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特表2024-545713光学ユニットの傾きを調整するための調整装置、及び光学システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】光学ユニットの傾きを調整するための調整装置、及び光学システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20241203BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20241203BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20241203BHJP
【FI】
G02B7/00 A
G02B7/00 B
G02B7/02 C
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G03B30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538331
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022083458
(87)【国際公開番号】W WO2023117309
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021134583.9
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597114889
【氏名又は名称】ライカ カメラ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ザイター, カイ
【テーマコード(参考)】
2H043
2H044
【Fターム(参考)】
2H043AA03
2H043AA20
2H043AA25
2H043AB02
2H043AB04
2H043AB10
2H043AB19
2H044AA16
2H044AA18
2H044AC01
2H044AJ04
(57)【要約】
光学部品の傾きを調整するための本発明に係る調整装置は、ベース要素、上記光学部品を支持するよう構成されたホルダ、及び上記ベース要素と上記ホルダとの間に配置された環状の調整要素を有しており、上記ベース要素、上記調整要素、及び上記ホルダは光軸に沿って配置されており、上記ホルダは、傾斜可能なように且つ半径方向に誘導されるように上記ベース要素に支持されており、上記調整要素は、上記光軸について上記ベース要素及び上記ホルダに対して半径方向に変位可能であり、上記ベース要素及び上記ホルダと協働することで、上記調整要素が半径方向に変位して上記ホルダを傾斜させる。上記光学部品としては、例えば、レンズ、ミラー、回折光学素子、ダイヤフラム、又は複数の類似の又は異なる光学素子を有するアセンブリ等の光学素子が挙げられる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品(60)の傾きを調整するための調整装置(20)であって、
ベース要素(22)、
上記光学部品(60)を支持するよう構成されたホルダ(26)、及び
上記ベース要素(22)と上記ホルダ(26)との間に配置された環状の調整要素(24)
を有しており、
上記ベース要素(22)、上記調整要素(24)、及び上記ホルダ(26)は光軸(A)に沿って配置されており、
上記ホルダ(26)は、傾斜可能なように且つ半径方向に誘導されるように上記ベース要素(22)に支持されており、
上記調整要素(24)は、上記光軸(A)について上記ベース要素(22)及び上記ホルダ(26)に対して半径方向に変位可能であり、上記ベース要素(22)及び上記ホルダ(26)と協働することで、上記調整要素(24)が半径方向に変位して上記ホルダ(26)を傾斜させる、調整装置(20)。
【請求項2】
上記ホルダ(26)は第1の接触部(28.1)を有し、上記調整要素(24)は第2及び第3の接触部(28.2、28.3)を有し、上記ベース要素(22)は第4の接触部(28.4)を有しており、上記第1及び第2の接触部(28.1、28.2)は協働して環状の第1の摺動面(30.1)を画定し、上記第3及び第4の接触部(28.3、28.4)は協働して環状の第2の摺動面(30.2)を画定し、
上記第1及び第2の摺動面(30.1、30.2)は、半径方向について互いに斜めに延在していることを特徴とする、請求項1に記載の調整装置(20)。
【請求項3】
上記第1の摺動面(30.1)及び上記第2の摺動面(30.2)は、互いに2°~30°、好ましくは5°~15°の角度(β)で延在していることを特徴とする、請求項2に記載の調整装置(20)。
【請求項4】
上記接触部(28.1~28.4)及び/又は上記摺動面(30.1、30.2)は、それぞれの回転面で形成されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の調整装置(20)。
【請求項5】
上記第1及び第2の接触部(28.1、28.2)の少なくとも一方は接触面として構成され、当該接触面と協働する他方の接触部(28.1、28.2)は別の接触面又は接触端として構成され、且つ/又は
