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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】高温安定性農薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/30 20060101AFI20241203BHJP
   A01P 5/00 20060101ALI20241203BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241203BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20241203BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20241203BHJP
   A01N 43/36 20060101ALI20241203BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20241203BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A01N25/30
A01P5/00
A01P3/00
A01N43/40 101D
A01P7/04
A01N43/36 A
A01N43/653 G
A01N37/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537980
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2022087062
(87)【国際公開番号】W WO2023118192
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/292,130
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム ルファイ
(72)【発明者】
【氏名】ファジャリア アンキット
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AC01
4H011BB06
4H011BB09
4H011BC03
4H011BC19
4H011DA14
4H011DD03
4H011DG16
4H011DH02
4H011DH03
(57)【要約】
本発明は、農薬組成物であって、a.少なくとも1種の農薬活性化合物と、b.組成物の総重量に基づいて少なくとも2%のw/w(重量/重量)濃度の少なくとも1種の顔料と、c.アクリルグラフトポリマー、ポロキサマー及びブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの各々から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤とを含む農薬組成物に関する。好ましくは、少なくとも活性化合物は、殺線虫剤、より好ましくはシクロブトリフルラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬組成物であって、
a.少なくとも1種の農薬活性化合物と、
b.前記組成物の総重量に基づいて少なくとも2%のw/w(重量/重量)濃度の少なくとも1種の顔料と、
c.アクリルグラフトポリマー、ポロキサマー及びブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの各々から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と
を含む農薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも活性化合物は、殺線虫剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記殺線虫剤は、シクロブトリフルラムである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の顔料は、前記組成物の総重量に基づいて2%~30%のw/w濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の農薬活性化合物は、前記組成物の総重量に基づいて1%~80%のw/w濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の顔料は、有機顔料である、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記有機顔料は、化学式C1811CaClN26S、CAS:7023-61-を有するモノアゾカルシウム塩である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
d.ジアキソラン、ベンゾジオキソール、アシルアラニン、ジフェノコナゾール、メタラキシル及びフルジオキソニルからなる群から選択される少なくとも1種の他の活性殺菌剤化合物
をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記アクリルグラフトポリマーは、6を上回る親水性-親油性バランス(HLB)値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記アクリルグラフトポリマーは、前記組成物の総重量に基づいて0.1%~10%のw/w濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポロキサマーは、前記組成物の総重量に基づいて0.1%~10%のw/w濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーは、前記組成物の総重量に基づいて0.1%~10%のw/w濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の農薬組成物と希釈剤とを含む、圃場用組成物のタンクミックス。
【請求項14】
植物における有害生物、任意に真菌及び/又は線虫を防除又は低減する方法であって、請求項1に記載の組成物を植物又はその生息地に適用することを含む方法。
【請求項15】
