IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィの特許一覧

特表2024-545737複数のソースによって生じる無線周波数干渉を特徴付ける方法、観測デバイス、システム及びコンピュータープログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】複数のソースによって生じる無線周波数干渉を特徴付ける方法、観測デバイス、システム及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/345 20150101AFI20241203BHJP
   H04B 17/391 20150101ALI20241203BHJP
   G01R 29/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H04B17/345
H04B17/391
G01R29/00 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024555571
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2022037526
(87)【国際公開番号】W WO2023162322
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】22305221.8
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】グエン、ヴィエト・ホア
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
(57)【要約】
本開示は、複数のソースによって生じる無線周波数干渉を特徴付けることに関する。少なくとも1つの観測デバイスが、複数の無線周波数帯域における干渉測定(I2)を行うために、様々な空間ロケーションにおいて、様々な時点に、上記複数の無線周波数帯域を連続して走査するのに用いられ、観測デバイスの現在の位置、及び、観測される周波数帯域における受信干渉電力の、連続時点における観測値を提供する。各干渉ソース及び各観測値について、1つの観測値を1つの干渉ソースに帰する尤度確率が計算される(S1)。この尤度確率計算は、上記観測値のそれぞれを1つの干渉ソースに割り当てる(S2)のに用いられる。より詳細には、尤度確率計算(S1)は、周波数観測値及び干渉電力観測値の双方に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のソースによって生じる無線周波数干渉を特徴付ける方法であって、
複数の無線周波数帯域における干渉測定(I2)を行うために、様々な空間ロケーションにおいて、様々な時点に、前記複数の無線周波数帯域を連続して走査する少なくとも1つの観測デバイスを用いるとともに、
現在の観測周波数、
前記観測デバイスの現在の位置、及び、
観測される周波数帯域における受信干渉電力、
の、連続時点における観測値を提供することと、
各干渉ソース及び各観測値について、1つの観測値を1つの干渉ソースに帰する尤度確率を計算すること(S1)と、
尤度確率計算を用いて前記観測値のそれぞれを1つの干渉ソースに割り当てること(S2)と、
前記観測値のうちの1つを割り当てられた各干渉ソースについて、前記干渉ソースのロケーション及び周波数占有を推定することと、
を含み、
前記尤度確率計算(S1)は、周波数観測値及び干渉電力観測値の双方に基づく、方法。
【請求項2】
前記尤度確率計算は、前記干渉ソースの各ソースについて、少なくとも、前記ソースのロケーションのデータ、及び前記ソースによる少なくとも2つの無線周波数帯域の占有のデータを記憶するデータベースを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データベースは、1つの干渉ソースへの観測値の各割り当て(S2)後に、前記方法の次の反復を考慮して更新される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各干渉ソースについて、前記データベースは、
過去の平均位置、及び、
過去の離散化位置の確率マップ、
のうちの少なくとも一方を提供する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
各干渉ソースについて、前記データベースは、
過去の平均無線周波数帯域占有、及び、
過去の無線周波数範囲占有の確率マップ、
のうちの少なくとも一方を提供する、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記データベースは、各干渉ソースについて、前記干渉ソースに既に割り当てられた以前の観測値の発生データを記憶する、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
