(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ウイルス感染の処置のための薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20241203BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241203BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20241203BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/155 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/275 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/205 20060101ALI20241203BHJP
A61K 39/25 20060101ALI20241203BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20241203BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20241203BHJP
C07K 14/00 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61P31/14
A61P31/22
A61P31/20
A61K39/215
A61K39/12
A61K39/245
A61K39/145
A61K39/155
A61K39/21
A61K39/275
A61K39/205
A61K39/25
A61P31/18
A61P31/16
C07K14/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537984
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 SE2022051208
(87)【国際公開番号】W WO2023121547
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524234329
【氏名又は名称】ヴィレンク アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ハラーフ,ハゼム
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン,トールビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンクラ,ヨルマ
(72)【発明者】
【氏名】メリク,ウェッサム
(72)【発明者】
【氏名】セレガード,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】アイリ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA09
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4C084MA17
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4C084NA14
4C084ZB33
4C085AA03
4C085BA55
4C085BA57
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4C085BA78
4C085BA79
4C085BA80
4C085BA83
4C085BA85
4C085BB11
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045EA29
(57)【要約】
本開示は、エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための薬学的組成物であって、a)ペプチドPLNC8 βを表す配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%配列同一性を有するペプチド、および/またはb)ペプチドPLNC8 αを表す配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%配列同一性を有するペプチドを含む、薬学的組成物を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための薬学的組成物であって、
a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチド、および/または
b)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチド
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
(a)および/または(b)のペプチドの少なくとも1個のアミノ酸残基がD-アミノ酸残基である、請求項1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項3】
(a)および/または(b)のペプチドの約1nMから約1000μM、例えば、約10nMから約100μMを含む、請求項1または2に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項4】
約1:1から約20:1、例えば、約1:1から約10:1、例えば、約1:1のモル比で(a)および(b)のペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記ウイルス感染が、以下のウイルス科:コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、ニューモウイルス科(Pneumoviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アスファルウイルス科(Asfarviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、およびラブドウイルス科(Rhabdoviridae)からなる群から選択されるエンベロープウイルスにより引き起こされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記ウイルス感染が、エンベロープウイルス、例えば、以下のウイルス科:コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アスファルウイルス科(Asfarviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、およびポックスウイルス科(Poxviridae)からなる群から選択されるエンベロープウイルスにより引き起こされ、そのエンベロープは、感染細胞の小胞体、ゴルジ装置、もしくは核エンベロープから得られ、前記ウイルス感染が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe Acute Respiratory Coronavirus 2)(SARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)(MERS-CoV)、単純ヘルペスウイルス1型(Herpes Simplex Virus 1)(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(Herpes Simplex Virus 2)(HSV-2)、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr Virus)(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(Human Cytomegalovirus)(HCMV)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus)(VZV)、デングウイルス(Dengue Virus)(DENV)、ジカウイルス(Zika Virus)(ZIKV)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)、ランガットウイルス(Langat Virus)(LGTV)、およびダニ媒介性脳炎ウイルス(Tick-borne Encephalitis Virus)(TBEV)により引き起こされていてもよく、前記ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)が亜型クンジンウイルス(Kunjin virus)(KUNV)であってもよい、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記ウイルス感染が、気道感染および/または粘液層感染である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項8】
感染の部位へまたは感染の部位の近くへ局所的に、例えば外用として、投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項9】
粉末、溶液、クリーム、ゲル、軟膏として製剤化され、または医療デバイス上のコーティングとして固定化型で製剤化され、前記溶液が、エアロゾルでありおよび/または鼻腔用スプレーもしくは口腔用スプレーの形をとっていてもよく、前記医療デバイスが、フェイスマスク、エアフィルター、鼻カニューレデバイス、または気管内チューブであってもよい、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項10】
単回投与または複数回投与、例えば、1日2回、3回、4回、または5回を1~20日間投与するために製剤化される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項11】
前記ウイルス感染に関連した障害が、ウイルス誘導性炎症、ウイルス誘導性細胞死、ウイルス誘導性組織破壊、およびそれらの組合せからなる群から選択され、前記ウイルス誘導性組織破壊が、粘膜表面の損傷、肺線維症、臓器不全、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウイルス感染の予防または処置に関し、エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染およびウイルス感染に関連した障害の予防または処置における使用のための薬学的組成物であって、ペプチドであるプランタリシンNC8(PLNC8)βのアミノ酸配列と少なくとも90%配列同一性を有するペプチドおよび/またはペプチドであるPLNC8 αのアミノ酸配列と少なくとも90%配列同一性を有するペプチドを含む、薬学的組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ヒトは絶えず、ウイルスに曝され、ウイルス感染の結果は、ウイルス型およびそれの毒性の性質、感染経路、ならびに宿主の免疫学的および炎症性状態および応答などの多数の因子に依存する。感染の予後は、宿主が免疫低下している場合、致死的であり得る1。わずかな抗ウイルス薬のみが存在し、これらは広範な使用には高価であり、ウイルス病原性の複雑さのせいで、ウイルス感染の処置は、今日、宿主の炎症応答をターゲットとすることによる症状低下を含む場合が多い2,3。SARS-CoV-2を含む、新たに出現するウイルス病原体は、急速に増加し、ウイルス感染に対する我々の治療供給源が限られていることを浮き彫りにしている。SARS-CoV-2感染を特異的に阻害し、それによりCOVID-19を処置するための薬物は今まで認可されておらず、その結果として、近年、ウイルスの伝播を制限しかつ感染した患者の回復に何とか対応するためのロックダウンにより、多くの国の完全な麻痺を生じた4,5。このように、SARS-CoV-2に対して特異的な薬物はまだなお欠いているが、いくつかの候補が前臨床/臨床試験中である。認可された抗ウイルス薬の大部分は、ヌクレオシドおよび非ヌクレオシド逆転写酵素、ウイルスプロテアーゼ活性、ならびにウイルス侵入を主にターゲットとすることにより、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の処置に用いられている6,7。単一病原体治療用物質とは対照的に、多数のクラスのウイルスに対する新規の抗ウイルス化合物の開発は、幅広い範囲のウイルス感染を処置することにより、より有利だろう8,9。さらに、ビリオンを、例えば、両親媒性ペプチドにより8,10、直接的に破壊する抗ウイルス性物質の開発は、ウイルスおよびそれらのその後の病原性を迅速に排除し、それにより他の器官へのそれらの播種および個体間の伝播を制限することにより、最終的に効力を増加させるだろう。これは、ワクチン開発が、費用と時間のかかる工程であり、かつRNAウイルスが変異してワクチンを無効にし得るため、定期的にアップデートされなければならないことを考慮すると、特に興味深い。加えて、ウイルス感染に関連した二次細菌感染は、ヒト健康への深刻な脅威として際立っており、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、最もよく見られる病原体の1つであると同定されている11,12。それゆえに、強力な広域性抗ウイルス薬が、インフルエンザウイルスおよびコロナウイルスなどの呼吸器系ウイルスを含む新たに出現するウイルス病原体と戦うために緊急に必要とされている。