植物繁殖材料、植物、植物の一部及び/又は後の時点で生育する植物器官における病原性損傷又は有害生物による損傷を防除又は予防する方法であって、請求項1に記載の組成物を前記植物、前記植物の一部、植物器官、植物繁殖材料又はその周囲に同時に適用することを含む方法。
【請求項16】
前記植物繁殖材料は、種子である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物で処理された植物繁殖材料。
【請求項18】
植物又は作物における真菌及び/又は線虫の侵入を防除又は低減するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺線虫剤、顔料及び非イオン性界面活性剤を含む活性化合物の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
1種又は複数の活性化合物を含む農薬組成物(すなわち殺有害生物剤)は、一般に、いわゆる最適化されたプレミックス製剤でエンドユーザー、例えば農家に提供される。プレミックス製剤は、有効な殺有害生物組成物を得るために、エンドユーザーにより、作物への適用直前に水及び任意に他の化合物で希釈及び混合される。このプレミックス製剤は、高濃度の殺有害生物剤及び他の製剤化合物を含み、殺有害生物剤の安定性を維持し、その後の最適な希釈及び混合条件をエンドユーザーに提供する。
【0003】
プレミックス製剤は、高濃度の殺有害生物剤による利点を提供する。コストによる利点には、輸送、貯蔵及び包装コストの減少が含まれ、適用による利点には、エンドユーザーによって取り扱われる殺有害生物剤の量がより少量であることが含まれる。
【0004】
国際公開第2013143811号及び国際公開第20155003951号に記載されている4員環カルボキサミドからの活性化合物、例えばシクロブトリフルラムは、非常に効果的な殺線虫剤であり、同時に優れた殺菌特性も提供する。このような化合物は、プレミックス製剤に配合するのに適している。
【0005】
プレミックス製剤は、顔料などの着色剤も含み得る。顔料濃度が高い場合、高温(例えば、少なくとも40℃)における製剤の安定性が多くの場合に問題となる。高温では、激しい増粘及び沈降が起こり、これは、製剤及びその殺有害生物剤の全体的な安定性に有害である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、高温での高い安定性などの有利な特性を有する、高濃度の顔料を含む4員環カルボキサミドからの活性化合物のための製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従い、農薬組成物であって、
a.少なくとも1種の農薬活性化合物と、
b.組成物の総重量に基づいて少なくとも2%のw/w(重量/重量)濃度の少なくとも1種の顔料と、
c.アクリルグラフトポリマー、ポロキサマー及びブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの各々から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と
を含む農薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本出願人らは、驚くべきことに、本発明のこの態様による農薬組成物が高温で高い安定性を示すことを見出した。この安定性の増加により、このような組成物の貯蔵寿命が延長され、同時に、昆虫、真菌及び線虫などの植物有害生物が効果的に防除される。本発明のこの態様による農薬組成物は、有利には、高温での増粘及び沈降が少ない一方、粘度の不利な増加又は減少も示さない。
【0009】
したがって、本発明は、農薬組成物であって、
a.少なくとも1種の農薬活性化合物と、
b.組成物の総重量に基づいて少なくとも2%のw/w(重量/重量)濃度の少なくとも1種の顔料と、
c.アクリルグラフトポリマー、ポロキサマー及びブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの各々から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と
を含む農薬組成物に関する。
【0010】
国際公開第2013143811号及び国際公開第20155003951号に記載されている4員環カルボキサミドからの活性化合物、例えばシクロブトリフルラムは、非常に効果的な殺線虫剤であり、同時に優れた殺菌特性も提供する。
【0011】
好ましくは、本発明による少なくとも1種の農薬活性化合物は、殺線虫剤、より好ましくはシクロブトリフルラムである。
【0012】
シクロブトリフルラムは、作物の処理に使用される、殺菌特性を有する殺線虫剤である。そのIUPAC名は、N-[2-(2,4-ジクロロフェニル)シクロブチル]-2-(トリフルオロメチル)-ピリジン-3-カルボキサミドである。これは、通常、80~100%の(1S,2S)-エナンチオマーと、20~0%の(1R,2R)-エナンチオマーとを含む異性体の混合物として使用される。分子構造は、C1713Cl232Oである。その作用機序は、ミトコンドリア電子伝達鎖複合体IIの阻害であると提案されている。
【0013】
好ましくは、本発明による少なくとも1種の顔料は、組成物の総重量に基づいて少なくとも3%のw/w濃度、より好ましくは少なくとも4%の濃度、さらに好ましくは少なくとも5%の濃度で存在する。
【0014】
好ましくは、本発明による少なくとも1種の顔料は、組成物の総重量に基づいて2%~30%のw/w濃度、より好ましくは3%~28%の濃度、さらにより好ましくは4%~24%の濃度、最も好ましくは5%~20%の濃度で存在する。
【0015】
適切な着色剤は、染料又は顔料着色剤であり得る。適切な染料としては、アントラキノン、トリフェニルメタン、フタロシアニン及びその誘導体並びにジアゾニウム塩が挙げられる。着色剤は、ピグメントレッド112(CAS番号6535-46-2)、ピグメントレッド2(CAS番号6041-94-7)、ピグメントレッド48:2(CAS番号7023-61-2)、ピグメントブルー15:3(CAS番号147-14-8)、ピグメントグリーン36(CAS番号14302-13-7)、ピグメントグリーン7(CAS番号1328-53-6)、ピグメントイエロー74(CAS番号6358-31-2)、ピグメントオレンジ5(CAS番号3468-63-1)、ピグメントバイオレット23(CAS番号6358-30-1)、ピグメントブラック7(CAS番号97793-37-8)及びピグメントホワイト6(CAS番号98084-96-9)などの顔料を含有し得る。着色剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて0~50重量%の量で本発明の種子コーティング組成物中に存在し得る。好ましくは、本発明による少なくとも1種の顔料は、有機顔料、好ましくはモノアゾ顔料、より好ましくはピグメントレッド48、ピグメントレッド52、ピグメントレッド57及びそれらの金属塩、より好ましくはピグメントレッド48:1、化学式C1811CaClN26S(CAS:7023-61-2)を有するモノアゾカルシウム塩からなるリストから選択される顔料である。
