(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】遺伝子型を同定するために融解曲線をクラスタリングするための方法
(51)【国際特許分類】
G16B 20/00 20190101AFI20241203BHJP
【FI】
G16B20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538399
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2022087555
(87)【国際公開番号】W WO2023118473
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】クルニク,ロナルド・ティー
(57)【要約】
融解曲線をジェノタイピングするための自動化された方法が説明されている。融解曲線が処理され、処理された行列に基づいて差行列が作成される。差行列はクラスタ行列を作成するために使用され、クラスタ行列は、融解曲線のジェノタイピングに使用されるクラスタを決定するためにフィルタリングされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある温度範囲にわたる蛍光測定値を含む複数の融解曲線をジェノタイピングするための自動化された方法であって、
前記温度範囲にわたって前記複数の融解曲線の各々の負の一次導関数を計算することにより、複数の処理された融解曲線を生成することと、
前記処理された融解曲線の各々について、所与の処理された融解曲線と他の処理された融解曲線の各々との間の絶対差の合計を、前記温度範囲にわたって計算することにより、前記処理された融解曲線に基づいて第1の差行列を作成することと、
前記第1の差行列の各列について、前記温度範囲にわたって各行ベクトルを合計することにより、前記第1の差行列に基づいて第2の差行列を作成することと、
前記第2の差行列に基づいて初期クラスタ行列を作成することであって、前記初期クラスタ行列の各行が、初期クラスタのセット内の初期クラスタを特定する、初期クラスタ行列を作成することと、
前記初期クラスタ行列を、フィルタリングされた初期クラスタのセットを含むフィルタリングされた初期クラスタ行列になるように、フィルタリングすることであって、前記処理された融解曲線の各々が、単一のフィルタリングされた初期クラスタに割り当てられる、前記初期クラスタ行列をフィルタリングすることと、
前記フィルタリングされた初期クラスタ行列の各フィルタリングされた初期クラスタ内のピークの数および各ピークの平均融解温度を計算することと、
同じ数のピークおよび指定された温度しきい値内の平均融解温度を持つフィルタリングされた初期クラスタを結合して、最終クラスタ行列を作成することと、
前記最終クラスタ行列に基づいて、前記複数の融解曲線の各々の遺伝子型を同定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記初期クラスタ行列は、k平均法を実行することによって作成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初期クラスタ行列の各行は、
第1の処理された融解曲線を特定する第1の列、
前記第1の列の前記第1の処理された融解曲線から最小非ゼロ距離にある第2の処理された融解曲線を特定する第2の列であって、前記最小非ゼロ距離は、前記第2の差行列に基づいて決定される、第2の列、および
前記第1の列の前記第1の処理された融解曲線を含むクラスタ内のさらなる処理された融解曲線を特定する後続の列であって、前記クラスタは、前記クラスタのセントロイドと前記第1の処理された融解曲線との間の距離に基づいて特定される、後続の列、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記k平均法は、入力された初期クラスタ数に基づいて実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、前記初期クラスタ行列から重複する行を除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、共通の処理された融解曲線を含む交わっているクラスタを結合することを、さらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
交わっているクラスタを結合することは、
(a)第1のパスにおいて、共通の処理された融解曲線を含む、初期クラスタの前記セット内の初期クラスタを特定するステップと、
(b)ステップ(a)において特定された前記クラスタの各々を結合するステップと、
(c)第2のパスにおいて、共通の処理された融解曲線を含む残っているクラスタを特定し、当該残っているクラスタを結合するステップと、
(d)前記処理された融解曲線のいずれも、1つより多いフィルタリングされた初期クラスタ内に存在しないように、共通の処理された融解曲線を含む前記初期クラスタを除去するステップと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、重複する処理された融解曲線を含むクラスタを特定し、当該重複を除去することを、さらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、
(i)クラスタの最大信号とクラスタしきい値との比較に基づいて負のクラスタを特定するステップと、
(ii)ステップ(i)で特定された負のクラスタをマージするステップと、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
負のクラスタを特定することは、
(aa)所与のクラスタ内の最大蛍光値と、最も高い蛍光を有するクラスタ内の最大蛍光との比を求めることと、
(bb)ステップ(aa)で求められた前記比を前記クラスタしきい値と比較することと、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記クラスタしきい値が、0.1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、
(iii)他の各々のクラスタのピークよりも小さいピークを含むクラスタを特定することと、
(iv)ステップ(iii)で特定された前記クラスタ内の処理された融解曲線を前記クラスタしきい値と比較することと、
(v)前記処理された融解曲線のうち前記クラスタしきい値よりも小さいものを、負の処理された融解曲線として設定し、当該負の処理された融解曲線を前記クラスタから除去することと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記指定された温度しきい値は、1℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