【0003】
バクテリオシンは、微生物を通常には膜破壊により殺す、乳酸桿菌(lactobacilli)を含む細菌により産生される低分子の抗菌性ペプチドである13,14。バクテリオシンは、それらの高い効力、広域性抗細菌活性、およびヒト組織への有益な効果により、細菌感染に対する伝統的な医薬における治療適用の魅力的な候補になっている。プランタリシンNC8(PLNC8)αβは、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)株により発現した2ペプチドのバクテリオシンである。本発明者らは、PLNC8 αβが、スタフィロコックス種(Staphylococcus spp.)を含むいくつかの細菌病原体を効果的に阻害および殺害し、抗生物質の効果を著しく増強することを以前、報告している15。PLNC8 αβは、ホスファチジルグリセロールリッチな細菌膜を含む負荷電病原体膜構造に対する高い親和性を示す、正の正味電荷を有する両親媒性ペプチドからなる。この相互作用は、最終的に細菌を殺す、細菌膜完全性の迅速な破壊、透過化、および恒常性の喪失をもたらす。真核細胞膜における陰イオン性リン脂質は、細胞質側の葉の方へ配向するが、それは、フリッパーゼ(ATPアーゼ)と名付けられた1群の酵素により制御される能動的過程である。さらに、高いコレステロール含有量(約40%)は、膜安定性および流動性に寄与し、PLNC8 αβおよび他の類似したペプチドによる膜透過化を阻止する。実際、本発明者らは、PLNC8 αβが、ヒト細胞へ細胞毒性を示さず、むしろ、細胞増殖、ならびにTGF-β1、IGF-1、およびEGFを含むいくつかの成長因子の発現を誘導することを以前、示している16。
【0004】
ウイルスは大きく2つのクラス:エンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスへ広く分けられる。どちらのクラスもそれらの複製のために宿主細胞を用いる。ウイルスの宿主細胞への侵入は、ウイルスエンベロープの形質膜との膜融合、または受容体媒介性エンドサイトーシスによることを含む。エンベロープウイルス、例えば、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、およびフラビウイルスは、それらのタンパク質カプシドを、宿主細胞膜からの出芽を通して脂質エンベロープで覆う。多くのウイルス科、例えばコロナウイルス科(coronaviridae)およびフラビウイルス科(flaviridae)について、翻訳、複製、アセンブリー、および出芽は、特異的に小胞体(ER)において起こり、次に、ゴルジ装置においてプロセシングされて、成熟ウイルスを生じ、その成熟ウイルスは、その後、エキソサイトーシスを通して放出される。したがって、これらのウイルスの脂質エンベロープは、ERに由来する。ER膜の脂質組成は、形質膜のそれとは、例えば、ER膜の両方の葉において陰イオン性脂質(例えば、ホスファチジルセリン)が均等な分布であり、一方、全ての荷電脂質が細胞質ゾルの方へ配向している形質膜が、非対称であることによって、異なる。しかしながら、ER膜はさらに、膜活性両親媒性ペプチドに対して安定性および抵抗性を与えるコレステロール(約8%)を含有する17,18。
【0005】
SARS-CoV-2による現在のパンデミックは、COVID-19として知られた生命を脅かす状態を引き起こし、ワクチンが共同努力により開発された。このウイルスがどの程度、より毒性の高い株へ変異し続けるのか、および新しく開発されたワクチンがこれらの変異株に対して有効であるかどうかはまだ決定されていない。ウイルス病原性の解明は新しい治療用物質の開発への重要なステップであるが、新しいウイルス病原体の急速な出現を考慮すれば、有効な広範囲の抗ウイルス化合物が緊急に必要とされる。呼吸器系ウイルス感染を有する患者における重篤な病気は、がん、糖尿病、および循環器疾患などの根底にある内科的な疾患に関連している場合が多い。感染患者は、重度の苦しみおよびより長い入院に耐えなければならず、今度はさらなる薬物療法およびケアを必要とする特別な医学的配慮を施され、最終的には、著しく増加した医療費を生じる。ワクチン開発が、ウイルス、例えばインフルエンザウイルスが連続的に進化しかつ変異して、年間の季節性流行を引き起こすことによる高い費用および限られた使用を伴うことを考慮すると、これらの課題は、世界的な革新的行動を必要とする。1つのそのような戦略は、重篤な感染と戦うために、多くのウイルスにより共有される共通の要素に作用する陽イオン性ペプチドに基づいた新しい広域性抗ウイルス剤を開発することである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的は、新規の広域性抗ウイルス性薬学的組成物を提供することである。本明細書では、プランタリシンNC8(PLNC8)αβ、加えて、それのサブユニット、すなわち、2つのペプチドPLNC8 αおよびPLNC8 βが抗ウイルス活性を発揮し、かつ異なるウイルス科に属する様々なウイルスに対する抗ウイルス剤として有望な性質を有することが示されている。
【0007】
より具体的には、本開示は、エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための薬学的組成物であって、a)配列番号1(すなわち、PLNC8 β)によるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチド、および/またはb)配列番号2(すなわち、PLNC8 α)のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチドを含む、薬学的組成物を対象とする。
【0008】
本開示の好ましい態様は、下記の詳細な説明および従属した特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ヒト形質膜および小胞体(ER)膜におけるすでに知られた、脂質の組成および構造を概略的に示す図である。
【
図2-1】
図2A:未処理のままにされた(対照)、またはペプチドL-PLNC8 αβで処理されたいずれかで、コレステロール有りまたは無しのいずれかの5% ホスファチジルセリンを含有するリポソームのクライオ電子顕微鏡(クライオEM)画像を示す図である。
【
図2-2】
図2B:ペプチドL-PLNC8 α、L-PLNC8 β、およびL-PLNC8 αβの、70% POPCおよび30% コレステロールを含有するリポソームへの効果を示す図である。
図2C:ペプチドL-PLNC8 α、L-PLNC8 β、およびL-PLNC8 αβの、91% POPC、1% POPS、および8% コレステロールを含有するリポソームへの効果を示す図である。
図2D:ペプチドL-PLNC8 α、L-PLNC8 β、およびL-PLNC8 αβの、81% POPC、11% POPS、および8% コレステロールを含有するリポソームへの効果を示す図である。
【
図3】
図3A:ペプチドL-PLNC8 αβ、スクランブルS-PLNC8 αβ、およびLL-37への曝露後のフラビウイルスLGTVへの効果、ならびに未処理のLGTV(対照)の顕微鏡画像(Sytox Green蛍光)を示す図である。
図3B:異なる濃度でのペプチドへの曝露後の、および未処理のLGTV(対照)の、定量化されたLGTVプラーク(フォーカス形成単位、FFU)のグラフである。ウイルスプラークの代表的な画像が棒の上に提示されている。
【
図4】
図4A:ペプチドL-PLNC8 αおよびL-PLNC8 βへの曝露後のLGTVへの効果、ならびに未処理のLGTV(対照)の画像を示す図である。
図4B:ペプチドへの曝露後の、および未処理のLGTV(対照)の、定量化されたLGTVプラークのグラフである。ウイルスプラークの代表的な画像が棒の上に提示されている。
【
図5】
図5AD-PLNC8 α、D-PLNC8 β、およびD-PLNC8 αβへの曝露後のLGTVへの効果、ならびに未処理のLGTV(対照)の画像を示す図である。
図5B:ペプチドへの曝露後の、および未処理のLGTV(対照)の、定量化されたLGTVプラークのグラフである。ウイルスプラークの代表的な画像が棒の上に提示されている。
【
図6】細胞内のLGTV粒子を可視化した透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。
【
図7】
図7A:L-PLNC8 αβ、L-PLNC8 α、およびL-PLNC8 βへの曝露後の、定量化されたフラビウイルスKUNVプラークのグラフである。
図7B:D-PLNC8 αβ、D-PLNC8 α、およびD-PLNC8 βへの曝露後の、定量化されたKUNVプラークのグラフである。
【
図8】異なるウイルス力価のKUNVに対するPLNC8 αβのL-およびD-鏡像異性体の抗ウイルス活性を示すグラフである。
【
図9】PLNC8 αβのL-およびD-鏡像異性体の、KUNVウイルス複製(
図9A)および細胞外ビリオンの蓄積(
図9B)への効果を示すグラフである。
【
図10】PLNC8 αβおよびPLNC8 βのL-鏡像異性体(
図10A)ならびにPLNC8 αβおよびPLNC8 βのD-鏡像異性体(
図10B)のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性を示すグラフである。
【
図11】PLNC8 αβおよびPLNC8 βのL-鏡像異性体(
図11A)ならびにPLNC8 αβおよびPLNC8 βのD-鏡像異性体(
図11B)のA型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性を示すグラフである。
【
図12】PLNC8 αβおよびPLNC8 βのL-鏡像異性体(
図12A)ならびにPLNC8 αβおよびPLNC8 βのD-鏡像異性体(
図12B)のHIV-1に対する効果を示すグラフである。
【
図13】PLNC8 αβのL-鏡像異性体およびPLNC8 αβのD-鏡像異性体、それぞれの、非感染細胞またはKUNV感染細胞の形態(
図13A)および生存率(
図13B)への効果を示すグラフである。
【
図14】PLNC8 αβのL-およびD-鏡像異性体の、KUNVに感染したヒト肺癌細胞への効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための薬学的組成物であって、a)配列番号1(すなわち、PLNC8 β)のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチド、および/またはb)配列番号2(すなわち、PLNC8 α)のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチドを含む、薬学的組成物を提供することにより、ウイルス感染に対する現在利用可能な予防的および処置手段に関連した上記の課題を解決しまたは少なくとも軽減する。
【0011】
今般ここで開示された薬学的組成物の顕著な利点には、それに含まれるペプチドが、ウイルスエンベロープに対する透過化作用を通して、エンベロープウイルスに対して強力な活性を有することが示されていることが挙げられる。より具体的には、透過化が、エンベロープの陰イオン性脂質との静電気的相互作用を通してのペプチドの活性によってもたらされ、したがって、ヒト細胞生存能に影響することなく細胞外ビリオンを特異的にターゲットとすることが、本明細書における実験セクションに示されている。この仮説は、異なる生物学的膜の組成の以前の知識と組み合わせて、異なるウイルス種に対するPLNC8 αβの効果を調べる実験的微生物学的研究により試験されかつ検証されている。
【0012】
