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特表2024-545709標識された核酸分子集団を生成する方法及びそのキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】標識された核酸分子集団を生成する方法及びそのキット
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20241203BHJP
   C12Q 1/6853 20180101ALI20241203BHJP
   C40B 40/02 20060101ALI20241203BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20241203BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20241203BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20241203BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20241203BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20241203BHJP
【FI】
C12N15/09 200
C12Q1/6853 Z ZNA
C40B40/02
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6874 Z
C12Q1/6834 Z
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538195
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 CN2021141195
(87)【国際公開番号】W WO2023115536
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517110612
【氏名又は名称】ビージーアイ シェンチェン
【住所又は居所原語表記】Main building, Beishan Industrial Zone, Yantian Street, Yantian District, Shenzhen, Guangdong 518083, China
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リャオ, シャ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, アオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュウ, シュン
(72)【発明者】
【氏名】ペン, ジアン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ウェンジャオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シー
(72)【発明者】
【氏名】フー, デフェン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR62
4B063QS03
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本出願は、トランスクリプトームシーケンシング及び生体分子空間情報検出に関する。具体的には、本出願は、核酸分子を位置決めする、及び標識する方法、トランスクリプトームシーケンシングのための核酸分子ライブラリーを構築する方法及び方法を実行するためのキットに関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識された核酸分子集団を生成する方法であって、以下のステップ:
(1)生体試料及び核酸アレイを提供するステップであって、前記核酸アレイが固相支持体を含み、前記固相支持体が複数の種類のオリゴヌクレオチドプローブと結合しており、各種のオリゴヌクレオチドプローブが少なくとも1つのコピーを含み、前記オリゴヌクレオチドプローブが、5’から3’方向にコンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2を含むか、又はそれからなり、
各種のオリゴヌクレオチドプローブが異なるタグ配列Yを有し、前記タグ配列Yが、その種類のオリゴヌクレオチドプローブの前記固相支持体上の位置に固有のヌクレオチド配列を有する、ステップ、
(2)前記生体試料を前記核酸アレイと接触させて、これによって前記生体試料中のRNA(例えば、mRNA)の位置が、前記核酸アレイ上の前記オリゴヌクレオチドプローブの位置にマッピングされるようにし、前記生体試料中の前記RNA(例えば、mRNA)を前処理して、第1の核酸分子集団を生成するステップであって、前記前処理が、
(i)プライマーAを使用して、前記生体試料の前記RNA(例えば、mRNA)の逆転写を実施して、標識される第1の核酸分子として伸長産物を生成し、それによって前記第1の核酸分子集団を生成するステップであって、前記プライマーAがコンセンサス配列A及び捕捉配列Aを含み、前記捕捉配列Aが、捕捉される前記RNA(例えば、mRNA)とアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、前記コンセンサス配列Aが前記捕捉配列Aの上流に位置する(例えば、前記プライマーAの5’-末端に位置する)、ステップ、
又は
(ii)(a)プライマーAを使用して、前記生体試料の前記RNA(例えば、mRNA)の逆転写を実施して、cDNA鎖を生成するステップであって、前記cDNA鎖が、前記プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、前記RNA(例えば、mRNA)に相補的であるcDNA配列と、3’-末端オーバーハングとを含み、前記プライマーAがコンセンサス配列A及び捕捉配列Aを含み、前記捕捉配列Aが、捕捉される前記RNA(例えば、mRNA)とアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、前記コンセンサス配列Aが前記捕捉配列Aの上流に(例えば、前記プライマーAの5’-末端に)位置する、ステップ、及び(b)プライマーI-Bを、(a)において生成されたcDNA鎖とアニーリングし、伸長反応を実施して、標識される第1の核酸分子として第1の伸長産物を生成し、それによって第1の核酸分子集団を生成するステップであって、前記プライマーBが、コンセンサス配列Bと、前記3’-末端オーバーハングの相補配列と、任意選択でタグ配列Bとを含み、前記3’-末端オーバーハングの前記相補配列が前記プライマーBの3’-末端に位置し、前記コンセンサス配列Bが前記3’-末端オーバーハングの前記相補配列の上流に位置する(例えば、前記プライマーBの5’-末端に位置する)、ステップ、
又は
(iii)(a)プライマーA’を使用して、前記生体試料の前記RNA(例えば、mRNA)の逆転写を実施し、cDNA鎖を生成するステップであって、前記cDNA鎖が、前記プライマーA’によってプライムされた逆転写によって生成され、前記RNA(例えば、mRNA)に相補的であるcDNA配列と、3’-末端オーバーハングとを含み、前記プライマーA’が捕捉配列Aを含み、前記捕捉配列Aが、捕捉される前記RNA(例えば、mRNA)とアニーリングして、伸長反応を開始することが可能である、ステップ、(b)プライマーBを、(a)において生成されたcDNA鎖とアニーリングし、伸長反応を実施して、第1の伸長産物を生成するステップであって、前記プライマーBが、コンセンサス配列Bと、前記3’-末端オーバーハングの相補配列と、任意選択でタグ配列Bとを含み、前記3’-末端オーバーハングの前記相補配列が前記プライマーBの3’-末端に位置し、前記コンセンサス配列Bが前記3’-末端オーバーハングの前記相補配列の上流に位置する(例えば、前記プライマーBの5’-末端に位置する)、ステップ、並びに(c)伸長プライマーを提供し、鋳型として前記第1の伸長産物を使用して伸長反応を実施して、標識される第1の核酸分子として第2の伸長産物を生成し、それによって第1の核酸分子集団を生成するステップ
を含む、ステップ、
(3)アニーリングを可能にする条件下で、架橋オリゴヌクレオチドを、ステップ(2)の生成物と接触させ、前記架橋オリゴヌクレオチドを前記オリゴヌクレオチドプローブ及び前記オリゴヌクレオチドプローブに対応する位置にある標識される前記第1の核酸分子とアニーリング(例えば、インサイツアニーリング)させ、かつ前記架橋オリゴヌクレオチドとアニーリングした前記第1の核酸分子及びアレイ上のオリゴヌクレオチドプローブをライゲートして、位置決めタグを有する第2の核酸分子としてライゲーション産物を得、それによって第2の核酸分子集団を生成するステップ
を含み、
前記架橋オリゴヌクレオチドが、第1の領域及び第2の領域、及び任意選択で、前記第1の領域と前記第2の領域の間に位置する第3の領域を含み、前記第1の領域が前記第2の領域の上流に位置し(例えば、前記第2の領域の5’に位置し)、
前記第1の領域が、ステップ(2)(i)若しくはステップ(2)(ii)における前記プライマーAの前記コンセンサス配列Aの全体若しくは一部とアニーリング可能であるか、又はステップ(2)(iii)における前記プライマーBの前記コンセンサス配列Bの全体若しくは一部とアニーリング可能であり、
前記第2の領域が、前記コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能である、方法。
【請求項2】
ステップ(3)において、前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第1の領域及び前記第2の領域が直接隣接している場合に、前記第1の核酸分子の前記オリゴヌクレオチドプローブへのライゲーションが、核酸リガーゼを使用して、同一架橋オリゴヌクレオチドの前記第1の領域にハイブリダイズされた核酸分子と、前記第2の領域にハイブリダイズされた核酸分子とをライゲートして、位置決めタグを有する第2の核酸分子としてライゲーション産物を得ることを含む、又は
前記架橋オリゴヌクレオチドが、前記第1の領域、前記第2の領域及びそれらの間に位置する前記第3の領域を含む場合に、前記第1の核酸分子の前記オリゴヌクレオチドプローブへのライゲーションが、核酸ポリメラーゼを使用して、前記第3の領域を鋳型として重合反応を実施すること、並びに核酸リガーゼを使用して、同一架橋オリゴヌクレオチドの前記第1の領域にハイブリダイズされた核酸分子と、前記第3の領域及び前記第2の領域にハイブリダイズされた核酸分子とをライゲートして、位置決めタグを有する前記第2の核酸分子としてライゲーション産物を得ることを含み、好ましくは、前記核酸ポリメラーゼが、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性又は鎖置換活性を有さない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)、ステップ(2)(i)及びステップ(3)を含み、ステップ(3)において得られたラ前記イゲーション産物が、5’から3’に、前記コンセンサス配列X1、前記タグ配列Y、前記コンセンサス配列X2、任意選択で前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第3の領域の相補配列、及び標識される前記第1の核酸分子の配列を含む、位置決めタグを有する前記第2の核酸分子としてとられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)(i)において、前記捕捉配列Aがランダムオリゴヌクレオチド配列であり、
好ましくは、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来する前記ライゲーション産物が、異なる捕捉配列Aを有し、前記捕捉配列Aが、前記第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働き、
好ましくは、ステップ(2)(i)における前記伸長産物(標識される前記第1の核酸分子)が、5’から3’に、前記コンセンサス配列A、前記プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNAと相補的であるcDNA配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(2)(i)において、前記捕捉配列Aが、ポリ(T)配列又は標的核酸の特異的配列であり、
好ましくは、前記プライマーAがタグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列をさらに含み、前記タグ配列Aが、前記第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働き、
好ましくは、前記捕捉配列Aが前記プライマーAの3’-末端に位置し、前記コンセンサス配列Aが前記タグ配列Aの上流に位置し(例えば、プライマーAの5’-末端に位置し)、
好ましくは、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来する前記ライゲーション産物が、異なるタグ配列AをUMIとして有し、
好ましくは、ステップ(2)(i)における前記伸長産物が、5’から3’に、前記コンセンサス配列Aと、前記タグ配列Aと、前記プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNAに相補的であるcDNA配列とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(1)、ステップ(2)(ii)及びステップ(3)を含み、ステップ(3)において得られた前記ライゲーション産物が、5’から3’に、前記コンセンサス配列X1、前記タグ配列Y、前記コンセンサス配列X2、任意選択で前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第3の領域の相補配列、及び標識される第1の核酸分子の配列を含む、位置決めタグを有する前記第2の核酸分子としてとられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(2)(ii)(a)において、前記捕捉配列Aがランダムオリゴヌクレオチド配列であり、
好ましくは、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来する前記ライゲーション産物が、異なる捕捉配列Aを有し、前記捕捉配列Aが、前記第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働き、
好ましくは、ステップ(2)(ii)における前記第1の伸長産物(標識される第1の核酸分子)が、5’から3’に、前記コンセンサス配列A、前記プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNAと相補的であるcDNA配列、前記3’-末端オーバーハング配列、任意選択で前記タグ配列Bの相補配列、及び前記コンセンサス配列Bの相補配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(2)(ii)(a)において、前記捕捉配列Aが、ポリ(T)配列又は標的核酸の特異的配列であり、
好ましくは、前記プライマーAがタグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列をさらに含み、前記タグ配列Aが、第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働き、
好ましくは、前記捕捉配列Aが前記プライマーAの3’-末端に位置し、前記コンセンサス配列Aが前記タグ配列Aの上流に位置し(例えば、前記プライマーAの5’-末端に位置し)、
好ましくは、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来する前記ライゲーション産物が、異なるタグ配列AをUMIとして有し、
好ましくは、ステップ(2)(ii)における前記第1の伸長産物(標識される第1の核酸分子)が、5’から3’に、前記コンセンサス配列A、前記タグ配列A、前記プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNAと相補的であるcDNA配列、前記3’-末端オーバーハング配列、任意選択で前記タグ配列Bの相補配列、及び前記コンセンサス配列Bの相補配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記プライマーAが5’-末端に5’リン酸を含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(3)の前に、ステップ(2)(i)又はステップ(2)(ii)の生成物を処理してRNAを除去するステップをさらに含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(1)、ステップ(2)(iii)及びステップ(3)を含み、ステップ(3)において得られた前記ライゲーション産物が、5’から3’に、前記コンセンサス配列X1、前記タグ配列Y、前記コンセンサス配列X2、任意選択で前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第3の領域の相補配列、及び標識される前記第1の核酸分子配列の配列を含む、位置決めタグを有する前記第2の核酸分子としてとられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(2)(iii)(c)において、前記伸長プライマーが前記プライマーB又はプライマーB’であり、前記プライマーB’が、前記コンセンサス配列Bの相補配列のすべて全体又は一部とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能であり、
好ましくは、ステップ(2)(iii)(c)において、前記伸長プライマーが前記プライマーB’である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(2)(iii)(a)において、前記プライマーA’の捕捉配列Aがランダムオリゴヌクレオチド配列であり、
好ましくは、ステップ(2)(iii)(b)において、前記プライマーBが、前記コンセンサス配列B、前記3’-末端オーバーハングの相補配列及び前記タグ配列Bを含み、
好ましくは、前記第1の伸長産物が、5’から3’に、前記プライマーA’によってプライムされた逆転写によって生成され、RNA配列と相補的であるcDNA配列、前記3’-末端オーバーハング配列、前記タグ配列Bの相補配列、前記コンセンサス配列Bの相補配列を含み、前記タグ配列Bの前記相補配列が、前記第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働き、