上記第3及び第4の接触部(28.3、28.4)の少なくとも一方は接触面として構成され、当該接触面と協働する他方の接触部(28.3、28.4)は別の接触面又は接触端として構成されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の調整装置(20)。
【請求項6】
上記摺動面(30.1、30.2)の一方は平面であるか又は円錐部分で形成されており、他方の摺動面(30.1、30.2)は球状部分又は円錐部分、特に別の円錐部分で形成されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の調整装置(20)。
【請求項7】
上記調整要素(24)は周辺側にねじ山形(34.1)を有しており、該ねじ山形(34.1)は、上記ホルダ(26)の周辺側に設けられた相補的なねじ山形(34.2)と協働し、上記第1及び第2の接触部(28.1、28.2)は、それぞれのねじ山形(34.1、34.2)の協働するフランク部で形成されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の調整装置(20)。
【請求項8】
上記ホルダ(26)は、遊びが無い状態で又は半径方向の遊び、好ましくは設定可能な半径方向の遊びがある状態で上記ベース要素(22)に支持されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の調整装置(20)。
【請求項9】
上記ベース要素(22)は、軸方向に突出したカラー部(36)を有しており、該カラー部(36)は、上記調整要素(24)及び上記ホルダ(26)用の収容スペース(48)の境界を定めていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の調整装置(20)。
【請求項10】
上記調整要素(24)は半径方向に変位可能なように上記収容スペース(48)内で支持されており、上記調整要素(24)は一揃いの、好ましくは3つ又は4つの調整用要素(32)を割り当てられており、該調整用要素(32)は、上記調整要素(24)と上記カラー部(36)又は上記ホルダ(26)との間で半径方向に作用するとともに、上記調整要素(24)を変位させ且つ/又は固定するよう構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の調整装置(20)。
【請求項11】
上記ホルダ(26)は半径方向に変位可能なように上記収容スペース(48)内で支持されており、上記ホルダ(26)はそれぞれの一揃いの、好ましくは3つ又は4つの半径方向に作用する調整用要素(33)を割り当てられており、該調整用要素(33)は、上記カラー部(36)に配置されているとともに、上記ホルダ(26)を変位させ且つ/又は上記収容スペース(48)内に固定するよう構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の調整装置(20)。
【請求項12】
上記カラー部(36)はその内周部に凸アーチ状の壁部(38)を有しており、該壁部(38)は、上記ホルダ(26)の外周部に設けられた壁部(40)、好ましくは円筒状の壁部(40)と協働することを特徴とする、請求項9に記載の調整装置(20)。
【請求項13】
上記ホルダ(26)は、軸方向に作用する接触力(F)、好ましくは可変の接触力(F)によって上記ベース要素(22)に固定されており、好ましくは上記接触力(F)は、少なくとも1つのばね要素(42、52)を介して伝達され、且つ/又は少なくとも1つのねじ要素(44)又はクランプリング(52)によって発生することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の調整装置(20)。
【請求項14】
上記ベース要素(22)は別の光学部品(62)を支持するよう構成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の調整装置(20)。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか1項に記載の調整装置(20)と、上記調整装置(20)の上記ホルダ(26)内に固定された光学部品(60)とを有する光学システム(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品の傾きを調整するための調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学システムは複数の光学アセンブリ又は光学素子を有することが多く、それらのお互いの又はより上位の光学システムの光軸について相対的な位置及び/又は相対的な向きを調整して、光学システムの光学特性を最適化する必要がある。調整対象であるこれらの位置パラメータの1つとして、別の光学部品又はシステムの光軸に対する光学部品又は光学アセンブリの傾きが挙げられる。光学部品の傾きとは、特に、光軸と垂直な平面内に延在する旋回軸を中心とした当該光学部品の旋回であると理解され、この平面内における旋回軸の向き又は方位角は通常、所望の通りに選択できる。考えられる全ての旋回軸の交点は通常、光軸と一致するものであり、ピボット点ともいう。
【0003】
