、モデルは、環境条件に敏感であり、位置から波長及び/又は次数へのマッピングは、典型的には、ルーチン測定には不適切である。実際には、ドリフト又はオフセットは、モデルと比較される位置に導入される。
【0005】
既存のアプローチは、特に、5000K~10000Kの温度であるプラズマを光学タンクから熱的に分離することによって、ドリフトを低減しようと試みる。これを達成するためのいくつかの方式は、ヒートシンクを物理的に取り外すことと、トーチボックスと光学タンクとの接合面において、異なる材料を使用することと、トーチボックスと光学タンクとの接合面において、能動的加熱及び/又は冷却デバイスを使用することと、を含む。これらの全ては、より厳しい公差、より高い材料コスト及び/又はより一層の複雑さを必然的に伴う。
【0006】
この理由から、各ピークを、検出器上のそれぞれの固有の位置を介して正確に識別され得るように再配置するために、ドリフト補正が考慮されている。ドリフト補正のための既存の技術は、英国特許第2586046号に記載されている。これは、CO2からなど、基準スペクトル及び試料スペクトルの両方に現れるピークを使用する。サブアレイは、予想されるピークの周りに画定することができ、分析は、サブアレイ領域に限定することができる。サブアレイを注意深く画定することによって、隣接ピークからの干渉を軽減することができる。これにより、ピークの予想位置からのドリフトを計算することができる。次いで、同じ試料スペクトルにおける未知のピークの識別された場所を、決定されたドリフトを使用して、シフトさせることができる。また、スペクトル値をサブアレイ内で補間して、ピーク強度値をより正確に決定又は判定することができる。
【0007】
実際には、このアプローチは、フルフレームに常に存在する複数のオプションから、1つのピークを選択することによって実装することができる。次いで、オフセットは、フルフレームの全体に直線的に適用され、ドリフトを効果的に相殺する。
【0008】
このアプローチは、フルフレームに常に現れるピークのうちのどれも、スペクトルにおいて明確に識別できる位置を有さない場合には、実装がより困難になる。例えば、このことは、記録された強度の飽和、別のピークによる干渉、又はフルフレームの過度の変位によって起こり得る。そのような場合、ドリフト補正は、失敗する可能性がある。いくつかの実装形態では、測定ドリフトは、選択されたピークによって異なり得る。したがって、ドリフト又はオフセット測定のためのより堅牢で正確なアプローチが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
この背景に対して、請求項1による、二次元光学スペクトルにおけるピーク位置測定オフセットを決定する方法が提供される。本明細書で開示される任意の方法を実施するためのコンピュータプログラムもまた提供される。更なる任意選択的な特徴及び/又は有利な特徴は、従属請求項で定義される。
【0010】
本開示のアプローチは、フルフレームのオフセット又はドリフトを推定するために、かなり多くの情報を使用する。既存のアプローチでは、線形オフセットは、(二つの次元の両方においてピークである)単一の基準ピークの位置に基づいて、推定される。対照的に、本開示のアプローチは、ドリフトを推定するために、複数のピーク(二次元ピークの集合体)によって形成されるパターンを使用する。これは、線形及び/又は非線形オフセットが測定されることを可能にし得る。パターンの使用はまた、ピークに与える歪み及び/又は干渉の影響が、軽減又は無視されることも可能にし得る。パターンは、ピーク位置(ただし、そのような位置は正確である必要はない)によって、及び近似ピーク位置の組み合わせによって、及び任意選択的に、ピークに関する他の情報(例えば、以下のうちの1つ以上)とともに及び/又はそれらを考慮して、定義される:ピーク位置によって形成される幾何学的構造(例えば、形状)、強度(相対強度を含んでもよく、例えば、単に強度によってピークを順序付けてもよい)、及びピーク形状(例えば、二次元スペクトルにわたる三次元ピーク強度)。(ピーク位置以外の)追加情報は、パターンの一部を形成してもよく、及び/又はピーク強度のパターンを精緻化するために使用されてもよい。ピークは、有利には、既知の条件で基準材料から得られたスペクトルと、関心対象の試料から得られたスペクトルと、の両方に現れる。パターンの変換又は移動(例えば、並進、回転、サイズの変化、反り、又は変形)を識別することができ、これに基づいて、ドリフトの測定を推定することができる。
【0011】
本開示によるアプローチは、はるかに広い範囲の環境条件(例えば、温度)及びより幅広い試料マトリックスの選択肢(例えば、高炭素)において使用することができる。追加的又は代替的に、本アプローチは、特に、基準ピークが異なる試料ピークによって囲まれ得るとき、二次元画像スペクトルに対してより堅牢であり得る。二次元光学スペクトルは、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)機器から得ることができるが、他の形態の光学分光法を代わりに使用することもできる。
【0012】
ピークは、ピークによって形成されるパターンの変化が、正確で堅牢なドリフトの尺度を提供するように、有益に選択される。具体的には、好ましくは、少なくとも3個のピーク又は少なくとも4個のピークが使用される(しかし、より多くのピーク、例えば、少なくとも又は正確に5個、6個、7個以上のピークを使用することができる)。このようにして、二次元光学スペクトルにおけるピークの位置は、例えば、各ピークを、2つの最近接の隣接ピークに接続することによって、多角形を画定する。より好ましくは、多角形は、(多角形の回転が認識され得るように)非対称である。ピークが、基準材料及び試料材料のプラズマ化学の特性であることもまた有利である。ピークによって囲まれた面積は、好ましくは、スペクトルの少なくとも10%(又は10%超)である。
【0013】
アルゴリズム、例えば、画像位置合わせアルゴリズム(画像レジストレーションアルゴリズム)(例えば、位相相関アルゴリズム)及び/又は機械学習アルゴリズム(例えば、人工ニューラルネットワークを使用する)が、ドリフトを推定するために使用され得る。(塗りつぶしの)多角形形状は、画像位置合わせのための特徴的な形状として使用することができる。いくつかの実装形態では、オフセットは、各ピークについてピーク固有のオフセットを最初に推定又は測定することによって、決定され得る。次いで、例えば、ピーク固有のオフセットの組み合わせ(例えば、加重平均)によって、又はピーク固有のオフセットを入力として取る更なる機械学習アルゴリズム、例えば、線形回帰アルゴリズムによって、ピーク固有のオフセットから全体的なピーク位置測定オフセットを確立することができる。
【0014】
二次元光学スペクトルデータの前処理は、好ましくは、画像位置合わせ及び/又は機械学習アルゴリズムにデータを提供する前に、実施される。様々な前処理ステップを考慮することができ、これらの任意の組み合わせを実装することができるが、好ましい組み合わせを本明細書で考察する。
【0015】
