(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】二日酔い解消と肝保護効能を有する発酵ケンポナシの製造方法およびこれを主原料として製造した飲料組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20241203BHJP
C12P 7/54 20060101ALI20241203BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241203BHJP
C12J 1/04 20060101ALI20241203BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20241203BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
A23L33/105
C12P7/54
A23L2/00 F
A23L2/52 101
C12J1/04 101Z
C12J1/04 103Z
C12N1/16 G
C12N1/20 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539924
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2022021334
(87)【国際公開番号】W WO2023128531
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0189748
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524246447
【氏名又は名称】モーニング ファイティング インターナショナル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MORNING FIGHTING INTERNATIONAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】5F A-dong 24-1,Samseong-ro 100-gil Gangnam-gu Seoul 06167,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ソ、グォン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウル リム
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB09
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF13
4B064AD04
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4B065AA02X
4B065AA02Y
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4B128BL01
4B128BL38
4B128BL39
4B128BP02
4B128BP05
4B128BP14
(57)【要約】
二日酔い解消と肝保護効能を有するケンポナシの実発酵酢の製造方法およびこれを主原料として製造した飲料組成物に関する。本発明のケンポナシの実を用いた発酵酢の製造方法は、ケンポナシの実を用いてケンポナシの実濃縮液を作成し、これを16°Brixに調節した後、10%(v/v)の酒母を接種して温度28~32℃でアルコール発酵させた後にろ過したアルコール発酵液ろ液を酢酸発酵基質として使用する。前記酢酸発酵は、ケンポナシの実をアルコール発酵させた発酵液に種酢10%(v/v)を接種した後、28~32℃の温度で120~180rpmの条件で発酵させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二日酔い解消と肝保護効能を有するケンポナシの実発酵酢の製造方法において、
前記ケンポナシの実発酵酢の製造方法は、ケンポナシの実を用いてケンポナシの実濃縮液を作成し、これを16°Brixに調節した後、10%(v/v)の酒母を接種して温度28~32℃でアルコール発酵させた後にろ過したアルコール発酵液ろ液を酢酸発酵基質として使用し、
前記酢酸発酵は、ケンポナシの実のアルコール発酵液を入れ、種酢10%(v/v)を接種した後、28~32℃の温度で120~180rpmの条件で発酵させる
ことを特徴とする二日酔い解消と肝保護効能を有するケンポナシの実発酵酢の製造方法。
【請求項2】
前記ケンポナシの実濃縮液は、洗浄したケンポナシの実に重量対比5~10倍の水を入れて加熱して熱水抽出して濃縮させる
請求項1に記載の二日酔い解消と肝保護効能を有するケンポナシの実発酵酢の製造方法。
【請求項3】