【0016】
有機顔料は、Agrocer Red 112分散液、Agrocer Red 482粉末及び/又はSunsperse Red 48:2から適切に選択され得る。Agrocer Red 112分散液は、Clariantから市販されている水性モノアゾ顔料分散液である。これは、約40重量%の赤色モノアゾ染料、40重量%の水、10重量%のグリセロール及び8%の他の成分を含む。Agrocer Red 482は、粉末状の赤色モノアゾ有機顔料である。Sunsperse Red 48:2は、Sun Chemicalsから市販されている赤色モノアゾ有機顔料である。
【0017】
好ましくは、本発明による少なくとも1種の農薬活性化合物は、組成物の総重量に基づいて1%~80%のw/w濃度、より好ましくは10%~45%の濃度、さらに好ましくは20%~40%の濃度、最も好ましくは35%~38%の濃度で存在する。
【0018】
好ましくは、本発明による組成物は、
d.少なくとも1種の他の活性殺菌剤化合物
をさらに含み、好ましくは、少なくとも1種の他の殺菌剤は、ジアキソラン、ベンゾジオキソール及び/又はアシルアラニン、好ましくはジフェノコナゾール、メタラキシル及び/又はフルジオキソニルである。
【0019】
好ましくは、本発明によるアクリルグラフトポリマーは、6を上回る、好ましくは8を上回る、より好ましくは10を上回る親水性-親油性バランス(HLB)値を有する。
【0020】
好ましくは、本発明によるポロキサマーは、9未満、好ましくは6未満、より好ましくは3未満のHLB値を有する。
【0021】
好ましくは、本発明によるブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーは、6を上回る、好ましくは8を上回る、より好ましくは10を上回るHLB値を有する。
【0022】
好ましくは、本発明によるアクリルグラフトポリマーは、組成物の総重量に基づいて0.1%~10%、より好ましくは0.2%~5%、さらに好ましくは1%~3%、最も好ましくは1%~2.5%のw/w濃度で存在する。
【0023】
好ましくは、本発明によるポロキサマーは、組成物の総重量に基づいて0.1%~10%、より好ましくは0.2%~5%、さらに好ましくは1%~3%、最も好ましくは1.5%~2.5%のw/w濃度で存在する。
【0024】
好ましくは、本発明によるブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーは、組成物の総重量に基づいて0.1%~10%、より好ましくは0.2%~5%、さらに好ましくは1%~3%、最も好ましくは1.5%~3.5%のw/w濃度で存在する。
【0025】
本発明の開示に関連して、以下の用語は、以下のように定義される。
【0026】
「農薬的活性」とは、農作物の線虫、昆虫、コナダニ科(acarid)有害生物及び/又は真菌病原菌を防除するのに有効であることを意味すると理解されたい。
【0027】
「真菌」は、真菌の全ての種及び真菌に類似する全ての生物、例えば卵菌類(oomycetes)を包含すると理解されたい。
【0028】
ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーは、ABA又はBABブロックコポリマー又はBAブロックコポリマーなどのジ-及びトリ-ブロックコポリマーであり得る。ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの例は、ポロキサマー及びブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーである。
【0029】
ポロキサマーは、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖で挟まれたポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央疎水性鎖から構成される非イオン性トリブロックコポリマーである。
【0030】
Pluronic(登録商標)L121(BASF;CAS:9003-11-6)は、好ましいポロキサマーである。これは、第一級ヒドロキシル基で終端する二官能性ブロックコポリマー界面活性剤である。これは、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)ポリマー[PEG-PPG-PEGポリマー]を含む。これは、1~2のHLB値を有する。
【0031】
ブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーは、ブチルポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))/ポリオキシプロピレン(ポリ(エチレンオキシド))から構成されるジブロックコポリマーである。
【0032】
Toximul(登録商標)8320(Stepan Chemical Co.;CAS番号:9038-95-3)は、2400~3500の範囲の平均分子量を有する好ましいブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーである。これは、12のHLB値を有する。
【0033】
Altox 4913(Croda;CAS番号:119724-54-8)は、好ましいアクリルグラフトポリマーである。これは、両方ともメトキシポリ(エチレングリコール)750、メタクリレート(61.5%)でグラフト化されている、36.6%のメチルメタクリレート、1.9%のメタクリル酸を含む櫛型グラフトコポリマーの溶液(水及びグリコール)である。Altox 4913は、約12のHLB値を有する。
【0034】
