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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】マフラー
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/02 20060101AFI20241204BHJP
   F01N 1/08 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F01N1/02 J
F01N1/08 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024534410
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 IB2022061856
(87)【国際公開番号】W WO2023105422
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202123048929.6
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健太
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 暢仁
(72)【発明者】
【氏名】清水 正道
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004BA01
3G004DA07
3G004DA08
3G004GA06
(57)【要約】
本開示は、構造が簡単で低コストのマフラーを提供する。マフラーは排気管によって形成されている。排気管は延長方向と径方向を有し、排気ガスは排気管を通じて排出される。排気管の内部の少なくとも一部の領域は、延在方向に沿って配置された仕切板によって消音室と排気通路部とに分割されている。排気通路部の断面積は消音室の断面積よりも大きい。消音室の排気ガスの流れ方向の下流端部において、排気管の消音室側の周壁が仕切り板に係合し、これにより、消音室の排気ガスの流れ方向の下流開口が閉じられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを排出するための排気管によって形成されるマフラーであって、
前記排気管は、延在方向及び径方向を有し、前記排気管の内部の少なくとも一部の領域は、前記延在方向に沿って配置された仕切板によって、消音室と排気通路部とに分割されており、
前記排気通路部の断面積は、前記消音室の断面積よりも大きく、また
前記消音室の前記排気ガスの流れ方向における下流端部において、前記排気管の前記消音室側における周壁は、前記仕切板に係合するよう前記仕切板に向かって変形させ、これによって、前記消音室の前記排気ガスの流れ方向における下流開口を閉じている、マフラー。
【請求項2】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記排気管はストレート管である、マフラー。
【請求項3】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記排気管は少なくとも1つの曲げ部を有するベンド管である、マフラー。
【請求項4】
請求項3に記載のマフラーにおいて、前記消音室は、少なくとも前記曲げ部に配置されている、マフラー。
【請求項5】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記排気ガスの流れ方向の下流側からみたとき、前記排気管の消音室側における周壁は、前記仕切板と係合してT字状の係合部を形成している、マフラー。
【請求項6】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記消音室の下流端部で、前記排気管の消音室側における前記周壁及び前記仕切板は、溶融不活性ガス溶接によって互いに溶接されている、マフラー。
【請求項7】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記消音室の下流端部で、前記排気管の消音室側における前記周壁は、前記仕切板と係合するように径方向内側にカシメ加工されている、マフラー。
【請求項8】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記消音室の下流端部で、前記仕切板は、前記排気管の消音室側における前記周壁と係合するように径方向外側に曲げられている、マフラー。
【請求項9】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記消音室の前記下流端部には、当該下流端部を覆うカバーが設けられている、マフラー。
【請求項10】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記仕切板は、前記延在方向に対して直交する幅方向の両端側に曲げ部を有しており、当該曲げ部は、レーザー溶接によって、前記排気管に溶接されている、マフラー。
