(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】分枝状オルガノポリシロキサンの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/06 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
C08G77/06
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024532975
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2021084271
(87)【国際公開番号】W WO2023099017
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】マルコ、プラッセ
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA03
4J246AB13
4J246BA12X
4J246BA14X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA12X
4J246CA14X
4J246CA24X
4J246CA34X
4J246CA40X
4J246FA011
4J246FA071
4J246FA131
4J246FA421
4J246FB051
4J246FE03
4J246FE25
4J246FE27
4J246FE32
4J246GA01
4J246GA02
4J246GA20
4J246GB11
4J246HA22
(57)【要約】
本発明は、0℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有し、一般式(I):RaSi(OR1)bO(4-a-b)/2 (式中、R、R1、a及びbは、請求項1に規定される通りである。)の単位を含む分枝状オルガノポリシロキサンOの調製方法であって、一般式(II):RnSi(OR1)4-n(式中、n、R及びR1は、請求項1に規定されるとおりであり、一般式(II)のシランの20mol%以下において、全てのR基はC1-C2炭化水素基であり、R1はメチル基であり、一般式(II)のシラン100molに対して10mol以下のさらなるアルコキシ及び/若しくはヒドロキシ官能性オルガノポリシロキサン、又はアルコキシ及び/若しくはヒドロキシ官能性シランが存在する。)のシランを、水、触媒量の酸性触媒K、及び任意にアルコールAと反応させ、但し、アルコールA以外の溶媒は全工程の間、添加されず、アルコールAはメタノール、エタノール、及びメタノールとエタノールの混合物から選択され、100質量部のメタノール及びエタノールに対して、50質量部までのさらなるアルカノールが存在し得る、分枝状オルガノポリシロキサンOの調製方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有し、一般式(I):
R
aSi(OR
1)
bO
(4-a-b)/2 (I)
(式中、
Rは、非置換又はヘテロ原子で置換された加水分解安定なC1~C18炭化水素基であり、
R
1は、水素又はC1~C4炭化水素基であり、
a及びbは、0、1、2又は3であり、但し、a+bは≦3であり、
前記一般式(I)の全単位の少なくとも70mol%におけるaは、値1を有し、
前記一般式(I)の全単位にわたって平均したaは、平均値0.7~1.3を有し、
前記一般式(I)の全単位にわたって平均したbは、平均値0.10~1.0を有し、
全ての基R
1の少なくとも70mol%が、水素、メチル基又はエチル基である。)
の単位を含む分枝状オルガノポリシロキサンOの調製方法であって、
一般式(II):
R
nSi(OR
1)
4-n (II)
(式中、
nは、値0、1、2又は3を有することができ、
前記一般式(II)のシランの少なくとも70mol%におけるnは、値1を有し、
R及びR
1は、前記一般式(I)について規定した定義を有し、
前記一般式(II)のシランの多くとも20mol%において、全ての基Rは、C1~C2炭化水素基であり、R
1はメチル基であり、
前記一般式(II)のシラン100molあたり多くとも10molのさらなるアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性オルガノポリシロキサン、又はアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性シランが存在する。)
のシランを、水、触媒量の酸性触媒K、及び任意にアルコールAと反応させ、
但し、アルコールA以外の溶媒は全工程を通して使用せず、