現在の観測値について、前記現在の観測値に関係付けられる前記干渉ソースのうちの1つの前記尤度確率は、前記データベースのデータと、前記与えられた観測値のデータとの間の比較に基づいて計算され(S1)、前記比較は、
前記現在の観測値において測定される無線周波数電力のレベルと、前記データベースにおけるソースの過去の位置、及び前記観測デバイスの現在の位置によって与えられる、このソースに対応する無線周波数電力の最も近いレベルとの間の類似度と、
前記現在の観測値によって占有される無線周波数帯域と、前記データベースに従ってソースによって占有された無線周波数帯域との間の類似度と、
の決定を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1つの干渉ソースに対する少なくとも1つの観測値の割り当て(S2)は、
各干渉ソースについて計算された前記尤度確率をソートして、前記少なくとも1つの観測値を前記干渉ソースに帰することと、
計算された最も高い尤度確率を選択して、前記少なくとも1つの観測値を、前記計算された最も高い尤度確率を有する前記干渉ソースに割り当てることと、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記尤度確率は、
無線周波数電力領域における、前記観測デバイスとソースとの間の距離と、
データベースに従って前記ソースによって占有される周波数帯域と、干渉が前記観測値に従って測定される周波数帯域との間の距離と、
のユークリッド距離計算に基づいて計算される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1つの干渉ソースに対する少なくとも1つの観測値の割り当て(S2)は、
関係付けられた計算尤度確率に基づいて、各ソース割り当てをサンプリングすることであって、連続サンプルが前記関係付けられた計算尤度確率に収束するまで、初期ランダムドローに計算反復が続くこと、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
各尤度確率は、閾値と比較され、
前記計算された尤度確率が前記閾値を上回っている場合、計算された最も高い尤度確率を選択して、前記少なくとも1つの観測値を、前記計算された最も高い尤度確率を有する前記干渉ソースに割り当て、
前記計算された尤度確率が前記閾値を下回っている場合、前記ソース割り当てが、収束までサンプリングされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記観測デバイスは、前記干渉ソースが固定の位置にあると想定される間、連続した既知の位置で移動する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の無線周波数帯域の走査は、既知の空間位置を有する少なくとも3つの観測デバイスによって実行され、前記空間位置は整列されておらず、ソース位置決定は、前記3つの観測デバイスにわたる三角測量によって実行される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記尤度確率計算(S1)は、周波数観測値及び干渉電力観測値の同時ベイズ推論を伴う、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するコンピューター回路を備える観測デバイス。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するための少なくとも3つの観測デバイスを備えるシステム。
【請求項17】
コンピューターによって実行されると、前記コンピューターに、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線環境の監視に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くのワイヤレス通信デバイスが公衆帯域において動作しているため、干渉の共存に対処しなくてはならない。干渉の特徴付けは、無線環境の監視及び/又は無線リソースの管理に役立つ。特に、ワイヤレス干渉の特徴付けが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の干渉ソースが存在する無線環境における干渉監視は、通常、いくつかのデバイスから得られる観測値の分析を要する。観測中にソースが動くとき、問題は幾分より複雑になる。問題は通常、干渉を別個のソースとして識別し、次に各ソースの以下の特性を特徴付けることである。
・動作周波数帯域、