傾きを狙い通りに調整するためには、上記ピボット点を光学部品の中心又は少なくともその近くに配置することが望ましい。そうでない場合、光学部品が傾斜すると当該光学部品の他の位置パラメータ、例えば光軸についての軸方向の位置及び/又は半径方向の位置も変化する可能性がある。
【0004】
従来の解決手段は上記欠点を有するものが多かった。例えば、光学部品がホルダ内に支持されており、該ホルダは、軸方向に延在する3つ又は4つの調整ねじでベース要素に支持されている調整装置が一般に知られており、ベース要素とホルダとの間には圧縮ばねを設けることができる。個々の調整ねじを狙い通りに回転させることで傾斜角を変化させることができるが、調整が対称的に行われない場合、ベース要素についてのホルダの軸方向の位置も変化する可能性がある。調整ねじは軸方向からしかアクセスできないので、調整プロセスもより困難なものとなる。
【0005】
US4614403Aより、ベース要素にホルダを適切に支持することでピボット点の位置を実際に所望した通りに規定できる調整装置が知られている。しかしながら、軸方向に延在する4つの調整ねじを用いて傾きの設定が更に行われる。
【0006】
US2005/0280908A1には、光学部品のホルダをベース要素の平面上に載置する解決手段が記載されている。互いに対向する表面はくぼみと膨らみを有しており、膨らみが相補的なくぼみに係合する場合にのみ、傾きなくホルダをベース要素に取り付けることができる。この場合、実際に傾きを調整することはできない。
【0007】
US3787108Aには、2つのくさび形要素を用いて光学アセンブリ用のホルダをベース要素に固定できる調整装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、光学部品の傾き調整を精密且つ容易に実施できる光学調整装置を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、請求項1の特徴を有する調整装置によって達成される。調整装置の有利な実施形態を従属項に記載する。
【0010】
光学部品の傾きを調整するための本発明に係る調整装置は、ベース要素、上記光学部品を支持するよう構成されたホルダ、及び上記ベース要素と上記ホルダとの間に配置された環状の調整要素を有しており、上記ベース要素、上記調整要素、及び上記ホルダは光軸に沿って配置されており、上記ホルダは、傾斜可能なように且つ半径方向に誘導されるように上記ベース要素に支持されており、上記調整要素は、上記光軸について上記ベース要素及び上記ホルダに対して半径方向に変位可能であり、上記ベース要素及び上記ホルダと協働することで、上記調整要素が半径方向に変位して上記ホルダを傾斜させる。上記光学部品としては、例えば、レンズ、ミラー、回折光学素子、ダイヤフラム、又は複数の類似の又は異なる光学素子を有するアセンブリ等の光学素子が挙げられる。傾きの調整とは、特に、光学部品の光軸と、光学部品及び調整装置を有するより上位の光学システムの光軸との間の傾斜の角度又は傾斜角を調整することと理解される。傾斜とは、この傾斜角を特定の方位方向へ変化させることと理解される。環状の調整要素は、好ましくは円環形状を有する調整要素であるものの、調整要素が楕円環形状等の異なる形状も有することを除外するものではない。光学部品を支持するホルダは、光学部品をホルダにしっかりと接続する又は固定する手段を有していてもよい。調整装置は、調整要素を正確に1つだけ有することが好ましい。
【0011】
本発明に係る調整装置では、調整動作がホルダへ伝達されると、調整要素がベース要素に対して半径方向に変位する、すなわち光軸に対して略垂直に変位することで、ベース要素に対してホルダが傾斜する。しかしながら、ホルダは、ベース要素においてホルダが半径方向に誘導されて同様に変位することはない。傾斜動作を可能にするために、ベース要素に対するホルダのいくらかの軸方向の遊びが許容され得る。光軸と垂直に延在する平面内で調整要素が変位する方向によって傾きの方位角が決まり、一方、傾斜角は変位量に起因する。
【0012】
好ましい一実施形態によれば、上記ホルダは第1の接触部を有し、上記調整要素は第2及び第3の接触部を有し、上記ベース要素は第4の接触部を有しており、上記第1及び第2の接触部は協働して環状の第1の摺動面を画定し、上記第3及び第4の接触部は協働して環状の第2の摺動面を画定し、上記第1及び第2の摺動面は、半径方向について互いに斜めに延在している。従って、第1の摺動面はホルダと調整要素との接触面を画定し、第2の摺動面は調整要素とベース要素との接触面を画定する。そのため、調整要素が変位する際、調整要素とホルダとの間及び調整要素とベース要素との間で摺動が起こる。言うなれば、互いに斜めに延在している摺動面は環状のくさびを画定しており、調整要素はこのようなくさび形を有していてもよいが、以下で詳述する通り、必須ではない。第1の摺動面及び第2の摺動面は、互いに2°~30°、好ましくは5°~15°の角度で延在することが好ましい。そのような目的で、例えば、調整要素を200μm変位させると、ホルダの数分の傾きが達成できる。2つの摺動面の間に挟まれた角の先端は光軸に面していることが好ましいが、先端が逆方向、すなわち光軸から離れる方に面していることを除外するものではない。ベース要素に対してホルダが半径方向に誘導されるため、調整要素が半径方向に変位する際、軸方向におけるベース要素とホルダとの距離が一方の側では小さくなり、直径方向反対側では大きくなる。このように距離が変化することで、ベース要素に対するホルダの傾斜が可能となるか又はこのような傾斜が引き起こされるが、傾斜軸は通常、調整要素の変位方向と垂直に延在する。