ここで、アルコールAは、メタノール、エタノール又はメタノールとエタノールの混合物の中から選択され、いずれの場合もメタノール及びエタノール100質量部を基準として、最大50質量部のさらなるアルカノールが存在してもよい、
分枝状オルガノポリシロキサンOの調製方法。
【請求項2】
前記炭化水素基Rが、メチル、ビニル、n-プロピル、オクチル、及びフェニル基から選択される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記一般式(II)の全単位の少なくとも90mol%におけるnが、値1を有する、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記の使用される酸性触媒Kが、塩酸又は反応条件下で塩酸を形成する化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項5】
前記オルガノポリシロキサンOが、10℃~80℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項6】
非連続的に実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項7】
反応終了後、前記酸性触媒Kをアルコール性水酸化ナトリウム溶液、ナトリウムメトキシド溶液、ナトリウムエトキシド溶液、又は水酸化カリウム溶液で中和する、請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項8】
反応終了後、前記酸性触媒Kを塩基性イオン交換体で中和する、請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシシランから0℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有する分枝状オルガノポリシロキサンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形シリコーン樹脂とも呼ばれる、固形オルガノポリシロキサンの調製方法は、長い間先行技術である。
【0003】
EP0927734B1号公報には、水不混和溶媒の存在下、塩酸を触媒とするアルコキシシランからの固形樹脂の多段階調製が記載されている。
【0004】
DE102005003899号公報には、クロロシランをアルコール及び水と一段階連続プロセスで反応させる樹脂の調製が記載されている。固形樹脂の調製には、非反応性の溶媒が必要である。
【0005】
US6552151B1号公報は、60℃を超えるTgと特定のシラノール量を有する固体樹脂を特許請求している。この例は、エトキシシラン、塩酸及び水からバッチ式で調製され、有機溶媒でワークアップされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP0927734B1号公報
【特許文献2】DE102005003899号公報
【特許文献3】US6552151B1号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、0℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有し、一般式(I):
RaSi(OR1)bO(4-a-b)/2 (I)
(式中、
Rは、非置換又はヘテロ原子で置換された加水分解安定なC1~C18炭化水素基であり、
R1は、水素又はC1~C4炭化水素基であり、
a及びbは、0、1、2、又は3であり、
但し、a+b≦3であり、
前記一般式(I)の全単位の少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも80mol%、特に好ましくは少なくとも90mol%におけるaは、値1を有し、
前記一般式(I)の全単位にわたって平均したaは、平均値0.7~1.3、好ましくは0.8~1.2、特に好ましくは0.9~1.1を有し、
前記一般式(I)の全単位にわたって平均したbは、平均値0.10~1.0、好ましくは0.15~0.9、特に好ましくは0.20~0.8を有し、
全てのR1の少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも80mol%、特に好ましくは少なくとも90mol%が、水素、メチル基、又はエチル基である。)
の単位を含む分枝状オルガノポリシロキサンOの調製方法であって、
一般式(II):
RnSi(OR1)4-n (II)
(式中、
nは、値0、1、2、又は3を有することができ、
前記一般式(II)のシランの少なくとも70mol%におけるnは、値1を有し、
R及びR1は、前記一般式(I)について規定した定義を有し、
前記一般式(II)のシランの多くとも20mol%において、全ての基Rは、C1~C2炭化水素基であり、R1はメチル基であり、