【請求項11】
排気ガスを排出するための排気管によって形成されるマフラーであって、
前記排気管は、延在方向および径方向を有し、前記排気管の内部の少なくとも一部の領域は、前記延在方向に沿って配置された仕切板によって、消音室と排気通路部とに分割されており、
前記排気通路部の断面積は、前記消音室の断面積よりも大きく、また
前記排気管の前記排気ガスの流れ方向における下流端部には、当該下流端部を覆うカバーが設けられ、かつ当該カバーの一部は、前記消音室の排気ガスの流れ方向における下流開口を閉じるように、前記仕切板に密着又は係合している、マフラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マフラー、特に、内燃エンジンのマフラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマフラーは、排気管の内側に当該排気管の延在方向に沿って設けられた仕切壁が前記排気管の内部を2つの部分に分割し、また、1つの排気通路の前後の開口部に、開閉が自由なバルブが消音室を形成するように設けられており、また、前記マフラーには、消音室の仕切壁に穴の無い共鳴領域と、隣接する排気通路と連通する穴のある拡張領域とが形成されている。マフラーには、エンジンの回転速度を検出するためのセンサが設けられており、また、当該マフラーにはさらに、エンジンの回転速度が所定の回転速度を超えるとともにスロットル開度が所定の開度を超えるときに、前記バルブを開くように制御するためのコントローラが設けられている。
【0003】
加えて、バルブの代わりにシールプレートを用いて排気通路の下流側を封止し、消音室を形成するマフラーも存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、消音室を形成するためにバルブを使用するマフラーの場合、構造が複雑であり、コストが高くなる。加えて、消音室を形成するためにシールプレートを使用するマフラーの場合、加工精度に対する要求が高くなり、作業者の作業に不便をきたすとともに、部品点数が多くなり、コストが上昇する。
【0005】
したがって、本開示の目的は、構造が簡単で低コストのマフラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、排気ガスを排出するための排気管によって形成されるマフラーを提示する。前記排気管は、延在方向及び径方向を有しており、前記排気管の内部の少なくとも一部の領域は、前記延在方向に沿って配置された仕切板によって、消音室と排気通路部とに分割されている。前記排気通路部の断面積は、前記消音室の断面積よりも大きい。前記消音室の前記排気ガスの流れ方向における下流端部において、前記排気管の前記消音室側における周壁は、前記仕切板に向かって変形して前記仕切板に係合し、これによって、前記消音室の前記排気ガスの流れ方向における下流開口を閉じている。
【0007】
オプションとして、前記排気管はストレート管である。
【0008】
オプションとして、前記排気管は、少なくとも1つの曲げ部を有するベンド管である。
【0009】
オプションとして、前記消音室は、少なくとも前記曲げ部に配置される。
【0010】
オプションとして、前記排気ガスの流れ方向の下流側からみたとき、前記排気管の消音室側における周壁は、前記仕切板と係合してT字状の係合部を形成する。
【0011】
オプションとして、前記消音室の下流端部において、前記排気管の消音室側における前記周壁及び前記仕切板は、溶融不活性ガス溶接によって、互いに溶接される。
【0012】
オプションとして、前記消音室の下流端部において、前記排気管の消音室側における前記周壁は、前記仕切板と係合するように径方向内側にカシメ加工されている。
【0013】
オプションとして、前記消音室の下流端部において、前記仕切板は、前記排気管の消音室側における前記周壁と係合するように径方向外側に曲げられている。
【0014】
オプションとして、前記消音室の前記下流端部には、当該下流端部を覆うカバーが設けられる。
【0015】
オプションとして、前記仕切板は、前記延在方向に対して直交する幅方向の両端側に曲げ部を有しており、当該曲げ部は、レーザー溶接によって、前記排気管に溶接される。
【0016】
他の態様として、本開示は、排気ガスを排出するための排気管によって形成されるマフラーを提示する。前記排気管は、延在方向および径方向を有しており、前記排気管の内部の少なくとも一部の領域は、前記延在方向に沿って配置された仕切板によって、消音室と排気通路部とに分割される。前記排気通路部の断面積は、前記消音室の断面積よりも大きい。前記排気管の前記排気ガスの流れ方向における下流端部には、当該下流端部を覆うカバーが設けられており、また、当該カバーの一部は、前記消音室の排気ガスの流れ方向における下流開口を閉じるように、前記仕切板に密着又は係合する。
【0017】