【0013】
別の実施形態によれば、上記接触部及び/又は上記摺動面は、光軸を中心にして平面曲線を回転させて生成できることが好ましいそれぞれの回転面で形成される。従って、接触部又は摺動面は、現実又は仮想回転体の境界面を表す。調整要素は、例えば、少なくとも部分的にくさび形である断面を回転させて生成できる。光軸に対する回転対称とは、調整装置の全構成要素の対称軸が光軸と一致する、ホルダ又は調整要素の基本位置を指すことを理解されたい。
【0014】
有利な一実施形態によれば、第1及び第2の接触部の少なくとも一方は接触面として構成され、当該接触面と協働する他方の接触部は別の接触面又は接触端として構成されている。それに代わり又は加えて、第3及び第4の接触部の少なくとも一方は接触面として構成され、当該接触面と協働する他方の接触部は別の接触面又は接触端として構成されている。言い換えると、協働する2つの接触部のうち、少なくとも一方が接触面として構成され、他方が同様に接触面として又は好ましくはリング状に周回する接触端として構成されている。調整要素を調整する際、2つの接触面同士又は1つの接触面と1つの接触端とがそれぞれの摺動面に沿って相互に摺動する。接触端は、概ねリングであると考えられ得る接触部の接触領域として、すなわち周辺線として理解されるべきであり、当業者であれば、該接触線又は接触端の半径方向の範囲は必ずしもゼロでなくてもよく、例えば対応する接触端の膨らみにより、限られた半径方向の範囲を有していてもよいことが理解できるであろう。
【0015】
別の好ましい一実施形態によれば、摺動面の一方は平面であるか又は円錐部分で形成されており、他方の摺動面は球状部分又は円錐部分、特に別の円錐部分で形成されている。いずれの変形例でもホルダを傾斜させることができ、他方の摺動面を球状部分として設計すると、傾斜時に円形の軌跡に沿ってホルダを誘導でき、傾斜動作の軌跡の幾何学的形状を容易に決定できる。第1の摺動面と第2の摺動面とが互いに対して延在する角度は、特に、平面状である一方の摺動面と、ホルダの中立位置において、球状部分又は円錐部分として形成された他方の摺動面の光軸からの平均距離で規定される他方の摺動面の中心を通って延在する接線との間で形成される。
【0016】
別の好ましい一実施形態によれば、調整要素は周辺側にねじ山形を有しており、該ねじ山形は、ホルダの周辺側に設けられた相補的なねじ山形と協働し、第1及び第2の接触部は、それぞれのねじ山形の協働するフランク部で形成されている。ねじ山形の間に半径方向の遊びがあることで、調整要素の本発明に係る変位が保証されることが好ましい。従って、第1及び第2の接触部又は第1の摺動面は、1つ又は好ましくは複数のねじピッチにわたってらせん状に延在している。更に、2つの相互に相補的なねじ山形で画定されたねじ山により、ホルダ内に収容された光学部品を軸方向に調整できる。
【0017】
別の好ましい一実施形態によれば、ホルダは、遊びが無い状態で又は半径方向の遊び、好ましくは設定可能な半径方向の遊びがある状態でベース要素に支持されている。ベース要素にホルダを支持する設計によっては、ベース要素に対してホルダを傾斜させるのにいくらかの半径方向の遊びが必要となるかもしれない。設定可能な半径方向の遊びの場合、半径方向の遊びは傾斜位置に応じて必要なレベルに制限することができる。
【0018】
別の有利な一実施形態によれば、ベース要素は、軸方向に突出したカラー部を有しており、該カラー部は調整要素及びホルダ用の収容スペースの境界を定めている。言うなれば、カラー部は、調整要素及びホルダが配置される収容スペース又は空洞を画定する。特に、カラー部は、場合によっては別の誘導要素と協働して、半径方向へ誘導することもできる。
【0019】
これに関連して、調整要素が半径方向に変位可能なように収容スペース内で支持されており、調整要素は一揃いの、好ましくは3つ又は4つの調整用要素を割り当てられており、該調整用要素は、調整要素とカラー部又はホルダとの間で半径方向に作用するとともに、調整要素を変位させ且つ/又は固定するよう構成されていることが好ましい。上記調整用要素は、例えば、調整ねじ又はねじピンであってもよい。例えば、これらの調整ねじをカラー部にねじ込み、半径方向内側に向かうそれぞれの部分が調整要素に作用してもよい。あるいは、調整ねじ又はねじピンを調整要素にねじ込み、それぞれの半径方向内側に向かう部分でホルダに作用することもできる。後者の場合、調整用要素を調整するための作動ツールへのアクセスを提供する対応する穴をカラー部に設けてもよい。
【0020】
別の好ましい一実施形態によれば、ホルダは半径方向に変位可能なように収容スペース内で支持されており、ホルダはそれぞれの一揃いの、好ましくは3つ又は4つの半径方向に作用する調整用要素を割り当てられており、該調整用要素は、カラー部に配置されているとともに、ホルダを変位させ且つ/又は収容スペース内に固定するよう構成されている。ホルダに割り当てられた調整用要素は、調整要素に割り当てられた調整用要素とは根本的に異なるものであり、ホルダの固定又は変位のために設けられた調整用要素は、調整ねじ又はねじピンで形成することもできる。半径方向に変位できることで、光学部品は、その傾きに加えて、ベース要素に対するその半径方向の位置について設定することもでき、半径方向の位置及び傾きは、実質的に互いに独立して設定できることが好ましい。