前記一般式(II)のシラン100molあたり多くとも10molのさらなるアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性オルガノポリシロキサン、又はアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性シランが存在する。)
のシランを、水、触媒量の酸性触媒K、及び任意にアルコールAと反応させ、
但し、アルコールA以外の溶媒は全工程を通して使用せず、
ここで、アルコールAは、メタノール、エタノール、又はメタノール及びエタノールの混合物から選択され、いずれの場合もメタノール及びエタノール100質量部を基準として、最大50質量部のさらなるアルカノールが存在してもよい、
分枝状オルガノポリシロキサンOの調製方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記方法において、前記一般式(II)のアルコキシシランの加水分解及び縮合は、水、触媒量の酸性触媒K、任意にアルコールA、並びに任意にさらなるアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ-官能性オルガノポリシロキサン、又はアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性シランとの反応を通して行われ、最終生成物である所望の縮合度を有する分枝状オルガノポリシロキサンが得られる。使用されるアルコールA及び任意にさらなるアルカノール以外の溶媒は、エタノール中の慣用の変性剤、例えばヘプタン及びメチルエチルケトンなど、多くとも3質量%、特に多くとも1質量%を除いて、全工程を通して使用されない。
【0009】
前記方法は、特に以下の有利な性質を有する:
・粘性又は固体のオルガノポリシロキサンを経済的に実行可能な方法で調製できる、
・アルコキシシラン又は異なるアルコキシシランの混合物から一定の組成のオルガノポリシロキサンを再現性よく調製できる、
・不活性有機溶媒を一切使用せず、反応混合物中に反応物として必要な有機成分のみを含む、
・廃水相を生じない、
・残留酸含量が非常に低い生成物を得ることができる、
・アルコキシ及びヒドロキシ含量の制御された設定が可能であるため、堅牢な手順で粘性及び固体の両方のオルガノポリシロキサンを提供するのに適している、
・放出されたアルコールの回収率が少なくとも95%である。
【0010】
アルコールAの他に他の溶媒は必要ない。水を加えた後の反応媒体が均一である限り、さらなる溶媒、特に、使用するアルコールの範囲の沸点を有する溶媒を使用することができるが、特に他の溶媒を使わないことが好ましい。
【0011】
前記酸性触媒は、反応後適切な方法で不活性化させる。
【0012】
その後、前記分枝状オルガノポリシロキサンOは脱揮により精製/ワークアップされる。これにより揮発性成分が除去され、純粋な最終形態となる。前記脱揮は所望により変化させることができ、その場合、手順は全て公知の先行技術の範囲内であり、例えば蒸留が含まれる。好適なバリエーションのさらなる例は、以下でさらに詳細に述べる。
【0013】
アルコールを使用する場合は、クロロシランとアルコール及び任意に水との反応によるアルコキシシランの調製又はオルガノポリシロキサンの調製に使用できるアルコール性ヒドロキシ基を有する炭化水素化合物が好ましい。好ましくは、メタノール、エタノール、n-又はイソプロパノール、2-メトキシエタノール、n-ブタノール、又はn-ヘキサノール等の、1~6個の炭素原子を有するアルカノール及びエーテル酸素置換アルカノールである。特に好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールであり、特にメタノール及びエタノールである。また、異なるアルコールの混合物を使用することも可能であり、この混合物は、それぞれの反応ユニットに供給する前に、短い混合セクションで任意に均質化することができる。前記エタノールは、メチルエチルケトン、ヘプタン、石油エーテル、又はシクロヘキサン等の慣用の変性剤を含んでいてもよい。
【0014】
炭化水素基Rの選択される例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基等のヘキシル基、n-ヘプチル基等のヘプチル基、n-オクチル基等のオクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基等のイソオクチル基、n-ノニル基等のノニル基、n-デシル基等のデシル基、n-ドデシル基等のドデシル基、n-オクタデシル基等のオクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロへキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基等のアルケニル基、フェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリル基等のアリール基、トリル基、キシリル基、及びエチルフェニル基等のアルカリール基、ベンジル基及びβ-フェニルエチル基等のアラルキル基である。特に好ましい炭化水素基Rは、メチル、ビニル、n-プロピル、オクチル基及びフェニル基である。