本開示によれば、部品点数が削減され、構造が簡単で、コストが削減されたマフラーを提供することができ、さらに、作業者にとっては、マフラーの製造が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の第1実施形態に係るマフラーの概略図である。
図2】本開示の第1実施形態に係るマフラーの排気ガスの流れを説明するための概略図である。
図3図1のA-A線に沿った、本開示の第1実施形態に係るマフラーの断面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係るマフラーの消音室の下流端部の概略図である。
図5】本開示の第2実施形態に係るマフラーの概略図である。
図6】本開示の第2実施形態に係るマフラーの排気ガスの流れを説明するための概略図である。
図7】本開示に係るマフラーの仕切板の変形例を示す概略図である。
図8】本開示に係るマフラーの他の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態の詳細な説明]
本開示の、例示的な、実施形態、特徴および態様を、図面を参照しつつ、以下に詳細に述べる。図面において、同一の参照数字は、同一又は類似の機能を有する要素を示す。実施形態の様々な態様が図面に示されているが、特に指定がない限り、図面は、必ずしも縮尺とおりに描かれているものでない。
【0020】
さらに、本開示をより良く説明するために、以下の具体的な実施形態において多数の具体的な詳細を示す。本開示は、いくつかの具体的な詳細がなくても実施可能であることは、当業者であれば理解できるはずである。いくつかの例では、本開示の要点を強調するために、当業者に周知の方法および手段については詳細に説明されていない。
【0021】
(第1実施形態)
【0022】
図1は、本開示の第1実施形態に係るマフラー10の概略図である。図2は、本開示の第1実施形態に係るマフラー10の排気ガスの流れを説明するための概略図である。図3は、図1のA-A線に沿った、本開示の第1実施形態に係るマフラー10の断面図である。図4は、本開示の第1実施形態に係るマフラー10の消音室16の下流端部16aの概略図である。
【0023】
図1に示すように、マフラー10を形作る排気管11は、金属製のストレート管とすることができるが、当該排気管11は、これに限定されるものではなく、すなわち、排気管11は、ストレート管でなくてもよく、金属以外の材料で形成されていてもよい。排気管11は、延在方向Lと半径方向Rとを有する。排気ガスは排気管11から排出される。延在方向Lは、排気管11が延在する方向であり、直線状の延在方向であってもよく、曲線状の延在方向であってもよい。排気管11の延在方向Lの両端には、他の部材と接続するためのフランジ部が設けられている。
【0024】
図2及び3に示すように、排気管11は、ほぼ、円筒状に形成されており、また排気ガスGの流れ方向の上流側から、小径部12、拡径部13、大径部14を、この順に有している。排気管11の内部は、延在方向Lに沿って延びる仕切板15によって、消音室16と排気通路部17とに分割されている。仕切板15の上流端部は、拡径部13の下流端部よりも下流側に位置している。これにより、小径部12及び大径部13における排気ガスの流れが阻害されることがなく、大径部13において排気ガスをスムーズに分流させることができる。
【0025】
さらに、排気通路部17の断面積は消音室16の断面積よりも大きい。図2に示すように、大径部14の直径は小径部12の直径よりも大きい。したがって、排気通路部17の断面積を小径部12の断面積と等しくすることができ、また、排気ガスの排出に影響を及ぼさない。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではなく、すなわち、排気通路部17の断面積は、小径部12の断面積と等しくなくてもよい。
【0026】
図3に示すように、仕切板15は、ほぼ矩形の板状をなし、仕切板15の幅方向両端側の円弧状の屈曲部15a、15aが大径部14に固定されている。この固定は、レーザー溶接または他の既知の係合方法によって達成することができる。仕切板15の幅方向は、延在方向Lに対して直交する。また、仕切板15は、ラジアン(弧度)を有する屈曲板として形成されてもよい。
【0027】
図4に示すように、消音室16の排気ガスGの流れ方向における下流端部16aでは、排気管11の消音室16側の周壁が仕切板15側に変形して当該仕切板15と係合して係合部19を形成して、これによって、消音室16の下流開口を閉じている。この係合は、溶融不活性ガス溶接(MIG溶接)またはその他の公知の係合方法によって達成することができる。したがって、消音室16の下流開口を閉じるための部材を追加で設ける必要がない。
【0028】
消音室16の下流端部16aは、消音室16の下流側に断面積が縮小された部分を備える。
【0029】
図2に示すように、排気管11に流入した排気ガスGの一部は消音室16に流入し、閉じられた下流端部16aに衝突して逆流し、共鳴を起こして消音される。残りの排気ガスGは排気通路部17に流入し、排気管11から排出される。