例えば、サブアレイは、ピークの周りで確立されてもよい。(基準画像及び試料画像の両方についての)各サブアレイは、基準スペクトルにおけるピークのそれぞれの位置に基づき得る。サブアレイ内のデータのみが、ドリフトを推定するために使用されるアルゴリズムに提供され、及び/又はアルゴリズムで使用され得る。例えば、サブアレイの外側の画素は、試料スペクトル及び基準スペクトルの両方から除去され得る。サブアレイを使用することで、隣接ピークからの干渉を軽減すること、及び/又は較正コストを削減するのに役立ち得る。サブアレイから画素を除去することは、画像位置合わせのより良い精度のために、関心領域(Regions Of Interest、ROI)の割合を増加させ得る。
【0016】
基準レベルの除去、対数変換、及び強度正規化のうちの1つ以上を使用することができる。いくつかの実装形態では、各ピークは、他のピークと比較したピークの相対的最大値(大きさ)を示す数に従った数で、正規化され得る。例えば、ピークは、最も高いピークが最低数を有し、2番目に高いピークが2番目に低い数を有し、最小のピークが最高数を有するまでこのように継続するように、正規化され得る。使用される数は、素数(特に、連続する素数)であってもよい。
【0017】
ピーク固有のオフセットは、いくつかのアプローチで得ることができる。次いで、これらの加重平均が、全体的なオフセットを決定するために取られ得る。特に、平均化のための加重は、ピークに対する基準スペクトルにおけるサブアレイと、試料スペクトルにおける対応するサブアレイとの間の相対的な画像相関に基づき得る。
【0018】
決定されたオフセットは、検証され得る。例えば、画像相関は、(決定されたオフセットに従った)補正の前後に、基準スペクトルと試料スペクトルとの間で決定され得る。相関が増加する場合、決定されたオフセットは、有効であるとみなされ得る。
【0019】
いくつかのアプローチでは、各ピークに対して、正確なピーク位置が確立される。これは、各ピークの周りのスペクトル強度の分析によって達成することができる。例えば、スペクトルの部分(各部分は、単一のピークを含む)に対するK平均クラスタリングアルゴリズムを使用することができる。次いで、パターンは、正確なピーク位置に基づき得る。
【0020】
(好ましくは、半教師付きである)機械学習画像位置合わせアルゴリズムを、最初に訓練することができる。一実装形態では、アルゴリズムは、各ピークに対して、それぞれのピークを中心としたスペクトルの一部分を使用して、訓練され得る。次いで、訓練されたアルゴリズムに問い合わせを行って、ピーク固有のオフセットを決定することができる。例えば、多角形は、識別されたピークの全てについて、隣接ピークを接続することによって画定され得る。次いで、各ピークを中心としたスペクトルの部分を、画定された多角形の対応する部分とともに使用して、アルゴリズムを訓練することができる。
【0021】
本開示は、多くの方法で実施し得、好適な実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に記載し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】既知の条件で取られた基準材料に関する、例示的な二次元光学スペクトルを示す。
図2】線で結ばれた6つの識別されたピークを有する、図1の例示的な二次元光学スペクトルを示す。
図3】第1の実装形態による、正方形のフレーム(サブアレイ)によって囲まれた6つの識別されたピークを有する、図1の例示的な二次元光学スペクトルを示す。
図4】サブアレイの外側のデータを除去するための追加の処理を伴う、図3の例示的な二次元光学スペクトルを示す。
図5a図4に示されるスペクトルの例示的なサブアレイ内の三次元のプロットを示す。
図5b】基準レベルが除去された図5aの三次元のプロットを示す。
図6a図4のサブアレイの強度を二次元で描画したものであり、素数ラベルが各ピークに関連付けられている。
図6b】関連付けられた素数ラベルによって各強度が正規化されている、図6aのプロットを示す。
図7】第2の実装形態による、例示的な二次元光学スペクトルに対する一連の初期前処理ステップを示す。
図8】例示的な二次元光学スペクトルに対する一連の更なる前処理ステップを示す。
図9図8に示される出力からの追加の前処理ステップを示す。
図10】機械学習画像位置合わせアルゴリズムを訓練する際の、図9に示される出力の使用を概略的に示す。
図11】訓練された機械学習画像位置合わせアルゴリズムに問い合わせを行う際の、図9に示される出力の使用を概略的に示す。
図12】線形回帰機械学習アルゴリズムにおける、図11に示されるプロセスからの問い合わせ出力の使用を概略的に示す。
図13】光学的分光測定のための既存のシステムを概略的に描写する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示のアプローチは、複数のピーク(典型的には、3つ、4つ、又はそれ以上のピーク)によって形成されるパターンを使用する。ピークは、基準スペクトル又は画像(試料がないか、又は脱イオン水のみであり得る基準材料が試料導入システムを通して供給される間に記録された発光スペクトル)と、試料スペクトル又は画像(関心対象の試料を含む試料材料が試料導入システムを通して供給される間に記録された発光スペクトル)と、の両方に存在する。好ましくは、ピークは、プラズマ化学(すなわち、プラズマ中でイオン化される元素の混合物)の特性であり、したがって、試料として導入される化学物質に関わらず、(プラズマが点火される限りは)常に存在する。ピークは、全ての試験試料中に存在する可能性が高いありふれた元素(例えば、窒素、水素、炭素)から識別され得る。また、ピークは、望ましくは、強く(最小閾値を上回る強度)、及び/又は他の試料ピークによって容易に干渉されない。スペクトルにおけるそのようなピークの概位置は、既知であり得る。
【0024】
まず図1を参照すると、既知の条件で取られた基準材料に関する、例示的な二次元光学スペクトル10が示されている。これは、グレースケールでICP-OESを使用して撮影された基準スペクトル画像である。6つのピーク20が、スペクトルにおいて識別される。
【0025】
ここで図2を参照すると、線で結ばれた6つの識別されたピーク20を有する図1の例示的な二次元光学スペクトル10が示されている(各線は、2つの最近接の隣接ピークを結んでいる)。図に示すように、これらの6つのピークは、多角形形状を形成する。任意の3つ以上のピークが、多角形形状の頂点を形成し得ることが確立されるが、4つ以上のピークが好ましい。ピークは、多角形形状、より好ましくは、非対称多角形形状の頂点を形成するように、選択されることが好ましい。対称多角形形状が使用される場合、ピークの回転と並進を区別することが困難な場合がある。また、選択された基準ピークによって囲まれた面積(ピークによって形成された多角形の面積)は、スペクトル画像全体(「フルフレーム」)の面積の10%より大きいことが望ましい。
【0026】