同定された前記遺伝子型の各々に関連付けられた品質メトリックを、以下の式に従って求めることを、さらに含み、
【数1】
式中、「grp_curves」は、所与のクラスタ内の融解曲線のグループを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
クラスタ内の各処理された融解曲線に関連付けられた品質メトリックを、以下の式に従って求めることを、さらに含み、
【数2】
式中、「f」は、所与の処理された融解曲線を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記初期クラスタ行列は、階層クラスタリング、ファジィC平均クラスタリング、ミーンシフトクラスタリング、密度ベースの空間クラスタリング、および混合ガウスモデルのうちの少なくとも1つを実行することによって作成される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、融解曲線をジェノタイピング(遺伝子型判定)する方法に関し、特に、融解曲線のジェノタイピングを改善するために融解曲線を自動的にクラスタリングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、生物医学研究、疾患モニタリングおよび診断のあらゆる場面で使用されるツールとなっている。融解曲線分析も同様に、DNAの遺伝子型を同定するための一般的なツールとなっており、PCRの後に行われることが多い。融解曲線分析は、加熱中の二本鎖DNAの解離特性を評価する。特に、二本鎖DNAに結合した蛍光色素は、通常、温度が上昇するにつれて蛍光を失い、DNAの有効な解離と同時に蛍光が減少する。異なる遺伝子型は異なる温度で解離するので、異なる遺伝子型は、異なるプロファイルを持つ融解曲線を持つ。この有効な解離が起こる温度は、融解曲線の負の一次導関数に形成されるピークを特定することによって、多くの場合、確認される。したがって、(ピークなどの)特徴が似ている負の一次導関数は、同じ遺伝子型に属する曲線を示している可能性がある。したがって、融解曲線(特にその負の一次導関数)の分析は、類似した曲線をグループ化することによってアッセイをジェノタイピングするために使用することができる。
【0003】
[0003] 融解曲線分析に基づくこのようなジェノタイピングのための方法は存在するが、従来の方法には限界がある。例えば、多数の遺伝子型が存在するアッセイや、融解曲線の質に一貫性がない場合など、多様な遺伝子型を扱う場合、既存の方法では有効性に限界がある。したがって、多数の遺伝子型が存在するアッセイや、融解曲線の質に一貫性がない場合において、融解曲線をジェノタイピングするための自動化された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本開示は、融解曲線のジェノタイピングを改善するために融解曲線をクラスタリングする新規な方法を提供する。方法は、融解曲線を処理し、曲線を比較して差行列を作成し、差行列に基づいてクラスタ行列を作成し、クラスタ行列をフィルタリングし、フィルタリングされたクラスタ行列に基づいて遺伝子型を同定することによって実行される。
【0005】
[0005] 一態様では、複数の融解曲線をジェノタイピングするための自動化された方法が提供される。融解曲線は、温度範囲にわたる蛍光測定値を含むことができる。この方法は、温度範囲にわたって複数の融解曲線の各々の負の一次導関数を計算することにより、複数の処理された融解曲線を生成することを含む。この方法は、処理された融解曲線の各々について、温度範囲にわたって所与の処理された融解曲線と他の処理された融解曲線の各々との間の絶対差の合計を計算することにより、処理された融解曲線に基づいて第1の差行列を作成することを、さらに含む。この方法は、第1の差行列の各列について、温度範囲にわたって各行ベクトルを合計することにより、第1の差行列に基づいて第2の差行列を作成することを、さらに含む。この方法は、第2の差行列に基づいて初期クラスタ行列を作成することをさらに含み、初期クラスタ行列の各行は、初期クラスタのセット内の初期クラスタを特定する。この方法は、初期クラスタ行列をフィルタリングして、フィルタリングされた初期クラスタのセットを含むフィルタリングされた初期クラスタ行列にすることを含み、処理された融解曲線の各々が、単一のフィルタリングされた初期クラスタに割り当てられる。この方法は、フィルタリングされた初期クラスタ行列の各フィルタリングされた初期クラスタ内のピークの数および各ピークの平均融解温度を計算することを、さらに含む。この方法は、同じ数のピークおよび指定された温度しきい値内の平均融解温度を有するフィルタリングされた初期クラスタを結合して最終クラスタ行列を作成することと、最終クラスタ行列に基づいて複数の融解曲線の各々の遺伝子型を同定することとを、さらに含む。
【0006】
[0006] いくつかの実施形態では、初期クラスタ行列は、k平均法を実行することによって作成される。例えば、初期クラスタ行列の各行は、第1の処理された融解曲線を特定する第1の列、第1の列の第1の処理された融解曲線から最小非ゼロ距離にある第2の処理された融解曲線を特定する第2の列、および第1の列の第1の処理された融解曲線を有するクラスタ内の追加の処理された融解曲線を特定する後続の列を含むことができる。最小非ゼロ距離は、第2の差行列に基づいて求めることができ、クラスタは、クラスタのセントロイドと第1の処理された融解曲線との間の距離に基づいて特定することができる。
【0007】
[0007] いくつかの実施形態では、初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、初期クラスタ行列から重複する行を除去することを含む。いくつかの実施形態では、初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、共通の処理された融解曲線を含む交わっているクラスタを結合することを、さらに含む。例えば、交わっているクラスタを結合することは、(a)第1のパスにおいて、共通の処理された融解曲線を含む初期クラスタのセット内の初期クラスタを特定するステップと、(b)ステップ(a)において特定されたクラスタの各々を結合するステップと、(c)第2のパスにおいて、共通の処理された融解曲線を含む残っているクラスタを特定し、前記残っているクラスタを結合するステップと、(d)処理された融解曲線のいずれも、1つより多いフィルタリングされた初期クラスタ内に存在しないように、共通の処理された融解曲線を含む初期クラスタを除去するステップと、を含むことができる。いくつかの実施形態において、初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、処理された融解曲線が重複するクラスタを特定し、前記重複を除去することを含む。