本発明による農薬組成物は、少なくとも1種のアクリルグラフトポリマーを含む。アクリルグラフトポリマーは、1種の複合体の直鎖骨格と、別の複合体のランダムに分布した枝とを有するセグメント化コポリマーであるグラフトポリマー界面活性剤の大きいグループの一部である。
【0035】
グラフトポリマー界面活性剤は、グラフトコポリマー界面活性剤であり得る。グラフトコポリマーは、側鎖の成分が主鎖の成分と構造的に異なる分岐コポリマーである。本明細書では、界面活性剤に関連する「グラフトコポリマー」という用語は、同じであるか又は性質及び長さが異なり得る、その骨格と異なるポリマー鎖が付加された骨格ポリマー鎖を有する、櫛の構造に類似したポリマーを指すために使用される。櫛型グラフトポリマーは、ポリオキシエチレン基などのポリオキシアルキル化側鎖基が付加された(メタ)アクリルポリマー又はコポリマーなどのポリマーの骨格鎖を有し得る。グラフトコポリマーは、異なる化学組成のポリマー骨格から分岐した、ある化学組成のポリマー鎖を有する材料である。グラフトコポリマー界面活性剤は、ポリマー骨格と、ポリマー骨格に付加されたポリエーテル基とを有し得る。本発明に従って使用できるグラフトコポリマーには、限定されないが、ポリマー骨格から延在する別のポリマー、非限定的な例としてポリエチレングリコールなどのポリエーテルの鎖を有する、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート又はメチルメタクリレートの少なくとも1種の骨格ポリマーを有するグラフトコポリマーが含まれる。
【0036】
アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート又はメタクリル酸メチルポリマーなどのポリマーから形成されたポリマー骨格を有するグラフトコポリマー界面活性剤は、「アクリルグラフトコポリマー」又は「アクリルグラフトポリマー」と呼ばれる。本発明の特に好ましい実施形態では、組成物に使用されるグラフトポリマー界面活性剤は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート又はメチルメタクリレートポリマー及びコポリマーなどのポリマーから形成されるポリマー骨格と、この骨格から延在するポリエチレングリコール(PEG)枝とを有するグラフトコポリマー界面活性剤として記載され得る。二次元的な表現では、PEG枝は、アクリレートポリマー骨格(通常、線状)に対して垂直に描かれ、櫛の歯に似ている。このタイプのグラフトコポリマーは、ときに「櫛型グラフトポリマー」と呼ばれる。
【0037】
適切なグラフトコポリマー界面活性剤としては、非イオン性ポリアクリレートグラフトコポリマー、例えばClariantからのDispersogen PSL 100、変性ポリアクリル酸、例えばBASFからのSokolan CP N40、アクリルコポリマー又はアクリルグラフトポリマー、例えばCrodaからのAtlox 4913及びZephyrm PD3315、HuntsmanからのTersperse 2500、アクリルポリマー、例えばLambertiからのEmulson AGTRN 14105、Emulson AG TP1及びEmulson AG RHS及び/又はグラフトコポリマー、例えばEthacryl P(Lyondell Chemical Co.からの35~45%櫛型グラフトコポリマー溶液)及び/又はAGNIQUECP-72Lが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
Tersperse 2500は、Huntsman Corporationから市販されている櫛型グラフトコポリマー溶液(約35重量%ポリマー)である。Ethacryl Pは、Lyondell Chemical Companyから市販されている35~45重量%の櫛型グラフトコポリマー溶液である。Tersperse 2500のCAS番号は、111740-364である。
【0039】
Altox 4913は、両方ともメトキシポリ(エチレングリコール)750、メタクリレート(61.5%)でグラフト化されている、36.6%のメチルメタクリレート、1.9%のメタクリル酸を含む櫛型グラフトコポリマーの溶液(水及びグリコール)であり、Crodaから市販されている。Altox 4913は、約12のHLB値を有する。Altox 3913のCAS番号は、119724-54-8である。
【0040】
好ましくは、グラフトコポリマー又はアクリルグラフトポリマー界面活性剤は、約10~約16の範囲のHLB数、より好ましくは約10~約13の範囲のHLB数を有する。
【0041】
本発明によるアクリルグラフトコポリマー又はアクリルグラフトポリマーは、好ましくは、全組成物の重量に対して0.5~3.0重量%の範囲で存在する。より好ましくは、アクリルグラフトコポリマー又はアクリルグラフトポリマーは、全組成物の重量に対して1.0~2.5重量%の範囲、さらに好ましくは1.25~2.25重量%の範囲、最も好ましくは1.50~2.00重量%の範囲で存在する。
【0042】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、有機(共)溶媒をさらに含む。有機(共)溶媒は、適切には、芳香族溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン又はアルキルナフタレン、塩素化芳香族溶媒、例えばフルオロベンゼン又はクロロベンゼン、塩素化脂肪族炭化水素、例えばジクロロメタン、脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサン又はパラフィン、例えば鉱油、アルコール、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール又はグリコール並びにエーテル、エステル、ケトン、例えばアセトン及び/又はジメチルスルホキシドから選択され得る。
【0043】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、農薬組成物の総重量に対して2~14重量%の有機(共)溶媒、より好ましくは4.0~12.0重量%、さらに好ましくは6.0~10.0重量%、最も好ましくは7.0~9.0重量%の有機(共)溶媒を含む。
【0044】