・ジオロケーション、
・アクティブ化率。
【0004】
本開示は状況の改善を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本開示は、複数のソースによって生じる無線周波数干渉を特徴付ける方法であって、
複数の無線周波数帯域における干渉測定を行うために、様々な空間ロケーションにおいて、様々な時点に、上記複数の無線周波数帯域を連続して走査する少なくとも1つの観測デバイスを用いるとともに、
現在の観測周波数、
観測デバイスの現在の位置、及び、
観測される周波数帯域における受信干渉電力、
の、連続時点における観測値を提供することと、
各干渉ソース及び各観測値について、1つの観測値を1つの干渉ソースに帰する尤度確率を計算することと、
上記尤度確率計算を用いて上記観測値のそれぞれを1つの干渉ソースに割り当てることと、
上記観測値のうちの1つを割り当てられた各干渉ソースについて、上記干渉ソースのロケーション及び周波数占有を推定することと、
を含み、
より詳細には、上述した尤度確率計算は、周波数観測値及び干渉電力観測値の双方に基づく、方法を提案する。
【0006】
したがって、周波数観測値、及びここでは特に、電力観測値の双方を用いて尤度確率を計算することが提案され、電力観測値は、干渉ソースと観測デバイスとの間の距離に関係付けられている。
【0007】
例えば、尤度確率計算は、周波数観測値及び干渉電力観測値の同時ベイズ推論を伴うことができる。代替的に、ユークリッド距離計算手法も用いることができる。
【0008】
一実施の形態において、以前の検出を記憶するデータベースを用いることができる。通常、一実施の形態において、上記の尤度確率計算は、上記干渉ソースの各ソースについて、少なくとも、上記干渉ソースのロケーションのデータ、及び上記干渉ソースによる少なくとも2つの無線周波数帯域の占有のデータを記憶するそのようなデータベースを用いることができる。
【0009】
通常、これらの記憶されたデータは、以前の観測値から導出することができる。したがって、干渉ソースのロケーションの上記データは、ソースの過去のロケーションのデータとすることができ、干渉ソースの占有の上記データは、通常、上記ソースの過去の周波数占有のデータとすることができる。
【0010】
上述したデータベースは、1つの干渉ソースへの観測値の各割り当て後に、方法の次の反復を考慮して更新することができる。
【0011】
したがって、干渉体の以前の識別のデータ(干渉のロケーション/周波数帯域(複数の場合もある))を記憶するデータベースの使用により、複数の干渉ソースの現在の決定を促進することができる。逆に、干渉体の決定後、データベースのコンテンツは、好ましくは、方法の次の未来の反復のために効率的に用いることができるように更新される。
【0012】
特定の実施の形態において、各干渉ソースについて、データベースは、
過去の平均位置、及び、
過去の離散化位置の確率マップ、
のうちの少なくとも一方を提供することができる。
【0013】
したがって、データベースは、ソースの過去の平均位置を提供することができ、より具体的には、この平均は、このソースの決定の日付の関数として逆重み付けすることができる。
【0014】
例えば、干渉ソースの現在の決定の確信度に依拠して、過去の平均位置は、以下に指定される「硬判定」実施形態の状況において用いることができ、確率マップは、同様に以下に説明される「ソースサンプリング」実施形態の状況において用いることができる。
【0015】
さらに、各干渉ソースについてデータベースは、
-過去の平均無線周波数帯域占有、及び、
-過去の無線周波数範囲占有の確率マップ、
のうちの少なくとも一方を提供することができる。
【0016】
データベースは、各干渉ソースについて、この干渉ソースに既に割り当てられた以前の観測値の発生データを記憶することができる。
【0017】
ソースに関連付けられている以前の観測値のこの情報は、現在の観測値がこの同じソースに関連付けられている(又は関連付けられていない)ことの確率計算にも役立つことができる。
【0018】
現在の観測値について、この現在の観測値に関係付けられる干渉ソースのうちの1つの尤度確率は、上記データベースのデータと、上記所与の観測値のデータとの間の比較に基づいて計算され、上述した比較は、
現在の観測値において測定される無線周波数電力のレベルと、観測デバイスの現在の位置に対する、上記データベースにおけるソースの過去の位置によって与えられる、このソースに対応する無線周波数電力の最も近いレベルとの間の類似度と、
現在の観測値によって占有される無線周波数帯域と、上記データベースに従ってソースによって占有された無線周波数帯域との間の類似度と、
の決定を含む。
【0019】