好ましくは、ステップ(2)(iii)(c)において、前記第2の伸長産物(標識される第1の核酸分子)が、5’から3’に、前記コンセンサス配列B又はその3’-末端部分配列、前記タグ配列B、前記3’-末端オーバーハング配列の相補配列、前記第1の伸長産物における前記cDNA配列の相補配列を含み、前記タグ配列Bが、前記第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働く、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(2)(iii)(a)において、前記プライマーA’の前記捕捉配列Aが、ポリ(T)配列又は標的核酸の特異的配列であり、
好ましくは、前記プライマーA’が、タグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列と、コンセンサス配列Aとをさらに含み、
好ましくは、前記捕捉配列Aが前記プライマーA’の3’-末端に位置し、
好ましくは、前記コンセンサス配列Aが前記捕捉配列Aの上流に位置し(例えば、前記プライマーA’の5’-末端に位置し)、
好ましくは、前記プライマーBが、コンセンサス配列B、前記3’-末端オーバーハングの相補配列及びタグ配列Bを含み、
好ましくは、ステップ(2)(iii)(b)において、前記第1の伸長産物が、5’から3’に、前記コンセンサス配列A、任意選択で前記タグ配列A、前記プライマーA’によってプライムされた逆転写によって生成され、RNAと相補的であるcDNA配列、前記3’-末端オーバーハング配列、前記タグ配列Bの相補配列及び前記コンセンサス配列Bの相補配列を含み、
好ましくは、ステップ(2)(iii)(c)において、前記第2の伸長産物(標識される第1の核酸分子)が、5’から3’に、前記コンセンサス配列B又はその3’-末端部分配列、前記タグ配列B、前記3’-末端オーバーハング配列の相補配列、前記第1の伸長産物における前記cDNA配列の相補配列、任意選択で前記タグ配列Aの相補配列、及び前記コンセンサス配列Aの相補配列を含み、
好ましくは、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来する前記ライゲーション産物が、異なるタグ配列BをUMIとして有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
伸長プライマーが5’-末端に5’リン酸を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(2)(iii)(c)の前に、ステップ(2)(iii)(a)又はステップ(2)(iii)(b)の生成物を処理してRNAを除去するステップをさらに含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(2)(iii)(b)において、前記cDNA鎖が、その3’-末端オーバーハングを介して前記プライマーBにアニーリングされ、前記cDNA鎖を、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素)の存在下で鋳型として前記プライマーBを使用して伸長して、第1の伸長産物が生成される、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記3’-末端オーバーハングが、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又はそれより多いヌクレオチドの長さを有し、好ましくは、前記3’-末端オーバーハングが、2~5のシトシンヌクレオチドの3’-末端オーバーハング(例えば、CCCオーバーハング)である、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(2)において、前記生体試料が前記前処理の前に透過処理される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記生体試料が組織試料であり、
好ましくは、前記組織試料が組織切片であり、
好ましくは、前記組織切片が固定された組織、例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織又は急速凍結組織から調製される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(2)において、前記逆転写が逆転写酵素を使用して実施され、
好ましくは、前記逆転写酵素がターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有し、
好ましくは、前記逆転写酵素が、RNA(例えば、mRNA)を鋳型として使用して、cDNA鎖を合成すること、及びオーバーハングを前記cDNA鎖の3’-末端に付加することが可能であり、
好ましくは、前記逆転写酵素が、前記cDNA鎖の3’-末端に、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又はそれより多いヌクレオチドの長さを有するオーバーハングを付加することが可能であり、
好ましくは、前記逆転写酵素が、前記cDNA鎖の3’-末端に、2~5のシトシンヌクレオチドのオーバーハング(例えば、CCCオーバーハング)を付加することが可能であり、
好ましくは、逆転写酵素が、M-MLV逆転写酵素、HIV-1逆転写酵素、AMV逆転写酵素、テロメラーゼ逆転写酵素、並びに上記の逆転写酵素の逆転写活性を有するそれらのバリアント、改変産物及び誘導体からなる群から選択される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(2)及び(3)が、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法:
(1)前記プライマーA、プライマーA’、プライマーB及び架橋オリゴヌクレオチドが各々独立的に、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれからなり、好ましくは、前記プライマーA及びプライマーA’が、伸長反応を開始することができる、
(2)前記プライマーBが修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含み、好ましくは、前記プライマーBが、3’-末端に1つ又は複数の修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含む、
(3)前記タグ配列A及びタグ配列Bが各々独立的に、5~200nt(例えば、5~30nt、6~15nt)の長さを有する、
(4)前記コンセンサス配列A及びコンセンサス配列Bが各々独立的に、10~200nt(例えば、10~100nt、20~100nt、25~100nt、5~10nt、10~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt)の長さを有する、
(5)前記プライマーA、プライマーA’及びプライマーBが各々独立的に、10~200nt(例えば、10~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(6)前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第1の領域及び第2の領域が各々独立的に、3~100nt(例えば、3~10nt、10~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt)の長さを有する、
(7)前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第3の領域が、0~100nt(例えば、0~10nt、10~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt)の長さを有する、
(8)前記架橋オリゴヌクレオチドが、6~200nt(例えば、20~70nt、6~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(9)前記ポリ(T)配列が、少なくとも10又は少なくとも20(例えば、少なくとも30)のデオキシチミジン残基を含む、
(10)前記ランダムオリゴヌクレオチド配列が、5~200nt(例えば、5~30nt、6~15nt)の長さを有する。
【請求項23】
(4)第2の核酸分子集団を回収及び精製するステップをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
得られた第2の核酸分子集団及び/又はその相補体が、トランスクリプトームライブラリーを構築するため又はトランスクリプトームシーケンシングのために使用される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(1)における前記オリゴヌクレオチドプローブが、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法:
(1)前記コンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2が各々独立的に、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸(PNA)又はロックド核酸)又はそれらの任意の組合せを含み、好ましくは、前記コンセンサス配列X2が3’-末端に遊離ヒドロキシル基(-OH)を有する、
(2)前記コンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2が各々独立的に、2~100nt(例えば、10~200nt、10~100nt、20~100nt、25~100nt、50~100nt、5~30nt、6~15nt、5~10nt、10~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt)の長さを有する、
(3)前記オリゴヌクレオチドプローブが各々独立的に、15~200nt(例えば、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する。
【請求項26】
前記オリゴヌクレオチドプローブがリンカーを介して前記固相支持体に結合しており、
好ましくは、前記リンカーが活性化基と結合することが可能な連結基であり、前記固相支持体の表面が前記活性化基を用いて修飾されており、
好ましくは、前記リンカーが、-SH、-DBCO又は-NHSを含み、
好ましくは、前記リンカーが-DBCOであり、前記固相支持体の表面が、
【化1】

(アジド-dPEG(登録商標)8-NHSエステル)を用いて修飾されている、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(1)の前記核酸アレイが、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法:
(1)同一固相支持体に結合した前記オリゴヌクレオチドプローブが、同一コンセンサス配列X1及び/又は同一コンセンサス配列X2を有する、
(2)前記オリゴヌクレオチドプローブの前記コンセンサス配列X1が切断部位を含み、好ましくは、前記切断部位が、ニッキング酵素消化、USER酵素消化、光応答性切除、化学的切除又はCRISPR媒介性切除から選択される方法によって切断又は破壊され得る。
【請求項28】
ステップ(1)の前記核酸アレイが、
(1)複数の種類のキャリア配列を提供するステップであって、各種のキャリア配列が、前記キャリア配列の少なくとも1つのコピーを含み、前記キャリア配列が、5’から3’方向に、前記コンセンサス配列X2の相補配列、前記タグ配列Yの相補配列及び固定化配列を含み、各種のキャリア配列の前記タグ配列Yの前記相補配列が互いに異なっている、ステップ、
(2)前記複数の種類のキャリア配列を前記固相支持体(例えば、チップ)の表面に結合させるステップ、
(3)固定化プライマーを提供し、前記キャリア配列を鋳型として使用して、プライマー伸長反応を実施して、伸長産物を生成して、前記オリゴヌクレオチドプローブを得るステップであって、前記固定化プライマーが、前記コンセンサス配列X1の配列を含み、前記キャリア配列の前記固定化配列とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能であり、好ましくは、前記伸長産物が、5’から3’方向に、前記コンセンサス配列X1、前記タグ配列Y及び前記コンセンサス配列X2を含むか、又はそれからなる、ステップ、
(4)前記固定化プライマーを前記固相支持体の表面と連結するステップであって、ステップ(3)及びステップ(4)が任意の順序で実施される、ステップ、
(5)任意選択で、前記キャリア配列の前記固定化配列が切断部位をさらに含み、前記切断が、ニッキング酵素消化、USER酵素消化、光応答性切除、化学的切除及びCRISPR媒介性切除からなる群から選択され得、前記キャリア配列の前記固定化配列に含まれる前記切断部位で切断を実施して、前記キャリア配列を消化し、これによって、ステップ(3)における前記伸長産物が、前記伸長産物が生成される鋳型(すなわち、前記キャリア配列)から分離されるようにし、それによって、前記オリゴヌクレオチドプローブを前記固相支持体(例えば、チップ)の表面と連結するステップ、
を含むステップによって提供され、
好ましくは、各種のキャリア配列が、前記キャリア配列の複数のコピーのコンカテマーから形成されたDNBであり、
好ましくは、前記複数の種類のキャリア配列が以下のステップ:
(i)複数の種類のキャリア-鋳型配列を提供するステップであって、前記キャリア-鋳型配列が、キャリア配列の相補配列を含む、ステップ、
(ii)各種のキャリア-鋳型配列を鋳型として使用して、核酸増幅反応を実施して、各種のキャリア-鋳型配列の増幅産物を得るステップであって、前記増幅産物が、前記キャリア配列の少なくとも1つのコピーを含み、好ましくは、ローリングサークル複製が実施されて、前記キャリア配列のコンカテマーから形成されたDNBが得られる、ステップ
によりステップ(1)において提供される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(1)における前記固相支持体が、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法:
(1)前記固相支持体が、ラテックスビーズ、デキストランビーズ、ポリスチレン表面、ポリプロピレン表面、ポリアクリルアミドゲル、金表面、硝子表面、チップ、センサー、電極及びシリコンウエハーからなる群から選択され、好ましくは、前記固相支持体がチップである、
(2)前記固相支持体が、平面、球形又は多孔性である、
(3)前記固相支持体が、シーケンシングプラットフォーム、例えば、シーケンシングチップとして使用でき、好ましくは、前記固相支持体が、イルミナ、MGI又はサーモフィッシャーシーケンシングプラットフォームのためのシーケンシングチップである、及び
(4)前記固相支持体が、自発的に、又は1つ若しくは複数の刺激への曝露(例えば、温度変化、pH変化、特定の化学物質若しくは相への曝露、光への曝露、還元剤への曝露等)により前記オリゴヌクレオチドプローブを放出可能である。
【請求項30】
核酸分子ライブラリーを構築する方法であって、
(a)請求項1~29のいずれか一項に記載の方法によって、標識された核酸分子集団を生成するステップ、
(b)前記標識された核酸分子集団における前記核酸分子を無作為に断片化し、アダプターを付加するステップ、並びに
(c)任意選択で、ステップ(b)の産物を増幅及び/又は濃縮するステップ
を含み、それによって、核酸分子のライブラリーを得て、
好ましくは、前記核酸分子ライブラリーが、シーケンシング、例えば、トランスクリプトームシーケンシング、例えば、シングルセルトランスクリプトームシーケンシングのために使用される、方法。
【請求項31】
ステップ(b)を実施する前に、ステップ(プレb):前記標識された核酸分子集団を増幅及び/又は濃縮するステップをさらに含み、
好ましくは、ステップ(プレb)において、前記標識された核酸分子集団が核酸増幅反応に供されて、増幅産物を生成し、
好ましくは、前記核酸増幅反応が、少なくともプライマーC及び/又はプライマーDを使用して実施され、前記プライマーCが、前記コンセンサス配列X1の相補配列又は前記コンセンサス配列X1の3’-末端配列の相補配列とハイブリダイズ又はアニーリングし、伸長反応を開始することが可能であり、前記プライマーDが、前記標識された核酸分子集団の前記核酸分子とハイブリダイズ又はアニーリングし、伸長反応を開始することが可能であり、
好ましくは、ステップ(プレb)における前記核酸増幅反応が、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ、例えば、鎖置換活性及び/又は高いフィデリティーを有するDNAポリメラーゼ)を使用して実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(b)において、前のステップにおいて得られた核酸分子が無作為に断片に断片化され、アダプターが、トランスポザーゼを使用して前記断片の両末端に付加され、
好ましくは、前記トランスポザーゼが、Tn5トランスポザーゼ、MuAトランスポザーゼ、スリーピングビューティートランスポザーゼ、マリナ-トランスポザーゼ、Tn7トランスポザーゼ、Tn10トランスポザーゼ、Ty1トランスポザーゼ及びTn552トランスポザーゼ、並びに上記のトランスポザーゼの転移活性を有するそれらのバリアント、改変産物及び誘導体からなる群から選択され、
好ましくは、前記トランスポザーゼがTn5トランスポザーゼであり、
好ましくは、ステップ(c)において、ステップ(b)の生成物を増幅するために少なくともプライマーC’及び/又はプライマーD’が使用され、前記断片の両末端の前記アダプターが、それぞれ第1のアダプター及び第2のアダプターであり、前記プライマーC’が、前記第1のアダプターとハイブリダイズ又はアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、前記プライマーD’が、前記第2のアダプターとハイブリダイズ又はアニーリングして、伸長反応を開始することが可能である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
核酸試料をシーケンシングする方法であって、
(1)請求項30~32のいずれか一項に記載の方法によって核酸分子ライブラリーを構築するステップ、及び
(2)前記核酸分子ライブラリーをシーケンシングするステップ
を含む方法。
【請求項34】
(i)核酸を標識するための核酸アレイであって、固相支持体を含み、前記固相支持体が複数の種類のオリゴヌクレオチドプローブに結合しており、各種のオリゴヌクレオチドプローブが少なくとも1つのコピーを含み、前記オリゴヌクレオチドプローブが、5’から3’方向に、コンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2を含むか、又はそれからなり、
各種のオリゴヌクレオチドプローブが異なるタグ配列Yを有し、前記タグ配列Yが、その種類のオリゴヌクレオチドプローブの前記固相支持体上の位置に固有のヌクレオチド配列を有する、核酸アレイ、
(ii)プライマーA、又はプライマーA’及びプライマーBを含むプライマーセット、又はプライマーA及びプライマーBを含むプライマーセットであって、