【0021】
別の好ましい一実施形態によれば、カラー部はその内周部に凸アーチ状の壁部を有しており、該壁部は、ホルダの外周部に設けられた壁部、好ましくは円筒状の壁部と協働する。これにより、ベース要素内でホルダを半径方向に誘導でき、光軸と垂直に延在する所望の傾斜軸を中心とした傾斜動作も同時に可能となる。
【0022】
別の好ましい一実施形態によれば、ホルダはその外周部に凸アーチ状の壁部を有している。それに代わり又は加えて、カラー部はその内周部に凹アーチ状の壁部を有している。これにより、ホルダ又はカラーを球状部分として設計することで、規定した通りにホルダの傾斜動作を誘導できる。いずれの壁部もアーチ状である場合、互いに相補的なアーチ状であること、すなわち、いずれの場合もほぼ同じ曲率半径であることが好ましい。一方の壁部のみがアーチ状である場合、反対側の周辺部、すなわち内周部又は外周部には、すべり軸受装置、玉軸受装置、又はころ軸受装置が設けられてもよい。これにより、傾斜時に生じる摩擦を低減できる。
【0023】
別の好ましい一実施形態によれば、ホルダは、軸方向に作用する接触力、好ましくは可変の接触力によってベース要素に固定されており、好ましくは接触力は、少なくとも1つのばね要素を介して伝達され、且つ/又は少なくとも1つのねじ要素又はクランプリングによって発生する。言うなれば、接触力によってホルダとベース要素との間で調整要素をクランプし、それぞれの協働する接触部が調整要素の変位時に常に接触しているようにできる。接触力が可変である場合、調整プロセスでは接触力を弱め、調整が済めば再び強めることで、望ましくない位置ずれを防止できる。接触力は、例えば、ウェーブばね、板ばね、圧縮ばね、又は弾性要素等のばね要素によって伝達でき、環状ねじ接続や個々のねじ等の1つ以上のねじ要素又はクランプリングを介してあるいは別の方法でホルダをベース要素に実際に固定できる。原理的には、接触力を印加するために別の外力を発生させたり、重力を付与したりしてもよい。
【0024】
別の好ましい一実施形態によれば、ベース要素は別の光学部品を支持するよう構成されている。すなわち、ベース要素は、別の光学素子又は光学部材を支持又は固定するために設けられた別のホルダの機能を有する。
【0025】
第2の態様において、本発明は更に、本発明の一実施形態又は好ましい一実施形態に係る調整装置と、該調整装置のホルダ内に固定された光学部品とを有する光学システムに関する。
【0026】
従属請求項、本明細書、及び図面から本発明の別の有利な実施形態を得ることができ、本発明の各種態様は、記載されたもの以外の方法で互いに組み合わせることもできる。
【0027】
実施形態及び図面を参照して、本発明を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施形態に係る調整装置を有する光学システムの部分斜視断面図である。
図2図1の光学システムの断面図である。
図3】各種調整位置における別の一実施形態に係る調整装置を有する光学システムの断面図である。
図4】別の実施形態に係る調整装置を有する別の光学システムの詳細な断面図である。
図5】別の実施形態に係る調整装置を有する光学システムの詳細な斜視断面図である。
図6】別の実施形態に係る調整装置を有する光学システムの詳細な斜視断面図である。
図7】別の実施形態に係る調整装置を有する光学システムの詳細な斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、同一又は類似の要素には同じ参照番号を付している。
【0030】
図1及び図2は、一実施形態に係る調整装置20を有する光学システム10を示す。
【0031】
調整装置20は、ベース要素22、ホルダ26、及びベース要素22とホルダ26との間に配置された調整要素24を有する。本実施形態において、ベース要素22、調整要素24、及びホルダ26は、それらの基本構造について円環形状に又は回転体として形成されている。
【0032】
ホルダ26は第1の光学部品60を支持し、ベース要素22は第2の光学部品62を支持しており、本実施形態において、光学部品60及び62は個々のレンズとして構成されている。一般には、回折光学素子、ミラー光学部品等の他の光学部品や、類似の又は異なる光学部品を有するアセンブリも、ベース要素22及び/又はホルダ26に保持できる。光学部品60、62とベース要素22又はホルダ26との接続は、適切な手段、例えば接着、ねじ留め、クランプ等の固定技術によって実行できる。
【0033】
ベース要素22、調整要素24、及びホルダ26は光軸Aに沿って配置されており、図1及び図2では、これらが互いに対して基本位置にあり、光軸Aがベース要素22、調整要素24、及びホルダ26の回転対称の対称軸を同時に形成している。
【0034】
ベース要素22は、軸方向に突出したカラー部36を有しており、該カラー部36は、調整要素24及びホルダ26用の収容スペース48の境界を定めている。
【0035】
ベース要素22のカラー部36はその内壁にやや凸アーチ状の壁部38を有しており、該壁部38は、ホルダ26の外周部に設けられた円筒状の壁部40と協働して、ベース要素22内でホルダ26を半径方向に誘導できるとともに、光軸Aと垂直に延在する所望の傾斜軸を中心とした傾斜動作を可能にする。本実施形態において、ホルダ26とベース要素22との間の半径方向の遊びは、ベース要素22内でホルダ26が傾斜できるだけの大きさであるように選択される。