前記アルコール発酵は、菌株サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(KCCM11306)をYM平板培地に継代培養後、YM液体培地で48時間静置培養する
請求項1または2に記載の二日酔い解消と肝保護効能を有するケンポナシの実発酵酢の製造方法。
【請求項4】
前記酢酸発酵は、菌株アセトバクターアセティ(Acetobacter aceti)(KCCM12654)を水100重量部にマンニトール2~3重量部、ペプトン0.1~0.5重量部および酵母エキス0.3~0.8重量部を混合した液体培地で30℃で48時間培養する
請求項1または2に記載の二日酔い解消と肝保護効能を有するケンポナシの実発酵酢の製造方法。
【請求項5】
ケンポナシの実発酵酢を用いた飲料組成物は、精製水100重量部にケンポナシの実発酵酢0.5~7重量部、ケンポナシ濃縮液1~3重量部、異性化糖10~15重量部、フラクトオリゴ糖1~5重量部、リンゴ濃縮液0.5~1重量部、無水クエン酸0.1~0.2重量部、酵母抽出粉末0.1重量部、複合オウゴン抽出物0.01~0.03重量部、タウリン1~2重量部、オオアザミ抽出粉末0.01~0.10重量部およびクルクミン0.01~0.05重量部を含む
ことを特徴とするケンポナシの実発酵酢を用いた飲料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二日酔い解消と肝保護効能を有する発酵ケンポナシの製造方法およびこれを主原料として製造した飲料組成物に関し、詳細には、ケンポナシまたはケンポナシの実を発酵させて、二日酔い解消効能を有し、肝保護効能を有する発酵酢を製造し、これを用いて飲料組成物を製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
ケンポナシ(Hovenia dulcis Thunb)は、クロウメモドキ科落葉高木であり、ケンポノナシ、ジク、ヒロハケンポナシなどと呼ばれ、漢方医学では、肝機能改善およびアルコール解毒作用に優れていると知られている。
【0003】
ケンポナシの実は、植物図説や本草学において利尿、喉の渇き解消、肝機能保護および酒毒除去に優れていて、近年、ケンポナシの実の抗糖尿、抗酸化作用、アルコール体内代謝促進、二日酔い解消および喉の渇き解消などの薬理効果が知られていて、これを用いた保健機能食品の製造に使用しようとする努力が多様に進行している。
【0004】
人体は、アルコールを適度に摂取すると、健康増進および社交に役立つが、飲み過ぎになると、二日酔いによる嘔吐、喉の渇き、筋肉痛、頭痛および吐き気などを誘発し、生活に障害をもたらし、持続的なアルコール摂取は、体内代謝障害、栄養素吸収阻害を起こし、栄養不足、アルコール性脂肪肝、肝硬変、肝炎などの肝疾患と、糖尿、神経精神障害およびがんなどの病気をもたらす。
【0005】
アルコールは、肝で主に代謝作用を通じてアセトアルデヒドを経てアセテートに酸化するが、体内に二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドによって肝細胞が損傷し、過剰のアルコールは、脂質代謝に影響を及ぼし、脂肪酸の過剰産生および脂肪酸酸化の減少をもたらし、脂肪肝を誘発させるので、アルコール摂取による二日酔いを解消し、肝損傷を抑制するための研究が進められている。
【0006】
近年、病気の様相の変化によって、消費者の関心は、醗酵食品や伝統食品などの健康食品であるスロフードへの関心が増加し、ケンポナシを用いた二日酔い解消飲料への関心が増加している。
【0007】
酢は、酒と共に人類の食生活において長い歴史を持つ代表的な醗酵食品であり、酸味と糖類、揮発性または不揮発性の有機酸、エステル、アミノ酸などを含有しており、酢の成分は、疲労回復、老化防止などの生理活性機能と、高血圧、動脈硬化、体内代謝調節機能などの効能が報告されていて、保健機能食品として注目されている。酢の種類は、果実類、穀類などを主原料として製造した醸造酢と、酢酸や氷酢酸を水で希釈して製造した合成酢とに分類される。
【0008】
最近、食生活文化が向上し、健康に対する意識の拡大に伴い、合成酢よりもリンゴ、柿、ブドウなどのような様々な果菜類を用いた天然醸造酢の研究が活発に行われているが、従来ケンポナシの実を用いた二日酔い解消および肝保護に関する酢の研究は不十分な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであって、その目的は、肝機能改善およびアルコール分解に優れたと報告されたケンポナシの実を主原料とする酢酸発酵原液を機能性食品として素材化し、これに対する二日酔い解消および肝機能保護効能を有する機能性飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、ケンポナシの実を用いて発酵酢を製造し、これを用いて二日酔い解消および肝保護効能を有する機能性飲料を製造する。