さらに、全ての感染性ウイルス粒子を排除するのに必要とされるPLNC8 αβの濃度がナノモル濃度(nM)~マイクロモル濃度(μM)の範囲にあることが本明細書で示されており、そのことは、ウイルスの脂質エンベロープにおけるコレステロールの高い含有量(8~35%)を考慮すれば、驚くほど効率的である。したがって、PLNC8 αβは、それがウイルスエンベロープ構造をターゲットとするため、ウイルス抗原の変異とは無関係に、有効な抗ウイルス剤として用いることができる。この構造は安定であり、ウイルスのコーディングゲノムに依存せず、感染した宿主細胞、例えば、形質膜、小胞体、ゴルジ複合体、および核エンベロープに由来する。それゆえに、ウイルスエンベロープと宿主細胞形質膜との間の構造および機能の違いが、ウイルス膜を、PLNC8 αβなどの膜活性両親媒性ペプチドを用いることによる抗ウイルス治療にとっての理想的な標的にさせている。
【0013】
PLNC8 αβがヒト細胞へ細胞毒性を示さないことを示す以前の結果
15,16は、エンベロープウイルスがヒト細胞から複製および出芽するため、PLNC8 αβがいくらかの抗ウイルスの性質を有することは可能性が低いことを示唆した。より具体的には、真核生物の膜は、コレステロールを含有し、特異的なリン脂質組成および配向を有するため、PLNC8 αβを含む両親媒性ペプチドは、エンベロープウイルスに対していくらかの抗ウイルスの性質を有することは可能性が低く、これらのウイルスが細胞内で翻訳機構を利用し、ヒト細胞の形質膜から出芽するからである。それにも関わらず、本発明者らは、PLNC8 αβが実際、抗ウイルス活性を有するだろうと仮定した。この仮説は、形質膜と細胞オルガネラ、例えばER膜との間での、外葉のコレステロール含有量、リン脂質組成、および陰イオン性電荷における明らかな違いに基づいている。
図1は、形質膜が、ER膜(8%)より高いコレステロール含有量(35%)を有すること、およびさらに、形質膜が非対称であり、形質膜において細胞外側の葉が双性イオンのリン脂質で構成され、全ての陰イオン性リン脂質が細胞質ゾルの方へ配向しており、一方、ER膜は、両方の葉が陰イオン性リン脂質を含有する対称性であることを示している。本明細書での実験セクションにおいて、形質膜とER膜との間の違いが、PLNC8 αβが、細胞生存能に影響を及ぼすことなく、ウイルスエンベロープを効率的に透過化することを可能にする重大な決定因子であることも示されている。
【0014】
本明細書で研究されたウイルス科は、明確に異なる複製経路を有する。それらは、異なる細胞型および細胞内部位で複製およびアセンブルし、そのことは、本明細書で試験されている抗ウイルス性ペプチドに対する、変動する感受性を説明し得る。実際、ER/ゴルジ複合体経路を用いるウイルス、例えば、SARS-CoV-2およびフラビウイルスは、A型インフルエンザウイルスおよびHIV-1などの形質膜からそれらの脂質エンベロープを獲得するウイルスと比較して、PLNC8 αβに対してかなり感受性がより高いことが見出された。それでもなお、その結果は、試験されたペプチドが、いくつかの異なるウイルス科に属する明確に異なるエンベロープウイルスへ抗ウイルス効果を発揮することを示している。さらに、本明細書で示されているように、抗ウイルス効果は、ウイルスエンベロープの透過化により達成され、ウイルスのコーディングゲノムに依存しない。結果として、そのペプチドは、いかなる型のエンベロープウイルスにも抗ウイルス効果を発揮し得る。
【0015】
上記で述べられているように、本開示は、エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための薬学的組成物であって、配列番号1または配列番号2、それぞれのアミノ酸配列と少なくとも90%配列同一性を有するペプチドを含む、薬学的組成物を対象とする。少なくとも90%配列同一性を有するそのようなペプチドはまた、それの抗ウイルス効果または活性に関して、配列番号1または2、それぞれのアミノ酸配列と機能的に等価でなければならないことは理解されるべきである。ペプチドの抗ウイルス効果または活性は、下記の実験セクションに記載された実験の任意の1つまたは複数を実施することにより決定され得る。
【0016】
エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のためのペプチドもまた本明細書に記載され、ペプチドが、a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチド、またはb)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチドである。上記のように、少なくとも90%配列同一性を有するそのようなペプチドはまた、それの抗ウイルス効果または活性に関して、配列番号1または2、それぞれのアミノ酸配列と機能的に等価でなければならないことは理解されるべきである。この場合もやはり、ペプチドの抗ウイルス効果または活性は、下記の実験セクションに記載された実験の任意の1つまたは複数を実施することにより決定され得る。
【0017】
さらに、上述のペプチドは、任意の薬学的に許容される様式で製剤化され得ることは理解されるべきである。例えば、ペプチドは、薬学的に許容される塩または溶媒和化合物の形をとり得る。
【0018】
本来、L-アミノ酸で構成された上述のペプチドは、そのペプチドに存在するアミノ酸残基の総量を含むそれ以下の、少なくとも1個、例えば、2個、3個、4個などのD-アミノ酸残基を含んでもよい。
【0019】
したがって、本明細書に記載された薬学的組成物において、(上記で定義されているような)(a)および/または(b)のペプチドの少なくとも1個のアミノ酸残基は、D-アミノ酸残基であり得、例えば、2個、3個、4個などのD-アミノ酸残基であり得、最大で(上記で定義されているような)(a)および/または(b)のペプチドのアミノ酸残基の総数までであり得る。あるいは、薬学的組成物において、(上記で定義されているような)(a)および/または(b)のペプチドのアミノ酸残基の少なくとも約3%、例えば、約3.5%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%がD-アミノ酸残基であり得る。
【0020】
エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための本明細書で開示された薬学的組成物は、(a)および/または(b)のペプチドの約1nMから約1000μM、例えば、約10nMから約100μM、または、例えば、約1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、1μM、10μM、50μM、100μM、500μM、もしくは1000μMを含み得る。
【0021】
エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための本明細書で開示された薬学的組成物は、約1:1から約20:1、例えば、約1:1から約10:1、例えば、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1のモル比で(a)および(b)のペプチドを含み得る。
【0022】
ウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための本明細書で開示された薬学的組成物の関連において、ウイルス感染は、以下のウイルス科:コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、ニューモウイルス科(Pneumoviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アスファルウイルス科(Asfarviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、およびラブドウイルス科(Rhabdoviridae)からなる群から選択されるエンベロープウイルスにより引き起こされ得る。
【0023】
したがって、非限定的例として、エンベロープウイルスはコロナウイルス科(Coronaviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはフラビウイルス科(Flaviviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはヘルペスウイルス科(Herpesviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはオルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはレトロウイルス科(Retroviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはフィロウイルス科(Filoviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはニューモウイルス科(Pneumoviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはアルテリウイルス科(Arteriviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはアスファルウイルス科(Asfarviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはブニヤウイルス科(Bunyaviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはポックスウイルス科(Poxviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはトガウイルス科(Togaviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、エンベロープウイルスはラブドウイルス科(Rhabdoviridae)に属し得る。
【0024】
あるいは、ウイルス感染は、例えば、以下のウイルス科:コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アスファルウイルス科(Asfarviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、およびポックスウイルス科(Poxviridae)からなる群から選択されるエンベロープウイルスにより引き起こされ得、そのエンベロープは、感染細胞の小胞体、ゴルジ装置、または核エンベロープから得られる。
【0025】
したがって、非限定的例として、そのエンベロープが、感染細胞の小胞体、ゴルジ装置、または核エンベロープから得られる、エンベロープウイルスは、コロナウイルス科(Coronaviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはフラビウイルス科(Flaviviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはヘルペスウイルス科(Herpesviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはアルテリウイルス科(Arteriviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはアスファルウイルス科(Asfarviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはブニヤウイルス科(Bunyaviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)に属し得る。あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはポックスウイルス科(Poxviridae)に属し得る。
【0026】
そのようなエンベロープウイルスの非限定的例は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe Acute Respiratory Coronavirus 2)(SARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)(MERS-CoV)、単純ヘルペスウイルス1型(Herpes Simplex Virus 1)(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(Herpes Simplex Virus 2)(HSV-2)、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr Virus)(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(Human Cytomegalovirus)(HCMV)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus)(VZV)、デングウイルス(Dengue Virus)(DENV)、ジカウイルス(Zika Virus)(ZIKV)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)、ランガットウイルス(Langat Virus)(LGTV)、およびダニ媒介性脳炎ウイルス(Tick-borne Encephalitis Virus)(TBEV)である。