【0036】
それぞれの半径方向外側の周縁領域において、ホルダ26は第1の接触部28.1を有し、調整要素24は第2及び第3の接触部28.2、28.3を有し、ベース要素22は第4の接触部28.4を有しており、第1及び第2の接触部28.1、28.2は協働して環状の第1の摺動面30.1を画定し、第3及び第4の接触部28.3、28.4は協働して環状の第2の摺動面30.2を画定する。
【0037】
第1及び第2の摺動面30.1、30.2は、半径方向について互いに斜めに延在しているため、くさび形のリングを画定しており、図1図3に係る実施形態では調整要素24の形状も同時に画定している。摺動面30.1、30.2で挟まれた鋭角βは、2°~30°の範囲であることが好ましく、5°~15°の範囲であることが特に好ましい。摺動面30.1、30.2の間に挟まれた角βの先端は半径方向内側に面しているが、変形例に応じては半径方向外側に面していてもよい。
【0038】
図1図3に係る実施形態では、全ての接触部28.1~28.4が接触面として構成されている。第1の摺動面30.1は球状部分の形状を有しており、第2の摺動面30.2は光軸と垂直に延在する平面内で平面状に延在している。曲率半径R2が比較的大きいため(図3a参照)、第1の摺動面30.1の曲率は比較的小さいが、ホルダ26がベース要素22に対して傾斜している場合であっても、第1の接触部28.1と第2の接触部28.2との面接触が可能になる。
【0039】
摺動面30.1の曲率がほんのわずかであるため、摺動面30.1、30.2の間に挟まれた角βの仕様は、第1の摺動面30.1のそれぞれの接線又は割線を参照でき、その参照点は、例えば、第1又は第2の接触部28.1、28.2の中心又は縁部によって定義できる。本例の場合、角βは、ホルダ26の中立位置又は中心位置において、第1の摺動面30.1の光軸Aからの平均距離R1で規定される第1の摺動面30.1の中心を通って延在する接線と関係している。また、この平均距離R1は、ホルダ26の半径とみなすこともできる。第1の摺動面30.1の光軸Aからの平均距離R1、第1の摺動面30.1の曲率半径R2、並びに摺動面30.1、30.2の間に挟まれた角βの関係については、以下が当てはまる。
sinβ=R1/R2 (1)
【0040】
曲率半径R2は、ホルダ26の半径又は平均距離R1より2~30倍大きいことが好ましく、4~10倍大きいことが特に好ましい。上記のR2とR1との比が4~10という特に好ましい範囲の場合、等式(1)から、挟角βの角度範囲は四捨五入して5°~15°となる。
【0041】
上記のR1とR2との比から得られる挟角βの角度範囲は、摺動面30.1、30.2がいずれも円錐状又は平面状であるため、曲率半径R2を持たない以下で説明する実施形態にも当てはまる。
【0042】
調整要素24とベース要素22のカラー部36との間には空きスペースが存在し、ベース要素22に対して半径方向に、すなわち光軸を横断するように調整要素24を変位させる又はずらすことができる。このような調整動作又は変位動作を実行するために、複数のねじ穴にそれぞれの調整用要素32が設けられており、本実施形態では、該ねじ穴は、カラー部36の周辺側に設けられているとともに、ねじピンとして構成されている。調整用要素32の一部のみ又は全部を対応するようにねじ込んだり緩めたりすることで、ベース要素22内に画定された収容スペース48内で調整要素24を半径方向に変位させることができる。図1及び図2に係る本実施形態では調整用要素32の数が3つであるが、4つ等の異なる数の調整用要素32を選択してもよい。
【0043】
図3a及び図3bを参照して、調整装置20の動作形態を以下に詳述する。図3a及び図3bは、図3a及び図3bに係る光学システム10はホルダ26内に収容された光学部品60を1つだけ有し、示されたベース要素22は別の光学部品を有していないという点で図1及び図2に係る実施形態とは実質的に異なる別の実施形態に係る調整装置20を有する光学システム10を示す。また、明確にするため、調整用要素32等の各種詳細は図示していない。
【0044】
図3に示す通り、好ましくは設定可能な接触力Fによってホルダ26をベース要素22へと押し付ける。ここで、調整要素24はホルダ26とベース要素22との間にクランプされている。光学部品60の傾きを調整するために、図3bに従って、図の平面内に延在する矢印xで表された変位方向においてベース要素22に対して調整要素24を変位させる。この点において、接触部28.1及び28.2又は28.3及び28.4はそれぞれの摺動面30.1又は30.2に沿って互いに対して摺動する。摺動面30.1、30.2の角度位置により、ホルダ26の左側がベース要素22に対して持ち上げられ、一方、ホルダ26の右側は下げられる。これにより、ホルダ26は光学部品66とともに、図の平面と垂直に延在する旋回又は傾斜軸を中心として傾斜角αだけ時計回りに傾斜動作を行う(曲線矢印で表す)。図の平面と垂直に延在する傾斜軸と光軸A又は図の平面との交点をピボット点Pという。ホルダ26は収容スペース48内で半径方向に固定されているため、光学部品60の向きだけが変化し、光軸Aに対するその横方向又は半径方向の位置は変化しない。