【0030】
加えて、図1に示すように、消音室16の下流端部16aに、消音室16の下流端部を覆うカバー18を設け、このカバー18によって排気管11を他の部材に接続できるようにしてもよい。図1に示すように、カバー18は、円筒状に形成されており、その内径は、排気管11の大径部14の外径と同じであり、消音室16の下流端部16aを覆うことができるようになっている。カバー18は、マフラー11と他の部材との間のコネクタとして機能することができる。
【0031】
(第2実施形態)
【0032】
図5は、本開示の第2実施形態に係るマフラー20の概略図である。.図6は、本開示の第2実施形態に係るマフラー20の排気ガスの流れを説明するための概略図である。
【0033】
第2実施形態が第1実施形態と異なっているのは、主に、排気管と仕切板とである。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同一の部分には、同一の参照符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0034】
図5に示すように、第2実施形態のマフラー20は、曲げ部21aを有するベンド管である排気管21によって形成されている。図5には、1つの屈曲部のみが示されているが、本開示は、これに限定されるものではなく、すなわち、複数の屈曲部があってもよい。図6に示すように、排気管21は、排気ガスGの流れ方向の上流側から、小径部12、拡径部13、大径部14を、この順に有している。大径部14には、屈曲部21aが設けられている。
【0035】
第1実施形態と同様に、排気管21の内部は、延在方向Lに沿って延びる仕切板25によって、消音室26と排気通路部27とに分割されている。仕切板25の上流端部は、拡径部13の下流端部よりも下流側に位置している。これにより、拡径部13における排気ガスの流れの分流は、影響を受けることがない。ここで、排気管21の延在方向Lとは、排気管21がその曲げに追従して延在する方向である。
【0036】
図6に示すように、仕切板25は、少なくとも屈曲部21aに設けられている。第1実施形態と同様に、仕切板25の幅方向両端側の円弧状の屈曲部同士が大径部14に固定されている。この固定は、レーザー溶接または他の既知の係合方法によって達成することができる。
【0037】
第1実施形態と同様に、消音室26の下流端部26aでは、排気管21の消音室26側の周壁が仕切板25に係合して消音室26の下流開口を閉じている。したがって、消音室26の下流開口を閉じるための部材を追加で設ける必要がない。
【0038】
あるいは、消音室26の下流端部26aに、下流端部26aを覆うカバー18を設けてもよく、また、カバー18の内径は、大径部14の外径と実質的に同一であってもよい。
【0039】
(消音室の下流端部)
【0040】
本開示の第2実施形態における消音室26の下流端部26aの構造は、第1実施形態における消音室16の下流端部16aの構造と同じである。したがって、本開示の第1実施形態を例に挙げて消音室の下流端部について説明し、第2実施形態の消音室26の下流端部26aについては説明しない。
【0041】
本開示の第1実施形態では、消音室16の下流開口は、排気ガスGの流れ方向における消音室16の下流端部16aにおいて、排気管11の消音室側の周壁を仕切板15に係合させることにより、閉じられている。
【0042】
図4に示すように、消音室16の下流端部16aでは、排気管11の消音室16側の周壁が、仕切板15と係合するように径方向内側にカシメ加工されている。しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、すなわち、仕切板15は、消音室16の下流端部16aにおいて、排気管11の消音室側における周壁に係合するように径方向外側に曲げられていてもよい。あるいは、消音室16の下流端部16aにおいて、排気管11の消音室16側における周壁を径方向内側にカシメ加工し、また仕切板15を径方向外側に曲げ、これにより排気管11の消音室16側における周壁を仕切板15に係合させる。
【0043】
オプションとして、排気ガスGの流れ方向の下流側から見たとき、排気管11の消音室16側の周壁が仕切板15と係合してT字状の係合部19を形成する。.オプションとして、図4に示すように、前記係合部は、対称的なT字型に形成され、すなわち、T字型の中心の突出部が位置する平面は、排気管11の中心軸線と同一平面である。このようにすることで、突出した部分は、補強リブとして機能し、強度を高めることができる。
【0044】
また、図4に示す例では、係合部19は、排気ガスGの流れ方向の下流側から見たときに、逆T字形状となっている。仕切板15の幅方向両側の曲げ部15a、15aにおける係合部も含めると、係合部19は逆Y字形状を有しているとみなすことができる。また、実際の使用状況に応じて、係合部19は、排気ガスGの流れ方向の下流側から見たときに、正置きのT字状又はY字状など、任意の向きのT字状やY字状を呈してもよい。