したがって、尤度確率は、最終的に同じソースに対応することができる2つの項目に基づいて計算される。
観測デバイスによって受信及び測定される信号の無線周波数電力によって与えられる観測デバイスに対するこのソースの現在の位置、及び、
そのようなソースがアクティブである周波数帯域(複数の場合もある)。
【0020】
上述した「硬判定」実施形態において、1つの干渉ソースに対する少なくとも1つの観測値の割り当ては、
各干渉ソースについて計算された尤度確率をソートして、上記少なくとも1つの観測値を上記干渉ソースに帰することと、
計算された最も高い尤度確率を選択して、上記少なくとも1つの観測値を、計算された最も高い尤度確率を有する干渉ソースに割り当てることと、
を含むことができる。
【0021】
この実施の形態において、尤度確率は、例えば、
無線周波数電力領域(ひいては、通常、空間領域にリンクされる)における、観測デバイスとソースとの間の距離と、
データベースに従って上記ソースによって占有される周波数帯域と、干渉が上記観測値に従って測定される周波数帯域との間の距離と、
のユークリッド距離計算に基づいて計算されることができる。
【0022】
「ソースサンプリング」実施形態において、1つの干渉ソースに対する少なくとも1つの観測値の割り当ては、
関係付けられた計算尤度確率に基づいて、各ソース割り当てをサンプリングすることであって、連続サンプルが上記関係付けられた計算尤度確率に収束するまで、初期ランダムドローに計算反復が続くこと、
を含む。
【0023】
例えば、「硬判定」実施形態又は「ソースサンプリング」実施形態を選択する観点で、各尤度確率は、閾値と比較することができ、
-計算された尤度確率が上記閾値を上回っている場合、計算された最も高い尤度確率を選択して、上記少なくとも1つの観測値を、計算された最も高い尤度確率を有する干渉ソースに割り当て(硬判定実施形態)、
-計算された尤度確率が上記閾値を上回っている場合、ソース割り当てが、収束までサンプリングされる(ソースサンプリング実施形態)。
【0024】
観測デバイスについて、一実施の形態において、観測デバイスは、上記干渉ソースが固定の位置にあると想定される間、連続した既知の位置で移動することができる。
【0025】
例えば、観測デバイスは、既知の軌道を有する列車等の移動車両に設置することができるか、又はその連続した現在位置を知るためにGPSを単に備えることができる。
【0026】
あるいは、上述した複数の無線周波数帯域の走査は、既知の空間位置(例えば、固定された位置)を有する少なくとも3つの観測デバイスによって実行することができ、上記空間位置は整列されておらず、ソース位置決定は、3つの観測デバイスにわたる三角測量によって実行されることができる。
【0027】
本開示は、上記で提示された方法を実行するコンピューター回路を備える観測デバイスも対象とすることができる。
【0028】
本開示は、方法を実行するための少なくとも3つの観測デバイスを備えるシステムも対象とする。
【0029】
本開示は、コンピューターによって実行されると、コンピューターに、方法を実行させる命令を含むコンピュータープログラムも対象とする。
【0030】
本開示は、そのようなコンピュータープログラムの命令コードを記憶する非一時的コンピューターストレージ媒体も対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】干渉の分析処理の主要ステップを示す図である。
図2a】空間ドメインにおける移動観測デバイスの設定を示す図である。
図2b】周波数ドメインにおける移動観測デバイスの設定を示す図である。
図3a】空間ドメインにおける複数の観測デバイスの設定を示す図である。
図3b】周波数ドメインにおける複数の観測デバイスの設定を示す図である。
図4a】干渉ソースの周波数ドメインにおける干渉アクティビティを示す図である。
図4b】空間ドメインにおける真のそれぞれの位置を示す図である。
図5a】それぞれ、周波数ドメインにおいて周波数ホッピングを介した、及び空間ドメインにおいて受信電力測定値を介した、移動デバイスの観測値を示す図である。
図5b】それぞれ、周波数ドメインにおいて周波数ホッピングを介した、及び空間ドメインにおいて受信電力測定値を介した、移動デバイスの観測値を示す図である。
図6a】移動デバイス、及び異なるチャネルにおいてアクティブな5つの干渉ソース(図6aにおける5つの異なる色又は灰色レベル)を用いた方法の実施の結果を示す図である。
図6b】移動デバイス、及び異なる期間中にアクティブな5つの干渉ソースを用いた方法の実施の結果を示す図である。
図6c】移動デバイス、及び移動デバイスの異なる位置に対する5つの干渉ソースを用いた方法の実施の結果を示す図である。
図6d】移動デバイス、及び最終的に決定されるそれぞれの位置を有する5つの干渉ソースを用いた方法の実施の結果を示す図である。