前記プライマーAがコンセンサス配列A及び捕捉配列Aを含み、前記捕捉配列Aが、捕捉されるRNA(例えば、mRNA)とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能であり、好ましくは、前記コンセンサス配列Aが前記捕捉配列Aの上流に位置し(例えば、前記プライマーAの5’-末端に位置し)、
前記プライマーA’が捕捉配列Aを含み、前記捕捉配列Aが、捕捉される前記RNA(例えば、mRNA)とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能であり、
前記プライマーBが、コンセンサス配列Bと、3’-末端オーバーハングの相補配列と、任意選択でタグ配列Bとを含み、好ましくは、3’-末端オーバーハングの前記相補配列が前記プライマーBの3’-末端に位置し、好ましくは、前記コンセンサス配列Bが3’-末端オーバーハングの前記相補配列の上流に位置し(例えば、前記プライマーBの5’-末端に位置し)、前記3’-末端オーバーハングとは、前記プライマーA’の前記捕捉配列Aによって捕捉された前記RNAを鋳型として使用する逆転写によって生成されたcDNA鎖の3’-末端に含まれる1つ又は複数の鋳型とならないヌクレオチドを指す、プライマーA、又はプライマーA’及びプライマーBを含むプライマーセット、又はプライマーA及びプライマーBを含むプライマーセット、
並びに
(iii)第1の領域及び第2の領域、及び任意選択で、前記第1の領域と前記第2の領域の間に位置する第3の領域を含む、架橋オリゴヌクレオチドであって、前記第1の領域が前記第2の領域の上流に位置し(例えば、前記第2の領域の5’に位置し)、
前記第1の領域が、(a)前記プライマーAの前記コンセンサス配列Aの全体若しくは一部とアニーリングすること、又は(b)前記プライマーBの前記コンセンサス配列Bの全体若しくは一部とアニーリング可能であり、
前記第2の領域が、前記コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能である、架橋オリゴヌクレオチド
を含む、キット。
【請求項35】
(i)に記載の核酸を標識するための核酸アレイ、(ii)に記載のプライマーA及び(iii)に記載の架橋オリゴヌクレオチドを含み、前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第1の領域が、前記プライマーAの前記コンセンサス配列Aの全体又は一部とアニーリング可能であり、前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第2の領域が、前記コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能であり、
好ましくは、前記プライマーAの前記捕捉配列Aがランダムオリゴヌクレオチド配列であり、
好ましくは、前記プライマーAの前記捕捉配列Aが、ポリ(T)配列又は標的核酸の特異的配列であり、好ましくは、前記プライマーAがタグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列をさらに含み、好ましくは、前記捕捉配列Aが前記プライマーAの3’-末端に位置し、前記コンセンサス配列Aが前記タグ配列Aの上流に位置し(例えば、プライマーAの5’-末端に位置し)、
好ましくは、前記プライマーAが5’-末端に5’リン酸を含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
(i)に記載の核酸を標識するための核酸アレイ、(ii)に記載のプライマーA’及びプライマーBを含むプライマーセット並びに(iii)に記載の架橋オリゴヌクレオチドを含み、前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第1の領域が、前記プライマーBの前記コンセンサス配列Bの全体又は一部とアニーリング可能であり、前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第2の領域が、前記コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能であり、
好ましくは、前記プライマーA’の前記捕捉配列Aがランダムオリゴヌクレオチド配列であり、
好ましくは、前記プライマーA’の前記捕捉配列Aが、ポリ(T)配列又は標的核酸の特異的配列であり、好ましくは、前記プライマーA’が、タグ配列A及びコンセンサス配列Aをさらに含み、好ましくは、前記捕捉配列Aが前記プライマーA’の3’-末端に位置し、好ましくは、前記コンセンサス配列Aが前記捕捉配列Aの上流に位置し(例えば、前記プライマーA’の5’-末端に位置し)、
好ましくは、前記プライマーBが、コンセンサス配列B、3’-末端オーバーハングの相補配列及びタグ配列Bを含み、
好ましくは、前記キットがプライマーB’をさらに含み、前記プライマーB’が、前記コンセンサス配列Bの相補配列の全体又は一部とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能であり、
好ましくは、前記プライマーB又はプライマーB’が、5’-末端に5’リン酸を含み、
好ましくは、前記プライマーBが修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含み、好ましくは、前記プライマーBが、3’-末端に1つ又は複数の修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含む、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
(i)に記載の核酸を標識するための核酸アレイ、(ii)に記載のプライマーA及びプライマーBを含むプライマー並びに(iii)に記載の架橋オリゴヌクレオチドを含み、前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第1の領域が、前記プライマーAの前記コンセンサス配列Aの全体又は一部とアニーリング可能であり、前記架橋オリゴヌクレオチドの前記第2の領域が、前記コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能であり、
好ましくは、前記プライマーAの前記捕捉配列Aがランダムオリゴヌクレオチド配列であり、
好ましくは、前記プライマーAの前記捕捉配列Aが、ポリ(T)配列又は標的核酸の特異的配列であり、好ましくは、前記プライマーAがタグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列をさらに含み、好ましくは、前記捕捉配列Aが前記プライマーAの3’-末端に位置し、前記コンセンサス配列Aが前記タグ配列Aの上流に位置し(例えば、プライマーAの5’-末端に位置し)、
好ましくは、前記プライマーAが5’-末端に5’リン酸を含み、
好ましくは、前記プライマーBが修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含み、好ましくは、前記プライマーBが、3’-末端に1つ又は複数の修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含む、請求項34に記載のキット。
【請求項38】
以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項34~37のいずれか一項に記載のキット:
(1)前記オリゴヌクレオチドプローブ、プライマーA、プライマーA’、プライマーB、プライマーB’及び架橋オリゴヌクレオチドが各々独立的に、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれからなり、好ましくは、前記プライマーA、プライマーA’及びプライマーB’が、伸長反応を開始することが可能であり、好ましくは、前記コンセンサス配列X2が3’-末端に遊離ヒドロキシル基(-OH)を有する、
(2)前記オリゴヌクレオチドプローブが各々独立的に、15~300nt(例えば、15~200nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(3)前記プライマーA、プライマーA’、プライマーB及びプライマーB’が各々独立的に、10~200nt(例えば、10~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(4)前記架橋オリゴヌクレオチドが、6~200nt(例えば、20~70nt、6~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(5)同一固相支持体に結合したオリゴヌクレオチドプローブが、同一コンセンサス配列X1及び/又は同一コンセンサス配列X2を有する、
(6)前記オリゴヌクレオチドプローブの前記コンセンサス配列X1が切断部位を含み、好ましくは、前記切断部位が、ニッキング酵素消化、USER酵素消化、光応答性切除、化学的切除又はCRISPR媒介性切除から選択される方法によって切断又は破壊され得る。
【請求項39】
逆転写酵素、核酸リガーゼ、核酸ポリメラーゼ及び/又はトランスポザーゼをさらに含み、
好ましくは、前記逆転写酵素がターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有し、好ましくは、前記逆転写酵素が、RNA(例えば、mRNA)を鋳型として使用してcDNA鎖を合成すること及び3’-末端オーバーハングを前記cDNA鎖の3’-末端に付加することが可能であり、好ましくは、前記逆転写酵素が、前記cDNA鎖の3’-末端に少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又はそれより多いヌクレオチドの長さを有するオーバーハングを付加することが可能であり、好ましくは、前記逆転写酵素が、前記cDNA鎖の3’-末端に、2~5のシトシンヌクレオチドのオーバーハング(例えば、CCCオーバーハング)を付加することが可能であり、好ましくは、前記逆転写酵素が、M-MLV逆転写酵素、HIV-1逆転写酵素、AMV逆転写酵素、テロメラーゼ逆転写酵素、並びに上記の逆転写酵素の逆転写活性を有するそれらのバリアント、改変産物及び誘導体からなる群から選択され、
好ましくは、前記核酸ポリメラーゼが、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性又は鎖置換活性を有さず、
好ましくは、前記トランスポザーゼが、Tn5トランスポザーゼ、MuAトランスポザーゼ、スリーピングビューティートランスポザーゼ、マリナ-トランスポザーゼ、Tn7トランスポザーゼ、Tn10トランスポザーゼ、Ty1トランスポザーゼ、Tn552トランスポザーゼ、並びに上記のトランスポザーゼの転移活性を有するそれらのバリアント、改変産物及び誘導体からなる群から選択される、請求項34~38のいずれか一項に記載のキット。
【請求項40】
核酸ハイブリダイゼーションのための試薬、核酸伸長のための試薬、核酸増幅のための試薬及び核酸を回収又は精製するための試薬、トランスクリプトームシーケンシングライブラリーを構築するための試薬、シーケンシング(例えば、第2又は第3世代シーケンシング)のための試薬又はそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項34~39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項41】
核酸分子ライブラリーを構築するための、又はトランスクリプトームシーケンシングを実施するための、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法又は請求項34~40のいずれか一項に記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、トランスクリプトームシーケンシング及び生体分子空間的情報検出の技術分野に関する。詳細に言えば、本出願は、核酸分子を位置的に標識する方法及びトランスクリプトームシーケンシングのための核酸分子ライブラリーを構築する方法に関する。さらに、本出願はまた、本方法によって構築された核酸分子ライブラリー及び本方法を実行するためのキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
組織の細胞の空間的位置は、その機能に大きく影響を及ぼす。この空間的不均一性を調査するために、細胞のゲノム又はトランスクリプトームを、空間座標の知識を用いて定量及び分析することが必要である。しかし、ゲノム又はトランスクリプトーム分析のために小さい組織領域又はさらには単細胞を収集することは、極めて骨の折れ、費用がかかり、精度が低い。したがって、単細胞レベルで、又はさらに細胞内レベルでの生体分子の空間情報(例えば、核酸の局在性、分布及び/又は発現)の高処理量検出を達成できる方法を開発する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、本出願において核酸分子を捕捉及び標識するために使用されるチップの例示的構造を示し、チップ及びチップに結合したオリゴヌクレオチドプローブ(チップ配列とも呼ばれる)を含む図である。各種のオリゴヌクレオチドプローブは、チップのその位置に対応するタグ配列Yを含み、各種のオリゴヌクレオチドプローブがチップに結合する領域は、マイクロドットと呼ばれ得る。各種のオリゴヌクレオチドプローブは、単一コピーを含む場合も複数のコピーを含む場合もある。
図2図2は、試料のRNA(例えば、mRNA)を鋳型として使用してcDNA鎖を調製するための例示的スキーム並びにcDNA鎖の例示的構造を示す図である。CA:コンセンサス配列A、CB:コンセンサス配列B。
図3図3は、cDNA鎖の5’-末端をチップ配列を用いて標識すること(すなわち、cDNA鎖の5’-末端をチップ配列の3’-末端にライゲートすること)によって、チップ配列の情報を含む新規核酸分子(すなわち、チップ配列によって標識された核酸分子)を生成するための例示的スキーム並びにチップ配列情報を含む新規核酸分子の例示的構造を示す図である。CA:コンセンサス配列A、CB:コンセンサス配列B、X1:コンセンサス配列X1、Y:タグ配列Y、X2:コンセンサス配列X2。
図4図4は、試料のRNA(例えば、mRNA)を鋳型として使用してcDNA鎖の相補鎖を調製するための例示的スキームを及びcDNA鎖の相補鎖の例示的構造を示す図である。CA:コンセンサス配列A、CB:コンセンサス配列B、EP:伸長プライマー。
図5図5は、cDNA鎖の相補鎖の5’-末端をチップ配列を用いて標識すること(すなわち、cDNA鎖の相補鎖の5’-末端をチップ配列の3’-末端にライゲートすること)によって、チップ配列の情報を含む新規核酸分子(すなわち、チップ配列によって標識された核酸分子)を生成するための例示的スキーム並びにチップ配列情報を含む新規核酸分子の例示的構造を示す図である。CA:コンセンサス配列A、CB:コンセンサス配列B、X1:コンセンサス配列X1、Y:タグ配列Y、X2:コンセンサス配列X2。
図6図6は、実施例2において調製されたcDNA増幅産物の長さ分布を示す図である。
図7図7は、本出願の方法によって得られたマウス脳遺伝子発現マップを示す図である。
図8図8は、本出願の方法によって得られた、拡大マウス脳遺伝子発現マップを示す図である。
図9図9は、本出願の方法によって捕捉された遺伝子数及びUMI分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本出願は、標識された核酸分子集団を生成する新規方法並びにこの方法に基づいて核酸分子ライブラリーを構築する、及び高処理量シーケンシングを実施する方法を提供する。
【0005】
標識された核酸分子の集団を生成する方法
【0006】
一態様では、本出願は、標識された核酸分子集団を生成する方法であって、以下の
(1)生体試料及び核酸アレイを提供するステップであって、核酸アレイは、固相支持体を含み、固相支持体は、複数の種類のオリゴヌクレオチドプローブと結合しており、各種のオリゴヌクレオチドプローブは少なくとも1つのコピーを含み、オリゴヌクレオチドプローブは、5’から3’方向にコンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2を含むか、又はそれからなり、
各種のオリゴヌクレオチドプローブは異なるタグ配列Yを有し、タグ配列Yは、その種類のオリゴヌクレオチドプローブの固相支持体上の位置に固有のヌクレオチド配列を有する、ステップ、
(2)生体試料を核酸アレイと接触させて、これによって生体試料中のRNA(例えば、mRNA)の位置が、核酸アレイ上のオリゴヌクレオチドプローブの位置にマッピングされるようにし、生体試料中のRNA(例えば、mRNA)を前処理して、第1の核酸分子集団を生成するステップであって、前処理が、
(i)プライマーAを使用して、生体試料のRNA(例えば、mRNA)の逆転写を実施して、標識される第1の核酸分子として伸長産物を生成し、それによって第1の核酸分子集団を生成するステップであって、プライマーAはコンセンサス配列A及び捕捉配列Aを含み、捕捉配列Aは、捕捉されるRNA(例えば、mRNA)とアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、コンセンサス配列Aは捕捉配列Aの上流に位置する(例えば、プライマーAの5’-末端に位置する)、ステップ、
又は
(ii)(a)プライマーAを使用して、生体試料のRNA(例えば、mRNA)の逆転写を実施して、cDNA鎖を生成するステップであって、cDNA鎖は、プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNA(例えば、mRNA)に相補的であるcDNA配列と、3’-末端オーバーハングとを含み、プライマーAはコンセンサス配列A及び捕捉配列Aを含み、捕捉配列Aは、捕捉されるRNA(例えば、mRNA)とアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、コンセンサス配列Aは捕捉配列Aの上流に(例えば、プライマーAの5’-末端に)位置する、ステップ、(b)プライマーI-Bを、(a)において生成されたcDNA鎖とアニーリングし、伸長反応を実施して、標識される第1の核酸分子として第1の伸長産物を生成し、それによって第1の核酸分子集団を生成するステップであって、プライマーBは、コンセンサス配列Bと、3’-末端オーバーハングの相補配列と、任意選択でタグ配列Bとを含み、3’-末端オーバーハングの相補配列はプライマーBの3’-末端に位置し、コンセンサス配列Bは3’-末端オーバーハングの相補配列の上流に位置する(例えば、プライマーBの5’-末端に位置する)、ステップ、
又は