【0015】
前記一般式(II)のシランは、純粋なシランとしても、一般式(II)の異なるシランの混合物としても使用することができる。
さらに、部分縮合物をアルコール中の溶液として使用することもできる。
【0016】
好ましくは、前記一般式(II)の全単位の少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも80mol%、特に好ましくは少なくとも90mol%におけるnは、値1を有する。
【0017】
前記オルガノポリシロキサンOは、好ましくは少なくとも90mol%、特に好ましくは少なくとも95mol%、特に少なくとも99mol%の、前記一般式(I)の単位を含む。
【0018】
好ましくは、前記一般式(II)のシランの多くとも15mol%、特に多くとも10mol%において、全ての基RがC1~C2炭化水素基であり、R1がメチル基である。
【0019】
好ましくは、前記一般式(II)のシラン100molあたり、多くとも5mol、特に好ましくは多くとも2mol、特に多くとも1molの、さらなるアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性オルガノポリシロキサン、又はアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性シランが存在し、非常に特に好ましくは、存在しない。
【0020】
前記の使用される水は、好ましくは部分脱塩水、完全脱塩水、蒸留水又は(多重)再蒸留水、医療用水又は医薬用水であり、特に好ましくは部分脱塩水及び完全脱塩水である。
【0021】
本発明によって使用される水は、好ましくは、25℃及び1010hPaにおける導電率が高くとも50μS/cmである。本発明によって使用される水は、好ましくは空気飽和であり、無色透明である。
【0022】
前記の使用される酸性触媒Kは、好ましくは塩酸、又は反応条件下で塩酸を形成する化合物、例えば、クロロシラン、塩化カルボニル、遷移族3~8又は主族3~5の元素の塩化物等である。
【0023】
前記一般式(II)のシランにおいて、R1100molあたり、好ましくは0.01~1mol、特に0.01~0.5molの塩酸又は塩酸を形成する化合物が使用される。
【0024】
前記一般式(II)のシランにおいて、R1100molあたり、好ましくは30~150mol、特に40~100molの水が使用される。
【0025】
前記反応は、好ましくは10分~1日、特に30分~6時間かかる。
【0026】
前記方法は、好ましくは、非連続的に、すなわちバッチ式で実施される。
【0027】
反応終了後、前記酸性触媒Kは、アルコール性水酸化ナトリウム溶液、ナトリウムメトキシド溶液若しくはナトリウムエトキシド溶液、アルコール性水酸化カリウム溶液による中和、又は塩基性イオン交換体、例えば、ピューロライト社のピューロライト(R)A103Plus、若しくはデュポン社のアンバーリスト(商品名)A21等の弱塩基性ポリスチレン樹脂による塩素原子の除去等の適切な方法によって不活性化される。さらなるワークアップ及び任意の貯蔵を実施する前に、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルに対してエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定可能な残留塩酸含量は、100~0ppmが好ましく、特に好ましくは50~2ppm、特に30~5ppmであり、いずれの場合も25℃である。
【0028】
不活性化されたシリコーン樹脂溶液の粘度は、多くとも100mPa・sであり、特に多くとも80mPa・sであり、特に多くとも50mPa・sであり、いずれの場合も25℃である。
【0029】
不活性化の後、前記の不活性化されたシリコーン樹脂溶液は、脱揮によって精製/ワークアップすることができる。これにより揮発性成分が除去され、前記オルガノポリシロキサンOが純粋な最終形態で得られる。前記脱揮は所望により変化させることができ、その場合の手順は全て公知の先行技術の範囲内であり、例えば蒸留が含まれる。好適なバリエーションのさらなる例は、以下でさらに詳細に述べる。
【0030】
前記シリコーン樹脂溶液は、活性炭、シリカゲル、架橋ポリスチレン樹脂、分子ふるいなどの吸着剤で処理することにより精製することができる。前記シリコーン樹脂溶液は、好ましくは、ワークアップの前に吸着剤で処理される。
【0031】