より好ましくは、本発明による農薬組成物は、有機(共)溶媒をさらに含み、有機(共)溶媒は、1種又は複数の油である。油は、任意の有機油又は有機油の組み合わせから適切に選択され得る。さらに好ましくは、油は、エポキシ化されていない若しくはエポキシ化された、水素化された、部分的に水素化された及び/又は完全に水素化された植物油(例えば、エポキシ化ココナッツ油、カノーラ油又は大豆油)から選択される。最も好ましくは、油は、パーム油、キャノーラ油、ピーナッツ油、ヤシ油、大豆油及び/又はヒマシ油の任意の組み合わせから選択される。
【0045】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、農薬組成物の総重量に対して2~14重量%の油、より好ましくは4.0~12.0重量%、さらに好ましくは6.0~10.0重量%、最も好ましくは7.0~9.0重量%の油を含む。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明による農薬組成物は、不凍剤をさらに含む。不凍剤は、プロピレングリコール及び/又はグリセリンから適切に選択され得る。
【0047】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、農薬組成物の総重量に対して0.1~14重量%の不凍剤、より好ましくは2.0~12.0重量%、さらに好ましくは4.0~10.0重量%、最も好ましくは6.0~8.0重量%の不凍剤を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明による農薬組成物は、分散剤パッケージをさらに含む。分散剤パッケージは、メチルセルロース、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)を任意に含み得る。
【0049】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、農薬組成物の総重量に対して1~7重量%の分散剤パッケージ、より好ましくは2.0~6.0重量%、さらに好ましくは3.0~5.0重量%、最も好ましくは3.5~4.5重量%の分散剤パッケージを含む。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明による農薬組成物は、湿潤剤をさらに含む。湿潤剤は、水の表面張力を低下させるために使用される表面活性分子である。適切には、湿潤剤は、有利には、水溶性及び水分散性のフィルム形成性ポリマーからの、より好ましくは少なくとも10,000~約100,000の平均分子量を有する少なくとも1種のポリマーを含み得る。このような湿潤剤は、有利には、処理された植物繁殖材料への有効成分の付着を改善する。商業的に入手可能な湿潤剤としては、以下のものが挙げられる:Agnique(登録商標)LVA(BASF)、Agnique(登録商標)PG 8105(C8~10アルキルポリグリコシド(D.P.=1.5)約65%活性含量、BASF)、Agnique(登録商標)PG 8107(C8~10アルキルポリグリコシド(D.P.=1.7)約70%活性含量、BASF)、Agnique(登録商標)PG 9116(C9~11アルキルポリグリコシド(D.P.=1.6)、BASF)、Agnique(登録商標)SLES 220/227/370(アルキルエーテルスルフェート、BASF)、Agnique(登録商標)SLES 28 RI(アルキルエーテルスルフェートC12~14、ナトリウム塩、BASF)、Disponol SUS IC 875(スルホスクシネート、BASF)、Emulan(登録商標)LVA(アルコールポリグリコールエーテル、BASF)、Emulan(登録商標)TXI(アルコールポリグリコールエーテル、BASF)、Lutensol(登録商標)TO 8(エトキシル化C13オキソアルコール(POE8)、BASF)、Lutensol XL 40/50/60/70/79/80/89/90(C10-ゲルベットアルコール及びエチレンオキシドから製造されたアルキルポリプロピレン及びエチレングリコールエーテル、BASF)、Lutensol XP 30/40/50/60/69/70/79/80/89/99/100(C10-ゲルベット(Guerbet)アルコール及びエチレンオキシドをベースとするアルキルポリエチレングリコールエーテル、BASF)、Morwet(登録商標)D-425 Powder/Liquid(ナフタレンスルホネート縮合物のナトリウム塩、Nouryon)、Plurafac(登録商標)LF(脂肪アルコールアルコキシレート、BASF)、Tamol(登録商標)DN(フェノールスルホン酸縮合物、Na塩、BASF)、Tamol(登録商標)FB P1/NN 8906(ナフタレンスルホン酸縮合物、Na塩、BASF)及びテトラメチルデシンジオール。
【0051】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、農薬組成物の総重量に対して0.05~1.00重量%の湿潤剤、より好ましくは0.10~0.90重量%、さらに好ましくは0.25~0.75重量%、最も好ましくは0.40~0.60重量%の湿潤剤を含む。
【0052】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、無機担体をさらに含む。適切な無機担体は、アルミナ、アタパルジャイト、クレー、珪藻土、カオリン、モンモリロナイト、石英、シリカ、シリケート及び/又はタルクなどの粉砕無機材料から任意に選択され得る。
【0053】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、0.05~1.00重量%の無機担体、より好ましくは0.10~0.75重量%、さらに好ましくは0.20~0.50重量%、最も好ましくは0.30~0.40重量%の無機クレーを含む。
【0054】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、レオロジー改質剤をさらに含む。
【0055】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、防腐剤をさらに含む。
【0056】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、緩衝剤をさらに含む。適切な緩衝剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、塩酸、リン酸及び/又は硝酸が挙げられる。