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態では、初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、(i)クラスタの最大信号とクラスタしきい値との比較に基づいて負のクラスタを特定するステップと、(ii)ステップ(i)で特定された負のクラスタをマージするステップとを含む。例えば、負のクラスタを特定することは、所与のクラスタ内の最大蛍光値と、最も高い蛍光を有するクラスタ内の最大蛍光との比を求めること、およびステップ(aa)で求めた比をクラスタしきい値と比較することを含み得る。例えば、クラスタしきい値は、0.1である。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態では、初期クラスタ行列をフィルタリングすることは、他のクラスタの各々のピークよりも小さいピークを含むクラスタを特定すること、ステップ(iii)で特定されたクラスタ内の処理された融解曲線をクラスタしきい値と比較すること、およびクラスタしきい値よりも小さい処理された融解曲線を、負の処理された融解曲線として設定し、前記負の処理された融解曲線をクラスタから除去すること、をさらに含み得る。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態では、指定された温度しきい値は、1℃である。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態では、品質メトリックを求めることができる。例えば、この方法は、以下の式に従って、同定された遺伝子型の各々に関連付けられた品質メトリックを求めることを、さらに含み得る:
【数1】
ここで、「grp_curves」は、所与のクラスタ内の融解曲線のグループを含む。別の例として、この方法は、以下の式に従って、クラスタ内の各処理された融解曲線に関連付けられた品質メトリックを求めることを、さらに含み得る:
【数2】
ここで、「f」は、所与の処理された融解曲線を示す。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態では、初期クラスタ行列は、クラスタリング手法を使用して作成される。例えば、初期クラスタ行列は、階層クラスタリング、ファジィC平均クラスタリング、ミーンシフトクラスタリング、密度ベースの空間クラスタリング、および混合ガウスモデルのうちの少なくとも1つを実行することによって作成することができる。
【0013】
[0013] 別の態様では、融解曲線の自動ジェノタイピングのためのシステムが提供される。システムは、少なくとも1つのデータプロセッサを含むことができる。システムは、少なくとも1つのデータプロセッサによって実行されると、温度範囲にわたって複数の融解曲線の各々の負の一次導関数を計算することによって複数の処理された融解曲線を生成することと、処理された融解曲線の各々について、温度範囲にわたって所与の処理された融解曲線と他の処理された融解曲線の各々との間の絶対差の合計を計算することによって、処理された融解曲線に基づいて第1の差行列を作成することと、を含む操作を引き起こす、少なくとも1つのメモリに記憶された命令を、さらに含むことができる。操作は、第1の差行列の各列について、温度範囲にわたって各行ベクトルを合計することによって、第1の差行列に基づいて第2の差行列を作成することを、さらに含むことができる。操作は、第2の差行列に基づいて初期クラスタ行列を作成することを、さらに含むことができ、初期クラスタ行列の各行は、初期クラスタのセット内の初期クラスタを特定する。操作は、初期クラスタ行列をフィルタリングして、フィルタリングされた初期クラスタのセットを含むフィルタリングされた初期クラスタ行列にすることを、さらに含むことができ、処理された融解曲線の各々が、単一のフィルタリングされた初期クラスタに割り当てられる。操作は、フィルタリングされた初期クラスタ行列の各フィルタリングされた初期クラスタ内のピークの数および各ピークの平均融解温度を計算することを、さらに含むことができる。操作は、同じ数のピークおよび指定された温度しきい値内の平均融解温度を有するフィルタリングされた初期クラスタを結合して最終クラスタ行列を作成することと、最終クラスタ行列に基づいて複数の融解曲線の各々の遺伝子型を同定することとを、さらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施形態による、ジェノタイピングされるべき生の融解曲線のグラフ表示である。
【
図2】本開示の実施形態による、ジェノタイピングされるべき、
図1の処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
【
図3】本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた後の、
図2の処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
【
図4】本開示の実施形態による、融解曲線の自動ジェノタイピングのための方法を示す。
【
図5】本開示の実施形態による、
図4の方法で使用される差行列の作成の図表示である。
【
図6】本開示の実施形態による、
図4の方法で使用される差行列の作成の図表示である。
【
図7】本開示の実施形態による、
図4の方法で使用されるクラスタ行列の作成の図表示である。
【
図8】本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
【
図9】本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
【
図10】本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
【
図11】本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
【
図12】本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
【
図13】本開示の実施形態によるジェノタイピングプラットフォームの一例を示す図である。
【