(iii)(a)プライマーA’を使用して、生体試料のRNA(例えば、mRNA)の逆転写を実施し、cDNA鎖を生成するステップであって、cDNA鎖は、プライマーA’によってプライムされた逆転写によって生成され、RNA(例えば、mRNA)に相補的であるcDNA配列と、3’-末端オーバーハングとを含み、プライマーA’は捕捉配列Aを含み、捕捉配列Aは、捕捉されるRNA(例えば、mRNA)とアニーリングして、伸長反応を開始することが可能である、ステップ、(b)プライマーBを、(a)において生成されたcDNA鎖とアニーリングし、伸長反応を実施して、第1の伸長産物を生成するステップであって、プライマーBは、コンセンサス配列Bと、3’-末端オーバーハングの相補配列と、任意選択でタグ配列Bとを含み、3’-末端オーバーハングの相補配列はプライマーBの3’-末端に位置し、コンセンサス配列Bが3’-末端オーバーハングの相補配列の上流に位置する(例えば、プライマーBの5’-末端に位置する)、ステップ、並びに(c)伸長プライマーを提供し、鋳型として第1の伸長産物を使用して伸長反応を実施して、標識される第1の核酸分子として第2の伸長産物を生成し、それによって第1の核酸分子集団を生成するステップ
を含む、ステップ、
(3)アニーリングを可能にする条件下で、架橋オリゴヌクレオチドを、ステップ(2)の生成物と接触させ、架橋オリゴヌクレオチドをオリゴヌクレオチドプローブ及びオリゴヌクレオチドプローブに対応する位置にある標識される第1の核酸分子とアニーリング(例えば、インサイツアニーリング)させ、かつ架橋オリゴヌクレオチドとアニーリングした第1の核酸分子及びアレイ上のオリゴヌクレオチドプローブをライゲートして、位置決めタグを有する第2の核酸分子としてライゲーション産物を得、それによって第2の核酸分子集団を生成するステップ
を含む方法を提供し、
架橋オリゴヌクレオチドは、第1の領域及び第2の領域、及び任意選択で、第1の領域と第2の領域の間に位置する第3の領域を含み、第1の領域は第2の領域の上流に位置し(例えば、第2の領域の5’に位置し)、
第1の領域は、ステップ(2)(i)若しくはステップ(2)(ii)におけるプライマーAのコンセンサス配列Aの全体若しくは一部とアニーリング可能であるか、又はステップ(2)(iii)におけるプライマーBのコンセンサス配列Bの全体若しくは一部とアニーリング可能であり、
第2の領域は、コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能である。
【0007】
ある特定の実施形態では、方法のステップ(3)において、架橋オリゴヌクレオチドの第1の領域及び第2の領域が直接隣接している場合には、第1の核酸分子のオリゴヌクレオチドプローブへのライゲーションは、核酸リガーゼを使用して、同一架橋オリゴヌクレオチドの第1の領域とハイブリダイズされた核酸分子及び第2の領域とハイブリダイズされた核酸分子をライゲートして、位置決めタグを有する第2の核酸分子としてライゲーション産物を得ることを含み、又は
架橋オリゴヌクレオチドが、第1の領域、第2の領域及びそれらの間に位置する第3の領域を含む場合には、第1の核酸分子のオリゴヌクレオチドプローブへのライゲーションは、核酸ポリメラーゼを使用して、第3の領域を鋳型として重合反応を実施すること、並びに核酸リガーゼを使用して、同一架橋オリゴヌクレオチドの第1の領域にハイブリダイズされた核酸分子と、第3の領域及び第2の領域にハイブリダイズされた核酸分子とをライゲートして、位置決めタグを有する第2の核酸分子としてライゲーション産物を得ることを含む。ある特定の実施形態では、核酸ポリメラーゼは、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性又は鎖置換活性を有さない。
【0008】
ある特定の実施形態では、各種のオリゴヌクレオチドプローブは、1コピーを含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、各種のオリゴヌクレオチドプローブは、複数のコピーを含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、各種のオリゴヌクレオチドプローブが固相支持体に結合する領域は、マイクロドットと呼ばれる。各種のオリゴヌクレオチドプローブが、1コピーを含む場合には、各マイクロドットは1つのオリゴヌクレオチドプローブと結合しており、異なるマイクロドットのオリゴヌクレオチドプローブは異なるタグ配列Yを有し、各種のオリゴヌクレオチドプローブが複数のコピーを含む場合には、各マイクロドットは複数のオリゴヌクレオチドプローブと結合しており、同一マイクロドットのオリゴヌクレオチドプローブは同一タグ配列Yを有し、異なるマイクロドットのオリゴヌクレオチドプローブは異なるタグ配列Yを有することを理解することは容易である。
【0011】
ある特定の実施形態では、固相支持体は複数のマイクロドットを含み、各マイクロドットは1種のオリゴヌクレオチドプローブと結合しており、各種のオリゴヌクレオチドプローブは1つ又は複数のコピーを含み得る。
【0012】
ある特定の実施形態では、固相支持体は複数の(例えば、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個又はそれより多い)マイクロドットを含み、ある特定の実施形態では、固相支持体は、少なくとも10個(例えば、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも1010個、少なくとも1011個又は少なくとも1012個)のマイクロドット/mmを含む。
【0013】
一部の実施形態では、隣接するマイクロドット間の間隔は、100μm未満、50μm未満、10μm未満、5m未満、1μm未満、0.5μm未満、0.1μm未満、0.05μm未満又は0.01μm未満である。
【0014】
ある特定の実施形態では、マイクロドットは、100μm未満、50μm未満、10μm未満、5μm未満、1μm未満、0.5μm未満、0.1μm未満、0.05μm未満又は0.01μm未満のサイズ(例えば、相当直径)である。
【0015】
ステップ(1)、ステップ(2)(i)及びステップ(3)を含む実施形態
【0016】
一部の実施形態では、方法は、ステップ(1)、ステップ(2)(i)及びステップ(3)を含み、ステップ(3)において得られたライゲーション産物は、5’から3’に、コンセンサス配列X1、タグ配列Y、コンセンサス配列X2、任意選択で架橋オリゴヌクレオチドの第3の領域の相補配列、及び標識される第1の核酸分子の配列を含む位置決めタグを有する第2の核酸分子としてとられる。
【0017】
ある特定の実施形態では、方法のステップ(2)(i)において、捕捉配列Aはランダムオリゴヌクレオチド配列である。
【0018】
一部の実施形態では、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来するライゲーション産物は異なる捕捉配列Aを有し、捕捉配列Aは、第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働く。
【0019】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(i)における伸長産物(標識される第1の核酸分子)は、5’から3’に、コンセンサス配列A、プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNAと相補的であるcDNA配列を含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、方法のステップ(2)(i)において、捕捉配列Aは、ポリ(T)配列又は標的核酸を標的とする特異的配列である。
【0021】
ある特定の実施形態では、プライマーAはタグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列をさらに含み、タグ配列Aは、第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働く。
【0022】
ある特定の実施形態では、捕捉配列AはプライマーAの3’-末端に位置し、コンセンサス配列Aはタグ配列Aの上流に位置する(例えば、プライマーAの5’-末端に位置する)。
【0023】
ある特定の実施形態では、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来するライゲーション産物は、異なるタグ配列AをUMIとして有する。
【0024】
一部の実施形態では、ステップ(2)(i)に記載の伸長産物は、5’から3’に、コンセンサス配列Aと、タグ配列Aと、プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNAに相補的であるcDNA配列とを含む。
【0025】
ステップ(1)、ステップ(2)(ii)及びステップ(3)を含む実施形態
【0026】
一部の実施形態では、方法は、ステップ(1)、ステップ(2)(ii)及びステップ(3)を含み、ステップ(3)において得られたライゲーション産物は、5’から3’に、コンセンサス配列X1、タグ配列Y、コンセンサス配列X2、任意選択で架橋オリゴヌクレオチドの第3の領域の相補配列、及び標識される第1の核酸分子の配列を含む位置決めタグを有する第2の核酸分子としてとられる。
【0027】
ある特定の実施形態では、方法のステップ(2)(ii)(a)において、捕捉配列Aはランダムオリゴヌクレオチド配列である。
【0028】
一部の実施形態では、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来するライゲーション産物は異なる捕捉配列Aを有し、捕捉配列Aは、第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働く。
【0029】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(ii)における第1の伸長産物(標識される第1の核酸分子)は、5’から3’に、コンセンサス配列A、プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNAと相補的であるcDNA配列、3’-末端オーバーハング配列、任意選択でタグ配列Bの相補配列、及びコンセンサス配列Bの相補配列を含む。
【0030】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(ii)(a)において、捕捉配列Aは、ポリ(T)配列又は標的核酸を標的とする特異的配列である。
【0031】
ある特定の実施形態では、プライマーAはタグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列をさらに含み、タグ配列Aは、第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働く。
【0032】
ある特定の実施形態では、捕捉配列AはプライマーAの3’-末端に位置し、コンセンサス配列Aはタグ配列Aの上流に位置する(例えば、プライマーAの5’-末端に位置する)。
【0033】
ある特定の実施形態では、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来するライゲーション産物は、異なるタグ配列AをUMIとして有する。
【0034】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(ii)における第1の伸長産物(標識される第1の核酸分子)は、5’から3’に、コンセンサス配列A、タグ配列A、プライマーAによってプライムされた逆転写によって生成され、RNAと相補的であるcDNA配列、3’-末端オーバーハング配列、任意選択でタグ配列Bの相補配列、及びコンセンサス配列Bの相補配列を含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、方法において、プライマーAは5’-末端に5’リン酸を含む。
【0036】
ある特定の実施形態では、ステップ(3)の前に、方法は、ステップ(2)(i)又はステップ(2)(ii)の生成物を処理してRNAを除去するステップ(例えば、熱処理するステップ)をさらに含む。
【0037】
ステップ(1)、ステップ(2)(ii)及びステップ(3)を含む本出願の例示的実施形態は、以下のとおりに詳細に記載される:
【0038】
1.試料のRNA(例えば、mRNA)を鋳型として使用してcDNA鎖を調製する例示的実施形態は、(図2に示されるように)以下のステップを含む:
【0039】
(1)逆転写酵素(例えば、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素)及びプライマーAを使用して、透過処理された組織試料のRNA分子(例えば、mRNA分子)を逆転写し、cDNAを生成し、オーバーハング(例えば、3つのシトシンヌクレオチドを含むオーバーハング)をcDNAの3’-末端に付加する。逆転写反応を実施するために、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有する種々の逆転写酵素が使用され得る。ある特定の好ましい実施形態では、使用される逆転写酵素は、RNアーゼH活性を有さない。
を含む。
【0040】
プライマーAは、ポリ(T)配列及びコンセンサス配列A(図でCAとして記されている)を含む。ある特定の実施形態では(例えば、方法が、3’トランスクリプトームライブラリーを構築するために使用される場合)、プライマーAは、固有の分子識別子(UMI)をさらに含む。普通、ポリ(T)配列は、プライマーAの3’-末端に位置して、逆転写を開始する。好ましい実施形態では、UMI配列は、ポリ(T)配列の上流(例えば、5’)に位置し、コンセンサス配列Aは、UMI配列の上流(例えば、5’)に位置する。
【0041】
(2)鋳型スイッチオリゴ(TSO、プライマーBとして使用できる、コンセンサス配列B(図中、CBと記される)を含む)を使用して、cDNA鎖とアニーリングするか、又はハイブリダイズし、その後、TSOとハイブリダイズされたか、又はアニーリングされた核酸断片を、核酸ポリメラーゼの存在下でコンセンサス配列Bを鋳型として使用して伸長し、その結果、コンセンサス配列Bの相補配列をcDNA鎖の3’-末端に付加し、それによって、5’-末端にコンセンサス配列A及びタグ配列Aを保持する、並びに3’-末端にコンセンサス配列Bの相補配列を保持する核酸分子が生成される。
【0042】
TSO配列は、cDNA鎖の3’-末端オーバーハングと相補的である配列を含み得る。例えば、cDNA鎖が、3つのシトシンヌクレオチドのオーバーハングを3’-末端に含む場合には、鋳型スイッチオリゴは、その3’-末端にGGGを含み得る。さらに、TSO配列のヌクレオチドはまた、TSO配列とcDNA鎖の3’-末端オーバーハングの間の相補的対形成のための結合親和性を増強するように修飾され得る(例えば、TSO配列は、ロックド核酸を含むように修飾され得る)。
【0043】
何らかの理論によって制限されるものではないが、TSOの配列又はその部分配列を鋳型として使用して、ハイブリダイズされたか、又はアニーリングされた核酸断片(逆転写産物)を伸長できる限り、種々の適した核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素)を使用して、伸長反応を実施できる。ある特定の例示的実施形態では、ハイブリダイズされたか、又はアニーリングされた核酸断片(逆転写産物)は、前記の逆転写ステップにおいて使用された同一逆転写酵素を使用して伸長され得る。
【0044】
ある特定の好ましい実施形態では、ステップ(2)及びステップ(1)は、同時に実施される。
【0045】
ある特定の実施形態では、方法は、任意選択で、ステップ(3):RNアーゼHを添加して、RNA/cDNAハイブリッドのRNA鎖を消化して、cDNA一本鎖を形成するステップをさらに含む。
【0046】
ある特定の好ましい実施形態では、方法は、ステップ(3)を含まない。
【0047】
上記の例示的実施形態によって調製されたcDNA鎖の例示的構造は、コンセンサス配列A、UMI配列、RNA(例えば、mRNA)の配列と相補的である配列及びコンセンサス配列Bの相補配列を含む。
【0048】
2.cDNA鎖の5’-末端がオリゴヌクレオチドプローブで標識されて(チップ配列とも呼ばれる)(すなわち、cDNA鎖の5’-末端を、チップ配列の3’-末端にライゲートして)、チップ配列情報を有する新規核酸分子(すなわち、チップ配列を用いて標識された核酸)を形成する例示的実施形態は、以下のステップ(図3に示される)を含む:
5’-末端に、cDNA配列の5’-末端と少なくとも部分的に相補的である(例えば、コンセンサス配列A(CA)と少なくとも部分的に相補的である)配列(第1の領域、P1)を含み、3’-末端に、チップ配列の3’-末端と少なくとも部分的に相補的である(例えば、コンセンサス配列X2と少なくとも部分的に相補的である)配列(第2の領域、P2)を含む、架橋オリゴヌクレオチドを提供するステップ。
【0049】
ある特定の好ましい実施形態では、架橋オリゴヌクレオチドのP1及びP2配列は、直接隣接しており、それらの間に中間ヌクレオチドはない。
【0050】
ある特定の好ましい実施形態では、P1配列、P2配列、コンセンサス配列A及びコンセンサス配列X2は各々独立的に、20~100nt(例えば、20~70nt)の長さを有する。架橋オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドプローブ及びcDNA鎖とアニーリングされるか、又はハイブリダイズされ、次いで、cDNA鎖の5’-末端が、DNAリガーゼ及び/又はDNAポリメラーゼによってオリゴヌクレオチドプローブの3’-末端にライゲートされ、それによって、オリゴヌクレオチドプローブの配列情報を含む新規核酸分子(すなわち、オリゴヌクレオチドプローブで標識された核酸分子)が生成される。ある特定の好ましい実施形態では、DNAポリメラーゼは、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性又は鎖置換活性を有さない。
【0051】
上記の例示的実施形態によって形成されるようなチップ配列情報を含む新規核酸分子の例示的構造は、コンセンサス配列X1、タグ配列Y、コンセンサス配列X2、コンセンサス配列A、UMI配列、RNA(例えば、mRNA)配列の相補配列及びコンセンサス配列Bの相補配列を含む。
【0052】
ステップ(1)、ステップ(2)(iii)及びステップ(3)を含む実施形態
【0053】
一部の実施形態では、方法は、ステップ(1)、ステップ(2)(iii)及びステップ(3)を含み、ステップ(3)において得られたライゲーション産物は、5’から3’に、コンセンサス配列X1、タグ配列Y、コンセンサス配列X2、任意選択で架橋オリゴヌクレオチドの第3の領域の相補配列、及び標識される第1の核酸分子の配列を含む位置決めタグを有する第2の核酸分子としてとられる。
【0054】
一部の実施形態では、方法のステップ(2)(iii)(c)において、伸長プライマーはプライマーB又はプライマーB’であり、プライマーBは、コンセンサス配列Bの相補配列の全体又は一部とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能である。
【0055】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(iii)(c)において、伸長プライマーはプライマーB’である。
【0056】
ある特定の実施形態では、方法のステップ(2)(iii)(a)において、プライマーA’の捕捉配列Aはランダムオリゴヌクレオチド配列である。