前記オルガノポリシロキサンOは、好ましくは、500~20,000g/mol(重量平均)の範囲内の平均分子量Mwを有し、多分散度(PD)が多くとも20である。特に好ましくは、それらは600~15,000g/molのMwを有し、多分散度が18である。非常に特に好ましくは、それらは700~10,000g/molのMwを有し、多分散度が15である。特に、それらは700~8,000g/molのMwを有し、多分散度が13である。前記オルガノポリシロキサンOは室温で高粘性又は固体であるため、その溶融温度は広い温度範囲をカバーすることができる。
【0032】
前記オルガノポリシロキサンOは、好ましくは5℃~100℃、特に好ましくは10℃~80℃、特に20℃~70℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0033】
本発明による調製方法によって調製されるオルガノポリシロキサンO又はそこから得られる調製物は、耐食調製物での使用に適している。特に、それらは高温での腐食防止の目的に使用するのに適している。
耐高温腐食防止の目的とは別に、前記オルガノポリシロキサンO又はそこから得られる調製物は、鉄筋コンクリート中の鉄筋の腐食防止にも使用することができ、この場合、前記オルガノポリシロキサンO又はそこから得られる調製物は、純粋な形態でも調製物でも使用することが可能である。鉄筋コンクリートにおける腐食抑制効果は、前記オルガノポリシロキサンO又はそれらを含む調製物を、コンクリートの成形及び硬化前にコンクリート混合物に導入する場合と、コンクリートの硬化後にコンクリートの表面に直接塗布する場合の両方で達成される。
【0034】
前記オルガノポリシロキサンO又はその調製物は、屋内及び屋外用の人工石の製造のためのバインダーとして使用することができる。
前記オルガノポリシロキサンO又はその調製物は、プリプレグとして知られる、プレ含浸された繊維の製造に使用することができる。
【0035】
金属の腐食防止の目的の他にも、前記オルガノポリシロキサンOは、調製物、又はそこから得られる固体若しくはフィルムのさらなる特性、
・導電性及び電気抵抗の制御
・調製物のレベリング特性の制御
・湿潤又は硬化したフィルムや物体の光沢の制御
・耐候性の向上
・耐薬品性の向上
・色調安定性の向上
・チョーキング傾向の低減
・固体やフィルム上の静摩擦やすべり摩擦の低減又は向上
・調製物の泡の安定化又は不安定化
・調製物の接着性の改良
・フィラー及び顔料の濡れ及び分散挙動の制御
・調製物のレオロジー特性の制御
・固体又はフィルムの、柔軟性、耐スクラッチ性、弾性、伸展性、曲げ耐力、破断挙動、反発挙動、硬度、密度、引裂伝播抵抗、圧縮永久歪み、異なる温度での挙動、膨張係数、耐摩耗性などの機械的性質、並びに熱伝導性、燃焼性、ガス透過性、水蒸気、熱風、化学薬品、風化及び放射線に対する耐性、滅菌性などのさらなる特性の制御
・誘電損失係数、絶縁耐力、誘電率、耐トラッキング性、耐アーク性、表面抵抗、比絶縁抵抗などの電気的特性の制御
・固体やフィルムの、柔軟性、耐スクラッチ性、弾性、伸展性、曲げ耐力、破断挙動、反発挙動、硬度、密度、引裂伝播抵抗、圧縮永久歪み、異なる温度での挙動
の調整に使用することができる。
【0036】
前記オルガノポリシロキサンOが、上記で指定された特性を調整するために使用できる用途の例としては、コーティング材料及び含浸物、並びにそれらから得られる、金属、ガラス、木材、鉱物基材、繊維、カーペット、床材、又は繊維から製造可能な他の商品を製造するための合成繊維及び天然繊維、皮革、フィルム、成形品などのプラスチックといった基材上のコーティング及び被覆物の製造が挙げられる。調製物の成分を適切に選択すれば、前記オルガノポリシロキサンOは、消泡、レベリング促進、疎水化、親水化、フィラー及び顔料の分散、フィラー及び顔料の濡れ、基材の濡れ、表面平滑性の促進、添加調製物から得られる硬化した配合品の表面の静摩擦及びすべり摩擦の低減を目的とする添加剤として調製物に使用することもできる。前記オルガノポリシロキサンOは、溶解した形態、固体の形態、又は硬化した固体の形態で、エラストマー組成物に入れることもできる。この場合、強化の目的で、又は、透明性、耐熱性、黄変傾向、耐候性の制御などの他の使用特性を改良する目的で使用することができる。
【0037】
上記の式中の記号は全て、互いに独立した定義を有している。全ての式において、ケイ素原子は4価である。
【0038】
本文書では、機器分析によって得られたデータを報告することによって物質を特徴付ける。基礎となる測定は、一般に入手可能な標準に従って行われるか、特別に開発された方法によって測定される。説明する内容を明確にするため、ここでは使用した方法を明記する。
【0039】
(稠度)
固体試験物質を塊のまま透明ガラス瓶に入れ、25℃、標準圧力1013mbarで24時間保管する。その後、外見と粘着性を評価する。