【0027】
したがって、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)(SARS-CoV)であり得る。
【0028】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe Acute Respiratory Coronavirus 2)(SARS-CoV-2)であり得る。
【0029】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスは中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)(MERS-CoV)であり得る。
【0030】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスは単純ヘルペスウイルス1型(Herpes Simplex Virus 1)(HSV-1)であり得る。
【0031】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスは単純ヘルペスウイルス2型(Herpes Simplex Virus 2)(HSV-2)であり得る。
【0032】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr Virus)(EBV)であり得る。
【0033】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはヒトサイトメガロウイルス(Human Cytomegalovirus)(HCMV)であり得る。
【0034】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスは水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus)(VZV)であり得る。
【0035】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはデングウイルス(Dengue Virus)(DENV)であり得る。
【0036】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはジカウイルス(Zika Virus)(ZIKV)であり得る。
【0037】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)であり得る。
【0038】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはランガットウイルス(Langat Virus)(LGTV)であり得る。
【0039】
あるいは、非限定的例として、そのようなエンベロープウイルスはダニ媒介性脳炎ウイルス(Tick-borne Encephalitis Virus)(TBEV)であり得る。
【0040】
そのようなエンベロープウイルスの別の非限定的例は、上述のウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)の亜型である、クンジンウイルス(Kunjin virus)(KUNV)である。
【0041】
本明細書に記載された薬学的組成物の使用により予防および/または処置され得るウイルス感染は、気道感染(例えば、上気道感染または下気道感染)および/または粘液層感染であり得る。
【0042】
気道感染および/または粘液層感染を引き起こし得るエンベロープウイルスの非限定的例は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)(SARS-CoV)である。
【0043】
気道感染および/または粘液層感染を引き起こし得るエンベロープウイルスの別の非限定的例は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe Acute Respiratory Coronavirus 2)(SARS-CoV-2)である。
【0044】
気道感染および/または粘液層感染を引き起こし得るエンベロープウイルスの別の非限定的例は、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)(MERS-CoV)である。
【0045】
気道感染および/または粘液層感染を引き起こし得るエンベロープウイルスの別の非限定的例は、単純ヘルペスウイルス1型(Herpes Simplex Virus 1)(HSV-1)である。
【0046】
気道感染および/または粘液層感染を引き起こし得るエンベロープウイルスの別の非限定的例は、単純ヘルペスウイルス2型(Herpes Simplex Virus 2)(HSV-2)である。
【0047】
気道感染および/または粘液層感染を引き起こし得るエンベロープウイルスの別の非限定的例は、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr Virus)(EBV)である。
【0048】
気道感染および/または粘液層感染を引き起こし得るエンベロープウイルスの別の非限定的例は、ヒトサイトメガロウイルス(Human Cytomegalovirus)(HCMV)である。
【0049】
気道感染および/または粘液層感染を引き起こし得るエンベロープウイルスの別の非限定的例は、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus)(VZV)である。
【0050】
この本文を通して、表現「ウイルス感染に関連した障害」は、ウイルス感染により誘導されまたは引き起こされる障害を意味することを意図される。言い換えれば、その障害は、代替的に、「ウイルス誘導性障害」であると言われ得る。
【0051】
用語「障害」は、代替的に、「疾患」、「医学的合併症」、「身体的合併症」、または短く言えば、「合併症」として記載され得、これらの用語は、本明細書で互換的に用いられ得る。
【0052】
本明細書に記載されたペプチドおよび薬学的組成物は、エンベロープウイルスへ直接的抗ウイルス効果を発揮することが示されている。したがって、ペプチドおよび薬学的組成物は、エンベロープウイルスにより誘導されたいかなる障害に対しても予防的または治療的効果を発揮するだろう。それらの直接的抗ウイルス効果のおかげで、障害が、宿主生物体においてウイルス感染により誘導される事象の連鎖の初期に起こるかまたは後期に起こるかに関わらず、および障害が、ウイルスとそれの宿主細胞との間の物理的相互作用により直接的に引き起こされるか、または次に、根底にあるウイルス感染により引き起こされている別の障害により引き起こされるかに関わらず、ウイルス感染に関連した障害を予防または処置することが可能である。
【0053】
したがって、ウイルス感染に関連した障害の非限定的例は、ウイルス誘導性炎症、ウイルス誘導性細胞死、ウイルス誘導性組織破壊、およびそれらの組合せである。さらに、ウイルス誘導性組織破壊の非限定的例は、粘膜表面の損傷、肺線維症、臓器不全、およびそれらの組合せである。より具体的には、呼吸器系ウイルス(A型インフルエンザウイルスおよびSARS-CoV-2)による感染に関連した障害の非限定的例は、細胞死(ウイルス粒子の出芽により引き起こされる)、組織破壊、発熱、および感冒症状、例えば、咽頭痛、大量の鼻水生成、上気道のうっ血、および咳嗽、加えて、肺炎および肺線維症である。HIV感染に関連した障害の非限定的例は、リンパ球の破壊、および病原性微生物により引き起こされる感染に対する感受性である。例えば単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex virus)によるウイルス感染に関連した障害の非限定的例は、ウイルス性敗血症である。
【0054】
本明細書に開示されているような使用のための薬学的組成物は、感染の部位へまたは感染の部位の近くへ、局所的に投与され得る。当業者(例えば、開業医)は、その組成物の所望の医学的効果を達成するために薬学的組成物を、感染の部位のどれくらい近くに投与することが適切および/または必要であるかを容易に理解している。本明細書に開示されているような使用のための薬学的組成物は、例えば、感染の部位へまたは感染の部位の近くへ局所的に、外用として投与され得る。
【0055】
本明細書に開示されているような使用のための薬学的組成物は、粉末、溶液、クリーム、ゲル、軟膏として製剤化され得、または医療デバイス上のコーティングとして固定化型で製剤化される。
【0056】
薬学的組成物が粉末として製剤化される場合、それは、例えば、吸入器(すなわち、呼吸として吸い込むことができる薬物を投与するためのポータブルデバイス)によって投与され得る。
【0057】
薬学的組成物が溶液として製剤化される場合、任意で、溶液は、エアロゾルでありおよび/もしくは鼻腔用スプレー、口腔用スプレーの形をとり得、または吸入器によって投与され得る。
【0058】
薬学的組成物が医療デバイス上のコーティングとして固定化型で製剤化される場合、任意で、医療デバイスは、フェイスマスク、エアフィルター、鼻カニューレデバイス、または気管内チューブであり得る。
【0059】
本開示はまた、上記で定義されているような(a)および/または(b)のペプチドを含む薬学的組成物で少なくとも部分的にコーティングされている医療デバイスに有用である。
【0060】
本明細書に開示されているような使用のための薬学的組成物は、上記のペプチドに加えて、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。そのような賦形剤の非限定的例は、可溶化剤、界面活性剤、増量剤、増粘剤、保存剤、ビヒクル、塩、糖、および緩衝剤である。
【0061】
本明細書に開示されているような使用のための薬学的組成物は、単回投与または複数回投与、例えば、1日2回、3回、4回、または5回を1~20日間、例えば、3~20日間、または1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、もしくは20日間投与するために製剤化され得る。
【0062】
本明細書に開示されているような使用のための薬学的組成物は、上記のペプチドおよび任意で、上述のような1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤に加えて、1つまたは複数の追加の抗ウイルス剤を含む。
【0063】
抗ウイルス剤の非限定的例は、単純ヘルペス(Herpes simplex)により引き起こされる感染の予防もしくは処置における使用を意図される抗ウイルス剤、例えば、アシクロビルもしくはその機能的等価物、および/またはA型もしくはB型インフルエンザにより引き起こされる感染の予防もしくは処置における使用を意図される抗ウイルス剤、例えば、オセルタミビル(タミフル)もしくはその機能的等価物、および/またはSARS-CoV-2により引き起こされる感染の予防もしくは処置における使用を意図される抗ウイルス剤、例えば、レムデシビルもしくはその機能的等価物である。
【0064】
本開示はまた、以下を含むパーツのキットにも有用である:
(i)任意で、薬学的に許容される賦形剤と混合した、抗ウイルス剤を含む薬学的製剤;ならびに
(ii)上記でさらに定義されているような(a)および/もしくは(b)のペプチド、または上記でさらに定義されているような(a)および/もしくは(b)のペプチドを含む薬学的組成物。
【0065】
本開示は、本明細書の他の所で定義されているような、ウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置のための方法における使用のための抗ウイルス剤の関連においてさらに有用であり、前記使用が、上記でさらに定義されているような(a)および/または(b)のペプチドを含む薬学的組成物と併用しての前記抗ウイルス剤の投与を含む。
【0066】
本開示は追加として、ウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置のための方法に有用であり、前記方法が、上記でさらに定義されているような(a)および/または(b)のペプチドを含む薬学的組成物の治療的有効量を、それを必要としている対象へ投与するステップを含む。
【0067】
本開示はまた、ウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置のための方法に有用であり、前記方法が、抗ウイルス剤、ならびに上記でさらに定義されているような(a)および/または(b)のペプチドを含む薬学的組成物の治療的有効量を、それを必要としている対象へ投与するステップを含む。任意で、前記抗ウイルス剤および前記薬学的組成物は、同じ薬学的製剤中に存在し得る。