【0045】
ピボット点Pは凸状曲壁部38の頂点の高さに位置しており、光学部品60の中心を通って延在している。ピボット点Pの位置は一般に、設計条件に応じて、凸状曲壁部38の頂点及び/又は光学部品60の中心についてわずかに逸脱していてもよい。
【0046】
傾斜角αに関しては、調整要素24が調整距離dだけ変位する場合、第1の摺動面30.1の曲率半径R2では、少なくともおおよそ以下の関係が当てはまる。
tanα=d/R2 (2)
【0047】
摺動面30.1、30.2がいずれも円錐状又は平面状であるため、曲率半径R2を持たない以下で説明する実施形態の場合、等式(2)において、R2は等式(1)を再整理して導出される項R1/sinβに置き換えることができる。
【0048】
傾きを調整するために、ピボット点を規定する中心が光学部品の中心から離れている円形の軌跡に沿って光学部品を変位させる従来のシステムと異なり、本発明に係る実施形態では、ピボット点Pが光学部品60の中心にはるかに近いか又はそれと同一であるため、光軸Aに沿った光学部品60の相対的な変位が完全に回避されるか又は少なくとも最小限に抑えられる。これにより、光学部品60の傾きを更により精密に調整することができる。
【0049】
再び図1及び図2を参照して、接触力Fを発生させる方法についても説明する。ホルダ26は複数のねじ44によってベース要素22に接続されており、該ねじ44は調整装置20の周辺に沿って配置され、軸方向に延在しており、ウェーブばね42によってねじ44の頭部とホルダ26との間で力の伝達が行われる。周辺のウェーブばね44の代わりに、個々のコイルばね等のばねを設けることもできる。ねじ44は対応する穴46を通って延在しており、該穴46は調整要素24内に設けられ、軸方向に延在しており、その直径は、ねじ44が調整要素24の半径方向の変位又は移動を妨げないような大きさで選択される。ねじ44がベース要素22内へ完全にねじ込まれていない場合、接触力Fが低下し、傾斜させるのに必要なホルダ26の軸方向の可動性が得られる。
【0050】
調整が済めば、ねじ44を締めてウェーブばね42をより強く圧縮でき、最終的にベース要素22、調整要素24、及びホルダ26が圧力ばめで接続され、光学部品26の傾斜が想定外にずれてしまうのを効果的に防止できる。本発明の利点の一つは、ホルダ26を固定するのに必要なねじ44を締めて接触力Fを高めた場合、結果としてホルダ26の軸方向の遊びが減少するため、ホルダ26又は光学部品60の傾斜位置がもはや変化しないか又は少なくともごくわずかにしか変化しないことである。
【0051】
次に図4a~4fを参照して、調整装置20の別の様々な実施形態を説明する。これらの実施形態は、図1~3を参照してこれまでに説明した通り、原理的には接触部28.1~28.4の設計の変形例を表す。
【0052】
図4aに係る実施形態において、接触部28.1~28.4の構成は図1図3に係る実施形態にほぼ対応する。接触部28.1~28.4はいずれも接触面として構成されている。
【0053】
図4bに係る実施形態において、接触部28.3及び28.4の構成は上で説明した実施形態にほぼ対応する。しかしながら、それとは対照的に、第1の接触部28.1は円錐状又はやや球状に湾曲した接触面として構成されており、これと協働する第2の接触部28.2は接触端で形成されている。従って、ここで、第1の摺動面30.1の経路は第1の接触部28.1で画定され、円錐部分又は球状部分の形状を有する。第2の摺動面30.2は平面状である。
【0054】
図4cに係る実施形態は、言うなれば図4bの実施形態を反転させたものである。図4bと異なり、第1の接触部28.1は接触端で、第2の接触部28.2は接触面で形成されている。第1の摺動面30.1も同様に円錐部分又は球状部分の形状を有する。第2の摺動面30.2は平面状である。
【0055】
図4dに係る実施形態は、本質的に図4aの実施形態の鏡像である。ここでも、接触部28.1~28.4はいずれも接触面として構成されており、図4aとは対照的に、第1及び第2の接触部28.1、28.2は光軸Aと垂直に延在する平面内に延在しており、第3及び第4の接触部28.3、28.4は第1及び第2の接触部28.1、28.2に対して傾いて延在しているので、第1の摺動面30.1は平面状であり、第2の摺動面30.2は円錐部分又は球状部分の形状を有する。
【0056】
図4eに係る実施形態は図4bの実施形態に大部分は対応しているが、それとは対照的に、第2の接触部28.2が接触端としては構成されておらず、半径方向の範囲が第1の接触部28.1の半径方向の範囲より小さい接触面で形成されている。
【0057】
最後に、図4fに係る実施形態において、調整要素24はその内周部にねじ山形34.2を有しており、該ねじ山形34.2は、ホルダ26の外周部に設けられた相補的なねじ山形34.1と協働し、第1及び第2の接触部28.1、28.2は、それぞれのねじ山形34.1、34.2の協働するフランク部で形成される。ねじ山形34.1、34.2で形成されたねじ山は半径方向の遊びを有しており、これによって、調整に必要な調整要素24の変位性が保証される。第2の摺動面30.2は平面状であり、一方、そこに対して傾斜している第1の摺動面30.1はらせん状の線又はらせん状に巻かれた表面に沿って延在している。従って、図4fに係る実施形態では、ホルダ26内に収容された光学部品60を軸方向に調整することもできる。