【0011】
本発明のケンポナシの実を用いた発酵酢の製造方法は、ケンポナシの実を用いてケンポナシの実濃縮液を作成し、これを16°Brixに調節した後、10%(v/v)の酒母を接種して温度28~32℃でアルコール発酵させた後にろ過したアルコール発酵液ろ液を酢酸発酵基質として使用する。前記酢酸発酵は、ケンポナシの実をアルコール発酵させた発酵液に種酢10%(v/v)を接種した後、28~32℃の温度で120~180rpmの条件で発酵させる。
【0012】
前記ケンポナシの実濃縮液は、洗浄したケンポナシの実に重量対比5~10倍の水を入れて加熱して熱水抽出して濃縮させたり、アルコール抽出で製造することができる。
【0013】
前記アルコール発酵は、菌株サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(KCCM11306)をYM平板培地に継代培養後、YM液体培地で48時間静置培養する。
【0014】
前記YM平板培地は、前記発酵菌株を0.85%NaCl溶液で希釈した後、LB、YM、PDA、MRS平板培地に塗抹した後、28~32℃恒温器で培養した後、液体培地で培養した。
【0015】
前記YM液体培地は、水100重量部にデキストロース(Dextrose)0.5~1.5重量部、ペプトン(Peptone)0.2~0.8重量部、酵母エキス0.1~0.5重量部、麦芽エキス0.1~0.5重量部を含有する培地を使用する。
【0016】
前記酢酸発酵は、菌株アセトバクターアセティ(Acetobacter aceti)(KCCM12654)を水100重量部にマンニトール2~3重量部、ペプトン0.1~0.5重量部および酵母エキス0.3~0.8重量部を混合した液体培地で30℃で48時間培養させる。
【0017】
本発明のケンポナシの実発酵酢を用いた飲料組成物は、精製水100重量部にケンポナシの実発酵酢0.5~7重量部、ケンポナシ濃縮液1~3重量部、異性化糖10~15重量部、フラクトオリゴ糖1~5重量部、リンゴ濃縮液0.5~1重量部、無水クエン酸0.1~0.2重量部、酵母抽出粉末0.1重量部、複合オウゴン抽出物0.01~0.03重量部、タウリン1~2重量部、オオアザミ抽出粉末0.01~0.10重量部およびクルクミン0.01~0.05重量部を含んで製造する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、肝機能改善およびアルコール分解に優れたケンポナシの実を用いた発酵酢を提供する効果がある。
【0019】
また、本発明は、前記発酵酢を主原料とする酢酸発酵原液を機能性食品として素材化して二日酔い解消飲料を提供することができ、肝機能保護効能を有する機能性飲料を提供する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のケンポナシの実を用いた発酵酢の製造方法は、ケンポナシの実を用いてケンポナシの実濃縮液を作成し、これを16°Brixに調節した後、10%(v/v)の酒母を接種して温度28~32℃でアルコール発酵させた後にろ過したアルコール発酵液ろ液を酢酸発酵基質として使用する。前記酢酸発酵は、ケンポナシの実をアルコール発酵させた発酵液に種酢10%(v/v)を接種した後、28~32℃の温度で120~180rpmの条件で発酵させる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などに基づいて詳細に説明する。しかしながら、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が下記実施例に限定されると解すべきものではない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0022】
本発明の明細書全般に使用される「発酵ケンポナシ」は、発明者がケンポナシまたはケンポナシの実を発酵させて「発酵酢」を製造する場合を意味するものと定義し、より正確には、発酵ケンポナシというのは、「ケンポナシの実発酵酢」を意味する。
【0023】
本発明のケンポナシの実を用いた発酵酢の製造方法は、ケンポナシの実を用いてケンポナシの実濃縮液を作成し、これを16°Brixに調節した後、10%(v/v)の酒母を接種して温度28~32℃でアルコール発酵させた後にろ過したアルコール発酵液ろ液を酢酸発酵基質として使用する。前記ケンポナシの実濃縮液の糖度を調節するとき、糖化液で調節し、14~18°Brixに調節し、好ましくは、16°Brixに調節する。
【0024】
前記酒母は、14~16°Brixに調節したケンポナシの実濃縮液にアルコール発酵菌株サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(KCCM11306)を接種し、28~32℃の温度で40~56時間培養して、酒母として使用する。