この多角形によって形成されるパターンは、基準スペクトルと試料スペクトルとの間で変化し得る。パターンの変化を処理することによって、ドリフトの推定又は測定を行うことができる。画像位置合わせは、パターン変化からドリフトを決定するための有益なツールである。パターンは、ピーク位置を使用するが、以下のうちの1つ以上もまた考慮してもよい(それらを含んでもよく、並びに/又はそれらによって精緻化されてもよい):ピーク位置によって形成される幾何学的形状(例えば、上で考察される多角形)、ピークの強度又は相対強度、及びピーク形状。ピーク位置のみよりも一般的にパターンを考慮することによって、ピーク位置の決定に影響を及ぼす歪み及び/又は干渉を考慮することができる。例えば、干渉は、基準ピークと部分的又は完全に重複するピークを引き起こし得る。結果として、ピーク位置を決定することが困難な場合がある(例えば、二重ピーク又は他のより複雑なピーク形状が現れる場合がある)。追加的又は代替的に、ピーク位置は、(相対)強度の変化及び/又はピークの形状の変化から明らかなように、ドリフトに起因するのではなく、干渉に起因してシフトしたように見える場合がある。これらの影響は、ドリフトに関係のない歪みによってもまた明らかになり得る。したがって、パターンの変化に基づいてドリフトを決定することは、例えば、パターンの変化がピーク位置だけにあるのではない場合に、重みピークを減少させる(又は無視する)ことによって、これらの影響を説明することができる。
【0027】
変更を処理するための2つの異なるアルゴリズムが、例として考慮される。第1のアプローチでは、位相相関画像位置合わせアルゴリズムが使用される。これは、基準ピークの位置及び相対強度によって形成されるパターンの変化から、オフセットを決定することができる。第2のアプローチでは、機械学習画像位置合わせの実装形態が適用される。これは、オフセットを決定するために、基準ピークの正確な場所によって形成される多角形形状の変化を使用することができる。これら2つのアプローチについては、以下でより詳細に考察する。
【0028】
各アプローチは、それぞれのアルゴリズムを最大限に利用するために、異なる前処理ステップを使用する。異なる前処理ステップが可能であり、実際には、異なるアルゴリズムもまた適用され得ることが理解されよう。ピークのパターンの変化を見れば、全体的なオフセットは、複数のピークを一緒に組み合わせた分析から、又は1つ若しくは2つ以上の個々のピークの変化を分析することによって、ピーク特異的オフセットを提供し、次いで、これらを使用して、全体的なオフセットを決定することによって、決定され得ることもまた理解されよう。
【0029】
一般的な意味では、二次元光学スペクトル(具体的には、関心対象の試料から得られる二次元光学スペクトル)におけるピーク位置測定オフセットを決定する方法を考慮することができる。本方法は、既知の条件で基準材料から得られたスペクトルと、関心対象の試料から得られたスペクトルと、の両方に現れる複数のピークを識別することと、ピーク位置測定オフセットを、関心対象の試料から得られたスペクトルにおける識別された複数のピークのピーク位置によって形成されたパターンを、基準材料から得られたスペクトルにおける識別された複数のピークのピーク位置によって形成されたパターンと比較することによって、決定することと、を含む。この方法は、例えば、光学分光計の一部を形成し得るコントローラによって実装され得るか、又はコンピュータによって実行されると、方法を実施するように構成されている命令を含む、コンピュータプログラムの形態で実装され得る。本開示はまた、光学スペクトル分析器、コンピュータプログラム、光学分光計(例えば、ICP-OES機器)のうちの1つ以上を提供し得、これは、そのような光学スペクトル分析器及び/若しくはコンピュータプログラムを含み得るか、又は本方法に従って動作するように構成され得る。
【0030】
好ましくは、識別された複数のピークは、少なくとも3つ又は4つのピークを含む。二次元光学スペクトルにおける識別された複数のピークの位置が、多角形(各ピークを、2つの最近接の隣接ピークに結ぶことによって)、好ましくは、非対称多角形の頂点を画定することが望ましい。有利には、識別された複数のピークは、基準材料及び試料材料のプラズマ化学の特性である。実施形態では、識別された複数のピーク(及び/又は、例えば、上記で考察されるように、ピークによって画定される多角形)によって囲まれる二次元スペクトルの面積は、二次元光学スペクトルの少なくとも10%(又は10%超)である(任意選択的に、少なくとも20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%)。
【0031】
特定の実装形態では、パターンは、識別された複数のピークのピーク位置並びに(相対)強度及び/又は形状によって、形成される。
【0032】
決定するステップは、画像位置合わせアルゴリズム(例えば、位相相関アルゴリズム)及び/又は機械学習アルゴリズムを使用して、比較を確立することを含む。
【0033】
ピーク位置測定オフセットは、複数のピークの各々に対するピーク固有のオフセットを使用して決定され得る。例えば、ピーク固有のオフセットは、組み合わせられ得、補間され得、又は別様に分析され得る。
【0034】
ここで、2つの特定の実装形態について、単なる例として説明する。上で考察される一般的な意味による更なる詳細は、以下で再び参照される。
【0035】
実装例1
本実装例は、7つのステップを参照して考察され、位相相関画像位置合わせアルゴリズムを使用する。
【0036】
1)基準画像において、4つ以上の基準ピークが選択される(以下で考察するように、より少ない基準ピークが使用されてもよいが、4つが好ましい)。図3を参照すると、正方形のフレーム(サブアレイ)によって囲まれた6つの識別されたピークを有する、図1の例示的な二次元光学スペクトルが示されている。識別されたピークからのあらゆる方向におけるフレーム幅又は厚さは、最大可能ドリフト(完全なフルフレームの固定座標系マッピングに対するピーク位置の幾何学的オフセット)よりも大きい。サブアレイの最小サイズは、望ましくは、画像の最大ドリフトより大きく、これは、試料画像のピークが、常にサブアレイにあることを保証することができる。サブアレイの最大サイズは、典型的には、サブアレイに1つのピーク(可能であれば、1つだけ)を含むのに十分小さい。
【0037】
各ピークを、異なる素数で標識化し、相対信号強度の昇順でソートする。これらの素数ラベルは、3から始まる。開始点は重要ではなく、偶数のラベルを避けるために、2が避けられる。フレームの絶対位置(サブアレイの画素インデックス)が記録され、割り当てられた素数ラベルで標識化される。
【0038】
2)関心対象の試料材料のICP-OESによって、新たに取得された画像が得られる(今後、この画像は、試料画像と呼ばれる)。試料画像内の基準ピークは、推定される未知の量だけ、基準画像内のピークに対してシフトされる。試料画像では、試料画像内の基準ピークの位置に関わらず、基準画像内の絶対位置(画素インデックス)に従って、ピークが再び識別され、サブアレイフレームが決定される。
【0039】
3)選択されたサブアレイフレーム内にない全ての画素は、基準画像及び試料画像の両方に対して、ゼロに設定される。これは、計算アルゴリズム又は機械学習アルゴリズムが、関連情報を伝えない余分な特徴(画素)によって惑わされることを回避するのに役立ち得る。追加的又は代替的に、それは、計算アルゴリズム又は訓練が計算効率の良いことを確認し得る。図4を参照すると、このステップに従って、サブアレイ(ドット-正方形フレーム)の外側のデータを除去するための追加の処理を伴う、図3の例示的な二次元光学スペクトルが示されている。
【0040】