【実施例】
【0068】
実験セクション
材料および方法
細胞培養
サル(サバンナモンキー(Cercopithecus aethiops))上皮腎細胞(Vero E6、ATCC、CCL-81)、イヌ(Canis familiaris)上皮腎細胞(MDCK、ATCC、NBL-2)、およびヒト肺癌細胞(A549、ATCC、CCL-185)を、10% 熱失活ウシ胎仔血清(HI-FBS、Gibco)および100U/mL ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST、Gibco)を補充した、1g/L グルコース(Gibco)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃、5% CO2で維持した。ジャーカットT細胞(E6-1、ATCC)を、10% FBSを補充した、1.5mM L-グルタミン(Invitrogen、USA)を含むRPMI 1640培地(Fisher scientific、Austria)中で維持した。細胞を、95% 空気、5% CO2、および37℃での安定な環境でインキュベートした。末梢血単核球(PBMC)を、密度勾配培地Ficoll-Paque(商標)Plus(Amersham Biosciences、Sweden)により製造会社の使用説明書に従って単離した。簡単に述べれば、健康なドナーから新鮮に収集された血液を、等量のPBSで希釈し、4mlを、3ml Ficoll-Paque Plusの上部に注意深く層状に重ね、その後、チューブを、室温、300×gで30分間、遠心分離した。PBMCを、界面から回収し、PBSで2回、洗浄して、過剰なFicoll-Paque Plusおよび血小板を除去した。細胞を、10% FBSを補充したRPMI培地中に懸濁し、次の実験のために95% 空気、5% CO2、37℃で維持した。
【0069】
ウイルス株および増殖
ベロ細胞にランガットウイルス(Langat virus)(LGTV)、ウエストナイルウイルス(West Nile virus)(WNV)、クンジンウイルス(Kunjin virus)(KUNV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1(亜型B、MN株)、A型インフルエンザウイルス(H1N1/CA09pdm)、または重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2)(β-SARS-CoV-2)を0.1の感染多重度(MOI)で感染させることによりウイルス増殖を惹起した。その後、感染細胞を、細胞変性効果(CPE)が感染後4~6日目に観察されるまで、完全DMEM中、37℃、5% CO2で成長させた。CPEの観察後、細胞培養培地を、150,000×g、4℃で2.5時間の20% スクロースクッションに対する超遠心分離により半精製した。ウイルス含有ペレットを、完全DMEM培地中に再懸濁し、ウイルス濃度を、プラークアッセイを実施することにより定量化した。
【0070】
ペプチド
本明細書における実験で用いられるペプチドを、GL Biochem(Shanghai)Ltd、Chinaから購入した。それらの名称、アミノ酸配列、分子量、およびpH7における正味電荷、加えて配列番号は、下記の表1に提示されている。L-PLNC8 αおよびL-PLNC8 βと表示されたペプチドにおいて13、全てのアミノ酸残基は、L-立体配置である。D-PLNC8 αおよびD-PLNC8 βと表示されたペプチドにおいて、全てのアミノ酸残基は、D-立体配置である。L-PLNC8 βとD-PLNC8 βのどちらも配列番号1のアミノ酸配列を有し、一方、L-PLNC8 αとD-PLNC8 αのどちらも配列番号2のアミノ酸配列を有する。PLNC8 αおよびPLNC8 βのスクランブル型(それぞれ、S-PLNC8 αおよびS-PLNC8 β15と表示される)を、アミノ酸の順序がPLNC8 αおよびPLNC8 βの活性にとって重要であることを示すために本来の配列のアミノ酸をランダムに動かすことにより作製した。ヒトカテリシジン由来ペプチドLL-37は、既知の殺菌性ペプチドである。
【0071】
【0072】
リポソーム調製
リポソームを、薄膜水和、続いて押し出しにより調製した19。脂質 1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ3-ホスファチジルコリン(POPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(POPS)、およびコレステロール(Chol)のストック溶液を、モル比95:0:5、65:30:5、70:0:30、91:1:8、および81:11:8で混合した。溶媒を窒素流でゆっくり蒸発させ、その後、バイアルを、減圧デシケーター内で一晩、乾燥させた。乾燥薄膜を1mL 5(6)-カルボキシフルオレセイン溶液の添加により水和させた。CFの自己消光濃度を示すCF溶液を、10mM PBバッファーおよび90mM NaCl中に溶解した50mM CFで調製し、続いて、pH調整した。CF溶液を、脂質ケーク上に分配し、穏やかな振盪(オービタルシェーカー上で50回転/分)下で10分間、インキュベートし、続いて、1分間、ボルテックスした。リポソームを、ミニ押し出し機(mini extruder)(Avanti Polar Lipids,Inc.)で0.1um膜(Nucleporeトラックエッチング化親水性膜)を通して21回、押し出した。脂質を、PBバッファー(10mM)における溶出による、PD MiniTrap G-25カラムを通してのゲル濾過により精製した。
【0073】
カルボキシフルオレセイン(CF)遊離アッセイ
リポソーム膜破壊へのペプチドの効力を研究するために、ペプチド添加によるリポソーム蛍光を、マイクロプレートリーダー(Tecan Infinite M1000 Pro、λex=485nm、λem=520nm)によりモニターした。リポソームを、10mM PBバッファーで25μMの最終濃度へ希釈し、96ウェルプレートにおいて200μLの最終体積で、10-5~102μMの濃度のPLNC8 α、PLNC8 β、およびPLNC8 α/βとインキュベートした。リポソームの内部におけるカルボキシフルオレセイン(CF)の自己消光濃度により、リポソーム-ペプチド系の少しの蛍光も、リポソーム膜破壊に起因すると考えることができた。蛍光を、ペプチド添加前(F0)、および連続的に30分間、モニターした。総CF遊離(FT)を、1% Triton X-100の添加により達成した。瞬間的なCF遊離(%)を、式100×(F-F0)/(FT-F0)(式中、Fは瞬間的な蛍光である)により計算した。
【0074】
フラビウイルス阻害アッセイ
PLNC8 αβの抗ウイルス活性を、プラークアッセイを用いて決定した。KUNVを定量化するためにクリスタルバイオレットに基づいたプラークアッセイを実施し、LGTVを定量化するためにイムノフォーカスプラークアッセイを実施した。簡単に述べれば、DMEMにおける処理されていないまたはPLNC8 αβ(下記の実施例に示されているような形および比)に事前曝露された一連のウイルス希釈物を用いて、ベロ細胞の90%コンフルエントな層に37℃で1時間、感染させ、続いて、1.2% Avicel(FMC)、2% HI-FBS(Gibco)、1×非必須アミノ酸(Gibco)、および1% PEST(Gibco)を補充したDMEMで細胞にオーバーレイした。3~5日後、そのオーバーレイを除去し、プラークアッセイを進める前に、細胞を、メタノールにより20分間、固定した。イムノフォーカスアッセイについて、固定細胞を、2% BSA(Fitzgerald)で10分間、ブロッキングし、その後、マウス抗E抗体(1:1000、抗TBEV-E、United States Army Medical Research、Institute of Infectious Diseases、Fort Detrick、Frederick、MD、USA)で標識し、続いて、抗マウス二次HRPポリマー(1:100)を37℃で1時間、加え、最後に、KPL TrueBlueペルオキシダーゼ基質(Seracare)を室温(RT)で15分間、加えた。クリスタルバイオレットに基づいたプラークアッセイについて、固定細胞を、2% クリスタルバイオレット(Sigma)、20% メタノール(Fisher)、および0.1% シュウ酸アンモニウム(Sigma)溶液で染色した。ウイルスプラークの数を定量化し、ウェルの代表的な画像をOlympus SZX9で10×倍率でキャプチャーし、ソフトウェアImageJを用いて処理した。
【0075】
SARS-CoV-2ウイルス阻害アッセイ
SARS-CoV-2ウイルス中和アッセイを用いて、SARS-CoV-2ウイルスに対する抗ウイルス性ペプチド活性を定量化した20~22。簡単に述べれば、ペプチド(1:1のモル比でのL-PLNC8 αβおよびD-PLNC8 αβ)を、DMEM-0.1% FCSおよびPEST中に希釈し、100プラーク形成単位(PFU)/0.1mlの選択されたウイルス用量と37℃で30分間、インキュベートし、続いて、ペプチド-ウイルス混合物を半コンフルエントなベロE6細胞(85~95%コンフルエンシー)へ移行させた。未処理のウイルス試料もまた、含まれた。ペプチド-ウイルス懸濁液を1時間、細胞と共に維持し、その後、細胞を洗浄し、アガロースゲル(2%)を加え、続いて、5% FCSを含む200μl DMEMをゲルの上に加えた。細胞培養物を、アッセイが終了する前の72~96時間、37℃に維持した。細胞を、滅菌PBSですすぎ、その後、45分間、固定した。細胞を、2% クリスタルバイオレット(Merck、Sigma-Aldrich、Sthlm、Sweden)で45分間、染色し、その後、ウェルを空にし、滅菌PBSで2回、洗浄し、乾燥させた。プラークをプレート顕微鏡において計算した。ウイルスプラークが目に見えない(すなわち、0PFU)、中和力価終点希釈度を、抗ウイルス性ペプチドの防御量として定義した。
【0076】
A型インフルエンザウイルス阻害アッセイ
A型インフルエンザウイルス中和アッセイ23を用いて、A型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス性ペプチド活性を定量化した。簡単に述べれば、ペプチドを含むまたは含まない0.1% FCSおよびPESTを補充したDMEMに、100PFU/0.1mlの選択されたウイルス用量を接種し、37℃で30分間、インキュベートし、続いて、ペプチド-ウイルス混合物および未処理のウイルス試料を半コンフルエントなMDCK細胞へ移した。ペプチド-ウイルス懸濁液を細胞と共に1時間、維持し、その後、細胞を洗浄し、アガロースゲル(2%)を加え、5% FCSを含む200μl DMEMを、ゲルの上に置いた。細胞培養物を、アッセイが終了する前の72~96時間、37℃で維持した。細胞を、滅菌PBSですすぎ、その後、45分間、固定した。細胞を、2% クリスタルバイオレット(Merck、Sigma-Aldrich、Sthlm、Sweden)で45分間、染色し、その後、ウェルを空にし、滅菌PBSで2回、洗浄し、乾燥させた。プラークをプレート顕微鏡において計算した。ウイルスプラークが目に見えない(すなわち、0PFU)、中和力価終点希釈度を、抗ウイルス性ペプチドの防御量として定義した。
【0077】
HIV-1中和アッセイ
HIV-1中和アッセイを、以前に記載されているように24,25、実施した。簡単に述べれば、ウイルス単離物は、HIV-1亜型B MN株、亜型B株(http://www.hiv.lanl.gov)に由来した。96ウェル組織培養プレート(Costar、260860、ThermoFisher Scientific)において、抗ウイルス性ペプチドを、5% FCSおよびPESTを補充したRPMI 1640中に希釈した。各ペプチド濃度を、50組織細胞培養感染量50(50TCID50)でのウイルスと混合し、37℃で1時間、インキュベートし、続いて、105個のヒトPBMC/0.1mlを加え、植物性血球凝集素(PHA)およびrIL-2(200-02、PeproTech)または(105c/0.1ml)ジャーカットT細胞により活性化した。細胞を、空気中5% CO2、37℃で120分間、インキュベートし、細胞に新しい培地を与える前に、5% FCSを含むRPMI 1640で2回、洗浄した。3日後、培地の50%を交換し、培養の5~7日目に、培養培地中のHIV-1 p24抗原の存在を、HIV-1亜型Bについての捕獲ELISAにより測定した。p24のバックグラウンドを、各プレートについて決定し、全てのウェルから引き算した。中和のパーセンテージを、[1-(試験培地の存在下での平均p24 OD/試験血清の非存在下での平均p24 OD)]×100として決定した。