【0040】
(アセトン溶解性)
試験物質1gにアセトン10mlを加え、25℃、標準圧力1013mbarで1時間撹拌する。その後、前記物質が完全に溶解したかどうかを目視で評価する。
【0041】
(分子組成)
分子組成は、核磁気共鳴分光法(ASTM E 386:High-resolution nuclear magnetic resonance (NMR) spectroscopy: terms and symbolsを参照)により、1H核と29Si核を測定して行う。
【0042】
[1H-NMR測定の説明]
溶媒:CDCl3、99.8%d
試料濃度:5mmNMR管に約50mg/1mlCDCl3
TMSを添加せず、7.24ppmのCDCl3中の残留CHCl3のスペクトルを参照して測定
分光器:Bruker Avance I 500又はBruker Avance HD 500
プローブ:5mmBBOプローブ又はSMARTプローブ(Bruker社製)
測定パラメータ:
Pulprog=zg30
TD=64k
NS=64又は128(プローブ感度による)
SW=20.6ppm
AQ=3.17s
D1=5s
SFO1=500.13MHz
O1=6.175ppm
処理パラメータ:
SI=32k
WDW=EM
LB=0.3Hz
使用する分光器の種類によって、測定パラメータの個々の調整が必要となることがある。
【0043】
[29Si-NMR測定の説明]
溶媒:緩和試薬としてCr(acac)3を1質量%含むC6D699.8%d/CCl4 1:1 v/v
試料濃度:10mmNMR管に約2g/1.5ml溶媒
分光器:Bruker Avance 300
プローブ:10mm 1H/13C/15N/29Si ガラスフリーQNPプローブ(Bruker社製)
測定パラメータ:
Pulprog=zgig60
TD=64k
NS=1024(プローブ感度による)
SW=200ppm
AQ=2.75s
D1=4s
SFO1=300.13MHz
O1=-50ppm
処理パラメータ:
SI=64k
WDW=EM
LB=0.3Hz
使用する分光器の種類によって、測定パラメータの個々の調整が必要となることがある。
【0044】
(分子量分布)
本発明の文脈において、数平均モル質量Mn及び重量平均モル質量Mwは、DIN55672-1に準拠したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、ポリスチレン標準に対して、米国Waters Corp.のStyragel HR3-HR4-HR5-HR5カラムセットのRI(屈折率検出器)を用いて、注入量20μlとして、測定される。
使用する溶離液は、ドイツ国Darmstadt、Merck KGaAから入手可能な分析グレードのトルエン>99.9%である。分析はカラム温度45℃で行う。多分散度(PD)は商Mw/Mnである。
【0045】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度Tgは、メトラー・トレド社のDSC1/500動的走査熱量計(モジュール名:DSC1_1448)を用いて、開放るつぼ中、試料重量10.5mg、窒素気流50ml/分一定下、以下の温度レジームで、DSC(示差走査熱量計)により測定する:
25℃で5分間の温度制御、
冷却速度20K/分で-150℃まで冷却、
-150℃で8分間の温度制御、
加熱速度10K/分で100℃まで加熱、
100℃で15分間の温度制御、
冷却速度20K/分で-150℃まで冷却、
-150℃で8分間の温度制御、
加熱速度10K/分で160℃まで加熱、
冷却速度20K/分で-150℃まで冷却、
-150℃で8分間の温度制御、
加熱速度10K/分で160℃まで加熱。
【0046】
ガラス転移温度は、メトラー・トレド社のSTAReソフトウェア バージョン16.20を用いて、160℃までの加熱の1回目と2回目の間で測定した。このソフトウェアは、測定曲線とガラス転移温度前後のベースラインの二等分線との交点をTgと定義しており、実施例では、2つの値の算術平均を四捨五入して整数としている。
【実施例】
【0047】
以下に本発明による調製方法を実施例で説明するが、これらに限定して解釈されるべきではない。全てのパーセンテージは、他に断りのない限り、質量に基づく。他に断りのない限り、全ての操作は約25℃の室温で、標準圧力(1.013bar)で行う。装置は、多数の装置メーカーが商業的に供給している種類の、市販の実験装置である。
Phはフェニル基(C6H5-)である。
Vinはビニル基(CH2=CH-)である。
Meはメチル基(CH3-)である。したがって、Me2は二つのメチル基である。
【0048】
(実施例1:本発明による調製方法)