【0057】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(iii)(b)において、プライマーBは、コンセンサス配列B、3’末端オーバーハングの相補配列及びタグ配列Bを含む。
【0058】
一部の実施形態では、第1の伸長産物は、5’から3’に、プライマーA’によってプライムされた逆転写によって生成され、RNA配列と相補的であるcDNA配列、3’-末端オーバーハング配列、タグ配列Bの相補配列及びコンセンサス配列Bの相補配列を含み、タグ配列Bの相補配列は、第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働く。
【0059】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(iii)(c)において、第2の伸長産物(標識される第1の核酸分子)は、第1の伸長産物に5’から3’に、コンセンサス配列B又はその3’-末端部分配列、タグ配列B、3’-末端オーバーハング配列の相補配列及びcDNA配列の相補配列を含み、タグ配列Bは、第2の核酸分子の固有の分子識別子(UMI)として働く。
【0060】
ある特定の実施形態では、方法のステップ(2)(iii)(a)において、プライマーA’の捕捉配列Aは、ポリ(T)配列又は標的核酸を標的とする特異的配列である。
【0061】
ある特定の実施形態では、プライマーA’は、タグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列と、コンセンサス配列Aとをさらに含む。
【0062】
ある特定の実施形態では、捕捉配列AはプライマーA’の3’-末端に位置する。
【0063】
ある特定の実施形態では、コンセンサス配列Aは捕捉配列Aの上流に位置する(例えば、プライマーA’の5’-末端に)。
【0064】
ある特定の実施形態では、プライマーBは、コンセンサス配列B、3’-末端オーバーハングの相補配列及びタグ配列Bを含む。
【0065】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(iii)(b)において、第1の伸長産物は、5’から3’に、コンセンサス配列A、任意選択でタグ配列A、プライマーA’によってプライムされた逆転写によって生成され、RNAと相補的であるcDNA配列、3’-末端オーバーハング配列、タグ配列Bの相補配列及びコンセンサス配列Bの相補配列を含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(iii)(c)において、第2の伸長産物(標識される第1の核酸分子)は、5’から3’に、コンセンサス配列B又はその3’末端部分配列、タグ配列B、3’-末端オーバーハング配列の相補配列、第1の伸長産物におけるcDNA配列の相補配列及び任意選択で、タグ配列Aの相補配列及びコンセンサス配列Aの相補配列を含む。
【0067】
ある特定の実施形態では、ステップ(3)において、同一種のオリゴヌクレオチドプローブの各コピーに由来するライゲーション産物は、異なるタグ配列BをUMIとして有する。
【0068】
ある特定の実施形態では、伸長プライマーは5’-末端に5’リン酸を含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、ステップ(2)(iii)(c)の前に、方法は、ステップ(2)(iii)(a)又はステップ(2)(iii)(b)の生成物を処理してRNAを除去するステップ(例えば、熱処理するステップ)をさらに含む。
【0070】
ある特定の実施形態では、方法のステップ(2)(iii)(b)において、cDNA鎖が、その3’-末端オーバーハングを介してプライマーBアニーリングされ、cDNA鎖が、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素)の存在下で鋳型としてプライマーBを使用して伸長されて、第1の伸長産物が生成される。
【0071】
ステップ(1)、ステップ(2)(iii)及びステップ(3)を含む本出願の例示的実施形態は、以下のように詳細に記載される:
【0072】
1.試料中のRNA(例えば、mRNA)を鋳型として使用してcDNA鎖の相補鎖を調製する例示的実施形態は、(図4に示されるように)以下のステップ含む:
【0073】
(1)透過処理された試料のRNA分子(例えば、mRNA分子)の逆転写を実施するために、逆転写酵素(例えば、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素)及びプライマーA’を使用してcDNAが生成され、オーバーハング(例えば、3つのシトシンヌクレオチドを含むオーバーハング)がcDNAの3’-末端に付加される。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有する種々の逆転写酵素が使用されて逆転写反応を実施し得る。ある特定の好ましい実施形態では、使用される逆転写酵素は、RNアーゼH活性を有さない。
【0074】
逆転写プライマーA’は、ポリ(T)配列及びコンセンサス配列A(CA)を含む。普通、ポリ(T)配列は、プライマーAの3’-末端に位置して、逆転写を開始する。
【0075】
(2)プライマーBが、cDNA鎖とアニーリングされるか、又はハイブリダイズされ、プライマーBは、コンセンサス配列B(CB)及びcDNAの3’-末端オーバーハングの相補配列を含む。ある特定の実施形態では(例えば、方法が、5’トランスクリプトームライブラリーを構築するために使用される場合)、プライマーBは、固有の分子識別子(UMI)をさらに含む。その後、プライマーBとハイブリダイズされたか、又はアニーリングされた核酸断片が、コンセンサス配列B及びUMI配列を鋳型として使用して核酸ポリメラーゼの存在下で伸長されて、その結果、コンセンサス配列Bの相補配列及びUMI配列の相補配列がcDNA鎖の3’-末端に付加され、それによって、5’-末端にコンセンサス配列Aを保持し、3’-末端にコンセンサス配列Bの相補配列及びUMI分子の相補配列を保持する核酸分子が生成され得る。
【0076】
cDNA鎖が、3’-末端に3つのシトシンヌクレオチドのオーバーハングを含む場合に、プライマーBは、その3’-末端にGGGを含み得る。さらに、プライマーBのヌクレオチドはまた、プライマーBとcDNA鎖の3’-末端オーバーハングの間の相補的対形成のための結合親和性を増強するように修飾され得る(例えば、プライマーBは、ロックド核酸を含むように修飾され得る)。
【0077】
理論によって制限されるものではないが、プライマーBの配列又は部分配列を鋳型として使用して、アニーリングされたか、又はハイブリダイズされた核酸断片(逆転写産物)を伸長できる限り、種々の適した核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素)を使用して、伸長反応を実施できる。ある特定の例示的実施形態では、アニーリングされたか、又はハイブリダイズされた核酸断片(逆転写産物)は、前記の逆転写ステップにおいて使用された同一逆転写酵素を使用して伸長され得る。
【0078】
ある特定の好ましい実施形態では、ステップ(2)及びステップ(1)は、同時に実施される。
【0079】
ある特定の実施形態では、方法は、任意選択で、ステップ(3):RNアーゼHを添加して、RNA/cDNAハイブリッドのRNA鎖を消化して、cDNA一本鎖を形成するステップをさらに含む。
【0080】
ある特定の好ましい実施形態では、方法は、ステップ(3)を含まない。
【0081】
(4)伸長プライマーを使用して、(3)において得られたcDNA一本鎖を鋳型として使用して伸長反応を実施して伸長産物を得、伸長プライマーは、コンセンサス配列Bの相補配列の全体又は一部とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能である。
【0082】
ある特定の実施形態では、伸長プライマーは、鋳型スイッチオリゴと同一である。
【0083】
上記の例示的実施形態によって調製されたcDNA鎖の相補鎖を含む例示的構造は、コンセンサス配列B、UMI配列、cDNA3’-末端オーバーハング配列の相補配列、cDNA配列の相補配列、コンセンサス配列Aの相補配列を含む。
【0084】
2.cDNA鎖の相補鎖の5’-末端を標識するためにオリゴヌクレオチドプローブ(チップ配列とも呼ばれる)を使用して(すなわち、cDNA鎖の相補鎖の5’-末端が、チップ配列の3’-末端とライゲートされる)、チップ配列の情報を含む新規核酸分子(すなわち、チップ配列で標識された核酸分子)を生成する例示的実施形態は、(図5に示されるように)以下のステップを含む:
5’-末端に、コンセンサス配列B(CB)と少なくとも部分的に相補的である配列(第1の領域、P1)を含み、3’-末端に、コンセンサス配列X2と少なくとも部分的に相補的である配列(第2の領域、P2)を含む架橋オリゴヌクレオチドを提供するステップ。
【0085】
ある特定の好ましい実施形態では、架橋オリゴヌクレオチドのP1及びP2配列は、直接隣接しており、それらの間に中間ヌクレオチドはない。
【0086】
ある特定の好ましい実施形態では、P1配列及びP2配列は各々独立的に、20~100nt(例えば、20~70nt)の長さを有する。
【0087】
架橋オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドプローブ及びcDNA鎖の相補鎖とアニーリングされるか、又はハイブリダイズされ、次いで、cDNA鎖の相補鎖の5’-末端がチップ配列の3’-末端にDNAリガーゼ及び/又はDNAポリメラーゼによってライゲートされて、オリゴヌクレオチドプローブの配列情報を含む新規核酸分子を形成する(すなわち、オリゴヌクレオチドプローブで標識された核酸分子)。ある特定の好ましい実施形態では、DNAポリメラーゼは、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性又は鎖置換活性を有さない。
【0088】
上記の例示的実施形態によって形成されるチップ配列情報を含む新規核酸分子の例示的構造は、コンセンサス配列X1、タグ配列Y、コンセンサス配列X2、コンセンサス配列B、UMI配列、cDNA配列の相補配列及びコンセンサス配列Aの相補配列を含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、3’-末端オーバーハングは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又はそれより多いヌクレオチドの長さを有する。ある特定の実施形態では、3’-末端オーバーハングは、2~5のシトシンヌクレオチドの3’-末端オーバーハング(例えば、CCCオーバーハング)である。
【0090】
一部の実施形態では、方法のステップ(2)において、生体試料は、前処理の前に透過処理される。
【0091】
ある特定の実施形態では、生体試料は組織試料である。
【0092】
ある特定の実施形態では、組織試料は組織切片である。
【0093】
ある特定の実施形態では、組織切片は固定された組織、例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織又は急速凍結組織から調製される。
【0094】
ある特定の実施形態では、生体試料が、核酸アレイと接触される場合には、生体試料の各細胞は、核酸アレイの1つ又は複数のマイクロドットを個々に占有する(すなわち、各細胞は、核酸アレイの1つ又は複数のマイクロドットと個々に接触される)。
【0095】
一部の実施形態では、ステップ(2)において、逆転写酵素を使用することによって逆転写が実施される。
【0096】
ある特定の実施形態では、逆転写酵素はターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有する。
【0097】
ある特定の実施形態では、逆転写酵素は、RNA(例えば、mRNA)を鋳型として使用してcDNA鎖を合成すること及びcDNA鎖の3’-末端にオーバーハングを付加することが可能である。
【0098】
ある特定の実施形態では、逆転写酵素は、cDNA鎖の3’-末端に少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又はそれより多いヌクレオチドの長さのオーバーハングを付加することが可能である。
【0099】
ある特定の実施形態では、逆転写酵素は、cDNA鎖の3’-末端に2~5のシトシンヌクレオチドのオーバーハング(例えば、CCCオーバーハング)を付加することが可能である。
【0100】
ある特定の実施形態では、逆転写酵素は、M-MLV逆転写酵素、HIV-1逆転写酵素、AMV逆転写酵素、テロメラーゼ逆転写酵素、並びに上記の逆転写酵素の逆転写活性を有するそのバリアント、改変産物及び誘導体からなる群から選択される。
【0101】
ある特定の実施形態では、方法のステップ(2)及び(3)は、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する:
(1)プライマーA、プライマーA’、プライマーB及び架橋オリゴヌクレオチドは各々独立的に、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド若しくはそれらの任意の組合せを含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態では、プライマーA及びプライマーA’は、伸長反応を開始することが可能である、
(2)プライマーBは修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含む。ある特定の実施形態では、プライマーBは、その3’-末端に、1つ又は複数の修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含む、
(3)タグ配列A及びタグ配列Bは各々独立的に、5~200nt(例えば、5~30nt、6~15nt)の長さを有する、
(4)コンセンサス配列A及びコンセンサス配列Bは各々独立的に、10~200nt(例えば、10~100nt、20~100nt、25~100nt、5~10nt、10~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt)の長さを有する、
(5)プライマーA、プライマーA’及びプライマーBは各々独立的に、10~200nt(例えば、10~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(6)架橋オリゴヌクレオチドの第1の領域及び第2の領域は各々独立的に、3~100nt(例えば、3~10nt、10~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt)の長さを有する、
(7)架橋オリゴヌクレオチドの第3の領域は、0~100nt(例えば、0~10nt、10~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt)の長さを有する、
(8)架橋オリゴヌクレオチドは、6~200nt(例えば、20~70nt、6~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(9)ポリ(T)配列は、少なくとも10又は少なくとも20(例えば、少なくとも30)デオキシチミジン残基を含む、
(10)ランダムオリゴヌクレオチド配列は、5~200nt(例えば、5~30nt、6~15nt)の長さを有する。
【0102】
ある特定の実施形態では、方法は、(4)第2の核酸分子集団を回収し、精製するステップをさらに含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、方法において、得られた第2の核酸分子集団及び/又はその相補体は、トランスクリプトームライブラリーを構築するため又はトランスクリプトームシーケンシングのために使用される。
【0104】
ある特定の実施形態では、ステップ(1)におけるオリゴヌクレオチドプローブは、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する:
(1)コンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2は各々独立的に、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸(PNA)又はロックド核酸)又はそれらの任意の組合せを含み、ある特定の実施形態では、コンセンサス配列X2は3’-末端に遊離ヒドロキシル基(-OH)を有する、
(2)コンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2は各々独立的に、2~100nt(例えば、10~200nt、10~100nt、20~100nt、25~100nt、50~100nt、5~30nt、6~15nt、5~10nt、10~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt)の長さを有する、
(3)オリゴヌクレオチドプローブは各々独立的に、15~200nt(例えば、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する。
【0105】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブはリンカーを介して固相支持体に結合している。
【0106】
ある特定の実施形態では、リンカーは活性化基と結合することが可能な連結基であり、固相支持体の表面は活性化基を用いて修飾される。
【0107】
ある特定の実施形態では、リンカーは、-SH、-DBCO又は-NHSを含む。
【0108】
ある特定の実施形態では、リンカーは-DBCOであり、固相支持体の表面は、
【化1】

(アジド-dPEG(Azido-dPEG)(登録商標)8-NHSエステル)を用いて修飾される。
【0109】
一部の実施形態では、ステップ(1)の核酸アレイは、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する:
【0110】
ある特定の実施形態では、同一固相支持体に結合したオリゴヌクレオチドプローブは、同一コンセンサス配列X1及び/又は同一コンセンサス配列X2を有する。
【0111】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブのコンセンサス配列X1は切断部位を含み、一部の実施形態では、切断部位は、ニッキング酵素消化、USER酵素消化、光応答性切除、化学的切除又はCRISPR媒介性切除から選択される方法によって切断又は破壊され得る。
【0112】
一部の特定の実施形態では、ステップ(1)の核酸アレイは、以下のステップによって提供される:
(1)複数の種類のキャリア配列を提供するステップであって、各種のキャリア配列が、キャリア配列の少なくとも1つのコピー(例えば、複数のコピー)を含み、キャリア配列が、5’から3’方向に、コンセンサス配列X2の相補配列、タグ配列Yの相補配列及び固定化配列を含み、各種のキャリア配列のタグ配列Yの相補配列は互いに異なっている、ステップ、
(2)複数の種類のキャリア配列を固相支持体(例えば、チップ)の表面に結合させるステップ、