【0057】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、5~9の範囲、より好ましくは5.5~8.5の範囲、さらに好ましくは5.7~8.0の範囲、最も好ましくは6.0~7.0の範囲のpHを有する。
【0058】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、消泡剤をさらに含む。
【0059】
組成物は、肥料、微量栄養素供与体又は植物の生長に影響を及ぼす他の調製物もさらに含み得、且つ殺菌剤、殺真菌剤、殺線虫剤、植物活性剤、殺ダニ剤及び殺虫剤などの1種又は複数の他の生物学的に活性な薬剤と一緒に本発明の化合物を含有する組み合わせを含み得る。
【0060】
好ましくは、本発明による農薬組成物は、ゲル化しない。
【0061】
本発明のさらなる態様は、本発明による農薬組成物と、希釈剤、好ましくは液体、より好ましくは水を含む液体とを含む、圃場用組成物のタンクミックスに関する。
【0062】
本発明の別の態様は、植物における有害生物、任意に真菌及び/又は線虫を防除又は低減する方法であって、本発明による組成物を植物又はその生息地に適用することを含む方法に関する。
【0063】
本発明のさらに別の態様は、植物繁殖材料、植物、植物の一部及び/又は後の時点で成長する植物器官における病原性損傷又は有害生物による損傷を防除又は予防する方法であって、本発明による組成物を植物、植物の一部、植物器官、植物繁殖材料又はその周囲に同時に適用することを含む方法に関する。
【0064】
好ましくは、本発明による植物繁殖材料は、種子である。
【0065】
本発明のさらなる態様は、本発明による組成物で処理された植物繁殖材料に関する。
【0066】
好ましくは、本発明による植物繁殖材料は、種子である。
【0067】
本発明の別の態様は、植物又は作物における真菌及び/又は線虫の侵入を防除又は低減するための、本発明による組成物の使用に関する。
【0068】
本発明による実施形態は、以下に示すように提供される。
【0069】
実施形態1は、農薬組成物であって、
a.少なくとも1種の農薬活性化合物と、
b.組成物の総重量に基づいて少なくとも2%のw/w(重量/重量)濃度の少なくとも1種の顔料と、
c.アクリルグラフトポリマー、ポロキサマー及びブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの各々から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と
を含む農薬組成物を提供する。
【0070】
実施形態2は、少なくとも1種の農薬活性化合物が殺線虫剤を含むか又は殺線虫剤である、実施形態1に記載の農薬組成物を提供する。
【0071】
実施形態3は、殺線虫剤がシクロブトリフルラムを含むか又はシクロブトリフルラムである、実施形態1又は2に記載の農薬組成物を提供する。
【0072】
実施形態4は、少なくとも1種の顔料が、組成物の総重量に基づいて2%~30%のw/w濃度、より好ましくは3%~28%の濃度、さらに好ましくは4%~24%の濃度、最も好ましくは5%~20%の濃度で存在する、実施形態1、2又は3のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0073】
実施形態5は、少なくとも1種の農薬活性化合物が、組成物の総重量に基づいて1%~80%のw/w濃度、より好ましくは10%~45%の濃度、さらにより好ましくは20%~40%の濃度、最も好ましくは35%~38%の濃度で存在する、実施形態1、2、3又は4のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0074】
実施形態6は、少なくとも1種の顔料が、有機顔料、好ましくはモノアゾ顔料、より好ましくはピグメントレッド48、ピグメントレッド52、ピグメントレッド57及びそれらの金属塩、最も好ましくはピグメントレッド48:1、化学式C1811CaClN2O6S、CAS:7023-61-2を有するモノアゾカルシウム塩からなるリストから選択される顔料である、実施形態1、2、3、4又は5のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0075】
実施形態7は、
d.少なくとも1種の他の活性殺菌剤化合物
をさらに含み、好ましくは、少なくとも1種の他の殺菌剤がジアキソラン、ベンゾジオキソール及び/又はアシルアラニン、好ましくはジフェノコナゾール、メタラキシル及び/又はフルジオキソニルである、実施形態1、2、3、4、5又は6のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0076】
実施形態8は、少なくとも1種の農薬活性化合物がシクロブトリフルラムである、実施形態1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0077】
実施形態9は、アクリルグラフトポリマーが、6を上回る、好ましくは8を上回る、より好ましくは10を上回る親水性-親油性バランス(HLB)値を有し、ポロキサマーが、9未満、好ましくは6未満、より好ましくは3未満のHLB値を有し、且つ/又はブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーが、6を上回る、好ましくは8を上回る、より好ましくは10を上回るHLB値を有する、実施形態1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0078】
実施形態10は、アクリルグラフトポリマーが、組成物の総重量に基づいて0.1%~10%、より好ましくは0.2%~5%、さらに好ましくは1%~3%、最も好ましくは1%~2.5%のw/w濃度で存在する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8又は9のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0079】
実施形態11は、ポロキサマーが、組成物の総重量に基づいて0.1%~10%、より好ましくは0.2%~5%、さらに好ましくは1%~3%、最も好ましくは1.5%~2.5%のw/w濃度で存在する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0080】