【0078】
細胞毒性
細胞毒性を、細胞培養上清において乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性を、LDH細胞毒性アッセイキット(Thermo Scientific(商標))を用い、製造会社の使用説明書に従って、評価することにより決定した。アッセイの原理は、細胞内LDHが損傷細胞により放出され、最終的に、アッセイに用いられた化学物質を有色ホルマザン生成物へ変化させ、その有色ホルマザン生成物が、490nmで測定することができ、それのレベルが、放出されたLDHの量に正比例することに基づいている。
【0079】
逆転写PCR(RT-PCR)
RT-PCRを用いて、L-PLNC8 αβまたはD-PLNC8 αβの有りまたは無しで、KUNV感染に対するいくつかのヒト遺伝子の発現レベルおよびKUNV mRNAレベルを決定した。簡単に述べれば、ヒト肺癌細胞(A549)にKUNVを1時間、感染させ、続いて、10μMのL-またはD-PLNC8 αβで48時間、処理した。RNAを、RNeasy(登録商標)Plus Micro Kit(Qiagen、USA)を用いて製造会社の推奨に従って抽出した。逆転写を、Maxima(登録商標)First Strand cDNA Synthesis Kit(Fermentas、Sweden)を用いて実施した。SYBR Green(Fermentas)についてのサーマルサイクリング条件は95℃で10分間の変性ステップ、続いて、95℃で15秒間および60℃で60秒間の40サイクルからなった。遺伝子発現を、7900 HTリアルタイムPCR機器(Applied Biosystems)を用いて分析した。得られたCt値を、GAPDHに対して標準化した。遺伝子発現の相対的定量化を、ΔΔCt法を用いることにより決定した。各試料について、ΔCtを、目的の遺伝子のCtからGAPDHのCtを引き算することにより計算した。ΔΔCtを、それぞれの処理された試料のΔCtから対照試料のΔCtを引き算することにより計算した。倍数変化は、式2-ΔΔCtを用いることにより導き出された。
【0080】
顕微鏡法
蛍光色素Sytox(登録商標)Greenを用いて、PLNC8 αβにより引き起こされる膜透過化を調べた。このフルオロフォアは、損傷膜のみを横断して、核酸との結合で蛍光を発することができる。簡単に述べれば、DMEM細胞培養培地中に懸濁されたフラビウイルス(LGTVまたはKUNV、105個)を、未処理のままにするか、またはL-PLNC8 αβ、D-PLNC8 αβ、もしくは1:1のモル比でのスクランブル(S)-PLNC8 αβ(表1参照)、もしくはLL-37に2時間、曝露させるかのいずれかを行った。その後、試料を、4% PFAで固定し、続いて、Sytox Greenを5分間、加え、画像をOlympus BX41で、40×倍率でキャプチャーした。画像を、ソフトウェアImageJを用いて処理および分析した。
【0081】
透過型電子顕微鏡法(TEM)を用いて、LGTVに感染し、かつL-PLNC8 αβまたはS-PLNC8 αβに曝露された細胞を可視化した。簡単に述べれば、LGTV(5×104個)を、未処理のままにするか、または10μMの最終濃度でのL-PLNC8 αβもしくはS-PLNC8 αβに1時間、曝露させるかのいずれかを行った。その後、その懸濁液を、ベロ細胞へ加え、1時間、インキュベートし、続いて、PBSで洗浄し、新鮮な培地を加えた。24時間のインキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、0.1M リン酸バッファー中の4% グルタルアルデヒド溶液、pH7.3で固定した。検体を、0.1M リン酸バッファー中で洗浄し、0.1M リン酸バッファー中2% 四酸化オスミウムにおいて2時間、後固定し、LX-112(Ladd、Burlington、Vermont、USA)中へ包埋した。超薄切片(およそ50~60nm)を、Leica ultracut UCT/Leica EM UC 6(Leica、Wien、Austria)により切った。切片を、酢酸ウラニル、続いて、クエン酸鉛で対比させ、Hitachi HT 7700(Tokyo、Japan)において調べた。デジタル画像を、Veletaカメラ(Olympus Soft Imaging Solutions、GmbH、Munster、Germany)を用いることにより取得した。
【0082】
コレステロール有りまたは無しの、5% 2-オレオイル-1-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(POPG)を含有するリポソームを、1μMのPLNC8 αβに2分間、曝露させた。クライオEM検体は、3μl リポソーム混合物を、2nmカーボン層でコーティングされたQuantifoilグリッド2/2上に塗布することにより調製した。画像を、Falcon3電子直接検出器を用いるTalos Arctica 200 kV顕微鏡(Thermo Fischer Scientific)において、線形モードで、5Åのピクセルサイズに対応する倍率で収集した。
【0083】
[実施例1]
本発明者らの以前の結果は、コレステロール含有リン脂質二重層が、PLNC8 αβの膜撹乱活性に対して抵抗性であることを示した
15。これらの結果は、クライオ電子顕微鏡法(クライオEM)を用いて、影響されなかった抵抗性コレステロール含有リポソームと比較して、コレステロールを含まないリポソームの激しいPLNC8 αβ誘導性変形が示されることにより、本明細書で確認された(
図2A)。
図2Aは、それぞれ、コレステロールを含まない(POPC:POPS 95:5;左手の列)および30% コレステロールを含む(POPC:POPS:Chol 65:5:30;右手の列)、5% ホスファチジルセリンを含有するリポソームのクライオEM画像を示す。リポソームは、未処理のままか(対照;上方の行)、または1μMの最終濃度でのL-PLNC8 αβに2分間、曝露されたか(下方の行)のいずれかであった。コレステロールを含まないリポソームは、ペプチドにより変形され(黒色矢じり)、グリッドのエッジを線で描くカーボンともはや会合せず、それらがそれらの電荷を喪失したことを示している。このように、30%のコレステロール含有量は、PLNC8 αβに対するリン脂質膜を安定化した。要約すれば、L-PLNC8 αβは、コレステロールを含有しなかったリポソームの有意な変形を誘導することができ、一方、コレステロール含有リポソームは影響されず、円形を維持した。
【0084】
図2Bは、真核生物の形質膜を模倣する脂質組成POPC:POPS:Chol(70:0:30)を有するリポソームが、PLNC8 αβに対して弾力性があることを示している。
図2Cは、脂質組成POPC:POPS:Chol(91:1:8)を用いることによって、コレステロールの量を減少させかつ最小量の負電荷を導入することにより、リポソームモデルが、PLNC8 αβに対して感受性がより高くなることを示している。
図2Dは、真核生物のER膜を模倣する脂質組成POPC:POPS:Chol(81:11:8)を用いることによってさらにより高い負電荷を有するリポソームが、PLNC8 αβに対して感受性が非常に高いことを示している。
【0085】
[実施例2]
PLNC8 αβの抗ウイルス活性を最初に、翻訳、アセンブリー、および出芽のために粗面ERを用いるフラビウイルスのランガット(Langat)(LGTV)
26で試験した。DMEM中LGTV(1×10
5個)を、未処理のままにする(対照)か、または5μM、10μM、および20μMの最終濃度でのL-PLNC8 αβ(1:1)、スクランブルS-PLNC8 αβ(1:1)、もしくはLL-37に曝露させるかのいずれかを行った。試料を、2時間の曝露後、4% PFAで固定し、続いて、Sytox Greenを5分間、加えた。画像を、Olympus BX41を用いて40×倍率でキャプチャーした。スケールバーは200μmである。
図3Aは、完全長L-PLNC8 αβが、ウイルスエンベロープの迅速な透過化を引き起こし、一方、PLNC8 αβスクランブル(S)バリアント(S-PLNC8 αβ;表1参照)もヒトカテリシジン由来ペプチドLL-37(既知の殺菌性ペプチド)も透過化を引き起こさなかったことを示している。さらに、LGTVを、示された濃度のL-PLNC8 αβ、S-PLNC8 αβ、またはLL-37を含有する細胞培養培地において室温で1時間、インキュベートした。その後、その懸濁液を、ベロ細胞へ加え、1時間、インキュベートした。オーバーレイ培地を細胞上へ流し込み、プレートを3日間、インキュベートした。ウイルス負荷量を、プラークアッセイを実施することにより定量化した。示された濃度はμMである。ウイルスプラークの代表的な画像が
図3Bの棒の上に提示されている。前記代表的な画像において、ウイルスプラーク染色の欠如は、L-PLNC8 αβに対するビリオンの効率的な排除を示す。LGTVのペプチドへの1時間の曝露後のウイルス負荷量の定量化により、L-PLNC8 αβによって用量依存的に減少し、結果として、感染性ビリオンの>99%の排除を生じたことが示された(
図3B)。その結果は、その効果が、配列をスクランブルした場合、完全に消失したため、PLNC8 αβの抗ウイルス活性が特異的であることを示している。結論として、ウイルス粒子は、L-PLNC8 αβにより迅速に透過化され、大きな凝集物を形成し、ウイルス負荷量が>99.9%、減少している。
【0086】
[実施例3]
次に、LGTV(1×10
5個)を、未処理のままにする(対照)か、または20μMの最終濃度でのPLNC8 αもしくはPLNC8 βに曝露させるかのいずれかを行った。
図4Aは、PLNC8 βによりLGTVが透過化されたが、L-PLNC8 αにより透過化されなかったことを示している(処理から2時間後、Sytox Green染色)。スケールバーは200μmである。さらに、LGTVを、20μMのPLNC8 αかまたはPLNC8 βのいずれかを含有する細胞培養培地において室温で1時間、インキュベートし、続いて、ベロ細胞に1時間、感染させた。ウイルス負荷量を、イムノフォーカスに基づいたプラークアッセイを実施することにより定量化した。結果は
図4Bに示されている。ウイルス粒子は、PLNC8 αによっては透過化されないが、PLNC8 βにより迅速に透過化され、ウイルス負荷量が>99%、減少している。ウイルスプラークの代表的な画像が棒の上に提示され、L-PLNC8 βに対する単一のウイルスプラークの可視化が、ウイルス負荷量の実質的な低下を示している。しかしながら、
図3Aおよび
図3Bに示されているように、最適な抗ウイルス活性は、両方のペプチドが存在している場合に達成された。L-PLNC8 αβは、PLNC8 β単独と比較して、感染性ビリオンを効率的に排除するのに必要とされる濃度を有意に低下させ、したがって、PLNC8 αの重要性を浮き彫りにした。
【0087】
[実施例4]
実施例2および3に記載された所見によって、本発明者らは、PLNC8 αβの抗ウイルス活性がビリオンの表面上の受容体との結合を通して媒介されるかどうかを決定しようと考え、そのことを、タンパク質標的と結合することができないはずであるそのペプチドのD-鏡像異性体を用いることにより調べた。興味深いことに、PLNC8 αβのD-鏡像異性体は、強力な抗ウイルスの性質を示し、結果として、LGTVの迅速な透過化(
図5A)および効率的な排除(
図5B)を生じた。
【0088】
より具体的には、フラビウイルスLGTV(1×10
5個)を、20μMの最終濃度でのD-PLNC8 α、D-PLNC8 β、または5μM、10μM、および20μMの最終濃度でのD-PLNC8 αβ(1:1)に曝露させた。
図5Aは、LGTV粒子が、2時間の曝露後、D-PLNC8 βおよびD-PLNC8 αβにより透過化され、一方、D-PLNC8 αは効率的ではなかったことを示している。スケールバーは200μmである。さらに、LGTVを、示された濃度のD-PLNC8 αβを単独かまたは1:1のモル比で一緒かのいずれかで含有する細胞培養培地において室温で1時間、インキュベートした。その後、その懸濁液を用いて、ベロ細胞を1時間、感染させ、続いて、イムノフォーカスアッセイを用いてウイルス負荷量を定量化した。
図5Bにおける示されている濃度はμMである。ウイルスプラークの代表的な画像もまた
図5Bにおいて棒の上に提示されており、低下したウイルスプラーク染色は、D-PLNC8 αβに対するビリオンの効率的な排除を示している。結論として、PLNC8 αβのD-鏡像異性体は、エンベロープ型フラビウイルスLGTVに対して効率的である。ウイルス粒子は、D-PLNC8 αβにより迅速に透過化され、大きな凝集物を形成し、ウイルス負荷量が>99.9%、減少している。D-PLNC8 βは、LGTVを透過化することにおいてD-PLNC8 αより効率的であった。その結果は、PLNC8 αβがフラビウイルスのランガット(Langat)上の特定の受容体と結合しないことを示し、結合が陽イオン性ペプチドとビリオン上の陰イオン性構造、例えばウイルスエンベロープにおけるリン脂質との間の静電気的相互作用により惹起されることを示唆している。