4)ここで図5aを参照すると、図4に示されるスペクトルの例示的なサブアレイ内の強度の三次元のプロットが示されている。これは、y次元に沿った相対的に高い強度レベル(「バンプ」)によって示される、基準レベルを示す。換言すれば、y軸上の各値を考慮すると、最小レベルは、0よりも高い。この基準レベルの除去は、ピークを正確に識別するのに有利である。したがって、基準レベルは、好ましくは、サブアレイ内の各画素から、i)サブアレイ全体にわたる最小強度値、又はii)サブアレイのy値(行)にわたる最小強度値のいずれかを減算することによって除去される。図5bを参照すると、サブアレイのy値(行)にわたる最小強度値を減算することによって基準レベルが除去された、図5aの三次元のプロットが示されている。このステップは、実施形態では、省略することができる。
【0041】
5)対数変換が、基準画像及び試料画像の両方の強度に適用される。このステップはまた、実施形態では省略することもできる。
【0042】
6)ここで図6aを参照すると、図4のサブアレイの強度を二次元で描画されており、素数ラベルが、示される各ピークに関連付けられている。この図のz軸は、測定された強度を示す。次いで、各ピークを、それぞれ割り当てられた素数ラベルに従って正規化する。図6bを参照すると、関連付けられた素数ラベルによって各強度が正規化されている、図6aのプロットが示されている。これは、基準画像及び試料画像の両方に対して実施される。この正規化は、ピーク強度情報の一部を除去するが、少なくとも、ピークが、異なる強度、具体的には、それぞれの強度次数を有することを保持する。それにもかかわらず、このようにピークを正規化することによって、ピークの相対的な加重が調整される(例えば、他のピークよりもはるかに低い強度を有する任意のピークは、アルゴリズムによって無視されない)。
【0043】
7)位相相関アルゴリズムを適用して、基準画像と(未知のドリフトを有する)試料画像との間の画像位置合わせを達成し、サブ画素精度で試料画像のドリフトを推定する。この例で適用される特定のアルゴリズムは、本明細書に開示されているかのように組み込まれる、Hassan Foroosh, et al.,「Extension of Phase Correlation to Subpixel Registration」,IEEE TRANSACTIONS ON IMAGE PROCESSING,VOL.11,NO. 3,MARCH 2002,page 188-199に開示されている。完全を期すために、このアルゴリズムの重要な要素について以下で考察する。
【0044】
a.上記のステップに従った前処理を行った後、フーリエ変換が、基準画像及び試料画像の両方に適用され(f0(x,y),fs(x’,y’))、周波数領域スペクトル(F0(u,v),Fs(u’,v’))を得る。
b.パワースペクトルが、以下のように計算される
【0045】
【数1】
【0046】
c.パワースペクトルH(u,v)に逆フーリエ変換が適用され、ディラック関数δ(x’-x,y’-y)を得る。
d.ディラック関数におけるピークは、「ピーク」画素(最大強度を有するもの)の周りに8つの画素を適合させることによって機能する二次多項式を用いて識別される。
e.したがって、ピーク位置(x’-x,y’-y)は、試料画像ドリフトとして得られる。
【0047】
上で考察される一般的な意味に戻ると、更なる任意選択的な及び/又は有利な特徴が考慮され得る。例えば、本方法は、関心対象の試料から得られたスペクトル及び基準材料から得られたスペクトルにおける識別された複数のピークの各々の周りにそれぞれのサブアレイを確立することを更に含み得る。各サブアレイは、基準材料から得られたスペクトルにおける各識別されたピークのそれぞれの位置に基づき得る(試料材料から得られたスペクトルにおける各識別されたピークに対するサブアレイであってもよい)。本比較は、有利には、サブアレイ内の情報(のみ)に基づいている。
【0048】
任意選択的に、本比較は、基準レベルが除去された状態、対数変換が適用された状態、及び強度正規化のうちの1つ以上の識別された複数のピークを使用する。有利には、識別されたピークの各々は、二次元光学スペクトルにおける他の識別されたピークと比較した、それぞれのピークの相対的最大値又は大きさを示す数に従って、正規化される。例えば、数は、素数のセットによってもたらされ得、ある実施形態では、数は、素数の連続範囲から選択される。このような後者の場合、各ピークは、二次元光学スペクトルにおける他の識別されたピークと比較した、それぞれのピークの相対的最大値又は相対的大きさに対応する素数の連続範囲内の数に従って、正規化される。
【0049】
決定するステップは、有利には、位相相関アルゴリズムを使用して、比較を確立することを含む。
【0050】
ここで、第2の実装例による、更なる具体的な詳細について考察する。この場合もやはり、本開示のそのような一般的な意味に関係する情報が後で提供される。
【0051】
実装例2
本実装例は、機械学習画像位置合わせアルゴリズムを使用して、5つのステップを参照して考察される。
【0052】
1)基準画像において、4つ以上の基準ピークが選択される(以下で考察するように、より少ない基準ピークが使用されてもよいが、4つが好ましい)。これにより、選択された基準ピークの各々に対して、大まかな座標を識別した。基準ピークを有するが、推定される未知の量だけ、基準におけるものに対してシフトされた試料画像もまた得られる。
【0053】
2)機械学習画像位置合わせアルゴリズム用の基準画像及び試料画像の前処理は、いくつかのステップを使用して実装される。一連の初期前処理ステップが概略的な形態で示されている、図7と、一連の更なる前処理ステップが示されている、図8と、を参照して考察する。これは、試料スペクトル画像100に基づいている。
【0054】
a.選択された基準ピークの大まかな座標は、試料画像100から小さな画像片を切り出す(105)ために使用される。ピーク115の大まかな座標が、(xn,yn)である場合、切り出された小片は、列(x次元)における
【0055】
【数2】
と、行(y次元)における
【0056】
【数3】
との間で決定される。「サイズ」の標準値は、64であり得る。これにより、切り出された画像片110が得られる。これは、図8に示される画像切り出しステップ200に従って、全てのピークに対して実施され得る。
【0057】
b.クラスタ=2であるK平均アルゴリズム116が、切り出された画像片110で使用される。基準ピークは、より大きな強度を有するので、K平均アルゴリズムによって抽出される。ピークのセグメント化を行うために、識別されたピーク122の画素強度は、1とマークされ、背景画素121は、0とマークされる。これは、セグメント化された切り出された画像片120によって示される。この場合もやはり、これは、図8にも示されるK平均クラスタリングステップ210に従って、全てのピークに対して実施される。
【0058】
c.ピークの境界ボックス130が、ピークのセグメント化から生成される(125)。
d.境界ボックスの中心140の座標が、ピークの正確な位置として識別される(135)。
【0059】