実施形態12は、ブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーが、組成物の総重量に基づいて0.1%~10%、より好ましくは0.2%~5%、さらに好ましくは1%~3%、最も好ましくは1.5%~3.5%のw/w濃度で存在する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11のいずれか一項に記載の農薬組成物を提供する。
【0081】
実施形態13は、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のいずれか一項に記載の農薬組成物と希釈剤、好ましくは液体、より好ましくは水を含む液体とを含む、圃場用組成物のタンクミックスを提供する。
【0082】
実施形態14は、植物における有害生物、任意に真菌及び/又は線虫を防除又は低減する方法であって、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のいずれか一項に記載の組成物を植物又はその生息地に適用することを含む方法を提供する。
【0083】
実施形態15は、植物繁殖材料、植物、植物の一部及び/又は後の時点で成長する植物器官における病原性損傷又は有害生物による損傷を防除又は予防する方法であって、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のいずれか一項に記載の組成物を植物、植物の一部、植物器官、植物繁殖材料又はその周囲に同時に適用することを含む方法を提供する。
【0084】
実施形態16は、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のいずれか一項に記載の組成物で処理された植物繁殖材料を提供する。
【0085】
実施形態17は、植物繁殖材料が種子である、実施形態15又は16による方法を提供する。
【0086】
実施形態18は、植物又は作物における真菌及び/又は線虫の侵入を防除又は低減するための、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のいずれか一項に記載の組成物の使用を提供する。
【0087】
本発明による農薬組成物の1つの好ましい群において、組成物は、
a.組成物の総重量に基づいて1~50重量%のシクロブトリフルラム、好ましくは昇順に、組成物の総重量に基づいて2~48重量%、5~45重量%、10~40重量%、15~35重量%、20~30重量%、最も好ましくは22~28重量%のシクロブトリフルラムと、
b.組成物の総重量に基づいて0~50重量%の顔料と、
c.組成物の総重量に基づいて0~25重量%のアクリルグラフトポリマーと、
d.組成物の総重量に基づいて0~10重量%のポロキサマーと、
e.組成物の総重量に基づいて0~10重量%のブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーと
を含む。
【0088】
本発明による農薬組成物の1つの好ましい群において、組成物は、
a.組成物の総重量に基づいて1~15重量%のシクロブトリフルラムと、
b.組成物の総重量に基づいて0.1~15重量%の顔料と、
c.組成物の総重量に基づいて0.1~5重量%のアクリルグラフトポリマーと、
d.組成物の総重量に基づいて0.1~5重量%のポロキサマーと、
e.組成物の総重量に基づいて0.1~15重量%のブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーと
を含む。
【0089】
本明細書の記載及び特許請求の範囲を通して、「含む」及び「含有する」という語並びにそれらの変化形は、「含むが、限定されない」ことを意味し、他の部分、添加剤、成分、整数又はステップを除外することを意図しない(除外しない)。本明細書の記載及び特許請求の範囲を通して、文脈上別段の定めがない限り、単数形は、複数形を包含する。特に不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上別段の定めがない限り、単数形だけでなく、複数形も想定していると理解される。
【0090】
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例と関連して記載された特徴、整数、特性、化合物、化学部分又は基は、それと両立する限り、本明細書に記載された他の態様、実施形態又は実施例にも適用可能であると理解される。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴の全て及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本発明は、上記の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組み合わせ又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0091】
本発明の各態様及び実施形態では、「本質的にからなる」及びその変化形は、「含む」及びその変化形の好ましい実施形態として理解され、「からなる」及びその変化形は、「本質的にからなる」及びその変化形の好ましい実施形態として理解される。
【0092】
読者の注目は、本出願に関連して本明細書と同時又はそれ以前に出願され、本明細書とともに一般に公開されている全ての論文及び文献に向けられ、そのような全ての論文及び文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0093】
実施例1 - 試料B及び比較試料C、D、E、F及びGの調製
本発明による組成物(試料B)を比較組成物(試料C、D、E、F及びG)と比較した。組成物は、以下の表1に概略的に示す重量パーセントの成分を含む。組成物は、記載された成分を混合することによって調製した。
【0094】
【表1-1】
【表1-2】
【0095】
両方の試料の第一有効成分は、シクロブトリフルラムであり、両方の試料の第二有効成分は、フルジオキソニル、ジフェノコナゾール及びメタラキシル-Mである。第二有効成分は、市販されている。
【0096】
試料の配合に使用したリグノスルホネートは、市販のリグノスルフェートである。
【0097】