【0089】
[実施例5]
さらに、L-PLNC8 αβの抗ウイルス効果は、透過型電子顕微鏡(TEM)下で、LGTV感染細胞およびスクランブルPLNC8 αβで前処理された試料において明らかに目に見えた細胞内のウイルス誘導性単一膜小胞が欠如していることにより、可視化された(
図6)。より具体的には、LGTV(1×10
5個)を、ベロ細胞の感染の前の1時間、10μMのL-PLNC8 αβまたはS-PLNC8 αβで1時間、前処理し、続いて、洗浄し、新鮮な培地を加えた。24時間のインキュベーション後、細胞を4% グルタルアルデヒド溶液で固定し、加工し、TEMを用いて可視化した。黒色矢じりは、L-PLNC8 αβでの大きな凝集物の形成を指し、白色矢じりは、粗面ERの内腔内のウイルス誘導性単一膜小胞の存在を指す。
【0090】
興味深いことに、LGTVのL-PLNC8 αβへの曝露は、大きく電子密度の高い凝集物の形成を生じ、これらの大きな凝集物は、L-PLNC8 αβに応答して、蛍光顕微鏡下で目に見えるが、スクランブルペプチドでは目に見えなかったため、それは、ビリオンの迅速かつ効率的な透過化の結果であり得る(
図3)。
【0091】
[実施例6]
PLNC8 αβのエンベロープウイルスへの抗ウイルス活性を、LGTVの近縁種であるフラビウイルスであるクンジン(Kunjin)ウイルス(KUNV)を用いることより検証した。LGTVのように、それはそれの脂質エンベロープをERから引き出す。DMEM中に懸濁されたKUNV(1×10
5個)を、20μMの最終濃度でのPLNC8 α、PLNC8 βのL-鏡像異性体(
図7A)もしくはD-鏡像異性体(
図7B)または0.1μM、1μM、5μM、10μM、および20μMの最終濃度でのPLNC8 αβ(モル比1:1)に、室温で1時間、曝露させた。その後、その懸濁液を、ベロ細胞へ加え、1時間、インキュベートし、続いて、プラークアッセイを実施することによりウイルス負荷量を定量化した。示された濃度はμMである。ウイルスプラークの代表的な画像が棒の上に提示されている。これらの画像は、L-PLNC8 αβおよびD-PLNC8 αβ、それぞれに対する用量依存性様式でのビリオンの効率的な排除の結果としての、細胞生存を示す細胞の染色の増強を示している。ウイルス粒子は、PLNC8 αβのL-鏡像異性体とD-鏡像異性体の両方により、迅速に透過化され、大きな凝集物を形成し(データは示さず)、ウイルス負荷量が>99.9%、減少している。同様に、PLNC8 β単独は、KUNVを排除することにおいてPLNC8 αより効率的であることが見出された(
図7)。
【0092】
[実施例7]
さらに、PLNC8 αβは、低いペプチド濃度においてさえも、かつ最初のウイルス負荷量とは無関係に、KUNVを効率的に排除した。0.1、0.01、および0.001の感染多重度(MOI)におけるKUNVを、増加性濃度のL-PLNC8 αβかまたはD-PLNC8 αβ(1:1)に1時間、曝露させ、続いて、ベロ細胞に感染させ、ウイルス負荷量を定量化した。0.1μMおよび1μMの最終ペプチド濃度は、それぞれ、80%および95%、ウイルス負荷量を低下させ、一方、≧10μMの濃度は、全てのビリオンを完全に排除した(
図8)。このように、PLNC8 αβのL-鏡像異性体とD-鏡像異性体の両方とも、低濃度(0.01μM)においてさえもウイルス負荷量を低下させることができることが示されている。
【0093】
[実施例8]
以下の実験を、PLNC8 αβの、KUNVに感染した細胞への抗ウイルス活性を調べるために設計し、そのペプチドがウイルス複製、細胞内ウイルス負荷量、および細胞外ビリオンの蓄積に影響を及ぼすことができるかどうかを決定した。ヒト肺癌細胞(A549)にKUNVを1時間、感染させ、続いて、細胞培養培地を除去し、10μMの最終濃度でのL-またはD-PLNC8 αβを含有する新鮮な培地(2.5% FBSを補充したDMEM)を加えた。48時間後、細胞培養培地を収集し、細胞を採取した。ウイルス複製を、RT-PCRにより定量化した。単一用量のL-PLNC8 αβまたはD-PLNC8 αβは、KUNV mRNAレベルをそれぞれ、78%および87%、低下させた(
図9A)。興味深いことに、どちらの鏡像異性体も、生存細胞の数が、感染しかつ未処理の細胞(対照;白色棒)と比較して増大したため、ウイルス誘導性細胞毒性を打ち消すことにおいて等しく効率的であった。PLNC8 αβは、細胞外ビリオン負荷量を70~80%、低下させた(
図9B)。細胞外ビリオンを、細胞培養培地において定量化した。ウイルスmRNAレベルおよび細胞内ビリオンの実質的な低下は、細胞外ビリオンの効率的な排除、すなわち、細胞間のウイルス播種の阻止の結果であり得る。しかしながら、ペプチドが形質膜を横断し、ウイルス複製に干渉しおよび/または細胞内ウイルスをターゲットとすることができるかどうかは、現在、研究中である。このように、PLNC8 αβが成熟細胞外ウイルスをターゲットとし、細胞外ビリオンの実質的な低下を引き起こすことが示されている。
【0094】
PLNC8 αβの抗ウイルスの性質の本発明者らの所見によって、本発明者らは、他のエンベロープウイルス、例えば、SARS-CoV-2に対するそれの活性を決定しようと考えた。
【0095】
[実施例9]
SARS-CoV-2ウイルス(1×10
3個)を、未処理のままにする(データは示さず)か、または示された濃度を用いたPLNC8 βもしくはPLNC8 αβ(1:1)のL-鏡像異性体(
図10A)もしくはD-鏡像異性体(
図10B)に37℃で1時間、曝露させるかのいずれかを行った。その後、その懸濁液を用いて、ベロ細胞を感染させ、ウイルス負荷量を、プラークアッセイを実施することにより定量化した。PLNC8 αβのどちらの鏡像異性体も、用量依存性様式でのウイルス負荷量の実質的な低下を引き起こした。本発明者らは、PLNC8 αβの両方の鏡像異性体が、SARS-CoV-2に対して著しく効率的であり、用量依存性様式でのウイルス負荷量の実質的な低下を引き起こしたことを示している(
図10)。用いられたSARS-CoV-2ウイルス濃度に関して、PLNC8 αβのL型でのPFUの50%低下は、0.01μMにおいて達成され、一方、L-PLNC8 β単独は、0.9~1μMを必要とした(
図10A)。PLNC8 αβのD型は、SARS-CoV-2に対してより効率的であり、0.005μMの最終濃度で50%低下が達成され、一方、D-PLNC8 β単独は1.4μMを必要とした(
図10B)。
【0096】
フラビウイルスの脂質エンベロープはERに由来し、一方、コロナウイルスは、ERとゴルジ装置との間の小胞-小管輸送系、すなわち、ER-ゴルジ体中間区画(ERGIC)を利用する27~29。ERおよびゴルジ装置の膜特性は、形質膜と比較して、どちらもそれらの外葉において陰イオン性脂質を露出しており、低レベルのコレステロールを含有する点において類似している17,18。この研究の仮説は、PLNC8 αβが細胞毒性効果を示さないことを示す本発明者らの以前の結果に加えて、これらの膜特性およびPLNC8 αβの明らかな膜活性を説明する知識に基づいている。その仮説を、脂質壁を形質膜から獲得するエンベロープウイルス、例えば、A型インフルエンザウイルスおよびHIV-1に対するPLNC8 αβの抗ウイルス活性を調べることにより試験した。
【0097】
[実施例10]
A型インフルエンザウイルス(1×10
3個)を、PLNC8 βまたはPLNC8 αβ(1:1)のL-鏡像異性体(
図11A)またはD-鏡像異性体(
図11B)で、37℃で1時間、前処理した。その懸濁液を用いて、ベロ細胞を感染させ、続いて、ウイルス負荷量を定量化した。L-PLNC8 αβは、20μMにおいて、A型インフルエンザ PFUの50%低下を引き起こし(
図11A)、一方、10μMのD-PLNC8 αβは、PFUの同じ低下を引き起こすのに十分であった(
図11B)。より高い濃度のPLNC8 β単独は、A型インフルエンザを抑制するのに必要とされたが、D型はL型より効果的であった。A型インフルエンザは、PLNC8 βのD型の19μMにおいて、およびL型の>20μMにおいて、それぞれ、50%、抑制された。
【0098】
結論として、A型インフルエンザの排除は、フラビウイルスおよびSARS-CoV-2へのペプチドの抗ウイルス効果に匹敵する効果を達成するために100~1000倍のペプチド濃度を必要とすることが示されている。
【0099】
[実施例11]
HIV-1(1×10
3個)を、PLNC8 βまたはPLNC8 αβ(1:1)のL-鏡像異性体(
図12A)またはD-鏡像異性体(
図12B)で37℃、1時間、処理した。その後、その懸濁液を用いて、単離された一次PBMCを感染させ、続いて、ウイルス負荷量を定量化した。HIV-1は、D-鏡像異性体に関して50μMの最終濃度がおよそ20%阻害を引き起こしたため、PLNC8 αβに対して感受性がより低いことが示された。しかしながら、50%低下濃度は、用いられたHIV-1ウイルス力価(TCID50/0.1ml)に関して計算することはできなかった(
図12A~B)。結論として、HIV-1の排除は、フラビウイルスおよびSARS-CoV-2に匹敵する効果を達成するために10
3~10
4倍のペプチド濃度を必要とすることが示されている。
【0100】
[実施例12]
さらに、PLNC8 αβの存在有りまたは無しでのKUNVでのヒト細胞の感染後、宿主細胞炎症応答を分析した。下記の表2における結果は、12個の遺伝子(tlr3、tlr9、nod1、nod2、rankl、c-fos、c-jun、il-1β、il-6、tnf-α、cxcl8、およびccl-5)の遺伝子発現が、ペプチドL-αβおよびD-αβ、それぞれによってわずかに変化していることを示している。ヒト肺癌細胞(A549)にKUNVを1時間、感染させ、続いて、10μMのL-またはD-PLNC8 αβで48時間、処理した。炎症マーカーの遺伝子発現を、RT-PCRで分析した。KUNVは、nod1およびranklを除く全ての分析された炎症マーカーの遺伝子発現を誘導し、ペプチドの存在は、細胞生存能を促進することによりこれらの効果を変化させた。さらに、顕微鏡法分析は、PLNC8 αβのどちらの鏡像異性体も、KUNV誘導性細胞毒性に対抗することを示した(
図13A)。定量的細胞毒性データは
図13Bに提示されている。
【0101】
【0102】
[実施例13]
以下の実験設定において、3つの異なる濃度(0.1μM、1μM、および10μM)における3つの用量のPLNC8 αβを、24時間ごとに1回、KUNV感染細胞に投与した。72時間後、ウイルス負荷量を定量化し、0.1μM、1μM、および10μMにおけるL-PLNC8 αβの最終濃度が、それぞれ、細胞外ビリオンの40%、60%、および>90%阻害を引き起こしたことが示された(
図14)。PLNC8 αβのD型は、低濃度(0.1μMおよび1μM)においてL型より顕著に強力であり、感染性ビリオンの数の80~96%低下を引き起こした。
【0103】
[実施例14]
インビボ実験は以下の通り、実施される。PLNC8 αβでの処方箋の開発は、主に、非侵襲性でかつ効果的なアプローチである外用適用に焦点が絞られる。投与経路は、上皮表面の可能な最も大きいエリアを網羅するために鼻腔内である。COVID-19を有するヒトに類似した症状を発生することが示されているSARS-CoV-2の鼻腔内感染を有する動物モデルとして、トランスジェニックhACE2マウス(ハツカネズミ(Mus musculus))、ハムスター(ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus))、および/またはフェレット(ヨーロッパケナガイタチ(Mustela putorius))が用いられる。動物実験は、動物実験倫理委員会(Ethics Committee for Animal Experimentation)の厳しい規制下、全ての適切な倫理的許諾を以て実施される。新規のペプチドの抗ウイルス活性は、鼻腔内投与後、予防(SARS-CoV-2の感染前の投与)および処置(SARS-CoV-2の感染後の投与)の目的について試験される。体温、体重、動作および姿勢、あり得る皮膚変化、食欲、腸機能、および呼吸を含む健康状態の変化が、毎日、記述される。血液試料が、標準化実験技術(フローサイトメトリー、多重分析、ELISA、RT-PCR、免疫組織化学法、プラークアッセイ)を用いて、免疫系、炎症応答、血液学的および化学的変化、ならびにウイルス力価への効果を決定するために実験中に収集される。さらに、鼻汁および肺洗浄液もまた収集される。これらの結果は、抗ウイルス性ペプチドPLNC8 αβを用いてウイルス感染を予防および/または処置することによる治療効果についての概念実証を提供するだろう。