e.次いで、識別された座標を使用して、試料画像が、ステップ220に従って修正され、ピークの正確な位置を接続し、それによって、多角形を形成する。多角形230内の画素値は、強度1でマークされ、試料画像240の残りの部分は、強度0でマークされる。この動作により、その後のAI訓練に使用され得る画定された(塗りつぶしの)多角形領域を有する、セグメント化された画像250を作成する。
f.前処理ステップa~dが、基準スペクトル画像に対して繰り返される。
【0060】
3)最初に、図8に示される試料スペクトル画像100及びセグメント化された画像250からの追加の前処理ステップが示されている図9を参照して、機械学習画像位置合わせアルゴリズムの訓練について考察する。
【0061】
a.決定された正確なピーク位置を中心として使用して、各基準ピークに対する試料スペクトル画像のより大きな断片が切り出され、抽出される(260)。切り出しプロセスは、上記のステップ3aを参照して考察したものと同じであるが、より大きなサイズ(例えば、サイズ=128)を有する。このことは、大きな2048×2048画像の代わりに、いくつかの(ピークと同じ数の)小さな画像を使用することによって、機械学習アルゴリズムの訓練を加速し得る。スペクトルの切り出された断片は、訓練のために(ステップ3のようにピークを見つけるためではない)使用される、原画像片265を提供するために正規化される。加えて、セグメント化された画像250は、セグメント化された切り出された断片275を提供するために、同じサイズ及び同じ位置を有する各ピークに対して、切り出されて抽出される(270)。切り出しプロセス260及び抽出プロセス270は、全てのピークに対して実施され、全てのピークに対する原画像片265及びセグメント化断片画像275が得られる。切り出された各断片画像275には、塗りつぶしの三角形が見られる。これらの三角形は、異なる形状及び内角を有する。それらは、機械学習画像認識用の特徴的な形状として使用することができる。
【0062】
b.次に図10を参照すると、機械学習画像位置合わせアルゴリズム、具体的には、(もともと、Ronneberger,Olaf;Fischer,Philipp;Brox,Thomas(2015)「U-Net:Convolutional Networks for Biomedical Image Segmentation」,Springer,Cham.で記載のような)U-Netモデルを訓練する際の、図9に示される出力の使用が概略的に示されている。これは、動画(m)及び固定画像(f)を使用する。U-Netモデル280は、それぞれ基準スペクトル画像及び試料スペクトル画像のための原画像片265に基づいて、動画281(m)及び固定画像282(f)で訓練される。空間変換ブロック285は、「固定画像」282に対応する「移動した画像」286を予測するために、動画を変換するための「位置合わせフィールド」283を識別するために使用される。「移動した画像」286を「固定画像」282を比較して、損失関数を算計算する。このようなセグメント化断片の固定画像275及びセグメント化断片の動画276は、(焦点のための部分を確立し、それによって、予測の精度を高めるためのマスクとして機能する)移動した画像のセグメント化290に到達するために、空間変換を識別するための半教師付き学習のために使用される。
【0063】
U-Netモデルは、その加重を調整して、「移動した」画像と「固定」画像との間の損失を最小限に抑える。
us(f,m,φ)=Lsim(f,m°φ)+λLsmooth(φ)
a(f,m,sf,sm,φ)=Lus(f,m,φ)+ΥLseg(sf,sm°φ)
式中、
simは、外観の違いにペナルティを科す、通常、MSE 288であり、
smoothは、局所空間的変動287にペナルティを課し、
usは、教師なし学習の損失関数であり、
segは、セグメント化損失289であり、
aは、半教師付き学習の損失関数である。
【0064】
各ピークは、異なる加重を有し得るので、別々に訓練される。換言すれば、このステップは、各基準ピークに対して繰り返される。U-Netモデルは、特徴抽出を提供し、x次元及びy次元におけるドリフトを表す「位置合わせフィールド」283を、その出力として与える。
【0065】
4)次に図11を参照すると、訓練された機械学習画像位置合わせアルゴリズムに問い合わせを行う際の、図9に示される出力の使用が概略的に示されている。
【0066】
a.図9を参照して上記で考察されるように、各基準ピークに対する試料スペクトル画像のより大きな断片は、小さなサイズを使用して切り出されて抽出され(260)かつ正規化されて、原画像片265を提供する。同様に、セグメント化された画像250は、セグメント化された切り出された断片275を提供するために、同じサイズ及び同じ位置を有する各ピークに対して、切り出されて抽出される(270)。
【0067】
b.ピークに対する各原画像片265及びセグメント化断片275は、訓練されたU-Netモデル300への入力として提供される。(上記で考察されるように、訓練から決定される)加重310を使用することによって、U-Netモデル300は、出力として位置合わせフィールド283を与える。各ピーク335の位置に基づく問い合わせ330は、ピークに対するxドリフト336及びyドリフト337を決定するために使用される。これにより、ピーク固有のxドリフト推定値及びyドリフト推定値のセット、各ピークに対するxドリフト推定値及びyドリフト推定値が得られる。
【0068】
5)次いで、線形回帰アルゴリズムを使用して、全体的なxドリフト推定値及び全体的なyドリフト推定値を決定することができる。これは、ピークの各々について計算されたドリフトが異なる可能性が高く、画像全体が1つのドリフト(dx,dy)のみを有することが望ましいからである。ここで図12を参照すると、線形回帰機械学習アルゴリズムにおける6つのピークに対する、図11に示されるプロセスからの問い合わせ出力の使用が概略的に示されている。
【0069】
例示的な線形回帰は、以下の式に基づいている。
【0070】
【数4】
式中、
Predxは、x軸方向の画像ドリフトであり、
Predyは、y軸方向の画像ドリフトであり、
αiは、x軸方向のピークiの加重であり、
βiは、y軸方向のピークiの加重であり、
Peaki_x_driftは、AI予測からのピークiのxドリフトであり、
Peaki_y_driftは、AI予測からのピークiのyドリフトであり、
xは、x軸に対するバイアスであり、
yは、y軸に対するバイアスである。
【0071】
線形回帰アルゴリズムは、まず、問い合わせ出力を使用して訓練される。次いで、所与の試料画像に対して、上記のステップ4)における前処理及び問い合わせが実施される。いくつかの試料画像の手動で識別された画像ドリフトが、(Pred_x,Pred_y)として使用され、次いで、機械学習予測ドリフト(Peak_x_drift,Peak_y_drift)_iが、メトリック350、αi、βi、bx、及びbyを見つけるために使用される。線形回帰アルゴリズムの出力からの加重は、最終的なドリフトを予測するために使用される。換言すれば、機械学習アルゴリズムからの予測ドリフト(Peak_x_drift,Peak_y_drift)_i並びに定数αi、βi、bx及びbyを使用して、画像全体の全体的なドリフト(Pred_x,Pred_y)を計算する。それによって、線形回帰アルゴリズムは、各基準ピークから推定されたピーク固有のドリフトを積分することができる。