【0025】
前記酢酸発酵は、ケンポナシの実をアルコール発酵させた発酵液に種酢10%(v/v)を接種した後、28~32℃の温度で120~180rpmの条件で発酵させる。前記種酢は、アルコール発酵で得られたケンポナシの実アルコール発酵液をろ過した後、当該ろ液に酢酸菌株アセトバクターアセティ(Acetobacter aceti)(KCCM寄託菌株:12654)を接種し、28~32℃の温度で120~180rpmの回転速度、好ましくは、150rpmで振とう培養しながら、48時間培養して、種酢に使用した。
【0026】
前記ケンポナシの実濃縮液は、洗浄したケンポナシの実に重量対比5~10倍の水を入れて加熱して熱水抽出した後、濃縮させたり、アルコール抽出で製造することができる。
【0027】
前記アルコール発酵は、菌株サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(KCCM11306)をYM平板培地に継代培養後、YM液体培地で48時間静置培養する。
【0028】
前記YM平板培地は、前記発酵菌株を0.85%NaCl溶液で希釈した後、LB、YM、PDA、MRS平板培地に塗抹した後、28~32℃恒温器で培養した後、液体培地で培養した。
【0029】
前記YM液体培地は、水100重量部にデキストロース(Dextrose)0.5~1.5重量部、ペプトン(Peptone)0.2~0.8重量部、酵母エキス0.1~0.5重量部、麦芽エキス0.1~0.5重量部を含有する培地を使用する。
【0030】
前記酢酸発酵は、菌株アセトバクターアセティ(Acetobacter aceti)(KCCM12654)を水100重量部にマンニトール2~3重量部、ペプトン0.1~0.5重量部および酵母エキス0.3~0.8重量部を混合した液体培地で30℃で48時間培養させる。
【0031】
本発明のケンポナシの実発酵酢を用いた飲料組成物は、精製水100重量部にケンポナシの実発酵酢0.5~7重量部、ケンポナシ濃縮液1~3重量部、異性化糖10~15重量部、フラクトオリゴ糖1~5重量部、リンゴ濃縮液0.5~1重量部、無水クエン酸0.1~0.2重量部、酵母抽出粉末0.1重量部、複合オウゴン抽出物0.01~0.03重量部、タウリン1~2重量部、オオアザミ抽出粉末0.01~0.10重量部およびクルクミン0.01~0.05重量部を含んで製造する。
【0032】
前記オオアザミ(Silybum marianum L.Gaertner)に含有されたシリマリン(silymarin)は、フラボノリグナン(flavanolignan)であり、実際にC25H22O10の同じ分子式を有するシリビン(silybin)、イソシリビン(isosilybin)、シリジアニン(silydianin)およびシリクリスチン(silychristin)の4種の異性体の混合物を含む。
【0033】
前記シリマリンは、がん細胞の増殖を抑制し、糖尿にも効果があると報告され、グラム陽性菌に対する抗微生物活性もあり、また、最近では、放射線および紫外線による皮膚損傷にも効果があると報告されており、肝臓保護作用とアルコール誘導脂質酸化の予防およびアルコール性肝硬変などに保護効果があると報告されている。
【0034】
クルクミン(英語:curcumin)は、インド産ウコン(クルクマ)に主に含まれているポリフェノールの一種である。クルクミンは、ウコンの黄色を出すと知られている。
【0035】
前記クルクミンは、わずかに黄色で食品に色を付けるときに使用される食品添加物であり、Eコードは、E100である。クルクミンおよびクルクミンに関連する特定成分PPAR-ガンマ(Peroxisome Proliferator Activated Receptor-gamma)が炎症を起こす媒介因子を遮断する基剤として作用し、抗炎、抗酸化および抗菌効果があると明らかにしている。
その他に酵母抽出粉末および複合オウゴン抽出物を含む成分は、市場から購入して混合使用する。
1.急性アルコール投与動物実験デザイン
【0036】
本発明において実験動物は、Sprague-Dawley雄ラット48匹をヒョチャンサイエンス(Daegu,Korea)から分譲された。動物飼育室は、一定の温度(22±2℃)および湿度(50±5%)、12時間の明暗周期を維持しながら飼育し、卵塊法によって急性アルコール分解能のためにアルコール単独投与対照群(Control)、1.5%ケンポナシの実濃縮液群(HT)、ケンポナシの実発酵酢4%希釈液群(PHT)、ケンポナシ二日酔い解消飲料群(DHD)、陽性対照群(A、B)に区分した。
【0037】