【0045】
また、排気管11の消音室16側の周壁と仕切板15との係合は、レーザー溶接及びMIG溶接等の、公知の係合方法によって達成することができる。
【0046】
(変形例)
【0047】
上述したように、仕切板15、25の幅方向両端側の曲げ部は、排気管11、21の周壁に固定される。仕切板15、25の幅方向両端側の曲げ部を排気管11、21に固定する位置は、必要に応じて任意に選択することができる。
【0048】
例えば、図7は、本開示に係るマフラーの仕切板の変形例を示す概略図であり、図1のA-A線に沿った断面図に相当する。図7に示すように、排気ガスの流れ方向に沿って見たとき、排気管の中心軸線を原点とする直交座標系が設定される。仕切板がX軸の正の方向に直交する場合を「仕切板が90度に設けられている」(図7の(e)部分)と表現し、仕切板がX軸の負の方向に直交する場合を「仕切板が-90度に設けられている」(図7の(a)部分)と表現する。仕切板がX軸に平行である場合を「仕切板が0度に設けられている」(図7の(c)部分)と表現する。仕切板がX軸の正の方向に対して45度傾斜している場合を「仕切板が45度に設けられている」(図7の(d)部分)と表現し、仕切板がX軸の負の方向に対して45度傾斜している場合を「仕切板が-45度に設けられている」(図7の(b)部分)と表現する。
【0049】
また、仕切板の幅方向両端側の曲げ部を排気管に固定する位置は、図7の(a)~(e)に示す位置以外にも、他の位置。すなわち、上記位置は、必要に応じて任意に選択することができる。
【0050】
さらに、上述したように、図1に示すように、消音室16の下流端部16aに、消音室の下流端部を覆うカバー18を設け、このカバー18によって排気管11を他の部材に連結するようにしてもよい。
【0051】
しかしながら、本開示は、上記構造に限定されるものではない。あるいは、図8の変形例に示すように、排気管11の排気ガスの流れ方向の下流端部に、この下流端部を覆うカバー18を設けることができ、またこのカバー18は、排気管11の大径部の外径と同じ内径を有し、排気管11の排気ガスの流れ方向の下流端部を覆う第1部分18aと;排気ガスの流れ方向において第1部分18aの下流側で当該第1部分18aに接続され、下流側に向かって内径が減少する第2部分18bと;排気ガスの流れ方向において第2部分18bの下流側で当該第2部分18bに接続され、下流端部が他の部材に連結され得る第3部分18cと;を有するよう形成することができる。
【0052】
図8に示す変形例によれば、仕切板15の排気ガスの流れ方向の下流側端部が排気管11から突出し、カバー18の第2部分18bと第3部分18cとの境界において、カバー18が仕切板15に密着し、あるいは、溶接等により、仕切板15に係合することにより、消音室を閉じている。
【0053】
カバー18は、排気ガスの流れ方向における消音室の下流開口を閉じるが、排気通路部17を閉じることなく、排気通路部17を下流側に開放するものであることは言うまでもない。
【0054】
従って、図8から明らかなように、カバー18は、消音器と他の部材とを連結する機能だけでなく、消音室の下流開口を閉じる機能も果たすことができ、これによって、部品点数を削減してコストを削減することができる。
【0055】
(機能および効果)
【0056】
上述のように、本開示によれば、排気ガスの流れ方向における消音室の下流端部において、排気管の消音室側の周壁が仕切板に係合し、これにより、消音室の排気ガスの流れ方向における下流開口が閉じられる。これにより、消音室の下流開口を閉じるための部材を追加で設ける必要がなくなり、部品点数を削減してコストを削減することができる。
【0057】
さらに、単に消音室側の排気管の周壁をカシメ加工する、又は仕切板の下流端部を曲げることによって、溶接を行うことができる。そのため、加工精度に対する要求が低くなり、作業者にとってマフラーの製造工程が簡単になり、コストがさらに削減される。
【0058】
また、本開示によれば、マフラーを形成する排気管は、ストレート管であってもベンド管であってもよいため、汎用性が高い。
【0059】
排気管がベンド管である場合、まず直線状の仕切板15を直線状の排気管11に挿入し、排気管11に弾性充填材を充填した後、排気管11を曲げ、その後、仕切板15と排気管11とを溶接することができる。このようにすれば、仕切板15を排気管11に容易に挿入することができ、曲げによって溶接品質に影響を与えることを保証することができる。もちろん、この操作は、単に例示なものにすぎず、本開示を限定することを意図するものではない。
【0060】
さらに、排気ガスの流れ方向の下流側からみたとき、排気管の消音室側の周壁と仕切板とを係合して形成される係合部は、カシメ加工により形成され、左右対称のT字形状を有する。そのため、バリ取り工程を追加する必要が無く、T字形状の中央の突出部が補強リブとして機能し、係合部の強度を高めることができる。
【0061】