【0072】
上記で考慮されるように、本開示の一般的な意味に戻ると、更なる任意選択的な及び/又は有益な特徴が考慮される。例えば、本方法は、それぞれの識別されたピークの周りの二次元光学スペクトルの強度に基づいて、識別されたピークの各々についての位置を確立することを更に含み得る。例えば、これは、二次元光学スペクトルの部分(各部分は、典型的には、単一のピークを含む)に対してK平均クラスタリングアルゴリズムを使用することによって達成され得る。パターンは、識別されたピークの確立された位置に基づき得る。
【0073】
本方法は、有利には、各ピークを中心とした二次元光学スペクトルの少なくとも一部分を使用して、各ピークに対して、機械学習画像位置合わせアルゴリズムを訓練することを更に含む。次いで、訓練された機械学習画像位置合わせアルゴリズムを使用して、複数のピークの各々に対して、ピーク固有のオフセットが決定され得る。U-Netモデルは、好適な機械学習画像位置合わせアルゴリズムを提供することができる。機械学習画像位置合わせアルゴリズムは、半教師付きであってもよい。例えば、識別されたピークの全てについて、隣接ピークを接続することによって形成される多角形が、画定され得る。機械学習画像位置合わせアルゴリズムは、画定された多角形の対応する部分とともに、(半教師付き学習を可能にするために)各ピークを中心とした二次元光学スペクトルの部分を使用することによって、訓練され得る。
【0074】
実施形態では、全体的なピーク位置測定オフセットは、ピーク固有のオフセットから確立することができる。有利には、線形回帰機械学習アルゴリズムには、全体的なピーク位置測定オフセットを決定するために、ピーク固有のオフセットが設けられ得る。上で考察される一般的な意味による追加の詳細は、以下で更に参照される。
【0075】
実装例3
本実装例は、4つのステップを参照して考察され、実装例1に同じように、位相相関画像位置合わせアルゴリズムを使用する。
【0076】
1)実装例1のステップ1及び2を実施する。
2)サブアレイの外側の画素を、基準画像及び試料画像の両方から除去して、切り直された(より小さいサイズの)基準画像及び切り直された(より小さいサイズの)試料画像を得る。これは、画像位置合わせのより良い精度のために、関心領域(ROI)の割合を増加させ得る。例えば、元のフルフレーム画像がN×N画素を有すると仮定すると、n個のピークが、基準ピークとして選択され、n×m画素のサイズを有するn個のサブアレイが選択され、ここで、n×m×m<N×Nであり、サイズ変更された画像は、(n×m)×m画素、m×(n×m)画素、又は(qn×m)×(qn×m)などであり得、ここで、
【0077】
【数5】
であり、式中、qnは、整数であり、qn×m<Nである。サイズ変更された画像が(qn×m)×(qn×m)画素を有する場合、サイズm×mの(qn×qn-n)個のサブフレームは、ゼロ値を有する画素で充填される。
【0078】
3)実装例1のステップ4、5及び6のうちの1つ、2つ以上、又は全てを実施する。それらのステップのうちのいずれか1つ以上を省略することができ、これらのステップを、異なる順序で実施することができる。
【0079】
4)位相相関アルゴリズムを適用して、サイズ変更された基準画像とサイズ変更された(未知のドリフトを有する)試料画像との間の画像位置合わせを達成し、(例えば、実装例1のステップ7で考察するように)サブ画素精度で試料画像のドリフトを推定する。
【0080】
実装例4
本実装例は、6つのステップを参照して考察され、実装例1に同じように、位相相関画像位置合わせアルゴリズムを使用する。
【0081】
1)実装例1のステップ1及び2を実施する。
2)実装例1のステップ4、5及び6のうちの1つ、2つ以上、又は全てを実施する。これらのステップのうちのいずれか1つ以上を省略することができ、ステップを、異なる順序で実施することができる。
【0082】
3)位相相関アルゴリズムを適用して、基準画像内のサブアレイの各々と、(未知のドリフトを有する)試料画像内の対応するサブアレイとの間の画像位置合わせを達成し、(例えば、実装例1のステップ7で考察するように)サブ画素精度で試料画像のドリフトを推定する。例えば、元のフルフレーム画像がN×N画素を有すると仮定すると、n個のピークが、基準ピークとして選択され、m×m画素のサイズを有するn個のサブアレイが選択され、ここで、n×m×m<N×Nであり、したがって、ドリフトのn個の値が得られる。
【0083】
4)試料画像の最終的なドリフトは、以下の式に詳述されるように、加重したドリフトを用いて計算される。
【0084】
【数6】
式中、Diは、ステップ3におけるi番目のドリフトベクトルであり、wiは、ドリフトのi番目の加重であり、
【0085】
【数7】
は、基準画像内のi番目のサブアレイRiと、以下によるドリフト補正後の試料画像内の対応するサブアレイ
【0086】
【数8】
との間の画像相関である:
【0087】
【数9】
【0088】
5)必須ではないが好ましくは、ステップ4では、wiは、ゼロに設定され得(Ci<C0の場合)、式中、C0は、オペレータによって選択された画像相関の閾値である。例えば、C0は、0.95、0.90、0.85、0.80などであり得る。
【0089】
6)必須ではないが好ましくは、妥当性チェックが実施され、ドリフト補正が適用された後の基準画像と試料画像との間の画像相関C’が、以前のものC以下(又は未満の)場合、ドリフト補正を適用する前に、ドリフト推定は破棄される(ドリフトベクトルをD~ゼロに設定する)。
【0090】
【数10】
式中、Siは、ドリフト補正
【0091】
【数11】
前の試料画像内のi番目のサブアレイである。
【0092】
実装例5
本実装例は、5つのステップを参照して考察され、実装例1に同じように、位相相関画像位置合わせアルゴリズムを使用する。
【0093】
1)実装例1のステップ1~7を実施する。実装例1のステップ4、5及び6のうちの任意の1つ以上を省略することができ、かつ/又はそれらのステップを、異なる順序で実施することができる。
【0094】
2)妥当性チェックが実施され、ドリフト補正後の基準画像と試料画像の画像相関C’が、以前のものC以下(又は未満の)場合、ドリフト補正前に、ドリフト推定は破棄される(ドリフトベクトルをD~ゼロに設定する)。
【0095】
【数12】
【0096】
3)ステップ2で、妥当性チェックに合格した(すなわち、ドリフト推定が破棄されなかった)場合、実装例3のステップ2~4を実施する。
4)この実装例のステップ2と同じ妥当性チェックが、再度実施される。
5)ステップ4で、妥当性チェックに合格した(すなわち、ドリフト推定が破棄されなかった)場合、実装例4のステップ2~6を実施する。
【0097】