図14】本開示の実施形態によるコンピューティングシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0028] 体外診断(IVD)アッセイの文脈では、種々の遺伝子型を決定することが望ましい。そのために、上述のように、PCR後の融解ステップを使用して、所与のアッセイの種々の遺伝子型を決定している。二本鎖DNAに結合した蛍光色素は、その特性に応じて、温度が上昇するにつれて蛍光を失うので、所与のアッセイの異なる遺伝子型は、異なる蛍光信号プロファイルを示す。融解曲線を使用して遺伝子型を決定するために、通常、生の融解曲線、すなわち融解ステップ中に温度範囲にわたって測定された蛍光が、その負の一次導関数を求めることによって処理される。その結果、一連のピークを持つ曲線が得られる。ピークは通常、ガウス型のピークであるが、他の形のピークであってもよく、例えば、ローレンツ型、フォークト型、ピアソン型、コンプトンエッジ型、または任意の他のタイプのピークであってよい。形状および頻度において互いに類似したピークを持つ曲線、ならびに融解温度が類似した曲線は、単一の遺伝子型にグループ化することができる。既存の方法は、限られた数の遺伝子型から遺伝子型を同定することができるかもしれないが、所与のアッセイについて未知の数の遺伝子型および/または比較的多数の遺伝子型が存在する場合に、遺伝子型を決定するための自動化された方法が依然として望まれている。例えば、所与のアッセイは、1種類から12種類の異なる遺伝子型を有することができ、遺伝子型が未知の場合に融解曲線から遺伝子型を自動的に決定するには、既存の方法では不十分である。
【0016】
[0029]
図1~
図3は、本開示の実施形態による、融解曲線の自動ジェノタイピングの例を示す。具体的には、
図1は、本開示による生の融解曲線のグラフ表示である。
図1に見られるように、生の融解曲線は、PCR後の融解ステップ中に温度範囲にわたって測定された蛍光を表している。この例では、アッセイは、8つの遺伝子型および陰性結果を含む。
【0017】
[0030] 本開示の実施形態によれば、
図1の生の融解曲線は、アッセイを正確にジェノタイピングするために処理され得る。具体的には、
図1の各曲線の負の導関数を求めることによって、
図1の生の融解曲線を処理することができる。
図2は、
図1に示される各曲線の負の導関数を求めた結果の、
図1の処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
図2に見られるように、得られた処理された曲線の多くはガウスピークを含み、温度範囲内のピークの高さ、頻度、位置が類似した類似の曲線のグループが存在する。これは視覚的に見ることができるが、特に、アッセイには比較的多数の遺伝子型(この場合は8個)が存在することがあるので、アッセイにおける実際の遺伝子型の数を知らずにこれらの曲線をジェノタイピングするのは負担が大きく、大規模な手動入力が必要になる。
【0018】
[0031] 本開示の実施形態は、遺伝子型の数についての事前知識なしに、処理された融解曲線を自動的にジェノタイピングする方法を提供する。具体的には、以下でさらに詳細に説明するように、処理された融解曲線は、一連の差行列を自動的に作成するために使用することができ、次に、これらの差行列は、単一の遺伝子型の曲線を自動的にクラスタリングするために使用することができる。
【0019】
[0032]
図3は、本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた後の、
図2の処理された生の融解曲線のグラフ表示である。
図3からわかるように、8つの異なる遺伝子型(GT1に対応する遺伝子型301、GT2に対応する遺伝子型302、GT3に対応する遺伝子型303など)のそれぞれが、アッセイのいくつかの陰性結果(NEGに対応する309)とともに同定されている。
【0020】
[0033] 遺伝子型の同定に加えて、いくつかの実施形態では、遺伝子型に関連付けられた品質メトリックを求めることができる。例えば、所与の遺伝子型におけるグループ化された曲線の「稠密性」を示す0~100の範囲のメトリックを求めることができる。メトリックが100に近いほど、所与のクラスタは、「より稠密」である。
図3で同定された各遺伝子型について求められた品質メトリックが、各遺伝子型と並んで記載されており、この例では、メトリックは、同定された8つの遺伝子型のそれぞれについて94から98の範囲にあり、これは、各グループ内での比較的「稠密な」適合を表していることがわかる。
【0021】
[0034]
図4は、本開示の実施形態による、融解曲線の自動ジェノタイピングのための方法400を示す。ステップ402では、生の融解曲線を処理して、処理された融解曲線を生成することができる。いくつかの実施形態では、複数の生の融解曲線の各々の負の導関数が、処理された融解曲線を生成するために計算され得る。生の融解曲線は、負の導関数を計算するための任意の適切な方法で処理することができる。本明細書では負の導関数を計算するものとして説明するが、生の融解曲線は、融解曲線のジェノタイピングに役立つ曲線の特徴(融解温度など)を確認するのに役立つ任意の適切な方法で処理され得ることが理解されよう。
【0022】
[0035] ステップ404では、第1の差行列が、処理された融解曲線に基づいて作成され得る。いくつかの実施形態では、第1の差行列は、所与の処理された融解曲線と他の各処理された融解曲線との間の各温度における蛍光値の絶対差を求めることによって作成され得る。例えば、第1の差行列は、PCR後の融解ステップ中に温度範囲にわたって蛍光値が測定された各温度単位に対応する行と、融解曲線の数に対応する列とを含む次元を有することができる。
【0023】
[0036]
図5は、本開示の実施形態による第1の差行列500の作成の図表示である。
図5に見られるように、差行列は、所与のアッセイにおける曲線数に対応する幅502と、蛍光測定が行われた離散的な温度単位に対応する高さ504を有することができる。行列500の各列506は、各離散的温度における各曲線と他の全ての曲線との間の絶対差を求めることによって計算することができる。
【0024】
[0037] ステップ406では、ステップ404で作成された第1の差行列の内容に基づいて、第2の差行列が作成され得る。いくつかの実施形態では、第2の差行列は、第1の差行列の各列について、全ての温度単位にわたって第1の差行列の行ベクトルの合計を求めることによって作成され得る。いくつかの実施形態では、それ自身からの曲線の差を求めることに対応する第2の差行列の成分は、Not a Number(NaN)に設定される。得られた第2の差行列は、各曲線の他の各曲線に対する類似性の尺度を提供し、これは、遺伝子型を同定するために曲線をクラスタリングするために、後続のステップで使用される。いくつかの実施形態では、第2の差行列は、各曲線について、他の各曲線からの絶対距離の合計値を含むので、本質的に温度次元のないベクトルであってもよい。
【0025】
[0038]
図6は、本開示の実施形態による第2の差行列の作成の図表示である。見てわかるように、第2の差行列600は、例えば第1の差行列500とは対照的に、温度次元を持たない。むしろ、差行列600は、所与のアッセイにおける曲線の総数に対応する幅602(第1の差行列500の幅502と同様)を持つ。差行列600は、各曲線について、他の各曲線からの絶対距離の合計値を含むように、全ての温度単位にわたって第1の差行列の行ベクトルを合計することによって作成される。したがって、差行列600は、全ての温度単位にわたる絶対距離の合計値を含むベクトルとすることができる。