第一非イオン性界面活性剤は、Atlox(商標)4913(本発明による)又はAtlox(商標)4914(比較)のいずれかであった。Atlox(商標)4913は、一般的に使用される非イオン性界面活性剤であり、Croda Crop Careから市販されている。これは、HLB値12のアクリルグラフトコポリマー溶液である。Atlox(商標)4914は、一般的に使用される非イオン性界面活性剤であり、Croda Crop Careから市販されている。これは、HLB値6の非イオン性ランダムポリマーである。
【0098】
使用した第二非イオン性界面活性剤は、Stepan社から市販されており、一般的に使用されている非イオン性界面活性剤であるTOXIMUL(登録商標)8320であった。TOXIMUL(登録商標)8320は、ブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーである。それは、12のHLB値を有する。
【0099】
使用した不凍剤は、通常の市販の不凍剤であった。
【0100】
従来から使用されている分散剤及び湿潤剤を、McCutcheon’s,vol.1,“Emulsifiers and Detergents,”MC Publishing Company,Glen Rock,N.J.,U.S.A.,1996に開示されているように使用した。本発明に有用な追加の不活性成分は、McCutcheon’s,vol.2,“Functional Materials,”MC Publishing Company,Glen Rock,N.J.,U.S.A.,1996に記載されている。
【0101】
使用した顔料分散液は、一般的に使用される顔料であるSunsperse Red 48:2[コードRPD-0048]であった。これは、Sun Chemical Corporationから商業的に入手した。これは、化学式C18H11CaClN2O6S、CAS:7023-61-2を有するモノアゾカルシウム塩である。
【0102】
使用したレオロジー調整剤は、Solvayから市販されているRhodopol 23であった。
【0103】
組成物のpHは、適切な量の緩衝剤である水酸化ナトリウム及びリン酸を添加することにより、6~7に調整した。
【0104】
Pluronic(登録商標)L121は、一般的に使用される非イオン性界面活性剤であり、BASFから市販されている。Pluronic(登録商標)L121は、一級ヒドロキシル基で末端を形成する二官能性ブロックコポリマー界面活性剤である(CAS:9003-11-6)。これは、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)ポリマー[PEG-PPG-PEGポリマー]を含む。それは、1~2のHLB値を有する。
【0105】
実施例2 - 試料B及び比較試料C、D、E、F及びGの分析
組成物を、調製後の異なる時点において、異なる条件に供しながら、パラメータpH、粘度及び粒径について評価した。各組成物は、調製後(初期)、38℃の振盪条件下で1週間後、室温(RT)、38℃又は50℃の静置条件下で2週間後及び50℃から-10℃までのバーゼル凍結融解(BFT)温度サイクルに2週間毎日供した後に分析した。
【0106】
BFT温度サイクルは、組成物の安定性のための尺度であり、加速安定性試験条件を含む。BFTの加速試験条件は、試料を最初に50℃に加熱し、その後、24時間かけて50℃から-10℃まで熱サイクルし、50℃に戻すというものである。この毎日の熱サイクルを14日間繰り返す。加速安定性試験条件下での14日間の終わりに、試料を20℃まで冷却した。
【0107】
他の試験条件の終了時にも試料を20℃まで冷却した。
【0108】
次に、冷却した試料を、CIPAC MT 187に基づくUniversal Seedcare Method 1.0を用いて、Malvern 300 Particle Size Analyzerを用いて動的光散乱法によって分析した。試料のレオロジー特性も、ASTM D 2196に従って30回転/分(rpm)で使用することに基づき、#2スピンドルを30RPMで使用し、Brookfield LVDV-I Primeを用いて分析した。試料のpHも判定した。結果を以下の表2に概略的に示す。
【0109】
【表2-1】
【表2-2】
【0110】
「n/a」は、データがないことを示す。アスタリスクの付いた結果は、最適値以下であることを示す。
【0111】
全ての試料C、D、E、F及びGについて、粘度変動及び粒径増加の問題がある。組成物C、D、E、F及びGの激しい増粘及び沈降が高温で起こり、これは、製剤及びその殺有害生物剤の全体的な安定性に対して有害である。
【0112】
本発明による組成物を含む試料Bは、比較試料C、D、E、F及びGと比較した場合、粘度変動及び粒径並びに増粘及び沈降に関して、50℃で2週間後に改善された特性を有する。程度は低いが、BFTの実験条件に関しても同じことが言える。
【0113】
粒径値が小さいほど、より良好な組成物であることを示す。好ましくは、D[4,3]は、8μm未満、より好ましくは7μm未満、さらに好ましくは6μm未満である。好ましくは、D(v,0.95)は、25μm未満、より好ましくは20μm未満、さらに好ましくは15μm未満である。
【0114】
好ましくは、粘度は、400~700cpsである。さらに、初期粘度と1~2週間後の粘度との差は、好ましくは、100cps未満であり、これは、組成物が安定な粘度を有することを示している。
【0115】
表2の結果から、50℃で2週間後、本発明による組成物を含む試料Bは、比較試料(10.1、6.2、8.5、7.0、11.1μm)と比較して、ボリュームD[3,4]上の平均直径(3.7μm)がはるかに小さいことが観察される。ボリューム分布D[v,0.5]の中央値も、比較試料(8.6,4.6,5.7,3.8,8.2μm)に比べて試料B(3.1μm)の方が有利に低かった。粒子の95%が25.5、17.4、24.6、24.0又は30.5μm未満である比較試料のはるかに大きい値と比較して、試料Bの粒子の95%は、8.5μmより小さかった(D[v,0.95])。
【0116】
この結果は、高HLBのエチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマーであるToximul 8320、低HLBのEO/POブロックコポリマーであるPluronic L121及びアクリルグラフトコポリマーであるAtlox 4913の組み合わせが、高温での農薬組成物の物理的安定性を劇的に改善することを示している。
【国際調査報告】