陽性対照群の場合、二日酔い解消飲料として市販される他社製品を用いる。各群の動物は、アクリルケージに2匹ずつ分離し、1週間固形食餌に適応させた後に使用する。実験当日、15時間絶食させた後、ラットに各試料を7ml/kgで投与し、30分後に40%発酵酒精アルコールを5ml/kg経口投与した後、アルコールおよびアセトアルデヒドの濃度を測定するために180分後に血液を採取した。採取した血液は、3時間室温に放置した後、12000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液のみを取って実験に使用した。
2.血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度の測定
【0038】
血清中アルコール濃度は、エタノール分析キット(Megazyme,Ireland)を用いて測定し、血清中アセトアルデヒド濃度は、アセトアルデヒド分析キット(Megazyme,Ireland)を用いて測定した。
3.実験結果
A)急性アルコール性ラットモデルにおけるアルコールおよびアセトアルデヒド濃度の測定
【0039】
急性アルコール性ラットモデルのアルコール分解能結果は、下記のとおりである。アルコールおよびアセトアルデヒド濃度は、対照群(Control)において最も高く現れ、HT群において類似な濃度で確認された。PHT群は、対照群(Control)およびHT群と比較したとき、血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度が有意的に減少したことが示され、DHD群は、陽性対照群であるA、B群よりさらに減少したことが確認され、特にA群と有意差があることが示された。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度を減らすことから見て、体内のアルコール分解能に優れているものと判断される。
【0040】
【0041】
【0042】
図:(A)血清中アルコール濃度および(B)血清中アセトアルデヒド濃度に対するDHDの影響。上付き文字が異なるデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05) を示す。
【0043】
4.ケンポナシの実を主原料とするケンポナシの実発酵酢飲料の慢性アルコール投与モデルにおける二日酔い解消および肝保護効果の確認
イ.材料および方法
A)慢性アルコール投与動物実験デザイン
【0044】
実験動物は、Sprague-Dawley雄ラット48匹をヒョチャンサイエンス(Daegu,Korea)から分譲され、全6群として正常群(Normal)、アルコール単独投与対照群(Control)、1.5%ケンポナシの実濃縮液群(HT)、加工したケンポナシの実4%希釈液群(PHT)、ケンポナシ二日酔い解消飲料群(DHD)、肝機能改善剤と知られたシリマリンを投与した陽性対照群(Silymarin)のように分けた。各群の動物は、アクリルケージに2匹ずつ卵塊法によって分離し、1週間固形食餌に適応させた後、実験を進めた。アルコールによる急性毒性を防止するために、各一週間ずつ10、20%発酵酒精アルコールを投与し、4週間30%発酵酒精アルコールを投与すると同時に、各試料を投与した。陽性対照群は、50mg/kgを投与し、陽性対照群を除いた残りの群は、7ml/kgで投与し、正常群と対照群は、同量の蒸留水を投与する。実験当日、15時間絶食させた後、犠牲にして、血液および臓器を採取した。採取した血液は、3時間室温に放置した後、12000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液のみを取って実験に使用した。
【0045】
本実験に使用した基本食餌は、固形食餌を購入して使用し、水またはアルコールと食餌を自由に供給し、毎日体重と食餌摂取量、水またはアルコール摂取量を測定する。動物実験は、東亜大学校の実験動物利用基準に基づいて倫理的に実施した。
【0046】
B)血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度の測定
血清中アルコール濃度は、エタノール分析キット(Megazyme,Ireland)を用いて測定し、血清中アセトアルデヒド濃度は、アセトアルデヒド分析キット(Megazyme,Ireland)を用いて測定した。
【0047】
C)肝組織アルコール脱水素酵素(ADH)およびアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性の測定
【0048】
肝組織100mgを1xPBS500μlと混合して均質化した後、10000rpm、4℃、5分間遠心分離し、上澄み液を取って実験に使用し、ADH活性は、ADH活性キット(Bioassay systems,San Francisco Bay)を用いて測定し、ALDH活性は、ALDH分析キット(BioVision,California)を用いて測定した。
【0049】
D)過酸化脂質含有量の測定