(3)固定化プライマーを提供し、キャリア配列を鋳型として使用してプライマー伸長反応を実施して、伸長産物を生成して、オリゴヌクレオチドプローブを得るステップであって、固定化プライマーが、コンセンサス配列X1の配列を含み、キャリア配列の固定化配列とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能であり、一部の実施形態では、5’から3’方向の伸長産物は、コンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2を含むか、又はそれからなる、ステップ、
(4)固定化プライマーを固相支持体の表面と連結するステップであって、ステップ(3)及び(4)が任意の順序で実施される、ステップ、
(5)任意選択で、キャリア配列の固定化配列は切断部位をさらに含み、切断は、ニッキング酵素消化、USER酵素消化、光応答性切除、化学的切除又はCRISPR媒介性切除から選択され得、キャリア配列の固定化配列に含まれる切断部位で切断を実施して、キャリア配列を消化して、ステップ(3)における伸長産物を、伸長産物が生成される鋳型(すなわち、キャリア配列)から分離し、それによって、オリゴヌクレオチドプローブを固相支持体(例えば、チップ)の表面に連結するステップ。
【0113】
ある特定の実施形態では、各種のキャリア配列は、キャリア配列の複数のコピーのコンカテマーから形成されるDNBである。
【0114】
ある特定の実施形態では、複数の種類のキャリア配列がステップ(1)において以下のステップ:
(i)複数の種類のキャリア-鋳型配列を提供するステップであって、キャリア-鋳型配列が、キャリア配列の相補配列を含む、ステップ、
(ii)各種のキャリア-鋳型配列を鋳型として使用して、核酸増幅反応を実施して、各種のキャリア-鋳型配列の増幅産物を得るステップであって、増幅産物が、キャリア配列の少なくとも1つのコピー(例えば、複数のコピー)を含み、ある特定の実施形態では、ローリングサークル複製が実施されて、キャリア配列のコンカテマーから形成されるDNBが得られる、ステップ
によって提供される。
【0115】
一部の実施形態では、ステップ(1)における固相支持体は、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する:
(1)固相支持体は、ラテックスビーズ、デキストランビーズ、ポリスチレン表面、ポリプロピレン表面、ポリアクリルアミドゲル、金表面、硝子表面、チップ、センサー、電極及びシリコンウエハーからなる群から選択され、一部の実施形態では、固相支持体はチップである、
(2)固相支持体は、平面、球形又は多孔性である、
(3)固相支持体は、シーケンシングプラットフォーム、例えば、シーケンシングチップとして使用できる。一部の実施形態では、固相支持体は、イルミナ(Illumina)、MGI又はサーモフィッシャー(Thermo Fisher)シーケンシングプラットフォームのためのシーケンシングチップである、及び
(4)固相支持体は、自発的に、又は1つ若しくは複数の刺激への曝露(例えば、温度変化、pH変化、特定の化学物質若しくは相への曝露、光への曝露、還元剤への曝露等)によりオリゴヌクレオチドプローブを放出可能である。
【0116】
核酸分子ライブラリーを構築する方法
【0117】
別の態様では、本出願はまた、核酸分子ライブラリーを構築する方法であって、
(a)上記のような方法に従って、標識された核酸分子集団を生成するステップ、及び
(b)標識された核酸分子集団における核酸分子を無作為に断片化し、アダプターを付加するステップ、及び
(c)任意選択で、ステップ(b)の産物を増幅及び/又は濃縮するステップ
を含み、それによって、核酸分子ライブラリーを得る、方法を提供する。
【0118】
ある特定の実施形態では、核酸分子ライブラリーは、シーケンシング、例えば、トランスクリプトームシーケンシング、例えば、シングルセルトランスクリプトームシーケンシングのために使用される。
【0119】
ある特定の実施形態では、ステップ(b)を実施する前に、方法は、ステップ(プレb):標識された核酸分子集団を増幅及び/又は濃縮するステップをさらに含む。
【0120】
ある特定の実施形態では、ステップ(プレb)において、標識された核酸分子集団が核酸増幅反応に供されて、増幅産物を生成する。
【0121】
ある特定の実施形態では、核酸増幅反応が少なくともプライマーC及び/又はプライマーDを使用して実施され、プライマーCは、コンセンサス配列X1の相補配列若しくはコンセンサス配列X1の3’-末端配列の相補配列とハイブリダイズ又はアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、プライマーDは、標識された核酸分子集団の核酸分子とハイブリダイズ又はアニーリングして、伸長反応を開始することが可能である。
【0122】
ある特定の実施形態では、ステップ(プレb)における核酸増幅反応は、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ、例えば、鎖置換活性及び/又は高いフィデリティーを有するDNAポリメラーゼ)を使用して実施される。
【0123】
ある特定の実施形態では、ステップ(b)において、核酸分子は無作為に断片に断片化され、トランスポザーゼを使用して断片にアダプターが付加される。一部の実施形態では、方法のステップ(b)において、前のステップにおいて得られた核酸分子が無作為に断片に断片化され、トランスポザーゼを使用して、断片の両末端に第1のアダプター及び第2のアダプターがそれぞれ付加される。
【0124】
ある特定の実施形態では、トランスポザーゼは、Tn5トランスポザーゼ、MuAトランスポザーゼ、スリーピングビューティー(Sleeping Beauty)トランスポザーゼ、マリナ-(Mariner)トランスポザーゼ、Tn7トランスポザーゼ、Tn10トランスポザーゼ、Ty1トランスポザーゼ、Tn552トランスポザーゼ、並びに上記のトランスポザーゼの転移活性を有するそれらのバリアント、改変産物及び誘導体からなる群から選択される。
【0125】
ある特定の実施形態では、トランスポザーゼはTn5トランスポザーゼである。
【0126】
一部の実施形態では、ステップ(c)において、ステップ(b)の生成物が少なくともプライマーC’及び/又はプライマーD’を使用して増幅され、プライマーC’は、第1のアダプターとハイブリダイズ又はアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、プライマーD’は、第2のアダプターとハイブリダイズ又はアニーリングして、伸長反応を開始することが可能である。
【0127】
一部の実施形態では、ステップ(c)において、少なくともプライマーC及び/又はプライマーD’を使用して、ステップ(b)の生成物を増幅し、プライマーD’は、第1のアダプター若しくは第2のアダプターとハイブリダイズ又はアニーリングして、伸長反応を開始することが可能である。
【0128】
シーケンシング法
【0129】
別の態様では、本出願はまた、核酸試料をシーケンシングする方法を提供し、方法は、
(1)上記のような方法に従って核酸分子ライブラリーを構築するステップ、及び
(2)核酸分子ライブラリーをシーケンシングするステップ
を含む。
【0130】
キット
【0131】
別の態様では、本出願はまたキットを提供し、キットは、
(i)核酸を標識するための核酸アレイであって、固相支持体を含み、固相支持体は複数の種類のオリゴヌクレオチドプローブに結合しており、各種のオリゴヌクレオチドプローブは少なくとも1つのコピーを含み、オリゴヌクレオチドプローブは5’から3’方向にコンセンサス配列X1、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2を含むか、又はそれからなり、
各種のオリゴヌクレオチドプローブは異なるタグ配列Yを有し、タグ配列Yは、その種類のオリゴヌクレオチドプローブの固相支持体上の位置に固有のヌクレオチド配列を有する、核酸を標識するための核酸アレイ、
(ii)プライマーA、又はプライマーA’及びプライマーBを含むプライマーセット、又はプライマーA及びプライマーBを含むプライマーセットであって、
プライマーAはコンセンサス配列A及び捕捉配列Aを含み、捕捉配列Aは、捕捉されるRNA(例えば、mRNA)とアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、一部の実施形態では、コンセンサス配列Aは捕捉配列Aの上流に位置し(例えば、プライマーAの5’-末端に位置し)、
プライマーA’は捕捉配列Aを含み、捕捉配列Aは、捕捉されるRNA(例えば、mRNA)とアニーリングして、伸長反応を開始することが可能であり、
プライマーBは、コンセンサス配列B、3’-末端オーバーハングの相補配列及び任意選択で、タグ配列Bを含み、ある特定の実施形態では、3’-末端オーバーハングの相補配列はプライマーBの3’-末端に位置し、ある特定の実施形態では、コンセンサス配列Bは3’-末端オーバーハングの相補配列の上流に位置し(例えば、プライマーBの5’-末端に位置し)、3’-末端オーバーハングとは、プライマーA’の捕捉配列Aによって捕捉されたRNAを鋳型として使用する逆転写によって生成されたcDNA鎖の3’-末端に含まれる1つ又は複数の鋳型とならないヌクレオチドを指す、プライマーA、又はプライマーA’及びプライマーBを含むプライマーセット、又はプライマーA及びプライマーBを含むプライマーセット
並びに
(iii)第1の領域及び第2の領域、及び任意選択で、第1の領域と第2の領域の間に位置する第3の領域を含む、架橋オリゴヌクレオチドであって、第1の領域は第2の領域の上流に位置し(例えば、第2の領域の5’に位置し)、
第1の領域は、(a)プライマーAのコンセンサス配列Aの全体若しくは一部とアニーリングすること、又は(b)プライマーBのコンセンサス配列Bの全体若しくは一部とアニーリングすることが可能であり、
第2の領域は、コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能である、架橋オリゴヌクレオチド
を含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、各種のオリゴヌクレオチドプローブは、1つのコピーを含む。
【0133】
ある特定の実施形態では、各種のオリゴヌクレオチドプローブは、複数のコピーを含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、各種のオリゴヌクレオチドプローブが固相支持体に結合している領域は、マイクロドットと呼ばれる。各種のオリゴヌクレオチドプローブが、1つのコピーを含む場合には、各マイクロドットは1つのオリゴヌクレオチドプローブと結合しており、異なるマイクロドットのオリゴヌクレオチドプローブは異なるタグ配列Yを有し、各種のオリゴヌクレオチドプローブが複数のコピーを含む場合には、各マイクロドットは複数のオリゴヌクレオチドプローブと結合しており、同一マイクロドットのオリゴヌクレオチドプローブは同一タグ配列Yを有し、異なるマイクロドットのオリゴヌクレオチドプローブは異なるタグ配列Yを有することを理解することは容易である。
【0135】
ある特定の実施形態では、固相支持体は複数のマイクロドットを含み、各マイクロドットは1つの種類のオリゴヌクレオチドプローブと結合しており、各種のオリゴヌクレオチドプローブは1つ又は複数のコピーを含み得る。
【0136】
ある特定の実施形態では、固相支持体は、複数の(例えば、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10又はそれより多い)マイクロドットを含み、ある特定の実施形態では、固相支持体は、少なくとも10(例えば、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、少なくとも1011又は少なくとも1012)マイクロドット/mmを含む。
【0137】
一部の実施形態では、隣接するマイクロドット間の間隔は、100μm未満、50μm未満、10μm未満、5μm未満、1μm未満、0.5μm未満、0.1μm未満、0.05μm未満又は0.01μm未満である。
【0138】
ある特定の実施形態では、マイクロドットは、100μm未満、50μm未満、10μm未満、5μm未満、1μm未満、0.5μm未満、0.1μm未満、0.05μm未満又は0.01μm未満のサイズ(例えば、相当直径)を有する。
【0139】
ある特定の実施形態では、キットは、(i)に記載の核酸を標識するための核酸アレイ、(ii)に記載のプライマーA及び(iii)に記載の架橋オリゴヌクレオチドを含み、架橋オリゴヌクレオチドの第1の領域が、プライマーAのコンセンサス配列Aの全体又は一部とアニーリング可能であり、架橋オリゴヌクレオチドの第2の領域が、コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能である。
【0140】
ある特定の実施形態では、プライマーAの捕捉配列Aはランダムオリゴヌクレオチド配列である。
【0141】
ある特定の実施形態では、プライマーAの捕捉配列Aは、ポリ(T)配列又は標的核酸を標的とする特異的配列であり、ある特定の実施形態では、プライマーAはタグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列をさらに含み、ある特定の実施形態では、捕捉配列AはプライマーAの3’-末端に位置し、コンセンサス配列Aはタグ配列Aの上流に位置する(例えば、プライマーAの5’-末端に位置する)。
【0142】
ある特定の実施形態では、プライマーAは5’-末端に5’リン酸を含む。
【0143】
ある特定の実施形態では、キットは、(i)に記載の核酸を標識するための核酸アレイ、(ii)に記載のプライマーA’及びプライマーBを含むプライマーセット及び(iii)に記載の架橋オリゴヌクレオチドを含み、架橋オリゴヌクレオチドの第1の領域が、プライマーBのコンセンサス配列Bの全体又は一部とアニーリング可能であり、架橋オリゴヌクレオチドの第2の領域が、コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能である。
【0144】
ある特定の実施形態では、プライマーA’の捕捉配列は、ランダムオリゴヌクレオチド配列である。
【0145】
ある特定の実施形態では、プライマーA’の捕捉配列Aは、ポリ(T)配列又は標的核酸を標的とすると特異的配列であり、ある特定の実施形態では、プライマーA’は、タグ配列A及びコンセンサス配列Aをさらに含み、ある特定の実施形態では、捕捉配列AはプライマーA’の3’-末端に位置し、ある特定の実施形態では、コンセンサス配列Aは捕捉配列Aの上流に位置する(例えば、プライマーA’の5’-末端に位置する)。
【0146】
ある特定の実施形態では、プライマーBは、コンセンサス配列B、3’-末端オーバーハングの相補配列及びタグ配列Bを含む。
【0147】
ある特定の実施形態では、キットはプライマーB’をさらに含み、プライマーB’は、コンセンサス配列Bの相補配列の全体又は一部とアニーリングし、伸長反応を開始することが可能である。
【0148】
ある特定の実施形態では、プライマーB又はプライマーB’は、5’-末端に5’リン酸を含む。
【0149】
ある特定の実施形態では、プライマーBは修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含み、ある特定の実施形態では、プライマーBは、1つ又は複数の修飾ヌクレオチド(例えば、1つ又は複数のロックド核酸)を3’-末端に含む。
【0150】
ある特定の実施形態では、キットは、(i)に記載の核酸を標識するための核酸アレイ、(ii)に記載のプライマーA及びプライマーBを含むプライマーセット及び(iii)に記載の架橋オリゴヌクレオチドを含み、架橋オリゴヌクレオチドの第1の領域が、プライマーAのコンセンサス配列Aの全体又は一部とアニーリング可能であり、架橋オリゴヌクレオチドの第2の領域が、コンセンサス配列X2の全体又は一部とアニーリング可能である。
【0151】
ある特定の実施形態では、プライマーAの捕捉配列Aはランダムオリゴヌクレオチド配列である。
【0152】
ある特定の実施形態では、プライマーAの捕捉配列Aは、ポリ(T)配列又は標的核酸を標的とすると特異的配列であり、ある特定の実施形態では、プライマーAはタグ配列A、例えば、ランダムオリゴヌクレオチド配列をさらに含み、ある特定の実施形態では、捕捉配列AはプライマーAの3’-末端に位置し、コンセンサス配列Aはタグ配列Aの上流に位置する(例えば、プライマーAの5’-末端に位置する)。
【0153】
ある特定の実施形態では、プライマーAは5’-末端に5’リン酸を含む。
【0154】
ある特定の実施形態では、プライマーBは修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含む。ある特定の実施形態では、プライマーBは、3’-末端に1つ又は複数の修飾ヌクレオチド(例えば、ロックド核酸)を含む。
【0155】
ある特定の実施形態では、キットは、以下から選択される1つ又は複数の特徴を有する:
(1)オリゴヌクレオチドプローブ、プライマーA、プライマーA’、プライマーB、プライマーB’及び架橋オリゴヌクレオチドは各々独立的に、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態では、プライマーA、プライマーA’及びプライマーB’は、伸長反応を開始することが可能である。ある特定の実施形態では、コンセンサス配列X2は3’-末端に遊離ヒドロキシル基(-OH)を有する、
(2)オリゴヌクレオチドプローブは各々独立的に、15~300nt(例えば、15~200nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(3)プライマーA、プライマーA’、プライマーB及びプライマーB’は各々独立的に、10~200nt(例えば、10~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(4)架橋オリゴヌクレオチドは、6~200nt(例えば、20~70nt、6~15nt、15~20nt、20~30nt、30~40nt、40~50nt、50~100nt、100~150nt、150~200nt)の長さを有する、
(5)同一固相支持体に結合したオリゴヌクレオチドプローブは、同一コンセンサス配列X1及び/又は同一コンセンサス配列X2を有する、
(6)オリゴヌクレオチドプローブのコンセンサス配列X1は切断部位を含み、一部の実施形態では、切断部位は、ニッキング酵素消化、USER酵素消化、光応答性切除、化学的切除又はCRISPR媒介性切除から選択される方法によって切断若しくは破壊され得る。
【0156】
ある特定の実施形態では、キットは、逆転写酵素、核酸リガーゼ、核酸ポリメラーゼ及び/又はトランスポザーゼをさらに含む。
【0157】