メチルトリエトキシシラン157g及びビニルトリエトキシシラン58gを、還流冷却器、滴下漏斗及びマグネチックスターラーを備えた1lのガラス製フラスコに最初に入れ、15分かけて塩酸(20%)0.4g及び水48gの混合物を混和し、還流で3時間撹拌する。
こうして形成された、縮合された塩酸酸性オルガノポリシロキサン溶液を、ナトリウムメトキシド溶液(メタノール中25%)を用いて、塩酸値が15ppmになるまで中和する。
次に、このアルコール性オルガノポリシロキサン溶液を蒸留すると、白濁した固体が得られ、この固体はアセトンに完全に溶解し、融点、残留アルコキシ含量、分子量分布などの生成物のパラメータによって規定される。典型的な例では、以下の分析データが得られる。
29Si-NMRによる分子組成:
MeSi(OH)O2/2+MeSi(OEt)O2/2:23.0mol%、
MeSiO3/2:52.6mol%、
VinSi(OH)O2/2+VinSi(OEt)O2/2:10.0mol%、
VinSiO3/2:14.4mol%
1H-NMRによる組成:
EtO1/2含量:5.9質量%、
HO1/2含量:1.6質量%、
VinSiO3/2含量:26.0質量%、
MeSiO3/2含量:66.5質量%
さらなる生成物のパラメータ:
稠度:タックフリーの塊
Tg:40℃
Mw:840g/mol
Mn:300g/mol
PD:2.8
【0049】
(実施例2:本発明による調製方法)
実施例1の手順を繰り返す。但し、水を54g使用し、そのため還流での撹拌は、1時間だけ行う。白濁した固体が得られ、この固体はアセトンに完全に溶解する。
以下の分析データが得られる。
29Si-NMRによる分子組成:
MeSi(OH)O2/2+MeSi(OEt)O2/2:23.8mol%、
MeSiO3/2:51.9mol%、
VinSi(OH)O2/2+VinSi(OEt)O2/2:9.5mol%、
VinSiO3/2:14.8mol%
1H-NMRによる組成:
EtO1/2含量:6.0質量%、
HO1/2含量:1.5質量%、
VinSiO3/2含量:25.5質量%、
MeSiO3/2含量:67.0質量%
さらなる生成物のパラメータ:
稠度:タックフリーの塊
Tg:36℃
Mw:850g/mol
Mn:310g/mol
PD:2.7
【0050】
(実施例3:本発明による調製方法)
フェニルトリエトキシシラン144g、メチルトリエトキシシラン75g及びメチルビニルジメトキシシラン11gを、還流冷却器、滴下漏斗及びマグネチックスターラーを備えた1lのガラス製フラスコに最初に入れ、15分かけて塩酸(20%)0.4g及び水52gの混合物を混和し、還流で3時間撹拌する。
こうして形成された、縮合された塩酸酸性オルガノポリシロキサン溶液を、ナトリウムメトキシド溶液(メタノール中25%)を用いて、塩酸値が15ppmになるまで中和する。
次に、このアルコール性オルガノポリシロキサン溶液を蒸留すると、透明の固体が得られ、この固体はアセトンに完全に溶解し、融点、残留アルコキシ含量などの生成物のパラメータによって規定される。典型的な例では、以下の分析データが得られる。
29Si-NMRによる分子組成:
MeSi(OH)O2/2+MeSi(OEt)O2/2:12.4mol%、
MeSiO3/2:27.4mol%、
PhSi(OH)O2/2+PhSi(OEt)O2/2:32.7mol%、
PhSiO3/2:20.7mol%、
MeVinSiO2/2:6.8mol%
1H-NMRによる組成:
EtO1/2含量:3.0質量%、
HO1/2含量:1.0質量%、
PhSiO3/2含量:67.0質量%、
MeSiO3/2含量:23.6質量%、
MeVinSiO2/2含量:5.4質量%
さらなる生成物のパラメータ:
稠度:タックフリーの塊
Tg:35℃
【0051】
(実施例4:本発明による調製方法)
フェニルトリメトキシシラン218gを、還流冷却器、滴下漏斗及びマグネチックスターラーを備えた1lのガラス製フラスコに最初に入れ、15分かけて塩酸(20%)0.4gと水50gの混合物を混和し、還流で3時間撹拌する。
こうして形成された、縮合された塩酸酸性オルガノポリシロキサン溶液を、ナトリウムメトキシド溶液(メタノール中25%)を用いて、塩酸値が15ppmになるまで中和する。
次に、このアルコール性オルガノポリシロキサン溶液を蒸留すると、透明な固体が得られ、この固体はアセトンに完全に溶解し、融点や残留アルコキシ含量などの生成物のパラメータによって規定される。典型的な例では、以下の分析データが得られる。
29Si-NMRによる分子組成:
PhSi(OH)2O1/2+PhSi(OMe)(OH)O1/2:1.8mol%、
PhSi(OH)O2/2+PhSi(OMe)O2/2:60.0mol%、
PhSiO3/2:38.2mol%
1H-NMRによる組成:
MeO1/2含量:1.7質量%、
HO1/2含量:2.0質量%、
PhSiO3/2含量:96.3質量%、
さらなる生成物のパラメータ:
稠度:タックフリーの塊