【0026】
[0039] ステップ408では、ステップ406で作成された第2の差行列に基づいて、初期クラスタ行列が作成される。初期クラスタ行列は、第2の差行列に基づいて、処理された融解曲線のグループをクラスタリングすることによって作成することができる。例えば、融解曲線の総数に対応する行および融解曲線の総数より1つ多い数に対応する列を含む次元の行列を作成することにより、初期クラスタ行列を作成することができる。初期クラスタ行列の第1の列は所与の曲線番号を含むことができ、初期クラスタの第2の列は、ステップ406で作成された第2の差行列から求められ得る、その所与の曲線番号に対する最小非ゼロ距離和に対応する曲線番号を含むことができる。初期クラスタ行列の後続の列は、最小限の距離内の第1の列の曲線に関連付けられた追加の曲線番号を含むことができる。
【0027】
[0040] いくつかの実施形態では、初期クラスタ行列は、クラスタリング手法を使用して作成され得る。例えば、初期クラスタ行列は、従来のk平均法を使用して作成することができる。例えば、k平均法は、第2の差行列に反映されている、所与の曲線と他の全ての曲線との間の絶対差の合計の温度合計と、入力された初期クラスタ数とを入力とすることができる。次に、K平均法は、クラスタのセントロイド(すなわち重心)を特定し、どの曲線が所与のクラスタに属するかを、セントロイドまでの距離に基づいて特定することによって、クラスタを特定することができる。いくつかの実施形態では、初期クラスタの数は、k平均法(または使用される他のクラスタリング手法)によって特定されるクラスタの最大数を決定するパラメータであってもよい。このパラメータは、予め決定されていてもよいし、ユーザ入力によって設定されてもよいし、所与のアッセイの状況によって(自動的に、またはユーザ入力によって)指示されてもよいことが理解されよう。いくつかの実施形態では、初期クラスタの数は、2から25の間の数に設定される。例えば、初期クラスタ数を15に設定するのが好ましいかもしれない。他の実施形態では、初期クラスタ数を25に拡大することが好ましい場合もある。k平均法を使用すると、初期クラスタ行列は、各行で、第1の列に所与の曲線番号を特定し、その後に、第1の列の曲線から最小距離にあるセントロイドを持つクラスタ内の曲線番号が続くことによって、作成することができ、クラスタは、k平均法または他の適切なクラスタリング手法によって決定される。
【0028】
[0041]
図7は、本開示の実施形態によるクラスタ行列の作成の図表示である。
図7に見られるように、初期クラスタ行列700は、曲線の数+1に対応する幅702と、曲線の数に対応する高さ704とを有することができる。各行の第1の列は、所与の曲線番号(706、706a、706b)を含み、次の列は、第1の列で特定された曲線から最小距離にある曲線番号(708、708a、708b)を含み、後続の列(710、710a、710b)は、第1の列の曲線から最小距離にあるセントロイドを持つクラスタ内の残りの曲線番号を含むことができる。上述したように、行列700は、k平均法、または以下に説明するような他のクラスタリング手法を使用して作成することができる。
【0029】
[0042] k平均法について上述したが、上記の差行列に基づいて曲線をクラスタリングするために他の方法を使用することもできる。例えば、階層クラスタリング、ファジィC平均クラスタリング、ミーンシフトクラスタリング、密度ベースの空間クラスタリング、および混合ガウスモデルのいずれかを使用して、上述の第1および第2の差行列を用いて曲線をクラスタリングすることができる。
【0030】
[0043] ステップ410では、ステップ408で作成された初期クラスタ行列をフィルタリングして、フィルタリングされた初期クラスタを持つフィルタリングされた初期クラスタ行列を生成する。初期クラスタ行列のフィルタリングは、以下でさらに詳細に説明するように、重複するクラスタを除去すること、交わっているクラスタを結合すること、クラスタ内の重複する曲線を除去すること、負のクラスタを指定すること、および負のクラスタが存在する場合にそれらを結合することを含むことができる。
【0031】
[0044] いくつかの実施形態では、最初のフィルタリングステップは、重複するクラスタを除去することを含むことができる。いくつかの実施形態では、初期クラスタ行列の非ゼロ要素で新しい行列を作成することにより、重複するクラスタを除去することができる。新しい行列の2つ以上の行が完全に重複している場合(つまり、全く同じ曲線のリストが含まれている場合)、重複している行は、新しい行列から除去される。
【0032】
[0045] いくつかの実施形態では、後続のフィルタリングステップは、所与の曲線が、1つより多いクラスタに存在しないように、交わっているクラスタを結合することを含むことができる。例えば、交わっているクラスタを結合することは、クラスタ行列を通る2つのパスを含むことができる。第1のパスでは、所与の曲線を共有するクラスタが結合されるが、交わっている全てのクラスタが評価されるように、元のクラスタは除去されない。第2のパスでは、残っている交わっているクラスタが結合されるが、この場合には、残っているクラスタは除去される。交わっている曲線を持つ潜在的なクラスタがそれぞれ評価されるので、この2パス技法は、1つの曲線も2つの異なるクラスタに存在しないことを保証する。
【0033】
[0046] いくつかの実施形態では、後続のフィルタリングステップは、クラスタ内の重複する曲線を除去することを含む。例えば、各クラスタは、そこに重複する曲線番号がないことを確認するために評価される。重複する曲線番号が見つかった場合、クラスタから除去される。
【0034】
[0047] いくつかの実施形態では、後続のフィルタリングステップは、負のクラスタを指定することを含む。いくつかの実施形態では、クラスタは、クラスタの最大蛍光と、最も高い最大蛍光を有するクラスタの最大蛍光との比に基づいて、負に指定される。例えば、クラスタの最大蛍光と、最も高い最大蛍光を有するクラスタの最大蛍光との比を、クラスタしきい値と比較することができる。比がクラスタしきい値より小さい場合、そのクラスタは、負のクラスタとして指定される。クラスタしきい値は、本質的に平坦な融解曲線のクラスタが負のクラスタとして指定されるようにする数値になるように、実験的に決定することができる。いくつかの実施形態では、クラスタしきい値は、0.1(すなわち10%)である。いくつかの実施形態では、クラスタしきい値は、0.05(すなわち5%)である。負のクラスタが指定されると、複数の負のクラスタを結合するために、後続のステップを行うことができる。さらに、残っているクラスタ内に負の曲線が1つでも存在するかどうかをチェックするために、さらなるステップを行うことができる。例えば、(負のクラスタが指定されると)ピークが最も低いクラスタが、その曲線のいずれかがクラスタしきい値より小さいかどうかを判定するために評価され得る。いずれかの曲線がクラスタしきい値より小さい場合(すなわち、最も高い最大蛍光を有するクラスタのピークに対する当該曲線のピークの比が、クラスタしきい値より小さい場合)、それらの曲線は負として設定され、クラスタから除去される。