図7】上記で説明した方法を実行するための干渉分析デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の更なる詳細及び利点は、以下に例として与えられる実施形態の以下の説明を読むことで理解され、関連する図面から明らかとなろう。
【0033】
図1を参照すると、通信システムの干渉体を含む環境の現在の観測値I2(必須)及び任意選択のデータベースI1(データベースは、方法の以前のステップにおいて先行する観測値から構築することができる)を所与として、方法は、周波数利用、ジオロケーション特性及び/又は時間使用量の観点から干渉を分析することを提案する。干渉分析デバイスは、複数の周波数、ロケーション及び時点において観測を実行する。
【0034】
各処理ステップの第1の入力は干渉データベースである。各分離された現在の干渉ソースについて、データベースは、ステップI1において、以下の情報を提供する。
・以下のいずれかである位置情報:
-検討される空間における平均位置、又は、
-検討される空間の離散化位置の確率マップ、
・以下のいずれかである周波数情報:
-平均周波数、又は、
-検討される周波数範囲の確率マップ、
・関連観測値:
-現在の干渉ソースに既に割り当てられた以前の観測値。
【0035】
上述した「現在の観測値」は、ステップI2において以下からなり得る。
-観測デバイス(上述した干渉分析デバイス)の位置、
-受信干渉電力、及び、
-観測された周波数チャネルインデックス。
【0036】
実際に、干渉分析デバイスは、各チャネルが適切なインデックスを有する、複数の無線周波数チャネル(例えば、以下に解説する図の例では16個のチャネル)にわたって所与の周波数帯域を走査する。
【0037】
次に、ステップS1は、メンバーシップ計算を含む。干渉ソースのデータベースを用いて、各ソースの現在の観測値の尤度が、ベイズ推論に基づいて計算される。計算は、以下を測定する。
-観測値によって与えられる電力のレベルと、データベースにおけるこのソースの位置によって与えられるソースの電力の最も近いレベルとの間の類似度、及び
-周波数観測値とソースの周波数データベースとの間の類似度。
この確率は、観測値とソースとの間の連結がどれだけ強いかを反映する。
【0038】
次に、ステップS2は観測分類を含む。前のステップ、ステップ1において計算された確率を用いて観測値がソースに割り当てられる。このステップS2は、以下のいくつかの実施形態に従って実行することができる。
・割り当てられるソースが、最高の確率を有するものになるように決定される「硬判定」実施形態であり、決定は1回行われる、
・「ソースサンプリング」実施形態であり、ソース決定は、その推定確率に基づいてサンプリングされる。この技法は、サンプルが推定確率に収束することを可能にするために反復を要する。
・硬判定方法の速度と、ソースサンプリング方法の安定性とのバランスをとるために、上述した方法の双方が採用される「ハイブリッド方法」実施形態。通常、確率の閾値を定義することができ、この閾値を上回ると、硬判定を行うことができ、下回ると、むしろソースサンプリングが用いられる。
【0039】
次に、ステップS3はデータベース更新を含む。観測値がソースに関連付けられると、このソースのデータベースは、観測値に従って展開し、このためそれに応じて更新される。
【0040】
最終的に、ステップO1において、新たに更新されたデータベースをプロセスの次の反復において用いることができる。
【0041】
一般的な方法の各ステップの詳細が以下に説明される。
【0042】
干渉を受けた無線環境において、干渉が1つ又はいくつかの無線ソースによって生成されると想定される。或るソースは、その幾何学的位置及び/又は動作周波数帯域によって別のソースと区別される。
【0043】
環境の監視を可能にするために、干渉の観測が必要とされる。そのために、以下のデバイスのうちの任意のものによって観測値を得ることができる。
-複数の周波数及び複数のロケーションにおける観測能力を有する1つのデバイス:このデバイスは、移動車両(列車、自動車又はボート等)に搭載された広帯域送受信機又は周波数ホッピング送受信機とすることができる。この設定の例が、空間領域における変化を示す図2a、及び周波数領域における変化を示す図2bに示されている。
-又は、複数の動作周波数を有する複数のデバイス(場合によっては、広帯域送受信機又は周波数ホッピング送受信機):これらのデバイスは、ジオロケーションにおける三角測量を可能にするために、少なくとも3つの整列されていない位置に配置される。精度を高めるために、4つ以上の位置が好ましい。空間及び周波数におけるデバイスの配置の例が図3a及び図3bにそれぞれ示されている。
【0044】