【0104】
【0105】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための薬学的組成物であって、
a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90
%の配列同一性を有するペプチド
、または
b)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90
%の配列同一性を有するペプチド
および配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するペプチド、
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
(a
)または(b)の
一方または両方のペプチドの少なくとも1個のアミノ酸残基がD-アミノ酸残基である、請求項1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項3】
(a
)または(b)の
一方または両方のペプチドの約1nMから約1000μ
Mを含む、請求項1または2に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項4】
約1:1から約20:
1のモル比
で(b)のペプチドを含む、請求項
1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記ウイルス感染が、以下のウイルス科:コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、ニューモウイルス科(Pneumoviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アスファルウイルス科(Asfarviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、およびラブドウイルス科(Rhabdoviridae)からなる群から選択されるエンベロープウイルスにより引き起こされる、請求項
1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記ウイルス感染が、エンベロープウイルス、例えば、以下のウイルス科:コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アスファルウイルス科(Asfarviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、およびポックスウイルス科(Poxviridae)からなる群から選択されるエンベロープウイルスにより引き起こされ、そのエンベロープは、感染細胞の小胞体、ゴルジ装置、もしくは核エンベロープから得られ、任意で、前記ウイルス感染が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe Acute Respiratory Coronavirus 2)(SARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)(MERS-CoV)、単純ヘルペスウイルス1型(Herpes Simplex Virus 1)(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(Herpes Simplex Virus 2)(HSV-2)、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr Virus)(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(Human Cytomegalovirus)(HCMV)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus)(VZV)、デングウイルス(Dengue Virus)(DENV)、ジカウイルス(Zika Virus)(ZIKV)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)、ランガットウイルス(Langat Virus)(LGTV)、およびダニ媒介性脳炎ウイルス(Tick-borne Encephalitis Virus)(TBEV)により引き起こされ、
前記ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)が亜型クンジンウイルス(Kunjin virus)(KUNV)であってもよい、請求項
1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記ウイルス感染が、気道感染および/または粘液層感染である、請求項
1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項8】
感染の部位へまたは感染の部位の近くへ局所的
に投与される、請求項
1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項9】
粉末、溶液、クリーム、ゲル、軟膏として製剤化され、または医療デバイス上のコーティングとして固定化型で製剤化され、前記溶液が、エアロゾルでありおよび/または鼻腔用スプレーもしくは口腔用スプレーの形をとっていてもよく、前記医療デバイスが、フェイスマスク、エアフィルター、鼻カニューレデバイス、または気管内チューブであってもよい、請求項
1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項10】
単回投与または複数回投
与するために製剤化される、請求項
1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項11】
前記ウイルス感染に関連した障害が、ウイルス誘導性炎症、ウイルス誘導性細胞死、ウイルス誘導性組織破壊、およびそれらの組合せからなる群から選択され、前記ウイルス誘導性組織破壊が、粘膜表面の損傷、肺線維症、臓器不全、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい、請求項
1に記載の使用のための薬学的組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
【表3-2】
本発明には、以下の態様も含まれる。
(1)
エンベロープウイルスにより引き起こされるウイルス感染および/またはウイルス感染に関連した障害の予防および/または処置における使用のための薬学的組成物であって、
a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチド、および/または
b)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、95%、96%、97%、98%、もしくは99%配列同一性を有するペプチド
を含む、薬学的組成物。
(2)
(a)および/または(b)のペプチドの少なくとも1個のアミノ酸残基がD-アミノ酸残基である、(1)に記載の使用のための薬学的組成物。
(3)
(a)および/または(b)のペプチドの約1nMから約1000μM、例えば、約10nMから約100μMを含む、(1)または(2)に記載の使用のための薬学的組成物。
(4)
約1:1から約20:1、例えば、約1:1から約10:1、例えば、約1:1のモル比で(a)および(b)のペプチドを含む、(1)~(3)のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
(5)
前記ウイルス感染が、以下のウイルス科:コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、ニューモウイルス科(Pneumoviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アスファルウイルス科(Asfarviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、およびラブドウイルス科(Rhabdoviridae)からなる群から選択されるエンベロープウイルスにより引き起こされる、(1)~(4)のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
(6)
前記ウイルス感染が、エンベロープウイルス、例えば、以下のウイルス科:コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アスファルウイルス科(Asfarviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、およびポックスウイルス科(Poxviridae)からなる群から選択されるエンベロープウイルスにより引き起こされ、そのエンベロープは、感染細胞の小胞体、ゴルジ装置、もしくは核エンベロープから得られ、前記ウイルス感染が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe Acute Respiratory Coronavirus 2)(SARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)(MERS-CoV)、単純ヘルペスウイルス1型(Herpes Simplex Virus 1)(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(Herpes Simplex Virus 2)(HSV-2)、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr Virus)(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(Human Cytomegalovirus)(HCMV)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus)(VZV)、デングウイルス(Dengue Virus)(DENV)、ジカウイルス(Zika Virus)(ZIKV)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)、ランガットウイルス(Langat Virus)(LGTV)、およびダニ媒介性脳炎ウイルス(Tick-borne Encephalitis Virus)(TBEV)により引き起こされていてもよく、前記ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)が亜型クンジンウイルス(Kunjin virus)(KUNV)であってもよい、(1)~5のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
(7)
前記ウイルス感染が、気道感染および/または粘液層感染である、(1)~(6)のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
(8)
感染の部位へまたは感染の部位の近くへ局所的に、例えば外用として、投与される、(1)~(7)のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
(9)
粉末、溶液、クリーム、ゲル、軟膏として製剤化され、または医療デバイス上のコーティングとして固定化型で製剤化され、前記溶液が、エアロゾルでありおよび/または鼻腔用スプレーもしくは口腔用スプレーの形をとっていてもよく、前記医療デバイスが、フェイスマスク、エアフィルター、鼻カニューレデバイス、または気管内チューブであってもよい、(1)~(8)のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
(10)
単回投与または複数回投与、例えば、1日2回、3回、4回、または5回を1~20日間投与するために製剤化される、(1)~(9)のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
(11)
前記ウイルス感染に関連した障害が、ウイルス誘導性炎症、ウイルス誘導性細胞死、ウイルス誘導性組織破壊、およびそれらの組合せからなる群から選択され、前記ウイルス誘導性組織破壊が、粘膜表面の損傷、肺線維症、臓器不全、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい、(1)~(10)のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【国際調査報告】