過酸化脂質は、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の含有量を測定した。肝組織を均質化した溶液1mlとTBA(2-thiobarbituric acid)試薬2mlを撹拌した後、沸騰水に30分間反応させた。その後、氷水で反応を停止させ、3000rpm、10分間遠心分離し、上澄み液を取って535nm吸光度で測定した。
【0050】
E)脂質濃度および生化学的指標物質の分析
血清中LDLおよびHDL-コレステロール、トリグリセリド含有量、ALT(GPT)、AST(GOT)、GGT(γ-GTP)濃度は、専門分析機関であるSoutheast Medi-Chem Institute(Korea)で分析を進め、血中総コレステロール含有量と肝組織のトリグリセリド濃度は、それぞれ分析キット(Elabscience,United States)で測定した
【0051】
F)グルタチオン含有量の分析
血清および肝組織のグルタチオン含有量分析は、キット(Elabscience,United States)を用いて測定した。
【0052】
G)ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色分析
肝組織を4%ホルムアルデヒド溶液で固定させた後、H&E溶液で染色させて、光学顕微鏡で観察した。
【0053】
ロ.実験結果
A)慢性アルコール性ラットモデルにおける体重および飲料摂取量の変化
慢性アルコール投与動物の体重および飲料摂取量の変化に対する結果は、下記の表の通りである。ラットの初期体重は、すべての群において有意差を示さなかったが、最終体重において Control群とNormal群において有意差を示し、HT群とPHT群、Silymarin群は、Control群と有意差を示さなかったが、PHT群のラットにおいて体重が増加することが示された。DHD群の場合、Normal群と有意差を示さなかった。飲料摂取量の場合、すべての群において有意差を示さなかった。
【0054】
表:慢性エタノール投与ラットの体重、体重の増加、および水消費量に対するDHDの影響
【0055】
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
【0056】
B)慢性アルコール性ラットモデルにおける臓器重量の変化
慢性アルコール投与ラットにおける臓器重量の変化は、下記の表の通りである。脾臓、腎臓、心臓の重量は、すべての群において有意差を示さなかった。肝の重量の場合、 Control群において最も高いことが示され、一方、Normal群において最も低い重量を示した。HT群とPHT群、Silymarin群は、Control群と有意的に肝の重量が減少したことが確認され、PHT群がHT群とSilymarin群より肝の重量が低いことが確認された。DHD群の場合、HT群、PHT群、Silymarin群より低い重量を示し、Normal群と有意差がないことが示された。睾丸の重量の場合、Control群において最も高い重量を示し、PHT群は、HT群とSilymarin群より低い重量を示した。DHD群は、Normal群と有意差がなく、低い睾丸の重量を示した。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、アルコール性脂肪肝を抑制すると判断される。
表:慢性エタノール投与ラットにおける臓器重量に対するDHDの変化
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
B)慢性アルコール性ラットモデルにおける肝損傷指標物質の変化
【0057】
慢性アルコール投与したラットにおける肝損傷指標物質の測定結果は、下記の図に示した。GOT、GPTおよびγ-GTP濃度は、Control群において最も増加したことが示され、 Normal群において最も低い濃度で確認された。GOT、GPTおよびγ-GTP濃度は、PHT群は、Control群、HT群、Silymarin群より有意的に減少することが確認された。DHD群のGOT、GPTおよびγ-GTP濃度は、Normal群と有意差を示さず、Control群 、HT群、PHT群、Silymarin群より有意的に低い濃度であることが示された。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、アルコール性肝損傷から肝を保護すると判断される。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
図:慢性エタノール投与ラットにおける(A)血清中GOT(AST)含有量、(B)血清中GPT(ALT)含有量および(C)血清中γ-GTP含有量に対するDHDの影響。
【0062】
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
【0063】
C)慢性アルコール性ラットモデルにおけるアルコール分解酵素活性(ADH,ALDH)の変化
【0064】