【0035】
[0048] ステップ412では、残っている各クラスタ内の各ピークの平均融解温度およびピークの数が、求められる。ステップ414では、同じ数のピークおよびしきい値範囲内の平均融解温度を含むクラスタを結合することができる。例えば、(1)ピークの数が同じであり、(2)平均融解温度が互いから±1℃以内であるクラスタを結合することができる。得られたクラスタ行列は、ジェノタイピングに使用される最終クラスタ行列となり得る。
【0036】
[0049] ステップ416では、融解曲線の遺伝子型が、ステップ414で作成された最終クラスタ行列に基づいて同定される。ジェノタイピングは、視覚的な方法で同定された遺伝子型の出力リストをもたらすことができる。例えば、曲線は、
図3(および/または後述する
図8~
図12)のように、同じ遺伝子型を識別する色を用いて視覚的に表示することができる。
【0037】
[0050] いくつかの実施形態では、品質メトリックが、同定された各遺伝子型グループについて求められ、また参考のために出力され得る。具体的には、グループの品質メトリックは、以下の式を用いて計算することができる:
【数3】
ここで、「grp_curves」は、所与のクラスタ内の融解曲線のグループを表す。品質メトリックは、所与のクラスタの稠密性を示すことができる。例えば、品質メトリックの値が100に近ければ近いほど、所与のクラスタ内の曲線は稠密になる。
【0038】
[0051] いくつかの実施形態では、品質メトリックは、所与の遺伝子型グループ内の各曲線について求められ得る。グループ内の所与の曲線の品質メトリックは、以下の式を使って計算することができる:
【数4】
ここで、fは、所与の処理された融解曲線を示し、品質メトリックは、曲線が遺伝子型に関連付けられたクラスタの中央値にどれだけ近いかを示す。
【0039】
[0052]
図13は、本開示の実施態様によるジェノタイピングプラットフォーム1300の一例を示す図である。ジェノタイピングプラットフォーム1300は、
図1~
図4を参照して上述したように、協働してアッセイの融解曲線をクラスタリングし、ジェノタイピングする様々なエンジンを含むことができる。
【0040】
[0053] ジェノタイピングプラットフォーム1300は、融解曲線処理エンジン1310、行列作成エンジン1320、クラスタリングエンジン1330、クラスタフィルタリングエンジン1340、およびクラスタ出力エンジン1350を含み得る。いくつかの実施態様では、エンジン1310、1320、1330、1340、および1350の1つ以上の態様、特徴、および/または動作は、様々な組み合わせで組み合わされ得る。
【0041】
[0054] 融解曲線処理エンジン1310は、本明細書に記載されるように、ジェノタイピングされるべき生の融解曲線を入力として受け取ることができる。融解曲線処理エンジン1310は、方法400のステップ402を参照して上述したように、生の融解曲線を処理するように構成され得る。例えば、融解曲線処理エンジン1310は、生の融解曲線の負の一次導関数を計算するように構成され得る。
【0042】
[0055] 行列作成エンジン1320は、ジェノタイピングされるべき処理された生の融解曲線を、融解曲線処理エンジン1310から受け取ることができる。行列作成エンジン1320は、方法400のステップ404および406を参照して上述したように、差行列を作成するように構成され得る。例えば、行列作成エンジン1320は、処理された生の融解曲線に基づいて、
図5に記載されるような第1の差行列500を作成し、次いで第1の差行列に基づいて、
図6に記載されるような第2の差行列600を作成するように構成され得る。
【0043】
[0056] クラスタリングエンジン1330は、行列作成エンジンから差行列を受け取り、それらを使用して、上述のように、処理された生の融解曲線をクラスタリングすることができる。例えば、クラスタリングエンジン1330は、k平均法を使用して、第2の差行列に基づいてクラスタを特定するように構成され得る。クラスタリングエンジン1330は、代替的に、階層クラスタリング、ファジィC平均クラスタリング、ミーンシフトクラスタリング、密度ベースの空間クラスタリング、および混合ガウスモデルを含む、上述のような他のクラスタリング手法を使用して、上述の第1および第2の差行列を用いて曲線をクラスタリングすることができる。
【0044】
[0057] 行列作成エンジン1320は、クラスタリングエンジン1330によって特定されたクラスタのセットを受け取り、方法400のステップ408で上述したように、初期クラスタ行列を作成することができる。例えば、行列作成エンジン1320は、
図7で説明した行列700などの初期クラスタ行列を作成するように構成され得る。
【0045】
[0058] クラスタフィルタリングエンジン1340は、行列作成エンジン1320から初期クラスタ行列を受け取ることができる。クラスタフィルタリングエンジン1340は、方法400のステップ410~414で説明したように、初期クラスタ行列をフィルタリングするように構成され得る。例えば、クラスタフィルタリングエンジン1340は、上述のように、初期クラスタ行列から、重複するクラスタを除去し、交わっているクラスタを結合し、クラスタ内の重複する曲線を除去し、負のクラスタを指定し、負のクラスタが存在する場合にそれらを結合し、その結果、フィルタリングされたクラスタ行列をもたらすように構成され得る。クラスタフィルタリングエンジン1340はまた、方法400のステップ414を参照して上述したように、ピークの数および融解温度の評価に基づいてクラスタを結合し、最終クラスタ行列を作成するように構成され得る。
【0046】
[0059] クラスタ出力エンジン1350は、クラスタフィルタリングエンジン1340から最終クラスタ行列を受け取ることができる。クラスタ出力エンジン1350は、最終クラスタ行列に基づいて融解曲線の遺伝子型を同定し、その結果を出力するように構成され得る。クラスタ出力エンジン1350はまた、上述のように、各遺伝型および/または各曲線の品質メトリックを計算するように構成され得る。例えば、クラスタ出力エンジン1350は、検討中の所与のアッセイにおける各曲線の遺伝子型を示すグラフ表示(例えば、
図3および
図8~
図12に示すものなど)を出力することができる。
【0047】
[0060]
図14は、いくつかの例示的な実施形態によるコンピューティングシステム1400の一例を示すブロック図である。
図1~
図4および
図13~