ある特定の実施形態では、逆転写酵素はターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有し、ある特定の実施形態では、逆転写酵素は、RNA(例えば、mRNA)を鋳型として使用してcDNA鎖を合成すること及び3’-末端オーバーハングをcDNA鎖の3’-末端に付加することが可能であり、ある特定の実施形態では、逆転写酵素は、cDNA鎖の3’-末端に、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又はそれより多いヌクレオチドの長さを有するオーバーハングを付加することが可能であり、ある特定の実施形態では、逆転写酵素は、cDNA鎖の3’-末端に2~5のシトシンヌクレオチドのオーバーハング(例えば、CCCオーバーハング)を、付加することが可能であり、ある特定の実施形態では、逆転写酵素は、M-MLV逆転写酵素、HIV-1逆転写酵素、AMV逆転写酵素、テロメラーゼ逆転写酵素、並びに上記の逆転写酵素の逆転写活性を有するそれらのバリアント、改変産物及び誘導体からなる群から選択される。
【0158】
ある特定の実施形態では、核酸ポリメラーゼは、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性又は鎖置換活性を有さない。
【0159】
ある特定の実施形態では、トランスポザーゼは、Tn5トランスポザーゼ、MuAトランスポザーゼ、スリーピングビューティートランスポザーゼ、マリナ-トランスポザーゼ、Tn7トランスポザーゼ、Tn10トランスポザーゼ、Ty1トランスポザーゼ、Tn552トランスポザーゼ、並びに上記のトランスポザーゼの転移活性を有するそれらのバリアント、改変産物及び誘導体からなる群から選択される。
【0160】
ある特定の実施形態では、キットは、プライマーC、プライマーD、プライマーC’及び/又はプライマーD’をさらに含む。例えば、キットは、プライマーC、プライマーD及びプライマーD’をさらに含む。例えば、キットは、プライマーC、プライマーD、プライマーC’及びプライマーD’をさらに含む。
【0161】
ある特定の実施形態では、キットは、核酸ハイブリダイゼーションのための試薬、核酸伸長のための試薬、核酸増幅のための試薬、核酸を回収又は精製するための試薬、トランスクリプトームシーケンシングライブラリーを構築するための試薬、シーケンシング(例えば、第2又は第3世代シーケンシング)のための試薬又はそれらの任意の組合せをさらに含む。
【0162】
使用
【0163】
別の態様では、本出願はまた、上記のような標識された核酸分子集団を生成するための方法、又は核酸分子ライブラリーを構築するための、若しくはトランスクリプトームシーケンシングを実施するための上記のようなキットの使用を提供する。
【0164】
用語の定義
【0165】
本出願では、特に断りのない限り、本明細書において使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、分子生物学、生化学、核酸化学、細胞培養等の操作ステップは、本明細書で使用される場合、すべて、対応する技術分野において広く使用される日常的なステップである。一方で、本出願をより理解するために、関連用語の定義及び説明を以下に提供する。
【0166】
用語「例えば(e.g.)」、「例えば(for example)」、「等(such as)」、「含む(comprise)」、「含む(include)」又はそれらの変形が本明細書で使用される場合には、これらの用語は、限定的な用語とはされず、代わりに、「それだけには限らない」又は「制限するものではない」を意味すると解釈される。
【0167】
本明細書において別に示されるか、文脈によって明確に矛盾しない限り、本出願を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」並びに「その(the)」及び同様の指示対象は、単数形及び複数形を対象とすると解釈されるべきである。
【0168】
本明細書において使用される場合、「DNB」(DNAナノボール(nanoball))は、通常のRCA(ローリングサークル増幅)産物であり、RCA産物の特徴を有する。ここで、RCA産物は、複数のコピーを有する一本鎖DNA配列であり、DNAに含まれる塩基間の相互作用により、「球状」様構造を形成できる。通常、ライブラリー分子は環状化して、一本鎖環状DNAを形成し、その後、一本鎖環状DNAを、ローリングサークル増幅技術を使用して数桁増幅することができ、それによって、DNBと呼ばれる増幅産物が生成される。
【0169】
本明細書で使用される場合、「核酸分子集団」とは、核酸分子、例えば、標的核酸分子(例えば、二本鎖DNA、RNA/cDNAハイブリッド、一本鎖DNA又は一本鎖RNA)に直接若しくは間接的に由来する核酸分子の集団又は集合を指す。一部の実施形態では、核酸分子集団は核酸分子ライブラリーを含み、核酸分子ライブラリーは、標的核酸分子配列を質的及び/又は量的に代表する配列を含む。他の実施形態では、核酸分子集団は、核酸分子ライブラリーのサブセットを含む。
【0170】
本明細書で使用される場合、「核酸分子ライブラリー」とは、標識された核酸分子(例えば、標識された二本鎖DNA、標識されたRNA/cDNAハイブリッド、標識された一本鎖DNA又は標識された一本鎖RNA)又は標的核酸分子から直接的若しくは間接的に生成されるその断片の集合又は集団を指し、集合若しくは集団の標識された核酸分子又はその断片の組合せは、標識された核酸分子が生成された標的核酸分子配列の配列を質的に及び/又は量的に代表すると示されている。ある特定の実施形態では、核酸分子ライブラリーはシーケンシングライブラリーである。ある特定の実施形態では、核酸分子ライブラリーは、シーケンシングライブラリーを構築するために使用され得る。
【0171】
本明細書で使用される場合、「cDNA」又は「cDNA鎖」とは、目的のRNA分子の少なくとも一部分を鋳型として使用し、RNA依存性DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素(このプロセスは、「逆転写」とも呼ばれる)の触媒下で目的のRNA分子とアニーリングするプライマーを介して伸長することによって合成された「相補DNA」を指す。合成されたcDNA分子は、鋳型の少なくとも一部分に対して「相同」若しくは「相補的」であるか、又は鋳型の少なくとも一部分と「塩基対形成する」若しくは「複合体を形成する」。
【0172】
本明細書で使用される場合、用語「上流」は、2つの核酸配列(又は2つの核酸分子)の相対的な位置的関係を説明するために使用され、当業者によって一般に理解される意味を有する。例えば、表現「核酸配列は、別の核酸配列の上流に位置する」とは、5’から3’方向にアラインされた場合に、前者は後者よりもより前方の位置(すなわち、5’-末端により近い位置)に位置することを意味する。本明細書で使用される場合、用語「下流」は、「上流」と反対の意味を有する。
【0173】
本明細書で使用される場合、「タグ配列Y」、「タグ配列A」、「タグ配列B」、「コンセンサス配列X1」、「コンセンサス配列X2」、「コンセンサス配列A」、「コンセンサス配列B」等は、それにライゲートされた核酸分子又はそれにライゲートされた核酸分子の誘導体産物(例えば、核酸分子の相補的断片、核酸分子の短い断片等)の同定、認識及び/若しくは分子操作又は生化学的操作の手段を提供する(例えば、オリゴヌクレオチドとアニーリングするための部位を提供することによって。オリゴヌクレオチドは、例えば、DNAポリメラーゼ伸長のプライマーである又は捕捉反応若しくはライゲーション反応のためのオリゴヌクレオチドである。)非標的核酸構成成分を有するオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、少なくとも2の(好ましくは、約6~100であるが、オリゴヌクレオチドの長さの明確な制限はなく、正確なサイズは多数の因子に依存し、一方でこれらの因子は、オリゴヌクレオチドの最終的な機能又は用途に依存する)ヌクレオチドからなってもよく、連続的又は非連続的に配置された複数のオリゴヌクレオチドセグメントから構成されてもよい。オリゴヌクレオチド配列は、それがライゲートされる各核酸分子に固有であってもよく、それがライゲートされるある特定の種類の核酸分子に固有であってもよい。オリゴヌクレオチド配列は、ライゲーション、ハイブリダイゼーション又は他の方法を含む任意の方法によって「標識される」ポリヌクレオチド配列に可逆的又は不可逆的にライゲートされ得る。オリゴヌクレオチド配列を核酸分子とライゲートするプロセスは、「標識」と呼ばれることがあり、標識の付加を受ける、又は標識配列を含む核酸分子は、「標識された核酸分子」又は「タグが付けられた核酸分子」と呼ばれる。
【0174】
種々の理由のために、本出願の核酸又はポリヌクレオチド(例えば、「タグ配列Y」、「タグ配列A」、「タグ配列B」、「コンセンサス配列X1」、「コンセンサス配列X2」、「コンセンサス配列A」、「コンセンサス配列B」、「プライマーA」、「プライマーA’」、「プライマーB」、「プライマーC」、「プライマーD」、「プライマーD’」、「架橋オリゴヌクレオチド」等)は、1つ又は複数の修飾核酸塩基、糖部分又はヌクレオシド間連結を含み得る。例えば、修飾核酸塩基、糖部分又はヌクレオシド間連結を含む核酸又はポリヌクレオチドを使用するいくつかの理由として、それだけには限らないが、(1)Tmの変化、(2)1つ若しくは複数のヌクレアーゼに対するポリヌクレオチドの感受性の変化、(3)標識を連結するための部分を提供すること、(4)標識若しくは標識クエンチャーを提供すること又は(5)溶液の別の分子に取り付けるための、若しくは表面に結合したビオチン等の部分を提供することが挙げられる。例えば、一部の実施形態では、オリゴヌクレオチド、例えば、プライマーは、ランダムな部分に、拘束されたコンホメーションを有する1つ以上の核酸類似体を含むように合成することができ、これには、リボース環が、2’-O原子を4’-C原子に連結するメチレン架橋によって「ロック」された1つ又は複数のリボ核酸類似体が含まれるが、これに限定されない。これらの修飾ヌクレオチドは、各分子のTm又は融解温度の約2セルシウス度~約8セルシウス度の増大をもたらす。例えば、リボヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプライマーが使用される一部の実施形態では、方法において修飾ヌクレオチドを使用する1つの指標は、修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドが一本鎖特異的RNアーゼによって消化され得ることであり得る。
【0175】
本出願の方法において、例えば、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの1つ又は複数の位置の単一ヌクレオチドの核酸塩基は、グアニン、アデニン、ウラシル、チミン若しくはシトシンを含み得る、又は任意選択で、核酸塩基のうち1つ若しくは複数は、修飾塩基、例えば、それだけには限らないが、キサンチン、アリルアミノ-ウラシル、アリルアミノ-チミンヌクレオシド、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、4-チオウラシル、6-チオグアニン、アザウラシル、デアザウラシル、チミンヌクレオシド、シトシン、アデニン又はグアニンを含み得る。さらに、それらは、以下の部分で誘導体化された核酸塩基を含み得る:ビオチン部分、ジゴキシゲニン部分、蛍光又は化学発光部分、クエンチング部分又はいくつかの他の部分。本出願は、列挙された核酸塩基に制限されず、所与のリストは、本出願の方法において使用され得る広範な塩基の例を例示する。
【0176】
本出願の核酸又はポリヌクレオチドに関して、糖部分のうち1つ又は複数は2’-デオキシリボースを含んでよく、又は任意選択で、糖部分のうち1つ又は複数はいくつかの他の糖部分、例えば、それだけには限らないが、いくつかのヌクレアーゼに対して耐性を有するリボース若しくは2’-フルオロ-2’-デオキシリボース若しくは2’-O-メチル-リボース、又は、可視、蛍光、赤外蛍光若しくは他の検出可能な色素若しくは求電子性、光反応性、アルキニル若しくは他の反応性化学部分を有する化学物質との反応によって標識される、2’-アミノ-2’-デオキシリボース若しくは2’-アジド-2’-デオキシリボースを含んでもよい。
【0177】
本出願の核酸又はポリヌクレオチドのヌクレオシド間連結は、ホスホジエステル結合であり得るか、又は任意選択で、ヌクレオシド間連結のうち1つ若しくは複数は、修飾された連結、例えば、それだけには限らないが、いくつかのヌクレアーゼに対して耐性である、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート又はホスホロジセレネート連結を含む場合がある。
【0178】
本明細書で使用される場合、用語「ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性」とは、1つ若しくは複数のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)又は単一のジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の、cDNAの3’-末端への鋳型独立性付加(又は「テーリング」)を触媒する能力を指す。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素の例には、それだけには限らないが、-MLV逆転写酵素、HIV-1逆転写酵素、AMV逆転写酵素、テロメラーゼ逆転写酵素、並びに逆転写活性及び逆転写酵素のターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有するそれらのバリアント、改変産物及び誘導体が含まれる。逆転写酵素は、RNアーゼ活性(特に、RNアーゼH活性)を有するか、又は有さない。好ましい実施形態では、cDNAを生成するためのRNAの逆転写のために使用される逆転写酵素は、RNアーゼ活性を有さない(特に、RNアーゼH活性)。したがって、好ましい実施形態では、cDNAを生成するためのRNAの逆転写のために使用される逆転写酵素は、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を有し、RNアーゼ活性を有さない(特に、RNアーゼH活性)。
【0179】
本明細書で使用される場合、「鎖置換活性」を有する核酸ポリメラーゼとは、新規核酸鎖を伸長するプロセスの際に、鋳型鎖と相補的である下流核酸鎖と遭遇した場合に、伸長反応を継続し、鋳型鎖と相補的である該核酸鎖を(分解するのではなく)置き換えることができる核酸ポリメラーゼを指す。
【0180】
本明細書で使用される場合、「5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性」を有する核酸ポリメラーゼとは、ポリヌクレオチドの5’-末端から3’-末端の順に3,5-リン酸ジエステル結合の加水分解を触媒でき、それによってヌクレオチドを分解する核酸ポリメラーゼを指す。
【0181】
本明細書で使用される場合、「高いフィデリティー」を有する核酸ポリメラーゼ(又はDNAポリメラーゼ)とは、核酸の増幅の際に、野生型Taq酵素(例えば、配列がUniProt受託:P19821.1に示されたTaq酵素)よりも間違ったヌクレオチドを導入する可能性(すなわち、誤り率)が低い核酸ポリメラーゼ(又はDNAポリメラーゼ)を指す。
【0182】
本明細書で使用される場合、用語「アニーリングした」、「アニーリングしている」、「アニーリングする」、「ハイブリダイズされた」、又は「ハイブリダイズしている」等は、Watson-Crick塩基対形成を介して複合体を形成するための十分な相補性を有するヌクレオチド配列間の複合体の形成を指す。本出願の目的のために、互いに「相補的である」又は「ハイブリダイズする」又は「アニーリングする」核酸配列は、意図される目的のために、十分に安定な「ハイブリッド」又は「複合体」を形成可能でなくてはならない。核酸分子によって提示された配列内のすべての核酸塩基が、別の核酸分子によって提示される配列内のすべての核酸塩基と塩基対形成又は対形成又は複合体形成可能であることによって、両核酸分子又はその中の提示される対応する配列が互いに「相補的である」又は「アニーリングする」又は「ハイブリダイズする」ことは、必要ではない。本明細書で使用される場合、用語「相補的」又は「相補性」は、塩基対形成のルールによって関連づけられたヌクレオチドの配列に言及する場合に使用される。例えば、配列5’-A-G-T-3’は、配列3’-T-C-A-5’と相補的である。相補性は、「部分的」であり得、この場合、核酸塩基の一部のみが、塩基対形成のルールにしたがってマッチングする。任意選択で、核酸の間に「完全」又は「総」相補性があってもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に対して大きな影響を及ぼす。相補性の程度は、核酸のハイブリダイゼーションに頼る増幅反応及び検出方法において特に重要である。用語「相同性」とは、ある核酸配列の、別の核酸配列に対する相補性の程度を指す。部分相同性(すなわち、相補性)又は完全相同性(すなわち、相補性)があり得る。部分的に相補的な配列は、完全に相補的な配列の標的核酸とのハイブリダイゼーションを少なくとも部分的に阻害する配列であり、機能的な用語「実質的に相同」を使用して称される。完全に相補的な配列の標的配列とのハイブリダイゼーションの阻害は、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザンブロッティング又はノーザンブロッティング、溶液のハイブリダイゼーション等)を使用して低ストリンジェンシー条件下で試験され得る。実質的に相同な配列又はプローブは、低ストリンジェンシーの条件下での完全に相同な配列の標的との結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)において競合するか、又は結合を阻害する。これは、低ストリンジェンシー条件が非特異的結合を可能にする条件であるということではなく、低ストリンジェンシー条件は、2つの配列が特異的(すなわち、選択的)相互作用によって互いに結合することを必要とする。非特異的結合がないことは、相補性を欠くか、又は低い程度の相補性しか有さない(例えば、約30%未満の相補性)第2の標的を使用することによって試験され得る。特異的結合が低いか、又は存在しない場合には、プローブは、核酸標的とハイブリダイズしない。用語「実質的に相同」とは、二本鎖核酸配列、例えば、cDNA又はゲノムクローンに関して使用される場合に、本明細書で記載される低ストリンジェンシー条件下で、二本鎖核酸配列の一方の鎖又は両鎖とハイブリダイズできる任意のオリゴヌクレオチド又はプローブであることを意味する。本明細書で使用される場合、用語「アニーリング」又は「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸鎖の対形成を指す場合に使用される。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション力(すなわち、核酸鎖の間の会合力)は、塩濃度、ハイブリッドを形成するためのTm(融解温度)、他の構成成分の存在(例えば、ポリエチレングリコール又はベタインの有無)、ハイブリダイズされた鎖のモル濃度及び核酸鎖のGC含量等の因子によって影響を受ける条件のストリンジェンシーを含む、核酸間の相補性の程度を含む、当技術分野で公知の多数の因子によって影響を受ける。
【0183】