慢性アルコール投与ラットにおけるADHおよびALDH活性の結果は、下記のとおりである。ADH活性は、Control群よりHT群、PHT群、DHD群、Silymarin群 がさらに高い活性を示し、特にSilymarin群、PHT群、DHD群が有意的に増加した。PHT群は、HT群、Silymarin群より有意的に増加し、DHD群は、有意的に最も高いADH活性を示した。ALDH活性は、PHT群がControl群、HT群、Silymarin群より高い活性を示し、特にSilymarin群より有意的に高かった。DHD群は、ALDH活性が有意的に最も高いことが示された。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、アルコール分解酵素活性を増加させると判断される。
【0065】
【0066】
【0067】
図:慢性エタノール投与ラットにおける肝内(A)ADH活性および(B)ALDH活性に対するDHDの影響。
【0068】
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
【0069】
D)慢性アルコール性ラットモデルにおける血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度の変化
慢性アルコール投与ラットにおけるアルコールおよびアセトアルデヒド濃度の結果は、下記の図のとおりである。血中アルコール濃度は、Control群において有意的に最も高いことが示され、Normal群において最も低いことが示された。PHT群は、HT群より有意的に低い濃度を示し、DHD群は、HT群、PHT群、Silymarin群より有意的に低い濃度を示し、Normal群と有意差を示さなかった。アセトアルデヒド濃度は、Control群において有意的に最も高いことが示され、Normal群において最も低いことが示された。PHT群は、HT群とSilymarin群より有意的に低い濃度を示し、DHD群は、HT群、PHT群、Silymarin群より有意的に低いアセトアルデヒド濃度を示した。また、DHD群は、Normal群と有意差を示さなかった。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度を減らすと判断される。
【0070】
【0071】
【0072】
図:慢性エタノール投与ラットにおける(A)血清中アルコール濃度および(B)血清中アセトアルデヒド濃度に対するDHDの影響。
【0073】
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
【0074】
E)慢性アルコール性ラットモデルにおける肝および血中グルタチオン(GSH)濃度の変化
慢性アルコール投与ラットにおける肝および血中GSH濃度の測定結果は、下記の図のとおりである。肝組織および血中GSH濃度は、Control群において最も低い濃度であることが示され、HT群は、Control群より高かったが、有意差を示さず、PHT群は、HT群より有意差を示さなかったが、高い濃度を示した。DHD群は、肝および血中GSH濃度が有意的に最も高い濃度を示した。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取が肝および血中GSHを活性化させると判断される。
【0075】
【0076】
【0077】
図:慢性エタノール投与ラットにおける(A)肝内GSH含有量および(B)血清中GSH含有量に対するDHDの影響。
【0078】
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
【0079】
F)慢性アルコール性ラットモデルにおける肝および血中TBARS(MDA)濃度の変化
慢性アルコールラットにおける肝および血中過酸化脂質の濃度は、下記の図に示した。肝内過酸化脂質の濃度の場合、Control群において最も高く、Normal群において最も低かった。HT群は、Control群より過酸化脂質の濃度が低かったが、有意差を示さず、PHT群は、HT群より有意的に濃度が減少し、Silymarin群より低い濃度を示した。DHD群は、PHT群より有意的に低い過酸化脂質の濃度を示し、Normal群と有意差を示さなかった。血中過酸化脂質の場合、Control群において有意的に最も高い濃度を示した。HT群とSilymarin群は、Control群より有意的に低い濃度であることが確認され、PHT群は、HT群とSilymarin群より有意的に低い濃度を示した。DHD群は、PHT群より有意的に低い濃度を示し、Normal群と有意差を示さなかった。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、肝および血中過酸化脂質の生成を抑制すると判断される。
【0080】
【0081】
【0082】