図14を参照すると、コンピューティングシステム1400は、ジェノタイピングプラットフォーム1300、方法400および/またはその中の任意の構成要素を実施するために使用され得る。
【0048】
[0061]
図14に示されるように、コンピューティングシステム1400は、プロセッサ1410、メモリ1420、記憶装置1430、および入出力装置1440を含み得る。プロセッサ1410、メモリ1420、記憶装置1430、および入出力装置1440は、システムバス1450を介して相互接続することができる。プロセッサ1410は、コンピューティングシステム1400内で実行するための命令を処理することができる。このような実行命令は、例えば、ジェノタイピングプラットフォーム100、方法400および/またはその中の任意の構成要素の1つ以上の構成要素を実施することができる。いくつかの例示的な実施形態では、プロセッサ1410は、シングルスレッドプロセッサであり得る。あるいは、プロセッサ1410は、マルチスレッドプロセッサとすることもできる。プロセッサ1410は、メモリ1420および/または記憶装置1430に記憶された命令を処理して、入出力装置1440を介して提供されるユーザインターフェースのグラフィカル情報を表示することができる。
【0049】
[0062] メモリ1420は、コンピューティングシステム1400内に情報を記憶する、揮発性または不揮発性などのコンピュータ可読媒体である。メモリ1420は、例えば、構成オブジェクトデータベースを表すデータ構造を記憶することができる。記憶装置1430は、コンピューティングシステム1400のための永続記憶を提供することができる。記憶装置1430は、フロッピーディスク装置、ハードディスク装置、光ディスク装置、テープ装置、または他の適切な永続記憶手段とすることができる。入出力装置1440は、コンピューティングシステム1400のための入出力操作を提供する。いくつかの例示的な実施形態では、入出力装置1440は、キーボードおよび/またはポインティングデバイスを含む。様々な実施態様において、入出力装置1440は、グラフィカルユーザインターフェースを表示するための表示装置を含む。
【0050】
[0063] いくつかの例示的な実施形態によれば、入出力装置1440は、ネットワークデバイスのための入出力操作を提供することができる。例えば、入出力装置1440は、イーサネットポート、または1つ以上の有線ネットワークおよび/もしくは無線ネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット)と通信するための他のネットワークポートを含むことができる。
【0051】
[0064] いくつかの例示的な実施形態では、コンピューティングシステム1400は、様々な形式のデータの編成、分析、および/または保存に使用することができる様々な対話型コンピュータソフトウェアアプリケーションを実行するために使用することができる。あるいは、コンピューティングシステム1400は、任意のタイプのソフトウェアアプリケーションを実行するために使用することができる。これらのアプリケーションは、様々な機能、例えば、プランニング機能(例えば、スプレッドシート文書、ワードプロセッシング文書、および/またはその他のオブジェクトなどの生成、管理、編集)、コンピューティング機能、通信機能などを実行するために使用することができる。アプリケーションは、様々なアドイン機能を含むことができ、またはスタンドアロンのコンピューティング製品および/もしくは機能であってもよい。アプリケーション内で起動すると、これらの機能が使用されて、入出力装置1440を介して提供されるユーザインターフェースを生成することができる。ユーザインターフェースは、コンピューティングシステム1400によって生成され、ユーザに提示され得る(例えば、コンピュータ画面モニタ上など)。
【0052】
[0065] 本明細書で説明する主題の1つ以上の態様または特徴は、デジタル電子回路、集積回路、特別に設計された特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはそれらの組み合わせで実現することができる。これらの様々な態様または特徴は、記憶システム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置からデータおよび命令を受信し、記憶システム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置にデータおよび命令を送信するように結合された、特殊用途または汎用用途であり得る少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能および/または解釈可能な1つ以上のコンピュータプログラムにおける実施を含むことができる。プログラマブルシステムまたはコンピューティングシステムは、クライアントとサーバを含むことができる。クライアントとサーバは、一般に、互いに離れた場所にあり、通常、通信ネットワークを通じて相互作用する。クライアントとサーバの関係は、コンピュータプログラムがそれぞれのコンピュータ上で動作し、互いにクライアント・サーバの関係を持つことによって生じる。
【0053】
[0066] プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリケーション、コンポーネント、またはコードとも呼ぶことができるこれらのコンピュータプログラムは、プログラマブルプロセッサ用の機械命令を含み、高レベルの手続き型および/もしくはオブジェクト指向プログラミング言語、ならびに/またはアセンブリ/機械言語で実装することができる。本明細書で使用される場合、「機械可読媒体」という用語は、例えば磁気ディスク、光ディスク、メモリ、およびプログラマブルロジックデバイス(PLD)などの、機械命令および/またはデータをプログラマブルプロセッサに提供するために使用される、あらゆるコンピュータプログラム製品、装置、および/またはデバイスを指し、機械命令を機械可読信号として受信する機械可読媒体を含む。「機械可読信号」という用語は、機械命令および/またはデータをプログラマブルプロセッサに提供するために使用されるあらゆる信号を指す。機械可読媒体は、そのような機械命令を非一時的に記憶することができ、例えば、非一時的なソリッドステートメモリ、磁気ハードドライブ、または任意の同等の記憶媒体などである。機械可読媒体は、代替的または追加的に、そのような機械命令を一時的に記憶することができ、例えば、プロセッサキャッシュまたは1つ以上の物理的プロセッサコアに関連付けられた他のランダムアクセスメモリなどである。
【0054】