本明細書で記載されるように、固相支持体は、自発的に、又は1つ若しくは複数の刺激への曝露(例えば、温度変化、pH変化、特定の化学物質若しくは相への曝露、光への曝露、還元剤等)によりオリゴヌクレオチドプローブを放出可能である。オリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドプローブと固相支持体の間の結合の切断又は固相支持体自体の分解又は両方によって放出され得、またオリゴヌクレオチドプローブは、他の試薬によって接近されることを可能にするか、又は接近されることが可能であることが理解される。
【0184】
複数の種類の不安定な結合を固相支持体に付加することによって、固相支持体の異なる刺激に応答する能力が可能になる。各種の不安定な結合は、関連する刺激(例えば、化学的刺激、光、温度等)に対して感受性である場合があり、その結果、不安定な結合各々を介して固相支持体に付着している物質の放出が、適切な刺激を適用することによって制御され得る。熱的に切断可能な結合、ジスルフィド結合及びUV感受性結合に加えて、固相支持体に結合することができる不安定な結合の他の限定されない例には、エステル結合(例えば、酸、塩基又はヒドロキシルアミンを用いて切断され得るエステル結合)、オルトジオール結合(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムによって切断され得るオルトジオール結合)、ディールス・アルダー結合(例えば、熱的に切断され得るディールス・アルダー結合)、スルホン結合(例えば、アルカリによって切断され得るスルホン結合)、シリシル(silicyl)エーテル結合(例えば、酸によって切断され得るシリシル(silicyl)エーテル結合)、グリコシド結合(例えば、アミラーゼによって切断され得るグリコシド結合)、ペプチド結合(例えば、プロテアーゼによって切断され得るペプチド結合)又はリン酸ジエステル結合(例えば、ヌクレアーゼ(例えば、DNA酵素)によって切断され得るリン酸ジエステル結合)が含まれる。
【0185】
固相支持体と上記のオリゴヌクレオチドの間の切断可能な結合に加えて、又はそれの代替物として、固相支持体は、自発的に、又は1つ若しくは複数の刺激への曝露(例えば、温度変化、pH変化、特定の化学物質若しくは相への曝露、光への曝露、還元剤への曝露等)により分解可能、破壊可能又は可溶性であり得る。一部の場合には、固相支持体は、可溶性である場合があり、その結果、固相支持体の材料成分が、特定の化学物質又は環境変化(例えば、温度の変化又はpHの変化)への曝露により溶解する。一部の場合には、固相支持体は、高温及び/又はアルカリ条件下で分解又は溶解し得る。一部の場合には、固相支持体は、熱的に分解可能である場合があり、その結果、固相支持体は、適切な温度変化(例えば、加熱)に曝露された場合に分解する。物質(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)と結合している固相支持体の分解又は溶解は、固相支持体からの物質の放出をもたらし得る。
【0186】
本明細書で使用される場合、用語「トランスポザーゼ」及び「逆転写酵素」及び「核酸ポリメラーゼ」とは、特定の化学反応及び生体反応を触媒することに関与するタンパク質分子又はタンパク質分子の凝集体を指す。一般に、本出願の方法、組成物又はキットは、特定の供給源からの特定のトランスポザーゼ、逆転写酵素又は核酸ポリメラーゼの使用に制限されない。むしろ、本出願の方法、組成物又はキットは、本明細書で開示される特定の方法、組成物又はキットの特定の酵素と同等の酵素活性を有する任意の供給源からの任意のトランスポザーゼ、逆転写酵素又は核酸ポリメラーゼを含み得る。さらに、本出願の方法はまた、以下の実施形態を含む:方法のステップにおいて提供され、使用される任意の1種の特定の酵素が、2種又はそれより多い酵素の組合せによって置き換えられ、別個に段階的に、又は同時に一緒に使用されるかに関わらず、2種又はそれより多い酵素が組み合わせて使用される場合に、反応混合物が、その特定の酵素を使用して得られるであろうものと同一の結果物をもたらす。実施例におけるものを含む本明細書で提供される方法、緩衝液及び反応条件は、本出願の方法、組成物及びキットの実施形態にとって現在好ましい。しかし、本出願の酵素の一部のために他の酵素保存緩衝液、反応緩衝液及び反応条件が使用される場合があり、当技術分野で公知であり、本出願における使用に適している場合があり、本明細書に含まれる。
【0187】
[本出願の有益な効果]
本出願は、標識された核酸分子集団を生成する新規方法、並びに本方法に基づいて核酸分子ライブラリーを構築し、及び高処理量シーケンシングを実施し、それによって、試料の高精度の細胞内レベル空間的位置決めを達成する方法を提供する。本出願の方法は、以下から選択される1つ又は複数の有益な技術効果を有する:
【0188】
(1)空間的トランスクリプトームシーケンシングのために使用される伝統的な核酸アレイ(例えば、チップ)のプローブは、固定された捕捉配列を含む。普通、特異的捕捉配列は、それに対応する特異的標的核酸分子のみを捕捉できる。例えば、捕捉配列がポリ(T)である場合には、対応して、ポリ(A)を含む標的核酸分子を捕捉する。標的核酸分子が変化する場合には、捕捉配列を含むプローブ配列は、それに合うように変更される必要がある、すなわち、核酸アレイ(例えば、チップ)全体が変更される必要があり、これは、実際的な適用では費用がかかり、非効率的である。本出願の核酸アレイ(例えば、チップ)は、捕捉配列を含まず、捕捉配列は、核酸アレイとは独立している逆転写プライマーに存在する(すなわち、捕捉配列及びプローブは、互いに独立している)。捕捉配列が標的核酸分子を捕捉した後、それは架橋オリゴヌクレオチドを介してプローブとライゲートする。
【0189】
したがって、本出願は、プローブ配列を変更することなく(すなわち、核酸アレイ(例えば、チップ)を変更することなく)、異なる標的核酸分子の対応する捕捉配列を設計し、捕捉配列及び架橋オリゴヌクレオチドを変更することによって異なる標的核酸分子の捕捉を達成できる。
【0190】
(2)伝統的な空間的トランスクリプトーム方法はすべて、ポリ(T)を捕捉配列として使用し、ポリ(A)テールを有さないRNAを捕捉できないが、一方で本出願は、捕捉配列のポリ(T)を連続ランダム配列群(例えば、ランダムプライマー配列、例えば、N6、N8等)と置き換えることによってポリ(A)テールを有さない標的核酸分子の捕捉を達成でき、連続ランダム配列群はまた、同時に固有の分子識別子(UMI)配列としても働くことができる。
【0191】
(3)空間的トランスクリプトームシーケンシングのために使用される伝統的な核酸アレイ(例えば、チップ)は、固定された捕捉プローブを有する。一般に、組織透過処理がまず実施されて、細胞内RNAを放出する。透過処理が過剰である場合には、RNAは、隣接する細胞に、組織試料の末梢にさえ広がり、プローブによって捕捉され、mRNAのインサイツ捕捉を達成することが不可能になる。透過処理が不完全である場合には、mRNAの捕捉効率が影響を受ける。本出願の方法を用いた場合、核酸アレイ(例えば、チップ)は、捕捉配列を含まず(核酸アレイは、空間情報を含み、捕捉配列を含まない)、組織透過処理の目的は、強い透過処理試薬処理を必要とすることなく、それによって、試料の広がりを低減しながら、逆転写プライマーが細胞に侵入し、mRNAとインサイツでハイブリダイズすることを可能にすることである。
【0192】
本出願の好ましい実施形態は、添付の図面及び実施例と併せて以下に詳述されるが、当業者は以下の図面及び実施例は、単に本出願を例示するために使用されるのであって、本出願の範囲を制限するものではないということを理解するであろう。本出願の種々の目的及び有利な態様は、添付の図面及び以下の好ましい実施形態の詳細な説明から当業者に明らかとなろう。
【実施例
【0193】
本出願を、ここで、本出願を(制限するものではなく)例示することを意図する以下の実施例を参照して説明する。特に断りのない限り、実施例において記載される実験及び方法は、本質的に、当技術分野で周知の、種々の参照文献に記載される従来法に従って実施された。さらに、実施例において具体的な条件が指定されない場合には、従来条件又は製造業者によって推奨される条件に従うべきである。使用される試薬又は機器の製造業者が明記されなかった場合には、それらはすべて、商業的に購入することができる従来の製品であった。当業者は、実施例は、本出願を例として説明するものであって、本出願によって保護されようとする範囲を限定しようとするものではないということは理解するであろう。本明細書で言及されたすべての刊行物及び他の参照文献は、その全文で参照により組み込まれる。
【0194】
配列情報
【0195】
本出願に含まれる配列のうちの一部についての情報は、以下の表1に提供される。
【表1】
【0196】
実施例1:捕捉チップの調製
1.チップの位置情報を含むDNAライブラリー分子の配列を設計し、これは、5’から3’に、コンセンサス配列X1(X1)、タグ配列(Y)及びコンセンサス配列X2(X2)から構成されていた。DNAライブラリー分子の通常のヌクレオチド配列は、配列番号1に示した。DNAライブラリー分子を合成するためにBeijing Liuhe BGI Co., Ltd.に委託した。
【0197】
2.ライブラリー分子の増幅及びローディング
(1)DNBSEQシーケンシングキット(MGIから購入、カタログ番号1000019840)を使用して、DNAナノボール(DNB)を調製した。具体的な実施形態を手短に以下に記載した。
【0198】
手短には、40μLの表2に示されるような反応系を調製した。反応系をPCR装置に入れ、以下の反応条件に従って反応を実施した:95℃で3分間、40℃で3分間。反応が完了した後、反応産物を氷上に置き、40μLの混合酵素I、2μLの混合酵素II(DNBSEQシーケンシングキットからの)、1μLのATP(100mMの保存溶液、サーモフィッシャーから入手)及び0.1μLのT4リガーゼ(NEBから入手、カタログ番号: M0202S)を添加した。ウェルを混合した後、上記の反応系をPCR装置に入れ、30℃で20分間反応させて、DNBを生成した。
【0199】
【表2】
【0200】
(2)その後、SEQ500 SE50キットセット(MGIから購入、1000012551)を使用して、DNBをSEQ500 シーケンシングチップ(MGIから購入)にロードした。
【0201】
シーケンシングチップにおいて、PE50シーケンシングキット(MGIから購入、1000012554)のMDA試薬を添加し、37℃で30分間インキュベートし、次いで、チップを5X SSCで洗浄した。
【0202】
(3)チップの表面を、N3-PEG3500-NHS(sigmaから購入した修飾試薬、カタログ番号:JKA5086)を用いて修飾した。30分インキュベートした後、それにチップ配列合成のためのDBCO修飾プライマー(配列は配列番号3で示された)を注入し、室温で一晩インキュベートした。
【0203】
3.位置配列情報のシーケンシング及び解読:シーケンシングを、BGISEQ500 SE50 シーケンシングキットの使用説明書に従って実施し、SEリードの長さを25bpと設定した。シーケンシングによって生成されたfqファイルを後の使用のために保存した。
【0204】
4.チップ配列のコンセンサス配列X2(配列番号5)の伸長:上記のステップ3に基づいて、13塩基のcPAS反応を継続して、チップ配列を得た(コンセンサス配列X1(配列番号4)、タグ配列Y及びコンセンサス配列X2(配列番号5)から構成される、配列番号8)。
【0205】
5.チップ切断:調製したチップを、いくつかの小片に切断した。小片のサイズは、実験上の必要性に従って調整した。チップは、後の使用のために4℃のpH8.0の50mMのtris緩衝液に浸漬した。
【0206】
実施例2:cDNAのインサイツ合成
1.cDNAの合成
マウス組織切片を、凍結切片の標準法に従って調製し、凍結切片を実施例1で調製したチップに取り付けた。凍結メタノールを用いて30分間固定した後、0.5%triton x-100を使用して組織を透過処理した。5X SSCを使用して、チップを室温で2回洗浄し、200μLの、表3に示されるような逆転写酵素反応系を調製し、反応溶液をチップにそれを完全に覆うように添加して、反応を42℃で90~180分間実施した。cDNAの合成を、鋳型としてmRNA及びポリT含有プライマー(配列は、配列番号6に示され、コンセンサス配列A(CA)、UMI配列及びポリT配列から構成された)を使用して逆転写酵素によって実施し、cDNA鎖の3’-末端にCCCオーバーハングを付加した。TSO配列(コンセンサス配列B(CB)及びGGGオーバーハングから構成された配列番号7)の、cDNA鎖とのハイブリダイゼーション及びアニーリング(TSO配列の末端のGGGとcDNA鎖のCCCオーバーハングの間の相補的対形成を介した)後、コンセンサス配列Bを鋳型として使用して逆転写酵素によってcDNA鎖を継続的に伸長し、その結果、cDNAの3’-末端をc(CB)タグ(コンセンサス配列Bの相補配列)を用いて標識した。
【0207】
【表3】
【0208】
合成されたcDNA鎖は、以下の配列から構成されていた:逆転写プライマー配列(配列番号6)-cDNA配列-c(TSO)配列(配列番号7の相補配列)。
【0209】
2.シーケンシングチップのチップ配列のcDNAとのライゲーション
cDNA合成後、チップを5X SSCで2回洗浄し、1mLの、表4に示されるような反応系を調製し、その適切な容積をチップに注入して、チップが以下のライゲーション反応溶液で満たされることを確実にし、反応を室温で30分間実施した。
【0210】
上記の反応によって、cDNA配列の5’-末端をシングルセルシーケンシングチップ配列の3’-末端とライゲートして(すなわち、cDNA配列の5’-末端を、チップ配列で標識した)、位置情報(すなわち、タグ配列Y)を含む新規核酸分子を得、これは、以下の配列構造から構成されていた:チップ配列(配列番号8)-逆転写プライマー配列(配列番号6)-cDNA配列-c(TSO)配列(配列番号7の相補配列)。
【0211】
反応が完了した後、チップを5X SSCで洗浄した。200μLのBst重合反応溶液(NEB、M0275S)を使用説明書に従って調製し、チップに注入し、65℃で60分間反応させて、位置情報を有する一本鎖核酸分子を得た。
【0212】
【表4】
【0213】
3.cDNAの放出
75μLの80mM KOHを使用してチップを室温で5分間インキュベートした。液体を収集した後、10μLの、1M、pH8.0のTris-HClを添加して、cDNA回収溶液を中和した。
【0214】
4.cDNAの増幅
200μLの、表5に示されるような反応系を調製し、それぞれ、3’トランスクリプトームシーケンシング及びライブラリー構築のために使用し、PCRのために2つのチューブに分けた:
【0215】
【表5】
【0216】
上記の反応系をPCR装置に入れ、反応プログラムを以下のとおりに設定した:95℃で3分間、11サイクル(98℃で20秒間、58℃で20秒間、72℃で3分間)、72℃で5分間、4℃で∞。反応が完了した後、XPビーズ(AMPureから購入)を磁性ビーズベースの精製及び回収のために使用した。dsDNA濃度をQubit機器を使用して定量化し、2100バイオアナライザー(Agilentから購入)を使用して、cDNA増幅産物の長さ分布を検出した。検出結果は図6に示された。
【0217】
実施例3:cDNAのライブラリー構築及びシーケンシング
1.Tn5断片化
cDNA濃度に従って、20ngのcDNA(実施例2のステップ4で得られた)を取り出し、0.5μMのTn5トランスポザーゼ及び対応する緩衝液(BGIから購入、カタログ番号:10000028493、Tn5トランスポザーゼのコーティングは、Stereomicsライブラリー調製キット-S1の使用説明書に従って操作した)を添加し、十分に混合して、20μLの反応系を得、反応を55℃で10分間実施し、次いで、5μLの0.1%SDSを添加し、室温で5分間十分に混合して、Tn5転位を終結させた。
【0218】
2.PCR増幅
100μLの以下の反応系を調製した:
【表6】
【0219】
混合後、PCR装置に入れ、以下のプログラムを以下のとおりに設定した:95℃で3分間、11サイクル(98℃で20秒間、58℃で20秒間、72℃で3分間)、72℃で5分間、4℃∞。反応が完了した後、XPビーズを磁性ビーズベースの精製及び回収のために使用した。dsDNA濃度をQubit機器を使用して定量化した。
【0220】
3.シーケンシング
80fmolの上記の断片化された増幅産物を取り出して、DNBを調製した。40μLの反応系を以下のとおりに調製した:
【表7】
【0221】
上記の反応容積を反応のためにPCR装置に入れ、反応条件を以下のとおりとした:95℃で3分間、40℃で3分間。反応が完了した後、得られた反応溶液を氷上に置き、DNBSEQシーケンシングキットのDNB調製に必要な40μLの混合酵素I、2μLの混合酵素II、1μLのATP及び0.1μLのT4リガーゼを添加した。混合後、上記の反応系をPCR装置に入れ、30℃で20分間反応させてDNBを形成した。
【0222】
MGISEQ 2000をサポートするPE50キットに記載される方法に従って、DNBをMGISEQ2000のシーケンシングチップにロードし、関連使用説明書に従ってシーケンシングを実施した。PE50シーケンシングモデルを選択し、これでは、第1鎖のシーケンシングがシーケンシングの2つのセクションに分けられ、25bpを最初に測定し、次いで、15サイクルの暗所反応を行い、次いで、10bpのUMI配列を測定し、第2鎖シーケンシングを設定して、50bpを測定した。
【0223】
実施例4:データの分析
アラインメントによって、cDNAシーケンシングによって得られた第1鎖の25bp配列をチップの位置決め配列のfq(実施例1におけるシーケンシング結果)とマッチングし、その後の分析のために2つのシーケンシングにおける25bpのマッチングリードを抽出した。2つのシーケンシングにおける25bpのマッチングリードについて、その第2鎖を分析し、第2鎖の配列をマウスゲノムとアラインして、固有のマッピングリードを抽出した。
【0224】
固有のマッピングリードをチップの空間的位置にマッピングして、図7に示されるようなマウス脳遺伝子発現マップを得、図7がDNBレベル(すなわち、ナノメートルレベル)の分解能に拡大される場合には(図8)、組織試料の単細胞の明らかな凝集があることを見出すことができ、これは、本出願の方法がRNAの拡散を低減し、空間的トランスクリプトームの検出を可能にし、ナノメートルレベルの分解能に到達したことを示した。
【0225】
40,000のDNBあたりの捕捉された遺伝子及びUMIの平均数に関する統計値は、平均ほぼ4,000の遺伝子及び10,000のmRNA分子を捕捉できたことを示し、これは、本出願の方法は、下流分析のために十分な数の遺伝子及びmRNA分子を捕捉できたことを示す。
【0226】
本出願の特定の実施形態が詳細に記載されているが、当業者は、開示されたすべての技術に基づいて詳細に、種々の改変及び変更を行うことができ、これらの変更はすべて本出願の保護範囲内であることを理解するであろう。本出願の全範囲は、添付の特許請求の範囲及び任意のその均等物によって与えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024545709000001.app
【国際調査報告】