図:慢性エタノール投与ラットにおける(A)肝内TBARS濃度および(B)血清中TBARS濃度に対するDHDの影響。
【0083】
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
【0084】
G)慢性アルコール性ラットモデルにおける肝および血中トリグリセリド濃度の変化
慢性アルコール性ラットにおける肝および血中トリグリセリド濃度の測定結果は、下記の図のとおりである。肝および血中トリグリセリド濃度の場合、Control群において有意的に最も高いことが示された。HT群は、Control群より有意的に濃度が低く、Silymarin群と類似していることが確認された。PHT群は、HT群とSilymarin群 より有意的に肝および血中トリグリセリド濃度が低いことが示され、DHD群は、PHT群より有意的に低い濃度であることが確認され、Normal群と類似した濃度を示した。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、肝および血中トリグリセリドの生成を抑制させると判断される。
【0085】
【0086】
【0087】
図:慢性エタノール投与ラットにおける(A)肝内トリグリセリド含有量および(B)血清中トリグリセリド含有量に対するDHDの影響。
【0088】
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
【0089】
H)慢性アルコール性ラットモデルにおける血中総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール濃度の変化
慢性アルコール投与ラットにおける血中総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール濃度の結果は、下記の図に示した。総コレステロール濃度は、Control群と比較したとき、HT群、Silymarin群において有意差を示さなかった。PHT群は、HT群より有意的に減少したことを確認し、DHD群は、PHT群より有意的に低い総コレステロール濃度を示し、Normal群と類似した数値を示した。血中LDL-コレステロール濃度の場合、Control群において有意的に最も高い濃度であることが示され、HT群とSilymarin群は、Control群より有意的に低い濃度を示した。PHT群は、HT群より有意的に低い数値であることが示され、DHD群は、PHT群より有意的に低い濃度を示した。特にDHD群は、Normal群と有意差がないことが確認された。HDL-コレステロール濃度の場合、Control群において最も低い数値であることが示され、HT群とSilymarin群は、Control群と有意差を示さなかった。PHT群は、HT群とSilymarin群と有意差を示さなかったが、HDL-コレステロール濃度がさらに増加したことが確認され、Normal群と類似した濃度を示した。DHD群は、Normal群より有意的に高い濃度を示した。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、総コレステロールおよびLDL-コレステロール濃度を低減し、HDL-コレステロール濃度を増加させることが確認された。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
図:慢性エタノール投与ラットにおける(A)総コレステロール含有量、(B)血清中LDLコレステロール含有量、および(C)血清中HDLコレステロール含有量に対するDHDの影響。
【0094】
データ値は平均値±標準誤差(n=6)として示した。異なる上付き文字を有するデータ値はダンカンの多重範囲検定による有意差(p<0.05)を示す。
【0095】
I)慢性アルコール性ラットモデルにおける肝組織の形態学的およびH&E染色の変化
慢性アルコール投与ラットにおいて肝組織の形態学的およびH&E染色結果は、下記のとおりである。アルコールによって脂肪肝が形成されると、肝の色は、赤褐色から黄褐色に変わるが、Control群の場合、脂肪肝の形成によって黄褐色に変わったことが示された。PHT群は、Control群とHT群より赤褐色を帯びることが示され、DHD群は、Normal群と類似した濃い赤褐色を帯びた。H&E染色結果、Control群において多くの脂肪滴が現れた。HT群は、Control群より脂肪滴が少ないことが確認され、PHT群は、HT群より脂肪滴の形成が少ないと認められる。DHD群は、脂肪滴が殆どないことが示され、Normal群と類似した形態を示した。ケンポナシの実発酵酢飲料の摂取は、アルコール性脂肪肝を抑制すると判断される。
【0096】
【0097】
図:慢性エタノール投与ラットにおける肝組織の形態学的変化に対するDHDの影響。
【0098】
【0099】
図:慢性エタノール投与ラットにおける肝組織形態H&E(倍率400倍)に対するDHDの影響
【国際調査報告】