【0058】
図1~3、4a、4c、及び4dに係る実施形態において、調整要素24は、互いに斜めに延在している摺動面30.1、30.2によって直接的に環状のくさび又はくさび部分として画定されている(図1~3参照)。
【0059】
図5a~5cは、原理的には上で説明した実施形態の変形例とみなすことができる調整装置20の別の設計を示す。
【0060】
図5aに係る実施形態は、図1~3に係る実施形態にほぼ対応する。ここで、調整用要素32は、例えば六角レンチで作動させることができるねじピンとして構成されている。
【0061】
図5bに係る実施形態において、調整用要素32は調整ねじとして構成されており、該調整ねじには、直径が拡大され且つ外周部にリブを付けた頭部が設けられている。これにより、道具を使わないで調整できる。
【0062】
図5cに係る実施形態では、図5a及び5bに係る実施形態から逸脱して、調整用要素32はベース要素22ではなく調整要素24へねじ込まれている。従って、調整用要素32はそれぞれの先端で調整要素24には作用しないが、カラーとして突出しているホルダ26の部分に作用する。図5と同様にねじピンとして構成されている調整用要素32へのアクセスは、ベース要素22に設けられた半径方向の穴50から行われる。ここでも、調整ねじは、ねじピンの代わりに調整用要素32として使用できる。
【0063】
図6a~6cを参照し、接触力F(図3a及び図3b参照)の発生に関して互いに実質的に異なる各種実施形態を示す。
【0064】
図6aに係る実施形態は、ねじ44及びウェーブばね42によって接触力Fが発生する図1及び図2に係る実施形態にほぼ対応する。
【0065】
図6bに係る実施形態では、ここでも、複数のねじ44によって接触力Fの印加が行われ、該ねじは、周辺側に配置されるが、図6aとは対照的にホルダ26にねじ込まれており、ねじ44の頭部からベース要素22への力の伝達は、ウェーブばね42又は複数の個々のばね(コイルばね、皿ばね等)等の1つ以上のばね要素によって行われる。従って、図1、2、及び6aに係る実施形態と異なり、光学システム10の周辺側からねじ44へアクセスできる。
【0066】
図6cに係る実施形態では、ねじではなく周辺のクランプリング56によってホルダ26をベース要素22に固定しており、該クランプリング56はカラー部36の内周部にラッチで固定でき、ばね要素によってホルダ26及び調整要素24をベース要素22に固定する。ここで、ばね要素は、エラストマー製の封止リング等の弾性要素52として構成されており、ホルダ26の外周部に設けられた段差54の領域に配置されている。弾性要素52を圧縮することで必要な接触圧力Fが得られ、この弾性要素52の弾性により、調整に必要なホルダの遊びが得られる。
【0067】
図1及び図2に係る実施形態の変形例を表す図7に係る別の実施形態では、ホルダ26は半径方向に変位可能なように収容スペース48内で支持されており、ホルダ26は、カラー部36に配置されたそれぞれの一揃いの、好ましくは3つ又は4つの半径方向に作用する調整用要素33を割り当てられている。これらの調整用要素33を用いて、ホルダ26を収容スペース48内で半径方向に変位させる又は固定することができる。ホルダ26に割り当てられた調整用要素33は、調整要素24に割り当てられた調整用要素32とは根本的に異なるものであり、ホルダ26の固定又は変位のために設けられた調整用要素33は、調整ねじ又はねじピンで形成することもできる。半径方向に変位できることで、ホルダ26内に支持された光学部品60は、その傾きに加えて、ベース要素22又は光学部品62に対するその半径方向の位置について設定することもでき、半径方向の位置及び傾きは、互いに実質的に独立して設定できる。
【0068】
図1図3に係る実施形態の変形例(図示せず)によれば、ホルダ26はその外周部に凸アーチ状の壁部を有していてもよく、且つ/又はカラー部36はその内周部に凹アーチ状の壁部を有していてもよい。これらのアーチ状の壁部の曲率は球面に対応することが好ましく、該球面の幾何中心は通常、傾斜動作のピボット点と、好ましくは光学部品の中心とも一致する。これにより、ホルダ26又はカラー部36を球面部分として形成することで、規定した通りに傾斜動作を誘導できる。いずれの壁部もアーチ状である場合、互いに相補的なアーチ状であること、すなわち、いずれの場合も同じ曲率半径であることが好ましい。一方の壁部のみがアーチ状である場合、反対側の周辺部は玉軸受装置又はころ軸受装置を有していてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10:光学システム
20:調整装置
22:ベース要素
24:調整要素
26:ホルダ
28.1~28.4:接触部
30.1、30.2:摺動面
32、33:調整用要素
34.1、34.2:ねじ山形
36:カラー部
38、40:壁部
42:ウェーブばね
44:ねじ
46:穴
48:収容スペース
50:半径方向の穴
52:弾性要素
54:段差
56:クランプリング
60、62:光学部品
A:光軸
d:調整距離
F:接触力
P:ピボット点
R1:平均距離
R2:曲率半径
x:変位方向
α:傾斜角
β:挟角

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】