観測デバイスにとって、干渉ソースとのシグナリング交換が存在しないため、干渉送信は完全にランダムである。他の例において、デバイスは、干渉ロケーションを知ることなく、干渉をブラインド観測する。したがって、観測データは、混合信号とみなすことができる。
【0045】
以後、以下の表記が採用される。
・干渉ソースSに関して:
-kはソースのインデックスであり、
-θはソースの位置であり、
-φはソースの動作周波数である。
・観測値Zに関して:
-nは観測値のインデックスであり、
-Tは観測デバイスの位置であり、
-Wは受信干渉電力であり、
-Fは観測周波数である。
【0046】
受信電力の推定のために、観測値Zが得られる時点において、干渉ソースSが発していると仮定される。観測デバイスにおける受信電力(例えばdB単位)は、以下のようにモデル化することができる。
【数1】
【0047】
ここで、a及びbは、経路損失モデルの2つの係数であり、
【数2】
は可能なシャドーイングを考慮に入れる。シャドーイングは、多変量ガウス分布に従い、ここで、2つの車両の位置T及びT(例えば2つの列車の位置等)間の相関は、以下のように表される。
【数3】
【0048】
ここで、ρ、dはシャドーイングモデルの2つの係数である。
【0049】
干渉ソースSの動作周波数は、2つのパラメーターによってモデル化することができる。
φ=(f,B
【0050】
ここで、fは開始周波数を表し、Bは帯域幅を表す。
【0051】
干渉を分析することが可能になるには、観測値を別個のソースに分類する必要がある。次に、各ソースのデータベースを、その属する観測値に従って構築及び更新することができる。このデータベースがその後、事前知識として次の観測分類にサービングする。
【0052】
以後、Vは、観測値Zが割り当てられるソースを示す潜在変数を表す。観測値Zの分析の開始時に、以下のステートメントが仮定される。
・(.)-nは、観測値Zを有する前の変数の既存の集合を表す。
・K個の干渉ソース:k=1..Kが存在する。
・ソースSについて、
【数4】
は割り当てられた観測値を表す。
・ソース位置のデータベースは、以下のような確率の形式の下で利用可能である。
【数5】
・ソース動作周波数のデータベースは、以下のような確率の形式の下で利用可能である。
【数6】
【0053】
ステップS1のメンバーシップ計算は、以下のいずれかに基づくことができる:
a)ユークリッド距離:
平均位置
【数7】
及び平均周波数
【数8】
を所与として、観測値と干渉ソースとの間のユークリッド距離によってメンバーシップ計算を実行することができる。空間領域において、距離は、以下のように計算されることが提案され、
【数9】
周波数領域における距離は、以下のように計算されることが提案される。
【数10】
b)ベイズ推論:
別の手法において、メンバーシップ計算は、観測値がソースの一部であり得る確率に対応するものとして計算されることが提案され得る。以後、時点nに対応する潜在変数Vは、観測値がいずれのソースに属するかを示すように表される。観測値Z=(T,W,F)について、以下の確率を検討することができる。
【数11】
干渉ソースは他のものに対し独立しているため、尤度確率p(Z|V,Z-n,V-n)は、Vの全ての可能な値について以下のように詳述することができる。
【数12】
電力測定値Wは、デバイスと干渉体との間の距離の関数であることに起因して、デバイスの設定のみに単に依拠する周波数観測値Fと関連しない。このため、前の式における確率は以下のように書き換えることができる。
【数13】
上述したように、電力観測値(例えばdB単位)は、ガウス分布に従う。したがって、確率
【数14】
は以下のように表すことができる。
【数15】
この式において、項
【数16】
及び
【数17】
は、以下のように計算することができる。
【数18】
ここで、
【数19】
は、観測値Wのガウス分布における平均値を表し、
【数20】
として表現され、
【数21】
は観測値nとソースVのn以外の観測値との間の相関行列を表し、
【数22】
はソースVのn以外の観測値の自己相関行列を表し、
【数23】
はソースVのn以外の観測値における平均を表し、
【数24】
は、n以外の観測値と、ソースVの観測値nとの間の相関行列を表す。
【0054】
周波数観測値における確率は、
【数25】
として2つの項p及びpに分割することができる。p及びpの設計は、以下のように提案することができる。
・Fがφの内部にあるか否かを示すp
【数26】
・適合が、Fと共に割り当てられた周波数の集合
【数27】
とφとの間にどのように存在するかを判断するp。より良好に適合するほど、pは大きくなる。この項は以下のように提案することができる。
【数28】
ここで、αは、確率和を1にする正規化係数である。
【0055】