上記で考察されるように、本開示の一般的な意味をもう一度参照すると、更なる任意選択的な及び/又は有利な特徴が詳述され得る。例えば、いくつかの実施形態では、サブアレイの外側の画素は、関心対象の試料から得られたスペクトルと、基準材料から得られたスペクトルと、の両方から除去され得る。次いで、(識別された複数のピークのピーク位置によって形成されたパターンの)比較は、有利には、画素の除去後に関心対象の試料から得られたスペクトルと、画素の除去後に基準材料から得られたスペクトルと、に基づいている。これは、画像位置合わせのより良好な精度のために、ROIの割合を増加させ得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、ピーク位置測定オフセットを決定することは、複数のピークの各々に対して、ピーク固有のオフセットを決定することを含む。次いで、ピーク位置測定オフセットは、複数のピークに対して決定されたピーク固有のオフセットの加重平均を取ることによって、計算され得る。加重平均の各加重は、有利には、それぞれのピークに対応する関心対象の試料から得られたスペクトルの部分(サブアレイ)と、それぞれのピークに対応する基準材料から得られたスペクトルの部分(サブアレイ)との間の相対相関に基づいて、決定される。
【0099】
決定されたピーク位置測定オフセットは、任意選択的に、検証され得る。これは、(i)関心対象の試料から得られたスペクトルと、基準材料から得られたスペクトルとの間の相関と、(ii)関心対象の試料からの補正スペクトルと、基準材料から得られたスペクトルとの間の相関を比較することによって達成され得る。具体的には、関心対象の試料からの補正スペクトルは、決定されたピーク位置測定オフセットに基づいて、関心対象の試料から得られたスペクトルに補正を適用することによって、生成され得る。
【0100】
図13を参照すると、英国特許第2586046号に開示される、光学的分光測定のための既存のシステムが概略的に示されている。このシステムは、本開示に従って動作するように適合され得る。
【0101】
概略的に示されている光学分光システム400は、光源410、光学装置420、検出器アレイ430、プロセッサ440、メモリ445、及び入力/出力(I/O)ユニット450を含むように示されている。光源410は、ICP源などのプラズマ源であり得る。光学装置420は、光源410によって生成された光のエシェルスペクトルを生成するために、エシェル回折格子及びプリズム(及び/又は更なる回折格子)を含み得る。二次元エシェルスペクトルの画像は、検出器アレイ430上に形成される。検出器アレイ430は、例えば、CCD(電荷結合デバイス)アレイであり得る。典型的な検出器アレイは、少なくとも約1024×1024画素(1メガ画素)を有するであろう。長方形の検出器アレイは、正方形であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。検出器アレイ430は、エシェルスペクトルの検出された光量に対応するスペクトル値を生成し、スペクトル値をプロセッサ440に転送するように構成されてもよい。プロセッサ440は、市販のマイクロプロセッサによって構成されてもよい。メモリ450は、好適な半導体メモリであり得、プロセッサ440が本開示による方法の実施形態を実行することを可能にする命令を記憶するために使用され得る。
【0102】
本開示による実施形態は、特定のタイプの装置及び用途(特にICP-OES)を参照して説明されており、実施形態は、本明細書で考察されるように、そのような場合に特定の利点を有するが、本開示によるアプローチは、他のタイプの装置及び/又は用途に適用され得る。特に、この技術は、他のタイプの二次元光学スペクトルに適用することができる。プロセスの特定の構造、配置及び動作の詳細(例えば、パラメータ)は、(特に既知の構成及び能力を考慮して)潜在的に有利であるが、類似又は同一の性能を有する動作モードに到達するように大幅に変更されてもよい。特定の特徴は、例えば、本明細書に示されるように、省略又は置換されてもよい。本明細書に開示される各特徴は、別段の指定のない限り、同一、同等、又は類似の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられ得る。したがって、別段の指定のない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等又は類似の特徴の単なる一例である。
【0103】
実装例1では、前処理ステップの多くを回避することができ、かつ/又はそれらの順序を変更することができる。例えば、サブアレイ処理(アルゴリズムにおけるステップ2及びステップ3)のみが実施されてもよく、ステップ4~6は省略されてもよい。ステップ4、5及び6のうちの任意の1つ以上を省略することができ、それらのステップを、異なる順序で実施することができる。また、改善された処理のために素数ラベルが使用されるが、素数の使用は必須ではない。相対強度パターンを示すために、他の数値ラベルを使用することができる。
【0104】
位相相関アルゴリズム、U-Netモデルアルゴリズム及び線形回帰アルゴリズムは、本開示に従って使用することができる広範囲のアルゴリズムの例にすぎない。当業者は、機械学習を使用するか否かに関わらず、ピーク位置(及び、任意選択的に、強度又は相対強度)のパターンの変化を識別するために使用され得る、異なる画像位置合わせアルゴリズムを認識するであろう。これらのうち、全体的なピーク位置測定オフセットを決定するために使用され得るピーク固有のオフセットを識別し得るものもあれば、全体的なピーク位置測定オフセットを直接決定することが可能であり得るものもある。上記で考察されるように、他のアルゴリズムを使用して、パターンの変化の特定の組み合わせに対してドリフト決定を行うことができ、これらの組み合わせのうちのいくつかは、画像位置合わせを使用する必要はないが、ピークデータからの他のパターン情報を使用する必要がある。
【0105】
特許請求の範囲内を含む、本明細書において使用される際、特に文脈が示さない限り、本明細書における用語の単数形は、複数形を含むものとして解釈され、逆の場合も同様である。例えば、特に文脈が示さない限り、特許請求の範囲において「a」又は「an」(イオン多重極装置(an ion multipole device)など)などを含む単数形の参照は、「1つ以上」(例えば、1つ以上のイオン多重極装置)を意味する。本開示の明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」、「含む」(including)、「有する(having)」、及び「含む(contain)」などの語、並びに、語の変形、例えば、「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」又は同様のものは、「~を含むが、これに限定されない」ことを意味し、他のコンポーネントを排除することを意図したものではない。
【0106】
本明細書において提供されるありとあらゆる例、又は例示的な文言(「例えば(for instance)」、「~など(such as)」、「例えば(for example)」、及び同様の文言)の使用は、単に、発明をより良く例示することを意図され、特に特許請求されない限り、本開示の範囲への限定を示すものではない。本明細書におけるいずれの文言も、本開示の実施に不可欠なものとして主張されていないいかなる要素も示すものとして解釈されるべきではない。
【0107】
本明細書に記載された任意のステップは、異なるように記載されていない限り、又は文脈により別の意味が必要とされない限り、任意の順序で、又は同時に実行され得る。
【0108】