さらに、消音室の下流端部には、当該下流端部を覆うカバーが設けられ、このカバーによって排気管を他の部材に連結することができる。
【0062】
上記の実施形態は単なる例示であり、本開示を限定することを意図するものではない。当業者は、本開示の技術的思想に基づいて様々な変更や修正を行うことができ、もちろん、それらも、本開示の保護範囲内である。
【0063】
例えば、消音室の下流端部にカバーを設ける代わりに、接続される別の部材が、排気管の大径部の外周を直接スリーブ付けし、消音室の下流端部を覆うようにしてもよい。
【0064】
加えて、上記実施形態では、仕切板を矩形板状に形成したが、仕切板は、例えば、曲率を有する湾曲板であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示は、構造が簡単で低コストのマフラーを提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
10,20 マフラー
11,21 排気管
12 小径部
13 拡径部
14 大径部
15,25 仕切板
16,26 消音室
17,27 排気通路部
18 カバー
19 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図7(e)】
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを排出するための排気管によって形成されるマフラーであって、
前記排気管は、延在方向及び径方向を有し、前記排気管の内部の少なくとも一部の領域は、前記延在方向に沿って配置された仕切板によって、消音室と排気通路部とに分割されており、また、
記消音室の前記排気ガスの流れ方向における下流端部において、前記排気管の前記消音室側における周壁は、前記仕切板に係合するよう前記仕切板に向かってカシメ加工及び変形させ、これによって、前記消音室の前記排気ガスの流れ方向における下流開口を閉じ、カシメ加工及び変形させた前記周壁が突出部を形成している、マフラー。
【請求項2】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記排気管は、ストレート管である、マフラー。
【請求項3】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記排気管は、少なくとも1つの曲げ部を有するベンド管である、マフラー。
【請求項4】
請求項3に記載のマフラーにおいて、前記消音室は、少なくとも前記曲げ部に配置されている、マフラー。
【請求項5】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記排気ガスの流れ方向の下流側からみたとき、前記排気管の消音室側における周壁は、前記仕切板と係合してT字状の係合部を形成している、マフラー。
【請求項6】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記消音室の下流端部で、前記排気管の消音室側における前記周壁及び前記仕切板は、溶融不活性ガス溶接によって互いに溶接されている、マフラー。
【請求項7】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記消音室の下流端部で、前記排気管の消音室側における前記周壁は、前記仕切板と係合するように径方向内側にカシメ加工されている、マフラー。
【請求項8】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記消音室の下流端部で、前記仕切板は、前記排気管の消音室側における前記周壁と係合するように径方向外側に曲げられている、マフラー。
【請求項9】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記消音室の前記下流端部には、当該下流端部を覆うカバーが設けられている、マフラー。
【請求項10】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記仕切板は、前記延在方向に対して直交する幅方向の両端側に曲げ部を有しており、当該曲げ部は、レーザー溶接によって、前記排気管に溶接されている、マフラー。
【請求項11】
排気ガスを排出するための排気管によって形成されるマフラーであって、
前記排気管は、延在方向および径方向を有し、前記排気管の内部の少なくとも一部の領域は、前記延在方向に沿って配置された仕切板によって、消音室と排気通路部とに分割されており、
前記排気通路部の断面積は、前記消音室の断面積よりも大きく、また
前記排気管の前記排気ガスの流れ方向における下流端部には、当該下流端部を覆うカバーが設けられ、かつ当該カバーの一部は、前記消音室の排気ガスの流れ方向における下流開口を閉じるように、前記仕切板に密着又は係合している、マフラー。
【請求項12】
請求項1に記載のマフラーにおいて、前記排気通路部の断面積は前記消音室の断面積よりも大きい、マフラー。
【国際調査報告】