[0067] ユーザとの対話を提供するために、本明細書で説明する主題の1つ以上の態様または特徴は、ユーザに情報を表示するための、例えば陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)または発光ダイオード(LED)モニタなどの表示デバイスと、ユーザがコンピュータに入力を提供することができる、キーボードおよび、例えばマウスまたはトラックボールなどのポインティングデバイスとを有するコンピュータ上で実施することができる。ユーザとの対話を提供するために、他の種類のデバイスを使用することもできる。例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、例えば視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、触覚的フィードバックなど、あらゆる形式の感覚的フィードバックとすることができ、ユーザからの入力は、音響入力、音声入力、触覚入力を含む、あらゆる形式で受け取ることができる。他の可能な入力装置としては、タッチスクリーン、または一点もしくは多点抵抗性もしくは容量性トラックパッドなどの他のタッチセンサ式装置、音声認識ハードウェアおよびソフトウェア、光学スキャナ、光学ポインタ、デジタル画像キャプチャ装置および関連する解釈ソフトウェアなどがある。
【0055】
[0068] 本発明の実施形態を以下の実施例でさらに説明するが、これは、請求項に記載された発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1
[0069]
図8は、本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。詳細には、ジェノタイピングされたアッセイは、慢性骨髄性白血病またはPh陽性ALLと呼ばれる急性リンパ芽球性白血病(ALL)の一種を診断または除外するためによく使用されるBCR-ABL変異アッセイであった。
図8に見られるように、2つの遺伝子型801(GT1)および802(GT2)が同定され、品質メトリックは、それぞれ72および53であった。
【0057】
実施例2
[0070]
図9は、本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。詳細には、ジェノタイピングされたアッセイは、アポリポタンパク質(apo)Eを対象としていた。アポE対立遺伝子は、冠状動脈性心疾患やアルツハイマー病などのリスクを特定するために使用され得る。
図9に見られるように、3つの遺伝子型901(GT1)、902(GT2)および903(GT3)が同定され、品質メトリックは、それぞれ69、67、および27であった。
【0058】
実施例3
[0071]
図10は、本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。詳細には、ジェノタイピングされたアッセイは、ヘモクロマトーシス遺伝子(HFE)を対象としていた。
図10に見られるように、6つの遺伝子型1001(GT1)、1002(GT2)、1003(GT3)、1004(GT4)、1005(GT5)、および1006(GT6)が同定され、品質メトリックは、それぞれ100、91、90、90、87、および83であった。
【0059】
実施例4
[0072]
図11は、本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。詳細には、アッセイは、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症に関する、一般的に調査されている遺伝性危険因子である、第 V 因子ライデン(FV)、プロトロンビン(FII)、およびメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子を対象としていた。
図11に見られるように、6つの遺伝子型1101(GT1)、1102(GT2)、1103(GT3)、1104(GT4)、1105(GT5)、および1106(GT6)が同定され、品質メトリックは、それぞれ92、84、80、75、61、および55であった。
【0060】
実施例5
[0073]
図12は、本開示の実施形態による、ジェノタイピングされた処理された生の融解曲線のグラフ表示である。詳細には、アッセイは、乳糖不耐症に関連するターゲットを対象としていた。
図12に見られるように、3つの遺伝子型1201(GT1)、1202(GT2)および1203(GT3)が同定され、品質メトリックは、それぞれ84、82、および73であった。
【0061】
[0074] 上記の説明および請求項において、「のうちの少なくとも1つ」または「のうちの1つ以上」などの語句の前には、要素または特徴の接続的なリストが先行し得る。用語「および/または」も、2つ以上の要素または特徴のリストで使用され得る。使用されている文脈によって暗黙的または明示的に矛盾が生じない限り、このような語句は、列挙された要素もしくは特徴のいずれかを個別に、または列挙された要素もしくは特徴のいずれかを他の列挙された要素もしくは特徴のいずれかと組み合わせて意味することを意図している。例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」、「AおよびBのうちの1つ以上」、「Aおよび/またはB」という語句は、各々、「Aのみ、Bのみ、または、AとBを一緒に」という意味であることを意図している。同様の解釈は、3つ以上の項目を含むリストについても意図されている。例えば、「A、B、Cのうちの少なくとも1つ」、「A、B、Cのうちの1つ以上」、「A、B、および/またはC」という語句は、各々、「Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、または、AとBとCを一緒に」という意味であることを意図している。上記および請求項における「に基づいて」という用語の使用は、「に少なくとも部分的に基づいて」という意味であり、列挙されていない特徴または要素も許容されることを意味している。
【0062】
[0075] 本明細書に記載の主題は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法、および/または物品に具体化することができる。前述の説明に記載された実施態様は、本明細書に記載された主題と整合する全ての実施態様を表すものではない。その代わり、これらは単に、記載された主題に関連する態様と整合するいくつかの例に過ぎない。いくつかの変形について上記で詳述したが、他の変更や追加も可能である。詳細には、本明細書に記載されたものに加えて、さらなる特徴および/または変形を提供することができる。例えば、上述した実施態様は、開示された特徴の様々な組み合わせおよびサブコンビネーション、ならびに/または、上記で開示されたいくつかのさらなる特徴の組み合わせおよびサブコンビネーションに向けられ得る。さらに、添付の図に描かれた、および/または本明細書に記載された論理フローは、望ましい結果を得るために、必ずしも示された特定の順序、または連続した順序を必要としない。他の実施態様も、以下の請求項の範囲内とすることができる。
【国際調査報告】