次に、ステップS2の実施のために、観測分類はこのとき、以下のいずれかに基づくことができる。
a)ユークリッド距離
観測値は、ソースに対するその距離に従って硬判定によって分類される。この意味で、観測は、例えば以下の、最も小さい距離を有するソースに関連付けられる:
【数29】
b)ベイズ推論:
観測値分類は、以下の方法のうちの1つによって導出することができる。
-硬判定:
決定は、最良のメンバーシップ確率に従って1回行われる。
【数30】
-サンプリング方法:
のランダムサンプルは、メンバーシップ確率p(V|Z,Z-n,V-n)に従って引かれる。この手法は、サンプリングにわたる反復を必要とし、これにより次にVの値が収束することが可能になる。
-ハイブリッド手法:
2つの上述した方法の双方の利点、すなわち「硬判定」方法の迅速性と、サンプリング方法の安定性とを採用するために、ハイブリッド手法が以下に提案される。
第1に、メンバーシップ確率が以下のように正規化される。
【数31】
第2に、正規化されたメンバーシップ確率の閾値が定義される。この場合、最良の正規化されたメンバーシップ確率はこの閾値を上回り、観測の最良のソースが明らかであり、それによって硬判定方法を実施することができると述べることができる。他の場合、最良のソースは曖昧であり、このため、サンプリング方法がむしろ実施されるべきである。
【0056】
ステップS3のデータベース更新は、以下のいずれかに基づくことができる:
a)ユークリッド距離
観測値Zがソースkに関連付けられると仮定すると、平均位置及び周波数は以下のように更新することができる。
【数32】
ソースkにおけるn
b)ベイズ推論
ジオロケーションデータベースについて、以下の確率が更新のために計算される。
【数33】
周波数データベースについて、以下の確率が更新のために計算される。
【数34】
【0057】
図4a及び図4bは、干渉環境の例を示す。周波数領域における干渉アクティビティが図4aに示され、干渉体のそれぞれの幾何学的位置が図4bに示される。
【0058】
この干渉環境において、移動デバイスは、例えば図2bにおいて一般的に提示されているように、周波数ホッピング(FH)パターンを介して干渉環境を観測する。そのような観測の詳細は、例えば欧州特許出願第3716506号という文書から得ることができる。
【0059】
移動デバイスに関して取得された初期対応観測値は、図5a(周波数ドメイン)及び図5b(空間ドメイン)に示されている。
【0060】
この例において、環境を分析するために、ベイズ推論がメンバーシップ計算に用いられ、硬判定が分類に用いられる。推定は、初期データベースなしで最初から実行される。
【0061】
観測分類の結果が、それぞれ周波数ドメイン及び受信電力ドメインにおいて図6a及び図6cに示される。双方の図面において、各ラベルI1、I2、I3、I4及びI5は干渉ソースを表す。見て取ることができるように、方法の実施態様は、5つの干渉ソースを推定し、観測値をそれらのそれぞれに帰することを可能にする。図6bにおいて、動作周波数及びアクティブ化時間の推定が各干渉ソースについてプロットされる。図6dにおいて、ベイズ更新の結果として得られるソースの位置の確率の輪郭が干渉ソースの真の位置に沿って表示される。
【0062】
したがって、本開示は、線路等の所定の軌道に沿って干渉を特徴付けるために、例えば2.4GHzのISM帯域における周波数ホッピングシステムの使用を可能にし、それによって、線路機器及び/又は列車内に搭載された通信デバイスについてそのような干渉の影響を低減することを可能にする。
【0063】
図7を参照すると、上記の方法を実施するためのデバイスDEVは、例えば以下を備えることができる。
-無線周波数信号を受信し、例えば図2bに提示されるような周波数ホッピングパターンに従って各周波数チャネルにおける無線周波数電力を測定するための入力インタフェースIN(例えば、無線周波数アンテナ等)、
-少なくとも、上記で提示した方法を実施するコンピュータープログラムの命令を記憶し、場合によっては、方法において用いられるデータベースDBのデータも記憶するメモリMEM、
-方法を実施し、最終的に、現在の干渉ソース(位置及び無線周波数アクティブ帯域)を決定するために上記メモリMEM及びデータベースDBにアクセスするプロセッサPROC、
-データベースDBのコンテンツを更新するためにこのデータベースDBにフィードすることができる、そのような決定のデータを送達するための出力インタフェースOUT、
-及び任意選択で、デバイスDEVがモバイルである一実施形態において、その観測値のそれぞれにおいてデバイスの厳密なロケーションを決定するGPSチップ。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
【国際調査報告】