Tg:67℃
【0052】
(比較例1:本発明によらない調製方法)
メチルトリメトキシシラン120g及びビニルトリメトキシシラン45gを、還流冷却器、滴下漏斗及びKPG撹拌機(KPG-Ruhrer)を備えた1lのガラス製フラスコに最初に入れ、15分かけて塩酸(20%)0.25g及び水40gの混合物と混和し、還流で2時間撹拌する。
こうして形成された、縮合された塩酸酸性オルガノポリシロキサン溶液を、ナトリウムメトキシド溶液(メタノール中25%)を用いて、塩酸値が15ppmになるまで中和する。
次に、このアルコール性オルガノポリシロキサン溶液を蒸留すると固体が得られ、この固体はアセトンには完全には溶解しなかった。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5℃~100℃のガラス転移温度(Tg)を有し、一般式(I):
R
aSi(OR
1)
bO
(4-a-b)/2 (I)
(式中、
Rは、非置換又はヘテロ原子で置換された加水分解安定なC1~C18炭化水素基であり、
R
1は、水素又はC1~C4炭化水素基であり、
a及びbは、0、1、2又は3であり、但し、a+bは≦3であり、
前記一般式(I)の全単位の少なくとも70mol%におけるaは、値1を有し、
前記一般式(I)の全単位にわたって平均したaは、平均値0.7~1.3を有し、
前記一般式(I)の全単位にわたって平均したbは、平均値0.10~1.0を有し、
全てのR
1の少なくとも70mol%が、水素、メチル基又はエチル基である。)
の単位を含む分枝状オルガノポリシロキサンOの調製方法であって、
一般式(II):
R
nSi(OR
1)
4-n (II)
(式中、
nは、値0、1、2又は3を有することができ、
前記一般式(II)のシランの少なくとも70mol%におけるnは、値1を有し、
R及びR
1は、前記一般式(I)について規定した定義を有し、
前記一般式(II)のシランの多くとも20mol%において、全ての基Rは、C1~C2炭化水素基であり、R
1はメチル基であり、
前記一般式(II)のシラン100molあたり多くとも10molのさらなるアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性オルガノポリシロキサン、又はアルコキシ-及び/若しくはヒドロキシ官能性シランが存在する。)
のシランを、水、触媒量の酸性触媒K、及び任意にアルコールAと反応させ、
但し、アルコールA以外の溶媒は全工程を通して使用せず、
ここで、アルコールAは、メタノール、エタノール又はメタノールとエタノールの混合物の中から選択され、いずれの場合もメタノール及びエタノール100質量部を基準として、最大50質量部のさらなるアルカノールが存在してもよ
く、
該オルガノポリシロキサン溶液のワークアップの前に、前記酸性触媒を、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルに対してエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定可能な、100~0ppmの残留塩酸含量まで不活性化し、
前記オルガノポリシロキサンOが、500~20,000g/molの範囲内の平均分子量Mwを有し、多分散度(PD)が多くとも20である、
分枝状オルガノポリシロキサンOの調製方法。
【請求項2】
前記炭化水素基Rが、メチル、ビニル、n-プロピル、オクチル、及びフェニル基から選択される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記一般式(II)の全単位の少なくとも90mol%におけるnが、値1を有する、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記の使用される酸性触媒Kが、塩酸又は反応条件下で塩酸を形成する化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項5】
前記オルガノポリシロキサンOが、10℃~80℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項6】
非連続的に実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項7】
反応終了後、前記酸性触媒Kをアルコール性水酸化ナトリウム溶液、ナトリウムメトキシド溶液、ナトリウムエトキシド溶液、又は水酸化カリウム溶液で中和する、請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項8】
反応終了後、前記酸性触媒Kを塩基性イオン交換体で中和する、請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法。
【国際調査報告】