本明細書で開示される態様及び/又は特徴の全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に記載されているように、特定の前処理ステップと特定のアルゴリズムの組み合わせなど、更に有益な態様の特定の組み合わせが存在し得る。特に、本開示の好適な特徴は、本開示の全ての態様に適用可能であり、任意の組み合わせで使用され得る。同様に、必須ではない組み合わせで記載された特徴は、(組み合わせではなく)別々に使用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元光学スペクトルにおけるピーク位置測定オフセットを決定する方法であって、前記方法が、
既知の条件で基準材料から得られたスペクトルと、関心対象の試料から得られたスペクトルと、の両方に現れる複数のピークを識別することと、
前記ピーク位置測定オフセットを、前記関心対象の試料から得られたスペクトルにおける識別された前記複数のピークのピーク位置によって形成されたパターンを、前記基準材料から得られたスペクトルと比較することによって、決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
識別された前記複数のピークが、少なくとも3つのピークを含み、かつ/又は、前記二次元光学スペクトルにおける識別された前記複数のピークの位置が、非対称多角形の頂点を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
識別された前記複数のピークが、前記基準材料及び前記試料のプラズマ化学の特性である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
識別された前記複数のピークによって囲まれる前記スペクトルの面積が、前記二次元光学スペクトルの少なくとも10%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記パターンが、識別された前記複数のピークの強度及び/又は形状を考慮して、ピーク位置によって形成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記決定することが、画像位置合わせアルゴリズム及び/又は機械学習アルゴリズムを使用して、前記比較を確立することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記ピーク位置測定オフセットが、前記複数のピークの各々に対するピーク固有のオフセットを使用して決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記基準材料から得られたスペクトルにおける各識別されたピークのそれぞれの位置に基づいて、前記関心対象の試料から得られたスペクトル及び前記基準材料から得られたスペクトルにおける識別された前記複数のピークの各々の周りに、それぞれのサブアレイを確立することであって、前記比較が前記サブアレイ内の情報に基づいている、それぞれのサブアレイを確立することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記サブアレイの外側の画素を、前記関心対象の試料から得られたスペクトルと、前記基準材料から得られたスペクトルと、の両方から除去することであって、前記比較が、前記画素の除去後に前記関心対象の試料から得られたスペクトルと、前記画素の除去後に前記基準材料から得られたスペクトルと、に基づいている、除去することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記比較が、基準レベルが除去された状態、対数変換が適用された状態、及び強度正規化のうちの1つ以上での識別された前記複数のピークを使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
識別された前記ピークの各々が、前記二次元光学スペクトルにおける他の識別されたピークと比較した、それぞれのピークの相対的最大値を示す数に従って、正規化される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
識別されたそれぞれのピークの周りの前記二次元光学スペクトルの強度に基づいて、識別された前記ピークの各々についての位置を確立することであって、前記パターンが、識別された前記ピークについての確立された前記位置に基づいている、位置を確立することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記ピーク位置測定オフセットを前記決定することが、
前記複数のピークの各々に対するピーク固有のオフセットを決定することと、
前記複数のピークに対して決定された前記ピーク固有のオフセットの加重平均を取ることによって、前記ピーク位置測定オフセットを計算することであって、各加重が、前記それぞれのピークに対応する前記関心対象の試料から得られたスペクトルの部分と、前記それぞれのピークに対応する前記基準材料から得られたスペクトルの部分と、の間の相対相関に基づいて決定される、計算することと、を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記決定されたピーク位置測定オフセットを、(i)前記関心対象の試料から得られたスペクトルと、前記基準材料から得られたスペクトルと、の間の相関と、(ii)前記関心対象の試料から得られた補正スペクトルと、前記基準材料から得られたスペクトルと、の間の相関を比較することによって検証することであって、前記関心対象の試料からの前記補正スペクトルが、前記決定されたピーク位置測定オフセットに基づいて、前記関心対象の試料から得られたスペクトルに補正を適用することによって生成される、検証することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
各ピークを中心とした前記二次元光学スペクトルの少なくとも部分を使用して、各ピークに対して、機械学習画像位置合わせアルゴリズムを訓練することと、
訓練された前記機械学習画像位置合わせアルゴリズムを使用して、前記複数のピークの各々に対して、ピーク固有のオフセットを決定することと、を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
前記機械学習画像位置合わせアルゴリズムが、半教師付きである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
識別された前記ピークの全てについて隣接ピークを接続することによって、多角形を画定することを更に含み、前記機械学習画像位置合わせアルゴリズムを前記訓練することが、各ピークを中心とした前記二次元光学スペクトルの前記部分を、画定された前記多角形の対応する部分とともに使用する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
コンピュータプログラムであって、コンピュータによって実行されると、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている命令を含む、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】